品質評価装置
【課題】物体の品質評価をより適切に行うことができる品質評価装置を提供する。
【解決手段】評価対象物の空隙Vを検出する空隙検出部12と、隣接する空隙V間の距離に基づいて空隙VをクラスタCnに分類するクラスタ部13と、クラスタCnの大きさに基づいて評価対象物の品質評価を行う品質評価部14とを備えることで、評価対象物の空隙Vを検出し、隣接する空隙Vの距離に基づいて空隙VをクラスタCnに分類し、分類したクラスタCnの大きさに基づいて評価対象物の品質の評価を行うことができ、分類したクラスタCnの大きさは、空隙Vが集中して存在する度合いを示すため、空隙率が同一の物体であっても適切な品質評価をすることができる。
【解決手段】評価対象物の空隙Vを検出する空隙検出部12と、隣接する空隙V間の距離に基づいて空隙VをクラスタCnに分類するクラスタ部13と、クラスタCnの大きさに基づいて評価対象物の品質評価を行う品質評価部14とを備えることで、評価対象物の空隙Vを検出し、隣接する空隙Vの距離に基づいて空隙VをクラスタCnに分類し、分類したクラスタCnの大きさに基づいて評価対象物の品質の評価を行うことができ、分類したクラスタCnの大きさは、空隙Vが集中して存在する度合いを示すため、空隙率が同一の物体であっても適切な品質評価をすることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体の品質を評価する品質評価装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、物体の品質の評価には、例えば物体内部の空隙の存在率を示す空隙率が用いられる。空隙率は、例えば、物体表面から内部に向けて超音波を送信し、内部での反射波を受信するまでの時間差を計測することにより空隙を検査して取得する(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平7−260751号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の品質評価装置にあっては、品質基準を満たす物体を、品質評価を満たさない物体であると評価する場合がある。例えば、均等に分散した空隙を有する物体は、一箇所に集中した空隙を有する物体に比べて高い耐久能力を有し品質基準を満足するものも存在するが、空隙率の指標のみでは両者を区別することができず、同一のものとして判定してしまう。
【0004】
そこで、本発明はこのような技術課題を解決するためになされたものであって、物体の品質評価をより適切に行うことができる品質評価装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、本発明に係る品質評価装置は、評価対象物の空隙部を検出する空隙部検出手段と、隣接する前記空隙部間の距離に基づいて前記空隙部をクラスタに分類する分類手段と、前記クラスタの大きさに基づいて前記評価対象物の品質評価を行う品質評価手段と、を備えて構成される。
【0006】
この発明によれば、評価対象物の空隙部を検出し、隣接する空隙部の距離に基づいて空隙部をクラスタに分類し、分類したクラスタの大きさに基づいて評価対象物の品質の評価を行う。このように、隣接する空隙部間の距離に基づいて空隙部をクラスタに分類することができるので、例えばお互いの距離が近い複数の空隙部を、1つのクラスタ、すなわち1つの塊とみなすことができる。分類したクラスタの大きさは、空隙部の存在箇所が集中していることを示す度合いとなるため、クラスタの大きさに基づいて評価対象物の評価を行う事により、空隙率が同一の物体であっても適切な品質評価をすることができる。
【0007】
ここで、品質評価装置において、前記分類手段は、前記空隙部の大きさを図形で近似し、隣接する前記図形間の距離に基づいて前記空隙部を前記クラスタに分類することが好適である。
【0008】
このように構成することで、隣接する空隙部間の距離を求める際に空隙部の大きさを考慮することができるため、隣接する空隙部間の距離を正確に求めることが可能となり、結果、より適切な品質評価をすることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、物体の品質評価をより適切に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0011】
(第1実施形態)
第1実施形態に係る品質評価装置は、評価対象物の内部の空隙配列状態に基づいた品質評価に好適に採用されるものである。
【0012】
最初に、本実施形態に係る品質評価装置の構成を説明する。図1は本発明の実施形態に係る品質評価装置の構成を示すブロック図である。
【0013】
図1に示す品質評価装置1は、超音波送受信部11、空隙検出部(空隙検出手段)12、クラスタ部(分類手段)13及び品質評価部(品質評価手段)14を備えている。
【0014】
超音波送受信部11は、評価対象物の表面から内部に対して超音波を送信すると共に、評価対象物の表面に対向する底面からの反射波(底面エコー)を受信する機能を有している。超音波送受信部11は、例えば、10mm×10mmの正方形部に対して1mmピッチで超音波を送信し、底面エコーを計測する機能を有している。また、超音波送受信部11は、送信超音波の大きさ及び底面エコーの大きさを空隙検出部12へ出力する機能を有している。
【0015】
空隙検出部12は、超音波送受信部11が出力した送信超音波の大きさ及び底面エコーの大きさに基づいて、評価対象物内部に空隙(空隙部)が存在するか否かを判定する機能を有している。また、空隙検出部12は、判定結果をクラスタ部13へ出力する機能を有している。
【0016】
クラスタ部13は、空隙検出部12が出力した判定結果に基づいて、検出した空隙をクラスタ(塊)に分類する機能を有している。例えば、空隙と空隙との間の距離に基づいてそれらの空隙が1つのクラスタに分類されるか否かを判定する機能を有している。また、クラスタ部13は、分類したクラスタの大きさを品質評価部14へ出力する機能を有している。
【0017】
品質評価部14は、クラスタ部13が出力したクラスタの大きさのうち、最大のクラスタに基づいて評価対象物の品質を評価する機能を有している。例えば、検査領域全体に対する最大クラスタの割合(最大クラスタ空隙率)を算出し、最大クラスタ空隙率が所定の値より大きいか否かによって評価対象物の品質の良し悪しを判定する機能を有している。
【0018】
次に、本実施形態に係る品質評価装置1の動作について図2を用いて説明する。図2は、本実施形態に係る品質評価装置1の動作を示すフローチャートである。また、図3,4は、本実施形態に係る品質評価装置1の動作を説明するための概要図である。なお、以下では説明理解の容易性を考慮し、空隙の大きさは1mm四方であって全て同一の形状であるとする。
【0019】
図2に示す制御処理は、例えば品質評価装置1の電源ONから所定のタイミングで繰り返し実行される。図2に示す制御処理が開始されると、品質評価装置1は、情報入力処理を開始する(S10)。S10の処理は、超音波送受信部11が実行し、例えば、評価対象物に超音波を送信し、底面エコーを受信する処理である。例えば、図3の(a)に示すような縦10mm、横10mmの領域D1に対して、1mmピッチで超音波の送信と底面エコーの受信を行う。なお、領域D1の各測定箇所には、送信超音波の大きさに対する底面エコーの大きさ(底面エコー値、単位:百分率)を図示している。S10の処理が終了すると、空隙検出処理へ移行する(S12)。
【0020】
S12の処理は、空隙検出部12が実行し、S10の処理で得られた底面エコー値を用いて領域D1内の空隙を検出する処理である。例えば、空隙検出部12は、底面エコー値が所定値より小さい箇所には、空隙が存在すると判定する。所定値としては、例えば30%が用いられる。例えば、図3の(a)に示す領域D1の場合、色を付した箇所の底面エコー値が30%より小さいため、当該箇所にはその内部に空隙Vが存在すると判定する。なお、以下では、説明理解の容易性を考慮し、領域D1の横方向をX座標、縦方向をY座標、左下を原点として空隙をV(X,Y)として表現する。S12の処理が終了すると、クラスタ処理へ移行する(S14)。
【0021】
S14の処理は、クラスタ部13が実行し、S12の処理で得られた空隙Vの存在する位置に基づいてクラスタCn(n:整数)に分類する処理である。クラスタ部13は、隣り合う2つの空隙V間の距離が判定値(所定値)より小さい場合には同一のクラスタCnに分類し、隣り合う2つの空隙V間の距離が判定値より小さくない場合には、別のクラスタCnに分類する。例えば、図3の(a)に示す場合において、クラスタ分類の判定に用いられる判定値を2.9mmと設定した場合を説明する。空隙V(1,9)と空隙V(3,7)との間の距離L1は約2.8mmであるので、設定した判定値より小さい。このため、クラスタ部13は、図3の(b)に示すように、空隙V(1,9)及び空隙V(3,7)を同一のクラスタC1に分類する。一方、空隙V(3,7)と空隙V(5,10)との間の距離L2は約3.6mmであるので、設定した判定値よりも小さくない。このため、クラスタ部13は、空隙V(3,7)及び空隙V(5,10)を同一のクラスタに分類しない。このように、隣り合う空隙V間の距離に基づいてクラスタに分類する処理をそれぞれの空隙Vにおいて行うことで、例えば、図3の(b)に示すクラスタC1〜C3までに分類することができる。なお、判定に用いる判定値は、求められる品質評価の度合いに応じて適宜設定すればよい。又、各空隙間の距離は、例えば、最近距離法、最長距離法、メディアン法、重心法、可変法、ウォード法など公知のクラスタ解析手法により算出すればよい。S14の処理が終了すると、空隙率算出処理へ移行する(S16)。
【0022】
S16の処理は、品質評価部14が実行し、評価対象物の品質を評価する指標(最大クラスタ空隙率)を算出する処理である。品質評価部14は、例えばS14の処理で得られたクラスタC1〜C3の大きさを算出する。ここでは、クラスタCnの大きさを、そのクラスタCnに分類された空隙Vの大きさで表現する。例えば、図3の(b)に示すクラスタC1の大きさは、空隙V(1,9)、空隙V(3,7)の大きさを積算した2mm2である。このように全てのクラスタCnについて大きさを算出し、最大の大きさを持つクラスタCnを決定する。例えば、図3の(b)に示す場合には、クラスタC1の大きさは2mm2、クラスタC2の大きさは5mm2、クラスタC3の大きさは9mm2であるので、9mm2のクラスタC3を最大クラスタと決定する。次に、品質評価部14は、評価領域D1の大きさに対する最大クラスタの大きさを比(百分率)で算出し、最大クラスタ空隙率とする。例えば、図3の(b)に示す場合には、領域D1が100mm2であって、最大クラスタC3の大きさが9mm2であるので、最大クラスタ空隙率は9%となる。この最大クラスタ空隙率が、表対象物の品質を評価する指標となり、値が大きくなればなるほど空隙が集中して存在していることを示す。S16の処理が終了すると、品質評価処理へ移行する(S18)。
【0023】
S18の処理は、品質評価部14が実行し、最大クラスタ空隙率に基づいて評価対象物の品質を評価する処理である。品質評価部14は、S16の処理で得られた最大クラスタ空隙率が所定値よりも小さい場合には、評価対象物の品質が良いと判定する。他方、品質評価部14は、S16の処理で得られた最大クラスタ空隙率が所定値よりも小さくない場合には、評価対象物の品質が悪いと判定する。この所定値は、要求される品質や安全基準に基づいて適宜設定される。S18の処理が終了すると、図2に示す制御処理を終了する。
【0024】
以上で図2に示す制御処理を終了する。図2に示す制御処理を実行することで、品質評価装置1は、最大クラスタ空隙率を用いることで、空隙の配列状態及び大きさに基づいて評価対象物の品質を判定することができる。
【0025】
ところで、従来の品質評価装置であれば、空隙率(全体領域の大きさに対する空隙の大きさ)のみで品質評価を行う。このため、例えば図3、図4に示すような空隙を有する評価対象物の空隙率はいずれも16%であり、両者を区別することができない。すなわち、空隙Vが分散して存在する図4の領域D2は、空隙Vが密集して存在している図3の領域D1に比べて明らかに強度が優れているが、両者は同一の品質として評価されてしまう。
【0026】
これに対して、本実施形態の品質評価装置1は、空隙の位置関係と量とを示す最大クラスタ空隙率を用いて空隙を評価することで、図3の領域D1、図4の領域D2を明確に分けて判定することができる。例えば、図3の領域D1の最大クラスタC3の大きさは9mm2であるので、最大クラスタ空隙率は9%である。一方、図4の領域D2については、すべての空隙Vがそれぞれ別のクラスタCnに分類されるので、最大クラスタの大きさは1mm2であり、最大クラスタ空隙率は1%である。よって、仮に品質評価の閾値が5%であるとすると、図3に示す評価対象物の品質は悪く、図4に示す評価対象物の品質は良いと判定することができる。
【0027】
上述した通り、第1実施形態の品質評価装置1によれば、評価対象物の空隙Vを検出し、隣接する空隙Vの距離に基づいて空隙VをクラスタCnに分類し、分類したクラスタCnの大きさに基づいて評価対象物の品質の評価を行う。このように、隣接する空隙V間の距離に基づいて空隙VをクラスタCnに分類することができるので、例えばお互いの距離が近い複数の空隙Vを、1つのクラスタ、すなわち1つの塊とみなすことができる。分類したクラスタCnの大きさは、空隙Vの存在箇所が集中していることを示す度合いとなるため、クラスタCnの大きさに基づいて評価対象物の評価を行うことにより、空隙率が同一の物体であっても適切な品質評価をすることができる。
【0028】
(第2実施形態)
第2実施形態に係る品質評価装置は、第1実施形態に係る品質評価装置1とほぼ同様に構成されるものであって、空隙形状情報入力部15を備える点が相違する。なお、第2実施形態においては、第1実施形態と重複する部分は説明を省略し、相違点を中心に説明する。
【0029】
最初に、第2実施形態に係る品質評価装置の構成について説明する。図5は、第2実施形態に係る品質評価装置2の構成を示すブロック図である。
【0030】
図5に示すように、品質評価装置2は、空隙形状情報入力部15を有している。空隙形状情報入力部15は、評価対象物内部の空隙の形状に関する情報を入力する機能を有している。例えば、空隙形状情報入力部15は、空隙の最大径長さ、最大径角度、最小径長さ、円形度係数、円相当径等を入力する機能を有している。さらに、空隙形状情報入力部15は、取得した情報をクラスタ部13へ出力する機能を有している。
【0031】
また、クラスタ部13は、空隙Vの大きさを考慮して空隙V間の距離を算出する機能を有している。クラスタ部13は、空隙Vを所定の図形に近似し、近似した図形間の距離を、空隙V間の距離とする機能を有している。なお、クラスタ部13のその他の機能は、第1実施形態と同様である。
【0032】
次に、本実施形態に係る品質評価装置2の動作について説明する。図6は、本実施形態に係る品質評価装置2の動作を示すフローチャート、図7は、評価対象物体の断面のX線透過像、図8,9は、本実施形態に係る品質評価装置2のクラスタ処理を説明するための概要図である。
【0033】
図6に示す制御処理は、例えば品質評価装置2の電源ONから所定のタイミングで繰り返し実行される。図6に示す制御処理が開始されると、品質評価装置2は、情報入力処理を開始する(S20)。S20の処理は、図2のS10の処理と同様であり、例えば、評価対象物に超音波を送信し、底面エコーを受信する処理である。また、S20の処理において、空隙形状情報入力部15は、空隙の形状に関する情報を入力するために、例えば図7に示すX線透過像を取得する。このX線透過像は、超音波送受信部11が測定した領域と同一の領域において撮像された断面像であり、黒色部分が空隙を示している。S20の処理が終了すると、空隙検出処理へ移行する(S22)。
【0034】
S22の処理は、図2のS12の処理と同様であり、評価対象物の内部の空隙Vを検出する処理である。S22の処理が終了すると、空隙近似処理へ移行する(S24)。
【0035】
S24の処理は、クラスタ部13が実行し、S22の処理で得られた空隙Vを所定の図形に近似する処理である。最初に、クラスタ部13は、S22の処理で検出した空隙Vに関し、S20の処理で入力したX線透過像に基づいて、例えば、最大径長さ、最大径角度、最小径長さ、円形度係数、円相当径等を算出する。算出方法は、公知の粒子解析手法で行われる。例えば、図8に示すように、横方向がX、縦方向がYによって特定される領域において、4つの空隙V(No.1(0,0)、No.2(10,0)、No.3(1,10)、No.4(10,10))がS22の処理で検出された場合、X線透過像の解析により以下の表に示すデータを算出する。
【表1】
【0036】
クラスタ部13は、算出した表のデータに従って、図形を用いて空隙Vの形状を近似する。例えば、表の円相当径を直径とし、空隙Vを検出した位置を中心とする円で空隙Vを近似する。これにより、図8に示すように、それぞれの空隙を円VC1〜VC4で近似することができる。S24の処理が終了すると、クラスタ処理へ移行する(S26)。
【0037】
S26の処理は、クラスタ部13が実行し、S24の処理で得られた空隙Vを近似した円間の距離に基づいて、各空隙Vをクラスタに分類する処理である。クラスタ部13は、隣り合う2つの円間の距離が判定値より小さい場合には同一のクラスタに分類し、隣り合う2つの円間の距離が判定値より小さくない場合には別のクラスタに分類する。この処理について、図9を用いて説明する。図9に示すグラフは、図8に示す各空隙を近似した各円間の最短距離Ln(n:整数)を、横軸にプロットしたものである。クラスタ分類を判定する判定値を4.5と設定した場合、円VC1と円VC2との間の距離L1は4であるので、No.1とNo.2を同一のクラスタに分類する。一方、円VC2と円VC4との距離L2は5、円VC3と円VC4との距離L3は7であるので、No.2とNo4、さらに、No.3とNo4はそれぞれ別のクラスタに分類する。すなわち、No.1とNo.2を同一のクラスタに分類し、No.3、No4をそれぞれ独立した別のクラスタに分類する。S26の処理が終了すると、空隙率算出処理へ移行する(S28)。
【0038】
S28の処理は、図2のS16の処理と同様であり、評価対象物の品質を評価する指標を算出する処理である。S28の処理が終了すると、品質評価処理へ移行する(S30)。
【0039】
S30の処理は、図2のS18の処理と同様であり、最大クラスタ空隙率に基づいて評価対象物の品質を評価する処理である。S30の処理が終了すると、図6に示す制御処理を終了する。
【0040】
以上で図6に示す制御処理を終了する。図6に示す制御処理を実行することで、品質評価装置2は、空隙の大きさを考慮してクラスタの分類を行い、最大クラスタ空隙率を用いて評価対象物の品質を判定することができる。
【0041】
ところで、従来のクラスタ解析方法によれば、空隙の大きさを考慮せずに各空隙をクラスタに分類する。このため、例えば、図12に示すように、横軸がX、縦軸がYによって特定される領域において、表1に示す4つの空隙V(No.1(0,0)、No.2(10,0)、No.3(1,10)、No.4(10,10))が検出された場合、図13に示すように、各空隙間の距離は、少なくとも8以上である。クラスタ分類を判定する所定値を4.5と設定した場合、4つの空隙V(No.1〜No.4)は全て別のクラスタに分類されてしまい、空隙の配列状態、位置関係を適切に示したものとはならない。
【0042】
これに対して、本実施形態の品質評価装置2は、空隙Vの大きさを円で近似し、近似した円間の距離Lnを空隙間の距離としているため、各空隙の大きさを空隙間の距離に反映させることができる。これにより、クラスタ分類を判定する所定値を同様に4.5と設定した場合、図9に示すように、No.1とNo.2を同一のクラスタとし、No.3、No.4をそれぞれ独立した別のクラスタとすることができる。
【0043】
上述した通り、第2実施形態に係る品質評価装置2によれば、空隙Vを円で近似することにより、隣接する空隙V間の距離Lnを求める際に空隙Vの大きさを考慮することができるため、隣接する空隙V間の距離Lnを正確に求めることが可能となり、結果、より適切な品質評価をすることができる。
【0044】
なお、上述した各実施形態は本発明に係る品質評価装置の一例を示すものである。本発明に係る品質評価装置は、これらの各実施形態に係る品質評価装置に限られるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で、各実施形態に係る品質評価装置を変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。
【0045】
例えば、第2実施形態では、1つの円で空隙の形状を近似する例を説明したが、図6のS24の処理において算出した表1を用いて、例えば図10のように、細長い空隙V(No.4)を複数の小円で近似してもよい。小円で空隙Vを近似するか否かの判断は、空隙Vの円形度係数に応じて決定すればよく、例えば、例えば表1の円形度係数が0.3より小さい空隙に対して行うものとすればよい。小円の直径は、例えば表1の最小径長さとし、空隙の中心から表1の最大径角度の傾き方向に対して最大径長さに達するまで並べて近似する。このように、複数の円を用いて近似することで、図11に示すように、No.1、No.2、No.4を同一のクラスタとし、No.3を独立した別のクラスタとして判定することができるため、空隙の配列状態、位置関係をより一層適切に反映させることができる。これにより、複雑な空隙の形状であっても、適切なクラスタに分類することができる。
【0046】
さらに、第2実施形態では、空隙の形状を円で近似する例を説明したが、円に限られるものではなく、楕円、半円、矩形、多角形等であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】第1実施形態に係る品質評価装置の構成概要を示すブロック図である。
【図2】図1の品質評価装置の動作を示すフローチャートである。
【図3】図1の品質評価装置の動作を説明する概要図である。
【図4】図1の品質評価装置の動作を説明する概要図である。
【図5】第2実施形態に係る品質評価装置の構成概要を示すブロック図である。
【図6】図5の品質評価装置の動作を示すフローチャートである。
【図7】評価対象物の断面を示すX線透過写真である。
【図8】図5の品質評価装置の動作を説明する概要図である。
【図9】図5の品質評価装置の動作を説明する概要図である。
【図10】品質評価装置の他の動作を説明する概要図である。
【図11】品質評価装置の他の動作を説明する概要図である。
【図12】従来のクラスタ解析手法を説明する概要図である。
【図13】従来のクラスタ解析手法を説明する概要図である。
【符号の説明】
【0048】
1…品質評価装置、11…超音波送受信部、12…空隙検出部(空隙検出手段)、13…クラスタ部(分類手段)、14…品質評価部(品質評価手段)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体の品質を評価する品質評価装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、物体の品質の評価には、例えば物体内部の空隙の存在率を示す空隙率が用いられる。空隙率は、例えば、物体表面から内部に向けて超音波を送信し、内部での反射波を受信するまでの時間差を計測することにより空隙を検査して取得する(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平7−260751号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の品質評価装置にあっては、品質基準を満たす物体を、品質評価を満たさない物体であると評価する場合がある。例えば、均等に分散した空隙を有する物体は、一箇所に集中した空隙を有する物体に比べて高い耐久能力を有し品質基準を満足するものも存在するが、空隙率の指標のみでは両者を区別することができず、同一のものとして判定してしまう。
【0004】
そこで、本発明はこのような技術課題を解決するためになされたものであって、物体の品質評価をより適切に行うことができる品質評価装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、本発明に係る品質評価装置は、評価対象物の空隙部を検出する空隙部検出手段と、隣接する前記空隙部間の距離に基づいて前記空隙部をクラスタに分類する分類手段と、前記クラスタの大きさに基づいて前記評価対象物の品質評価を行う品質評価手段と、を備えて構成される。
【0006】
この発明によれば、評価対象物の空隙部を検出し、隣接する空隙部の距離に基づいて空隙部をクラスタに分類し、分類したクラスタの大きさに基づいて評価対象物の品質の評価を行う。このように、隣接する空隙部間の距離に基づいて空隙部をクラスタに分類することができるので、例えばお互いの距離が近い複数の空隙部を、1つのクラスタ、すなわち1つの塊とみなすことができる。分類したクラスタの大きさは、空隙部の存在箇所が集中していることを示す度合いとなるため、クラスタの大きさに基づいて評価対象物の評価を行う事により、空隙率が同一の物体であっても適切な品質評価をすることができる。
【0007】
ここで、品質評価装置において、前記分類手段は、前記空隙部の大きさを図形で近似し、隣接する前記図形間の距離に基づいて前記空隙部を前記クラスタに分類することが好適である。
【0008】
このように構成することで、隣接する空隙部間の距離を求める際に空隙部の大きさを考慮することができるため、隣接する空隙部間の距離を正確に求めることが可能となり、結果、より適切な品質評価をすることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、物体の品質評価をより適切に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0011】
(第1実施形態)
第1実施形態に係る品質評価装置は、評価対象物の内部の空隙配列状態に基づいた品質評価に好適に採用されるものである。
【0012】
最初に、本実施形態に係る品質評価装置の構成を説明する。図1は本発明の実施形態に係る品質評価装置の構成を示すブロック図である。
【0013】
図1に示す品質評価装置1は、超音波送受信部11、空隙検出部(空隙検出手段)12、クラスタ部(分類手段)13及び品質評価部(品質評価手段)14を備えている。
【0014】
超音波送受信部11は、評価対象物の表面から内部に対して超音波を送信すると共に、評価対象物の表面に対向する底面からの反射波(底面エコー)を受信する機能を有している。超音波送受信部11は、例えば、10mm×10mmの正方形部に対して1mmピッチで超音波を送信し、底面エコーを計測する機能を有している。また、超音波送受信部11は、送信超音波の大きさ及び底面エコーの大きさを空隙検出部12へ出力する機能を有している。
【0015】
空隙検出部12は、超音波送受信部11が出力した送信超音波の大きさ及び底面エコーの大きさに基づいて、評価対象物内部に空隙(空隙部)が存在するか否かを判定する機能を有している。また、空隙検出部12は、判定結果をクラスタ部13へ出力する機能を有している。
【0016】
クラスタ部13は、空隙検出部12が出力した判定結果に基づいて、検出した空隙をクラスタ(塊)に分類する機能を有している。例えば、空隙と空隙との間の距離に基づいてそれらの空隙が1つのクラスタに分類されるか否かを判定する機能を有している。また、クラスタ部13は、分類したクラスタの大きさを品質評価部14へ出力する機能を有している。
【0017】
品質評価部14は、クラスタ部13が出力したクラスタの大きさのうち、最大のクラスタに基づいて評価対象物の品質を評価する機能を有している。例えば、検査領域全体に対する最大クラスタの割合(最大クラスタ空隙率)を算出し、最大クラスタ空隙率が所定の値より大きいか否かによって評価対象物の品質の良し悪しを判定する機能を有している。
【0018】
次に、本実施形態に係る品質評価装置1の動作について図2を用いて説明する。図2は、本実施形態に係る品質評価装置1の動作を示すフローチャートである。また、図3,4は、本実施形態に係る品質評価装置1の動作を説明するための概要図である。なお、以下では説明理解の容易性を考慮し、空隙の大きさは1mm四方であって全て同一の形状であるとする。
【0019】
図2に示す制御処理は、例えば品質評価装置1の電源ONから所定のタイミングで繰り返し実行される。図2に示す制御処理が開始されると、品質評価装置1は、情報入力処理を開始する(S10)。S10の処理は、超音波送受信部11が実行し、例えば、評価対象物に超音波を送信し、底面エコーを受信する処理である。例えば、図3の(a)に示すような縦10mm、横10mmの領域D1に対して、1mmピッチで超音波の送信と底面エコーの受信を行う。なお、領域D1の各測定箇所には、送信超音波の大きさに対する底面エコーの大きさ(底面エコー値、単位:百分率)を図示している。S10の処理が終了すると、空隙検出処理へ移行する(S12)。
【0020】
S12の処理は、空隙検出部12が実行し、S10の処理で得られた底面エコー値を用いて領域D1内の空隙を検出する処理である。例えば、空隙検出部12は、底面エコー値が所定値より小さい箇所には、空隙が存在すると判定する。所定値としては、例えば30%が用いられる。例えば、図3の(a)に示す領域D1の場合、色を付した箇所の底面エコー値が30%より小さいため、当該箇所にはその内部に空隙Vが存在すると判定する。なお、以下では、説明理解の容易性を考慮し、領域D1の横方向をX座標、縦方向をY座標、左下を原点として空隙をV(X,Y)として表現する。S12の処理が終了すると、クラスタ処理へ移行する(S14)。
【0021】
S14の処理は、クラスタ部13が実行し、S12の処理で得られた空隙Vの存在する位置に基づいてクラスタCn(n:整数)に分類する処理である。クラスタ部13は、隣り合う2つの空隙V間の距離が判定値(所定値)より小さい場合には同一のクラスタCnに分類し、隣り合う2つの空隙V間の距離が判定値より小さくない場合には、別のクラスタCnに分類する。例えば、図3の(a)に示す場合において、クラスタ分類の判定に用いられる判定値を2.9mmと設定した場合を説明する。空隙V(1,9)と空隙V(3,7)との間の距離L1は約2.8mmであるので、設定した判定値より小さい。このため、クラスタ部13は、図3の(b)に示すように、空隙V(1,9)及び空隙V(3,7)を同一のクラスタC1に分類する。一方、空隙V(3,7)と空隙V(5,10)との間の距離L2は約3.6mmであるので、設定した判定値よりも小さくない。このため、クラスタ部13は、空隙V(3,7)及び空隙V(5,10)を同一のクラスタに分類しない。このように、隣り合う空隙V間の距離に基づいてクラスタに分類する処理をそれぞれの空隙Vにおいて行うことで、例えば、図3の(b)に示すクラスタC1〜C3までに分類することができる。なお、判定に用いる判定値は、求められる品質評価の度合いに応じて適宜設定すればよい。又、各空隙間の距離は、例えば、最近距離法、最長距離法、メディアン法、重心法、可変法、ウォード法など公知のクラスタ解析手法により算出すればよい。S14の処理が終了すると、空隙率算出処理へ移行する(S16)。
【0022】
S16の処理は、品質評価部14が実行し、評価対象物の品質を評価する指標(最大クラスタ空隙率)を算出する処理である。品質評価部14は、例えばS14の処理で得られたクラスタC1〜C3の大きさを算出する。ここでは、クラスタCnの大きさを、そのクラスタCnに分類された空隙Vの大きさで表現する。例えば、図3の(b)に示すクラスタC1の大きさは、空隙V(1,9)、空隙V(3,7)の大きさを積算した2mm2である。このように全てのクラスタCnについて大きさを算出し、最大の大きさを持つクラスタCnを決定する。例えば、図3の(b)に示す場合には、クラスタC1の大きさは2mm2、クラスタC2の大きさは5mm2、クラスタC3の大きさは9mm2であるので、9mm2のクラスタC3を最大クラスタと決定する。次に、品質評価部14は、評価領域D1の大きさに対する最大クラスタの大きさを比(百分率)で算出し、最大クラスタ空隙率とする。例えば、図3の(b)に示す場合には、領域D1が100mm2であって、最大クラスタC3の大きさが9mm2であるので、最大クラスタ空隙率は9%となる。この最大クラスタ空隙率が、表対象物の品質を評価する指標となり、値が大きくなればなるほど空隙が集中して存在していることを示す。S16の処理が終了すると、品質評価処理へ移行する(S18)。
【0023】
S18の処理は、品質評価部14が実行し、最大クラスタ空隙率に基づいて評価対象物の品質を評価する処理である。品質評価部14は、S16の処理で得られた最大クラスタ空隙率が所定値よりも小さい場合には、評価対象物の品質が良いと判定する。他方、品質評価部14は、S16の処理で得られた最大クラスタ空隙率が所定値よりも小さくない場合には、評価対象物の品質が悪いと判定する。この所定値は、要求される品質や安全基準に基づいて適宜設定される。S18の処理が終了すると、図2に示す制御処理を終了する。
【0024】
以上で図2に示す制御処理を終了する。図2に示す制御処理を実行することで、品質評価装置1は、最大クラスタ空隙率を用いることで、空隙の配列状態及び大きさに基づいて評価対象物の品質を判定することができる。
【0025】
ところで、従来の品質評価装置であれば、空隙率(全体領域の大きさに対する空隙の大きさ)のみで品質評価を行う。このため、例えば図3、図4に示すような空隙を有する評価対象物の空隙率はいずれも16%であり、両者を区別することができない。すなわち、空隙Vが分散して存在する図4の領域D2は、空隙Vが密集して存在している図3の領域D1に比べて明らかに強度が優れているが、両者は同一の品質として評価されてしまう。
【0026】
これに対して、本実施形態の品質評価装置1は、空隙の位置関係と量とを示す最大クラスタ空隙率を用いて空隙を評価することで、図3の領域D1、図4の領域D2を明確に分けて判定することができる。例えば、図3の領域D1の最大クラスタC3の大きさは9mm2であるので、最大クラスタ空隙率は9%である。一方、図4の領域D2については、すべての空隙Vがそれぞれ別のクラスタCnに分類されるので、最大クラスタの大きさは1mm2であり、最大クラスタ空隙率は1%である。よって、仮に品質評価の閾値が5%であるとすると、図3に示す評価対象物の品質は悪く、図4に示す評価対象物の品質は良いと判定することができる。
【0027】
上述した通り、第1実施形態の品質評価装置1によれば、評価対象物の空隙Vを検出し、隣接する空隙Vの距離に基づいて空隙VをクラスタCnに分類し、分類したクラスタCnの大きさに基づいて評価対象物の品質の評価を行う。このように、隣接する空隙V間の距離に基づいて空隙VをクラスタCnに分類することができるので、例えばお互いの距離が近い複数の空隙Vを、1つのクラスタ、すなわち1つの塊とみなすことができる。分類したクラスタCnの大きさは、空隙Vの存在箇所が集中していることを示す度合いとなるため、クラスタCnの大きさに基づいて評価対象物の評価を行うことにより、空隙率が同一の物体であっても適切な品質評価をすることができる。
【0028】
(第2実施形態)
第2実施形態に係る品質評価装置は、第1実施形態に係る品質評価装置1とほぼ同様に構成されるものであって、空隙形状情報入力部15を備える点が相違する。なお、第2実施形態においては、第1実施形態と重複する部分は説明を省略し、相違点を中心に説明する。
【0029】
最初に、第2実施形態に係る品質評価装置の構成について説明する。図5は、第2実施形態に係る品質評価装置2の構成を示すブロック図である。
【0030】
図5に示すように、品質評価装置2は、空隙形状情報入力部15を有している。空隙形状情報入力部15は、評価対象物内部の空隙の形状に関する情報を入力する機能を有している。例えば、空隙形状情報入力部15は、空隙の最大径長さ、最大径角度、最小径長さ、円形度係数、円相当径等を入力する機能を有している。さらに、空隙形状情報入力部15は、取得した情報をクラスタ部13へ出力する機能を有している。
【0031】
また、クラスタ部13は、空隙Vの大きさを考慮して空隙V間の距離を算出する機能を有している。クラスタ部13は、空隙Vを所定の図形に近似し、近似した図形間の距離を、空隙V間の距離とする機能を有している。なお、クラスタ部13のその他の機能は、第1実施形態と同様である。
【0032】
次に、本実施形態に係る品質評価装置2の動作について説明する。図6は、本実施形態に係る品質評価装置2の動作を示すフローチャート、図7は、評価対象物体の断面のX線透過像、図8,9は、本実施形態に係る品質評価装置2のクラスタ処理を説明するための概要図である。
【0033】
図6に示す制御処理は、例えば品質評価装置2の電源ONから所定のタイミングで繰り返し実行される。図6に示す制御処理が開始されると、品質評価装置2は、情報入力処理を開始する(S20)。S20の処理は、図2のS10の処理と同様であり、例えば、評価対象物に超音波を送信し、底面エコーを受信する処理である。また、S20の処理において、空隙形状情報入力部15は、空隙の形状に関する情報を入力するために、例えば図7に示すX線透過像を取得する。このX線透過像は、超音波送受信部11が測定した領域と同一の領域において撮像された断面像であり、黒色部分が空隙を示している。S20の処理が終了すると、空隙検出処理へ移行する(S22)。
【0034】
S22の処理は、図2のS12の処理と同様であり、評価対象物の内部の空隙Vを検出する処理である。S22の処理が終了すると、空隙近似処理へ移行する(S24)。
【0035】
S24の処理は、クラスタ部13が実行し、S22の処理で得られた空隙Vを所定の図形に近似する処理である。最初に、クラスタ部13は、S22の処理で検出した空隙Vに関し、S20の処理で入力したX線透過像に基づいて、例えば、最大径長さ、最大径角度、最小径長さ、円形度係数、円相当径等を算出する。算出方法は、公知の粒子解析手法で行われる。例えば、図8に示すように、横方向がX、縦方向がYによって特定される領域において、4つの空隙V(No.1(0,0)、No.2(10,0)、No.3(1,10)、No.4(10,10))がS22の処理で検出された場合、X線透過像の解析により以下の表に示すデータを算出する。
【表1】
【0036】
クラスタ部13は、算出した表のデータに従って、図形を用いて空隙Vの形状を近似する。例えば、表の円相当径を直径とし、空隙Vを検出した位置を中心とする円で空隙Vを近似する。これにより、図8に示すように、それぞれの空隙を円VC1〜VC4で近似することができる。S24の処理が終了すると、クラスタ処理へ移行する(S26)。
【0037】
S26の処理は、クラスタ部13が実行し、S24の処理で得られた空隙Vを近似した円間の距離に基づいて、各空隙Vをクラスタに分類する処理である。クラスタ部13は、隣り合う2つの円間の距離が判定値より小さい場合には同一のクラスタに分類し、隣り合う2つの円間の距離が判定値より小さくない場合には別のクラスタに分類する。この処理について、図9を用いて説明する。図9に示すグラフは、図8に示す各空隙を近似した各円間の最短距離Ln(n:整数)を、横軸にプロットしたものである。クラスタ分類を判定する判定値を4.5と設定した場合、円VC1と円VC2との間の距離L1は4であるので、No.1とNo.2を同一のクラスタに分類する。一方、円VC2と円VC4との距離L2は5、円VC3と円VC4との距離L3は7であるので、No.2とNo4、さらに、No.3とNo4はそれぞれ別のクラスタに分類する。すなわち、No.1とNo.2を同一のクラスタに分類し、No.3、No4をそれぞれ独立した別のクラスタに分類する。S26の処理が終了すると、空隙率算出処理へ移行する(S28)。
【0038】
S28の処理は、図2のS16の処理と同様であり、評価対象物の品質を評価する指標を算出する処理である。S28の処理が終了すると、品質評価処理へ移行する(S30)。
【0039】
S30の処理は、図2のS18の処理と同様であり、最大クラスタ空隙率に基づいて評価対象物の品質を評価する処理である。S30の処理が終了すると、図6に示す制御処理を終了する。
【0040】
以上で図6に示す制御処理を終了する。図6に示す制御処理を実行することで、品質評価装置2は、空隙の大きさを考慮してクラスタの分類を行い、最大クラスタ空隙率を用いて評価対象物の品質を判定することができる。
【0041】
ところで、従来のクラスタ解析方法によれば、空隙の大きさを考慮せずに各空隙をクラスタに分類する。このため、例えば、図12に示すように、横軸がX、縦軸がYによって特定される領域において、表1に示す4つの空隙V(No.1(0,0)、No.2(10,0)、No.3(1,10)、No.4(10,10))が検出された場合、図13に示すように、各空隙間の距離は、少なくとも8以上である。クラスタ分類を判定する所定値を4.5と設定した場合、4つの空隙V(No.1〜No.4)は全て別のクラスタに分類されてしまい、空隙の配列状態、位置関係を適切に示したものとはならない。
【0042】
これに対して、本実施形態の品質評価装置2は、空隙Vの大きさを円で近似し、近似した円間の距離Lnを空隙間の距離としているため、各空隙の大きさを空隙間の距離に反映させることができる。これにより、クラスタ分類を判定する所定値を同様に4.5と設定した場合、図9に示すように、No.1とNo.2を同一のクラスタとし、No.3、No.4をそれぞれ独立した別のクラスタとすることができる。
【0043】
上述した通り、第2実施形態に係る品質評価装置2によれば、空隙Vを円で近似することにより、隣接する空隙V間の距離Lnを求める際に空隙Vの大きさを考慮することができるため、隣接する空隙V間の距離Lnを正確に求めることが可能となり、結果、より適切な品質評価をすることができる。
【0044】
なお、上述した各実施形態は本発明に係る品質評価装置の一例を示すものである。本発明に係る品質評価装置は、これらの各実施形態に係る品質評価装置に限られるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で、各実施形態に係る品質評価装置を変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。
【0045】
例えば、第2実施形態では、1つの円で空隙の形状を近似する例を説明したが、図6のS24の処理において算出した表1を用いて、例えば図10のように、細長い空隙V(No.4)を複数の小円で近似してもよい。小円で空隙Vを近似するか否かの判断は、空隙Vの円形度係数に応じて決定すればよく、例えば、例えば表1の円形度係数が0.3より小さい空隙に対して行うものとすればよい。小円の直径は、例えば表1の最小径長さとし、空隙の中心から表1の最大径角度の傾き方向に対して最大径長さに達するまで並べて近似する。このように、複数の円を用いて近似することで、図11に示すように、No.1、No.2、No.4を同一のクラスタとし、No.3を独立した別のクラスタとして判定することができるため、空隙の配列状態、位置関係をより一層適切に反映させることができる。これにより、複雑な空隙の形状であっても、適切なクラスタに分類することができる。
【0046】
さらに、第2実施形態では、空隙の形状を円で近似する例を説明したが、円に限られるものではなく、楕円、半円、矩形、多角形等であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】第1実施形態に係る品質評価装置の構成概要を示すブロック図である。
【図2】図1の品質評価装置の動作を示すフローチャートである。
【図3】図1の品質評価装置の動作を説明する概要図である。
【図4】図1の品質評価装置の動作を説明する概要図である。
【図5】第2実施形態に係る品質評価装置の構成概要を示すブロック図である。
【図6】図5の品質評価装置の動作を示すフローチャートである。
【図7】評価対象物の断面を示すX線透過写真である。
【図8】図5の品質評価装置の動作を説明する概要図である。
【図9】図5の品質評価装置の動作を説明する概要図である。
【図10】品質評価装置の他の動作を説明する概要図である。
【図11】品質評価装置の他の動作を説明する概要図である。
【図12】従来のクラスタ解析手法を説明する概要図である。
【図13】従来のクラスタ解析手法を説明する概要図である。
【符号の説明】
【0048】
1…品質評価装置、11…超音波送受信部、12…空隙検出部(空隙検出手段)、13…クラスタ部(分類手段)、14…品質評価部(品質評価手段)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
評価対象物の空隙部を検出する空隙部検出手段と、
隣接する前記空隙部間の距離に基づいて前記空隙部をクラスタに分類する分類手段と、
前記クラスタの大きさに基づいて前記評価対象物の品質評価を行う品質評価手段と、
を備える品質評価装置。
【請求項2】
前記分類手段は、前記空隙部の大きさを図形で近似し、隣接する前記図形間の距離に基づいて前記空隙部を前記クラスタに分類すること、
を特徴とする請求項1に記載の品質評価装置。
【請求項1】
評価対象物の空隙部を検出する空隙部検出手段と、
隣接する前記空隙部間の距離に基づいて前記空隙部をクラスタに分類する分類手段と、
前記クラスタの大きさに基づいて前記評価対象物の品質評価を行う品質評価手段と、
を備える品質評価装置。
【請求項2】
前記分類手段は、前記空隙部の大きさを図形で近似し、隣接する前記図形間の距離に基づいて前記空隙部を前記クラスタに分類すること、
を特徴とする請求項1に記載の品質評価装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図7】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図7】
【公開番号】特開2009−180552(P2009−180552A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−18002(P2008−18002)
【出願日】平成20年1月29日(2008.1.29)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年1月29日(2008.1.29)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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