説明

吸着操作からのNF3の回収

【課題】NFの全体のプロセス収率を向上することが可能な新規のTSAサイクルを提供する。
【解決手段】吸着剤の不純物による飽和の前に吸着を止め、回収パージガス(並流か向流かのいずれか)を用いて共吸着したNFを解放し、NFを含む不活性パージガスの流出成分を運転中の容器の流出成分と混合、又は運転中の供給成分へとリサイクルして共吸着したNFの10%〜100%を回収し、さらに共吸着したNFの除去により吸着剤の劣化を防ぐ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
NFは、ディスプレイ、半導体及び光起電機器の製造で用いられるガスである。NFの一つの好ましくない特性は、その地球温暖化係数(GWP:Global Warming Potential)であり、これはCOのGWPより17000倍高い。
【背景技術】
【0002】
強力な人為的温室効果ガスである、三フッ化窒素(NF)のバックグラウンド大気中の存在度及び傾向は、非特許文献1によって初めて測定された。NFの平均地球対流圏濃度は、1978年に始めて測定された記録の約0.02ppt(1兆分の1(parts−per−trillion)、乾燥した空気のモル分率)から、2008年7月1日の0.454pptの値へと、年間0.053ppt、又は年間約11%の上昇率で、擬似指数関数的に上昇し、且つ北半球で圧倒的に発生するこれらガスの放出と一致する半球間の勾配を有する。この上昇率は、全世界的に年間約620メトリックトンのNFの放出に相当し、又は年間4000メトリックトンの全世界の推定NF生産量の約16%に相当する。
【0003】
地球の大気中でNF濃度が高まる懸念が、大気へのNFの放出を減少又は削減するNFの製造方法の必要性を生み出した。
【0004】
NFの製造方法では、多くの場合、温度スイング吸着(TSA:temperature swing adsorption)を用いて、そうしなければNFの低温蒸留の単位操作の間に凝固するであろう不純物を除去する。
【0005】
従来のTSAサイクルでは、不純物と共吸着させたNFガスの大部分を、再生ステップの間に排出する。
【0006】
次の特許文献は、吸着によってNFを精製する代表的なものである。
【0007】
特許文献1は、NF精製に用いられる従来のTSA法について記載している:「通常、吸着剤を、その吸着剤から検出可能な量の亜酸化窒素が出てくるまで用いて、そのときに吸着剤を、再生させた吸着剤に切り替える。使用済みの吸着剤を、吸着剤に窒素を高温で流通させることによって、再生させる」。この方法を用いると、共吸着したNFは、吸着した不純物と共に排出され、それによってNFを大気中に放出させ、そしてNFの収率を低下させる原因となる。
【0008】
特許文献2は、特許文献1への改良について記載しており、ここでは吸着剤又は吸収剤を選択して、不純物の吸着容量を最大化しようとし、それにより「吸着によるNFの損失を大幅に低下させる」。しかし、1サイクル当たりのNFの損失量は、改良された吸着剤のNFの容量が同程度なので、おおよそ同等である。この共吸着したNFを回収するための方法の改良は、記載されていない。
【0009】
特許文献3は、NFを吸着して、且つ不純物(CF)を吸着しない方法について記載している。第二のステップで、ヘリウムを用いて、不純なNFの空間をパージする。第三のステップで、圧力を低下させて、LIN冷却トラップで濃縮させたNFを脱着させる。不純物は、共吸着されないので、回収の分離は不必要であり、カラムの流出成分は、供給成分にリサイクルされない。
【0010】
特許文献4は、TSA又は圧力スイング吸着(PSA)方式による吸着を用いた、ガス流れからのパーフルオロカーボン(PFC)の回収方法について記載している。定常的なガス中のPFCを、ゼオライトに吸着させて、その後、供給の流れを止めて、且つ温度を上げて且つ/又は圧力を低下させて、PFCを脱着させる。このPFCを、さらなる精製に移す、又は他のプロセスに送って捕捉に用いる。脱着ステップの間は、流出成分を、不純のガス流れと混合しない。不純物をゼオライトに共吸着させないため、回収分離は不必要となる。
【0011】
特許文献5は、吸着を低温で行う、Oの精製のための改良したTSA法について記載している。再生ステップを、生成ガス、すなわち純粋なOで行うため、実質的な量の精製した生成ガスが放出される。
【0012】
次の特許文献は、カラムの排出成分を供給成分にリサイクルする、圧力スイング吸着(PSA)についての代表的なものである。
【0013】
特許文献6は、再生ステップの間に、カラムを向流減圧させて、そして抜き出した残留ガスの一部を、処理をする不純なガスと混合する、改良したPSAプロセスについて記載している。これは、NFが強く吸着される物質種であるので、NFに対しては効果がないであろう。また、不純物は、NFよりもさらに強く吸着され、脱圧ステップでは除去されないであろう。NFのプロセスに関して、吸着剤の加熱は、サイクルの再生の一部の間に必須である。
【0014】
特許文献7は、吸着剤の排出(再生)の間に空間のガスを中間容器に貯蔵する、改良したPSA法について記載している。この改良は、生成ガス及び吸着した不純物ガスが、吸着剤の減圧によって簡単に除去されることが必要である。NFと吸着した不純物との両方が、強く吸着剤に結合されるので、入熱が必要となる。
【0015】
特許文献6は、再生ステップの間に、カラムを向流減圧させて、そして抜き出した残留ガスの一部を、処理をする不純なガスと混合する、改良したPSAプロセスについて記載している。これは、NFが強く吸着される物質種であるので、NFに対しては効果がないであろう。また、不純物は、NFよりもさらに強く吸着され、脱圧ステップでは除去されないであろう。NFのプロセスに関して、吸着剤の加熱は、サイクルの再生の一部の間に必須である。
【0016】
特許文献7は、吸着剤の排出(再生)の間に空間のガスを中間容器に貯蔵する、改良したPSA法について記載している。この改良は、生成ガス及び吸着した不純物ガスが、吸着剤の減圧によって簡単に除去されることが必要である。NFと吸着した不純物との両方が、強く吸着剤に結合されるので、入熱が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】米国特許第4156598号
【特許文献2】米国特許第4933158号
【特許文献3】米国特許第5069887号
【特許文献4】米国特許第5417742号
【特許文献5】米国特許第5425240号
【特許文献6】米国特許第5254154号
【特許文献7】米国特許第5620501号
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】Weiss,R.F.、J.Muhle、P.K.Salameh、及びC.M.Harth(2008),Nitrogen trifluoride in the global atmosphere, Geophys.Res.Lett.,35,L20821,doi:10.1029/2008GL035913.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明は、共吸着したNFの10〜100%を回収する、新規なTSAサイクルである。このTSAサイクルでは、吸着剤が不純物で飽和する前に、制御機構を用いて、吸着を止める。そして、不活性ガス(並流又は向流のどちらか)を用いて、NFの10〜100%を飽和した吸着剤から解放する。この不活性ガスの流出成分は、運転中の容器の流出成分と混合させることができ、又は運転中の容器の供給成分にリサイクルすることができる。
【0020】
この新規のTSAサイクルの利点は、共吸着したNFの10%〜100%が大気中に排出されずに、生成物として得られることである。それゆえ、NFの全体のプロセス収率が向上する。
【0021】
さらなる利点は、吸着剤の寿命を延長させることである。従来のTSAでは、再生ステップの間に吸着剤と共に急加熱した場合、NFは分解し、吸着剤構造物と反応し、それによって不純物を吸着する材料の性能を低下させることがある。この回収ステップは、制御した様式で、吸着剤の劣化を減少し又は防止して、NFを除去する。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明は、次のステップを含む、それぞれが吸着剤を含む少なくとも2つの容器を有するシステムにおいて、原料NFガス流れから少なくとも一種の不純物を除去する方法に関する:
該原料NFガス流れを第一の容器の第一の吸着剤に流通させて、該少なくとも一種の不純物を選択的に吸着させるステップ;
所定の時間の後、又は該第一の吸着剤の流出成分が、該少なくとも一種の不純物の所定のレベルに達したときに、該原料NFガス流れを、第二の容器の第二の吸着剤に変向させるステップ;
回収パージガスを該第一の吸着剤に流通させて、共吸着したNFを該第一の吸着剤から選択的に脱着させるステップ;
所定の時間で、又は該回収パージガスの流出成分が、該少なくとも一種の不純物の所定のレベルに達したときに、若しくは共吸着したNFの所定の百分率に達したときに、該回収パージガスの流れを止めるステップ;
再生パージガスを該第一の吸着剤に流通させて、吸着した少なくとも一種の不純物及び残留している共吸着したNFを該第一の吸着剤からパージするステップ;及び
該再生パージガスの流れを止めるステップ。
【0023】
該回収パージガスを該第一の吸着剤に流通させることによって、該共吸着したNFの10〜100%を回収する。
【0024】
この方法は、さらに次のステップを含む:
所定の時間の後、又は該第二の吸着剤の流出成分が該少なくとも一種の不純物の所定のレベルに達したときに、該原料NFガス流れを、該第一の容器の該第一の吸着剤に変向し戻すステップ;
該回収パージガスを該第二の吸着剤に流通させて、該共吸着したNFを該第二の吸着剤から選択的に脱着させるステップ;
所定の時間で、又は該回収パージガスの流出成分が該少なくとも一種の不純物の所定のレベル若しくは共吸着したNFの所定の百分率に達したときに、該回収パージガスの流れを止めるステップ;
該再生パージガスを該第二の吸着剤に流通させて、吸着した少なくとも一種の不純物及び残留している共吸着したNFを該第二の吸着剤からパージするステップ;及び
該再生パージガスの流れを止めるステップ。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、向流を用いたNFの回収用装置を概略的に示す。
【図2】図2は、並流を用いたNFの回収用装置を概略的に示す。
【図3】図3は、例1に関する、NF及びNOの規格化した回収率を時間の関数として示す。
【図4】図4は、例2に関する、NF及びNOの規格化した回収率を時間の関数として示す。
【図5】図5は、例3に関する、NF及びNOの規格化した回収率を時間の関数として示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は、新規なTSAサイクルを開示する。これは、NFの精製のための従来の温度スイング吸着(TSA)法で、NFを回収する方法を教示する。本発明は、NFに関する合成方法とは独立であり、またあらゆる前の又は続く精製の単位操作(例えば、加水分解性の不純物を除去するための湿式スクラバー、非吸収性の不純物を除去するための蒸留)とは独立である。
【0027】
このシステムは、並列に配置した2つのカラム又は容器(カラムと容器は、相互に置き換え可能である)を含み、それぞれが吸着体又は吸着剤(吸着体と吸着剤は相互に置き換え可能である)を有するものとして記載される。しかし、本発明は、2つの容器及び2つの吸着剤を持つシステムに限定せず、3つ以上の容器及び3つ以上の吸着剤を有することができる。
【0028】
従来のTSA法は、次の2つのステップ:吸着及び再生からなる。本発明の新規のTSA法は、吸着ステップと再生ステップとの間に追加のステップ、回収を含む。新規のTSA法は、3つのステップ、吸着、回収及び再生からなる。
【0029】
吸着ステップでは、吸着可能な不純物を含有する、不純なNF供給の流れ(原料NF)を、第一の容器の第一の吸着剤に通過させる。この吸着剤は、吸着可能な不純物を優先的に吸着し、それにより吸着可能な不純物をNFから実質的に除去する。また、NFの一部を、共吸着する。これは、所定の処理時間が経過するか、不純物が吸着剤を破過(breakthrough)して吸着剤流出成分が許容不能な濃度になるかのどちらかの時点まで続ける吸着ステップを含む。その後、不純なNF供給の流れを、第二の容器の第二の吸着剤に変向させる。
【0030】
回収ステップでは、共吸着したNFの10〜100%を回収する。これは、吸着したNFを実質的に脱着させる一方で、あらゆる吸着した不純物を最小限で脱着させるのに適切な条件の下で、通常は不活性ガスである回収パージガスを、向流か並流かのどちらかで第一の容器に通過させ、そしてその流出不活性パージガスと、運転中の第二の容器に向かう不純なNF供給の流れとを混合させることによって行う。回収ステップを、所定の時間の間、又は回収パージガスの流出成分が、少なくとも1種の不純物の所定のレベルに達した時か、共吸着したNFが所定の百分率、例えば10%〜100%までに達した時かのどちらかまで続ける。100%は、全てのNFが回収されることを意味する。
【0031】
最後の再生ステップでは、通常は吸着した不純物のリバーサル温度(reversal temperature)より高い温度に加熱した不活性パージガスである、再生パージガスの流れを、容器に通気させて、吸着した不純物及び残留している共吸着したNFを除去して、TSAサイクルを完了させる。
【0032】
本明細書で用いられる「リバーサル温度」とは、本分野で十分に明確である。Yang,R.,Gas Separation By Adsorption Processes, Boston, Butterworths,1987, pp171−172を参照できる。
【0033】
他の一実施態様では、吸着可能な不純物のための追加の容積を、第一の吸着剤の底部に残しながら、吸着ステップを、不純物の破過の前に止める。
【0034】
続く回収ステップでは、パージガスを並流で第一の容器に通過させ、そしてNF及び脱着した不純物の流出成分を容器出口で監視することによって、共吸着したNFの10〜100%を回収する。回収容器からのパージガス流出成分を、運転中の容器からの流出成分と混合し、そして続く単位操作に直接的に送る。回収の吸着剤の使用されてない底部は、脱着する不純物を吸着するので、容器の流出成分は、不活性ガスとNFのみを含有するであろう。
【0035】
随意に、不純物を破過として検出したとき、脱着する不純物を下流に送らず、回収容器の流出成分を、上記のような運転中の容器への原料の供給成分と混合して、さらに追加的にNFを捕捉してもよい。
【0036】
所定の回収時間が経過するか、脱着する不純物が所定の濃度に達したか、又は所定の百分率の共吸着したNFが回収されるかしたら、再生ステップを上述の実施態様と同様に実行する。
【0037】
現行のNF精製プロセスでは、回収ステップは、大気に排出するNFの量を最小化し、NFの全体のプロセス収率を向上させ、さらに再生ステップの間に残留NFによって引き起こされる劣化を制限することで、吸着剤の寿命を延長させる。
【0038】
NF製造プロセスで吸着により除去される典型的な不純物としては、NO、CO、HO、OF、SF、CF、C及びこれらの混合物が挙げられる。
【0039】
不純物を選択的に吸着する、NF製造プロセスで用いられる典型的な吸着剤は、NFを共吸着してもよい。吸着剤は、本分野で知られている吸着剤のいずれかである。吸着剤は、好ましくは、FAU、MOR、CHA、OFF、ERI、FER、GME、LEV、EMT、BEA、MAZ、LTA、LTL、MFI、MEL、MTW、MEI、MFS、及びNESの構造又はこれらの組み合わせを有するものから選択されるアルミノケイ酸塩ゼオライトである。例としては、Na−MOR、Ca−LTA、Na−FAU及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0040】
回収プロセスで用いられる典型的なパージガスは、ヘリウム、窒素又はアルゴンである。典型的な再生ガスは、ヘリウム、窒素又はアルゴンである。これらは、例としてのみ与え、本発明はこれらの不純物、吸着剤、又は再生ガスに限定されない。
【0041】
吸着剤がNa−MORで、且つ回収ガス及び再生ガスがNというのは、好ましい組み合わせである。
【0042】
回収温度の範囲は、−20℃〜120℃の範囲であり、好ましくは4〜65℃、さらに好ましくは4〜30℃である。
【0043】
回収のモル質量速度(容器断面積で割った流量)は、0.2〜40kg−mol/mhr、好ましくは0.5〜15kg−mol/mhr、及び最も好ましくは1〜7kg−mol/mhrの範囲である。回収ガスの滞留時間は、0.1〜25分、好ましくは0.3〜10分、及び最も好ましくは0.7〜5分の範囲となる。回収ガスの圧力は、0.2〜3atmの範囲となる。
【0044】
再生温度は、35〜450℃の範囲となる。
【0045】
解析器は、NF濃度及び吸着可能な不純物の濃度を定量化するのに有用な複数の方法のいずれかとすることができ、例えば、限定されないが、ガスクロマトグラフィー、赤外分光法、又は質量分析が挙げられる。
【0046】
この方法では、複数の特定の流路の選択肢及び下記のような複数の実施態様がある。
【0047】
本発明の一実施態様を、図1に示す。
【0048】
図1は、向流の流れで回収ステップを実行するための装置を概略的に示す。
【0049】
この装置は、2つの容器1及び2を有し、これらは、吸着剤、原料NF用の入口導管3、精製NF用の出口導管13、排ガス用の排出導管14、例えば不活性ガスを供給する、回収パージガス及び再生パージガスの両方用の他の一つの導管8、回収ガス/再生ガスの流れを制御するための流れ要素10、並びに回収パージガス/再生パージガスを加熱するための加熱要素11及び加熱制御システム12を備え、随意にNF/不純物解析器17も備える。二つの容器を与え、それにより一つの容器が、回収ステップ若しくは再生ステップにあり、又は待機中であるときに、他の容器を運転させて、連続運転を可能とする。
【0050】
向流の回収ステップを含むプロセスサイクルは次のとおりである。
【0051】
吸着ステップの間に、原料NFガス流れを、3からバルブ5−1を通じて容器1の吸着剤へと流す。そして、容器1からバルブ7−1を通じて出口13へと流す。容器1の吸着剤への流通を、実行時間により、又はバルブ19−1を通じた随意の解析器17での不純物の検出により決められるような、吸着剤流出成分中への吸着した不純物の破過まで続ける。
【0052】
吸着剤流出成分中への吸着した不純物の破過を決めたら、バルブ5−2及び7−2を開く。バルブ5−1は開いたままであるが、バルブ7−1を閉じて、原料NFを容器2の吸着剤に流通させる。容器2は、この時運転中である。容器2は、回収の準備中である。
【0053】
回収ステップは、バルブ9及び6−1を開けることで、入口導管8から来る回収パージガスを容器1の吸着剤に流通させることで開始する。回収パージガスの流れを、10で設定し、且つ回収温度を、12で設定する。回収パージガスが第一の容器を通るときに、吸着した不純物を最小限にのみ脱着しながら、吸着したNFを実質的に脱着する。
【0054】
吸着剤からの流出ガス又は回収ガス、すなわちNF及び低濃度の1種以上の不純物を含有するパージガスは、容器1から出る。流出ガスは、供給の原料NFガス流れと、開いたバルブ5−1を通じて混合し、そして、供給の原料NFガス流れと共に、吸着ステップで運転中の第二の容器へと向かう。
【0055】
バルブ15−1を開けることで、随意のNF/不純物解析器17を用いて、回収の進捗を監視することができる。
【0056】
回収ステップを、設定時間で実行することができ、又はバルブ19−1を通って解析器17で観察されるような回収ガス中のNF/不純物濃度によって管理することができる。10〜100%の吸着したNFを容器1の吸着剤から取り除き、そしてバルブ5−1を通じて運転中の容器2に流したら、回収パージガスを9で止めて、バルブ5−1を閉じて、且つバルブ4−1を開く。
【0057】
再生ステップは、9を開き、そして再生パージガス流れを再開することにより開始する。再生パージガス流れを10で設定し、且つ回収温度を12で設定して、再生パージガスを、バルブ6−1、容器1の吸着剤、バルブ4−1に流通させ、そして排出導管14から流出させる。
【0058】
吸着した不純物及び残留している共吸着したNFを、容器1の吸着剤から除去し、そして排出口14から排出させたら、加熱要素11を止める。容器1を周囲温度に冷却した後、再生パージガス流れを減少させ、又は止めて、運転中の容器2が飽和するまで容器1を待機させる。容器2が飽和したら、容器1を運転状態にし、そして容器2の吸着剤に共吸着したNFをここで回収した後、同様の様式で再生をする。
【0059】
本発明の他の一つの実施態様を、図2に示す。
【0060】
図2は、並流の流れで回収ステップを実行するための装置を概略的に示す。
【0061】
導管23を追加して回収ガスを容器の吸着剤に並流で流通させる以外は、装置の主要部は、図1で示した実施態様と同一である。随意の容器間解析タップ22を追加して、吸着剤の下流部分を、吸着した不純物のない状態にして、NFの回収ステップを促進することができる。
【0062】
並流の回収ステップを含むプロセスサイクルは次のとおりである。
【0063】
吸着ステップの間に、原料NFガス流れを、3から、バルブ5−1を通じて容器1の吸着剤へと流す。そして、容器1からバルブ7−1を通じて出口13へと流す。実行時間によるか、バルブ19−1を通じた随意の解析器17での不純物の検出によるか、又はバルブ21−1を通じた解析器17での随意の容器間タップ22−1での不純物の検出により決定されるような、吸着剤流出成分中への吸着した不純物の破過まで、容器1の吸着剤への流通を続ける。
【0064】
吸着剤流出成分中への吸着した不純物の破過が決められると、バルブ5−2及び7−2を開く。バルブ5−1及び7−1を閉じて、原料NFを容器2の吸着剤に流通させる。容器2は、この時運転中となる。容器2は、回収の準備中である。
【0065】
回収ステップは、(バルブ9を開けることによって)入口導管8から来る回収パージガスを、導管23に流通して、(バルブ17−1を開けることによって)容器1の吸着剤に通過させることで開始する。回収パージガスの流れを、10で設定し、且つ回収温度を12で設定する。回収パージガスが第一の容器を通過するときに、吸着した不純物を最小限にのみ脱着させながら吸着したNFを実質的に脱着させる。
【0066】
流出ガス又は回収ガス、すなわちNF及び低濃度の1種以上の不純物を含有するパージガスは、容器1から出て、そして開いたバルブ18−1及び20−2を通って容器2の吸着剤に入る。
【0067】
流出ガスは、開いたバルブ5−2を通る供給の原料NFガス流れと混合し、そして吸着ステップのために運転中の第二の容器へと向かう。
【0068】
バルブ19−1を通じて、随意のNF/不純物解析器17を用いて、進捗を監視することができる。
【0069】
随意の容器間タップ22を使用して、吸着剤の一部を、吸着した不純物のない状態にする場合、随意に回収パージガスを、容器1の吸着剤に流通させ、吸着したNFを実質的に脱着させ、そして17−1及び7−1を開けることによって、容器2からの精製したNFと混合させることができる。
【0070】
回収したNFを導管13に直接的に流す随意のステップを用いる場合、回収ガスの流れを、上述したように、設定時間の後で、又はバルブ19−1を通って随意の解析器17で観察されるような回収ガス中のNF/不純物濃度によって管理して、容器2に変向することができる。
【0071】
回収ステップを、設定時間の間で実行することができ、又はバルブ19−1を通って随意の解析器17で観察されるような回収ガス中のNF/不純物濃度によって管理して実行することができる。
【0072】
吸着したNFの10〜100%を容器1の吸着剤から除去したら、回収パージガス/再生パージガスを9で止めて、バルブ7−1、17−1、18−1、20−2を閉じる。バルブ6−1及び4−1を開く。
【0073】
再生ステップは、9を開き、そして再生パージガス流れを再開することにより開始する。パージガスは、再生パージガス流れを10で設定し、且つ回収温度を12で設定して、15、バルブ6−1、容器1の吸着剤、バルブ4−1を流通して、そして排出導管14から流れ出る。
【0074】
吸着した不純物及び残留している共吸着したNFを、容器1の吸着剤から除去し、そして排出口14から排出させたら、加熱素子11を止める。容器1を周囲温度に冷却した後、再生パージガス流れを減少させ、又は止めて、容器1を、運転中の容器2が飽和するまで、待機させる。容器2が飽和したら、容器1を、運転状態にし、そして容器2の吸着剤に共吸着したNFをここで回収した後、同様の様式で再生をする。
【0075】
これら二つの実施態様は、図1及び2における経済的な2つの吸着剤システムを示す。運転中の容器の流れの背圧の制限が、回収容器からの流出成分の、運転中の容器の供給成分への混合を許容しないならば、3つの容器システムを使用することができ、この場合、回収容器からの流出成分を、第三の容器(予備容器)に送る。この予備容器は、再生した吸着剤を有する容器である。回収操作が完了したら、予備容器への流れを止めて、そして回収容器の加熱再生を開始する。不純物が、運転中の容器を破過したら、容器の同一性を変える:予備容器が運転中の容器になり、回収容器(この時再生されている)が予備容器になり、且つ運転中の容器が回収容器になる。
【実施例】
【0076】
図1に記載した2つの容器を含むシステムを実施例で用いた。二つの容器をNa−MORで充填して、70%のNF、20%N、10%のO及び100ppmのNOを含有する原料NFを精製した。除去すべき不純物は、NOであった。
【0077】
解析器17が、容器1の流出成分中に1ppmのNOを検出するまで、原料NFガスを容器1に流通させた。その後、原料NFガスの流れを容器2に切り替え、そして容器1は、次の例で記載したような回収工程及び再生工程を経た。
【0078】
例1
窒素パージガスを、モル質量速度28kg−mol/mhr、滞留時間0.17分、圧力1.1atm且つ室温で、向流で容器1に3.5時間流通させた(回収工程)。その後、290℃に加熱した(再生工程)。ガスクロマトグラフで、窒素流出成分中のNF及びNOの濃度を測定した。測定したNF及びNOの濃度での既知の流量は、窒素流出成分中のNFとNOの累積した量を計算することを可能とする。所定の時間で検出したNFとNOの集計量を、全解析期間にわたって検出したNFとNOの全合計量に規格化した。時間に対してプロットしたこれらの規格化した量を、注釈の図3に示した。
【0079】
例2
窒素パージガスを、モル質量速度28kg−mol/mhr、滞留時間0.17分、圧力1.1atm且つ54℃で、向流で容器1に4.5時間流通させた(回収工程)。その後、290℃に加熱した(再生工程)。解析データを、例1のように得て、そしてプロットした。時間に対してプロットした規格化したNFとNOの量を、注釈の図4に示した。
【0080】
例3
窒素パージガスを、モル質量速度5.6kg−mol/mhr、滞留時間0.87分、圧力1.1atm且つ室温で、向流で容器1に4.3時間流通させた(回収工程)。その後、モル質量速度を28kg−mol/mhrに上げて、温度を290℃にした(再生工程)。解析データを、例1のように得て、そしてプロットした。時間に対してプロットした規格化したNFとNOの量を、注釈の図5に示した。
【0081】
上記の例で示した回収ステップ又は回収工程を、所定の時間で実行することができ、又は随意の解析器で観察されるような回収ガス中のNF/不純物濃度によって管理して、実行することができる。
【0082】
再生ステップ又は再生工程を、上記のように実行することができる。
【0083】
これらの例は、最も効率的なNFの回収が、比較的低い周囲温度の流れからはじめる場合に得られるという驚くべき結果を示した。このNFの脱着は、拡散律速であるということが示され、ここではNFの脱着は、実質的に平衡制御(equilibrium controlled)された。
【0084】
平衡制御脱着は、拡散律速脱着に対して、比較的強い温度依存性を有する。それゆえ、例2と例3との対比では、中間の温度の54℃に回収パージガスを加熱することが、NFの脱着を促進したが、同時にNOの脱着をさらに強く促進させた。しかし、回収工程におけるNOの脱着は、望ましくない。
【0085】
例1と例3の対比は、比較的高い流量で、平衡制御脱着が、さらに強く促進したことを示している。
【0086】
それゆえ、吸着した不純物を最小限にのみ脱着させながら、吸着したNFを効率的に脱着するために、回収パージガスは、好ましくは、比較的低い周囲温度〜40℃、より好ましくは4〜30℃;及び比較的低いモル質量速度0.5〜15kg−mol/mhr、最も好ましくは1〜7kg−mol/mhrを有する。
【0087】
一方で、再生パージガス(回収パージガスと同じガスにすることができる)は、不純物を脱着させるために、好ましくは、比較的高い温度50〜450℃、及び比較的高いモル質量速度5〜50kg−mol/mhrを有する。
【0088】
回収パージガスと再生パージガスが同じ場合、再生パージガスの温度は、回収パージガスの温度より高い。再生パージガスの流量も比較して高い。
【0089】
前述の例及び好ましい実施態様の記載は、請求項により定義した本発明を制限するのではなく、例証として理解されるべきである。容易に理解されるように、上述の特徴の多数の変形及び組み合わせを、請求項に定義した本発明から離れることなく用いることができる。そのような変形は、本発明の精神及び範囲から離れるものとみなされるのではなく、これら全ての変形は、次の特許請求の範囲内に含まれると意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次のステップを含む、それぞれ吸着剤を含む少なくとも2つの容器を有するシステムにおいて、原料NFガス流れから少なくとも一種の不純物を除去する方法:
前記原料NFガス流れを第一の容器の第一の吸着剤に流通させて、前記少なくとも一種の不純物を選択的に吸着させるステップ;
所定の時間の後、又は前記第一の吸着剤の流出成分が、前記少なくとも一種の不純物の所定のレベルに達したときに、前記原料NFガス流れを、第二の容器の第二の吸着剤に変向させるステップ;
回収パージガスを前記第一の吸着剤に流通させて、共吸着したNFを前記第一の吸着剤から選択的に脱着させるステップ;
所定の時間で、又は前記回収パージガスの流出成分が、前記少なくとも一種の不純物の所定のレベルに達したときに、若しくは共吸着したNFの所定の百分率に達したときに、前記回収パージガスの流れを止めるステップ;
再生パージガスを前記第一の吸着剤に流通させて、吸着した少なくとも一種の不純物及び残留している共吸着したNFを前記第一の吸着剤からパージするステップ;及び
前記再生パージガスの流れを止めるステップ。
【請求項2】
温度スイング吸着(TSA)である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第一の吸着剤からの前記回収パージガスの前記流出成分が、
(1)前記第二の吸着剤の流出成分と混合する;又は
(2)前記回収パージガスの前記流出成分が、前記少なくとも一種の不純物の所定のレベルに達したときに、前記第二の吸着剤に向かう前記原料NFガス流れと混合する、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも一種の不純物が、NO、CO、HO、OF、SF、CF、C及びこれらの混合物からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記吸着剤が、FAU、MOR、CHA、OFF、ERI、FER、GME、LEV、EMT、BEA、MAZ、LTA、LTL、MFI、MEL、MTW、MEI、MFS、NES及びこれらの組み合わせからなる群より選択される構造を有するアルミノケイ酸塩ゼオライトである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記吸着剤が、Na−MOR、Ca−LTA、Na−FAU及びこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記回収パージガスが、ヘリウム、窒素及びアルゴンからなる群より選択され、且つ前記再生パージガスが、ヘリウム、窒素及びアルゴンからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記回収パージガスの前記第一の吸着剤への前記流通が、前記第一の吸着剤への前記原料NFガス流れの前記流通と同じ方向(並流)である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記回収パージガスの前記第一の吸着剤への前記流通が、前記第一の吸着剤への前記原料NFガス流れの前記流通と反対の方向(向流)である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記再生パージガスの前記第一の吸着剤への前記流通が、前記第一の吸着剤への前記原料NFガス流れの前記流通と同じ方向(並流)である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記再生パージガスの前記第一の吸着剤への前記流通が、前記第一の吸着剤への前記原料NFガス流れの前記流通と反対の方向(向流)である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記回収パージガスが、−20〜120℃の範囲の温度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記回収パージガスが、4〜65℃の範囲の温度を有する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記回収パージガスが、4〜30℃の範囲の温度を有する、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記再生パージガスが、35〜450℃の範囲の温度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記回収パージガスが、0.2〜40kg−mol/mhrの範囲のモル質量速度、及び0.1〜25分の範囲の滞留時間を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記回収パージガスが、0.5〜15kg−mol/mhrの範囲のモル質量速度、及び0.3〜10分の範囲の滞留時間を有する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記回収パージガスが、1〜7kg−mol/mhrの範囲の流量、及び0.7〜5分の範囲の滞留時間を有する、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記共吸着したNFの10〜100%を、前記回収パージガスを前記第一の吸着剤に流通させる前記ステップで、前記第一の吸着剤から脱着させる、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
さらに次のステップを含む、請求項1に記載の方法:
所定の時間の後、又は前記第二の吸着剤の流出成分が、前記少なくとも一種の不純物の所定のレベルに達したときに、前記原料NFガス流れを、前記第一の容器の前記第一の吸着剤に変向し戻すステップ;
回収パージガスを前記第二の吸着剤に流通させて、共吸着したNFを前記第二の吸着剤から選択的に脱着させるステップ;
所定の時間で、又は前記回収パージガスの流出成分が、前記少なくとも一種の不純物の所定のレベルに達したときに、若しくは共吸着したNFの所定の百分率に達したときに、前記回収パージガスの流れを止めるステップ;
再生パージガスを前記第二の吸着剤に流通させて、吸着した少なくとも一種の不純物及び残留している共吸着したNFを前記第二の吸着剤からパージするステップ;及び
前記再生パージガスの流れを止めるステップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−251281(P2011−251281A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−89142(P2011−89142)
【出願日】平成23年4月13日(2011.4.13)
【出願人】(591035368)エア プロダクツ アンド ケミカルズ インコーポレイテッド (452)
【氏名又は名称原語表記】AIR PRODUCTS AND CHEMICALS INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】7201 Hamilton Boulevard, Allentown, Pennsylvania 18195−1501, USA
【Fターム(参考)】