説明

周波数変換装置

【課題】アーキテクチャおよびプロトコルが、居所内の、周波数変換モジュール(20)と複数の復号器(60)との間の信号通信を可能にする。
【解決手段】ある実施例によれば、周波数変換モジュール(20)は、テレビ信号の複数の帯域を受信するよう動作する複数の入力(22)を含む。複数の同調器(24)が前記諸入力(22)に接続されている。同調器(24)はテレビ信号の前記諸帯域を複数の中間周波数に変換する。コントローラ(34)は、諸帯域のテレビ信号の要求コマンドを復号器(60)から受信するよう動作する。復号器(60)のそれぞれは、別個の時間スロットの間に、要求コマンドの一つを周波数変換モジュール(20)に送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〈関連出願への相互参照〉
本出願は、2004年12月14日に米国特許商標庁に出願され、番号60/636038を割り当てられた仮出願の優先権および該仮出願から生ずるあらゆる恩恵を主張するものである。
〈発明の分野〉
本発明は概括的には信号通信に、より詳細には、居所(dwelling)内の、周波数変換装置(ここでは周波数変換モジュール(FTM: frequency translation module)と称されることがある)と統合受信・復号器(IRD: integrated receiver-decoder)との間の信号通信を可能にするアーキテクチャおよびプロトコルに関する。
【背景技術】
【0002】
衛星放送システムでは、一つまたは複数の衛星が一つまたは複数の地上ベースの送信器からのオーディオおよび/またはビデオ信号を含む信号を受信する。衛星はそれらの信号を増幅して、消費者の居所にある信号受信設備に再放送する。その際に介するトランスポンダは、指定された周波数で動作し、規定の帯域幅をもつ。そのようなシステムは上りリンク送信部(すなわち地上から衛星へ)、地球を回る衛星の受信および送信部ならびに下りリンク部(すなわち衛星から地上へ)を含む。
【0003】
衛星放送システムから信号を受信する居所では、衛星の放送スペクトル全体を周波数シフトさせ、結果として得られる出力を単一の同軸ケーブル上に周波数重畳させる(frequency stack)ために信号受信設備が使用されうる。しかしながら、衛星放送システム内の衛星数が増えると、すべての衛星を受け容れるために必要とされる全帯域幅が同軸ケーブルの伝送容量を超える点に至る。ここに記載される本発明はこのことおよび/またはその他の問題に取り組むものである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明のある側面によれば、装置が開示される。例示的な実施形態によれば、本装置は、複数の帯域のテレビ信号を受信するための複数の入力を有する。複数の同調手段が、テレビ信号の前記帯域を、複数の中間周波数に変換する。制御手段は、複数の復号器からテレビ信号の前記帯域についての要求コマンドを受信する。ここで、各復号器は、別個の時間スロットの間に、前記要求コマンドの一つを本装置に送信する。
【0005】
本発明の別の側面によれば、装置を介してテレビ信号を提供する方法が開示される。例示的な実施形態によれば、本方法は、複数の信号受信要素から複数の帯域のテレビ信号を受信し、テレビ信号の前記帯域を複数の中間周波数に変換し、複数の復号器からテレビ信号の前記帯域についての要求コマンドを受信するステップを有しており、ここで、各復号器は、別個の時間スロットの間に、前記要求コマンドの一つを前記装置に送信する。
【0006】
本発明のもう一つの側面によれば、テレビ信号受信機が開示される。例示的な実施形態によれば、本テレビ信号受信機は、複数の帯域のテレビ信号を受信するよう動作する複数の入力を有する。複数の同調器がそれらの入力に接続されている。各同調器は、テレビ信号の前記帯域を複数の中間周波数に変換するよう動作する。制御器は、複数の復号器からテレビ信号の前記帯域についての要求コマンドを受信するよう動作する。ここで、各復号器は、別個の時間スロットの間に、前記要求コマンドの一つを本テレビ信号受信機に送信する。
【0007】
付属の図面とともに本発明の以下の諸実施形態の記述を参照することによって、上述したことを含む本発明のさまざまな特徴および効果ならびにそれを達成する方法がより明白になり、本発明がよりよく理解されるであろう。
ここに記載される例示は本発明の好ましい諸実施形態を解説するものであり、そのような例示はいかなる仕方であれ本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明を実装するための例示的な実施形態を示す図である。
【図2】本発明の例示的な実施形態に基づく、図1のFTMのさらなる詳細を示すブロック図である。
【図3】本発明の例示的な実施形態に基づく、「0」および「1」のデータビットを示す図である。
【図4】本発明の例示的な実施形態に基づく、データフレーム送信方式を示す図である。
【図5】本発明の例示的な実施形態に基づく、データフレーム送信方式を使ったデータ通信の例を示す図である。
【図6】本発明の例示的な実施形態に基づくデータフレーム形式を示す図である。
【図7】本発明の例示的な実施形態に基づく、アドレス・フィールド形式を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
ここで図面、特に図1を参照すると、本発明を実装するための例示的な環境100の図が示されている。図1の環境100は、信号受信要素10のような信号受信手段の複数と、FTM20のような周波数変換手段と、信号分割器40のような信号分割手段の複数と、IRD60のような信号受信・復号手段の複数とを有する。ここに記載される例示的な実施形態によれば、環境100の上記の諸要素は同軸ケーブルのような伝送媒体を介して互いに動作的に結合されている。ただし、本発明によれば他の種類の伝送媒体を使ってもよい。環境100はたとえば、所与の家庭および/またはビジネス居所内での信号通信ネットワークを表しうる。
【0010】
信号受信要素10はそれぞれオーディオ、ビデオおよび/またはデータ信号(たとえばテレビ信号など)を含む信号を、衛星放送システムおよび/またはその他の種類の信号放送システムのような一つまたは複数の源から受信するよう動作する。ある実施例によれば、信号受信要素10は衛星受信円板のようなアンテナとして実施されるが、いかなる種類の信号受信要素として実施されてもよい。
【0011】
FTM20は、オーディオ、ビデオおよび/またはデータ信号(たとえばテレビ信号など)を含む信号を、信号受信要素10から受信し、受信された信号を信号同調および周波数変換機能を含む機能を使って処理するよう動作する。生成された対応する出力信号はIRD60に同軸ケーブルおよび信号分割器40を介して与えられる。ある実施例によれば、FTM20は単一の居所内で12個までのIRD60と通信しうる。しかしながら、例および説明の目的のため、図1は、単純な二路信号分割器40を使って8個のIRD60に接続されたFTM20を示している。FTM20に関するさらなる例示的な詳細およびそのIRD60と通信する能力については後述する。
【0012】
信号分割器40はそれぞれ、信号分割および/または中継機能を実行するよう動作する。ある実施例によれば、信号分割器40はそれぞれ、二路信号分割機能を実行してFTM20とIRD60との間の信号通信を容易にするよう動作する。
【0013】
IRD60はそれぞれ、信号同調、復調および復号機能を含むさまざまな信号受信および処理機能を実行するよう動作する。ある実施例によれば、各IRD60はFTM20から信号分割器40を介して与えられた信号を同調、復調および復号し、受信信号に対応する聴覚および/または視覚出力を可能にするよう動作する。後述するように、そのような信号がFTM20からIRD60に与えられるのは、IRD60からの要求コマンドに応じてであり、そのような要求コマンドはそれぞれ、テレビ信号の所望の帯域の要求を表しうる。衛星放送システムでは、各要求コマンドはたとえば、所望の衛星および/または所望のトランスポンダを示しうる。要求コマンドがIRD60によって生成されるのは、(たとえばリモコンデバイスなどを介した)ユーザー入力に応じてでありうる。
【0014】
ある実施例によれば、各IRD60は、標準精細度(SD)および/または高精細度(HD)表示装置のような付随するオーディオおよび/またはビデオ出力装置をも含む。そのような表示装置は一体でも一体でなくてもよい。したがって、各IRD60は、テレビ、コンピュータまたはモニタのような、一体化された表示装置を含む装置として実施されてもよいし、あるいはセットトップボックス、ビデオカセットレコーダー(VCR)、デジタル多用途ディスク(DVD)プレーヤー、ビデオゲームボックス、パーソナルビデオレコーダー(PVR)、コンピュータまたはその他の装置のような、一体化された表示装置を含まなくてもよい装置として実施されてもよい。
【0015】
図2を参照すると、本発明のある実施形態に基づく図1のFTM20のさらなる詳細を与えるブロック図が示されている。図2のFTMは、クロスオーバー・スイッチ22のような切り換え手段と、同調器24のような同調手段の複数と、周波数上方変換器(UC: up converter)26のような周波数変換手段の複数と、可変利得増幅器28のような増幅手段の複数と、信号合成器30のような信号合成手段と、トランシーバー32のようなトランシーバー手段と、コントローラ34のような制御手段34とを有する。FTM20の以上の要素は、集積回路(IC)を使って実装されてもよいし、一つまたは複数の要素が所与のICに含められてもよい。さらに、ある所与の要素が二つ以上のICに含められてもよい。記述の明快のため、FMT20に付随するある種の通常の要素、たとえばある種の制御信号、電力信号および/またはその他の要素は図2に示されないこともある。
【0016】
クロスオーバー・スイッチ22は、信号受信要素10から複数の入力信号を受信するよう動作する。ある実施例によれば、そのような入力信号は無線周波(RF)テレビ信号のさまざまな帯域を表す。衛星放送システムでは、そのような入力信号はたとえばL帯域信号を表すことができ、クロスオーバー・スイッチ22は該システム内で使用される信号偏波それぞれについての入力を含みうる。また、ある実施例によれば、クロスオーバー・スイッチ22はRF信号を、その入力から、特定の指定された同調器24に、コントローラ34からの制御信号に応じて選択的に渡す。
【0017】
同調器24はそれぞれ、コントローラ34からの制御信号に応じて信号同調機能を実行するよう動作する。ある実施例によれば、各同調器24はクロスオーバー・スイッチ22からRF信号を受信し、信号同調機能を実行する。それは、該RF信号をフィルタ処理および周波数下方変換(すなわち、単一段または多段の下方変換)し、それにより中間周波(IF)信号を生成することによる。RF信号およびIF信号はオーディオ、ビデオおよび/またはデータのコンテンツを含んでいてもよく(たとえばテレビ信号など)、アナログ信号規格(たとえばNTSC、PAL、SECAMなど)および/またはデジタル信号規格(たとえばATSC、QAM、QPSKなど)のものであってもよい。FTM20における同調器24の数は設計上の選択の問題である。
【0018】
周波数上方変換器(UC)26はそれぞれ周波数変換(translation)機能を実行するよう動作しうる。ある実施例によれば、各周波数上方変換器(UC)26は、混合要素と局部発振器(図示せず)とを含んでおり、コントローラ34からの制御信号に応じて、対応する同調器24から与えられるIF信号を指定された周波数帯域に周波数上方変換し、それにより周波数上方変換信号を生成する。
【0019】
可変利得増幅器28はそれぞれ、信号増幅機能を実行するよう動作する。ある実施例によれば、各可変利得増幅器28は、対応する周波数上方変換器(UC)26からの周波数変換された信号出力を増幅し、それにより増幅信号を生成するよう動作する。図2に明示的に示されてはいないが、各可変利得増幅器28の利得は、コントローラ34からの制御信号を介して制御されうる。
【0020】
信号合成器30は、信号合成(すなわち加算)機能を実行するよう動作する。ある実施例によれば、信号合成器30は、諸可変利得増幅器28から与えられる諸増幅信号を合成して、結果として得られる諸信号を、同軸ケーブルのような伝送媒体上に出力する。信号分割器40を介して一つまたは複数のIRD60に伝送するためである。
【0021】
トランシーバー32は、FTM20とIRD60との間の通信を可能にするよう動作する。ある実施例によれば、トランシーバー32は諸IRD60からのさまざまな信号を受信し、それらの信号をコントローラ34に中継する。逆に、トランシーバー32はコントローラ34から信号を受信して、それらの信号を一つまたは複数のIRD60に信号分割器40を介して中継する。トランシーバー32は、たとえば、一つまたは複数の所定の周波数帯域の信号を受信および送信するよう動作しうる。
【0022】
コントローラ34は、さまざまな制御機能を実行するよう動作する。ある実施例によれば、コントローラ34は、IRD60から、テレビ信号の所望の帯域の要求コマンドを受信する。後述するように、各IRD60はその要求コマンドをFTM20に、コントローラ34によって割り当てられる別個の時間スロットの間に送信しうる。衛星放送システムでは、要求コマンドは所望の衛星および/または所望のトランスポンダを示しうる。それはテレビ信号の所望の帯域を与える。コントローラ34は、テレビ信号の所望の帯域に対応する信号が、要求コマンドに応じて対応するIRD60に送信されることを可能にする。
【0023】
ある実施例によれば、コントローラ34はさまざまな制御信号をクロスオーバー・スイッチ22、同調器24および周波数上方変換器(UC)26に与え、それにより、テレビ信号の所望の帯域に対応する信号が同軸ケーブルのような伝送媒体を介してIRD60に伝送されるようになる。コントローラ34はまた、要求コマンドに応じて、テレビ信号の所望の帯域に対応する信号をIRD60に送信するために使われる周波数帯域(たとえば同軸ケーブル上での)を示す確認応答をもIRD60に与える。このようにして、コントローラ34は、すべてのIRD60が所望の信号を同時に受信できるよう、伝送媒体(たとえば同軸ケーブルなど)の利用可能な周波数スペクトルを割り当てることができるのである。
【0024】
以下では、本発明のある例示的な実施形態に基づく、FTM20とIRD60との間の通信のためのプロトコルについて述べる。
【0025】
ある実施例によれば、物理層はデジタル衛星設備制御(DiSEqC: digital satellite equipment control)2.0バス仕様に基づくものでありうるが、好ましくは22kHzではなく1ないし8MHzで変調される。実際に使用される厳密な変調周波数は設計上の選択の問題であり、信号分割器40を通じた典型的な減衰など、いくつかの因子に基づいて選べる。例および説明の目的のため、本稿の残りは1MHzの変調周波数を使う。
【0026】
ある実施例によれば、FTM20は、意図しない13/18ボルト信号レベルとの適合性を保持するために、IRD60からの20ボルトまでの電圧を許容する必要がある。名目上の1MHzの信号振幅は、ピークツーピークで650mV(±250mV)である。公差および同軸ケーブルにおける電圧降下を受け容れるため、FTM20は下は約300mV(±100mV)までの振幅に反応すべきである。同軸ケーブルネットワークに加えられるべき最大推奨振幅はピークツーピークで1ボルトである。
【0027】
ある実施例によれば、FTM20およびIRD60は同軸ケーブルネットワークに「ノイズ」または偽(spurious)信号を注入することは避けるべきである。しかしながら、電力信号とデータ信号の両方を伝えるケーブル上では何らかの擾乱が生じうることが認識される。したがって、FTM20のトランシーバー32は、(周期的でも「スパイク」でも)ピークツーピークで100mV未満の振幅の信号(いかなる周波数でも)の検出にはつながらないようにするべきである。1MHz信号の伝送を容易にするため、同軸ケーブルネットワークの遠方端における全負荷キャパシタンスは250nF(0.25mF)を超えないことが好ましい。FTM20およびIRD60は、同軸ケーブルネットワークに、典型的には100nFを超える負荷をかけるべきではなく、それよりずっと低い値が好ましい。
【0028】
ある実施例によれば、物理層は、名目1MHz(±10%)の搬送波上で、3分の1ビット・パルス幅変調(PWM)符号化信号について、10μs(±1μs)のベースバンド・タイミングを使用する。図3は、本発明のある実施例に基づく、「0」および「1」のデータビットを示す図である。具体的には、図3は、伝送される各ビットについて1MHzの時間エンベロープを示している。名目上、「0」のデータビットについて20サイクル、「1」のデータビットについて10サイクルである。
【0029】
ある実施例によれば、FTM20とIRD60との間の通信は、時分割多重アクセス(TDMA)方式を使用する。ここで、FTM20がローカルなネットワーク・クロックのはたらきをする。図4は、本発明のある実施例に基づくデータフレーム伝送方式を示す図である。図4に示されるように、FTM20はTDMAシーケンスの開始にあたって、同期(「sync」)フレームを送信する。それに続いて、新たなIRD60が当該ネットワークに加わるためのブロードキャスト競合期間がある。競合期間の間、IRD60は別の伝送の存在を検出しなければならない。そうしてはじめてIRD60はFTM20に対し、スロット割り当て要求フレームを送信できる。FTM20は、図4に示されるように、競合期間に続くスロット割り当て期間において、ネットワークに加わる新たなIRD60に応答する。最短の競合期間は、該期間の間に送信することを選択するIRD60がない場合、好ましくは2ビット分の時間と等価である(たとえば、60μs)。
【0030】
ある実施例によれば、競合解決は、IEEE802.3の節4.2.3.2.5で定義されているような打ち切り二進指数手控え法(a truncated binary exponential back-off method)に基づく。この方法によれば、IRD60はたとえば、0ないし12試行の手控え窓内のある数をランダムに選択する。この乱数は、IRD60が送信するまでに延期しなければならない競合送信機会の数を示す。一例として、手控え窓が0ないし12のIRD60がランダムに数5を選択する場合を考える。この場合、IRD60は合計5回の競合送信機会を延期しなければならない。
【0031】
図4に示されるように、IRD60は競合送信ののち、FTM20からのスロット割り当てを待つ。ひとたびスロット割り当てが受信されたら、競合解決は完了である。ある実施例によれば、IRD60は、FTM20からスロット割り当てを受信することがないまま2スロット割り当て期間が経過した場合に、あるいはスロット割り当て期間がフレーム衝突を示す衝突検出フレームを含んでいる場合に、前記競合送信は失われたと判定する。この場合、IRD60はその手控え窓内のある数をランダムに選択し、上記の延期プロセスを繰り返す。この再試行プロセスは、再試行の最大数(たとえば12)に達するまで続く。再試行の最大数に達した時点には、ペイロードデータ単位(PDU: payload data unit)は破棄されなければならない。
【0032】
ある実施例によれば、ネットワークに加わった有効なIRD60は、その割り当てられたスロットにおいて、FTM20に上り送信をしなければならない。するとFTM20はそのIRT60に次の下りスロットにおいて応答する。これも図4に示されている。このようにして、各IRD60が別個の時間スロットの間に信号を送信するので、同軸ケーブルネットワーク上のフレーム衝突は回避できる。すべてのIRD60がネットワーク上のすべての伝送を聴いていることが好ましい。ただし、IRD60がある別のIRD60からの伝送を聞けない場合には、一般に、そのIRD60へのFTM20の応答を検出する。FTM20は好ましくは、IRD60の送信フレームに1μs以内に応答する。すると次の有効なIRD60が、前のIRD60へのFTM20の応答の終わりから1μs以内にフレーム送信を開始する。FTM20およびIRD60によって送信されるデータフレームは可変長で、最大フレーム長は70バイトだが、平均的なフレーム長はずっと短くてよい(たとえば16バイト)。
【0033】
ある実施例によれば、スロットを割り当てられたIRD60は、そのスロットの間に必ずフレームを送信しなければならない。IRD60が送るべきペイロードデータがない場合には、非動作(NOP)フレームを送信する。FTM20は必ずIRD60に応答を送信する。FTM20は、要求にすぐ応答できない場合には待ち要求フレームを送信し、あるいは応答が必要でない場合にはNOPフレームを送信する。図5は、本発明のある実施例に基づくデータフレーム送信方式を使ったデータ通信の例を示す図である。具体的には、図5は、3つの有効なIRD60を示している。ここで、上りの時間スロット2に割り当てられたIRD60がFTM20にコマンドを送っている。この例では、FTM20は10μs以内に応答できないので、待ち要求フレームを送っている。全カルーセルの完了までに、FTM20は要求された機能を完了しており、下りの時間スロット2において適切なIRD60に確認応答フレームを送る。FTM20はネットワークのためのルーター/リピーターとしてもはたらきうる。
【0034】
ある実施例によれば、FTM20とIRD60との間で通信されうるコマンドにはさまざまな異なる種類がある。下記に、本発明の原理に従って使用されうるコマンドの例示的な種類のいくつかを示す。これらのコマンドはあくまでも例であり、他の種類のデータフレームも使用されうる。下記のコマンドはたとえば、固定長メッセージとして実装できる。
【0035】
1.スロット割り当て要求:このコマンドは、IRD60によって、FTM20に時間スロット割り当てを要求するために使われる。
2.スロット割り当て応答:このコマンドは、FTM20によって、スロット割り当て要求に応答してIRD60に時間スロットを割り当てるために使われる。前述したように、各IRD60は自分専用の上りおよび下り時間スロットを有しており(図4および図5参照)、そのスロットにおいてFTM20へのコマンドを送信し、FTM20からのコマンドを受信する。
3.確認(Ack)応答:このコマンドは、FTM20によって、コマンドの受領を確認するために使われる。
4.衝突検出応答:このコマンドは、FTM20によって、ネットワーク上で衝突が検出されたことを示すために使われる。
5.非確認(Nack)応答:このコマンドは、FTM20によって、要求が識別/確認されなかったことを示すために使われる。
6.非動作(NOP):このコマンドは、FTM20およびIRD60によって、応答が必要でないことを示すために使われる。
7.待ち要求応答:このコマンドは、FTM20によって、すぐ要求に応答できないことを示すために使われる。
8.チャネル要求:このコマンドは、IRD60によって、特定の周波数帯域での信号(たとえばテレビ信号など)を要求するために使われる。衛星放送システムでは、要求される信号はたとえば、特定の衛星および/またはトランスポンダに対応するものでありうる。このコマンドに対するFTM20の確認応答は、その要求を行っている特定のIRD60に要求された信号を与えるために使われる周波数帯域(たとえば同軸ケーブル上での)を示す。
【0036】
ある実施例によれば、データリンク層フレームは、IEEE802.3フレームに従ってモデル化される。図6は、本発明のある実施例に基づくデータフレーム形式を示す図である。図6に示されるように、個々のデータフレームは7つのフィールドを含む。すなわち:プリアンブル・フィールド、開始フレーム区切り(SFD: start frame delimiter)フィールド、宛先アドレス・フィールド、源アドレス・フィールド、長さ/型フィールド、データ・フィールドおよびフレーム検査シーケンス・フィールドである。これら7つのフィールドのうち、データ・フィールド以外のすべてが固定サイズであり、データ・フィールドは設計上の選択の問題として選択される最小値と最大値との間の整数個のオクテットを含みうる。最小および最大のフレーム・サイズ限界が指すのはたとえば、データフレームのうち、宛先アドレス・フィールドからフレーム検査シーケンス・フィールドまで(両端含む)の部分でありうる。図6に示されるように、データフレームのオクテットは上から下に送信され、各オクテットのビットは左から右に送信される。
【0037】
ある実施例によれば、図6に示されるデータフレームの上記のフィールドは次のように定義される。
【0038】
1.プリアンブル・フィールド:これは、FTM20および諸IRD60の間でネットワーク上の同期を確立するために使われる「10101010」のシーケンスをもつ1オクテットのフィールドである。
2.SFDフィールド:これはプリアンブル・フィールドの直後の1オクテットのフィールドであり、フレームの開始を示す「10101011」のシーケンスをもつ。
3.宛先アドレス・フィールド:これはフレームが意図されている宛先のアドレスを指定する1オクテットのフィールドである。後述するように、宛先アドレス・フィールドは個別のアドレスを含んでいてもよいし、マルチキャスト(ブロードキャストも含む)アドレスを含んでいてもよい。
4.源アドレス・フィールド:フレームの起点となったアドレスを指定する1オクテットのフィールドである。
【0039】
ここで、本発明のある実施例に基づく、宛先アドレス・フィールドおよび源アドレス・フィールドのさらなる詳細を与えておく。図7は、本発明のある実施例に基づくアドレス・フィールド形式を示す図である。
【0040】
宛先アドレス・フィールドおよび源アドレス・フィールドはそれぞれ8ビットの長さで、各アドレス・フィールドの各オクテットは最下位ビット(LSB)が先に伝送されうる。最初のビット(すなわちLSB)は、宛先アドレス・フィールドにおいては、その宛先アドレスが個別アドレスであるかグループアドレスであるかを識別するためのアドレス種別指定ビットとして使われる。個別アドレスとは、ネットワーク上の特定の局(すなわち、FTM20、IRD60など)に関連付けられたアドレスである。逆に、グループアドレスは、ネットワーク上の一つまたは複数の局に関連付けられた多宛先アドレスである。ある実施例によれば、マルチキャストアドレスおよびブロードキャストアドレスを含む少なくとも2つの異なる型のグループアドレスがある。マルチキャストアドレスとは、より上位レベルの規約によって論理的に関係する局の集まりと関連付けられているアドレスである。ブロードキャストアドレスとは、常にネットワーク上のすべての局の集合を表す特別な所定のマルチキャストアドレスである。
【0041】
宛先アドレス・フィールドにおいて、最初のビットが「0」であれば、これは個別アドレスを示す。最初のビットが「1」であれば、これはその宛先アドレス・フィールドがグループアドレスを含んでいることを示す。該グループアドレスが同定するのは、ネットワークに接続されている局のどれでもないこともあれば、一つまたは複数であることもあれば、全部であることもある。源アドレス・フィールドでは、最初のビット(すなわちLSB)はリザーブで、「0」に設定される。宛先アドレス・フィールドおよび源アドレス・フィールドの第二ビットは、ローカルに管理されているアドレスとグローバルに管理されているアドレスとを区別するために使われる。グローバルに管理されている(すなわちU、universal[普遍的])アドレスについては、第二ビットは「0」に設定される。アドレスが論理的に割り当てられる場合は、第二ビットは「1」に設定される。ブロードキャストアドレスについては、第二ビットは「1」に設定されることを注意しておく。FTM20とIRD60との間の通信のためには、第二ビットは「1」に設定される。ある実施例によれば、宛先アドレス・フィールドにおける全部「1」は、ブロードキャストアドレスであると予約される。このグループは、ネットワークにアクティブに接続されたすべての局を含み、ネットワーク上のすべてのアクティブな局にブロードキャストするために使われる。すべての局は、ブロードキャストアドレスを認識することができる。ただし、局がブロードキャストアドレスを生成できることは必須ではない。
【0042】
宛先アドレス・フィールドと源アドレス・フィールドの残りの6ビットは、特定のIRD60に割り当てられた送信スロットを表すために使われる。FTM20はネットワーク・ルーター/リピーターであり、値「0x0」を割り当てられる。値1ないし12は、各IRD60内のサービスプロバイダーのためにリザーブされている。サービスプロバイダーは、すべてのIRD60からのモデム情報を総合する(aggregate)ことを選びうる。各IRD60はこの情報(たとえば、ペイパービューの課金情報)をある単一のIRD60に送信できる。そのIRD60は、このモデム情報を自分のモデム情報と組み合わせ、次いでその総合された情報を電話線のような通信リンクを介してサービスプロバイダーに送信する。この機能は、データリンク層において、アドレス・フィールド内にモデム総合ビットを割り当て、6ビット枠のアドレス・フィールドを5ビットに減らすことによって、実装できる。この機能はまた、アプリケーション層などネットワーク構成のより高い層において、実装されることもできる。そのようなより高い層は、データリンク層においてはペイロードデータとして表現される。この設計はサービスプロバイダーの必要性に基づいて変形することもできる。
【0043】
図6の参照に戻って、データフレームの残りのフィールドについてこれから述べる。
【0044】
5.長さ/型フィールド:この1オクテットのフィールドは、その数値的な値に依存して二つの意味のうちのどちらかを取る。数値を評価するにあたっては、最初のオクテットがこのフィールドの最上位オクテットである。このフィールドの値が値63以下であれば、長さ/型フィールドは、当該フレームの次のデータ・フィールドに含まれるデータオクテットの数を示す(すなわち、長さという解釈)。このフィールドの値が十進64(すなわち十六進で0020)以上であれば、この長さ/型フィールドは当該プロトコルの性質を示す(すなわち、型という解釈)。このフィールドの長さの解釈および型の解釈は互いに排反である。この長さ/型フィールドは、最上位のオクテットを先にして送信および受信される。
6.データ・フィールド:このフィールドは、「n」個のオクテットのシーケンスを含む(nは整数)。最大63バイトまでのオクテット値の任意のシーケンスがデータ・フィールドに現れうるという意味で、完全なデータ透明性が与えられる。
7.FCSフィールド:このフィールドは巡回冗長検査(CRC)を提供する。これは、このFCSフィールドについてのCRC値を生成する送信および受信アルゴリズムによって使われる。FCSフィールドは2オクテット(すなわち16ビット)のCRC値を含んでいる。この値は、プリアンブル・フィールド、SFDフィールド、FCSフィールドおよびあらゆる拡張を除いた、データフレームの全フィールドの内容の関数として計算される。エンコードは次の生成多項式によって定義される。
G(x)=x16+x14+x13+x12+x10+x8+x6+x4+x2+x+1
=(x3+x2+1)(x6+x5+x2+x+1)(x7+x3+1)
数学的には、所与のデータフレームに対応するCRC値は次の手続きによって定義される:
a.フレームの最初の16ビットが補数にされる(complemented)。
b.次いで、フレームのnビットがn−1次の多項式M(x)の係数であると考えられる。(宛先アドレス・フィールドの最初のビットがx(n-1)の項に対応し、データ・フィールドの最後のビットがx0の項に対応する。)
c.M(x)にx16をかけ、G(x)で割る。それにより15次以下の余りR(x)が生じる。
d.R(x)の係数が16ビットシーケンスと考えられる。
e.前記ビットシーケンスを補数にし、その結果がCRCである。
CRC値の16ビットをフレーム検査シーケンス・フィールドに置くのは、x15の項が最初のオクテットの左端のビットで、x0の項が最終オクテットの右端のビットであるように行われる。(これにより、CRCの諸ビットはx15、x14、…、x1、x0の順に送信される。)
また、ある実施例によれば、無効なデータフレームが、次の条件のうち少なくとも一つを満たすデータフレームとして定義される:
(i)フレーム長が長さ/型フィールドで指定されている長さの値と一貫していない。長さ/型フィールドが先述した長さ/型フィールドによって定義される型の値を含んでいる場合には、フレーム長はこのフィールドと一貫していると見なされ、この基準で無効フレームと考えられるべきではない。
(ii)フレーム長が整数個のオクテットの長さでない。
(iii)はいってくるフレーム(FCSフィールド自身を除く)のビットが、受信されたCRC値と同一のCRC値を生成しない。
【0045】
先述したように、本発明はFTMと居所内のIRDとの間の信号通信を可能にするアーキテクチャおよびプロトコルを提供する。本発明は好ましい設計をもつものとして記載されてきたが、本発明はこの開示の精神および範囲内においてさらに修正することもできる。したがって、本出願はその一般的な原理を使った本発明のいかなる変形、仕様または適応をもカバーすることが意図されている。さらに、本出願は、本発明が属する技術分野における既知または慣用の範囲内にはいる、および、付属の請求項の限定の範囲内にはいる、本開示からのそのような乖離をカバーすることが意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の帯域のテレビ信号を受信するための複数の入力と;
前記諸帯域のテレビ信号を複数の中間周波数に変換するための複数の同調手段と;
前記諸帯域のテレビ信号の諸要求コマンドを複数の復号手段から受信するための制御手段とを有する装置であって、前記復号手段のそれぞれは前記要求コマンドの一つを別個の時間スロットの間に当該装置に送信する、装置。
【請求項2】
前記要求コマンドに応じて前記諸帯域のテレビ信号に対応する信号を前記復号手段に送信する、請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記要求コマンドを前記復号手段から受信して、前記諸帯域のテレビ信号に対応する前記信号を前記復号手段に送信するのが同軸ケーブルを介してである、請求項2記載の装置。
【請求項4】
前記要求コマンドがそれぞれ所望の衛星および所望のトランスポンダのうち少なくとも一方を指示する、請求項1記載の装置。
【請求項5】
前記制御手段が、前記復号手段のそれぞれに独自の前記別個の時間スロットを割り当てる、請求項1記載の装置。
【請求項6】
当該装置が、前記要求コマンドに応じて、前記復号手段に確認信号を送信し、前記確認信号は、前記諸帯域のテレビ信号に対応する信号を前記復号手段に送信するために当該装置によって使用される周波数帯域を指示する、請求項1記載の装置。
【請求項7】
装置を介してテレビ信号を提供する方法であって:
複数の帯域のテレビ信号を複数の信号受信要素から受信する段階と;
前記諸帯域のテレビ信号を複数の中間周波数に変換する段階と;
前記諸帯域のテレビ信号の諸要求コマンドを複数の復号器から受信する段階とを有しており、前記復号器のそれぞれは前記要求コマンドの一つを別個の時間スロットの間に前記装置に送信する、方法。
【請求項8】
前記要求コマンドに応じて前記諸帯域のテレビ信号に対応する信号を前記復号器に送信する段階をさらに有する、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記要求コマンドを前記復号器から受信して、前記諸帯域のテレビ信号に対応する前記信号を前記復号器に送信するのが同軸ケーブルを介してであることをさらに含む、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記要求コマンドがそれぞれ所望の衛星および所望のトランスポンダのうち少なくとも一方を指示する、請求項7記載の方法。
【請求項11】
前記装置が、前記復号器のそれぞれに独自の前記別個の時間スロットを割り当てる、請求項7記載の方法。
【請求項12】
前記装置が、前記要求コマンドに応じて前記復号器に確認信号を送信し、前記確認信号は、前記諸帯域のテレビ信号に対応する信号を前記復号器に送信するために前記装置によって使用される周波数帯域を指示する、請求項7記載の方法。
【請求項13】
複数の帯域のテレビ信号を受信するよう動作する複数の入力と;
前記諸入力に接続され、前記諸帯域のテレビ信号を複数の中間周波数に変換するよう動作する複数の同調器と;
前記諸帯域のテレビ信号の諸要求コマンドを複数の復号器から受信するよう動作するコントローラとを有するテレビ信号受信機であって、前記復号器のそれぞれは前記要求コマンドの一つを別個の時間スロットの間に当該テレビ信号受信機に送信する、テレビ信号受信機。
【請求項14】
前記要求コマンドに応じて前記諸帯域のテレビ信号に対応する信号を前記復号器に送信する、請求項13記載のテレビ信号受信機。
【請求項15】
前記要求コマンドを前記復号器から受信して、前記諸帯域のテレビ信号に対応する前記信号を前記復号器に送信するのが同軸ケーブルを介してである、請求項14記載のテレビ信号受信機。
【請求項16】
前記要求コマンドがそれぞれ所望の衛星および所望のトランスポンダのうち少なくとも一方を指示する、請求項13記載のテレビ信号受信機。
【請求項17】
前記コントローラが、前記復号器のそれぞれに独自の前記別個の時間スロットを割り当てる、請求項13記載のテレビ信号受信機。
【請求項18】
当該テレビ信号受信機が、前記要求コマンドに応じて前記復号器に確認信号を送信し、前記確認信号は、前記諸帯域のテレビ信号に対応する信号を前記復号器に送信するために前記装置によって使用される周波数帯域を指示する、請求項13記載のテレビ信号受信機。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−9425(P2013−9425A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−206629(P2012−206629)
【出願日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【分割の表示】特願2007−545708(P2007−545708)の分割
【原出願日】平成17年12月13日(2005.12.13)
【出願人】(501263810)トムソン ライセンシング (2,848)
【氏名又は名称原語表記】Thomson Licensing 
【住所又は居所原語表記】1−5, rue Jeanne d’Arc, 92130 ISSY LES MOULINEAUX, France
【Fターム(参考)】