説明

吸着搬送治具

【課題】吸引圧力が作用した際に、樹脂シートが変形するのを抑制することが可能な吸着搬送治具を提供すること。
【解決手段】吸着搬送治具1は、基台10、樹脂シート20、及びメッシュ30を備えている。基台10は、対向する第1及び第2の主面10a,10bを有している。基台10には、第2の主面10b側に複数の吸引孔12が形成され、第1の主面10a側に吸引孔12と連通する凹部14が形成されている。樹脂シート20は、通気性を有し、基台10の第1の主面10aに対向するように配置されている。メッシュ30は、基台10と樹脂シート20との間に配置されており、金属線が網状に織られてなる。メッシュ30により、吸引孔12から凹部14を通して作用する吸引圧力が、樹脂シート20における凹部14に対向する領域22と、樹脂シート20における凹部14に対向しない領域24とに分散して作用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸着搬送治具に関する。
【背景技術】
【0002】
吸着搬送治具として、対向する第1及び第2の主面を有し、吸引孔が第2の主面側に形成されると共に吸引孔と連通する凹部が第1の主面側に形成された基台を備えているものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−92587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
吸着搬送治具では、基台の第1の主面に対向するように通気性を有する樹脂シートを配置して、樹脂シートの表面を被吸着部材との接触面とすることにより、被吸着部材に傷や接触痕が生じるのを防ぐことが行なわれている。
【0005】
しかしながら、樹脂シートを配置した場合、樹脂シートにおける基台に形成された凹部に対向する領域に、吸引孔から凹部を通して作用する吸引圧力が局所的に作用し、樹脂シートが変形して、樹脂シートの表面に凹凸が生じることが判明した。樹脂シートの表面、すなわち被吸着部材との接触面に凹凸が生じてしまうと、被吸着部材を適切に吸着できなくなってしまう。
【0006】
本発明は、吸引圧力が作用した際に、樹脂シートが変形するのを抑制することが可能な吸着搬送治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る吸着搬送治具は、対向する第1及び第2の主面を有し、吸引孔が第2の主面側に形成されると共に吸引孔と連通する凹部が第1の主面側に形成された基台と、基台の第1の主面に対向するように配置され、通気性を有する樹脂シートと、基台と樹脂シートとの間に配置され、金属線が網状に織られてなるメッシュと、を備え、メッシュにより、吸引孔から凹部を通して作用する吸引圧力を、樹脂シートにおける凹部に対向する領域と、樹脂シートにおける凹部に対向しない領域とに分散して作用させることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る吸着搬送治具では、基台と樹脂シートとの間に配置されるメッシュにより、吸引孔から凹部を通して作用する吸引圧力が、樹脂シートにおける凹部に対向する領域と、樹脂シートにおける凹部に対向しない領域とに分散して作用する。これにより、吸引孔から凹部を通して作用する吸引圧力が、樹脂シートにおける凹部に対向する領域に局所的に作用することはなく、樹脂シートが変形するのを抑制することができる。
【0009】
好ましくは、メッシュは、樹脂シートよりも通気性が高い。この場合、吸引孔から凹部を通して作用する吸引圧力を、樹脂シートにおける凹部に対向する領域と、樹脂シートにおける凹部に対向しない領域とに効率よく且つ適切に分散させることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、吸引圧力が作用した際に、樹脂シートが変形するのを抑制することが可能な吸着搬送治具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施形態に係る吸着搬送治具を示す斜視図である。
【図2】本実施形態に係る吸着搬送治具を示す分解斜視図である。
【図3】本実施形態に係る吸着搬送治具の断面構成を説明するための模式図である。
【図4】本実施形態に係る吸着搬送治具にてセラミックグリーンシートを吸着した状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0013】
図1〜図3に基づいて、本実施形態に係る吸着搬送治具1について説明する。吸着搬送治具1は、平面視で矩形形状を呈している基台10と、同じく平面視で矩形形状を呈している樹脂シート20と、同じく平面視で矩形形状を呈しているメッシュ30と、を備えている。
【0014】
基台10は、金属等の部材からなり、対向する第1及び第2の主面10a,10bを有している。図2及び図3に示されるように、基台10の第2の主面10b側に、複数の吸引孔12が形成されている。基台10の第1の主面10a側には、吸引孔12と連通する凹部14が形成されている。本実施形態においては、凹部14は、基台10の辺に平行な方向に溝状に伸びるように形成されている。
【0015】
樹脂シート20は、通気性を有しており、基台10の第1の主面10aに対向するように配置されている。樹脂シート20としては、市販の多孔質フィルムを用いることができる。このような多孔質フィルムとしては、例えば、旭化成ケミカルズ社製サンファイン(登録商標)AQ等が挙げられる。
【0016】
メッシュ30は、基台10と樹脂シート20との間に配置されており、金属線(例えば、ステンレス鋼線)が網状に織られてなる。メッシュ30は、樹脂シート20よりも通気性が高い。メッシュ30は、通気性を有する両面粘着部材(例えば、両面テープ等)40により基台10に取り付けられている。樹脂シート20は、同じく、通気性を有する両面粘着部材42によりメッシュ30に取り付けられている。メッシュ30として、例えば、線径が10〜200μmであり且つ目開きが10〜300μmであるメッシュを用いることができる。メッシュ30は、所定の張力(例えば、10〜40N)が付与された状態で基台10に取り付けられている。
【0017】
以上のように、本実施形態では、基台10と樹脂シート20との間に配置されるメッシュ30により、吸引孔12から凹部14を通して作用する吸引圧力が、樹脂シート20における凹部14に対向する領域22と、樹脂シート20における凹部14に対向しない領域24とに分散して作用することとなる。これにより、吸引孔12から凹部14を通して作用する吸引圧力が、樹脂シート20における凹部14に対向する領域22に局所的に作用することはなく、樹脂シート20が変形するのを抑制することができる。
【0018】
メッシュ30の通気性は、樹脂シート20の通気性よりも高い。これにより、上記吸引圧力を、樹脂シート20における凹部14に対向する領域22と、樹脂シート20における凹部14に対向しない領域24とに効率よく且つ適切に分散させることができる。
【0019】
メッシュ30は、所定の張力が付与された状態で基台10に取り付けられている。これにより、樹脂シート20における凹部14に対向する領域22が当該領域22に作用する吸引圧力により変形してしまうのをより効果的に抑制することができる。
【0020】
続いて、製造工程の一部において上述した吸着搬送治具1を用いる積層電子部品(例えば、積層コンデンサ)の製造方法について説明する。
【0021】
まず、セラミックグリーンシートを準備する(準備工程)。支持体(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)からなる帯状の長尺フィルム等)の一面上に、セラミックペーストを塗布し、乾燥することにより、セラミックグリーンシートを形成する。セラミックペーストは、セラミック粉末、有機バインダ、及び有機溶剤を混合して、スラリー化することにより、得られる。
【0022】
次に、セラミックグリーンシート上の所定の位置に上述した導電性のペーストを塗布して、乾燥させて、電極パターンを形成する(電極パターン形成工程)。導電性のペーストは、導体粉を、バインダ及び有機溶剤に分散させてペースト状にしたものである。
【0023】
次に、セラミックグリーンシートを所定の位置で切断し、複数のセラミックグリーンシートに分離する。その後、分離された複数のセラミックグリーンシートは、電極パターンが形成されていないセラミックグリーンシートと共に積層し、シート積層体を得る(積層工程)。これらの工程において、電極パターンEPが形成されたセラミックグリーンシートGSは、図4に示されるように、上方から吸着搬送治具1に吸着されて搬送される。このとき、セラミックグリーンシートGSにおける電極パターンEPが形成された側の面と、樹脂シート20とが接触することがある。
【0024】
樹脂シートの表面(セラミックグリーンシート及び電極パターンと接触する面)に凹凸が形成され、樹脂シートの表面における凸状となっている部分と電極パターンとが接触していると、凸状となっている部分が電極パターンに過度に押圧されてしまうことあり、電極ペーストの成分の一部(例えば、導体粉等)が樹脂シートに付着する懼れがある。樹脂シートに付着した電極ペーストの成分の一部は、セラミックグリーンシートのコンタミネーションとなって、積層電子部品の特性劣化の要因となる。しかしながら、吸着搬送治具1を用いてセラミックグリーンシートGSを搬送する場合、上述したように、樹脂シート20が変形するのを抑制され、樹脂シート20の表面に凹凸が形成され難いので、樹脂シート20に電極ペーストの成分の一部が付着するのを防ぐことができる。
【0025】
次に、得られたシート積層体を、所定の位置で切断し、複数の積層グリーンチップを得る(切断工程)。次に、積層グリーンチップに含まれる樹脂成分を除去し、焼成して、セラミック素体を得る(焼成工程)。その後、セラミック素体の側面に端子電極を形成する(端子形成工程)。以上の工程により、積層電子部品が完成する。
【符号の説明】
【0026】
1…吸着搬送治具、10…基台、10a…第1の主面、10b…第2の主面、12…吸引孔、14…凹部、20…樹脂シート、22…凹部に対向する領域、24…凹部に対向しない領域、30…メッシュ、40,42…両面粘着部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する第1及び第2の主面を有し、吸引孔が前記第2の主面側に形成されると共に前記吸引孔と連通する凹部が前記第1の主面側に形成された基台と、
前記基台の前記第1の主面に対向するように配置され、通気性を有する樹脂シートと、
前記基台と前記樹脂シートとの間に配置され、金属線が網状に織られてなるメッシュと、を備え、
前記メッシュにより、前記吸引孔から前記凹部を通して作用する吸引圧力を、前記樹脂シートにおける前記凹部に対向する領域と、前記樹脂シートにおける前記凹部に対向しない領域とに分散して作用させることを特徴とする吸着搬送治具。
【請求項2】
前記メッシュは、前記樹脂シートよりも通気性が高いことを特徴とする請求項1に記載の吸着搬送治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−202248(P2010−202248A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−49312(P2009−49312)
【出願日】平成21年3月3日(2009.3.3)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】