説明

咬合圧測定手段、及び咬合圧測定装置

【課題】咬合圧の測定位置と歯列との位置関係が正確であるとともに、得られる咬合圧の信頼性も高い咬合圧測定手段を提供する。
【解決手段】咬合圧を測定可能なセンサ部(10)と、該センサ部からの情報を伝達する配線部(20)とを備え、センサ部は、複数の層を有する積層体であり、複数の層のうち少なくとも一層は咬合圧を検知可能な感圧層(13)であるとともに、積層体は歯列表面を模した凹凸を有した形状に形成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科分野で行われる咬合圧測定のための手段、及びこれを用いた咬合圧測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
歯列形状や咬み合わせ圧力(咬合圧)の異常は、顎関節症や歯槽膿漏等の要因の1つであるため、局部的な治療に加え、歯列形状や咬合圧を考慮した根本的で総合的な治療が行われる。従来において歯列形状を得るための手段としては一般的にワックスや印象材が用いられていた。また、咬合圧を得るための手段としては、圧力の大きさに応じて異なる濃さの色を呈するシート状のプレスケールがあり、患者がこれを咬むことにより咬合圧分布を定量的に把握できた。
【0003】
また、近年では電気的な情報により電子データとして咬合圧を把握し、例えばリアルタイムに咬合圧の変化を把握できる等の利点を有する咬合圧測定装置やこれを用いた咬合圧測定方法、システム等が提案されている(特許文献1〜4等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−277240号公報
【特許文献2】特開2001−224608号公報
【特許文献3】特開2004−117263号公報
【特許文献4】特開2005−87646号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1〜4にも記載されているように、歯列位置と咬合圧測定位置との位置合わせは困難が多く、当該文献に記載の発明により様々な工夫が施されてはいるものの、依然としてこの位置合わせは大きな課題であった。
【0006】
また、上記したプレスケールや特許文献1〜4に記載のような従来の咬合圧測定装置の媒体はいずれもシート状、平板状である。一方、咬合圧が発生する歯牙表面は凹凸が多く、その起伏も激しい。従ってこのような歯牙表面に生じる咬合圧をシート状又は平板状の媒体により測定した場合には、実際の咬合圧を適切に表わしているかについて疑義が生じていた。
【0007】
そこで本発明は、上記問題点に鑑み、咬合圧の測定位置と歯列との位置関係が正確であるとともに、得られる咬合圧の測定結果の信頼性も高い咬合圧測定手段を提供することを課題とする。また、これを用いた咬合圧測定装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、本発明について説明する。なお、本発明の理解を容易にするために添付図面の参照符号を括弧書きにて付記するが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【0009】
請求項1に記載の発明は、上顎又は下顎の少なくとも一方の咬合面に、歯列に沿って配置可能である、咬合圧を測定可能なセンサ部(10)と、該センサ部からの情報を伝達する配線部(20)とを備え、センサ部は、複数の層を有する積層体であり、複数の層のうち少なくとも一層は咬合圧を検知可能な感圧層(13)であるとともに、積層体は歯列表面を模した凹凸を有した形状に形成されていることを特徴とする咬合圧測定手段(1)である。
【0010】
請求項2に記載の発明は、上顎又は下顎の少なくとも一方の咬合面に、歯列に沿って配置可能である、咬合圧を測定可能なセンサ部(10)と、該センサ部からの情報を伝達する配線部(20)とを備え、センサ部は、複数の層を有する積層体であり、複数の層のうち少なくとも一層は咬合圧を検知可能な感圧層(13)であるとともに、積層体は歯列表面に沿った形状に形成されていることを特徴とする咬合圧測定手段(1)である。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の咬合圧測定手段(1)において、感圧層(13)は絶縁性の高い樹脂中に導電体の粒子が分散されて形成されており、感圧層の両面のそれぞれには電荷を伝達する電荷移動層(12、14)が設けられているものである。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の咬合圧測定手段(1)において、電荷移動層(12、14)は有機トランジスタであることを特徴とする。
【0013】
請求項5に記載の発明は、上顎又は下顎の少なくとも一方の咬合面に、歯列に沿って配置可能である、咬合圧を測定可能なセンサ部(110)と、該センサ部からの情報を伝達する配線部(120)とを備え、センサ部は、複数の層を有する積層体であり、複数の層のうち少なくとも一層は咬合圧を検知可能な感圧層であるとともに、積層体は溝状に形成され、感圧層は絶縁性の高い樹脂中に導電体の粒子が分散されて形成されており、感圧層の両面のそれぞれには有機トランジスタを含む電荷を伝達する電荷移動層が設けられる咬合圧測定手段(101)である。
【0014】
請求項6に記載の発明は、咬合圧を測定し、その結果を表示可能な咬合圧測定装置(30)であって、請求項1〜5のいずれか一項に記載の咬合圧測定手段(1)と、咬合圧測定手段から伝達される電気的な信号を処理し、咬合圧を数値、画像、映像の少なくとも1つで表示可能とする情報処理手段(33)と、を有する咬合圧測定装置である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、咬合圧測定手段自体がすでに歯列形状に近い形状となっており、これが咬合圧を測定できるセンサとして機能する。従って、歯列の位置と咬合圧の発生位置との位置合わせが容易で正確である。
また、咬合圧が測定されるセンサの形状をより歯列形状に近いものとすれば、検知される咬合圧が、実際に生じている咬合圧に対してより高い精度を有する。
また、センサの可とう性に優れたものとすれば、さらに精度の高い咬合圧を測定することができる。
【0016】
そして、このような咬合圧測定手段を用いた咬合圧測定装置も同様な効果を奏するものなる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】1つの実施形態に係る咬合圧測定手段の外観斜視図である。
【図2】図1にII−IIで示した線に沿った端面図である。
【図3】図2にIIIで示した部位の拡大図で、積層体の層構成を模式的に表した図である。
【図4】他の実施形態に係る咬合圧測定手段の外観斜視図である。
【図5】咬合圧測定装置の構成を概念的に説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の上記した作用及び利得は、次に説明する発明を実施するための形態から明らかにされる。以下、本発明を図面に示す実施形態に基づき説明する。ただし本発明はこれら実施形態に限定されるものではない。
【0019】
図1は、1つの実施形態に係る咬合圧測定手段1(以下、単に「測定手段1」と記載することがある。)の外観を表した斜視図である。測定手段1は、センサ部10と配線部20とを有している。図2にはセンサ部10の図1にII−IIで示した線に沿った矢視端面図を示した。また、図3には図2にIIIで示した部位を拡大した図で、層構成を模式的に表した。
【0020】
センサ部10は実際に歯列形状を把握することができるとともに、咬合圧を検知する部位である。図1〜図3からわかるように、センサ部10は、所定の厚さを有する積層体の材料が被験者の歯列表面に沿った形状に形成されている。この際、図2にAで示したように一方側は開口し、溝状となっているので、当該センサ部10を被験者の歯列に被せるように該被験者に配置することができる。そして後述するように、センサ部10は被験者の歯列形状に基づいて形成しているので、被験者の歯列に対して適切に配置することが可能である。すなわち、当該センサ部10の外形は既に被験者の歯列形状を表しており、これにより被験者の歯列形状を把握することができる。センサ部10の製造方法については後で詳しく説明する。
【0021】
図3からわかるように、センサ部10はその厚さ方向に複数の層を有する積層体であり、詳しくは、センサ部10は、外皮層11、電荷移動層12、感圧層13、電荷移動層14、及び外皮層15を備えている。
【0022】
外皮層11、15は、積層体の最外層に配置され、雰囲気に晒されるとともに被験者の歯牙が直接触れる部位である。そして、一方の外皮層11と他方の外皮層15との間に備えられる電荷移動層12、14や感圧層13等を保護し、電荷移動層12、14を固定するとともに、絶縁部材として機能する。また、外皮層11、15はヒータ等により加熱して変形できるような材料が好ましい。これにより後述するように、加熱して歯列形状を形成することが可能となる。かかる観点から、外皮層として例えば水添スチレン−イソプレンブロック共重合体のような材料を用いることができる。
【0023】
電荷移動層12、14は、電荷の移動を許容、禁止して感圧層13の状態に基づいた信号を伝達する層である。より詳しくは、電荷移動層12、14は、素子12a、14aが所定の間隔で碁盤目状に配列されて形成されている。従って、図3では一方の方向の並列状態が表れているが、図3の紙面奥/手前方向についても同様に素子12a、14aが並列されている。
【0024】
電荷移動層12、14は、電荷を移動する機能の他、熱的な安定性が高く、可とう性に優れることが好ましい。このような観点から、電荷移動層12、14として有機トランジスタを用いることができる。
有機トランジスタは、炭素を骨格として他の元素を結合させてなる有機半導体にドレイン、ソース、ゲート端子を設けてトランジスタとしてスイッチング機能を有する微小素子である。有機トランジスタはフィルム(本実施形態の場合には外皮層11、15)上に室温程度のプロセス温度で塗工することが可能である。塗工の方法は特に限定されるものではないが、例えばインクジェット方式、ロールを用いたグラビア印刷方式等を挙げることができる。
【0025】
このように電荷移動層12、14に有機トランジスタを用いることにより、そのスイッチング機能で計測上の外乱を抑制し、計測安定性を高めることができるので、信頼性のより高い計測結果を得ることが可能となる。電荷移動層12、14における素子12a、14aの配列密度は、咬合圧測定の解像度が0.2mm程度となるような配置が好ましく、これによれば、とりわけ高い精度で咬合圧分布を得ることができる。具体的には素子12a、14aのピッチが0.1mm〜1.0mmであることが好ましい。
【0026】
また、有機トランジスタは可とう性に優れており、外皮層11、15や感圧層13の変形によく追従するので、外皮層11、15や感圧層13が咬合圧により歯牙表面の凹凸に沿って変形したときにもこれに追随して精度よく作動する。従って、得られる咬合圧の精度をさらに向上させることが可能となる。
【0027】
感圧層13は、咬合圧を検知する部位である。本実施形態では、変形により電気抵抗値が変化する材料により形成され、具体的にはシリコンゴム基材中に鉄の粉末(鉄粉)が分散された部材により構成されている。すなわち、感圧層13に咬合圧がかかると該層が咬合圧の大きさに基づいて変形し、鉄粉間の距離を変化させる。詳しくは、感圧層13の変形により鉄粉間の距離が縮まった部分は電気抵抗値が下がり、感圧層13の変形により鉄粉間の距離が広がった部分では電気抵抗値が上がる。これによりその部位における咬合圧を電気的な信号として得ることが可能となる。
ここで、咬合圧検知の分解能は鉄粉のかさ密度に影響される。すなわち、かさ密度が大きい場合には分解能が低下し、かさ密度が小さい場合は分解能が向上する。
またダイナミックレンジはシリコンゴム基材中における鉄粉の分散密度に影響される。すなわち、同じ鉄粉の量であれば、シリコンゴム基材が薄くなると相対的に鉄粉の分散密度が上昇してダイナミックレンジが低下する。逆にシリコンゴムの基材を厚くすれば分散密度が低下するためダイナミックレンジを高く確保できる。ここでダイナミックレンジとは、識別可能な信号の最小値と最大値との比率である。
【0028】
本実施形態では、シリコンゴム基材中に鉄粉が分散された部材により感圧層13を形成する例を説明したが、同様の効果を奏する材料であれば特に限定されるものではない。すなわち、弾性に富み、及び電気的に絶縁性の高い基材中に、導電性の高い粉末、粒子状の材料が分散されていればよい。具体的には、基材は樹脂、ゴム素材等を用いることができる。また導電性の高い粉末、粒子としては、鉄粉の他銅、銀、金等の金属粉末、金属粒子、炭素粉末、炭素粒子、その他、導電性粉末、導電性粒子を挙げることができる。
【0029】
また、図示はしないが、外皮層11、15と電荷移動層12、14との間には導電体のパターンが形成されている。導電体のパターンは素子12a、14aと電気的に接続されている。さらに、導電体のパターンからは導電性部材が延在し、後述するように、該導電性部材が配線部20と電気的に接続される。
導電体のパターンは印刷等により形成することができる。また、導電性部材は導線等を用いることができ、絶縁性接着剤や熱的な溶着により外皮層11、15に固定される。
【0030】
図1に戻って測定手段1について説明を続ける。配線部20は、センサ部10により検知した咬合圧に関する電気的データを情報処理装置等に伝送する手段である。すなわち、これには通常の導電線等を用いることができる。
【0031】
上記センサ部10と配線部20とは、次のように連結されている。すなわち、上記したように、外皮層11、15の面のうち、電荷移動層12、14側に不図示の導電体のパターンが形成されている。そして当該導電体のパターンから導電性部材が延び、これを配線部20に電気的に接続する。従って、感圧層13、電荷移動層12、14は、導電体のパターン及び導電性部材を介して配線部20に電気的に接続可能とされている。
【0032】
次に測定手段1の製造方法の一例について説明する。測定手段1を製造するに際して、予め被験者の歯列形状の型を取得しておく。これは例えば石膏等により行うことができ、歯列形状の石膏模型は通常に歯科でおこなわれる方法により得ることが可能である。
次に、センサ部10となり得る上記した層構成を有する平らなシート状部材を準備する。このとき、このシート状部材は、歯列弓のような弓状の平らなシートであることが好ましい。
そして、真空加熱成形器(例えばプロ―フォーム、株式会社ジーシー製)に準備した歯列形状の石膏模型及びシート状部材をセットし、シート状部材を石膏模型の表面形状に沿って変形させる。ここで、真空加熱成形器では、シート状の部材を加熱して柔らかくし、これを石膏模型の表面に押し付けるように作動して成形する。その後、真空加熱成形器から成形後のシート状の部材を取り出し、冷却する。これにより、センサ部10を得ることができる。
【0033】
外皮層11、15と電荷移動層12、14との間に形成された導電体のパターンから延長された導電性部材と、配線部20とを接続する。このとき、導電性部材は、絶縁性接着剤や熱的な溶着、圧着、又は機械的な固定により外皮層11、15に固定される。
【0034】
上記した測定手段1によれば、測定手段1自体がすでに被験者の歯列形状となっているので、これを形状として読み取れば被験者の歯列形状そのものを把握することができる。また、視覚的にも被験者の歯列形状を確認することが可能である。
また、測定手段1はこのような歯列形状を有するもの自体が咬合圧を測定できるセンサとして機能する。従って、歯列の位置と咬合圧の発生位置とを改めて合わせる必要がなく、その位置関係も正確である。
さらには、咬合圧が測定されるセンサの形状が歯列形状に合っているので、検知される咬合圧が、実際に生じている咬合圧に対して正確である。
【0035】
また、電荷移動層として有機トランジスタを用いた場合には、その優れた可とう性により、外皮層や感圧層の変形によく追従するので、外皮層、感圧層が咬合圧により歯牙表面の凹凸に沿って変形したときにもこれに追随して精度よく作動する。従って、さらに得られる咬合圧の精度を向上させることが可能となる。
【0036】
また、従来の咬合圧測定用シートでは、歯列の表面形状にできるだけ沿うように薄くする必要があった。しかしながら測定手段1のセンサ部10はこれ自体が歯列表面形状に沿った形状を有しているので、薄いことは好ましいが、必ずしも従来の測定用シートのような厚さを必要としない。具体的には20μm〜500μmとしても精度良く咬合圧を測定することが可能である。
【0037】
本実施形態では、センサ部10の形状を被験者の個々に対してその歯列に沿うように形成する測定手段1を説明した。しかしながら、このような態様の他、測定手段1程は厳密でないが、例えば年齢別、性別ごとに典型的な歯列表面形状を模して形成されたセンサ部を準備し、これを用いて測定手段としてもよい。これによれば、測定手段1に対して精度は低下するが、汎用性が高く、取扱い、生産性、コスト等の観点から優れたものになる。
このような測定手段であっても、従来の平板状であった咬合圧測定シートに比べ、得られる咬合圧の正確さや、歯列位置との関係は良好である。
【0038】
センサ部は上顎用、下顎用、又は両顎用のいずれの型に形成されてもよい。
【0039】
図4には他の実施形態にかかる咬合圧測定手段101の斜視図を示した。咬合圧測定手段101は、センサ部110及び配線部120を備えている。センサ部110の層構成は上記した咬合圧測定手段1のセンサ部10と共通するのでここでは説明を省略する。
センサ部110は、図4からわかるように、断面が溝状に形成されているが、センサ部10のように歯列表面の凹凸に沿った、又は模した形状とはなっておらず、断面がコ字状の溝である。すなわち、咬合圧が生じる歯牙表面に接する部位は平滑となっている。
【0040】
センサ部110のうち、咬合面が含まれて配置される部位は、外皮層、及び感圧層に変形が可能な弾性体部材を使用することにより、歯列の咬合面形状に沿って変形することが可能となる。これにより従来のセンサより高精度に咬合圧の測定をすることができるようになる。
そして、センサ部110の電荷移動層に有機トランジスタを用いることにより、上記したように、実際に生じている咬合圧をさらに精度よく測定することができる。
【0041】
また、このようなセンサ部110でも、測定手段1に対して精度は低下するが歯列の位置関係をある程度は特定することができる。また咬合圧測定手段101は、汎用性が高く、取扱い、生産性、コスト等の観点からも優れたものとなる。
【0042】
配線部120はシート状に形成された導電線とされている。ただし、これに限定されることはなく、配線部20と同様に形成することもできる。
【0043】
次に、上記した測定手段1を用いた咬合圧測定装置30について説明する。図5に装置構成を概略的に示した。咬合圧測定装置30は、上記した測定手段1に加え、中継ボックス31、ケーブル32、及び情報処理手段33を備えている。
測定手段1は上記した通りであり、ここでは説明を省略する。
中継ボックス31は、測定手段1からの情報を受信し、微弱な信号を増幅し、情報処理手段33に発信する機能を有している。従って、中継ボックス31は、測定手段1の配線部20が接続可能な接続端子を有し、ここに配線部20が接続されている。また、その内部には測定手段1からの信号を増幅する増幅器を備えている。増幅器は公知の信号増幅手段を用いることができる。さらに、中継ボックス31は、増幅した信号を情報処理手段33に発信するため出力用の接続端子が設けられている。具体的にはケーブル32が接続される。
ケーブル32は中継ボックス31と情報処理手段33とを情報の送受信が可能となるように電気的に接続する部材である。その形態は特に限定されることはないが、取り扱いの容易からUSBケーブルを用いることができる。
【0044】
情報処理手段33は、ケーブル32を介して中継ボックス31から送られてきた情報信号に対し、予め定められた所定の処理をし、数値化及び画像化、映像化をおこなう手段である。従って情報処理手段33は例えば、中継ボックス31からの信号が入力される入力ポート、予め所定の演算式の必要な情報が記録された記憶装置(ROM)、演算を行う中央演算子(CPU)、作業領域や一時的な情報の保存領域として機能するRAM、及び演算結果を出力する出力ポートを備えている。従って市販のパーソナルコンピュータを用いることも可能である。
【0045】
情報処理手段33では、電荷移動層12、14における素子12a、14aの配置分布に基づいて、素子12a、14aの個々から伝達される電流情報(すなわち咬合圧に基づく電流値)を咬合圧に変換する。これにより咬合圧情報を得ることができる。得られた咬合圧情報は数値で表す他、色彩、濃淡等により視覚的に表わすように処理してもよい。その際には2次元的、3次元的にすることもできる。
咬合圧と該圧が発生した歯列位置との関係は、咬合圧分布状況から推定しても良いし、予めセンサ部10の形状をデータとして取得しておき、データの統合をおこなってもよい。
【0046】
このような咬合圧測定装置30により、例えば次のように測定を行う。
測定手段1のうち、センサ部10を被験者の歯列に合わせるように被せて配置し、被験者にセンサ部10を咬んでもらう。このとき測定開始時にセンサ部10内に電圧を生じさせる。そして咬合圧に比例した電気的な信号が所定の閾値以上に達した場合に有機トランジスタ(電荷移動層)により通電が開始されて電流が流れる。この電流の値を計測することにより、該電流値と関連付けられた咬合圧を得ることができる。また、このように電流値そのものを読み取る以外にも電気抵抗計を設けてその電圧値を読み取ることにより間接的に電流値を計算で算出する方法でもよい。
被験者がセンサ部10を咬むことにより、センサ部10に咬合圧に基づいた電気的な情報が生じ、これが配線部20を伝わって中継ボックス31に伝達される。中継ボックス31では、ここに備えられる増幅器の作用によりセンサ部10で生じた電気的な情報が増幅され、情報処理手段33に伝達される。そして情報処理手段33により上記の情報処理が行われ、施術者や被験者等に各種情報が提供される。
【0047】
咬合圧測定装置30によれば、歯列の位置と咬合圧の発生位置とが精度良く一致する。また、咬合圧が測定されるセンサの形状が歯列形状に合っているので、検知される咬合圧が、実際に生じている咬合圧に対して正確な結果を得ることができる。
【符号の説明】
【0048】
1 咬合圧測定手段(測定手段)
10 センサ部
11 外皮層
12 電荷移動層
13 感圧層
14 電荷移動層
15 外皮層
20 配線部
30 咬合圧測定装置
101 咬合圧測定手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上顎又は下顎の少なくとも一方の咬合面に、歯列に沿って配置可能である、咬合圧を測定可能なセンサ部と、該センサ部からの情報を伝達する配線部とを備え、
前記センサ部は、複数の層を有する積層体であり、前記複数の層のうち少なくとも一層は咬合圧を検知可能な感圧層であるとともに、前記積層体は歯列表面を模した凹凸を有した形状に形成されていることを特徴とする咬合圧測定手段。
【請求項2】
上顎又は下顎の少なくとも一方の咬合面に、歯列に沿って配置可能である、咬合圧を測定可能なセンサ部と、該センサ部からの情報を伝達する配線部とを備え、
前記センサ部は、複数の層を有する積層体であり、前記複数の層のうち少なくとも一層は咬合圧を検知可能な感圧層であるとともに、前記積層体は歯列表面に沿った形状に形成されていることを特徴とする咬合圧測定手段。
【請求項3】
前記感圧層は絶縁性の高い樹脂中に導電体の粒子が分散されて形成されており、前記感圧層の両面のそれぞれには電荷を伝達する電荷移動層が設けられている請求項1又は2に記載の咬合圧測定手段。
【請求項4】
前記電荷移動層は有機トランジスタであることを特徴とする請求項3に記載の咬合圧測定手段。
【請求項5】
上顎又は下顎の少なくとも一方の咬合面に、歯列に沿って配置可能である、咬合圧を測定可能なセンサ部と、該センサ部からの情報を伝達する配線部とを備え、
前記センサ部は、複数の層を有する積層体であり、前記複数の層のうち少なくとも一層は咬合圧を検知可能な感圧層であるとともに、前記積層体は溝状に形成され、
前記感圧層は絶縁性の高い樹脂中に導電体の粒子が分散されて形成されており、前記感圧層の両面のそれぞれには有機トランジスタを含む電荷を伝達する電荷移動層が設けられる咬合圧測定手段。
【請求項6】
咬合圧を測定し、その結果を表示可能な咬合圧測定装置であって、
請求項1〜5のいずれか一項に記載の咬合圧測定手段と、
前記咬合圧測定手段から伝達される電気的な信号を処理し、咬合圧を数値、画像、映像の少なくとも1つで表示可能とする情報処理手段と、
を有する咬合圧測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−65941(P2012−65941A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−214807(P2010−214807)
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【出願人】(000181217)株式会社ジーシー (279)
【Fターム(参考)】