説明

哺乳動物細胞中でシアリル化糖タンパク質を発現する方法およびその細胞

シアリル化オリゴサッカリドを有する糖タンパク質を産生するための方法および系を提供する。本発明は、内因性レベルを超えてCMP−SATタンパク質またはそのフラグメントを発現するようにCMP−シアル酸輸送体(CMP−SAT)遺伝子で遺伝子操作された細胞を含む。CMP−SAT発現の増加により、CMP−シアル酸のゴルジ装置への輸送が増加し、内因性レベルを超えた糖タンパク質のシアリル化が可能である。特に、本発明の方法および系は、目的の哺乳動物細胞(例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞)における複雑なシアリル化糖タンパク質の産生に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の参照]
本出願は、2004年5月4日出願の米国特許仮出願番号60/567,458号(その開示全体が本明細書中に参照することにより組み込まれる)の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、哺乳動物細胞におけるシアリル化糖タンパク質の発現のための方法および系に関する。
【背景技術】
【0003】
SwissProtタンパク質データベースでの最近の調査により、全真核生物タンパク質の半分以上が糖タンパク質であり、これらの90%がN結合糖タンパク質を含む可能性が高いと予想された(Apweiler et al.,1999)。これらの糖タンパク質の多くは、治療に適用するために哺乳動物細胞中で組換え産物として産生される(Andersen & Krummen,2002)。グリコシル化は、その溶解性、熱安定性、および生物活性などの糖タンパク質の重要な性質に影響を与えることが公知である(Jenkins & Curling,1994)。特に、末端糖シアル酸の存在により、シアル酸終結グリカンがアシアロ糖タンパク質受容体によって認識されないので(Weiss & Ashwell,1989)、インビボでの糖タンパク質の循環半減期が増加し、そうでなければ、糖タンパク質が分解の標的にされる。したがって、組換え糖タンパク質産生の目的の1つは、これらの組換え糖タンパク質を最大且つ一貫したシアリル化を達成することである。
【0004】
グリコシル化は、ERおよびゴルジ装置における一連の酵素触媒反応として起こる(Kornfeld and Kornfeld,1985;Varki,1993に概説)。反応の補基質としての機能を果たすヌクレオチド糖はサイトゾル中で合成され、ミクロソーム膜を透過することができる。したがって、ヌクレオチド糖輸送タンパク質は、ヌクレオチド糖をサイトゾルから細胞内腔に移動させるために存在する(Hirschberg & Snider,1987)。例として、末端シアリル化工程に関与する種々のタンパク質の相互作用を、本特許出願の図7に示す。糖タンパク質の不均一性は、この複雑な過程の異なる部分の変動に起因する。グリコシル化プロフィールを修飾するために使用されたグリコシル化操作アプローチは、グリコシルトランスフェラーゼ(Bailey et al.,1998;Grabenhorst et al.,1999に概説)およびグリコシダーゼ(Warner,1999に概説)の操作を含む。より予測可能且つ一貫した糖形態(glycoform)分布を得るために宿主グリコシル化経路の遺伝子操作が行われている。グリコシル化操作の1つのこのような領域は、より有効なタンパク質を産生するためのオリゴサッカリドを付加するためのそのポリペプチド鎖の変異(Koury,2003)またはオリゴサッカリドの位置の変異(Keyt et al.,1994)による既存の糖タンパク質のグリコシル化パターンの操作を含む。宿主グリコシル化経路の特定の介入を、グリコシルトランスフェラーゼ遺伝子の移入もしくは過剰発現(Fukuta et al.,2000;Sburlati et al.,1998)または宿主細胞中での内因性グリコシル化遺伝子のアンチセンス阻害(Ferrari et al.,1998)によって行うことができる。
【0005】
ヌクレオチド糖基質の利用可能性ならびにERおよびゴルジによるこれらのタンパク質の輸送も、タンパク質グリコシル化範囲の重要な決定要因である(Hooker et al.,1999)。様々なグループが、シアリル化を改良するためにシアリルトランスフェラーゼを過剰発現させようとしてきた。チャイニーズハムスター卵巣細胞は、α2,3−シアリルトランスフェラーゼを含むが、α2,6−シアリルトランスフェラーゼを含まず(Lee et al.,1989)、それにより、α2,3結合シアル酸のみを含む糖タンパク質が得られる。しかし、ヒト糖タンパク質は、α2,3結合シアル酸およびα2,6結合シアル酸の両方を含む。したがって、多数のグループが、α2,6結合シアル酸の欠如を克服するためにα2,6−シアリルトランスフェラーゼを過剰発現させようとしてきた(Minch et al.,1995;Lee et al.,1989)。さらに、多数のグループが、組換えタンパク質のシアリル化を改良するために、α2,6−シアリルトランスフェラーゼ(Bragonzi et al.,2000;Jassal et al.,2001)および/またはα2,3−シアリルトランスフェラーゼ(Fukuta et al.,2000;Weikert et al.,1999)を過剰発現させている。これにより、本出願の表3にまとめるように、種々の結果が得られている。
【0006】
さらに、いくつかのグループが、シアル酸前駆体(N−アセチルマンノサミン)の供給によって組換えタンパク質のシアリル化を改良しようとしていた(本出願の表3)。N−アセチルマンノサミン(ManNAc)は、細胞内シアル酸プールの増加のための特異的前駆体であることが公知である(Pels Rijcken et al.,1995)。組換えヒトインターフェロン−γを産生するチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO IFN−γ)への20mMまでのManNAc供給の段階的増加によって細胞内シアル酸濃度が増加することが報告された。これにより、その後、インターフェロン−γ(IFN−γ)のシアリル化が15%改良された(Gu and Wang,1998)。しかし、40mMのManNAcの添加によってシアリル化改良の飽和が認められた。より興味深いことに、20mMのManNAcを、組換えヒト化IgG1を産生するNS0細胞(Hills et al.,2001)に供給した場合、12倍までの細胞内シアル酸濃度の増加が認められ、TIMP−Iを産生するCHO細胞およびNS0細胞の両方(Baker et al.,2001)に供給した場合、組換えタンパク質のシアリル化の明らかな増加は認められなかった。
【0007】
シアリル化するためにはシチジン一リン酸−シアル酸(CMP−SA)をゴルジ装置に送達させなければならず、この輸送過程はシチジン一リン酸輸送体(CMP−SAT)の存在に依存する(Deutscher et al.(1984)Cell 39:295-299)。CMP−シアル酸輸送体(CMP−SAT)は、ヌクレオチド糖輸送体ファミリーに属する。他のヌクレオチド糖輸送体と同様に、本特許出願の図7に示すように、CMP−SATは、ゴルジ膜上に存在し、CMP−SAが逆輸送機構によってゴルジに輸送される内在性膜貫通タンパク質である(Berninsone & Hirschberg,2000;Hirschberg et al.,1998;Hirschberg & Snider,1987;Kawakita et al.,1998に概説)。Betenbaugh and others(公開番号WO01/42492号で公開されたPCT特許出願)は、ヒトシアル酸シンセターゼが昆虫細胞中でのシアル酸産生を増加させ、それにより、タンパク質のシアリル化が改良されることを開示していた。さらに、Betenbaugh and others(公開番号US2002/0065404 A1で公開された米国特許出願およびWO01/42492号)は、ゴルジ装置へのCMP−SAの存在を増加させ、それにより、昆虫細胞中の糖タンパク質のシアリル化を増強するためのショウジョウバエCMP−SAT発現を増強する可能性について熟考している。
【0008】
US2002/0065404 A1およびWO01/42492号に開示されているCMP−SAT遺伝子配列を、以下の2つのGenBankエントリーとの100%適合を明らかにするためにNCBI GenBankデータベースで検索した:
1)AF397530−キイロショウジョウバエCMP−シアル酸/UDP−ガラクトース輸送体mRNA(完全なcds);および
2)AB055493−UDP−ガラクトース輸送体の完全なcdsのキイロショウジョウバエugt mRNA。
【0009】
第1のGenBankエントリーは、Betenbaugh et al.(2002年3月20日)によって直接提出され、第2のGenBankエントリーは、Segawa et al.(2003年1月15日)によって直接提出されていた。
【0010】
Segawa et al.(2000)は、CMP−SAT遺伝子をクローン化して発現した場合、UDP−ガラクトースが輸送されるがCMP−シアル酸は輸送されないことが実験的に証明されたと報告している。さらに、彼らは、コードされたヌクレオチド糖輸送体がUDP−N−アセチル−ガラクトサミンも輸送することを見出した。Aumiller and Jarvis,2002は、相同性検索によってCMP−SAT遺伝子配列を得て、これがBetenbaugh et al.によって得られた配列に類似することが見出されたことを開示した。彼らは、その後、ヌクレオチド糖輸送遺伝子をクローン化し、遺伝子相補性アッセイおよび生化学アッセイによって糖輸送体遺伝子によってコードされるタンパク質がUDP−ガラクトースを輸送するが、CMP−シアル酸を輸送しないことを見出した。したがって、CMP−SAT遺伝子であると考えられているUS 2002/0065404 A1号およびWO01/42492号で引用されたショウジョウバエ遺伝子がUDP−ガラクトース輸送体をコードする遺伝子であることが判明した。したがって、US 2002/0065404 A1号およびWO01/42492号は、CMP−SATがCMP−SAを輸送するといういかなる実証やいかなる他の証拠も提供していない。それどころか、Betenbaugh and othersは、CMP−SAではなくゴルジUDP−ガラクトースに輸送するUDP−ガラクトース輸送体を示していた。
【0011】
したがって、ゴルジに輸送されるCMP−SAの量に影響を与えるようにCMP−シアル酸輸送体系を調節することができるかどうかについてのさらなる調査が当分野で必要である。有効にシアリル化される糖タンパク質の産生のための別の系も当分野で必要である。
【発明の開示】
【0012】
本発明は、上記問題に取り組み、特に、上記問題を軽減するか、社会に有用な選択肢を少なくとも提供するシアリル化糖タンパク質を産生する方法および系を提供する。特に、本発明は、内因性レベルを超えてCMP−SAT、そのフラグメント、または変種の発現を増強する工程を含む、細胞または細胞株での目的のシアリル化糖タンパク質の調製方法を提供する。本発明者らは、驚いたことに、内因性レベルを超えたCMP−SATの産生の増強によってシアリル化糖タンパク質の産生が改良されることを見出した。特に、本発明の方法は、目的の糖タンパク質のシアル酸含有量を最大にする有効な方法である。糖タンパク質中の最大シアル酸含有量は、シアル酸受容体部位の利用可能性に基づき、1モルの糖タンパク質に結合することができるシアル酸の最大モル数と定義する。特に、真核細胞のシアル酸受容体部位は、β1,4−ガラクトースで終結するグリカンである。同様に、β1,4−ガラクトース部位の利用可能性は、以前の糖タンパク質プロセシング範囲および糖タンパク質のグリカン部位の占有に依存する。本発明の方法および系は、目的の哺乳動物細胞(CHO細胞が含まれるが、これに限定されない)における複雑なシアリル化糖タンパク質の産生に有用である。
【0013】
第1の態様によれば、本発明は、内因性レベルを超えてCMP−SAT、そのフラグメントまたは変種を産生する少なくとも1つの哺乳動物細胞を提供する。哺乳動物細胞は、本発明の目的のための任意の適切な哺乳動物細胞(例えば、ヒトまたはCHO細胞)であり得る。
【0014】
本発明はまた、内因性レベルを超えてCMP−SATを産生する細胞を含む、例えば細胞培養物の形態の細胞株を提供する。
【0015】
本発明は、内因性レベルを超えたレベルでCMP−SATタンパク質を発現するようなCMP−シアル酸輸送体(CMP−SAT)遺伝子での細胞の遺伝子操作を含む。CMP−SAT発現の増加により、CMP−シアル酸(CMP−SA)のゴルジ装置への輸送が増加して内因性レベルを超えて糖タンパク質がシアリル化される。したがって、本発明は、CMP−SATをコードする遺伝子またはこの遺伝子を含む構築物で形質転換された少なくとも1つの哺乳動物細胞を提供する。特に、哺乳動物細胞を、哺乳動物CMP−SAT遺伝子で形質転換する。例えば、ヒトまたはCHOのCMP−SAT遺伝子で形質転換する。
【0016】
本発明の1つの態様によれば、目的の細胞中でのCMP−SATタンパク質、またはそのフラグメントもしくは変種の発現によってシアリル化を増加させる。したがって、本発明は、内因性レベルを超えて少なくとも1つのシアリル化糖タンパク質を産生する少なくとも1つの哺乳動物細胞を提供する。特に、哺乳動物細胞は、内因性レベルを超えてCMP−SAT、そのフラグメント、または変種および内因性レベルを超えて少なくとも1つのシアリル化糖タンパク質を産生する。少なくとも1つの糖タンパク質は、異種であり得る。糖タンパク質は、哺乳動物、例えば、ヒトまたはCHOの糖タンパク質であり得る。しかし、本発明の目的のために有用な任意の他の糖タンパク質を産生することができる。特に、本発明の細胞を、目的のシアリル化糖タンパク質の複合体または混合物の産生のために使用することができる。
【0017】
より詳細には、目的の糖タンパク質は、任意のIFN−γ、フラグメント、または変種であり得る。
【0018】
したがって、本発明の哺乳動物細胞または細胞株を、異種タンパク質をコードする遺伝子またはこの遺伝子を含む構築物で形質転換することができる。例えば、細胞を、少なくとも1つのIFN−γ、そのフラグメント、または変種をコードする遺伝子で形質転換する。
【0019】
特に、本発明の哺乳動物細胞または細胞株は、CHO細胞であってよく、前記細胞が内因性レベルを超えてCMP−SAT、そのフラグメント、または変種を産生し、前記細胞が内因性レベルを超えて少なくとも1つのシアリル化糖タンパク質を産生する。シアリル化糖タンパク質は、少なくともIFN−γ、そのフラグメント、または変種であり得る。
【0020】
本発明の哺乳動物細胞は、単離細胞株であり得る。
【0021】
別の態様によれば、本発明は、本発明の哺乳動物細胞または細胞株を含む少なくとも1つのシアリル化糖タンパク質の発現用キットを提供する。
【0022】
別の態様によれば、シアリル化オリゴサッカリドを有する糖タンパク質を産生するための方法および系を提供する。したがって、本発明は、内因性レベルを超えてCMP−SAT、そのフラグメント、または変種の発現を増強する工程を含む、細胞または細胞株でのシアリル化糖タンパク質の調製方法を提供する。さらなる態様によれば、シアリル化糖タンパク質はまた、内因性レベルを超えて発現する。より詳細には、CMP−SATの過剰発現によって糖タンパク質のシアリル化が最大になる。
【0023】
特に、哺乳動物細胞または細胞株は、CHO細胞株またはヒト細胞株であり得る。シアリル化糖タンパク質は、異種哺乳動物糖タンパク質であり得る。例えば、シアリル化糖タンパク質は、任意のIFN−γ、そのフラグメント、または変種である。
【0024】
別の態様によれば、本発明は、
(a)哺乳動物細胞を、内因性レベルを超えて、CMP−SAT、そのフラグメント、もしくは変種をコードする遺伝子また前記遺伝子を含む構築物で形質転換する工程と、
(b)前記細胞を、少なくとも1つの目的のシアリル化糖タンパク質をコードする遺伝子または前記遺伝子を含む構築物で形質転換する工程と
を含む、哺乳動物細胞または細胞株中で少なくとも1つのシアリル化糖タンパク質を産生する方法を提供する。
【0025】
さらに、上記方法では、目的のシアリル化糖タンパク質を、内因性レベルを超えて産生することができる。この方法は、さらに、目的の糖タンパク質を単離する工程を含み得る。単離糖タンパク質を、薬学的組成物または治療組成物の形態で処方することができる。
【0026】
さらに関連する態様では、本発明は、(a)細胞中の炭水化物基質を決定する工程と、
(b)前記細胞をタンパク質で形質転換して、必要な前駆基質を産生する工程と、
(c)前記細胞中のプロセシング経路を構築してシアリル化糖タンパク質を産生する工程とを含む、目的の哺乳動物細胞中でシアリル化糖タンパク質を産生する方法を含む。
【0027】
種々のCMP−SATタンパク質が公知である。さらに、本発明の方法で使用されるCMP−SATタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列が公知であるか、バイオインフォマティクス検索を使用して同定される。これらの配列を、本発明で使用することができる。
【0028】
目的の適切な細胞には、哺乳動物細胞および細胞株が含まれる。ヒト細胞および細胞株も目的の細胞に含まれ、使用することができる。特に、目的の細胞には、治療糖タンパク質の産生に有用な哺乳動物細胞が含まれる。これらの細胞は未修飾状態であるか、治療糖タンパク質を発現するように事前に修飾されていてもよい。チャイニーズハムスター卵巣細胞は、治療用糖タンパク質の産生で特に有用であることが見出されている。既存の技術と組み合わせた本発明の治療薬の使用により、内因性レベルを超えてシアリル化する糖タンパク質が得られることを調査する。
【0029】
本発明の方法および系を、治療に有益であり得る広範な糖タンパク質に使用することができる。特に、本発明は、血流中のタンパク質の循環時間を延長するために糖タンパク質のシアリル化が望ましい場合に有用である。例として、適切な糖タンパク質には、インターフェロン−γ(IFN−γ)が含まれる。
【0030】
本発明の方法および系は、標的細胞を修飾して「ヒト」糖タンパク質を産生するために既存の技術と共に使用することができるさらなる遺伝子操作プロセスを提供する。本発明の方法および系によって修飾された細胞によって産生された糖タンパク質は、予想されるシアリル化量が増加し、それにより、血中の循環時間が増加するので有益である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
本明細書中に記載の文献は、便宜上、文献リストの形態で列挙し、実施例の最後に添付する。このような文献の全内容は、本明細書中に参照することにより組み込まれる。
【0032】
本発明の方法は、CMP−SATの産生および/または糖タンパク質のシアリル化の増強によって目的の細胞における糖タンパク質産生の操作が可能である。
【0033】
「目的の細胞」は、例えば、1)内因性CMP−SAレベルが細胞中の所望のレベルのシアリル化糖タンパク質の産生に十分ではない任意の細胞、2)ゴルジへのCMP−SAの移入率を改良することが望ましい場合、3)CMP−SATの量または活性を改良または増強することが望ましい場合、または4)シアリル化糖タンパク質の産生を改良または最大にすることが望ましい場合を意図する。目的の細胞は、任意の哺乳動物細胞であり得る。例えば、CHO細胞、ヒト細胞および細胞株も、目的の細胞に含まれ、本発明の方法で使用することができる。例えば、これらを使用して、ヒト細胞および/または細胞株(例えば、腎臓および肝臓など)中のシアリル化糖タンパク質を操作することができる。「所望のレベル」は、本発明の方法に細胞を供した後に目的の細胞から構成される生化学物質の量が変化することを意図する。この様式では、本発明は、目的の細胞中のCMP−SATおよび/またはシアリル化糖タンパク質のレベルを操作する工程を含む。本発明の好ましい実施形態では、CMP−SATおよび/またはシアリル化糖タンパク質レベルの操作は、CMP−SATおよび/またはシアリル化糖タンパク質の過剰発現(すなわち、内因性レベルを超えたCMP−SATおよび/またはシアリル化糖タンパク質レベルの増加)を含む。
【0034】
本発明の目的のために、「発現の増強」は、所望のCMP−SATタンパク質をコードする核酸の翻訳産物および/または所望の糖タンパク質をコードする核酸の翻訳産物が、核酸を発現する宿主細胞中で前記タンパク質の内因性レベルより高いことを意味することを意図する。
【0035】
「内因性」は、本発明の方法による細胞の操作前の天然に存在する細胞または組換え細胞中に存在する生物機能または生化学組成物の型および/または量を意味することを意図する。
【0036】
「異種」は、本発明の方法による細胞の操作前の天然に存在する細胞または組換え細胞中に存在しない生物機能または生化学組成物の型および/または量を意味することを意図する。
【0037】
本発明の目的のために、「異種糖ポリペプチドまたは糖タンパク質」は、糖ポリペプチドまたは糖タンパク質が通常発現する(天然に発現する)細胞種と異なる目的の細胞種中で発現した(すなわち、合成された)糖ポリペプチドまたは糖タンパク質を意味する。
【0038】
本発明に関する内因性および異種の機能および組成物の決定方法は、本明細書中に提供され、そうでなければ、当分野で公知の方法を含む。
【0039】
先行技術の文献は、いくつかの限定要因が細胞中での糖タンパク質の有効なシアリル化に影響を与えることを示していた。本発明者らは、シアリル化に利用可能なゴルジ中のCMP−シアル酸基質量の制限は、CMP−シアル酸輸送体(CMP−SAT)を介したゴルジへのCMP−シアル酸輸送の制限によって生じることを提案する。したがって、本発明者らは、この制限を軽減するためにCMP−SATを過剰発現させる。これにより、細胞中で産生される糖タンパク質(目的の組換えタンパク質が含まれる)のシアリル化が増加する。
【0040】
CMP−SATは、その構造および輸送機能が非常に類似しているヌクレオチド糖輸送体ファミリーに属する(Berninsone & Hirschberg,2000;Hirschberg et al.,1998;Hirschberg & Snider,1987;Kawakita et al.,1998に概説)。ハムスターCMP−シアル酸輸送体cDNAは、以前にLec2(Eckhardt & Gerardy-Schahn,1997)、CMP−シアル酸輸送体が欠失したCHOグリコシル化変異細胞株(Deutscher et al.,1984)の相補性クローニングによって単離されている。CMP−シアル酸輸送体のヒトホモログ(Ishida et al.,1998)およびマウスホモログ(Berninsone et al.,1997)は、機能活性を有することが証明されており、同様にクローン化したハムスターホモログは類似の機能性を有すると予想される。この膜貫通タンパク質の膜トポロジーも広く研究されている(Eckhardt et al.,1999)。
【0041】
本発明は、当分野で取り組まれている問題を解決し、上記問題を軽減するシアリル化糖タンパク質を産生するための有効な方法および系を提供する。特に、本発明は、内因性レベルを超えてCMP−SAT、そのフラグメント、または変種の発現を増強する工程を含む、細胞、単離細胞、または細胞株での目的のシアリル化糖タンパク質の調製方法を提供する。本発明者らは、驚いたことに、内因性レベルを超えたCMP−SATの産生の増強によって糖タンパク質が有効にシアリル化されることを見出した。特に、本発明の方法は、目的の糖タンパク質のシアル酸含有量を最大化する有効な方法である。本発明の方法および系は、目的の哺乳動物細胞(CHO細胞が含まれるが、これに限定されない)における複雑なシアリル化糖タンパク質の産生に有用である。
【0042】
第1の態様によれば、本発明は、内因性レベルを超えてCMP−SAT、そのフラグメント、または変種産生する少なくとも1つの哺乳動物細胞を提供する。哺乳動物細胞は、本発明の目的のための任意の適切な哺乳動物細胞(例えば、ヒトまたはCHO細胞)であり得る。本発明はまた、内因性レベルを超えて目的のCMP−SATおよび/またはシアリル化糖タンパク質を産生する細胞を含む、例えば細胞培養物の形態の細胞株を提供する。目的の適切な細胞には、哺乳動物細胞および細胞株が含まれる。ヒト細胞および細胞株も目的の細胞に含まれ、使用することができる。特に、目的の細胞には、治療糖タンパク質の産生に有用な哺乳動物細胞が含まれる。これらの細胞は未修飾状態であるか、治療糖タンパク質を発現するように事前に修飾されていてもよい。チャイニーズハムスター卵巣細胞は、治療用糖タンパク質の産生で特に有用であることが見出されている。既存の技術と組み合わせた本発明の技術の使用により、内因性レベルを超えてシアリル化する糖タンパク質が得られることを調査する。
【0043】
本発明の1つの態様によれば、目的の細胞中でのCMP−SATタンパク質、またはそのフラグメントもしくは変種の発現によってシアリル化を増加させる。したがって、本発明は、内因性レベルを超えて少なくとも1つのシアリル化糖タンパク質を産生する少なくとも1つの哺乳動物細胞を提供する。特に、哺乳動物細胞は、内因性レベルを超えてCMP−SAT、そのフラグメント、または変種および内因性レベルを超えて少なくとも1つのシアリル化糖タンパク質を産生する。少なくとも1つの糖タンパク質は、異種であり得る。糖タンパク質は、哺乳動物、例えば、ヒトまたはCHOの糖タンパク質であり得る。しかし、本発明の目的のために有用な任意の他の糖タンパク質を産生することができる。特に、本発明の細胞を、目的のシアリル化糖タンパク質の複合体または混合物の産生のために使用することができる。
【0044】
より詳細には、本発明の実験の一部で使用したモデル系は、CHO IFN−γ(ヒトIFN−γを産生するチャイニーズハムスター卵巣細胞株)であった。しかし、他の哺乳動物起源のIFN−γも使用することができる。さらに、他のIFN形態(例えば、IFN−αまたはIFN−β)も使用することができる。IFN−γは、抗ウイルス活性、抗増殖活性、および免疫調整活性を有する分泌糖タンパク質である(Farrer & Schreiber,1993)。Asn−25およびAsn−97に占有率が変化し得る2つの潜在的なN−グリコシル化部位が存在する。占有する場合、オリゴサッカリドは、主に2つの触角を持つ(biantennary)(Gu et al.,1997;Hooker et al.,1995)。したがって、目的の糖タンパク質は、IFN−γ、そのフラグメント、または変種であり得る。用語「そのフラグメントまたは変種」は、IFN−γの生物活性を発現するフラグメントおよび/または変種を意図する。
【0045】
したがって、本発明の哺乳動物細胞または細胞株を、CMP−SATおよび/または異種タンパク質をコードする遺伝子またはこの遺伝子を含む構築物で形質転換することができる。例えば、細胞を、少なくとも1つのIFN−γ、そのフラグメント、または変種をコードする遺伝子で形質転換する。したがって、本発明は、内因性レベルを超えたレベルでCMP−SATタンパク質を発現するようなCMP−SAT遺伝子での細胞の遺伝子操作を含む。CMP−SAT発現の増加により、CMP−シアル酸(CMP−SA)のゴルジ装置への輸送が増加して内因性レベルを超えて糖タンパク質がシアリル化される。したがって、本発明は、CMP−SATをコードする遺伝子またはこの遺伝子を含む構築物で形質転換された少なくとも1つの哺乳動物細胞を提供する。特に、哺乳動物細胞を、哺乳動物CMP−SAT遺伝子で形質転換する。例えば、ヒトまたはCHOのCMP−SAT遺伝子で形質転換する。
【0046】
当分野で公知の技術を使用した1つの細胞株中での複数の転写物(例えば、目的のCMP−SATおよび/または糖タンパク質をコードする転写物)の発現クローニングは、所望のシアリル化反応を引き起こし、これらの反応を至適化する必要があり得る。あるいは、当分野で公知の技術を使用した複数のウイルスでの細胞の同時感染を使用して、複数の組換え転写物を同時に産生することもできる。さらに、プロモーターまたは初期プロモーターの調節下でいくつかを含む複数の外来遺伝子を組み込むプラスミドは、本発明の目的のために市販されているか、公的にされているか、利用可能であり、これを使用して適切な構築物を作製することができる。本発明は、これらの技術のいずれかの使用を含む。本発明はまた、目的の異種糖タンパク質の産生前に細胞中で所望のCMP−SATが発現できるようにするための上記ベクター型の使用を含む。あるいは、目的のCMP−SATおよび/または糖タンパク質の遺伝子を、当分野で公知のベクターを使用して宿主細胞ゲノムに直接組み込むことができる。さらに、1つまたは複数の異なる異種遺伝子を同時に構成性に発現する安定な形質転換体を産生するための連続形質転換ストラテジーを日常的に発生することができる。特に、本発明の哺乳動物細胞または細胞株は、CHO細胞、単離細胞、または細胞株であってよく、前記細胞が内因性レベルを超えてCMP−SAT、そのフラグメント、または変種を産生し、前記細胞が内因性レベルを超えて少なくとも1つのシアリル化糖タンパク質を産生する。シアリル化糖タンパク質は、少なくともIFN−γ、そのフラグメント、または変種であり得る。本発明の哺乳動物細胞は、単離細胞株であり得る。
【0047】
別の実施形態によれば、本発明は、本発明の哺乳動物細胞または細胞株を含む少なくとも1つのシアリル化糖タンパク質の発現用キットを提供する。
【0048】
別の態様によれば、シアリル化オリゴサッカリドを有する糖タンパク質を産生するための方法および系を提供する。したがって、本発明は、内因性レベルを超えてCMP−SAT、そのフラグメント、または変種の発現を増強する工程を含む、細胞または細胞株でのシアリル化糖タンパク質の調製方法を提供する。さらなる態様によれば、シアリル化糖タンパク質はまた、内因性レベルを超えて発現する。より詳細には、CMP−SATの過剰発現によって糖タンパク質のシアリル化が最大になる。特に、哺乳動物細胞または細胞株は、CHO細胞株またはヒト細胞株であり得る。シアリル化糖タンパク質は、異種哺乳動物糖タンパク質であり得る。例えば、シアリル化糖タンパク質は、任意のIFN−γ、そのフラグメント、または変種である。
【0049】
より詳細には、本発明では、著者は、CHO IFN−γ中でのハムスターCMP−SATの過剰発現(すなわち、内因性レベルを超えた発現)を報告する。本発明者らは、本明細書中で、CMP−SATの過剰発現によって組換えIFN−γのシアリル化が改良されることを証明した。CHO細胞におけるこのグリコシル化操作アプローチがどこかで報告されていることが知られていないので、本発明は、組換え糖タンパク質産生時のシアリル化を改良するための新規のアプローチを示す。
【0050】
別の態様によれば、本発明は、(a)哺乳動物細胞を、内因性レベルを超えて、CMP−SAT、そのフラグメント、もしくは変種をコードする遺伝子また前記遺伝子を含む構築物で形質転換する工程と、
(b)前記細胞を、少なくとも1つの目的のシアリル化糖タンパク質をコードする遺伝子または前記遺伝子を含む構築物で形質転換する工程と
を含む、哺乳動物細胞または細胞株中で少なくとも1つのシアリル化糖タンパク質を産生する方法を提供する。
【0051】
さらに、上記方法では、目的のシアリル化糖タンパク質を、内因性レベルを超えて産生することができる。この方法は、さらに、目的の糖タンパク質を単離する工程を含み得る。単離糖タンパク質を、薬学的組成物または治療組成物の形態で処方することができる。
【0052】
さらに関連する態様では、本発明は、(a)細胞中の炭水化物基質を決定する工程と、
(b)前記細胞をタンパク質で形質転換して、必要な前駆基質を産生する工程と、
(c)前記細胞中のプロセシング経路を構築してシアリル化糖タンパク質を産生する工程とを含む、目的の哺乳動物細胞中でシアリル化糖タンパク質を産生する方法を含む。
【0053】
細胞は、単離細胞または細胞株であり得る。
【0054】
種々のCMP−SATタンパク質が公知である。さらに、本発明の方法で使用されるCMP−SATタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列が公知であるか、バイオインフォマティクス検索を使用して同定される。これらの配列を、本発明で使用することができる。
【0055】
本発明の方法および系を、治療に有益であり得る広範な糖タンパク質に使用することができる。特に、本発明は、血流中のタンパク質の循環時間を延長するために糖タンパク質のシアリル化が望ましい場合に有用である。例として、適切な糖タンパク質には、インターフェロン−γ(IFN−γ)が含まれる。
【0056】
特に、本発明は、組換えタンパク質のシアリル化の改良のための新規のストラテジーを確立した。本発明者らは、本明細書中で、そのモデル細胞株(CHO IFN−γ)を使用して、CMP−SATの過剰発現によってCHO細胞中でシアリル化が増加することを確認した。CMP−SATを過剰発現するクローンによる4〜16%のIFN−γシアリル化の増加は、既存のグリコシル化操作アプローチに匹敵した。実際、いくつかのクローンでは、CMP−SATのみの過剰発現がIFN−γを最大にシアリル化するのに十分であることも証明された。より有意には、所与のレベルのIFN−γ部位の占有および分岐のために、このストラテジーによって組換えタンパク質産物が最大限にシアリル化された。CMP−シアル酸輸送体の過剰発現によるゴルジでのCMP−シアル酸基質の利用可能性の増加は、いくつかの選択された単一の細胞クローンにおいて、組換えINF−γを完全にシアリル化するのに十分であった。完全にシアリル化された糖タンパク質はインビボ循環半減期が延長するので、組換えタンパク質においてこれは理想的な例である。
【0057】
CMP−SAT過剰発現ストラテジーの有効性は、グリコシル化機構における細胞型の変動および細胞のシアル酸の需要に依存する。細胞株が異なれば内因性CMP−SAT発現が変動するので、このストラテジーはCMP−SATの少ない細胞株でより有効であるとわかるはずである。あるいは、外因性供給によって(例えば、N−アセチルマンノサミン(ManNAc)供給によって)CMP−シアル酸の供給を人為的に増加させる場合、過剰発現したCMP−シアル酸輸送体は、ゴルジへ増加したCMP−シアル酸基質を輸送するように作用し、この組み合わせアプローチによってシアリル化が改良される可能性がある。CMP−SAT過剰発現のみによってIFN−γで最大シアリル化が達成された場合、さらなるManNAc供給によってシアリル化をさらに改良することはできない。
【0058】
細胞のシアル酸の需要は、ゴルジ細胞内腔中のβ1,4−ガラクトース受容体部位数に依存する(Baker et al.,2001)。これは、産生された組換え糖タンパク質の型およびそれによる関与するシアリル化量、ならびにその産生率または特異的産生性にも依存する。親CHO IFN−γが比較的高レベルでシアリル化されたIFN−γを産生することに留意すべきである(表2)。これは、CHO IFN−γが低収率の細胞株であることに一部寄与する可能性があり、単位時間あたりにゴルジを通過する組換えタンパク質分子少数であり、それによりシアリル化需要が低い。
【0059】
詳細には、使用されるモデル糖タンパク質と比較して細胞株の組換えタンパク質の産生性が高いか基本的シアル酸含有量が低い場合、CMP−SAT過剰発現ストラテジーは、一般に、シアリル化を改良するための有用なストラテジーである。さらに、結果は、グリコシル化経路の遺伝子操作およびグリコシル化を改良するための多面的アプローチにおけるヌクレオチド糖供給のためのグリコシルトランスフェラーゼとの考慮されるCMP−SATの可能性を証明する。例えば、CMP−SATと組み合わせたN−アセチルマンノサミン供給により、ゴルジへ増加したCMP−シアル酸基質が輸送され、シアリル化が改良される可能性が増大する。このような多面的アプローチを広範な種々の組換え糖タンパク質に適用することができ、哺乳動物細胞を使用して糖タンパク質産生で最大且つ一貫したシアリル化も達成可能である。
【0060】
本発明は、本発明の細胞中での異種タンパク質の発現および/またはこのような発現から恩恵を受ける任意の目的のための本発明の方法を含む。このような目的には、タンパク質のインビボ循環半減期の増加;所望の量のタンパク質の産生;タンパク質の生物機能(酵素活性、結合能力、抗原性、治療特性、およびワクチンまたは診断ツールとしての能力などが含まれるが、これらに限定されない)の増加が含まれるが、これらに限定されない。このようなタンパク質は、天然に存在する化学的な合成タンパク質、または組換えタンパク質であり得る。本発明の異種発現から恩恵を受けるタンパク質の例には、トランスフェリン、プラスミノゲン、甲状腺刺激ホルモン、組織プラスミノゲン活性化物質、エリスロポイエエチン、インターロイキン、およびインターフェロンが含まれるが、これらに限定されない。このようなタンパク質の他の例には、国際特許出願公開番号WO98/06835号(その内容が、本明細書中に参照することにより組み込まれる)に記載のタンパク質が含まれるが、これらに限定されない。1つの実施形態では、本発明の異種発現から恩恵を受けるタンパク質は、哺乳動物タンパク質である。この態様では、哺乳動物には、チャイニーズハムスター、ネコ、イヌ、ラット、マウス、ウシ、ブタ、非ヒト霊長類、およびヒトなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0061】
ここに本発明を一般的に記載したが、本発明は、以下の実施例を参照してより深く理解され、実施例は例示を目的とし、本発明を制限することを意図しない。
【実施例】
【0062】
当分野で公知であり、特に説明していない標準的な分子生物学技術は、一般に、Sambrook and Russel,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Springs Harbor Laboratory,New York(2001)に従う。
【0063】
当業者は、目的の哺乳動物細胞にCMP−SATタンパク質の遺伝子を移入するのに使用可能な種々の技術に精通している。詳細には、以下は、本発明者らが内因性レベルを超えてCMP−SATを発現し、それにより、内因性レベルを超えて糖タンパク質のシアリル化を達成するための目的の細胞の遺伝子操作で有効であることを見出した許容可能なアプローチを立証する。当業者に認識されるように、この遺伝子操作および発現を、以下に記載のものと詳細が異なる方法を使用して達成することができる。例として、異なるベクターおよび宿主細胞を使用することができる。
【0064】
[実施例1]
[材料と方法]
〔哺乳動物細胞株および培地〕
ヒトIFN−γを発現するCHO細胞株(Scahill et al.,1983)を、クローニング作業のために使用した。CHO IFN−γと呼ばれるこの細胞株を、10%(v/v)ウシ胎児血清(HyClone,Logan,UT)および0.25μMメトトレキセートを補足したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)(Invitrogen,Grand Island,NY)で成長させた。このDHFR細胞株における選択圧を維持するためにメトトレキセートを添加したが、以下に記載の安定な細胞株のジェネテシン選択時にこれを除去した。細胞を、単層としてTフラスコで成長させ、37℃の5%CO2大気下でインキュベートした。通常の継代培養時に0.05%(v/v)トリプシン/EDTA溶液(Sigma,St.Louis,MO)の添加によって細胞をTフラスコから引き離した。
【0065】
〔CHO−K1からの全長cDNA合成〕
製造者の説明書にしたがって、SV Total RNA Isolation System(Promega,Madison,WI)によってCHO−K1から総RNAを調製した。全ての逆転写試薬は、Promegaから入手した。5×M−MLV反応緩衝液、10mMの各dNTP、および25単位の組換えRNAsin(商標)リボヌクレアーゼインヒビターを含む反応混合物中でモロニーマウス白血病ウイルス逆転写酵素(M−MLV RT)を42℃で1時間使用して、全長cDNAを合成した。
【0066】
〔CMP−SATのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅〕
CHO−K1の総RNAから調製したcDNAを、以前にクローン化されたハムスターCMP−SATからデザインしたプライマーに基づいて、CMP−SAT cDNAのコード領域を増幅するためのテンプレートとして使用した(Eckhardt and Schahn,1997)。BamHIおよびHindIII制限部位を、その後のサブクローニングのためにコード領域の上流および下流に移入した。使用した5’−PCRプライマーは
【化1】

であり、3’−PCRプライマーは、
【化2】

(移入した制限部位に下線を引き、CMP−SATの組み込まれたコード領域を太字で示す)であった。全PCR試薬は、Promegaから入手した。反応混合物は、2μlのDNAテンプレート、1×Pfu緩衝液、250μMの各dNTP、1μMの各プライマー、およびTaq−Pfuポリメラーゼミックス(約5U)を含んでいた。PCR条件は以下であった:94℃で6分間、その後、94℃で1分間、50℃で1分間、および72℃で1分間を35サイクル、ならびに72℃で8分間の最終伸長。
【0067】
〔CMP−SAT発現ベクターの構築〕
PCR産物を、配列決定用のpCR(商標)−TOPO(商標)(Invitrogen,Grand Island,NY)に最初にサブクローン化し、以前にクローン化されたハムスターCMP−SAT配列と任意の変異について比較した。選択された発現ベクターは、N末端にFLAG(商標)エピトープ(DYKDDDDK)(配列番号7)を含むpCMV−Tagベクター(Strategene,La Jolla,CA)であった。検証されたPCR産物を、pCMV−Tagにサブクローン化し、再度配列決定した。融合タンパク質が産生されるべきであるので、正確な発現のためにFLAG(商標)配列がCMP−SATのコード領域にインフレームで確実に存在することが重要であった。最終プラスミドpCMV−FLAG−SATを、Maxi Plasmid Purification Kit(Qiagen,Hilden,Germany)を使用して精製し、CHO IFN−γへのトランスフェクションのためにその濃度を定量した。
【0068】
〔CHO IFN−γへのDNAの一過性および安定なトランスフェクション〕
実際のトランスフェクションを行う前に、非トランスフェクションCHO IFN−γを死滅させるのに必要なジェネテシンの最小濃度を決定するために、0.1μg/mlと1.0μg/mlとの間の種々のジェネテシン濃度(Sigma,St.Louis,MO)に対してCHO IFN−γを滴定した。Fugene 6トランスフェクション試薬(Roche,Basel,Switzerland)を使用してトランスフェクションを行った。細胞を、ウェルあたり50万個の細胞を含む6ウェルプレート中で一晩成長させ、翌日、ウェルあたり約1μgの環状プラスミドでトランスフェクトした。製造者の説明書にしたがって、6:1の比のFugene 6トランスフェクション試薬(μl):DNA(μg)中でFugene−DNA複合体を調製した。
【0069】
一過性トランスフェクションのために、細胞を48時間成長させ、その後にこれらをFACS分析のために採取する。安定な細胞株の生成のために、細胞を48時間成長させ、その後に、培地を、初期の滴定実験で決定した700μg/mlのジェネテシンを含む選択培地と交換した。選択培地中の非トランスフェクション細胞が1週間以内に死滅した場合、細胞を選択培地中で3週間保持した。3週間後、ジェネテシン耐性コロニーが認められ、これらのコロニーを無作為に選別し、その後、安定な細胞株に拡大した。これらの細胞株を選択培中で6世代維持し、その後、ジェネテシンを除去した。
【0070】
〔FACS分析〕
抗FLAG(商標)M1マウスモノクローナル抗体(Sigma,St.Louis,MO)での細胞の細胞内標識によってFACS分析を行った。CHO IFN−γを、Fugene 6トランスフェクション試薬を使用して、以下のベクターで一過性にトランスフェクトした:pcDNA3.1(+)(Invitrogen,Grand Island,NY)、pCMV−FLAG(商標)−Luc(Strategene,La Jolla,CA)、およびpCMV−FLAG(商標)−SAT。pCMV−FLAG(商標)−Lucは、FLAG(商標)−ルシフェラーゼタンパク質を発現する正のコントロールベクターである。約150万個の細胞を、各FACS調製物で使用した。細胞をPBSで洗浄し、再懸濁して単一細胞の懸濁液を得た。この懸濁液を固定し、Fix & Perm(商標)細胞透過処理キット(Caltag Laboratories,Burlingame,CA)を使用して透過処理した。次いで、これらを、抗FLAG(商標)M1マウスモノクローナル抗体の870倍希釈物で15分間標識した。その後、細胞を、1%(w/v)ウシ血清アルブミン(BSA)(Sigma)を含むPBS(1% BSA/PBS)で洗浄し、二次抗マウスIgG FITC(Dako,Copenhagan,Denmark)の500倍希釈物と暗所で15分間インキュベートした。1%BSA/PBSでの最終洗浄後、細胞を新鮮な1%BSA/PBSに再懸濁し、FACSCalibur(商標)システム(BD Biosciences,San Jose,CA)を使用して分析した。結果を、分析ツールに付属のソフトウェアを使用して分析した。
【0071】
〔CHO IFN−γクローンからの総RNA抽出およびcDNA合成〕
約1000万個の細胞を、安定な細胞株から採取し、以下のようにTRIzol(商標)試薬(Invitrogen,Grand Island,NY)を使用して、総RNAを抽出した。細胞を、1mlのTrizol(商標)試薬に再懸濁し、21Gニードルを有するシリンジで50回剪断した。細胞を、室温で約10分間インキュベートした。200μlのクロロホルムを添加し、30秒間激しく混合した。次いで、サンプルを、14,000rpmにて4℃で15分間遠心分離した。上部の水層を新規の無RNAseチューブに移し、同体積のイソプロパノールを添加した。次いで、チューブを−20℃で2時間以上インキュベートした。その後、チューブを、氷上で解凍し、14,000rpmにて4℃で15分間遠心分離した。視覚可能なRNAペレットが、チューブの底に認められた。上清を吸引し、ペレットを0.5mlの75%(w/v)エタノールで洗浄した。次いで、ペレットを、14,000rpmにて4℃で2分間遠心分離し、エタノールを除去した。RNAペレットを風乾し、35μlのDEPC水に溶解した。GeneQuant(商標)Pro RNA/DNA Calculator(Amersham Biosciences,Piscataway,NJ)を使用したRNA定量のために、サンプルを採取した。260nmと280nmとの吸光度の比を使用してRNAの質を評価し、1.9およびそれ以上の比を十分な純度のRNAの指標と見なした。
【0072】
RNA濃度に基づいて、10μgのRNAを使用して、第1のcDNA鎖を合成した。製造者の説明書にしたがって400UのImprom−II逆転写酵素および0.5μgのランダムプライマー(Promega,Madison,WI)を使用して、42℃で60分間逆転写を行った。70℃で5分間加熱して反応を停止させ、cDNAをその後のリアルタイムPCR分析のために使用した。
【0073】
〔リアルタイムPCR〕
iCycler iQ(Biorad,Hercules,CA)(Professor Heng-Phon Tooからの無料提供)(Singapore-MIT Alliance,National University of Singapore)を使用して、リアルタイムPCRを行った。PCR条件は以下であった:95℃で3分間、その後、95℃で60秒間、55℃で30秒間、および72℃で60秒間を40サイクル。アニーリング時に蛍光検出を行った。100μlの1×XtensaMix-SG(商標)(BioWORKs)の反応緩衝液は、2mM MgCl2、10pmol順方向および逆方向プライマー、1.0U DyNAzyme II(Finnzymes Oy,Espoo,Finland)、および5μlの上記のように調製したCHO IFN−γサンプル由来のcDNAを含んでいた。40μlアリコート中のサンプルを、各実施中に2連で実施した。総CMP−SATおよび組換え発現CMP−SATの検出のためのプライマーを、図1に示すようにデザインした(配列番号1〜4)。
【0074】
〔IFNγのシアリル化分析〕
安定なクローンおよび非トランスフェクションCHO IFN−γの培養物を、25mlの培地を含むT150培養フラスコ中に2.5E6細胞で播種した。以下に記載するように、分析した安定なクローンは、IC.17、IC.30、IC.37、IC.38、およびIB.8であった。t=92時間(培養物のピーク密度時間)の培養で上清を採取した。回収した上清を、2つのフラスコにプールし、その後のIFN−γ分析のために使用した。Gu(MIT,PhD Thesis,1997)による以前の研究に基づいたBioprocessing Technology Instituteの独自の至適化された分析手順を使用して、IFN−γ分析を行った。まとめると、上清をIFN−γについて免疫精製した。次いで、この精製されたIFN−γを、既知濃度のIFN−γ標準を溶離し、実際のサンプルと比較する逆相HPLCを使用して定量した。チオバルビツール酸アッセイ(TAA)(Hammond and Papermaster,1976)の修正バージョンを使用して、総シアル酸を測定した。各アッセイサンプルについて4〜5μgの精製IFN−γを使用し、実際のアッセイ前にシアリダーゼ(各0.0025U)(Roche,Basel,Switzerland)処理を使用してIFN−γからシアル酸を切断する。これは、アッセイが遊離シアル酸のみを測定するからである。TAAを3回繰り返し、各サンプルを2連で行った。両側スチューデントT検定での比較で使用するために、全部で6〜8回測定した。さらに、ミセル電気運動キャピラリークロマトグラフィ(MEKC)を使用して、IFN−γの部位占有率も測定した。各サンプルにつき2回実施した。
【0075】
[結果]
〔CMP−シアル酸輸送体を過剰発現したCHO−IFN−γ細胞株の確立〕
全長CMP−SATのPCR増幅を、前述のように、CMP−SAT cDNA周囲にデザインしたプライマーに基づいて行った。得られた配列は、アミノ酸103位でバリンからメチオニンに点変異していることを除き、公開されている配列とほぼ100%類似していた。これは、サブクローニング手順時に得られた異なるクローンについての個別の配列決定時に繰り返し検出された(図2)。
【0076】
CMP−SATの実際の三次元タンパク質構造は知られていないので、タンパク質の二次構造に及ぼすこの変異の影響を予想することは困難であった。したがって、この変異は、配列のサブクローニングのために使用されるタンパク質発現およびPCR産物にごくわずかしか影響を及ぼさないと予想された。
【0077】
FLAG(商標)の存在により、内因性タンパク質から組換えCMP−SATが分化するので、FLAG(商標)−CMP−SAT融合タンパク質を発現のために選択した。さらに、実際のタンパク質に対する抗体が利用できなかったので、FLAG(商標)融合タンパク質はタンパク質検出作業を容易にした。さらに、ヘマグルチニンタグ(Berninsone et al.,1997)のような他のエピトープタグと異なり、FLAG(商標)は、CMP−SAT(Eckhardt and Schahn,1997)の局在化および機能活性に影響を与えないことが示された。最終プラスミドpCMV−FLAG(商標)−SATを、0.4〜0.6μg/mlの濃度に精製した。
【0078】
いくつかのコントロール細胞株を、過剰発現CMP−SATを含む実際の細胞株と共に産生した。CHO IFN−γを、ヌルベクター(pCMV−Tag)でトランスフェクトし、14個のコロニーを選別し、その後、拡大して細胞株を得た。1つのヌルベクター細胞株(IB.8)を、その後のシアリル化分析で使用した。非トランスフェクションCHO IFN−γ細胞組をこれらの細胞株と共に成長させて継代歴を維持した。pCMV−FLAG(商標)−SATを含むトランスフェクション細胞から39個のコロニーを選別した。これらの細胞株のうちの4つ(IC.17、IC.30、IC.37、およびIC.38)を、その後のシアリル化分析のために選択した。「選択の基本」を、次の節に記載する。
【0079】
〔一過性にトランスフェクトした細胞における過剰発現CMP−シアル酸輸送体のFACS分析〕
トランスフェクトした細胞中のFLAG(商標)−CMP−SAT発現を検出するために、FACS分析を行った。負のコントロールとして、pcDNA3.1(+)でトランスフェクトした細胞を使用した。FLAG(商標)エピトープが依然として発現し、FACSによって検出されるので、ヌルベクターpCMV−Tagを使用しなかった。さらに、同一のトランスフェクション過程を経た負のコントロール細胞によって非トランスフェクション細胞よりも良好なコントロールが作製されることが見出された。FACS分析の結果を図3に示す。予想通りの結果が得られた。比較の基準を確立するために、マーカー領域M1を使用して、負のコントロール中でより高い蛍光を発する細胞集団を1%と恣意に定義した。この同一のマーカー領域により、pCMV−FLAG(商標)−SATでトランスフェクトした細胞の細胞集団では16.5%への増加と定義し、FLAG(商標)−CMP−SATの発現を示す。さらに、正のコントロール中の細胞集団の6.4%への増加は、FLAG(商標)−ルシフェラーゼの発現を示した。
【0080】
一過性トランスフェクション実験由来の上記結果を使用して、安定な細胞株によって細胞集団がより高い蛍光を含むようにより有意にシフトすると予想された。したがって、このFACS手順を使用して、CMP−SATの相対発現のためのクローンをスクリーニングすることができる。しかし、集団のシフトを、安定なクローンのFACS分析で証明することができなかった。それにも関わらず、種々のクローン中の標識集団の比較により、リアルタイムPCRを使用したさらなる分析およびシアリル化分析のために「高」発現、「中」発現、および「低」発現の無作為な選択が可能であった。前の節に記載するように、これにより、分析のために選択される4つの細胞株が得られた。
【0081】
〔安定な細胞株中での過剰発現したCMP−シアル酸輸送体の検出のためのリアルタイムPCR〕
リアルタイムPCRは、低レベルの転写物を検出するための高感度の方法と考えられる(Bustin,2000)。したがって、過剰発現CHO IFN−γクローン対非トランスフェクションCHO IFN−γにおけるCMP−SATの発現の比較に適切であると考えられた。さらに、選択された遺伝子領域の増幅におけるプライマーの特異性により、前の節に記載の2つのプライマー組TおよびR(配列番号1〜4)により、CMP−SATの総発現および組換え発現が比較されるであろう。リアルタイムPCRの結果を、図4に示す。
【0082】
リアルタイムPCRから安定な細胞株について得た結果は、FACS分析と比較してより決定的であった。この場合、CMP−SATの発現を安定な細胞株間で比較した場合、明らかな相違が認められた。図4の(A)から、4つの各クローン(IC.17、IC.30、IC.37、およびIC.38)が類似の閾値サイクルを有し、平均して、非トランスフェクションCHO IFN−γと比較して総CMP−SATの発現は1倍高かった。組換えCMP−SAT発現を測定した場合、結果はさらにより明らかであった(B)。4つの各クローンは発現したのに対して、非トランスフェクションCHO IFN−γおよびIB.8閾値サイクルは、テンプレートとして水を使用して行った負のコントロールと類似しており、プライマー−二量体形成に起因する蛍光によって閾値サイクルに到達した。これにより、クローンにおける組換えCMP−SAT発現が確認され、正のクローンにおける総CMP−SAT発現全体が増加した。
【0083】
〔安定な細胞株中での組換えIFN−γのシアリル化分析〕
CMP−SAT発現は、CHO IFN−γによって産生されるIFN−γのシアリル化範囲を改良すると予想された。ゴルジへのCMP−シアル酸の輸送能力の増加により、改良されたシアリル化のためのゴルジ内のCMP−シアル酸プールが増加するであろう。以下に記載するように、これは、CMP−SATを過剰発現する安定な細胞株の場合であることが見出された。図5は、IFN−γの平均シアル酸含有量を測定したTAAアッセイから得た結果を示し、シアル酸の量を分析したIFN−γに正規化している。認められるように、コントロール非トランスフェクションCHO IFN−γ(IFN−γ1モルあたり2.61±0.07molシアル酸)と比較した場合、選択した全ての陽性細胞株の平均IFN−γシアル酸含有量は8.6%〜16.1%増加した。さらに、ヌル細胞株(IB.8)の平均シアル酸含有量はCHO IFN−γよりも低く、シアル酸増加の影響は、クローンの相違よりもしろCMP−SATの過剰発現に起因することを示した。
【0084】
IFN−γの部位占有率を測定し、結果を図6に示す。予想通り、CMP−SATの過剰発現がタンパク質へのグリカンの移動(部位占有率に影響を与える)に影響を与えなかったので、CMP−SATの過剰発現は、IFN−γの部位占有率に有意な影響を与えなかった。しかし、部位占有率データを使用して、利用可能なN結合部位数に対するIFN−γの平均シアル酸含有量を正規化して、式(1)などの部位シアリル化として公知のより正確な測定指数を得た。この正規化指数により、種々の条件で操作した場合に細胞が利用可能な部位をシアリル化する能力を直接考慮することができる。
【0085】
【数1】

(式中、%2N、%1N、および0%Nは、それぞれ、2部位、1部位、および0部位グリコシル化IFN−γの比率である)。
【0086】
表1は、IFN−γ部位シアリル化データを示す。IC.37培養物から得たIFN−γについて分析したところ、非トランスフェクションCHO IFN−γに関するシアリル化の最大増加率は16%であった。
【0087】
【表1】

【0088】
組換え糖タンパク質治療薬中のシアリル化を増加させるためにCMP−SATを過剰発現させるためのこのアプローチを、本明細書中の他の場所で本発明者らの持てる知識を全て報告している。シアリル化を改良するための類似の遺伝子操作アプローチは、シアリルトランスフェラーゼの過剰発現を含む。シアリルトランスフェラーゼ操作によってIFN−γの23%(Fukuta et al.,2000)およびTNFR−IgGの30%(Weikert et.al.,1999)のシアリル化が増加したことが報告されている。シアル酸前駆体(N−アセチルマンノサミン)の供給により、IFN−γのシアリル化が15%増加した(Gu & Wang,1998)。したがって、CMP−シアル酸輸送体の過剰発現によって得られたシアリル化の増加は、過去のアプローチに類似している。したがって、このアプローチを、組換え糖タンパク質治療薬における新規のシアリル化改良手段と見なす。
【0089】
[実施例2]
[材料と方法]
〔CHO細胞株と培地〕
CHO IFN−γと呼ばれるヒトIFN−γを発現するCHO細胞株(Scahill et al.,1983)を、CMP−シアル酸輸送体の過剰発現のために使用した。DHFR欠損CHO細胞株におけるヒトインターフェロン−γ(IFN−γ)およびジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)の遺伝子の同時トランスフェクションによってこの細胞株を作製した。接着細胞株を、10%(v/v)ウシ胎児血清(HyClone,Logan,UT)および0.25μMメトトレキセートを補足したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)(Invitrogen,Grand Island,NY)中に維持した。安定なクローンの選択時に、700μg/mlのジェネテシン(商標)(G418)(Sigma)を添加した。非組換えCHO−K1細胞株を、CMP−シアル酸輸送体機能性実験およびCMP−シアル酸輸送体cDNAを増幅するために使用されるcDNAテンプレートの生成のための正のコントロールとして使用した。これを、American Type Culture Collection(ATCC number CCL-61)(Manassas,VA)から入手した。CHO−K1を、10%(v/v)ウシ胎児血清を補足したDMEM中に保持した。CHOグリコシル化変異体(Lec2)を使用して、組換えCMP−シアル酸輸送体の機能性を試験した。これを、American Type Culture Collection(ATCC number CRL-1736)(Manassas,VA)から入手した。Lec2を、小麦胚凝集素(シアル酸に結合するレクチン)に対する耐性によって単離した(Stanley & Siminovitch,1977)。Lec2細胞株を、10%(v/v)ウシ胎児血清(HyClone)を補足したα最小必須培地(MEM)(Invitrogen)中に維持した。全接着細胞を、単層として固定Tフラスコで成長させ、37℃の5%CO2大気下でインキュベートした。通常の継代培養時に0.05%(v/v)トリプシン/EDTA溶液(Sigma)の添加によって細胞をTフラスコから引き離した。
【0090】
〔チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO−K1)からの全長cDNA合成〕
以下のように、TRIzol(商標)試薬(Invitrogen)を使用して、総RNAを単離した。CHO−K1細胞を培養物から採取し、1mlのTRIzol(商標)試薬に再懸濁した。3mlシリンジおよび21ゲージのニードルを使用して、細胞をシリンジで50回剪断した。10分間のインキュベーション後、200μlの分子等級のクロロホルムを添加し、サンプルを、14,000rpmにて4℃で15分間遠心分離した。上部の水層を新規の無RNAseチューブに移し、同体積のイソプロパノールを添加した。次いで、チューブを−20℃で3時間以上インキュベートした。その後、14,000rpmにて4℃で15分間遠心分離した後に、視覚可能なペレットが認められた。このペレットを、75%(v/v)エタノールで洗浄し、風乾し、35μlのDEPC水に溶解した。GeneQuant(商標)Pro RNA/DNA Calculator(Amersham Biosciences,Piscataway,NJ)を使用して、RNAを定量した。260nmと280nmとの吸光度の比を使用してRNAの質を評価し、1.9およびそれ以上の比を十分な純度のRNAの指標と見なした。製造者の説明書にしたがって、2μlのImProm-II逆転写酵素(Promega,Madison,WI)および1μgのオリゴdT(Research Biolabs,Singapore)を含む40μlの反応物中で、第1のcDNA鎖に対する10μgのRNAの逆転写を42℃で1時間行った。70℃で5分間加熱して反応を停止させた。CHO−K1 mRNAから調製したcDNAを、CMP−シアル酸輸送体cDNAの増幅のためのテンプレートとして使用した。
【0091】
〔CMP−シアル酸輸送体のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅〕
以前にクローン化されたハムスターCMP−シアル酸輸送体からデザインしたプライマーに基づいて、クローニングのために使用するCMP−シアル酸輸送体cDNAを、CHO−K1 cDNAから増幅した(Eckhardt & Gerardy-Schahn,1997)。Nhe IおよびEcoR I制限部位を、その後のサブクローニングのためにコード領域の上流および下流に移入した。使用した順方向プライマーは、
【化3】

であり、逆方向プライマーは、
【化4】

(移入した制限部位に下線を引き、CMP−シアル酸輸送体の組み込まれたコード領域を太字で示す)であった。プライマーストック(Research Biolabs)以外の全PCR試薬は、Promega(Madison,WI)から購入した。50μlのPCR反応混合物は、4μlのCHO K1 cDNAテンプレート、1×Pfu緩衝液、250μM dNTP、2μMの各プライマー、および約10UのTaq−Pfu ポリメラーゼミックスを含んでいた。サイクル条件は、94℃で6分間の最初の変性、その後の94℃で1分間、59℃で1分間、72℃で4分間を30サイクル、および72℃で8分間の最終伸長であった。
【0092】
〔CMP−シアル酸輸送体発現ベクターの構築〕
製造者の説明書にしたがって、PCR産物を、TOPO TAクローニング(商標)のpCR(商標)2.1−TOPOに最初にサブクローン化し、PCR産物の配列を、以前にクローン化されたハムスターCMP−シアル酸輸送体配列(GenBankアクセッション番号Y12074)との比較によって検証し、100%類似していることが見出された。次いで、検証されたPCR産物を、pcDNA3.1(+)(Invitrogen)発現ベクターにサブクローン化した。次いで、配列を検証したプラスミドを含むクローンの拡大培養を行い、最終プラスミドpcDNA−SATを、QIAfilter Plasmid Maxi(Qiagen,Valencia,CA)キットを使用して精製した。CHO IFN−γへのトランスフェクションの前に、プラスミド濃度を、DU(R)530 Life Science UV/Vis分光光度計(Beckman Coulter,Fullerton,CA)を使用して測定した。
【0093】
〔CMP−シアル酸輸送体を安定に過剰発現するCHO IFN−γクローンの生成〕
「純粋な」細胞集団から開始するためのトランスフェクションを可能にするために、親CHO IFN−γの単一細胞クローンを、限界希釈によって単離した。この単一細胞クローンは、元の親集団と比較した場合、類似の成長特性(単一細胞クローンおよび親CHO IFN−γについてそれぞれ0.025/時間対0.022/時間)およびIFN−γ産生特性(単一細胞クローンおよび親CHO IFN−γについてそれぞれ2.1×10-8μg/細胞−時間対1.7×10-8μg/細胞−時間)を有していた。次いで、Cell Line Nucleofector Kit T(Amaxa,Gaithersburg,MD)を使用したNucleofector Device(Amaxa)にてエレクトロポレーションを行った。エレクトロポレーション前に細胞を2日間継代し、密集度80〜90%でヌクレオフェクトした(nucleofected)。100万個の細胞あたり約10μgの線状化プラスミドを使用した。トランスフェクションから4日後、培養培地を、選択のために700μg/mlG418(Sigma)を含む培地と置換した。G418選択を約2週間維持し、その後に安定にトランスフェクトされた細胞のプールが得られるのに対して、G418含有培地に曝露した非トランスフェクション親CHO IFN−γは1週間以内に死滅した。次いで、トランスフェクタントを、限界希釈によって単一細胞として単離して、CMP−シアル酸輸送体を安定に過剰発現する接着性細胞株を生成する。全部で36個の単一細胞クローンを、下記のリアルタイムPCRおよびウェスタンブロット分析を使用して、CMP−シアル酸輸送体過剰発現についてスクリーニングした。4つのクローンを、組換えIFN−γ産物のその後のシアリル化分析のために選択した。非トランスフェクション親CHO IFN−γとヌルベクターpcDNA3.1(+)でトランスフェクトした細胞との組も負のコントロールとして維持した。後者の場合、ヌルベクター細胞を単一クローンとしても単離し、これをさらなる分析のために無作為に選択した。
【0094】
〔CMP−シアル酸輸送体の機能性実験〕
CMP−シアル酸輸送体を含む発現構築物pcDNA−SATを、前述のエレクトロポレーションによってLec2細胞にトランスフェクトした。トランスフェクションから3日後、FACSを使用して細胞を分析した。各単一細胞懸濁液(150万個の細胞)を、20μg/ml WGA−FITC(Vector Laboratories,Burlingame,CA)またはPNA−FITC(Vector Laboratories)と室温の暗所で15分間インキュベートした。その後、細胞を、1%(w/v)ウシ血清アルブミン(BSA)(Sigma)を含むPBSで洗浄し、その後、FACSCalibur(商標)System(BD Biosciences,San Jose,CA)を使用して分析した。添付のソフトウェア分析ツールを使用して、結果を計算した。
【0095】
〔リアルタイムPCR〕
上記のように、一本鎖cDNAを、安定なCHO IFN−γ細胞株および負のコントロールから合成し、リアルタイムPCR反応でのテンプレートとして使用した。ABI PRISM(商標)7000 Sequence Detection System(Applied Biosystems,Foster City,CA)を使用して、リアルタイムPCRを行った。PCR条件は、95℃で10分間の最初の変性、その後の95℃で15秒間および60℃で60秒間を40サイクルであった。25μl 1×SYBR(商標)Green PCR Master Mix(Applied Biosystems)の反応緩衝液は、7.5pmolの順方向プライマーおよび逆方向プライマーならびに1.25μlのcDNAテンプレートを含んでいた。CMP−シアル酸輸送体転写物の総発現および組換え発現の検出のためのプライマーを、図8に示すようにデザインした。CHO β−アクチン検出のためのプライマーは、順方向プライマーとしての5’−AGCTGAGAGGGAAATTGTGCG−3’(配列番号14)および逆方向プライマーとしての5’−GCAACGGAACCGCTCATT−3’(配列番号15)であった。pcDNA−SATおよびCHO β−アクチンプラスミド(Dr Peter Morin,Bioprocessing Technology Instituteからの無料提供)の限界希釈を使用して、実施された各リアルタイムPCRについての検量線を同時に作成した。サンプルおよび標準の両方を各実施について2連で実施した。添付のソフトウェア分析ツールを使用して、閾値サイクル(Ct)を、所与のサンプルが閾値の蛍光値と交差するサイクルと定義し、したがって、Ctは出発DNAテンプレート量に比例する。Ct対プラスミド(DNA)濃度の対数の線形プロットを内挿して、未知サンプルの濃度を見出した。それぞれの総CMP−シアル酸輸送体濃度および組換えCMP−シアル酸輸送体濃度を、その各β−アクチン濃度で正規化し、過剰発現クローン由来の各サンプルの結果を、非トランスフェクション親CHO IFN−γサンプルから得た正規化濃度と比較した。
【0096】
〔抗体〕
ハムスターCMP−シアル酸輸送体のC末端領域(SwissProtアクセッション番号O08520)に対応するペプチド(CIQQEATSKERVIGV)(配列番号16)を合成し、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)と抱合したこのペプチドに対するウサギ抗血清を生成した(Open Biosystems,Huntsville,AL)。いくつかの粗血清はまた、CMP−シアル酸輸送体ポリクローナル抗体(Open Biosystems)を富化するために親和性精製したペプチドであり、これは、ウェスタンブロット分析の間に非特異的結合を減少させるのに役立った。抗ウサギIgG抗体(Jackson ImmunoResearch,West Grove,PA)を、二次検出のために使用した。正規化のためにアクチン発現を使用し、二次抗体としての抗マウスIgG抗体(Abcam)と共にアクチンに対するマウスモノクローナル抗体(Abcam,Cambridge,UK)を使用した。
【0097】
〔SDS−PAGEおよびウェスタンブロット分析〕
約1000万個の細胞を、安定なCHO IFN−γ細胞株および負のコントロールから採取し、氷冷PBSで2回洗浄した。細胞ペレットを溶解し、Eckhardt & Gerardy-Schahn(1997)に記載の条件下にて電気泳動のために還元した。同量のタンパク質溶解物を、Coomassie Plusタンパク質アッセイ(Pierce,Rockford,IL)を使用して調製した。50μgのタンパク質溶解物サンプルを、SDS−PAGE分析用の12%ポリアクリルアミドゲルにロードした。次いで、分画したタンパク質を、PVDF膜(Biorad,Hercules,CA)に電気ブロッティングした。膜を、5%(w/v)脱脂乳を含むPBS−T(ブロッキング緩衝液)中で1時間ブロッキングし、その後、ブロッキング緩衝液で1000倍希釈したポリクローナル抗CMP−シアル酸輸送体抗体またはモノクローナル抗アクチン中にて4℃で一晩インキュベートした。翌日、膜をPBS−Tで洗浄し、その後、ブロッキング緩衝液で1000倍希釈した抗ウサギIgG抗体(CMP−シアル酸輸送体の検出)または抗マウスIgG抗体(アクチンの検出)中で1時間インキュベートした。膜をPBS−Tで洗浄し、その後、製造者の説明書にしたがって、膜をECLウェスタンブロット検出試薬(Amersham Biosciences)を使用した化学発光によって検出した。タンパク質バンドの強度を、Gel Doc XRシステム(Biorad)に添付のソフトウェア分析ツールを使用して定量した。特記しない限り、全てのインキュベーションを室温で行った。
【0098】
〔IFNγのグリコシル化分析〕
IFNγのグリコシル化分析の詳細な手順は、以前に説明されている(Wong et al.,2005)。簡単に述べれば、安定なCHO IFN−γ細胞株および負のコントロール由来の上清を、バッチ培養で細胞がコンフルエンシーに到達した時に採取した。上清を濾過し(0.22μM)、精製マウス抗IFNγクローンB27(BD Pharmigen,San Diego,CA)から作製した免疫親和性カラムによって精製した。既知のIFN−γ濃度の標準(Research Diagnostics Inc.,Flanders,NJ)で実施し、実際のサンプルと比較した逆相HPLCを使用して、IFN−γを定量した。Shimadzu LC-10ADvp HPLCシステム(Shimadzu Corporation,Kyoto,Japan)でVydac C18カラム(1mm×250mm)(Grace Vydac,Hesperia,CA)を使用した。サンプルを、35%(v/v)〜65%(v/v)の緩衝液Bの直線勾配(緩衝液A:0.1%(v/v)トリフルオロ酢酸(TFA)を含むHPLC用の水;緩衝液B:0.1%(v/v)のHPLC用アセトニトリル)で、0.06ml/分の流速にてサンプルを溶離した。次いで、シアリダーゼ処理を使用して精製IFN−γサンプルからシアル酸を切断した後、IFN−γの総シアル酸含有量を、チオバルビツール酸アッセイ(Hammond & Papermaster,1979)の修正バージョンを使用して測定した。ミセル電気運動キャピラリークロマトグラフィを使用して、IFN−γの部位占有率を測定した。
【0099】
[結果]
〔組換えCMP−シアル酸輸送体(CMP−SAT)の機能性試験〕
モデル細胞株CHO IFN−γは、内因性CMP−シアル酸輸送体を含む。CMP−シアル酸輸送体発現構築物のトランスフェクションによって機能的組換えCMP−シアル酸輸送体が得られ、輸送体活性が内因性CMP−シアル酸輸送体のみに起因しないことを確認する必要があった。前に記載されているように、Lec2細胞株は、CMP−シアル酸輸送体の欠失のために糖タンパク質をシアリル化することができないCHO変異細胞株である(Deutscher et al.,1984)。機能的CMP−シアル酸輸送体のトランスフェクションによって欠失が補正され、シアリル化糖タンパク質が得られる。したがって、CMP−シアル酸輸送体構築物を試験するためのアッセイを、この細胞株の特性に基づいてデザインすることができる。レクチンを使用して、CMP−シアル酸輸送体発現構築物のトランスフェクション前後のLec2表面糖タンパク質の相違を検出した。フルオレセインイソチオシアネート(FITC)に抱合した小麦胚凝集素(WGA)およびピーナッツ凝集素(PNA)(それぞれシアル酸(Ishida et al.,1998)およびガラクトース(Aoki et al.,2001)に結合する)を、FACS分析で使用した。レクチンがこの実験のためにシアリル化糖タンパク質と非シアリル化糖タンパク質とを区別する能力を有することを証明するために、CHO−K1細胞およびLec2細胞によって産生された表面糖タンパク質を、FACS分析でWGA−FITCおよびPNA−FITCを使用して検出した(図9A、B)。予想通り、Lec2表面糖タンパク質は、CHO−K1表面糖タンパク質と比較して、それぞれより低い蛍光およびより高い蛍光を有する細胞集団の相対的検出によって証明されるように、WGA−FITCとの結合が弱く(図9A)、PNA−FITCとの結合が強かった(図9B)。Lec2細胞へのpcDNA−SATの一過性トランスフェクションにより、WGA−FITCをFACS分析のために使用した場合、小集団の1つが右にシフトする細胞の二峰性分布を示した(図10A)。これにより、組換えCMP−シアル酸輸送体がこれらの細胞の変異体の欠失を修正することができるLec2細胞の小集団におけるシアリル化糖タンパク質の結合が証明された。PNA−FITC(ガラクトース結合レクチン)FACS分析で逆の効果が認められた場合、これらの結果が確認された(図10B)。これにより、Lec2細胞の欠失を修正することができるpcDNA−SATから発現されるCMP−シアル酸輸送体の機能性が証明された。得られた結果は、Lec2グリコシル化変異体の欠失を修正するCMP−シアル酸輸送体の能力についての以前に報告された分析と一致する(Aoki et al.,2001;Ishida et al.,1998)。したがって、CHO IFN−γへのpcDNA−SATの類似のトランスフェクションにより、機能的CMP−シアル酸輸送体が過剰発現するであろう。
【0100】
〔安定な細胞株中で過剰発現したCMP−シアル酸輸送体の検出〕
非相同組換えによって宿主染色体に発現ベクターがほぼ単純に安定に組み込まれ、その組み込み部位は無作為に分布している(Kaufman,1990)。したがって、他の細胞操作アプローチと同様に、CMP−シアル酸輸送体の過剰発現についてCHO IFN−γサブクローンをスクリーニングする必要があった。CMP−シアル酸輸送体の過剰発現が、リアルタイムPCRを使用して転写レベルで検出され、ウェスタンブロット分析を使用してタンパク質レベルで検出された。リアルタイムPCR分析は少量のmRNAの検出に有用なアッセイであることが証明されているので、CMP−シアル酸輸送体転写物レベルを比較するためにリアルタイムPCR分析を選択した(Bustin,2000)。これは、70〜80桁と定量のダイナミックレンジが広く、技術的感度および精度が高い(Klein,2002)。さらに、選択された遺伝子領域の増幅におけるプライマーの特異性により、CMP−シアル酸輸送体の総発現と組換え発現とを比較することが可能であった(図8)(配列番号8〜11)。
【0101】
CMP−シアル酸輸送体を過剰発現する4つのクローンは、非トランスフェクション親CHO IFN−γサンプルと比較して、総CMP−シアル酸輸送体転写物が2〜20倍に増加した(図11)。組換え輸送体転写物の対応する増加が認められたので、これは、これらのクローン中の組換えCMP−シアル酸輸送体発現に寄与し得る。これは、単離された4つのクローンがベクタートランスフェクションによってCMP−シアル酸輸送体発現がより高くなり、且つ、より高く内因性CMP−シアル酸輸送体を発現する無作為なクローンの選択のみに起因しないことを示した。CMP−シアル酸輸送体の過剰発現は、ウェスタンブロット分析を使用してタンパク質レベルでも検出された(図13)。
【0102】
総CMP−シアル酸輸送体転写物の増加倍率(図11)により、一般に、輸送体タンパク質発現が増加し(図13)、このことは、CMP−シアル酸輸送体の転写および翻訳過程で調節されない場合に予想される。しかし、輸送体転写レベルの増加倍率の範囲(約2〜20倍)により、輸送体タンパク質の過剰発現の増加倍率が類似の範囲にならなかった(表2に示すように、約1.8〜2.8倍)。転写物の増加は常にタンパク質の良好な指標ではなく、それにより、両レベルでの発現プロフィールが必要であることが立証された(Cox et al.,2005)。さらに、首尾よく翻訳されたタンパク質が必ずしも機能的な形態に成熟するわけではないので、翻訳後修飾により、さらに複雑になる。最後に、位置を補正するために機能タンパク質はターゲティングもされなければならず、その後、細胞中でのその役割を果たすことができる。
【0103】
CMP−シアル酸輸送体過剰発現の転写物とタンパク質レベルとの間のこの相関関係の欠如についての仮定の理由の1つは、細胞による輸送タンパク質発現の飽和である。CMP−シアル酸輸送体は約30kDaの比較的小さなタンパク質であるが、正確に折り畳まれ、正確な膜トポロジーで挿入され、トランスゴルジ膜に局在化される必要があり、その後に機能的にCMP−シアル酸を輸送することができる膜貫通タンパク質である(Eckhardt and Gerady-Schahn,1997)。CMP−シアル酸輸送体が10個の膜貫通スパニング(spanning)ヘリックスを含むので(Eckhardt et al.,1999)、他の多経路膜貫通タンパク質(Lodish et al.,2000)と同様に、その正確な挿入はおそらく内部疎水性位相(topogenic)配列に依存するであろう。CMP−シアル酸輸送体のターゲティングおよび局在化は、タンパク質配列の読み取り枠内のアミノ酸の特定の配列によって決定されるようである(Eckhardt et al.,1998)。組換えCMP−シアル酸輸送体は、内因性CMP−シアル酸輸送体を含むCHO−K1 cDNAからクローン化されたので、正確な膜挿入およびトランスゴルジ局在化のために上記特性を有するであろう。それにもかかわらず、CMP−シアル酸輸送体の異種過剰発現が依然としてこの仮定の効率に影響を与えると主張する。例えば、ERでの誤折り畳みにより、機能タンパク質として保持される代わりに分解のために組換えCMP−シアル酸輸送体がターゲティングされるであろう。これにより、転写物発現の増加倍率と比較して、より狭い範囲の輸送体タンパク質の過剰発現の増加倍率が検出されるであろう。しかし、最終的に、CMP−シアル酸輸送体過剰発現の現時点のレベルが組換えタンパク質産物(IFN−γ)のシアリル化を改良するのに十分であるかどうかを考慮することがより重要であり、このことについては次に示す。
【0104】
〔IFNγグリコシル化に及ぼすCMP−シアル酸輸送体過剰発現の影響〕
2つの量的指標を使用して、CMP−シアル酸輸送体を過剰発現するクローンと負のコントロール(非トランスフェクション親CHO IFN−γおよびヌルベクター細胞株)との間の組換えIFN−γのシアリル化範囲を比較した。IFN−γシアル酸含有量(式2)は、タンパク質上の平均シアル酸量を測定する。IFN−γが完全な部位占有率および2つの触角を持つ糖タンパク質のみを有すると考えられる場合、この糖タンパク質についてのIFNγの分子(またはモル)あたりのシアル酸の4分子(またはモル)の理論上の最大値を計算することができる。
【0105】
【数2】

【0106】
しかし、IFNγの部位占有率は、決して100%ではない。したがって、シアリル化範囲のより直接的な指標は、部位シアリル化である。この指標は、IFNγ上のシアル酸を利用可能なN結合部位に正規化する(式3)。この正規化により、細胞が所与の部位をシアリル化する能力を直接考慮することが可能である。したがって、これにより、細胞中のシアリル化過程の改良におけるCMP−シアル酸輸送体過剰発現の有効性が直接測定されるようになる。
【0107】
【数3】

(式中、%2N、%1N、および0%Nは、それぞれ、2部位、1部位、および0部位グリコシル化IFN−γの比率である)。CMP−シアル酸輸送体過剰発現がシアリル化に影響を及ぼすので、IFN−γの部位占有率は変化しないと予想され、これは、タンパク質へのオリゴサッカリドの輸送過程がシアリル化過程の上流であるからである。したがって、78.5%2N、18.0%1N、および3.5%0Nの平均部位占有率の使用により(Gu,1997)、IFN−γの実際の最大シアル酸含有量は、IFN−γ1モルあたり3.5モルのシアル酸と計算される。これにより、CHO IFN−γで達成することができる最大IFN−γシアル酸含有量となる。
【0108】
CMP−シアル酸輸送体を過剰発現する同一の4つの単一細胞クローンおよび負のコントロールを使用して、接着バッチ培養を行った。4つの各クローンは負のコントロールと比較した場合、IFN−γシアル酸含有量の増加が認められた(図14)。予想通り、IFN−γ部位占有率は、CMP−シアル酸輸送体過剰発現によって有意に影響を受けなかった(図15)。部位シアリル化に関して、CMP−シアル酸輸送体の過剰発現範囲を、正規化IFN−γシアル酸含有量と比較した(表2)。非トランスフェクション親CHO IFN−γと比較した場合、CMP−シアル酸輸送体を過剰発現する単一細胞クローンのIFN−γ部位シアリル化が4〜16%相対的に増加した。CMP−シアル酸輸送体タンパク質レベルの増加倍率がより高かったクローン9および15は、クローン21および26と比較して、対応するIFN−γ部位シアリル化がより改良されていることが認められた(表2)。これらの4つのクローンで認められた傾向により、この傾向が、IFN−γ部位シアリル化を増加させるCMP−シアル酸輸送体過剰発現であることをより決定的に推測することができる。クローン9および15のIFN−γシアル酸含有量(表2)が先に記載したIFN−γ1モルあたりの実際の最大範囲が3.5モルのシアル酸であると考えられる場合、これらのクローンは、シアリル化が最大の組換えIFN−γを産生する。したがって、これらの結果は、CMP−シアル酸輸送体の過剰発現によってチャイニーズハムスター卵巣細胞におけるシアリル化が増加するという仮説を確証する。
【0109】
【表2】

【0110】
【表3】

【0111】
[文献]
【表4A】

【表4B】

【表4C】

【表4D】

【表4E】

【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】リアルタイムPCR用のプライマーデザイン。全CMP−SAT発現を検出するために、CMP−SAT読み取り枠(ORF)内のプライマー組Tをデザインした。5’プライマーは、5’−TGATAAGTGTTGGACTTTTAGC−3’(配列番号1)であり、3’プライマーは、5’−CTTCAGTTGATAGGTAACCTGG−3’(配列番号2)であった。組換え発現CMP−SATを検出するために、図に示すように、5’プライマーがCMP−SAT ORF内に存在し、且つ3’プライマーがORFおよびpCMV−Tagプラスミド配列に隣接するようにプライマー組Rをデザインした。5’プライマーは、5’−CTGCAGCCATTGTTCTTTCTAC−3’(配列番号3)であり、3’プライマーは、5’−GTATCGATAAGCTTTCACACACC−3’(配列番号4)であった。
【図2】得られたPCR産物のタンパク質PSI-Blastの結果。得られたDNA配列を翻訳し、PSI-Blastを使用してblastを実施した。アミノ酸103にバリンからメチオニンへの点変異が認められた。
【図3】一過性にトランスフェクトされた細胞のFACS分析。細胞を、負のコントロールpcDNA3.1(+)(A)、実際のプラスミドpCMV−FLAG(商標)−SAT(B)、および正のコントロールpCMV−FLAG(商標)−Luc(C)で一過性にトランスフェクトした。マーカー領域M1を使用して、負のコントロールにおいて細胞集団の1%がより高い蛍光を発すると恣意に定義した。この同一のマーカー領域により、実際のプラスミドおよび正のコントロールでより高い蛍光を発するのはそれぞれ細胞集団の16.5%および6.4%と定義した。したがって、各サンプル中でFLAG−CMP−SATおよびFLAG−ルシフェラーゼが発現した。
【図4】安定なCMP−SATクローン対非トランスフェクションCHO IFN−γのリアルタイムPCR分析。総CMP−SAT発現を比較した場合(A)、陽性クローンにおける発現は、非トランスフェクションCHO IFN−γおよびヌル細胞株IB.8よりも高かった。組換えCMP−SAT発現を比較した場合(B)、陽性クローンにおける発現はCHO IFN−γおよびIB.8よりも明らかに高く、後者のサンプルは負のコントロールにより近い閾値サイクル(threshold cycle)を有し、プライマー−二量体形成に起因する蛍光によって閾値サイクルに到達する。いずれの場合にも同量の出発テンプレートを使用したので、発現レベルをこの方法で比較することができる。閾値サイクルを、所与のサンプルが20,000の相対蛍光単位(RFU)値と交差するサイクルと定義する。Wは、テンプレートとして水を使用した場合の負のコントロールを示す。
【図5】修飾チオバルビツール酸アッセイを使用したシアル酸分析(Hammond and Papermaster,1976)。1モルのIFNγあたりのシアル酸のモル数で示す細胞株の平均シアル酸含有量は、以下であった:非トランスフェクションCHO IFN−γ−2.61±0.07、IC.17−2.86±0.16、IC.30−2.83±0.17、IC.37−3.03±0.21、IC.38−2.85±0.21、IB.8−2.30±0.28。両側スチューデントT検定を使用して、安定な各細胞株の平均シアル酸含有量を、非トランスフェクションCHO IFN−γから得た値と比較した。得られたp値は0.05未満であり、測定値は統計的に有意であると考えられる。比率は、非トランスフェクションCHO IFN−γを超える平均シアル酸含有量の増加率を示す。
【図6】MEKCを使用したグリカン部位の占有率。非トランスフェクションCHO IFN−γと比較した過剰発現CMP−SAT細胞株およびヌル細胞株の部位占有率に明らかな相違はなかった。いくつかの細胞株から得たIFNγにおいてO部位グリコシル化IFNγを検出できなかった。各サンプルの2連の実験から標準偏差を得た。
【図7】シアリル化過程の略図。CMP−シアル酸は、CMP−シアル酸輸送体によってサイトゾルからゴルジに輸送される。これは、ゴルジ細胞内腔へのCMP−シアル酸の侵入が細胞内腔からのCMPの等モルの放出に関与する逆輸送機構によって生じる(Hirschberg et al.,1998)。次いで、シアリルトランスフェラーゼは、β1,4−ガラクトース受容体部位を有する、入ってきたポリペプチド鎖へのシアル酸の輸送のための補基質としてCMP−シアル酸を使用する。
【図8】総CMP−シアル酸輸送体発現および組換えCMP−シアル酸輸送体発現を検出するために使用したリアルタイムPCRプライマー。総CMP−シアル酸輸送体発現を検出するために、CMP−シアル酸輸送体の読み取り枠(ORF)内にプライマー組Tをデザインした。順方向プライマーは、5’−TGATAAGTGTTGGACTTTTAGC−3’(配列番号8)であり、逆方向プライマーは、5’−CTTCAGTTGATAGGTAACCTGG−3’(配列番号9)であった。組換えCMP−シアル酸輸送体を検出するために、順方向プライマーがpcDNA3.1(+)ベクター配列(5’−CTAGCGCCACCATGGCTCAGG−3’(配列番号10))の一部であり、逆方向プライマーがCMP−シアル酸輸送体PRF(5’−CTTCTGTGACACACACGGCTGTG−3’(配列番号11))内に存在するようにプライマー組Rをデザインした。
【図9】(A、B)WGA−FITC(A)およびPNA−FITC(B)を使用したCHO−K1およびLec2細胞由来の表面糖タンパク質のFACS分析。Lec2細胞は、CMP−シアル酸輸送体の欠失の結果としてその糖タンパク質をシアリル化することができず、表面糖タンパク質は、シアリル化されたCHO−K1由来の表面糖タンパク質よりもWGA−FITCに結合せず、PNA−FITCに結合する。
【図10】(A、B)WGA−FITC(A)およびPNA−FITC(B)を使用したpcDNA−SAT(Lec2−SAT)で一過性にトランスフェクトしたLec2細胞のFACS分析。恣意のM1ゲーティングを、より高い蛍光(プロットの右側)のWGA−FITCで染色したLec2細胞の1%に設定した(A)。Lec細胞集団の40.9%が、M1ゲーティングに関するWGA−FITC結合に反応した。同一のM1ゲーティングを、より低い蛍光(プロットの左側)のPNA−FITCで染色されたLec2細胞の5%に設定した(B)。Lec2細胞集団の37.3%が左にシフトし、M1ゲーティングに基づいたPNA−FITCとの結合がより少なかった。この実験を繰り返し、類似の結果が得られた。
【図11】選択されたクローンおよび負のコントロール、非トランスフェクション親CHO IFN−γ、およびヌルベクター細胞株における総CMP−シアル酸輸送体転写物の比較。クローン9、15、21、および26についての非トランスフェクション親CHO IFN−γに関するCMP−シアル酸輸送体転写物の増加倍率は、17.0±3.3、20.1±0.9、5.6±0.6、および2.2±0.1であった。各サンプルについて、細胞ペレットを2回回収して、リアルタイムPCR分析用のcDNAサンプルを生成した。各リアルタイムPCRの実施では、各サンプルを2連で実施する。
【図12】選択されたクローンおよび負のコントロール、非トランスフェクション親CHO IFN−γ、およびヌルベクター細胞株における組換えCMP−シアル酸輸送体転写物の比較。より低い閾値サイクルによって示されるように、総CMP−SAT転写物の増加がより高いクローン9(◆)および15(黒四角)は、対応するより高いレベルの組換えCMP−SAT転写物を示す。クローン21(黒三角)および26(×)で類似の傾向が認められ、総CMP−SAT転写物の増加はより低かった。負のコントロールを、非トランスフェクション親CHO IFN−γ(●)およびヌルベクター細胞株(*)によって示す。各サンプルについて、細胞ペレットを2回回収して、リアルタイムPCR分析用のcDNAサンプルを生成した。各リアルタイムPCRの実施では、各サンプルを2連で実施する。この図は、反復分析の代表を示す。
【図13】負のコントロール、非トランスフェクション親CHO IFN−γ、およびヌルベクター細胞株と比較した場合にCMP−シアル酸輸送体を過剰発現する接着安定性クローンのウェスタンブロット分析。CMP−シアル酸輸送体を、以前の基準に基づいて約30kDaのバンドとして同定した(Berninsone et al.,1997;Eckhardt & Gerardy-Schahn,1997;Ishida et al.,1998)。
【図14】負のコントロール、非トランスフェクション親CHO IFN−γ、およびヌルベクター細胞株と比較した場合にCMP−シアル酸輸送体を過剰発現する接着安定性クローンの組換えIFN−γシアル酸含有量(n=2)。スチューデントT検定によると、クローン9、15、および26由来のIFN−γシアル酸含有量の測定値は、非トランスフェクション親CHO IFN−γと統計的に異なっていた(p<0.05)。IFN−γシアル酸含有量を測定するために使用されるチオバルビツール酸アッセイを2回行い、各サンプルを2回アッセイした。
【図15】CMP−シアル酸輸送体および負のコントロール、非トランスフェクション親CHO IFN−γ、およびヌルベクター細胞株を過剰発現する接着安定性クローンの組換えIFN−γ部位の占有率。バーは、IFN−γの2−N(斜線入り四角)、1−N(黒四角)、および0−N(□)グリカン部位の占有率を示す。比率は、2〜3回のミセル電気運動キャピラリークロマトグラフィ(MEKC)から得た平均値を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内因性レベルを超えてCMP−SAT、そのフラグメントまたはその変種を産生する哺乳動物細胞。
【請求項2】
前記細胞が、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である、請求項1に記載の哺乳動物細胞。
【請求項3】
前記細胞がヒト細胞である、請求項1に記載の哺乳動物細胞。
【請求項4】
前記細胞が、CMP−SATをコードする遺伝子または前記遺伝子を含む構築物で形質転換されている、請求項1〜3に記載の哺乳動物細胞。
【請求項5】
前記CMP−SAT遺伝子が哺乳動物遺伝子である、請求項1〜4に記載の哺乳動物細胞。
【請求項6】
前記CMP−SAT遺伝子が、CHO遺伝子またはヒト遺伝子である、請求項1〜5に記載の哺乳動物細胞。
【請求項7】
前記細胞が、内因性レベルを超えて少なくとも1つのシアリル化糖タンパク質を産生する、請求項1〜6に記載の哺乳動物細胞。
【請求項8】
前記糖タンパク質が異種である、請求項7に記載の哺乳動物細胞。
【請求項9】
前記糖タンパク質が哺乳動物である、請求項7〜8に記載の哺乳動物細胞。
【請求項10】
前記糖タンパク質がヒトである、請求項7〜9に記載の哺乳動物細胞。
【請求項11】
前記糖タンパク質が、任意のIFN−γ、そのフラグメントまたはその変種である、請求項7〜10に記載の哺乳動物細胞。
【請求項12】
前記細胞が、異種タンパク質をコードする遺伝子または前記遺伝子を含む構築物で形質転換されている、請求項1〜11に記載の哺乳動物細胞。
【請求項13】
前記細胞が、少なくとも1つのIFN−γ、そのフラグメントまたはその変種をコードする遺伝子で形質転換されている、請求項1〜12に記載の哺乳動物細胞。
【請求項14】
前記細胞がCHO細胞であり、前記細胞が内因性レベルを超えてCMP−SAT、そのフラグメントまたはその変種を産生し、前記細胞が内因性レベルを超えて少なくとも1つのシアリル化糖タンパク質を産生する、請求項1〜13に記載の哺乳動物細胞。
【請求項15】
単離細胞株形態である、請求項1〜14に記載の哺乳動物細胞。
【請求項16】
前記哺乳動物細胞が、少なくとも1つのシアリル化糖タンパク質の発現用キット中に含まれる、請求項1〜15に記載の哺乳動物細胞。
【請求項17】
内因性レベルを超えてCMP−SAT、そのフラグメントまたはその変種の発現を増強するステップを含む、細胞または細胞株でシアリル化糖タンパク質を調製する方法。
【請求項18】
前記シアリル化糖タンパク質が内因性レベルを超えて発現する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記細胞または細胞株が、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)またはヒトである、請求項17〜18に記載の方法。
【請求項20】
前記シアリル化糖タンパク質が、異種哺乳動物糖タンパク質である、請求項17〜19に記載の方法。
【請求項21】
前記シアリル化糖タンパク質が、任意のIFN−γ、そのフラグメントまたはその変種である、請求項17〜20に記載の方法。
【請求項22】
哺乳動物細胞または細胞株中で少なくとも1つのシアリル化糖タンパク質を産生する方法であって、
(a)哺乳動物細胞を、内因性レベルを超えて、CMP−SAT、そのフラグメントもしくはその変種をコードする遺伝子また前記遺伝子を含む構築物で形質転換するステップと、
(b)前記細胞を、少なくとも1つの目的のシアリル化糖タンパク質をコードする遺伝子または前記遺伝子を含む構築物で形質転換するステップと
を含む方法。
【請求項23】
前記目的のシアリル化糖タンパク質が、内因性レベルを超えて産生される、請求項22に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2007−535925(P2007−535925A)
【公表日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−511323(P2007−511323)
【出願日】平成17年5月4日(2005.5.4)
【国際出願番号】PCT/SG2005/000139
【国際公開番号】WO2005/105156
【国際公開日】平成17年11月10日(2005.11.10)
【出願人】(304038747)ナショナル ユニバーシティー オブ シンガポール (10)
【氏名又は名称原語表記】NATIONAL UNIVERSITY OF SINGAPORE
【住所又は居所原語表記】10 Kent Ridge Crescent, Singapore 119260
【出願人】(596060697)マサチューセッツ・インスティテュート・オブ・テクノロジー (233)
【Fターム(参考)】