説明

吸盤およびその製造方法

【課題】経時変形による吸着力の低下を防止できる吸盤を得ること。
【解決手段】吸盤10は、吸盤本体12と、ゲル層14とを含んで構成されている。ゲル層14は、吸盤本体12の取り付け面1210に接合されている。吸着面1402はゲル層14の表面で構成されている。吸盤本体12は、分子の末端にイソシアネート基を有する熱可塑性ポリウレタンエラストマーで構成されている。ゲル層14は、分子の末端に水酸基を有する2液硬化型ポリウレタンゲルで構成されている。取り付け面1210において、熱可塑性ポリウレタンエラストマーの分子の末端のイソシアネート基と、2液硬化型ポリウレタンゲルの分子の末端の水酸基とが結合することで接合され、吸盤本体12とゲル層14の融着強度が高められている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸着面がゲル層で形成された吸盤とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の吸盤は、単一の弾性材料(弾性を有する合成樹脂材料)で構成されており、そのため、カーナビケーションシステムのディスプレイやテレビジョン装置などのような車載機器を、皮シボ面やざらざらな面からなるダッシュボードの表面に、吸盤を用いて取り付けにくい不具合があった。
そこで、本出願人は、ダッシュボードの表面が皮シボ面やざらざらな面である場合であっても、カーナビケーションシステムのディスプレイやテレビジョン装置などのような車載機器を確実に取り付ける上で有利な吸盤を提供している(特許文献1)。
この吸盤は、弾性を有する合成樹脂材料からなる吸盤本体と、前記吸盤本体に接合されゲルからなるゲル層とを含んで構成され、前記ゲル層の表面が吸着面とされている。この吸盤によれば、車載機器を、皮シボ面やざらざらな面からなるダッシュボードの表面に脱着可能に確実に取り付けることができる。
また、弾性を有する合成樹脂材料からなる吸盤本体と、前記吸盤本体に接合された粘着層(接着層)からなる吸盤も提供されているが、この吸盤では、手摺を壁に確実に固定できるものの、脱着可能に取り付けることができない(特許文献2)。
【特許文献1】特開2006−347138
【特許文献2】特開2006−308025
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本出願人は、弾性を有する合成樹脂材料からなる吸盤本体と、前記吸盤本体に接合されゲルからなるゲル層とを含んで構成された吸盤について鋭意研究の結果、次のようなことを判明するに至った。
吸盤本体に熱可塑性スチレン系エラストマーを用いると、吸盤本体の形状変形が生じ易く、経時変形による吸着力の低下を招く。その結果、この吸着力の低下を防止するため、吸盤の中央部を強制的に引き上げる引き上げ機構が必要となる。
これに対して、吸盤本体に、熱可塑性ポリウレタンエラストマーを用いると、吸盤本体の形状変形が少なく、経時変形による吸着力の低下も防止され、したがって、吸盤の中央部を強制的に引き上げる引き上げ機構を省略できる。
これは、熱可塑性ポリウレタンエラストマーの分子末端のイソシアネート基と隣接分子の水酸基、ウレタン基の活性水素が熱を加えることで反応して化学架橋を形成し、この化学架橋により耐熱性が高まり、形状変形が減少するためと考えられる。
【0004】
また、吸着面を構成するゲル層にスチレンゲルを用いると、ダッシュボードの表面の凹凸模様が吸着面に転写されてしまい、その結果、吸着面と被吸着面との間に空気が入り易く、吸盤が被吸着面から外れ易くなる。
これに対して、吸着面を構成するゲル層にポリウレタンゲルを用いると、ダッシュボードなどの表面の凹凸模様が吸着面に転写されず、経時変形による吸着力の低下が防止される。
これはウレタンゲルが2液熱硬化材料で、硬化後には完全な化学架橋を形成するため、この化学架橋により耐熱性、圧縮永久ひずみ等の物性が従来ゲルより大幅に向上し、車載環境下のような高温環境化においても形状変形が減少するためと考えられる。
【0005】
そこで、本出願人は、熱可塑性ポリウレタンエラストマーからなる吸盤本体と、ポリウレタンゲルからなるゲル層とからなり、経時変形による吸着力の低下を防止できる吸盤を得ようとした。
しかしながら、それら吸盤本体とゲル層との融着強度が極めて低いため、吸盤本体からゲル層が剥がれてしまい、製品化するに至らず、更なる鋭意研究を進めていた。
【0006】
本発明者はこのような事情に鑑み案出されたものであって、本発明の目的は、熱可塑性ポリウレタンエラストマーからなる吸盤本体と、ポリウレタンゲルからなるゲル層とを備え、それら吸盤本体とゲル層との融着強度が確保され、経時変形(経時変化)による吸着力の低下を防止できる吸盤を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため本発明は、弾性を有する合成樹脂材料からなる吸盤本体と、前記吸盤本体に接合されたゲル層とを含んで構成され、前記ゲル層の表面が吸着面とされた吸盤であって、前記吸盤本体は、熱可塑性ポリウレタンエラストマーで構成され、前記ゲル層は、2液硬化型ポリウレタンゲルで構成され、前記吸盤本体と前記ゲル層との接合は、熱可塑性ポリウレタンエラストマーが有するイソシアネート基と、2液硬化型ポリウレタンゲルが有する水酸基とが結合することでなされていることを特徴とする。
また、本発明は、熱可塑性ポリウレタンエラストマーからなる吸盤本体と、前記吸盤本体の取り付け面に接合された2液硬化型ポリウレタンゲルからなるゲル層とを含んで構成され、前記取り付け面と反対に位置するゲル層の表面が吸着面とされた吸盤の製造方法であって、射出成形により化学架橋が形成されておらずイソシアネート基を余らせた前記熱可塑性ポリウレタンエラストマーからなる前記吸盤本体を成形し、次に、下型の上に前記吸盤本体を、前記取り付け面を上に向けて載置し、次に、前記下型に上型を合わせ、それら金型の内部で前記取り付け面との間に前記ゲル層に対応した形状のゲル層成形用キャビティを作り、前記ゲル層成形用キャビティに流動状態の前記2液硬化型ポリウレタンゲルを射出し前記ゲル層を前記取り付け面上に成形し、前記熱可塑性ポリウレタンエラストマーおよび前記2液硬化型ポリウレタンゲルを加熱してそれぞれ熱硬化させ、その後、前記2次金型を開いて前記吸盤を得ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の吸盤によれば、吸盤本体とゲル層とが確実に接合されているため、ゲル層が吸盤本体から剥がれることがない。
また、吸盤本体が化学架橋構造を持つ熱可塑性ポリウレタンエラストマーで形成されているので、吸盤本体の形状変形が少なく、経時変形(経時変化)による吸着力の低下も防止される。
また、ゲル層がポリウレタンゲルで構成されているので、ダッシュボードなどの表面の凹凸模様が吸着面に転写されず、経時変形による吸着力の低下が防止される。
本発明の吸盤の製造方法によれば、取り付け面に対してゲル層が一体化されており、ゲル層が取り付け面から剥がれることはない。
また、熱可塑性ポリウレタンエラストマーの化学架橋に要する熱処理と、2液硬化型ポリウレタンゲルの化学架橋に要する熱処理と、ゲル層と吸盤本体とを接合する工程とを、同一の工程で行なえるので、製造工程を短縮でき、生産性を高める上で有利となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面にしたがって説明する。
図1は吸盤10の断面正面図を示す。
吸盤10は、弾性を有する合成樹脂材料からなる吸盤本体12と、吸盤本体12に接合されたゲル層14とを含んで構成されている。
【0010】
吸盤本体12は、円板部1202と、円板部1202の中央から突出する軸部1204とを含んで構成されて、符号Cは、吸盤12の中心軸を示している。
円板部1202の一方の面は、中央部が外周部よりも窪んだ凹状の取り付け面1210
として形成され、他方の面は、中央部が外周部よりも突出した凸状の背面1212となっており、軸部1204はこの背面1212から突出している。
また、円板部1202の外縁に取り外し操作用の片体1220が突設されている。
【0011】
ゲル層14は、取り付け面1210に該取り付け面1210を覆うように接合されている。
吸着面1402はこのゲル層14の表面で構成されている。
【0012】
そして、吸盤本体12を構成する合成樹脂材料として、分子の末端にイソシアネート基を有する(あるいは、イソシアネート基を余らせた)熱可塑性ポリウレタンエラストマーが用いられている。
このような熱可塑性ポリウレタンエラストマーとして、例えば、市販品である日本ミラクトラン株式会社の商品名「ミラクトランH585GOBA」が使用可能である。この熱可塑性ポリウレタンエラストマーは、分子の末端にイソシアネート基を有する(あるいは、イソシアネート基を余らせる)ように熱可塑性ポリウレタンエラストマーを製造したものである。
なお、分子の末端にイソシアネート基を有しない(あるいは、イソシアネート基を余らせていない)熱可塑性ポリウレタンエラストマーに、イソシアネート基を有する架橋剤を混合しても、分子の末端にイソシアネート基を有する(あるいは、イソシアネート基を余らせた)熱可塑性ポリウレタンエラストマーとなり、このような熱可塑性ポリウレタンエラストマーも使用可能である。
このような例として、例えば、分子の末端にイソシアネート基を有しない(あるいは、イソシアネート基を余らせていない)熱可塑性ポリウレタンエラストマーとして、商品名「レザミンP−7282」(大日精化株式会社)が挙げられ、この「レザミンP−7282」に、イソシアネート基を有する架橋剤として、商品名「クロスネートEM−30」(大日精化株式会社)を15〜20重量%程度添加したものでも使用可能である。
【0013】
また、ゲル層14を構成するゲルとして、分子の末端に水酸基を有する2液硬化型ポリウレタンゲルが用いられている。
また、本実施の形態では、2液硬化型ポリウレタンゲルには、オイルを主成分とする可塑剤を混入していない、いわゆるオイルフリーのものである。ここで可塑剤とは、ゲルを柔らかくし、あるいは、硬度を低くする材料であり、例えば、パラフィン系オイル、フタル酸エステルなどが挙げられる。
オイルを主成分とする可塑剤が混入されていない2液硬化型ポリウレタンゲルとして、ポリオールには、例えば、日本ポリウレタン工業株式会社の商品名「ニッポランON―H05」、イソシアネートには日本ポリウレタン工業株式会社の商品名「コロネートHC−197」が使用可能である。
このようにオイルを主成分とする可塑剤が混入されていない2液硬化型ポリウレタンゲルを用いることで、車載環境のような高温環境下においても、ゲル層14からしみ出たオイル成分がダッシュボードなどの表面に瘢痕を残すなどの不具合を解消できる。
【0014】
そして、取り付け面1210において、吸盤本体12とゲル層14とは、熱可塑性ポリウレタンエラストマーの分子の末端のイソシアネート基と、2液硬化型ポリウレタンゲルの分子の末端の水酸基とが結合することで接合され、吸盤本体12とゲル層14の融着強度が高められている。
したがって、本実施の形態の吸盤10によれば、次のような効果が奏される。
吸盤本体12とゲル層14とが確実に接合されているため、ゲル層14が吸盤本体12から剥がれることがない。
また、吸盤本体12が熱可塑性ポリウレタンエラストマーで形成されているので、吸盤本体12の形状変形が少なく、言い換えると、吸盤本体12の形状に基づいた吸着面1402の中央を引き上げる弾性力が維持され、これにより経時変形による吸着力の低下も防止され、したがって、吸盤10の中央部を強制的に引き上げる引き上げ機構を省略できる。
また、ゲル層14がポリウレタンゲルで構成されているので、ダッシュボードなどの表面の凹凸模様が吸着面1402に転写されず、経時変形による吸着力の低下が防止される。
したがって、車載環境のような高温環境下においても信頼性の高い吸盤10が得られる。
また、吸盤本体12は熱可塑性材料であるため、一般の射出成形機を用いて製造でき、吸盤10のコストダウンを図る上で有利となる。
【0015】
次に、製造方法について説明する。
本実施の形態にかかる吸盤10は以下に述べる2色成形により簡単にかつ確実に製造することができる。
図2(A)乃至(D)は吸盤10の製造工程の説明図を示す。
まず、熱可塑性ポリウレタンエラストマーからなる吸盤本体12を射出成形により成形する。この吸盤本体12は形状が形成されているものの、イソシアネート基と隣接分子の水酸基、ウレタン基の活性水素が反応する化学架橋はなされておらず、分子の末端にイソシアネート基を有する(あるいは、イソシアネート基を余らせた)ものである。
言い換えると、分子の末端にイソシアネート基を有し(あるいは、イソシアネート基を余らせ)化学架橋がなされていない熱可塑性ポリウレタンエラストマーからなる吸盤本体12を作る。
【0016】
次に、図2(A)に示すように、下型50上に、取り付け面1210を上方に向けて吸盤10を載置する。
なお、この下型50は80℃程度の加熱状態に維持されている。
【0017】
次に、図2(B)に示すように、下型50に上型62を合わせ、それら金型50、62の内部で取り付け面1210との間にゲル層14に対応した形状のゲル層成形用キャビティ64を作る。
なお、この場合上型62も80℃程度の加熱状態に維持されている。
次に、図2(C)に示すように、ゲル層成形用キャビティ64に射出路66から流動状態の2液硬化型ポリウレタンゲルを射出し、ゲル層14を取り付け面1210の上に成形する。
この場合、注入される2液硬化型ポリウレタンゲルの温度は、25℃から60℃程度である。
【0018】
そして、下型50と上型62とを閉じた状態で1時間程度、キャビティ54、64内を80℃程度で加熱する。
この熱処理により、以下の3つの化学反応が同時に進行する。
(1)熱可塑性ポリウレタンエラストマーはイソシアネート基と隣接分子の水酸基、ウレタン基の活性水素が反応し化学架橋を形成する。そして、この化学架橋により、熱可塑性ポリウレタンエラストマーの耐熱性が高まり、形状変形が減少する。
(2)2液硬化型ポリウレタンゲルが硬化し、硬化後に完全な化学架橋を形成する。この化学架橋により、2液硬化型ポリウレタンゲルの耐熱性、圧縮永久ひずみ等の物性が大幅に向上する。
(3)取り付け面1210において、熱可塑性ポリウレタンエラストマーが有するイソシアネート基と、2液硬化型ポリウレタンゲルが有する水酸基とが結合し、この結合により熱可塑性ポリウレタンエラストマーと2液硬化型ポリウレタンゲルとが確実に融着し、剥がれることがない吸盤本体12とゲル層14との接合がなされる。
【0019】
次に、図2(D)に示すように、上型62を開き、下型50上に、ゲル層14と吸盤本体12とが確実に接合された吸盤10を得る。
このような2色成形で得られた吸盤10は、吸盤本体12の取り付け面1210に対してゲル層14が一体的に取着されており、言い換えると、取り付け面1210に対してゲル層14が一体化されており、ゲル層14が取り付け面1210から剥がれることはない。
また、熱可塑性ポリウレタンエラストマーの化学架橋に要する熱処理と、2液硬化型ポリウレタンゲルの化学架橋に要する熱処理と、ゲル層14と吸盤本体12とを接合する工程とを、同一の工程で行なえるので、製造工程を短縮でき、生産性を高める上で有利となる。
【0020】
なお、本実施の形態では、ゲル層14の厚さは均一の値ではなく、吸着面1402の中央を構成する中央部1410と、吸着面1402の外周を構成する外周部1420とでは、外周部1420の厚さが中央部1410の厚さよりも大きい寸法で形成されている。
詳細には、中央部1410は均一の厚さT1で形成され、外周部1420も中央部1410の厚さT1よりも大きい値の均一の厚さT2で形成されている。ここで均一の厚さとは、成形上の誤差や精度誤差などから多少のばらつきを含んだほぼ均一の厚さであり、実質的に均一の厚さである。
さらに、中央部1410と外周部1420との間は、中央部1410の外周に続き外周部1420に近づくにつれその肉厚が次第に大きくなる環板状の傾斜部1430で接続されている。
中央部1410は、傾斜部1430の内周部分と同じ厚さで形成され、外周部1420は、傾斜部1430の外周部分と同じ厚さで形成されている。
【0021】
ゲル層14の厚さをこのように構成しておくと、被吸着面2が皮シボ面として形成されこまかな凹凸面あるいはざらざらな面であっても、吸着面1402は凹凸に追従して変形し、凹凸面との間に隙間を介在させずに凹凸面やざらざらな面に吸着面1402を密着でき、吸盤10を凹凸面やざらざらな面に確実に吸着させることができ、ディスプレイのような物品を、ダッシュボードパネルの皮シボ面などの被吸着面2に確実に取り付ける上で有利となることは無論のこと次の効果を奏する。
【0022】
吸着面1402を被吸着面2に密着させると、ゲル層14は、外周に至るにつれて大きく引き延ばされ、したがって、外周に至るにつれてその厚みが減少し、その結果、外周に至るにつれてゲル層14の硬度が高くなり、吸着面1402の被吸着面2に対する密着性が低下する。
一方、吸盤10を用いてディスプレイのような物品を被吸着面2に取り付ける場合、密着性を確保するためゲル層14の厚さを均一の値で大きく確保したのでは、吸盤10の吸着面1402部分の厚さが大きくなり、吸盤10の見栄えが悪く、また、ゲルを多く使うことからコストダウンを図る上でも不利がある。
これに対して、本実施の形態では、中央部1410のゲル層14の厚さよりも外周部1420のゲル層14の厚さが大きな寸法で形成されているので、吸着面1402を被吸着面2に吸着させた場合、外周部1420のゲル層14が中央部1410のゲル層14よりも大きく引き延ばされてその厚みが減少したとしても、外周部1420のゲル層14の硬度は低い値に維持され、例えば、中央部1410のゲル層14と同程度に維持される。
そのため、吸盤10の吸着面1402部分の厚さを必要最小限に抑えつつ、また、必要最低限の量のゲルを用いることで、被吸着面2に対する吸着面1402の吸着性を確保でき、したがって、吸盤10の見栄えを損なうことなく、また、コストダウンを図りつつ吸着面1402の吸着性を確保することが可能となる。
特に本実施の形態では、中央部1410と外周部1420とが外周部1420に近づくにつれその肉厚が次第に大きくなる環板状の傾斜部1430で接続されているため、傾斜部1430のゲル層14における硬度の低下も効果的に防止され、したがって、傾斜部1430のゲル層14による被吸着面2に対する密着性の低下も防止されるので、吸盤10の吸着面1402の被吸着面2に対する吸着性を確保する上でより有利となっている。
【0023】
なお、本発明の吸盤本体12に、車載機器を取り付けるため剛性を有する軸を突設するなど、車載機器を取り付けるための構成には従来公知の様々な構造が採用可能である。
また、本発明の吸盤10を、吸盤本体12の中央部1410を引き上げる引き上げ機構などを有する吸盤装置に用いるなど、本発明の吸盤10の使用方法は任意であり、従来公知の様々な構造の吸盤装置に適用される。
なお、吸盤本体12の中央部1410を引き上げる引き上げ機構を設ける場合には、吸盤本体12の中央部1410が強制的に引き上げられることから、吸盤本体12の取り付け面1210やゲル層14の吸着面1402は凹状である必要はなくなり、それらの面は平坦面であってもよい。あるいは、凹状の被吸着面2に吸盤10を吸着させる場合など、吸着面1402を、外周部1420よりも中央部1410が突出した凸状の面で形成しておくと、吸盤本体12の中央部1410が強制的に引き上げられることから、凹状の被吸着面2に対して吸盤10を吸着させることも可能となる。
また、吸盤10により支持される物品(製品あるいは商品)は、車載機器などの電子機器に限定されず、様々な物品(製品あるいは商品)に適用される。
また、吸盤10が吸着される被吸着面2は、車などの移動体の箇所に限定されず、例えば、屋内外を問わず静止した箇所であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】吸盤の断面正面図である。
【図2】吸盤の製造工程の説明図である。
【符号の説明】
【0025】
10……吸盤、12……吸盤本体、1210……取り付け面、14……ゲル層、1402……吸着面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性を有する合成樹脂材料からなる吸盤本体と、前記吸盤本体に接合されたゲル層とを含んで構成され、前記ゲル層の表面が吸着面とされた吸盤であって、
前記吸盤本体は、熱可塑性ポリウレタンエラストマーで構成され、
前記ゲル層は、2液硬化型ポリウレタンゲルで構成され、
前記吸盤本体と前記ゲル層との接合は、熱可塑性ポリウレタンエラストマーが有するイソシアネート基と、2液硬化型ポリウレタンゲルが有する水酸基とが結合することでなされている、
ことを特徴とする吸盤。
【請求項2】
前記2液硬化型ポリウレタンゲルは、オイルを主成分とする可塑剤を含まずに構成されている、
ことを特徴とする請求項1記載の吸盤。
【請求項3】
ゲル層の外周部の厚さは中央部の厚さよりも大きい寸法で形成されている、
ことを特徴とする請求項1記載の吸盤。
【請求項4】
吸盤本体は、外周部に対して中央部が窪んだ凹状の取り付け面を有し、
前記ゲル層は前記取り付け面に接合され、
前記吸着面は凹状を呈している、
ことを特徴とする請求項1記載の吸盤。
【請求項5】
熱可塑性ポリウレタンエラストマーからなる吸盤本体と、前記吸盤本体の取り付け面に接合された2液硬化型ポリウレタンゲルからなるゲル層とを含んで構成され、前記取り付け面と反対に位置するゲル層の表面が吸着面とされた吸盤の製造方法であって、
射出成形により化学架橋が形成されておらずイソシアネート基を余らせた前記熱可塑性ポリウレタンエラストマーからなる前記吸盤本体を成形し、
次に、下型の上に前記吸盤本体を、前記取り付け面を上に向けて載置し、
次に、前記下型に上型を合わせ、それら金型の内部で前記取り付け面との間に前記ゲル層に対応した形状のゲル層成形用キャビティを作り、
前記ゲル層成形用キャビティに流動状態の前記2液硬化型ポリウレタンゲルを射出し前記ゲル層を前記取り付け面上に成形し、
前記熱可塑性ポリウレタンエラストマーおよび前記2液硬化型ポリウレタンゲルを加熱してそれぞれ熱硬化させ、
その後、前記2次金型を開いて前記吸盤を得る、
ことを特徴とする吸盤の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−228918(P2008−228918A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−71289(P2007−71289)
【出願日】平成19年3月19日(2007.3.19)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】