説明

吸痰システム

【課題】患者の気道内に分泌された痰を検出した場合、気道を確保しつつ、その痰を吸引する吸痰システムを提供する。
【解決手段】本発明に係る吸痰システムは、体腔内に挿入されるカテーテルと、前記カテーテルと接続されて該カテーテルを経由して前記体腔内から流動体を吸引する吸引手段と、前記体腔内に流動体が生じたことを検知する検知手段と、前記カテーテルを前記体内へ搬送し、かつ、該搬送したカテーテルを該体腔内から外部へ搬送する搬送手段と、前記検知手段による検知結果に基づいて、前記搬送手段の駆動と、前記吸引手段の駆動を制御する制御手段とを備えることにより、上記課題の解決を図る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、痰等の気道内分泌物を吸引する吸痰装置に関する。
【背景技術】
【0002】
慢性呼吸器疾患や神経系難病で長期の呼吸不全が起きている患者に対しては、気道の確保や気道内分泌物の排除のために、例えば、気管カニューレ等を介して挿入したカテーテルにより、痰等を吸引するのが一般的である。
【0003】
特許文献1では、バルーンを有するカテーテルを体内に挿入し、バルーンの圧力を監視し、その圧力変化に応じて、吸引ポンプを作動させて、体液等の排出を行うことが開示されている。
【0004】
特許文献2では、気管カニューレ内の圧力を変化に応じて、気管カニューレ内に設けた吸引カテーテルより、痰を吸引する人口呼吸システムが開示されている。
特許文献3では、異常な音の発生を指向性集音マイクロフォンが感知した場合に、吸引ポンプを作動させて、吸引カテーテルより痰を吸引することが開示されている。
【特許文献1】特開平08−126613号公報
【特許文献2】特開2004−283329号公報
【特許文献3】特開2002−219175号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
痰を吸引する度にカテーテルを気道内へ挿入して吸引を行うことは、介護者にとっては重労働であった。また、寝たきり患者が痰のからみで苦しんでいるか分かりにくく、吸痰のタイミングが遅れていた。特に、夜中の吸痰の対応については実質上不可能であった。
【0006】
上記課題に鑑み、本実施形態では、患者の気道内に分泌された痰を検出した場合、気道を確保しつつ、その痰を吸引する吸痰システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る吸痰システムは、体腔内に挿入されるカテーテルと、前記カテーテルと接続されて該カテーテルを経由して前記体腔内から流動体を吸引する吸引手段と、前記体腔内に流動体が生じたことを検知する検知手段と、前記カテーテルを前記体内へ搬送し、かつ、該搬送したカテーテルを該体腔内から外部へ搬送する搬送手段と、前記検知手段による検知結果に基づいて、前記搬送手段の駆動と、前記吸引手段の駆動を制御する制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
前記搬送手段は、前記体内方向への搬送の限界を検知する第1の搬送限界検出手段と、該体腔内から外部への搬送の限界を検知する第2の搬送限界検出手段と、を備え、前記カテーテルは、前記搬送手段を挿通しており、該搬送手段に覆われた部分にストッパーが設けられて、該ストッパーは前記第1の搬送限界検出手段と前記第2の搬送限界検出手段の間にあることを特徴とする。
【0009】
また、前記検知手段は、前記体腔内の酸素分圧の変化を検知することを特徴とする。前記吸痰システムは、さらに、前記カテーテル内の圧力の変化を検知する圧力検知手段を備えてもよい。
【0010】
また、前記検知手段は、患者の体表面に設置可能であって該患者の呼吸音を取得し、前記制御手段は、前記取得した呼吸音のパターンを識別することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、患者の気道内に分泌された痰を検出した場合、気道を確保しつつ、その痰を吸引することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
<第1の実施形態>
本実施形態では、鼻カニューラ内に挿入された吸引カテーテルを搬送できる搬送装置が設けられており、検知手段による検知結果に基づいて、吸引カテーテルが鼻カニューラから気道内に搬送されると共に、吸引ポンプが作動して、気道痰を吸引するシステムについて説明する。
【0013】
図1は、本実施形態における吸痰システム1の構成を示す。吸痰システム1は、主に、鼻カニューラ4、パルスオキシメータ6、コントローラ7、吸引カテーテル9、搬送装置10、圧力検知部17、吸引ポンプ18、吸痰ビン19から構成される。
【0014】
鼻カニューラ4は、鼻カニューラ4の鼻孔挿入部5を患者101の鼻孔に挿入し、酸素供給チューブ2から酸素を供給することにより、鼻カニューラ4の鼻孔挿入部5から酸素を体内に導入するものである。なお、102は患者の気道、103は肺を示す。
【0015】
パルスオキシメータ6は、脈拍数と経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)をモニターする医療機器である。パルスオキシメータ6のセンサ部分に患者101の指を付けると、計測された脈拍数と経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)がコントローラ7へ送信される。
【0016】
搬送装置10は、吸引カテーテル9を搬送及び逆方向へ搬送するための装置である。搬送装置10と鼻カニューラ4とはチューブ8で接続されており、そのチューブ8内を吸引カテーテル9が搬送される。吸引カテーテル9は、圧力検知部17を介して吸痰ビン19に接続されている。圧力検出部17は、吸引カテーテル9に設置され、吸引カテーテル内の圧力を検出する。吸痰ビン19には吸引ポンプ18が接続されている。
【0017】
吸引カテーテル9には、ストッパー16が固定され、このストッパー16が搬送装置10の内部で閉じ込められている構造になっている。したがって、搬送装置10により前後に搬送される吸引カテーテル9の移動範囲は制限されている。なお、以下では、吸引カテーテル9が気道へ挿入される方向に搬送することを正搬送、気道から排出される方向に搬送されることを逆搬送という。
【0018】
搬送装置10の内部には、ストッパー16が正搬送方向側への搬送の限界移動範囲まで到達したことを検知するリミットスイッチ12、ストッパー16が逆搬送方向側への搬送の限界移動範囲まで到達したことを検知するリミットスイッチ11が設けられている。ストッパー16がリミットスイッチ12に接触すると、正搬送動作が停止する。ストッパー16がリミットスイッチ11に接触すると、逆搬送動作が停止する。
【0019】
コントローラ7は、中央演算装置(CPU)、ROM,RAM等の記憶装置を備える。コントローラ7は、パルスオキシメータ6、搬送装置10のモータ15(図2参照)とリミットスイッチ11,12、圧力検知部17、吸引ポンプ18と接続されており、これらの各機器を制御することができる。コントローラ7は、パルスオキシメータ6の検知結果に基づいて搬送装置10を駆動させ、リミットスイッチ11,12の検知結果に基づいて、搬送装置10の駆動を停止させることができる。また、コントローラ7は、圧力検知部17の圧力検知結果に基づいて、吸引ポンプを駆動させることができる。
【0020】
図2は、本実施形態における搬送装置10のA−A断面図である。搬送装置10には吸引カテーテルを上下から挟むようにローラ13,14が設けられている。ローラ13を駆動させるモータ15も設けられている。モータ15が駆動することにより、ローラ13が回転して、ローラ13,14に押し付けられた吸引カテーテル9が搬送される。
【0021】
図3は、本実施形態の実施例1における吸痰システム1の動作フローを示す。まず、鼻カニューラ4を患者101の鼻に装着し、酸素供給チューブ2から酸素を供給する。このとき、鼻カニューラ4内の酸素の供給を遮断しないように、吸引カテーテル9は鼻カニューラ4から引き出された状態、すなわち、吸引カテーテル9のストッパー16が搬送装置10の後方側のリミットスイッチ11に接している状態であるとする。
【0022】
患者101の指にパルスオキシメータ6を設置し、その測定結果をコントローラ7によりモニタリングしておく。コントローラ7は、そのパルスオキシメータ7の測定結果に基づいて、SpO2が基準値よりも低下したと判断した場合(すなわち、吸痰の必要が生じた場合)(S1で「Yes」)、モータ15を駆動させて、吸引カテーテル9を正搬送する。また、コントローラ7は、吸引ポンプ18を駆動させて、吸引を開始する(S2)。
【0023】
吸引カテーテル9のストッパー16がリミットスイッチ12の位置に到達するまで、吸引カテーテル9は搬送される。ストッパー16がリミットスイッチ12に接触して、リミットスイッチ12をONにすると、そのON信号がコントローラ7に伝達される(S3)。
【0024】
リミットスイッチ12のON信号を受信したコントローラ7は、モータ15の駆動を停止させ、タイマーを始動させる(S4)。このとき、吸引カテーテル9は鼻カニューラ4の鼻孔挿入部5を通って、鼻孔から気管102まで挿入されている。吸引カテーテル9は、その挿入位置で所定時間留まり、吸引が行われる。吸引された痰は、吸引カテーテル9内を通って、吸痰ビン19で捕捉される。
【0025】
タイマーにより所定時間がカウントされた後、コントローラ7はモータ15をS1で回転させた方向の逆方向に回転させる(S5)。これにより、吸引カテーテル9が逆搬送される。
【0026】
吸引カテーテル9のストッパー16がリミットスイッチ11の位置(元の位置)に到達するまで、吸引カテーテル9は逆搬送される。ストッパー16がリミットスイッチ11に接触して、リミットスイッチ11をONにすると、そのON信号がコントローラ7に伝達される(S6)。
【0027】
リミットスイッチ11のON信号を受信したコントローラ7は、モータ15及び吸引ポンプ18の駆動を停止させる(S7)。これにより、吸痰処理は終了する。
図4は、本実施形態の実施例2における吸痰システム1の動作フローを示す。本実施例では、痰を吸引した際の吸引カテーテル9内の圧力の上昇を検知して、その圧力が上昇した位置の近辺を念入りに吸引する。
【0028】
まず、鼻カニューラ4を患者101の鼻に装着し、酸素供給チューブ2から酸素を供給する。このとき、吸引カテーテル9は、鼻カニューラ4内の酸素の供給を遮断しないように、引き出された状態、すなわち、吸引カテーテル9のストッパー16が搬送装置10の後方側のリミットスイッチ11に接している状態であるとする。
【0029】
患者101の指にパルスオキシメータ6をし、その測定結果をコントローラ7によりモニタリングしておく。コントローラ7は、そのパルスオキシメータ7の測定結果に基づいて、SpO2が基準値よりも低下したと判断した場合(すなわち、吸痰の必要が生じた場合)(S11で「Yes」)、モータ15を駆動させて、吸引カテーテル9を正搬送する。また、コントローラ7は、吸引ポンプ18を駆動させて、吸引を開始する(S12)。
【0030】
吸引カテーテル9は鼻カニューラ4の鼻孔挿入部5を通って、鼻孔から気管102まで挿入される。吸引カテーテルの先端開口部付近が痰に接近すれば、その痰は吸引され、吸引カテーテル9内を通って、吸痰ビン19で捕捉される。
【0031】
ここで、痰を吸引すると、吸引カテーテル9内の圧力が上昇する。コントローラ7は、圧力検知部17の検知結果、吸引カテーテル9内の圧力が基準値以上であると判断した場合(S13で「Yes」)、コントローラ7は、一定時間モータ15を停止させるか、または一定範囲で正回転、逆回転を繰り返し(S14)、S12へ戻る。これにより、その圧力が上昇した位置の近辺にある痰を念入りに吸引することができる。
【0032】
吸引カテーテル9内の圧力が基準値より低い場合(S13で「No」)、コントローラ7は、モータ15を正回転させ、吸引カテーテル9を搬送させる(S14)。吸引カテーテル9のストッパー16がリミットスイッチ12の位置に到達するまで、S13〜S15の処理を行う(S16)。ストッパー16がリミットスイッチ12に接触して、リミットスイッチ12をONにすると、そのON信号がコントローラ7に伝達される(S16で「Yes」)。
【0033】
リミットスイッチ12のON信号を受信したコントローラ7は、モータ15を逆回転させる(S17)。これにより、吸引カテーテル9が逆搬送される。
吸引カテーテル9のストッパー16がリミットスイッチ11の位置(元の位置)に到達するまで、吸引カテーテル9は逆搬送される。ストッパー16がリミットスイッチ11に接触して、リミットスイッチ11をONにすると、そのON信号がコントローラ7に伝達される(S18)。
【0034】
リミットスイッチ11のON信号を受信したコントローラ7は、モータ15及び吸引ポンプ18の駆動を停止させる(S19)。これにより、吸痰処理は終了する。
本実施形態によれば、気道の確保をしつつ、吸痰の必要性が生じた場合にのみ自動で吸引カテーテルが気道に挿入され、吸痰終了後、吸引カテーテルが気道から排出される。したがって、介護者の負担を軽減することができる。
【0035】
<第2の実施形態>
本実施形態では、肺音モニタリング装置を患者胸部体表面または口・鼻近傍までの呼吸経路に設置すると共に、痰のからみ音を検知するためのアルゴリズムを有する検知手段を設け、痰のからみ音の検出時にアラームを鳴らすシステムについて説明する。
【0036】
図5は、本実施形態の実施例1における痰検知システム21を示す。痰検知システム21は、マイク22、痰検知装置23、アラーム24から構成される。マイク22は、患者の肺近傍の体表面から口・鼻までの呼吸経路に設置される。痰検知装置23は、マイクにより取得した呼吸音から、痰のからみ音として所定の呼吸パターンを識別する。痰検知装置23は、所定の呼吸パターンを識別した場合、アラーム24により警告音を発生させる。これにより、痰がからむとアラームにより認知できるため、患者が苦しむ前に喀痰できる。
【0037】
図6は、呼吸音のパターンの一例を示す。図6(a)は、通常の呼吸パターンであるとする。図6(b)は、痰のからみ音のパターンであるとする。
痰検知装置23の不揮発性メモリには、図6(b)のパターンが予め記憶されている。痰検知装置23は、マイクにより取得した呼吸音のパターンと、予め痰のからみ音として記憶している呼吸パターン(図6(b))とを比較し、パターンが一致(誤差の範囲内の場合もふくむ)すれば、痰のからみ音として識別する。
【0038】
図7は、本実施形態の実施例2における吸痰システム31の構成を示す。本実施例の吸痰システム31は、図1のパルスオキシメータ6をマイク22に置き換え、コントローラ7をコントローラ7aに置き換え、圧力検知部17を取り除いたものに相当する。コントローラ7aは、コントロール7に痰検知装置23の呼吸パターンの認識機能を有する。
【0039】
図8は、本実施形態の実施例2における吸痰システム31の動作フローを示す。まず、鼻カニューラ4を患者101の鼻に装着し、酸素供給チューブ2から酸素を供給する。このとき、吸引カテーテル9は、鼻カニューラ4内の酸素の供給を遮断しないように、引き出された状態、すなわち、吸引カテーテル9のストッパー16が搬送装置10の後方側のリミットスイッチ11に接している状態であるとする。
【0040】
患者の肺近傍の体表面から口・鼻までの呼吸経路にマイク22を設置する。マイク22により取得された呼吸音のパターンをコントローラ7aによりモニタリングしておく(S21)。
【0041】
コントローラ7aは、マイク22により検知した呼吸音パターンと、痰のからみ音として予め記憶している呼吸音のパターンとを比較する(S22)。その比較結果に基づいて、痰のからみ音であると判断した場合(S23)、すなわち、吸痰の必要が生じた場合、コントローラ7aは、モータ15を駆動させて、吸引カテーテル9を正搬送する。また、コントローラ7aは、吸引ポンプ18を駆動させて、吸引を開始する(S24)。
【0042】
吸引カテーテル9のストッパー16がリミットスイッチ12の位置に到達するまで、吸引カテーテル9の送り出しは続く。ストッパー16がリミットスイッチ12に接触し、リミットスイッチ12をONにすると、そのON信号がコントローラ7に伝達される(S25)。
【0043】
リミットスイッチ12のON信号を受信したコントローラ7は、モータ15の駆動を停止させる(S26)。このとき、吸引カテーテル9は鼻カニューラ4の鼻孔挿入部5を通って、鼻孔から気管102まで挿入されている。吸引カテーテル9は、その挿入位置で所定時間留まり、吸引が行われる。吸引された痰は、吸引カテーテル9内を通って、吸痰ビン19で捕捉される。
【0044】
S21〜S23を繰り返し、からみ音がなくなるまで、吸引を行う。からみ音がなくなった場合、コントローラ7aは、モータ15を逆回転させる。
吸引カテーテル9のストッパー16がリミットスイッチ11の位置(元の位置)に到達するまで、吸引カテーテル9は逆搬送される。ストッパー16がリミットスイッチ11に接触し、リミットスイッチ11をONにすると、そのON信号がコントローラ7aに伝達される(S29)。
【0045】
リミットスイッチ11のON信号を受信したコントローラ7aは、モータ15及び吸引ポンプ18の駆動を停止させる(S30)。これにより、吸痰処理は終了する。
本実施形態によれば、気道の確保をしつつ、吸痰の必要性が生じた場合にのみ自動で吸引カテーテルが気道に挿入され、吸痰終了後、吸引カテーテルが気道から排出される。したがって、介護者の負担を軽減することができる。
【0046】
<第3の実施形態>
従来の吸痰チューブでは、チューブ先端側の端面の開口部からのみ吸引していたため、吸引範囲が狭く、吸引の効率が悪かった。そこで、本実施形態では、先端側に複数の側孔を設けた吸痰チューブについて説明する。
【0047】
図9は、本実施形態における吸痰チューブを示す。気管には気管カニューラ31が挿入され、カフ32により気管に密着している。気管カニューラ31には吸痰チューブ33が通されている。吸痰チューブ33の先端には開口33aが設けられている。また、先端側の側面には側孔33bが複数設けられている。
【0048】
これにより、先端の開口33aからだけでなく、側孔33bからも痰を吸引することができる。よって、吸痰の効率が向上する。
<第4の実施形態>
吸痰は吸痰チューブを気管支に挿入して行うが、解剖学上、左気管支にはチューブが入りにくく、ほとんど左気管支の吸痰が行われていなかった。そこで、本実施形態では、吸痰チューブの先端に磁性体を設け、左肺付近の体表面に設けた磁石により吸痰チューブ先端を左気管支に誘導することができる吸痰チューブについて説明する。
【0049】
図10は、本実施形態における吸痰チューブの先端に磁性体を設け、左肺付近の体表面に設けた磁石により吸痰チューブ先端を左気管支に誘導することができる吸痰チューブを示す。吸痰チューブ41の先端には吸引用の開口があり、その開口を遮断しないように、先端に磁性体42が設けられている。例えば、磁性体は、その開口部の縁部分にもうけられている。
【0050】
まず、患者の左肺付近の体表面に磁石43を配置しておく。そして、気管カニューラを介して、先端に磁性体42を設けた吸痰チューブ41を挿入する。そうすると、磁石43にて左気管支に磁性体42、すなわち、吸痰チューブ41の先端開口を誘導することができる。これにより、吸痰チューブを左気管支内に誘導することができるので、左気管支内の吸痰ができる。
【0051】
<第5の実施形態>
本実施形態では、吸痰チューブ先端に発光手段を設け、発光手段の発光を体外から認識し易くすることで、吸痰チューブ先端を認識可能とする吸痰チューブについて説明する。
【0052】
図11は、本実施形態における吸痰チューブを示す。図11(a)は、吸痰チューブ51の全体図であり、図11(b)は、吸痰チューブ51の先端の側面方向からの断面図である。
【0053】
吸痰チューブ51の先端には開口部があり、その縁や先端部近傍のチューブ外周部等に発光手段53が設けられている。発光手段53としては、LED,有機EL等の面発光体やライトガイド等を用いることができる。また、発光手段53は、少なくとも吸痰チューブ51の先端部近傍に設ける。
【0054】
発光手段53から延出したケーブル52は吸痰チューブの側面に沿って電源コネクタ53まで続いている。この電源コネクタ53を電源装置へ接続することで、発光手段53に電力を供給することができる。また、口金54を吸引装置へ接続することで、口金54より吸引することができる。
【0055】
これにより、発光手段の発光により、吸痰チューブの先端位置を体外から認識することができるので、吸痰チューブを左気管支へ挿入することが容易になる。
<第6の実施形態>
慢性呼吸器疾患や、神経系難病で長期の呼吸不全が起きている患者に対しては、気道の確保、気道内分泌物の排除のためにカテーテルで痰を吸引する。しかし、盲目的にカテーテルを気道内へ挿入するため、カテーテルの先端がどこまで届いているかはわかりにくかった。また、吸引カテーテルを気管支に挿入する場合、左と右の主気管支では、右側の方が角度的に入りやすいため、左の気管支の吸痰は難しかった。
【0056】
そこで、本実施形態では、先端部に体外から聴診器を使って聴くことのできる音を発する音源を配置した吸引カテーテルと、ルーメンを介して先端に音を伝えられるように音源を手元側ルーメン開口部付近に保持する保持手段を設けた吸引カテーテルについて説明する。
【0057】
図12は、本実施形態における吸引カテーテル及び信号音発生機器を示す。図12(a)において、吸引カテーテルの先端には吸痰用の開口部62があり、その周辺の外周側面には孔63が開いている。吸引カテーテルの他端には、吸引ポンプに接続するための口金64が設けられている。この口金64の側面には、信号音発生機器66を取り付けるための結合部65が設けられている。結合部65は、筒状に形成されており、吸引カテーテル61の内部の空洞とつながっている。
【0058】
信号音発生機器66は、所定の音を発生する器具である。結合部65に信号音発生機器66を取り付ける。この状態で、信号音発生機器66から音が発声すると、その音が結合部65から吸引カテーテル61の空洞を伝わって、孔63より出力される。
【0059】
信号音発生機器66の種類としては、図12(b)に示すように電気的に動作するものと、図12(c)に示すように手動で動作するものとがある。
図12(b)は、本実施形態の実施例1における信号音発生機器66を示す。信号音発生機器66には、結合部65と嵌合するための凹部74がある。凹部74の底に相当する部分にはスピーカ71が設けられ、その下に、信号音発生装置72、電池73が設けられている。信号音発生装置72は、電池73からの電力により信号音を発生させ、その信号音をスピーカ71から出力する。
【0060】
図12(c)は、本実施形態の実施例2における信号音発生機器66を示す。信号音発生機器66は、プラスチック製である。薄膜部81はドーム上に盛り上がっており、この部分を指先で叩くことによって音がでる。
【0061】
本実施形態によれば、信号音発生機器66を取り付けた吸引カテーテルを気道カニューラから挿入し、信号音発生機器66により音を発生させ、この音を体外から聴診器を使って聴くことにより、吸引カテーテルの先端位置を確認することができる。よって、この音を確認することにより、左の気管支へ吸引カテーテルを導入しやすくなる。
【0062】
なお、本発明は、以上に述べた実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の構成または実施形態を取ることができる。また、本発明は、第1〜第5の実施形態のうちいずれの実施形態を組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】第1の実施形態における吸痰システム1の構成を示す。
【図2】第1の実施形態における搬送装置10のA−A断面図である。
【図3】第1の実施形態の実施例1における吸痰システム1の動作フローを示す。
【図4】第1の実施形態の実施例2における吸痰システム1の動作フローを示す。
【図5】第2の実施形態の実施例1における痰検知システム21を示す。
【図6】呼吸音のパターンの一例を示す。
【図7】第2の実施形態の実施例2における吸痰システム31の構成を示す。
【図8】第2の実施形態の実施例2における吸痰システム31の動作フローを示す。
【図9】第3の実施形態における吸痰チューブを示す。
【図10】第4の実施形態における吸痰チューブの先端に磁性体を設け、左肺付近の体表面に設けた磁石により吸痰チューブ先端を左気管支に誘導することができる吸痰チューブを示す。
【図11】第5の実施形態における吸痰チューブを示す。
【図12】第6の実施形態における吸引カテーテル及び信号音発生機器を示す。
【符号の説明】
【0064】
1,31 吸痰システム
2 酸素供給チューブ
4 鼻カニューラ
5 鼻孔挿入部
6 パルスオキシメータ
7,7a コントローラ
8 チューブ
9 吸引カテーテル
10 搬送装置
11,12 リミットスイッチ
13,14 ローラ
15 モータ
16 ストッパー
17 圧力検知部
18 吸引ポンプ
19 吸痰ビン
21 痰検知システム
22 マイク
23 痰検知装置
24 アラーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
体腔内に挿入されるカテーテルと、
前記カテーテルと接続されて該カテーテルを経由して前記体腔内から流動体を吸引する吸引手段と、
前記体腔内に流動体が生じたことを検知する検知手段と、
前記カテーテルを前記体内へ搬送し、かつ、該搬送したカテーテルを該体腔内から外部へ搬送する搬送手段と、
前記検知手段による検知結果に基づいて、前記搬送手段の駆動と、前記吸引手段の駆動を制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする吸痰システム。
【請求項2】
前記搬送手段は、前記体内方向への搬送の限界を検知する第1の搬送限界検出手段と、該体腔内から外部への搬送の限界を検知する第2の搬送限界検出手段と、を備え、
前記カテーテルは、前記搬送手段を挿通しており、該搬送手段に覆われた部分にストッパーが設けられて、該ストッパーは前記第1の搬送限界検出手段と前記第2の搬送限界検出手段の間にある
ことを特徴とする請求項1に記載の吸痰システム。
【請求項3】
前記検知手段は、前記体腔内の酸素分圧の変化を検知する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の吸痰システム。
【請求項4】
前記吸痰システムは、さらに、
前記カテーテル内の圧力の変化を検知する圧力検知手段
を備えることを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか1項に記載の吸痰システム。
【請求項5】
前記検知手段は、患者の体表面に設置可能であって該患者の呼吸音を取得し、
前記制御手段は、前記取得した呼吸音のパターンを識別する
ことを特徴とする請求項1、2、及び4のうちいずれか1項に記載の吸痰システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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