説明

吸音装置、及び写真処理装置

【課題】 吸音材の設置スペースを極力少なくすることができ、且つ効率の良い吸音効果を得ることのできる吸音装置を提供する。
【解決手段】 騒音発生源を包囲し、該騒音発生源からの騒音に含まれる低周波域の音を高周波域にシフトさせる周波数シフト体と、該周波数シフト体を包囲し、高周波域の音を吸音する吸音材とを備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、騒音発生源から発生する低周波を含んだ騒音を吸音する吸音装置、及び、感光材料の処理に伴って機器から発生する低周波を含んだ騒音を吸音する吸音装置を備えた写真処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、種々の装置を駆動するに際し、低周波域の音を含んだ騒音が発生する場合がある。すなわち、装置の何れかの構成が騒音発生源となって、低周波域の音を含んだ騒音を発生させる場合がある。
【0003】
例えば、感光材料に対して画像を形成する写真処理装置には、処理後の感光材料(プリント)を管理すべく、感光材料の乳剤面とは反対側の面(裏面)に管理用のコードを印字するドットプリンタを備えたものがあり、該ドットプリンタによって感光材料に対して印字を行うに際して低周波域の音を含んだ騒音が発生するといった問題がある。
【0004】
そこで、騒音対策として、ドットプリンタ(機器)の周囲にガラスウールや発泡ウレタン樹脂等からなる吸音材が設けられ、ドットプリンタからの騒音を吸音するように構成されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ガラスウールや発泡ウレタン樹脂等からなる一般的な吸音材は、高周波域の音を効果的に吸音することができるが、低周波域の音に対する吸音性が乏しく、該吸音材の厚みを極めて厚くしたり、低周波域の音を吸収する特殊な吸音材を別途設けたりしなければならなかった。
【0006】
すなわち、高周波域の音を吸収するのに優れた一般的な吸音材では、厚みを厚くしても十分な吸音効果を得ることができない上に、吸音材の設置スペースが大きくなるといった問題がある。また、高周波域の音を吸音できる一般的な吸音材に加え、低周波域の音を吸収する特殊な吸音材を設けた場合には、単一の吸音材の厚みを厚くした場合に比して、吸音効果を得ることはできるが、吸音材の設置スペースが大きくなることは、単一の吸音材を採用した場合と何ら変わることがない。その上、低周波域の音を吸収させる吸音材は、上述の如く特殊なものであるので、装置におけるコストの高騰を招くものである。
【0007】
そこで、本発明は、斯かる実情に鑑み、吸音材の設置スペースを極力少なくすることができ、効率の良い吸音効果を得ることのできる吸音装置、及び写真処理装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明にかかる吸音装置は、騒音発生源を包囲し、該騒音発生源からの騒音に含まれる低周波域の音を高周波域にシフトさせる周波数シフト体と、該周波数シフト体を包囲し、高周波域の音を吸音する吸音材とを備えたことを特徴とする。なお、ここで「包囲」とは、騒音発生源又は周波数シフト体を完全に取り囲む(覆う)ことは勿論のこと、騒音発生源又は周波数シフト体の一部を覆うことを含む概念である。
【0009】
かかる吸音装置によれば、周波数シフト体が騒音発生源を包囲するようになっているので、騒音発生源から発生する低周波域の音が一般的な吸音材で吸音できる高周波域の音に変換されることになる。そして、該周波数シフト体で変換された高周波域の音、及び周波数シフト体を通過した騒音発生源からの高周波域の音が、該周波数シフト体を包囲した吸音材(一般的な吸音材)に到達する。そうすると、該吸音材は、高周波域の音を吸音できるものであるので、周波数シフト体からの音(高周波域の音)が吸音され、騒音発生源で発生した低周波域、及び高周波域の音の全てが吸音されることになる。
【0010】
これにより、特性の異なる吸音材を組み合わせて配置したり、低周波域の音の吸収に乏しい吸音材(高周波域の音を吸収する特性のある一般的な吸音材)を極めて厚くして配置したりする必要がなく、吸音材の設置スペースを小さくした上で、優れた吸音効果を得ることができる。
【0011】
本発明の一態様として、周波数シフト体は、騒音発生源を包囲可能に形成された中空体内に、空気よりも分子量の小さい気体が封入されて構成されていることが好ましい。このようにすれば、騒音発生源からの騒音が中空体内を通過するに際し、低周波域の騒音が高周波域に変換されることになる。すなわち、低周波域の音が空気よりも分子量が小さい気体を通過するに際し、音の伝搬速度が速くなり、これによって低周波域の音を高周波域の音に変換することができる。これにより、構造を複雑化させることなく、騒音を高周波域に変換させることができる。
【0012】
この場合、前記気体にヘリウムが採用されることが好ましい。このようにすれば、中空体内において常に安定状態にしておくことができ、安全である。
【0013】
本発明の写真処理装置は、感光材料に対する処理を行うに際し、該処理に伴って機器から発生する低周波域の音を含んだ騒音を吸音するための吸音装置を備え、該吸音装置は、前記機器を包囲し、該機器からの騒音に含まれる低周波域の音を高周波域にシフトさせる周波数シフト体と、該周波数シフト体を包囲し、高周波域の騒音を吸音する吸音材とを備えたことを特徴とする。
【0014】
前記写真処理装置によれば、周波数シフト体が騒音発生源となる機器を包囲するように設けられているので、感光材料の処理に伴って機器から発生する低周波域の音が一般的な吸音材で吸音できる高周波域の音に変換されることになる。そして、該周波数シフト体で変換された高周波域の音、及び機器から直接発生した高周波域の音が、該周波数シフト体を包囲した吸音材(一般的な吸音材)に到達する。そうすると、該吸音材は、高周波域の音を吸音できるものであるので、周波数シフト体からの音(高周波域の音)が吸音され、機器で発生した低周波域、及び高周波域の音の全てが吸音されることになる。
【0015】
これにより、特性の異なる吸音材を組み合わせて配置したり、低周波域の音の吸収に乏しい吸音材(高周波域の音を吸収する特性のある一般的な吸音材)を極めて厚くして配置したりする必要がなく、吸音材の設置スペースを小さくした上で、優れた吸音効果を得ることができる。また、低周波域の音は、各機器を振動させる原因となるため、例えば、その低周波域の音で感光材料に露光処理を施す機器(露光装置)が振動すると、感光材料に対する画像形成処理に悪影響を及ぼすが、上述の如く、低周波域の音が高周波域の音にシフトされるので、露光装置が振動するといった事態になるのを防止することができ、高品質の画像を形成することができる。
【0016】
本発明の一態様として、周波数シフト体は、前記機器を包囲可能に形成された中空体内に、空気よりも分子量の小さい気体が封入されて構成されていることが好ましい。このようにすれば、機器からの騒音が中空体内を通過するに際し、低周波域の騒音が高周波域に変換されることになる。すなわち、低周波域の音が空気よりも分子量が小さい気体を通過するに際し、音の伝搬速度が速くなり、これによって低周波域の音を高周波域の音に変換することができる。これにより、構造を複雑化させることなく、騒音を高周波域に変換させることができる。
【0017】
この場合、前記気体にヘリウムが採用されることが好ましい。このようにすれば、中空体内において常に安定状態にしておくことができ、安全である。
【0018】
また、前記機器は、感光材料の乳剤面の裏面に印字処理を施すドットプリンタであり、前記周波数シフト体は、印字処理領域を除いてドットプリンタの少なくともプリンタヘッドを包囲している構成であってもよい。なお、「印字処理領域」とは、プリンタヘッドにおける感光材料に対して印字を施すための領域をいう。ドットプリンタは、感光材料に印字を施すに際して低周波域及び高周波域の音(騒音)発生するので、上述の如く、印字処理領域を除いてプリンタヘッドを周波数シフト体で包囲すれば、感光材料に対する円滑な印字処理を確保した上で、騒音低下を達成することができる。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明の吸音装置によれば、吸音材の設置スペースを極力少なくすることができ、効率の良い吸音効果を得ることができるといった優れた効果を奏し得る。
【0020】
また、本発明の写真処理装置によれば、吸音材の設置スペースを極力少なくすることができ、効率の良い吸音効果を得ることができるといった優れた効果を奏し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態に係る写真処理装置について、添付図面を参照して説明する。
【0022】
本実施形態に係る写真処理装置は、図1に示す如く、該写真処理装置の操作を行う操作部1と、印画紙(感光材料)Pに露光処理を施す露光処理部2(露光処理装置)と、該露光処理部2で露光処理された印画紙Pを現像処理する現像処理部3(現像処理装置)と、該現像処理部3で現像処理された印画紙Pを乾燥処理する乾燥処理部4(乾燥装置)と、該乾燥処理部4で乾燥した印画紙Pをオーダー、及びサイズ毎に仕分けて回収する回収部5とで構成されている。
【0023】
前記操作部1は、図2に示す如く、各処理の処理状況や操作案内等を表示するモニター10と、該モニター10の表示に基づいて入力操作を行うための入力装置11と、CD−R/RWやメモリーカード等のメディアM(図1参照)から画像データを読み込む読込装置12と、写真フィルムに形成された駒画像を読み込むスキャナー装置13と、入力装置11からの入力データ、読込装置12やスキャナー装置13で読み込んだ画像データ等を適宜演算処理し、露光処理部2の動作等を制御する演算処理装置(CPU140、ROM141、RAM142等)がマウントされた制御基板を内装したコンピュータ本体14とを備えている。
【0024】
前記モニター10には、ブラウン管モニター或いは液晶モニターが採用され、本実施形態においてはブラウン管モニターが採用されている。前記入力装置11には、キーボード110、及びマウス111が採用されている。本実施形態において、前記モニター10、入力装置11(キーボード110、マウス111)、読込装置12、及びスキャナー装置13は、I/Oインターフェイス143を介して前記コンピュータ本体14(CPU140)に接続されている。
【0025】
前記露光処理部2は、ロール状にされた長尺な印画紙Pを収納する一対のマガジン20a,20bと、該マガジン20a,20bから引き出された印画紙Pを所定の長さで切断する切断装置21と、該切断装置21により切断された印画紙Pに対して管理用にコード印字する印字手段24と、該印字手段24によって管理コードが印字された印画紙Pを下流に向けて搬送する搬送装置22と、該搬送装置22により搬送されてきた印画紙Pを露光処理する露光装置23とを備えている。なお、該露光処理部2は、各装置間に複数のローラ対25,25…が配設されており、切断装置21で切断された枚葉状の印画紙Pを下流側(前記現像処理部3)に向けて搬送できるようになっている。
【0026】
前記一対のマガジン20a,20bは、露光処理部2内の下部で横方向に並設されており、各マガジン20a,20bには、一方の面を内側(乳剤面を外側)に位置させるようにロール状にされた長尺な印画紙Pが軸回りに回転可能で且つ引き出し可能に収納されている。
【0027】
前記切断装置21は、露光処理部2内の下部に配置された前記一対のマガジン20a,20b間に位置して、前記一対のマガジン20a,20bのそれぞれの下流側に設けられている。該切断装置21は、互いに接離する一対のカッター210a,210bを備えており、マガジン20a,20bから引き出された印画紙Pを切断して、長尺な印画紙Pを所定サイズの枚葉状の印画紙(小判又は大判の印画紙)Pにできるようになっている。
【0028】
前記印字手段24は、印画紙P(写真)の管理情報(例えば、オーダー情報やプリント情報等)を目視可能とすべく、印画紙Pの裏面側に文字や記号等を組み合わせた管理コードを印字するために設けられている。該印字手段24には、ドットプリンタが採用されており、露光処理前(搬送装置22で搬送される前)に、印画紙Pの乳剤面の反対側の面(印画紙Pの裏面)に管理コードを印字できるように配置されている。即ち、小判の印画紙P、及び大判の印画紙Pの何れであっても、共通した一台のドットプリンタ24で各印画紙Pに対して印字できるように配置されている。
【0029】
本実施形態に係る写真処理装置は、ドットプリンタ24での印字によって発生する騒音が他の機器に比して非常に大きいことから、このドットプリンタ24から発生する騒音を吸音する吸音装置26を備えている。
【0030】
かかる吸音装置26は、図3に示す如く、騒音発生源となるドットプリンタ24のプリンタヘッド24a(機器)を包囲し、プリンタヘッド24aから発生する低周波域(例えば、1000Hz未満)の音を高周波域(例えば、1000Hz以上)にシフトさせる周波数シフト体260と、該周波数シフト体260を包囲し、該周波数シフト体260から到達する高周波域の音を吸収する吸音材261とで構成されている。
【0031】
前記周波数シフト体260は、分子量が空気よりも小さい気体Hと、該気体Hが封入された中空体262とで構成されている。本実施形態において、前記気体Hにはヘリウムガスが採用されており、例えば、154Hzの音を1000Hzにシフトさせることができるようになっている。即ち、騒音発生源から発生する音の周波数は、該発生部分での共鳴(共鳴部分での音速と共鳴気柱の長さ)で決まるので、共鳴部分での音速を上げることで、騒音発生源からの音の周波数を上げることができる。従って、本実施形態において気体Hにヘリウムが採用されることで、空気の平均分子量が28.8であるのに対しヘリウムの分子量が4であり、ヘリウムの分子量:空気の分子量は、1:7.2であることから、ドットプリンタ24から発生した騒音(低周波域の音を含んだ音)の音調が約2.7オクターブ上がることになる。
【0032】
この周波数シフト体260(中空体262)は、プリンタヘッド24aにおける印字処理領域(印画紙Pに印字を施す領域)Aを除いて該プリンタヘッド24aを包囲できるように形状設定されている。本実施形態において、中空体262は、プリンタヘッド24aと密接状態になっている。
【0033】
そして、吸音材261には、一般的なもの(本実施形態においては、グラスウール)が採用されており、周波数シフト体260を包囲するように設けられている。本実施形態において、前記周波数シフト体260に対して所定の間隔を有し、該周波数シフト体260を包囲する壁体263が設けられており、該壁体263の内面(壁体263における周波数シフト体260と対向する面)に前記吸音材261が密着状態で貼り付けられている。該壁体263に貼り付けられた吸音材261は、プリンタヘッド24aからの放熱等を考慮して、周波数シフト体260の外面と所定の間隔を有している。このように剛性を有する壁体263に吸音材(グラスウール)261を密着状態で貼着することで、グラスウール261による吸音効果を更に高めることができるようになっている。
【0034】
図2に戻り、前記搬送装置22は、印字手段24で印字処理された印画紙Pを露光装置23に向けて搬送するように構成されており、上流側から搬送されてくる印画紙Pが小判である場合には、印画紙Pを左右に振り分けて並列に搬送する一方、上流側から搬送されてくる印画紙Pが大判である場合には、該印画紙Pの搬送経路を変更させずに該印画紙Pを一列のままで下流側に搬送するように構成されている。
【0035】
前記露光装置23は、露光処理部2内の上部に設けられており、搬送中の印画紙Pの乳剤面を露光する露光ヘッド230と、該露光ヘッド230が印画紙Pの乳剤面を露光する露光領域を挟んで印画紙Pの搬送方向の上流側及び下流側(上下方向)のそれぞれに設けられた露光用搬送ローラ対231(一対の露光用搬送ローラ)とで構成されている。
【0036】
前記露光ヘッド230は、ハロゲンランプ等からなる光源232と、該光源232に光ファイバー束233を介して接続された光シャッター234とで構成されており、該光シャッター234は、印画紙Pの搬送方向と直交したライン状をなし、搬送される印画紙Pの乳剤面と対向するように設けられている。
【0037】
前記光シャッター234は、チタン酸ジルコン酸鉛にランタンを添加することにより得られる透光性電圧セラミックス、いわゆるPLZTで構成されており、該PLZTは、所定レベルの電圧が印加されると光を透過させ得る状態となる一方、電圧の印加が停止されると光を遮断する性質を有している。つまり、光シャッター234は、読み込まれた画像データに基づいて、操作部1のCPU140から電圧の印加、及び印加の停止が指示され、光源232からの光の透過及び遮断が制御されて印画紙PにRGB各色の光を照射して露光し得るように構成されている。
【0038】
前記現像処理部3は、現像処理液が貯留される現像処理液槽30と、該現像処理液槽30内の現像処理液に対して印画紙Pを浸漬して引き上げる動作を繰り返すように、印画紙Pを搬送する現像処理部搬送系(搬送系)31とを備えている。
【0039】
現像処理部搬送系31は、複数の搬送ローラ対312,312…が間隔を有して配置されることで、連続したS字状の搬送経路を形成しており、印画紙Pを搬送ローラ対312…,313…の配置(S字状の搬送経路)に沿って搬送し、該印画紙Pにおける現像処理液への浸漬と現像処理液からの引き上げとを行って現像処理を行えるようになっている。
【0040】
前記乾燥処理部4は、現像処理部3から送られてきた印画紙Pを乾燥させる乾燥室40と、該乾燥室40内に熱風を送り出す熱風発生装置41を収容した熱風発生装置収容部42とに区画されている。前記乾燥室40には、現像処理部3から送られてくる印画紙Pを受け取って下流側(回収部5)に向けて搬送する搬送系43を備えたラックが着脱可能に内装されており、内部に印画紙Pが詰まった場合等にメンテナンス(詰まった印画紙Pの除去や清掃等)を行えるようになっている。
【0041】
前記回収部5は、前記乾燥処理部4で乾燥処理された印画紙Pをサイズ毎に振り分ける前記振分装置50と、該振分装置50で振り分けた印画紙Pをオーダー毎に仕分ける仕分装置51とで構成されている。
【0042】
前記振分装置50は、乾燥処理部4から搬送されてくる印画紙Pを振り分ける傾動可能な振分板52を備えている。具体的には、搬送経路(乾燥処理部4)を通過した印画紙Pが小判であるか、大判であるかを上流側に配置されたセンサー(図示しない)が検知し、該検知結果に基づいて振分板52の姿勢を変更させるようになっている。
【0043】
センサーが小判の印画紙Pを検知した場合には、振分板52が略水平を維持し、小判の印画紙Pの一方の面(ベース面)が振分板52の上面を摺動した状態で下流側の前記仕分装置51の後述するコンベア54に向けて搬送される。
【0044】
一方、センサーが大判の印画紙Pを検知した場合には、振分板52が傾動する。このように振分板52の姿勢を変更させると、上流側(乾燥処理部4)から搬送されてきた大判の印画紙Pの他方の面(乳剤面)が、傾動した振分板52の下面に摺接し、大判の印画紙Pの搬送経路が小判の印画紙Pの搬送経路に比して下方に向けて切り替えられ、該大判の印画紙Pが下流側に配置されたトレー53に回収されるようになっている。
【0045】
前記仕分装置51は、小判の印画紙Pの搬送方向に対して直交方向に移動する前記コンベア54と、該コンベア54によって運ばれてくる印画紙Pをオーダー毎に仕分ける仕分機構(図示しない)とで構成されている。
【0046】
前記仕分機構は、上下方向に移動可能に配設された複数の受皿55…を備えており、該受皿55…が上下方向に移動することで、コンベア54によって搬送されてくる小判の印画紙Pを各受皿55…にオーダー毎に振り分けるように構成されている。
【0047】
次に、本実施形態にかかる写真処理装置の作動を説明する。該写真処理装置は、まずマガジン20a,20bに収容された印画紙Pが下流側に引き出され、切断装置21(カッター210a,210b)で所定サイズにカットされる。
【0048】
そして、カットされた印画紙Pは、下流側に搬送されドットプリンタ24によって裏面に管理コードが印字される。この際、ドットプリンタ24から騒音が発生することになるが、上述の如く、本実施形態に係る写真処理装置には、吸音装置26が設けられているので、ドットプリンタ24からの騒音は吸収され、周辺が静寂な状態となっている。
【0049】
具体的には、ドットプリンタ24によって印画紙Pに印字処理を施すに際し、プリンタヘッド24aから低周波域の音と高周波域の音が発生することになる。そうすると、何れの音もプリンタヘッド24aから周波数シフト体260に到達し、周波数シフト体260(中空体262)内を通過して吸音材261に到達することになる。このように周波数シフト体260(中空体262)を通過するに際し、中空体262内には、分子量が空気よりも小さい気体H(ヘリウム)が封入されているので、この空間を通過する低周波域の音の伝搬速度が速くなり、プリンタヘッド24aから発生した時点で低周波域にあった音が高周波域の音に変換(シフト)されることになる。
【0050】
このため、ドットプリンタ24から発生した騒音の全て又は殆ど、即ち、周波数シフト体260を通過した音の全て又は殆どが高周波域の音になって吸音材261に到達することになる。そうすると、ガラスウール(吸音材)261は、高周波域の音の吸音に優れているので、厚みが薄くても、高周波域の音の全て、或いは殆どが吸収され、吸音材261から外部に音が放散されることが防止され、当該写真処理装置からの騒音発生が抑制されることになる。
【0051】
そして、ドットプリンタ24による印字処理が施された印画紙Pは、小判の印画紙Pである場合に、搬送装置22によって搬送経路が振り分けられ、各小判の印画紙Pが並列状態で露光装置23の露光領域に送り込まれて露光処理される。その一方で、カットされた印画紙Pが大判の印画紙Pである場合には、搬送軌道(搬送中心)を変えることなくそのまま引き出し方向を維持しつつ露光装置23の露光領域に送り込まれて露光処理される。
【0052】
そして、露光処理を終えた印画紙Pは、現像処理部3に送られ、現像処理液槽30内の現像処理液に対する浸漬と引き上げとが繰り返されて現像処理が施され、乾燥処理部4に向けて搬送されることになる。
【0053】
現像処理部3から乾燥処理部4に送り込まれた印画紙Pは、乾燥温度(所定の温度雰囲気)に保った乾燥室40内で搬送系43によって搬送されつつ乾燥処理が施される。そして、露光・現像・乾燥処理が施された印画紙Pは、回収部5においてサイズ毎、或いはオーダー毎に仕分けられ、単一の印画紙Pに対する一連の処理が完了する。
【0054】
以上のように、本実施形態に係る写真処理装置は、騒音発生源としての機器(ドットプリンタ24のプリンタヘッド24a)を包囲し、この機器から発生する低周波域の音を高周波域の音にシフトさせる周波数シフト体260と、該周波数シフト体260を包囲し、高周波域の音(該周波数シフト体260で高周波域にシフトされた音、及び機器から発生した高周波域の音)を吸音する吸音材261とで構成した吸音装置26を設けたので、騒音発生源となる機器(本実施形態においてはドットプリンタ24)からの騒音に低周波域の音が含まれていても、該発生した音の全て又は殆どを一般的な吸音材261で吸音することができ、外部への騒音発生を防止することができる。
【0055】
また、周波数シフト体260で低周波域の音を高周波域の音にシフトさせ、機器から発生する音の全て又は殆どを高周波域の音にするようにしたので、一般的の吸音材261のみで機器からの騒音を吸音することができ、その上、吸音材261の厚みを必要以上に厚くする必要がなく、吸音材261の設置スペースの増大を防ぐことができる。
【0056】
さらに、振動の原因となる低周波域の音が高周波域の音にシフトされるので、ドットプリンタ24の駆動(駆動による騒音発生)によって露光装置23が振動してしまうのを防止することができ、高品質な画像形成(露光処理)を実現することができる。
【0057】
尚、本発明の吸音装置及び写真処理装置は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0058】
上記実施形態において、写真処理装置の印字手段としてのドットプリンタ24(プリンタヘッド24a)を騒音発生源として吸音装置26を設けたが、これに限定されるものではなく、例えば、ドットプリンタ24以外の機器に低周波域の音を発生させるものがあれば、その機器を騒音発生源として上記構成の吸音装置26を設ければよい。従って、上記吸音装置26は、写真処理装置以外に装置であって、低周波域の音を含む騒音を発生する機器についても適用することができる。
【0059】
上記実施形態において、吸音材261を周波数シフト体260に対して間隔をおいて設けたが、これに限定されるものではなく、吸音材261を周波数シフト体260に密接状態して設けるようにしてもよい。また、上記実施形態において、印画紙Pに対する印字処理を行えるようにした上で、騒音発生源としてドットプリンタ24からの騒音を吸音するように構成したため、プリンタヘッド24aの印字処理領域Aを除いて周波数シフト体260でプリンタヘッド24aを包囲するようにしたが、騒音発生源となる機器の形態によっては、その機器を周波数シフト体260で完全に包囲することが好ましい。
【0060】
上記実施形態において、周波数シフト体260の中空体262内にヘリウムHを封入したが、これに限定されるものではなく、例えば、水素やアルゴン等であってもよい。即ち、中空体262内に封入される気体Hは、分子量が空気よりも小さいものであればよい。但し、気体Hの安定性(非爆発性等)を考慮すれば、上記実施形態のようにヘリウムHを採用することが好ましい。
【0061】
上記実施形態において、吸音材261に多孔質材料としてのガラスウールを採用したが、これに限定されるものではなく、吸音材261には、例えば、発泡材料(発泡ウレタン等)を採用してもよい。
【0062】
上記実施形態において、ドットプリンタ24のプリンタヘッド24aを周波数シフト体26で包囲するようにしたが、これに限定されるものではなく、例えば、ドットプリンタ24全体を周波数シフト体26で包囲するようにしてもよい。このようにしても、ドットプリンタ24(プリンタヘッド24a)から発生した低周波域の音を高周波域にシフトさせることができ、その結果、ドットプリンタ24から発生する騒音を吸音材261で吸音することができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の一実施形態に係る写真処理装置の全体斜視図を示す。
【図2】同実施形態に係る写真処理装置に全体概略図を示す。
【図3】同実施形態に係る写真処理装置における印字手段及び吸音装置の全体概略図を示す。
【符号の説明】
【0064】
1…操作部、2…露光処理部、3…現像処理部、4…乾燥処理部、5…回収部、10…モニター、11…入力装置、12…読込装置、13…スキャナー装置、14…コンピュータ本体、20a,20b…マガジン、21…切断装置、22…搬送装置、23…露光装置、24…ドットプリンタ(印字手段)、24a…プリンタヘッド、25…ローラ対、26…吸音装置、30…現像処理液槽、31…現像処理部搬送系、40…乾燥室、41…熱風発生装置、42…熱風発生装置収容部、43…搬送系、50…振分装置、51…仕分装置、52…振分板、53…トレー、54…コンベア、55…受皿、110…キーボード、111…マウス、143…インターフェイス、210a,210b…カッター、230…露光ヘッド、231…露光用搬送ローラ対、232…光源、233…光ファイバー束、234…光シャッター、260…周波数シフト体、261…吸音材、262…中空体、263…壁体、312…搬送ローラ対、H…ヘリウム(気体)、M…メディア、P…印画紙、A…印字処理領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
騒音発生源を包囲し、該騒音発生源からの騒音に含まれる低周波域の音を高周波域にシフトさせる周波数シフト体と、該周波数シフト体を包囲し、高周波域の音を吸音する吸音材とを備えたことを特徴とする吸音装置。
【請求項2】
周波数シフト体は、騒音発生源を包囲可能に形成された中空体内に、空気よりも分子量の小さい気体が封入されて構成されている請求項1記載の吸音装置。
【請求項3】
前記気体にヘリウムが採用されている請求項2記載の吸音装置。
【請求項4】
感光材料に対する処理を行うに際し、該処理に伴って機器から発生する低周波域の音を含んだ騒音を吸音するための吸音装置を備え、該吸音装置は、前記機器を包囲し、該機器からの騒音に含まれる低周波域の音を高周波域にシフトさせる周波数シフト体と、該周波数シフト体を包囲し、高周波域の騒音を吸音する吸音材とを備えたことを特徴とする写真処理装置。
【請求項5】
周波数シフト体は、前記機器を包囲可能に形成された中空体内に、空気よりも分子量の小さい気体が封入されて構成されている請求項4記載の写真処理装置。
【請求項6】
前記気体にヘリウムが採用されている請求項5記載の写真処理装置。
【請求項7】
前記機器は、感光材料の乳剤面の裏面に印字処理を施すドットプリンタであり、前記周波数シフト体は、印字処理領域を除いてドットプリンタの少なくともプリンタヘッドを包囲している請求項4乃至6の何れかに記載の写真処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−39158(P2006−39158A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−218066(P2004−218066)
【出願日】平成16年7月27日(2004.7.27)
【出願人】(000135313)ノーリツ鋼機株式会社 (1,824)
【Fターム(参考)】