吹出し口具及び空調設備
【課題】 床吹出し型であっても使用者に不快感を与えることを可及的に防止することができる吹き出口具及び空調設備を提供する。
【解決手段】 座部14及び背もたれ部17を設けてなる椅子本体11が床部G上に設置してある施設の床部Gに開設された吹出し口8から温調空気を流出させて、施設内の温度を調整するに当たって、床部Gの椅子本体11に対向する位置に開設された吹出し口8に嵌合される吹出し口具1の吹出し口具本体2は、温調空気を、椅子本体11の背もたれ部17に沿って立ち上がるように流出させるとともに、当該椅子本体11の座部14の下側領域に流出させるようになしてある。
【解決手段】 座部14及び背もたれ部17を設けてなる椅子本体11が床部G上に設置してある施設の床部Gに開設された吹出し口8から温調空気を流出させて、施設内の温度を調整するに当たって、床部Gの椅子本体11に対向する位置に開設された吹出し口8に嵌合される吹出し口具1の吹出し口具本体2は、温調空気を、椅子本体11の背もたれ部17に沿って立ち上がるように流出させるとともに、当該椅子本体11の座部14の下側領域に流出させるようになしてある。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の座席がタンデムに配設された床に開設された吹出し口から温度調整された温調空気を流出させて、前記座席の周囲の温度を調整する空調設備に用いられる吹出し口具、及び該吹出し口具を備える空調設備に関する。
【背景技術】
【0002】
劇場、コンサートホール、映画館、又は競技場等の施設にあっては、比較的大きな空間内の特定位置に配置された複数座席の周囲の温度を効率的に調整することが要求されている。そのため、後記する特許文献1には次のような設備が提案されている。
【0003】
図11は特許文献1に開示された空調設備の構成を説明する説明図であり、図中、Gは床部である。床部G上には2本の脚81,81が距離を隔てて立設してあり、これらの脚81,81を横架する横架材82が両脚81,81によって支持されている。この横架材82上には複数の椅子本体110,110,…が各椅子本体110,110,…の幅方向へ所定距離を隔てて配置してある。各椅子本体110,110,…は両側に配した支柱83,83,…によって支持されており、各支柱83,83,…はそれぞれ前記横架材82に固定してある。
【0004】
一方、床部Gの下側領域は温度調整された空気を一時的に貯留するチャンバ90になしてあり、該チャンバ90には図示しないダクトが連結してあり、該ダクトを通じて冷暖房機から温度調整された温調空気が流入されるようになっている。
【0005】
床部Gの椅子本体110,110,…が設置されていない通路部分には前記チャンバ90に連通する複数(図11にあってはその内の1つが示してある。)の吹出し口80が開設してあり、各吹出し口80には吹出し口具100が嵌合してある。吹出し口具100は吹出し口80に係合する環状のフレーム部材101の内部に、風向きを調節する長方形板状の複数の羽根部材102,102,…が距離を隔てて互いに平行に架設してある。各羽根部材102,102,…の姿勢は、その長辺をフレーム部材101の径方向に、その短辺をフレーム部材101の中心軸と平行な方向になるようになしてあり、これによってチャンバ90内流入された空気は吹出し口具100から鉛直上方へ流出される。
【0006】
このような空調設備にあっては、チャンバ90によって一時的に貯留された空気が吹出し口具100から徐々に流出されるため、前記各椅子本体110,110,…の周囲に留まって当該領域の温度を調整することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−166928号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながらこのような従来の空調設備にあっては床部Gの椅子本体110,110,…が設置されていない通路部分に配設された吹出し口具100から鉛直上方へ、温度調整された空気が流出するため、当該空気が椅子本体110,110,…に着座した使用者の脚部に直接当たり、使用者に不快感を与えるという問題があった。
【0009】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであり、床吹出し型であっても使用者に不快感を与えることを可及的に防止することができる吹き出口具、及び該吹き出口具を備える空調設備を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明に係る吹出し口具は、座部及び背もたれ部を設けてなる椅子本体が床部上に設置してある施設の前記床部に開設された吹出し口から温度調整された温調空気を流出させて、前記施設の温度を調整する空調設備の前記吹出し口に嵌合される吹出し口具において、前記床部の椅子本体に対向する位置に開設された吹出し口に嵌合された場合、温調空気を、当該椅子本体の背もたれ部に沿って立ち上がるように流出させるとともに、当該椅子本体の座部の下側領域に流出させるようになした環状の吹出し口具本体を具備することを特徴とする。
【0011】
本発明の吹出し口具にあっては、座部及び背もたれ部を設けてなる椅子本体が床部上に設置してある施設において、床部に開設された吹出し口から温度調整された温調空気を流出させて、施設の温度を調整するに当たって、床部の椅子本体に対向する位置に開設された吹出し口に嵌合される吹出し口具本体を具備している。
【0012】
この吹出し口具本体は環状をなしており、温調空気を、当該吹出し口具に対向する椅子本体の背もたれ部に沿って立ち上がるように流出させるとともに、椅子本体の座部の下側領域に流出させるようになっている。
【0013】
このように吹出し口具本体から温調空気を、当該吹出し口具本体に対向する椅子本体の背もたれ部に沿って立ち上がるように流出させると、この温調空気はコアンダ効果によって椅子本体の背面側に誘導され当該椅子本体の後方に配置された他の椅子本体の周囲の領域に拡散され、これによって当該領域の温度が調整される。
【0014】
このとき、椅子本体の座部の下側領域の雰囲気が誘引されるが、本発明の吹出し口具に備えられた吹出し口具本体から温調空気を、前記椅子本体の座部の下側領域に流出させるようになっており、これによって座部の下側領域に流出された温調空気が誘引されるため、椅子本体の背もたれ部に沿って立ち上がる温調空気に温調されていない雰囲気が混入することが防止され、前述した他の椅子本体に座した使用者に不快感を与えることが防止される。
【0015】
一方、椅子本体の座部の下側領域に流出された温調空気によって当該領域の温度が調整されるため、当該椅子本体に座した使用者の足元の温度と、上半身の周囲の温度との差が小さい。従って、当該使用者に温度差による不快感を与えることが可及的に防止される。更に、椅子本体の座部の下側領域に流出された温調空気は上述したように誘引されるため、当該温調空気は前記椅子本体に座した使用者の足元へは僅かしか到達せず、当該使用者の足元に気流による不快感を与えることが可及的に防止される。
【0016】
(2)また、本発明に係る吹出し口具は必要に応じて、前記吹出し口具本体には、吹出し口具本体の中心軸の軸長方向へ温調空気を流出させる第1領域と、該第1領域から流出された温調空気と交差するように温調空気を流出させる第2領域とが設けてあり、吹出し口具本体は第1領域が前記椅子本体の背もたれ部側に設置され、第2領域が前記椅子本体の座部側に配置されるようにしてあることを特徴とする。
【0017】
本発明の吹出し口具にあっては、前記吹出し口具本体には、吹出し口具本体の中心軸の軸長方向へ温調空気を流出させる第1領域が設けてあり、吹出し口具本体が床部に配設された場合、第1領域から鉛直方向へ温調空気が流出される。
【0018】
また、吹出し口具本体には、前記第1領域から流出された温調空気と交差するように温調空気を流出させる第2領域も設けてあり、前記第1領域から流出された温調空気は、第2領域から流出された温調空気によって所定方向へ押し出される。
【0019】
この吹出し口具本体は第1領域が前記椅子本体の背もたれ部側に設置され、第2領域が前記椅子本体の座部側に配置されるようにしてあり、これによって吹出し口具本体の第1領域及び第2領域から流出された温調空気はその大部分が椅子本体の背もたれ部に沿って立ち上がる。そして、コアンダ効果によって椅子本体の背面側に誘導され当該椅子本体の後方に配置された他の椅子本体の周囲の領域に拡散され、これによって当該領域の温度が調整される。
【0020】
一方、吹出し口具本体の第2領域から流出された温調空気の一部は対向する椅子本体の座部の裏面又は背もたれ部の下端部分に当たって当該座部の下側領域に流れ、前述した如くその大部分が椅子本体の背もたれ部に沿って立ち上がる温調空気に誘引される。
【0021】
従って、前同様、当該椅子本体の後方に配置された他の椅子本体に座した使用者の足元に不快感を与えることなく、椅子本体に座した使用者の足元の温度と、上半身の周囲の温度との差を小さくして、使用者に温度差による不快感を与えることを可及的に防止することができる。
【0022】
(3)更に、本発明に係る吹出し口具は必要に応じて、前記第1領域には帯状の複数の第1羽根部材が吹出し口具本体の径方向へ適宜の間隔で設けてあり、前記第2領域には帯状の複数の第2羽根部材が吹出し口具本体の径方向へ適宜の間隔で設けてあり、各第2羽根部材は、第2領域から流出される温調空気が前記吹出し口具本体の中心軸と平行な軸に対して15°以上30°以下の適宜角度で交差するようになしてあることを特徴とする。
【0023】
本発明の吹出し口具にあっては、吹出し口具本体の第1領域には、帯状の複数の第1羽根部材が吹出し口具本体の径方向へ適宜の間隔で設けてあり、吹出し口具本体が床部に配設された場合、第1領域から鉛直方向へ温調空気が流出される。
一方、吹出し口具本体の第2領域にも、帯状の複数の第2羽根部材が吹出し口具本体の径方向へ適宜の間隔で設けてある。
【0024】
これら第2羽根部材は、第2領域から流出される温調空気が前記吹出し口具本体の中心軸と平行な軸に対して15°以上30°以下の適宜角度で交差するようになしてあり、従って、第1領域から流出される温調空気と第2領域から流出される温調空気とは15°以上30°以下の適宜角度で交差する。
【0025】
第2羽根部材によって第2領域から流出される温調空気を第1領域から流出される温調空気とこのような範囲の角度で交差するように設定することによって、第1領域が前記椅子本体の背もたれ部側に設置され、第2領域が前記椅子本体の座部側に配置されるように吹出し口具本体が床部に配設された場合、吹出し口具本体から流出される温調空気の大部分を椅子本体の背面側に誘導させると共に、第2領域から流出される温調空気の一部を対向する椅子本体の座部の下側領域へ流すことができる。
【0026】
これによって、前同様、当該椅子本体の後方に配置された他の椅子本体に座した使用者の足元に不快感を与えることなく、椅子本体に座した使用者の足元の温度と、上半身の周囲の温度との差を小さくして、使用者に温度差による不快感を与えることを可及的に防止することができる。
【0027】
(4)一方、本発明に係る吹出し口具は必要に応じて、相隣る第1羽根部材の間隙、及び/又は相隣る第2羽根部材の間隙には、当該間隙を複数の部分に分割するセパレータが設けてあることを特徴とする。
【0028】
本発明の吹出し口具にあっては、相隣る第1羽根部材の間隙、及び/又は相隣る第2羽根部材の間隙には、当該間隙を複数の部分に分割するセパレータが設けてあり、相隣る第1羽根部材とセパレータとで囲まれる領域、相隣る第2羽根部材とセパレータとで囲まれる領域によって、相隣る第1羽根部材の各間隙内、及び相隣る第2羽根部材の各間隙内に流入される温調空気が整流される。これによって、吹出し口具から温調空気がより均一に流出されるため、前述した所要の作用をより効果的に得ることができるとともに、温度ムラを低減させることができる。
【0029】
(5)ところで、本発明に係る吹出し口具は必要に応じて、前記吹出し口具本体内に流入される温調空気を整流する整流用筒体を更に備え、該整流用筒体の一端側に前記吹出し口具本体が配設してあり、該整流用筒体内を通過した温調空気が吹出し口具本体から流出されるようになしてあることを特徴とする。
【0030】
本発明の吹出し口具にあっては、前記吹出し口具本体内に流入される温調空気を整流する整流用筒体を更に備えている。この整流用筒体の一端側に前記吹出し口具本体が配設してあり、整流用筒体内を通過した温調空気が吹出し口具本体から流出される。つまり、整流用筒体内に流入され、そこを通過する間に整流された温調空気が吹出し口具本体から流出されるのである。
これによって、吹出し口具から温調空気がより均一に流出されるため、前述した所要の作用をより効果的に得ることができるとともに、温度ムラを低減させることができる。
【0031】
(6)更に、本発明に係る吹出し口具は必要に応じて、前記整流用筒体の他端側に整流用筒体に流入された温調空気の流れを邪魔する邪魔板が配設してあり、該邪魔板によって整流用筒体に流入された温調空気を均一化するようになしてあることを特徴とする。
【0032】
本発明の吹出し口具にあっては、整流用筒体の他端側に整流用筒体に流入された温調空気の流れを邪魔する邪魔板が配設してある。前述したように整流用筒体の一端側に吹出し口具本体が配設してあり、整流用筒体内に流入された温調空気をその他端側に配置された邪魔板によって均一化し、均一化された温調空気が当該整流用筒体内を通過して吹出し口具本体から流出される。
【0033】
これによって、例えば温調空気を供給するダクトを整流用筒体に連結した場合であっても、その連結方向に拘らず邪魔板によって均一化された温調空気が吹出し口具本体に供給され、該吹出し口具本体から施設内へ流出されるため、前述した所要の作用を得ることができるとともに、温度ムラを低減させることができる。
【0034】
(7)本発明に係る空調設備は、座部及び背もたれ部を設けてなる複数の椅子本体が床部上に設置してある施設の前記床部に複数の吹出し口が開設してあり、各吹出し口にそれぞれ嵌合させた吹出し口具から温度調整された温調空気を流出させて当該施設内の温度を調整する空調設備において、前記各吹出し口は床部の各椅子本体に対向する位置にそれぞれ開設してあり、前述したいずれかに記載の吹出し口具を備えることを特徴とする。
【0035】
本発明の空調設備にあっては、座部及び背もたれ部を設けてなる複数の椅子本体が床部上に設置してある施設の前記床部に複数の吹出し口が開設してあり、各吹出し口にそれぞれ嵌合させた吹出し口具から温度調整された温調空気を流出させて当該施設内の温度を調整する。そして、床部の各椅子本体に対向する位置にそれぞれ吹出し口が開設してあり、各吹出し口には前述したいずれかに記載の吹出し口具が嵌合してある。従って、前述した如き各作用効果を得ることができる。
【0036】
(8)本発明に係る空調設備は必要に応じて、前記各吹出し口はそれぞれ、当該吹出し口に嵌合された吹出し口具の吹出し口具本体の周縁の一部が、対向する椅子本体の背もたれ部の下端から垂下した鉛直線より当該椅子本体の座部側に位置し、前記吹出し口具本体の周縁の他部が、前記鉛直線から当該椅子本体の背もたれ部側へ略0.5cm以上3.5cm以下突出するように開設してあることを特徴とする。
【0037】
本発明の空調設備にあっては、各吹出し口はそれぞれ、当該吹出し口に嵌合された吹出し口具の吹出し口具本体の周縁の一部が、対向する椅子本体の背もたれ部の下端から垂下した鉛直線より当該椅子本体の座部側に位置し、前記吹出し口具本体の周縁の他部が、前記鉛直線から当該椅子本体の背もたれ部側へ略0.5cm以上3.5cm以下突出するように開設してあるため、所要の空間領域へ温調空気を流すことができ、後方の使用者にも不快感を与える虞がない。また、対向する椅子本体の座部の下側領域にも適宜量の温調空気が流出されるため、当該椅子本体に着座した使用者に不快感を与えることなく、温調空気が漂う温調領域が形成される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に係る空調設備の要部構成を示す正面図である。
【図2】本発明に係る空調設備の要部構成を示す側面図である。
【図3】本発明に係る空調設備の要部構成を示す平面図である。
【図4】図1に示した吹出し口具本体を示す平面図である。
【図5】図4に示した吹出し口具本体のV−V線による断面図である。
【図6】図2に示した空調設備の部分拡大図である。
【図7】本発明に係る空調設備によって空調を実施している状態を説明する説明図である。
【図8】他の実施形態に係る吹出し口具の側断面図である。
【図9】他の実施形態に係る吹出し口具の側断面図である。
【図10】図9に示した邪魔板の平面図である。
【図11】特許文献1に開示された空調設備の構成を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
(本発明の実施形態)
図1〜図3は本発明に係る空調設備の要部構成を示す正面図、側面図及び平面図であり、これらの図中、Gは床部である。
図1〜図3に示したように、床部G上には、使用者が着座する座部14及び背もたれ部17を備える複数の椅子本体11,11,…が各椅子本体11,11,…の幅方向へ適宜の間隙を隔てて直線状に配置してあり、各椅子本体11,11,…はそれぞれ、床部Gに所定距離を隔てて立設した支持部材18,18,…によってその両側を支持されている。また、相隣る椅子本体11,11,…の間隙及び両端の椅子本体11(,11)の外側にはそれぞれ、使用者の肘を担持する肘掛部19,19,…が床部Gと略平行に設けてある。
【0040】
前述した座部14は、底板部12に座クッション部13を設けてなり、本実施形態にあっては相隣る支持部材18,18によって座部14を、起立した収納姿勢と横臥した着座姿勢との間で回動自在に支持してある。また、背もたれ部17は、相隣る支持部材18,18に、適宜のリクライニング角度になるように固定した背板部15の前面に背クッション部16を設けてなり、背板部15の下端は、着座姿勢の座部14の底板部12より所定寸法だけ床部G側へ延出させてある。
なお、映画館、劇場又はコンサートホールにあっては、床部Gから椅子本体11の背板部15下端までの高さ寸法は16cm〜24cm程度であり、略17cmが最も多い。
【0041】
床部Gの下側領域は温度調整された空気を一時的に貯留するチャンバ9になしてあり、該チャンバ9には図示しないダクトが連結してあり、該ダクトを通じて冷暖房機から温度調整された温調空気がチャンバ9内へ流入されるようになっている。
【0042】
床部Gの各椅子本体11,11,…に対向する適宜位置にはそれぞれ、前記チャンバ9に連通する複数の吹出し口8,8,…が開設してあり、各吹出し口8,8,…にはそれぞれ吹出し口具1を構成する吹出し口具本体2,2,…が嵌合してある。そして、チャンバ9内の温調空気は吹出し口具本体2,2,…からそれぞれ30m3/h程度から70m3/h程度の吹出し量で流出されるようになっている。
【0043】
図4は図1に示した吹出し口具本体2を示す平面図であり、図5は図4に示した吹出し口具本体2のV−V線による断面図である。
両図に示したように、吹出し口具本体2は、適宜の長さ寸法を有する筒状のフレーム部材20の一端縁に、平帯環状のフランジ部23をフレーム部材20の中心軸と直交するように立設してなり、フレーム部材20を前述した吹出し口8に内嵌させ、フランジ部23を床部Gの吹出し口8の周辺部分に係合させるようになっている(図1参照)。
【0044】
フレーム部材20内は、フレーム部材20の中心軸の軸長方向へ温調空気を流出させるための複数の第1羽根部材24,24,…が架設された第1領域21と、前記中心軸に対して傾斜した方向へ温調空気を流出させるための複数の第2羽根部材25,25,…が架設された第2領域22とに分けられている。すなわち、フレーム部材20内はその径方向において第1領域21と第2領域22との2領域に分割されている。
【0045】
第1羽根部材24,24,…はフレーム部材20の内周面に平帯状の部材を、その短辺(幅)方向がフレーム部材20の中心軸と平行な姿勢になしてあり、フレーム部材20の直径方向に設定される基準線の長手方向へ適宜距離を隔てて、前記基準線と直交するように架設してある。
【0046】
また、第2羽根部材25,25,…はフレーム部材20の内周面に、前記基準線の第1羽根部材24,24,…とは反対側の長手方向へ適宜距離を隔てて、前記基準線と直交するように架設してある。そして、床部Gから椅子本体11の底板部12(いずれも図2参照)までの高さ寸法が略15cm〜略20cmである場合、各第2羽根部材25,25,…は平帯状の部材を、前記フレーム部材20の一端側において、第2羽根部材25,25,…の短辺(幅)方向の軸とフレーム部材20の中心軸と平行な軸とがなす角αの角度が15°以上30°以下、好ましくは18°以上20°以下になる姿勢になしてあり、これによって第1羽根部材24,24,…を設けた第1領域21から流出される温調空気を所要方向へ押し出すようになっている。
【0047】
なお、後述する如く吹出し口具本体2は第1領域21が対向する椅子本体11の背板部15側に位置し、第2領域22が対向する椅子本体11の座部14側に位置するように配されるようになっており、従って第2領域22から流出された温調空気は対向する椅子本体11の背板部15側、すなわち椅子本体11の背面方向へ流れる。
【0048】
ここで、前述した角αの角度が15°より小さい場合は、第1領域21から流出される温調空気を押し出す作用が小さ過ぎるため、対向する椅子本体の座部14(共に図2参照)の下側領域において、椅子本体11の前方へ向かう温調空気の流速が所要値を超えるので、当該椅子本体11に着座した使用者に不快感を与える虞がある。一方、前記角αの角度が30°を超える場合は、第1領域21から流出される温調空気を押し出す作用が大き過ぎるため、所要の空間領域へ温調空気を流すことができず、後方の使用者に不快感を与える虞がある。
【0049】
一方、前記角αの角度を15°以上30°以下になした場合、第1領域21から流出される温調空気を所要方向へ押し出すと共に、コアンダ効果により対向する椅子本体11の背板部15に沿って所要の範囲へ温調空気を流すことができるため、当該椅子本体11に着座した使用者に不快感を与えることなく、後方の使用者にも不快感を与えることがない。
【0050】
また、対向する椅子本体11の座部14の下側領域にも適宜量の温調空気が流出されるため、当該椅子本体11に着座した使用者に不快感を与えることなく、温調空気が漂う温調領域が形成される。一方、大部分の温調空気は前述したコアンダ効果により当該椅子本体11の背板部15に沿って所要の範囲へ誘導されるが、これによって座部14の下側領域の雰囲気が誘引される。このとき、前述したように座部14の下側領域に形成された温調領域から温調空気が誘引されるため、背板部15に沿って所要の範囲へ誘導される温調空気に温調されていない雰囲気が混入することが可及的に防止される。従って、後方の使用者にも不快感を与えることが防止される。
【0051】
更に、角αの角度を18°以上20°以下になした場合、当該椅子本体11(図2参照)と後方の他の椅子本体との間の距離を他の場合より短くなしても、他の椅子本体に座した使用者に不快感を与えることを防止することができる。
【0052】
なお、角αの角度は第2羽根部材25,25,…別に異ならせてもよい。
なお、本実施の形態では第1羽根部材24,24,…及び第2羽根部材25,25,…はいずれも平帯状になした場合について説明したが、本発明はこれに限らず、端面視がく字形又は円弧形等、種々の形になした帯状の第1羽根部材又は第2羽根部材を用いることができる。
【0053】
この場合、当該第1羽根部材を設けた第1領域21から温調空気が、フレーム部材20の中心軸の軸長方向へ流出されるようになし、当該第2羽根部材を設けた第2領域22から流出された温調空気が、フレーム部材20の中心軸と平行な軸に対して、即ち前記第1領域から流出された温調空気に対して15°以上30°以下の角度、好ましくは18°以上20°以下の角度で交差するようになせばよい。
【0054】
ところで、前述した第1領域21の面積は吹出し口具本体2の開口面積の略50%〜略10%が好適であり、従って第2領域22の面積は吹出し口具本体2の開口面積の略50%〜略90%が好適である。
【0055】
第1領域21の面積が吹出し口具本体2の開口面積の略10%より狭い場合は、所要の空間領域へ温調空気を流すことができず、後方の使用者に不快感を与える虞があり、第1領域21の面積が吹出し口具本体2の開口面積の略50%より広い場合は、対向する椅子本体11の座部14(共に図2参照)の下側領域において、椅子本体11の前方へ向かう温調空気の流速が所要値を超えるため、当該椅子本体11に着座した使用者に不快感を与える虞がある。
【0056】
一方、第1領域21の面積が吹出し口具本体2の開口面積の略50%〜略10%である場合、すなわち第2領域22の面積が吹出し口具本体2の開口面積の略50%〜略90%である場合、当該椅子本体11に着座した使用者に不快感を与えることなく、所要の空間領域へ温調空気を流すことができるため、後方の使用者にも不快感を与える虞がない。
【0057】
ところで、本実施形態で示した吹出し口具本体2にあっては、相隣る第1羽根部材24,24,…の各間隙、及び相隣る第2羽根部材25,25,…の各間隙を複数の部分に分割するセパレータ26,26,…がそれぞれ設けてあり、各第1羽根部材24,24,…及びセパレータ26,26,…、又は各第2羽根部材25,25,…及びセパレータ26,26,…によって、吹出し口具本体2の内部は格子状に仕切られている。これによって、相隣る第1羽根部材24,24,…の各間隙内、及び相隣る第2羽根部材25,25,…の各間隙内に流入される温調空気が整流される。
【0058】
なお、本実施形態ではセパレータ26,26,…を設けた場合を示したが、本発明はこれに限らず、セパレータ26,26,…を設けていない吹出し口具本体であってもよいことは言うまでもない。
【0059】
次に、このような吹出し口具本体2の配設位置及び配設方向について説明する。
図6は図2に示した空調設備の部分拡大図である。なお、図中、図2に示した部分に対応する部分には同じ番号を付してその説明を省略する。
【0060】
図6に示した如く、吹出し口具本体2は第1羽根部材24,24,…が椅子本体11の背板部15側にあり、第2羽根部材25,25,…が椅子本体11の座部14側にあるように配され、各第1羽根部材24,24,…及び第2羽根部材25,25,…は背板部15の幅方向と平行な方向に向けて配置してある。
【0061】
そして、吹出し口具本体2は、背板部15の下端部から鉛直下方へ延出させた線分を鉛直線Lとすると、吹出し口具本体2の直径上において、前述した第2領域22及び第1領域21の大部分が鉛直線Lより座部14側の位置にあり、第1領域21の残部が鉛直線Lより座部14とは反対側へ寸法Tだけ突出した位置にあるようになしてある。すなわち、吹出し口具本体2のフレーム部材20の一部が、鉛直線Lより椅子本体11の座部14側に位置し、フレーム部材20の他部が、前記鉛直線Lより当該椅子本体11の背板部15側へ寸法Tだけ突出するようになしてある。
【0062】
ここで、床部Gから椅子本体11の背板部15の下端までの高さ寸法が16cm〜24cm程度であり、吹出し口具本体2からの吹出し量が30m3/h程度以上70m3/h程度以下である場合、寸法Tの値は0.5cm以上3.5cm以下であり、より好ましくは略1.25cmである。寸法Tの値が0.5cm未満の場合、対向する椅子本体11の座部14(共に図2参照)の下側領域において、椅子本体11の前方へ向かう温調空気の流速が所要値を超えるため、当該椅子本体11に着座した使用者に不快感を与える虞がある。一方、寸法Tの値が3.5cmを超えた場合、所要の空間領域へ温調空気を流すことができず、後方の使用者に不快感を与える虞がある。
【0063】
これに対し、寸法Tの値が0.5cm以上3.5cm以下の場合、当該椅子本体11に着座した使用者に不快感を与えることなく、所要の空間領域へ温調空気を流すことができるため、後方の使用者にも不快感を与える虞がない。また、対向する椅子本体11の座部14の下側領域にも適宜量の温調空気が流出されるため、当該椅子本体11に着座した使用者に不快感を与えることなく、温調空気が漂う温調領域が形成され、これによって背板部15に沿って所要の範囲へ誘導される温調空気に温調されていない雰囲気が混入することが可及的に防止される。従って、後方の使用者にも不快感を与えることが防止される。
【0064】
更に、寸法Tの値が略1.25cmの場合、当該椅子本体11(図2参照)と後方の椅子本体との間の距離を他の場合より短くなしても、後方の椅子本体に座した使用者に不快感を与えることを防止することができる。
【0065】
図7は本発明に係る空調設備によって空調を実施している状態を説明する説明図である。
なお、図中、図6に示した部分に対応する部分には同じ番号を付してある。
【0066】
前述した如く、チャンバ9内には温調空気が流入されており、チャンバ9内の温調空気は吹出し口具本体2の第1領域21から鉛直上方へ立ち上がるように流出されようとする。このとき、第1領域21の鉛直線Lより座部14とは反対側へ突出した部分から流出された温調空気は、コアンダ効果により椅子本体11の背板部15に沿って椅子本体11の背面側上方へ誘導される。
【0067】
一方、第1領域21の鉛直線Lより座部14側に位置する部分から流出された温調空気は座部14へ向かって流出されるが、吹出し口具本体2の第2領域22から椅子本体11の背面側へ向う温調空気が流出されるため、両温調空気の大部分は椅子本体11の背板部15側へ押し出され、前同様、椅子本体11の背板部15に沿って椅子本体11の背面側上方へ誘導される。
【0068】
また、吹出し口具本体2の第2領域22から流出された温調空気の大部分は、椅子本体11の背板部15側へ向かい、前同様、椅子本体11の背板部15に沿って椅子本体11の背面側上方へ誘導される。
【0069】
このようにして椅子本体11の背面側上方へ誘導された温調空気は拡散等によって当該椅子本体11の後部に配置された他の椅子本体11の周囲の第1拡散領域R1へ拡がり、当該第1拡散領域R1を所要の温度に調整する。
【0070】
一方、吹出し口具本体2の第2領域22から流出された温調空気の一部は椅子本体11の背板部15の下端近傍の部分及び座部14の底板部12の下面に当たるので、座部14の下側に温調空気が拡散した第2拡散領域R2が生成される。
【0071】
ところで、前述したように吹出し口具本体2から流出された温調空気の大部分は椅子本体11の背板部15に沿って椅子本体11の背面側上方へ誘導されるため、かかる気流によって座部14の下側の雰囲気が誘引される。このとき、座部14の下側に温調空気の第2拡散領域R2が生成されており、当該第2拡散領域R2の温調空気が誘引されるため、温度が調整されていない雰囲気が誘引されるのを防止することができ、第1拡散領域R1内の使用者に不快感を与えることが防止される。
【0072】
一方、椅子本体11の座部14の下側領域に流出された温調空気によって第2拡散領域R2の温度が調整されるため、当該椅子本体11に座した使用者の足元の温度と、上半身の周囲の温度との差が小さい。従って、当該使用者に温度差による不快感を与えることが可及的に防止される。更に、椅子本体11の座部14の下側領域に流出された温調空気は前述した如く椅子本体11の背板部15側へ誘引されるため、当該温調空気は椅子本体11に座した使用者の足元へは僅かしか到達せず、当該使用者の足元に気流による不快感を与えることが可及的に防止される。
なお、吹出し口具本体2から流出される温調空気の量は第1拡散領域R1が所要の空間範囲になるように設定してある。
【0073】
なお、本実施形態では吹出し口具本体2は1つのフレーム部材20内に第1領域21及び第2領域22が設けてあるが、本発明はこれに限らず、複数のフレーム部材内に第1羽根部材24,24,…又は第2羽根部材25,25,…を設け、それらのフレーム部材を組み合わせて第1領域21及び第2領域22を備える吹出し口具本体を構成するようにしてもよい。
また、図7では前後の椅子本体11,11間に段差が設けてあるが、そのような段差が存在しない平坦な状態であっても前同様の作用及び効果が奏されることは言うまでもない。
【0074】
(他の実施形態)
図8及び図9は他の実施形態に係る吹出し口具の側断面図であり、いずれも前述したチャンバから供給される温調空気を整流し得るようになしてある。
【0075】
図8に示した吹出し口具1aは、前述した吹出し口具本体2、及びチャンバから供給される温調空気の気流を整える整流用筒体5を備えている。
【0076】
整流用筒体5は、吹出し口具本体2の外径より少し大きい寸法の内径を有する円筒状の筒本体5aの一端縁に平帯環状のフランジ部5bを立設してなり、筒本体5aの他端近傍の部分は他の部分より外径を縮小させた縮径部5cになしてある。
【0077】
筒本体5aの一端には前述した吹出し口具本体2が着脱可能に内嵌してあり、内嵌された吹出し口具本体2と筒本体5aとの間隙には、温調空気の漏出を防止する環状のパッキン7が介装してある。
【0078】
また、筒本体5aのフランジ部5bには螺子止用の複数の孔が周方向に適宜の間隔で貫通してあり、筒本体5aを吹出口内へフランジ部5bが床部に当接するまで嵌入させ、前記フランジ部5bの各孔を貫通させた螺子30,30,…を床部に螺着させることによって筒本体5aを床部に固定するようになしてある。
【0079】
このような吹出し口具1aにあっては、温調空気は整流用筒体5を構成する筒本体5aの他端から内部へ流入し、そこで筒本体5aの中心軸の軸長方向と平行な方向に整流され、筒本体5aの一端に嵌合された吹出し口具本体2から流出される。
【0080】
このようにチャンバ内に供給された温調空気の流れが所要の向きでない場合であっても、整流用筒体5内に流入した温調空気はそこで整流されるため、吹出し口具本体2の第1羽根部材24,24,…及び第2羽根部材25,25,…に対して温調空気が所要の角度で導入され、所要の第1拡散領域R1及び第2拡散領域R2(図7参照)を生成することができる。
【0081】
更に、図9に示した吹出し口具1bにあっては、整流能力を向上させるべく筒本体5aの他端側の適宜位置に邪魔板6が内嵌してある。
【0082】
図10は図9に示した邪魔板6の平面図である。
図10に示したように、邪魔板6は円板状の基材60に複数の貫通孔を設けて形成されている。貫通孔の内径は、基材60の中央領域Cに開設した複数の第1貫通孔61,61,…を相対的に大きく、中央領域Cの周囲に開設した複数の第2貫通孔62,62,…を相対に小さくしてある。すなわち、基材60の外径を95mmから150mmになした邪魔板6を用い、当該基材60の面積の8%から20%の中央領域Cにおける開口率が略70%から略100%になしてあり、かかる中央領域Cより外側の周囲領域における開口率が略50%から略80%になしてある。
【0083】
例えば、直径が100mmの基材60の場合、第1貫通孔61の内径を11mm×11mmになし、第2貫通孔62の内径を5mm×5mmになすことができる。この場合、図10に示した如く、基材60の中心位置に第2貫通孔62を配し、該第2貫通孔62の周囲に4つの第1貫通孔61,61,61,61を均等に配置する。そして、これら第1貫通孔61,61,61,61を設けた中央領域Cから基材60の周縁近傍の位置までの部分に第2貫通孔62,62,…を均等に配置する。
【0084】
図9に示したように、筒本体5aに流入する温調空気は筒本体5aの中央部より筒本体5aの周縁部において不均一になる場合があるが、前述した邪魔板6を備える吹出し口具1bにあっては、筒本体5aの周縁部において流入された温調空気の通過が邪魔されるので、筒本体5aの周縁部が不均一に流入された温調空気の流れが均一化され、邪魔板6と平行をなす平面内において略均一化された温調空気が吹出し口具本体2から流出される。
【0085】
吹出し口具1bに流入される温調空気の不均一化は、筒本体5aに連結したダクト(図示せず)から筒本体5a内へ温調空気を供給する際に発生し易いが、かかる場合であっても前述したごとく邪魔板6によって均一化がなされるため、本発明に係る空調設備は、吹出し口具1bを構成する筒本体5aの縮径部5cにダクトを連結し、該ダクトから筒本体5a内へ温調空気を供給するように構成することもできる。
【0086】
なお、図8及び図9に示した筒本体5aにあっては、筒本体5aの他端側に縮径部5cを設けた場合について説明したが、本発明はこれに限らず、筒本体5aの他端側に縮径部5cを設けなくてもよいことは言うまでもない。
【実施例1】
【0087】
次に、本発明に係る空調設備を用いて空調を実施した場合において、吹出し口具から流出された温調空気の残気流速度を測定した結果について説明する。
次の表は、異なる段差の床部に設置された椅子本体の周囲の複数の位置で残気流速度を測定した結果を示すものである。
【0088】
なお、吹出し口具として、直径が100mmであり、第1領域の面積が吹出し口具の開口面積の45%であり、第2領域が吹出し口具の開口面積の55%であり、前述した角αが18°であるものを用いた。また、吹出し口具から流出される温調空気の量は50cm3/hであり、床部から椅子本体の背板部の下端までの高さは17cmである。
【0089】
段差が18cm(A)、40cm(B)、45cm(C)及び54cm(D)の床部にそれぞれ椅子本体を設置し、床部から95cm上方の位置(a)、75cm上方の位置(b)、50cm上方の位置(c)、及び椅子本体を支持する支持部材の位置(d)において、椅子本体の背板部から異なる離隔位置にて残気流速度をそれぞれ測定した。
【0090】
【表1】
【0091】
ここで、残気流速度が0.25m/s以下である場合、使用者に不快感を与えることがないので好適である。従って、座姿勢において、使用者の膝の高さ位置程度である床部から50cm上方の位置にあっては、椅子本体の背板部から20cm程度離隔した位置における残気流速度が0.25m/s以下であることが好ましく、使用者の胸部又は頭部の高さ位置程度である床部から75cm又は95cm上方の位置にあっては、椅子本体の背板部から30cm程度離隔した位置における残気流速度が0.25m/s以下であることが好ましい。また、使用者の脛部高さ位置程度である支持部材の位置にあっては、椅子本体の背板部から可及的に離隔しない位置における残気流速度が0.25m/s以下であることが好ましい。
表1から明らかな如く、異なる段差(A)〜(D)において、いずれの高さ位置にあっても上述した残気流速度の好適な条件を満足していた。
【実施例2】
【0092】
次に、吹出し口具本体に流入する温調空気を整流する邪魔板の効果を比較した結果について説明する。
比較試験は、図9に示した筒本体5aに吹出し口具本体2及び邪魔板6を設けた吹出し口具(対象例)と、前記邪魔板6を設けていない吹出し口具(比較例)とを用いた以外は実施例1と同様に行った。なお、段差は54cmになした。
【0093】
表2は筒本体5aにダクトを鉛直方向に接続して比較した場合の結果であり、表3は筒本体5aにダクトを椅子本体の後方から接続して比較した場合の結果であり、表4は筒本体5aにダクトを椅子本体の側方から接続して比較した場合の結果であり、表5は筒本体5aにダクトを椅子本体の前方から接続して比較した場合の結果である。
【0094】
【表2】
【0095】
【表3】
【0096】
【表4】
【0097】
【表5】
【0098】
表2〜表5から明らかなように、残気流速度が0.25m/s以下である椅子本体の背板部からの距離を比較すると、筒本体5aにダクトをいずれの方向から接続した場合であっても、対照例の方が比較例より短く、対照例の邪魔板6による優れた整流作用が奏されていた。
【0099】
また、表2から明らかなように、筒本体5aに鉛直方向から温調空気が供給される場合であっても邪魔板6による優れた整流作用が奏されていたため、図1〜図3に示した如きチャンバ9が設けてある床部Gに開設した吹出し口8に図9に示した如き邪魔板6を備える吹出し口具1bを嵌合させてチャンバ9から吹出し口具1b内へ温調空気を直接流入させるように構成した場合にも所要の整流作用が奏される。
【符号の説明】
【0100】
1 吹出し口具
1a 吹出し口具
1b 吹出し口具
2 吹出し口具本体
5 整流用筒体
5a 筒本体
6 邪魔板
8 吹出し口
11 椅子本体
14 座部
15 背板部
17 背もたれ部
18 支持部材
20 フレーム部材
21 第1領域
22 第2領域
24 第1羽根部材
25 第2羽根部材
26 セパレータ
61 第1貫通孔
62 第2貫通孔
G 床部
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の座席がタンデムに配設された床に開設された吹出し口から温度調整された温調空気を流出させて、前記座席の周囲の温度を調整する空調設備に用いられる吹出し口具、及び該吹出し口具を備える空調設備に関する。
【背景技術】
【0002】
劇場、コンサートホール、映画館、又は競技場等の施設にあっては、比較的大きな空間内の特定位置に配置された複数座席の周囲の温度を効率的に調整することが要求されている。そのため、後記する特許文献1には次のような設備が提案されている。
【0003】
図11は特許文献1に開示された空調設備の構成を説明する説明図であり、図中、Gは床部である。床部G上には2本の脚81,81が距離を隔てて立設してあり、これらの脚81,81を横架する横架材82が両脚81,81によって支持されている。この横架材82上には複数の椅子本体110,110,…が各椅子本体110,110,…の幅方向へ所定距離を隔てて配置してある。各椅子本体110,110,…は両側に配した支柱83,83,…によって支持されており、各支柱83,83,…はそれぞれ前記横架材82に固定してある。
【0004】
一方、床部Gの下側領域は温度調整された空気を一時的に貯留するチャンバ90になしてあり、該チャンバ90には図示しないダクトが連結してあり、該ダクトを通じて冷暖房機から温度調整された温調空気が流入されるようになっている。
【0005】
床部Gの椅子本体110,110,…が設置されていない通路部分には前記チャンバ90に連通する複数(図11にあってはその内の1つが示してある。)の吹出し口80が開設してあり、各吹出し口80には吹出し口具100が嵌合してある。吹出し口具100は吹出し口80に係合する環状のフレーム部材101の内部に、風向きを調節する長方形板状の複数の羽根部材102,102,…が距離を隔てて互いに平行に架設してある。各羽根部材102,102,…の姿勢は、その長辺をフレーム部材101の径方向に、その短辺をフレーム部材101の中心軸と平行な方向になるようになしてあり、これによってチャンバ90内流入された空気は吹出し口具100から鉛直上方へ流出される。
【0006】
このような空調設備にあっては、チャンバ90によって一時的に貯留された空気が吹出し口具100から徐々に流出されるため、前記各椅子本体110,110,…の周囲に留まって当該領域の温度を調整することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−166928号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながらこのような従来の空調設備にあっては床部Gの椅子本体110,110,…が設置されていない通路部分に配設された吹出し口具100から鉛直上方へ、温度調整された空気が流出するため、当該空気が椅子本体110,110,…に着座した使用者の脚部に直接当たり、使用者に不快感を与えるという問題があった。
【0009】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであり、床吹出し型であっても使用者に不快感を与えることを可及的に防止することができる吹き出口具、及び該吹き出口具を備える空調設備を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明に係る吹出し口具は、座部及び背もたれ部を設けてなる椅子本体が床部上に設置してある施設の前記床部に開設された吹出し口から温度調整された温調空気を流出させて、前記施設の温度を調整する空調設備の前記吹出し口に嵌合される吹出し口具において、前記床部の椅子本体に対向する位置に開設された吹出し口に嵌合された場合、温調空気を、当該椅子本体の背もたれ部に沿って立ち上がるように流出させるとともに、当該椅子本体の座部の下側領域に流出させるようになした環状の吹出し口具本体を具備することを特徴とする。
【0011】
本発明の吹出し口具にあっては、座部及び背もたれ部を設けてなる椅子本体が床部上に設置してある施設において、床部に開設された吹出し口から温度調整された温調空気を流出させて、施設の温度を調整するに当たって、床部の椅子本体に対向する位置に開設された吹出し口に嵌合される吹出し口具本体を具備している。
【0012】
この吹出し口具本体は環状をなしており、温調空気を、当該吹出し口具に対向する椅子本体の背もたれ部に沿って立ち上がるように流出させるとともに、椅子本体の座部の下側領域に流出させるようになっている。
【0013】
このように吹出し口具本体から温調空気を、当該吹出し口具本体に対向する椅子本体の背もたれ部に沿って立ち上がるように流出させると、この温調空気はコアンダ効果によって椅子本体の背面側に誘導され当該椅子本体の後方に配置された他の椅子本体の周囲の領域に拡散され、これによって当該領域の温度が調整される。
【0014】
このとき、椅子本体の座部の下側領域の雰囲気が誘引されるが、本発明の吹出し口具に備えられた吹出し口具本体から温調空気を、前記椅子本体の座部の下側領域に流出させるようになっており、これによって座部の下側領域に流出された温調空気が誘引されるため、椅子本体の背もたれ部に沿って立ち上がる温調空気に温調されていない雰囲気が混入することが防止され、前述した他の椅子本体に座した使用者に不快感を与えることが防止される。
【0015】
一方、椅子本体の座部の下側領域に流出された温調空気によって当該領域の温度が調整されるため、当該椅子本体に座した使用者の足元の温度と、上半身の周囲の温度との差が小さい。従って、当該使用者に温度差による不快感を与えることが可及的に防止される。更に、椅子本体の座部の下側領域に流出された温調空気は上述したように誘引されるため、当該温調空気は前記椅子本体に座した使用者の足元へは僅かしか到達せず、当該使用者の足元に気流による不快感を与えることが可及的に防止される。
【0016】
(2)また、本発明に係る吹出し口具は必要に応じて、前記吹出し口具本体には、吹出し口具本体の中心軸の軸長方向へ温調空気を流出させる第1領域と、該第1領域から流出された温調空気と交差するように温調空気を流出させる第2領域とが設けてあり、吹出し口具本体は第1領域が前記椅子本体の背もたれ部側に設置され、第2領域が前記椅子本体の座部側に配置されるようにしてあることを特徴とする。
【0017】
本発明の吹出し口具にあっては、前記吹出し口具本体には、吹出し口具本体の中心軸の軸長方向へ温調空気を流出させる第1領域が設けてあり、吹出し口具本体が床部に配設された場合、第1領域から鉛直方向へ温調空気が流出される。
【0018】
また、吹出し口具本体には、前記第1領域から流出された温調空気と交差するように温調空気を流出させる第2領域も設けてあり、前記第1領域から流出された温調空気は、第2領域から流出された温調空気によって所定方向へ押し出される。
【0019】
この吹出し口具本体は第1領域が前記椅子本体の背もたれ部側に設置され、第2領域が前記椅子本体の座部側に配置されるようにしてあり、これによって吹出し口具本体の第1領域及び第2領域から流出された温調空気はその大部分が椅子本体の背もたれ部に沿って立ち上がる。そして、コアンダ効果によって椅子本体の背面側に誘導され当該椅子本体の後方に配置された他の椅子本体の周囲の領域に拡散され、これによって当該領域の温度が調整される。
【0020】
一方、吹出し口具本体の第2領域から流出された温調空気の一部は対向する椅子本体の座部の裏面又は背もたれ部の下端部分に当たって当該座部の下側領域に流れ、前述した如くその大部分が椅子本体の背もたれ部に沿って立ち上がる温調空気に誘引される。
【0021】
従って、前同様、当該椅子本体の後方に配置された他の椅子本体に座した使用者の足元に不快感を与えることなく、椅子本体に座した使用者の足元の温度と、上半身の周囲の温度との差を小さくして、使用者に温度差による不快感を与えることを可及的に防止することができる。
【0022】
(3)更に、本発明に係る吹出し口具は必要に応じて、前記第1領域には帯状の複数の第1羽根部材が吹出し口具本体の径方向へ適宜の間隔で設けてあり、前記第2領域には帯状の複数の第2羽根部材が吹出し口具本体の径方向へ適宜の間隔で設けてあり、各第2羽根部材は、第2領域から流出される温調空気が前記吹出し口具本体の中心軸と平行な軸に対して15°以上30°以下の適宜角度で交差するようになしてあることを特徴とする。
【0023】
本発明の吹出し口具にあっては、吹出し口具本体の第1領域には、帯状の複数の第1羽根部材が吹出し口具本体の径方向へ適宜の間隔で設けてあり、吹出し口具本体が床部に配設された場合、第1領域から鉛直方向へ温調空気が流出される。
一方、吹出し口具本体の第2領域にも、帯状の複数の第2羽根部材が吹出し口具本体の径方向へ適宜の間隔で設けてある。
【0024】
これら第2羽根部材は、第2領域から流出される温調空気が前記吹出し口具本体の中心軸と平行な軸に対して15°以上30°以下の適宜角度で交差するようになしてあり、従って、第1領域から流出される温調空気と第2領域から流出される温調空気とは15°以上30°以下の適宜角度で交差する。
【0025】
第2羽根部材によって第2領域から流出される温調空気を第1領域から流出される温調空気とこのような範囲の角度で交差するように設定することによって、第1領域が前記椅子本体の背もたれ部側に設置され、第2領域が前記椅子本体の座部側に配置されるように吹出し口具本体が床部に配設された場合、吹出し口具本体から流出される温調空気の大部分を椅子本体の背面側に誘導させると共に、第2領域から流出される温調空気の一部を対向する椅子本体の座部の下側領域へ流すことができる。
【0026】
これによって、前同様、当該椅子本体の後方に配置された他の椅子本体に座した使用者の足元に不快感を与えることなく、椅子本体に座した使用者の足元の温度と、上半身の周囲の温度との差を小さくして、使用者に温度差による不快感を与えることを可及的に防止することができる。
【0027】
(4)一方、本発明に係る吹出し口具は必要に応じて、相隣る第1羽根部材の間隙、及び/又は相隣る第2羽根部材の間隙には、当該間隙を複数の部分に分割するセパレータが設けてあることを特徴とする。
【0028】
本発明の吹出し口具にあっては、相隣る第1羽根部材の間隙、及び/又は相隣る第2羽根部材の間隙には、当該間隙を複数の部分に分割するセパレータが設けてあり、相隣る第1羽根部材とセパレータとで囲まれる領域、相隣る第2羽根部材とセパレータとで囲まれる領域によって、相隣る第1羽根部材の各間隙内、及び相隣る第2羽根部材の各間隙内に流入される温調空気が整流される。これによって、吹出し口具から温調空気がより均一に流出されるため、前述した所要の作用をより効果的に得ることができるとともに、温度ムラを低減させることができる。
【0029】
(5)ところで、本発明に係る吹出し口具は必要に応じて、前記吹出し口具本体内に流入される温調空気を整流する整流用筒体を更に備え、該整流用筒体の一端側に前記吹出し口具本体が配設してあり、該整流用筒体内を通過した温調空気が吹出し口具本体から流出されるようになしてあることを特徴とする。
【0030】
本発明の吹出し口具にあっては、前記吹出し口具本体内に流入される温調空気を整流する整流用筒体を更に備えている。この整流用筒体の一端側に前記吹出し口具本体が配設してあり、整流用筒体内を通過した温調空気が吹出し口具本体から流出される。つまり、整流用筒体内に流入され、そこを通過する間に整流された温調空気が吹出し口具本体から流出されるのである。
これによって、吹出し口具から温調空気がより均一に流出されるため、前述した所要の作用をより効果的に得ることができるとともに、温度ムラを低減させることができる。
【0031】
(6)更に、本発明に係る吹出し口具は必要に応じて、前記整流用筒体の他端側に整流用筒体に流入された温調空気の流れを邪魔する邪魔板が配設してあり、該邪魔板によって整流用筒体に流入された温調空気を均一化するようになしてあることを特徴とする。
【0032】
本発明の吹出し口具にあっては、整流用筒体の他端側に整流用筒体に流入された温調空気の流れを邪魔する邪魔板が配設してある。前述したように整流用筒体の一端側に吹出し口具本体が配設してあり、整流用筒体内に流入された温調空気をその他端側に配置された邪魔板によって均一化し、均一化された温調空気が当該整流用筒体内を通過して吹出し口具本体から流出される。
【0033】
これによって、例えば温調空気を供給するダクトを整流用筒体に連結した場合であっても、その連結方向に拘らず邪魔板によって均一化された温調空気が吹出し口具本体に供給され、該吹出し口具本体から施設内へ流出されるため、前述した所要の作用を得ることができるとともに、温度ムラを低減させることができる。
【0034】
(7)本発明に係る空調設備は、座部及び背もたれ部を設けてなる複数の椅子本体が床部上に設置してある施設の前記床部に複数の吹出し口が開設してあり、各吹出し口にそれぞれ嵌合させた吹出し口具から温度調整された温調空気を流出させて当該施設内の温度を調整する空調設備において、前記各吹出し口は床部の各椅子本体に対向する位置にそれぞれ開設してあり、前述したいずれかに記載の吹出し口具を備えることを特徴とする。
【0035】
本発明の空調設備にあっては、座部及び背もたれ部を設けてなる複数の椅子本体が床部上に設置してある施設の前記床部に複数の吹出し口が開設してあり、各吹出し口にそれぞれ嵌合させた吹出し口具から温度調整された温調空気を流出させて当該施設内の温度を調整する。そして、床部の各椅子本体に対向する位置にそれぞれ吹出し口が開設してあり、各吹出し口には前述したいずれかに記載の吹出し口具が嵌合してある。従って、前述した如き各作用効果を得ることができる。
【0036】
(8)本発明に係る空調設備は必要に応じて、前記各吹出し口はそれぞれ、当該吹出し口に嵌合された吹出し口具の吹出し口具本体の周縁の一部が、対向する椅子本体の背もたれ部の下端から垂下した鉛直線より当該椅子本体の座部側に位置し、前記吹出し口具本体の周縁の他部が、前記鉛直線から当該椅子本体の背もたれ部側へ略0.5cm以上3.5cm以下突出するように開設してあることを特徴とする。
【0037】
本発明の空調設備にあっては、各吹出し口はそれぞれ、当該吹出し口に嵌合された吹出し口具の吹出し口具本体の周縁の一部が、対向する椅子本体の背もたれ部の下端から垂下した鉛直線より当該椅子本体の座部側に位置し、前記吹出し口具本体の周縁の他部が、前記鉛直線から当該椅子本体の背もたれ部側へ略0.5cm以上3.5cm以下突出するように開設してあるため、所要の空間領域へ温調空気を流すことができ、後方の使用者にも不快感を与える虞がない。また、対向する椅子本体の座部の下側領域にも適宜量の温調空気が流出されるため、当該椅子本体に着座した使用者に不快感を与えることなく、温調空気が漂う温調領域が形成される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に係る空調設備の要部構成を示す正面図である。
【図2】本発明に係る空調設備の要部構成を示す側面図である。
【図3】本発明に係る空調設備の要部構成を示す平面図である。
【図4】図1に示した吹出し口具本体を示す平面図である。
【図5】図4に示した吹出し口具本体のV−V線による断面図である。
【図6】図2に示した空調設備の部分拡大図である。
【図7】本発明に係る空調設備によって空調を実施している状態を説明する説明図である。
【図8】他の実施形態に係る吹出し口具の側断面図である。
【図9】他の実施形態に係る吹出し口具の側断面図である。
【図10】図9に示した邪魔板の平面図である。
【図11】特許文献1に開示された空調設備の構成を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
(本発明の実施形態)
図1〜図3は本発明に係る空調設備の要部構成を示す正面図、側面図及び平面図であり、これらの図中、Gは床部である。
図1〜図3に示したように、床部G上には、使用者が着座する座部14及び背もたれ部17を備える複数の椅子本体11,11,…が各椅子本体11,11,…の幅方向へ適宜の間隙を隔てて直線状に配置してあり、各椅子本体11,11,…はそれぞれ、床部Gに所定距離を隔てて立設した支持部材18,18,…によってその両側を支持されている。また、相隣る椅子本体11,11,…の間隙及び両端の椅子本体11(,11)の外側にはそれぞれ、使用者の肘を担持する肘掛部19,19,…が床部Gと略平行に設けてある。
【0040】
前述した座部14は、底板部12に座クッション部13を設けてなり、本実施形態にあっては相隣る支持部材18,18によって座部14を、起立した収納姿勢と横臥した着座姿勢との間で回動自在に支持してある。また、背もたれ部17は、相隣る支持部材18,18に、適宜のリクライニング角度になるように固定した背板部15の前面に背クッション部16を設けてなり、背板部15の下端は、着座姿勢の座部14の底板部12より所定寸法だけ床部G側へ延出させてある。
なお、映画館、劇場又はコンサートホールにあっては、床部Gから椅子本体11の背板部15下端までの高さ寸法は16cm〜24cm程度であり、略17cmが最も多い。
【0041】
床部Gの下側領域は温度調整された空気を一時的に貯留するチャンバ9になしてあり、該チャンバ9には図示しないダクトが連結してあり、該ダクトを通じて冷暖房機から温度調整された温調空気がチャンバ9内へ流入されるようになっている。
【0042】
床部Gの各椅子本体11,11,…に対向する適宜位置にはそれぞれ、前記チャンバ9に連通する複数の吹出し口8,8,…が開設してあり、各吹出し口8,8,…にはそれぞれ吹出し口具1を構成する吹出し口具本体2,2,…が嵌合してある。そして、チャンバ9内の温調空気は吹出し口具本体2,2,…からそれぞれ30m3/h程度から70m3/h程度の吹出し量で流出されるようになっている。
【0043】
図4は図1に示した吹出し口具本体2を示す平面図であり、図5は図4に示した吹出し口具本体2のV−V線による断面図である。
両図に示したように、吹出し口具本体2は、適宜の長さ寸法を有する筒状のフレーム部材20の一端縁に、平帯環状のフランジ部23をフレーム部材20の中心軸と直交するように立設してなり、フレーム部材20を前述した吹出し口8に内嵌させ、フランジ部23を床部Gの吹出し口8の周辺部分に係合させるようになっている(図1参照)。
【0044】
フレーム部材20内は、フレーム部材20の中心軸の軸長方向へ温調空気を流出させるための複数の第1羽根部材24,24,…が架設された第1領域21と、前記中心軸に対して傾斜した方向へ温調空気を流出させるための複数の第2羽根部材25,25,…が架設された第2領域22とに分けられている。すなわち、フレーム部材20内はその径方向において第1領域21と第2領域22との2領域に分割されている。
【0045】
第1羽根部材24,24,…はフレーム部材20の内周面に平帯状の部材を、その短辺(幅)方向がフレーム部材20の中心軸と平行な姿勢になしてあり、フレーム部材20の直径方向に設定される基準線の長手方向へ適宜距離を隔てて、前記基準線と直交するように架設してある。
【0046】
また、第2羽根部材25,25,…はフレーム部材20の内周面に、前記基準線の第1羽根部材24,24,…とは反対側の長手方向へ適宜距離を隔てて、前記基準線と直交するように架設してある。そして、床部Gから椅子本体11の底板部12(いずれも図2参照)までの高さ寸法が略15cm〜略20cmである場合、各第2羽根部材25,25,…は平帯状の部材を、前記フレーム部材20の一端側において、第2羽根部材25,25,…の短辺(幅)方向の軸とフレーム部材20の中心軸と平行な軸とがなす角αの角度が15°以上30°以下、好ましくは18°以上20°以下になる姿勢になしてあり、これによって第1羽根部材24,24,…を設けた第1領域21から流出される温調空気を所要方向へ押し出すようになっている。
【0047】
なお、後述する如く吹出し口具本体2は第1領域21が対向する椅子本体11の背板部15側に位置し、第2領域22が対向する椅子本体11の座部14側に位置するように配されるようになっており、従って第2領域22から流出された温調空気は対向する椅子本体11の背板部15側、すなわち椅子本体11の背面方向へ流れる。
【0048】
ここで、前述した角αの角度が15°より小さい場合は、第1領域21から流出される温調空気を押し出す作用が小さ過ぎるため、対向する椅子本体の座部14(共に図2参照)の下側領域において、椅子本体11の前方へ向かう温調空気の流速が所要値を超えるので、当該椅子本体11に着座した使用者に不快感を与える虞がある。一方、前記角αの角度が30°を超える場合は、第1領域21から流出される温調空気を押し出す作用が大き過ぎるため、所要の空間領域へ温調空気を流すことができず、後方の使用者に不快感を与える虞がある。
【0049】
一方、前記角αの角度を15°以上30°以下になした場合、第1領域21から流出される温調空気を所要方向へ押し出すと共に、コアンダ効果により対向する椅子本体11の背板部15に沿って所要の範囲へ温調空気を流すことができるため、当該椅子本体11に着座した使用者に不快感を与えることなく、後方の使用者にも不快感を与えることがない。
【0050】
また、対向する椅子本体11の座部14の下側領域にも適宜量の温調空気が流出されるため、当該椅子本体11に着座した使用者に不快感を与えることなく、温調空気が漂う温調領域が形成される。一方、大部分の温調空気は前述したコアンダ効果により当該椅子本体11の背板部15に沿って所要の範囲へ誘導されるが、これによって座部14の下側領域の雰囲気が誘引される。このとき、前述したように座部14の下側領域に形成された温調領域から温調空気が誘引されるため、背板部15に沿って所要の範囲へ誘導される温調空気に温調されていない雰囲気が混入することが可及的に防止される。従って、後方の使用者にも不快感を与えることが防止される。
【0051】
更に、角αの角度を18°以上20°以下になした場合、当該椅子本体11(図2参照)と後方の他の椅子本体との間の距離を他の場合より短くなしても、他の椅子本体に座した使用者に不快感を与えることを防止することができる。
【0052】
なお、角αの角度は第2羽根部材25,25,…別に異ならせてもよい。
なお、本実施の形態では第1羽根部材24,24,…及び第2羽根部材25,25,…はいずれも平帯状になした場合について説明したが、本発明はこれに限らず、端面視がく字形又は円弧形等、種々の形になした帯状の第1羽根部材又は第2羽根部材を用いることができる。
【0053】
この場合、当該第1羽根部材を設けた第1領域21から温調空気が、フレーム部材20の中心軸の軸長方向へ流出されるようになし、当該第2羽根部材を設けた第2領域22から流出された温調空気が、フレーム部材20の中心軸と平行な軸に対して、即ち前記第1領域から流出された温調空気に対して15°以上30°以下の角度、好ましくは18°以上20°以下の角度で交差するようになせばよい。
【0054】
ところで、前述した第1領域21の面積は吹出し口具本体2の開口面積の略50%〜略10%が好適であり、従って第2領域22の面積は吹出し口具本体2の開口面積の略50%〜略90%が好適である。
【0055】
第1領域21の面積が吹出し口具本体2の開口面積の略10%より狭い場合は、所要の空間領域へ温調空気を流すことができず、後方の使用者に不快感を与える虞があり、第1領域21の面積が吹出し口具本体2の開口面積の略50%より広い場合は、対向する椅子本体11の座部14(共に図2参照)の下側領域において、椅子本体11の前方へ向かう温調空気の流速が所要値を超えるため、当該椅子本体11に着座した使用者に不快感を与える虞がある。
【0056】
一方、第1領域21の面積が吹出し口具本体2の開口面積の略50%〜略10%である場合、すなわち第2領域22の面積が吹出し口具本体2の開口面積の略50%〜略90%である場合、当該椅子本体11に着座した使用者に不快感を与えることなく、所要の空間領域へ温調空気を流すことができるため、後方の使用者にも不快感を与える虞がない。
【0057】
ところで、本実施形態で示した吹出し口具本体2にあっては、相隣る第1羽根部材24,24,…の各間隙、及び相隣る第2羽根部材25,25,…の各間隙を複数の部分に分割するセパレータ26,26,…がそれぞれ設けてあり、各第1羽根部材24,24,…及びセパレータ26,26,…、又は各第2羽根部材25,25,…及びセパレータ26,26,…によって、吹出し口具本体2の内部は格子状に仕切られている。これによって、相隣る第1羽根部材24,24,…の各間隙内、及び相隣る第2羽根部材25,25,…の各間隙内に流入される温調空気が整流される。
【0058】
なお、本実施形態ではセパレータ26,26,…を設けた場合を示したが、本発明はこれに限らず、セパレータ26,26,…を設けていない吹出し口具本体であってもよいことは言うまでもない。
【0059】
次に、このような吹出し口具本体2の配設位置及び配設方向について説明する。
図6は図2に示した空調設備の部分拡大図である。なお、図中、図2に示した部分に対応する部分には同じ番号を付してその説明を省略する。
【0060】
図6に示した如く、吹出し口具本体2は第1羽根部材24,24,…が椅子本体11の背板部15側にあり、第2羽根部材25,25,…が椅子本体11の座部14側にあるように配され、各第1羽根部材24,24,…及び第2羽根部材25,25,…は背板部15の幅方向と平行な方向に向けて配置してある。
【0061】
そして、吹出し口具本体2は、背板部15の下端部から鉛直下方へ延出させた線分を鉛直線Lとすると、吹出し口具本体2の直径上において、前述した第2領域22及び第1領域21の大部分が鉛直線Lより座部14側の位置にあり、第1領域21の残部が鉛直線Lより座部14とは反対側へ寸法Tだけ突出した位置にあるようになしてある。すなわち、吹出し口具本体2のフレーム部材20の一部が、鉛直線Lより椅子本体11の座部14側に位置し、フレーム部材20の他部が、前記鉛直線Lより当該椅子本体11の背板部15側へ寸法Tだけ突出するようになしてある。
【0062】
ここで、床部Gから椅子本体11の背板部15の下端までの高さ寸法が16cm〜24cm程度であり、吹出し口具本体2からの吹出し量が30m3/h程度以上70m3/h程度以下である場合、寸法Tの値は0.5cm以上3.5cm以下であり、より好ましくは略1.25cmである。寸法Tの値が0.5cm未満の場合、対向する椅子本体11の座部14(共に図2参照)の下側領域において、椅子本体11の前方へ向かう温調空気の流速が所要値を超えるため、当該椅子本体11に着座した使用者に不快感を与える虞がある。一方、寸法Tの値が3.5cmを超えた場合、所要の空間領域へ温調空気を流すことができず、後方の使用者に不快感を与える虞がある。
【0063】
これに対し、寸法Tの値が0.5cm以上3.5cm以下の場合、当該椅子本体11に着座した使用者に不快感を与えることなく、所要の空間領域へ温調空気を流すことができるため、後方の使用者にも不快感を与える虞がない。また、対向する椅子本体11の座部14の下側領域にも適宜量の温調空気が流出されるため、当該椅子本体11に着座した使用者に不快感を与えることなく、温調空気が漂う温調領域が形成され、これによって背板部15に沿って所要の範囲へ誘導される温調空気に温調されていない雰囲気が混入することが可及的に防止される。従って、後方の使用者にも不快感を与えることが防止される。
【0064】
更に、寸法Tの値が略1.25cmの場合、当該椅子本体11(図2参照)と後方の椅子本体との間の距離を他の場合より短くなしても、後方の椅子本体に座した使用者に不快感を与えることを防止することができる。
【0065】
図7は本発明に係る空調設備によって空調を実施している状態を説明する説明図である。
なお、図中、図6に示した部分に対応する部分には同じ番号を付してある。
【0066】
前述した如く、チャンバ9内には温調空気が流入されており、チャンバ9内の温調空気は吹出し口具本体2の第1領域21から鉛直上方へ立ち上がるように流出されようとする。このとき、第1領域21の鉛直線Lより座部14とは反対側へ突出した部分から流出された温調空気は、コアンダ効果により椅子本体11の背板部15に沿って椅子本体11の背面側上方へ誘導される。
【0067】
一方、第1領域21の鉛直線Lより座部14側に位置する部分から流出された温調空気は座部14へ向かって流出されるが、吹出し口具本体2の第2領域22から椅子本体11の背面側へ向う温調空気が流出されるため、両温調空気の大部分は椅子本体11の背板部15側へ押し出され、前同様、椅子本体11の背板部15に沿って椅子本体11の背面側上方へ誘導される。
【0068】
また、吹出し口具本体2の第2領域22から流出された温調空気の大部分は、椅子本体11の背板部15側へ向かい、前同様、椅子本体11の背板部15に沿って椅子本体11の背面側上方へ誘導される。
【0069】
このようにして椅子本体11の背面側上方へ誘導された温調空気は拡散等によって当該椅子本体11の後部に配置された他の椅子本体11の周囲の第1拡散領域R1へ拡がり、当該第1拡散領域R1を所要の温度に調整する。
【0070】
一方、吹出し口具本体2の第2領域22から流出された温調空気の一部は椅子本体11の背板部15の下端近傍の部分及び座部14の底板部12の下面に当たるので、座部14の下側に温調空気が拡散した第2拡散領域R2が生成される。
【0071】
ところで、前述したように吹出し口具本体2から流出された温調空気の大部分は椅子本体11の背板部15に沿って椅子本体11の背面側上方へ誘導されるため、かかる気流によって座部14の下側の雰囲気が誘引される。このとき、座部14の下側に温調空気の第2拡散領域R2が生成されており、当該第2拡散領域R2の温調空気が誘引されるため、温度が調整されていない雰囲気が誘引されるのを防止することができ、第1拡散領域R1内の使用者に不快感を与えることが防止される。
【0072】
一方、椅子本体11の座部14の下側領域に流出された温調空気によって第2拡散領域R2の温度が調整されるため、当該椅子本体11に座した使用者の足元の温度と、上半身の周囲の温度との差が小さい。従って、当該使用者に温度差による不快感を与えることが可及的に防止される。更に、椅子本体11の座部14の下側領域に流出された温調空気は前述した如く椅子本体11の背板部15側へ誘引されるため、当該温調空気は椅子本体11に座した使用者の足元へは僅かしか到達せず、当該使用者の足元に気流による不快感を与えることが可及的に防止される。
なお、吹出し口具本体2から流出される温調空気の量は第1拡散領域R1が所要の空間範囲になるように設定してある。
【0073】
なお、本実施形態では吹出し口具本体2は1つのフレーム部材20内に第1領域21及び第2領域22が設けてあるが、本発明はこれに限らず、複数のフレーム部材内に第1羽根部材24,24,…又は第2羽根部材25,25,…を設け、それらのフレーム部材を組み合わせて第1領域21及び第2領域22を備える吹出し口具本体を構成するようにしてもよい。
また、図7では前後の椅子本体11,11間に段差が設けてあるが、そのような段差が存在しない平坦な状態であっても前同様の作用及び効果が奏されることは言うまでもない。
【0074】
(他の実施形態)
図8及び図9は他の実施形態に係る吹出し口具の側断面図であり、いずれも前述したチャンバから供給される温調空気を整流し得るようになしてある。
【0075】
図8に示した吹出し口具1aは、前述した吹出し口具本体2、及びチャンバから供給される温調空気の気流を整える整流用筒体5を備えている。
【0076】
整流用筒体5は、吹出し口具本体2の外径より少し大きい寸法の内径を有する円筒状の筒本体5aの一端縁に平帯環状のフランジ部5bを立設してなり、筒本体5aの他端近傍の部分は他の部分より外径を縮小させた縮径部5cになしてある。
【0077】
筒本体5aの一端には前述した吹出し口具本体2が着脱可能に内嵌してあり、内嵌された吹出し口具本体2と筒本体5aとの間隙には、温調空気の漏出を防止する環状のパッキン7が介装してある。
【0078】
また、筒本体5aのフランジ部5bには螺子止用の複数の孔が周方向に適宜の間隔で貫通してあり、筒本体5aを吹出口内へフランジ部5bが床部に当接するまで嵌入させ、前記フランジ部5bの各孔を貫通させた螺子30,30,…を床部に螺着させることによって筒本体5aを床部に固定するようになしてある。
【0079】
このような吹出し口具1aにあっては、温調空気は整流用筒体5を構成する筒本体5aの他端から内部へ流入し、そこで筒本体5aの中心軸の軸長方向と平行な方向に整流され、筒本体5aの一端に嵌合された吹出し口具本体2から流出される。
【0080】
このようにチャンバ内に供給された温調空気の流れが所要の向きでない場合であっても、整流用筒体5内に流入した温調空気はそこで整流されるため、吹出し口具本体2の第1羽根部材24,24,…及び第2羽根部材25,25,…に対して温調空気が所要の角度で導入され、所要の第1拡散領域R1及び第2拡散領域R2(図7参照)を生成することができる。
【0081】
更に、図9に示した吹出し口具1bにあっては、整流能力を向上させるべく筒本体5aの他端側の適宜位置に邪魔板6が内嵌してある。
【0082】
図10は図9に示した邪魔板6の平面図である。
図10に示したように、邪魔板6は円板状の基材60に複数の貫通孔を設けて形成されている。貫通孔の内径は、基材60の中央領域Cに開設した複数の第1貫通孔61,61,…を相対的に大きく、中央領域Cの周囲に開設した複数の第2貫通孔62,62,…を相対に小さくしてある。すなわち、基材60の外径を95mmから150mmになした邪魔板6を用い、当該基材60の面積の8%から20%の中央領域Cにおける開口率が略70%から略100%になしてあり、かかる中央領域Cより外側の周囲領域における開口率が略50%から略80%になしてある。
【0083】
例えば、直径が100mmの基材60の場合、第1貫通孔61の内径を11mm×11mmになし、第2貫通孔62の内径を5mm×5mmになすことができる。この場合、図10に示した如く、基材60の中心位置に第2貫通孔62を配し、該第2貫通孔62の周囲に4つの第1貫通孔61,61,61,61を均等に配置する。そして、これら第1貫通孔61,61,61,61を設けた中央領域Cから基材60の周縁近傍の位置までの部分に第2貫通孔62,62,…を均等に配置する。
【0084】
図9に示したように、筒本体5aに流入する温調空気は筒本体5aの中央部より筒本体5aの周縁部において不均一になる場合があるが、前述した邪魔板6を備える吹出し口具1bにあっては、筒本体5aの周縁部において流入された温調空気の通過が邪魔されるので、筒本体5aの周縁部が不均一に流入された温調空気の流れが均一化され、邪魔板6と平行をなす平面内において略均一化された温調空気が吹出し口具本体2から流出される。
【0085】
吹出し口具1bに流入される温調空気の不均一化は、筒本体5aに連結したダクト(図示せず)から筒本体5a内へ温調空気を供給する際に発生し易いが、かかる場合であっても前述したごとく邪魔板6によって均一化がなされるため、本発明に係る空調設備は、吹出し口具1bを構成する筒本体5aの縮径部5cにダクトを連結し、該ダクトから筒本体5a内へ温調空気を供給するように構成することもできる。
【0086】
なお、図8及び図9に示した筒本体5aにあっては、筒本体5aの他端側に縮径部5cを設けた場合について説明したが、本発明はこれに限らず、筒本体5aの他端側に縮径部5cを設けなくてもよいことは言うまでもない。
【実施例1】
【0087】
次に、本発明に係る空調設備を用いて空調を実施した場合において、吹出し口具から流出された温調空気の残気流速度を測定した結果について説明する。
次の表は、異なる段差の床部に設置された椅子本体の周囲の複数の位置で残気流速度を測定した結果を示すものである。
【0088】
なお、吹出し口具として、直径が100mmであり、第1領域の面積が吹出し口具の開口面積の45%であり、第2領域が吹出し口具の開口面積の55%であり、前述した角αが18°であるものを用いた。また、吹出し口具から流出される温調空気の量は50cm3/hであり、床部から椅子本体の背板部の下端までの高さは17cmである。
【0089】
段差が18cm(A)、40cm(B)、45cm(C)及び54cm(D)の床部にそれぞれ椅子本体を設置し、床部から95cm上方の位置(a)、75cm上方の位置(b)、50cm上方の位置(c)、及び椅子本体を支持する支持部材の位置(d)において、椅子本体の背板部から異なる離隔位置にて残気流速度をそれぞれ測定した。
【0090】
【表1】
【0091】
ここで、残気流速度が0.25m/s以下である場合、使用者に不快感を与えることがないので好適である。従って、座姿勢において、使用者の膝の高さ位置程度である床部から50cm上方の位置にあっては、椅子本体の背板部から20cm程度離隔した位置における残気流速度が0.25m/s以下であることが好ましく、使用者の胸部又は頭部の高さ位置程度である床部から75cm又は95cm上方の位置にあっては、椅子本体の背板部から30cm程度離隔した位置における残気流速度が0.25m/s以下であることが好ましい。また、使用者の脛部高さ位置程度である支持部材の位置にあっては、椅子本体の背板部から可及的に離隔しない位置における残気流速度が0.25m/s以下であることが好ましい。
表1から明らかな如く、異なる段差(A)〜(D)において、いずれの高さ位置にあっても上述した残気流速度の好適な条件を満足していた。
【実施例2】
【0092】
次に、吹出し口具本体に流入する温調空気を整流する邪魔板の効果を比較した結果について説明する。
比較試験は、図9に示した筒本体5aに吹出し口具本体2及び邪魔板6を設けた吹出し口具(対象例)と、前記邪魔板6を設けていない吹出し口具(比較例)とを用いた以外は実施例1と同様に行った。なお、段差は54cmになした。
【0093】
表2は筒本体5aにダクトを鉛直方向に接続して比較した場合の結果であり、表3は筒本体5aにダクトを椅子本体の後方から接続して比較した場合の結果であり、表4は筒本体5aにダクトを椅子本体の側方から接続して比較した場合の結果であり、表5は筒本体5aにダクトを椅子本体の前方から接続して比較した場合の結果である。
【0094】
【表2】
【0095】
【表3】
【0096】
【表4】
【0097】
【表5】
【0098】
表2〜表5から明らかなように、残気流速度が0.25m/s以下である椅子本体の背板部からの距離を比較すると、筒本体5aにダクトをいずれの方向から接続した場合であっても、対照例の方が比較例より短く、対照例の邪魔板6による優れた整流作用が奏されていた。
【0099】
また、表2から明らかなように、筒本体5aに鉛直方向から温調空気が供給される場合であっても邪魔板6による優れた整流作用が奏されていたため、図1〜図3に示した如きチャンバ9が設けてある床部Gに開設した吹出し口8に図9に示した如き邪魔板6を備える吹出し口具1bを嵌合させてチャンバ9から吹出し口具1b内へ温調空気を直接流入させるように構成した場合にも所要の整流作用が奏される。
【符号の説明】
【0100】
1 吹出し口具
1a 吹出し口具
1b 吹出し口具
2 吹出し口具本体
5 整流用筒体
5a 筒本体
6 邪魔板
8 吹出し口
11 椅子本体
14 座部
15 背板部
17 背もたれ部
18 支持部材
20 フレーム部材
21 第1領域
22 第2領域
24 第1羽根部材
25 第2羽根部材
26 セパレータ
61 第1貫通孔
62 第2貫通孔
G 床部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
座部及び背もたれ部を設けてなる椅子本体が床部上に設置してある施設の前記床部に開設された吹出し口から温度調整された温調空気を流出させて、前記施設の温度を調整する空調設備の前記吹出し口に嵌合される吹出し口具において、
前記床部の椅子本体に対向する位置に開設された吹出し口に嵌合された場合、温調空気を、当該椅子本体の背もたれ部に沿って立ち上がるように流出させるとともに、当該椅子本体の座部の下側領域に流出させるようになした環状の吹出し口具本体を具備することを特徴とする吹出し口具。
【請求項2】
前記吹出し口具本体には、吹出し口具本体の中心軸の軸長方向へ温調空気を流出させる第1領域と、該第1領域から流出された温調空気と交差するように温調空気を流出させる第2領域とが設けてあり、吹出し口具本体は第1領域が前記椅子本体の背もたれ部側に設置され、第2領域が前記椅子本体の座部側に配置されるようにしてある請求項1記載の吹出し口具。
【請求項3】
前記第1領域には帯状の複数の第1羽根部材が吹出し口具本体の径方向へ適宜の間隔で設けてあり、
前記第2領域には帯状の複数の第2羽根部材が吹出し口具本体の径方向へ適宜の間隔で設けてあり、
各第2羽根部材は、第2領域から流出される温調空気が前記吹出し口具本体の中心軸と平行な軸に対して15°以上30°以下の適宜角度で交差するようになしてある
請求項2記載の吹出し口具。
【請求項4】
相隣る第1羽根部材の間隙、及び/又は相隣る第2羽根部材の間隙には、当該間隙を複数の部分に分割するセパレータが設けてある請求項1から3のいずれかに記載の吹出し口具。
【請求項5】
前記吹出し口具本体内に流入される温調空気を整流する整流用筒体を更に備え、
該整流用筒体の一端側に前記吹出し口具本体が配設してあり、該整流用筒体内を通過した温調空気が吹出し口具本体から流出されるようになしてある
請求項1から4のいずれかに記載の吹出し口具。
【請求項6】
前記整流用筒体の他端側に整流用筒体に流入された温調空気の流れを邪魔する邪魔板が配設してあり、該邪魔板によって整流用筒体に流入された温調空気を均一化するようになしてある請求項5記載の吹出し口具。
【請求項7】
座部及び背もたれ部を設けてなる複数の椅子本体が床部上に設置してある施設の前記床部に複数の吹出し口が開設してあり、各吹出し口にそれぞれ嵌合させた吹出し口具から温度調整された温調空気を流出させて当該施設内の温度を調整する空調設備において、
前記各吹出し口は床部の各椅子本体に対向する位置にそれぞれ開設してあり、
請求項1から6のいずれかに記載の吹出し口具を備える
ことを特徴とする空調設備。
【請求項8】
前記各吹出し口はそれぞれ、当該吹出し口に嵌合された吹出し口具の吹出し口具本体の周縁の一部が、対向する椅子本体の背もたれ部の下端から垂下した鉛直線より当該椅子本体の座部側に位置し、前記吹出し口具本体の周縁の他部が、前記鉛直線から当該椅子本体の背もたれ部側へ略0.5cm以上3.5cm以下突出するように開設してある請求項7記載の空調設備。
【請求項1】
座部及び背もたれ部を設けてなる椅子本体が床部上に設置してある施設の前記床部に開設された吹出し口から温度調整された温調空気を流出させて、前記施設の温度を調整する空調設備の前記吹出し口に嵌合される吹出し口具において、
前記床部の椅子本体に対向する位置に開設された吹出し口に嵌合された場合、温調空気を、当該椅子本体の背もたれ部に沿って立ち上がるように流出させるとともに、当該椅子本体の座部の下側領域に流出させるようになした環状の吹出し口具本体を具備することを特徴とする吹出し口具。
【請求項2】
前記吹出し口具本体には、吹出し口具本体の中心軸の軸長方向へ温調空気を流出させる第1領域と、該第1領域から流出された温調空気と交差するように温調空気を流出させる第2領域とが設けてあり、吹出し口具本体は第1領域が前記椅子本体の背もたれ部側に設置され、第2領域が前記椅子本体の座部側に配置されるようにしてある請求項1記載の吹出し口具。
【請求項3】
前記第1領域には帯状の複数の第1羽根部材が吹出し口具本体の径方向へ適宜の間隔で設けてあり、
前記第2領域には帯状の複数の第2羽根部材が吹出し口具本体の径方向へ適宜の間隔で設けてあり、
各第2羽根部材は、第2領域から流出される温調空気が前記吹出し口具本体の中心軸と平行な軸に対して15°以上30°以下の適宜角度で交差するようになしてある
請求項2記載の吹出し口具。
【請求項4】
相隣る第1羽根部材の間隙、及び/又は相隣る第2羽根部材の間隙には、当該間隙を複数の部分に分割するセパレータが設けてある請求項1から3のいずれかに記載の吹出し口具。
【請求項5】
前記吹出し口具本体内に流入される温調空気を整流する整流用筒体を更に備え、
該整流用筒体の一端側に前記吹出し口具本体が配設してあり、該整流用筒体内を通過した温調空気が吹出し口具本体から流出されるようになしてある
請求項1から4のいずれかに記載の吹出し口具。
【請求項6】
前記整流用筒体の他端側に整流用筒体に流入された温調空気の流れを邪魔する邪魔板が配設してあり、該邪魔板によって整流用筒体に流入された温調空気を均一化するようになしてある請求項5記載の吹出し口具。
【請求項7】
座部及び背もたれ部を設けてなる複数の椅子本体が床部上に設置してある施設の前記床部に複数の吹出し口が開設してあり、各吹出し口にそれぞれ嵌合させた吹出し口具から温度調整された温調空気を流出させて当該施設内の温度を調整する空調設備において、
前記各吹出し口は床部の各椅子本体に対向する位置にそれぞれ開設してあり、
請求項1から6のいずれかに記載の吹出し口具を備える
ことを特徴とする空調設備。
【請求項8】
前記各吹出し口はそれぞれ、当該吹出し口に嵌合された吹出し口具の吹出し口具本体の周縁の一部が、対向する椅子本体の背もたれ部の下端から垂下した鉛直線より当該椅子本体の座部側に位置し、前記吹出し口具本体の周縁の他部が、前記鉛直線から当該椅子本体の背もたれ部側へ略0.5cm以上3.5cm以下突出するように開設してある請求項7記載の空調設備。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−94824(P2011−94824A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−246604(P2009−246604)
【出願日】平成21年10月27日(2009.10.27)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【出願人】(593063161)株式会社NTTファシリティーズ (475)
【出願人】(000164553)空研工業株式会社 (28)
【出願人】(591219429)空調技研工業株式会社 (22)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月27日(2009.10.27)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【出願人】(593063161)株式会社NTTファシリティーズ (475)
【出願人】(000164553)空研工業株式会社 (28)
【出願人】(591219429)空調技研工業株式会社 (22)
【Fターム(参考)】
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