説明

呼識別プログラム

【課題】 呼を識別し、正しい呼の識別情報と途中放棄された呼の識別情報の2つの情報を誤って認識することを防止する呼識別プログラムを提供する。
【解決手段】 モデムを介して交換回線網に接続される装置において実行され、呼を識別する呼識別プログラムであって、呼出コードとともにモデムから受信する呼の識別情報を、受信の時刻情報とともに格納する格納処理と、前記モデムが呼出信号を受信したことを示す呼出コードの受信があったときに、格納された前回受信した呼出コードの受信時刻情報を読み出し、今回受信した呼出コードの受信時刻情報と前回受信した呼出コードの受信時刻情報との差分を算出する差分算出処理と、前記受信時刻情報の差分が、所定時間を超えるか否かを判定し、前記受信時刻情報の差分が、所定時間を超えるときには、前回受信した呼出コードの呼が今回受信した呼出コードの呼とは異なると識別する差分判定処理と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コマンド等の情報から呼を識別する呼識別プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発信者番号により区別したデータボックスに受信データを振り分け蓄積することのできる通信端末装置が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載されている通信端末装置は、送信識別情報や着番号情報を用いてデータボックスに受信データを振り分けて蓄積する。送信識別情報には、端末識別信号、発信者電話番号通信サービスにより交換機から通知される電話番号が挙げられ、着番号情報には、ダイヤルイン・サービスを使用した場合、網から通知される着番号情報が挙げられている。
【0004】
また、インターネットを介したファクシミリ通信において、受信文書を受信者側の所望する方法により自動的に振り分ける画像処理装置が知られている(たとえば、特許文献2参照)。
【0005】
特許文献2に記載されている画像処理装置は、インターネットを介したファクシミリ通信手段により文書を受信し、受信した文書が自動振り分け対象であるか否か判定する。そして、自動振り分けする場合の振り分け方法を判定する条件を予めRAMに記憶させ、送信側から通知されてくる送信識別情報の内容を条件に基づいてチェックする。通信による受信文書が自動振り分け対象であると判定された場合に該当する振り分け方法に応じて通信による受信文書を自動で振り分ける処理を行なっている。
【0006】
このような装置は、一般的に、端末−通信網間について、ナンバーディスプレイサービスやモデムダイヤルインのインターフェース仕様を利用しており、そのようなインターフェース仕様では、モデムチップが、交換機−モデム間で呼についての動作や状態を管理している。
【0007】
図7は、交換機−モデム間について、モデムが発信者番号を受信して通信中となるまでの流れを示すシーケンスチャートである。まず、交換機−モデム間は、監視状態にある。交換機は、交換回線網から呼出信号を受信し、モデムにL1およびL2極性を反転し、続けて情報受信端末起動信号(CAR)を送信する。これに対し、モデムが、一次応答の信号を送信する。次に、交換機が、発信者番号情報を送信する。そして、モデムは、発信者番号情報を受信し、完了したら、受信完了信号を送信する。
【0008】
次に、交換機が呼出信号をモデムに送信する。モデムは呼出信号を受信したのち、二次応答信号を返信し、交換機はL1およびL2の極性を復極する。そして、モデム−交換機は通信中のシーケンスに移行する。このような仕様をもとに、上記の特許文献に記載されるような装置は、モデムチップとの通信にATコマンドを用いることで、モデムからの情報を受信し、モデムを制御している。
【0009】
このような仕様において、交換機が発信側の呼の途中放棄を検出した場合、交換機は回線を開放する。すなわち、交換機は、回線の開放により、回線を監視状態の極性にする。そして、交換機は、以降200msecの間は、次の着信を受付けず、モデムは100msec以上の回線開放状態を検出することで、呼の途中放棄を検出している。
【特許文献1】特開2002−135552号公報
【特許文献2】特開2004−112328号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、呼の途中放棄があった場合に、交換機−モデム間では、正常な動作が行なわれていても、モデムはその動作や状態を上記のような装置に知らせる手段をもっていない。モデムに組み込まれるモデムチップについては、現在世界で数社のみが開発および製造している状況にあり、その動作仕様の詳細は、十分に開示されていない。したがって、通信網とのシーケンスにおいて、モデムチップがどのように動作したか、どういう状態にあるかなどの情報について、モデムチップが外部に知らせるインターフェースが確立していない。また、モデムチップの製造元は海外ベンダーであるために、端末−通信網間インターフェースはANSIなどの海外仕様をベースに開発されており、国内仕様の全てに対応していない。
【0011】
このような事情から、呼の途中放棄があった場合に、上記のような装置で実行されるモデム制御アプリケーションは呼が発信側から途中放棄され終了したことを認識することなく、次のシーケンスに入るのを待つ状態に陥る。すなわち、モデム制御アプリケーションはモデムチップから受け取る次のモデムコマンドをずっと待っている状態となる。ここに別の呼が着信すると、モデムチップはインターフェース条件に従い、シーケンスのはじめから動作を行うことになる。モデムチップは、モデム制御アプリケーションに対して、正しい情報と途中放棄された呼の情報の2つの情報(ナンバーディスプレイの場合は、発信者番号、モデムダイヤルインの場合は、着番号情報)を伝えるため、モデム制御アプリケーションは、途中放棄され既に終了している呼の識別情報を、誤って、現在の呼の識別情報(正しい呼の識別情報)と認識する可能性がある。
【0012】
したがって、モデムを制御するアプリケーションにおいて、標準化されているモデムコマンド(たとえば、ATコマンド)をモデムから受けて、そのモデムコマンドおよびモデムコマンドのタイミングからモデムチップが現在どういう状態にあるのか、通信網に対してどのような動作をしたのかなどを推測し、国内仕様に基づく動作をするように制御する機能が必要である。呼の途中放棄があった場合であっても、モデムチップより伝えられる情報により、正しい情報を把握する方法が必要とされている。
【0013】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、呼を識別し、正しい呼の識別情報と途中放棄された呼の識別情報の2つの情報を誤って認識することを防止する呼識別プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(1)上記の目的を達成するため、本発明の呼識別プログラムは、モデムを介して交換回線網に接続される装置において実行され、呼を識別する呼識別プログラムであって、呼出コードとともにモデムから受信する呼の識別情報を、受信の時刻情報とともに格納する格納処理と、前記モデムが呼出信号を受信したことを示す呼出コードの受信があったときに、格納された前回受信した呼出コードの受信時刻情報を読み出し、今回受信した呼出コードの受信時刻情報と前回受信した呼出コードの受信時刻情報との差分を算出する差分算出処理と、前記受信時刻情報の差分が、所定時間を超えるか否かを判定し、前記受信時刻情報の差分が、所定時間を超えるときには、前回受信した呼出コードの呼が今回受信した呼出コードの呼とは異なると識別する差分判定処理と、を含む一連の処理をコンピュータ読み取り、実行可能にコマンド化させたことを特徴としている。
【0015】
このように、本発明の呼識別プログラムは、時刻情報の差分を判定して、発信者側が呼を途中放棄し終了した呼であるかどうかを検証することで、正しい呼の識別情報と途中放棄された呼の識別情報の2つの情報を誤って認識することを防止することができる。
【0016】
また、呼識別プログラムは、モデムチップ内部の動作を認識することなく、コマンドやコードのみで呼を識別することができる。その結果、国内仕様の端末−通信網間のインターフェースに容易に適用することができる。
【0017】
(2)また、本発明の呼識別プログラムは、前記差分判定処理の結果、前回受信した呼出コードの呼が今回受信した呼出コードの呼とは異なると識別されたときには、格納されている前回受信した呼出コードの呼の識別情報を、今回受信した呼出コードの呼の識別情報に置き換える置換処理を更に含むことを特徴としている。
【0018】
このように、本発明の呼識別プログラムは、呼が異なると判定されたときには、前回受信した呼出コードの呼の識別情報を、今回受信した呼出コードの呼の識別情報に置き換える。これにより、誤って、途中放棄され既に終了した呼の識別情報を現在通信中の呼の識別情報と誤認した場合でも、その後の置換処理により容易に正しい呼に修正することができる。
【0019】
(3)また、本発明の呼識別プログラムは、モデムを介して交換回線網に接続される装置において実行され、呼を識別する呼識別プログラムであって、通信中に、呼出コードとともにモデムから受信する呼の識別情報を、受信の時刻情報とともに記録する記録処理と、通信終了後に、前記記録を参照して、呼出コードの受信時刻情報を読み出し、連続して受信した呼出コードの受信時刻情報との差分を算出する差分算出処理と、前記受信時刻情報の差分が、所定時間を超えるか否かを判定し、前記受信時刻情報の差分が、所定時間を超えるときには、それぞれの連続する呼出コードの呼が異なると識別する差分判定処理と、前記差分判定処理の結果、それぞれの連続する呼出コードの呼が異なると識別されたときには、最新の呼を、当該通信を行った呼であると認識し、その呼の識別情報を当該通信の呼の識別情報と認識する認識処理と、を更に含む一連の処理をコンピュータ読み取り、実行可能にコマンド化させたことを特徴としている。
【0020】
このように、本発明の呼識別プログラムは、通信終了後に記録を参照して、呼出コードの受信時刻情報を読み出し、連続して受信した呼出コードの受信時刻情報との差分が所定時間を超えるか否かを判定して、呼を識別し、呼が異なる場合には、正しい呼の識別情報を取得する処理を行なう。これにより、通信終了後に、呼を正しく識別しているかどうかを検証し、呼の修正を行なうことができる。そして、さらに呼の識別の精度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の呼識別プログラムによれば、時刻情報の差分を判定して、発信者側が呼を途中放棄し終了したかどうかを検証することで、呼を識別し、正しい呼の識別情報と途中放棄された呼の識別情報の2つの情報を誤って認識することを防止することができる。また、呼識別プログラムは、モデムチップ内部の動作を認識することなく、コマンドやコードのみで呼を識別することができる。その結果、国内仕様の端末−通信網間のインターフェースに容易に適用することができる
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
【0023】
図1は、ファックス画像提供システム1の構成を示す図である。ファックス画像提供システム1は、ファックス発信者から発信されたファックス画像データを、ユーザ端末に提供するシステムである。図1に示すように、ファックス画像提供システム1は、ファックス機F1〜Fn、交換回線網10、交換機20、モデム30、画像提供サーバ50(呼識別装置)、インターネット70、携帯端末C1〜Cm、およびPC端末P1〜Pkから構成されている。
【0024】
ファックス機F1〜Fnは、一般的なファックス機であり、書類から印刷内容を読み取って画像データに変換する機能と送られてきた画像データを印刷する機能とを有する。ファックス機F1〜Fnの規格は、アナログ回線で利用できるG3(Group 3)規格であっても、ISDN回線で利用できる高品質のG4(Group 4)規格であってもよい。
【0025】
ファックス機F1〜Fnは、ファックス画像提供システム1のサービスを受ける店舗等に設置されている。店舗では、チラシ、特売情報、ポイント情報等が掲載された印刷物の情報を送信する。ファックス機F1〜Fnは、登録された発信者番号で識別される。発信者番号の識別には、いわゆるナンバーディスプレイのサービスを利用する。交換回線網10は、ISDNやPSTNを含む回線網であり、回線交換方式で相手に接続して情報の送受信を行なうものである。
【0026】
交換機20は、地域通信網交換機であり、ファックス機F1〜Fnからの呼を、加入者回線に接続する。交換機20は、L1、L2の極性を反転し、情報受信端末起動信号(CAR)を送信し、モデム30に対して呼出信号の送信を行なう。
【0027】
モデム30は、回線を通じて受信する信号をサーバ受信用のデータに変換したり、サーバから送られてくるデータを回線用の信号に変換して回線に流したりする変復調装置である。モデム30は、交換機20から受信した信号をコードにより画像提供サーバ50へ転送するとともに、画像提供サーバ50からのATコマンドを受信して、コマンドに従い、着信や接続の制御を行なう。ここで、ATコマンドとは、モデムの制御に使われるコマンド体系の一種であり、ATで始まるコマンドを用いて制御を行なうモデムコマンドである。ATコマンドに代えて、他のコマンド体系を用いてもよい。
【0028】
画像提供サーバ50は、モデム30から画像データを受信し、一定の処理を行ない、端末により閲覧可能にするサーバである。画像提供サーバ50は、モデム30から受信するコードおよびモデム30へ送信するコマンドから、呼を識別し、呼ごとに、受信した画像の管理を行なう。すなわち、画像提供サーバ50は、交換機20およびモデム30の機能により、発信者番号に対応付けて画像データを蓄積する。その一方で、会員登録されている携帯端末C1〜CmおよびPC端末P1〜Pkにファックス画像を閲覧できることを通知するメールを送信する。
【0029】
携帯端末C1〜CmおよびPC端末P1〜Pkは、あらかじめファックス画像提供を受けるサービスについて登録された会員の端末である。携帯端末C1〜Cmは、メール機能、Web上のサイトの閲覧機能を有している。また、PC端末P1〜Pkは、メール機能およびWeb上のサイトの閲覧機能を有している。ユーザは、携帯端末またはPC端末により、メールを受信し、メールに本文中のURLをクリックすることで、ブラウザまたはビュワーアプリケーションによりファックス画像を閲覧することができる。
【0030】
このように、ファックス画像提供システム1は、店舗等のファックス発信者から発信されたファックス画像データを、画像データとしてユーザ端末に提供するシステムである。
【0031】
上記のファックス画像提供システム1において、呼を識別し、呼の識別情報に対応付けて画像の管理を行なう画像提供サーバ50(呼識別装置)を詳細に説明する。図2は、画像提供サーバ50の電気的構成を示すブロック図である。
【0032】
図2に示すように、画像提供サーバ50(呼識別装置)は、送受信部51、制御部52、蓄積部53、格納部54a、記録部54b、差分算出部55、差分判定部56、着信開始部57、ログ判定部60、および識別情報取得部61を備えており、各部は制御バスbで接続されている。
【0033】
制御バスbは、各部間の信号やデータの送受に用いられる幹線を概念的に示したものである。送受信部51は、外部とのインターフェースであり、モデム30との間でコマンド、コードまたはデータ等の情報の送受信を行なう。制御部52は、CPUにより構成され、記録処理、情報の管理や各部の制御を行なう。
【0034】
蓄積部53は、受信したファックス画像データを発信者番号(呼の識別情報)に対応付けて蓄積する。蓄積部53は、RAM等のメモリ、またはハードディスク等の外部記憶装置により構成されている。なお、発信者番号は、モデムから1回目のRINGコードとともに「RING NUMBER XX−XXXX−XXXX」というかたちで通知される。
【0035】
格納部54a、は、モデム30へ送信するコマンドおよびモデム30から受信するコードを、コマンドまたはコードの送受信時刻のタイムスタンプ(時刻情報)とともに、また、呼の識別情報を格納する。格納部54aは、CPUのレジスタまたはメモリから構成されており、一時的に呼の識別情報と、コマンドまたはコードとそのタイムスタンプを記憶する。記録部54bは、モデム30へ送信するコマンドおよびモデム30から受信するコードを、コードの送受信時刻のタイムスタンプ(時刻情報)とともに、また、呼の識別情報をログとして記録する。記録部54bは、RAM等のメモリ、またはハードディスク等の外部記憶装置により構成され、コマンドまたはコードとそのタイムスタンプをログとして記録する。
【0036】
差分算出部55は、モデム30が呼出信号を受信したことを示すRINGコード(呼出コード)の受信があったときに、前回受信したRINGコードの受信のタイムスタンプを格納部54aから読み出し、今回受信したRINGコードの受信のタイムスタンプと前回受信したRINGコードの受信のタイムスタンプとの差分を算出する。また、差分算出部55は、ログチェックの際に、記録部54bのログを参照して、今回受信したRINGコードの受信のタイムスタンプと前回受信したRINGコードの受信のタイムスタンプとの差分を算出する。差分算出部55は、CPUにより構成されている。
【0037】
差分判定部56は、時刻情報の差分が所定時間を超えるか否かを判定し、受信時刻情報の差分が、所定時間を超えるときには、前回受信した呼が今回受信した呼とは異なると識別する。一方、受信時刻情報の差分が、所定時間以内であるときには、前回受信した呼が今回受信した呼と同じであると識別する。そして、異なると識別した場合には、前回のRINGコードとともに通知される発信者番号を破棄し、今回のRINGコードの発信者番号に置き換えた上、格納部54aに格納し、カウント値を1とする。差分判定部56は、CPUにより構成されている。所定時間とは、5000msec以上10000msec以下の一定時間であり自由に設定が可能である。所定時間は、特に5000msecであることが好ましい。このように、時刻情報の差分を判定して、発信者側が呼を途中放棄し終了したかどうかを検証することで、呼を識別し、正しい呼の発信者番号と途中放棄された呼の発信者番号の2つの情報を誤って認識することを防止することができる。
【0038】
また、このような処理を行なうことにより、モデムチップ内部の動作を認識することなく、コマンドやコードのみの情報で呼を識別することができる。その結果、国内仕様の端末−通信網間のインターフェースに、このような処理を容易に適用することができる。
【0039】
着信開始部57は、差分判定処理の判定結果から、受信のタイムスタンプの差分が、所定時間以内であるときには、カウント値を2とする。カウント値が2である場合、通信中のシーケンスの開始を指示するコマンドであるATAコマンド(着信開始コマンド)をモデム30に送信する。なお、カウント値の確認の意味は、2回の連続したRINGコードが同じ呼であることが識別されたことにより、この呼が現在通信中の呼であると認識する。この時点で格納部54aに格納されている識別情報が現在通信中の呼の識別情報であることが確定し、この識別情報を蓄積部53にファックス画像データと対応させ蓄積する。着信開始部57は、CPUにより構成されている。
【0040】
ログ判定部60は、通信終了後に、記録部54bに記録されるログに照会し、着信開始処理の処理時刻以降に発信者番号を伴うRINGコードの受信があるか否かを判定する。そして、着信開始処理の処理時刻以降に呼出コードの受信があるときには、最新のRINGコードに伴って通知された呼の識別情報が、現在の呼の識別情報であると識別する。ログ判定部60は、CPUにより構成されている。
【0041】
識別情報取得部61は、ログ判定処理の判定結果から、着信開始処理の処理時刻以降にRINGコードの受信があるときには、最新のRINGコードに伴って通知された呼の識別情報が、当該通信の呼の識別情報であると識別し、当該識別情報を取得する。なお、取得した識別情報と、上記の現在通信中の呼として確定された呼の識別情報をマッチングして、それらが異なる場合には異常と判断する。異常と判断した時には、処理を止めて、オペレータに通知してもよい。識別情報取得部61は、CPUにより構成されている。
【0042】
上記のように構成される画像提供サーバ50(呼識別装置)の動作を以下に説明する。図3は、呼識別装置としての画像提供サーバ50の特徴的な動作を示すフローチャートである。
【0043】
図3に示すように、まず、画像提供サーバ50は、格納部54aにより、コマンドの送信およびコードの受信をそれぞれのタイムスタンプとともに記憶するとともに、記録部54aにより、ログとして記録することで、記録を開始する(ステップS1)。次に、制御部52により、モデム30からRINGコード(呼出コード)を受信したか否かの判定を行なう(ステップS2)。判定の結果、RINGコードを受信していなければ、ステップS2に戻る。RINGコードを受信した場合には、差分算出部55により、前回受信したRINGコードのタイムスタンプ(受信時刻)を読み出す(ステップS3)。
【0044】
そして、差分算出部55により、前回のRINGコードの受信時刻と今回のRINGコードの受信時刻との差分を算出し(ステップS4)、差分判定部56により、前回のRINGコードの受信時刻と今回のRINGコードの受信時刻との差分が5000msecを超えているか否かを判定する(ステップS5)。判定の結果、5000msecを超えている場合には、前回のRINGコードの呼が今回のRINGコードの呼とは異なると識別し、制御部52によりカウント値を1とし、また、今回のRINGコードに付随する識別情報を格納部54aに格納して(ステップS6)、S1に戻る。カウント値とは、同一の呼のRINGコードの受信回数を示す値である。
【0045】
一方、制御部52により、前回のRINGコードの受信時刻と今回のRINGコードの受信時刻との差分が5000msec以内である場合には、前回のRINGコードの呼が今回のRINGコードの呼と同じであると識別し、カウント値を2とする(ステップS7)。そして、カウント値が2となったことを契機(2回の連続したRINGコードが同じ呼であることが識別されたことにより、この呼が現在通信中の呼であると認識する。)として、着信開始部57は、着信開始を示すATAのコマンドをモデムに返信する。この時点で格納部54aに格納されている識別情報が現在通信中の呼の識別情報であることが確定し、この識別情報を蓄積部53にファックス画像データと対応させ蓄積する(ステップS8)。このように、時刻情報の差分を判定して、発信者側が呼を途中放棄し終了した呼であるかどうかを検証することで、正しい呼の発信者番号と途中放棄された呼の発信者番号の2つの情報を誤って認識することを防止することができる。
【0046】
また、このような処理を行なうことにより、モデムチップ内部の動作を認識することなく、コマンドやコードのみで呼を識別することができる。その結果、国内仕様の端末−通信網間のインターフェースに、このような処理を容易に適用することができる。
【0047】
通信が開始されると(ステップS9)、通信が開始されたことを示すCONNECTコードを受信する(ステップS10)。CONNECTコードを受信したら、画像データを、既に存在する識別情報に対応させて蓄積部に蓄積する(ステップS11)。そして、通信を終了する(ステップS12)。通信終了後には、ログチェック処理を行なう(ステップS13)。ログチェック処理とは、記録されたログに照会して、呼の識別の誤りが生じていないかをチェックする処理である。以下に、ログチェック処理の詳細を説明する。
【0048】
図4は、ログチェック処理における画像提供サーバ50の特徴的な動作を示すフローチャートである。ログチェック処理が開始すると、ログ判定部60は、記録部54bからログを読み込む(ステップP1)。次に、差分算出部55により、連続するRINGコードのそれぞれのタイムスタンプ(受信時刻)を読み出し、受信時刻の差分を算出する(ステップP2)。そして、差分判定部56により、前回のRINGコードの受信時刻と今回のRINGコードの受信時刻との差分が5000msecを超えているか否かを判定する(ステップP3)。また、着信開始処理の処理時刻以降に発信者番号を伴うRINGコードの受信があるか否かを判定する。
【0049】
判定の結果、連続するRINGコードの受信時刻の差分が5000msec以内である場合には、処理が正しいと判断し、処理を終了する。差分が5000msecを超えている場合には、連続する2つのRINGコードの呼が異なることを識別する。(ステップP4)。
【0050】
そして、ATAコマンドの送信またはCONNECTコードの受信以降にRINGコードが記録されているか否かを判定する(ステップP5)。ATAコマンドの送信またはCONNECTコードの受信以降にRINGコードが記録されていない場合には、そのまま終了する。ATAコマンドの送信またはCONNECTコードの受信以降にRINGコードが記録されている場合には、識別情報取得部61は、最新のRINGコードの識別情報を取得し(ステップP6)、ログチェックを終了する。
【0051】
取得した識別情報と、上記の現在通信中の呼として確定された呼の識別情報をマッチングして、それらが異なる場合には異常と判断する。異常と判断した時には、処理を止めて、オペレータに通知してもよい。このようにログ処理を行なうことにより、さらに呼の識別の精度を向上させることができる。
【0052】
次に、1回目のRINGコードを受信した後、発信者が呼を放棄した場合の事例をもとに、呼の識別過程を、交換機20、モデム30および画像提供サーバ50の間の情報の流れに従って説明する。図5は、交換機20、モデム30および画像提供サーバ50の間の情報の流れを示すシーケンスチャートである。
【0053】
本事例では、まず、交換機20およびモデム30が、一連の信号および情報の送受信を行なう。すなわち、交換機20が、L1およびL2の極性反転し、続けて情報受信端末起動信号(CAR)を送信する。これに対し、モデム30が、一次応答の信号を送信する。交換機20が、発信者番号情報を送信する。そして、モデム30は、発信者番号情報を受信し、完了したら、受信完了信号を送信する。
【0054】
このような、一連の信号および情報の送受信を終えると、交換機20が1回目の呼出信号をモデム30に送信する。呼出信号を受信したモデム30は、発信者番号を伴うRINGコードを画像提供サーバ50に送信する。このように、1回目のRINGコードの送信は、発信者番号の情報を伴う。なお、発信者番号を伴うことには、発信者番号が欠落したものと識別されることも含む。すなわち、1回目のRINGコードに発信者番号を伴わず、番号欠落として呼が識別される場合には、呼の識別情報は、「番号欠落」となる。
その後発信者により呼が放棄され、別の発信者から呼び出しがあったものとする。その場合には、交換機20およびモデム30は、次の呼について、上記と同様の一連の信号および情報の送受信を行なう。そのため、モデム30が、この呼の1回目の呼出信号を交換機20から受信した時刻は、前回の呼出信号の受信時刻から5000msecを超える。したがって、画像提供サーバ50は、差分判定部56により、別の呼であると判定し、制御部52は、カウント値を1とする。
【0055】
次に、交換機20が2回目の呼出信号をモデム30に送信し、画像提供サーバ50が、モデム30からのRINGコードを受信したとする。2回目のRINGコードの受信時刻は、1回目のRINGコードの受信時刻から5000msec以内となる。したがって、画像提供サーバ50は、差分判定部56により、連続する2つの呼出信号が同じの呼によるものであると識別し、制御部52は、カウント値を2とする。このようにして、画像提供サーバ50は、呼が放棄されていないことを確認し、カウント値が2になったときに、着信開始部57によりATAコマンドをモデム30に送信して、着信開始となるようにモデムを制御する。そして、呼が接続されたときには、モデム30は、CONNECTコードを画像提供サーバ50に送信する。
【0056】
画像提供サーバ50は、記録部54bにより、コマンドまたはコードの送受信の履歴を時刻情報とともに記録する。図6は、上記の事例のログの示す図である。1回目のRINGコードは、発信者番号03−0000−0000であるが、2回目のRINGコードは、発信者番号03−1111−1111であり、呼が異なっている。1回目のRINGコードと2回目のRINGコードとの受信時刻の差分は、6000msecで、5000msecを越えるため、両者は別の呼によるものであると識別される。また、3回目のRINGコードは2回目のRINGコードから3000msec後に受信されており、同じ呼によるものと識別され、画像提供サーバ50は、その1000msec後にATAコマンドをモデム30に送信している。そして、モデム30で呼の接続が確認され、画像提供サーバ50は、モデム30からCONNECTコードをATAコマンド送信から1000ms後に受信したことが記録されている。このケースではATAコマンド、CONNECTコード処理以降にRINGがなく、正常呼として扱われる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】ファックス画像提供システムの構成を示す図である。
【図2】本発明に係る画像提供サーバの電気的構成を示すブロック図である。
【図3】本発明に係る画像提供サーバ(呼識別装置)の特徴的な動作を示すフローチャートである。
【図4】本発明に係る画像提供サーバ(呼識別装置)の特徴的な動作を示すフローチャートである。
【図5】呼の放棄があった事例における情報の流れを示すシーケンスチャートである。
【図6】事例のログの示す図である。
【図7】モデムが発信者番号を受信して通信中となるまでの流れを示すシーケンスチャートである。
【符号の説明】
【0058】
1 ファックス画像提供システム
10 交換回線網
20 交換機
30 モデム
50 画像提供サーバ(呼識別装置)
51 送受信部
52 制御部
53 蓄積部
54a 格納部
54b 記録部
55 差分算出部
56 差分判定部
57 着信開始部
60 ログ判定部
61 識別情報取得部
70 インターネット
F1〜Fn ファックス機
C1〜Cm 携帯端末
P1〜Pk PC端末

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モデムを介して交換回線網に接続される装置において実行され、呼を識別する呼識別プログラムであって、
呼出コードとともにモデムから受信する呼の識別情報を、受信の時刻情報とともに格納する格納処理と、
前記モデムが呼出信号を受信したことを示す呼出コードの受信があったときに、格納された前回受信した呼出コードの受信時刻情報を読み出し、今回受信した呼出コードの受信時刻情報と前回受信した呼出コードの受信時刻情報との差分を算出する差分算出処理と、
前記受信時刻情報の差分が、所定時間を超えるか否かを判定し、前記受信時刻情報の差分が、所定時間を超えるときには、前回受信した呼出コードの呼が今回受信した呼出コードの呼とは異なると識別する差分判定処理と、を含む一連の処理をコンピュータ読み取り、実行可能にコマンド化させたことを特徴とする呼識別プログラム。
【請求項2】
前記差分判定処理の結果、前回受信した呼出コードの呼が今回受信した呼出コードの呼とは異なると識別されたときには、格納されている前回受信した呼出コードの呼の識別情報を、今回受信した呼出コードの呼の識別情報に置き換える置換処理を更に含むことを特徴とする請求項1記載の呼識別プログラム。
【請求項3】
モデムを介して交換回線網に接続される装置において実行され、呼を識別する呼識別プログラムであって、
通信中に、呼出コードとともにモデムから受信する呼の識別情報を、受信の時刻情報とともに記録する記録処理と、
通信終了後に、前記記録を参照して、呼出コードの受信時刻情報を読み出し、連続して受信した呼出コードの受信時刻情報との差分を算出する差分算出処理と、
前記受信時刻情報の差分が、所定時間を超えるか否かを判定し、前記受信時刻情報の差分が、所定時間を超えるときには、それぞれの連続する呼出コードの呼が異なると識別する差分判定処理と、
前記差分判定処理の結果、それぞれの連続する呼出コードの呼が異なると識別されたときには、最新の呼を、当該通信を行った呼であると認識し、その呼の識別情報を当該通信の呼の識別情報と認識する認識処理と、を更に含む一連の処理をコンピュータ読み取り、実行可能にコマンド化させたことを特徴とする呼識別プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−104150(P2007−104150A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−289327(P2005−289327)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(505368461)株式会社モバイルエイジ (1)
【Fターム(参考)】