説明

呼制御方法

【課題】呼処理のメインフローに影響を与えることなく負荷集中等している後段装置への信号を抑制すること。
【解決手段】発呼信号に対する応答信号を着信側から受信して、呼処理で使用する待ち行列とは異なる集計用のキュー13に保持し、拒否番号リストを生成等する処理を呼処理とは別に実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、呼を制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
現在では、呼処理サーバや転送装置からなる転送網や、加入者端末やホームゲートウェイからなるアクセス網で構成されたIP通信ネットワークシステムにより、既存の電話交換機網で提供している電話サービスと同等のサービスを提供することができる。
【0003】
呼処理サーバの種類は用途に応じて様々であり、ある収容範囲内の加入者に関する情報を用いてサービスを行う加入者系の呼処理サーバ以外に、複数の加入者系呼処理サーバに対して共通的な全国型のサービスを提供するAS(Application Server)が存在する。ASの代表的なサービス例としては、フリーダイヤルなどの番号変換系のサービスや、着信ユーザの状態に応じて規定メッセージを流すガイダンスサービスがある。
【0004】
ここで、サービス提供までの処理動作について図7を参照しながら説明する。アクセス網10aの加入者端末1aに論理的な電話番号が入力されて発呼(例えば、SIP発呼)されると、その発呼信号(例えば、SIPのinvite信号)は転送装置3aで分岐され、加入者系の呼処理サーバ5aに送信されて、加入者情報を用いた所定処理が実行される。
【0005】
そして、宛先が論理番号である場合にはAS100に送信され、着信先となる物理的な電話番号に変換された後に、送信元の加入者系呼処理サーバ5aに返信、又は、着信先となる物理番号を収容している加入者系呼処理サーバ5bに送信される。その際、IP通信ネットワークの構成や番号帯によっては、中継系の呼処理サーバ5cを経由して着信先の加入者系呼処理サーバ5bに送信される。
【0006】
その後、発信側の加入者端末1aと着信側の加入者端末1bとの間で上述経路を経由して許容可能な条件が交換され(SIPネゴシエーション)、確立した条件に基づいてメディア通信が行われる。ここでいうメディア通信は、一般的に通話である。
【0007】
なお、メディア通信に用いられる信号(例えば、IP通信ネットワークではパケット)は、呼処理サーバ5やAS100を経由することなく、転送装置3を経由して送受信される。その他、ガイダンス通信のガイダンス音声については、ガイダンスサーバ7を経由して送信される。
【0008】
ここで、このようなASは、全国規模の通話を処理対象としていることから、複数の加入者系呼処理サーバから膨大な信号が同時に送信されるため、処理頻度は極めて高い。
【0009】
また、高頻度の呼処理を途切れることなく継続して提供可能にするよう高可用性が求められていることから、故障発生時にはACT(現用系)からSBY(待機系)に運用系を切替えてサービスを継続するACT-SBYの冗長化構成が採用されている。
【0010】
具体的には、高可用性・連続性・移植性を定めたSAF(Service Availability Forum)の仕様に準拠したクラスタ管理技術や、CKPT(チェックポイント)と呼ばれる機能を備え、利用することができる(図8参照)。
【0011】
CKPT機能とは、再起動やフェールオーバーによりプロセスを回復する際、呼情報をCKPTのセクション領域で管理しているデータを用いて回復し、故障前の状態から再開して故障のインパクトを最小限にする技術である。プログラム上は、CKPTプロセスを走らせることにより、その処理が実行されてその機能が実現される。
【0012】
CKPTでの管理データ領域の最大サイズはセクション数×セクションサイズであり、そのサイズ内であれば、CKPT機能の利用プログラムにより適宜利用できるようになっている。なお、CKPTプロセスやその管理データ領域については、ACT−SBY間で系間同期されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2002−300272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
このようなASを備えたシステム上で特定の番号に対して呼が集中すると、ASの後ろでその特定番号を集約する加入者系/中継系の呼処理サーバやPBXへの負荷が集中するという課題があった。図9を参照しながらこの課題について以下説明する。
【0015】
加入者端末#1から発信すると、その発呼信号は発信側のアクセス網やコア網を介して発信側の加入者系/中継系の呼処理サーバ#1に送信されて、加入者情報に基づいた処理が実行される。
【0016】
その際、宛先が論理番号である場合にはASに送信され、着信先となる物理番号に変換された後に、着信側の加入者系/中継系の呼処理サーバ#10に送信されて、PBX#1やホームゲートウェイ#1に送信される。
【0017】
PBX#1やホームゲートウェイ#1では、着信可能回線数が予め決まっていることから、例えば代表番号が設定されている場合、それに紐づく加入者番号分以上の呼を受け付けることができない。
【0018】
その場合、加入者端末#2からの新たな呼に対しては空き回線無として、輻輳であることを示すビジー応答がPBX#1から着信側の加入者系/中継系の呼処理サーバ#10に返信される。そのビジー応答により、ASや発信側の加入者系/中継系の呼処理サーバ#2や加入者端末#2は、着信側が応答不能・応答不可の状態であることを判定できる。
【0019】
呼の集中が継続するとビジー応答の量も増加することになる。但し、この例で呼が集中しているのはPBX#1であり、PBX#2では新たな呼を受け付けることができる。
【0020】
一方、ASの処理能力も有限であり、ビジー応答を返しているPBX#1に集中する呼負荷に対して処理能力を割いていると、他の呼処理サーバ#11やPBX#2への呼処理に対して影響が及び、処理不能・処理不可となる可能性がある。従って、ビジー応答を返して応答能力が不足しているPBX(上記の場合、PBX#1)向けの呼を抑止する必要がある。
【0021】
なお、特許文献1によれば、輻輳状態にある着信者番号を加入者端末から受信した際に、着信側に定期的に擬似発信を繰り返して、その擬似発信により接続するまで待ち行列に登録しておく技術が開示されている。しかし、擬似信号を繰り返し送信することから、上述した課題を解決することはできない。
【0022】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、呼処理のメインフローに影響を与えることなく負荷集中等している後段装置への信号を抑制することを第1の課題とし、系間同期されるCKPT機能の管理データ領域の大きさに収まるサイズで規制時に使用するリストデータを生成することを第2の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
請求項1記載の呼制御方法は、呼制御装置で行う呼制御方法において、発呼信号に対する応答信号を着信側から受信して、呼処理で使用する待ち行列とは異なる集計用待ち行列に保持する保持ステップと、前記集計用待ち行列から信号を取り出して、当該信号に対する所定の計測数を着信先毎にカウントしたカウントリストを生成する計測ステップと、前記カウントリストを定期的に複製することにより、当該定期的なタイミングでの計測数を有する複数の集計リストを生成する生成ステップと、2つの集計リストを用いて単位時間あたりの変動計測数を着信先毎に計算する集計ステップと、前記単位時間あたりの変動計測数が所定の閾値を超えた着信先を支障有りの着信先と判定する第1判定ステップと、支障有りと判定された着信先をチェックポイント機能の管理セクション領域に拒否番号リストとして記憶する記憶ステップと、新たに受信した発呼信号の着信先が前記拒否番号リストに含まれているか否かを判定する第2判定ステップと、拒否番号リストに含まれていると判定された発呼信号を規制する規制ステップと、を呼処理とは別に実行することを特徴とする。
【0024】
本発明によれば、発呼信号に対する応答信号を着信側から受信して、呼処理で使用する待ち行列とは異なる集計用待ち行列に保持して拒否番号リストを生成等する処理を呼処理とは別に実行するため、呼処理のメインフローとは独立して判定・規制処理が可能となることから、その呼処理のメインフローに影響を与えることなく負荷集中等している後段装置への信号を抑制することができる。
【0025】
請求項2記載の呼制御方法は、請求項1記載の呼制御方法において、前記集計ステップは、前記変動計測数の計算を前記単位時間よりも短い間隔で繰り返すことを特徴とする。
【0026】
本発明によれば、集計ステップにおける変動計測数の計算を単位時間よりも短い間隔で繰り返すため、判定対象期間が重複することから、2つの判定対象期間にまたがるような呼接続の集中があった場合でも確実に集計して判定対象に含めることができる。
【0027】
請求項3記載の呼制御方法は、請求項1又は2記載の呼制御方法において、前記単位時間あたりの変動計測数を計算した後に、当該計算に用いた2つの集計リストのうち先に生成された集計リストを削除する削除ステップを更に有し、前記第1判定ステップは、削除された集計リストのデータ領域を利用して前記判定の計算を行うことを特徴とする。
【0028】
本発明によれば、変動計測数の計算に用いた2つの集計リストのうち先に生成された集計リストを削除し、その削除された集計リストのデータ領域を利用して第1判定ステップの判定計算を行うため、限定された小さなリソースを有効活用することができ、装置自体の小型化等を実現することができる。
【0029】
請求項4記載の呼制御方法は、請求項1乃至3のいずれかに記載の呼制御方法において、前記集計ステップは、30秒毎に生成された複数の集計リストのうち60秒毎の2つの集計リストに含まれる計測数の差分を計算することにより、前記単位時間あたりの変動計測数を求めることを特徴とする。
【0030】
請求項5記載の呼制御方法は、請求項1乃至3のいずれかに記載の呼制御方法において、前記計測ステップは、前記集計リストが生成される毎に前記カウントリストの計測数をリセットし、前記集計ステップは、30秒毎に生成された複数の集計リストのうち60秒内に生成された2つの集計リストに含まれる計測数を加算することにより、前記単位時間あたりの変動計測数を求めることを特徴とする。
【0031】
請求項6記載の呼制御方法は、請求項1乃至5のいずれかに記載の呼制御方法において、前記記憶ステップは、前記管理セクション領域で記憶可能なサイズに限定された着信先分のみを前記拒否番号リストに記憶することを特徴とする。
【0032】
本発明によれば、チェックポイント機能の管理セクション領域で記憶可能なサイズに限定された着信先分のみを拒否番号リストに記憶するため、系間同期されるCKPT機能の管理データ領域の大きさに収まるサイズで規制時に使用するリストデータを生成することができる。
【0033】
請求項7記載の呼制御方法は、請求項1乃至6のいずれかに記載の呼制御方法において、前記管理セクション領域に記憶されている拒否番号リストを待機系に転送する同期ステップを更に有することを特徴とする。
【0034】
請求項8記載の呼制御方法は、請求項1乃至7のいずれかに記載の呼制御方法において、前記所定の計測数は、信号の同時接続数、輻輳を表すビジー応答数、後段の対向装置からのエラー数のうちいずれか1以上であることを特徴とする。
【0035】
請求項9記載の呼制御方法は、請求項1乃至8のいずれかに記載の呼制御方法において、前記呼制御装置は、論理的な電話番号を物理的な電話番号に変換する番号変換装置であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、呼処理のメインフローに影響を与えることなく負荷集中等している後段装置への信号を抑制することができ、系間同期されるCKPT機能の管理データ領域の大きさに収まるサイズで規制時に使用するリストデータを生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】番号変換装置の機能ブロック構成を示す図である。
【図2】拒否番号リスト生成処理フローを示す図である。
【図3】拒否番号リスト生成処理フローを模式的に示す図である。
【図4】集計・判定処理を模式的に示す図である。
【図5】集計・判定処理に必要とされる処理時間を模式的に示す図である。
【図6】発呼信号の規制処理フローを示す図である。
【図7】IP通信ネットワークシステムの全体構成を示す図である。
【図8】CKPT機能を模式的に示す図である。
【図9】呼の同時接続状態を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明を実施する一実施の形態について図面を用いて説明する。但し、本発明は多くの異なる様態で実施することが可能であり、本実施の形態の記載内容に限定して解釈すべきではない。
【0039】
本実施の形態では、ASの例として背景技術で説明した番号変換装置を用いて説明する。なお、ASは、上述したように全国型のサービスを提供することから、全てのユーザを対象とするため、SSC(Subscriber Session. Control server)等の加入者系呼処理サーバとは異なり、加入者情報(加入者DB)を具備していないことも1つの特徴である。無論、発呼信号や応答信号が送受信される経路上に位置する他の呼処理サーバ(例えば、加入者情報を具備するSSC等)にも適用可能である。
【0040】
<第1の実施の形態>
〔番号変換装置の機能について〕
図1は、本実施の形態に係る番号変換装置の機能ブロック構成を示す構成図である。この番号変換装置100は、ACT(現用系)−SBY(待機系)の冗長化構成を有し、信号送受信部11と、ワーカースレッド部12と、信号保持部13と、信号等カウンタ部14と、信号判定部15と、CKPT機能部16と、系間同期部17とで主に構成されている。
【0041】
信号送受信部11及びワーカースレッド部12は、従来から番号変換装置100に具備されている基本的な処理機能部であり、番号変換装置100で行う呼処理のメインフローを実行する役割を担っている。
【0042】
すなわち、信号送受信部11では、前段装置(例えば、発信元である発信端末や、発信側の呼制御サーバ等)からの発呼信号や、その発呼信号に対する後段装置(例えば、着信側の呼制御サーバやPBX、着信先である着信端末等)からの応答信号を送受信し、ワーカースレッド部12では、その信号送受信部11で受信した信号から当該信号に含まれている様々な情報を取り出して、契約条件が一致するか否かの判定や、加入者情報データベースに登録されているか否かの判定を行って、それら判定結果に基づいて送信信号を生成している。
【0043】
また、ワーカースレッド部12は上記以外にも様々な分析・編集・判定処理(例えば、SIP信号の分析、編集からサービス分析、番号変換処理、系間転送等)を実行している。したがって、このような呼処理のメインフローに影響を与えないように、負荷が集中等している後段装置への信号を抑制する必要がある。
【0044】
そこで、番号変換装置100には、上述したように、信号送受信部11やワーカースレッド部12以外に様々な処理機能部が具備されている。以下、その機能について詳述する。
【0045】
なお、上記呼処理のメインフローにおいて、信号送受信部11は、同一の装置(前段装置と後段装置とが同一)から信号を受信する場合や、図7に示したガイダンスサーバから信号を受信する場合もあることも付言しておく。
【0046】
ワーカースレッド部12は、上記呼処理のメインフローの処理に加えて、発呼信号に対する応答信号を着信側から受信して、その全ての応答信号を、呼処理のメインフローで使用する待ち行列とは異なる信号保持部(集計用待ち行列(以下、キュー))13に積み上げる機能を有している。
【0047】
また、ワーカースレッド部12は、新たに受信した発呼信号の着信先が後述する拒否番号リストに含まれているか否かを判定する機能や、その拒否番号リストに含まれていると判定された発呼信号を着信側に送信する前に所定の規制を実行する機能を有している。
【0048】
信号等カウンタ部14は、積み上げられた信号をキュー13から取得して、その信号の着信物理番号に対して現在接続されている同時接続数や、その信号の着信物理番号に対して後段装置から送信された輻輳を表すビジー応答数や、その信号に対して後段の対向装置から送信された対向装置上のシステムエラー数といった各計測数を着信物理番号毎(着信先毎)にカウントしたカウントリストを生成する機能を有している。
【0049】
また、信号等カウンタ部14は、そのカウントリストを定期的にコピー(複製)することにより、その定期的なタイミングでの上記各計測数を有する複数の集計リスト(スナップショット)を生成する機能を有している。
【0050】
信号判定部15は、信号等カウンタ部14で生成された複数の集計リストのうち2つの集計リストを用いてその差分を計算することにより着信先に対する単位時間あたりの変動計測数(増減数)を求め、その2つの集計リストのうち最初に生成された集計リストを削除した後に、その単位時間あたりの変動計測数が所定の閾値を超えた着信先を支障有りの着信先と判定する機能を有している。
【0051】
CKPT機能部16は、信号判定部15で支障有りと判定された着信先を、自身で管理している管理セクション領域に拒否番号リストとして記憶させる機能を有している。
【0052】
系間同期部17は、CKPT機能部16の管理セクション領域に記憶されている拒否番号リストをSBYに系間同期させる機能を有している。
【0053】
なお、上記説明した各処理機能部は、本発明の特徴を理解し易くするために便宜的に設けたものであり、プログラムでの実装上は、複数の処理機能部で行う各処理を1つの処理機能部で実行することも可能である。例えば、CKPT機能部16と系間同期部17とを1つの機能としてCKPTプロセス上で実行するようにしてもよい。
【0054】
以上、番号変換装置100が具備する各処理機能部の機能について説明した。なお、キュー13は、メモリ等の記憶手段により実現可能であり、それ以外の処理機能部は、CPU等の制御手段により実現可能である。全ての処理機能部の各処理は、その処理を実行するプログラムにより実現される。
【0055】
〔番号変換装置の動作について:拒否番号リストを生成するまでの処理フロー〕
次に、番号変換装置100の動作について説明する。ここでは、図2及び図3を参照しながら、拒否番号リストを生成するまでの処理フローについて説明する。
【0056】
但し、本実施の形態では、ASの例として加入者情報を具備していない番号変換装置100を用いていることから、その加入者情報を利用することなく以下の各処理が実行される。
【0057】
なお、信号送受信部11及びワーカースレッド部12による呼処理のメインフローを、参考までに図2のS1〜S8に記載している。
【0058】
まず、S101において、ワーカースレッド部12により、後段装置から受信した全ての応答信号がキュー13に積み上げられる。
【0059】
このキュー13は、前述したように、呼処理のメインフローで使用する呼処理用のキューとは異なり、独立して取り扱い可能に設けられた集計用のキューである。また、信号をキュー13に積み上げて以下説明する判定・規制処理を、呼処理のメインフローとは独立して別に実行する。これらから、キュー13に蓄積するという最小限に留めた処理により後述するカウント処理等を実行することが可能となる。
【0060】
また、応答信号を全て積み上げることから、いずれの応答信号かを判断する処理を不要とすることが可能となり、呼処理のメインフローへの影響をより確実に低減することができる。
【0061】
なお、呼処理としては、受信した信号を集計用のキュー13に書き込めば終わりであり、その書き込み終了後、(そのキュー13の信号を利用するのではなく)呼処理用のキューに積み上げられた信号を利用して、通常の呼処理が実行される。
【0062】
次に、S102において、信号等カウンタ部14により、キュー13から信号が取り出され、その取り出された信号の着信物理番号に対する現在の同時接続数がカウントされて、その着信物理番号とカウントされた同時接続数とを対応付けたカウントリストが生成される。
【0063】
例えば、図4のCに示すように、カウント時に存在する呼数が同時接続数と同数となる。但し、それまでの判定対象時間(同図のD)に加わった呼が全て新規呼である場合には、諸元負荷量÷3600×後述する判定対象期間(秒)で増加した接続数(同図のA)と同時接続数(同図のB)とからなる数のユニークな呼接続が存在することになる。
【0064】
なお、カウント対象をいずれにするかは指定条件により任意に選択でき、その条件によっては上述したビジー応答数やシステムエラー数を更に含めることも可能である。本処理フローでは、同時接続数が選択されているものとする。
【0065】
キュー13に積み上げられた信号はリアルタイムに増減しており、カウントリストは、同時接続数の増減時、ビジー応答受信時、システムエラー受信時に随時更新され、更新のあった着信物理番号に対して更新時刻が付与されている。また、更新時刻が後述する判定対象期間の開始時刻より古いカウンタはクリア可能である。
【0066】
次に、S103において、信号等カウンタ部14により、随時更新されているカウンタリストが30秒毎にコピーされ、集計・判定する際に利用する一時的な集計リスト(30秒毎のスナップショット)がその都度生成される。
【0067】
本実施の形態では、最大3つの集計リストが生成される。例えば、図4に示すように、ある時刻で集計リストAが生成されると、30秒経過後に集計リストBが生成され、更に30秒経過後に集計リストCが生成される。
【0068】
次に、S104において、信号判定部15により、生成された複数の集計リストのうち、60秒毎の2つの集計リスト(上記例の場合、集計リストAと集計リストC)を用いて、着信物理番号毎に同時接続数の差分を計算することにより、判定対象期間(60秒)での同時接続数の累計数(単位時間あたりの同時接続数の増減数)が求められる。
【0069】
上記例の場合、図4に示す集計リストCが生成された際に、集計リストCで集計されている同時接続数から集計リストAで集計されている同時接続数を引くことにより、判定対象期間#0(単位時間)における同時接続数の増減数を計算する。
【0070】
次に、S105において、信号判定部15により、S104で使用した2つの集計リストのうち、先に生成された集計リスト(上記例の場合、集計リストA)が削除される。
【0071】
以降、S109までの各処理は、その削除された集計リストのデータ領域を用いて計算される。すなわち、本実施の形態では、多くとも3つ分の集計リストに必要なデータ領域のみを利用して集計や判定等を行うので、限られたリソースで判定・規制処理を実現することができる。
【0072】
次に、S106において、信号判定部15により、その単位時間あたりの同時接続数の増減数が呼数判定閾値を超えるか否かが判定される。すなわち、超えると判定された場合、その物理番号に対する呼は集中状態であると判定される。
【0073】
なお、カウント対象がビジー応答数の場合にも同様に呼の集中状態と判定されるが、システムエラー数の場合には、後段の対向装置に故障等の不具合があると判定される。また、カウント対象毎に異なる閾値を利用するようにしてもよい。
【0074】
次に、S107において、集中状態と判定された信号が抽出されて、S108において、CKPT機能部16により、管理セクション領域に拒否番号リストとして書き込まれる。
【0075】
最後に、S109において、系間同期部17により、CKPT機能部16の管理セクション領域に記憶されている拒否番号リストが読み出され、SBYに適時転送することにより系間同期される。
【0076】
以上説明したS104〜S108の各処理は、図4に示したように30秒毎に各判定対象期間を重複させて繰り返し実行される。判定対象期間を重複させて判定処理を行うので、2つの判定対象期間にまたがるような呼接続の集中があった場合でも確実に集計して判定対象に含めることができる。
【0077】
仮に、判定対象期間を重複させない場合(図4に示す判定対象期間を#0→#2とする場合)、その2つの期間にまたがる着信物理番号xxxxの呼の集中状態を正確に把握できないが、それら期間に重複する判定対象期間(図4に示す判定対象期間を#1)で検出することにより、その着信物理番号についての呼の状態を確実かつ正確に検出するようにしている。
【0078】
上記一連の処理フローは、図5に示すように、ワーカースレッド部12が受信キューに蓄積された信号を当該受信キューから刈り取ることで各処理を実現している。
【0079】
ここで、例えば、ワーカースレッド部12のスレッド数を8つとすると、最大8並列で処理を実行することが可能となる。ワーカースレッド部12の処理時間が2msである場合、1秒間に1000ms×8=8000の信号を処理することが可能となる。
【0080】
キュー13の長さを考慮する必要がある時間、つまりキュー13に滞留する場合とは、後処理に使用する領域が他の機能によりロックされる場合であるが、上述したように、リスト集計処理を独立に実行するため、リスト集計時のコピー処理のみと必要とされる。つまり、200us程度<2000/8(ワーカースレッド部12での処理時間/スレッド数)=250usであれば、ほとんど滞留することはない。
【0081】
なお、図3や図4では、理解を容易にするために、増減リストや抽出リストといった集計リスト以外の他のリストを追加的に用いて説明しているが、それら新たなリストを生成するのではなく、2つの集計リストの差分計算結果を一方の集計リストに反映させて当該集計リストを増減リストとみなす等することにより、上述したように必要なリストの総数を最大3つに限定した状態で拒否番号リストを計算するようにしている。
【0082】
〔カウンタリストの保存量について〕
次に、カウンタリストの保存量について説明する。カウンタリストの保存量は、同時接続制限がある場合、同時接続数とカウンタリストが存在する時間での呼量となる。
【0083】
例えば、カウンタリスト数を20000とし、システムの許容呼量を120万BHCA(Busy Hour Call Attempts)とする場合、120万BHCA=1200000/60(コール/分)=20000(コール/分)を保存可能なデータ領域のカウンタリストが必要となる。すなわち、20000+20000=40000のカウンタリストが必要となる。
【0084】
ここで、呼数判定閾値を500(コール/分)とした場合、20000/500=40番号が図2のS107での抽出対象となる。逆に、同時接続数制限によらず、40番号ではなく50番号を抽出対象とした場合には、50×500=25000(コール/分)で25000×60=150万BHCAが許容呼量となる。
【0085】
すなわち、上記抽出対象の40番号、50番号と固定された番号数に限定された着信先分のみ(すなわち、管理セクション領域で記憶可能なサイズに限定された着信先分のみ)を拒否番号リストに記憶してSBY系に転送すればよいため、既存の系間同期ロジックで固定された範囲の系間転送領域の中で転送可能となる。
【0086】
つまり、本実施の形態における許容呼量は、CPU使用率と呼量の関係で決まる緒元呼量ではなく、リソースの保存量としている。SIP信号の場合、接続に至らない場合でも、エラー応答等を返すことから受信バッファを消費する。このリソース量が許容呼量となる。
【0087】
〔閾値の決定方法〕
図2のS106で使用される閾値は適宜決定可能であるが、その一例について説明する。例えば、NTTフレッツ(ひかり電話オフィスタイプ:http://flets.com/hikaridenwa/office/service/option.html)で提供されているように、最大8チャネルの同時通話を可能とし、最大32番号までを閾値としてもよい。
【0088】
また、判定対象期間に存在した呼の並べ替え27000呼(111(コール/秒)×判定対象時間(例えば、60秒)=6660に同時接続数20000を加算した値≒27000)のうち正規分布でσ2に入る範囲を閾値としてもよい。
【0089】
その他、40万BHCA−30万BHCA=余力10万BHCAに相当する呼量は28(コール/秒)であり、余力28(コール/秒)×60秒=1667(コール)を閾値とすることも可能である。
【0090】
〔番号変換装置の動作について:発呼信号に対して規制を行う際の処理フロー〕
次に、図6を参照しながら、発呼信号に対して規制を行う際の処理フローについて説明する。
【0091】
まず、S201において、発信端末から発呼信号を受信した場合に、S202において、ワーカースレッド部12により、CKPT機能部16の管理セクション領域に記憶されている拒否番号リストが参照されて、S203において、受信した信号の着信物理番号(着信先)が当該拒否番号リストに含まれているか否かが判定される。
【0092】
次に、S204において、ワーカースレッド部12により、拒否番号リストに含まれていると判定された発呼信号に対して、着信側に送信する前に、所定の規制が実行される。
【0093】
最後に、S204において、ワーカースレッド部12により、その規制された信号が着信側に送信される。なお、S203で拒否番号に含まれていないと判定される場合には、S204の規制処理を実行することなく、そのまま送信される。
【0094】
S204の規制処理としては、例えば、一定時間ウェイトさせる処理や、同一の着信物理番号に対する受付を一定時間不可とする処理が採用される。
【0095】
例えば、一定時間受付不可とする場合には、後段に接続することなく拒否応答する方法が採用される。この時、キューに積み上げて後段への接続を遅らせる方法も採用してもよい。
【0096】
例えば、受付不可の時間としては、(1)受付済みの呼が終話するまでの時間、(2)再送信号によるネットワーク負荷の増大を防ぐために再送時間以上経過後、等の時間を利用することができる。
【0097】
特に(1)の場合には、拒否番号リストを登録した際に、解除時間をタイマ登録してタイマ満了後に再開するものとする。判定対象期間で閾値超えを検出して、以降一定時間の受付を不可とするようにしてもよい。また、受付不可となる場合には、カウンタを更新しないようにしてもよい。
【0098】
受付不可中に再度接続済み呼、継続呼に対するエラー応答でカウンタが閾値を越える場合には、再度の集計タイミングで閾値越えと判定し、その都度、解除時間を更新して、受付不可時間を延長するようにしてもよい。着信先毎の接続呼数もカウントしておき、この接続呼数を更に利用するようにしてもよい。
【0099】
<第2の実施の形態>
第1の実施の形態では、カウントリストを随時更新していき、30秒毎のタイミングで収集された複数の集計リストのうち60秒毎の2つの集計リストの差分を計算することにより、単位時間である判定対象期間の同時接続数の累計数を計算する方法について説明した。
【0100】
第2の実施の形態は、この累計数の他の計算方法を提案するものである。具体的には、カウントリスト内のカウント数(計測数)を、そのカウントリストのコピーにより集計リストが生成される毎にクリア(リセット)して、30秒毎に0からカウントを新たに開始するようにする。これにより、その30秒毎に生成される集計リストには、その30秒間での同時接続数がカウントされていることになる。
【0101】
そして、それに基づいて30秒毎に生成された複数の集計リストのうち、判定対象期間内の30秒毎の2つの集計リストを用いて、着信物理番号毎に同時接続数を加算することにより、判定対象期間(60秒)での同時接続数の累計数を求めるようにする。
【0102】
例えば、図4の場合、集計リストAから集計リストBまでの30秒間に集計された同時接続数を収集した集計リストBと、集計リストBから集計リストCまでの30秒間に集計された同時接続数を収集した集計リストCとを加算して、判定対象期間#0での同時接続数の累計値を計算する。
【0103】
単位時間あたりの同時接続数の累計数の計算方法が異なるものの、本実施の形態で説明した方法を採用した場合であっても、第1の実施の形態で説明した効果と同様の効果を得ることができる。
【0104】
以上より、各実施の形態によれば、発呼信号に対する応答信号を着信側から受信して、呼処理で使用する待ち行列とは異なる集計用待ち行列に保持して拒否番号リストを生成等する処理を呼処理とは別に実行するので、呼処理のメインフローとは独立して判定・規制処理が可能となることから、その呼処理のメインフローに影響を与えることなく負荷集中等している後段装置への信号を抑制することができる。
【0105】
各実施の形態によれば、集計ステップにおける変動計測数の計算を単位時間よりも短い間隔で繰り返すので、判定対象期間が重複することから、2つの判定対象期間にまたがるような呼接続の集中があった場合でも確実に集計して判定対象に含めることができる。
【0106】
各実施の形態によれば、変動計測数の計算に用いた2つの集計リストのうち先に生成された集計リストを削除し、その削除された集計リストのデータ領域を利用して第1判定ステップの判定計算を行うので、限定された小さなリソースを有効活用することができ、装置自体の小型化等を実現することができる。
【0107】
各実施の形態によれば、チェックポイント機能の管理セクション領域で記憶可能なサイズに限定された着信先分のみを拒否番号リストに記憶するので、系間同期されるCKPT機能の管理データ領域の大きさに収まるサイズで規制時に使用するリストデータを生成することができる。
【符号の説明】
【0108】
1…加入者端末
3…転送装置
5…呼処理サーバ
7…ガイダンスサーバ
10…アクセス網
100…番号変換装置(AS)
11…信号送受信部
12…ワーカースレッド部
13…信号保持部(キュー)
14…信号等カウンタ部
15…信号判定部
16…CKPT機能部
17…系間同期部
S1〜S8、S101〜S109、S201〜S205…処理ステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
呼制御装置で行う呼制御方法において、
発呼信号に対する応答信号を着信側から受信して、呼処理で使用する待ち行列とは異なる集計用待ち行列に保持する保持ステップと、
前記集計用待ち行列から信号を取り出して、当該信号に対する所定の計測数を着信先毎にカウントしたカウントリストを生成する計測ステップと、
前記カウントリストを定期的に複製することにより、当該定期的なタイミングでの計測数を有する複数の集計リストを生成する生成ステップと、
2つの集計リストを用いて単位時間あたりの変動計測数を着信先毎に計算する集計ステップと、
前記単位時間あたりの変動計測数が所定の閾値を超えた着信先を支障有りの着信先と判定する第1判定ステップと、
支障有りと判定された着信先をチェックポイント機能の管理セクション領域に拒否番号リストとして記憶する記憶ステップと、
新たに受信した発呼信号の着信先が前記拒否番号リストに含まれているか否かを判定する第2判定ステップと、
拒否番号リストに含まれていると判定された発呼信号を規制する規制ステップと、
を呼処理とは別に実行することを特徴とする呼制御方法。
【請求項2】
前記集計ステップは、
前記変動計測数の計算を前記単位時間よりも短い間隔で繰り返すことを特徴とする請求項1記載の呼制御方法。
【請求項3】
前記単位時間あたりの変動計測数を計算した後に、当該計算に用いた2つの集計リストのうち先に生成された集計リストを削除する削除ステップを更に有し、
前記第1判定ステップは、
削除された集計リストのデータ領域を利用して前記判定の計算を行うことを特徴とする請求項1又は2記載の呼制御方法。
【請求項4】
前記集計ステップは、
30秒毎に生成された複数の集計リストのうち60秒毎の2つの集計リストに含まれる計測数の差分を計算することにより、前記単位時間あたりの変動計測数を求めることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の呼制御方法。
【請求項5】
前記計測ステップは、
前記集計リストが生成される毎に前記カウントリストの計測数をリセットし、
前記集計ステップは、
30秒毎に生成された複数の集計リストのうち60秒内に生成された2つの集計リストに含まれる計測数を加算することにより、前記単位時間あたりの変動計測数を求めることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の呼制御方法。
【請求項6】
前記記憶ステップは、
前記管理セクション領域で記憶可能なサイズに限定された着信先分のみを前記拒否番号リストに記憶することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の呼制御方法。
【請求項7】
前記管理セクション領域に記憶されている拒否番号リストを待機系に転送する同期ステップを更に有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の呼制御方法。
【請求項8】
前記所定の計測数は、
信号の同時接続数、輻輳を表すビジー応答数、後段の対向装置からのエラー数のうちいずれか1以上であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の呼制御方法。
【請求項9】
前記呼制御装置は、
論理的な電話番号を物理的な電話番号に変換する番号変換装置であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の呼制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2013−38579(P2013−38579A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−172834(P2011−172834)
【出願日】平成23年8月8日(2011.8.8)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】