説明

呼吸代謝測定解析装置

【課題】 呼気ガス分析で求めるパラメータは多数あり、その解析は複雑で、解析する手順も複数有り、解析する人によっても手順が異なり、非常に煩雑である。
【解決手段】 所望の呼吸代謝データの解析結果を得るのに必要な操作を適切な順番に表示し、同時に、個々の操作の意味又は具体的な操作方法を記載した操作説明を表示し、操作を順番に実行すると、所望の呼吸代謝データの解析結果を得ることができるようにした。また、操作を実行するのに必要なウインドウ及び時系列データを強調又は抽出して表示するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、煩雑な呼吸代謝測定を、誰でも、スムースに、間違いなく進め、正しい呼吸代謝データの解析結果を得ることができるようにするものである。
【背景技術】
【0002】
従来の呼吸代謝測定解析装置のブロック図の例を図5(A)に示す。図5(A)の21は呼吸気流量を測定する呼吸気流量計、22は呼吸気のガス濃度を測定するガス濃度計、23は呼吸気流量計21及びガス濃度計22で得たデータから呼吸代謝指標を求めるデータ処理部、24はデータ処理部の出力を表示する表示部である。
【0003】
実際の呼吸代謝測定の様子を図5(B)に示す。測定では鼻及び口をカバーするマスク26を用い、マスク26には呼吸流量計21を接続して、全ての呼吸気を測定する。また、呼吸流量計21を通過する呼吸気流量の一部をガス濃度計22に導入して、呼吸気のガス分析を行う。ガスの測定対象ガスは、通常は酸素ガス及び炭酸ガスである。図の27は呼吸流量計21を通過する呼吸気流量の一部をガス濃度計22に導入するサンプリングチューブ、28は呼吸代謝測定解析装置である。
呼吸気の流量とガス分析をおこなうことで、酸素摂取量や炭酸ガス排泄量などの呼吸代謝データを得ることができる。
【0004】
具体的な呼吸代謝データとして、1回の呼吸時の換気量(1回呼気換気量、1回吸気換気量)、1分間あたりの換気量(分時呼気換気量、分時吸気換気量)、呼吸数、分時酸素摂取量、分時炭酸ガス排泄量、ガス交換比、その他数十項目が利用されている。
このような、呼吸を測定して呼吸代謝データを求める呼吸代謝測定解析装置は、呼吸器疾患の診断に広く用いられている(例えば特許文献1参照)
【0005】
呼吸代謝データは、呼吸器疾患の診断に使用されるだけでなく、心臓疾患その他のリハビリテーションにおける運動処方や、栄養管理分野の栄養所要量を求めるのに使用される。
これらの分野では、前述の呼吸代謝データをもとに、更にデータ処理を行い、必要なパラメータを求めて使用する。
【0006】
運動処方は、簡便法としては心拍数や血圧などを指標とすることがあるが、心臓疾患や呼吸器疾患等のリハビリテーション等、正確な処方が必要な場合は、呼吸代謝データを使用することが推奨されている。運動処方は、被検者に漸増運動負荷をかけ、そのときの呼吸気量と呼吸気ガス分析をおこない、得られたデータからAT(Anaerobic Threshold)ポイントという指標を求めて、これを基に処方をおこなう。ATポイントとは、運動強度が増加していく過程で有酸素代謝に無酸素代謝が加わり乳酸産生が増加するポイントである。
【0007】
ATポイントの決定法にはいくつかの方法が提唱されているが、一般には、以下の条件を満たす点とされる。
1.Rの運動強度に対する上昇点
R:ガス交換比。単位時間当たりの炭酸ガス排泄量と酸素摂取量の比。
2.VCO2のVO2に対する上昇点
CO2:炭酸ガス排泄量
O2:酸素摂取量
3.V/VCO2が増加せずにV/VO2が増加する点
:分時呼気換気量
4.PETCO2が変化せずにPETO2が増加する点
ETCO2:呼気終末炭酸ガス分圧
ETO2:呼気終末酸素ガス分圧
5.VのVO2に対する上昇点
このため、各種呼吸データとともに、これらのデータを画面に表示し、ATポイントを決定している。
【0008】
ATポイントを基準にした運動は、心臓に対し、過負荷をかけずに持続した運動が可能であり、心臓等のリハビリテーションを行う際に最も安全で有効とされる。
本発明は、代謝測定全般に応用できるが、ここでは、より手順が複雑な、ATポイント決定法を例に説明する。
【0009】
図5は、安静、ウォーミングアップを経て運動負荷量を定比率で増加させたときの各種指標の変化を示す例である(例えば非特許文献2参照)。この図から、前記段落番号0007で述べたような条件を満たす点を見出して、ATポイントを決定する。
図6は前記段落番号0007の2に記載したVCO2とVO2のグラフ(V−Slope曲線という)である。VCO2のVO2に対する上昇点、つまり、VO2の増加に対してVCO2の増加が急激に増加する点(図7の点C)がATポイントとなる。これを求める具体的な方法として、C点の左右で解析区間を設定し、回帰直線を求め、その交点がATポイントとする方法が用いられている。このようなATポイント決定法をV−Slope法と呼ぶ。
【0010】
実際のATポイント決定画面の例を図7に示す。この例では、画面を4つに分割している(説明のためにそれぞれに1から4までの数字を入れている)。図7の画面1には、図5と同様のデータ(段落番号0007の2に記載したATポイント決定のパラメータ)を表示している。健常者では画面1だけでもATポイントを決定できるが、肺や心臓等に疾患がある場合は画面1だけでは判定できないことも多い。このため、画面2には、関係する呼吸代謝パラメータを表示し、ATポイント決定の補助として使用するようにしている。図7の画面3には、図6で説明したV−Slopeの図を示している。
【0011】
呼吸代謝の重要な指標にRCポイントがある。RCポイントとは、呼吸性代償開始点のことであり、運動強度がこの点を越えると乳酸に対する緩衝が不十分となり、呼吸性代償が始まる。この点以降は、動脈血のpHが急速に低下を始める。AT同様、運動負荷試験により呼気ガスの時系列データから変曲点を見つけ、RCポイントとする。
図7の画面4は、RCポイントを求めるためのグラフで、V/VCO2スロープ法と呼ばれるものである。
ここではこれについては省略するが、解析手法・手順はAT解析法と同様である。本発明はRCポイント解析にも使用できる。
ATポイントだけを得たい場合は、画面1と3のみを表示しても良いし、画面1,2,3を表示して、画面2にATポイント決定に関係するデータを表示しても良い。
なお、画面1及び2に表示するデータは任意に選択できるようにしているのが一般的である。
【0012】
ATポイントやRCポイントを求めるにはこのように、多数の複雑なデータを取り扱う必要があり、しかも、各曲線は接近したり交差したりして、細かい変化を示すため、大変見難く、細かい動きを追うには、注意深い観察が必要となる。
この決定法は、ATポイントを例にとると、図7の画面3を見て、ATポイントらしい点に注目し、この前後に適切な解析範囲を指定し、そこに回帰直線をひき、得られた2本の回帰直線の交点をATポイントと決定する。このATポイントに対応して、画面1にも解析範囲とATポイントを表示する。
病的な場合はATポイントが明確にできない場合がある。このような場合、専門家が図7の解析画面を見て、他の代謝パラメータを参照して、ATポイントを補正する。
【0013】
【特許文献1】特公昭63−23778
【非特許文献2】谷口興一、伊藤春樹編:心肺運動負荷テストと運動療法.106〜110、南江堂、2004年
【発明の開示】
【0014】
以下に、本発明が解決しようとする課題と、課題を解決するための手段について述べる。
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
ATポイントは、前記段落番号0007で述べたような条件を満たす点を見出して決定する。
具体的には、図5に示すように、ATポイントの決定に使用するパラメータを、経時的なトレンドグラフとして表示し、各パラメータの変化を見て、ATポイントを決定する。
しかし、図5のように、複数のパラメータを限られた画面に表示し、各パラメータの曲線は接近したり交差したりして、画面は見にくく、ATポイントの決定に迷うことが多い。
また、人によっては、前記条件を満たすような明確な変化を示さず、ATポイントを明確に決定できないこともある。
【0016】
このため、図6のように、直感的に分りやすいV−Slope曲線も使用される。
さらに判断を補助するために、実際には図7のように、AT決定に関係する、他の呼吸代謝データも参照したいことが多く、さらに多くのデータを表示する必要があり、このため、さらに画面が見にくくなり、判断が難しくなる。
【0017】
そこで、実際には図7の画面1のように関連データのトレンドグラフと画面3のV−Slope曲線を表示し、ATポイント候補点前後のB及びD点の間に解析範囲を設け、2本の回帰直線を求め、その交点をATポイントとする。
このATポイントと解析範囲は画面1にも表示され、これを専門家が見て、データの妥当性を判断する。
しかし、このように、V−Slope曲線からATポイントを求め、これを多数のデータをトレンドグラフで見ながらATポイントの妥当性を判断して決定する方法は、慣れていないと手間取り、解析に時間がかかる。
また、1つの画面に表示されるパラメータが多く、グラフが接近したり重なったり交差したりして見難い。さらに、ATポイントの候補点を見出しその前後の解析範囲を決定し、解析された結果の妥当性を判断し、検査結果のレポートを作成する等、検査手順は複雑である。特に熟練していない人が解析をおこなう場合、どのような手順で、どの領域を抽出して解析をし、どのデータを用いてレポートを作成するか、非常に複雑で分りにくく、間違いを起こしやすいという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0018】
この課題を解決するために、請求項1記載の発明では、
呼吸気流量を測定する呼吸流量計と、
呼吸気のガス濃度を測定するガス濃度計と、
呼吸気流量計及びガス濃度計で得たデータから呼吸代謝指標を求めるデータ処理部と、
データ処理部の出力を表示する表示部と
を有する呼吸代謝測定解析装置において、
所望の呼吸代謝データの解析結果を得るのに必要な操作を適切な順番で表示し、
表示した操作に対応させてその意味や具体的な操作方法などを記載した操作説明を表示し、
操作を順番に指定し、これと対応する操作説明を表示して、必要な操作とその具体的な内容を確認しながら操作を行い、
解析を画面の指定どおりに進めると、最終的に所望の呼吸代謝データの解析結果を得ることができるようにした。
つまり、呼吸代謝測定解析装置の表示器に、ガイド部5を設けて、ガイドに従って解析を進めると、慣れない人でも、スムースに、間違いなく、結果を得ることができる。
ガイド部5には、解析手順7を設けている。これは、解析に必要な項目を、例えば図2(A)のように、V−slopeの区間を設定する、V−slopeの自動回帰などの項目を、順番に列記している。
解析手順7に表示した項目を順番に選択し、必要な処理を実行することで、スムースに解析を進めることができる。
また、解析手順7に表示した各項目を選択すると、その操作説明内容やコメントなどが操作説明8に表示され、どのような処理をすればよいかということが表示される。
また、ガイド9には、解析手順の異なる解析手順7を有する。
ガイド9の1つを選択すると、その解析手順7が表示され、その解析手順7の項目を選択すると、その操作説明内容やコメントなどが操作説明8に表示される。
目的に応じて、ガイド9の1つを選択し、その解析手順7の項目を順番に選択し、選択した項目に対する操作説明8の内容にしたがって、解析を進めればよい。
このため、解析手順を間違えて誤った解析結果を得るという問題を解決することができる。
【0019】
また、請求項2記載の発明では、請求項1記載の呼吸代謝測定解析装置において、操作の順番を変更、記録できるようにした。つまり、解析手順7の表示項目の順番を変更したり、新規に追加、削除することができるようにした。
これにより、使用する施設固有の特性や、必要とする解析結果に応じた手順で、慣れた人はある項目を飛ばすなどして、正しく解析を進めることができる。
【0020】
請求項3記載の発明では、請求項1又は2記載の呼吸代謝測定解析装置において、操作とこれに対応する操作説明を追加、編集、削除し、それらを記録することができるようにした。
これにより、判断が難しい患者においても、適切な操作を追加することで、より正確にATポイントを決定できる。
また、不要な操作を削除することで、より効率的な検査をおこなうことができる。
【0021】
請求項4記載の発明では、測定中に、又はある操作を実行する際に、表示部に表示した複数のウインドウの中から、操作を実行するのに必要なウィンドウを選択することができる。
また、選択したウインドウのみを表示し、このウインドウのサイズ(グラフのレンジ)を切り替えることができる。
さらに、多数の時系列データの中から、操作を実行するのに必要なデータのみを強調又は抽出して表示して、測定又は解析を行うようにした。
このため、図7のように、最も注目したいパラメータだけを見ることができ、画面が見やすく、他のパラメータに邪魔されずにみることができ、正しい判断ができるようになる。
【発明の効果】
【0022】
請求項1記載の発明により、
呼吸気流量を測定する呼吸流量計と、
呼吸気のガス濃度を測定するガス濃度計と、
呼吸気流量計及びガス濃度計で得たデータから呼吸代謝指標を求めるデータ処理部と、
データ処理部の出力を表示する表示部と
を有する呼吸代謝測定解析装置において、
所望の呼吸代謝データの解析結果を得るのに必要な操作を適切な順番で表示し、
表示した操作に対応させてその意味や具体的な操作方法などを記載した操作説明を表示し、
操作を順番に指定し、これと対応する操作説明を表示して、必要な操作とその具体的な内容を確認しながら操作を行うことができる。
このため、たとえ初心者であっても、操作を画面の指定どおりに進めることで、最終的に所望の呼吸代謝データの解析結果を得ることができる。
【0023】
請求項2記載の発明により、請求項1記載の発明の呼吸代謝測定解析装置において、
操作の順番を変更、保存できる。
このため、使用する施設固有の特性や、必要とする解析結果に応じた手順で検査を進めることができる。
【0024】
請求項3記載の発明により、請求項1又は2記載の発明の呼吸代謝測定解析装置において、操作とこれに対応する操作説明を追加、編集、削除し、それらを記録することができる。
このため、検査する人の習熟度に応じて、操作を追加、編集、削除することができるので、どのような人でも、必要な操作を的確に実行し正しい結果を得ることができる。
【0025】
請求項4記載の発明により、
ある操作を実行するにあたり、表示部に表示した複数のウインドウ及び多数の時系列データの中から、操作を実行するのに必要なウィンドウ及びデータのみを強調又は抽出して表示して、測定又は解析を行うことができるようにした。
このため、画面が見易くなり、注目したいデータだけを見て判断でき、ミスの少ない、より妥当な判断をおこなうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下に、本願発明の実施例を述べる。
【実施例1】
【0027】
請求項1記載の発明は、
呼吸気流量を測定する呼吸流量計と、
呼吸気のガス濃度を測定するガス濃度計と、
呼吸気流量計及びガス濃度計で得たデータから呼吸代謝指標を求めるデータ処理部と、
データ処理部の出力を表示する表示部と
を有する呼吸代謝測定解析装置において、
表示部に解析ガイド部を設け、
解析ガイド部には、所望の呼吸代謝データの解析結果を得るのに必要な操作を適切な順番で表示し、
表示した操作に対応させてその意味や具体的な操作方法などを記載した操作説明を表示し、
操作を順番に指定し、これと対応する操作説明を表示して、必要な操作とその具体的な内容を確認しながら操作を行うことができるようにし、
解析をガイド部の指定どおりに進めると、最終的に所望の呼吸代謝データの解析結果、例えばATポイントを得ることができるようにするものである。
【0028】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の呼吸代謝測定解析装置において、
操作の順番を変更、記録できるようにするものである。
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の呼吸代謝測定解析装置において、
操作とこれに対応する操作説明を追加、編集、削除し、それらを記録することができるようにするものである。
【0029】
請求項4記載の発明は、
呼吸代謝の測定、解析において、ある操作を実行するにあたり、表示部に表示した複数のウインドウ及び多数の時系列データの中から、操作を実行するのに必要なウィンドウ及びデータのみを強調又は抽出して表示して、測定又は解析を行うようにするものである。
【0030】
図1は、本発明による呼吸代謝測定解析装置の解析画面の例である。図5(B)に示すように運動負荷をかけて運動量を増加させながら、呼吸代謝パラメータを測定し、この中の所定のデータをトレンドグラフとして表示したものである。
図1の例では、画面を5つに分割している。
画面1から4までは、従来の解析画面(図7)と同じである。
画面1はATポイント解析のための呼吸代謝データを6個、トレンドグラフで表示している。
画面3には、ATポイント解析のためのVCO2とVO2の関係(V−Slope曲線)を表示している。
画面2には、AT解析に関係する画面1以外の呼吸代謝データ、又は、RC決定に関するデータなどの、関係するデータを表示している。
画面4には、VとVCO2の関係(VE/CO2スロープ法)を表示している。これはRC値を得るために用いる。
従来は、これ以降のデータ解析は、解析を行う人の記憶によって、順番に必要な処理を行っていた。
しかし、なれない人は、どこから手を付け、どのような順番で処理を進めてよいかわからなかった。また、解析の途中で行う操作、処理内容も分らなかった。このため、初心者は解析できず、少しなれた人も、テキストを見ながら、何を行えばよいかを確認しながら解析を行っていたため、多大な時間を要していた。
このように、煩雑な専門化がおこなう解析を、ガイドに従って行えば、だれでも実行できるようにするのが本発明である。
【0031】
請求項1記載の発明により、図1に示すように、従来と同じ4つの画面の他に、画面5の解析ガイド部5を設けている。解析ガイド部5のガイドに従って測定を進めることができるようにしており、ガイドに従って解析を進めると、誰でも、スムースに、間違いなく、妥当な解析結果を得ることができる。
【0032】
解析ガイド部5の詳細な内容を図2に示す。図2(A)は、測定画面1の第5画面に表示される解析ガイド部の図である。
解析ガイド部5は、ガイド選択部9と、解析手順7と、操作説明部8で構成する。
ガイド選択部9は登録しているガイドの中のどのガイドを使用するかを選択するもので、所望のガイド番号を選択する。
解析手順7は操作の手順を示す。操作説明部8は、解析手順7の各操作の意味や操作内容を説明するものである。
【0033】
図2(A)の例では、ガイド選択部9には3種類のプログラムを用意しており、現在はガイド1を選択している。後述するように、任意の操作を任意個、登録し、使用できる。
ガイド1には、解析手順7に記載しているように、V−Slope区間の設定、V−Slope自動回帰、注意書き01、ATポイント設定、レポート通常、注意書き02、解析結果を保存、データを閉じて開く、解析終了、注意書き03という10ステップの解析手順を用意している。
このガイドはV−Slope法を用いたAT解析をおこなうためのものである。AT解析とは、ATポイントを求めるための解析である。
また、操作説明部8は、各ステップの操作の意味と操作内容の説明が表示される。
【0034】
図1で、検査は以下のように進める。
まず、解析ガイド部5のガイド選択部9に登録された3種類のガイドの中から、解析目的に適したガイドを選択する。図1の例では、ガイド1を選択している。ここではガイド選択部9には3つのプログラム(3種類のガイド)を設けた例を示しているが、何個用意するかは問わない。
このとき、解析手順7には最初の操作をカーソルが示す。この例では、「V−Slope区間の設定」である。
このとき、操作説明部8には「V−Slope区間の設定」の意味と操作内容を表示している。
操作説明部8を読むと、どのような処理をおこなえばよいかを知ることができる。
検者は、実行ボタン6を押し、ATポイントと思われる点を画面3で判断し、その前後のV−Slope曲線を見て、解析区間を設定する。図1のB点とD点である。この解析区間は、画面1、2、4にも表示される。
画面1で判断して解析区間を設定しても良い。この場合も、解析区間は画面2、3、4にも表示される。
【0035】
前記解析区間の設定が完了すると、解析手順7のカーソルが次のステップ「V−Slope自動回帰」に移動する。
このとき、操作説明部8には「V−Slope自動回帰」の意味と操作内容を表示している。
【0036】
ここで実行ボタン6を押すと、設定された解析区間で、画面3のV−Slope曲線(VCO2とVO2のグラフ)に、2本の回帰直線が自動的に作成され、解析手順7のカーソルが次のステップ「注意書き01」に移動し、操作説明部8には「注意書き01」の意味と操作内容を表示している。得られた呼吸代謝データとその特長、解析区間設定の根拠、その他コメントを記載する。
【0037】
実行ボタン6を押すと、解析手順7のカーソルは「ATポイント設定」をさし、操作説明部8には「ATポイント設定」の意味と操作内容を表示している。
ここでV−Slope曲線と2本の回帰直線をみて、検者は2本の回帰直線の交点近傍で、妥当と判断する点をATポイントと判断し、そこにカーソルを合わせてATポイント設定する。
このようにして決定したATポイントは、図1の画面1にも表示される。
【0038】
次に実行ボタン6を押すと、解析手順7のカーソルは「レポート通常」をさし、操作説明部8には「レポート通常」の意味と操作内容を表示している。
【0039】
実行ボタン6を押すと、解析手順7のカーソルは「注意書き02」をさし、操作説明部8にはその意味と操作内容を表示している。ここでは「レポート通常」に付記する内容を記載する。
【0040】
ここで実行ボタン6を押すと、解析手順7のカーソルは次のステップ「解析結果を保存」に移動する。
画面を確認して実行ボタン6を押すと、解析結果が所定のメモリ領域に記憶され、解析手順7のカーソルが次のステップ「データを閉じて開く」に移動する。これは一人の被験者の解析が終わり、次の被験者の解析をおこなうかどうかを聞くステップである。
【0041】
解析を終了する場合は解析手順7のカーソルを「解析終了」に合わせて実行ボタン6を押すと、解析手順7のカーソルは「注意書き03」に移動し、操作説明部8にはその意味と操作内容を表示している。ここでは今回の測定全般に関する内容を記載する。
【0042】
解析手順7のカーソルが次のステップ「データを閉じて開く」に移動したとき、実行ボタン6を押すと、解析手順7のカーソルは「V−Slope区間の設定」に戻り、次の人の解析に移ることができる。
【0043】
このように、操作の手順と処理内容を決めておき、これを表示するとともに、これに従って1ステップずつ実行するようにすることで、複雑な呼吸代謝解析をスムースに、慣れない人でも間違いなく解析をおこなうことができるので、解析結果の質を一定以上に高く維持することができる。
【0044】
以上、図1のガイド1には、V−Slope区間の設定、V−Slope自動回帰、注意書き01、ATポイント設定、レポート通常、注意書き02、解析結果を保存、データを閉じて開く、解析終了、注意書き03という10ステップの解析手順を用意するプログラムについて説明した。
【0045】
しかし、検者や施設によっては、同じステップ数の手順を実行するにしても、処理の順番を入れ替えたいこともある。例えば、V−Slope区間の設定から注意書き02までを複数の被検者で一気に行い、その後で解析結果を保存したい場合もある。
これを可能にするのが、請求項2記載の発明である。
【0046】
また、検者又は施設によっては、注意書き01を省略して、注意書き02にまとめて記載すればよいとする場合もある。
逆に、処理ステップを増やしたい場合もある。例えば、被験者の取り違えという過誤を防止するために、「レポート通常」の前に、被検者の確認のステップを入れたいということもある。
これを可能にするのが、請求項3記載の発明である。
【0047】
このような、操作の順番の入れ替えや、操作の追加・編集・削除には、図2(B)のような、ガイド編集画面を設けて編集機能を追加すればよい。
【0048】
請求項4記載の発明は、ある操作を実行するにあたり、表示部に表示した複数のウインドウ及び多数の時系列データの中から、操作を実行するのに必要なウィンドウ及びデータのみを強調又は抽出して表示して、測定又は解析を行うようにするものである。
この実施例を図3と4に示す。
【0049】
呼吸代謝の測定では、多数のパラメータを同時に観察したいため、図8に示すように、関連するデータをまとめて一つのウインドウに表示し、複数のウインドウで多くのデータを同時に表示して、各呼吸代謝のパラメータの変化を見るという手法が多用される。
しかし、各ウインドウには複数のデータが表示され、しかも同じようなトレンドを示したり、曲線同士が接近したり、交差したりして、画面が見にくく、トレンドグラフから目的の傾向を見出すということは非常に困難な場合がある。これを解決するために、各データは色分けして表示されることが多いが、それでも見にくい。画面が小さいこともある。
【0050】
そこで請求項4記載の発明では、図8に示すような、従来の呼吸代謝測定画面の複数のウインドウの中から、1つ又は複数の画面を選択して、その画面だけを表示したり、指定した画面のみを強調したり、抽出した画面を拡大して表示するようにした。
【0051】
図4は、請求項4記載の発明により、図8のように4つのウインドウの中から、画面1だけを指定して、拡大して表示した例である。
さらに、本請求項記載の発明では、1つの画面を拡大した画面に、画面操作部12を設け、表示データを選択し、その色及びグラフのレンジを指定することができる。このため、1つのデータだけを表示してその変化を見ることもできるし、所定の複数のデータを表示して相対的な変化を見ることもできるし、従来どおり、全データのトレンドを見ることもできる。
画面も大きくなっているため、非常に見易く、データのトレンドもよく観察することができる。
なお、本発明は、呼吸代謝測定解析装置で得た呼吸気流量、呼気ガスデータ、呼吸代謝データを外部コンピュータにとり込み、つまり、本発明のデータ処理部と表示部を外部コンピュータで代用し、外部コンピュータに解析ガイドを設けてもよい。つまり、外部のデータベースに、応用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の表示部の実施例
【図2】本発明の表示部の測定ガイド部及びガイド編集画面の実施例
【図3】請求項4記載の発明による画像拡大の実施例
【図4】呼吸代謝測定解析装置のブロック図及び測定の様子の例
【図5】AT解析のための呼吸代謝データのトレンドグラフの例
【図6】VCO2とVO2の関係(V−Slope曲線)
【図7】従来のAT解析のトレンドグラフ
【符号の説明】
【0053】
1:AT解析画面のAT解析に直接関係するデータのトレンドグラフ画面
2:AT解析画面の関係するデータのトレンドグラフ画面
3:AT解析画面のV−Slope曲線の画面
4:RC解析画面のVとVCO2の関係(VE/CO2スロープ法)画面
5:ガイド部
6:実行キー
7:解析手順部
8:操作説明部
9:ガイド選択部
12:画面操作部
21:呼吸流量計
22:ガス濃度計
23:データ処理部
24:表示器
26:マスク
27:サンプリングチューブ
28:呼吸代謝測定解析装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
呼吸気流量を測定する呼吸流量計と、
呼吸気のガス濃度を測定するガス濃度計と、
呼吸気流量計及びガス濃度計で得たデータから呼吸代謝データを求めるデータ処理部と、
データ処理部の出力を表示する表示部と
を有する呼吸代謝測定解析装置において、
表示部に解析ガイド部を設け、
解析ガイド部には、所望の呼吸代謝データの解析結果を得るのに必要な操作を適切な順番で表示し、
表示した操作に対応させてその意味や具体的な操作方法などを記載した操作説明を表示し、
操作を順番に指定し、これと対応する操作説明を表示して、必要な操作とその具体的な内容を確認しながら操作を行い、
解析を画面の指定どおりに進めると、最終的に所望の呼吸代謝データの解析結果を得ることができるようにした、呼吸代謝測定解析装置。
【請求項2】
操作の順番を変更、記録できるようにした、請求項1記載の呼吸代謝測定解析装置。
【請求項3】
操作とこれに対応する操作説明を追加、編集、削除し、それらを記録することができるようにした、請求項1又は2記載の呼吸代謝測定解析装置。
【請求項4】
ある操作を実行するにあたり、表示部に表示した複数のウインドウ及び多数の時系列データの中から、操作を実行するのに必要なウィンドウ及びデータのみを強調又は抽出して表示して、測定又は解析を行うようにした、呼吸代謝測定解析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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