説明

吸着担体の製造方法

【課題】吸着担体の製造過程においてシート状の繊維材料に前述のようなストレスの付与や、繊維材料表面同士の接触がなく、それゆえ、繊維材料表面を傷めることや、あるいは、繊維の脱落、変形などにより繊維材料の形状に変化を与えることがない、かつ、効率よい吸着担体の製造方法を提供することが課題である。
【解決手段】シート状の繊維材料の片面あるいは両面にスペーサーをあてがった状態で該繊維材料を渦巻き状に積層し、該積層物を通過するように反応液あるいは洗浄液を流すことによって外繊維材料に吸着能を持つ物質を導入することを特徴とする吸着担体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸着担体、特に医療用途に用いられる吸着担体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な血液処理カラムが研究され、例えば、白血球除去や、顆粒球除去を目的としたカラム(特許文献1,2)、毒素吸着を目的としたカラム(特許文献3,4)、白血球と毒素を同時に吸着することを目的としたカラム(特許文献5)等がそれぞれ開発されてきた。これらは、通常、カラム内部にそれぞれ目的とする物質を除去・吸着するための濾過材または吸着担体を有している。これら吸着担体表面には、特定の物質に対する選択的な吸着能を持たせるために官能基が導入されていることがある。その導入方法としては、化学反応による官能基の固定化や、コーティングによる導入が挙げられる。このような官能基の導入方法では、反応液、あるいは、洗浄液に吸着担体の材料となる繊維材料を浸漬する事が一般的であり(特許文献3,5,6)、さらには反応効率、あるいは、洗浄効率を高めたり、均一に反応、あるいは、洗浄させるため撹拌するという方法が用いられている。この浸漬、撹拌という工程には、反応液、あるいは、洗浄液内で繊維材料が動くことや、反応液、あるいは、洗浄液から繊維材料を引き上げ液切りする工程や絞る工程などが含まれる場合もあり(特許文献5,6)、繊維材料には擦れる、あるいは、張力がかかるなどストレスがかかる。また、繊維材料表面が反応中に他部の繊維材料表面と接触することにより、反応中に繊維材料表面の繊維同士が融着、あるいは、交絡することもある。このようなストレス、融着、あるいは、交絡は、繊維材料表面を傷めることや、あるいは、繊維の脱落、変形などによって繊維材料の形状に変化を与えることの原因となる。このような形状の変化は、吸着能の低下の原因となりうる。また、吸着担体表面が傷つくことにより、微粒子などの溶出につながる可能性も考えられる。このような微粒子は、吸着担体によって処理される液体に溶出する不純物となりえ、吸着担体を血液循環カラム等に使用する場合は、生体にとって好ましい物ではない。
【0003】
さらに、繊維材料が例えばフェルトのようなかさ高い材料である場合、前述のようなストレスがかかると、圧縮され、繊維材料内部で繊維同士の融着が起こりうるなどするために、反応後に反応前のかさ高さを維持できないこともありうる。例えば、吸着担体を血液循環カラム等に使用する場合には、このようにかさ高さが維持できないことがあると、血球等の詰まりの原因となりえ、好ましいことではない。
【特許文献1】特開昭60−193468号公報
【特許文献2】特開平5−168706号公報
【特許文献3】特開平10−225515号公報
【特許文献4】特開平12−237585号公報
【特許文献5】特開2002−113097号公報
【特許文献6】特開2002−172163号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、かかる従来技術の問題点に鑑み、吸着担体の製造過程においてシート状の繊維材料に前述のようなストレスの付与や、繊維材料表面同士の接触がなく、それゆえ、繊維材料表面を傷めることや、あるいは、繊維の脱落、変形などにより繊維材料の形状に変化を与えることがない、かつ、効率よい吸着担体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記目的を達成するために、下記の構成を有する。
【0006】
シート状の繊維材料の片面あるいは両面にスペーサーをあてがった状態で該繊維材料を渦巻き状に積層し、該積層物を通過するように反応液あるいは洗浄液を流すことによって外繊維材料に吸着能を持つ物質を導入することを特徴とする吸着担体の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
吸着担体の製造過程において、シート状の繊維材料にストレスをかけることがなく、かつ、繊維材料表面同士が接触することがなく、それゆえ、繊維材料表面を傷めることや、繊維の脱落、変形などにより繊維材料の形状に変化を与えることがなく、かつ、効率よい製造が可能であるため、特に、吸着担体としての官能基を導入する方法に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明は、シート状の繊維材料に吸着能を持つ物質を導入する際、該繊維材料の片面あるいは両面にスペーサーをあてがった状態で渦巻き状に積層し、該積層物を通過するように反応液あるいは洗浄液を所定の流量で流すことによって吸着能を持つ物質を導入して吸着担体の製造を行うものである。ここで、繊維材料にスペーサーをあてがうとは、繊維材料にスペーサーを沿わせて当てることをいう。積層された繊維材料が相互に接触することを防止するため、繊維材料の長手方向の全域にスペーサーがあてがわれている状態が好ましく、繊維材料の全面にあてがわれている状態がより好ましいが、例えば、繊維材料の隅の部分、また、長手方向のある部分(例えば、最内層の周に相当する部分あるいは最外層の周に相当する部分)スペーサーがあてがわれていない状態が部分的に存在していても、上記した本発明の目的を達する限り、問題ない。かかる製造方法により、吸着能を持つ物質の導入を行うときの従来の操作である攪拌、浸漬等による材料に付与されるストレスが減少し、かつ、繊維材料表面同士の接触もないようにできるため、繊維材料表面間での繊維の融着や交絡、繊維の脱落、繊維材料の変形を防止することができる。ここで、反応液あるいは洗浄液を流す方法には、原則的には特に制限はない。液を流す方向については、例えば、渦巻き状に積層した積層物を通過するように内側(内層の側)から外側(外層の側)へ流れる方向、または外側から内側へ流れる方向に流してもよいし、積層物をその軸方向に立てて全体の下から上、あるいは、上から下という方向に通過させる方法であってもよい。製造工程において、例えば、シート状の繊維材料の長さが製造ロットごとで一定でない場合、渦巻き状に積層すると積層物の太さが変化することが考えられる。この場合、一定の大きさの反応容器に積層物をその軸方向に立てて入れて反応させる場合、積層物の太さが反応容器の大きさと比較して小さい部分を有することとなる。従って、全体の下から上、あるいは、上から下という方向に反応液あるいは洗浄液を流した場合、積層物の周囲を反応液あるいは洗浄液が通過し、効率よく積層物を通過できない場合がある。一方、渦巻き状に積層した積層物を通過するように内側から外側へ流れる方向、または外側から内側へ流れる方向に流す場合は、確実にシート状の繊維材料を通過させることができ、この点から巻き状に積層した積層物を通過するように内側から外側へ流れる方向、または外側から内側へ流れる方向に反応液あるいは洗浄液を流すことが好ましい。また、反応液あるいは洗浄液の流量については、被反応物である繊維材料の大きさ、導入する物質、あるいは、官能基の種類によって定まるものであり、特に限定されるものではない。ただし、流量が大きいほど繊維材料にかかるストレスは高くなる傾向にあるため、必要以上に大きな流量とすべきではない。
【0009】
本発明において、「担体」とは、直接的または間接的に液体および固体状物質を吸着もしくは保持する性質を備えた材料を意味し、結合性物質を固定化してもかまわない。本発明においては、繊維材料から担体を製造するものであるが、例えば、血液を処理する際に好適な担体としては織物、編物、不織布等の繊維材料を例示することができる。
【0010】
本発明において、繊維材料表面への吸着能を持つ物質の導入の方法は、化学的な結合による固定化、コーティング液の循環による導入などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0011】
本発明において、繊維材料に導入されて吸着担体を製造するための吸着能を持つ物質とは、例えばポリミキシンなどの生理活性物質等が挙げられる。また、例えばN,N−ジメチルオクチルアミンやN,N−ジメチルヘキシルアミン等を固定化した4級アンモニウム基、テトラエチレンペンタミン等を固定化したアミノ基などの官能基、アミンとイソシアネートを反応させ尿素結合を持つ化合物等が挙げられるが、吸着のターゲットとする物質に対する吸着機能を繊維材料に付与することができるものであれば、特に限定されるものではない。
【0012】
本発明で言う、スペーサーの素材としてはポリプロピレン、ポリエチレンなどの公知のポリマー、あるいは、ステンレスなどの金属などを用いることができ、製造に使用する反応液や洗浄液に対して耐性がある物であればよく、これらに限定するものではない。また、表面に例えばヤスリ状のような細かな凹凸があると繊維材料表面を傷つける可能性もあるため、なめらかな状態であることが好ましい。形状としてはシート状、網状あるいは履帯状など挙げられるが、繊維材料にあてがうことが可能であり、渦巻き状に積層するために十分な柔軟性を備えていればよく、これらに限定されるものではない。厚みに関しては、スペーサーの取扱性、例えば、強度や重量等から決定されるものであり、特に限定されるものではないが、厚みが増せば一定容量内に仕込むことのできる繊維材料の量が少なくなるため、必要以上に厚くするべきではない。また、反応液あるいは洗浄液が流れるよう孔やスリットなどを備えるものであってもよい。スペーサーの全体の大きさとしてはスペーサーをあてがってシート状の繊維材料を渦巻き状に積層したときに、該繊維材料の表面同士の接触をスペーサーにより防止するために十分な大きさがあればよい。また、繊維材料とスペーサーの積層の方法は、繊維材料に1枚のスペーサーをあてがい巻くという、1枚のスペーサーの両面を用いて、ある部分の片面とその一回り内側もしくは外側の部分の片面とによって繊維材料を挟む積層方法や、2枚のスペーサーの間に繊維材料を挟み、これを巻く積層方法などが挙げられる。前述したように、一定容量内に仕込むことのできる繊維材料の量を多くするためには、スペーサーが占める容積は少なくすることが好ましく、この点から、1枚のスペーサーの両面を用いて、ある部分の片面とその一回り内側もしくは外側の部分の片面とによって繊維材料を挟む積層方法が好ましい。1枚のスペーサーの両面を用いて積層する場合、スペーサーと繊維材料の位置関係としては、内層側より順にスペーサー−繊維材料、あるいは、繊維材料−スペーサーのどちらの順であってもよい。一方、1枚のスペーサーの両面を用いて、ある部分の片面とその一回り内側もしくは外側の部分の片面とによって繊維材料を挟む積層方法では、繊維材料に対してスペーサーが十分に長くない場合(すなわち、繊維材料に対してスペーサーの長さが積層物の最外層の外周分長くない場合)、積層物の最内層あるいは最外層の少なくとも一方の繊維材料の一面がスペーサーと接触していない状態になり得る。それに対し、2枚のスペーサーの間に繊維材料を挟み、これを巻く積層方法では、スペーサーの長さが繊維材料と同じ長さ以上あれば、繊維材料の全面をスペーサーで保持することができる点で優れている。この2種の積層方法のうち、いずれを選択するかは、上記した観点から決定される。また、積層したときに、スペーサーとスペーサーの間に、繊維材料が圧縮されることなく収納される空間を設ける目的から、スペーサーがその繊維材料との接触面に、その接触面と垂直の方向に突起した部分を備えたものが好ましい。この突起の形状、および、位置に関しては、例えば、スペーサーの幅(長さ)が繊維材料の幅より大きい場合は、スペーサーの端に設けると、突起が繊維材料に接触しない点からよく、繊維材料がスペーサーの間でずれないように繊維材料を引っかけることが可能となるような形状、位置に設けてもよく、特に限定するものではない。また、渦巻き状に積層する際に突起同士が接触することで渦巻き状に積層することの妨げにならない程度の幅、形状であり、かつ、渦巻き状に積層することの妨げにならない位置に設置することが好ましい。突起した部分の高さに関しても何ら限定されるものではないが、渦巻き状に積層したとき、スペーサーとスペーサーとの間の幅、つまり、突起した部分の高さが吸着担体の目的とする厚み(一巻き単位での厚み)以上であることが好ましい。
【0013】
また、積層する際に、パイプやコーンなどの中心材料に巻き付けてもよい。ここで言う、パイプやコーンの素材としては、ポリプロピレン、ポリエチレンなどの公知のポリマー、あるいは、ステンレスなどの金属などを用いることができるが、製造に使用する反応液や洗浄液に対して耐性があるものであればよく、これらに限定するものではない。また、孔、あるいは、スリットを備えているものでもよい。この孔、あるいは、スリットの位置は、パイプやコーンの側面に位置し、スペーサーをあてがったシート状の繊維材料で巻いたとき繊維材料により覆われる範囲内にあることが望ましい。孔、あるいは、スリットの大きさは、繊維材料の大きさや、反応液あるいは洗浄液の量、流量により適宜最適な大きさとすればよく、限定されるものではない。孔あるいはスリットは均一に配置されている必要はない。例えば、反応液あるいは洗浄液をパイプの内側から外側に向かって流す場合、反応液あるいは洗浄液は積層物の外周上方で流れが悪くなるため、かかる外周上方の部分における流れの状態を改善するため、パイプの上方に位置する孔あるいはスリットの数を多くすることや、大きさを大きくしてもよい。また、孔あるいはスリットはパイプの壁面に対して垂直に設置されている必要はなく、反応液あるいは洗浄液の流れに意図的に方向を付けるため、パイプの壁面に対して角度をもって設置されていてもよい。また、渦巻き状に積層した後に積層物の軸方向の上下から反応液あるいは洗浄液が流れ出ることを防ぐために、積層物の軸方向上下に液が漏れ出ないような蓋などを取り付けてもよい。
【0014】
本発明におけるシート状の繊維材料の形態として、編物、不織布、フェルト等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。短繊維からなり、かさ密度の低い不織布では、摩擦などにより繊維が脱落しやすいので、本発明を適用することによる効果が大きい。また、反応液あるいは洗浄液が通過しやすいと言う面からも本発明における効果が得られやすい。また、繊維材料に官能基を導入することで製造される吸着担体は、その材料がフェルト構造を有することが製造上好ましい。材料がフェルト構造を有すると、反応液あるいは洗浄液が流れやすく、反応効率あるいは洗浄効率がよいためである。かかる繊維材料の素材としては、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリロニトリル系ポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなどの公知のポリマー、あるいはこれらの誘導体を使用することができる。これらのポリマーの単独系であっても、共重合を含む混合系であってもかまわない。また、芯鞘型、海島型またはサイドバイサイド型の複合糸であってもかまわない。なお、繊維の断面形状は円形断面であっても、それ以外の異形断面であってもかまわない。また、かかる繊維材料の繊維の断面の直径は、目的とする吸着性能を考慮した上で決められるべきものである。例えば、血液からの顆粒球の選択的な除去のためにはかかる断面直径は4μm以上であることが好ましく、より好ましくは5μm〜10μmのものが使用される。一方、断面直径が0.5〜4μm未満の繊維を用いればリンパ球の除去にも好適に使える。また、断面直径が0.5μm未満の繊維を用いれば、生理活性物質の除去効率を上げることが可能となる。これ以外に、太さの異なる2種類以上の繊維を混合して使用することも可能である。ここで示した直径は、円柱状の繊維に対してのみ適用されるものではなく、例えば楕円や矩形、多角形の物にも適用される。それらの場合、同面積の真円と仮定してその直径を求めるものとする。また、繊維材料の厚みについては特に限定するものではないが、0.1mm以上10cm以下であることが材料の取り扱い上好ましい。例えば、東レ社製のトレミキシン(登録商標)のようなラジアルフロータイプのモジュールに組み込む場合は、中心芯材に巻き付けることから段差、しわが発生しやすいため、厚みは1cm以下であることが好ましい。これらは、使用形態によって決定される。
【0015】
吸着担体の製造工程において、反応あるいは洗浄後に積層を解く工程が含まれる場合、本発明の製造方法は、シート状の繊維材料表面同士が接触していないため、シート状の繊維材料表面間での繊維の融着や交絡がないため表面が荒れることがなく、特に有効である。
【0016】
本発明で製造された吸着担体は、医療材料用途に好適に用いることが可能であり、血液等から有害物質を除去する血液浄化用途に用いることがさらに好適である。
【実施例】
【0017】
[実施例1]
36島の海島複合繊維であって、島成分が更に芯鞘複合によりなるものを次の素材を用いて、紡糸速度800m/分、延伸倍率3倍の製糸条件で得た。
島の芯成分;ポリプロピレン
島の鞘成分;ポリスチレン90wt%、ポリプロピレン10wt%
海成分;エチレンテレフタレート単位を主たる繰り返し単位とし、共重合成分として5−ナトリウムスルホイソフタル酸3wt%含む共重合ポリエステル
複合比率;島の芯成分:島の鞘成分:海成分=42:43:15(重量比)
この繊維85wt%と、直径20μmのポリプロピレン繊維15wt%からなる不織布(目付150g/m)を作製した。次に、この不織布を90℃、3wt%の水酸化ナトリウム水溶液で処理して海成分の「エチレンテレフタレート単位を主たる繰り返し単位とし、共重合成分として5−ナトリウムスルホイソフタル酸3wt%含む共重合ポリエステル」を溶解することによって、芯鞘繊維の直径が5μmのフェルトを作製した。
【0018】
スペーサーとして、図1に示すような長さLが290mm、幅Wが10mm、厚さTが3mmの長方体形状を有し、直径1mmの孔をランダムに多数有し、片面における両端に高さt(スペーサーのフェルトとの接触面と垂直の方向)が3mm、幅wが5mm、長さlが3mmの突起を備えた長方体形状のステンレス製の履板を幅6mとなるように図1のように直列的につないだ履帯状のものを用いた。この突起の間に長さ4m、幅270mmの上記フェルトを、フェルト長さ方向がスペーサー幅方向と一致するように置き、スペーサーの突起側が内側になるようにして、直径10mmの孔を多数備えた長さ200mm、外径50mmのパイプに渦巻き状に巻き付け、スペーサーとフェルトを積層した。フェルトの最内層の内側面はスペーサーとは面せず、パイプと接触する状態であった。
【0019】
次に、ニトロベンゼン46wt%、硫酸46wt%、パラホルムアルデヒド1wt%、N−メチロール−α−クロルアセトアミド(以下、NMCAと略す。)7wt%を10℃以下で混合したものを撹拌し、パラホルムアルデヒドとNMCAをニトロベンゼンと硫酸の混合物に完全に溶解させ、30LのNMCA化反応液を調製した。このNMCA化反応液を15℃にし、流量200L/hで孔を備えたパイプの内側から外側に向かって2時間循環させ反応を行った。その後、30Lのニトロベンゼンを反応時と同様に孔を備えたパイプの内側から外側に向けて、15℃、200L/hで30分間循環させ洗浄した。続いて、30Lのメタノールを孔を備えたパイプの内側から外側に向けて、15℃、400L/hで30分間循環させ洗浄した。このNMCA化後のメタノール洗浄を洗浄液のpHが6以上となるまでくり返した。その後、スペーサーからフェルトを取り外し、NMCA化フェルト1を得た。
【0020】
このようにして得られたNMCA化フェルト1は、圧縮されることなく、渦巻きに積層したどの位置でも、目視で確認できる程度の厚みの不均一さは無かった。また、フェルト表面同士の接触がなく、またフェルト表面間での繊維の融着や交絡がなく、さらには毛羽立つなど表面が荒れた状態になることは無かった。
[比較例1]
長さ15m、幅270mmの実施例1記載のフェルトを、長さ43mm、幅7mmのスリットを24個備えた長さ300mm、外径30mmのパイプにチーズ状に巻き付け、長さ30mm、直径270mmの渦巻き状に積層した。渦巻き状にした積層物をさらに開孔部が2mm角のポリエステル製ネット(厚み0.4mm、単糸径0.3mm)で外側から巻いた。
【0021】
次に、実施例1と同様のNMCA化反応液を30L調製した。実施例1と同様の条件で反応、洗浄を行った。その後、渦巻き状の積層物について解じょを行い、NMCA化フェルト2を得た。
【0022】
このようにして得られたNMCA化フェルト2は反応時に渦巻き状に積層した内層側に位置していた部分ほど圧縮されて、目視ではっきりと分かる程度に薄くなっており、吸着担体の厚みの均一性が失われていた。また、フェルト表面同士が接触した状態で反応させたため、反応後、渦巻き状の積層物について解じょするときに表面が毛羽立つ状態になった。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施例1で用いたスペーサーの模式図である。
【符号の説明】
【0024】
1・・・スペーサー
2・・・履板
3・・・突起
4・・・孔
L・・・ステンレス製の履板の長さ
W・・・ステンレス製の履板の幅
T・・・ステンレス製の履板の厚さ
l・・・突起の長さ
w・・・突起の幅
t・・・突起の高さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の繊維材料の片面あるいは両面にスペーサーをあてがった状態で該繊維材料を渦巻き状に積層し、該積層物を通過するように反応液あるいは洗浄液を流すことによって外繊維材料に吸着能を持つ物質を導入することを特徴とする吸着担体の製造方法。
【請求項2】
該反応液あるいは洗浄液を該積層物の内側から外側に向けて、または外側から内側に向けて該繊維材料を通過するように流すことを特徴とする請求項1に記載の吸着担体の製造方法。
【請求項3】
該スペーサーが該繊維材料との接触面に該接触面と垂直の方向に突起した部分を有することを特徴とする請求項1または2に記載の吸着担体の製造方法。
【請求項4】
該繊維材料がフェルト構造を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の吸着担体の製造方法。
【請求項5】
該吸着担体が医療材料用途に用いられることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の吸着担体の製造方法。
【請求項6】
該吸着担体が血液浄化用途に用いられることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の吸着担体の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−49010(P2008−49010A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−230123(P2006−230123)
【出願日】平成18年8月28日(2006.8.28)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】