説明

吸着用シート及び構造体

【課題】製造安定性が高く、吸着特性に優れた吸着用シート及び構造体を提供することである。
【解決手段】シート基材上に、下引き層、吸着層を順次設けてなる吸着用シートにおいて、前記下引き層がポリビニルアセタール系樹脂を含有してなり、吸着層が吸着剤とポリビニルアルコール系樹脂とを含有してなることを特徴とする吸着用シート及び構造体。ポリビニルアルコール樹脂がグラフト化ポリビニルアルコール樹脂であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸着と脱着が可能な吸着用シート及び構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
吸着剤の吸着能及び脱着能を利用して、有機ガス(VOC)、一酸化炭素、二酸化炭素、窒素酸化物(NO)等のガス除去システム、熱交換または熱移動システム、調湿(除湿または加湿)システム等が開発されている。これら各種システムで使用される構造体(吸着素子)は、紙、布帛、フィルム、多孔質フィルム、金属箔、金属板等のシート基材に、吸着剤とバインダーとを含有してなる吸着層が設けられた吸着用シートで構成されている。
【0003】
吸着用シートの吸着層は、吸着剤をバインダーとともに媒体である水に分散した塗工液をシート基材に塗工することで製造される(例えば、特許文献1〜3参照)。吸着剤としては、高吸水性高分子、カルボキシメチルセルロース等の有機系吸着剤、シリカゲル、セピオライト、ゼオライト、ベントナイト、アタパルジャイト、珪藻土、活性炭、多孔質金属酸化物、水酸化アルミニウム等の無機系吸着剤が主に用いられる。また、バインダーとしては、例えば、(メタ)アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、(メタ)アクリル・スチレン共重合樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂、スチレン・ブタジエン共重合樹脂、スチレン・アクリロニトリル・(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合樹脂、酢酸ビニル・(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合樹脂等の非水溶性高分子からなるエマルジョンが用いられる。しかしながら、バインダーとして、これらエマルジョンを用いると、塗工液のゲル化、吸着剤の沈降が起こって、吸着用シートの製造安定性が良くなかった。その結果、吸着層がムラになる、塗工量が低下する、塗工できない、吸着層とシート基材との結着力が低い、ハジキが発生する、吸着特性が低下する等の問題が発生していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−286460号公報
【特許文献2】特開2002−095964号公報
【特許文献3】特開2007−245025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、製造安定性が高く、また、吸着特性に優れた吸着層を有する吸着用シートと該吸着用シートを含有してなる構造体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、以下の発明を見出した。
(1)シート基材上に、下引き層、吸着層を順次設けてなる吸着用シートにおいて、前記下引き層がポリビニルアセタール系樹脂を含有してなり、吸着層が吸着剤とポリビニルアルコール系樹脂とを含有してなることを特徴とする吸着用シート、
(2)ポリビニルアルコール系樹脂がグラフト化ポリビニルアルコール系樹脂である上記(1)記載の吸着用シート、
(3)上記(1)または(2)に記載の吸着用シートを含有してなる構造体。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、製造安定性が高く、また、吸着特性に優れた吸着層を有する吸着用シートと構造体を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、シート基材上に、下引き層、吸着層を順次設けてなる吸着用シートにおいて、前記下引き層がポリビニルアセタール系樹脂を含有してなり、吸着層が吸着剤とポリビニルアルコール系樹脂とを含有してなることを特徴とする吸着用シートである。
【0009】
本発明において、下引き層がポリビニルアセタール系樹脂を含有していると、シート基材と吸着層の接着性が向上するという効果が得られる。ポリビニルアセタール系樹脂は、ポリビニルアルコール系樹脂をアルデヒド類またはアセタール類でアセタール化することにより得られる樹脂である。アルデヒド類またはアセタール類としては、炭素数1〜20の直鎖あるいは分岐鎖状のアルキル基を有するアルキルアルデヒド類またはアセタール類;クロロメチル基、ブロモメチル基、アミノメチル基、7−カルボキシヘプチル基、ベンジル基などの置換アルキル基を有するアルキルアルデヒド類またはアセタール類;フェニルアルデヒド;ベンゼン環にアルキル基、アルコキシ基、アミノ基、カルボキシル基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子などの置換フェニル基を有するフェニルアルデヒド類またはアセタール類;ビニル基、2−メチルビニル基などのアルケニルアルデヒド類またはアセタール類などを挙げることができる。ポリビニルアセタール系樹脂として、ポリビニルブチラール樹脂を使用することが好ましく、シート基材と吸着層との接着性がより向上する。
【0010】
本発明において、吸着層は吸着剤とポリビニルアルコール系樹脂を含有してなる。ポリビニルアルコール系樹脂とは、その構成要素にビニルアルコール重合体を含有する樹脂のことを示す。ポリビニルアルコール系樹脂としては、ポリビニルアルコール;グラフト化ポリビニルアルコール系スチレン・ブタジエンラテックス、グラフト化ポリビニルアルコール系アクリルエマルジョン、グラフト化ポリビニルアルコール系エチレン・酢酸ビニルエマルジョン等のラテックスまたはエマルジョンにビニルアルコール重合体が吸着またはグラフト化したグラフト化ポリビニルアルコール系樹脂を用いることができる。
【0011】
吸着剤は、表面活性が高いことで、水分やガスを吸着することができるが、バインダーも付着しやすく、吸着用シートの吸着特性の低下といった問題が生じる。従来使用されていた非水溶性高分子のエマルジョンは、媒体である水への分散安定性を高めるために、アニオン性基、カチオン性基等の官能基が付与されている。そのため、非水溶性高分子は、吸着剤に付着しやすく、表面に被膜を形成したり、吸着剤の構造を変化させたりして、吸着特性を低下させてしまうという問題があった。また、吸着剤を含有する塗工液においては、吸着剤に非水溶性高分子のエマルジョンが付着して、塗工液がゲル化する問題やエマルジョンや吸着剤が沈降するという問題があった。本発明では、バインダーとして、ポリビニルアルコール系樹脂を用いているが、その官能基が反応性の低いアルコール系のヒドロキシル基として構築されているため、吸着剤表面に被膜を形成しにくく、また、吸着剤の構造を変化させにくい。その結果、吸着剤の吸着特性を低下させることなく、吸着層塗工液のゲル化や沈降を抑制して、高い流動性を保つことができ、吸着用シートの製造安定性を高めることができる。
【0012】
高重合度のポリビニルアルコール系樹脂は、粘性が高く、吸着層塗工液の流動性を低下させることがあるため、重合度の低いポリビニルアルコール系樹脂を使用することが好ましい。重合度は、200〜4500であることが好ましく、200〜3000であることがより好ましく、250〜2000であることがさらに好ましい。また、けん化度は、変性基の有無及びその種類に依存して変るが、40〜99.99モル%であることが好ましく、50〜99.9モル%であることがより好ましく、60〜99.5モル%であることがさらに好ましい。グラフト化ポリビニルアルコール系樹脂は、重合度の低いビニルアルコール重合体が使用されているため、吸着層塗工液の流動性を上げることができ、バインダーとしてより好ましく使用される。
【0013】
吸着剤としては、珪素、チタン、アルミニウム、タンタル、バナジウム、ジルコニウム、亜鉛、マグネシウム、カルシウム等から選ばれる少なくとも1種の金属原子の酸化物を含有してなり、その形態としては、多数の細孔を有する粒状体、一次粒子径が数nmの単独粒子が複数凝集してなる複合粒子、管状体、繊維状物の凝集体等が挙げられる。より具体的には、非晶質アルミニウム珪酸塩、多孔質シリカ、メソポーラスシリカ、ゼオライト、シリカゲル、繊維状または管状のアルミニウム珪酸塩、繊維状または管状の酸化チタン、珪藻土等を挙げることができる。さらに、高吸水性高分子、カルボキシメチルセルロース等の有機系吸着剤を使用することもできる。
【0014】
本発明において、吸着層における吸着剤とポリビニルアルコール系樹脂との質量比率は93/7〜70/30が好ましく、92/8〜75/25がより好ましく、92/8〜85/15がさらに好ましい。質量比率が93/7を超えた場合、シート基材に塗工した後、結着力が不足するため、吸着剤が剥離してしまう場合がある。質量比率が70/30未満の場合、添加されるポリビニルアルコール系樹脂の量が多いため、吸着剤をポリビニルアルコール系樹脂が被覆して、吸着特性を低下させてしまう場合や吸着剤の塗工液における分散性が低下する場合がある。
【0015】
吸着層塗工液に用いる媒体は、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、メチルエチルケトン等の有機溶剤または水を用いることができるが、生産性、環境面、安全面等を考慮すると、水または水と有機溶媒の混合液を用いることが好ましく、水を用いることが特に好ましい。
【0016】
吸着層塗工液の固形分濃度は20〜35質量%であることが好ましい。吸着剤を媒体中に分散させるとき、その比表面積が大きく、吸着特性が高い吸着剤ほど、媒体分子やバインダーが吸着して、塗工液が増粘する現象が起こる。ゆえに、吸着層塗工液の流動性を保持するためには、BET比表面積800m/g以上の吸着剤では、吸着層塗工液の濃度が20〜30質量%であることが好ましく、20〜25質量%であることがより好ましい。BET比表面積800m/g未満においては、25〜35質量%が好ましく、30〜35質量%がより好ましい。
【0017】
吸着剤として、非晶質アルミニウム珪酸塩または珪藻土など、天然または合成の粘土鉱物の構成成分を含有する場合、その吸着剤は粘土様の性質を示す。よって、これらを用いる場合、比表面積が小さくとも、その分散液の粘度は高く、吸着層塗工液の固形分濃度が20〜30質量%であることが好ましく、20〜25質量%であることがより好ましい。
【0018】
本発明において、シート基材に下引き層を設ける方法としては、コーティング法を用いる。下引き層塗工液としては、ポリビニルアセタール系樹脂を媒体に溶解した液を用いることができる。媒体としては、アルコール、ケトン等の有機溶剤を単独または混合して用いることができる。下引き層塗工液の濃度は、コーティングには、サイズプレス、ゲートロールコーター、エアナイフコーター、ブレードコーター、コンマコーター、バーコーター、グラビアコーター、キスコーター、スプレーコーター等の含浸または塗工装置を使用することができる。下引き層塗工液の濃度は、含浸または塗工装置の種類、塗工量によって、適宜決定する。
【0019】
本発明において、下引き層上に吸着層を設ける方法としては、コーティング法を用いる。コーティングには、サイズプレス、ゲートロールコーター、エアナイフコーター、ブレードコーター、コンマコーター、バーコーター、グラビアコーター、キスコーター、スプレーコーター等の含浸または塗工装置を使用することができる。
【0020】
吸着層または下引き層の塗工液には、生産性を高めるために、破泡剤や架橋剤を添加することができる。
【0021】
下引き層の塗工量としては、シート基材に対して、乾燥質量で、5〜200g/mであることが好ましく、10〜100g/mであることがより好ましく、10〜50g/mであることがさらに好ましい。200g/mを超えた場合、下引き層上に吸着層を塗工した際、シート基材からの脱離を起こす可能性や、構造体の有効空間の閉塞を起こす可能性がある。また、5g/m未満では、吸着層の所望の塗工量を達成できない場合や吸着層がシート基材から脱落する場合がある。
【0022】
吸着層の塗工量としては、要求される吸着特性に応じて適宜設定することが可能であり、特に限定はされないが、シート基材に対して、吸着剤の量が10〜200g/mであることが好ましく、20〜100g/mであることがより好ましく、30〜70g/mであることがさらに好ましい。200g/mを超えた場合、吸着層の内奥部の吸着剤が吸着に寄与しなくなる恐れがある。さらに、構造体の有効空間の閉塞を起こす可能性がある。また、10g/m未満では、所望の吸着特性を達成できない場合がある。
【0023】
本発明の吸着用シートにおいて、吸着剤の吸着特性を補強する物質(補強物質)を吸着剤に担持させたり、吸着層に含有させたりすることができる。例えば、金属、金属イオン;塩化リチウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム等のハロゲン化金属塩;硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸亜鉛等の金属硫酸塩;酢酸カリウム等の金属酢酸塩;塩酸ジメチルアミン等のアミン塩類;オルトリン酸等のリン酸化合物;塩酸グアニジン、リン酸グアニジン、スルファミン酸グアニジン等のグアニジン塩;水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物等;イオン性液体;シリカゲル、活性炭、ゼオライト等の多孔質材料を挙げることができる。これらの補強物質は吸着層塗工液に添加してもよいし、吸着層を設けた後に、補強物質塗工液を塗工することもできる。
【0024】
シート基材としては、例えば、紙、多孔質フィルム、織布、乾式不織布、湿式不織布、編物等の多孔質基材、フィルム、板状物等の無孔質基材がある。これらの基材は、単独で用いてもよいし、貼り合わせ等によって積層複合化して用いてもよい。
【0025】
紙、織布、乾式不織布、湿式不織布、編物を構成する繊維としては、オレフィン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルエーテル樹脂、ポリビニルケトン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ジエン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、フラン樹脂、尿素樹脂、アニリン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリイミド系樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂を含有してなる繊維を用いることができる。また、木材パルプ、楮、三椏、藁、ケナフ、竹、リンター、バガス、エスパルト、サトウキビ等の植物繊維、あるいはこれらを微細化したものを用いることができる。さらに、セルロース再生繊維であるリヨセル繊維、レーヨン繊維、アセテート等の半合成繊維、ステンレスやニッケルウール等の金属繊維、炭素繊維、セラミック繊維、ガラス繊維等も用いることができる。
【0026】
フィルム、多孔質フィルム、板状物を構成する樹脂としては、オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルエーテル樹脂、ポリビニルケトン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ジエン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、セルロース系樹脂、ポリイミド系樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、フラン樹脂、尿素樹脂、アニリン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリイミド系樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂などを用いることができる。また、多孔質フィルムとしては、パンチングメタルシート、発泡金属シート、無機粒子の凝集体フィルムといった無機多孔質フィルムを使用することもできる。フィルムや板状物として、金属箔、金属板を使用してもよい。
【0027】
構造体とは、シート基材に下引き層、吸着層を設けた後、プリーツ加工、コルゲート加工、積層加工、ロールコア加工、ドーナッツ加工などの二次加工し、三次元構造を持たせたものである。シート基材に下引き層を設けた後、二次加工を行ってから、吸着層を設けてもよいし、先にシート基材を二次加工してから、下引き層及び吸着層を設けてもよい。
【実施例】
【0028】
次に、本発明を実施例によって、さらに詳細に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
【0029】
実施例1
<下引き層の作製>
1.5質量部のポリビニルブチラール(電気化学工業社製、商品名:6000−C)、30質量部のメタノール、55質量部の2−プロパノール、15質量部の1−ブタノールを混合して、下引層塗工液を作製し、厚さ200μmのアルミニウム箔に乾燥質量で15g/mになるように、バー塗工を行い、下引き層を作製した。
【0030】
<吸着層の作製>
吸着剤である非晶質アルミニウム珪酸塩を水に20質量%添加し、よく撹拌混合させ、ホモジナイザーにて2000rpm、20分間ホモジナイズして粒子の分散性を上げ、吸着剤分散液を得た。この吸着剤分散液に、吸着剤/ポリビニルアルコール質量比率が90/10になるように、ポリビニルアルコール(日本酢ビ・ポバール社製、商品名:JP45)を添加し、よく混合して、吸着層塗工液を作製した。
【0031】
なお、非晶質アルミニウム珪酸塩は、以下の方法で調製した。Si濃度が383mmol/Lになるように、純水で希釈したオルトケイ酸ナトリウム水溶液400mlを調製した。また、これとは別に、塩化アルミニウムを純水に溶解させ、Al濃度が450mmol/Lの水溶液400mlを調製した。次に、塩化アルミニウム水溶液にオルトケイ酸ナトリウム水溶液を混合し、マグネティックスターラーで撹拌した。このときのSi/Al比は0.85であった。さらに、この混合溶液に1N水酸化ナトリウム水溶液18mlを滴下し、pHを7とした。この溶液から遠心分離により前駆体を回収し、4Lの純水中に分散させた。室温下で1時間撹拌した後、4Lの密閉容器に移し替え、恒温槽にて98℃で2日間加熱を行った。冷却後、遠心分離により3回洗浄後、60℃で乾燥を行い、非晶質アルミニウム珪酸塩を得た。透過型電子顕微鏡と走査型電子顕微鏡で、非晶質アルミニウム珪酸塩を観察したところ、一次粒子径は2〜5nmの粒子からなる粒子径2〜40nmの複合粒子が0.1〜100μmの凝集構造体を構成していて、該凝集構造体に2〜20nmの細孔があった。
【0032】
得られた吸着層塗工液を用いて、バー塗工にて、乾燥質量で30g/mになるように、下引き層上に吸着層を塗工し、吸着用シートを得た。
【0033】
実施例2
ポリビニルアルコール(日本酢ビ・ポバール社製、商品名:JP45)の代わりに、グラフト化ポリビニルアルコール系スチレン・ブタジエンラテックス(日本ゼオン社製、商品名:PMT7833)を使用した以外は、実施例1と同様にして、吸着用シートを得た。
【0034】
実施例3
ポリビニルアルコール(日本酢ビ・ポバール社製、商品名:JP45)の代わりに、グラフト化ポリビニルアルコール系アクリルエマルジョン(日信化学工業社製、商品名:ビニブラン(登録商標)2684)を使用した以外は、実施例1と同様にして、吸着用シートを得た。
【0035】
実施例4
ポリビニルアルコール(日本酢ビ・ポバール社製、商品名:JP45)の代わりに、グラフト化ポリビニルアルコール系エチレン・酢酸ビニルエマルジョン(中央理化工業社製、商品名:リカボンド(登録商標)BEF985−7)を使用した以外は、実施例1と同様にして、吸着用シートを得た。
【0036】
実施例5
吸着剤をシリカゲルA型(豊田化工社製、商品名:トヨタシリカゲルA)にした以外は、実施例2と同様にして、吸着用シートを得た。
【0037】
実施例6
吸着剤をシリカゲルB型(豊田化工社製、商品名:トヨタシリカゲルB)にした以外は、実施例2と同様にして、吸着用シートを得た。
【0038】
実施例7
吸着剤を多孔質シリカ(水澤化学工業社製、商品名:ミズカソープ(登録商標)S−0)にした以外は、実施例2と同様にして、吸着用シートを得た。
【0039】
実施例8
吸着剤をメソポーラスシリカにした以外は、実施例2と同様にして、吸着用シートを得た。
【0040】
実施例9
吸着剤を珪藻土にした以外は、実施例2と同様にして、吸着用シートを得た。
【0041】
実施例10
吸着剤を繊維状酸化チタンにした以外は、実施例2と同様にして、吸着用シートを得た。なお、繊維状酸化チタンは、以下の方法で調製した。ゾルゲル法によって得られたアナターゼ酸化チタン粒子に、20mol/kg濃度の水酸化カリウム水溶液を加え、温度120℃で24時間加熱して得られたスラリー状物を繰り返し水洗し、さらに、酢酸で中和し、再度充分に水洗して、余剰のイオン成分を除去した後、遠心分離器によって、濃度20質量%の網状に凝集した繊維状酸化チタン分散液を得た。これの一部を乾燥させて、粉末を取り出し、BET法による比表面積を測定したところ、350m/gであった。
【0042】
実施例11
吸着剤をゼオライト13Xにした以外は、実施例2と同様にして、吸着用シートを得た。
【0043】
比較例1
ポリビニルアルコール(日本酢ビ・ポバール社製、商品名:JP45)の代わりに、バインダーをアクリル・コロイダルシリカエマルジョン(ニチゴー・モビニール社製、商品名:モビニール(登録商標)8020)を使用した以外は、実施例1と同様にして、吸着用シートを得た。
【0044】
比較例2
ポリビニルアルコール(日本酢ビ・ポバール社製、商品名:JP45)の代わりに、スチレン・ブタジエンラテックス(日本ゼオン社製、商品名:ニッポール(登録商標)S6)を使用した以外は、実施例1と同様にして、吸着用シートを得た。
【0045】
比較例3
ポリビニルアルコール(日本酢ビ・ポバール社製、商品名:JP45)の代わりに、アクリルエマルジョン(JSR社製、商品名:JSR3600H)を使用した以外は、実施例1と同様にして、吸着用シートを得た。
【0046】
比較例4
厚み200μmのアルミニウム箔上に下引き層を設けなかった以外は、実施例2と同様にして、吸着用シートを得た。
【0047】
比較例5
厚み200μmのアルミニウム箔にPVA(日本酢ビ・ポバール社製、商品名:JP45)を、乾燥質量で15g/mになるようにバー塗工を行って下引き層を作製した以外は、実施例2と同様にして、吸着用シートを得た。
【0048】
実施例12
実施例2の吸着層塗工液に、補強物質(吸湿性無機塩)として、塩化マグネシウムを吸着剤に対して10質量%添加した以外は、実施例2と同様にして、吸着用シートを得た。
【0049】
実施例13
実施例1の吸着層塗工液に、補強物質(吸湿性無機塩)として、塩化マグネシウムを吸着剤に対して10質量%添加した以外は、実施例1と同様にして、吸着用シートを得た。
【0050】
実施例及び比較例で使用した吸着層塗工液並びに実施例及び比較例で得られた吸着用シートに対して、下記の評価を行い、結果を表1に示した。
【0051】
<塗工液分散性>
吸着層塗工液を作製する際に、分散性の良否を評価した。
分散性良好・・・・・・○
ゲル化発生・・・・・・×
【0052】
<結着力>
吸着用シートの吸着層塗工面にセロハンテープの粘着面を押し当て、吸着層の剥離具合を評価した。吸着用シートに、幅2.4cm×長さ4cmのセロハンテープを軽く接着させ、緩やかに脱着させる。セロハンテープの接着面の1cm×1cmを観察面とし、観察面に剥離した吸着層の剥離粒子数Dを計測し、以下のようにその結着力を評価した。
【0053】
剥離粒子数D
D≧50・・・・・・×
30≦D<50・・・△
D<30・・・・・・○
【0054】
<摩耗性>
摩耗性は、2cm幅の木綿製黒色布で吸着層を擦り、吸着層のアルミニウム箔からの剥離や吸着層の転写状態を観察し、以下のように判定した。
アルミニウム箔からの剥離・・・・・×
黒色布への転写・・・・・・・・・・△
剥離、転写無し・・・・・・・・・・○
【0055】
<吸着特性>
吸着特性は、水分吸湿による質量変化を測定する平衡吸湿量測定により行った。200mm×150mmの吸着用シートに含有される水分吸着剤の配合比をW(質量%)とし、温風乾燥機にて、温度90℃、120分の条件にて乾燥させたときの質量を絶乾質量WD1(g)とした。乾燥させた吸着用シートを温度25℃、相対湿度80%の条件下に調整した恒温恒湿槽内に少なくとも120分以上静置したときを吸湿平衡とみなし、そのときの質量を吸湿質量WA1(g)とし、吸着剤1gに対する吸湿量W(g/g)を下記の式より得た。
【0056】
(g/g)=[(WA1−WD1)/WD1]/(W/100)
【0057】
相対湿度変化による質量変化の影響が小さいアルミニウム製の容器の質量W(g)を室温下で測定した。吸着剤と空気との接触面が大きくなるように、吸着剤を薄く引き延ばすように、アルミニウム製の容器に設置して測定サンプルとした。温風乾燥機にて、温度90℃、120分の条件下で測定サンプルを乾燥したときの質量を絶乾質量WD2(g)とした。乾燥した測定サンプルを温度25℃、相対湿度80%の条件下に調整した恒温恒湿槽内に、少なくとも120分以上静置したときを吸着平衡とみなし、そのときの質量を吸着質量WA2(g)とし、吸着剤1gに対する吸湿量Wref(g/g)を下記の式より得た。
【0058】
ref(g/g)=[(WA2−WD2)/(WD2−W)]
【0059】
吸着特性Wを下記式により求めた。
【0060】
吸着特性W=W/Wref
【0061】
【表1】

【0062】
実施例1〜13で使用した吸着層塗工液は分散性が良好であったのに対し、比較例1〜3で使用した吸着層塗工液は調製中にゲル化した。ポリビニルアルコール系樹脂を使用した場合の吸着層塗工液調製における優位性を確認した。
【0063】
吸着層の結着力において、下引き層にポリビニルアセタール系樹脂を用いた実施例1〜13は良好であったのに対し、比較例1〜3は吸着層塗工液がゲル化した影響から、塗工することができなかった。比較例4は吸着層塗工液を塗工したところ、アルミニウム箔表面でハジキが発生し、海島状になって、均一な吸着層を形成することができなかった。さらに、吸着層が完全に剥離した。比較例5は、下引き層がポリビニルアルコールを含有しているため、下引き層用塗工液を塗工したときに、ハジキが生じた。さらに、吸着層塗工層は、下引き層とともに剥離を起こした。結着力においても、実施例1〜13の優位性が確認された。
【0064】
摩耗性評価において、結着力評価とほぼ同じ結果となり、実施例1〜13の優位性が確認された。
【0065】
実施例1〜11の吸着特性は、吸着剤単独での吸湿量に対して、0.9〜1.3倍と高く、ポリビニルアルコール系樹脂は吸着特性を低下させにくいことが確認された。実施例1〜4を比較すると、グラフト化ポリビニルアルコール系樹脂を使用した実施例2〜3の方が吸着特性に優れていた。グラフト化ポリビニルアルコール樹脂を使用することで、吸着層塗工液中における吸着剤の分散性が上がったため、吸着特性も向上したものと考えられる。
【0066】
補強物質として、吸湿性無機塩を添加した実施例12及び13は、実施例1及び2と比較して、より高い吸着特性を持つことが示された。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の吸着用シート及び構造体は、包装材料、除湿シート、内装材料、フィルター、調湿素子、熱交換素子等に使用することができ、例えば、ビル空調気化式加湿用素子、燃料電池用加湿用素子、除湿器用除湿素子、自動販売機等の吸水蒸散素子、冷却用吸水蒸散素子、デシカント空調の除湿ローター素子、全熱交換素子、有機ガス(VOC)、一酸化炭素、二酸化炭素、窒素酸化物(NO)等のガス除去システム、熱交換または熱移動システム、調湿(除湿または加湿)システム等に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート基材上に、下引き層、吸着層を順次設けてなる吸着用シートにおいて、前記下引き層がポリビニルアセタール系樹脂を含有してなり、吸着層が吸着剤とポリビニルアルコール系樹脂とを含有してなることを特徴とする吸着用シート。
【請求項2】
ポリビニルアルコール系樹脂がグラフト化ポリビニルアルコール系樹脂である請求項1記載の吸着用シート。
【請求項3】
請求項1または2に記載の吸着用シートを含有してなる構造体。

【公開番号】特開2011−206624(P2011−206624A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−74127(P2010−74127)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】