説明

吹出しダクトおよび空調設備

【課題】 設置が容易で、しかも吹出し高さや吹出し方向などを容易に調整することが可能な吹出しダクトを提供する。
【解決手段】 筒状で積み重ね自在な筒体の内部空間が軸方向に沿って仕切られたユニット2、3、5〜8を複数積み重ねて構成し、ユニット2、3、5〜8として、給気量調整装置84が設けられたダンパユニット8と、吹出しスペース51B側の側壁に開口51Aが形成され、空洞スペース51Cを介して上方のユニットに給気を送る中間吹出しユニット5と、上端部が閉塞され、中間吹出しユニット5を介して送られた給気を空調対象空間に吹出す開口21Aが、仕切られた内部空間の少なくとも一方の側壁に形成されている頂部吹出しユニット2と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、屋内競技場や劇場、工場や倉庫などの大空間または高天井の屋内広域空間に、新鮮な外気や温度調整された空気などの給気を送り込む吹出しダクトおよび空調設備に関する。
【背景技術】
【0002】
建物内を空調換気する場合、屋外から外気を取り込み、必要に応じて空調機で温度調整し、ダクトを介して屋内に空気を吹出している。また、屋内広域空間に新鮮な外気や温度調整された空気を供給する技術として、次のようなものが知られている。
【0003】
第1の技術では、各階の室内に複数の送風装置を設け、各階を貫通する空気吹き込み経路に吹き込みファンを設け、各階の室内の空気を送風装置によって空気吹き込み経路に導き、導いた空気を吹き込みファンによって筒体から外部に排出するものである(例えば、特許文献1参照。)。第2の技術では、居室に隣接している廊下に面してダクトシャフトを設け、屋上に設けた空調機から、ダクトシャフト内に設けた竪ダクト、廊下の天井裏空間に設けた横引きダクト、廊下と居室との間にある大梁に設けた梁貫通孔、大梁の側面に取り付けた吹出口を通して居室内に給気を吹出すものである(例えば、特許文献2参照。)。第3の技術では、筒状の柱部と、この柱部の側面に設けられた開口部と、開口部に連通し柱部材内に設けられたチャンバーと、柱部内を延びて給気ダクトとチャンバーとを連通するダクト部と、チャンバー内に配置された送風機とから構成された空調用吹出し口を、建物内に設置するものである(例えば、特許文献3参照。)。
【特許文献1】特開2005−114287号公報
【特許文献2】特開2002−098401号公報
【特許文献3】特開平08−068547号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記の第1の技術では、室内に複数の送風装置を設けるため、送風装置によって美観が損なわれるとともに騒音が発生し、室内に人が滞在する場合には、好ましくない。また、多数の送風装置が必要なため設備費がかさみ、さらに、保守性の観点から一ヶ所の空気供給源(セントラル空調源)から集中して空気を供給することが望ましいという制約がある。上記の第2の技術では、大梁に梁貫通孔を設けるため建物の強度が低下し、これを補強するための作業と費用とを要するとともに、横引きダクトの口径、つまり梁貫通孔の口径によっては、大梁に梁貫通孔を設けることができない場合がある。
【0005】
このような問題は、上記の第3の技術には発生しないが、第3の技術では、一体で大型の空調用吹出し口をコンクリート打設して築造しなければならず、工事が大掛かりで多大な労力と時間とを要する。また、空調用吹出し口の高さや開口部の位置などが固定されているため、空調用吹出し口を設置して試運転した後や、運用後の改修時などにおいて、吹出し高さや吹出し方向などを変更したい場合に、柔軟な対応が困難である。つまり、新たに空調用吹出し口を設置し直さなければならず、多大な労力と時間とを要する。
【0006】
そこでこの発明は、設置が容易で、しかも吹出し高さや吹出し方向などを容易に調整することが可能な吹出しダクトおよび空調設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために請求項1に記載の発明は、給気ダクト側からの給気を空調対象空間に吹出す吹出しダクトであって、筒状で積み重ね自在な筒体の内部空間が軸方向に沿って仕切られたユニットが複数積み重ねられて構成され、前記ユニットとして、仕切られた内部空間それぞれへの給気量を調整する給気量調整手段が前記給気ダクトの近傍に設けられたダンパユニットと、前記ダンパユニットの上方に配設され、仕切られた内部空間が吹出しスペースと上下に開放した空洞スペースとされ、前記吹出しスペース側の側壁に前記給気を空調対象空間に吹出す開口が形成され、前記空洞スペースを介して上方のユニットに前記給気を送る中間吹出しユニットと、前記中間吹出しユニットの上方に配設され、上端部が閉塞され、前記中間吹出しユニットの空洞スペースを介して送られた給気を空調対象空間に吹出す開口が、仕切られた内部空間の少なくとも一方の側壁に形成されている頂部吹出しユニットと、を含むことを特徴とする。
【0008】
この発明によれば、ダンパユニットで給気量を調整された給気が、中間吹出しユニットの吹出しスペースに流入して開口から空調対象空間に吹出され、中間吹出しユニットの空洞スペースに流入した給気が頂部吹出しユニットに送られる。そして、頂部吹出しユニットの開口から給気が空調対象空間に吹出される。
【0009】
請求項2に記載の発明は、給気ダクト側からの給気を空調対象空間に吹出す吹出しダクトであって、筒状で積み重ね自在な筒体の内部空間が軸方向に沿って仕切られたユニットが複数積み重ねられて構成され、前記ユニットとして、仕切られた内部空間が吹出しスペースと上下に開放した空洞スペースとされ、前記吹出しスペース側の側壁に前記給気を空調対象空間に吹出す開口が形成され、前記空洞スペースを介して上方または下方のユニットに前記給気を送る中間吹出しユニット、を含むことを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の吹出しダクトにおいて、前記ユニットとして、前記中間吹出しユニットの上方または下方に配設され、上端部または下端部が閉塞され、前記中間吹出しユニットの空洞スペースを介して送られた給気を空調対象空間に吹出す開口が、仕切られた内部空間の少なくとも一方の側壁に形成されている頂部吹出しユニット、を含むことを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項2または3に記載の吹出しダクトにおいて、筒状で、前記ユニット間に配設され、下方のユニットからの給気を上方のユニットに送る貫通管、を備えることを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項1から4の少なくとも1項に記載の吹出しダクトを複数、前記開口から給気が前記空調対象空間に向けてほぼ水平放射状に吹出し、前記空洞スペースが前記空調対象空間の壁部に対向するように立設した、ことを特徴とする空調設備である。
【0013】
請求項6に記載の発明は、観客席や聴衆席などの人員密度が高い高密度空間と、競技グランドや舞台などの人員密度が低い低密度空間とに分けられた建物に適用され、請求項1から4の少なくとも1項に記載の吹出しダクトを複数、前記開口から給気が前記高密度空間に向けて吹出すように立設し、前記高密度空間からの余剰空気が前記低密度空間に流入するように構成されている、ことを特徴とする空調設備である。
【発明の効果】
【0014】
請求項1および2に記載の発明によれば、積み重ね自在なユニットを複数積み重ねることで吹出しダクトを構成しているため、ユニットを積み重ねるだけで、容易に吹出しダクトを組み立て、設置することが可能となる。また、ユニットを任意数積み重ねることで、任意の高さの吹出しダクトを構成でき、しかも、積み重ねた後にユニットを加減することで吹出しダクトの高さを調整できるため、吹出し高さや吹出し方向などを容易に調整することが可能となる。このように、吹出し高さや吹出し方向などを任意に調整可能なため、多種、多様な建物に対応することが可能となり、つまり汎用性があり、ユニットを量産することで、コスト削減を図ることが可能となる。また、中間吹出しユニットは吹出しスペースと空洞スペースとを有するため、中間吹出しユニットを任意の位置(高さ)に配設することで、吹出しスペース(開口)を介して任意の位置から給気を吹出すことができ、しかも、空洞スペースを介して給気を上下のユニットに送ることができる。
【0015】
請求項1および3に記載の発明によれば、頂部吹出しユニットの上端部または下端部が閉塞され、側壁には開口が形成されているため、頂部吹出しユニットを任意の位置(高さ)に配設することで、中間吹出しユニットから送られた給気を開口を介して任意の位置から吹出すことができる。
【0016】
さらに、請求項1に記載の発明によれば、ダンパユニットに給気量調整手段が設けられているため、空調対象空間の環境などに応じた任意の給気量を空調対象空間に吹出すことが可能となる。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、貫通管を任意の位置に任意の数だけ配設することで、中間吹出しユニットや頂部吹出しユニットなどを任意の位置(高さ)に配設し、これらのユニットに対して給気を送ることができる。
【0018】
請求項5に記載の発明によれば、給気が空調対象空間に向けてほぼ水平放射状に吹出し、空洞スペースが空調対象空間の壁部に対向するように、吹出しダクトが立設されているため、少ない吹出しダクトで効率的に給気を空調対象空間に供給することが可能となる。
【0019】
請求項6に記載の発明によれば、多くの給気が必要な高密度空間に開口から給気が供給され、その余剰空気が比較的少ない給気でよい低密度空間に供給されるため、広い空調対象空間(高密度空間と低密度空間)に対して少ない吹出しダクトで効率的に給気を供給することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0021】
図1は、この実施の形態に係る吹出しダクト1を示す側面図である。この吹出しダクト1は、給気ダクト側からの新鮮な外気や温度調整された空気などの給気を、屋内広域空間(空調対象空間)に吹出すダクトであり、この実施の形態では、屋内競技場に複数設置されている。すなわち、図中左方向に観客席が設けられ、一階室F1と二階室F2のそれぞれの上側から、観客席側に冷気である給気を送り込むようになっている。
【0022】
この吹出しダクト1は、7つのユニット2〜8から構成され、すべてのユニット2〜8は略円筒状で、外径および内径が同寸法に設定されている。また、後述するように、ユニット2、3および5〜8は、内部空間が軸方向に沿って仕切られたユニットで、ユニット4は内部空間が仕切られていない貫通管となっている。そして、下方(後述する給気ダクト近傍)から、ダンパユニット8、第4の空洞ユニット7、第3の空洞ユニット6、中間吹出しユニット5、第2の空洞ユニット4、第1の空洞ユニット3および頂部吹出しユニット2の順に垂直方向に積み重ねられ(積層され)、接続されて、吹出しダクト1が構成されている。
【0023】
頂部吹出しユニット2は、図2〜4に示すように、略円筒状の筒体21内に、下端側から垂直上方に延び、筒体21の内部空間を軸方向に沿って仕切る仕切り板22が配設されている。この仕切り板22は、第1の空洞ユニット3に積み重ねた際に、後述するダンパユニット8の仕切り板82と同一面上に位置するように配設されている。筒体21の高さ方向中央部の側壁は、切り板22で仕切られた一方側(図中左側)に開口21Aが形成され、他方側は、上下部の側壁よりも外径が小さく形成されている。そして、このような側壁の中央部の全周にわたって、垂直方向に延びる羽根と水平方向に延びる横バーとが格子(網目)状に複数配設された吹出しシャッター23が、配設されている。ここで、開口21A側にのみ吹出しシャッター23を配設し、他方側の側壁をその上下部と同径にして、ストレート形状にしてもよい。
【0024】
また、筒体21の上端には、上端部を閉塞する全面上蓋24が取り付けられている。そして、切り板22で仕切られた一方側(開口21A側)の内部空間が吹出しスペース21Bを形成し、後述するように、筒体21の下端側から流入した給気が、吹出しスペース21Bを経由して開口21Aから外部に吹出すようになっている。また、切り板22で仕切られた他方側の内部空間が空洞スペース21Cを形成し、空洞スペース21Cの上端側を閉塞する部分上蓋25が配設されている。これにより、筒体21の下端側から流入した給気が、吹出しスペース21Bを経由して空洞スペース21C側に流れないとともに、空洞スペース21Cによって給気に圧力が付与されるようになっている。このような筒体21、仕切り板22、全面上蓋24および部分上蓋25は、基材としての鋼板と、この鋼板の少なくとも一方の面に配設された断熱材とで構成されている。
【0025】
さらに、開口21Aが設けられた内部空間内、つまり吹出しスペース21B内には、給気の吹出し方向を制御(案内)する案内板26が配設されている。この案内板26は板状で、筒体21内に配設された支持軸26aによって、水平線を軸にして回動自在に支持されている。そして、筒体21の下端側から流入した給気が、案内板26によって制御されて、開口21Aから吹出されるようになっている。これにより、外部の所定(所望)の領域に給気を良好に供給することが可能となる。ここで、例えば、冷気を吹出す場合には、案内板26を水平(図2中実線)に位置させ、暖気を吹出す場合には、案内板26の開口21A側を下方(図2中二点鎖線)に傾ける。
【0026】
また、筒体21の下端側には、連結リング27が設けられている。この連結リング27は、後述する第1の空洞ユニット3の下側連結リング34と同等の構成で、この連結リング27を介して、他のユニット3〜8と積み重ね自在となっている。
【0027】
第1の空洞ユニット3は、図5に示すように、略円筒状の筒体31内に、上端側から垂直下方に延び、筒体31の内部空間を軸方向に沿って仕切る仕切り板32が配設されている。さらに、この仕切り板32は、第2の空洞ユニット4に積み重ねた際に、後述するダンパユニット8の仕切り板82と同一面上に位置するように配設されている。
【0028】
このようにして切り板32で仕切られた双方の内部空間が空洞スペース31Aを形成し、後述するように、筒体31の下端側から流入した給気が、両空洞スペース31Aを経由して筒体31の上端側から頂部吹出しユニット2側に送気されるようになっている。このような筒体31と仕切り板32は、基材としての鋼板と、この鋼板の少なくとも一方の面に配設された断熱材とで構成されている。
【0029】
また、筒体31の上端側には上側連結リング33が設けられ、筒体31の下端側には下側連結リング34が設けられている。ここで、説明の便宜上、第1の空洞ユニット3同士を接続する場合について説明するが、各ユニット2〜8間は同様の構造で接続されている。この連結リング33、34は、図6に示すように、帯状の鋼板をその断面が垂直に延びるようにリング状に配設したものであり、上側連結リング33が直上のユニットの下側連結リング34内に挿入できるように、それぞれの外・内径が設定されている。また、連結リング33、34には、それぞれ同位置にボルト挿入孔(図示せず)が形成され、このボルト挿入孔にボルト35を挿入し、ボルト35とナット36とを締め付けることで、連結リング33、34が締結される。このようにして、連結リング33、34を締結することで、ユニット2〜8と積み重ね自在となっている。
【0030】
また、仕切り板32で仕切られた一方側の側壁であり、頂部吹出しユニット2を積み重ねた際に頂部吹出しユニット2の開口21A側に位置する側壁には、1つの点検口31Bが形成され、この点検口31Bを閉じるための点検口蓋37が着脱自在に配設されている。すなわち、図6に示すように、点検口31Bの周縁近傍にネジ孔31Cが複数形成され、点検口蓋37の皿ネジ37Aをネジ孔31Cにねじ込むことで、点検口蓋37が取り付けられるようになっている。
【0031】
第2の空洞ユニット4は、図7に示すように、筒状で、内部空間である空洞スペース41Aを介して、下方に位置する中間吹出しユニット5からの給気を、上方に位置する第1の空洞ユニット3に送るようになっている。また、筒体41の上端側には上側連結リング42が設けられ、筒体41の下端側には下側連結リング43が設けられている。
【0032】
中間吹出しユニット5は、図8〜10に示すように、略円筒状の筒体51内に、下端から上端にわたって垂直に延び、第3の空洞ユニット6に積み重ねた際に、後述するダンパユニット8の仕切り板82と同一面上に位置するように、仕切り板52が配設されている。また、頂部吹出しユニット2と同様に、筒体51の高さ方向中央部の側壁の一方側には開口51Aが形成され、筒体51の側壁の中央部全周にわたって吹出しシャッター53が配設されている。
【0033】
筒体51の上端には、仕切り板52で仕切られた開口51A側の内部空間の上端側を閉塞する部分上蓋54が取り付けられている。そして、切り板52で仕切られた一方側(開口21A側)の内部空間が吹出しスペース51Bを形成し、後述するように、筒体51の下端側から流入した給気が、吹出しスペース51Bを経由して開口51Aから外部に吹出すようになっている。また、切り板52で仕切られ上下に開放した他方側の内部空間が空洞スペース51Cを形成し、筒体51の下端側から流入した給気が、空洞スペース51Cを経由して第2の空洞ユニット4側に流れるようになっている。また、頂部吹出しユニット2と同様に、吹出しスペース51B内には案内板55が配設され、筒体51の上端側および下端側にはそれぞれ、第1の空洞ユニット3と同様に、上側連結リング56と下側連結リング57とが設けられている。
【0034】
第3の空洞ユニット6は、第1の空洞ユニット3と同等の構成であるが、点検口31Bおよび点検口蓋37が2組設けられている点で、第1の空洞ユニット3と構成が異なる。第4の空洞ユニット7は、第1の空洞ユニット3と同様な構成であり、点検口31Bおよび点検口蓋37を備えない点で、第1の空洞ユニット3と構成が異なる。
【0035】
ダンパユニット8は、図11〜13に示すように、円筒状の筒体81内に、筒体81の内部空間を軸方向に沿って仕切る仕切り板82が配設されている。すなわち、筒体81の上端とほぼ同一面上から筒体81の下端近傍まで、垂直下方に延びるように仕切り板82が配設されている。そして、この切り板82で仕切られた双方の内部空間が空洞スペース81Aを形成し、筒体81の下端側から流入した給気が、両空洞スペース81Aを経由して筒体81の上端側から第4の空洞ユニット7側に送気されるようになっている。
【0036】
このような筒体81と仕切り板82は、基材としての鋼板と、この鋼板の少なくとも一方の面に配設された断熱材とで構成されている。また、筒体81の上端側には、第1の空洞ユニット3の上側連結リング33と同様な上側連結リング83が設けられている。
【0037】
さらに、各空洞スペース81Aのそれぞれに、給気量調整装置(給気量調整手段)84が配設されている。この給気量調整装置84は、ダンパ羽根84Aと開閉器84Bとを備え、開閉器84Bによってダンパ羽根84Aを開閉(回動)させることで、空洞スペース81A内の開口面積を調整し、空洞スペース81Aへの給気量を調整するものである。ここで、ダンパ羽根84Aの大きさ(面積)は、各空洞スペース81Aの水平方向の面積(断面積)に合わせて設定されている。このようなダンパユニット8は、外気や調和空気の給気源に近いダクト(給気ダクト)の近傍で、保守用スペースの床に設けられる。
【0038】
以上のような頂部吹出しユニット2およびダンパユニット8の高さは一定とされ、第1の空洞ユニット3、第2の空洞ユニット4、中間吹出しユニット5、第3の空洞ユニット6および第4の空洞ユニット7の高さは、複数設定されている。すなわち、頂部吹出しユニット2およびダンパユニット8は、それぞれ1タイプ(型式)のみとされ、ユニット3〜7はそれぞれ、構成が同じで高さが異なる複数のタイプが製造、保管され、必要な高さを有するタイプを任意に使用するようになっている。
【0039】
また、上記のように、ユニット2〜8を積み重ねた状態では、ユニット2、3および5〜8の仕切り板が同一面上に位置し、筒状の吹出しダクト1の内部空間が、吹出しスペース1Aと空洞スペース1Bとに仕切られた状態となる。そして、このような吹出しスペース1Aと空洞スペース1Bとの比率、つまり各仕切り板の配設位置は、頂部吹出しユニット2の開口21Aおよび中間吹出しユニット5の開口51Aから吹出す給気量に応じて設定されている。つまり、所定量の給気が、開口21Aおよび開口51Aからそれぞれ吹出されるように設定されている。さらに、上記のような上側連結リング33や下側連結リング34などが各ユニット2〜8に設けられているため、相互に任意(自由)に積み重ねでき、図1に示すような組み合わせのみならず、ユニット2〜8を任意に組み合わせることが可能で、その積み重ね数も任意に設定できるようになっている。
【0040】
次に、このような構成の吹出しダクト1の設置(立設)方法および、吹出しダクト1を複数備えた空調設備の構築方法について説明する。ここで、図1に示すように、吹出しダクト1は、第一階段S1と第二階段S2とを貫通した状態で設置されるものとする。また、建屋内のバックスペースに設けられた機械室に空調機が設置され、この空調機からの給気が床下ピット(給気ダクト)を経由して吹出しダクト1に送気されるものとする。また、屋内競技場内(空調対象空間)Gは、図14に示すように、人員密度が高い観客席(高密度空間)G1と、人員密度が低い競技グランド(低密度空間)G2とに分けられるものとする。
【0041】
まず、ユニット2〜8の外径よりも大きい内径を有する円筒状のスリーブ(図示せず)を、第一階段S1と第二階段S2を貫通する位置にそれぞれ配置した状態で、コンクリートを打設して床と貫通孔を形成する。次に、ユニット2〜8を積み重ねて、各ユニット2〜8間を接続する。すなわち、床下ピットの上にダンパユニット8を設置し、第一階段S1のスリーブに第4の空洞ユニット7を挿入しながら、ダンパユニット8の上に第4の空洞ユニット7を積み重ねる。そして、上記のようにして第4の空洞ユニット7の下側連結リングとダンパユニット8の上側連結リング83とを接続する。
【0042】
同様に、順次、第3の空洞ユニット6、中間吹出しユニット5、第2の空洞ユニット4、第1の空洞ユニット3および頂部吹出しユニット2を積み重ねて接続し、吹出しダクト1を組み付ける。このとき、第二階段S2のスリーブに第2の空洞ユニット4を挿入しながら積み重ねる。続いて、第一階段S1のスリーブと第4の空洞ユニット7との隙間および、第二階段S2のスリーブと第2の空洞ユニット4との隙間にモルタルを充填する。そして、吹出しダクト1の上側(頂部吹出しユニット2側)に溶接した振れ止め金物を、屋内競技場の金物(例えば、第三階段S3下の金物)に溶接し、吹出しダクト1を固定するものである。
【0043】
このようにして吹出しダクト1を設置した状態では、中間吹出しユニット5が第二階段S2の直下に位置し、頂部吹出しユニット2が第三階段S3の直下に位置する。つまり、中間吹出しユニット5が一階室F1の上側に位置し、頂部吹出しユニット2が二階室F2の上側に位置する。言い換えると、このように中間吹出しユニット5および頂部吹出しユニット2が位置するように、第1の空洞ユニット3、第2の空洞ユニット4、中間吹出しユニット5、第3の空洞ユニット6および第4の空洞ユニット7の高さが設定(選定)されている。また、部吹出しユニット2の筒体21の上部が、第三階段S3の直下に配設された天井ボードS3a内に位置し、天井ボードS3aとの間に隙間が生じないようになっている。なお、筒体21の上端部(全面上蓋24)が天井ボードS3aに接するようにしてもよい。
【0044】
さらに、第1の空洞ユニット3および第3の空洞ユニット6の点検口が、それぞれ第二階段S2および第一階段S1の上方で、点検しやすい高さに位置するように、ユニット3〜7の高さが設定されている。また、ダンパユニット8と接続される給気ダクト廻りの施工を次のようにして行う。すなわち、空調機に接続される給気ダクトを予め、ダンパユニット8の接続部(下端部)近辺まで延出させておき、給気ダクトと接続部との隙間を短管で接続する。
【0045】
以上のようにして吹出しダクト1を複数立設して空調設備を構築する。ここで、図14に示すように、中間吹出しユニット5の開口51Aおよび頂部吹出しユニット2の開口21Aが観客席G1に向き、開口51A、21Aから給気が観客席G1に向ってほぼ水平放射状に吹出し、かつ、空洞スペース51C、21Cが屋内競技場内の壁部に対向するように、吹出しダクト1を設置する。さらに、観客席G1からの余剰空気が競技グランドG2に流入するように構成する。例えば、排気口を競技グランドG2の天井部に設け、送風機によって競技グランドG2内の空気を排気口に向かわせるとともに、観客席G1に向けて供給された給気の一部を競技グランドG2に流入させる。
【0046】
次に、吹出しダクト1の作用について説明する。
【0047】
まず、空調機からの給気が床下ピットを経由して、ダンパユニット8の下端側から各空洞スペース81A側に送気され、各給気量調整装置84のダンパ羽根84Aの開閉度に応じて、各空洞スペース81A内に給気が流通する。続いて、各空洞スペース81Aを流通した給気が、順次、第4の空洞ユニット7および第3の空洞ユニット6内を流通し、中間吹出しユニット5の下端から吹出しスペース51Bおよび空洞スペース51Cに流入する。ここで、第4の空洞ユニット7および第3の空洞ユニット6内は仕切られているため、各空洞スペース81Aから送気された給気は、それぞれ独立して(別個に)第4の空洞ユニット7および第3の空洞ユニット6内を流通する。
【0048】
次に、吹出しスペース51Bに流入した給気が、案内板55で案内、方向制御されて、開口51Aおよび吹出しシャッター53を通って外部に吹出される。また、空洞スペース51Cに流入した給気が、空洞スペース51Cの上端から第2の空洞ユニット4の空洞スペース41Aに流入する。続いて、空洞スペース41Aを流通した給気が、第1の空洞ユニット3の下端側から各空洞スペース31Aに流入し、各空洞スペース31Aを流通して頂部吹出しユニット2の下端から吹出しスペース21Bおよび空洞スペース21Cに流入する。そして、吹出しスペース21Bに流入した給気が、案内板26で案内、方向制御されて、開口21Aおよび吹出しシャッター23を通って外部に吹出される。一方、空洞スペース21Cに流入した給気は、部分上蓋25によってその流れが止められる。
【0049】
以上のように、この吹出しダクト1によれば、ユニット2〜8を積み重ねるだけで、容易に吹出しダクト1を組み立て、設置することが可能となる。また、ユニット2〜8を任意に組み合わせ、あるいは任意の高さの空洞ユニット3〜7を選択することで、所望の高さの吹出しダクト1を設置したり、所望の位置に開口を配設したりすることが可能となる。しかも、積み重ねた後にユニット2〜8を加減したり、あるいは一部のユニット2〜8を他の種類やタイプ(高さ)のユニット2〜8に交換したりすることで、吹出し高さや吹出し方向などを容易に調整することが可能となる。このように、吹出し高さや吹出し方向などを任意に調整可能なため、多種、多様な建物に対応することが可能となり、つまり汎用性があり、ユニット2〜8を量産することで、コスト削減を図ることが可能となる。
【0050】
また、吹出しダクト1の内部空間が、吹出しスペース1Aと空洞スペース1Bとに仕切られているため、一階室F1と二階室F2のそれぞれに、独立して給気を良好に送り込むことが可能となる。すなわち、内部空間が仕切られていない場合には、下層階の吹出し量を絞りあるいは遮断すると、上層階の吹出し量も絞られあるいは遮断されてしまう。これに対し、この吹出しダクト1では、吹出しスペース1Aから下層階へ吹出す吹出し量を絞りあるいは遮断しても、空洞スペース1Bへの給気量(送気量)は影響されず、上層階に給気を良好に送り込むことが可能となる。このため、例えば、吹出しスペース1A側の給気量調整装置84のダンパ羽根84Aを閉じて、第3の空洞ユニット6などを点検している場合でも、空洞スペース1Bに給気を送ることで、二階室F2への給気を継続することができる。しかも、吹出しスペース1A側と空洞スペース1B側とのそれぞれに給気量調整装置84が設けられているため、一階室F1と二階室F2のそれぞれの環境(温度、湿度)などに応じた任意の給気量を、独立して吹出すことができる。また、高い位置にある開口21Aおよび51Aからの風量を、低い位置にある一箇所の給気量調整装置84で調整できるため、調整作業を容易かつ迅速に行える。
【0051】
さらに、上記のような空調設備によれば、多くの給気が必要な観客席G1に対して各吹出しダクト1の開口51A、21Aから給気が供給され、その余剰空気が比較的少ない給気でよい競技グランドG2に供給される。このため、広い屋内競技場内G(観客席G1と競技グランドG2)に対して少ない数の吹出しダクト1で、効率的に給気を供給することが可能となる。この結果、障害物となる吹出しダクト1の設置スペースを削減し、より多くの観客席G1などを確保することが可能となる。
【0052】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、上記の実施の形態では、吹出しダクト1の下端側から給気を送り込む構成とし、吹出しダクト1の上端部を全面上蓋24で閉塞しているが、屋上に空調機が設置されている場合には、吹出しダクト1の上端側から給気を送り込み、吹出しダクト1の下端部を閉塞する構成となる。一方、上記の実施の形態では、2つの階室F1、F2に給気を供給するものであるが、各ユニットに2つ以上の仕切り板を設けることで、3階以上の多層階に給気を供給する場合にも適応することができる。
【0053】
また、上記の実施の形態では、頂部吹出しユニット2および中間吹出しユニット5をそれぞれ二階室F2および一階室F1の上側に配設し、冷気を送り込んでいるが、暖房負荷もある場合には、次のようにしてもよい。すなわち、頂部吹出しユニット2および中間吹出しユニット5をそれぞれ二階室F2および一階室F1の下側にも配設し、冷房時には上側の頂部吹出しユニット2および中間吹出しユニット5から冷気を送り込み、暖房時には下側の頂部吹出しユニット2および中間吹出しユニット5から暖気を送り込む。さらに、給気量調整装置84を第4の空洞ユニット7などに直接設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0054】
以上のように、この発明に係る吹出しダクトおよび空調設備は、設置が容易で、吹出し高さや吹出し方向などを容易に調整することが可能なものとして極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】この発明の実施の形態に係る吹出しダクトの設置状態を示す側面図である。
【図2】図1の吹出しダクトの頂部吹出しユニットの断面図である。
【図3】図1の吹出しダクトの頂部吹出しユニットの側面図である。
【図4】図2のA−A断面図である。
【図5】図1の吹出しダクトの第1の空洞ユニットの断面図である。
【図6】図5の第1の空洞ユニットの接続機構および点検口の開閉機構を示す断面図である。
【図7】図1の吹出しダクトの第2の空洞ユニットの断面図である。
【図8】図1の吹出しダクトの中間吹出しユニットの断面図である。
【図9】図1の吹出しダクトの中間吹出しユニットの側面図である。
【図10】図8のB−B断面図である。
【図11】図1の吹出しダクトのダンパユニットの側面図である。
【図12】図1の吹出しダクトのダンパユニットの断面図である。
【図13】図1の吹出しダクトのダンパユニットの平面図である。
【図14】図1の吹出しダクトを複数立設して空調設備を構築した状態を示す平面図である。
【符号の説明】
【0056】
1 吹出しダクト
2 頂部吹出しユニット(ユニット)
21 筒体
21A 開口
21B 吹出しスペース
21C 空洞スペース
22 仕切り板
23 吹出しシャッター
24 全面上蓋
26 案内板
3 第1の空洞ユニット(ユニット)
33、34 連結リング
4 第2の空洞ユニット(貫通管)
5 中間吹出しユニット(ユニット)
6 第3の空洞ユニット(ユニット)
7 第4の空洞ユニット(ユニット)
8 ダンパユニット(ユニット)
84 給気量調整装置(給気量調整手段)
F1 一階室
F2 二階室
S1〜S3 階段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給気ダクト側からの給気を空調対象空間に吹出す吹出しダクトであって、
筒状で積み重ね自在な筒体の内部空間が軸方向に沿って仕切られたユニットが複数積み重ねられて構成され、前記ユニットとして、
仕切られた内部空間それぞれへの給気量を調整する給気量調整手段が前記給気ダクトの近傍に設けられたダンパユニットと、
前記ダンパユニットの上方に配設され、仕切られた内部空間が吹出しスペースと上下に開放した空洞スペースとされ、前記吹出しスペース側の側壁に前記給気を空調対象空間に吹出す開口が形成され、前記空洞スペースを介して上方のユニットに前記給気を送る中間吹出しユニットと、
前記中間吹出しユニットの上方に配設され、上端部が閉塞され、前記中間吹出しユニットの空洞スペースを介して送られた給気を空調対象空間に吹出す開口が、仕切られた内部空間の少なくとも一方の側壁に形成されている頂部吹出しユニットと、
を含むことを特徴とする吹出しダクト。
【請求項2】
給気ダクト側からの給気を空調対象空間に吹出す吹出しダクトであって、
筒状で積み重ね自在な筒体の内部空間が軸方向に沿って仕切られたユニットが複数積み重ねられて構成され、前記ユニットとして、
仕切られた内部空間が吹出しスペースと上下に開放した空洞スペースとされ、前記吹出しスペース側の側壁に前記給気を空調対象空間に吹出す開口が形成され、前記空洞スペースを介して上方または下方のユニットに前記給気を送る中間吹出しユニット、
を含むことを特徴とする吹出しダクト。
【請求項3】
前記ユニットとして、
前記中間吹出しユニットの上方または下方に配設され、上端部または下端部が閉塞され、前記中間吹出しユニットの空洞スペースを介して送られた給気を空調対象空間に吹出す開口が、仕切られた内部空間の少なくとも一方の側壁に形成されている頂部吹出しユニット、
を含むことを特徴とする請求項2に記載の吹出しダクト。
【請求項4】
筒状で、前記ユニット間に配設され、下方のユニットからの給気を上方のユニットに送る貫通管、
を備えることを特徴とする請求項2または3のいずれか1項に記載の吹出しダクト。
【請求項5】
請求項1から4の少なくとも1項に記載の吹出しダクトを複数、前記開口から給気が前記空調対象空間に向けてほぼ水平放射状に吹出し、前記空洞スペースが前記空調対象空間の壁部に対向するように立設した、
ことを特徴とする空調設備。
【請求項6】
観客席や聴衆席などの人員密度が高い高密度空間と、競技グランドや舞台などの人員密度が低い低密度空間とに分けられた建物に適用され、
請求項1から4の少なくとも1項に記載の吹出しダクトを複数、前記開口から給気が前記高密度空間に向けて吹出すように立設し、前記高密度空間からの余剰空気が前記低密度空間に流入するように構成されている、
ことを特徴とする空調設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−216298(P2009−216298A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−60270(P2008−60270)
【出願日】平成20年3月10日(2008.3.10)
【出願人】(000169499)高砂熱学工業株式会社 (287)
【Fターム(参考)】