説明

周波数ドメインルミネッセンス器具

分析物濃度を定量するための、ルミネッセンス位相の遅れを測定するための器具は、外部の位相の遅れのノイズを排除または低減するために、補正される。較正因子は、定量的測定の間に挿入される工程において、決定される。光路は、第二の光源(302)の提供によって、較正を達成するために提供される。この第二の光源は、ルミネッセンス物質のルミネッセンス発光帯域において、発光する。この較正因子は、外部の位相の遅れを補正するために、定量用の位相の遅れの測定値から減算され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本願は、2003年9月29日出願の米国特許仮出願番号60/506,813(これは、本明細書中で参考として援用される)に対する優先権の利益を主張する。
【0002】
(背景)
(1.発明の分野)
本開示は、例えば、分析物の濃度を評価するための光学感知測定における、定量的測定を達成するために、ルミネッセンス現象を使用する方法および器具に関する。より具体的には、本方法および器具は、補助光源の使用によってルミネッセンス寿命を測定する場合に外部の位相反応に対する自動的補償を達成し得る。
【背景技術】
【0003】
(2.関連技術の説明)
ルミネッセンスは、物質による光の発光に関する。蛍光およびリン光は、光子または電子による物質の刺激もしくは励起の後に生じる、ルミネッセンス現象である。これらの現象は、センサにおいて使用される場合に特に興味深い。蛍光およびリン光は、A.Arnaud、D I Forsyth、T Sun、Z Y ZhangおよびK T V Grattan「Strain and temperature effects on Erbium−doped fiber for decay−time based sensing」Rev.Sci.Instrum.71,pp.104〜8(2000)によって報告されたように温度およびひずみを測定するため;Demasに対して発行された米国特許第4845368号およびKhalilに対して発行された米国特許第5,043,286号によって報告されたように酸素を測定するため;Hai−Jui Lin、Henryk SzmacinskiおよびJoseph R.Lakowicz「Lifetime−Based pH Sensors:Indicators for Acidic Environments」Analytical Biochemistry 269,162〜167(1999)によって報告されたようにpHを測定するため;Q.Chang、L.Randers−Eichhorn、J.R.Lakowicz、G.Rao、Biotechnology Progress 1998,14,326〜331によって報告されたようにCOを測定するため;そしてSheila Smithら「Fluorescence energy transfer sensor for metal ions」Proc.SPIE Vol.2388,p.171〜181,Advances in Fluorescence Sensing Technology II;Joseph R.Lakowicz編,May 1995によって報告されたようにイオンを決定するために、使用されている。
【0004】
ルミネッセンス物質に対する特定の分析物の影響は、一般的には、そのルミネッセンスプロセスの量子効率の変化から生じる。この変化は、それ自体が、観察されるルミネッセンス物質の崩壊速度または寿命の差として表される。観察される定常状態ルミネッセンス強度もまた変化し、そして分析物を定量するために測定され得るが、寿命の測定が、より正確である。なぜなら、寿命は、Topics in Fluorescence Spectroscopy、J.Lakowicz編、Vol.4、Chap.10において考察されるように、光学アライメント、周囲光、またはルミネッセンスセンサ物質の濃度の変化に起因する強度変化によって、ほとんど影響を受けないからである。
【0005】
所定の光学センサについて、寿命τは、Topics in Fluorescence Spectroscopy,vol.1,Chap 8,第2版,J.R.Lakowicz編,1999からの以下の関係:
【0006】
【化1】

に従って、一般的には、分析物濃度[A]に関連する。式(1)において、Kは、各ルミネッセンスセンサ処方物について決定された消光定数である。一旦、Kが、特定のセンサについて決定されると、当業者は、分析物濃度を計算するためには上記寿命だけしか測定する必要がない。上記式(1)は、理想的な消光速度論を有するセンサを示す。ルミネッセンスセンサは、このモデルから有意に逸脱し得る。その場合、寿命を分析物濃度と関連付ける経験的に誘導された式が、使用され得る。センサが、温度が有意に変動する環境にある場合、その経験的に誘導される関係の一部として、測定された温度を含めることが必要であり得る。下記式(2):
[A]=f(τ,T) (2)
は、一般的には、経験的関係の様式を示す。この関係は、最小二乗当てはめまたは他の型の補正として提供され得る。ここで、τは、ルミネッセンス寿命であり、Tは、センサの温度である。
【0007】
ルミネッセンス酸素センサの寿命を測定する多数の方法が、存在する。例えば、Khalilに対して発行された米国特許第5,043,286号は、LEDにより提供されるルミネッセンス励起の迅速な失活(turn off)の後にツーボックスカー(two box car)積分の比を計算するタイムドメイン技術の使用を記載する。他の方法は、周波数ドメインを使用する。この場合、酸素感知コーティングに対するルミネッセンス励起入射が、正弦波、方形波、または他の周期的波形のいずれかで、周期的様式で調節される。図1は、ルミネッセンス物質の発光を破線として示す。この発光は、実線として示される励起に対して位相が遅れている。この位相の遅れ(一般的には、°で測定される)は、Δφと表示される。この位相の遅れから、その寿命は、以下の関係:
【0008】
【化2】

を使用して計算され得る:周波数ドメイン(位相ドメインとしても公知である)を使用する感知適用のために、この位相は、式2において置換されて、関係:
[A]=f(Δφ、T) (4)
を与え得る。Δφは、ルミネッセンス物質により誘導される位相の遅れであり、Tは、温度であり、[A]は、分析物濃度である。
【0009】
他の計算技術が、存在し、例えば、Venkatesh VaddeおよびVivek Srinivas「A closed loop scheme for phase−sensitive fluorometry」American Institute of Physics,Rev.Sci.Instrum.,Vol.66,No.7,July 1995、p.3750によって記載され、その技術において、位相ロックループが、位相のずれおよびルミネッセンス寿命を決定するために使用される。Dukesに対して発行される米国特許第4,716,363号は、ルミネッセンス物質を介して一定の位相の遅延を達成するために必要な周波数をモニターする方法を記載する。周波数は、上記の式(3)を再構成することによって寿命に関連付けられ得る。Danielsonに対して発行された米国特許第6,157,037号は、ルミネッセンス寿命測定を達成するためにデジタル信号プロセッサ(DSP)を使用する、周波数と位相とを同時に変動することを記載する。アナログ発振器回路が、たとえば、Rabinovichらに対して発行された米国特許第6,673,626 B1に記載されるように、蛍光物質の寿命を測定するために使用され得る。
【0010】
Lakowiczらによって「2−GHz frequency−domain fluorometer」Rev.Sci.Instrum.57(10)October 1986において記載されるパルスレーザー測定は、レーザーからの非常に短い周期のパルス(例えば、5ピコ秒のパルス)を使用する寿命の高周波数交差相関測定を使用する。基本パルス周波数よりも高い周波数での位相の遅延は、そのパルスの繰り返し数の高次高調波の交差相関を使用して測定される。
【0011】
上記のシステムすべては、ルミネッセンス物質によって誘導される位相の遅れの直接測定または間接的測定に適用される。そうであっても、その技術は、一般的には、ルミネッセンス寿命測定システムの光学構成要素および電気構成要素によって導入される、外部の位相の遅れの影響を無視する。外部の位相の遅れは、示されるルミネッセンス寿命位相ずれ現象から生じる位相の遅れ以外の何かに由来する認知可能な位相の遅れとして規定され得る。なぜなら、問題は、式(3)および(4)の文脈でΔφとして規定されるからである。
【0012】
図2は、周波数ドメインの位相における寿命測定を実施するためにルミネッセンスを生成および検出する際に使用するための、先行技術のセンサシステム200を示す。
【0013】
信号発生器202は、励起信号203を、例えば、時間依存性関数x(t)に従う電圧信号Vまたは電流信号Iとして、発生する。例として、励起信号203は、正弦波または方形波であり得る周期的励起信号である。その信号発生器は、アナログ信号発生器またはデジタル信号発生器であり得る。励起信号203は、信号発生器202から、位相比較装置204、および光源ドライバ回路206の両方へと移動する。光源ドライバ回路206は、励起信号203を増幅し、そして励起信号に強度が従う電流源を提供する。光源ドライバ回路206からの電流出力は、光学励起光源208に適用される。この光学励起光源208は、光源ドライバ回路206により処理される関数x(t)に密接に従う関数x(t)’に従って、種々の強度の励起光210を生成する。光学励起光源208は、好ましくは、発光ダイオード(LED)、レーザーダイオードまたは垂直キャビティ表面発光レーザー(VCSEL)であるが、充分に高い周波数で調節され得る他の任意の光源であり得る。関数x(t)’に従って調節された光210が、時間依存性発光関数y(t)において、光子放出光212をシミュレートする。光子放出光212は、ルミネッセンスセンサ214において発行物質に対する励起光210の活性によって生じる。光学的励起源208は、ルミネッセンスセンサ214において対応する光子放出光212を誘導する波長を含む帯域幅において光210を放出するように選択される。
【0014】
励起光210の一部は、図1において光放出光212として一般的に示される経路中へとルミネッセンスセンサ214を通り続け得ることが、認識される。一対の相補的光学カラーフィルター216、218が、望ましくない波長の光の拒絶のために、センサシステム200を調整するために使用され得る。光学的励起源208および励起フィルタ216の色は、ルミネッセンスセンサ214におけるルミネッセンス物質の特徴に一致する。同様に、ルミネッセンスフィルター218はまた、ルミネッセンス発光の色に従って選択される。例として、光学的励起源208によって放出される励起光210が、青色または緑色である場合、対応する青色励起フィルタまたは緑色励起フィルタ216が、ルミネッセンスセンサ214に衝突する青色励起光または緑色励起光210の帯域を狭くするために使用される。光子放出光212が赤色である場合、赤色発光フィルタ218が、ルミネッセンスセンサ214を通過する散乱された励起光210が光検出器220に達するのを減少または除去するために使用される。従って、光222は、このようにしてフィルタリングされ得、光検出器からの信号出力および定量を増強する狭い帯域幅を選択し得る。光検出器220は、フォトダイオード、光電子増倍管、マイクロチャネルプレート、アバランシェフォトダイオード、または他の型の光検出器であり得る。光222は、検出器220に衝突し、検出器220が、光222を検出信号224(例えば、電圧信号Veまたは電流信号Ie)に変換する。検出信号224は、発光関数y(t)からの情報を具体化する。前置増幅器226は、検出信号224に作用して、関数y(t)’の形態を有する増幅された出力信号228を提供する。増幅された出力信号228は、位相比較装置204を通過する。
【0015】
発光関数y(t)の位相は、上記の式(3)に従って、ルミネッセンス物質のルミネッセンス寿命に関連する量の分、励起関数x(t)’の位相から遅れる。位相比較装置204は、励起信号203と、増幅された出力信号228との間の位相の差を測定する。センサシステム200内のすべての電気構成要素および光学構成要素の位相の遅れが、ルミネッセンス物質によって導入される位相の遅れと比較して無視できる場合、位相比較装置によって測定される位相の差は、ルミネッセンスセンサ214においてルミネッセンス物質の位相の遅れとして取得され得る。この位相の差は、例としては、上記の式3を使用して寿命を決定するため、または上記の式(4)を使用して分析物濃度を決定するために、使用され得る。
【0016】
センサシステム200についての上記の説明は、位相のずれを測定することによって、ルミネッセンス寿命をモニターするための一般的感知構成である。上記のタイムドメイン寿命測定方法または周波数ドメイン寿命測定方法のいずれか1つが、上記の図解と類似する構成を使用し得る。
【0017】
図2の状況において記載される上記の計算方法は、例えば、励起関数x(t)=x(t)’および発光関数y(t)=y(t)’を仮定するが、有意な測定誤差が、この仮定から生じ得る。これは、センサシステム200の電気構成要素が、位相差測定に対して認知可能な変化を導入し得るので、生じる。図2に関して上記で考察したように、先行技術のタイムドメイン寿命測定技術および周波数ドメイン寿命測定技術は、一般的に、測定される寿命は、ルミネッセンス物質により導入される位相の遅れを示すだけではなく、センサシステム200中の種々の光学構成要素および電気構成要素の使用から仲介される外部の位相の遅れをも示すという事実に悩まされる。
【0018】
例として、Panasonicから得た青色LED(DigiKey Inc パーツ番号P465−ND)は、110MHzにて所定の発光帯域幅を有し、低い周波数に対して−10db減弱し、光学励起源208として使用され得る。この周波数において、LED発光に起因する位相の遅れは、ナノ秒蛍光寿命と比較した場合に有意である。光学励起源208とルミネッセンスセンサ214中のルミネッセンス物質との間の物理的距離が、充分に大きい場合、遷移時間に起因する位相の遅れもまた、有意になり得る。検出器220および前置増幅器226は、それぞれの信号224、228に対して、位相の遅れを付加する。上記のタイムドメイン寿命測定方法および周波数ドメイン寿命測定方法は、光学構成要素、電気構成要素、およびルミネッセンス物質からの距離によって導入される、外部の位相の遅れを分離し得ない。
【0019】
光学構成要素および電気構成要素によって付与される外部の位相の遅れを補正するための一般的ストラテジーは、既知の位相の遅れを有する標準サンプルを測定することである。例えば、Lakowiczら「2−GHz frequency−domain fluorometer」Rev.Sci.Instrum.57(10)October 1986は、75ピコ秒という標準的蛍光寿命について、pH=9の水中における蛍光色素ベンガルローズの使用を報告する。あるいは、Lakowiczらは、標準物質として25ピコ秒の石英プレートエタロンを使用する。そのような標準サンプルの特徴は周知であるので、ルミネッセンス寿命測定系の外部の位相は、一定の調節周波数範囲にわたって測定され得る。この情報を手にすると、外部の位相は、式(3)に従って寿命を計算する前に引かれ得る。
【0020】
この技術の不利点は、2つある。第一に、標準サンプルが、必要であり、これにより、多くの適用について実用的ではない。第二に、所定の任意の器具について外部の位相の遅れが経時的に一定のままであるという仮定が存在する。実際は、これは、通常は当てはまらない。環境要因が、電気構成要素および光学構成要素の外部の位相を変化させ得る。温度の大きな揺れは、LED、フォトダイオード、および関連する電子機器の位相の遅れの有意な変動を誘導する。建物の領域の外側に位置するセンサ器具は、大きな温度変動を補償するはずである。外部の位相の温度誘導性変化が補償されない場合、寿命測定の精度が、従って、分析物の定量が、影響を受ける。光学構成要素および電気構成要素の経年変化もまた、外部の位相の遅れの有意な変化をもたらし得る。このシステムの別の不利点は、操作者が介入する必要があることであり、操作者は、通常使用されるルミネッセンスセンサを、標準的ルミネッセンスセンサで置換して、寿命測定システムを較正しなければならない。
【0021】
外部の位相の問題に対して提唱される解決法は、複雑であり、実施するのにコストがかかる。外部の位相を測定および補正する他の方法は、より高エネルギーのルミネッセンス励起を選択して検出するために波長選択を使用する。より高エネルギーのルミネッセンス励起だけが検出された場合、より高エネルギーのルミネッセンス励起は、電気光学構成要素の外部の位相のみを含む。例として、Riedelが、WO01/22066 A1において、ルミネッセンス発光をモニターするために使用される光検出器の前に異なる光学フィルタを選択して機械的に配置するための、マイクロプロセッサの使用を記載する。長波長パス光学フィルタが選択される場合、その検出器は、物質のルミネッセンス発光のみを測定する。ショートパスフィルターが選択される場合、検出器は、より高エネルギーの励起光のみをモニターする。欧州特許EP 0 702 226 B1は、上記のRiedelと同様に、より高エネルギーの励起波長を直接モニターするために、検出器の前に波長選択エレメントを使用する方法を開示する。これらの方法は、外部の位相を補正するために使用され得るが、光学フィルタの機械的選択を必要とするより複雑な光学構成を犠牲にして使用され得る。
【0022】
従って、広い範囲の温度、環境条件および構成要素の経年数にわたって、外部の位相変化からの妨害が最小の、できるだけ正確に寿命を決定し得る機器を開発することは興味深い。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0023】
(要旨)
以下に記載される機器は、上記に概説された問題を克服し、外部の位相の遅れの問題に対する単純化された解決法を提供することによって、当該技術を進歩させる。
【0024】
周波数領域ルミネッセンスシステムは、位相の遅れおよびルミネッセンス寿命のうちの少なくとも一方を決定するために使用される。このシステムは、ルミネッセンスセンサにおいてルミネッセンス応答を生成する従来の励起光源に加えて、第2の光源を提供することによって改良される。この第2の光源は、ルミネッセンスセンサにおいてルミネッセンス応答を誘導しないスペクトルで光を発する。第2の光源からの光は、例えば、好ましい実施形態において、ルミネッセンス物質の発光帯域において光を発するLEDであり得る。この第2の光源からの光の感知は、このシステムにおける外部の位相の遅れの良好な近似を提供する。特に、このシステムにおいて、この第2の光源は、励起光源の発光の遅れを厳密に近似する、発光の遅れを有するように選択される。この第2の光源は、例えば、800nm〜1100nmの光を発し得る。
【0025】
このシステムは、2つのモード(較正モードおよび定量モードを含む)で作動し得る。定量モードにおいて、このシステムは、分析物濃度を評価するために有効であり、ここでこの分析物は、ルミネッセンスセンサと接触している。較正モードにおいて、このシステムは、自己較正を行って、外部の位相の遅れを補正する。い遅れのモードにおいても、関連する光源は、例えば、1kHz〜1MHzまたは1MHz〜2GHzの一定周波数範囲で操作され得る。ここで駆動信号は、それぞれ、相補的性質において、正弦波、方形波、周期的連続パルス、別のパターン、またはこれらの組み合わせであり得る。この駆動信号周波数は、大いに高い周波数であり得、検出器信号は、その後にヘテロダイン処理またはダウンコンバージョンされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
(詳細な説明)
ここで、外部の発光を測定値から排除するための技術を組み込む、センサシステムが示され、かつ記載される。この非限定的な開示は、例として好ましい材料および方法の実施を示す。
【0027】
図3は、センサシステム300の模式的ブロック図である。図2に示されるセンサシステム200に関する同一の構成要素は、以下に特記されるものを除いて、図3に関して同じ番号付け方法を使用している。一般に、光210、212、222として示される光は、第1の光路を進む。センサシステム300は、発光帯域光源302ならびに電気的に制御可能なスイッチSW1およびSW2が付加されていることで、センサシステム200とは異なる。この発光帯域光源302は、SW2を閉じて選択的に電圧が印加され(energized)ることによって、ルミネッセンスセンサ214においてルミネッセンス物質の発光スペクトルまたは波長を含む帯域幅の光を発光する。例えば、発光スペクトルが赤である場合、この発光帯域光源302は、赤色LED、赤色レーザーダイオード、または赤色VCSELであり得る。スイッチSW1は、励起光源208からの発光を停止するために開かれ得る一方で、SW2は、関数x(t)に従って発光帯域光源302を駆動するために閉じられ得る。この関数は、信号203において具現化され、光源ドライバ回路(source driver circuitry)206によって駆動される。発光帯域光源302はまた、励起光源208と同時に駆動され得るが、この操作モードは、あまり好ましくない。発光帯域光源302の作動は、ルミネッセンスセンサ214の発光帯域にある光の発光を、ルミネッセンスセンサ214を通って経路304を進んで、検出器220に衝突させる。検出器220は、経路304上で光を検出し得る。
【0028】
発光帯域光源302からの変調された光は吸収されず、ルミネッセンスセンサ214のルミネッセンス挙動によって発光される。経路304上での光の通過は、経路304上の光を散乱させ、拡散させ、そして伝えるに過ぎない。この発光帯域光源302は、好ましくは、励起光源208の位相応答または発光の遅延に類似している、位相応答または発光の遅延の特徴を有するように選択される。なぜなら、この型の選択は、外部の位相の遅れの最高の近似を提供するからである。
【0029】
経路304上の発光後の前置増幅器226からの信号出力は、センサシステム300の電気的構成要素および光学的構成要素の外部の位相の遅れを含み、ルミネッセンスセンサ214による位相の遅れの原因はない。示される実施形態の1つの特定の利点は、位相比較装置が、信号配置によって、所定の様式でスイッチSW1およびSW2を自動的に開閉し得ることである。図3に示されるように、SW1を閉じてSW2を開くと、外部の位相の遅れの補正とともに定量が行われる、定量モードが示される。定量モードにおいて、分析物(示さず)は、ルミネッセンスセンサ214への分析物の拡散について、ルミネッセンスセンサ214と従来の様式で相互作用する。対照的に、図4に示されるように、SW1を開いてSW2を閉じると、定量モードにおいて使用するために外部の位相の遅れを評価するための較正モードが示される。位相比較装置304は、連続的測定の間または測定のシステム全体にわたって周期的に、リアルタイムの外部の位相の遅れの補正を行うための、それぞれのモードの間の切換えであり得る。この意味において、「リアルタイム」とは、分析物および/または環境条件が、定量モード測定の実行と較正モード測定の実行との間でルミネッセンスセンサ214の光学的挙動を変化させるには、不十分な時間しかなかったことを意味する。このリアルタイムの位相補正は、標準サンプルも複雑な補償機構も使用する必要なく、ルミネッセンス寿命または位相の遅れのより正確な測定を提供する。
【0030】
後方投影センサが、同じ効果を有して、図3に示されるようなルミネッセンスセンサ214の代わりになり得ることを認識する。図3で経路304は、反射経路である。図5は、後方投影システム500における1つのこのような配置を示す。このシステムにおいて、従来の後方投影センサ502は、図3および4のルミネッセンスセンサ214に取って代わって、反射計路304を確立する。
【0031】
一実施形態において、青色LEDは、ルミネッセンス酸素センサ214を励起するために、青色光学フィルタ216と組み合わせて、励起光源208として使用される。このルミネッセンス酸素センサ214は、赤色光を発し、この赤色光は、フォトダイオード検出器220に衝突する前に赤色発光フィルタ218を通過する。ルミネッセンス酸素センサ214の真の位相の遅れの決定は、2つの別個の測定値を必要とする。第1に、青色LED励起光源208を使用する、システム300を通る位相の遅れは、SW1を閉じてかつSW2を開いて定量モードを確立することで、信号203および関数x(t)に従う11kHzの変調周波数において測定される。次にSW1が開かれ、青色LED励起光源208を停止させる。SW2は、赤色LED発光帯域光源302の作動のために閉じられて、較正モードを確立する。別の位相の遅れの測定は、信号203および関数x(t)に従う11kHzの赤色LED発光帯域光源302を変調する場合に行われる。
【0032】
次いで、このルミネッセンス酸素センサに起因する位相の遅れは、以下のように単純に計算される。
【0033】
Δφセンサ=Δφ−Δφ (5)
ここで位相比較装置306は、式(2)、(3)または(4)における真のルミネッセンスの位相の遅れΔφとして、Δφセンサを利用し、Δφは、定量モードの位相の遅れであり;Δφは、較正モードの位相の遅れである。これらの位相の遅れΔφおよびΔφは、ΔφとΔφとの間の相対的な位相差が正確であれば、必ずしも、絶対的にかつ非常に正確に測定される必要はない。位相比較装置306において使用される種々の方法から生じる(厳密には、減法による以外の、例えば、信号203、228を分析する微分法または差分法を使用する)、数学的に等価な真の位相の遅れの計算は、較正用の位相の遅れを排除する操作原理が観察される限りにおいて、この測定に影響を及ぼさない。定量モードと較正モードとの順序は、いかなる順番であってもよく、例えば、定量測定の前に較正測定を置いても、複数の定量測定全体にわたって較正測定を分散させても、複数の較正測定および/または複数の定量測定を平均化してもよい。
【0034】
(比較実施例)
この2工程測定法の有用性は、電子機器および光学機器の温度が、室温の変動とともに、または測定周波数によって、電気的構成要素の加熱もしくは冷却によって変化する場合に例示される。1つの試験装置において、2つの数量ΔφおよびΔφを、8000秒にわたって、反復間隔で連続的に測定した。このルミネッセンスセンサ214を、実験の間の分析環境における変化によって位相の遅れおよびルミネッセンス寿命を変化させないように、一定温度および酸素環境で維持した。
【0035】
位相測定システム300(励起光源208として青色LEDおよび発光帯域光源302として赤色LEDを備える)、フォトダイオード検出器220、前置増幅器226ならびに位相比較装置306を、周囲の室内条件に曝した。この周囲温度を、センサシステム300に関して中心でモニターした。この周囲温度は、図6に示されるように、電子機器のウォームアップおよび実験室の空調システムの影響に起因して変動した。温度の大きな変動は、8000秒の実験期間にわたって生じた。
【0036】
図7および8は、同じ時間枠にわたる、センサシステム300における青色の位相の遅れΔφの測定値(図7)および赤色の位相の遅れΔφの測定値(図8)を示す。ΔφおよびΔφの位相の遅れの測定値を、交互に得、この測定値の対を、1秒に1回作製した。光源208、302の両方を、これらの測定値について11kHzで変調した。
【0037】
実験期間にわたって、図7および8に示されるΔφおよびΔφの位相の遅れを、図6の温度と比較すると、測定された位相における変動が、温度変化と相関することが示された。このルミネッセンス酸素センサに起因する位相の遅れΔφO2センサを、青色の位相の遅れΔφから赤色の位相の遅れΔφを差し引くことによって計算した。このシステムにおいて、式(3)を使用すると、11kHz変調において9.65°の移相が、2.46マイクロ秒のルミネッセンス寿命に対応した。これは、図9に示される。この図において、値9.65は、式(5)のΔφO2センサ値を示すデータの水平方向に延びた帯域を平均して近似する。
【0038】
図9に示されるデータの帯域は、9.5〜9.7の間に概して延びるある範囲のノイズを含むが、その最良の値は、この帯域が、図7および8に示される変動に影響されない算術平均として計算され得ることを認識する。外部の位相の遅れを補正することなく計算される場合、そのノイズは、図7に示されるように、実験の間にわたって8.1〜8.3の範囲である。この範囲にある任意の値は、約9.65に対して、感知できる程度に誤差である(図9を参照のこと)。
【0039】
この実施例は、外部の位相の遅れの補正が、光学機器および電子機器の測定値に対する環境温度効果に起因する変動を大きく減少させたことを示す。結果として、ルミネッセンス酸素センサの寿命は、より正確に測定され、次に、分析物における酸素濃度のより正確な測定値を与えた。
【0040】
前述の実施例は、ルミネッセンス酸素センサでの光学位相補正の使用を実証する。以下の表1は、センサ214が酸素センサである場合に、センサ214におけるルミネッセンス物質として使用され得る種々の酸素感受性ルミネッセンス物質を同定する。
【0041】
(表1:酸素感知に適したルミネッセンス色素)
【0042】
【表1】

これらの材料の励起は、理想的には、ソリッドステート発光ダイオード、またはレーザーダイオードと匹敵し、この発光は、好ましくは、シリコンフォトダイオードを使用して検出可能である。酸素がない場合のルミネッセンス寿命は、酸素センサの感度に影響を及ぼす。ルミネッセンス物質の選択は、意図される使用環境における条件に依存する。例えば、PdOEPは、非常に長い寿命を有し、結果的に、非常に低濃度の酸素を有する分析物での使用に適している。高濃度の酸素の場合、PdOEPは、高度にクエンチされ、正確な寿命の測定を行うためには不適切なことに鈍い。
【0043】
他の十分に適したルミネッセンス色素は、Papkovsky,D.B.,「Luminescent porphyrins as probes for biosensors」,Sens and Act B 11(1993)293−300およびPapkovsky,D.B.,「New Oxygen sensors and their application to Biosensing」,Sens and Act B 29(1995),213−218およびJ.N.Demas,B.A.DeGraff,「Design and Application of Highly Luminescent Transition Metal Complexes」,Anal.Chem.vol 63 n17 829−37,1991により記載される。
【0044】
表2は、酸素感受性のルミネッセンス色素と共に首尾よく使用されてきた種々の酸素透過性ポリマーマトリクスを列挙する。一般に、ルミネッセンスセンサ214は、分析物が拡散され得るポリマーマトリクスを備え、このルミネッセンスセンサ214では、ルミネッセンス物質が、ポリマーマトリクス内に実質的に均一に分散されている。一例として、特定のポリマーを特定の酸素感受性色素と共に使用するという決定は、主に、酸素の非存在下でのルミネッセンス寿命と、このポリマーの酸素透過性とに依存する。非常に寿命の長い色素(例えば、PdOEP)と透過性の高いポリマー(例えば、RTV−118シリコーン)との組み合わせは、低濃度の酸素(すなわち、1ppbを下回る量が水中に溶解している)に適切であり得る。この同じ組み合わせはおそらく、標準的な大気圧、大気組成および大気温度付近において、水中で見られる高濃度の酸素には適さない。なぜならば、このセンサは、正確な測定には高度に消光しすぎるからである。一般に、「良好な」ポリマーと色素の組み合わせは、分析物中において、予測される酸素濃度範囲を5〜10上回るダイナミックレンジを与える。ダイナミックレンジは、最低酸素濃度における輝度または寿命を、最高酸素濃度における輝度または寿命で割ったものとして定義される。
【0045】
【表2】

酸素センサは、代表的に、ルミネッセンス寿命を正確に測定するために使用されるルミネッセンス物質の型に依存して、2kHz〜1000kHzの変調周波数を必要とする。他の分析物は、例えば、酸素センサに使用される範囲を超える励起周波数を使用し得る。1MHz〜2GHzの励起周波数の使用は、グルコース、pH、Ca2+、ならびに他のイオンおよび化学種を測定する蛍光センサに特に有用である。
【0046】
図10は、図3に示され、上に記載されたセンサシステム300のためのプログラム可能な操作モードを示すフローチャートである。プロセス1000の演算論理は、例えば、位相比較装置306または任意の他の処理装置に提供されるような、プログラム指令または回路により実行され得る。プログラム指令は、メモリと一体になった単一のプロセッサにおいて、または、分散型の処理環境において使用され得る。
【0047】
ルミネッセンスセンサにおける定量用の位相の遅れを測定する定量動作1002の後には、動作1002を3回通る度に、動作システム300が、例えば、N回のこのような反復の間の特定の反復型についての較正をスキップして、工程1006において1回の較正を行うように指令するかどうかを確認するための試験1004が続く。動作1002は、上記のような定量モードにおいてシステム300に起こる。較正工程1006は、較正用の位相の遅れを決定するための較正モードにおいて、センサシステム300(一般には、電気光学機器)の使用を必要とする。ループ試験1008は、式(5)に従って、定量動作1002に戻ることか、または、外部の位相の遅れの較正のために工程1010に進むことが、P回の反復ベースで適切かどうかを照会する。
【0048】
図10に示されるプログラム可能なバリエーションは、例えば、定量動作1002の間、そして、較正工程1006において再び、しかし、補正工程1010で使用してΔΦセンサ(すなわち、真のルミネッセンス位相の遅れ)を生成するために、システムメモリ内でストレージがΔΦQおよびΔΦCの位相の遅れ値を生じる異なるタイムドメインにおいて、光励起源208を駆動するために、信号発生器202からのあるパターンにおいて適用される可変周波数の使用を可能にする。この値は、等式(3)、(4)、または当該分野で公知の他の計算によって、ルミネッセンスセンサ214と接触する分析物の濃度を分析するために使用され得る。
【0049】
上で議論される位相補償スキームは、ルミネッセンス寿命または周期的な光信号の位相遅延を測定するための、あらゆる位相/周波数ベースの方法に適用可能である。例えば、米国特許第4,716,363号、同第5,646,734号、または同第4,845,368号に記載される寿命測定システムおよび方法は、外部の位相の遅れを補正するために、図3および図4に示されるように改変され得る。任意の種類の位相比較装置を使用するシステムは、本明細書中で開示されるシステムおよび方法に役立ち得る。2相ロックイン法またはフーリエ変換法を使用する位相比較装置もまた、本明細書中で開示されるシステムおよび方法を含めた改変物に役立ち得る。
【0050】
位相補償スキームはまた、サーボフィードバックループ位相比較装置を用いる場合に有用である。Venkatesh VaddeおよびVivek Srinivas「A closed loop scheme for phase−sensitive fluorometry」,American Institute of Physics,Rev.Sci.Instrum.,Vol.66,No.7,July 1995,p.3750によって使用された位相測定法は、励起信号とルミネッセンス発光との間の位相の決定を最適化するためにサーボフィードバックループを使用する位相比較装置である。この方法において、位相比較装置は、改変された発光信号が、励起信号の位相から90°離れるまで、ルミネッセンス発光信号にさらなる位相のずれを加える、サーボフィードバックループを使用する。さらなる位相のずれは、励起信号とルミネッセンス発光信号との間の位相のずれを得るように、90°減算される。外部の位相は、青色励起LEDの代わりに赤色参照LEDを使用して第2の測定を行い、そして、ルミネッセンス発光信号位相の事前の測定からの結果を減算することによって、この実施例において補正され得る。
【0051】
上記の実施形態は、ルミネッセンス寿命の決定のために、主に、信号発生器202から発される定常変調周波数を使用する。他の同様に適切な実施形態は、ルミネッセンス物質による定常または可変の位相のずれを伴う可変の変調周波数を利用し得る。一例として、Dukesに対して発行された米国特許第4,716,363号、およびDanielsonに対して発行された米国特許第6,157,037号は、可変の変調周波数の励起信号の使用を教示する。Dukesの特許は、励起信号とルミネッセンス発光との間の定常位相のずれを要求する位相比較装置を使用する。この位相比較装置は、励起光源の変調周波数を調節して、励起発光とルミネッセンス発光との間に、特定の定常位相のずれ(例えば、45°)を達成する。Danielsonにより使用される位相比較装置は、励起信号とルミネッセンス発光との間に、可変の周波数依存性の位相のずれを要求する。この位相比較装置は、励起周波数と位相のずれの要件を同時に調節する。この場合、好ましい実施形態は、定量モードにスイッチする前に、予想された全周波数にわたって、システムによる較正用の位相の遅れを測定することである。DukesまたはDanielsonの方法により実施されたような位相のオフセットは、前もって測定された較正用の位相の遅れを使用して、連続的に補正される。変調周波数が、較正用の位相の遅れの測定がなされる周波数と正確にマッチしない場合、内挿を用いて、位相の補正をより正確に決定し得る。
【0052】
位相比較装置が、ダウンコンバージョンを使用する別の実施形態が存在する。この実施形態において、定量モードおよび較正モードにおける変調周波数は、位相比較装置が位相の遅れを測定する周波数よりも高い。ダウンコンバージョンを使用する位相比較装置において、励起および発光の変調周波数は、その位相の関係性を保存したまま、より低い周波数に変換される。一例として、この実施形態は、位相の遅れの決定前に、調節されたルミネッセンス発光のヘテロダインまたはダウンコンバージョンを使用し得る。一例として、米国特許第5,196,709号は、位相の遅れの決定のために、調節されたルミネッセンス発光のより低い周波数へのダウンコンバージョンの使用を教示する。欧州特許出願EPA 1988−03−16 0259973/EP−A2「Fluorometric sensor system using heterodyne technique」は、ヘテロダイン技術を議論する。これらのシステムは、外部の位相の遅れを補正するために、本明細書において示され、そして記載されたような手段を備えるように改変され得る。
【0053】
光励起源208および発光帯域光源(emission band source)302は、上記の用途に対して異なる波長を発光するように選択されることが理解される。光源の発光帯域302は、ルミネッセンスセンサ214の発光スペクトルには固有であるが、対応するルミネッセンス発光を誘導しない波長で持続することが好ましいが、このことは、厳密な要件ではない。一例として、LEDの選択は、ルミネッセンス物質の吸収スペクトルおよび発光スペクトル、ならびに、励起カラーフィルター216および発光カラーフィルター218の特性に適切にマッチさせ得る。これは、参照LEDが、ルミネッセンス物質が発光するのと実質的に同じ色の光を発光する場合に、最も都合が良い。しかし、LEDは、しばしば、たとえ弱くのみであったとしても、比較的広範囲の波長を発光する。いくつかの青色LEDの発光は、有意な量の赤色光を含み、従って、青色LEDはまた、赤色位相の遅れの測定のための光を提供するためにも使用され得る。しかし、この場合、青色LEDの前に、赤色光のみを通過させる光学フィルタを使用する必要があり得る。さもないと、青色LEDは、ルミネッセンス発光を刺激する。ルミネッセンス物質と実質的に同じ波長で発光される、十分に高速寿命の蛍光物質でコーティングされた場合には、別個の青色LEDがまた使用され得る。
【0054】
別の実施形態は、光の波長が励起光源ともルミネッセンス発光とも実質的に異なる、発光帯域光源302に置き換える。例えば、800nm〜1000nmの発光を有する近赤外線LEDまたはレーザーダイオードは、600nm〜800nmの赤色発光ルミネッセンス物質と組み合わせて使用され得る。発光フィルタが、800nm〜1000nmの光を通過させるように選択された場合、このルミネッセンス物質よりも実質的に長い波長出力を有するLEDが使用され得る。このことは、IR LEDおよびレーザーダイオードが、広く使用され、かつ、低コストで利用可能であるという1つの利点を有する。
【0055】
別の実施形態は、定量用の位相の遅れを連続的に測定せず、その結果、寿命を決定する度に較正用の位相の遅れも測定しないが、より低い頻度で較正用の位相の遅れを測定および記録する。記録された較正用の位相の遅れは、定量用の位相の遅れの測定の各々から減算され得る。
【0056】
このことは、ルミネッセンスセンサ214の位相が、中断なしに、速いデータ速度で測定されることが必要とされる場合に特に有用である。一例として、較正用の位相の遅れは、測定の度にではなく、時間間隔で、または測定間隔で、測定および記録され得る。
【0057】
類似の方法は、励起源208として使用される青色もしくは緑色のLEDとはわずかに異なる周波数に調節された赤色LEDを、発光帯域光源として使用する。赤色LEDは、十分に異なる周波数に調節され、その結果、その信号は、デジタル形式でフィルタをかけられ、センサのルミネッセンス発光から分離され得る。位相の応答が測定領域において十分にフラットである場合、補正用の位相は、直接使用され得る。そうでない場合、補正を調節するために、位相/周波数の勾配の以前の知識が使用され得る。あるいは、周波数に伴う位相のずれの形状が既知である場合は、実際の位相のずれが、内挿または外挿によって見出され得る。
【0058】
(参考文献)
以下の参考文献は、完全に本明細書中に開示されるのと同程度に、本明細書において参考として援用される:
【0059】
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】図1は、励起事象と発光事象との間の位相の遅れとしてのルミネッセンス寿命現象を例示し、ここでルミネッセンス寿命は、分析物濃度の定量に使用され得る。
【図2】図2は、外部の位相の遅れを補正しない先行技術のセンサシステムのブロック図である。
【図3】図3は、本明細書に開示される手段に従う外部の位相遅延を補正するセンサシステムを示すブロック図である。
【図4】図4は、センサシステムを較正モードにする切換え構成を例示するブロック図である。
【図5】図5は、後方投影(backprojection)センサがセンサシステムにおいて使用される、代替的実施形態を例示する。
【図6】図6は、センサシステムの一実施形態を試験するために使用した周囲温度変化を示すグラフである。
【図7】図7は、感知した定量用の位相の遅れの結果が、外部の位相の遅れとしての温度変化とともに変化することを確認する実験データを示す。
【図8】図8は、温度と共に同様に変化する、位相の遅れの較正を示す;
【図9】図9は、定量用の位相の遅れを較正用の位相の遅れから推定して、システム温度影響を補正することによって達成される、補正されたルミネッセンスの位相の遅れ、すなわち真のルミネッセンスの位相の遅れを示す。
【図10】図10は、このセンサシステムのユーザーが選択可能な制御論理の一実施形態を例示するフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルミネッセンス物質の位相の遅れおよびルミネッセンス寿命のうちの少なくとも1つを決定するための方法において、改善が:
電子光学設備を使用することによって、光学励起源を備える第一の光路上において、該ルミネッセンス物質の定量用の位相の遅れを測定する工程であって、該定量用の位相の遅れは、外部の位相の遅れを部分的に表す信号を使用することによって測定される、工程;
該電子光学設備を使用して、該ルミネッセンス物質を通して第二の光路上の第二の光源を駆動することによって、較正用の位相の遅れを決定する工程であって、該第二の光源は、該ルミネッセンス物質からの感知可能なルミネッセンスを引き起こさない光を発光する、工程;および
該定量用の位相の遅れから、該較正用の位相の遅れを除くことによって、該外部の位相の遅れを補正し、真のルミネッセンス位相の遅れを評価する工程、
を包含する、方法。
【請求項2】
前記電子光学設備を使用する工程が、前記ルミネッセンス物質からの発光に固有の波長で、前記第二の光源から光を発光させる工程を包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記定量用の位相の遅れを測定する工程、および前記電子光学設備を使用する工程が、各々、位相比較装置を作動させて、一定の周波数の変調における位相の遅れを決定する工程を包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記一定の周波数が、1kHz〜1MHzの範囲である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記定量用の位相の遅れを測定する工程が、前記光学励起源を変調して、あるパターンに従う時間変量周波数で発光させる工程を包含し、そして
前記電子光学設備を使用する工程が、前記第二の光源を変調して、該パターンと同じパターンで発光させる工程を包含する、
請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記定量用の位相の遅れを測定する工程が、複数回実施され、そして前記補正する工程が、対応する複数の前記真のルミネッセンス位相の遅れを提供する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記複数の真のルミネッセンス位相の遅れが、前記外部の位相の遅れ以外のシステムノイズによって影響を受ける場合を除いて、ある時間間隔にわたって実質的に一定である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記定量用の位相の遅れを測定する工程において使用される、前記ルミネッセンス物質が、酸素濃度に感受性であるルミネッセンス発光特徴を有する材料を含有し、そして前記方法が、前記補正する工程の真のルミネッセンス位相の遅れを使用して、分析物中の酸素濃度を評価する工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記ルミネッセンス物質が、メタロポルフィリンを含有する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ルミネッセンス物質が、ルテニウム錯体を含有する、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記定量用の位相の遅れを測定する工程が、前記光学励起源に、方形波、正弦波、周期的パルス列、およびこれらの組み合わせからなる群より選択されるパターンで発光するように電圧を印加する工程を包含し;そして
前記電子光学設備を使用する工程が、該パターンと同じパターンで、前記第二の光源に電圧を印加する工程を包含する、
請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記定量用の位相の遅れを測定する工程が、前記光学励起源に、1MHz〜2GHzの範囲の1つ以上の周波数において発光するように電圧を印加する工程を包含し、そして
前記電子光学設備を使用する工程が、前記第二の光源に、該周波数と同じ1つ以上の周波数において発光するように電圧を印加する工程を包含する、
請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記ルミネッセンス寿命測定を適用して、分析物濃度を定量する工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記分析物が、グルコース、pH、イオン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記定量用の位相の遅れを測定する工程が、前記外部の位相の遅れを補正する工程において使用された変調周波数とは異なる周波数において、前記光学励起源を変調する工程を包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記定量用の位相の遅れを測定する工程が、サーボフィードバックループを使用して、励起信号とルミネッセンス発光との間の位相の決定を最適化する工程を包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記定量用の位相の遅れを測定する工程が、前記光学発光源を変調して、前記ルミネッセンス物質にわたって一定の位相のずれを達成する工程を包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記定量用の位相の遅れを測定する工程が、前記光学励起源を変調して、前記ルミネッセンス物質にわたって変調周波数依存性の位相のずれを達成する工程を包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記定量用の位相の遅れを測定する工程と、前記電子光学設備を使用する工程との両方が、位相比較装置において検出される信号をダウンコンバーティングする工程を包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記定量用の位相の遅れを測定する工程が、前記第一の光源を使用して、前記ルミネッセンス物質に固有の発光波長について存在するものとは実質的に異なる波長帯域において光を発光させる工程を包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記第二の光源が、800nm〜1100nmの範囲で発光する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記電子光学設備を使用する工程が前記定量用の位相の遅れを測定する工程に対して交互に実施される、反復サイクルにおいて、前記方法が実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記定量用の位相の遅れを測定する工程が、複数回実施され、そして前記電子光学設備を使用する工程が、該複数回より少ない回数で実施されて、周期的に、前記補正する工程を実施するために使用され得る前記較正用の位相の遅れを更新する、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記電子光学設備を使用して較正用の位相の遅れを決定する工程が、該較正用の位相の遅れを記録する工程を包含し、
前記定量用の位相の遅れを測定する工程が、複数回実施されて、複数の定量用の位相の遅れの値を提供し;そして
前記補正する工程において、該記録された位相の遅れが、該複数の定量用の位相の遅れの値と組み合わせて使用される、
請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記真のルミネッセンス位相の遅れを使用して、ルミネッセンス寿命または参照分析物濃度を計算する工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
位相の遅れおよびルミネッセンス物質のルミネッセンス寿命のうちの少なくとも1つを決定するためのシステムにおいて、改善が、
電子光学設備を使用することによって、光学励起源を備える第一の光路上において、該ルミネッセンス物質における定量用の位相の遅れを測定するための手段であって、該定量用の位相の遅れは、外部の位相の遅れを部分的に表す信号を使用することによって測定される、手段;
第二の光源を変調することによって、該電子光学設備を使用して、該ルミネッセンス物質を通る第二の光路上において、較正用の位相の遅れを決定するための手段であって、該第二の光源は、該ルミネッセンス物質からの感知可能なルミネッセンスを引き起こさない光を発光する、手段;および
該較正用の位相の遅れを該定量用の位相の遅れから除くことによって、外部の位相の遅れを補正し、真のルミネッセンス位相の遅れを評価するための手段、
を備える、システム。
【請求項27】
前記電子光学設備を使用するための手段が、前記ルミネッセンス物質からの発光に固有の波長で前記第二の光源から光を発光させるための手段を備える、請求項26に記載のシステム。
【請求項28】
前記定量用の位相の遅れを測定するための手段、および前記電子光学設備を使用するための手段が、それぞれ、一定の変調周波数で位相の遅れを決定するための位相比較装置を操作するための手段を備える、請求項26に記載のシステム。
【請求項29】
前記一定の周波数が、1kHz〜1MHzの範囲である、請求項28に記載のシステム。
【請求項30】
前記定量用の位相の遅れを測定するための手段が、前記光学励起源をあるパターンに従う時間変量周波数で発光するように変調するための手段を備え、そして
前記電子光学設備を使用するための手段が、前記第二の光源を該パターンと同じパターンで発光するように変調するための手段を備える、
請求項26に記載のシステム。
【請求項31】
前記定量用の位相の遅れを測定するための手段が、量を複数回測定し、そして前記補正するための手段が、対応する複数の前記真のルミネッセンス位相の遅れを提供する、請求項30に記載のシステム。
【請求項32】
前記定量用の位相の遅れを測定するための手段によって使用される、前記ルミネッセンス物質が、酸素濃度に感受性であるルミネッセンス発光特徴を有する材料を含有し、そして前記システムが、前記補正する工程の前記真のルミネッセンス位相の遅れを使用して、分析物中の酸素濃度を評価するための手段をさらに備える、請求項26に記載のシステム。
【請求項33】
前記ルミネッセンス物質が、メタロポルフィリンを含有する、請求項32に記載のシステム。
【請求項34】
前記ルミネッセンス物質が、ルテニウム錯体を含有する、請求項32に記載のシステム。
【請求項35】
前記定量用の位相の遅れを測定するための手段が、前記光学励起源に、あるパターンで発光するように電圧を印加するための手段を備え、該パターンは、方形波、正弦波、周期的なパルス列、およびこれらの組み合わせからなる群より選択され;そして
前記電子光学設備を使用するための手段が、前記第二の光源に、該パターンと同じパターンで電圧を印加するための手段を備える、
請求項26に記載のシステム。
【請求項36】
前記定量用の位相の遅れを測定するための手段が、前記光学励起源に、1MHz〜2GHzの範囲の1つ以上の周波数で発光するように電圧を印加するための手段を備え;そして
前記電子光学設備を使用するための手段が、前記第二の光源に、該周波数と同じ1つ以上の周波数で発光するように電圧を印加するための手段を備える、
請求項26に記載のシステム。
【請求項37】
前記ルミネッセンス寿命測定を、分析物濃度を定量するために適用するための手段をさらに備える、請求項26に記載のシステム。
【請求項38】
前記分析物が、グルコース、pH、イオン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項37に記載のシステム。
【請求項39】
前記定量用の位相の遅れを測定するための手段が、外部の位相の遅れを補正するための手段において使用される変調周波数とは異なる周波数で、前記光学励起源を変調するための手段を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項40】
前記定量用の位相の遅れを測定するための手段が、励起信号とルミネッセンス発光との間の位相の決定を最適化するためにサーボフィードバックループを使用するための手段を備える、請求項26に記載のシステム。
【請求項41】
前記定量用の位相の遅れを測定するための手段が、前記ルミネッセンス物質にわたって一定の位相のずれを達成するように前記光学発光源を変調するための手段を備える、請求項26に記載のシステム。
【請求項42】
前記定量用の位相の遅れを測定するための手段が、前記ルミネッセンス物質にわたって変調周波数依存性の位相のずれを達成するように前記光学励起源を変調するための手段を備える、請求項26に記載のシステム。
【請求項43】
前記定量用の位相の遅れを測定するための手段と、前記電子光学設備を使用するための手段との両方が、位相比較装置において検出された信号をダウンコンバーティングするための手段を備える、請求項26に記載のシステム。
【請求項44】
前記定量用の位相の遅れを測定するための手段が、前記ルミネッセンス物質に固有の発光波長について存在するものとは実質的に異なる波長帯域で光を発光するために前記第一の光源を使用するための手段を備える、請求項26に記載のシステム。
【請求項45】
前記第二の光源が、800nm〜1100nmの範囲で発光する、請求項44に記載のシステム。
【請求項46】
前記システムが、反復サイクルで作動するように制御命令でプログラムされており、該反復サイクルにおいて、前記電子光学設備を使用するための手段が、前記定量用の位相の遅れを測定するための手段に対して交互に作動する、請求項45に記載のシステム。
【請求項47】
前記電子光学設備を使用して、較正用の位相の遅れを決定するための手段が、該較正用の位相の遅れを記録するための手段を備え、
前記定量用の位相の遅れを複数回測定して、複数の定量用の位相の遅れの値を提供する工程を実施するための手段を備え;そして
前記補正するための手段が、該複数の定量用の位相の遅れの値に関連して記録された位相の遅れを使用する、
請求項26に記載のシステム。
【請求項48】
前記真のルミネッセンス位相の遅れを使用して、ルミネッセンス寿命または参照分析物濃度を計算するための手段をさらに備える、請求項26に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2007−512504(P2007−512504A)
【公表日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−528319(P2006−528319)
【出願日】平成16年9月29日(2004.9.29)
【国際出願番号】PCT/US2004/031877
【国際公開番号】WO2005/033746
【国際公開日】平成17年4月14日(2005.4.14)
【出願人】(501223711)フォトセンス、エル.エル.シー. (2)
【Fターム(参考)】