説明

吸着ユニットにより発生させた酸素の純度を流量を制御することによって調節する方法

本発明は気体酸素を吸着によって圧縮空気から製造する方法であって:a)所定の純度閾値(VPS)以上の純度を有する気体酸素を可変製造流量(Dp)で製造する少なくとも1つの吸着ユニットを使用することと;b)a)で製造した気体酸素を回収することと;c)工程a)で製造した気体酸素の純度(Pp)を測定してこれを設定純度閾値(VPS)と比較することと;d)酸素製造流量(Dp)を工程c)の比較に応じて:i)工程c)で測定した酸素純度(Pp)がVPS>Ppである場合には酸素製造流量(Dp)を下げ、またはii)工程c)で測定した酸素純度(Pp)がVPS<Ppである場合には酸素製造流量(Dp)を上げるように調節することとを含み、X<0.5%でVSP=Pp+X,ここでXは標準偏差である,となる気体酸素純度(Pp)を得る方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
本発明は酸素リッチガスを周囲空気から製造する吸着によるガス分離方法またはユニット、特にVSAタイプの方法またはユニットを制御する方法に関する。
【0002】
吸着によるガス分離ユニット、特にVSAタイプのユニットの出口で製造される酸素リッチガスの純度を制御する可能性は特に文献US-A-5258056において既に研究されている。
【0003】
この酸素純度を制御することの困難性は、この純度を制御する多くの可能性がある場合、サイクル時間、吸着器中の圧力、流量および/またはユニットの圧力などに影響を与える作用変数の選択にある。
【0004】
これらの困難性を考慮して、一般に「O2 VSA法」と呼ばれる酸素を製造するためのVSA法は、現在のところ、圧縮出口での圧力もしくは流量および/または吸着器中の最大圧力に関する単純な制御ループによって制御されている。
【0005】
正確な制御のこの非存在は生産性の減少をしばしばもたらし、O2 VSAの製造がたとえばガラス、製紙用パルプを製造するため、水産養殖を提供するためなどのその用途にとって最低限の純度および/または酸素流量をユーザーに保証するには不十分である場合に、液体酸素(LOX)の追加供給をこのユーザーに提供することを必要とする。そして、ユーザーへの液体酸素のこの追加供給は多額な超過コストを生じさせる。
【0006】
文献US-A-5258056は大気空気から窒素を製造するPSA法を教示しており、ここでは酸素が除去されるべき不純物である。不純物、すなわち酸素の濃度はPSAシステムに入る空気の供給を制御するのに使用される。
【0007】
さらに、文献US-A-4725293は、周囲空気から窒素を製造することを可能にもする類似したPSA法を記載している。
【0008】
それにより生じる課題は、VSA法および/またはユニットの効果的な制御を行ってその生産性を向上させることによって、液体酸素の供給を最小にできることである。
【0009】
本発明の解決策は、気体酸素を圧縮空気から吸着によって製造する方法であって:ここでは、
a)所定の純度閾値(VPS)以上の純度を有する気体酸素を可変の製造流量(Dp)で少なくとも1つの吸着ユニットを用いて製造し、
b)a)で製造された気体酸素を回収して、少なくとも1つのガスパイプラインを用いてユーザーの場所または貯蔵場所に運び、
c)工程b)で製造され前記ガスパイプラインで運ばれる気体酸素の純度(Pp)を前記ユーザーの場所または貯蔵場所の前で測定して、設定純度閾値(VPS)と比較し、
d)前記ユーザーの場所または貯蔵場所の前で、酸素製造流量(Dp)を工程c)で行った比較に応じて:
i)工程c)で測定した酸素純度(Pp)がVPS>Ppである場合には酸素製造流量(Dp)を下げ、または
ii)工程c)で測定した酸素純度(Pp)がVPS<Ppである場合には酸素製造流量(Dp)を上げる
ように調節して:
X<0.5%でVSP=Pp+X,ここでXは標準偏差である,
となる気体酸素純度(Pp)を得て、
e)製造された酸素を製造流量(Dp)でユーザーの場所に送り、
f)ユーザー流量(Du)がDu>Dpである場合、液体酸素(LOX)の供給源からくる酸素を前記ガスパイプラインに追加し、液体酸素を前記ガスパイプラインへの導入前に気化させ、それによりVPS=Pu+Xとなる所定のユーザー酸素純度(Pu)を得て、
ここで:
−酸素純度(Pu)はパイプライン上の液体酸素(LOX)の注入場所の下流において測定され、
−ユーザー流量(Du)は前記ユーザーの場所で消費される酸素の流量である。
【0010】
場合に応じて、本発明による方法は以下の特徴のうちの1つ以上を有してもよい:
−工程d)において、酸素製造流量をX<0.3%、好ましくはX<0.2%、より好ましくはX<0.1%でVPS=Pp+Xとなるように調節する;
−工程b)において、ガスパイプラインを用いてユーザーの場所に運ぶ前に、回収した気体酸素を圧縮する;
−工程a)において、気体酸素をVSAまたはPSAタイプの吸着ユニットによって製造する;
−純度閾値(VPS)は少なくとも70体積%、好ましくは85ないし95%、有利には90ないし93%である;
−工程a)において、酸素よりも優先的に窒素を吸着する少なくとも1種の吸着剤での窒素の吸着による空気の分離によって酸素を製造し、前記吸着剤は好ましくはゼオライトである;
−工程d)において、製造された酸素を運ぶガスパイプライン上に設けられたバイパスラインに位置した再循環バルブを開くことによって酸素製造流量を調節し、前記バイパスラインは前記ガスパイプライン上の吸着ユニットの下流に位置した少なくとも1つのガス圧縮器をバイパスすることを可能にし、さらに、前記少なくとも1つの圧縮器の上流に、前記圧縮器の下流で集めた酸素をリサイクルするのに役立つ;
−製造流量(Dp)は100ないし6000Nm3/hである;
−ユーザー流量(Du)は100ないし10000Nm3/hである;
−酸素の純度(Pp)は88ないし95%である;
−ユーザー酸素純度(Pu)は88ないし100%である。
【0011】
本発明の解決策は、それゆえに、純度を純度閾値(VPS)に制御するためのループをO2 VSAユニットに設置することに基づいており、このループは、「LOX」と呼ばれる液体酸素の必要量を下げるように、製造される酸素の流量(Dp)をリアルタイムで調節することを目的としている。
【0012】
詳細には、現在使用している運転モードに応じて、VSAユニットの流量制限を、VSAユニットにより製造される酸素富化ガスのO2純度(Pp)が常に顧客が設定した設定閾値(VPS)より高くなるように、たとえば90体積%の純度になるように設定する。
【0013】
しかしながら、これは望ましい純度閾値(VPS)よりも遥かに高い、場合によってはたとえば92%に達しうるO2純度値(Pp)をもたらす。
【0014】
この現象は、図1から分かるように、特に気候変数、たとえば日中/夜間および夏季/冬季の温度差によるものである。
【0015】
本発明の制御ループの原理は、VPSに等しいまたはVPSからほんの僅か(標準偏差0.1%)だけ異なる製造される酸素の純度(Pp)を確実にするようにこの流量(Dp)をリアルタイムで調節し、それによりLOXの使用を避けるまたは最小限にすることにある。
【0016】
それゆえにこのタイプの制御は、VSAの生産性を最適にすることによってLOXを節約し、O2の純度を「下げない」ようにVSAの流量を流量の減少に合わせることにより「純度サーチ」タイプの手順の数の削減を達成することを可能にし、それにより酸素製造流量(Dp)の制御を変更するユーザーの関与の削減をもたらす。
【0017】
図2は本発明による方法の動作原理を図式化したものであり、この方法は、望ましい純度閾値(VPS)を設定する少なくとも90体積%に純度が永続的に保持されなければならない酸素を製造するO2 VSAタイプの吸着ユニット1に適用される。
【0018】
製造された酸素はO2 VSA(領域1)の出口で回収され、少なくとも1つの圧縮器(領域2)によりパイプラインを通して容器(図示しない)の方にクライアントの場所(領域4)まで運ばれる。
【0019】
酸素流量を制御するために、再循環バルブQrが流量制御ループまたは「ループFIC1」にしたがって動かされる。後者の機能は、ユニットの製造流量(Dp)を、クライアントの需要(Du)とは無関係に、オペレータが設定した値に制限することである。
【0020】
それゆえに、本発明の制御原理はループFIC1の参照を酸素純度測定値(Pp)に応じて変更することにある。
【0021】
言い換えると、制御ループの原理は、製造流量制限(Dp)をリアルタイムで変更して、VSAユニットの能力限界にある純度を確実にすることにある。この変更は、図3に示す、いわゆる「予測」または「スミス予測器」制御アルゴリズムを用いる機能図によって達成される。
【0022】
このタイプの制御の利点は、それがモデル化された純度(Ppm)を与えるモデルによってO2純度(Pp)を「予測」し、それにより予測による制御を可能にすることにある。
【0023】
この制御システムを設置することは、図4の曲線で示したように、日中/夜間のサイクルとは無関係に0.5%未満、典型的には約0.1%の標準偏差でVPS付近の純度分布を得ることを可能にする。
【0024】
しかしながら、図2に示したように、ユーザーの流量(Du)が製造流量(Dp)よりも大きくなる場合、この酸素需要は液体酸素(LOX)の供給源からくるバックアップ酸素を導入することによって補償され、この供給源は気体酸素をVSAからユーザーの場所へと運ぶパイプラインに接続されている。LOXをパイプラインへのその注入(領域3)前に予め気化させる。たとえば、使用酸素純度値(Pu)はVPS=Pu+Xとなるように得られ、ここでPuはパイプラインへのLOXの導入場所の下流で測定したO2純度である。
【0025】
バックアップLOXのこの注入は、ユーザーの場所からの酸素需要のピークに応ずることを可能にするので特に有利である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体酸素を圧縮空気から吸着によって製造する方法であって:
a)所定の純度閾値(VPS)以上の純度を有する気体酸素を可変の製造流量(Dp)で少なくとも1つの吸着ユニットを用いて製造し、
b)a)で製造された気体酸素を回収して、少なくとも1つのガスパイプラインを用いてユーザーの場所または貯蔵場所に運び、
c)工程a)で製造され前記ガスパイプラインで運ばれる気体酸素の純度(Pp)を前記ユーザーの場所または貯蔵場所の前で測定して、設定純度閾値(VPS)と比較し、
d)前記ユーザーの場所または貯蔵場所の前で、酸素製造流量(Dp)を工程c)で行った比較に応じて:
i)工程c)で測定した酸素純度(Pp)がVPS>Ppである場合には酸素製造流量(Dp)を下げ、または
ii)工程c)で測定した酸素純度(Pp)がVPS<Ppである場合には酸素製造流量(Dp)を上げる
ように調節して:
X<0.5%でVSP=Pp+X,ここでXは標準偏差である,
となる気体酸素純度(Pp)を得て、
工程d)の後に以下の工程:
e)製造された酸素を製造流量(Dp)でユーザーの場所に送る工程と、
f)ユーザー流量(Du)がDu>Dpである場合、液体酸素(LOX)の供給源からくる酸素を前記ガスパイプラインに追加し、液体酸素を前記ガスパイプラインへの導入前に気化させ、それによりVPS=Pu+Xとなる所定のユーザー酸素純度(Pu)を得る工程と
をさらに含み、ここで:
−酸素純度(Pu)は前記パイプライン上の液体酸素(LOX)の注入場所の下流において測定され、
−前記ユーザー流量(Du)は前記ユーザーの場所で消費される酸素の流量である
方法。
【請求項2】
工程d)において、前記酸素製造流量をX<0.3%、好ましくはX<0.2%でVPS=Pp+Xとなるように調節することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程d)において、前記酸素製造流量をX<0.1%でVPS=Pp+Xとなるように調節することを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
工程b)において、前記ガスパイプラインを用いて前記ユーザーの場所に運ぶ前に、回収した気体酸素を圧縮することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
工程a)において、気体酸素をVSAまたはPSAタイプの吸着ユニットによって製造することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記純度閾値(VPS)が少なくとも70体積%、好ましくは85ないし95%、有利には90%ないし93%であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
工程a)において、酸素よりも優先的に窒素を吸着する少なくとも1種の吸着剤での窒素の吸着による空気の分離によって酸素を製造し、前記吸着剤が好ましくはゼオライトであることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
工程d)において、製造された酸素を運ぶ前記ガスパイプライン上に設けられたバイパスラインに位置した再循環バルブを開くことによって酸素製造流量を調節し、前記バイパスラインは前記ガスパイプライン上の前記吸着ユニットの下流に位置した少なくとも1つのガス圧縮器をバイパスすることを可能にし、さらに、前記少なくとも1つの圧縮器の上流に、前記圧縮器の下流で集めた酸素をリサイクルするのに役立つことを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
−前記製造流量(Dp)が100ないし6000Nm3/hであり;
−前記ユーザー流量(Du)が100ないし10000Nm3/hであり;
−酸素の純度(Pp)が88ないし95%であり;および
−前記ユーザー酸素純度(Pu)が88ないし100%である
ことを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−530038(P2012−530038A)
【公表日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−515541(P2012−515541)
【出願日】平成22年6月7日(2010.6.7)
【国際出願番号】PCT/FR2010/051116
【国際公開番号】WO2010/146282
【国際公開日】平成22年12月23日(2010.12.23)
【出願人】(591036572)レール・リキード−ソシエテ・アノニム・プール・レテュード・エ・レクスプロワタシオン・デ・プロセデ・ジョルジュ・クロード (438)
【Fターム(参考)】