説明

咽頭、気管および他の線維軟骨組織の修復

【課題】機能的置換非関節性軟骨組織および靱帯組織の形成を誘導するための方法およびデバイスを提供すること。
【解決手段】機能的置換非関節性軟骨組織および靱帯組織の形成を誘導するための方法およびデバイスを本明細書中で提供する。これらの方法およびデバイスは、骨形成タンパク質の使用を包含し、そして哺乳動物の咽頭、気管、関節間半月板、椎間円板、耳、鼻、肋骨および他の線維軟骨組織における欠損を修復する際に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、骨形成タンパク質を用いた靱帯および非関節性軟骨組織の修復の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
骨形成および軟骨形成タンパク質は、機能的な骨、軟骨、腱および/または靱帯組織への、前駆体細胞の増殖および分化を誘導し得る。これらのタンパク質(本明細書中、「骨形成タンパク質」、「形態形成タンパク質」または「モルフォゲン」といわれる)としては、軟骨内骨形態形成を誘導する能力により同定された骨形態形成タンパク質(「BMP」)ファミリーのメンバーが挙げられる。骨形成タンパク質は、一般に、増殖因子のTGF−βスーパーファミリーのサブグループとして当該分野で分類される。Hogan,Genes&Development 10:1580−1594(1996)。骨形成タンパク質としては、哺乳動物骨形成タンパク質−1(OP−1,BMP−7としても公知)およびそのDrosophilaのホモログ60A、骨形成タンパク質−2(OP−2,BMP−8としても公知)、骨形成タンパク質−3(OP−3)、BMP−2(BMP−2AまたはCBMP−2Aとしても公知)およびそのDlosophilaのホモログDPP、BMP−3、BMP−4(BMP−2BまたはCBMP−2Bとしても公知)、BMP−5、BMP−6およびそのマウスのホモログVgr−1、BMP−9、BMP−10、BMP−11、BMP−12、GDF−3(Vgr2としても公知)、GDF−8、GDF−9、GDF−10、GDF−11、GDF−12、BMP−13、BMP−14、BMP−15、GDF−5(CDMP−1またはMP52としても公知)、GDF−6(CDMP−2としても公知)、GDF−7(CDMP−3としても公知)、XenopusのホモログVglおよびNODAL、UNIVIN、SCREW、ADMP、ならびにNEURALが挙げられる。
【0003】
骨形成タンパク質は、代表的には、共通の構造的特徴を共有する分泌ペプチドを含む。ジスルフィド結合したホモダイマーまたはヘテロダイマーは、骨形成タンパク質の前駆体(「プロ形態」)から成熟形態へプロセシングされ、各サブユニットはカルボキシル末端の活性ドメインを有する。このドメインは、約97〜106個のアミノ酸残基を有し、そして保存されたシステイン残基のパターンを含む。例えば、Massague,Annu.Rev.Cell Biol.6:597(1990);Sampathら.,J.Biol.Chem.265:13198(1990)を参照のこと。
【0004】
骨形成タンパク質は、哺乳動物に対して適切なマトリクスまたは基材(substrate)とともに投与されたとき、前駆体細胞の増殖および分化を刺激し得る。結果として、それらは、他の方法では真の置換骨が生じない条件下で、骨形成(軟骨内骨形成を含む)を誘導し得る。例えば、マトリクス材料と組み合わせた場合、骨形成タンパク質は、大きな部分的骨欠損、脊椎固定、および骨折における新たな骨の形成を誘導する。
【0005】
咽頭は、舌から気管にまたがる。気管は、咽頭の下部末端から基本的な2つの気管支への分岐点にまたがる軟骨性で膜性の管である。線維軟骨性組織は、咽頭に見出される。軟骨は、咽頭の骨格的枠組みを形成し、そして靱帯および線維膜により相互に接続されている。舌骨は、咽頭と密接に連結しているが、通常は、異なる機能を有する別々の構造と考えられている。
【0006】
咽頭骨格の異常は、その呼吸機能、防御機能および発声機能に影響を及ぼし、そして窒息または声の喪失を生じ得る。異常性は、先天性(例えば、咽頭裂(cleft larynx))であり得るか、または後天性(例えば、声門水腫)であり得る。1つ以上の硝子質軟骨組織の過剰な骨形成はまた、呼吸機能または発声機能を制限し得る。なお他の異常性としては、疾患(例えば、梅毒、結核または悪性疾患)の結果としての咽頭の潰瘍が挙げられる。異常性はまた、咽頭または気管の機械的外傷(気管切開に由来する合併症を含む)から生じ得る。ヒト咽頭のいくつかの疾患としては、咽頭癌が挙げられ、咽頭骨格に影響を及ぼす。これらおよび他の状態の処置は、咽頭骨格または気管の部分除去または完全除去(気管切開、咽頭切開または咽頭気管切開)を包含し得る。咽頭または気管の外科手術的再構築手順は、複雑である。今日まで、再構築は、断裂した組織を再付着させるために、軟骨移植片、小腸移植片、および細胞性接着剤(例えば、フィブリノーゲンまたはシアノアクリレート)に依存してきた。共通する合併症としては、移植片拒絶および/または自己移植片もしくは同種移植片の線維変換が挙げられる。
【0007】
線維軟骨性組織は、咽頭のみならず他の領域(耳、鼻、肋骨、椎間円板および半月板を含む)にもまた見出される。これらの組織における欠損の修復および再構築は、適切な機能的置換線維軟骨の再生を必要とする。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の要旨)
本発明は、機能的(例えば、力学的に受容可能な)置換非関節性軟骨組織および靱帯組織のインビボ形成を誘導するための方法およびデバイスを提供する。
【0009】
本発明の方法において、骨形成タンパク質は、生体適合性で、生体再吸収性のキャリア中で、哺乳動物の非関節性軟骨組織の欠損位置に提供され、それにより機能的置換軟骨組織の形成を誘導する。欠損位置は、咽頭、気管、椎間円板、半月板、耳、鼻、肋骨、または哺乳動物の他の線維軟骨性組織において存在し得る。例えば、この方法を用いて、輪状軟骨組織、甲状軟骨組織、披裂軟骨組織、楔状軟骨組織、小角軟骨組織および喉頭蓋軟骨組織ならびに任意の他の非関節性硝子軟骨組織における欠損を修復し得る。特定の環境下で、骨形成タンパク質およびキャリアは、好ましくは、標的組織の軟骨膜の下に配置される。
【0010】
本発明において使用されるキャリアは、身体において毒性でなく、かつ重篤な炎症性反応を誘発しないという点で生体適合性である。このキャリアはまた、少なくとも部分的に、そして好ましくは完全に、臨床的に受容可能な期間(例えば、4ヶ月〜1年)内に、修復された位置で再吸収され得るという点で生体再吸収性である。このキャリアは、マトリクスもしくは「足場」構造を含んでいてもよいし、実質的にマトリクスを含有していなくてもよい。このキャリアは、固体(例えば、多孔性または粒子状)であり得るか、またはゲル、ペースト、液体もしくは他の注射可能な形態であり得る。適切なキャリアとしては、以下を含むが、それらに限定されない材料を含む:同種異系組織(例えば、失活させた同種異系軟骨組織、自己軟骨組織、または異種軟骨組織)、コラーゲン(例えば、I型およびII型のコラーゲン)、セルロース(例えば、カルボキシメチルセルロースのようなアルキルセルロース)、リン酸カルシウム(例えば、ヒドロキシアパタイト)、ポロキサマー(例えば、PLURONIC F127)、ゼラチン、ポリエチレングリコール(例えば、PEG 3350)、デキストリン、植物油(例えば、ゴマ油)、ならびに乳酸、酪酸、および/またはグリコール酸から構成されるポリマー。自己血液または自原性血液もまた、キャリア中に含まれ得る。なぜなら、このような包含は、治癒プロセスを加速することが見出されているからである。
【0011】
非関節性軟骨組織または靱帯組織を修復するための移植可能デバイスもまた、本発明内に含まれる。このようなデバイスは、例えば、失活させた軟骨、I型コラーゲン、またはカルボキシメチルセルロースを含むキャリア中に配置された、1つ以上の骨形成タンパク質を含む。
【0012】
本発明はまた、哺乳動物の欠損位置における軟骨形成を促進する方法を提供する。この方法において、骨形成タンパク質は、失活させた軟骨キャリア中で、この欠損位置に提供される。ここで、この軟骨は、この欠損位置へ適合するように形づくられている。
【0013】
本発明において有用な骨形成タンパク質としては、以下が挙げられるが、それらに限定されない:OP−1、OP−2、OP−3、BMP−2、BMP−3、BMP−3b、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−9、BMP−10、BMP−11、BMP−12、BMP−13、BMP−14、BMP−15、GDF−1、GDF−2、GDF−3、GDF−5、GDF−6、GDF−7、GDF−8、GDF−9、GDF−10、GDF−11、GDF−12、CDMP−1、CDMP−2、CDMP−3、DPP、Vg−1、Vgr−1、60Aプロテイン、NODAL、UNIVIN、SCREW、ADMP、NEURAL、およびTGF−β。本明細書中で使用される場合、用語「モルフォゲン」、「骨モルフォゲン」、「BMP」、「骨形成タンパク質」および「骨形成因子」は、ヒト骨形成タンパク質1(hOP−1)に代表されるタンパク質のクラスを包含する。
【0014】
好ましい骨形成タンパク質の1つは、OP−1である。hOP−1のヌクレオチドおよ
びアミノ酸配列は、それぞれ、配列番号1および2に提供される。記載しやすさのために、hOP−1は、代表的な骨形成タンパク質として列挙される。しかし、OP−1がモルフォゲンのファミリーの代表にすぎないことは当業者によって認識される。
【0015】
モルフォゲンのこのファミリーは、上記に列挙した任意のタンパク質の生物学的に活性な改変体(保存的アミノ酸置換を含む改変体;保存された7システイン骨格または以下に規定されるドメインを有する骨形成的に活性なタンパク質を含む)を含む。例えば、有用な骨形成タンパク質はまた、hOP−1のC末端7システインドメイン(配列番号2のC末端102〜106位のアミノ酸残基に対応するドメイン)と少なくとも70%のアミノ酸配列相同性を共有する配列を含むタンパク質を含む。
【0016】
その7システイン残基に対する候補アミノ酸配列の相同性パーセントを決定するために、候補配列およびドメインの配列を整列する。整列は、例えば、Needlemanら、J.Mol.Biol.48:443(1970)に記載されるダイナミックプログラミングアルゴリズムおよびDNAstar、Inc.によって生産される市販のソフトウェアパッケージであるAlign Programによってなされ得る。両方の供給源による教示が、本明細書において参考として援用される。初期の整列が、関連するタンパク質のファミリーの、複数配列の整列の比較によって洗練され得る。一旦、候補配列および7システインドメインとの間の整列が作製され、そして洗練されると、パーセント相同性を計算する。2つの配列の整列されたアミノ酸残基を、お互いのその類似性について連続的に比較する。類似性の因子としては、類似のサイズ、形態および荷電が挙げられる。アミノ酸類似性を決定する特に好ましい1つの方法は、Dayhoffら、Atlas of
Protein Sequence and Structure 5:345〜352(1978および補遺)(本明細書において参考として援用する)に記載されるPAM250マトリクスである。第1に、類似性スコアを、整列された対をなすアミノ酸類似性スコアの合計として計算する。パーセント類似性および同一性について、挿入および欠失を無視する。従って、ギャップペナルティーは、この計算において使用されない。次に、生のスコアを、候補配列および7システインドメインのスコアの相乗平均によって除算して規格化する。相乗平均は、これらのスコアの積の平方根である。この規格化した生スコアがパーセント相同性である。
【0017】
有用な骨形成タンパク質としてはまた、7システインドメインと60%を超える同一性を共有する配列を含むタンパク質が挙げられる。他の実施態様において、有用な骨形成タンパク質は、OPX(配列番号3)ならびに一般配列7および8(それぞれ配列番号4および配列番号5)、または一般配列9および10(それぞれ配列番号6および配列番号7)を含む本明細書において規定される一般配列のいずれか1つを有する骨形成活性タンパク質として規定される。
【0018】
別の局面において、本発明は、上記の方法を実行するためのキットを提供する。本明細書において意図されるように、局所的な喉頭組織形成または気管組織形成を誘導するためのキットの1つの実施態様は、改善されたデバイスを含み、ここでこの骨形成タンパク質およびキャリアは、同一の容器中において提供される。他の実施態様において、湿潤剤または結合剤もまた提供され、他の成分とは別にパッケージングされる。
本願発明は、例えば以下の項目を提供する。
(項目1)哺乳動物の非関節性軟骨組織における欠損位置を修復するための方法であって、該方法は、生体適合性で、生体再吸収性のキャリア中の骨形成タンパク質を該欠損位置に提供し、それにより機能的置換軟骨組織の形成を誘導する工程を包含する、方法。
(項目2)前記欠損位置が線維軟骨組織に存在する、項目1に記載の方法。
(項目3)前記欠損位置が咽頭に存在する、項目1に記載の方法。
(項目4)前記欠損位置が気管に存在する、項目1に記載の方法。
(項目5)前記欠損位置が椎間円板に存在する、項目1に記載の方法。
(項目6)前記欠損位置が半月板に存在する、項目1に記載の方法。
(項目7)前記欠損位置が耳、鼻、または肋骨に存在する、項目1に記載の方法。
(項目8)前記キャリアが自己組織または同種異系組織を含む、項目1に記載の方法。
(項目9)前記キャリアが失活した同種異系軟骨組織を含む、項目8に記載の方法。
(項目10)前記欠損位置が咽頭に存在する、項目9に記載の方法。
(項目11)前記欠損位置が気管に存在する、項目9に記載の方法。
(項目12)前記欠損位置が椎間円板に存在する、項目9に記載の方法。
(項目13)前記欠損位置が関節半月板に存在する、項目9に記載の方法。
(項目14)前記キャリアがコラーゲンを含む、項目1に記載の方法。
(項目15)前記欠損位置が咽頭に存在する、項目14に記載の方法。
(項目16)前記欠損位置が気管に存在する、項目14に記載の方法。
(項目17)前記欠損位置が椎間円板に存在する、項目14に記載の方法。
(項目18)前記欠損位置が半月板に存在する、項目14に記載の方法。
(項目19)前記キャリアがカルボキシメチルセルロースを含む、項目1に記載の方法。(項目20)前記キャリアが、同種異系血液または自己血液をさらに含む、項目19に記載の方法。
(項目21)前記欠損位置が咽頭に存在する、項目19に記載の方法。
(項目22)前記欠損位置が気管に存在する、項目19に記載の方法。
(項目23)前記欠損位置が椎間円板に存在する、項目19に記載の方法。
(項目24)前記欠損位置が半月板に存在する、項目19に記載の方法。
(項目25)項目1に記載の方法であって、前記キャリアが、ヒドロキシアパタイト;アルキルセルロース;ポロキサマー;ゼラチン;ポリエチレングリコール;デキストリン;植物油;ならびに乳酸、酪酸、グリコール酸のポリマー、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される1つ以上のメンバーを含む、方法。
(項目26)前記骨形成タンパク質がOP−1である、項目1に記載の方法。
(項目27)項目1に記載の方法であって、前記骨形成タンパク質が、OP−2、OP−3、BMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−5;BMP−6、BMP−9、BMP−10、BMP−11、BMP−12、BMP−13、BMP−14、BMP−15、BMP−3b、DPP、Vg−1、Vgr−1、60Aプロテイン、GDF−1、GDF−2、GDF−3、GDF−5、GDF−6、GDF−7、GDF−8、GDF−9、GDF−10、およびGDF−11からなる群より選択される、方法。
(項目28)項目1に記載の方法であって、前記骨形成タンパク質が、ヒトOP−1の、保存された7システインドメインを含む、C末端の102〜106個のアミノ酸に対して少なくとも70%の相同性を有するアミノ酸配列を含む、方法。
(項目29)項目1に記載の方法であって、前記骨形成タンパク質が、OPX(配列番号3)、一般配列6(配列番号4)、一般配列7(配列番号5)、一般配列8(配列番号6)、または一般配列9(配列番号7)によって規定されるアミノ酸配列を含む、方法。
(項目30)前記欠損位置が咽頭に存在する、項目26に記載の方法。
(項目31)前記欠損位置が気管に存在する、項目26に記載の方法。
(項目32)前記欠損位置が椎間円板に存在する、項目26に記載の方法。
(項目33)前記欠損位置が半月板に存在する、項目26に記載の方法。
(項目34)前記骨形成タンパク質および前記キャリアが、非関節性軟骨組織の軟骨膜の下に移植される、項目1に記載の方法。
(項目35)哺乳動物の非関節性軟骨組織における欠損を修復するための移植可能デバイスであって、該デバイスが失活した軟骨中に配置された骨形成タンパク質を含む、移植可能デバイス。
(項目36)前記軟骨が自己軟骨または同種異系軟骨である、項目35に記載のデバイス。
(項目37)前記骨形成タンパク質がOP−1である、項目35に記載のデバイス。
(項目38)前記軟骨が同種異系軟骨である、項目37に記載のデバイス。
(項目39)項目35に記載のデバイスであって、前記骨形成タンパク質は、OPX(配列番号3)、一般配列6(配列番号4)、一般配列7(配列番号5)、一般配列8(配列番号6)、または一般配列9(配列番号7)により規定されたアミノ酸配列を含む、デバイス。
(項目40)哺乳動物の非関節性軟骨組織における欠損を修復するための移植可能デバイスであって、該デバイスが、コラーゲンキャリア中に配置された骨形成タンパク質を含む、移植可能デバイス。
(項目41)前記骨形成タンパク質がOP−1である、項目40に記載のデバイス。
(項目42)項目40に記載のデバイスであって、前記骨形成タンパク質が、OPX(配列番号3)、一般配列6(配列番号4)、一般配列7(配列番号5)、一般配列8(配列番号6)、または一般配列9(配列番号7)により規定されたアミノ酸配列を含む、デバイス。
(項目43)哺乳動物の非関節性軟骨組織における欠損を修復するための移植可能デバイスであって、該デバイスは、カルボキシメチルセルロースキャリア中に配置された骨形成タンパク質を含む、移植可能デバイス。
(項目44)前記骨形成タンパク質がOP−1である、項目43に記載のデバイス。
(項目45)項目43に記載のデバイスであって、前記骨形成タンパク質が、OPX(配列番号3)、一般配列6(配列番号4)、一般配列7(配列番号5)、一般配列8(配列番号6)、または一般配列9(配列番号7)により規定されたアミノ酸配列を含む、デバイス。
(項目46)前記キャリアが、同種異系血液または自己血液をさらに含む、項目43に記載のデバイス。
(項目47)哺乳動物の非軟骨性欠損位置における軟骨形成を促進する方法であって、該方法は、失活した軟骨キャリア中の骨形成タンパク質を該欠損位置に提供する工程であって、ここで、該軟骨キャリアが該欠損位置に適合するように形づくられている、方法。
(項目48)前記軟骨キャリアが軟骨同種移植片である、項目47に記載の方法。
(項目49)項目47に記載の方法であって、前記骨形成タンパク質が、ヒトOP−1の、保存された7システインドメインを含む、C末端の102〜106個のアミノ酸に対して少なくとも70%の相同性を有するアミノ酸配列を含む、方法。
(項目50)前記骨形成タンパク質がヒトOP−1である、項目49に記載の方法。
(項目51)哺乳動物の靱帯における欠損位置を修復する方法であって、該方法は、生体適合性で、生体再吸収性のキャリア中の骨形成タンパク質を該欠損位置に提供し、それにより機能的置換靱帯組織の形成を誘導する工程を包含し、ここで、該骨形成タンパク質が、BMP−12でもBMP−13でもなく、そして該欠損位置が骨格関節ではない、方法。
(項目52)前記欠損位置が咽頭に存在する、項目51に記載の方法。
(項目53)前記キャリアが軟骨を含む、項目51に記載の方法。
(項目54)前記キャリアがカルボキシメチルセルロースを含む、項目51に記載の方法。
(項目55)前記キャリアがコラーゲンを含む、項目51に記載の方法。
(項目56)前記骨形成タンパク質がOP−1である、項目51に記載の方法。
【0019】
他に規定しない限り、本明細書において使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般に理解されるのと同一の意味を有する。例示的な方法および材料を以下に記載するが、本明細書に記載される方法および材料と類似または等価な方法および材料もまた、本発明の実施または試験において使用され得る。本明細書において言及される全ての刊行物および他の参考文献は、その全体が参考として援用される。対立する場合は、定義を含む本明細書が、優先する。材料、方法および実施例は、例示のみであり、限定を意図しない。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(発明の詳細な説明)
本発明は、骨形成タンパク質が、哺乳動物における欠損部位に局所的に提供される場合、機能的な置換非関節性軟骨および/または置換靭帯組織を生成し得るという知見に基づく。そのような非関節性軟骨組織としては、喉頭、気管、および他の線維軟骨性組織(例えば、椎間円板、肋骨、骨格関節間半月板、耳および鼻の組織を含む)が挙げられる。本発明のデバイス、キットおよび方法は、哺乳動物(例えば、ヒト)におけるこれらの組織の損失または損傷から生じる、失われた機能または損なわれた機能の回復において有用である。
【0021】
本発明をより十分に理解するために、種々のタイプの軟骨、軟骨性組織および軟骨性器官が以下に記載される。関節性軟骨は、関節内の骨の部分の、関節で接合する表面を覆う。軟骨は、直接的に骨と骨とを接触させることなく関節の運動を可能にし、それによって反対側の骨表面の、磨り減りおよび損傷を防ぐ。関節性軟骨は、骨化の傾向を有さない。軟骨表面は、滑らかであり、そして巨視的には真珠のようであり、そして高倍率下では、微細な顆粒状である。そのような軟骨を、線維軟骨および弾性軟骨とは対照的に、硝子軟骨という。関節性軟骨は、その栄養素の一部を隣接する滑膜の導管から得るようであり、そして一部を軟骨が覆う骨から得るようである。関節性軟骨は、II型コラーゲンおよびIX型コラーゲンならびに種々の十分に特徴づけられたプロテオグリカンの存在、ならびにX型コラーゲン(軟骨内骨形成と関連する)の不存在と関連する。関節性軟骨の微細構造の詳細な記載について、例えば、AydelotteおよびKuettner、Conn.Tiss.Res.18:205(1988);Zanettiら、J.Cell Biol.101:53(1985);およびPooleら、J.Anat.138:13(1984)を参照のこと。
【0022】
成体哺乳動物における他のタイプの恒久軟骨としては、線維軟骨および弾性軟骨が挙げられる。線維軟骨において、ムコポリサッカライドの網様構造が、顕著なコラーゲン束と絡み合い、そして軟骨細胞が、硝子軟骨においてよりも、より広範に分散する。白色線維軟骨は、種々の割合の白色繊維組織および軟骨性組織の混合物からなる。二次軟骨性関節(secondary cartilaginous joint)が、脊柱中の椎骨を結合する線維軟骨の円板によって形成される。関節間の線維軟骨が、激しい衝撃に最も曝され、そして頻繁な運動に供される関節(例えば、膝の半月板)において見出される。そのような関節の例としては、側頭下顎、胸鎖、肩峰鎖骨、手首および膝の関節が挙げられる。そのような線維軟骨円板(対向する表面の両方に密接に付着する)は、軟骨板が間に入った同心円の線維性組織から構成される。そのような繊維軟骨円板の例は、脊柱の椎間円板である。結合線維軟骨が、椎体の間、および恥骨の間のように、ほんのわずかな運動のみを可能にする関節の骨表面の間に入る。寛骨臼唇は、股関節部の寛骨臼および肩の関節窩のような関節腔のいくつかの縁を囲み;関節表面を深める、そしてその縁を保護するように作用する。層状性線維軟骨とは、骨溝に対する薄いコーティングをいい、これを通じて、特定の筋肉の腱が滑る。関節間線維軟骨は、本明細書において、硝子質から主に構成される関節性軟骨から区別するように、非関節性軟骨であると考えられる。関節円板、関節窩および寛骨臼唇、腱についての骨溝の軟骨性裏打ちおよびいくつかの関節性軟骨のように、より少ない量で存在する場合、線維軟骨は、そのマトリクス中に多量のI型コラーゲン(一般的な結合組織)を有することにおいて、他の型の軟骨とは異なる;次に、それは、2つの型の組織の混合物であることが、最も高い可能性で考えられる(例えば、靭帯または腱組織が、特定の型の軟骨というよりもむしろ、硝子質軟骨に挿入される場合)。例えば、Gray’s Anatomyを参照のこと。
【0023】
弾性軟骨は、エラスチン線維と組織学的に類似するコラーゲン線維を含む。そのような軟骨は、外耳の耳介、エウスターキオ管、小角軟骨(cornicula laryngis)、および喉頭蓋のヒト身体において見出される。全ての軟骨のように、弾性軟骨はまた、軟骨細胞およびマトリクスを含み、後者は、黄色の弾性線維の網様構造によって全ての方向に広がり、分岐し、そして各細胞の直ぐ周辺を除いて全ての方向において吻合し、そして非原線維性の硝子質(細胞内物質)の可変量が存在する。
【0024】
本明細書において使用する場合、「軟骨」とは、線維症性の軟骨性組織(瘢痕組織において生じ、例えば、ケロイドおよび瘢痕型組織において代表的であり、すなわち、毛細血管ならびにI型コラーゲンおよびII型コラーゲンの、豊富な、不規則な、組織化されていない束から構成される)とは、区別される。
【0025】
主要な喉頭の軟骨は、硝子質軟骨または線維軟骨(特に弾性繊維軟骨)のいずれかである。具体的には、小角軟骨、楔状軟骨、および喉頭蓋軟骨が、時間経過しても、骨化も石灰化もほとんどする傾向がない弾性軟骨である。甲状軟骨、輪状軟骨および披裂軟骨のほとんどが、硝子質軟骨であり、そして年齢とともに斑状石灰化または斑状骨化され得、そして組織の機械的受容性を損ない得る。主な喉頭の靱帯は、外因性の靭帯(例えば、甲状(thyrohoid)膜およびその成分靭帯)、内在性の靭帯(例えば、輪状甲状膜およびその成分靭帯)、室ひだおよび関連する靭帯、声帯ひだおよび関連する靭帯が挙げられる。
【0026】
気管(trachea)(すなわち、気管(windpipe))は、軟骨性および膜性の円柱状の管であり、背面で平らである。それは、喉頭の下部から、第6頸椎のレベルまで伸長し、第4胸椎(または時として第5胸椎)と向かい合い、そこで2つの気管支(その1つが各肺に)に分かれる。気管は、不完全な硝子質軟骨性の輪から構成され、この輪は、線維膜によって完成する。これらは、高度に弾性であるが、時として、高齢において石灰化する。軟骨は、弾性線維膜に囲まれる。
【0027】
(I.タンパク質の考察)
その性質において、ネイティブの形態すなわち天然に生じる骨形成タンパク質は、グリコシル化された二量体であり、代表的にはSDS−PAGEによって決定される場合、約30〜36kDの見かけ分子量を有する。還元される場合、30kDのタンパク質は、約16kDおよび18kDの見かけ分子量を有する2つのグリコシル化ポリペプチドサブユニットを生じる。還元状態において、このタンパク質は、検出可能な骨形成活性を有さない。グリコシル化されていないタンパク質(骨形成活性もまた有する)は、約27kDの見かけ分子量を有する。還元される場合、27kDタンパク質は、2つの非グリコシル化ポリペプチドを生じ、各々が約14kD〜約16kDの分子量を有する。代表的には、天然に存在する骨形成タンパク質は、通常約30アミノ酸長未満のN末端シグナルペプチドを有する前駆体として翻訳される。このシグナルペプチドには、切断されて成熟C末端ドメインを生じる「プロ」ドメインが続く。シグナルペプチドは、Von Heijne(Nucleic Acids Research 14:4683〜4691(1986))の方法を使用して所定の配列において予測され得る切断部位において、翻訳の際に迅速に切断される。プロドメインは、完全にプロセスされた成熟C末端ドメインよりも、通常約3倍大きい。
【0028】
本明細書において有用な骨形成タンパク質は、任意の公知の天然に生じるネイティブタンパク質(対立遺伝子改変体、系統発生的対応物およびその他の改変体を含む)を含む。有用な骨形成タンパク質はまた、生合成的に産生されたタンパク質(例えば、「ムテイン」または「変異型タンパク質」を含む)、および新規の、タンパク質の一般的な形態形成ファミリーの骨形成活性なメンバーであるタンパク質を含む。特に有用な配列としては、以下の配列のC末端96〜102アミノ酸残基を含む配列が挙げられる:DPP(Drosophila由来)、Vg−1(Xenopus由来)、Vgr−1(マウス由来)、OP1およびOP2タンパク質(米国特許第5,011,691号およびOppermannら)、ならびにBMP−2、BMP−3、BMP−4(WO88/00205、米国特許第5,013,649号およびWO91/18098)、BMP−5およびBMP−6(WO90/11366、PCT/US90/01630)、BMP−8およびBMP−9というタンパク質。本発明の実施において有用な他のタンパク質としては、OP1、OP2、OP3、BMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−9、BMP−10、BMP−11、BMP−12、BMP−13、BMP−14、BMP−15、DPP、Vg−1、Vgr−l、60Aタンパク質、GDF−1、GDF−3、GDF−5、GDF−6、GDF−7、GDF−8、GDF−9、およびGDF−10、GDF−11、GDF−12、GDF13、CDMP−3、UNIVIN、NODAL、SCREW、ADMPおよびNEURALならびにこれらのアミノ酸配列改変体の活性形態が挙げられる。1つの現在好ましい実施態様において、有用な骨形成タンパク質としては、OP−1、OP−2、OP−3、BMP−2、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−9およびこれらのアミノ酸配列改変体およびこれらのホモログ(その種ホモログを含む)のいずれか1つが挙げられる。
【0029】
特定の好ましい実施態様において、有用な骨形成タンパク質としては、天然に生じる参照形態形成タンパク質の全部または一部に対して、少なくとも70%(例えば、少なくとも80%)の配列相同性または「類似性」を共有する配列を有するアミノ酸配列を有するタンパク質が挙げられる。好ましい参照タンパク質は、ヒトOP−1であり、そしてその参照配列は、ヒトOP−1の骨形成活性形態に存在するC末端7システインドメインである。このドメインは、配列番号2の残基330〜431に対応する。他の公知の骨形成タンパク質もまた、参照配列として使用され得る。1つの実施態様において、候補アミノ酸配列が、Needlemanら(J.Mol.Biol.48:443〜453(1970))の方法(Alignプログラム(DNAstar、Inc.)のようなコンピュータプログラムによって、都合よく実行される)を使用することによって参照アミノ酸配列と整列され得る。候補配列中の内部のギャップおよびアミノ酸挿入は、候補配列と参照配列との間のホモロジーレベルまたは同一性レベルの計算のために、無視される。
【0030】
「アミノ酸配列ホモロジー」は、本明細書において、アミノ酸配列同一性およびアミノ酸配列類似性の両方を含むことが理解される。相同な配列は、同一および/または類似のアミノ酸残基を共有し、ここで、類似の残基は、整列された参照配列における対応するアミノ酸残基についての保存的置換であるか、または「許容される点変異」である。従って、参照配列と70%のアミノ酸ホモロジーを共有する候補ポリペプチド配列は、参照配列中で、整列された残基の任意の70%が参照アミノ酸中の対応する残基と同一であるか、またはその保存的置換であるかのいずれかである。特定の特に好ましい形態形成ポリペプチドは、ヒトOP−1のC末端の7システインドメインに対して、少なくとも60%(例えば、少なくとも65%)のアミノ酸配列同一性を共有する。
【0031】
本明細書において使用する場合、「保存的置換物」は、対応する参照残基に対して、物理的または機能的に類似の残基である。すなわち、保存的置換物とその参照残基は、類似のサイズ、形状、電荷、化学的性質(共有結合または水素結合などを形成する能力を含む)を有する。好ましい保存的置換は、Dayhoffら(1978)、5 Atlas of Protein Sequence and Structure、補遺3、22章、354〜352頁、Natl.Biomed.Res.Found.、Washington, D. C. 20007中の受け入れられる点変異について規定される判定基準を満たす置換である。保存的置換の例は、以下の群内の置換である:(a)バリン、グリシン;(b)グリシン、アラニン;(c)バリン、イソロイシン、ロイシン;(d)アスパラギン酸、グルタミン酸;(e)アスパラギン、グルタミン;(f)セリン、スレオニン;(g)リジン、アルギニン、メチオニン;および(h)フェニルアラニン、チロシン。用語「保存的改変体」または「保存的改変」はまた、親配列に対して特異的な抗体がまた特異的である(すなわち、生じる置換されたポリペプチド配列と「交差反応する」または「免疫反応する」)、所定の親アミノ酸配列におけるアミノ酸残基の代わりにアミノ酸残基の置換の使用を含む。
【0032】
他の好ましい実施態様において、本発明において有用な骨形成タンパク質のファミリーは、一般的なアミノ酸配列によって規定される。例えば、以下に記載する一般配列7(配列番号4)および一般配列8(配列番号5)は、今日までに同定された好ましいタンパク質ファミリーメンバー(OP−1、OP−2、OP−3、BMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6、60A、DPP、Vg−1、Vgr−1、およびGDF−1を含む)の中で共有されたホモロジーを有する。これらのタンパク質のアミノ酸配列は、本明細書および/または先行文献において記載される。一般配列は、C末端の6または7システイン骨格ドメインにおいてこれらの配列によって共有される同一のアミノ酸残基(それぞれ一般配列7および8によって示される)、ならびに配列内の可変位置についての代替的な残基を含む。一般配列は、分子間または分子内ジスルフィド結合を形成し得る適切なシステイン骨格を提供する。これらの配列は、折り畳まれたタンパク質の三次構造に影響し得る特定の特異的なアミノ酸を含む。さらに、一般配列は、位置36(一般配列7)または位置41(一般配列8)においてさならるシステインを許容し、それによって、OP−2およびOP−3の生物学的に活性な配列を包含する。
【0033】
【化1】

ここで各のXaa=は独立して以下のように定義される(「Res.」は「残基」を意味する):残基2のXaa=(TyrまたはLys);残基3のXaa=(ValまたはIle);残基4のXaa=(Ser、AspまたはGlu);残基6のXaa=(Arg、Gln、Ser、LysまたはAla);残基7のXaa=(AspまたはGlu);残基8のXaa=(Leu、ValまたはIle);残基11のXaa=(Gln、Leu、Asp、His、AsnまたはSer);残基12のXaa=(Asp、Arg、AsnまたはGlu);残基13のXaa=(TrpまたはSer);残基14のXaa=(IleまたはVal);残基15のXaa=(IleまたはVal);残基16のXaa=(AlaまたはSer);残基18のXaa=(Glu、Gln、Leu、Lys、ProまたはArg);残基19のXaa=(GlyまたはSer);残基20のXaa=(TyrまたはPhe);残基21のXaa=(Ala、Ser、Asp、Met、His、Gln、LeuまたはGly);残基23のXaa=(Tyr、AsnまたはPhe);残基26のXaa=(Glu、His、Tyr、Asp、Gln、AlaまたはSer);残基28のXaa=(Glu、Lys、Asp、GlnまたはAla);残基30のXaa=(Ala、Ser、Pro、Gln、IleまたはAsn);残基31のXaa=(Phe、LeuまたはTyr);残基33のXaa=(Leu、ValまたはMet);残基34のXaa=(Asn、Asp、Ala、ThrまたはPro);残基35のXaa=(Ser、Asp、Glu、Leu、AlaまたはLys);残基36のXaa=(Tyr、Cys、His、SerまたはIle);残基37のXaa=(Met、Phe、GlyまたはLeu);残基38のXaa=(Asn、SerまたはLys);残基39のXaa=(Ala、Ser、GlyまたはPro);残基40のXaa=(Thr、LeuまたはSer);残基44のXaa=(Ile、ValまたはThr);残基45のXaa=(Val、Leu、MetまたはIle);残基46のXaa=(GlnまたはArg);残基47のXaa=(Thr、AlaまたはSer);残基48のXaa=(LeuまたはIle);残基49のXaa=(ValまたはMet);残基50のXaa=(His、AsnまたはArg);残基51のXaa=(Phe、Leu、Asn、Ser、AlaまたはVal);残基52のXaa=(Ile、Met、Asn、Ala、Val、GlyまたはLeu);残基53のXaa=(Asn、Lys、Ala、Glu、GlyまたはPhe);残基54のXaa=(Pro、SerまたはVal);残基55のXaa=(Glu、Asp、Asn、Gly、Val,ProまたはLys);残基56のXaa=(Thr、Ala、Val、Lys、Asp、Tyr、Ser、Gly、IleまたはHis);残基57のXaa=(Val、AlaまたはIle);残基58のXaa=(ProまたはAsp);残基59のXaa=(Lys、LeuまたはGlu);残基60のXaa=60(Pro、ValまたはAla);残基63のXaa=(AlaまたはVal);残基65のXaa=(Thr、AlaまたはGlu);残基66のXaa=(Gln、Lys、ArgまたはGlu);残基67のXaa=(Leu、MetまたはVal);残基68のXaa=(Asn、Ser、AspまたはGly);残基69のXaa=(Ala、ProまたはSer);残基70のXaa=(Ile、Thr、ValまたはLeu);残基71のXaa=(Ser、AlaまたはPro);残基72のXaa=(Val、Leu、MetまたはIle);残基74のXaa=(TyrまたはPhe);残基75のXaa=(Phe、Tyr、LeuまたはHis);残基76のXaa=(Asp、AsnまたはLeu);残基77のXaa=(Asp、Glu、Asn、ArgまたはSer);残基78のXaa=(Ser、Gln、Asn、TyrまたはAsp);残基79のXaa=(Ser、Asn、Asp、GluまたはLys);残基80のXaa=(Asn、ThrまたはLys);残基82のXaa=(Ile、ValまたはAsn);残基84のXaa=(LysまたはArg);残基85のXaa=(Lys、Asn,Gln、His、ArgまたはVal);残基86のXaa=(Tyr、GluまたはHis);残基87のXaa=(Arg、Gln,GluまたはPro);残基88のXaa=(Asn、Glu、TrpまたはAsp);残基90のXaa=(Val、Thr、AlaまたはIle);残基92のXaa=(Arg、Lys、Val、Asp、GlnまたはGlu);残基93のXaa=(Ala、Gly,GluまたはSer);残基95のXaa=(GlyまたはAla);および残基97のXaa(HisまたはArg)。
【0034】
一般配列8(配列番号5)は、全ての一般配列7を含み、さらに、そのN末端に以下の5アミノ酸を含む:Cys Xaa Xaa Xaa Xaa (配列番号8)、ここで、残基2のXaa=(Lys、Arg、AlaまたはGln);残基3のXaa=(Lys、ArgまたはMet);残基4のXaa=(His、ArgまたはGln);および残基5のXaa=(Glu、Ser、His、Gly、Arg、Pro、Thr、またはTyr)。従って、残基7で始まって、一般配列8における各「Xaa」は、一般配列7について定義される特定のアミノ酸であるが、一般配列7において記載される各残基番号が、一般配列8において5つシフトするという特徴を有する。例えば、一般配列7における「残基2のXaa=(TyrまたはLys)」は、一般配列8の残基7のXaaに対応する。
【0035】
別の実施態様において、有用な骨形成タンパク質としては、一般配列9(配列番号6)および一般配列10(配列番号7)により規定される配列を含むタンパク質が挙げられる。一般配列9および10は、以下のタンパク質の複合アミノ酸配列である:ヒトOP−1、ヒトOP−2、ヒトOP−3、ヒトBMP−2、ヒトBMP−3、ヒトBMP−4、ヒトBMP−5、ヒトBMP−6、ヒトBMP−9、ヒトBMP10、ヒトBMP−11、Drosophila 60A、Xenopus Vg−1、ウニ UNIVIN、ヒト
CDMP−1(マウスGDF−5)、ヒトCDMP−2(マウス GDF−6、ヒトBMP−13)、ヒト CDMP−3(マウス GDF−7,ヒトBMP−12)、マウス
GDF−3、ヒトGDF−1、マウスGDF−1、ニワトリ DORSALIN、DPP、Drosophila SCREW、マウス NODAL、マウス GDF−8、ヒト GDF−8、マウスGDF−9、マウスGDF−10、ヒト GDF−11、マウス
GDF−11、ヒト BMP−15、およびラット BMP 3b。一般配列7と同様に、一般配列9は、C末端の6システイン骨格を有し、そして一般配列8と同様に、一般配列10は、C末端の7システイン骨格を有する。
【0036】
【化2】

ここで、各Xaaは、以下のように独立して規定される:残基1のXaa=1 =(Phe,LeuまたはGlu);残基2のXaa=(Tyr、Phe、His、Arg、Thr、Lys、Gln、ValまたはGlu);残基3のXaa=(Val、Ile、LeuまたはAsp);残基4のXaa=(Ser、Asp、Glu、AsnまたはPhe);残基5のXaa=(Phe または Glu);残基6のXaa=(Arg、Gln、Lys、Ser、Glu、AlaまたはAsn);残基7のXaa=(Asp、Glu、Leu、AlaまたはGln);残基8のXaa=(Leu、Val、Met、IleまたはPhe);残基9のXaa=(Gly、HisまたはLys);残基10のXaa=(TrpまたはMet);残基11のXaa=(Gln、Leu、His、Glu、Asn、Asp、SerまたはGly);残基12のXaa=(Asp、Asn、Ser、Lys、Arg、GluまたはHis);残基13のXaa=(TrpまたはSer);残基14のXaa=(IleまたはVal);残基15のXaa=(IleまたはVal);残基16のXaa=(Ala、Ser、TyrまたはTrp);残基18のXaa=(Glu、Lys、Gln、Met、Pro、Leu、Arg、HisまたはLys);残基19のXaa=(Gly、Glu、Asp、Lys、Ser、Gln、ArgまたはPhe);残基20のXaa=(TyrまたはPhe);残基21のXaa=(Ala、Ser、Gly、Met、Gln、His、Glu、Asp、Leu、Asn、LysまたはThr);残基22のXaa=(AlaまたはPro);残基23の=(Tyr、Phe、Asn、AlaまたはArg);残基24のXaa=(Tyr、His、Glu、PheまたはArg);残基26のXaa=(Glu、Asp、Ala、Ser、Tyr、His、Lys、Arg、GlnまたはGly);残基の28Xaa=(Glu、Asp、Leu、Val、Lys、Gly、Thr、AlaまたはGln);残基30のXaa=(Ala、Ser、Ile、Asn、Pro、Glu、Asp、Phe、GlnまたはLeu);残基31のXaa=(Phe、Tyr、Leu、Asn、GlyまたはArg);残基32のXaa=(Pro、Ser、AlaまたはVal);残基33のXaa=(Leu、Met、Glu、PheまたはVal);残基34のXaa=(Asn、Asp、Thr、Gly、Ala、Arg、LeuまたはPro);残基35のXaa=(Ser、Ala、Glu、Asp、Thr、Leu、Lys、GlnまたはHis);残基36のXaa=(Tyr、His、Cys、Ile、Arg、Asp、Asn、Lys、Ser、GluまたはGly);残基37のXaa=(Met、Leu、Phe、Val、GlyまたはTyr);残基38のXaa=(Asn、Glu、Thr、Pro、Lys、His、Gly、Met、ValまたはArg);残基39のXaa=(Ala、Ser、Gly、ProまたはPhe);残基40のXaa=(Thr、Ser、Leu、Pro、HisまたはMet);残基41のXaa=(Asn、Lys、Val、ThrまたはGln);残基42のXaa=(His、TyrまたはLys);残基43のXaa=(Ala、Thr、LeuまたはTyr);残基44のXaa=(Ile、Thr、Val、Phe、Tyr、MetまたはPro);残基45のXaa=(Val、Leu、Met、IleまたはHis);残基46のXaa=(Gln、ArgまたはThr);残基47のXaa=(Thr、Ser、Ala、AsnまたはHis);残基48のXaa=(Leu、AsnまたはIle);残基49のXaa=(Val、Met、Leu、ProまたはIle);残基50のXaa=(His、Asn、Arg、Lys、TyrまたはGln);残基51のXaa=(Phe、Leu、Ser、Asn、Met、Ala、Arg、Glu、GlyまたはGln);残基52のXaa=(Ile、Met、Leu、Val、Lys、Gln、AlaまたはTyr);残基53のXaa=(Asn、Phe、Lys、Glu、Asp、Ala、Gln、Gly、LeuまたはVal);残基54のXaa=(Pro、Asn、Ser、ValまたはAsp);残基55のXaa=(Glu、Asp、Asn、Lys、Arg、Ser、Gly、Thr、Gln、ProまたはHis);残基56のXaa=(Thr、His、Tyr、Ala、Ile、Lys、Asp、Ser、GlyまたはArg);残基57のXaa=(Val、Ile、Thr、Ala、LeuまたはSer);残基58のXaa=(Pro、Gly、Ser、AspまたはAla);残基59のXaa=(Lys、Leu、Pro、Ala、Ser、Glu、ArgまたはGly);残基60のXaa=(Pro、Ala、Val、ThrまたはSer);残基61のXaa=(Cys、ValまたはSer);残基63のXaa=(Ala、ValまたはThr);残基65のXaa=(Thr、Ala、Glu、Val、Gly、AspまたはTyr);残基66のXaa=(Gln、Lys、Glu、ArgまたはVal);残基67のXaa=(Leu、Met、ThrまたはTyr);残基68のXaa=(Asn、Ser、Gly、Thr、Asp、Glu、LysまたはVal);残基69のXaa=(Ala、Pro、GlyまたはSer);残基70のXaa=(Ile、Thr、LeuまたはVal);残基71のXaa=(Ser、Pro、Ala、Thr、AsnまたはGly);残基72のXaa=(Val、Ile、LeuまたはMet);残基74のXaa=(Tyr、Phe、Arg、Thr、TyrまたはMet);残基75のXaa=(Phe、Tyr、His、Leu、Ile、Lys、GlnまたはVal);残基76のXaa=(Asp、Leu、AsnまたはGlu);残基77のXaa=(Asp、Ser、Arg、Asn、Glu、Ala、Lys、GlyまたはPro);残基78のXaa=(Ser、Asn、Asp、Tyr、Ala、Gly、Gln、Met、Glu、AsnまたはLys);残基79のXaa=(Ser、Asn、Glu、Asp、Val、Lys、Gly、GlnまたはArg);残基80のXaa=(Asn、Lys、Thr、Pro、Val、Ile、Arg、SerまたはGln);残基81のXaa=(Val、Ile、ThrまたはAla);残基82のXaa=(Ile、Asn、Val、Leu、Tyr、AspまたはAla);残基の83Xaa=(Leu、Tyr、LysまたはIle);残基84のXaa=(Lys、Arg、Asn、Tyr、Phe、Thr、GluまたはGly);残基85のXaa=(Lys、Arg、His、Gln、Asn、GluまたはVal);残基86のXaa=(Tyr、His、GluまたはIle);残基87のXaa=(Arg、Glu、Gln、ProまたはLys);残基88のXaa=(Asn、Asp、Ala、Glu、GlyまたはLys);残基89のXaa=(MetまたはAla);残基90のXaa=(Val、Ile、Ala、Thr、SerまたはLys);残基91のXaa=(ValまたはAla);残基92のXaa=(Arg、Lys、Gln、Asp、Glu、Val、Ala、SerまたはThr);残基93のXaa=(Ala、Ser、Glu、Gly、ArgまたはThr);残基95のXaa=(Gly、AlaまたはThr);および残基97のXaa=(His、Arg、Gly、LeuまたはSer)。さらに、ラットBMP3bおよびマウスGDF−10において残基53の後に、Ileが存在する;GDF−1において残基54の後に、Thrが存在する;BMP3における残基54の後に、Valが存在する;BMP−8およびDORSALINにおいて残基78の後に、Glyが存在する;ヒトGDF−1における残基37後に、Pro、Gly、GlyおよびProが存在する。
【0037】
一般配列10(配列番号7)は、一般配列9の全てを含み、そしてさらにN末端に以下の5つのアミノ酸残基を含む:Cys Xaa Xaa Xaa Xaa (配列番号9)、ここで残基2のXaa=(Lys、Arg、Gln、Ser、His、Glu、Ala、またはCys);残基3のXaa=(Lys、Arg、Met、Lys、Thr、Leu、Tyr、またはAla);残基4のXaa=(His、Gln、Arg、Lys、Thr、Leu、Val、Pro、またはTyr);および残基5のXaa=(Gln、Thr、His、Arg、Pro、Ser、Ala、Gln、Asn、Tyr、Lys、Asp、またはLeu)である。従って、残基6で開始する、一般配列10における各「Xaa」は、一般配列番号9として規定された特定のアミノ酸である。ここで、一般配列9について記載された各残基番号は一般配列10では5つずれているという違いがある。例えば、一般配列9における「残基1のXaa=(Phe、LeuまたはGlu)」は、一般配列10における残基6のXaaに対応する。
【0038】
上記のように、本発明において有用な特定の好ましい骨形態形成タンパク質は、ヒトOP−1のC末端の7システインドメインと、60%より大きい、好ましくは65%より大きい同一性を有する。これらの特に好ましい配列は、Drosophila 60Aタンパク質を含む、OP−1タンパク質およびOP−2タンパク質の対立遺伝子改変体および系統学的改変体を含む。従って、特定の特に好ましい実施態様において、有用なタンパク質とは、一般的アミノ酸配列「OPX」(配列番号3)を有するダイマーを含む活性タンパク質を含む。これは、7システインの骨格を定義し、そして同定されたいくつかのOP−1改変体とOP−2改変体との間に相同性を有する。OPXにおける各Xaaは、マウスまたはヒトのOP−1またはOP−2のC末端配列における対応する位置に存在する残基から独立して選択される。
【0039】
【化3】

ここで、残基2のXaa=(LysまたはArg);残基3のXaa=(LysまたはArg);残基11のXaa=(ArgまたはGln);残基16のXaa=(GlnまたはLeu);残基19のXaa=(IleまたはVal);残基23のXaa=(GluまたはGln);残基26のXaa=(AlaまたはSer);残基35のXaa=(AlaまたはSer);残基39のXaa=(AsnまたはAsp);残基41のXaa=(TyrまたはCys);残基50のXaa=(ValまたはLeu);残基52のXaa=(SerまたはThr);残基56のXaa=(PheまたはLeu);残基57のXaa=(IleまたはMet);残基58のXaa=(AsnまたはLys);残基60のXaa=(Glu、AspまたはAsn);残基61のXaa=(Thr、AlaまたはVal);残基65のXaa=(ProまたはAla);残基71のXaa=(GlnまたはLys);残基73のXaa=(AsnまたはSer);残基75のXaa=(IleまたはThr);残基80のXaa=(PheまたはTyr);残基82のXaa=(AspまたはSer);残基84のXaa=(SerまたはAsn);残基89のXaa=(LysまたはArg);残基91のXaa=(TyrまたはHis);そして残基97のXaa=(ArgまたはLys)。
【0040】
なお別の好ましい実施態様において、有用な骨形成活性タンパク質は、参照骨形成配列をコードするDNAまたはRNAに対して、低ストリンジェンシー、中ストリンジェンシー、または高ストリンジェンシーなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズする核酸によりコードされるアミノ酸配列を含む。例示的な参照配列は、OP−1、OP−2、BMP−2、BMP−4、BMP−5、BMP−6、60A、GDF−3、GDF−5、GDF−6、GDF−7などの保存された7システインドメインを規定するC末端配列を含む。高ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、本明細書においては、40%ホルムアミド、5×SSPE、5×デンハルト溶液、および0.1% SDS中で、37℃、一晩、および、0.1×SSPE、0.1% SDSで50℃で洗浄、のハイブリダイゼーションと規定される。標準的なストリンジェンシー条件は、市販の、標準的分子クローニングテキストにおいて十分特徴付けられる。例えば、Molecular Cloning A Laboratory Manual、第2版、Sambrookら(Cold Spring Harbor Laboratory Press 1989);DNA Cloning,第I巻およびII巻(D.N.Glover編、1985);Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gait編、1984);Nucleic Acid Hybridization(B.D.Hames&S.J.Higgins編、1984);およびB.Perbal、A Practical Guide To Molecular Cloning(1984)を参照のこと。
【0041】
本明細書において考慮される骨形成タンパク質は、原核生物宿主細胞もしくは真核生物宿主細胞において、インタクトかもしくは短縮されたゲノムDNAもしくはcDNAから、または合成DNAから発現され得る。二量体タンパク質は、培養培地から単離され、そして/またはインビトロで再折り畳みされ、そして二量体化されて、生物学的に活性な組成物を形成し得る。ヘテロ二量体は、インビトロで別の異なるポリペプチド鎖と組み合わせることにより形成され得る。あるいは、ヘテロ二量体は、別の異なるポリペプチド鎖をコードする核酸を同時発現することにより単一の細胞において形成され得る。組換えヘテロ二量体タンパク質産生についての例示的なプロトコールについては、例えば、WO 93/09229および米国特許第号5,411,941号を参照のこと。現在、好ましい宿主細胞としては、限定しないが、E.coliを含む原核生物、および酵母(例えば、Saccharomyces)または哺乳動物細胞(例えば、CHO、COS、またはBSC細胞)を含む真核生物が挙げられる。他の宿主細胞もまた効果的に利用され得る。作製方法、使用方法、および骨形成活性についての試験方法を含む、本発明の実施において有用なタンパク質の詳細な説明は、米国特許第5,266,683号および同5,011,691号(その開示は、本明細書において参考として援用される)を含む多くの刊行物において開示されている。
【0042】
(II.処方および送達の考察)
(A.一般的考察)
本発明のデバイスおよび組成物は、慣用的方法を用いて処方され得る。有用な処方方法論としては、マトリックスまたはキャリア物質上への可溶性タンパク質の凍結乾燥が挙げられる。有用なタンパク質可溶化溶液としては、エタノール、尿素、生理学的緩衝液(例えば、生理食塩水)、酸性緩衝液およびアセトニトリル/トリフルオロ酢酸溶液などが挙げられる。例えば、米国特許第5、266、683を参照のこと。タンパク質の望ましい最終濃度は、タンパク質の比活性、ならびに欠損の型、容積、および解剖学的位置に依存する。1つの好ましい実施態様において、有用なタンパク質は、0.5〜1.0ngタンパク質/25mgマトリックスの骨形成比活性半値を有する。より低い比活性を有するタンパク質もまた用いられ得る。タンパク質の所望される最終濃度はレシピエントの年齢、性別および全般的健康度に依存し得る。例えば、4cm2の欠損あたり10〜1000μ
gの骨形成タンパク質が、一般的に有効用量である。欠損または断裂が小さいほど、より少量で十分であり得る。投与の最適化は、慣用的な実験以上を必要とせず、そして当業者の範囲内である。
【0043】
本発明のデバイスは、様々な構成を想定し得る。それは、修復されるべき欠損部位に適合するようなサイズおよび形状に形成された、合成かまたは天然の供給源からのマトリックスを包含し得る。あるいは、このデバイスは、ゲル、ペースト、パテ、セメント、シートあるいは液体を処方するためのキャリアを含み得る。例えば、溶液中のマトリックスなしの骨形成デバイスは、酢酸塩(20mM、pH 4.5)もしくはクエン酸緩衝液またはリン酸塩緩衝化生理食塩水(pH 7.5)中のOP−1の特定の形態を可溶化することにより処方化され得る。ある場合には、骨形成のタンパク質は、完全に可溶性ではなくてもよいし、そして欠損部位への投与の際に沈殿してもよい。懸濁液、凝集処方物またはインビボ沈殿は、本明細書に開示された本発明に従って実行された場合、マトリックスなしの骨形成デバイスの操作性を害さない。液体または半液体形態中のマトリックスなしのデバイスは、外科の手段ではなく注入によって欠損部位にデバイスを提供するように、注入よる投与に特に適切である。一連のマトリックスなしのデバイスは下に記載される。微粒子物質を含むマトリックス物質が、効果的にこれらのデバイスに加えられ得る。
【0044】
本発明の別の実施態様において、この骨形成デバイスは、欠損部位へのその送達の直前に調製される。例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)含有デバイスは、外科手術の直前に混合するのに適切であり、現場で調製され得る。1つの実施態様において、低粘度CMC(AQUALON)をパッケージングし、そして骨形成タンパク質OP−1と別々に放射線照射する。次いで、このOP−1タンパク質をCMCキャリアと混合し、骨形成活性について試験する。この様式で調製されるデバイスは、CMCなしの従来のデバイスと同じく生物学的に活性である。このデバイスは、軟骨または組織形成を誘導することにより欠損部位を修復する。この目的に有効な骨形成タンパク質の量は、当業者により容易に決定され得る。
【0045】
(B.骨形態形成タンパク質の調製)
以下に、凍結乾燥OP−1を調製するための方法を示す。他の凍結乾燥した骨形成タンパク質は、類似の様式で調製され得る。
【0046】
標準的凍結乾燥プロトコールを用いて、OP−1を、5%マンニトール、ラクトース、グリシン、または他の添加剤もしくは充填剤を用いて、20mM(pH4.5)酢酸緩衝液から凍結乾燥する。この様式で調製したOP−1は、4℃〜30℃で保管する場合、少なくとも6カ月間は、生物学的活性を保持し得る。
【0047】
OP−1をまた、水中での再構成のためにコハク酸緩衝液またはクエン酸緩衝液(または他の非揮発性緩衝液)から、あるいは20mM(pH4.5)酢酸緩衝液中での再構成のため水から凍結乾燥し得る。一般に、ラクトース、スクロース、グリシンおよびマンニトールのような添加剤は、凍結乾燥したマトリックスなしの骨形成デバイスにおける使用に適切である。特定の実施態様において、このようなデバイス(0.5 mg/ml OP−1および5%添加剤)を、凍結乾燥前に湿潤構成または乾燥構成に調製し得る。
【0048】
例えば、マンニトール(0%、1%および5%)を含むか、または含まない10mMおよび20mMの酢酸緩衝液(pH4、4.5および5)中のOP−1の液体処方物は、安定であり、そして少なくとも6ヶ月間、骨形成活性である。
【0049】
(III.バイオアッセイ)
骨誘導のための当該分野で認識されるバイオアッセイは、Sampathら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 80:6591−6595 (1983)および米国特許第4、968、590号(本明細書において参考として援用される)に記載される。このアッセイは、エーテル麻酔下のレシピエントラットにおける皮下部位中の試験サンプルのデポ化を必要とする。1cmの垂直の切開を滅菌条件下で胸部領域を通して皮膚に行い、そして閉鎖性(鈍的:blunt)切開によりポケットを調製する。ある環境下で、約25mgの試験サンプルをポケットに深く埋め込み、そして切開を金属性皮膚クリップで閉じる。異所性部位により、同所性部位の使用から生じる可能性のあるあいまい性なく、骨誘導の研究を行うことが可能になる。
【0050】
異所性部位で生じる、引き続く細胞性応答は複雑である。軟骨内性骨形成の複数工程のカスケードは以下を含む:埋め込んだマトリックスへのフィブリンおよびフィブロネクチンの結合、細胞の走化性、線維芽細胞の増殖、軟骨芽細胞への分化、軟骨形成、血管浸潤、骨形成、再構成、および骨髄分化。
【0051】
首尾よい移植物は、誘導された軟骨内骨発生の種々の段階を通して制御された進行を示す。これには以下を含む:(1)1日目の多形核白血球による一過性浸潤;(2)2日目および3日目の間葉細胞遊走および増殖;(3)5日目および6日目の軟骨細胞出現;(4)7日目の軟骨マトリックス形成;(5)8日目の軟骨石灰化;(6)9日目および10日目の血管浸潤、骨芽細胞の出現、および新しい骨の形成;(7)12日目〜18日目の骨芽細胞の出現および骨再構成;ならびに(8)21日目の小骨における造血性骨髄分化。
【0052】
組織学的切片化および染色は、移植物中の骨形成の程度を決定するために好ましい。トルイジンブルーまたはヘマトキシリン/エオシンでの染色により、軟骨内骨の最終的発生を明確に示す。12日でのバイオアッセイは、骨誘導性活性が試験サンプルと関連しているか否かを決定するのに十分である。
【0053】
さらに、アルカリホスファターゼ活性は、骨形成についてのマーカーとして用いられ得る。酵素活性は、切除した試験材料の均一化後、分光光度的に決定され得る。活性はインビボで9〜10日でピークに達し、その後、徐々に減少する。組織学により骨の発生を示さないサンプルは、このようなアッセイ条件下でアルカリホスファターゼ活性を有さないはずである。このアッセイは、試験サンプルをラットから取り出したすぐ後に、骨形成を定量するのに有用である。例えば、いくつかのレベルの純度で骨形成タンパク質を含有するサンプルは、工業スケールで生成され得る処方物を探す目的で、試験され、最も有効な用量/純度レベルを決定された。アルカリホスファターゼ活性レベルおよび組織学的評価により測定される結果は、「骨形成単位(bone forming unit)」で示され得る。1骨形成単位は、12日目に、骨形成活性半値に要するタンパク質の量を示す。さらに、用量曲線は、各工程の精製スキームでインビボにおける骨誘導活性について、その工程で得られたタンパク質濃度をアッセイすることにより、作成され得る。このような曲線の作成には慣用的な実験しか必要としない。
【実施例】
【0054】
(IV.実施例)
以下の実施例は、本発明の方法および材料を例証する目的である。当業者にとって明白な、当該分野で通常みられる記載された条件およびパラメーターの適切な改変、および適応は、本発明の精神および範囲内にある。
【0055】
(実施例1)
この例は、犬の(ビーグル犬)モデルにおける喉頭組織の機能的な置換物を再生成する際の、骨形成タンパク質の有効性を実証する。
【0056】
骨形成デバイスを調製するために、同種異系移植片マトリックスとして使用されるべきドナーイヌ甲状腺層を数回、凍結融解し、細胞を遊離して取り出した。次いで、甲状の層を、0.5N HCl(例えば、溶液10容量の、4回交換;1回の交換あたり2時間)の中で鉱物質除去した。4.5cm2切片の処置した甲状腺の同種異系移植片マトリック
スを、約250μgの成熟OP−1で被覆し、移植可能な骨形成デバイスを形成した。
【0057】
標準的手順を使用して手術を実施した。軟骨膜を注意深く調製した後に、2cm2の欠
損を宿主動物の甲状軟骨の左板に作製した。この欠損に移植片を調節し、そしていくつかの縫合を用いて組み込んだ。次いで、軟骨膜および隣接する筋肉を置換した。回復後、この動物に、自由に運動をさせた。この動物を、手術後の18週目に屠殺した。
【0058】
屠殺前に、その治癒の進行を、視覚的に、そして触診によって、モニターした。手術および回復は、声の喪失を生じなかった。手動操作により、著しい異常がないことが同定され、そして柔軟な、力学的に受容可能な組織が形成されたことが示唆された。屠殺後に、喉頭全体を解剖し、そして4%パラホルムアルデヒドに固定し、そして70%エタノールに後固定した。すべての軟組織を注意深く解剖することにより、骨形成または病理学的構造(例えば、病理学的鉱化、異常な脈管形成など)がないことが確認された。甲状軟骨は、操作した側および未操作の側の両方で、十分に形成され、そしてその操作した側を示すことは困難であった。この甲状軟骨は、軟骨様の色で、脈管形成が増加した外見を有さなかった。触診によって、約2mmのわずかな突出のみが、再構築された側で見出された。最大の指圧によっても、この置換軟骨の不安定性は示されなかった。この新規な組織は、強度、可撓性および柔軟性が、もとの組織と類似していた。喉頭線による動作の干渉は、推論されなかった。
【0059】
組織学的分析によって、新規に形成された軟骨および骨が、この欠損領域に良好に取り込まれたことを示した。この新規な軟骨組織は、手術後4ヶ月目に、それが引き続き存在していることによって示されるように、恒久的(すなわち、安定)であり、そして吸収を受けないことが明らかになった。一時的な軟骨は、代表的に、3ヶ月以内に吸収されるか、または繊維症組織へと変換される。骨芽細胞および新規な骨形成を、この組織の部分において同定した。これは、骨形成の発生を示す。
【0060】
これらのデータは、OP−1で事前コートされた甲状軟骨同種移植片が、手術により作製された甲状軟骨欠損の力学的に受容可能な再構築の形成を誘導することを示した。軟骨性キャリアは、受容可能であり、隣接する構築物へ迅速に放出をしないことが示された。従って、OP−1を、軟骨成長および修復を刺激するために使用し得る。
【0061】
(実施例2)
本実施例は、大きな喉頭組織欠損を修復する際の骨形成性タンパク質の効力を決定するため、および代替的キャリアと骨形成性タンパク質濃度との比較測定ための、プロトコルを提供する。
【0062】
ここで、タンパク質濃度の範囲(すなわち、100μg〜500μg)および2つの異なる手術プロトコル(すなわち、軟骨膜の下に移植されたデバイスおよび筋膜の下に移植されたデバイス)を、試験する。筋膜は、軟骨膜よりも少ない前駆体細胞を提供することが、意図される。動物を16週目に屠殺する。以下の表Iは、このプロトコルを要約する。
【0063】
【表1】

(実施例3)
本実施例は、哺乳動物においいて喉頭組織を修復する際の合成マトリクスの効力を決定するためのプロトコルを提供する。
【0064】
裂溝欠損を、試験動物の甲状軟骨の片側の2/3に作製した。この欠損の大きさは、2.0〜4.5cm2の範囲である。骨形成性デバイスを調製するために、以下の3つの型
のマトリクス/キャリアのうちの1つを使用する:(i)鉱物質除去し、gaudier抽出し、そしてCMC(例えば、CMC0.15〜0.25g/1gポリマー)と組み合わせて、簡明性、完全性特性および取り扱い特性を最大にした、骨コラーゲンマトリクス;(ii)合成コラーゲン−GAGマトリクス;および(iii)マトリクスのないキャリア。骨形成性タンパク質の量は、(i)50μg/欠損;(ii)100μg/欠損;(iii)500μg/欠損;または(iv)750μg/欠損である。骨形成デバイスを移植するための外科的プロトコルは、軟骨膜の置換、または軟骨膜の除去および筋膜および筋肉のみの置換を包含する。
【0065】
動物を、実験1に記載のように処理する。動物を、12週目、18週目、24週目および36週目に屠殺する。
【0066】
この標的組織の力学的完全性を、負荷に耐える能力、動作の範囲、圧縮強度などを測定するための標準的プロトコルを使用して、評価し得る。
【0067】
すべてのマトリクス成分が、力学的に受容可能な置換組織形成を生じ、そして24週目または36週目に、組織学によって、安定な軟骨形成が明らかになることが、認識される。
【0068】
(実施例4)
本実施例は、部分的または完全な喉頭除去後に、力学的に受容可能な、機能的置換喉頭を再生する際の骨形成性タンパク質の効力を決定するためのプロトコルを提供する。
【0069】
ここで、この喉頭(複数の喉頭靭帯および軟骨を含む)の少なくとも2/3を除去するに十分な欠損を作製する。置換同種移植片マトリクスを、例えば、実施例1または2に記載のプロトコル、あるいはPCT公開公報WO 95/33502に記載のプロトコルを使用して、作製する。
【0070】
この置換マトリクスを、上記の骨形成性タンパク質(例えば、10〜1000μg OP−1)でコートし、そして外科的に移植する。動物を、視覚的に、そして手動の操作によりモニターし、そして手術後、12週目、24週目、および36週目に屠殺する。この移植片の完全な取り込みにより、力学的に受容可能な機能的置換軟骨および靭帯組織の形成を生じること、ならびにこの置換組織が、声または括約筋活性の実質的な損失を伴わずに、柔軟な開口構造を生じることが、認識される。
【0071】
(実施例5)
イヌ喉頭の再生におけるOP−1の有効性を、宿主軟骨膜で覆った甲状同種移植片を用いて甲状軟骨欠損を処置することによって、試験した。移植の前に、同種移植片を凍結し、融解し、そして鉱物質除去した。動物を、手術後の4ヶ月後に屠殺した。すべての検体の喉頭外科医による肉眼検査を行い、そして病理学的変化は、屠殺した動物の首のいずれの領域にても、観察されなかった。周囲の筋肉および他の結合構造において、病理学的骨形成は観察されなかった。また、喉頭自体の内側部分(3つすべての喉頭区画(すなわち、前庭、喉頭腔および声門下腔)を含む)に、何の変化も見出されなかった。
【0072】
以下を含む、11匹の動物由来の11個の検体を分析した:(i)同種移植片のみを移植したコントロールイヌ由来の3つの検体(群I)、(ii)500μg OP−1でコートされ、そして宿主甲状軟骨の軟骨膜の下に配置された移植片を有するイヌ由来の4つの検体(群II);(iii)500μg OP−1でコートされ、そして宿主甲状軟骨の首の筋膜の下に配置された移植片を有するイヌ由来の2つの検体(群III);ならびに塩および塩酸グアニジンで抽出され、500μg OP−1でコートされ、そして宿主甲状軟骨の軟骨膜の下に配置された、移植片を有するイヌ由来の2つの検体(群IV)。
【0073】
終了時に、喉頭および周知の構造物を取り出し、検査しそして10%ホルマリンに48時間固定する。次いで、修復した欠損を含む左の甲状板を、解剖し、そして4%パラホルムアルデヒドに後固定した。各甲状板を、検体全体に広がる4つのブロックに分割し、そして各ブロックを個々に、プラスチック中に包理した。次に、約1〜2mm分離した、この欠損全体にわたっての連続した切片を使用して、組織学的分析を実施した。
【0074】
(群I:コントロール同種移植片)
このコントロール群において、乾燥した移植片を、移植前にいかなる溶液にも暴露しなかった。この移植片すべてを、その端が宿主欠損部位に約2mm重複する様式で縫合した。
【0075】
3つのコントロール検体のいずれにおいても、新規な骨または軟骨の形成は観察されなかった。さらに、同種移植片全体が、明らかな大きさの減少を伴わずに、完全にインタクトなままであった。吸収、新規な脈管形成または炎症は、観察されなかった。1匹のイヌにおいて、移植した同種移植片が縫合の失敗のために側方に滑った。そしてこの欠損は、不規則な繊維性結合組織によって閉鎖された。
【0076】
(群II:OP−1でコートし、そして宿主軟骨膜で覆った、移植片)
これらのイヌにおいて、閉鎖した欠損は、硬く、そして力学的(指での)圧縮の際に安定であるようであった。この欠損領域を強力に触診することによってずらすことは不可能であった。このことは、この移植片が、移植部位での規則的な力学的緊張に耐えていることを示した。これらの緊張には、燕下、呼吸、および咳の間の軟組織(筋肉、筋膜など)の圧縮を含んだ。組織学的分析によって、OP−1が、甲状軟骨欠損の骨、軟骨および靭帯様の修復を誘導したことが示された。この移植された同種移植片は、4ヶ月の観察時間内に、完全には吸収されなかった。
【0077】
この欠損の最大の直径での治癒を、特に試験した。大きな欠損部位の両方の末端に、新規に形成された軟骨が明らかであった。この新規な軟骨は、この欠損の約40〜50%に広がり、そして完全に宿主甲状軟骨に融合していた。この新規な軟骨は、横断する弾性軟骨繊維を有する硝子軟骨であった。
【0078】
若い軟骨は、間葉細胞から軟骨芽細胞から軟骨細胞までの明確な遷移(graduation)を伴って、観察された。間葉細胞が骨芽細胞へ分化する場合に、後者の細胞は、それ自身の周囲にマトリクス成分を沈着させ、それ自身の分泌生成物中にそれ自身を取り囲んだ。結果として、小さい裂孔が形成された。他の細胞とのいかなる接触も伴わずに、軟骨芽細胞はこれらの空間に存在した。このマトリクスは、好酸性であった。軟骨芽細胞の軟骨細胞への成熟は、細胞の肥大、および空隙の形状から卵型または角型の立体配置への変化を伴った。
【0079】
この同種移植片マトリクスは、新規な軟骨層から離れて、繊維組織層によって物理的に分離されていることが、見出された。左欠損部位の軟骨の再モデリングが、4ヶ月の観察期間内で観察された。このことは、新規に形成された軟骨が、少なくともその期間の間安定であることを示す。右の欠損部位の軟骨のより少ない量が、骨層に接触していた。この欠損の中央部および右の部分は、残りの同種移植片、新規に形成された骨、および靭帯様構築物から構成された。この新規な骨は、この欠損領域の約20〜25%を占めた。新規に形成された小柱の表面は、厚い骨の縫合線に沈着している活性な軟骨芽細胞で不規則に覆われていた。欠損部位全体は、結合繊維性組織中に緊密に詰められていた。この軟骨表面および骨表面は、軟骨膜および軟骨膜様組織に直接覆われており、この組織は、非常に細胞性であり、かつ脈管形成され、前駆体細胞を含んでいた。
【0080】
この欠損部位は、規則的繊維性結合組織の靭帯様層に、外側から囲まれていた。この結合組織の重要な特徴は、膠原線維の規則的な平行な方向であった。この繊維細胞は、個々の束の程度の境界を定めて、この組織を低い細胞性物質にした。この細胞の核および繊維は、部位依存性の波形の外観を有した。このような結合組織は、腱および靭帯を形成する、優勢型である。喉頭が靭帯を含む場合、この特定の微小環境において前駆体細胞を有することが予期される。これらの非常に組織化された繊維の個々の束は、緩い結合組織によって、共に保持されていた。この結合組織もまた、腱および靭帯に特有である。さらに、この組織の血管分布の減少が、標準的整形外科手順において生存可能な再生能力の原因となる、靭帯のさらなるマーカーであった。
【0081】
1匹のイヌにおいて、この移植片は、わずかに中央に滑っていたが、ほぼ同じ場所にあった。両方の同種移植片表面を覆う骨は、前側(外側)欠損部位の同種移植片に、そして後ろ側(内側)欠損部位の同種移植片から離れて、直接接触していた。軟骨内骨形成が観察され、骨による軟骨原基の置換によって示された。この同種移植片は、結合繊維性組織層によって2つの小片に分裂した。厚い繊維性層はまた、この後ろ側の同種移植片部位から新規に形態された骨を分離した。新規に形成された骨は、骨の縫合線に覆われた小柱、および活性な立方骨骨芽細胞から構成された。このことは、骨の誘導が、同種移植片の除去の速度に依存しないこと、およびII型コラーゲンから構成された同種移植片が、その再生部位で形成された組織の型を指向しないことを示した。
【0082】
(群III:OP−1でコートされそして首の筋膜で覆われた、移植片)
これらのイヌのこれらの群における結果は、軟骨膜の代わりに、首の筋膜を使用してこの移植片を覆うことが、新規組織の誘導および同種移植片の除去において、有意な遅延を生じたことを示した。
【0083】
(群IV:化学的に抽出され、OP−1でコートされ、そして軟骨膜で覆われた、移植片)
この群のイヌにおいて、閉鎖された欠損は、硬くそしてそして力学的(指での)圧縮の際に安定であるようであり、そして群IIの動物由来のものと区別し得なかった。組織学的分析によって、OP−1が、甲状軟骨欠損の骨、軟骨および靭帯様の修復を誘導したことが示された。群IIの動物においてと同様に、このプロセスは、4ヶ月の観察期間内に完了しなかった。しかし喉頭組織欠損の有効な治癒が観察された。
【0084】
この欠損の最大の直径での治癒を、特に試験した。大きな欠損部位の両方の末端に、新規に形成された骨および軟骨が明らかであった。骨および軟骨は、それぞれ、この完全な厚さの欠損領域の約30〜35%および25〜30%を占めた。宿主甲状軟骨と新規な骨との間の境界は、骨連続体の形成により治癒されたが、宿主甲状軟骨と新規な軟骨との間の境界は、軟骨連続体の形成により治癒された。この骨連続体は、微小仮骨形成機構による宿主甲状軟骨への完全融合を描写した。すなわち、青年期の宿主甲状軟骨板は、2つの硝子軟骨層で覆われた骨層を含み得;外科手術手順の間の欠損を作製することによって、この宿主骨は、事実上損傷され(破損され);OP−1でコートされた移植片をこの欠損部位に導入することは、微小仮骨形成による骨治癒を誘導した。
【0085】
試験した検体および組織ブロックのすべてにおいて、甲状板中に存在する骨が存在しようが、存在しまいが、隣接する欠損の境界に形成された骨もまた存在した。この観察は、OP−1が、宿主骨髄から前駆体を誘引したことを示した。対照的に、宿主甲状板に骨が存在しない場合、軟骨連続体が発達し、その宿主甲状を、残りの同種移植片および/または周囲の靭帯様組織に結合した。このような様式で、新規に形成された組織および再吸収されなかった同種移植片組織は、非常に緊密な再生している欠損部位を含んだ。新規に形成された骨は、その欠損の中央まで伸長し、そして再吸収されなかった同種移植片の小片の間に位置した。それは、造血骨髄で満たされ、そして完全に鉱化された。群IIの動物におけるように、新規に形成された靭帯様の構造物もまた観察され、その構造物中では、靭帯の束が、新規に形成された軟骨および骨に付着していた。
【0086】
これらの結果は、甲状同種移植片キャリアを介して送達された500μgのOP−1が、甲状板軟骨欠損の再生および修復を誘導したこと、ならびにその新規な組織が、燕下、咳および呼吸についての、その動物の力学的必要性を満たしたことを示した。この新規組織は、骨、軟骨および靭帯様構造物を誘導し、80%を越えてこの欠損領域を構成する。
【0087】
この結果はさらに、この治癒が、OP−1および種々の前駆体細胞を提供した周囲の組織に、大部分依存したことを示した。この治癒プロセスにおける組織分化は、キャリア依存性ではないようであった。なぜなら、II型コラーゲンキャリアが、新規な軟骨形成を促進するのみではなかったからである。
【0088】
これらの結果はまた、これらの型の新規に形成された組織およびその付随物(例えば、骨髄、骨の血管など)が、組織の「骨−軟骨−靭帯連続体」に緊密に結合されていることを示した。従って、OP−1は、この特定の微小環境において、複数の組織のモルフォゲンとして作用するようであった。
【0089】
最後に、これらの結果は、OP−1が骨形成性モルフォゲンのみでなく、恒久的な軟骨および靭帯様組織の形成もまた誘導し得ることを示した。
【0090】
(実施例6)
本実施例は、欠損部位で新規な組織を再生する際の、骨形成性タンパク質の効力に対する別の研究を記載する。この研究は、2つの副研究への分割される5つの実験群を含んだ。群I〜IIIは、同一の甲状軟骨欠損の修復に対する異なるOP−1キャリアの効果を比較した。試験したキャリアは、CMC、CMC/血液ペースト剤、およびHELISTAT(登録商標)スポンジ(I型コラーゲン組成物)であった。群IVおよびVは、異なる動物モデルおよび手術モデルを記述し、このモデルにおいて、ヒト臨床的実施において使用されるようなより大きい欠損を作製し、そしてOP−1/CMCデバイス、VICRYL外科用メッシュ、およびPYROST(骨鉱物組成物)剛性支持体の組み合わせにより修復した。これら後者の2つの群は、臨床設定について構想された、混合生成物および手順の近似であった。群I−IIIに対する手術を、群IVおよびVに対する手術の1または2ヶ月前に実施した。この実験プロトコルを、以下の表IIに要約する。
【0091】
【表2】

処置された喉頭組織の分析は、3つの全ての処方物(OP−1/CMCデバイス、OP−1/CPC血液ペースト剤(blood paste)、OP−1/HELISTAT(登録商標))が欠損部位で骨および軟骨形成を誘導することを示した。いくつかのインプラントは、欠損部位の周囲の既存の軟骨に、部分的に組み込まれ、そして他のインプラントは、完全に組み込まれた。
【0092】
(実施例7)
実施例1〜3に記載のプロトコルを用いて、気管硝子軟骨輪および輪状靱帯の機械的に受容可能な置換を生成するにおける骨形成タンパク質の効力を示す。配置している(allocating)いくつかの硝子軟骨輪の1つの少なくとも2/3を除去するのに十分な欠損部を作製する。ドナー気管同種移植片マトリクスを、実施例1において上述したように調製する。合成ポリマーマトリクスもまた使用され得る。好ましくは、10〜750μgのOP−1を用いる。置換マトリクスを、骨形成タンパク質で被覆し、そして2つの残りの輪の間に金属ミニプレートを用いて外科的に移植する。
【0093】
動物を、気管内視鏡検査によって、および用手触診(palpitation)によってモニタリングする。これら動物を、手術の24週後に屠殺する。移植片の全取り込みが生じ、そして新たに誘導された靱帯様膜が形成し、そして新たな輪を近隣の気管輪と連結し、可撓性の開口管様構造を生じて呼吸を中断することが認識される。
【0094】
(実施例8)
以下のプロトコルは、OP−1のようなモルフォゲンが、椎間円板における欠損部を修復するために組織の再生を促進する際に、インビボで有効であるか否かを示すために使用され得る。
【0095】
椎間円板を、成熟イヌから無菌的に採取し、全ての付着組織を除去し、そして実施例1に記載のように失活させる。各円板を、前頭面で二等分し、そして3mm全厚の輪状欠損部を各半分で作製する。円板をモルフォゲンで被覆し、そして外科的に再移植する。円板を、再移植後の種々の時点で、欠損部位での修復の程度について試験する。
【0096】
(実施例9)
本実施例は、椎間円板(「IVD」)から単離された細胞、特に髄核(「NP」)および線維輪(「AF」)細胞によって軟骨マトリクス修復を刺激することにおける骨形成タンパク質の効力を示す。
【0097】
本実施例では、ニュージーランドホワイトウサギから腰椎円板(lumbar disc)を単離し、そしてNP組織を解剖によりAF組織から分離した。NP細胞およびAF細胞を、連続的な酵素消化により、2つの組織から別個に単離し、そして1.2%低粘度滅菌アルギン酸塩中に再懸濁した。次いで、これを、22ゲージ針を通して102mM CaCl2溶液に注入することにより、ビーズに形成させた。このビーズを、10%ウシ
胎児血清(「FBS」)、25μg/mlアスコルビン酸塩、および50μg/mlゲンタマイシンを含有するDMEM/F−12培地中に、別個に培養した。この培地を毎日交換した。
【0098】
14日後、各培養物を3つの群に再分割した。第一の群は、さらに12日間培養したコントロール群であった。第二の群および第三の群は、0.1U/mlコンドロイチナーゼABC(「C−ABC」)によって2時間、化学核溶解(chemo−nucleolysis)に供した。この手段は、通常、プロテオグリカン(「PG」)のコンドロイチン硫酸鎖およびデルマタン硫酸鎖を分解するために使用される。プロテオグリカンは、IVDの細胞外マトリクスの必要な成分である。低いレベルのPGは、変性円板疾患と関連している。PG合成の減少は、円板変性において寄与する役割を果たすと考えられる。第二の群および第三の群は、その後12日間培養し、第二の群は、200ng/mlのOP−1の存在下におき、第三の群はOP−1の不在下に置いた。
【0099】
C−ABC処理の直後、およびその後3日、6日、9日、12日目に、3つの全ての群において、アッセイを行った。有糸分裂速度を、Hoechst 33258染料およびフルオロメトリーを使用してDNAの量を測定することによって決定した。硫酸化PG合成の量を、Hauselmannら、J.Cell Sci.107:17−27(1994)(この教示内容は、本明細書中に参考として援用される)に記載のDMMB染料アッセイを用いて測定した。
【0100】
OP−1の存在下で培養した第二の群の細胞は、OP−1の不在下で培養した第三の群の細胞ならびに第一のコントロール群よりも、PGが有意に豊富なマトリクスを再樹立した。これらの結果は、骨形成タンパク質が、細胞外マトリクスの生長を刺激し得ることを示す。
【0101】
(実施例10)
本実施例は、IVDから単離された細胞、特にNP細胞およびAF細胞によって軟骨マトリクス修復を刺激することにおける骨形成タンパク質の効力を示す。
【0102】
本実施例では、ニュージーランドホワイトウサギから腰椎円板を単離し、そしてNP組織を解剖によりAF組織から分離した。NP細胞およびAF細胞を、連続的な酵素消化により、2つの組織から別個に単離し、そして1.2%低粘度滅菌アルギン酸塩中に再懸濁した。次いで、これを、ビーズに形成させた。これら細胞を、10%FBSを含有するDMEM/F−12培地中に、別個に培養した。この培地を毎日交換した。7日後、各培養物を3つの群に分けた。第一の群は、OP−1で処理しないコントロール群であった。第二の群および第三の群を、72時間、OP−1の存在下で増殖させた。第二の群は、100ng/mlのOP−1で処理し、そして第三の群は、200ng/mlのOP−1で処理した。放射性標識3H−プロリンを、OP−1とのインキュベーションの最後の4時間
の間、培養物に添加した。インキュベーション後、培養物からコラーゲンを抽出し、そしてコラーゲン産生速度を、抽出物への3H−プロリンの取り込みを測定することにより決
定した。コラーゲン産生は、軟骨マトリクスの生長および修復と関連している。細胞増殖速度を決定するために、各群のDNAの含量をHoechst 33258染料を用いて測定した。
【0103】
骨形成タンパク質は、濃度依存様式で、NP細胞培養物およびAF細胞培養物の両方においてコラーゲン産生を増大した。第三の群は、第二の群よりも多くの放射性標識を取り込み、また、第一のコントロール群よりも多くの放射性標識を取り込んだ。骨形成タンパク質は、高濃度で有意な有糸分裂効果を有した。このことが、コラーゲン産生の上昇のいくらかを説明する。それにもかかわらず、コラーゲン合成速度は、細胞増殖の増大が説明された場合でさえ、有意に増大した。これらの結果は、骨形成タンパク質が、細胞外マトリクスの生長および修復を刺激することを示唆する。
【0104】
(実施例11)
本実施例は、IVDから単離された細胞、特にNP細胞およびAF細胞によって軟骨マトリクス成分(例えば、コラーゲンおよびPG)の合成を刺激することにおける骨形成タンパク質の効力を示す。
【0105】
本実施例では、ニュージーランドホワイトウサギから腰椎円板を単離し、そしてNP組織を解剖によりAF組織から分離した。NP細胞およびAF細胞を、連続的な酵素消化により、2つの組織から別個に単離し、そして1.2%低粘度滅菌アルギン酸塩ビーズ中にカプセル化した(これは、Chibaら、Spine 22:2885(1997)に記載の通りである(この教示内容は、本明細書中に参考として援用される))。これらビーズを、10%FBSを含有するDMEM/F−12培地中に、別個に培養した。この培地を毎日交換した。7日後、各培養物を3つの群に分けた。第一の群は、OP−1で処理しないコントロール群であった。第二の群および第三の群を、72時間、OP−1の存在下で増殖させた。第二の群は、100ng/mlのOP−1で処理し、そして第三の群は、200ng/mlのOP−1で処理した。
【0106】
コラーゲン合成についてのマーカーを提供するために、放射性標識3H−プロリンを、
OP−1とのインキュベーションの最後の16時間の間、培養物に添加した。PG合成についてのマーカーを提供するために、放射性標識35S−硫酸を、OP−1とのインキュベーションの最後の4時間の間、培養物に添加した。細胞増殖についてのマーカーを提供するために、MTTを、OP−1とのインキュベーションの最後の60分の間、培養物に添加した。次いで、アッセイを、細胞培養物に対して実施し、細胞増殖、PG合成、およびコラーゲン合成を測定した。細胞増殖を、この細胞を溶解し、そして遠心分離し、そして550nmでの上清の吸光度を測定することによってアッセイした(これは、Mossman、J.Immunol.Methods 65:55(1984)に記載の通りである(この教示内容は、本明細書中に参考として援用される))。PG合成を、マトリクスへの35Sの取り込みを測定することにより決定した(これは、Mokら、J.Biol.Chem.269:33021(1994)およびMasudaら、Anal.Biochem.217:167(1994)に記載の通りである(この教示内容は、本明細書中に参考として援用される))。コラーゲン合成を、マトリクスへの3H−プロリンの取り
込みを測定することによりアッセイした(これは、Hauselmannら、前出に記載の通りである)。
【0107】
このデータは、OP−1が、濃度依存様式で、NP培養物およびAF培養物の両方においてPGおよびコラーゲンの両方の合成を増大することを示した。第三の群は、両方の種類の放射性標識を第二の群よりも多く取り込み、また、両方の種類の放射性標識を第一のコントロール群よりも多く取り込んだ。骨形成タンパク質は、高濃度で有意な有糸分裂効果を有した。このことが、コラーゲンおよびPG産生の上昇のいくらかを説明した。それにもかかわらず、コラーゲンおよびPGの合成速度は、細胞増殖の増大が説明された場合でさえ、有意に増大した。これらの結果は、骨形成タンパク質が、細胞外マトリクスの生長および修復を刺激することを示唆する。
【0108】
(実施例12)
椎間円板の修復に対するOP−1のインビボ効果を、2つのウサギモデルにおいて研究する。一方のモデルは、線維輪の刺創を包含し(これは、Lipsonら、Spine 6:194(1981)に記載の通りである)、そして他方のモデルは、円板内C−ABC注射を包含する(これは、Katoら、Clin.Orthop. 253:301(1990)に記載の通りである)。
【0109】
簡潔には、刺創法については、ニュージーランドホワイトウサギの線維輪において切開を行う。各ウサギは、2つの円板を処置する:一方の円板は、OP−1で処置し、他方の円板は、生理食塩水で処置する。円板内注射モデルについては、ニュージーランドホワイトウサギの腰椎円板を露出し、OP−1の存在および不在下でC−ABCを椎間円板に注射する。処置後の種々の時間で、これらのウサギを安楽死させ、そして椎間円板隙の修復に対するOP−1の効果を当該分野で周知の方法によって評価する。これらの方法としては、修復された円板における種々の細胞外マトリクス成分の磁気共鳴像、機械的試験、組織学的分析、および生化学的研究が挙げられる。
【0110】
(実施例13)
本実施例は、OP−1および異なるキャリアを用いるイヌ喉頭の再生に関する別の研究を記載する。
【0111】
本研究では、OP−1を送達するために、3つの異なる骨形成デバイスを使用した。それらは、OP−1/CMCデバイス、OP−1/CMC/血液ペースト剤、およびOP−1/HELISTATスポンジであった。血液ペースト剤デバイスを、160μlのOP−1を5mg/mlで、400μlの20%CMCと注射器連結部を介して混合し、次いで、240μlの採血したばかりの自己血液を添加し、そして連続的に混合することによって調製した。欠損部に適用した最終容量は、0.8mlであった。HELISTATデバイスを、225μlのOP―1を6mgのHELISTATスポンジ上に2cm2欠損
領域毎に適用することによって調製した。
【0112】
3つの異なる処置方法を研究した。最初の処置方法では、左甲状軟骨板中の欠損部を上述のように作製した;OP−1デバイスをこれら欠損領域に適用し、欠損部に隣接した軟骨膜層間に維持した。第二の処置方法では、部分的な垂直喉頭切除をまず実施し、そしてOP−1/HELISTATデバイスを移植した;再構築された領域の固定化を、実施例6に記載のように、PYROSTを用いて達成した;このインプラントを、咽頭粘膜弁(内側)と軟骨膜(外側)との間に配置した。第三の処置方法は、前方輪状スプリットおよび管腔増強(luminal augmentation)を包含した;この方法において、OP−1/HELISTATデバイスを移植し、そしてPYROSTを用いて固定化した。
【0113】
実験の経過にわたって、試験動物には、呼吸、摂食、および吠えるといった問題は記録されなかった。手術の4ヶ月後にイヌを殺傷し、そして全ての標本(大きな再構築された領域を含む)は、触診の際に硬いようであった。咽頭の解剖を実施したが、不完全に治癒した領域があれば、これを乱さないように特に注意した。以前に記載のように、標本を切断し、そしてプラスチック中に包埋した。
【0114】
(群I:OP−1/CMC)
この群の動物を、OP−1/CMCデバイスを用いて、第1の処置方法(前出)で処置した。3匹のイヌ全ての甲状欠損は、ほぼ完全に治癒した。驚くべきことに、CMCは非常に液状であり得たが、新たに誘導された組織は、欠損の縁内に正確に配置された。この観察は、軟組織による閉鎖が首尾よく行われたことを示唆した。このことはまた、CMCが、OP−1のためのキャリアとして働き得るという最初の証拠であった。さらに、OP−1が長期間にわたりCMC内に残存し、タンパク質分解に対して保護されたという証拠は存在しなかったが、新たに誘導された骨は、欠損内に十分に取り込まれた。同種移植片マトリクスとともに適用されたOP−1が、骨、軟骨および靱帯を誘導し得た、上記のイヌの研究とは異なり、この研究は、骨および靱帯のみが形成されたことを示した。新たな骨は、両方の軟骨端に十分に接続され、かつ靱帯様軟組織により包まれた。Von Kossa染色は、新たな骨の完全な鉱化を示した。豊富な骨髄は、ほぼ完全に小骨を満たした。軟骨原基のレムナントが見出された。骨表面は、非常に活性な骨芽細胞で覆われ、このことにより、骨表面に沿っての厚い類骨層を沈着させた。新たに形成された小骨の外側にある皮質骨は、破骨細胞、骨芽細胞および毛細血管で満たされた皮質下骨再モデリングユニットにより示されるように、集中的な再モデリングを経験していた。軟骨−骨のいくつかの境界においては、軟骨性骨形成のプロセスはなお活性であったが、2つの組織の間の境界は、はっきりとは区別されなかった。この結果は、古い軟骨と新たな骨との間に形成された新たな軟骨層が時間とともに骨化し、そして新たに形成した軟骨がごく一時的に存在し、そのため、恒久的組織の特性を欠如したことを示した。
【0115】
実施例5に記載されたイヌ研究において、軟骨同種移植片を、OP−1のキャリアとして使用した;新たに形成された軟骨は、骨から分離され、そして恒久性に見えた。しかし、この研究において、異なるキャリア(CMC)を用い、そして組織形成がモルフォゲンの徐放によって制御されず、細胞外マトリクスキャリアによっても誘導されなかった場合、骨形成は、軟骨形成にまさった。この結果は、以前の研究および現在の研究の両方において組織形成のために増した前駆体細胞が、同じ細胞プールに由来し、そしてCMCの存在下でのモルフォゲン閾値が、骨形成を促進したことを示唆した。言い換えると、このキャリア材料およびそこに含まれるモルフォゲンは、組織分化の結果に協同的に影響を及ぼした。さらに実施例5においては、同種移植片キャリアは、4ヶ月の観察期間内の吸収により、完全には除去されなかった。ここで、CMCキャリアを使用した場合、治癒速度は、有意により早かった。なぜなら、欠損領域全体が閉鎖し、そしてほぼ完全に同じ期間内で再モデリングされたからである。
【0116】
(群II:OP−1/CMC/血液)
この群の動物を、OP−1/CMC/血液デバイスを用いて、第1の処置方法(前出)で処置した。全てのイヌにおける欠損は、完全に治癒した。群Iの実験におけるように、骨および靱帯組織が誘導されたが、新たな軟骨は明白でなかった。新たに形成された組織は、欠損縁内に正確に配置された。血液をCMCに添加することは、より新たな骨を作製したようであり、この骨は、皮質下骨再モデリングを受けていた。この再モデリングは、広範な類骨の継ぎ目を有する新たな骨髄の島を生じた。新たな骨は、両方の軟骨端に十分に接続され、かつ靱帯様軟組織により包まれた。Von Kossa染色は、新たな骨の完全な鉱化を示した。骨表面は、活性な骨芽細胞で覆われ、骨表面に沿って厚い類骨層が沈着した。古い軟骨および新たな骨が合わさった端は、十分に組織化された結合組織の薄い層により明瞭に分離された。軟骨性骨形成の徴候は、古い軟骨では検出されず、このことにより、骨化のプロセスが、OP−1/CMCデバイスで処置した欠損におけるより、OP−1/CMC/血液デバイスで処置した欠損において早かったことが示唆された。血液中に存在する骨形成前駆体の存在は、この差異を説明し得た。
【0117】
(群III:OP−1/HELISTAT)
この群の動物を、OP−1/HELISTATスポンジデバイスを用いて、第1の処置方法(前出)で処置した。全てのイヌにおける欠損は、新たな骨の形成により完全に治癒した。群IおよびIIのイヌとは異なり、群IIIのイヌは、治癒した欠損部位で靱帯様組織をあまり含んでいなかった。1匹の動物においては、新たな組織は縁内に正確に配置され、そしてごく少量が側方にはみ出した。他の動物では、新たな組織が複数の層を形成した;1匹のイヌでは、新たな組織は欠損枠の完全に外にあり、隣接領域における骨形成を誘導した。
【0118】
骨化の量を、HELISTATスポンジのサイズおよび配置により決定した。新たな骨と古い軟骨との縁は、薄い線維層により分離された。HELISTATスポンジ由来の少量のコラーゲンが、再吸収されないままだった。1匹の動物におけるスポンジの転位は、欠損部位の外側で豊富な骨形成を導いた。骨小体の方向は、スポンジ内のコラーゲン線維の経路に従い、このことは、骨化が、モルフォゲンが結合したキャリアマトリクスにより誘導されたことを示唆した。この群の動物において観察された靱帯様組織の量における減少は、I型コラーゲンが靱帯前駆体細胞を誘引する、より少ない能力に起因するようであった。
【0119】
(群IV:部分的垂直咽頭切除術)
この群の動物を、OP−1/HELISTATスポンジデバイスを用いて、第2の処置方法(前出)で処置した。左側の甲状板(thyroid lamina)および周辺軟組織(室ひだおよび声帯ひだ)の前方半分を外科的に除去した。再構築した領域の固定を、PYROSTを用いて行った。インプラントを咽頭粘膜弁(内側)および軟骨膜(外側)の間に配置した。咽頭骨格の再生はなお進行中であり、外科手術の4ヶ月後現在で、骨が、除去した甲状軟骨を満たした。新たな骨はなお、再モデリングを経験し、そして咽頭骨格の完全性のために良好な足場を提供された。声帯軟骨と甲状軟骨との間の間隙は、組織化されていない結合組織で満たされ、このことにより通常の空気の流れが可能になった。
【0120】
(群V:管腔増強を伴う前方輪状スプリット)
この群の動物を、OP−1/HELISTATスポンジデバイスを用いて、第3の処置方法(前出)で処置した。輪状弓の前方部分を横切開し、そして管腔伸長をPYROSTの外部移植により作製した。輪状末端の間の空間をOP−1/HELISTATデバイスで満たした。管腔は、伸長したままであったが、PYROSTは、部分的に除去されるか、粉末化され、そして新たな骨と統合した。中心領域は、活性な再モデリングを受けた新たな骨により占有された。驚くべきことに、最小の骨組織は、PYROSTに隣接して形成され、これは、隣接するHELISTATスポンジから放出されたOP−1タンパク質についてのアフィニティーマトリクスとして働き得た。1つの標本において、新たな骨およびPYROSTが取り囲む骨は、伸長骨領域を形成し、管腔直径を損なわなかった。靱帯様組織は全く形成されず、輪状軟骨の付近の前駆体細胞が欠如したことを示した。
[配列表]
【0121】
【数1−1】

【0122】
【数1−2】

【0123】
【数1−3】

【0124】
【数1−4】

【0125】
【数1−5】

【0126】
【数1−6】

【0127】
【数1−7】

【0128】
【数1−8】

【0129】
【数1−9】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書中に記載の発明。

【公開番号】特開2013−75173(P2013−75173A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−264093(P2012−264093)
【出願日】平成24年12月3日(2012.12.3)
【分割の表示】特願2010−61553(P2010−61553)の分割
【原出願日】平成11年7月30日(1999.7.30)
【出願人】(595148888)ストライカー コーポレイション (52)
【氏名又は名称原語表記】STRYKER CORPORATION
【Fターム(参考)】