説明

呼吸信号処理装置およびその処理方法ならびにプログラム

【課題】生体の呼吸音を含む時系列の呼吸信号から雑音を除去する際に、生体信号に固有の情報を利用して雑音を除去する。
【解決手段】パルス性成分検出部130は計測呼吸信号からパルス性成分を検出する。パルス性成分除去部140は検出されたパルス性成分を計測呼吸信号から除去する。時間周波数変換部150はパルス性成分が除去された呼吸信号を時間周波数変換する。トーン性成分検出部160は時間周波数スペクトルからトーン性成分を検出する。トーン性成分除去部170は検出されたトーン性成分を時間周波数スペクトルから除去する。周波数時間変換部180はトーン性成分が除去された時間周波数スペクトルに対して周波数時間変換を施す。これにより、計測呼吸信号からパルス性成分およびトーン性成分が検出され、除去される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、呼吸信号処理装置に関し、特に人間等の生体の呼吸音を含む時系列の呼吸信号から特定の信号を除去する呼吸信号処理装置、および、その処理方法ならびに当該方法をコンピュータに実行させるプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から生体状態の確認のため、聴診器等により呼吸音を聴取することが広く行われている。また、呼吸音を継続的にモニタリングすることは、医療現場において有用である。しかしながら、呼吸音をモニタリングする際には、呼吸音以外の雑音が混入することが多く、そのような雑音を適切に除去する必要がある。このような雑音としては、被験者の心拍音のような体内音に加え、音声、音楽、他の医療機器の動作音やアラーム音などの外来環境音などが想定される。
【0003】
そのため、従来は、フィルタを用いて雑音成分を除去する手法が採られていた。例えば、信号の通過許容範囲を300乃至600Hzに設定したバンドパスフィルタによって濾波することにより、心拍音に対応する成分や他の信号成分を除去する呼吸数モニタ装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2628690号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、実際の心拍音は呼吸音と同程度の周波数帯域の成分も含み、さらにその成分が呼吸音より大きいことも頻繁にあるため、フィルタだけでは必ずしも十分な低減効果は得られず、呼吸音検出のために必要な信号も低減させるおそれがある。しかも、心拍音は個人差も大きく、周波数、振幅および位相が絶えず変動し続けるため、固定係数のフィルタでは十分な性能を得ることが困難である。
【0006】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、生体の呼吸音を含む時系列の呼吸信号から雑音を除去する際に、生体信号に固有の情報を利用して雑音を除去することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その第1の側面は、生体から取得された第1の信号からパルス性成分を検出するパルス性成分検出部と、生体から取得された呼吸音を含む第2の信号から上記検出されたパルス性成分を除去するパルス性成分除去部とを具備する呼吸信号処理装置およびその処理方法ならびにプログラムである。これにより、生体信号に固有の情報を利用して、呼吸音を含む信号からパルス性成分を除去するという作用をもたらす。
【0008】
また、この第1の側面において、上記第1および第2の信号は同一の呼吸音を計測した計測呼吸信号であり、上記パルス性成分検出部は、上記第1の信号における極大値を含む区間をパルス性成分候補区間として検出するパルス性成分候補検出部と、上記パルス性成分候補区間についてパルスらしさのスコアを計算するスコア計算部と、上記パルスらしさのスコアが所定の閾値を満たす上記パルス性成分候補区間を検出区間として当該検出区間に含まれる信号を上記パルス性成分として判定するパルス性判定部とを備えてもよい。これにより、パルスらしさのスコアに基づいてパルス性成分を検出するという作用をもたらす。また、この場合において、上記パルス性成分除去部は、上記検出されたパルス性成分を上記第1の信号において低減させる信号低減部と、上記検出区間の近傍の信号から合成波形を生成する波形合成部と、上記合成波形を上記第1の信号に加算する波形加算部とを備えてもよい。これにより、パルス性成分を計測呼吸信号から違和感を与えることなく除去するという作用をもたらす。
【0009】
また、この第1の側面において、上記第1の信号は生体の心拍波形を計測した計測心拍信号であり、上記第2の信号は生体の呼吸音を計測した計測呼吸信号であり、上記計測呼吸信号と上記計測心拍信号とを同期させる時間同期部をさらに具備し、上記パルス性成分検出部は、上記計測心拍信号から心拍音を推定することにより上記パルス性成分を検出し、上記パルス性成分除去部は、上記同期した計測呼吸信号から上記推定された心拍音を除去することにより上記パルス性成分を除去するようにしてもよい。これにより、計測心拍信号から推定された心拍音を計測呼吸信号から除去するという作用をもたらす。また、この場合において、上記心拍音推定部は有限インパルス応答フィルタであり、上記心拍音が除去された計測呼吸信号に基づいて呼吸区間を検出する呼吸区間検出部と、上記計測心拍信号に基づいて心拍区間を検出する心拍区間検出部と、上記呼吸区間に該当せず且つ上記心拍区間に該当する期間において上記有限インパルス応答フィルタにおけるフィルタ係数を更新する係数更新部とをさらに具備するようにしてもよい。これにより、心拍音を推定する有限インパルス応答フィルタの係数を呼吸の状況に応じて更新するという作用をもたらす。
【0010】
また、この第1の側面において、上記パルス性成分が除去された第2の信号を変換して時間毎の周波数スペクトル信号を生成する時間周波数変換部と、上記周波数スペクトル信号からトーン性成分を検出するトーン性成分検出部と、上記周波数スペクトル信号から上記検出されたトーン性成分を除去するトーン性成分除去部と、上記トーン性成分が除去された周波数スペクトル信号を逆変換する周波数時間変換部とをさらに具備してもよい。これにより、生体信号に固有の情報を利用して、呼吸音を含む信号からトーン性成分を除去するという作用をもたらす。また、この場合において、上記トーン性成分検出部は、上記周波数スペクトル信号における時間毎のピークを検出するスペクトルピーク検出部と、上記周波数スペクトル信号における時間毎のピークを時間にまたがって追跡するスペクトルピーク追跡部と、上記ピークの追跡結果に応じて上記トーン性成分の存在の有無を判定するトーン性判定部とを備えてもよい。これにより、周波数スペクトル信号における時間毎のピークに基づいてトーン性成分を検出するという作用をもたらす。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、生体信号に固有の情報を利用することにより、生体の呼吸音を含む時系列の呼吸信号から効果的に雑音を除去することができるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施の形態における呼吸状態表示システムの一構成例を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態において想定する呼吸信号の波形と周波数スペクトルの一例を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態における呼吸音計測器10の一構成例を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態における呼吸音計測器10を生体の表面に密着させた例を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態における呼吸音計測器10の他の構成例を示す図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態における雑音低減器20の一構成例を示す図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態におけるパルス性成分候補検出部131によるパルス性成分候補区間の検出およびパルス性スコア計算部132によるパルスらしさのスコア計算の例を示す図である。
【図8】本発明の第1の実施の形態における特徴量生成のための心拍音波形の一例を示す図である。
【図9】本発明の第1の実施の形態におけるパルス性成分除去処理の一例を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態において時間周波数変換された時間周波数信号の一例を示す図である。
【図11】本発明の実施の形態において時間周波数変換された時間周波数信号を模式的に表した例を示す図である。
【図12】本発明の第1の実施の形態におけるスペクトルピーク検出部161によるピーク追跡処理の一例を示す図である。
【図13】本発明の第1の実施の形態におけるトーン性成分除去部170による周波数特性の一例を示す図である。
【図14】本発明の第1の実施の形態における雑音低減器20の全体処理の流れを示すフローチャートの一例である。
【図15】本発明の第1の実施の形態におけるパルス性成分検出処理の流れを示すフローチャートの一例である。
【図16】本発明の第1の実施の形態におけるパルス性成分除去処理の流れを示すフローチャートの一例である。
【図17】本発明の第1の実施の形態におけるトーン性成分検出処理の流れを示すフローチャートの一例である。
【図18】本発明の第2の実施の形態における呼吸状態表示システムの一構成例を示す図である。
【図19】本発明の第2の実施の形態における雑音低減器20の一構成例を示す図である。
【図20】本発明の第2の実施の形態における雑音低減器20の処理の概要を示す図である。
【図21】本発明の第2の実施の形態における時間同期器340の一構成例を示す図である。
【図22】本発明の第2の実施の形態における時間同期バッファ330の一構成例を示す図である。
【図23】本発明の第2の実施の形態における心拍区間検出器370の一構成例を示す図である。
【図24】本発明の第2の実施の形態における呼吸区間検出器380の一構成例を示す図である。
【図25】本発明の第2の実施の形態における雑音低減器20の全体処理の流れを示すフローチャートの一例である。
【図26】本発明の第2の実施の形態におけるフィルタ更新処理の流れを示すフローチャートの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態(以下、実施の形態と称する)について説明する。説明は以下の順序により行う。
1.第1の実施の形態(呼吸音からパルス性またはトーン性成分を抽出して除去する例)
2.第2の実施の形態(心拍波形から心拍音を推定して呼吸音から除去する例)
【0014】
<1.第1の実施の形態>
[呼吸状態表示システムの構成]
図1は、本発明の第1の実施の形態における呼吸状態表示システムの一構成例を示す図である。この呼吸状態表示システムは、呼吸音計測器10と、雑音低減器20と、呼吸状態分析装置30と、表示装置40とを備えている。
【0015】
呼吸音計測器10は、人間等の生体の呼吸音を含む時系列の呼吸信号を計測するものである。この呼吸音計測器10としては聴診器を用いることができるが、のど近傍に配置されたマイクロフォンや、のどや胸の皮膚に接触させた圧力センサもしくは加速度センサ等により計測を行うようにしてもよい。この呼吸音計測器10の好適な例については後述する。
【0016】
雑音低減器20は、呼吸音計測器10によって計測された呼吸信号について雑音低減処理を行うものである。想定される雑音としては、生体の周囲の環境音や、生体の心拍音などが考えられる。この雑音低減器20の好適な例については後述する。
【0017】
呼吸状態分析装置30は、雑音低減器20を通過した呼吸信号に含まれる呼吸音から、その呼吸状態を分析するものである。ここにいう呼吸状態としては、呼吸が正常であるか異常であるかを示す呼吸異常性や、単位時間あたりの呼吸回数などが想定される。
【0018】
表示装置40は、呼吸状態分析装置30によって分析された呼吸状態を表示するモニタである。この表示装置40としては、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)などが想定される。
【0019】
図2は、本発明の実施の形態において想定する呼吸信号の波形と周波数スペクトルの一例を示す図である。図2(a)は、呼吸信号の波形の一例であり、横方向に時間、縦方向に信号の強度が示されている。この呼吸信号は生体から計測された状態のものを想定しており、呼吸音の他に上述のような雑音が含まれている。パルス状の波形部分は、心拍による鼓動を示している。
【0020】
図2(b)は、呼吸信号の周波数スペクトルの一例であり、横方向に時間、縦方向に周波数成分が示されている。この周波数スペクトルによれば、心拍による鼓動のタイミングでは100Hz付近に強い周波数成分が表れていることがわかる。また、呼吸区間に相当するタイミングでは2KHz付近に強い周波数成分が表れていることがわかる。このような周波数スペクトルによる解析の適用例については後述する。
【0021】
[呼吸音計測器の構成]
図3は、本発明の実施の形態における呼吸音計測器10の一構成例を示す図である。図3(a)は、生体に接する正面から見た呼吸音計測器10の外形図の例である。図3(b)は、呼吸音計測器10の側面の断面図である。この呼吸音計測器10は、マイクロフォン210と、スポンジ膜220と、柔弾性体230と、硬質ケース240とを備えている。皮膚への密着を考慮すると、全体で直径数ミリメートルから数十ミリメートル程度の大きさとなるのが望ましい。
【0022】
マイクロフォン210としては、例えば、コンデンサマイクロフォンやMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)マイクロフォンなど、一般的なマイクロフォンを用いることができる。マイクロフォン210からの出力信号線は硬質ケース240に設けられたコネクタ250を介して外部の配線260に接続している。
【0023】
スポンジ膜220は、マイクロフォン210の生体側の収音面に付着されるものである。このスポンジ膜220の厚みとしては数ミリメートル程度以上のものが想定される。柔弾性体230は、マイクロフォン210およびスポンジ膜220の周囲を覆う円筒状の部材である。この柔弾性体230の材料としては、例えばゴムなどが想定される。スポンジ膜220および柔弾性体230が、皮膚表面の形状に合わせて変形することにより、生体との密着を図ることができる。
【0024】
硬質ケース240は、柔弾性体230の外側を覆う蓋付きの円筒状のケースである。この硬質ケース240は、呼吸音計測器10としての形状を維持するとともに、遮音効果を有する。
【0025】
図4は、本発明の実施の形態における呼吸音計測器10を生体の表面に密着させた例を示す図である。呼吸音の計測のためには、例えば、のどや胸部などの皮膚表面に呼吸音計測器10を密着されるのが望ましい。スポンジ膜220および柔弾性体230は容易に変形するため、皮膚の形状に合わせて密着する。強めに接触させてもスポンジ膜220が無限には縮小しないため、マイクロフォン210の収音面が直接皮膚に密着するようなことはなく、音波が採取できなくなるようなことはない。また、スポンジ膜220は空気を含むため、音波を容易に通過させるが、柔弾性体230は特に高い周波数成分に対して遮音特性に優れるため、外来雑音は呼吸音に比べて十分小さく抑制される。
【0026】
また、この構造によれば、呼吸音計測器10の上面を平坦に加工することが容易であり、例えば医療用粘着テープ(サージカルテープ)などによって皮膚に対して容易に固定することができる。
【0027】
図5は、本発明の実施の形態における呼吸音計測器10の他の構成例を示す図である。図5(a)は、生体に接する正面から見た呼吸音計測器10の外形図の例である。図5(b)は、呼吸音計測器10の側面の断面図である。この呼吸音計測器10の他の構成例では、図3の構造の外側に、ビニールなどの柔らかい膜270を、空気を漏らさないように付属させている。さらに、膜270の両側を貫通するように減圧ピストン280を設けている。
【0028】
皮膚に密着させる際には、減圧ピストン280を用いて皮膚と呼吸音計測器10の間を少し減圧する。これにより、呼吸音計測器10と皮膚が密着するよう空気圧がかかるため、生体に動きがあるなどのようにサージカルテープなどでは十分な密着が困難な場合であっても、この呼吸音計測器10によれば十分な密着を確保することができる。
【0029】
[雑音低減器の構成]
図6は、本発明の第1の実施の形態における雑音低減器20の一構成例を示す図である。この第1の実施の形態における雑音低減器20は、パルス性成分検出部130と、パルス性成分除去部140と、時間周波数変換部150と、トーン性成分検出部160と、トーン性成分除去部170と、周波数時間変換部180とを備えている。
【0030】
パルス性成分検出部130は、呼吸音計測器10によって計測された計測呼吸信号からパルス性成分を検出するものである。ここで、パルス性成分とは、他の信号成分よりも極端に大きな極大値を有する信号成分であり、心拍音や他の治療装置の雑音の混入が主たる要因と考えられる。後述するように、パルス性成分検出部130は、計測呼吸信号における極大値を有する区間についてパルスらしさのスコアを計算することにより、パルス性成分として扱うべきか否かを判定する。
【0031】
パルス性成分除去部140は、パルス性成分検出部130によって検出されたパルス性成分を計測呼吸信号から除去するものである。後述するように、パルス性成分除去部140は、検出されたパルス性成分を低減させるとともに、近傍の信号から生成した合成波形を加算することによりパルス性成分を除去する。
【0032】
時間周波数変換部150は、パルス性成分除去部140によってパルス性成分が除去された呼吸信号を時間周波数変換するものである。後述するように、時間周波数変換部150は、例えば短時間フーリエ変換により時間周波数スペクトルに変換する。
【0033】
トーン性成分検出部160は、時間周波数変換部150によって変換された時間周波数スペクトルからトーン性成分を検出するものである。ここで、トーン性成分とは、例えば音声の母音や楽音のように、短時間的には周期性を有するとみなすことができる信号成分を意味する。後述するように、トーン性成分検出部160は、時間周波数スペクトルの時間毎のピーク値を追跡することにより、トーン性成分として扱うべきか否かを判定する。
【0034】
トーン性成分除去部170は、トーン性成分検出部160によって検出されたトーン性成分を時間周波数スペクトルから除去するものである。後述するように、トーン性成分除去部170は、検出されたトーン性成分をカットするような特定周波数成分除去フィルタにより実現される。
【0035】
周波数時間変換部180は、トーン性成分除去部170によってトーン性成分が除去された時間周波数スペクトルに対して周波数時間変換を施すものである。後述するように、周波数時間変換部180は、例えば短時間逆フーリエ変換により周波数時間変換を行う。
【0036】
[パルス性成分検出部の機能]
パルス性成分検出部130は、パルス性成分候補検出部131と、パルス性スコア計算部132と、パルス性判定部133とを備えている。パルス性成分候補検出部131は、呼吸音計測器10によって計測された計測呼吸信号における極大値を含む区間をパルス性成分候補区間として検出するものである。パルス性スコア計算部132は、パルス性成分候補検出部131によって検出されたパルス性成分候補区間について「パルスらしさのスコア」を計算するものである。なお、このパルス性スコア計算部132は、特許請求の範囲に記載のスコア計算部の一例である。パルス性判定部133は、パルス性スコア計算部132によって計算されたパルスらしさのスコアが所定の閾値を満たすパルス性成分候補区間を検出区間として、その検出区間に含まれる信号をパルス性成分として判定するものである。
【0037】
図7は、本発明の第1の実施の形態におけるパルス性成分候補検出部131によるパルス性成分候補区間の検出およびパルス性スコア計算部132によるパルスらしさのスコア計算の例を示す図である。図7(a)は、計測呼吸信号の例である。この計測呼吸信号には、呼吸音波形601とともに、パルス性成分602が含まれている。
【0038】
パルス性成分候補検出部131は、例えば、数十ミリ秒程度の区間毎に信号の振幅603を計算し、図7(b)のように、振幅603が十分に大きな極大値604となっている位置を検出する。そして、図7(c)のように、この極大値604の近傍において所定の閾値605を超える区間をパルス性成分候補区間606として検出する。
【0039】
パルス性スコア計算部132は、パルス性成分候補区間606の信号より、含まれる信号成分が除去すべきパルス性雑音であるか否かを示す「パルスらしさのスコア」を計算する。例えば、図7(d)のように、パルス性成分候補区間606の最大振幅値607(x0)、区間幅608(x1)、最大値の両側における振幅の変化率611(x2)および612(x3)、零交差回数613(x4)を特徴量として計算する。また、図7(e)のように、パルス性成分候補区間606の短時間パワースペクトル620の係数(x5乃至x8)を特徴量として計算する。この例では、これら特徴量は9次元の特徴ベクトルx=[x0, x1,・・・, x8]となる。
【0040】
この特徴ベクトルxに含まれる特長量を統合することにより、パルスらしさのスコアSが算出される。例えば、予め定められた荷重係数w=[w0, w1,・・・, w8]を用いて次式のように荷重和をとることにより、パルスらしさのスコアSが計算される。
【数1】

【0041】
荷重係数wを求めるためには、ヒューリスティックな方法としては、荷重係数wを変えながら多数のデータを処理し、結果が適正な程度になるよう経験的に定めていく方法が考えられる。また、学習による方法としては、集めたサンプルデータに「パルス性成分」または「それ以外」のラベルを付与し、「パルス性成分」グループのスコアを大きくしつつ、「それ以外」のグループのスコアが小さくなるよう荷重係数wを学習する方法が考えられる。学習法として最急降下法を用いる場合を例示すると、まずサンプルデータの番号をkとし、そのサンプルデータのラベルをzkとする。このとき、「パルス性成分」グループであれば「1」、「それ以外」グループであれば「−1」とする。そして、そのサンプルデータから得られるスコアをSkとすると、シグモイド関数Sigm(x)を用いて、次式により示される評価関数J(w)を最小にするように最急降下法により荷重係数wを決定する。
J(w)=Σk(zk − Sigm(Sk))2
なお、上式において総和Σの範囲は、全サンプルデータである。
【0042】
そして、パルス性判定部133は、以下のように所定の閾値Tを用いて、パルス性成分候補区間の信号成分がパルス性雑音であるか否かを判定する。パルス性雑音を含むパルス性成分候補区間は、パルス性成分の検出区間となる。
S≧T; パルス性雑音
S<T; 非パルス性雑音
【0043】
なお、上述の例では線形荷重和によりパルスらしさのスコアSを計算したが、非線形関数を用いて計算しても構わない。例えば、xnに対して、指数、対数、平方根、2乗などの非線形関数を適用したものをx'nとし、x'nに対して上述の数1の式のような荷重和を計算する。その際、どのような非線形関数がよいかは、上述の場合と同様に多数のサンプルデータを集めてラベルを付与し、適正に区別できるような関数を経験的に決定することになる。
【0044】
さらに、主たるパルス性雑音の要因が心拍によるものである場合、上述の特徴量に加えて、以下のような特徴量を利用することにより検出精度を向上させることができる。まず、図8(a)のような典型的な心拍信号の波形631を予め用意しておく。これは、例えば多数の心拍信号を採取し、それらの平均値を計算することにより得られる。パルス性雑音検出時には、パルス成分候補区間の極大値604の位置と、図8(a)の典型的な心拍信号の波形631の最大値632の位置を合わせる。そして、図8(b)乃至(e)のように典型的な心拍信号の波形631をいくつかのスケールに伸縮させて、それぞれのスケールでの心拍信号と入力信号との相関を取り、相関係数を生成する。これらの相関係数を特徴量として上述の特徴ベクトルxに追加する。入力信号を時間tの関数f(t)とし、パルス性成分候補区間の端点をtsおよびteとすると、相関係数rkは次式により計算される。この例では4つの相関係数
【数2】

【0045】
[パルス性成分除去部の機能]
パルス性成分除去部140は、信号低減部141と、波形合成部142と、波形加算部143とを備えている。信号低減部141は、パルス性成分検出部130によって検出された検出区間のパルス性成分の信号を計測呼吸信号において低減するものである。波形合成部142は、検出区間の近傍の信号から合成波形を生成するものである。波形加算部143は、波形合成部142によって生成された合成波形を計測呼吸信号に加算するものである。
【0046】
信号低減部141は、図9(a)の検出区間のパルス性成分の信号を低減する際に、図9(b)のように検出区間とその外側に設けられる遷移区間に対して低減のための荷重関数を乗じる。図9(b)において、αは、典型的には0.0から0.1程度の小さな定数である。これにより、図9(c)のように、検出区間のパルス性成分が低減された波形が得られる。
【0047】
波形合成部142は、図9(c)のパルス性成分が低減された波形において、検出区間を補償するために、図9(e)のような合成波形を生成する。これは例えば、該当区間の前後の前区間および後区間より、検出区間と前後の遷移区間の合計長と同じ長さの信号を抽出し、それぞれに図9(d)のような荷重関数を乗じた後に加算することにより得られる。すなわち、図9(c)の前区間には図9(d)の前区間に対応する荷重関数を乗じ、図9(c)の後区間には図9(d)の後区間に対応する荷重関数を乗じる。より具体的には、入力される信号波形を常に適切な長さのバッファに保存しながら処理していき、パルス性成分が検出された場合に、前区間および後区間に相当する位置の信号をそれぞれ別のバッファにコピーすることが考えられる。ここにいう適切な長さのバッファは、論理的にはパルス性成分の最大長の数倍程度、具体的には数秒程度に相当する容量を有することを想定する。
【0048】
また、前区間および後区間の波形を上述のものよりも長めに抽出し、例えばそれらの相互相関値が最小となるように位相合わせを行い、位相が最もよく合う区間の波形を利用して、上述のような方法で合成波形を生成してもよい。
【0049】
波形加算部143は、波形合成部142により生成された合成波形を、パルス性成分が低減された波形に加算することにより、図9(f)のようなパルス成分除去波形を生成する。これは例えば、図9(g)のような加算のための荷重関数を乗じてから加算することにより実現される。なお、図9(g)の加算のための荷重関数は、図9(b)の低減のための荷重関数と加えると常に1となる関数であり、互いに補完し合う関係にある。
【0050】
[時間周波数変換部の機能]
時間周波数変換部150は、パルス性成分除去部140から供給された呼吸信号を時間周波数変換して、時間周波数信号X(t,k)として生成する。ここで、時間周波数変換としては、短時間フーリエ変換を用いることができる。これは、振幅成分と位相成分に分離して表現される。
【0051】
時間周波数変換部150によって時間周波数変換された時間周波数信号は、例えば図10のように表される。時間tは離散時間であり、周波数kは離散周波数である。時間tと周波数kの交点が時間周波数信号X(t,k)を示している。濃淡の濃さが時間周波数信号の強弱を示しており、濃い部分が強く、薄い部分が弱くなっている。すなわち、ある時間tを想定すると、時間周波数信号は周波数kに応じてある起伏を示している。そして、その起伏は時間の経過に応じて変化している。
【0052】
時間周波数信号を模式的に表すと図11のようになり、トーン性成分が横方向の線状の成分として現れることがわかる。したがって、トーン性成分は、時間毎の周波数スペクトルの極大値を追跡することにより検出することができる。
【0053】
[トーン性成分検出部の機能]
トーン性成分検出部160は、時間周波数スペクトルの時間毎のピーク値(極大値)を追跡することにより、トーン性成分を検出する。トーン性成分検出部160は、スペクトルピーク検出部161と、スペクトルピーク追跡部162と、トーン性判定部163とを備えている。
【0054】
スペクトルピーク検出部161は、時間周波数スペクトルの時間毎の極大値を検出する。例えば、図12(a)のような時間周波数信号では、時刻A乃至Dにおける振幅スペクトルは同図(b)乃至(e)のようになる。すなわち、時刻Aではトーン性成分が含まれておらず、有意なピークは検出されず、なだらかな波形となる。時刻Bでは新たに1つのトーン性成分が発生し、対応する1個所の周波数の波形が極大値を示している。時刻Cでは新たにもう1つのトーン性成分が発生しており、対応する2個所の周波数の波形が極大値を示している。また、時刻Dでは1つのトーン性成分が消滅し、残ったトーン性成分に対応する1個所の周波数の波形が極大値を示している。
【0055】
スペクトルピーク追跡部162は、スペクトルピーク検出部161によって検出された極大値の追跡を行う。スペクトルピーク検出部161が時刻tにおいて所定の閾値以上の極大値を検出した場合、スペクトルピーク追跡部162は直前の時刻t−1において検出された極大値との対応関係を決定する。例えば、周波数の差が所定範囲内に収まり、かつ、振幅の差も所定範囲内に収まる場合には、対応関係があるものとする。
【0056】
トーン性判定部163は、スペクトルピーク追跡部162によって対応づけられた極大値の信号成分がトーン性成分であるか否かを判定する。すなわち、スペクトルピーク追跡部162によって対応づけられた極大値が一定以上の時間に亘って連続している場合にはトーン性成分であると判定する。
【0057】
[トーン性成分除去部の機能]
トーン性成分除去部170は、トーン性成分検出部160によって検出されたトーン性成分を時間周波数スペクトルから除去する。検出されたトーン性成分は図12の太線にて示すものであり、簡単には、各時刻において図13のようなトーン性成分の周波数を除去する特定周波数成分除去フィルタにより、該当する周波数成分のみを除去もしくは低減することができる。
【0058】
[周波数時間変換部の機能]
周波数時間変換部180は、トーン性成分除去部170によってトーン性成分が除去された時間周波数スペクトルに対して周波数時間変換を施す。これは、例えば短時間逆フーリエ変換により実現することができる。これにより、当初の計測呼吸信号からトーン性成分が除去された信号が得られる。
【0059】
[雑音低減器の動作]
図14は、本発明の第1の実施の形態における雑音低減器20の全体処理の流れを示すフローチャートの一例である。まず、呼吸音計測器10によって計測された計測呼吸信号が取得される(ステップS811)。そして、パルス性成分検出部130によってパルス性成分が検出され(ステップS820)、その検出されたパルス性成分がパルス性成分除去部140によって除去される(ステップS830)。
【0060】
また、パルス性成分が除去された信号が時間周波数変換部150によって時間周波数変換され、時間周波数スペクトルが得られる(ステップS814)。時間周波数スペクトルにおいてトーン性成分検出部160がトーン性成分を検出し(ステップS850)、検出されたトーン性成分をトーン性成分除去部170が除去する(ステップS816)。その後、周波数時間変換部180によって周波数時間変換が行われ(ステップS817)、当初の計測呼吸信号からトーン性成分が除去された信号が得られる。
【0061】
図15は、本発明の第1の実施の形態におけるパルス性成分検出処理(ステップS820)の流れを示すフローチャートの一例である。計測呼吸信号が入力されると(ステップS821)、パルス性成分候補検出部131は計測呼吸信号の振幅を計算し(ステップS822)、十分大きな極大値が得られるまでこれを繰り返す(ステップS823)。十分大きな極大値が得られると、パルス性成分候補検出部131は極大値の近傍において所定の閾値を超える区間をパルス性成分候補区間として検出する。
【0062】
パルス性スコア計算部132は、パルス性成分候補区間について特徴量を計算する(ステップS824)。そして、計算された複数の特徴量を統合することにより、パルスらしさのスコアを算出する(ステップS825)。
【0063】
パルス性判定部133は、パルスらしさのスコアが所定の閾値を超えていれば(ステップS826)パルス性成分であると判定し(ステップS827)、そのパルス性成分候補区間は検出区間となる。そうでなければ非パルス性成分であると判定される(ステップS828)。
【0064】
図16は、本発明の第1の実施の形態におけるパルス性成分除去処理(ステップS830)の流れを示すフローチャートの一例である。計測呼吸信号が入力されるとともにパルス性成分が検出されると(ステップS831)、信号低減部141は検出区間における信号を低減する(ステップS832)。
【0065】
波形合成部142は、パルス性成分が低減された波形において検出区間を補償するために、検出区間の前後の前区間および後区間の波形を抽出し(ステップS833)、合成波形を生成する(ステップS834)。
【0066】
そして、波形加算部143は、生成された合成波形を、パルス性成分が低減された波形に加算することにより(ステップS835)、パルス成分除去波形を生成する。
【0067】
図17は、本発明の第1の実施の形態におけるトーン性成分検出処理(ステップS850)の流れを示すフローチャートの一例である。スペクトルピーク検出部161によって時刻tにおける時間周波数スペクトルの周波数軸上のピークが検出されると(ステップS851)、スペクトルピーク追跡部162は直前の時刻t−1において検出されたピークとの対応関係を決定する(ステップS852)。
【0068】
時刻tにて新たに発生したピークがある場合(ステップS853)、そのピークの長さカウンタが用意され、その長さカウンタはゼロにリセットされる(ステップS854)。時刻tにて継続中のピークがある場合(ステップS855)、そのピークの長さカウンタが1つインクリメントされる(ステップS856)。
【0069】
また、時刻tにて消滅したピークがある場合(ステップS857)、トーン性判定部163は、そのピークの長さカウンタの値が所定の閾値以上であれば(ステップS858)、トーン性成分であったと判定する(ステップS859)。一方、そのピークの長さカウンタの値が所定の閾値未満であれば(ステップS858)、トーン性成分でなかったと判定される。
【0070】
この一連の動作を進めながら(ステップS861)続けることで、有意な長さを有するトーン性成分が検出されていくことになる。
【0071】
このように、本発明の第1の実施の形態によれば、計測呼吸信号に含まれるパルス性成分およびトーン性成分が除去され、雑音の低減された呼吸信号を供給することができ、呼吸信号から呼吸状態を分析することが容易になる。
【0072】
なお、この第1の実施の形態ではパルス性成分およびトーン性成分の両者を除去しているが、必要に応じて何れか一方のみを除去するように構成してもよい。すなわち、パルス性成分検出部130およびパルス性成分除去部140を省略してトーン性成分のみを除去するようにしてもよい。また、時間周波数変換部150、トーン性成分検出部160、トーン性成分除去部170および周波数時間変換部180を省略してパルス性成分のみを除去するようにしてもよい。
【0073】
<2.第2の実施の形態>
[呼吸状態表示システムの構成]
図18は、本発明の第2の実施の形態における呼吸状態表示システムの一構成例を示す図である。この第2の実施の形態における呼吸状態表示システムは、呼吸音計測器10と、雑音低減器20と、呼吸状態分析装置30と、表示装置40と、心拍波形計測器50とを備えている。すなわち、第1の実施の形態における呼吸状態表示システムに心拍波形計測器50を加えた構成となっている。呼吸音計測器10、呼吸状態分析装置30および表示装置40については、第1の実施の形態において説明したものと同様のものであるため、説明を省略する。
【0074】
心拍波形計測器50は、生体の心拍波形を計測する計測器である。この心拍波形計測器50は、例えば、パルスオキシメータや心電計、または、心拍音を採取するための加速度センサ等により実現することができる。
【0075】
第2の実施の形態における雑音低減器20は、心拍波形計測器50において計測された心拍波形である計測心拍信号に基づいて、計測呼吸信号に含まれる心拍音を推定して、その心拍音を削減する。計測呼吸信号と計測心拍信号は同一の生体から取得されたものであり、計測心拍信号から推定された心拍音を計測呼吸信号から減算することにより、パルス性成分の雑音としての心拍音を削減する。
【0076】
[雑音低減器の構成]
図19は、本発明の第2の実施の形態における雑音低減器20の一構成例を示す図である。この雑音低減器20は、時間同期バッファ330と、時間同期器340と、心拍音推定器350と、減算器360と、心拍区間検出器370と、呼吸区間検出器380と、係数更新器390とを備えている。信号線19には呼吸音計測器10からの計測呼吸信号が入力される。信号線59には心拍波形計測器50からの計測心拍信号が入力される。
【0077】
時間同期器340は、計測呼吸信号と計測心拍信号とのズレ量を計測して両者の同期を図るものである。時間同期バッファ330は、時間同期器340により計測されたズレ量に基づいて計測呼吸信号と計測心拍信号とを同期させるためのバッファである。この時間同期バッファ330によって同期化された呼吸信号は、信号線339を介して減算器360に供給される。なお、これら時間同期バッファ330および時間同期器340は、特許請求の範囲に記載の時間同期部の一例である。
【0078】
心拍音推定器350は、計測呼吸信号に含まれる心拍音を計測心拍信号に基づいて推定するものである。すなわち、この心拍音推定器350は、電気的波形として得られた心拍波形を音に近い形に変化させるフィルタとしての役割を有する。この心拍音推定器350によって推定された心拍音は、信号線359を介して減算器360に供給される。この心拍音推定器350は、例えば、FIR(Finite Impulse Response:有限インパルス応答)型フィルタにより実現することができる。このFIR型フィルタは、サンプル数をnとし、計測心拍信号をp(n)、推定心拍音をp^(n)、フィルタ係数をf(n)、フィルタ係数のタップ長をKとして、タップ番号kについて次式のように総和演算を行う。なお、タップ番号kは、0からK−1の整数値を示す。
【数3】

【0079】
減算器360は、計測呼吸信号から推定心拍音を減算するものである。ここで、時間同期バッファ330から供給された計測呼吸信号をx(n)、心拍音推定器350によって推定された推定心拍音をp^(n)とすると、減算器360から出力される心拍音低減呼吸信号e(n)は次式により表される。
【数4】

【0080】
心拍区間検出器370は、計測呼吸信号において心拍音が含まれる区間である心拍区間を、計測心拍信号に基づいて検出するものである。心拍区間であるか否かの情報は、信号線379を介して係数更新器390に供給される。呼吸区間検出器380は、計測呼吸信号において呼吸音が含まれる区間である呼吸区間を、減算器360から出力された心拍音低減呼吸信号に基づいて検出するものである。呼吸区間であるか否かの情報は、信号線389を介して係数更新器390に供給される。なお、心拍区間検出器370は、特許請求の範囲に記載の心拍区間検出部の一例である。また、呼吸区間検出器380は、特許請求の範囲に記載の呼吸区間検出部の一例である。
【0081】
係数更新器390は、心拍音推定器350におけるフィルタの係数を更新するものである。フィルタの係数の更新は、フィルタ出力である推定心拍音p^(n)と計測呼吸信号x(n)との二乗平均誤差が最小となるように行われる。すなわち、推定心拍音p^(n)と計測呼吸信号x(n)の差e(n)の二乗平均誤差を評価関数Jとして、次式により定義される。
【数5】

【0082】
上述の数3に数5を代入して、fを定数として偏微分すると、以下のように係数fを更新するための式が得られる。
f(n+1)=f(n)+μe(n)x(n−k)
ここで、μは収束定数であり、経験的に定数を定めてもよく、また、学習同定法を用いて入力信号の状態に合わせて変化させるようにしてもよい。また、x(n−k)は呼吸音のない心拍音である。生体において呼吸を意識的に数秒程度止めることにより、呼吸音を含まない心拍音信号を採取可能であり、これを初期値としてフィルタ係数を生成することができる。
【0083】
この係数更新器390は、非呼吸区間かつ心拍区間の信号を利用してフィルタ係数の更新を行う。そのため、心拍区間検出器370および呼吸区間検出器380からの情報を受け、呼吸区間ではなく、かつ、心拍区間であるタイミングでフィルタ係数の更新を行う。これにより、呼吸音と心拍音が重なっていない信号部分を利用して計数を更新することができ、心拍音推定器350においてより雑音の少ない心拍音推定を実現することができる。なお、この係数更新器390は、特許請求の範囲に記載の係数更新部の一例である。
【0084】
[雑音低減器の処理概要]
図20は、本発明の第2の実施の形態における雑音低減器20の処理の概要を示す図である。
【0085】
心拍波形計測器50から信号線59を介して入力された計測心拍信号は、心拍音推定器350によって心拍音が推定され、信号線359を介して減算器360に供給される。呼吸音計測器10から信号線19を介して入力された計測呼吸信号は、時間同期バッファ330および時間同期器340によって同期化されて信号線339を介して減算器360に供給される。減算器360では、同期化呼吸信号から推定心拍音が減算されて、心拍音の低減された呼吸信号が出力される。
【0086】
[時間同期器の構成]
図21は、本発明の第2の実施の形態における時間同期器340の一構成例を示す図である。この時間同期器340は、絶対値生成部341および342と、ローパスフィルタ343および344と、可変遅延部345と、減算器346と、最小値探索部347とを備えている。
【0087】
絶対値生成部341は、時間同期バッファ330から信号線339を介して供給された計測呼吸信号の絶対値を生成するものである。ローパスフィルタ343は、絶対値生成部341の出力の低周波数成分のみを通過させるフィルタである。これにより、計測呼吸信号から高周波成分を除去した波形が得られる。
【0088】
絶対値生成部342は、心拍波形計測器50から信号線59を介して入力された計測心拍信号の絶対値を生成するものである。ローパスフィルタ344は、絶対値生成部342の出力の低周波数成分のみを通過させるフィルタである。これにより、計測心拍信号から高周波成分を除去した波形が得られる。
【0089】
可変遅延部345は、最小値探索部347からの指示に従ってローパスフィルタ344の出力を遅延させるものである。また、この可変遅延部345は、遅延させた時間に相当する時間ズレ量を、信号線349を介して時間同期バッファ330に供給する。
【0090】
減算器346は、ローパスフィルタ343の出力と可変遅延部345によって遅延されたローパスフィルタ344の出力との差分を生成するものである。
【0091】
最小値探索部347は、減算器346によって生成された差分が最小値になる時間ズレ量を探索するものである。すなわち、この最小値探索部347が、可変遅延部345に対して指示する遅延時間を順次変化させ、減算器346によって生成された差分が最小値になった際に、その遅延時間が可変遅延部345から時間ズレ量として出力される。
【0092】
[時間同期バッファの構成]
図22は、本発明の第2の実施の形態における時間同期バッファ330の一構成例を示す図である。この時間同期バッファ330は、複数段のFIFOバッファ331と、選択器338とを備える。
【0093】
FIFOバッファ331は、呼吸音計測器10から信号線19を介して入力された計測呼吸信号を順次保持する先入れ先出し(FIFO:First-In First-Out)型バッファである。このFIFOバッファ331には所定の時間間隔毎に計測呼吸信号が入力され、新たな計測呼吸信号が入力される度に1段ずつシフトされていく。したがって、FIFOバッファ331の各段には、所定の時間間隔の定数倍の遅延を有する計測呼吸信号が保持される。このFIFOバッファ331は各段から値を読み出すことができるように構成されており、それらの値は選択器338に供給される。
【0094】
選択器338は、FIFOバッファ331の各段に保持されている値の何れか1つを選択するものである。この選択器338には時間同期器340から信号線349を介して時間ズレ量が供給されており、この時間ズレ量に対応するFIFOバッファ331の段に保持されている値が選択され、信号線339に出力される。すなわち、時間同期器340によって指示された時間ズレ量の遅延を有する計測呼吸信号が信号線339を介して出力される。
【0095】
[心拍区間検出器の構成]
図23は、本発明の第2の実施の形態における心拍区間検出器370の一構成例を示す図である。この心拍区間検出器370は、絶対値生成部372と、ローパスフィルタ373と、区間検出部374とを備えている。
【0096】
絶対値生成部372は、心拍波形計測器50から信号線59を介して入力された計測心拍信号の絶対値を生成するものである。ローパスフィルタ373は、絶対値生成部372の出力の低周波数成分のみを通過させるフィルタである。これにより、計測心拍信号から高周波成分を除去した波形が得られる。
【0097】
区間検出部374は、ローパスフィルタ373から出力された心拍信号において所定の閾値を超える区間を検出するものである。すなわち、この区間検出部374は、所定の閾値を超えてから再び所定の閾値を下回るまでの区間を心拍区間として検出する。ここで、所定の閾値は、例えば、平均的なピーク値に対して1割程度を想定することができる。この区間検出部374によって検出された心拍区間か否かの情報は信号線379を介して係数更新器390に供給される。
【0098】
[呼吸区間検出器の構成]
図24は、本発明の第2の実施の形態における呼吸区間検出器380の一構成例を示す図である。この呼吸区間検出器380は、バンドパスフィルタ381と、絶対値生成部382と、ローパスフィルタ383と、区間検出部384とを備えている。
【0099】
バンドパスフィルタ381は、減算器360から信号線369を介して出力された心拍音低減呼吸信号のうち所定の周波数帯域の信号成分を通過させるフィルタである。ここで、呼吸音の帯域が2KHz程度までであり、心拍音が100Hz以下であることを考慮すると、所定の周波数帯域としては、例えば100Hzから2KHzの周波数帯域が想定される。
【0100】
絶対値生成部382は、バンドパスフィルタ381を通過した信号の絶対値を生成するものである。ローパスフィルタ383は、絶対値生成部382の出力の低周波数成分のみを通過させるフィルタである。このローパスフィルタ383において通過される基準となる周波数としては、生体の呼吸頻度を考慮すると、例えば5Hz程度を想定することができる。これにより、心拍音低減呼吸信号から呼吸区間検出に必要な成分を抽出した波形が得られる。
【0101】
区間検出部384は、ローパスフィルタ383から出力された呼吸信号において所定の閾値を超える区間を検出するものである。すなわち、この区間検出部384は、所定の閾値を超えてから再び所定の閾値を下回るまでの区間を心拍区間として検出する。ここで、所定の閾値は、例えば、平均的なピーク値に対して1割程度を想定することができる。この区間検出部384によって検出された呼吸区間か否かの情報は信号線389を介して係数更新器390に供給される。
【0102】
[雑音低減器の動作]
図25は、本発明の第2の実施の形態における雑音低減器20の全体処理の流れを示すフローチャートの一例である。まず、呼吸音計測器10によって計測された計測呼吸信号が取得される(ステップS911)。また、心拍波形計測器50によって計測された計測心拍信号が取得される(ステップS912)。そして、時間同期バッファ330および時間同期器340によって、計測呼吸信号と計測心拍信号とが時間同期化される(ステップS913)。
【0103】
また、心拍音推定器350が、計測呼吸信号に含まれる心拍音を計測心拍信号に基づいて推定して、推定心拍音を出力する(ステップS914)。そして、減算器360が、計測呼吸信号から推定心拍音を減算する(ステップS915)。これにより、心拍音低減呼吸信号が得られる。
【0104】
図26は、本発明の第2の実施の形態におけるフィルタ更新処理の流れを示すフローチャートの一例である。まず、呼吸区間検出器380が、計測呼吸信号における呼吸区間を心拍音低減呼吸信号に基づいて検出する(ステップS921)。また、心拍区間検出器370が、計測呼吸信号における心拍区間を計測心拍信号に基づいて検出する(ステップS922)。
【0105】
そして、心拍区間であり、かつ、非呼吸区間である場合において(ステップS923)、係数更新器390が、心拍音推定器350におけるフィルタの係数を更新する(ステップS924)。
【0106】
これらフィルタ更新処理は、上述の雑音低減器20の全体処理と並行して常時繰り返される。これにより、生体からの呼吸信号取得の際に、生体の状態に合わせて心拍音を除去することができる。
【0107】
このように、本発明の第2の実施の形態によれば、計測呼吸信号に含まれる心拍音が除去され、雑音の低減された呼吸信号を供給することができ、呼吸信号から呼吸状態を分析することが容易になる。
【0108】
なお、本発明の実施の形態は本発明を具現化するための一例を示したものであり、本発明の実施の形態において明示したように、本発明の実施の形態における事項と、特許請求の範囲における発明特定事項とはそれぞれ対応関係を有する。同様に、特許請求の範囲における発明特定事項と、これと同一名称を付した本発明の実施の形態における事項とはそれぞれ対応関係を有する。ただし、本発明は実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において実施の形態に種々の変形を施すことにより具現化することができる。
【0109】
また、本発明の実施の形態において説明した処理手順は、これら一連の手順を有する方法として捉えてもよく、また、これら一連の手順をコンピュータに実行させるためのプログラム乃至そのプログラムを記憶する記録媒体として捉えてもよい。この記録媒体として、例えば、CD(Compact Disc)、MD(MiniDisc)、DVD(Digital Versatile Disk)、メモリカード、ブルーレイディスク(Blu-ray Disc(登録商標))等を用いることができる。
【符号の説明】
【0110】
10 呼吸音計測器
20 雑音低減器
30 呼吸状態分析装置
40 表示装置
50 心拍波形計測器
130 パルス性成分検出部
131 パルス性成分候補検出部
132 パルス性スコア計算部
133 パルス性判定部
140 パルス性成分除去部
141 信号低減部
142 波形合成部
143 波形加算部
150 時間周波数変換部
160 トーン性成分検出部
161 スペクトルピーク検出部
162 スペクトルピーク追跡部
163 トーン性判定部
170 トーン性成分除去部
180 周波数時間変換部
210 マイクロフォン
220 スポンジ膜
230 柔弾性体
240 硬質ケース
250 コネクタ
270 膜
280 減圧ピストン
330 時間同期バッファ
331 FIFOバッファ
338 選択器
340 時間同期器
341、342、372、382 絶対値生成部
343、344、373、383 ローパスフィルタ
345 可変遅延部
346 減算器
347 最小値探索部
350 心拍音推定器
360 減算器
370 心拍区間検出器
374、384 区間検出部
380 呼吸区間検出器
381 バンドパスフィルタ
390 係数更新器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体から取得された第1の信号からパルス性成分を検出するパルス性成分検出部と、
生体から取得された呼吸音を含む第2の信号から前記検出されたパルス性成分を除去するパルス性成分除去部と
を具備する呼吸信号処理装置。
【請求項2】
前記第1および第2の信号は同一の呼吸音を計測した計測呼吸信号であり、
前記パルス性成分検出部は、
前記第1の信号における極大値を含む区間をパルス性成分候補区間として検出するパルス性成分候補検出部と、
前記パルス性成分候補区間についてパルスらしさのスコアを計算するスコア計算部と、
前記パルスらしさのスコアが所定の閾値を満たす前記パルス性成分候補区間を検出区間として当該検出区間に含まれる信号を前記パルス性成分として判定するパルス性判定部とを備える
請求項1記載の呼吸信号処理装置。
【請求項3】
前記パルス性成分除去部は、
前記検出されたパルス性成分を前記第1の信号において低減させる信号低減部と、
前記検出区間の近傍の信号から合成波形を生成する波形合成部と、
前記合成波形を前記第1の信号に加算する波形加算部とを備える
請求項2記載の呼吸信号処理装置。
【請求項4】
前記第1の信号は生体の心拍波形を計測した計測心拍信号であり、
前記第2の信号は生体の呼吸音を計測した計測呼吸信号であり、
前記計測呼吸信号と前記計測心拍信号とを同期させる時間同期部をさらに具備し、
前記パルス性成分検出部は、前記計測心拍信号から心拍音を推定することにより前記パルス性成分を検出し、
前記パルス性成分除去部は、前記同期した計測呼吸信号から前記推定された心拍音を除去することにより前記パルス性成分を除去する
請求項1記載の呼吸信号処理装置。
【請求項5】
前記心拍音推定部は有限インパルス応答フィルタであり、
前記心拍音が除去された計測呼吸信号に基づいて呼吸区間を検出する呼吸区間検出部と、
前記計測心拍信号に基づいて心拍区間を検出する心拍区間検出部と、
前記呼吸区間に該当せず且つ前記心拍区間に該当する期間において前記有限インパルス応答フィルタにおけるフィルタ係数を更新する係数更新部と
をさらに具備する
請求項4記載の呼吸信号処理装置。
【請求項6】
前記パルス性成分が除去された第2の信号を変換して時間毎の周波数スペクトル信号を生成する時間周波数変換部と、
前記周波数スペクトル信号からトーン性成分を検出するトーン性成分検出部と、
前記周波数スペクトル信号から前記検出されたトーン性成分を除去するトーン性成分除去部と、
前記トーン性成分が除去された周波数スペクトル信号を逆変換する周波数時間変換部と
をさらに具備する請求項1記載の呼吸信号処理装置。
【請求項7】
前記トーン性成分検出部は、
前記周波数スペクトル信号における時間毎のピークを検出するスペクトルピーク検出部と、
前記周波数スペクトル信号における時間毎のピークを時間にまたがって追跡するスペクトルピーク追跡部と、
前記ピークの追跡結果に応じて前記トーン性成分の存在の有無を判定するトーン性判定部とを備える
請求項6記載の呼吸信号処理装置。
【請求項8】
生体の呼吸音を計測した計測呼吸信号を変換して時間毎の周波数スペクトル信号を生成する時間周波数変換部と、
前記周波数スペクトル信号からトーン性成分を検出するトーン性成分検出部と、
前記周波数スペクトル信号から前記検出されたトーン性成分を除去するトーン性成分除去部と、
前記トーン性成分が除去された周波数スペクトル信号を逆変換する周波数時間変換部と
を具備する呼吸信号処理装置。
【請求項9】
生体の呼吸音を計測した計測呼吸信号における極大値を含む区間をパルス性成分候補区間として検出するパルス性成分候補検出手順と、
前記パルス性成分候補区間についてパルスらしさのスコアを計算するスコア計算手順と、
前記パルスらしさのスコアが所定の閾値を満たす前記パルス性成分候補区間を検出区間として当該検出区間に含まれる信号を前記パルス性成分として判定するパルス性判定手順と、
前記計測呼吸信号において前記検出されたパルス性成分を低減させる信号低減手順と、
前記検出区間の近傍の信号から合成波形を生成する波形合成手順と、
前記合成波形を前記計測呼吸信号に加算することにより前記検出されたパルス性成分を除去する波形加算手順と
を具備する呼吸信号処理方法。
【請求項10】
生体の呼吸音を計測した計測呼吸信号を変換して時間毎の周波数スペクトル信号を生成する時間周波数変換手順と、
前記周波数スペクトル信号からトーン性成分を検出するトーン性成分検出手順と、
前記周波数スペクトル信号から前記検出されたトーン性成分を除去するトーン性成分除去手順と、
前記トーン性成分が除去された周波数スペクトル信号を逆変換する周波数時間変換手順と
を具備する呼吸信号処理方法。
【請求項11】
生体の呼吸音を計測した計測呼吸信号と生体の心拍波形を計測した計測心拍信号とを同期させる時間同期手順と、
前記計測心拍信号から心拍音を推定する心拍音推定手順と、
前記同期した計測呼吸信号から前記推定された心拍音を除去する心拍音除去手順と
を具備する呼吸信号処理方法。
【請求項12】
生体の呼吸音を計測した計測呼吸信号における極大値を含む区間をパルス性成分候補区間として検出するパルス性成分候補検出手順と、
前記パルス性成分候補区間についてパルスらしさのスコアを計算するスコア計算手順と、
前記パルスらしさのスコアが所定の閾値を満たす前記パルス性成分候補区間を検出区間として当該検出区間に含まれる信号を前記パルス性成分として判定するパルス性判定手順と、
前記計測呼吸信号において前記検出されたパルス性成分を低減させる信号低減手順と、
前記検出区間の近傍の信号から合成波形を生成する波形合成手順と、
前記合成波形を前記計測呼吸信号に加算することにより前記検出されたパルス性成分を除去する波形加算手順と
をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項13】
生体の呼吸音を計測した計測呼吸信号を変換して時間毎の周波数スペクトル信号を生成する時間周波数変換手順と、
前記周波数スペクトル信号からトーン性成分を検出するトーン性成分検出手順と、
前記周波数スペクトル信号から前記検出されたトーン性成分を除去するトーン性成分除去手順と、
前記トーン性成分が除去された周波数スペクトル信号を逆変換する周波数時間変換手順と
をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項14】
生体の呼吸音を計測した計測呼吸信号と生体の心拍波形を計測した計測心拍信号とを同期させる時間同期手順と、
前記計測心拍信号から心拍音を推定する心拍音推定手順と、
前記同期した計測呼吸信号から前記推定された心拍音を除去する心拍音除去手順と
をコンピュータに実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2012−125367(P2012−125367A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−278706(P2010−278706)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】