説明

呼吸状態のモニタ、診断並びに治療を行うシステム

喘息といった特定の呼吸状態をモニタ、診断並びに治療するシステム並びに方法が開示される。システムはマスク器具を備え、マスク器具はpHセンサ及び熱電対を有する。またシステムは持続陽圧呼吸装置(CPAP)、処理レシーバ、治療用の噴霧器/湿度調整器/加湿器を備える。これらは空気流動手段により接続される。pHセンサ並びに熱電対は、処理レシーバに電気的に接続し、処理レシーバは電気的手段によりCPAP装置並びに治療用の噴霧器/湿度調整器/加湿器を制御する。電気的な接続には、複数のワイヤによるものや無線手段が採用可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、喘息等の呼吸器系疾患を患った患者に対して、特定のパラメータをモニタし、呼吸の治療を促す情報を転送する技術に関する。より詳しくは、本発明は、患者の吐息のpHレベルをモニタし、治療薬の投与頻度並びに治療薬の投与量を決定するデータを提供し、喘息の気道に対する治療を行うものである。
【背景技術】
【0002】
近年、患者の吐息の酸性度或いはpHをモニタし、医療従事者が肺中の気道炎症の度合いを推定することが可能となることが報告されている。気道炎症は、喘息や他の呼吸状態の主要な因子となるものと考えられている。
喘息は、ぜーぜーとした呼吸、咳、胸部の締め付け並びに息切れといった症状を示す。これらの症状には、気道の収縮や炎症も含まれる。気道収縮は、気道周囲の筋肉の締め付けにより生じ、炎症は気道の腫れ或いは刺激を生じせしめる。これらは、喫煙、粉塵、ダニ、ペット、運動、風邪、感染症、天候、花粉などによって誘発される。
【0003】
慢性閉塞性肺疾患(Chronic Obstructive Pulmonary Disease: COPD)、気管支拡張症並びに喘息を患った人々に対する臨床研究によれば、COPD並びに気管支拡張症の患者の吐息は高い酸性度を有することが知られている。このことは、これらの患者が患っている慢性的な炎症を示すものである。この研究において、中程度の喘息症状を患っている患者の吐息から計測された酸性度が、軽度の喘息症状を患っている患者のそれと比較して増加することが明らかとなっている。また、喘息発作中の喘息患者の吐息は、より酸性度が高く、消炎剤治療を施すと、これは中和されることも知られている。
【0004】
このデータは、喘息患者の吐息のpHをモニタすることは、気道内の炎症の度合いを測定するのに有効な方法であることを示している。更に、このデータは、喘息患者の吐息のpHをより詳細にモニタすることが、より適切且つ効果的な治療につながり、喘息発作の頻度を最小限化し、全体としてよりよい喘息管理を可能とすることも示している。
【0005】
米国において1800−2600万人の人々が喘息を患っていると見積もられている。そして、これら喘息患者のうち560万人の人々が18歳未満であると推測され、喘息は、第8番目に悪い慢性疾患とされている。
【0006】
胃食道逆流症(Gastro-Esophageal Reflux Disease: GERD)は喘息を誘発し、米国の成人人口の約40%がこの症状を患っている。また全喘息患者の60−80%がGERDを患っている。胃食道逆流症は、胃から食道へ胃酸が逆流する症状である。頻繁な逆流症状は、潜在的に深刻な問題を引き起こす結果となり、この症状は胃食道逆流症として知られる。GERDは、消化不良や胸焼けの最も一般的な原因である。GERDは、食道からの酸性微小呼吸の兆候を示し、当該呼吸は肺内に侵入し、組織を損傷させ、迷走神経の腫れや炎症を引き起こす。迷走神経の炎症は、食道並びに気管支に多く現れ、気道の収縮を生じせしめる。下部食道括約筋を逆流した酸は、解剖学的損傷を生じせしめ、睡眠呼吸障害や摂食障害を引き起こす。気管支拡張薬は、下部食道括約筋を弛緩させ、喘息状態を誘発するGERDを誘発する。睡眠時無呼吸症候群も逆流症状を引き起こすものとして知られている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
現在のpHのモニタは以下の欠点を有する。
1)侵襲的手順を踏まなければならないこと。
2)特定の患者にとっては、受け入れられないこと。
3)カテーテル或いはカプセルの設置・配置が医療従事者によって行われなければならないこと。
4)カプセルを上部食道括約筋(Upper Esophageal Sphincter: UES)に配設することができないこと。
5)UES評価に対する定義された標準(デメスタ スコア:DeMeester Score)が存在しないこと。
【0008】
したがって、新規なpHモニタ用マスクが本技術分野には必要とされる。該マスクは、電気的或いは無線により処理レシーバと接続するものが必要である。更に処理レシーバが、治療用の噴霧器、湿度調整器或いは加湿器を起動し、これら噴霧器などが喘息或いは他の呼吸症状を治療するものが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、一般的なマスクにて患者の吐息のpHレベルをモニタするものである。また、本発明は、この測定されたpHレベルのデータを処理レシーバへ転送する手段を提供し、これにより処理レシーバは、治療薬の投与頻度並びに投与量を診断並びに決定する。そして、この投与頻度並びに投与量で喘息などの呼吸状態を有する患者に薬剤が投与される。
本発明に係るシステムは、患者の吐息の化学的性質をモニタする。システムは、小型センサを備え、センサは、リアルタイムで患者の気道のpHレベルをモニタする。このセンサは、患者の呼気を冷却して呼気に含まれる水分を凝結して得られる固体状態を利用する。
【0010】
一般的な呼吸管理用マスクに小型化されたpHセンサ並びにデータ転送手段が取付けられる。データ転送手段としては、ワイヤで直接的にpHに関するデータを処理レシーバへ接続するものや、アンテナ付送信機により無線でpHに関するデータを処理レシーバへ送信するものが挙げられる。pHセンサの温度は、患者の吐息の露点よりも低く設定される。この設定は、固体状態にするためのペルティエ接合により行われ、ペルティエ接合はヒートシンクの一方の面に固定される。更に、熱電対が取り付けられ、熱電対はセンサの温度をモニタする。これにより、より精度の高いpHの算出が可能となる。センサの温度を露点よりも低く保つことで、患者の吐息は液状に凝固する。そして、この液体はセンサの表面近傍に付着する。凝固した液体に対して行うことで、pHのモニタが十分且つそれ以上に精度よく行われることが知られている。アンテナ付送信機は、観察して得られたpHのデータを転送する。転送方法は、多くの無線方法のうち1つ、例えば、無線周波数エネルギを用いるものであってもよい。代わりに、観察されたpHのデータが直接的なワイヤ接続により転送されるものであってもよい。
【0011】
pHのデータは所定間隔をおいて、処理レシーバへ送信され、或いは、更新される。この時間間隔は、患者の必要に応じて変更可能である。処理レシーバは、治療器具或いは加湿器などに接続する。処理レシーバは、得られた化学的データを計算並びに診断し、どの治療装置をいかなる頻度で作動させるかを決定する。
【0012】
本発明に係るマスクは、凝固した液体を除去する手段を備える。この手段により、凝固した液体は排出ポート或いはマスクに接続した空気流動用ホースを介して除去される。これにより、不必要且つ蓄積される吐息からの凝縮液を除去可能となる。
【0013】
本発明のこれらの特徴及び他の特徴並びに有利な効果は、以下の説明並びに請求の範囲を参照してより具体的に理解可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、患者の吐息から生理学的パラメータをモニタするシステム並びに方法を提供する。本発明は、このパラメータ情報を処理コンピュータ/レシーバに送信する。処理コンピュータ/レシーバは、送られた情報を診断する。システムは、算出結果に基づき、電気的に接続された噴霧器/湿度調整器/加湿器を作動させ、また、この作動を停止させる。また、システムは、持続陽圧呼吸装置(Continuous Positive Airway Pressure Device: CPAP Device)を組み込んだものであってもよい。
【0015】
図1は、いくつかの構成要素を備える本発明に係るシステム(10)を示す。図示の如く、一般的なマスク器具(36)は、固定用ストラップ或いはヘッドギア器具(38)を備える。一般的なマスク器具(36)は一般的に樹脂製及び/又はシリコン材料から製造され、患者の鼻部或いは鼻部及び口部に適合するように形成される。これにより、患者の呼吸状態を助けることが可能となる。
固定用ストラップ(38)は、可撓性材料から作られ、患者の頭部を囲むように形成される。これにより、マスクは患者の顔及び口部を略塞ぐようになる。また、これにより、マスクの境界部からの外気の流入を最小限化できる。
本発明は、図示のマスクの形態並びに種類に限られるものではなく、他のマスクによっても本発明の目的、即ち、患者の呼吸状態のモニタ、診断並びに治療を達成することが可能である。
【0016】
一般的なマスク器具(36)の前面部にはヒートシンク(34)が備えられる。ヒートシンク(34)は良好な熱伝導特性を有する材料から構成される。このような材料としては、特定の金属要素或いは合金などが挙げられる。ヒートシンク(34)並びにフィン(35)に用いられる材料として、アルミニウム、銅、銀並びに金が挙げられる。ヒートシンク(34)は、フィン(35)を備え、フィン(35)はヒートシンク(34)の表面積を増加させ、システムにより生じた熱量を放散させる。ヒートシンク(34)は、図示の如く螺子(37)によりマスクに固定される。しかしながら、他の一般的な固定手段(例えば、接着剤など)によりヒートシンク(34)が取付けられるものであってもよい。
【0017】
一般的なマスク器具(36)は、CPAP装置(16)の出口ポート(22)に接続する。この接続には、空気流動用ホース(18)が用いられる。ホース(18)は、様々な材料から形成可能である。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル、或いはシリコンといった樹脂が、ホース(18)の形成に使用可能である。ホースに用いられる材料は、水或いは酸に対して耐性を有するものが好ましい。更に、本発明に用いられる医薬品と干渉或いは相互作用しないものが好ましい。CPAP装置からの空気はポート(22)から排出され、空気流動用ホース(18)の長手方向に沿って移動し、患者の顔面を覆う一般的なマスク器具(36)内部に形成されたサンプリング用空洞部へ移動する。
CPAP装置(16)は、制御手段(20)を備える。制御手段(20)は、装置(16)により作り出される空気の体積並びに付属的に取付けられた加湿装置の出力の増減を行う。CPAP装置並びに加湿装置は、標準的なプラグ(12)並びにプラグ(14)を用いて、電源により電力供給が行われる。
【0018】
図示の如く、ヒートシンク(34)は電気ワイヤ(29)と接続し、電気ワイヤ(29)は処理レシーバ(26)に接続する。
電気ワイヤ(29)は、典型的には、内部コアを備え、該内部コアは電導性金属材料から構成される。この内部コアが非電導性ジャケットに覆われる。
処理レシーバ(26)は、CPAP装置(16)に接続し、この接続は、電気ワイヤ(26)により行われる。これにより、CPAP装置(16)により生じた空気を動作させ、この空気は一般的なマスク器具(36)へ送られる。ワイヤ(31)は、処理レシーバ(26)と治療用の噴霧器/湿度調整器/加湿器(32)とを接続する。他の方法として無線手段(40)が利用されてもよい。無線手段(40)によりアンテナ(28)が取付けられた処理レシーバ(26)と治療用の噴霧器/湿度調整器/加湿器(32)との通信が可能となる。図1には詳細に示されていないが、無線手段は、一般的なマスク器具(36)と処理レシーバ(26)とを通信可能とするものであってもよい。加えて、無線手段は、処理レシーバ(26)とCPAP装置(16)との間の通信を可能とするものであってもよい。無線手段が、様々な構成要素間の通信を可能とするものであってもよく、無線周波、電磁波、音波或いは光通信などの手段を無線装置が採用されてもよい。
【0019】
治療用の噴霧器/湿度調整器/加湿器(32)は、空気流動可能にホース(18)へ接続する。噴霧器/湿度調整器/加湿器(32)のホース(18)上の接続点は、CPAP装置(16)と一般的なマスク器具(36)とをつなぐ経路中に形成される。治療用の噴霧器/湿度調整器/加湿器(32)は、医薬貯蔵用チャンバ(33)を備える。チャンバ(33)は、様々な種類の治療用薬剤を収容可能であり、治療用薬剤は、空気流動システムを介して患者へ運搬される。この運搬は、処理レシーバ(26)により指定された間隔で間欠的に行われるものであってもよい。
【0020】
図2は、一般的なマスク器具の側方断面図であり、マスク(36)、ヒートシンク(34)並びにpH検知手段(46)の配置並びに構成要素を詳細に示す。
図示の如く、マスク(36)は、サンプリング用チャンバ(39)を備え、チャンバ(39)はマスク(36)と患者の顔面領域との間に形成されている。これにより、マスク(36)は、患者の呼吸器系と空気流動可能に接続する。このサンプリング用チャンバ(39)内では、患者の呼吸による空気流動が生じ、この空気流動は一方向バルブ(42)を介して、濃縮チャンバ(41)内部に流入する。濃縮チャンバ(41)は、マスク外表面とヒートシンク器具の背面との間に形成される。ヒートシンク(34)は、マスク器具(36)に螺子(37)により取り付けられている。尚、ヒートシンク(34)が螺子(37)の代わりに、接着剤或いは他の取付技術により取付けられるものであってもよい。
【0021】
図3は、図1から取り出された断面図であり、サンプリング板上のpHセンサ、冷却用軸部、熱電対、流体溜め部の概略的配置を示す。サンプリング板は、患者の吐息を凝縮し、留めるものである。サンプリング板(43)は、患者の吐息を凝縮する役割を担う。そして、サンプリング板(43)は、液体化した吐息成分を蓄え、センサがその液体に浸されるようにする。センサは、液体のpHレベルをモニタする。
サンプリング板(43)は、一般的に、熱伝導特性が良好な材料から形成され、例えば、特定の金属要素或いは合金がこのような材料として例示できる。このような金属として、具体的には、アルミニウム、銅、銀或いは金が例示される。図3は、pHセンサ(46)、冷却用軸部の頭部(56)、熱電対(52)並びに流体溜め部領域(58)の概略的配置を示す。流体溜め部領域(58)は、凝縮された吐息を蓄える。pHセンサ(46)は、金属製アンチモン或いは同種の合金から構成される。センサ(46)には複数のワイヤ或いは無線手段が取付けられる。これにより、センサ(46)によりモニタされたアナログのpH情報が処理レシーバ(26)と通信されることとなる。同様に、熱電対は、標準的な金属要素から製造される。熱電対は、複数のワイヤ或いは無線手段を備え、熱電対によりモニタされたアナログの温度情報が処理レシーバ(26)に通信されることとなる。冷却用軸部の頭部(56)は、冷却用軸部の一部を構成し、サンプリング板(43)に侵入する。そして、頭部(56)は、最終的に、ペルティエ接続(50)(図4参照)と接続する。冷却用頭部(56)並びに軸部本体(54)(図4参照)は、一般的に、良好な熱伝導特性を有する材料から製造される。このような材料として、例えば特定の金属要素及び合金が挙げられる。具体例として、このような材料として、アルミニウム、銅、銀及び金が挙げられる。冷却用頭部(56)は、サンプリング板(43)と接続し、サンプリング板(43)の温度を下げる。溜め部領域(58)は吐息の凝縮を促し、吐息を液体化する。凝縮作用により得られた液体は、溜め部領域(58)に蓄えられ、pHセンサ(46)を覆い、pHセンサ(46)と接触する。
熱電対(52)とpHセンサ(46)は、冷却用軸部頭部(56)内部に形成された内孔部に取付けられる。熱電対(52)は、図示の如く、冷却用軸部頭部(56)内部に配されている。pHセンサ(46)は、冷却用軸部頭部(56)を越えて、溜め部領域(58)内部まで延設する。本発明は、図示例に限られるものではなく、熱電対(52)とpHセンサ(46)に対して、これらの性能を低減させない限り、他の取付け位置を採用することも可能である。例えば、センサ(46)の頭部が、溜め部領域(58)底部から溜め部領域(58)に入り、サンプリング板(43)の背面側へ貫通するようにセンサ(46)が取り付けられてもよい(図4参照)可能ならば、サンプリング板(43)の穴部(45)が螺子切加工され、螺子(37)を収容可能としてもよい。
【0022】
収集領域(47)内において、図3に示す溜め部領域(58)はダンベルのような形状をしている。しかしながら、他の様々な形状も採用可能であり、側部の曲線部及び寸法が凝縮された吐息を捕捉し、液体を蓄えるように適宜形成可能である。このように形成された溜め部領域(58)に蓄えられた液体にpHセンサ(46)が浸される。
【0023】
図4は図1から取り出された側方断面図であり、ヒートシンク(34)、固体状態ペルティエ接合、冷却伝達用軸部の胴体部(54)及び頭部(56)、熱電対(52)及びpHセンサ(46)の相対的位置関係を詳細に示す。
図4に示す如く、ペルティエ接合(50)は、ヒートシンク(34)の背面部と接続する。ペルティエ接合は、ワイヤ(51)を介して、直流電源と接続する。直流電源としては、電池(図示せず)が挙げられ、0.5V以上12V以下の電圧を発生させる。ペルティエ接合(50)は、ヒートポンプのように機能し、冷却用軸部の胴体部(54)及び頭部(56)から熱を奪い、これらの温度を低減させる。更に胴体部(54)及び頭部(56)から除去された熱をヒートシンク(34)及びフィン(35)へ伝達する。伝達された熱は、これらにより、大気中に放散される。
ペルティエ接合(50)は冷却用頭部(56)の温度並びにこれに接続する構成要素の温度を下げる。これにより、隣接する溜め部領域(58)及びサンプリング板(43)の温度が下がる。このような作用の全体的な効果として、これら金属部材の表面が露点を下回ることとなる。これによりサンプリングされた吐息が凝縮し、溜め部領域(58)内に液体化された吐息成分が蓄積される。
【0024】
pHセンサ(46)のワイヤ(48)と熱電対(52)のワイヤ(49)は、電気的に接続し、更に有線或いは無線手段にこれらワイヤ(48,49)が接続する。有線或いは無線手段は処理レシーバ(26)と通信可能である。無線手段と接続する場合には、ワイヤ(48,49)は、アンテナ(図示せず)の内部にこれらの終端部を備える。これによりアンテナと接続し、アンテナは無線式に処理レシーバ(26)と接続する。
【0025】
このような方式の代わりに、濃縮されていない吐息のpHを直接的に計測可能な非液体用pH検知手段を用いてもよい。
【0026】
図5は、治療用の噴霧装置/湿度調整装置/加湿装置(32)を概略的に示す図である。
ベースユニットは、オン/オフ・スウィッチ(102)、操作ライト(104)、医薬品用チャンバ(32)及び接続部材(108)を備える。接続部材(108)は空気流動用ホース(18)に取付けられる。
治療用の噴霧装置/湿度調整装置/加湿装置(32)は、外殻体を備え、外殻体は様々な種類の医薬品並びに電子機器を取り囲む。電子機器は医薬品運搬をするために機能する。外殻体は様々な種類の材料から形成可能であり、例えば、ポリエチレン、ポリスチレン、ABS、ナイロン(登録商標)、デルリン(登録商標)或いはポリエチレンテレフタレート(PET)がこのような材料として例示可能である。治療用の噴霧装置/湿度調整装置/加湿装置(32)は処理レシーバ(26)と通信可能に接続する。この接続は、直接的にワイヤ(図示せず)を用いるものであってもよいし、アンテナ手段(110)を備える無線方式で行われるものであってもよい。
ベースユニット及び治療用の噴霧装置/湿度調整装置/加湿装置(32)の様々な構成要素は、樹脂製或いは金属製材料から形成可能である。操作ライト(104)は、LED、LCD、蛍光発色体、ハロゲン或いは他の手段からなり、オン/オフ状態や医薬品用チャンバが空であることを示すなどの機能を有する。尚、複数の操作ライトを設け、これら操作ライトに互いに異なる機能を持たせてもよい。粒子の霧状化並びに加湿プロセスは、従来からの技術を適宜採用することが可能である。多くの市販される装置は、治療用の噴霧装置/湿度調整装置/加湿装置(32)に対する基本的要求を満足するものである。このような装置の例として、オムロン・ヘルスケア・インコーポレイテッド(イリノイ州バーノンヒルズ)により製造される「MicroAir Portable Ultrasonic Nebulizer」(マイクロエア 携帯式超音波噴霧器)が例示可能である。この装置を改造或いは同種の装置を製造し、次のような機能を持たせてもよい。(1)処理レシーバ(26)により、離れた場所から作動可能とする機能。(2)図5に示す如く、適切な接続部(108)によって空気流動用チューブと接続可能とする機能。
【0027】
医薬品用チャンバ(33)には、液状、気体状或いは粉末状の医薬品が収容される。治療用の噴霧装置/湿度調整装置/加湿装置(32)は処理レシーバ(26)からの指令に従って、空気流動システムにチャンバ(33)に収容された医薬品を投与する。尚、医薬品用チャンバ(33)内に複数種の医薬品が収容されてもよい。これら複数種の医薬品が医薬品用チャンバ(33)内に形成された様々な区画に収容されることが好ましい。また、治療用の噴霧装置/湿度調整装置/加湿装置(32)が、医薬品用チャンバ(33)内に収容された1若しくは複数の薬剤を選択的に投与するものであってもよい。或いは多数の薬剤を組み合わせて投与するものであってもよい。
【0028】
図6は、処理レシーバ(26)の一般的構成要素の電気的概略を単純化して示したものである。中央にマイクロプロセッサ(70)が配されている。マイクロプロセッサ(70)は熱電対及びセンサから供給される情報を処理し、他の装置を制御する内部指令を使用する。マイクロプロセッサ(70)は、EEPROMメモリ・セクションを備え、EEPROMメモリ・セクションは特定のプログラムが処理指令に組み込まれることを可能とする。更に、マイクロプロセッサ(70)は、アナログ信号をデジタル情報に変換する能力を備える必要がある。デジタル情報は、コード化され処理される。処理レシーバ(26)に使用可能なマイクロプロセッサ(70)の例として、PIC16F876 28-pin 8-Bin CMOS FLASH micro-controller(Microchip Technology社製)が挙げられる。この特定のマイクロプロセッサ(70)は、特定の指令のフラッシュメモリのための128KのEEPROMデータ・メモリ・バンクを備え、35ワードの指令セットを利用する。更にマイクロプロセッサ(70)は5つの10ビット・アナログ−デジタル入力を備える。これにより、pHセンサ(46)及び熱電対(52)から得られた情報がアナログ形式からデジタル形式に変換される。デジタル形式のデータはマイクロプロセッサ(70)の指令セットにより処理される。
【0029】
マイクロプロセッサ(70)は、水晶振動子(Timing Crystal)(72)を備え、水晶振動子は、時計の動作を行う。マイクロプロセッサ(70)は電源(69)と接続し、電源(69)から電力供給される。電源は、約12Vの電圧を印加可能である。回路内には、パワートランジスタ(66)が配され、パワートランジスタ(66)は12Vの電源及び5Vのレギュレータ(68)並びにグラウンド(78)と電気的に接続する。
【0030】
センサ(46)からのアナログデータは直接的に接続されるワイヤ或いは無線手段により通信される。このアナログデータは、回路(74)により増幅され、アナログ−デジタル変換モジュールの1つを介してマイクロプロセッサ(70)へ送られる。
【0031】
加えて、熱電対(52)のアナログデータは、直接的に接続されるワイヤ或いは無線手段により通信される。このアナログデータは、回路(74)により増幅され、アナログ−デジタル変換モジュールの他のもう1つを介してマイクロプロセッサ(70)へ送られる。
【0032】
特定の実施形態においては、マイクロプロセッサ(図示せず)内のメモリチップ・セット或いはメモリ回路を用いて、送信されたデータが受信されると、この送信データは記録、圧縮及び格納されてもよい。続いて、格納されたデータは、外部のデータ回収装置にダウンロードされる。データ回収装置は、例えば、コンピュータや他の解析装置であってもよい。
【0033】
図7及び図8はフローチャートであり、処理レシーバ(26)により行われるシーケンシャル・コンピュータ処理の順序を示す。
上述の如く、マイクロプロセッサ(70)はEEPROMメモリ・セクションを備え、これにより、特定のプログラムが処理指令に組み込まれることが可能となる。マイクロプロセッサ(70)内でプログラムされた手順がフローチャート内で概略として示されている。(1)CPAPの補助なしの状態で吐息中の化学成分がモニタされる(120)(図7参照)。(2)CPAPが補助した状態で、吐息中の化学成分と呼吸数がモニタされる(122)(図8参照)。
センサ及び熱電対から得られたアナログ情報がデジタル情報に変換され、マイクロプロセッサへ送られる。マイクロプロセッサは熱電対のデータを用いて、正確なpHレベルを算出する。この算出されたpHレベルはレジストリ内に格納される。必要に応じて、このデータがマイクロプロセッサにより診断されてもよい(140)。またこのデータがメモリバンク内に格納されてもよい。これにより、マイクロプロセッサが診断レポートを作成可能となる(150)。
【0034】
格納されたデータは、閾値或いは範囲と比較される(160)。この閾値或いは範囲は、マイクロプロセッサ(70)の指令セット内でプログラムされたものである。例えば、もしpHレベルが閾値に達していないならば、何も動作を生じさせず、指令セットは、吐息中の化学成分の読取りに戻る(図7参照)。或いは吐息成分及び呼吸数のモニタに戻る(図8参照)。もし、pHレベルが閾値に達するならば、マイクロプロセッサ(70)は適切な治療を決定する(170)。
【0035】
これらのコンピュータ処理は、検知、記録、解析及び適切な治療薬の投与を継続的に行うことを可能とする。これにより、患者の特定の呼吸状態を管理する。
【0036】
本発明は、(1)モニタ、(2)診断、(3)呼吸器系疾患の治療をCPAP治療を用いて或いはCPAP治療を用いずに行うものである。
【0037】
本発明は、特定の実施形態を参照して詳細に説明されてきたが、様々な変更や改良を本発明の要旨から外れることなしに行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に係るシステムの斜視図であり、システムの様々な構成要素を示す。マスク器具はヒートシンク並びpH検知手段を備える。持続陽圧呼吸装置(Continuous Positive Airway Pressure Device: CPAP Device)がマスク器具に接続する。処理レシーバは電気的にマスク器具に接続する。また、噴霧器/湿度調整器/加湿器は、処理レシーバに接続する。
【図2】一般的なマスク器具の側方断面図であり、マスク及びpH検知手段の位置関係並びに構成要素を示す。
【図3】図1の断面図であり、pHセンサ、冷却用軸部、熱電対及びサンプリング板上の流体溜め部を示す。サンプリング板は患者の吐息を凝縮し、得られた液体を蓄えるものである。
【図4】図2から切り取られた側方断面図であり、ヒートシンク、ペルティエ接合、冷却伝達用軸の胴体部並びに頭部、熱電対及びpHセンサの相対的位置関係を示す。
【図5】噴霧器/湿度調整器/加湿器の概略図であり、オン/オフ・スウィッチ、操作ライト、医薬品収容コンテナ及び空気流動用ホースに取付け可能な接続部材を備えるベースユニットを示す。
【図6】処理プロセッサ内の主要構成要素の電気的概略図である。
【図7】処理プロセッサにより実行されるシーケンシャル・コンピュータ処理の手順を示すフローチャートである。
【図8】処理プロセッサにより実行されるシーケンシャル・コンピュータ処理の手順を示すフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサを使用者の吐息に曝す器具と、
処理レシーバからなり、
前記センサがリアルタイムで前記レシーバと通信することを特徴とする呼吸状態モニタシステム。
【請求項2】
前記器具が一般的なマスクであることを特徴とする請求項1記載のシステム。
【請求項3】
前記センサがpHを検知することを特徴とする請求項1記載のシステム。
【請求項4】
前記呼吸状態が、喘息の状態であることを特徴とする請求項1記載のシステム。
【請求項5】
前記通信が複数のワイヤを用いて行われることを特徴とする請求項1記載のシステム。
【請求項6】
前記通信が無線手段を用いて行われることを特徴とする請求項1記載のシステム。
【請求項7】
前記器具が、使用者の吐息を濃縮するとともに前記センサ近傍に配される手段を備え、
該手段が、前記センサの近傍に液体溜め部を形成することを特徴とする請求項1記載のシステム。
【請求項8】
前記器具が、液体化された吐息のサンプルを連続的に、循環するとともに、新たに濃縮され液体化されたサンプルと交換する手段を備えることを特徴とする請求項7記載のシステム。
【請求項9】
使用者の吐息にセンサを曝す器具と、
処理レシーバからなり、
前記センサは、前記レシーバとリアルタイムで通信し、
前記処理レシーバは、複数種の診断を決定する情報を処理することを特徴とする呼吸状態を監視並びに診断するシステム。
【請求項10】
前記器具が一般的なマスクであることを特徴とする請求項9記載のシステム。
【請求項11】
前記呼吸状態が、喘息の状態であることを特徴とする請求項9記載のシステム。
【請求項12】
前記通信が複数のワイヤを用いて行われることを特徴とする請求項9記載のシステム。
【請求項13】
前記通信が無線手段を用いて行われることを特徴とする請求項9記載のシステム。
【請求項14】
前記センサがpHを検知することを特徴とする請求項14記載のシステム。
【請求項15】
前記器具が、使用者の吐息を濃縮するとともに前記センサ近傍に配される手段を備え、
該手段が、前記センサの近傍に液体溜め部を形成することを特徴とする請求項9記載のシステム。
【請求項16】
前記器具が、液体化された吐息のサンプルを連続的に、循環するとともに、新たに濃縮され液体化されたサンプルと交換する手段を備えることを特徴とする請求項15記載のシステム。
【請求項17】
呼吸状態をモニタするとともに、診断並びに治療を行うシステムであって、
該システムは、センサを使用者の吐息に曝す器具と、
処理レシーバからなり、
前記センサは、前記レシーバと第1のリアルタイム通信を行い、
前記レシーバは、前記情報を処理し、複数種の診断並びに治療を決定し、
前記処理レシーバは、第2の通信を少なくとも1つの治療装置と行い、
該治療装置は、少なくとも1つの治療薬を投与することを特徴とするシステム。
【請求項18】
前記器具が一般的なマスクであることを特徴とする請求項17記載のシステム。
【請求項19】
前記呼吸状態が、喘息の状態であることを特徴とする請求項17記載のシステム。
【請求項20】
前記第1の通信が複数のワイヤを用いて行われることを特徴とする請求項17記載のシステム。
【請求項21】
前記第1の通信が無線手段を用いて行われることを特徴とする請求項17記載のシステム。
【請求項22】
前記第2の通信が複数のワイヤを用いて行われることを特徴とする請求項17記載のシステム。
【請求項23】
前記第2の通信が無線手段を用いて行われることを特徴とする請求項17記載のシステム。
【請求項24】
前記センサがpHを検知することを特徴とする請求項17記載のシステム。
【請求項25】
前記治療が、生体適合剤を用い、
該生体適合剤が酸性状態を中和可能であることを特徴とする請求項17記載のシステム。
【請求項26】
前記治療が、炭酸水素ナトリウムを用いることを特徴とする請求項17記載のシステム。
【請求項27】
前記処理レシーバと、噴霧器、湿度調整器或いは加湿器との間の通信手段を更に備えることを特徴とする請求項17記載のシステム。
【請求項28】
第3の通信により、前記処理レシーバと加圧装置の通信が行われ、
該加圧装置が気道を連続的に拡張することを特徴とする請求項17記載のシステム。
【請求項29】
前記器具が、使用者の吐息を濃縮するとともに前記センサ近傍に配される手段を備え、
該手段が、前記センサの近傍に液体溜め部を形成することを特徴とする請求項17記載のシステム。
【請求項30】
前記器具が、液体化された吐息のサンプルを連続的に、循環するとともに、新たに濃縮され液体化されたサンプルと交換する手段を備えることを特徴とする請求項29記載のシステム。
【請求項31】
センサと、
前記センサに物理的に接続する固体状態冷却手段と、
収集溜め部からなり、
前記冷却手段が前記センサを患者の呼吸成分の露点以下に前記センサの温度を下げ、これにより患者の呼気が液体状に濃縮され、該濃縮された液体が前記溜め部に満たされ、
前記センサが前記溜め部に満たされた液体化した吐息成分内に浸されることを特徴とする呼気化学成分をモニタする器具。
【請求項32】
更に、排出手段を備え、
該排出手段が前記溜め部に満たされた吐息成分を排出し、新たに液体化された患者の吐息濃縮液を収集溜め部に収容可能とすることを特徴とする請求項31記載の器具。
【請求項33】
センサで患者の吐息の化学的パラメータをモニタする段階と、
該化学的パラメータをリアルタイムで且つ所定のサンプリング頻度で前記センサからコンピュータ処理レシーバへ通信する段階からなることを特徴とする呼吸状態をモニタする方法。
【請求項34】
センサで患者の吐息の化学的パラメータをモニタする段階と、
該化学的パラメータをリアルタイムで且つ所定のサンプリング頻度で前記センサからコンピュータ処理レシーバへ通信する段階と、
前記化学的パラメータの情報をコンピュータ処理レシーバにより処理し、患者の吐息中の化学成分を診断する段階からなることを特徴とする呼吸状態をモニタし、診断する方法。
【請求項35】
センサで患者の吐息の化学的パラメータをモニタする段階と、
該化学的パラメータをリアルタイムで且つ所定のサンプリング頻度で前記センサからコンピュータ処理レシーバへ通信する段階と、
前記化学的パラメータの情報をコンピュータ処理レシーバにより処理し、患者の吐息中の化学成分を診断する段階と、
閾値レベルに達したときに所定の機能を実行する段階と、
治療用の噴霧器/湿度調整器/加湿器と通信し、化学的パラメータが閾値レベルに達したとき、前記コンピュータ処理レシーバが前記治療用の噴霧器/湿度調整器/加湿器に指令を送り、1若しくはそれ以上の医薬品を投与する段階からなることを特徴とする呼吸状態をモニタ、診断並びに治療する方法。
【請求項36】
患者の吐息の化学的パラメータを評価可能な環境にセンサを配設する段階と、
リアルタイムで前記化学的パラメータ情報を処理レシーバへ送信する段階と、
前記処理レシーバへ通信された化学的パラメータ情報をデジタル形式に変換する段階からなることを特徴とする呼吸状態をモニタする方法。
【請求項37】
患者の吐息の化学的パラメータを評価可能な環境にセンサを配設する段階と、
リアルタイムで前記化学的パラメータ情報を処理レシーバへ送信する段階と、
前記処理レシーバへ通信された化学的パラメータ情報をデジタル形式に変換し、前記化学的パラメータ情報を診断する段階からなることを特徴とする呼吸状態をモニタ並びに診断する方法。
【請求項38】
患者の吐息の化学的パラメータを評価可能な環境にセンサを配設する段階と、
リアルタイムで前記化学的パラメータ情報を処理レシーバへ送信する段階と、
前記処理レシーバへ通信された化学的パラメータ情報をデジタル形式に変換し、前記化学的パラメータ情報を診断する段階と、
前記化学的パラメータ情報を処理し、様々な治療を決定する段階からなることを特徴とする呼吸状態をモニタ、診断並びに治療する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2007−502688(P2007−502688A)
【公表日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−532411(P2006−532411)
【出願日】平成16年4月15日(2004.4.15)
【国際出願番号】PCT/US2004/011548
【国際公開番号】WO2004/100762
【国際公開日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(505373339)シエラ メディカル テクノロジ インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】