説明

哺乳動物細胞のための無血清細胞培養培地

本発明は、無血清培地中で培養した哺乳動物細胞中でタンパク質を製造するための方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、例えばヒト成長ホルモン(hGH)等の組換えタンパク質を産出している細胞を培養するための無血清培養条件下での哺乳動物細胞の培養の分野にある。
【背景技術】
【0002】
本発明は、培養中の哺乳動物細胞の成長および維持のための無血清培地に関する。
【0003】
細胞培養は、今日、ウイルスワクチン、モノクローナル抗体、非抗体免疫調節物、ポリペプチド成長因子、ホルモン、酵素、腫瘍特異的抗原等の多様な生物学的に活性な産物の産出のために広く使用されている。これらの産物は、通常の、または形質転換された、および遺伝子操作された細胞によって産出される。
【0004】
細胞を培養するために、過去には、培養培地には、生物学的に活性な産物を産出する全ての哺乳動物細胞株の成長および維持のための一般的な栄養分として働く血清が補充された。血清には、ホルモン、成長因子、担体タンパク質、接着および拡散因子、栄養素、微量元素などが含まれる。培養培地は通常、約10%までの、ウシ(calf)胎児血清(FCS)とも呼ばれるウシ(bovine)胎児血清(FBS)のような動物血清を含んだ。
【0005】
広く使用されてはいるが、血清は多くの制限を有する。細胞によって産出される目的の所望される限られた量のタンパク質を干渉する高いレベルの多数のタンパク質を含む。血清に由来するこれらのタンパク質は、目的のタンパク質の精製等の下流の処理の間に産物から分離されなければならず、工程を複雑にし、コストを増加させる。
【0006】
長期の潜伏またはインキュベーション期間を有するウシの伝染性神経変性疾患であるBSE(ウシ海綿状脳症)の出現によって、生物学的に活性な産物の産出における動物由来血清の使用に関する規制の懸念事項が持ち上がった。
【0007】
したがって、生物学的に活性な産物の産出の間、細胞の成長を支持し、且つ細胞を維持する動物血清を含まない代替培地の開発に対する大きな要求が存在する。
【0008】
一般的に、細胞培養培地には、アミノ酸、ビタミン、塩、脂肪酸および更なる化合物等の異なるカテゴリーの多くの成分が含まれる。
アミノ酸:例えば米国特許第6,048,728号(Inlow等)は、以下のアミノ酸が細胞培養培地中で使用され得ることを開示する。アラニン、アルギニン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トリプトファン、チロシン、スレオニンおよびバリン。
ビタミン:例えば、米国特許第2003/0096414号(Clccarone等)または米国特許第5,811,299号(Renner等)が、以下のビタミンが細胞培養培地中で使用され得ることを開示する。ビオチン、パントテン酸、塩化コリン、葉酸、ミオ−イノシトール、ナイアシンアミド、ピリドキシン、リボフラビン、ビタミンB12、チアミン、プトレシン。
塩:例えば、米国特許第6,399,381号(Blum等)は、CaCl2、KCl、MgCl2、NaCl、一塩基リン酸ナトリウム、二塩基リン酸ナトリウム、亜セレン酸ナトリウム、CuSO4、ZnCl2を含む培地を開示する。培養培地中で使用され得る無機塩を開示している文書の他の例は、米国特許第2003/0153042号(Arnold等)であり、CaCl2、KCl、MgCl2、NaCl、一塩基リン酸ナトリウム、二塩基リン酸ナトリウム、CuCl2・2H2O、ZnCl2を含む培地を開示する。
脂肪酸:培地中で使用されることが公知の脂肪酸は、アラキドン酸、リノール酸、オレイン酸、ラウリル酸、ミリスチン酸、ならびにミリスチル−βシクロデキストリンであり、例えば米国特許第5,045,468号(Darfler)を参照のこと。シクロデキストリンは本質的に脂質ではないが、脂質と複合体を形成する能力があるので、細胞培養培地中で脂質を可溶化するために使用されることに留意すべきである。
特に無血清細胞培養培地の枠において使用される更なる成分は、グルコース、グルタミン、Na−ピルビン酸、インスリンまたはエタノールアミン等の化合物(例えば欧州特許第274445号)、またはPluronic F68等の保護剤である。Pluronic(商標)F68(Poloxamer 188としても知られている)は、エチレンオキシド(EO)およびプロピレンオキシド(PO)のブロックコポリマーである。
【0009】
標準の「基礎培地(basic media)」も当業者に公知である。これらの培地はすでに上述したいくつかの培地成分を含む。広く適用されるかかる培地の例は、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、DMEM F12(1:1)、ハム栄養素混合物F−10、ロズウェル・パーク・メモリアル・インスティチュート培地(RPMI)、MCDB 131またはウイリアム培地Eである。これらの市販されている培地は、例えばギブコ(Gibco)、インビトロジェン(Invitrogen)から入手可能である。
【0010】
亜鉛(Zn)および銅(Cu)等の金属は代謝反応に関与する(VaileeおよびFalohuk,1993、またはLindner、1991)。
【0011】
亜鉛は多数の高分子の構造および機能に対して、および多くの酵素反応に必須であり、タンパク質の適切なフォールディングにおいて触媒的、共触媒的または構造的役割を果たす。Zn−ATPは生体アミン合成およびモノアミンオキシダーゼ代謝に必須の2つの補酵素であるピリドキサール−5−リン酸およびフラビンアデノシンジヌクレオチド(FAD)の合成のために必要である。
【0012】
遊離ラジカルによる傷害から生物学的構造を保護することにおける亜鉛の活性は、スーパーオキシドジスムターゼの必須成分として、チオールに対する保護剤として、そして遊離ラジカルを形成するための化学基の鉄との相互作用を防止することにおいて、遊離ラジカルスカベンジャーでもある金属タンパク質の十分なレベルを維持するいくつかの因子によるものであり得る。
【0013】
更に、Znの存在は脂質過酸化を防止する。亜鉛は、チューブリン重合化のエフェクターでもあり、インビトロでアクチンフィラメント形成および安定化において働く。亜鉛は、転写タンパク質における一般的なモチーフである、DNA結合タンパク質の亜鉛フィンガーモチーフの一成分でもある。
【0014】
亜鉛イオンは、主にタンパク質および核酸との複合体の形態で存在し、そして中間代謝のすべての観点、遺伝情報の発現の伝達および調節、貯蔵、ペプチドホルモンの合成および作用、およびクロマチンおよび生体膜の構造維持に関与する。
【0015】
銅もまた多くの細胞酵素の機能のために重要な微量元素である。銅イオンは、酸化Cu(II)または還元Cu(I)という異なる酸化還元状態をとり、これによってこの金属が酵素の酸化還元化学における触媒共因子として、細胞の生理機能におけるきわめて重要な役割を果たす。銅イオンは銅オキシダーゼの一群中で機能し、これには、シトクロームcオキシダーゼ、チロシナーゼ、ドーパミン−β−モノオキシゲナーゼ、アミンオキシダーゼおよびリシルオキシダーゼが含まれる。銅はまた、ミトコンドリア呼吸、セルロプラスミンの一成分としての鉄ホメオスタシス、フリーラジカルスカベンジングおよびエラスチン架橋にも関与する。
【0016】
亜鉛または銅イオン等の金属イオンを含む無血清培地は、例えば米国特許第6,048,728号(Inlow等)、米国特許第4,767,704号(Cleveland等)または国際特許第WO01/16294号(Life Technologies Inc.)から、当業界において公知である。しかしながら、これらの文書は、標準の産出培地に特定の濃度で加えた場合のこれらのイオンの産出増強効果を示していない。
【0017】
治療タンパク質またはワクチン等の生物学的に活性な産物の開発および供給のために、多くの量が産出されなければならない。ポリペプチドの産出のために広く使用されている適切な細胞は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である。
【0018】
CHO細胞は最初に、雌のチャイニーズハムスターの卵巣の生検から、Puck(j.Exp.Med.108,945,1958)によって培養された。これらの元来の細胞から、多数の副株が、多様な特徴をもって調製された。これらのCHO細胞株の1つ、CHO−K1は、プロリン要求性であり、ジヒドロホレートレダクターゼ(DHFR)遺伝子に対する二倍体である。この細胞株に由来する他の株は、DHFR欠損CHO細胞株(CHO DUK B11)であり(PNAS 77,1980,4216−4220)、1つのDHFR遺伝子における突然変異と、他の遺伝子のその後の欠損の結果として、DHFR機能の欠損によって特徴づけられる。
【0019】
ヒトへの投与を意図されたタンパク質を産出するために頻繁に使用される更なる細胞は、ヒト線維肉腫細胞株HT1080またはヒト胎児由来腎臓細胞株293等のヒト細胞株である。
【0020】
マウスC127細胞株はまた、組換えタンパク質を産出するために非常に適切である(Carter等.,1989,Oka及びRupp,1990)。
【0021】
注目の1つの治療タンパク質は成長ホルモンである。ソマトロピン(INN)またはソマトトロピンとしても知られているヒト成長ホルモン(hGH)は、下垂体前葉の成長ホルモン細胞によって産出および分泌されるタンパク質ホルモンである。ヒト成長ホルモンは、タンパク質、炭水化物および脂質の代謝におけるその効果を介して、小児における体成長および大人における代謝において主要な役割を果たす。
【0022】
ヒト成長ホルモンは、一方ではCys−53とCys−165の間で分子中に大ループを形成し、他方ではCys−182およびCys−189の間でC末端近くに小ループを形成する2つのジスルフィド結合を有する191アミノ酸の単一ポリペプチド鎖である(Bewly等,1972)。アミノ酸配列を確認したDNA配列が、Martial等によって報告された(1979)。精製hGHは、その凍結乾燥形態において白色非結晶質性粉末であり、6.5〜8.5の範囲のpHの水性緩衝液に容易に溶ける(濃度>10mg/L)。
【0023】
溶液中、hGHは、ダイマーおよびより高分子量オリゴマーとして小画分にて主にモノマーとして存在する。特定の条件下でhGHを誘導し、多量のダイマー、トリマーおよびより高次のオリゴマーを形成することができる。
【0024】
いくつかのhGHの誘導体が公知であり、天然の誘導体、変異体および代謝産物、生物合成hGHの主分解産物、および遺伝的方法によって産出されたhGHの遺伝子操作誘導体が含まれる。hGHの天然の誘導体の1つの例は、胎盤にて見られる成長ホルモンの変異体であるGH−Vである。遺伝子座の他のメンバーは、Chen等(1989)により発表されている。体内において持続性であるように設計された誘導体を含むhGHの任意の誘導体は、hGHの生物活性を保有する限り、本発明の目的のために使用することができる。
【0025】
メチオニルhGHは、組換えDNA技術を介して産出されるhGHの第一の形態であった。本化合物は実際に、そのN末端にて1つの更なるメチオニン残基を有するhGHの誘導体である(Goeddel等,1979)。
【0026】
20−K−hGHと呼ばれるhGHの天然の変異体が、下垂体ならびに血流にて発生することが報告された(Lewis等,1978;Lewi等,1980)。Glu−32からGln−46の15アミノ酸残基を欠く本化合物は、メッセンジャーリボ核酸の選択的スプライシングから生じる(DeNot等,1981)。本化合物は、すべてではないが多くのhGHの生物学的特性を共有する。
【0027】
20−K−hGHは下垂体にて造られ、血中に分泌され、大人の成長ホルモン産出量の約5%、小児の成長ホルモン産出量の約20%を補う。それは22kD成長ホルモンと同様の成長促進活性を有し、22kD形態と同等またはより大きな量の脂肪分解活性を有することが報告されてきた。それは22kD成長ホルモンと同等の親和力で成長ホルモンレセプターと結合し、22kDホルモンの10分の1の乳腺刺激性(プロラクチン様)生物活性を有す。22kDとは異なり、20−k−hGHは弱い抗インスリン活性を有す。
【0028】
多数のhGHの誘導体は、分子のタンパク質分解改変より発生する。hGHの代謝に関する主経路はタンパク質分解に関与する。残基130〜150あたりのhGHの領域は、非常にタンパク質分解を受けやすく、この領域にてニックまたは欠損を有するhGHのいくつかの誘導体が発表された(Thorlaclus-Ussing,1987)。この領域はhGHの大ループ中であり、そこで結合したペプチドの開裂は、Cys−53とCys−165でのジスルフィド結合を介して連結した2つの鎖の産出をもたらす。多くのこれらの2−鎖形態は増加した生物活性を有することが報告されている(Singh等,1974)。多くのヒト成長ホルモンの誘導体は酵素の使用を介して人工的に産出される。酵素トリプシンおよびサブチリシン、ならびにその他を使用して、分子の至る所の種々の点にてhGHが修飾された(Lewis等,1977;Graff等,1982)。2−鎖同化促進タンパク質(2−CAP)と呼ばれる1つのかかる誘導体が、トリプシンを用いるhGHの制御されたタンパク質分解を介して形成された(Becker等,1989)。2−CAPは、原型のhGH分子とは非常に異なる生物学的特性を有することが見出され、hGHの成長促進活性は大部分が残っており、炭水化物代謝におけるほとんどの効果が無効であった。
【0029】
タンパク質中のアスパラギンおよびグルタミン残基は、適切な条件下で脱アミド反応を受けやすい。下垂体hGHは、この型の反応を受けることが示されており、Asn−152のアスパラギン酸への変換、またより少ない程度で、Gln−137のグルタミン酸への変換がもたらされる(Lewis等,1981)。脱アミド化hGHは、酵素スブチリジンでのタンパク質分解に対して異なった感受性を有することが示されており、脱アミド化がhGHのタンパク質分解開裂に関して生理学的な意義を有することを示唆している。生合成hGHは特定の貯蔵条件下で分解し、異なるアスパラギン(Asn−149)で脱アミド化をもたらすことが知られている。これは、脱アミド化の主要な部位であるが、Asn−152での脱アミド化もまた見られる(Becker等,1988)。Gln−137での脱アミド化は、生合成hGHでは報告されていない。
【0030】
タンパク質中のメチオニン残基は、主にスルホキシドへ酸化を受けやすい。下垂体由来および生合成hGHは、共にMet−14およびMet−125にてスルホキシド化を受ける(Becker等,1988)。またMet−170での酸化は、下垂体由来では報告されたが、生合成hGHでは報告されなかった。脱アミド化hGHおよびMet−14スルホキシドhGHは、共に完全な生物活性を示すことが見出された(Becker等,1988)。
【0031】
hGHの切り詰め形態が、酵素の作用を介してまたは遺伝的方法によって産出された。トリプシンの制御作用によって産出された2−CAPは、hGHのN末端の最初の8つの残基を除去されたものである。hGHの他の切り詰めバージョンは、適宜宿主中での発現の前に遺伝子を修飾することによって産出された。最初の13残基が除去されて、ポリペプチド鎖は開裂されない、異なる生物学的特性を有する誘導体が産出された(Gertler等,1986)。
【0032】
ヒト成長ホルモンは元来、死体の下垂体腺から得られたが、これらの調製物は電気泳動上均質ではなく、抗体は50%のオーダーの純度の調製物で処理した患者の血清中で現れ、その免疫原性は不活性成分に起因している。組換えDNA技術によって、多数の異なるシステムにて制限のないhGHを供給する産出が可能になった。培養培地からのhGHの精製は、ほんの少量の混成タンパク質の存在によって促進される。実際にhGHは、逆相HPLCカラム上での単一の精製段階によって、研究室規模にて精製可能であることが示されている(Hslung等, 1989)。
【0033】
組換えヒト成長ホルモン、rhGHは、SEROSTIM(商標)として、セローノ インターナショナルS.A.(Serono International S.A.)によって生産され、AIDS患者における体重減少および消耗を処置するために、早期のFDA認可がなされた製品である。SAIZEN(商標)は、小児におけるGH欠損、少女におけるターナー症候群、ならびに小児における慢性腎不全を適応とする組換えヒト成長ホルモンである。ジェネンテック社(Genentech,Inc.)(South San Francisco,CA)によって生産された、PROTROPIN(商標)は、N末端にて追加的なメチオニン残基を有する天然配列hGHからの構造においてわずかに異なる。組換えhGHは一般的に、凍結乾燥形態にて、hGHと、例えばグリシンおよびマンニトール等の追加の賦形剤を含むバイアルとして市販されている。随伴希釈バイアルを提供することによって、患者が投薬前に、所望の濃度まで製品を再構築することを可能にする。組換えhGHは、予め充填されたシリンジ等のような他の周知の様式においても販売可能である。
【0034】
一般的に、ヒトにおける組換え天然配列hGH、組換えN−メチオニル−hGH、または下垂体由来物質の薬物動態学的または生物学的活性において有意な差は観察されていない(Moore等,1988;Jorgensson等,1988)。
【0035】
成長ホルモンを使用する多様な医療適用に関して、細胞培養中、特に無血清細胞培養工程にて、十分な量を産出する有効かつ安全な方法に対する必要性が存在する。
【0036】
無血清培地は当業界において発表されている。例えば、米国特許第6,162,643号は、HECK−109と呼ばれる、微量の硫酸銅および塩化亜鉛を含む無血清基礎培地を発表している。本培地は特に、ヒト移植のための組織産出の目的で、ケラチノサイト等の正常ヒト細胞の一次および二次培養のために設計される。細胞株中のインビトロでの組換えヒトタンパク質の発現は本米国特許では言及されていない。
【0037】
米国特許第5,324,656号は、微量の硫酸銅および塩化亜鉛を含むMCDB120およびMCDB131Mと呼ばれる無血清基礎培地を開示する。この培地は特に、ヒト筋肉未分化細胞の分化を防止する目的で、これらの細胞のインビトロ培養に関して設計される。組換えヒトタンパク質の産出は、当該文書の枠の中では予想はされない。
【0038】
英国特許第2 196 348号は、ハイブリドーマおよび骨髄腫細胞のインビトロ培養に対する合成培地を発表する。この培地は、銅、亜鉛および鉄イオンを含む。本培地中でのハイブリドーマまたは骨髄腫細胞の培養は、モノクローナル抗体の製造の目的に限られる。
【0039】
米国特許第6,103,529号は、動物細胞のインビトロ培養のための無血清細胞培養培地処方を提供する。動物細胞は、ウイルス、モノクローナル抗体、ホルモンまたは成長因子の産出のために使用され得る。しかしながら、成長ホルモンの産出は当該文書では言及されていない。
【0040】
米国特許第6,048,728号は、抗体等の天然または組換え産物を産出するために動物細胞の培養のためのCo−、Zn−およびFe−イオンを含む無血清細胞培養培地を開示する。培養細胞によって産出されるかかる産物には、成長ホルモンまたは成長因子は含まれず、培養中の細胞成長を増強するために無血清培地の成分としてのみ言及されている。
【0041】
米国特許第5,316,938号は、WCM5と呼ばれる、クエン酸鉄、硫酸亜鉛および硫酸銅を含むチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞に対する生化学的に定義された培養培地を開示する。培地は特に、CHO細胞中の抗体およびtPA産出に関して設計されている。
【0042】
米国特許第5,122,459号は、特にCHO細胞の培養に適切な亜鉛および鉄イオンを含む無血清培養培地中で組換えタンパク質を産出するための方法を発表する。成長ホルモンの産出は当該文書では言及されていない。
【0043】
したがって、本発明の基礎をなす問題は、成長ホルモン、特にヒト成長ホルモン(hGH)の効果的な産出のための無血清細胞培養培地を提供することである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0044】
発明の概要
本発明は、動物血清に由来する成分を含まず、同時に培養中の哺乳動物細胞の細胞成長および維持に非常に有効であり、特に組換えタンパク質の産出を可能にする、細胞培養培地の開発に基づく。
【課題を解決するための手段】
【0045】
したがって、第一の観点において、本発明は、微量で亜鉛および/または銅を含む動物血清に由来する成分を含まない細胞培養培地に関する。好ましくは、本発明の培地はさらに、微量で鉄イオンを含む。
【0046】
第二の観点において、本発明は、本発明の培地中で注目のタンパク質を発現する細胞を培養する段階を含む、タンパク質を産出するための方法に関する。
【0047】
本発明の第三の観点は、注目のタンパク質を産出するための本発明にかかる培地の使用に関する。
【0048】
本発明の第四の観点は、注目のポリペプチドを産出する段階の間、培養中の細胞を維持するための本発明にかかる培地の使用に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
発明の詳細な説明
本発明は、動物血清を含まない細胞培養培地の開発に基づく。
本発明による動物血清を含まない細胞培養培地には、
0.2〜1.75μMの範囲の濃度にある亜鉛(Zn)、および/または
10〜75nMの範囲の濃度にある銅(Cu)、および/または
3〜10μMの範囲の濃度にある鉄イオン(Fe)
が含まれる。
【0050】
後述の実施例で示すように、微量のZnおよび/またはCuの標準培地への添加は、注目の分泌タンパク質を発現する細胞の生産性の増加をもたらす。
【0051】
上記に認定した濃度にあるZnおよびCuを共に添加は、C127細胞内での組換えヒト成長ホルモン(GH)の、コントロール(標準のDMEM中で培養した同一の細胞)と比較して60%を超える生産性の増加を導いた。GH発現細胞を、上記で認定した濃度にあるZn、CuおよびFeイオンを含む培地中で培養した場合、生産性がコントロールと比較して約70%まで増加した。
【0052】
本発明の培地の金属イオンの好適な濃度範囲は以下のとおりである。
約0.2、0.25、0.30、0.35、0.40、0.45、0.5、0.55、0.60、0.65、0.70、0.75、0.80、0.85、0.90、0.95、1、1.05、1.1、1.15、1.2、1.25、1.3、1.35、1.4、1.45、1.5、1.55、1.6、1.65、1.7、1.75μMでの亜鉛。
好適には、亜鉛は約0.5μMまたは約1.5μMで含まれる。また亜鉛が硫酸亜鉛として含まれることも好適である。
約10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70または75nMでの銅。
好適には、銅は約25nMで含まれる。銅が硫酸銅として含まれることも好適である。
鉄イオンは、約1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、4.8、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5または10μMで含まれる。
好適には、鉄イオンは、約5または6μMにて含まれる。鉄イオンは、好適にはクエン酸鉄および/または硝酸鉄として含んでもよく、クエン酸鉄が細胞培養培地中に含まれる鉄イオンのほとんどを占めることがさらに好適である。培地は例えば、約5μMのクエン酸鉄と約1μMの硝酸鉄を含み得る。
【0053】
好適な態様において、培地にはさらに、基礎培地の成分が含まれる。培地が、基礎培地としてダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)を含むことが好適である。標準DMEMの組成は後述の実施例で報告される。
【0054】
本発明の第二の観点は、本発明の培地中の注目のタンパク質を発現する細胞を培養する段階を含む、タンパク質の産出のための方法に関する。
【0055】
本発明の方法の培養段階は、ペトリ皿、T−フラスコまたはローラーボトル等の任意の適切な環境にて実施してよいが、例えばバイオリアクター等のより大容量を有す容器にて実施してもよい。
【0056】
本発明のタンパク質は、使用される特定の細胞型に適する任意のプロモーターを用いて発現され得る。非常に好適な態様では、タンパク質をメタロチオネイン(MT)プロモーターから発現させる。マウス細胞をタンパク質産出に使用する場合、プロモーターは、好ましくはマウスMT−1プロモーターである。
【0057】
好適には、当該方法はさらに、当該注目のタンパク質を含む培地を回収する段階を含む。
【0058】
好適な態様では、当該方法はさらに、当該注目のタンパク質を単離することを含む。
【0059】
さらに好適な態様では、当該方法はさらに、医薬組成物を得るために、医薬的に許容され得る担体と共に当該単離タンパク質を製剤化することを含む。
【0060】
第三の観点は、本発明は、注目のポリペプチドを産出するための本発明による培地の使用に関する。
【0061】
第四の観点は、本発明は、注目のポリペプチドの産出段階の間、培養中の細胞を維持するための、本発明の培地の使用に関する。
【0062】
本発明の多様な観点の枠において使用すべき細胞は、好適には哺乳動物細胞である。これらは、ヒトまたは動物由来であってもよい。本発明による方法にて培養可能である哺乳動物細胞の例には、例えばマウスC127細胞、3T3細胞、COS細胞、ヒト骨肉腫細胞、MRC−5細胞、BHK細胞、VERO細胞、CHO(チャイニーズハムスター卵巣)細胞、HEK293細胞、rHEK293細胞、正常ヒト線維芽細胞、ストローマ細胞、肝臓細胞、またはPER.C6細胞が含まれる。本発明による方法において培養され得るハイブリドーマの例には、例えばDA4,4細胞、123A細胞、127A細胞、GAMMA細胞および57−9−B細胞が含まれる。
【0063】
本発明にしたがって、マウスC127細胞を培養することが好適である。
【0064】
本発明にしたがって培養された細胞は、懸濁物中で、または足場依存性細胞に関しては固体支持体に接着させて成長し得る。マイクロキャリアおよびFibra−Cal(商標)ディスクは、足場依存性細胞の成長のために哺乳動物細胞培養中で使用され、タンパク質の工業的生産のために確立された技術的プラットフォームの1つである(例えばBohak等.1987;Patti等.1994を参照のこと)。
【0065】
本発明の方法は好適には、注目のポリペプチドを産出するために供される。したがって、本発明の培地は小規模または大規模いずれかで、注目のポリペプチドまたはタンパク質(産出が所望される任意のポリペペプチドであってよい)のために使用される。
【0066】
注目のポリペプチドは、例えば天然に分泌されるタンパク質、正常の細胞質タンパク質、正常の膜貫通タンパク質、またはヒトまたはヒト化抗体であってよい。注目のタンパク質が天然の細胞質または天然の膜貫通タンパク質である場合、タンパク質は好適には、溶解性になるように、及び分泌を開始させるために、すなわち、その前に、またはその(溶解性または細胞外)断片の前に、シグナルペプチドを配置することによって)遺伝子操作される。
【0067】
注目のポリペプチドは、任意起源であってもよい。注目の好適なポリペプチドはヒト由来であり、より好適には注目のタンパク質は治療的なタンパク質である。
【0068】
好適には、注目のタンパク質は、ホルモン、サイトカイン−結合タンパク質、インターフェロン、可溶性レセプターまたは抗体から選択される。
【0069】
本発明の方法により産出され得る治療的タンパク質には、例えば絨毛性ゴナドトロピン、卵胞刺激ホルモン、ルトロピン−胎盤性性腺刺激ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、成長ホルモン、特にヒト成長ホルモン、インターフェロン(例えばインターフェロンβ−1a、インターフェロンβ−1b)、インターフェロンレセプター(例えばインターフェロンγレセプター)、TNFレセプターp55およびp75、並びにそれらの可溶性変異体、TACIレセプターおよびそのFc融合タンパク質、インターロイキン(例えばインターロイキン−2、インターロイキン−11)、インターロイキン結合タンパク質(例えばインターロイキン−18結合タンパク質)、抗−CD11a抗体、エリスロポエチン、顆粒球コロニー刺激因子、顆粒球−マクロファージコロニー−刺激因子、下垂体ペプチドホルモン、閉経期ゴナドトロピン、インスリン様成長因子(例えばソマトメジン−C)、ケラチノサイト成長因子、グリア細胞株由来神経栄養因子、トロンボモジュリン、塩基性線維芽細胞成長因子、インスリン、第VIII因子、ソマトロピン、骨形態形成タンパク質−2、血小板由来成長因子、ヒルジン、エポイエチン、組換えLFA−3/IgG1融合タンパク質、グルコセレブロシダーゼおよびこれらの突然変異タンパク質、断片、可溶性形態、機能的誘導体、融合タンパク質が含まれる。
【0070】
好適な態様では、ポリペプチドは、絨毛性ゴナドトロピン(CG)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、ルトロピン−胎盤性性腺刺激ホルモン(LH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、ヒト成長ホルモン(hGH)、インターフェロン(例えば、インターフェロンβ−1a、インターフェロンβ−1b)、インターフェロンレセプター(例えばインターフェロンγレセプター)、TNFレセプターp55およびp75、インターロイキン(例えばインターロイキン−2、インターロイキン−11)、インターロイキン結合タンパク質(例えばインターロイキン−18結合タンパク質)、抗−CD11a抗体およびこれらの突然変異タンパク質、断片、可溶性形態、機能的誘導体、融合タンパク質からなる群から選択される。
【0071】
さらに好適な注目のポリペプチドには、例えばエリスロポエチン、顆粒球コロニー刺激因子、顆粒球−マクロファージコロニー−刺激因子、下垂体ペプチドホルモン、閉経期ゴナドトロピン、インスリン様成長因子(例えばソマトメジン−C)、ケラチノサイト成長因子、グリア細胞株由来神経栄養因子、トロンボモジュリン、塩基性線維芽細胞成長因子、インスリン、第VIII因子、ソマトロピン、骨形態形成タンパク質−2、血小板由来成長因子、ヒルジン、エポイエチン、組換えLFA−3/IgG1融合タンパク質、グルコセレブロシダーゼおよびこれらの突然変異タンパク質、断片、可溶性形態、機能的誘導体、融合タンパク質が含まれる。
【0072】
本発明の方法にて産出される注目のタンパク質は、医薬的に許容され得る担体と共に製剤化されるべきであり、本方法の結果、医薬組成物となる。
【0073】
「医薬的に許容され得る」の定義は、活性成分の生物活性の効果を干渉せず、投与される宿主に対して毒性ではない任意の担体を含むことを意味する。例えば、非経口投与のために、活性タンパク質(群)を、生理食塩水、デキストロース溶液、血清アルブミンおよびリンガー液等のビヒクル中で、注入用の単位投与形態に製剤化してよい。
【0074】
その後、本発明により製剤化された医薬組成物は、多様な方法にて個体に投与され得る。投与経路には、皮内、経皮(例えば徐放製剤)、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、経口、頭蓋内、硬膜外、局所、経腸および経鼻経路が含まれる。任意の他の医薬的に有効な投与経路は、例えば内皮または上皮組織を介した吸収、または活性剤をコードしているDNA分子を患者に(例えばベクターを介して)投与し、当該活性剤がインビボで発現および分泌される遺伝子治療によって使用され得る。さらに、本発明によるタンパク質(類)は、医薬的に許容され得る界面活性剤、賦形剤、担体、希釈剤およびビヒクル等の生物学的に活性な試薬である他の成分と共に投与され得る。
【0075】
非経口(例えば静脈内、皮内、筋肉内)投与のために、活性タンパク質(類)は、医薬的に許容され得る非経口ビヒクル(例えば水、生理食塩水、デキストロース溶液)、および等張性(例えばマンニトール)または化学安定性(例えば保存剤および緩衝剤)を維持するための添加物とともに、溶液、懸濁剤、エマルションまたは凍結乾燥粉末として製剤化され得る。製剤は、一般的に使用される技術によって滅菌される。
【0076】
本発明にしたがって、成長ホルモンを産出するために、本発明の培地を使用することが非常に好適である。
【0077】
GHは天然物であってよく、すなわち天然に存在するGHであってよい。好適には、産出させるGHは、ヒト由来である。GHは可溶性の分泌タンパク質であるので、その天然のシグナルペプチドを用いて、またはヘテロシグナルペプチド、すなわち、使用する特定の発現系においてより有効であり得る他の分泌タンパク質に由来するシグナルペプチドを用いて、細胞培養上清に放出される。
【0078】
語句「成長ホルモン」は、本明細書で「GH」と同義に使用される。本語句には、野生または天然GH、組換え的に産出されたGH、ならびに「技術背景」にて詳細に示したGH変異体が含まれる。本明細書において語句「GH」はさらに、変異タンパク質、機能的誘導体、活性画分、融合タンパク質、環状置換タンパク質およびGHの塩が含まれる。GHは好適にはヒトであるが、他の種、特に哺乳動物に由来してもよい。
【0079】
本明細書において語句「突然変異タンパク質」は、得られる産物の活性を、野生型のGHのものと比較して有意に減少させずに、1つ以上の天然のGHのアミノ酸残基が、異なるアミノ酸残基によって置換されるか、または欠損するか、或いは1つ以上のアミノ酸残基がGHの天然の配列に付加される、GHの類似体を意味する。これらの突然変異タンパク質は、公知の合成によって、および/または部位特異的突然変異技術によって、またはそのために適切である任意の他の公知の技術によって調製される。
【0080】
本発明による突然変異タンパク質には、DNAまたはRNAにハイブリダイズする、ストリンジェント条件下でGHをコードしている、DNAまたはRNA等の核酸によってコードされたタンパク質が含まれる。GHをコードしているDNAは当業界において公知である。語句「ストリンジェント条件」は、通常の当業者が「ストリンジェント」として慣用的に言及する、ハイブダイゼーションおよびその後の洗浄条件を意味する。Ausubel等.,Current Protocols in Molecular Biology、上記、Interscience,N.Y.,§§6.3および6.4(1987、1992)を参照のこと。ストリンジェント条件の例には、制限されずに、研究下でのハイブリッドの算出Tmより12〜20℃下回る条件(例えば2×SSCおよび0.5%SDS、5分間、2×SSCおよび0.1%SDS、15分間;0.1×SSCおよび0.5% SDS 37℃にて30〜60分間、ついで0.1×SSCおよび0.5% SDS、68℃にて30〜60分間中)での洗浄が含まれる。通常の当業者は、ストリンジェント条件がまた、DNA配列、(10〜40塩基のような)オリゴヌクレオチドプローブまたは混合オリゴヌクレオチドプローブの長さに依存することを理解する。混合プローブを使用する場合、SSCの代わりに、塩化テトラメチルアンモニウム(TMAC)を使用することが好適である。Ausubel上記を参照のこと。
【0081】
同一性は、配列を比較することによって決定される、2つ以上のポリペプチド配列、または2つ以上のポリヌクレオチド配列間の関係を反映する。一般的に、同一性は、比較している配列の長さにわたる、それぞれ2つのポリヌクレオチドまたは2つのポリペプチド配列の、実際のヌクレオチド対ヌクレオチド、またはアミノ酸対アミノ酸対応を意味する。
【0082】
実際の対応が存在しない配列に関して、「%同一性」を決定してよい。一般的に、比較される2つの配列を並べ、配列間の最大相関を得る。これには、配列の程度を増強するために、1つまたは両方の配列へ「ギャップ」を挿入することを含んでよい。%同一性は、特に同一または非常に近似した長さの配列に対して適切な、比較している各配列それぞれの全長わたって決定されてよく(グローバル配列と呼ぶ)、或いは等しくない長さの配列に対してより適切である、より短く、定義された長さにわたって決定されてよい(ローカル配列と呼ぶ)。
【0083】
2つ以上の配列の同一性および相同性を比較するための方法は、当業界において周知である。従って例えば、Wisconsin Sequence Analysis Package、バージョン9.1(Devereux J等.,1984)にて入手可能なプログラム、例えばプログラムBESTFITおよびGAPを使用して、2つのポリヌクレオチド間の%同一性、および2つのポリペプチド配列間の%同一性および%相同性を決定してよい。BESTFITは、Smith及びWaterman(1981)の「ローカル相同性」アルゴリズムを利用し、2つの配列間の類似性のもっともよい単一領域を見つける。配列間の同一性および/または類似性を決定するための他のプログラムも当業界において公知であり、例えばプログラムのBLASTファミリー(Altschul S F等,1990,Altschul S F等,1997,www.ncbi.nlm.nih.govにてNCBIのホームページよりアクセス可能)およびFASTA(Pearson W R,1990)などである。
【0084】
任意のかかる突然変異タンパク質は好適には、GHと実質的に同様の活性を有するように、GHのアミノ酸配列を十分に再現するアミノ酸の配列を有する。GHの1つの活性は、GHレセプターへの結合能である。突然変異タンパク質が、GHレセプター(GHR)に対する実質的結合活性を有する限り、GHに対して実質的に同様の活性を有すると考えることができる。したがって、任意の所定の突然変異タンパク質は、かかる突然変異タンパク質を、例えば、放射免疫アッセイまたはELISAアッセイ等の、適宜標識化したGHRまたは細胞発現GHRに結合するかしないか、を決定するために、試料サンドイッチ競合アッセイにかけることを含む、通常の実験によって、GHと同様の活性を実質的に有するかどうかを決定することができる。
【0085】
好適な態様では、任意のかかる突然変異タンパク質は、GHのアミノ酸またはDNA配列と、少なくとも40%の同一性または相同性を有する。これらの配列は、例えばDaNoto等,1981またはMatial等,1979から、当業界において公知である。
【0086】
より好適には、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または最適には、少なくとも90%または95%同一性または相同性を有する。
【0087】
本発明による突然変異タンパク質に対する好適な変化は、「保存的」置換として知られているものである。GHポリペプチドの保存的アミノ酸置換には、群のメンバー間の置換が、分子の生物学的機能を保存する、十分に同様の生理化学的特性を有する群内での同義アミノ酸が含まれ得る(Grantham,1974)。アミノ酸の挿入および欠損は、特に挿入または欠損が、単に数個のアミノ酸に関与する場合(例えば30個を下回る、好適には10個を下回る)、それらの機能を変更しないで、上記定義した配列中でも成され得、そして例えばシステイン残基等の、機能的配座に対して重要であるアミノ酸を除去または置換しないことが明らかである。かかる欠損および/または挿入によって産出されるタンパク質および突然変異タンパク質は、本発明の範囲内にある。
【0088】
語句「融合タンパク質)」は、他のタンパク質、例えば体液中の残余時間が伸びているものと融合した、GHを含むポリペプチド、またはその突然変異タンパク質または断片を意味する。したがって、GHは他のタンパク質、ポリペプチド等、例えば免疫グロブリンまたはその断片に融合され得る。IgGのFc部は、免疫グロブリン−融合タンパク質の調製に適する。Ig融合タンパク質は、例えば欧州特許第314 317 A1(ジェネンテック(Genentech))または欧州特許第0 325 224 A2(ザイモジェネティクス社(Zymogenetics Inc.))にて発表されている。
【0089】
GHの、または突然変異タンパク質および融合タンパク質の「活性画分」として、本発明は、前記画分がGHと実質的に同様の活性を有するという条件で、単独、またはそれに連結した関連物質または残基、例えば糖またはリン酸残基、またはタンパク質分子またはそれ自身による糖残基の凝集物と一緒に、タンパク質分子のポリペプチド鎖の任意の断片または前駆体をカバーする。
【0090】
本発明のGHが医薬組成物として使用されるべきである場合、かかる医薬組成物は、多数の疾患または疾病の処置および/または予防のために使用され得る。かかる疾患または疾病は好適には、不十分な内因性GH産出に関連する。精製GHは、例えば特に小児でのGH不全、AIDS消耗、リポジストロフィ(またHARS−HIV関連異形症/異代謝症候群とも呼ばれる)、または短腸症候群の処置および/または予防のために使用され得る。成長ホルモンの投与が指示される更なる疾病には、肝硬変、成人成長欠損、アテローム性動脈硬化症、クーロン病および潰瘍性大腸炎、変形性関節症、心臓悪液質、うっ血性心不全、慢性腎不全、血液細胞再構成または可動化、男性不妊、造血幹細胞可動化、多発性硬化症、脳卒中、多系統萎縮症またはがんが含まれる。
【0091】
本発明は本明細書において完全に発表されたため、当業者は、同様のものが、本発明の精神および範囲を逸脱せず、過度の実験をせずに、広い範囲の等価のパラメータ、濃度および条件内で実施可能であることを理解するであろう。
【0092】
本発明がその特定の態様に関して発表されている一方で、更なる改変が可能であることが理解されるであろう。本願は、一般的に、本発明の原理に従い、本発明の属する技術分野において公知または慣用的な実施の範囲内として、そして添付の特許請求の範囲内にしたがうように本明細書の上記で列記された本質的な特徴に適用し得るように、本開示からのかかる逸脱を含む、本発明の任意の変形例、使用または適用をカバーすることを意図する。
【0093】
ジャーナル記事または要約、発行されたまたは未発行の米国または外国特許出願、付与された米国または外国特許または任意の他の参考文献を含む、本明細書で引用されたすべての参考文献が、引用された参考文献にて表示されたすべてのデータ、表、図およびテキストを含んで、本明細書に参照して組み込まれている。さらに、本明細書で引用された参考文献内で引用された参考文献のすべての内容も、すべてが参照して組み込まれている。
【0094】
公知の方法段階、慣用の方法段階、公知の方法または慣用の方法に対する参照は、いずれにしても、本発明の任意の観点、記述または態様を、関連する技術分野にて開示し、教示し、または示唆することを許可するものではない。
【0095】
特定の態様についての上述の記載は、当業界の技術分野の知識(本明細書で引用された参考文献の内容を含む)を適用することによって、他人が過度な実験をせずに、本発明の一般的な概念から逸脱せず、かかる特定の態様を、容易に種々に適用するために改変および/または適合することができる本発明の一般的特徴を完全に明らかにするであろう。したがって、かかる適合および改変は、本明細書で示された教示および指南に基づいて、開示された態様の等価物の範囲を意味する範囲であることが意図される。本明細書の専門用語および語法が、通常の当業者の知識と組み合わせて、本明細書で示された教義および指南に関して、当業者によって解釈されるように、本明細書の専門用語および語法が、記述の目的のみであって、制限の目的ではないことが理解されるべきである。
【実施例1】
【0096】
hGH発現C127細胞のための新規無血清産出培地の開発
1.イントロダクション
本研究は、微量金属元素の添加による、産出培養培地(DMEM、「ダルベッコ改変イーグル培地」)の開発に関する実験的作業を発表する。本開発の結果として、C127細胞培養中のr−hGH産出の顕著な増加が得られた。
【0097】
以下の表1は、本実施例の枠中で示されるであろうDMEMの組成および開発を要約する。
【表1】

【表2】

【表3】

【表4】

【0098】
2.材料および方法
試薬および溶液
すべての化学試薬を、メルク(Merck)(商標)より得た:硫酸亜鉛(ZnSO4:7H2O)、硫酸銅(CuSO4・5H2O)、塩化バリウム(BaCl2・2H2O)、塩化コバルト(CoCl2・6H2O)、硫酸カリウムクロム(K[Cr(SO642(H2O)2]・6H2O)、硝酸ニッケル(Ni(NO32・6H2O)、亜セレン酸ナトリウム(Na2SeO3・5H2O)、クエン酸鉄(FeC657 シグマ(Sigma)(商標)カタログ番号F3388)を鉄供給源として使用した。
【0099】
増殖培地微量元素混合物(100,000×)はJRH(商標)バイオサイエンセズ(Biosciences)より提供された。
【0100】
アッセイするべきすべての微量元素溶液を、蒸留水中の濃縮溶液として調製し、0.2μmフィルターを介したろ過によって滅菌した。
【0101】
異なる実験でアッセイした異なるサプリメントの添加(金属溶液など)は、新鮮な培養培地上で直接実施した。
【0102】
細胞培養
遺伝的に修飾したC127マウス細胞(ATCC CRL1616)を、組換えヒト成長ホルモン(rhGH)の発現のために使用した。ベクターは、pBR322多重クローニング部位、およびマウス メタトロチオネイン−1(MT−1)プロモーターの制御下で、1.6kbのrhGHミニ遺伝子を含むBPV69Tに基づく。異なるrhGH産出バッチから得た、1つのWorking Cell Bankに由来する培養を実験に使用した。
【0103】
細胞培養を、375mL±15mLの培養培地を含む2125cm2ローラーボトル中、または300mLの培養培地を含む1700cm cm2ローラーボトル中、36℃±0.5℃および0.4rpmにてインキュベートし続けた。
【0104】
培養培地
rhGH産出段階のために使用した培養培地は、重炭酸ナトリウム(3.7g/L)で緩衝させた4.5g/Lグルコースを含むDMEMであった。
【0105】
rhGH滴定
培養培地中のrhGHの測定を、逆相HPLC滴定によって毎日実施した:
材料
Synchropak RP4、100×4.6mm i.d.、300Å カタログ番号C4R103−10(エイクロム(Eichrom))
Resource RPC 1mL、30mm×6.4mm i.d.、15μm、art 17−1181−01、アマシャム バイオサイエンセズ(Amersham Biosciences)
Symmatry300、50mm×4.6 i.d.、C4 5μm、P/N186000287(ウォーターズ(Waters))
試薬
トリフルオロ酢酸(TFA)(ピアス(Pierc)、カタログ番号28904または同等物)
アセトニトリル(ACN)(メルク(Merck)1.00030または同等物)
精製水、PW(例えばMilliQ水、、または同等物)
ヘリウム
溶液
移動相A:TFA 水中0.08%(v/v)
PW水の容積を目盛り付きフラスコ中で測定し、以下の表にしたがってTFAを加える。攪拌し標識する。
【0106】
【表5】

移動相B:TFA アセトニトリル中0.08%(v/v)
PW水の容積を容積測定フラスコ中で測定し、以下の表にしたがってTFAを加える。攪拌し標識する。
【0107】
【表6】

クロマトグラフィー条件は以下の通りである。
勾配による溶出:混合相A:相B 60/40にて開始し、相A/相B 20/80にて終了する。勾配は5分間で完了する(使用する器具によってわずかに変わる)
注入量 50マイクロリットル
検出:215nmでのUV吸収
較正曲線:10、50、100、120および150μg/mlでのr−hGH標準
【0108】
試料のr−hGH濃度を、標準r−hGH濃度との比較によって決定する。
【0109】
GH産出
生産性を、rhGHのmg/ローラーボトルとして示す。生データは、(HPLCによって測定したような)回収中のrhGH濃度であり、回収したローラーボトルの総数である。典型的には、回収相の間のローラーボトルには、約109細胞が含まれる。
【0110】
3.結果
第一の一連の実験にて、断続的に培養培地に加えた高コバルト濃度(20μM CoCl2・6H2O)の効果をアッセイした。添加は、1つのバッチの産出相の初期段階(リンスおよびPM=産出培地、すなわち回収相の0ポイント)および中間段階(回収6および7)中、2回の培地変更の間に実施した。結果(図示せず)によってプロモーターが活性であり、調節可能であることが示唆された。
【0111】
上昇した生産性は、他の金属元素でさらに確認された。それぞれ培地に継続的に加えた10μM濃度のバリウム(BaCl2・2H2O)、コバルト(CoCl2・6H2O)、クロム(K[Cr(SO642(H2O)2]・6H2O)、およびニッケル(Ni(NO32・6H2O)でアッセイを実施した。本実験の結果を図1および2に示す。
【0112】
図1は、実験期間(14日)にわたり、アッセイする元素を含む培地中で培養したときの、hGH発現C127によって分泌されたhGHの量を示している。図2は、各アッセイする元素に関して達した平均産出値を示している。平均産出は、微量元素なしで、コントロール値と比較して得たパーセント、バリウムに関して1.1%間、およびコバルトに関して32.4%間の範囲で増加する。コバルトで、連続対断続的に誘導してアッセイした場合に、rhGH生産性がコントロール値と比較して、9%〜32.5%増加したことも確認された。バリウムとクロムは、いずれもDMEM中でアッセイした濃度で、生産性増加を示さなかった。
【0113】
個々の微量元素の測定
DMEMに、以下の表2で報告した濃度で、微量元素Zn、Cu、SeおよびCoを加えた。これらの濃度は、増殖培地中の金属元素の濃度に相当する。微量元素をDMEMに加えることによって達成されたrhGH生産性の増加を表2に示す。
【0114】
表2:rhGH生産性パーセントは、示したμM濃度でDMEM中の金属イオンをアッセイした場合に増加する
【表7】

【0115】
亜鉛の場合、1.5μMのアッセイ濃度によって、「ピーリング−オフ(pealing−off)」現象、すなわちローラーボトルのプラスチック基質からの細胞単層の脱着が惹起されることに留意すべきである。いくつかの場合、このピーリングが、最後の回収段階(通常回収12〜14の間)にて培養の欠損を導く。ピーリング−オフ現象は、Cellbind(商標)の名前で、コーニング(Corning)(商標)社から入手可能なローラーボトル等の、適切な細胞培養容器を用いることによって未然に防ぐことができる。
【0116】
金属間の相互作用の測定
hGH産物の生産性における銅および亜鉛の効果に基づき、要因設計実験を実施して、金属の可能性ある組み合せ効果をアッセイした。
【0117】
結果の統計解析を表3に示す。CuおよびZnを一緒に用いる生産性における強力な相乗効果(p≦0.0001)が観察された。
【表8】

【0118】
ピーリング−オフは、銅の存在の有無にかかわらず、1.5μMの濃度にて亜鉛で処理したすべての培養中で観察された。
【0119】
その後、亜鉛濃度が減少した(Zn 0.5μM)場合の亜鉛および銅の両方の添加の効果を研究するために、並びに生産性および基質に対する培養の接着を改善し得る増殖培地に対する他の微量元素(マンガン、セレンまたはクエン酸鉄等)の添加の効果を研究するために、要因設計実験を実施した。
【0120】
継続的な増殖が、通常の産出開始点から、20mg rhGH/ボトルまで達し、標準DMEMを有するコントロール培養の30mgのrhGHと比較して70mgのrhGH/RBに近づく最終値となった(図示せず)。コントロールと比較した、GH生産性における増加に関する平均値(すなわち、14日目でのmg/RB中で測定した生産性)を図3に示す。この一連の実験にて、ピーリング−オフ現象が減少した。
【0121】
アミノ酸添加
アミノ酸解析を、hGH生産性の増加が、任意のアミノ酸の利用能によって制限されるかどうかを決定するために実施した。表4は、培地中に亜鉛および銅を添加した、及び亜鉛および銅を添加しない培養中での、2日後の回収されたアミノ酸の割合を示す。
【0122】
表4:標準DMEM培養またはZn 0.5μM、Cu 0.02μMおよびクエン酸鉄 4.8μMを補充したDMEMで維持した培養から由来する、培養中2日後に回収した、粗培地中のアミノ酸の濃度の割合
【表9】

【0123】
銅、亜鉛およびクエン酸鉄(Zn 0.5μM、Cu 0.02μMおよびクエン酸鉄 4.8μM)の混合物を、もっとも高い比率にて消費したこれらのアミノ酸の組み合わせでアッセイした。L−グルタミン(Gln 4.8mM)、L−セリン(Ser 0.49mM)およびL−システイン(Cys 0.29mM)。結果は図4に示す。
【0124】
生産性における陽性効果は、個別でも組み合せでも、試験されたどのアミノ酸においても観察されなかった。
【0125】
金属をアミノ酸と一緒に加えたときに、生産性におけるわずかな効果:グルタミンのわずかな陽性効果(78.2%から81.1%)、システインの陰性効果(78.2%から69.9%)だけが観察された。かかる差異は有意であるとはみなされなかった。
【0126】
生産性は、DMEM中において金属の混合により処理された培養(約50mg rhGH/RB/回収、の平均値)と金属を含まないもの(約30mg rhGH/RB/回収)間で明らかに異なった。これらの結果を見ると、産出培地の起源のアミノ酸組成を修飾する必要性は考慮されなかった。
【0127】
銅および亜鉛の滴定の効果
銅の最適濃度を測定するために、実験を実施し、クエン酸鉄濃度(4.8μM)および亜鉛濃度(0.5μM)定数を維持し、銅濃度を変化させた(図5)。
【0128】
図5で示したように、用量反応実験により、DMEM中の銅に対する最適添加濃度は、示した亜鉛およびクエン酸鉄濃度でアッセイした場合に、25.6nMであることが確認された。
【0129】
他の実験では、クエン酸鉄濃度(4.8μM)および銅(0.025μM)濃度を一定に維持し、亜鉛濃度を変化させた(図6)。最大産出レベル(プラトー)は、200nM超の亜鉛濃度で観察され、産出は平均コントロール値の約60%で安定した。
【0130】
結果の要約
図7は、鉄イオンと一緒の、または単独での微量濃度にあるZnおよびCuイオンで得られた結果を要約する。
【0131】
以下の値は、DMEM培地に金属微量元素を加えることによる生産性の増加に関して得られたデータに基づいて得られた。
亜鉛 1.5μM:10.3%±5.0%、亜鉛 0.5μM:16.8%±1.6%
銅 0.02μM:32.1%±9.4%
亜鉛 1.5μM+銅 0.02μM:66.3%±16%
亜鉛 0.5μM+銅 0.02μM:61.2%(±10%)
亜鉛 0.5μM+銅 0.02μM+クエン酸鉄 4.8μM:69.4%±19%
【0132】
これらのデータを見ると、以下の混合が、DMEM培養への添加物として最適である。
・25nMにて硫酸銅(CuSO4・5H2O)としての銅
・50nM〜1500nMの間の硫酸亜鉛(ZnSO4・7H2O)としての亜鉛、好適には200〜500nMの範囲の濃度
・濃度4.8μM〜約6μMのイオンの最終濃度でのクエン酸鉄、硝酸鉄はすでにDMEM中に存在する。
【0133】
結論
DMEM培地へのサプリメントとして微量の銅、亜鉛および鉄イオンの利用が、標準DMEMと比較して50%を上回るまでrhGH生産性を増加させた。
【0134】
【表10】

【表11】

【図面の簡単な説明】
【0135】
【図1】10μMの異なる成分をDMEM培養培地中へ連続して添加する中で、産出段階にて得られたrhGH産出プロファイルを示す(RB=ローラーボトル、H1−H14=産出段階1〜14日)。
【図2】10μMの金属(ニッケル、バリウム、コバルト、クロム)をDMEM培養培地中へ連続して添加する中で、産出段階にて得られた平均rhGH産出値をmg rhGH/ローラーボトルとして示す。
【図3】亜鉛(Zn、0.5μM)、銅(Cu、0.02μM)、セレン(Se、0.050μM)、マンガン(Mn、0.001μM)およびクエン酸鉄(4.8μM)の試験組み合わせに関して、要因デザイン実験にて得られたrhGH産出増加の平均値を、コントロールと比較して示す。
【図4】金属微量元素(Zn 0.5μM、Cu 0.02μMおよびクエン酸鉄4.8μM)およびアミノ酸グルタミン(Gln 4.8mM)、セレン(Ser、0.49mM)およびシステイン(Cys 0.29mM)の混合物の結果を決定するための、要因デザイン実験の結果を示す。
【図5】DMEM中のrhGH生産性における、亜鉛およびクエン酸鉄(Zn 0.5μM、クエン酸鉄 4.8μM)を組み合せた銅の多様な濃度での効果を示す。
【図6】DMEM中のrhGH生産性における、銅およびクエン酸鉄(Cu 0.02μM、クエン酸鉄 4.8μM)を組み合せた亜鉛の多様な濃度での効果を示す。
【図7】rhGH−産出C127細胞での異なる実験からの、DMEM補足物として、銅、亜鉛およびクエン酸鉄(Zn:1.5および0.5μM、Cu:0.02μMおよびクエン酸鉄:4.8μM)を加えたときに得られたrhGH生産性の増加の効果の概要を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物血清に由来する成分を含まない細胞培養培地中で成長ホルモンを発現する細胞株の細胞を培養する段階を含み、前記培地が、0.2μM〜1.75μMの範囲の濃度での亜鉛と、10nM〜75nMの範囲の濃度の銅を含む、成長ホルモンの産出のための方法。
【請求項2】
前記培地がさらに、1〜10μMの範囲の濃度で鉄イオンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記培地が0.2μMにて亜鉛を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記培地が0.5μMにて亜鉛を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記培地が、硫酸亜鉛として亜鉛を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記培地が25nMにて銅を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記培地が、硫酸銅として銅を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記培地が5または6μMにて鉄イオンを含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記培地が、クエン酸鉄および/または硝酸鉄として鉄イオンを含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記培地がさらに、基礎培地の成分を含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記基礎培地が、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記成長ホルモンが、メタロチオネイン(MT)プロモーターの制御下で発現している、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記メタロチオネインプロモーターがマウスMT−1プロモーターである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
細胞培養から成長ホルモンを回収する段階をさらに含む、請求項1〜13のいずれかに1項に記載の方法。
【請求項15】
さらに成長ホルモンを精製することを含む、請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
精製成長ホルモンを、医薬的に許容され得る担体と共に製剤化し、医薬組成物を得ることをさらに含む、請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記成長ホルモンがヒト成長ホルモンである、請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
成長ホルモンの産出のための、請求項1〜11のいずれか1項に記載の培地の使用。
【請求項19】
成長ホルモンの産出段階の間、培養中で細胞を維持するための、請求項1〜11のいずれか1項に記載の培地の使用。
【請求項20】
前記成長ホルモンが、ヒト成長ホルモンである、請求項18または19に記載の使用。
【請求項21】
前記細胞がマウスC127細胞である、請求項18または19に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2008−518592(P2008−518592A)
【公表日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−538432(P2007−538432)
【出願日】平成17年10月28日(2005.10.28)
【国際出願番号】PCT/EP2005/055637
【国際公開番号】WO2006/108455
【国際公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【出願人】(504104899)アレス トレーディング ソシエテ アノニム (59)
【Fターム(参考)】