説明

哺乳動物由来のグルコーストランスポーターの発現のための、サッカロミセス・セレビジエErg4突然変異体の使用

本発明は、ヒトGLUT4トランスポーターまたはヒトGLUT1トランスポーターが機能的に発現される酵母株に関し、特に、酵母株で特に容易に機能的に発現させることができるGLUT4輸送タンパク質に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトGlut4およびGlut1トランスポーターを機能的に発現させることができる酵母株に関する。
【背景技術】
【0002】
ほとんどの異所性細胞は、特別なトランスポータータンパク質を介してグルコースを細胞内部へ輸送する。様々な生物が、グルコース輸送に介在する様々なメカニズムを構築しており、例えば、特にプロトン共輸送系、Na+グルコーストランスポーター、結合タンパク質依存性系、ホスホトランスフェラーゼ系、および、促進拡散のための系がある。真核生物において、哺乳動物でGLUT遺伝子(GLUT=グルコーストランスポーター)によってコードされたグルコーストランスポーターのファミリーと、サッカロミセス・セレビジエでHXT遺伝子(HXT=ヘキソーストランスポーター)によってコードされたグルコーストランスポーターのファミリーは、促進拡散によってグルコース摂取に介在する。前記トランスポーターは、糖トランスポーターのより大きいファミリーに属する。これらは、12回膜貫通へリックスの存在と、複数の保存されたアミノ酸基を特徴とする。グルコース輸送は、例えば糖尿病またはファンコーニ−ビッケル症候群のような不完全なグルコースホメオスタシスに関連する疾患において重要な役割を果たす。それゆえに、哺乳動物におけるグルコース輸送が多数の研究における目的とされてきた。これまで、13種のグルコーストランスポーター様タンパク質が同定されている(GLUT1〜GLUT12,HMIT−H−myo−イノシトールトランスポーター)。前記トランスポーターは、様々な組織へのグルコース摂取、グルコースの肝臓での貯蔵、筋肉細胞と脂肪細胞へのグルコースのインスリン依存性の摂取、および、膵臓のβ細胞によるグルコース測定など主要な役割を果たす。GLUT1は、赤血球へのグルコース輸送や、血液脳関門を通過するグルコース輸送に介在するが、その他多くの組織でも発現されており、一方、GLUT4は、インスリン依存性の組織(主として筋肉および脂肪組織)に限定される。前記インスリン依存性の組織において、細胞内区画または細胞質膜区画を通過するGLUT4トランスポーターの標的化を制御することは、グルコース摂取調節に重要なメカニズムの代表である。インスリンの存在下で、細胞内のGLUT4は、グルコース摂取を促進するために細胞質膜を通過して再分配される。同様に、前記インスリン依存性の組織でGLUT1が発現され、同様に、その細胞における分配は、強くはないが、インスリンによって影響を受ける。加えて、GLUT1またはGLUT4が糖輸送を触媒する相対的な有効性は、各トランスポーターの細胞表面への標的化の程度によってだけでなく、それらの動力学的特性によっても決定される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
異なるグルコーストランスポーターアイソフォームが共発現されることと、グルコース代謝が迅速なことにより、これらインスリン依存性の組織における各グルコーストランスポーターアイソフォームの役割および正確な特性に関する研究は複雑であった。これらの問題を解決するために、アフリカツメガエルの卵母細胞、組織培養細胞、昆虫細胞および酵母細胞のような異種発現系が用いられてきた。しかしながら、多数の困難がこれらの系に関連している可能性が明らかになり、すなわち、異種発現されるトランスポーターの活性が弱すぎること、前記系における内因性のグルコーストランスポーター、トランスポーターが相当な比率で細胞内に保持されること、または、不活性なトランスポーターの生産である。
【0004】
天然に存在する哺乳動物のGLUT4タンパク質、特にヒトのGLUT4タンパク質は、サッカロミセス・セレビジエ株において、特定の条件下で機能的に発現可能である。
【0005】
酵母細胞は、単細胞の真核生物である。それゆえに、これらは、特に医薬活性を有する物質を同定するためにスクリーニング分析を実行することに関して、数種のタンパク質に関して細菌系より発現に適している。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、GLUT4V85Mタンパク質をコードするDNA配列を含む、精製および単離されたポリヌクレオチドに関する。
【0007】
前記タンパク質は、ヒトGLUT4タンパク質のアミノ酸鎖85位に、バリンからメチオニンへのアミノ酸置換を含む。この改変されたGLUT4V85Mタンパク質は、機能的なGLUT4タンパク質を発現するための別手段を提供する。グルコーストランスポーターが全体として不活性であるサッカロミセス・セレビジエ株(=hxt(−))で、前記GLUT4タンパク質の発現の後、グルコース摂取が観察され得る場合、GLUT4タンパク質は、サッカロミセス・セレビジエに関して機能的とみなされる。グルコース摂取は、放射標識したグルコースによる輸送の測定、または、唯一の炭素源としてグルコースを含む培地での成長のいずれかによって決定することができる。
【0008】
好ましい実施形態において、タンパク質GLUT4V85Mを生じるDNA配列を含む精製および単離されたポリヌクレオチドは、以下の群の配列を含むか、またはそれらからなるものが可能である:
a)配列番号1に記載のヌクレオチド配列、
b)ストリンジェントな条件下で配列番号1の配列にハイブリダイズし、タンパク質GLUT4V85Mをコードするヌクレオチド配列。
【0009】
好ましくは、前記精製および単離されたポリヌクレオチドは、配列番号2のアミノ酸配列を有するGLUT4V85Mタンパク質をコードする。
【0010】
上述したようにタンパク質GLUT4V85MをコードするDNA配列を含む精製および単離されたポリヌクレオチドは、使用可能にプロモーターに連結されていてよい。適切なプロモーターは、特に、原核性または真核性のプロモーターであり、例えば、Lac−、trp−、ADH−またはHXT7プロモーターである。細菌または真核生物が、ベクターの補助で前記プロモーターによりタンパク質GLUT4V85Mに翻訳され得るmRNAを生産する場合、タンパク質GLUT4V85Mをコードするポリヌクレオチドの一部は正確に使用可能にプロモーターに連結している。このようなベクターの例は、ベクターp4H7GLUT4V85M(配列番号3)である。タンパク質GLUT4V85Mは、酵母細胞で前記ベクターによって発現可能である。
【0011】
好ましい実施形態において、上述のタンパク質GLUT4V85MをコードするDNA配列を含むポリヌクレオチドは、酵母細胞で前記ポリヌクレオチドを複製すること、または、酵母細胞でタンパク質GLUT4V85Mをコードするポリヌクレオチドの一部を発現し、タンパク質GLUT4V85Mを生産することに適している。サッカロミセス・セレビジエ由来の酵母細胞が特に適切である。酵母細胞における複製および発現に関して、タンパク質GLUT4V85Mを生じるDNA配列を含むポリヌクレオチドは、酵母ベクターの形態で存在する。GLUT4V85Mタンパク質をコードするポリヌクレオチド領域は、使用可能に酵母細胞特異的プロモーターに連結していてよく、このようなプロモーターとしては、例えば、ADHプロモーター(アルコールデヒドロゲナーゼプロモーター)、または、HXT7プロモーター(ヘキソース−トランスポータープロモーター)が挙げられる。酵母の分野は、酵母でのDNAクローニングのために開発されたベクター群である。
【0012】
その上、本発明は、全てのグルコーストランスポーターが機能的ではなくなっており(=hxt(−))、機能的なErg4タンパク質を含まないサッカロミセス・セレビジエ由来の酵母細胞に関する。このような酵母細胞は、好ましくは、DSMZ(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH,マシェローダーヴェグ(Mascheroder Weg)16,38124,ブラウンシュヴィック,ドイツ)にサッカロミセス・セレビジエDSM15187として寄託された酵母細胞である。
【0013】
本発明はまた、全てのグルコーストランスポーターが機能的ではなくなっており、機能的なFgy1と機能的なErg4タンパク質を含まない酵母細胞に関する。Erg4タンパク質またはFgy1タンパク質の欠損は、特に、対応するコーディングゲノム部分の断絶、または、前記コーディングゲノム部分の部分的または完全な除去によるものがあり得る。
【0014】
好ましくは、機能的なグルコーストランスポーター、機能的なFgy1タンパク質および機能的なErg4タンパク質を含まない酵母細胞として、DSMZにサッカロミセス・セレビジエDSM15184として寄託された酵母細胞を用いることである。
【0015】
上述の酵母細胞は、好ましくは、哺乳動物のGLUT1タンパク質または哺乳動物のGLUT4タンパク質、特に、ラット、マウス、ウサギ、ブタ、ウシまたは霊長類由来のタンパク質を発現するために用いられる。好ましい実施形態では、ヒトGLUT4またはGLUT1タンパク質を発現するための酵母細胞が用いられる。
【0016】
グルコーストランスポーターが全体として機能的ではなくなっており、さらにErg4タンパク質も機能的ではなくなっているサッカロミセス・セレビジエ酵母細胞は、タンパク質GLUT4V85MをコードするDNA配列を含む本発明のポリヌクレオチドを含んでもよい。前記酵母細胞はまた、GLUT4V85Mタンパク質を発現し、従って前記タンパク質を含む。
【0017】
GLUT4V85Mタンパク質をコードするDNA配列を含むポリヌクレオチドを含むこの種の酵母株は、好ましくは、DMSZに寄託されたサッカロミセス・セレビジエDSM15185酵母株である。
【0018】
グルコーストランスポーターが全体として機能的ではなくなっており、さらにErg4タンパク質も機能的ではなくなっており、タンパク質GLUT4V85Mを生じるDNA配列を含むポリヌクレオチドを含む酵母細胞を、例えば、以下のように製造してもよい:
a)グルコーストランスポーターが全体として機能的ではなくなっており、さらにErg4タンパク質も機能的ではなくなっている酵母細胞を提供すること、
b)GLUT4V85Mタンパク質をコードし、酵母細胞で複製することができるDNA配列を含む単離および精製されたポリヌクレオチドを提供すること、
c)a)からの酵母細胞をb)からのポリヌクレオチドで形質転換させること、
d)形質転換した酵母細胞を選択すること、
e)必要に応じて、GLUT4V85Mタンパク質を発現すること。
【0019】
GLUT4V85Mタンパク質をコードするDNA配列を含む単離および精製されたポリヌクレオチドは、好ましくは、酵母細胞で複製することができ、前記DNA配列がクローニングされたベクターである。このようなベクターの例は、p4H7GLUT4V85M(配列番号3)である。
【0020】
本発明はまた、グルコーストランスポーターが全体として機能的ではなくなっており、Fgy1およびErg4に関するタンパク質が機能的ではなくなっており、GLUT4V85Mタンパク質をコードするDNA配列を含むポリヌクレオチドを含む酵母細胞に関する。前記酵母細胞はまた、GLUT4V85Mタンパク質を発現し、従って、前記タンパク質を含む。この種の酵母株は、好ましくは、DSMZに寄託されたサッカロミセス・セレビジエDSM15186である。
【0021】
グルコーストランスポーターが全体として機能的ではなくなっており、さらにタンパク質Fgy1およびErg4も機能的ではなくなっており、GLUT4V85Mタンパク質をコードするDNA配列を含むポリヌクレオチドを含む酵母細胞を、例えば、以下のように製造してもよい:
a)グルコーストランスポーターが全体として機能的ではなくなっており、さらにタンパク質Fgy1およびErg4も機能的ではなくなっている酵母細胞を提供すること、
b)GLUT4V85Mタンパク質をコードし、酵母細胞で複製することができるDNA配列を含む単離および精製されたポリヌクレオチドを提供すること、
c)a)からの酵母細胞をb)からのポリヌクレオチドで形質転換させること、
d)形質転換した酵母細胞を選択すること、
e)必要に応じて、GLUT4V85Mタンパク質を発現すること。
【0022】
GLUT4V85Mタンパク質をコードするDNA配列を含む単離および精製された上述のポリヌクレオチドは、好ましくは、酵母細胞で複製することができ、前記DNA配列がクローニングされているベクターである。このようなベクターの例は、p4H7GLUT4V85M(配列番号3)である。
【0023】
本発明はまた、グルコーストランスポーターが全体として機能的ではなくなっており、GLUT4V85Mタンパク質を生じるDNA配列を含むポリヌクレオチドを含む酵母細胞に関する。
【0024】
前記酵母細胞はまた、GLUT4V85Mタンパク質を発現し、従って前記タンパク質を含む。好ましいこの種の酵母株は、DSMZに寄託されたサッカロミセス・セレビジエ15188酵母株である。
【0025】
グルコーストランスポーターが全体として機能的ではなくなっており、GLUT4V85Mタンパク質をコードするDNA配列を含むポリヌクレオチドを含む酵母細胞を、例えば、以下のように製造してもよい:
a)グルコーストランスポーターが全体として機能的ではなくなっている酵母細胞を提供すること、
b)GLUT4V85Mタンパク質をコードし、酵母細胞で複製することができるDNA配列を含む単離および精製されたポリヌクレオチドを提供すること、
c)a)からの酵母細胞をb)からのポリヌクレオチドで形質転換させること、
d)形質転換した酵母細胞を選択すること、
e)必要に応じて、GLUT4V85Mタンパク質を発現すること。
【0026】
GLUT4V85Mタンパク質をコードするDNA配列を含む単離および精製されたポリヌクレオチドは、好ましくは、酵母細胞で複製することができ、前記DNA配列がクローニングされているベクターである。このようなベクターの例は、p4H7GLUT4V85M(配列番号3)である。
【0027】
本発明はまた、配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質に関する。前記タンパク質は、アミノ酸鎖85位でバリンがメチオニンに置換されたヒトGLUT4タンパク質である。
【0028】
本発明はまた、GLUT4タンパク質の活性を刺激する化合物を同定する方法に関し、本方法は、以下の工程を含む:
a)グルコーストランスポーターが全体として機能的ではなくなっており、さらにErg4タンパク質も機能的ではなくなっており、タンパク質GLUT4V85MをコードするDNA配列を含むポリヌクレオチドを含む酵母細胞を提供する工程、
b)化学物質を提供する工程、
c)a)に記載の酵母とb)に記載の化学物質とを接触させる工程、
d)c)に記載の酵母によるグルコース摂取を決定する工程、
e)b)に記載の化学物質と接触させたa)に記載の酵母細胞で検出されたグルコース摂取値に対するd)で検出されたグルコース摂取値と、d)に記載の、酵母により摂取されるグルコースの量の増加を引き起こす化合物が前記GLUT4タンパク質の活性を刺激することとを関連付ける工程。GLUT4V85Mタンパク質の活性を刺激する化合物は、GLUT4活性も刺激すると考えられる。
【0029】
本発明はまた、上述の方法によって同定された化合物、並びにさらに、医薬を製剤化するための添加剤および賦形剤を含む医薬に関する。その上、本発明は、Iおよび/またはII型糖尿病の治療のための医薬を製造するための上述の方法によって同定された化合物の使用に関する。
【0030】
本発明はまた、上述の方法によって同定された化合物、並びに、医薬を製剤化するための添加剤および賦形剤を含む医薬に関する。その上、本発明は、糖尿病を治療するための医薬を製造するための、上述の方法によって同定された化合物の使用に関する。
【0031】
その上、本発明は、糖尿病を治療するための医薬を製造するための、上述の方法によって同定された化合物の使用に関する。
【0032】
本発明はまた、Erg4遺伝子によってコードされるタンパク質を阻害する化合物を同定する方法も含み、本方法は、以下の工程を含む:
a)グルコーストランスポーターが全体として機能的ではなくなっており、GLUT4V85Mタンパク質をコードするDNA配列を含み、酵母細胞で複製することができるポリヌクレオチドを含む酵母細胞を提供する工程、
b)化学物質を提供する工程、
c)a)に記載の酵母とb)に記載の化学物質とを接触させる工程、
d)c)に記載の酵母によるグルコース摂取を決定する工程、
e)b)に記載の化学物質と接触していないa)に記載の酵母細胞で検出されたグルコース摂取値に対するd)で検出されたグルコース摂取値と、d)に記載の、酵母により摂取されるグルコースの量の増加を引き起こす化合物がタンパク質Erg4の活性を刺激することとを関連付ける工程。
【0033】
その上、本発明は、Fgy1遺伝子に対応するタンパク質を阻害する化合物を同定する方法に関し、本方法は、以下の工程を含む:
a)グルコーストランスポーターが全体として機能的ではなくなっており、さらにErg4タンパク質も機能的ではなくなっており、GLUT4タンパク質を含む酵母細胞を提供する工程、
b)化学物質を提供する工程、
c)a)に記載の酵母とb)に記載の化学物質とを接触させる工程、
d)c)に記載の酵母によるグルコース摂取を決定する工程、
e)b)に記載の化学物質と接触していないa)に記載の酵母細胞で検出されたグルコース摂取値に対するd)で検出されたグルコース摂取値と、d)に記載の、酵母により摂取されるグルコースの量の増加を引き起こす化合物がタンパク質Fgy1の活性を刺激することとを関連付ける工程。
【0034】
本発明はまた、上述の方法によって同定された化合物、並びに、医薬を製剤化するための添加剤および賦形剤を含む医薬に関する。
【0035】
以下で、本発明を技術的な詳細に関してより詳細に説明する。
【0036】
ハイブリダイゼーションは、相補的な塩基配列を有する2つの一本鎖核酸が二本鎖にアセンブルすることを意味する。ハイブリダイゼーションは、2つのDNA鎖間、1つのDNAと1つのRNA鎖間、および、2つのRNA鎖間で起こり得る。原則的に、関連する核酸は最初は二本鎮型であってよく、これを二次構造を持たない一本鎖分子に分解するまで加熱することによって、例えば水槽中で10分間ボイルすることによってハイブリッド分子を製造することが可能である。続いて、それらをゆっくり冷却することができる。冷却段階の際に、相補鎖が対を形成し、二本鎖ハイブリッド分子が得られる。実験条件下で、ハイブリダイゼーションは通常、ハイブリダイゼーションフィルターを用いて実行され、そのフィルターに一本鎖または変性可能なポリヌクレオチド分子がブロッティングまたは電気泳動によってアプライされる。適切な相補ポリヌクレオチド分子を用いて、ハイブリダイズしようとする前記ポリヌクレオチド分子に放射活性の蛍光標識を与えることによって、ハイブリダイゼーションを可視化することが可能である。ストリンジェンシーは、特定の条件のマッチングまたはアライメントの程度を説明するものである。高ストリンジェンシーは、マッチングに対して低ストリンジェンシーよりも高い要求を有する。用途と目的に応じて、異なるストリンジェンシーを有する特定の条件は、核酸のハイブリダイゼーションに関して設定される。高ストリンジェンシーでは、ハイブリダイゼーションの反応条件は、極めてよくマッチする相補的な分子だけが他方とハイブリダイズできるように設定される。低ストリンジェンシーでは、分子は、対を形成しない塩基または誤って対を形成する塩基の比較的大きい断片と部分的にハイブリダイズすることもできる。
【0037】
ハイブリダイゼーション条件は、特に、ハイブリダイゼーションが、2×SSCを含む水溶液中で、68℃で少なくとも2時間行われ、続いて初めに2×SSC/0.1%SDSで室温で5分間、次に1×SSC/0.1%SDSで68℃で1時間、次に0.2%SSC/0.1%SDSで68℃でさらに1時間洗浄される場合、ストリンジェントであると理解することができる。
【0038】
2×SSC、1×SSCまたは0.2×SSC溶液は、20×SSC溶液を適切に希釈することによって製造される。20×SSC溶液は、3モル/lのNaCl、および、0.3モル/lのクエン酸Naを含む。pHは7.0である。当業者であれば、ストリンジェントな条件下でのポリヌクレオチドのハイブリダイゼーション方法に精通している。適切な指示は、専門書に見出すことができ、例えば、特にCurrent Protocols in Molecular Biology(ワイリー・インターサイエンス(Wiley Interscience);編集者:Frederich M.Ausubel,Roger Brant,Robert E.Kingston,David J.Moore,J.G.Seidmann,Kevin Struhl;ISBN:0−471−50338−X)である。
【0039】
酵母ベクターは、様々なサブグループに分類することができる。Ylpベクター(酵母の組込み型プラスミド)は、実質的に細菌でクローニングに用いられるベクターに相当す
るが、選択可能な酵母遺伝子(例えば、URA3、LEU2)を含む。前記ベクター導入後に外来DNAが酵母染色体に組込まれた場合のみ、これら配列は染色体と共に複製され、クローンの形成を伴って、安定して全ての娘細胞にトランスファーされる。
【0040】
この方法に基づき、真核性のORI(複製開始点)によって自律的に複製できるプラスミドが得られている。このような酵母ベクターは、YRpベクター(酵母複製プラスミド)、または、ARSベクター(自律複製配列)という。その上、YEpベクター(酵母エピゾーム性プラスミド)もあり、これは、酵母2μmプラスミドから得られ、選択的マーカー遺伝子を含む。YACベクター(酵母人工染色体)のクラスは、独立した染色体のように行動する。
【0041】
発現しようとする遺伝子を含む酵母ベクターは、前記遺伝子が発現できるように形質転換によって酵母に導入される。この目的に適した方法の例は、エレクトロポレーション、または、コンピテント細胞をベクターDNAとインキュベートすることである。適切な酵母発現プロモーターは、当業者既知であり、例えば、SOD1プロモーター(スーパーオキシドジスムターゼ)、ADHプロモーター(アルコールデヒドロゲナーゼ)、酸性ホスファターゼに関する遺伝子のプロモーター、HXT2プロモーター(グルコーストランスポーター2)、HXT7プロモーター(グルコーストランスポーター7)、GAL2プロモーター(ガラクトーストランスポーター)などである。酵母発現プロモーターと、発現しようとする遺伝子(例えばGLUT4V85M)を含む構築物は、発現する目的のためには、酵母ベクターの一部である。発現を実行するために、前記酵母ベクターは、自己複製する小片であってもよく、これは、酵母ゲノムから独立しているか、または、安定して酵母ゲノムに組込まれていてもよい。適切な酵母ベクターは、原則的に、酵母で増殖可能なあらゆるポリヌクレオチド配列である。用いることができる酵母ベクターは、特に、酵母プラスミド、または、酵母人工染色体である。酵母ベクターは通常、複製起点(2μ,ars)すなわち複製プロセスの開始点、および、通常、栄養要求性マーカーまたは抗生物質耐性遺伝子からなる選択マーカーを含む。当業者既知の酵母ベクターの例としては、pBM272、pCS19、pEMBCYe23、pFL26、pG6、pNN414、pTV3、p426MET25、p4H7などが挙げられる。
【0042】
本発明に従って、細胞の選択とは、例えば、抗生物質に対する耐性、または、特定の最小培地で成長する能力のような選択マーカーによる細胞の特異的濃縮、さらに、それらの単離およびそれに続く寒天プレートでの培養または液中培養を意味する。
【0043】
培養、形質転換および形質転換された酵母細胞の選択、さらに酵母細胞でのタンパク質発現は、当業者が一般的に用いる方法の範囲内である。前記方法に関する説明は、標準的な教本で見出すことができ、例えば、Walker Graeme M.:Yeast Physiology and Biotechnology,ワイリー&サンズ(Wiley and Sons),ISBN:0−471−9446−8、または、Protein Synthesis and Targeting in Yeast,Alistair J.P.Brown,Mick F.FruiteおよびJohn E.G.Mc Cartly編;Springer Berlin;ISBN:3−540−56521−3、または、「Methods in Yeast Genetics,1997:A Cold Spring Harbor Laboratory Course Manual;Adams Alison(編);コールドスプリングハーバーラボラトリー(Cold Spring Harbor Laboratory);ISBN:0−87969−508−0」で見出すことができる。
【0044】
酵母サッカロミセス・セレビジエは、17種の既知のヘキソーストランスポーターと、さらに3種の既知のマルトーストランスポーターを有しており、これらは、その発現が十
分に高い場合にヘキソースを前記酵母内に輸送することができる。1種の既知の株で、ヘキソース摂取に適した全てのトランスポーターを欠失によって除去した。前記株には、マルトース輸送タンパク質に相同な2つの遺伝子MPH2およびMPH3だけが含まれる。2つの遺伝子MPH2およびMPH3は、培地中にグルコースが存在する場合に抑制される。Wieczorke等,FEBS Lett.464,123〜128(1999年)では、この酵母株の製造と特徴付けが説明されている。前記株は、唯一の炭素源としてグルコースを含む基質上では増殖できない。前記株から、対応するベクター(hxt fgy1−1株)に起因する、GLUT1を機能的に発現する突然変異体を選択することが可能である。酵母株hxt fgy1−1が、酵母プロモーターの制御下にGLUT4遺伝子を有するプラスミドベクターで形質転換される場合、ほんのわずかなグルコースしか輸送されない。機能的なGLUT4発現は、GLUT4による顕著なグルコース輸送を可能にするために、この酵母株に対してさらなる調節を必要とする。このような、単一のグルコーストランスポーターGLUT4によって細胞がグルコースを摂取する酵母株は、唯一の炭素源としてグルコースを含む基質で単離することができる。この目的のために、酵母プロモーターの機能的な制御下にGLUT4遺伝子を有する酵母hxt fgy1−1株は、形質転換される。これらの、この方法で形質転換された酵母細胞を、唯一の炭素源としてグルコースを含む栄養培地に塗布し、そこでインキュベートする。例えば30℃で2〜3日インキュベートした後、個々のコロニーの成長を観察する。これらコロニーの1つを単離する。前記コロニーから酵母プラスミドを除去すると、唯一の炭素源としてグルコースを含む栄養培地での増殖が妨害される。この、ベクタープラスミドをすでに含まない株が、再び酵母プロモーターの機能的な制御下にGLUT4遺伝子を有する酵母ベクターで形質転換されると、前記株は、再び唯一の炭素源としてグルコースを含む培地で増殖が可能になる。
【0045】
上述の酵母株は、2002年2月14日のDE10106718.6の優先権を主張する、2002年2月9日付で出願された国際出願PCT/EP02/01373の主題である。
【0046】
ヘキソースのための固有のトランスポーター(グルコーストランスポーター)が全体として機能的ではなくなっている酵母株は、国際出願PCT/EP02/01373との関連において、これより先の日付に、Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH(DSMZ)に、DSM14035、DSM14036、または、DSM14037という番号ですでに寄託されている。
【0047】
GLUT4のポリヌクレオチドおよびアミノ酸配列は、遺伝子バンクにおいて、例えば以下の登録で利用可能である:M20747(cDNA;ヒト)、EMBL:D28561(cDNA;ラット)、EMBL:M23382(cDNA;マウス)、スイスプロット(Swissprot):P14672(タンパク質;ヒト)、スイスプロット:P19357(タンパク質;ラット)、および、スイスプロット:P14142(タンパク質;マウス)。
【0048】
GLUT1のポリヌクレオチド配列およびアミノ酸配列は、以下に示されたデータベースのコード番号で開示されている:EMBL:M20653(cDNA;ヒト)、EMBL:M13979(cDNA;ラット)、EMBL:M23384(cDNA;マウス)、スイスプロット:P11166(タンパク質;ヒト)、スイスプロット:P11167(タンパク質;ラット)、および、スイスプロット:P17809(タンパク質;マウス)。
【0049】
医薬は、ヒトや動物における病気または身体の機能不全の療法のための薬理学的な活性
物質の投薬形態である。経口療法のための投薬形態の例としては、粉末、顆粒、錠剤、丸剤、ロゼンジ、糖衣錠、カプセル、液状抽出物、チンキ、および、シロップが挙げられる。外用塗布に用いられるものの例としては、エアロゾル、スプレー、ゲル、軟膏、または、粉末が挙げられる。注射用または不溶解性の溶液は、バイアル、ボトルまたは予め充填された注射器を用いて非経口投与を可能にする。これら、およびその他の医薬は、製薬技術分野の当業者に既知である。
【0050】
医薬を製剤化するための賦形剤により、特定の用途に対して活性成分の作用の適用、分布および発達を最適化する目的を有する活性物質の製造が可能である。このような賦形剤の例としては、充填剤、結合剤、崩壊剤または滑剤、例えばラクトース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、セルロース、スターチ、リン酸二カルシウム、ポリグリコール、アルギン酸塩、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、タルクまたは二酸化ケイ素が挙げられる。
【0051】
糖尿病は、インスリン欠乏または減少したインスリン作用による慢性的な代謝条件が原因で、血中グルコース濃度の異常な増加(高血糖症)を伴い尿と共にグルコースが排出されるという兆候を示す。インスリン作用の欠損またはインスリン作用の減少により、血中に摂取されたグルコースの不十分な吸収と、細胞による転換が起こる。脂肪組織において、インスリン拮抗ホルモンは、遊離脂肪酸の血中濃度の増加を伴う脂肪分解の増加作用を有する。
【0052】
脂肪症(肥満症)は、健康上のリスクを構成するカロリーの過剰摂取によるエネルギーの不均衡が原因の異常な体重増加である。
【0053】
まさに上述したような提供された酵母株によって摂取されるヘキソースの量は、放射標識したグルコースを用いた摂取の研究によって決定することができる。この目的のために、特定の酵母細胞濃度を、例えば緩衝液100μlに、例えば1mlあたり60mg(湿重量)の濃度で懸濁し、唯一の炭素源として決められた量の14Cまたは3Hで標識したグルコースと混合する。この細胞をインキュベートし、それらの決められた量を特定の時間で取り出す。摂取されたグルコース量は、LSC(液体シンチレーション計数)を用いて決定される。しかしながら、提供された酵母株によって、まさに上述したように摂取されたヘキソース量は、唯一の炭素源としてグルコースを含む培地での成長を分析することによって決定してもよい。この目的のために、化合物添加の後に、株の成長速度は、例えば、規則的な間隔で600nmで培養の光学密度を測定し、この値をコントロール株(例えば酵母の野生株)の成長速度と比較することによって決定される。
【0054】
化合物は、特に化学合成または生物からの化学物質の単離によって提供される。自動的な手法で化学合成を行うことも可能である。合成または単離によって得られた化合物は、適切な溶媒に溶解させることができる。適切な溶媒は、特に、例えばDMSO(ジメチルスルホキシド)のような有機溶媒を特定の比率で含む水溶液である。
【0055】
上述した発明に従って化合物を同定するために、酵母株を化合物で処理することは、特に、そのために提供された自動化実験システムでなされる。このようなシステムは、特別に製造された凹部を有するチャンバー、またはマイクロタイタープレート、エッペンドルフチューブまたは実験用ガラス容器を含んでもよい。自動化された実験システムは通常、ハイスループット速度用に設計される。それゆえに、自動化された実験システムを用いて実行される上述したような方法はまた、HTS(ハイスループットスクリーニング)ともいう。
【0056】
配列番号1は、GLUT4V85Mタンパク質のコード領域を含むポリヌクレオチド配
列を開示している。配列番号2は、GLUT4V85Mタンパク質のアミノ酸配列を開示している。配列番号3は、p4H7GLUT4V85Mベクターのポリヌクレオチド配列を開示している。
【実施例】
【0057】
酵母株の使用
本発明に記載された全ての酵母株は、CEN−PK2−1C株(MATa leu2−3,112 ura3−52 trp1−289 his3−Δ1MAL2−8c SUC2)から得た。ヘキソーストランスポーター遺伝子(HXT)が欠失した酵母株の製造は、Wieczorke等,FEBS Lett.464,123〜128(1999年)で説明されている:EBY−18ga(MATa Δhxt1−17 Δgal2 Δagt1 Δstl1 leu2−3,112 ura3−52 trp1−289 his3−Δ1MAL2−8c SUC2)、EBY.VW4000(MATa Δhxt1−17 Δgal2 Δagt1 Δmph2 Δmph3 Δstl1 leu2−3,112 ura3−52 trp1−289 his3−Δ1MAL2−8c SUC2)。培地は、1%酵母抽出物、および、2%ペプトン(YP)に基づくが、最小培地は、0.67%ディフコ(Difco)アミノ酸非含有酵母窒素ベース(YNB)で構成されており、栄養要求性に必要な添加剤と様々な炭素源を含む。酵母細胞を、回転式振盪機または寒天プレートで、好気性条件下で30℃で成長させた。細胞成長は、600nmで光学密度を測定することによって(OD600)、または、酵母コロニーの直径を測定することによってモニターした。
【0058】
グルコース摂取の決定
グルコース輸送をD−[U−14C]−グルコース(アマシャム(Amersham))の摂取として測定し、動力学的パラメーターをイーディー−ホフステープロットから決定した。遠心分離で細胞を分離し、リン酸緩衝液で洗浄し、リン酸緩衝液に1mlあたり60mg(湿重量)の濃度に再懸濁した。グルコース摂取は、グルコース濃度で0.2〜100mMと決定され、基質の特異的活性は、0.1〜55.5kBq/μmol-1と決定された。細胞とグルコース溶液を30℃で5分間プレインキュベートした。放射活性グルコースを細胞に添加することによってグルコース摂取を開始させた。5秒間インキュベートした後、氷冷したストップ緩衝液10ml(0.1MのKiPO4,pH6.5,500mMグルコース)を添加し、ガラス繊維フィルター(直径24mm,ワットマン(Whatman))でろ過によって細胞を即座に分離した。フィルターを即座に氷冷した緩衝液で3回洗浄し、取り込まれた放射活性を液体シンチレーションカウンターを用いて測定した。サイトカラシンBによる添加(最終濃度20μM,エタノールに溶解させる)を、阻害剤の存在下で、または、溶媒のみで15分間細胞をインキュベートした後の、50mMまたは100mMの放射活性グルコースを用いた15秒での摂取の分析で測定した。
【0059】
哺乳動物細胞由来のグルコーストランスポーターの新規の異種発現系が開発されている。この系は、コード遺伝子を破壊することで全ての内因性のグルコーストランスポーターが除去されたサッカロミセス・セレビジエ株に基づく。前記株は、すでに細胞質膜を通過してグルコースを摂取できなくなっており、グルコースを唯一の炭素源としては成長できない。ヒトまたはその他の哺乳動物の異種性のグルコーストランスポーター、活性型のGLUT1およびGLUT4を酵母の細胞質膜に統合するために、酵母株にさらなる突然変異を導入しなければならなかった。GLUT1は、fgy1−1突然変異株においてのみ活性であり、GLUT4は、fgy1−1 fgy4−X二重突然変異体においてのみ活性である。
【0060】
FGY1遺伝子は、クローニングされている。それは、サッカロミセス・セレビジエORF YMR212cである。機能に関しては、Fgy1またはFgy1によって生じた
産物のいずれかが、ヒトグルコーストランスポーターの活性を阻害すること、または、GLUT輸送小胞の細胞質膜への融合に関与することが結果で示されている。
【0061】
GLUT1とは異なり、哺乳動物細胞と同様に、酵母中のGLUT4タンパク質の大部分は細胞内構造に存在する。合計9種の劣性突然変異体が単離されており(fgy4−1〜fgy4−9)、それらにおいてGLUT4は、さらに細胞質膜に向けられ、fgy1−1突然変異が同時に起こる場合、活性になる。
【0062】
相補性分析には、Bruns等(Genes Dev.1994年;8:1087〜105)によって説明された挿入遺伝子バンクが用いられた。hxt fgy1−1株を、まずGLUT4プラスミドで形質転換し、次に、用いられた挿入遺伝子バンクで形質転換した。これに続き、グルコース培地で成長可能な形質転換体をスクリーニングした。研究された突然変異体の1つにおいて、ERG4遺伝子が破壊されていたことがわかった。ERG4は、エルゴステロール生合成酵素(オキシドレダクターゼ)をコードする。この酵素、ステロールC−24(28)−レダクターゼは、エルゴステロール生合成の最後の工程を触媒し、エルゴスタ−5,7,22,24,(28)−テトラエノールを、最終産物のエルゴステロールに変換する。この時点でErg4タンパク質は、8回膜貫通ドメインを含み、小胞体に存在する。エルゴステロール前駆体の酵母の膜への取り込みが、エルゴステロールの欠損を補填するため、erg4突然変異体は生存可能である。
【0063】
GLUT4機能へのErg4の阻害的影響は、hxt fgy1−1株におけるerg4の特異的な欠失によって確認された。得られた株(hxt fgy1−1Δerg4)は、SDY022とした。
【0064】
スプリット−ユビキチンシステムを用いたタンパク質の相互作用の分析により、ヒトGLUT4は、酵母Erg4と直接相互作用することが示された。それゆえに、小胞体における酵母Erg4タンパク質は、GLUT4のさらなる移動を直接防ぐか、または、移動および/または機能に関して重要な種々の方法でGLUT4を改変すると仮定することができる。
【0065】
同様に、hxtのみが無効となっている株、すなわちFGY1が機能的である株におけるERG4の欠失により、GLUT1は活性化するが、GLUT4は活性化しないことが示された。成長の分析の結果を表1に要約する。
【0066】
エルゴステロールそれ自体がGLUT4に対する負の影響を加えることを除外するために、成長の分析を、好気性条件下で、エルゴステロールを含む寒天プレートで行った。GLUT4で形質転換されたあらゆる酵母株は、これら条件下で成長できなかった(表2)。hxt fgy1−1株におけるGLUT1形質転換体は、好気性での成長とは対照的に、嫌気性条件下ではグルコースの成長を示さなかった。GLUT1形質転換体は、ERG4を欠失させた後のみ成長可能であった。
【0067】
インビトロでの変異誘発によるVal85のMetでの置換により、GLUT4をfgy1−1突然変異から独立させ、hxt erg4株においてでもGLUT4V85Mが機能的になった。この観察は、Fgy1は、このGLUTトランスポーターの2回膜貫通へリックス内に存在する位置に直接的または間接的に作用することを示す。
【0068】
表3は、Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen(DSMZ)(マシェローダーヴェグ1b 38124,ブラウンシュヴィック,ドイツ)に寄託された、本特許出願に関連する酵母株の説明を示す。
【0069】
【表1】

【0070】
【表2】

【0071】
【表3】

【0072】
【表4】

【0073】
【表5】

【0074】
【表6】

【0075】
【表7】

【0076】
【表8】

【0077】
【表9】

【0078】
【表10】

【0079】
【表11】

【0080】
【表12】

【0081】
【表13】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパク質GLUT4V85MをコードするDNA配列を含む、精製および単離されたポリヌクレオチド。
【請求項2】
下記の群:
a)配列番号1に記載のヌクレオチド配列、
b)ストリンジェントな条件下で配列番号1の配列にハイブリダイズし、タンパク質GLUT4V85Mをコードするヌクレオチド配列
のいずれかからの配列を含む、請求項1に記載のポリヌクレオチド。
【請求項3】
タンパク質GLUT4V85Mは、配列番号2に記載のアミノ酸配列を有する、請求項1または2に記載のポリヌクレオチド。
【請求項4】
タンパク質GLUT4V85Mのコード領域は、使用可能にプロモーターに連結している、請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項5】
酵母細胞で複製することができる、請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項6】
酵母細胞でタンパク質を発現するのに用いることができる、請求項5に記載のポリヌクレオチド。
【請求項7】
全てのグルコーストランスポーターが機能的ではなくなっており、機能的なErg4タンパク質を含まない、サッカロミセス・セレビジエ由来の酵母細胞。
【請求項8】
全てのグルコーストランスポーターが機能的ではなくなっており、機能的なFgy1タンパク質および機能的なErg4タンパク質を含まない、サッカロミセス・セレビジエ由来の酵母細胞。
【請求項9】
ERG4遺伝子は、完全に、または部分的に欠失している、請求項7または8に記載の酵母細胞。
【請求項10】
サッカロミセス・セレビジエDSM15187として寄託された、請求項7に記載の酵母細胞。
【請求項11】
サッカロミセス・セレビジエDSM15184として寄託された、請求項8または9に記載の酵母細胞。
【請求項12】
哺乳動物のGLUT1タンパク質またはGLUT4タンパク質を発現するための、請求項15〜18のいずれか一項に記載の酵母細胞の使用。
【請求項13】
ヒトGLUT4タンパク質またはヒトGLUT1タンパク質を発現するための、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
請求項1〜6のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドを含む、請求項7に記載の酵母細胞。
【請求項15】
タンパク質GLUT4V85Mを含む、請求項14に記載の酵母細胞。
【請求項16】
サッカロミセス・セレビジエDSM15185として寄託された、請求項14または1
5に記載の酵母細胞。
【請求項17】
下記の工程:
a)請求項7に記載の酵母細胞を提供する工程、
b)請求項5または6に記載のポリヌクレオチドを提供する工程、
c)a)に記載の酵母細胞をb)に記載のポリヌクレオチドで形質転換させる工程、
d)形質転換した酵母細胞を選択する工程、
e)必要に応じて、タンパク質GLUT4V85Mを発現させる工程、
を含む、請求項14〜16のいずれか一項に記載の酵母細胞の製造方法。
【請求項18】
請求項1〜6のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドを含む、請求項8または9に記載の酵母細胞。
【請求項19】
タンパク質GLUT4V85Mを含む、請求項18に記載の酵母細胞。
【請求項20】
サッカロミセス・セレビジエDSM15186として寄託された、請求項18または19に記載の酵母細胞。
【請求項21】
下記の工程:
a)請求項8または9に記載の酵母細胞を提供する工程、
b)請求項5または6に記載のポリヌクレオチドを提供する工程、
c)a)に記載の酵母細胞をb)に記載のポリヌクレオチドで形質転換させる工程、
d)形質転換した酵母細胞を選択する工程、
e)必要に応じて、タンパク質GLUT4V85Mを発現させる工程、
を含む、請求項18〜20のいずれか一項に記載の酵母細胞の製造方法。
【請求項22】
グルコーストランスポーターが全体として機能的ではなくなっており、請求項1〜6のいずれか一項にに記載のポリヌクレオチドを含む、酵母細胞。
【請求項23】
タンパク質GLUT4V85Mを含む、請求項22に記載の酵母細胞。
【請求項24】
サッカロミセス・セレビジエDSM15188として寄託された、請求項22または23に記載の酵母細胞。
【請求項25】
下記の工程:
a)グルコーストランスポーターが全体として機能的ではなくなっている酵母細胞を製造する工程、
b)請求項5または6に記載のポリヌクレオチドを提供する工程、
c)a)に記載の酵母細胞をb)に記載のポリヌクレオチドで形質転換させる工程、
d)形質転換した酵母細胞を選択する工程、
e)必要に応じて、タンパク質GLUT4V84Mを発現させる工程、
を含む、請求項22〜24のいずれか一項に記載の酵母細胞の製造方法。
【請求項26】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド配列によってコードされる、グルコーストランスポーターの機能的な活性を有するタンパク質。
【請求項27】
配列番号2に記載のアミノ酸配列を含む、請求項13に記載のタンパク質。
【請求項28】
下記の工程:
a)請求項14〜17のいずれか一項に記載の酵母細胞を提供する工程、
b)化学物質を提供する工程、
c)a)に記載の酵母と、b)に記載の化学物質とを接触させる工程、
d)c)に記載の酵母によるグルコース摂取を決定する工程、
e)b)に記載の化学物質と接触していないa)に記載の酵母細胞で検出されたグルコース摂取値に対するd)で検出されたグルコース摂取値と、d)に記載の、酵母で摂取されるグルコースの量の増加を引き起こす化合物がGLUT4タンパク質の活性を刺激することとを関連付ける工程、
を含む、GLUT4タンパク質活性を刺激する化合物を同定する方法。
【請求項29】
請求項28に記載の方法によって同定された化合物、および医薬を製剤化するための添加剤および賦形剤を含む医薬。
【請求項30】
Iおよび/またはII型糖尿病の治療のための医薬を製造するための、請求項28に記載の方法によって同定された化合物の使用。
【請求項31】
下記の工程:
a)請求項7〜10のいずれか一項に記載のGLUT4タンパク質を含む酵母細胞を提供する工程、
b)化学物質を提供する工程、
c)a)に記載の酵母とb)に記載の化学物質とを接触させる工程、
d)c)に記載の酵母によるグルコース摂取を決定する工程、
e)b)に記載の化学物質と接触していないa)に記載の酵母細胞で検出されたグルコース摂取値に対するd)で検出されたグルコース摂取値と、d)に記載の、酵母で摂取されるグルコースの量の増加を引き起こす化合物がタンパク質Fgy1の活性を刺激することとを関連付ける工程、
を含む、Fgy1遺伝子に対応するタンパク質を阻害する化合物を同定する方法。
【請求項32】
請求項31に記載の方法によって同定された化合物、および医薬を製剤化するための添加剤および賦形剤を含む医薬。
【請求項33】
糖尿病を治療するための医薬を製造するための、請求項31に記載の方法によって同定された化合物の使用。
【請求項34】
下記の工程:
a)請求項22〜25のいずれか一項に記載の酵母細胞を提供する工程、
b)化学物質を提供する工程、
c)a)に記載の酵母とb)に記載の化学物質とを接触させる工程、
d)c)に記載の酵母によるグルコース摂取を決定する工程、
e)b)に記載の化学物質と接触していないa)に記載の酵母細胞で検出されたグルコース摂取値に対するd)で検出されたグルコース摂取値と、d)に記載の、酵母で摂取されるグルコースの量の増加を引き起こす化合物がタンパク質Erg4の活性を阻害することとを関連付ける工程、
を含む、ERG4遺伝子によってコードされるタンパク質を阻害する化合物を同定する方法。
【請求項35】
請求項34に記載の方法によって同定された化合物、および医薬を製剤化するための添加剤および賦形剤を含む医薬。
【請求項36】
糖尿病を治療するための医薬を製造するための、請求項34に記載の方法によって同定された化合物の使用。

【公表番号】特表2006−517088(P2006−517088A)
【公表日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−536979(P2004−536979)
【出願日】平成15年9月4日(2003.9.4)
【国際出願番号】PCT/EP2003/009812
【国際公開番号】WO2004/026907
【国際公開日】平成16年4月1日(2004.4.1)
【出願人】(397056695)サノフィ−アベンティス・ドイチュラント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (456)
【Fターム(参考)】