説明

吸着剤およびPCM凝集体を含む複合吸着床を用いるPSA法

本発明は、複数の成分を含有するガス状混合物の吸着分離および/または精製のためのPSA法に関し、これは吸着剤粒子上でガス状混合物の少なくとも1種の成分を吸着するための吸着剤粒子の少なくとも1つの床をそれぞれ含む1つ以上の吸着体を用いることを含み、各吸着体は、吸着工程および脱着工程を伴う吸着/脱着サイクルを受けるところ、各吸着体において含まれる前記少なくとも1つの吸着剤床は、少なくとも1種の相変化物質(PCM)をさらに含み、前記PCM粒子は、複数のPCMマイクロカプセルの凝集体の形態にあり、前記凝集体は、吸着剤粒子と混合されて、上記吸着剤粒子と上記マイクロカプセル封入されたPCMを含む複合床を形成する。PCM凝集体の密度は、複合床において混合される少なくとも1種の吸着剤の密度とは異なる。複合床におけるPCM凝集体の密度と吸着剤粒子の密度の比(R密度)は:R密度≦5.5−(2.R直径)であり、式中、R密度はPCM凝集体の密度と吸着剤粒子の密度との比であり、R直径は、PCM凝集体の等価直径と、吸着剤粒子の等価直径の比であり、R密度≒1およびR直径≒1である。

【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
本発明は、各サイクル中に熱サイクル法にさらされる熱的効果を低減させるための、相変化物質(PCM)を含有する凝集体を用いる、短いサイクル時間、典型的には30分未満のサイクル時間を有する熱サイクル法、特にPSA(圧力スイング吸着)法に関する。
【0002】
「熱サイクル法」という表現は、ある工程が発熱性である、すなわち熱の放出を伴う一方、ある他の工程は吸熱性の、すなわち熱の消費を伴う、いずれものサイクル法である。
【0003】
本発明による熱サイクル法の典型的な例は、
圧力スイング吸着、例えばPSA(圧力スイング吸着)法、VSA(真空スイング吸着)法、VPSA(減圧スイング吸着)法、およびMPSA(混合圧力スイング吸着)法によるガス分離のための方法、
上記した圧力スイング吸着サイクルに加えて化学変換を用い、化学反応の平衡をシフトさせることができるいずれもの方法、
を含む。
【0004】
圧力スイング吸着を経る分離のための方法は、物理吸着の現象に依存し、1種以上の吸着床、例えばゼオライト、活性炭、活性アルミナ、シリカゲル、モレキュラーシーブ、または同様の床を通じて処理されるガスの圧力サイクリングによるガスの分離または精製を可能にする。
【0005】
本発明の関連で、「PSA法」という語は、他に述べない限り、吸着圧力として知られる高圧と、再生圧力として知られる低圧との間の圧力の周期変動を用いて、圧力スイング吸着を経るガス分離のためのいずれもの方法を意味するものと理解される。その結果として、一般名PSA法を、以下のサイクル法:
吸着を「高圧」と呼ばれる大気圧において、すなわち、1バール絶対圧〜1.6バール絶対圧、好ましくは1.1〜1.5バール絶対圧において実質的に行い、「低圧」と呼ばれる脱着圧力は大気圧よりも低く、典型的に30〜800ミリバール絶対圧、好ましくは100〜600ミリバール絶対圧であるVSA法;
吸着を、大気圧よりも実質的に高い圧力において、一般的に1.6〜8バール絶対圧、好ましくは2〜6バール絶対圧において行い、低圧は、大気圧以下、典型的に30〜800ミリバール絶対圧、好ましくは100〜600ミリバール絶対圧であるVPSAまたはMPSA法、および
吸着を、大気圧よりも著しく高い圧力、典型的には1.6〜50バール絶対圧、好ましくは2〜35バール絶対圧において行い、低圧が、大気圧よりも高いか、実質的に等しく、従って、1〜9バール絶対圧、好ましくは1.2〜2.5バール絶対圧であるPSA法
を示すために同じように用いる。
【0006】
一般に1分未満の非常に速いサイクルを有するPSA法を示すために、これ以降「RPSA法」と記載する。
【0007】
一般的に、PSA法は、ガス分子を含有するガス混合物から、所定の吸着剤の、または必要ならば、これら種々のガス分子のための複数の吸着剤の親和性における差異を利用することにより、1種以上のガス分子を分離することを可能とする。
【0008】
ガス分子のための吸着剤の親和性は、構造と吸着剤の組成に依存し、また、分子の割合、特にその大きさ、その電子構造、およびその多重極モーメントに依存する。
【0009】
吸着剤は、例えば、ゼオライト、活性炭、活性アルミナ、シリカゲル、カーボンベースの若しくはカーボンベースでない分子シーブ、有機金属構造体、1種以上のアルカリ若しくはアルカリ土類金属の酸化物若しくは水酸化物、または1種以上のガス分子と可逆的に反応することができる物質、例えばアミン、物理的溶媒、金属錯化剤、金属酸化物若しくは水酸化物を含む多孔性構造体であり得る。
【0010】
吸着は発熱現象であり、各分子吸着剤のペアは、一般に、等比体積吸着エンタルピー(isosteric adsorption enthalpy)、または反応エンタルピーにより特徴付けられる。対称的に、脱着は吸熱反応である。
【0011】
さらに、PSA法は、吸着と脱着のいくつかの連続的な工程を含むサイクル法である。
【0012】
その結果として、PSAのサイクルのある工程は発熱性であり、特に吸着剤に吸着されるガス分子の吸着の工程である一方、他の工程は吸熱性であり、特に吸着剤に吸着された分子の再生または脱着の工程である。
【0013】
吸着エンタルピーまたは反応エンタルピーに起因する熱的効果は、一般的に、吸着容量を制限する吸着高温波、および脱着を制限する脱着低温波の伝播をもたらす。
【0014】
温度の変動のこの局所的なサイクル現象は、文献 EP-A-1 188 470 に記載されているように、方法の分離性能、例えば生産力、分離効率、および具体的な分離エネルギーに対する大きな影響を有する。
【0015】
つまり、吸着エンタルピーに起因する熱変動が全くなくなれば、ある種の一般に知られる工業的O2PSAは50%近く改善されるだろうし、酸素収率も10%改善されるであろうことがわかる。同様に、他のタイプのPSAについて、熱変動の減衰は、分離性能におけるかなりの改善をもたらす。
【0016】
このマイナスとなる現象を特定したため、いくつかの解決法が、これを低下させるか取り除く試みのために常に記載されている。
【0017】
つまり、粒子の生成中の不活性バインダの添加、不活性なコア上での吸着媒体の堆積、吸着剤と等しく、しかし不活性な粒子の添加により吸着媒体の熱容量を増やすことを提案する。例えば、O2PSA法の場合において、以下のこと、
単にその孔の大きさにより区別されるゼオライト5Aおよび3Aから成る複合床上で空気中に含まれる窒素を吸着し、ゼオライト3Aのものはあまりにもその大きさが小さいために、ゼオライト5Aのもののみが、窒素の吸着を可能にする
という試験を既に行った。
【0018】
さらに、外部の加熱および/または冷却手段の使用は、脱着のまたは吸着の熱的効果を平衡化させるために記載することができ、例えば熱交換器の使用である。
【0019】
吸着相および再生相の熱カップリングを提案し、吸着剤をプレート熱交換器の連続する通路に配置した後、流体の循環を、通路が吸着相および脱着相のいずれかにあるように準備する。
【0020】
大きな熱変動を少なくすることを可能にする他の解決法は、吸着床に、文献 US-A-4,971,605 に記載されている相変化物質(PCM)を加えることから成る。このようにして、吸着および脱着の熱は、またはこの熱の幾分かは、PCMの相変化の温度において、または相変化の温度範囲において、PCMにより潜熱の形態で吸着される。その後、定温に近いモードにおいて、PSAユニットを操作することができる。
【0021】
実際に、相変化物質(PCM)は、その相変化温度において、または相変化温度の上下間のその相変化温度を超えて、ヒートシンクとして作用する。
【0022】
PCMは有機化合物、例えばパラフィン、脂肪酸、窒素含有化合物、酸素含有化合物(アルコールまたは酸)、フェニルおよびシリコーン、または無機化合物、例えば水和塩および金属合金であり得る。PCMという語は、純粋な状態、またはこれらの化合物の1種を含有するいずれもの混合物(例えば、共融混合物)であるこれらの化合物のうちの1種を呼ぶために用いられる。
【0023】
潜熱が高い場合には、PCMの熱吸着容量はさらにより大きい。一般的に、PCMを、その固体−液体相変化を目的として用いる。
【0024】
PCMを取り扱うことを可能にするためには、これらが固体状態であろうと液体状態であろうと、これらを、好ましくはポリマー(メラミンホルムアルデヒド、アクリル系等)に基づくミクロンサイズの固体シェル中にマイクロカプセル封入することができる。
【0025】
特にパラフィンはマイクロカプセル封入が比較的容易であるため、これらは水和塩に比べると一般に好まれるPCMである。これは、例え、パラフィンが、水和塩よりも一般的により低い潜熱を有していてもである。
【0026】
さらに、パラフィンは他の利点、例えば相変化の可逆性、化学安定性、確定した相変化温度または確定した上下の相変化温度(つまり、ヒステリシス効果がない)、低コスト、制限された毒性、並びに炭素原子の数および分子構造に依存する相変化温度の幅広い選択を有する。
【0027】
マイクロカプセル封入されたパラフィンPCMは粉末の形態にあり、この粉末を構成する各マイクロカプセルは、直径50nm〜100μm、好ましくは直径0.2〜50μmである。パラフィンが、マイクロカプセル内で固体状態であるか液体状態であるかによって、各マイクロカプセルは、0.1付近〜0.2W/(m.K)の熱伝導率を有する。
【0028】
粉末の形態で得られるマイクロカプセル封入されたPCMは、そのままでは吸着床中に導入することができない。というのは、これらは、吸着体中で循環するガス流に沿って運ばれ得るためである。
【0029】
文献 EP-A-1 565 539 は、吸着剤から殆ど距離を置かない周囲にこれらマイクロカプセルを置く種々の方法を記載している。すなわち、材料の1種はそのそばにあり、他は表面または内側にあり、従って、これらは、吸着および脱着にそれぞれ関連する熱の流れを貯蔵する/引き出すというこれらの役割を果たし得る。
【0030】
しかしながら、この文献に記載されている解決法は、工業的に適用するのが不可能であるか、困難を伴ってのみ可能である。
【0031】
その際に直面する1つの問題は、吸着によるガスの分離のための工業的PSA法における、特に短い、すなわち30分未満か30分のサイクル時間、を有するPSA法におけるマイクロカプセル封入されたPCMを用いることができるかである。
【0032】
言い換えれば、本発明は、ガスの循環生成のためのPSA−タイプのユニットにおける、市販されている吸着剤粒子およびPCMマイクロカプセルを効果的に用いるための、工業的な解決法を提供することを目的とする。
【0033】
すなわち、本発明は、いくつかの成分を含有するガス混合物を、吸着剤粒子上に上記ガス混合物の成分の少なくとも1種を吸着する吸着剤粒子の少なくとも1つの床をそれぞれ含む1種以上の吸着剤を用いて、吸着により分離および/または精製するためのPSA方法であって、各吸着体が、吸着工程および脱着工程を含む吸着/脱着サイクルにさらされ、各吸着体に含まれる上記少なくとも1つの吸着剤床は、さらに、少なくとも1種の相変化物質(PCM)の粒子を含み、上記PCM粒子は、いくつかのPCMマイクロカプセルの凝集体の形態にあり、上記凝集体は吸着剤粒子と混合されて、上記吸着剤粒子と上記マイクロカプセル封入されたPCM凝集体を含む複合床を形成するところ、
PCM凝集体の密度は、上記少なくとも1種の吸着剤の密度と異なり、これらは複合床において混合されており、および
複合床におけるPCM凝集体の密度と吸着剤粒子の密度の比(R密度)は、
R密度≦5.5−(2.R直径)
(式中、
R密度は、PCM凝集体の密度と吸着剤粒子の密度の比であり、
R直径は、PCM凝集体の等価直径(equivalent diameter)と吸着剤粒子の等価直径の比であり、
上記R密度およびR直径比の分子および分母は、
1≦R密度≦3.5および1.0≦R直径≦2.25
を有するように選択される)
であることを特徴とする。
【0034】
本発明との関連で、「凝集体」という語は、粉末凝集の標準的な既知の技術のうちの1つにより製造することができる0.5mmよりも大きい寸法を有し、種々の形状、特にビーズ、押出物、ペレット、破砕により得られる破砕された材料、およびより大きな寸法の篩い分けブロック、または前もって圧縮したシートをカットすることにより得られる板状体、または他の形状を取り得る固体を意味するものと理解される。
【0035】
さらに「密度」、「直径」、「R密度」、および「R直径」との語は、記載において続いて定義する。
【0036】
ケースに応じて、本発明の方法は、1つ以上の以下の特性:
R密度が、R密度≦5−(2.R直径)であり、上記R密度およびR直径比の分子および分母は、1≦R密度≦3.0および1.0≦R直径≦2.0を有するように選択され、
PCM凝集体は、400〜1200kg/m3、好ましくは500〜900kg/m3、好ましくは500〜600kg/cm3の密度を有し、
PCM凝集体は、0.5〜3mmの直径、好ましくは1〜1.5mmまたは2〜3mmの直径を有し、
吸着体中に導入されるPCM凝集体の量は、後に記載する通り、上記吸収体の全体積を亘って一様ではなく、
PCM凝集体中に含まれるPCMは、パラフィン、脂肪酸、窒素含有化合物、酸素含有化合物(アルコールまたは酸)、フェニルおよび水和塩、またはこれらの化合物の混合物から選択され、
PCM凝集体は、PCM凝集体の30体積%未満であるバインダを含み、好ましくはこのバインダは、クレー、水硬結合剤(セメント)、ポリマー、接着剤、樹脂から選択され、これに炭素または金属繊維が任意に加えられており、
PCM凝集体は、0.3W/(m.K)よりも高い熱伝導率を有し、
PCM凝集体は、0.5W/(m.K)よりも高い、好ましくは0.8W/(m.K)よりも高い熱伝導率を有し、
PCM凝集体は、金属被覆したマイクロカプセル封入されたPCMを含むか、金属被覆したマイクロカプセル封入されたPCMから形成され、
表面の金属被覆は連続的であるか、非連続的であり、および/またはいくつかのPCMマイクロカプセルにおいて行なわれ、
堆積する熱伝導物質は、Cu、Ag、Fe、Ni、Pd、Al、Au、またはこれらの金属の少なくとも1種を含む合金から選択される金属であり、
方法は、H2PSA、O2PSA、N2PSA、およびCO2PSA法、および/またはH2、O2、N2、CO、CO2またはこれらの混合物が豊富なガス、好ましくは少なくとも50体積%のH2、O2、N2、CO、CO2またはこれらの混合物を生成し、
いくつかの連続する吸着床を用い、この少なくとも1つは、吸着剤粒子と混合されたPCM凝集体から形成されている複合床であり、
処理されるガスは、吸着体を含有する複合床中を半径方向にまたは軸方向に流れ、および
各吸着/脱着サイクルは、30分未満のサイクル時間を有する
の1つ以上を含み得る。
【0037】
本発明は、添付した図面に関連して示す以下の記載を基により理解され得る。
【0038】
本発明の関連で、従ってPCM凝集体を、吸着剤粒子と上記凝集体の混合物が、スペース内に、PSAユニットの操作中の時間に亘って均一に留まるような形状、直径および密度を有するように生成する。
【0039】
異なる性質を有する粒子の混合物は、媒体が力場、特に振動または衝撃にさらされた際に、複雑な様式で発達し得る準安定状態となることは知られている。
【0040】
PSAユニットの吸着剤床はガス流にさらされ、この激しさと方向は、ある工程から次の工程へと変化する。これらは、また、バルブの開閉を引き起こす遷移相にもさらされる。
【0041】
一般的に、吸着ユニットに入るまたは出ていく少なくとも1種の流れは、圧縮ユニット(コンプレッサまたは真空ポンプ)からもたらされまたは供給し、これは流体に対して可変の振動数の振動および強度を伝える。これらの現象は、粒子の全運動または局所的な運動を生じ、これは、吸着体の形状の寸法決定(dimensioning)の際に考慮に入れる必要がある。
【0042】
例えば、密に詰めるために補うための吸着剤ガードの使用、粒子の摩滅を避けるための最小の区域の決定、異なる性質を有する吸着剤を混合することを避けるためのワイヤーメッシュの使用、または下部に位置する床の上に存在するセラミックビーズの層の使用であって、ガスの循環による動きを防止することを述べることができる。
【0043】
異なる性質を有する粒子の混合物の経時的な変化は、多数のパラメータ、すなわち、密度および形状または粒子の大きさのみならず、特に表面仕上げ、弾性、介在性ガスの存在、湿気、媒体に適用される振幅および振動の振動数等に依存する。
【0044】
従って、異なる性質を有する粒子から成る混合物における変化を予測することは、多くの場合、非常に困難であるか、予測できない。
【0045】
これまでのところ吸着剤を用いるユニットの寸法決定の際に払う注意は、一般的に、実証的試験の結果であることになる。
【0046】
つまり、支持ビーズの2つの連続層の直径の比が、最大限でも2の因数、例えば3/4’’−3/8’’(すなわち、おおよそ18−9mm)、または1/2’’−1/4’’−1/8’’(すなわち、おおよそ12−6−3mm)である。これらの層の位置決めは、最も大きな粒子サイズから最も小さなものへと変化し得るし、逆もまた同様である。
【0047】
例えば、湿気を防止するために用いられる1.5mmの直径を有する吸着剤を、3mmの支持ビーズ上に直接配置することができる。このことから、吸着乾燥ユニットの典型的な操作条件下では、各直径について2の因数を順守することにより1450kg/m3付近の密度を有する支持ビーズの床の最上層に、約650〜800kg/m3の密度を有する吸着剤を配置することが可能であるということが推論できる。
【0048】
しかしながら、逆の安定性については、従来技術においては何も情報を得ることができず、すなわち、吸着剤の層よりも高い密度を有する支持ビーズであって、吸着剤の層の上に位置するもの、または異なる性質を有する粒子の集団の混合物の考えられる経時的な変化についてである。
【0049】
さらに、吸着剤の製造者は、その製造をふるいにかけて、工業的に用いることができる製品を提供する。サンプルから、粒子の単位サイズを測定すること、および目的のグループ、すなわち、集団の少なくとも5%に含まれている最も小さい粒子と最も大きい粒子を取り込むことによることにより、平均直径と比較した直径の差異は、一般に10%付近であることを実現することができる。これらの粒子は球状であり、同じ組成を有するため、これらは勿論のこと同じ密度を有する。
【0050】
この情報に基づいて、混合物として用いることが所望される吸着剤粒子のものとほぼ等しい密度を有し、および非常に近接した大きさ、すなわち直径で±10%の極大差を有するPCM凝集体を製造する必要があるということは、非常に困難であることが本発明者等に明らかになった。というのは、各製造物は所定のPSAに特有であるばかりでなく、同一のPSAについて、吸着剤の各層に対しても特有である必要があるため、非常に制限的で、特に工業的にあまりにも高価であるためであった。これは、すなわち、ガスが連続的に流通するいくつかの重ねあわされた床または並列させた層を用いる、一般的に複数床プロセスであるためである。
【0051】
従って本発明の発明者等は、この問題に関して得られる情報がないことを考慮に入れて、種々のPSAタイプの方法において用いられる吸着剤と混合するため、すなわち、初期の混合物が長期に亘っておよびスペース内で均質であることを保つために、PCM凝集体が有さなければならない性質を決定するために必要な情報を得るために、特に異なる密度を有する種々の吸着剤および粒子を用いて一連の試験に着手した。
【0052】
アプローチは、まず、工業プロセスの作用の代表的なものであるために、吸着剤とPCM凝集体の混合物に適用するための振動(振動数、振幅)の形態を決定することからなる。
【0053】
系における変化はこれらのパラメータに依存するため、この点は重要である。同一の初期混合物について、振動の種類に依存して、得ることができることが認められる:
平衡が長期に亘り安定であり、すなわち、不安定な混合物が、その初期段階において残存する領域(振動数/振幅)、および
最も大きい粒子が表面に上がる領域。この効果は、「ブラジルナッツ効果」として知られる、
最も大きい粒子が床に沈む、この効果は、「逆ブラジルナッツ効果」と呼ばれる。
【0054】
上記した全ての実験を、フリッチェ(Fritsch)ラボラトリー篩振盪機、および120mmの長さ、80mmの幅、および80mmの高さを有する透明な平行6面体のコンテナを用いて行った。
【0055】
工業的ユニットにおいてなされる代表的な調節による篩振盪機の調節の検討は、
粒子の床の自由表面、寸法決定条件下での吸着剤の外観、すなわち、磨耗を生じることなく許容されるガスの最大循環速度におけるものについての視覚的な再現すること、および
この調節をもってして、工業的に直接重ね合わされた異なる性質の吸着剤床(すなわち、分離メッシュを用いない)は事実上安定であること、および逆に言うと、経験から、分離メッシュを必要とする系は、2つの層を分離メッシュを用いることなくぴったりと重ね合わせた際に、振動の効果に基づく粒子の混合をもたらすことを検証すること
から成った。
【0056】
吸着体の最小の直径についての研究、従って、最大限許容される比率のものは、投資によるその影響を考慮に入れつつ、吸着による精製のためのユニットの寸法決定において重要なポイントの中の1つである。吸着床の重量および床の中でのガスの循環により引き起こされる圧力損失を含む実験式の設定を、本発明者等により、種々の吸着剤および種々のガス循環条件を用いた試験から予め行なった。
【0057】
これらの試験の間、粒子が移動し、振り混ざってダスト(磨耗)を生じ始める最大速度に近づくことは、床の水平な自由表面におけるある数の粒子の振動により示され、ここで粒子のいかなる移動もない。上限の速度は、表面におけるほぼ5%の粒子がこれらの振動に供される場合であることが一般的に認められる。壁においてある程度非常に限定され局在化した場所におけるものは別として、より下層の粒子は動かないままである。
【0058】
篩振盪機の操作パラメータを決定し、および上記した通りこれらを実証するために、まず第一に吸着剤を使用した後、種々のガス精製または製造プロセスに対応する種々の一組の床を用いた。
【0059】
特に、まず最初は合成ガスの精製、または空気分離低温プロセスについて、種々におゼオライトを用いた後に、分離メッシュを用いることのない、ゼオライトを上に有する活性アルミナタイプの吸着剤床の重ね合わせを用いた。
【0060】
用いたゼオライトは、Ceca, UOP and Zeochem により販売されている13Xゼオライトであり、1.5〜3.3mmの直径を有するものであり、活性アルミナは、Engelhard, Porocel, UOP, Axens and Alcan のものであり、おおよそ1.8〜6mmの粒径に相当する。
【0061】
行なった一連の試験は、永続的な振動条件、50Hzの振動数、およびおおよそ0.15〜0.5mmの振幅を結果として導き、これは取り入れられた上部に配置された吸着剤に依存する。
【0062】
2〜3mmの直径、および約600kg/m3の密度を有する粒子について、用いた振幅は約0.3mmであった。これは、より小さな粒子については減少し、より大きな粒子については増加し、50Hzの永続的な振動数については、その基準は、上部の層について上記した状態(粒子の移動を伴わない局部的な振動)を得ることだった。
【0063】
以下の試験は、粒子が、このように定義された振動に供された際にも均一なままである混合物を構成する異なる粒子の性質を発見することにある。このタイプの研究を実現することができる、振動数と振幅の推測的な他の組み合わせがあることが観察され得る。用いた様式は、良好な調節をなすことを可能にするために用いられる装置についての1つの可能性に相当する。
【0064】
上記した吸着によるガスの精製または分離のための方法において直接的に用いられる吸着剤に加えて、1.5〜10mmの範囲の粒径を有する調整されたガラスビーズ、および数ミリメートルの直径を有する金属ビーズも用いた。
【0065】
試験の殆どは、異なる性質を有する2つのタイプの粒子AおよびBを用いる研究的な系から成る。その後に、2つの支配的なパラメータ、すなわち等価な直径および密度のみを維持したが、とは言え特に表面仕上げに依存する挙動における小さな差異を観測した。
【0066】
従って、本発明に関連して、「直径」という語は、粒子の等価直径を指す。粒子の「等価直径」という語は、同じ比表面積を有する球状のものであり、比表面積は、問題となる粒子の体積に関連する表面積である。
【0067】
従って、直径dおよび長さlを有するロッドについて、等価直径Deは、
De=6.1.d/(2.d+4.1)
として得られる。
【0068】
d=1のようなペレットについては、等価直径は粒子の直径である。
【0069】
一般的に、シリンダタイプの用いた粒子の形状の殆どについて、等価直径は、シリンダの直径の0.75〜1.3倍である。
【0070】
球状のビーズについては、等価直径はそのままビーズの直径である。
【0071】
本質的に球状であるが、その直径が、工業製造プロセスにつきもののばらつきを有しているビーズの集合体について、従来的な定義を用いる:ビーズの集合体の等価直径は、床の同じ体積については、同じ全表面積を与え得る同一のビーズの直径である。特に、直径による分布が測定されている限りは(すなわち、例えば篩い分けにより、または画像処理デバイスから直径Diの種々の割合Xiを測定し、好ましくはiは、十分な正確さを得るために5よりも大きいか5である)、等価直径を式:
1/De=Σi(Xi/Di)
から得る。
【0072】
砕いた吸着剤については、特に、ある種の活性炭を見出すことができ、粒子が球体へと同化し、その直径分布は篩い分けにより測定された後、上記の計算式を適用した形状を用いた。
【0073】
さらに、本発明に関連して、「密度」という語は、粒子の床の密度を意味するものと理解される。充填法により、密度は数%だけ変化し得る。一般的に、本発明による試験において、下層の密度は緻密な充填に対応する。というのは、透明コンテナを、水平な自由表面を形成するために第1のタイプの粒子を充填した後に振動させ、一方で、粒子の第2の層の堆積を漏斗を通して行い、この端部は、適所に既にある層の高さの真上であったためである。このようにして、この第2の層の初期充填は「ゆるやかな」タイプであるが、稼動中の篩振盪機により起こる振動が、緻密な充填をもたらす。
【0074】
工業的なユニットの充填中、「シャワー」を生じるように、バッフル上に十分な高さから吸着剤粒子を落下させることにより得られる、緻密なタイプの充填を一般的に行なう。
【0075】
これらの理由のため、また詰まった密度(緻密な充填)の獲得として、得ることができる最大密度であり、嵩密度よりも特により再現可能であり、詰めた密度については、以下に示す表および式において言及し、本記載においては「密度」という語により簡単に示し得るため、よりよく定義される。
【0076】
各粒子が、理論上、その最も良い位置を見出すことができるように、粒子をメスシリンダにゆっくりと充填することによりこの密度は得られる。実際は、シリンダの上部においては、目の粗い篩いを用いることにより、粒子のシャワーを行なう。種々の技法を、同様の結果を得るために用いることができる。全ての測定および試験を、実際に、5%未満または5%の吸着された含水量を伴う、予め再生した吸着剤上で行った。
【0077】
より特には、試験を上記した通り、30〜50mmの高さに亘って粒子Aの第1の層を堆積した後、ほぼ同じ高さ、すなわち約30〜50mmに渡って粒子Bの第2の層を堆積して、コンテナを殆ど充填する。
【0078】
最初に、試験を、粒子の層を体系的に逆さにすることにより行なった。
【0079】
観察は、壁における、工業用吸着体に典型的でないコーナー効果を避けるためにコンテナの中央部分における浸入に関して、および表面または底における他の種のビーズの外観またはそれ以外に関した。
【0080】
コンテナを振動させながら、吸着剤の壁におけるおよび上面における観察を行なうことができ、その底部での観察を、コンテナを注意深く持ち上げることにより行なう。周縁現象、すなわち壁における層の相互貫入を、試験中、「無視可能」、「容認可能」、または「容認不可」として、貫入が観察されないかまたはわずかな貫入が観察されるか否かにより認定し、他の種の粒子の最大2または3層に相当するもの、またはコンテナの底部に到達するより大きな旋回貫入(evolutive penetration)に限られる。
【0081】
壁における貫入現象が数十デシメータ、またはなお一般的に数メータの直径を有する吸着剤について容認でき、この現象は、適当な場所で、予定するPSA法において容認されないであろう分離を引き起こす微粒子媒体の一部が成長することをもたらすことで終わったことを示すことができる。壁における移動のこの現象は、文献において、場合によりさらに対流移動を最終的に生じるとして知られ、評されている。
【0082】
コンテナの自由表面におけるまたは底部における他の種のビーズの外観は、明らかに、「容認不可」として示された。
【0083】
振動に供された際に、層AおよびB、さらにまたBおよびAは互いに混合せず、すなわち、種々の基準が2つの配置において容認可能かどうか、粒子AおよびBのいずれもの混合物は安定なままであるか否かを視覚的に続いて立証した。この結果を、6つの観測できる表面の視覚的実験により得た。
【0084】
他の重要な観察は、系の動力学は、特に他の床を通じた粒子の落下運動または上昇運動が遅い可能性があるか否かを確認することから成った。興味深いケースについて、すなわち、所望の平衡制限に近いものについて、コンテナは1時間を超えて篩振盪機上に保たれた後、上層をスクレーパを用いて静かに移動させて、下層からの粒子が、自由表面上に現れようとしていないことを確実にした。
【0085】
最後の興味深い観察は、工業用ユニットを代表するものとして決定された2つのもの、すなわち粒子および振動モードの選択により(生じ得る種々のケースを無視して)実質的に1を超える比、すなわち、最も大きい直径の最も小さいものに対する比、最も高い密度の最も低い密度に対する比)、試験を直径と密度の比により特徴づける際に、大きくて軽い粒子の上に小さくて重い粒子で構成されている系が、最も重要な系であった。
【0086】
重要な状況、より大きくて軽い粒子の上により小さくて重い粒子に対応する粒子の30のまたは2成分の系の場合、安定な配置と粒子の分離をもたらす発展的(evolutive)な配置の間の境界を定義することができた。
【0087】
添付した図1は、x軸では、粒子の直径の比(低い層の粒子の等価直径/上層の粒子のものの直径)を、y軸では、2つのビーズの重装かさ密度(上部の床の密度/下部の床の密度)により得られた結果を示す。
【0088】
図1において、異なる密度比については安定な領域があり、すなわち、破線(−−−)で示した直線の下に位置する領域であり、PSA法において用いられる吸着剤について従来技術に記載されたものよりも著しく大きいものであることを確認することができる。
【0089】
さらに、実線(―)で示される直線は、ある種のサイクルにおいて現れることがあるある種の制限を除外し、従って、一過性の工程の間も含む、PSA法の良好な操作を確実にすることの安全な保証をなし得る優先的な領域に対応する。
【0090】
以下の表は、図1を証明するために用いられる種々の粒子の性質を示す。
【表1】

【0091】
一連の試験を行なった後に、安定な決定した領域内にある粒子の混合物は、PSA適用の時間に亘って均一なままであり得る。
【0092】
密度(R密度)の比が、等価直径(R直径)の比の関数として定義される値よりも低いままである限り、比較的異なる密度の粒子を用いても、PSAの操作条件下では均一性を保ったままである混合物を製造することができることが観察される。
【0093】
単純な関係、すなわち図1のカーブを採用することにより、安定な領域にあることを可能にする密度の比が、直径の比の関数であること、すなわち:
R密度≦5.5−(2.R直径)(破線カーブ)
であり、好ましくは、より安定な様式は、
R密度≦5−(2.R直径)(実線カーブ)
であることを示すことができる。
【0094】
前もって示した通り、R密度は最も重い材料の密度の最も軽いものの密度に対する比であり、R直径は、最も大きい粒子の等価直径の、最も小さい粒子の等価直径に対する比である。
【0095】
例えば、2mmの直径と800kg/m3の密度を有する凝集体との混合物としての3mmの直径と400kg/m3の直径を有する吸着剤の場合において、R直径は、吸着剤の直径の凝集体の直径に対する比(すなわち、3/2=1.5)であり、一方、R密度は、凝集体の密度の吸着剤の密度に対する比(すなわち、800/400=2)である。
【0096】
このことは、吸着剤が、その性質として、2mmの直径と500kg/m3の密度を有する場合には、PCM凝集体は、例えば、
同一の等価直径(R直径=1)を有するために、約145kg/m3〜1750kg/m3の密度、好ましくは約170kg/m3〜1500kg/m3の密度を有し、;および
1mmまたは4mmの等価直径(R直径=2)を有するためには、最大限で、約335kg/m3〜750/m3の密度を有する
ということを意味する。
【0097】
殆どの工業用PSAユニットは、およそ0.8mm〜3.2mmの範囲の等価直径と、最も軽いもので約400kg/m3〜最も重いもので0kg/m3の範囲の密度を有する吸着剤を用い、例えば活性アルミナ、交換ゼオライト等である。
【0098】
1.6mmの直径と540〜600kg/m3の床密度を有するPCM凝集体は、非常に幅広く用いることができ、従って、魅力的なコストで大量生産することができ得る粒子を構成し得ることを理解することができる。
【0099】
より特には、大きな工業的な複合施設に設置される、大型の工業用PSAユニットは、一般的に、1.6〜3.3mmの範囲に亘る直径と、最も軽いもので約400kg/m3〜最も重いもので約800kg/m3の範囲に亘る密度を有する吸着剤を用いる。全てのこれらのユニットについて、2〜3mmの等価直径と、500〜600kg/m3の密度を有する凝集体が安定であることを理解することができる。
【0100】
反対に、迅速なPSAユニットまたはRPSAユニット、例えば医療用酸素濃縮器または発生器、および燃料電池のためのH2PSAユニットは、一般的に、より小さな直径、一般的には0.8〜1.6mmを有する吸着剤を用いる。従って、1〜1.5mmの等価直径と、500〜600kg/m3の密度を有する凝集体は、これらの方法の大部分を対象とする。
【0101】
本発明による吸着剤の粒子およびPCM凝集体間の混合は、例えば、ユニットの充填方法についてまたは充填中に用いられる比に従って、吸着剤をバレルに詰めるまたは入れる際に行われ得る。
【0102】
実施するのにより容易であるため、最初の解決法を好ましくは用いる。実験から、通常条件下で行われる輸送は、ユニットの現実の操作と比較して、吸着剤/PCM混合物についてより重要な工程を構成しない。例えば大きさに応じた分離は観察されない。吸着剤の充填を、それ自身が種々の粒子の分離を引き起こさないように適合させ得る。
【0103】
全てのケースにおいて、この凝集体が、前に説明した通りのヒートシンクとして作用し得ることが望ましい。
【0104】
一般的に0.2W/(m.K)のオーダーの、マイクロカプセル封入されたPCMの熱伝導率は、これらのマイクロカプセルからのみ形成されるミリメーターサイズの凝集体に、PSAの迅速なサイクル、さらにはRPSAタイプのものに適合する熱伝導率を与え得るには不十分であり得る。
【0105】
この点を、メラミン−ホルムアルデヒドカプセル中にマイクロカプセル封入されたパラフィン系PCMを用いたペレット化試験を行なうことにより確認した。
【0106】
マイクロカプセル化したPCM粉末を、ペレット成形機のコンパートメント内に配置し、種々の圧力を、すなわち2〜1800barの圧力をかけた。
【0107】
得られたペレットは4〜7mmの厚さであり、この厚さは、コンパートメント中に導入した粉末の量により制御可能であり、直径は2cmであった。得られたペレットの殆どを取扱うことができ、またこの形態で、吸着体に導入することができた。得られたペレットの密度は500〜1000kg/m3であり、一方PCMマイクロカプセル粉末の密度は、約300〜400kg/cm3であった。
【0108】
熱伝導率は成形圧力により比較的わずかに変化し、サンプルによって、0.1〜0.3W/(m.K)であった。このような値は、既知の大多数のPSAユニットにおける、例えば数mmの厚さを有する平板におけるPCM凝集体についての、これら凝集体の使用を不可能にし、大多数のPSA法に時間的に適合する特徴的な熱伝導率を得るためには、熱伝導率は0.5W/(m.K)よりも高い必要がある。
【0109】
本発明の1つの改善によれば、従って、PCM凝集体の熱伝導率を、PSAまたはRPSA法のサイクル時間に適した値にまで上昇させる。
【0110】
本発明によるPCM凝集体の熱伝導率を、測定中に、決してPCMが相を変えないような温度で測定する。一般的に、PCMは、最低相変化温度と最高相変化温度の間の温度領域において相を変える。
【0111】
本発明によれば、PCM凝集体の熱伝導率を、最高相変化温度以上、好ましくは最高相変化温度の少なくとも5℃上、好ましくは、最高相変化温度の5〜20℃上の温度で測定する。
【0112】
このようにして、凝集体の熱伝導率の測定中に相変化に直面することがないように保証される。というのは、凝集体の熱伝導率の測定について考えられる方法の1つは、例えば、Gustafsson SE et al., J Phys D: Appl Phys 12, 1411 (1979) or Gustafsson SE et al. J Phys D: Appl Phys 19, p. 727 (1986) または SE A 461,797, US-A-5,044,767 or Gustafsson SE. Rev. Sci.; Instrum. 62, 797 (1991) に記載されている「ホットディスク」プロトコルに従って、凝集体にエネルギーを供給することを含むためである。
【0113】
「ホットディスク」法は1つの可能性のある方法であるが、PCM凝集体の熱伝導率を、従来技術において知られるいずれもの他の方法により測定することができる。
【0114】
凝集体の形状そのままが、このタイプの特性評価に直接役立つことができ、例えば、凝集体が板状体、押出物若しくはペレットの形態にある場合であり、また他方では、その形状はこれを直接的に特性評価できないこともあり得る。
【0115】
後者のケースにおいて、凝集体と同じ性質を有し、その形状がその特性評価を可能にするサンプルを製造することが可能であり、例えば凝集体のものと同一の配合を有する押出物またはペレットの製造である。
【0116】
先に示したとおり、従って、マイクロカプセル封入されたPCMから製造されるPCM凝集体は、大多数のPSA法に時間的に適合する特徴的な熱伝導率を得るために、最後には、改善が所望されるPSA法に適合する熱伝導率であって、実際には0.5W/(m.K)に等しいかこれよりも大きい熱伝導率を有するように設計される。
【0117】
PCM凝集体の伝導率を向上させるための第1の方法は、PCMを伝導性材料と組合わせることである。この方法によれば、マイクロカプセル封入されたPCMを、高い熱伝導率のプロモータ(金属または炭素ベースの繊維、粒子、ストリップまたは削り屑)と混合して、改善された熱伝導率を有する複合体を形成する。その際、全体のアセンブリに例えば圧力をかけて、例えばPSA法の迅速なサイクル時間、すなわち30分未満の時間に時間的に適合する特徴的な伝導を有する、プレートまたはペレットのいずれかを得る。
【0118】
従って、種々の他の粉末、例えば銅および銀粉末と混合されたマイクロカプセル封入されたPCMを用いて圧縮試験を行い、添加の目的は、ペレットの熱伝導率を高めることである。0.5〜0.7W/(m.K)の伝導率を、これらの複合ペレットについて測定した。
【0119】
一般的に、熱プロモータまたはバインダとして作用し得るいずれもの材料をPCM粉末に加えることが可能であり、ペレットの機械的性質または熱的性質を改善することができる。
【0120】
PCM凝集体の伝導率を向上させるための他の考えられる手段は、マイクロカプセル封入されたPCMのマイクロカプセルの外表面の少なくとも一部を、少なくとも1種の熱的に伝導性の材料を上記表面に堆積させることによる金属被覆をまず行った後、このように金属被覆したPCMを凝集させることから成る。PCMの金属被覆は、例えば、FR-A-2 474 660 に記載されている。金属被覆を、いくつかのPCMマイクロカプセルについて同時に行なうことができる。
【0121】
好ましくは、マイクロカプセルは、Cu、Ag、Fe、Ni、Pd、Al、Au、またはこれらの金属の少なくとも1種を取り込んだ合金から選択される金属により部分的に被覆されている。
【0122】
図2に示される通り、マイクロカプセル封入されたPCMマイクロカプセル1のマイクロカプセルの表面熱伝導率を高めるために、表面、またはPCM4を含有するこれら小球体1の殻3の金属被覆2を行い、改善された熱伝導率を有する上記マイクロカプセル封入されたPCMの粉末の堆積および圧縮により、小球体から他への凝集体内での熱の効果的な伝導を可能にする伝導性材料の連続的で、非常に密なネットワーク5形成する。
【0123】
伝導性材料の金属被覆層2は、厚さが100nm未満であり得て、必ずしも連続していない。殻の表面上の金属原子のクラスター6の不連続な堆積は、PCMマイクロカプセルの凝集体の熱伝導率を高めるのに十分である。特に、熱伝導率は材料の全体の量であり、電気伝導率の場合のようにパーコレーション限界基準(percolation threshold criteria)に合致しない。例えば、本発明によるPCM凝集体において、PCMマイクロカプセルの直径は、典型的に、100μm未満、好ましくは50μm未満であり、その結果として、これらマイクロカプセルの表面の一部分が、または限定された数のこれらマイクロカプセルが凝集体内で金属被覆されてない場合には、これら非金属被覆部分は、凝集体の全体の熱伝導に対して非常に低い熱抵抗を示すのみであろう。従って、所望の伝導率に応じて小球体の表面上の伝導性材料の不連続な層のみを堆積し、その結果伝導性材料の消費を節約しながら、熱動力学を制御することを予想することができる。
【0124】
このような手法は、いくつかの利点を有する。特に、
マイクロカプセル化の利点、すなわち取扱いの容易さ、実施のし易さ、詰めたPCMを保ちながら、伝導性PCMマトリクスを得る、
粉末の圧縮後、連続し、非常に密な伝導性ネットワークを備えるように凝集体を製造し、このメッシュは小球体の直径と等しく、すなわち50nm〜50μm、好ましくは1〜10μmであり、
伝導性材料をPCM系に組み込み、
殻に熱導体の役割を与えることにより殻を強化し、従って、系の相変化体積エンタルピー(phase change volume enthalpy)を、熱導体をマイクロカプセル封入したPCMに加え得る系と比べて最適化し、および
金属被覆の程度、凝集体の特徴的な寸法等は、PCMの熱動力学を制御することができる故に、サイクル時間に応じて所定の用途に適合させることができる。
【0125】
従って、ポリマー殻の熱伝導率は、制御された金属被覆に基づいて改善される。金属被覆を種々の方法、すなわち、溶射により、溶解金属の溶射により、化学的手段により、または金属粒子を含有する塗料の塗布により行なうことができる。ある種の金属被覆方法(化学的、自己触媒的、または真空蒸着)は、例えば超音波を用いた基材の前処理を必要とすることがある。
【0126】
有機基材上への溶射によるコーティングの形成は、PCM粒子の殻中に高い熱伝導率を有する粒子を埋め込むための1つの考えられるルートである。このために、例えば金属粉末を含有する高温(〜100℃)ガス流中にマイクロカプセル封入されたPCMを送ることが可能である。高温ガスは、殻の表面を局所的に溶融することを可能にし、これは、金属の粒子をプラスチック中に埋め込むことを可能にする。従って、伝導性材料の層を表面に形成して、金属被覆されたマイクロカプセル封入されたPCMを回収する。プラズマジェットからおよび溶射された材料から生じる大きな熱利得を制限するために、この方法は効率的な冷却手段の使用を必要とする。
【0127】
1つの非常によく似たルートは、PCMマイクロカプセル上に溶融金属を溶射することから成る。PCMマイクロカプセルの金属溶射は、十分な速度で溶融粒子を溶射することにより、低温のマイクロカプセルを被覆することから成る。粒子は基材の表面上で、クレープの形をとって凝固する。このコーティングは、多数のこれらクレープの重ね合わせにより得られる。溶射できる材料は、全てのタイプおよび全ての金属または合金を含み、PCMプラスチックマイクロカプセルは、粉末の形態で存在している。このことは、溶射は、非常に柔軟性のある手法であることを意味する。溶射される材料は溶融されている。この溶融操作に必要な熱は、ガス混合物の燃焼により、または電気アークにより供給することができる。火炎温度は、3000℃から20000℃へと変化する。この温度は、得られる層の性質に影響を及ぼす。溶射速度も、堆積物の性質に影響を与えるパラメータである。具体的な予想に合致する堆積物を得ることは、基材の表面に到達する粒子は液体中にあるか、または少なくともペースト状の状態にある必要があり、その速度は、これらを基材に渡って適切な様式で広げるのに十分である必要があり、および最終的には強い付着が、粒子と基材との間に確立する必要があることを暗示している。
【0128】
習慣的に用いられる化学的な金属被覆プロセスは、表面調製、続く溶液中に存在する電子ドナーとの触媒反応による金属の還元から成る。これは、3つの必須段階:表面の制御された粗さ、例えば金属形態にあるパラジウムにより生じる活性化、および実際の金属被覆中の化学反応について固有の水素の脱気に依存する。
【0129】
強力な超音波によりもたらされる固有の撹拌を用いる新規の処理ルートが近年開発された。サンプルを高い振幅の音響振動に供することが重要であり、これは、コーティングされる基材の表面におけるキャビテーションバブルの非対称の内破を引き起こす。つまり、方法の性質または反応順序のいずれをも改変することなく、有益な効果が一定の条件下で観察される。いくつかのパラメータをまず研究し、その効果を、堆積速度、付着レベルおよび内部応力レベルに関して測定した。反応順序(超音波照射の時期および時間の選択)、出力、および超音波の周波数が重要である。活性化段階中での超音波の提供は、コロイド状パラジウムの凝集体のパラジウム金属へのより良い分解を可能とし、従って、高周波数および高出力振動下での核生成部位の密度を高める。5ワットの超音波照射を、銅めっきプロセスの開始時に与えた際に、基材に対するコーティングの付着の約30%の改善、およびその耐用年数の十分な延長が観察される。超音波を用い、コーティングの残留応力レベルにおける低下が観察される際に、第1の金属層のより良い機械的な固定が生じる。
【0130】
断熱材(ポリマー、ガラス、セラミック)の「無電解の」または自己触媒的な金属被覆は他の方法であり、これは、表面の活性化およびコーティングすることについての基材の適性を改善することを目標とする、および金属/基材接触面の長期の安定性を改善することを目的として、特有の表面処理の使用を必要とする。本発明の関連で、PCMマイクロカプセル上へのニッケルのまたは銅の「無電解の」堆積が特に重要であり、この殻は、種々の技術的なポリマーから成り、新規の方法の開発において、実際の金属被覆の前に、一方では基材の表面上への窒素ベースの官能基をグラフトすること(NH3またはN2雰囲気中でのRFプラズマ処理により)を導き、他方では、触媒部位の形成(PdCl2の酸溶液中への官能基化された基材の浸漬を介するパラジウムを含有する種の化学吸着による)に進む。
【0131】
真空技術を用いた金属コーティングの蒸着は、PCMマイクロカプセルの金属被覆のための有利な代替案を提供する。これらの技術は比較的単純であるという利点、および同一の真空チャンバ中で前処理(プラズマ処理)と蒸着を場合により続けざまに行なうという利点を有する。従って、金属層が蒸着される前に被覆される表面の汚染を回避する。さらに、真空プロセスの結果、材料のかなりの節約を達成することを可能にする非常に薄い膜(nmオーダー)を蒸着することを可能にする。他の興味深い点は、純粋な金属層に加えて、合金(例えばステンレス鋼)も蒸着することができるという事実である。真空技術を用いてプラスチック上への金属コーティング層の順調な堆積および真空蒸着法の柔軟性は、PCMの金属被覆についての新しい展望を開き、ここでは、連続層が完全には必要でないためなおさら、蒸着される層の正確な制御が望まれる。PVD(物理的蒸着法)による2つのタイプの蒸着、蒸発およびスパッタリングがある。これらの2つの方法は、ターゲットから粒子を分離する様式の点において異なる。これらの中でも、蒸着物の一定の性質、プロセスの容易な自動化、および環境の保護を述べることができる。
【0132】
単純な金属被覆方法は、マイクロカプセル封入されたPCMを、金属粒子を含有する塗料中に分散させることから成る。銅(例えば、CuPro-Cote(登録商標))、ニッケル(Super Shield)、銀(Silver Lining Paint)、または他の伝導性材料を含む市販されている塗料がある。マイクロカプセル封入されたPCMを、撹拌しながらこのような塗料に分散させた後、過剰な塗料を、任意に真空下で、多孔性の媒体(例えばガラスフリット)上でろ過することにより除去する。このようにして得られた金属被覆されたPCMを真空下で、いずれもの微量の溶媒を除くことができる温度で乾燥する。堆積した塗料層の厚さを、分散の撹拌速度、塗料の粘度、塗料中での滞留時間等により制御することができる。回収された過剰な塗料は、他のマイクロカプセル封入されたPCMを金属被覆するために再利用してもよい。
【0133】
上に示した2つのタイプの方法の組み合わせ、すなわち機械的および/または熱的役割を有するバインダの添加およびPCMマイクロカプセルの少なくとも部分的な金属被覆は、所望の物理的基準に合致する凝集体を得るために必要であり得る。
【0134】
従って、大量に製造されるため安価であるPCMから、吸着剤粒子と直接に混合することができ、PSAユニットの熱動力学を改善することができるのに十分に伝導性であるという物理的特徴を有する凝集体を得ることが可能であることが理解される。
【0135】
従って、このことは、このタイプのプロセスの大部分に関し、より特には、H2、O2、N2、COおよびCO2PSAユニットに加えて、限定されない種類で、少なくとも2つのフラクションに合成ガスを分けるためのPSAユニット、窒素を除去することを意図した天然ガスPSAユニット、および炭化水素の混合物を分画するために用いられるPSAユニットに関する。
【0136】
吸着剤に加えられる凝集したPCMの割合は、問題とするPSA法によって変化し、例えば高い吸着の領域においてはより大きく(30%)、重要な吸着する微量の成分であり得る範囲においては、より低いかまたはゼロである。
【0137】
所定の層における均質な混合物が望ましいが、特に、1種の特定の媒体中での流体の流れの一定の混合という事実のため、局所的な不均質は全体の結果には重大な影響を与えないであろう。
【0138】
吸着剤床の全体積に亘ってPCMの均一な分布を有する必要はないことを示し得る。例えば、O2PSA法については、最初にゼオライト床の半分に代えて、PCM凝集体を配置させることもより有利である。
【0139】
より一般的には、複数床PSA法において、PCM凝集体を単一の床中にのみ、またはこれらの床の1つのほんの一部中に、またはこれらの床の複数のある部分中にのみ導入することができる。
【0140】
さらに、所定の領域において、PCM凝集体の分布は厳密に均一でないが、一定の標準偏差に従い得る。
【0141】
いくつかの連続する吸着床11、12および13を備えるPSAユニットの吸着体10を図3に示す。
【0142】
第1の床11は、例えば活性炭、ゼオライト、シリカゲルまたは活性アルミナの吸着剤粒子と混合されたPCM凝集体を含む、本発明による複合吸着床である。
【0143】
第2の床12は、例えば活性炭、ゼオライト、シリカゲルまたは活性アルミナの吸着剤粒子と混合されたPCM凝集体を含む、本発明による複合吸着床である。床11および12におけるPCMの割合は同じでない。
【0144】
第3の床13は、PCM凝集体を含まない吸着床である。
【0145】
ガスGは、吸着工程中、第1の床11および第2の床12、その後第3の床13を続けざまに通過する。
【0146】

以下の例は、工業的PSA法におけるPCMに基づく複合床の適用の例である。
【0147】
以下、「流入口」および「流出口」という語は、吸着工程中の吸着体の流入端および流出端を示し、「並流」という表現は、この吸着工程中の吸着体におけるガスの流れの方向を示す一方、「逆流」という語は、ガスの流れの逆方向を示す。
【0148】
例1:H2PSA
2PSA法は、H2に加えて、CO、CO2、CH4、N2、H2Oおよび炭化水素からの少なくとも1種の分子を含有するガス混合物から、水素を精製することを可能にする。
【0149】
このガス混合物は、例えば、以下の源:水蒸気改質装置またはオートサーマル改質装置、例えば部分酸化反応器、フィッシャー−トロプシュタイプ反応器、天然ガスライン、石油化学プラントまたは精製所のガスネットワークにおけるいずれものラインからの少なくとも1種の源から生じ得る。
【0150】
2PSAユニットは、文献 US A 4834780 または US A 4475929 に示される通り、通常複数の吸着体、典型的には3〜25の吸着体を備えており、例えば燃料電池に供給するためには、EP A 1243048 に記載されている通り、5Sm3/h〜300000Sm3/hのH2を生成することができる。
【0151】
従来技術において、シーケンスバルブH2PSAユニット、および回転式H2PSAユニットとして知られるユニットがある。
【0152】
処理される混合物を高圧5〜40bar絶対圧、好ましくは10〜35bar絶対圧で少なくとも1つの吸着体中に並流で導入する際、H2PSAサイクルは、少なくとも1つの吸着工程を含む。この工程の間、水素よりも重い分子が吸着され、精製された水素が、吸着体の流出口から回収される。
【0153】
2PSAユニットのサイクルの少なくとも1つの他の工程は、異なる初期圧力である2つの吸着体を接触させて、ガスが、より高い圧力の吸着体からより低い圧力の吸着体へと流れる間の平衡工程である。
【0154】
平衡工程の主目的の1つは、H2の収率の向上である。
【0155】
工程の終わりに2つの吸着体において圧力が実質的に等しくなる場合に平衡は完了し得るし、または工程の終わりに2つの吸着体において圧力が実質的に異なる場合には平衡は部分的であり得る。
【0156】
2PSAプロセスのサイクルのさらに他の工程は再生工程であり、この間に吸着体は、低い再生圧力へと逆行して減圧される。
【0157】
一般的に、H2PSA法の再生圧力は、1〜3barであり、ある種の場合には、この再生圧力がより高い、典型的には3〜9bar、好ましくは5〜7barであってもよい。
【0158】
未だ吸着されているいくつかのガス分子を脱着する、および排出させることからなる再生工程の目的は、吸着剤の吸着容量を回復することである。
【0159】
この工程には、吸着体の流出口において導入され、逆流して流れる溶離ガスによるパージを、部分的にまたは完全に加えてもよい。
【0160】
2PSAサイクルのさらに他の工程は、再圧縮工程であり、この間、吸着工程を再び行い、続くサイクルを始めることができるような実質的に高い圧力にまで吸着体の圧力を高める。
【0161】
サイクルの他の考えられる工程は、H2PSAの流入口に向かって再生工程中に排出される数種のガスの再利用から成る。
【0162】
再利用の目的は、H2収率を改善するためである。H2プロセスのサイクル時間は1分〜30分、好ましくは5分〜15分である。
【0163】
それにもかかわらず展開される方法におけるある種のRPSAユニットは、1分未満のサイクル時間を有し、改善された熱伝導率を有する凝集体、例えば燃料電池に関連するH2PSAユニットを必要とする。
【0164】
例2:O2PSA
2PSA法は、吸着体の流出口において、空気中に存在する窒素を選択的に吸着することにより、70〜99体積%、好ましくは80〜95体積%の純度において酸素を生成することができる。
【0165】
同時に、O2PSA法は、再生工程中、吸着体の流入口において窒素豊富な空気を生成することもできる。O2PSA法を、例えば、
WO A 2003/090903、WO A 2005/028059、US A 5906672 または US A 6793719に記載されている通り、酸素を豊富にしたまたは減少させた呼吸に適した空気を製造するための医療分野において用いられる。酸素豊富な空気を送達する医療用O2PSA法の場合には、ユニットにつき送達される酸素の流速は、典型的には、0.5〜300Sl/分である。いくつかのこれらのPSAユニットは、例えば、WO A 2003/064009、WO A 2004/054493、EP A 1307278 または WO A 02/09848 に記載されている通り携帯できるものであり得る。
飛行における機上車両に酸素豊富な空気を送達するための、機上O2PSAユニットのように航空分野において用いられる。これらのPSAユニットは、しばしばOBOGS(機上酸素発生システム)と呼ばれる。このようなシステムは、例えば、WO A 02/04076、EP A 1400275 または EP A 1374972 に記載されている。
【0166】
これらの最初の2つの用途において、改善された熱伝導率を有するPCM凝集体を必要とするRPSAユニットが重要であり得る。
工業的には、例えば冶金、ガラス産業、養魚業、または水処理において用いられる。
【0167】
2PSAユニットは通常、複数のの吸着体、典型的には、1〜3の吸着体を備え、0.03Sm3/h(例えばO2PSAユニットの場合)〜10000Sm3/hのO2を生成することができる。
【0168】
2PSAユニットは、一般的に、シーケンスバルブを用いて操作する。しかしながら、小型のPSAユニット(典型的には、例えば医療用O2PSAユニット)については、例えば、EP A 1 235 630、WO A 9828013、WO9901202、EP A 1 355 717、US A 6,488,747、US A 6,311,719 または WO A 05025722 に記載されている通り、回転式O2PSA技術が開発されている。O2PSAサイクルは少なくとも1つの吸着工程を備え、この工程の間に、種々の存在し得る不純物(H2O、CO2、炭化水素等)を取り除くために予め処理され得る空気を少なくとも1つの吸着体中に並流で、1bar絶対圧〜8bar絶対圧、好ましくは1.1bar絶対圧〜6bar絶対圧の高圧で導入する。この工程中、窒素を好ましくは吸着し、酸素豊富なガスを吸着体の流出口において回収する。O2PSAユニットのサイクルの他の考えられる工程は、異なる初期圧力における2つの吸着体を、ガスが、より高い圧力の吸着体からより低い圧力の吸着体へと流れるように接触させる平衡工程である。平衡の主目的の1つは、O2収率の向上である。(工程の終わりに2つの吸着体において圧力が実質的に等しい場合には)平衡は完全であり、(工程の終わりに2つの吸着体において圧力が実質的に異なる場合には)平衡は部分的であり得る。O2PSAユニットのサイクルのさらに他の工程は再生工程であり、この工程中、吸着体は低い再生圧力へと逆行的に減圧される。一般的に、O2PSAユニットの再生圧力は、高い吸着圧力に依存して、200mbar〜1.5barである。なお吸着されているいくつかの窒素分子を脱着させ、排出させることから成る再生工程の目的は、吸着剤の窒素吸着容量を回復することである。この工程は、吸着体の流出口において導入されて、逆流して循環する酸素が豊富である溶離ガスのパージと部分的にまたは完全に結合されて、窒素の分圧を再び低下させる。O2PSAサイクルのさらに他の工程は、再圧縮工程であり、この工程中、吸着体の圧力を実質的に高圧にまで上昇させた後、再び吸着工程を行なうことができ、従って続くサイクルが始まる。再圧縮は、供給空気または酸素リッチなガスを用いて行なうことができる。O2PSA法のサイクル時間は5秒〜5分、好ましくは10秒〜2分である。
【0169】
例3:CO2PSA
CO2PSA法は、一方では脱炭酸されたガスを、他方ではCO2豊富なガスを、CO2含有供給ガスから生成することを可能にする。脱炭酸されたガスは、0.1〜15%の残余CO2、好ましくは1〜8%の残余CO2を含む。CO2豊富なガスは、10〜99%のCO2(JP A 2003-001061)、好ましくは50〜96%のCO2を含む。CO2法においては、CO2を吸着して、再生工程中に回収し、吸着工程中に、吸着されない脱炭酸されたガスを吸着体の流出口において回収する。従来技術においては、回転式CO2PSAユニット(US A 6,500,236)が存在し、これについても本発明は適用される。CO2PSAユニットを、400ppm〜80%のCO2、好ましくは5%〜50%のCO2を含有するガスを処理するために用いることができ、および例えば冶金産業において、例えばDRI、Corex、Midrex、HYL、または高炉プロセス(US A 6,562,103、US A 5,582,029、US A 5,858,057、US A 5,676,732)から生じるガスの脱炭酸のために、紙産業において、石灰産業において、セメント産業において、発電所において(JP 2003-001061)、IGCCプロセスにおいて(EP A 1142623、US A 5,582,029)、天然ガスの処理若しくは天然バイオガスの処理において、または閉じられた媒体を脱炭酸するため、例えば潜水艦または潜水において適用することができる。CO2PSAユニットは、通常、複数の吸着体、典型的には1〜15の吸着体(JP A 2000-354726)を備える。CO2PSAサイクルは、少なくとも1つの吸着工程を備え、この工程中に種々の存在し得る不純物(H2O,炭化水素、金属、硫黄含有または塩素含羞化合物、ダスト等)を除くために前処理され得るCO2を含有するガス流を、少なくとも1つの吸着体に、高圧、1bar絶対圧〜50bar絶対圧、好ましくは1.1bar絶対圧〜10bar絶対圧で並流的に導入する。この工程中、CO2を好ましくは吸着し、CO2減損ガスを吸着体の流出口において回収する。CO2PSAユニットのサイクルの他の可能性のある工程は平衡工程であり、この工程中、異なる初期圧力における2つの吸着体を、ガスがより高い圧力における吸着体からより低い圧力にある吸着体へと流れるように接触させる。平衡の主目的の1つは、脱炭酸ガスの収率を向上させることと、再生工程中に回収されるCO2の純度を改善することである。(工程の終わりに2つの吸着体において圧力が実質的に等しい場合には)平衡は完全であり、(工程の終わりに2つの吸着体において圧力が実質的に異なる場合には)平衡は部分的であり得る。CO2PSAユニットのサイクルのさらに他の工程は再生工程であり、この工程中、吸着体を逆行的に低い再生圧力へと減圧する。一般的に、CO2PSAユニットの再生圧力は、高い吸着圧力に依存して、50mbar絶対圧〜2bar絶対圧である。予め吸着されたいくつかのCO2分子を脱着することから成る再生工程の目的は、吸着剤のCO2吸着容量を回復することと、CO2豊富な流れを生成することである。この工程は、脱着ガスよりもCO2に富まない溶離ガスのパージと部分的にまたは完全に結合され得る。CO2PSAサイクルのさらに他の工程は圧縮工程であり、この工程中、吸着体の圧力を実質的に高圧へと上昇させて、吸着工程を再び行うことができ、従って続くサイクルを始めることができる。再圧縮工程は、供給ガス、またはサイクル中に生じたガスを用いて行なうことができる。サイクルの他の考えられる工程は、再生工程中に得られるCO2豊富なガスのいくらかを、CO2PSAユニットへと再循環させることから成る。この再循環の目的は、脱炭酸されたガスの収率を改善することと、再生工程中に回収されたCO2の純度を改善することである。CO2PSAユニットを用いる、プラントの分離性能を全体的に改善するための他の可能性は、CO2PSAユニットを、第2の分離ユニット、例えば他のPSAユニットまたは膜分離ユニットまたは低温分離ユニットと結合させることから成る。CO2PSA法のサイクル時間は1分〜30分、好ましくは2分〜20分である。
【0170】
例4:N2PSA
2PSA法は、空気中に存在する酸素を好ましくは吸着することにより、70〜99.9%、好ましくは80〜98%の純度において窒素を製造することを可能とする。N2PSAユニットは、一般的に、カーボンベースのモレキュラーシーブを用いる。酸素と窒素を共に製造することができるPSAユニットが存在する。WO-A-2004054493 および WO-A-2003086586 を参照されたい。
【0171】
例5:他の用途
本発明は、さらに、以下の方法の1つにおいて用いることができる:
特に、US-A-6,544,318、US-A-6,432,170、US-A-5,395,427 または US-A-6,527,831 に記載されるアルゴンPSA法。ArPSA法は、例えばO2PSAユニットから生じるO2リッチな流れ中に存在するアルゴンまたは酸素のいずれかを好ましくは吸着することにより、93%を超える純度において酸素を生成することを可能とする。ArPSAユニットは、一般的に、カーボンベースのモレキュラーシーブ、または銀交換ゼオライトを用いる(US-A-6,432,170)。
【0172】
HePSA法であって、供給流中に存在する他の分子を好ましくは吸着することにより、ヘリウムを製造することを可能にする。
【0173】
アルケンおよびアルカンの分離を可能にするいずれものPSA法であり、例えば、典型的にはエチレン/エタン、またはプロピレン/プロパンPSA法である。これらの分離は、カーボンベースであり得るか、そうでないモレキュラーシーブ上での分子の吸着動力学における差による。
【0174】
合成用ガス(合成ガス)を分画することを可能にするいずれものPSA法。
【0175】
2からCH4を分離することを可能にするいずれものPSA法。
【0176】
水蒸気メタン改質反応と、インサイチュでの吸着によるCO2の捕獲を結合するSERP(収着強化反応プロセス(Sorption Enhanced Reaction Process))。SERPの原理は、複数の文献に記載されている(US 6,103,143, Hufton et al., “Sorption enhanced reaction process (SERP) for the production of hydrogen”, 1998)。全体としては水蒸気メタン改質反応は、メタンと水蒸気を反応させて、水素とCO2を生成することから成る。(吸着剤、例えばハイドロタルサイト上での)水蒸気改質中での吸着によりCO2を除去することにより、平衡が、水素の生成の方向にシフトし、水素をより高い純度において製造する。PCM凝集体を、SERPのCO2吸着床に配置することができ、吸着に起因する熱的効果を低減し、従ってより大量のCO2を吸着する。
【図面の簡単な説明】
【0177】
【図1】
【図2】
【図3】

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸着により数種の成分を含有するガス混合物を分離および/または精製するためのPSA法であって、1つ以上の吸着体を用い、各吸着体は、吸着剤粒子上で前記ガス混合物の成分の少なくとも1種を吸着する吸着剤粒子の少なくとも1つの床を備え、各吸着体を、吸着および脱着の工程を含む吸着/脱着サイクルに供し、各吸着体に含まれる前記少なくとも1つの吸着剤床は、さらに、少なくとも1種の相変化物質(PCM)の粒子を含み、前記PCM粒子は、複数のPCMマイクロカプセルの凝集体の形態にあり、前記凝集体を吸着剤粒子と混合して、上記吸着剤粒子と上記マイクロカプセル封入されたPCM凝集体とを含む複合床を形成するところ、
前記PCM凝集体の密度は、前記複合床において混合される前記少なくとも1種の吸着剤の密度とは異なり、および
前記複合床におけるPCM凝集体の密度と吸着剤粒子の密度の比(R密度)は、
R密度≦5.5−(2.R直径)
(式中、
R密度は、PCM凝集体の密度と吸着剤粒子の密度の比であり、
R直径は、PCM凝集体の等価直径と吸着剤粒子の等価直径の比であり、および
上記R密度およびR直径比の分子および分母は、
1≦R密度≦3.5および1.0≦R直径≦2.25
を有するように選択される)
であることを特徴とするPSA法。
【請求項2】
前記密度R密度の比が、R密度≦5−(2.R直径)であり、前記R密度およびR直径比の分子および分母は、1≦R密度≦3.0および1.0≦R直径≦2.0を有するように選択されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記PCM凝集体が、400〜1200kg/m3、好ましくは500〜900kg/m3の密度を有することを特徴とする請求項1および2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
前記PCM凝集体が、500〜600kg/m3の密度を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記PCM凝集体が、0.5〜3mmの直径、好ましくは2〜3mmの直径、または1〜1.5mmの直径を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記PCM凝集体中に含まれる前記PCMは、パラフィン、脂肪酸、窒素含有化合物、酸素含有化合物、フェニルおよび水和塩、またはこれらの化合物の混合物から選択されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記PCM凝集体が、前記PCM凝集体の30体積%未満に相当するバインダを含み、好ましくは前記バインダは、クレイ、水硬結合剤、ポリマー、接着剤、樹脂から選択され、これらに炭素または金属繊維が任意に加えられているものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記PCM凝集体が、0.3W/(m.K)よりも高い熱伝導率を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記PCM凝集体が、0.5W/(m.K)よりも高い熱伝導率を有することを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記PCM凝集体が、金属被覆されたマイクロカプセル封入されたPCMを含むか、または金属被覆されたマイクロカプセル封入されたPCMから形成されていることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
表面金属被覆が連続的であるか、または不連続であり、複数のPCMマイクロカプセルにおいて行なわれることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
堆積した熱的に伝導性の材料は、Cu、Ag、Fe、Ni、Pd、Al、Au、またはこれらの金属の少なくとも1種を取り込んだ合金から選択される金属であることを特徴とする請求項10および11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
2PSA、O2PSA、N2PSAおよびCO2PSAプロセスから選択され、および/またはH2、O2、CO、N2、CO2またはこれらの混合物が豊富であるガスであって、好ましくは少なくとも50体積%のH2、O2、CO、N2、CO2またはこれらの混合物を製造することを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
複数の連続する吸着床を用い、これらの少なくとも1つは、吸着剤粒子が混合されたPCM凝集体の形態を成す複合床であることを特徴とする請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
処理される前記ガスが、前記複合床を含む前記吸着体中を半径方向にまたは軸方向に流れることを特徴とする請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
各吸着/脱着サイクルが、30分未満のサイクル時間を有することを特徴とする請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−504196(P2010−504196A)
【公表日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−528763(P2009−528763)
【出願日】平成19年8月31日(2007.8.31)
【国際出願番号】PCT/FR2007/051860
【国際公開番号】WO2008/037904
【国際公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【出願人】(591036572)レール・リキード−ソシエテ・アノニム・プール・レテュード・エ・レクスプロワタシオン・デ・プロセデ・ジョルジュ・クロード (438)
【Fターム(参考)】