説明

哺乳類の癌細胞中の目的ポリヌクレオチドを発現させる核酸

【課題】哺乳類の癌細胞、例えば哺乳類の肝臓癌細胞中で特異的な目的核酸を発現するのに有用な調節ポリヌクレオチド。
【解決手段】(i)ラットおよびヒトのAFPプロモータ配列および(ii)ラットおよびヒトのHIP/PAPIプロモータ配列に由来する調節ポリヌクレオチド。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は癌の治療の分野に関するものである。
【背景技術】
【0002】
癌の治療法は長年にわたって大きく改良されてきた。そうして改良された診断法と同じく改良された外科技術とを組み合せることで外科医は正常な組織の除去量を最小にして腫瘍をより安全に除去でき、従って、患者の回復時間が短くなり、外見上の外傷による心理的影響も減らすことができるようになった。しかし、外科手術は腫瘍が局所的か転移が最小限である局所リンパ節等の患者の治療には有用であるが、転移性疾患または全身性の癌、例えば白血病またはリンパ腫の患者ではその有用性は限られている。
【0003】
米国では毎年約15,300人(男女比は2:1)が原発性(primary)肝癌と診断されている。北米および欧州では原発性肝癌は比較的まれな疾患であり、米国での原発性肝癌の発生率は100,000人当たり3人と推定される。そうは言っても、原発性肝癌は世界的に重大な健康問題である。アフリカやアジアのような流行地域での発生率は100,000人当たり30から100000人当たり100人である(米国癌協会、Cancer Facts and Figures, 1994, Atlanta, Ga.: American Cancer Society Inc.)。米国での癌の発生率での原発性肝癌の順位は低いが、原発性肝癌は致死率が0.8と極めて予後不良であるので、重大な問題である(毎年、原発性肝癌に罹患した米国での15,300人の患者のうち約13,800人が死亡する)。
【0004】
この10年間で癌の分子機構の理解が急速に進んだが、そうして進んだ癌の分子機構の理解を癌治療の改良にいかに取り入れるかが課題である。ヒトの腫瘍成長は多段階プロセスであるということは現在では一般的に認められている。この多段階プロセスは特異的遺伝子変化に対応し、それによって正常なヒト細胞の極めて悪性な誘導体への進行性トランスホーメーションが促進される。上記の悪性な誘導体は細胞増殖の増加、細胞死の減少、ゲノムの不安定化、持続的脈管形成によって特徴付けられる(Hanahan D., Weinberg R. A. 2000; Cell 100: 57-70)。これらの新しい知見から新しい治療アプローチが提案されている。これらのアプローチは腫瘍細胞中で変化する分子間相互作用および生化学的経路をターゲットにしている。
【0005】
薬物送達(drug delivery)システムは一般に薬物を広範囲の解剖学的部分、例えば消化管、尿生殖路または血液循環へ徐々に放出するデバイスまたはキャリアを含む。例えばリポソームは薬物を血液循環系中に放出するように作られている。このシステムの問題は薬物を腫瘍細胞に特異的に送達するように作られていないことである(Schally & Nagy, Europ J Endoctinol 1999; 141:1)。薬物は正常細胞にも腫瘍細胞にも区別無く送達されるため、多量の薬物を用いなければならないという問題がある。しかし、抗癌剤は有毒なため薬剤を多量に使用すると重大な臨床的問題を引き起こす。癌患者は癌の影響とほぼ同じぐらい治療の副作用に苦しむことが多いが、それでもなお癌治療のが主流では多量の薬剤が用いられている。
【0006】
この薬物毒性の問題は、癌細胞にのみ抗癌剤を送達でき、正常細胞には送達しない薬物送達システムを開発することで解決できる。
【0007】
この問題に対する一つのアプローチでは癌細胞に特異的な抗原を認識、反応する薬物担持抗体を用いる。多くのこうした抗原が存在し、そのいくつかは癌治療パラダイムで用いられている。例えば、トランスフェリン受容体抗原は癌細胞の表面には存在するが、大部分の正常細胞の表面には存在しない (Whitney et al., Cancer 1995; 76: 20)。抗癌剤は抗トランスフェリン受容体抗体と結合し、脳腫瘍患者へ送達される(Laske et al., Neurosurg 1997;41:1039)。リンパ腫患者に同位体でラベル化した抗体を用いて同様な方法が用いられている (Vose et al., Leukemia & Lymphoma 2000; 38: 91)。しかし、この抗体を介した薬物送達アプローチには複数の重大な問題がある。すなわち、遺伝子操作した動物から製造した抗体が患者体内で望ましくない反応を引き起こすことがある (Muraszko et al., Cancer Res 1983; 53: 3752)。
【0008】
抗癌治療での上記薬剤送達の問題に対するより安全なアプローチは癌細胞上の受容体に対する正常リガンドを用いた薬剤キャリアを設計することである。リガンドは特異的な受容体にのみ合う分子で、特定の鍵にしか合わない鍵に似ている。このアプローチの必要条件は受容体が単一の癌細胞の表面上に存在していることである。例えば、血中の鉄輸送に関与する蛋白質リガンドと結合するトランスフェリン受容体の場合である。抗癌剤を運ぶようにこの蛋白質リガンドを修飾することが行われ、そのリガンド受容体薬剤送達システムの急性白血病の治療での効果は証明されている (Faulk et al., Mol Biotherapy 1990; 2: 57)。
【0009】
種々の化学結合 (Kratz et al., J Pharm Sci 1998; 87: 338) を介して薬剤送達リガンドで上記と異なる種々の抗癌剤を運ぶことができる (Berczi et al., Arch Biochem Biophy 1993; 300: 356, and Beyer et al., J Med Chem 1998; 41: 2701)。しかし、この可能性は鉄のような重金属の輸送に関与する蛋白質リガンドに限定される。
【0010】
腫瘍細胞選択的なトランス遺伝子(transgene)の発現を利用した抗癌治療法も研究されている(Binley K. et al., (1999) Gene Therapy 6: 1721-1727; Heise C. et al., (1997) Nature Medicine 3: 639-645; and Parr M. J. et al, (1997) Nature Medicine 3: 1145-1149)。トランス遺伝子をインビボで腫瘍に送達するのに利用可能な方法はいくつかある(特にアデノウイルスおよびレンチウイルスベクターの送達)(Benihoud K. et al., (1999) Curr. Opin. Biotechnol. 10: 440-447)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際出願公開第 WO 2004/112824号公報
【特許文献2】国際出願公開第 WO 2004/11824号公報
【特許文献3】国際出願公開第 WO 98/45443号公報
【特許文献4】米国特許出願第 US 2005 261 232号明細書
【特許文献5】米国特許第 5,093,246号明細書
【特許文献6】米国特許第 5,093,246号明細書
【特許文献7】米国特許第5,116,742号明細書
【特許文献8】米国特許第2003 105 043号明細書
【特許文献9】米国特許第2003 195 164号明細書
【特許文献10】米国特許第2005 261 249号明細書
【特許文献11】米国特許第2005 113 328号明細書
【特許文献12】米国特許第2005 26 860号明細書
【特許文献13】米国特許第2005 26 857号明細書
【特許文献14】米国特許第2004 43 950号明細書
【特許文献15】米国特許第2004 9 156号明細書
【0012】
【特許文献16】米国特許第2003 158 130号明細書
【特許文献17】米国特許第2003 36 521号明細書
【特許文献18】国際出願公開第 WO 97/28175号公報
【特許文献19】国際出願公開第 WO 94/12650号公報
【特許文献20】国際出願公開第 WO 94/12649号公報
【特許文献21】国際出願公開第 WO 94/12629号公報
【特許文献22】米国特許出願第60/200,409号明細書(Apr. 28, 2000)
【特許文献23】PCT/USO1/13000号公報(Apr. 23, 2001)
【特許文献24】米国特許第5,922,576号明細書
【特許文献25】国際出願公開第WO 94/02595号公報(Sullivan et al)
【特許文献26】国際出願公開第WO 93/23569号公報(Sullivan et al)
【特許文献27】国際出願公開第WO 99/05094号公報(Beigelman et al)
【特許文献28】国際出願公開第WO 99/04819号公報(Klimuk et al)
【特許文献29】国際出願公開第WO 96/10391号公報(Choi et al)
【特許文献30】国際出願公開第WO 96/10390号公報(Ansell et al)
【特許文献31】国際出願公開第WO 96/10392号公報(Holland et al)
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】米国癌協会、Cancer Facts and Figures, 1994, Atlanta, Ga.: American Cancer Society Inc.
【非特許文献2】Hanahan D., Weinberg R. A. 2000; Cell 100: 57-70
【非特許文献3】Schally & Nagy, Europ J Endoctinol 1999; 141:1
【非特許文献4】Whitney et al., Cancer 1995; 76: 20
【非特許文献5】Laske et al., Neurosurg 1997;41:1039
【非特許文献6】Vose et al., Leukemia & Lymphoma 2000; 38: 91
【非特許文献7】Muraszko et al., Cancer Res 1983; 53: 3752
【非特許文献8】Faulk et al., Mol Biotherapy 1990; 2: 57
【非特許文献9】Berczi et al., Arch Biochem Biophy 1993; 300: 356, and Beyer et al., J Med Chem 1998; 41: 2701
【非特許文献10】Kratz et al., J Pharm Sci 1998; 87: 338
【非特許文献11】Binley K. et al., (1999) Gene Therapy 6: 1721-1727
【非特許文献12】Heise C. et al., (1997) Nature Medicine 3: 639-645
【非特許文献13】Parr M. J. et al, (1997) Nature Medicine 3: 1145-1149
【非特許文献14】Benihoud K. et al., (1999) Curr. Opin. Biotechnol. 10: 440-447
【非特許文献15】局所的ホモロジーアルゴリズム(Smith and Waterman Add. Apl. Math. 2:482 (1981))
【0014】
【非特許文献16】ホモロジー整列アルゴリズム(Needleman and Wunsch J. Mol. Biol. 48:443 (1970))
【非特許文献17】Pearson and Lipman Proc. Natl. Acad. Sci. (USA) 85: 2444 (1988)
【非特許文献18】GAP, BESTFIT, BLAST, PASTA, および TFASTA in the Wisconsin Genetics Software Package, Genetics Computer Group (GCG), 575 Science Dr., Madison, Wis.
【非特許文献19】Watanabe et al. (1987, J. Biol., Chem., Vol. 282(10) : 4812-4818)
【非特許文献20】1991, Iovanna et al., J Biol Chem, Vol. 266 : 24664-24669
【非特許文献21】1995, Dusetti et al., J Biol Chem, Vol. 270(38) : 22417-22421
【非特許文献22】(Sarkar et al. (2002) Biotechniques Suppl: 30-39; Fisher et al. (2003) Cancer Biol Ther 2:S23-37)
【非特許文献23】(Anderson et al. Curr Opin Pharmacol (2004) 4 (4):314-320),
【非特許文献24】(Yoshida et al, (2004) Cancer Sci 95 (11):858-865),
【非特許文献25】(Haupt et al. Cell Cycle (2004) 3 (7):912-916),
【0015】
【非特許文献26】(Chan et al. Clin Exp Pharmacol Physiol (2004) 31 (3):119-128)
【非特許文献27】(Sansal et al. J Clin Oncol (2004) 22 (14):2954-63),
【非特許文献28】(Gowardhan et al. (2004) Prostate 61 (1):50-59),
【非特許文献29】(Liu et al. Cancer Gene Ther (2004) 11 (11):748-756.),
【非特許文献30】(Qui et al. Hepatobiliary Pancreat Dis Int (2004) 3 (4):552-557),
【非特許文献31】(Sarkar et al. Pharmacol Ther (2004) 104 (2):101-115)
【非特許文献32】(Haupt et al. Cell Cycle (2004) 3 (7):912-916)
【非特許文献33】(Leibermann et al. Leukemia (2002) 16 (4):527-41)
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【非特許文献35】"Gene therapy for cancer," European Journal of Cancer, vol. 35, pp. 867-885 (1999)
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【非特許文献38】J. R. Herman et al.,"前立腺癌のためのインシチュ遺伝子治療:I相臨床試験" Human Gene Therapy, vol. 10, pp. 1239-1249 (1999)
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【0016】
【非特許文献41】Brummelkamp, T. R., R. Bernards, and R. Agami, ウイルス介在RNA干渉による腫瘍形成の安定した抑制. Cancer Cell, 2002. 2(3): p. 243-7
【非特許文献42】P. D. Zamore Science 296, 1265 (2002)
【非特許文献43】Andrew Fire and Craig Mello in C. elegans
【非特許文献44】Hammond et al. Nat. Rev. Genet. 2:110-119 (2001)
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【非特許文献47】(2004, Faivre et al., Cancer Research, Vol. 64 : 8045-8051)
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【非特許文献49】(Invitrogen, San Diego Calif.)
【非特許文献50】Invitrogen 1997 Catalog (Invitrogen Inc, San Diego Calif.)
【非特許文献51】Ausubel et al., supra, Ch 16
【非特許文献52】Smith, 1995, Annu. Rev. Microbiol. 49: 807
【非特許文献53】Rosenfeld et al., 1992, Cell 68: 143
【非特許文献54】Logan and Shenk, 1984, Proc. Natl. Acad. Sci., 81:3655
【非特許文献55】Miller et al., 1990, Mol. Cell. Biol. 10: 4239
【0017】
【非特許文献56】Kolberg, 1992, J. NIH Res. 4: 43; and Cornetta et al., 1991, Hum. Gene Ther. 2: 215
【非特許文献57】1998, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, Vol. 95 : 2590-2514
【非特許文献58】Faivre et al. (2004, Cancer Research, Vol. 64 : 8045-8051)
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【非特許文献60】Davis et al. (1986) 分子生物学の基本的方法, Elsevier
【非特許文献61】Akhtar et al., 1992, Trends Cell Bio., 2, 139;
【非特許文献62】アンチセンスオリゴヌクレオチド治療のための送達戦略, ed. Akhtar, 1995
【非特許文献63】Gold, 1997, Neuroscience, 76, 1153-1158
【非特許文献64】Ho et al., 1999, Curr. Opin. Mol. Ther., 1, 336-343
【非特許文献65】Jain, 薬物送達システム: 技術および商機 Decision Resources, 1998
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【非特許文献69】Prog Neuropsychopharmacol Biol Psychiatry, 23, 941-949, 1999
【非特許文献70】Boado et al., 1998, J. Pharm. Sci., 87, 1308-1315;
【0018】
【非特許文献71】Tyler et al., 1999, FEBS Lett., 421, 280-284
【非特許文献72】Pardridge et al., 1995, PNAS USA., 92, 5592-5596
【非特許文献73】Boado, 1995, Adv. Drug Delivery Rev., 15, 73-107
【非特許文献74】Aldrian-Herrada et al., 1998, Nucleic Acids Res., 26, 4910-4916
【非特許文献75】Tyler et al., 1999, PNAS USA., 96, 7053-7058
【非特許文献76】Lasic et al. Chem. Rev. 1995, 95, 2601-2627; Ishiwata et al., Chem. Pharm. Bull. 1995, 43, 1005-1011
【非特許文献77】Lasic et al., Science 1995, 267, 1275-1276; Oku et al., 1995, Biochim. Biophys. Acta, 1238, 86-90
【非特許文献78】Liu et al., J. Biol. Chem. 1995, 42, 24864-24870
【非特許文献79】Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co. (A. R. Gennaro edit. 1985)
【非特許文献80】He et al. (P.N.A.S, 1998; 95. 2509-14)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
従って、癌、特に肝臓癌の腫瘍細胞標的(terget)治療のための代替システムまたは改良システムに対するニーズがある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の対象は、哺乳類の癌細胞に特異的な目的のポリヌクレオチド(polynucleitide of interest)を発現させるための新規な核酸にある。
本発明は特に、癌細胞で特異的に発現する少なくとも一種の目的のポリヌクレオチドを含む上記定義の核酸に関するものである。この目的のポリヌクレオチドは癌細胞で特異的に発現するいわゆる癌細胞特異的調節ポリヌクレオチド(cancer cell-specific regulatory polynucleotide)の制御下にある。本発明ではこの調節ポリヌクレオチドはヒトAFP、ラットAFP、ヒトHIP/PAPIおよびPAPI蛋白質をコードする遺伝子のプロモータ領域に由来す各種の選択されたポリヌクレオチドから成る群の中から選択される。
【0021】
本発明では、上記の癌細胞特異的調節配列の制御下にある上記の目的のポリヌクレオチドが抗癌に有用な全ての分子(核酸、例えばRNA分子および蛋白質を含む)をコードする。
本発明はさらに、哺乳類の癌細胞に特異的な目的のポリヌクレオチドを発現させるための上記の新規核酸を含むベクターと、このベクターが形質移入または形質導入された宿主細胞にも関するものである。
本発明はさらに、有効成分として上記核酸またはベクターを含む新規な医薬組成物に関するものである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】ベクターpShuttle-rAFPwt-rNISの図。
【図2】ベクターpShuttle-hAFPt-rNISの図。
【図3】ベクターpShuttle-hHIP/PAP-rNISの図。
【図4】ベクターpShuttle-rHIP/PAP-rNISの図。
【0023】
【図5】ラットHIP/PAP調節配列の制御下での腫瘍肝細胞中のNISの機能的発現を示す図。各種感染多重度(MOI)でのAdrHIPrNIS-感染HepG2でのインビトロ123I 取込み(uptake)。 NI:未感染 DL324: 空ベクター、MOI:10; 3; AdCMVrNIS: MOI:10および100; AdrHIPrNIS:MOI:25, 50, 75; 8 および100 感染粒子。 各データは3回の実験の平均を表す。 -NaClO4:過塩素酸ナトリウムによる抑制なし、 +NaClO4: 過塩素酸ナトリウムによる抑制。
【0024】
【図6】インターロイキン6および/またはデキサメタゾンじ細胞培養した後のラットヒトHIP/PAP調節配列の制御下での腫瘍肝細胞中のNIS発現の刺激。各種刺激条件下でのMOI:100でのAdrHIPNIS-感染HepG2細胞での123I。AdCMVrNIS感染細胞で観察される取込みと比較。各データ点は3回の実験の平均を表す。 -NaClO4:過塩素酸ナトリウムによる抑制なし、 +NaClO4: 過塩素酸ナトリウムによる抑制。
【0025】
【図7】肝臓腫瘍を有するラットにラットHIP/PAP 調節配列に操作可能に結合したNIS配列を含むDNA構築物を投与した時の99Tc SPECT/CT画像。AdrHIPNIS-感染 DEN ラットの99Tc SPECT/CT 画像。肝臓の強いコントラストは形質導入した腫瘍小結節中でNIS発現レベルが高いことを示す。
【0026】
【図8】各種AFP−由来調節配列の制御下にあるNISの機能的発現。各種感染多重度でのAdhAFPt-rNIS感染およびAdrAFPwt-rNIS感染HepG2細胞のインビトロ123I 取込み。 -NaClO4:過塩素酸ナトリウムによる抑制なし、 +NaClO4: 過塩素酸ナトリウムによる抑制。各データは3回の実験の平均を表す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は、癌細胞に特異的な目的のポリヌクレオチドの発現を促進する新規な調節ポリヌクレオチドを提供する。
すなわち、本発明は、より効果的な治療効果を得るという観点から、主として標的部位で(さらには標的部位のみで)所望の生物学的効果を達成するための癌細胞を特異的にターゲットとする新規な治療ツールを提供する。本発明によって提供されるこの新規な癌細胞標的治療ツールを用いることで、体内の非癌性細胞または組織に対する副作用を減らすことができ、さらには無くすことができる。
【0028】
驚くべきことに、ヒトおよびラットのAFPおよびヒトおよびラットのHIP/PAPI蛋白質をコードする遺伝子の上流に位置するプロモータ領域に由来する調節配列のファミリーは癌細胞に特異的な目的のポリヌクレオチドを直接発現する能力を有するということを本発明者は発見した。さらに、本発明の調節配列は高い転写活性を有するので、それに操作可能に結合された目的のポリヌクレオチドの強い発現が得られる。
【0029】
本発明では(i)癌細胞中に発現させる目的のポリヌクレオチド、すなわちヨウ化ナトリウム共輸送体(NIS、sodium iodide symporter)と(ii)各種の種から得られた複数のAFP、HIP/PAP調節配列と組み合わせてウイルスベクターを作った。NIS蛋白質の発現および細胞内局在性およびNIS機能は、複数の方法(精製した抽出膜蛋白質で行った免疫ブロット法、免疫蛍光法、免疫組織化学、放射ヨウ素取込み、流出アッセー、連続シンチグラフィーとSPECT/CT画像化とを用いた動力学研究)を用いて、これらベクターをインビトロおよびインビボで感染させた一連のヒトおよびマウスの肝臓および非肝臓の正常細胞および形質転換細胞で評価した。
【0030】
インビボ研究はウイスターラットの肝細胞癌(HCC)の化学的誘発モデルで行った。発現物質のジエチルニトロソアミン(DEN)を投与してから2ヶ月後に極めて攻撃的な多結節性HCCになる。本発明では全ての調査したベクターで誘発したNIS発現パターンはインビボの肝臓腫瘍に厳密に制限されることが示された。NISは肝癌形質導入細胞の原形質膜で強く発現し、放射ヨウ素の取込みレベルを、NISが汎在の強サイトメガロウイルスプロモータ (AdCMV-NIS)の制御下にある組換えアデノウイルスとほぼ同等か、さらにはそれより高くすることができる。感染した初代肝細胞および非肝臓形質転換細胞株中ではNISの発現は見られない。インビボではNIS形質導入効率は研究した3つの投与経路(門脈、肝動脈、腫瘍内)で高い。肝臓腫瘍の血管新生は大部分が肝動脈の枝で起こるので、肝動脈経路は門脈経路より効率的であった。腫瘍内と肝動脈経路は明らかなNISの発現に差異が生じ、腫瘍領域が多い。注入した放射ヨウ素の約30%は肝臓腫瘍に集中した。肝臓腫瘍でのヨウ素生物学的半減期は2.5日であった。18mCi131Iの注入で照射形質導入腫瘍小結節は破壊され、非注入小結節は成長し続けた。
【0031】
本発明者はさらに、本明細書に記載のHIP/PAPI調節配列を用いて種々の癌に冒された器官、例えばヒトの癌性結腸およびヒトの癌性膵臓に由来する形質転換細胞株の目的蛋白、特にNIS蛋白をターゲットにした。これらの形質移入された癌性細胞株では原形質膜で強いNIS発現が誘発され、従って、これらの細胞中で高いレベルのヨウ素取込みが見られた。
【0032】
要約すると、本発明によって、ヒトまたはラットのAFP由来の調節配列を含む、または、ヒトまたはラットのHIP/PAPI由来の調節配列を含む本出願の対象である新規なNIS組換え構築物が腫瘍肝細胞、腫瘍結腸細胞および腫瘍膵臓細胞中の機能的NISのターゲット発現を実際に誘発し、しかも、この発現および取込み活性は強く、汎在のCMVプロモータによって誘発されるものとほぼ同等か、それより強い、ということが示された。
【0033】
本発明の核酸
本発明は上記で大まかに述べ、以下で詳細に説明する癌性細胞で特異的に機能する新規な調節ポリヌクレオチドを提供する。本発明ではこの新規な調節ポリヌクレオチドを癌性細胞に特異的な各種の目的ポリヌクレオチドを発現するのに用いる。以下で示すように、目的ポリヌクレオチドは特に抗腫瘍効果を有する核酸または蛋白をコードする。
【0034】
従って、本発明の対象は、下記(a)と(b)を含む哺乳類の癌細胞で特異的な目的ポリヌクレオチドを発現する核酸にある:
(a)下記(i)〜(iv)から成る調節ポリヌクレオチドの群の中から選択される、哺乳類の癌細胞で目的のポリヌクレオチドを発現させる調節ポリヌクレオチド:
(i)5’−端から3’−端へ向かって、配列番号1および配列番号4から成る群の中から選択される核酸と少なくとも90%のヌクレオチド同一性(nucleotide identity)を有する第1核酸と、配列番号3の核酸と少なくとも90%のヌクレオチド同一性を有する第2核酸とを含む調節ポリヌクレオチドであって、第1核酸と第2核酸は直接結合しているか、第1核酸と第2核酸はスペーサ核酸(長さが1〜3000ヌクレオチドである)を介して間接的に結合したもの、
まで、:
(ii)配列番号4の核酸の2200位置にあるヌクレオチドから始まり2432位置にあるヌクレオチドで終わる核酸と少なくとも90%のヌクレオチド同一性を有する調節ポリヌクレオチド、
(iii)配列番号5の核酸の979位置にあるヌクレオチドから始まり1253位置にあるヌクレオチドで終わる核酸と少なくとも90%のヌクレオチド同一性を有する調節ポリヌクレオチド、
(iv)5’−端から3’−端へ向かって、配列番号6および配列番号7から成る群の中から選択される核酸と少なくとも90%のヌクレオチド同一性を有する第1核酸と、配列番号8の核酸と少なくとも90%のヌクレオチド同一性を有する第2核酸とを含み、第1核酸と第2核酸は直接結合しているか、第1核酸と第2核酸はスペーサ核酸(長さが1〜2000ヌクレオチドである)を介して間接的に結合している調節ポリヌクレオチド:
(b)上記の目的のポリヌクレオチド。
【0035】
本明細書で参照ポリヌクレオチドに対して少なくとも90%のヌクレオチド同一性を有するポリヌクレオチドとは、参照ポリヌクレオチドに対して少なくとも90%, 91%, 92%, 93%, 94%, 95%, 96%, 97%, 98%, 99%または99.5%のヌクレオチド同一性を有するものである。
【0036】
本明細書の「配列同一性(sequence identity)のパーセンテージ」は比較ウインドに最適に整列した2つの配列で求める。この比較ウンイド内のポリヌクレオチドまたはアミノ酸配列の断片は2つの配列が最適に整列するために参照配列(付加または欠失を含まない)と比べて付加または欠失(例えばギャップまたはオーバーハング)を含むことができる。上記パーセンテージは下記(i)〜(iii)で計算される:(i)同一の核酸塩基またはアミノ酸残基が両方の配列で生じる位置の数を求め、整合した位置の数を出し、(ii)整合した位置の数を比較ウンイド内の位置の合計数で割り、(iii)結果に100を掛けて配列同一性のパーセンテージを出す。
【0037】
比較用配列の最適整列は下記う用いて行うことができる:局所ホモロジーアルゴリズム(Smith and Waterman Add. Apl. Math. 2:482 (1981))、ホモロジー整列アルゴリズム(Needleman and Wunsch J. Mol. Biol. 48:443 (1970))、類似探索法 (Pearson and Lipman Proc. Natl. Acad. Sci. (USA) 85: 2444 (1988))、これらアルゴリズムのコンピュータでの実施 (GAP, BESTFIT, BLAST, PASTA および TFASTA in the Wisconsin Genetics Software Package, Genetics Computer Group (GCG), 575 Science Dr., Madison, Wis.)または検査。2つの配列を比較用に同定した場合、GAPおよびBESTFIOTを用して最適整列を求めるのが好ましい。一般に、ギャップウエイトには5.00、ギャップウエイト長さには0.30のデフォルト値を用いる。
【0038】
最適比較ではCLUSTAL W (バージョン 1.82)で下記パラメータを用いて2つの核酸配列の同一性のパーセントを求めることができる: (1) CPU MODE = ClustalW mp ; (2) ALIGNMENT = ≪ full ≫ ; (3) OUTPUT FORMAT = ≪ aln w/numbers ≫ ; (4) OUTPUT ORDER = ≪ aligned ≫ ; (5) COLOR ALIGNMENT = ≪ no ≫ ; (6) KTUP (word size) = ≪ default ≫ ; (7) WINDOW LENGTH = ≪ default ≫ ; (8) SCORE TYPE = ≪ percent ≫ ; (9) TOPDIAG = ≪ default ≫ ; (10) PAIRGAP = ≪ default ≫ ; (11) PHYLOGENETIC TREE/TREE TYPE = ≪ none ≫ ; (12) MATRIX = ≪ default ≫ ; (13) GAP OPEN = ≪ default ≫ ; (14) END GAPS = ≪ default ≫ ; (15) GAP EXTENSION = ≪ default ≫ ; (16) GAP DISTANCES = ≪ default ≫ ; (17) TREE TYPE = ≪ cladogram ≫ et (18) TREE GRAP DISTANCES = ≪ hide ≫。
【0039】
本発明の調節ポリヌクレオチドは、上記参照調節ポリヌクレオチドに対して少なくとも90%の核酸同一性を有し且つ哺乳類の癌細胞、例えばヒトの癌性細胞に特異的な目的ポリヌクレオチドを発現させる能力を有する任意のポリヌクレオチドである。
【0040】
上記の哺乳類の癌細胞に特異的な目的ポリヌクレオチドを発現する核酸では、この調節ポリヌクレオチド(a)を目的ポリヌクレオチドに「操作可能に結合(operable linked)」することができる。「操作可能な結合」とは、調節ポリヌクレオチドの影響下または制御下に目的ポリヌクレオチドの転写が起こるように調節ポリヌクレオチドが目的ポリヌクレオチドに結合された結合を意味する。2つのDNA配列(例えば、転写すべき目的ポリヌクレオチドと転写すべき目的ポリヌクレオチドの5’−端に結合した調節ポリヌクレオチド)は、調節ポリヌクレオチド機能の誘発によって目的ポリヌクレオチドをコードするmRNAの転写が起こる場合および2つのDNA配列間の結合の種類に応じて(1)枠突然変異の導入が起こらないか、(2)調節ポリヌクレオチドの蛋白、アンチセンスRNAまたはリボザイムの発現能力を阻害するか、(3)転写されるDNAテンプレートの能力を阻害する場合に互いに操作可能に結合しているといわれる。従って、調節ポリヌクレオチドが目的ポリヌクレオチド配列を転写できる場合には、調節ポリヌクレオチドは目的ポリヌクレオチドに操作可能に結合されている。
【0041】
本発明の核酸では、上記のように、目的ポリヌクレオチドに操作可能に結合された任意の調節ポリヌクレオチドが癌性細胞中で特異的に目的ポリヌクレオチドの転写を進める能力を有する。目的ポリヌクレオチドの発現レベルが低く、正常な非癌性細胞でも発現しないような調節ポリヌクレオチドの比活性度を除外するものではないが、本明細書の調節ポリヌクレオチドは哺乳類の癌性細胞に対して目的ポリヌクレオチドの転写を極めて高い選択性で(または排他的に)進めるのが好ましい。「高い選択性」とは癌性細胞中の目的ポリヌクレオチドの転写レベルが正常な非癌性細胞中の転写レベルと比較して少なくとも3倍、好ましくは5倍、さらに好ましくは少なくとも10倍、さらにより好ましくは少なくとも20倍、50倍または100倍増加することを意味する。
【0042】
癌性細胞とは発癌性細胞に特有の特徴、例えば無制限増殖、不死、転移能、速いな成長および増殖速度やある特異的な形態学的特徴を有する細胞を意味する。癌性細胞は腫瘍の形であることが多いが、この細胞は体内で単独で存在したり、非腫瘍形成癌性細胞、例えば白血病細胞にすることもある。癌性細胞は種々の癌と関連している。例としては白血病、リンパ腫、肝癌、脳腫瘍、脳脊髄癌、膀胱癌、前立腺癌、乳癌、頚癌、子宮癌、卵巣癌、腎臓癌、食道癌、肺癌、結腸癌、黒色腫、神経芽細胞腫および膵癌が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0043】
本発明の癌性細胞は癌性肝細胞を含む肝臓から得られる癌性細胞から成るのが好ましい。いずれの場合も、本発明の上記核酸では調節ポリヌクレオチドに操作可能に結合された目的ポリヌクレオチドは調節ポリヌクレオチドに対して「異種、heterologous」である。このことは上記目的ポリヌクレオチドにはヒトまたはラットのAFPもヒトまたはラットのHIP/PAPI蛋白をコードするポリヌクレオチも含まれないことを意味する。
上記目的ポリヌクレオチドを哺乳類の癌性細胞で特異的に発現するための核酸中に含まれる調節ポリヌクレオチドの好ましい例を以下、説明する。
【0044】
ヒトAFPプロモータ由来の調節ポリヌクレオチドの好ましい実施例
哺乳類の癌性細胞中で目的ポリヌクレオチドを特異的に発現するためのヒトAFP蛋白をコードする遺伝子のプロモータ領域に由来する本発明の最短の機能的調節ポリヌクレオチドは、5’−端から3’−端に向かって(1)配列番号1および配列番号2から成る群の中から選択される核酸と少なくとも90%のヌクレオチド同一性を有する第1核酸と、(2)配列番号3の核酸と少なくとも90%のヌクレオチド同一性を有する第2核酸とを含み、第1核酸の3’−端にあるヌクレオチドが第2核酸の5’−端にあるヌクレオチドと共有結合している調節ポリヌクレオチドであることがわかった。
【0045】
ヒトAFP蛋白をコードする遺伝子のプロモータ領域は当業者には公知である。ヒトAFP遺伝子プロモータから得られる最小機能配列はWatanabe et al. (1987, J. Biol., Chem., Vol. 282(10) : 4812-4818)に開示されている。このWatanabe et al. (1987)ではエンハンサー活性に重要な配列はAFP遺伝子の上流の3.3〜3.7キロベース対の間の400ベース対領域に存在する。このWatanabe et al. (1987)はAFP5’−フランキング配列を有するCAT構築物を用いてAFP遺伝子の上流3.7キロベース対にある遠位エンハンサー要素を欠くより短いAFPプロモータ断片ではCATコード配列の転写が起こらなかったことを示している。特に、AFP遺伝子の上流に2.9キロベース対のみを有するAFPプロモータ断片ではCAT発現は検出できなかった。
【0046】
極めて驚くべきことに、本発明では長さが1000ヌクレオチド以下の上記ヒトAFPプロモータ断片で目的ポリヌクレオチドの癌性細胞で特異的転写をさせることができるということが分かった。
【0047】
さらに、5’−端から3’−端に向かって配列番号1(配列番号2)である核酸と少なくとも90%のヌクレオチド同一性を有する第1核酸と、配列番号3の核酸と少なくとも90%のヌクレオチド同一性を有する第2核酸とを有し、第1核酸と第2核酸がスペーサ核酸を介して分離されている調節ポリヌクレオチドも目的ポリヌクレオチドの転写を癌性細胞で特異的に進める能力を有することが分かった。
【0048】
配列番号1および配列番号2の核酸はそれぞれインセンス配列およびアンチセンス配列で、哺乳類の癌細胞中での発現に特異性を与えると考えられ、配列番号3の核酸はプロモータ機能が付与された最小配列から成ると考えられる。
【0049】
従って、本発明の機能性目的調節ポリヌクレオチドは5’−端から3’−端に向かって(1)配列番号1および配列番号2から成る群の中から選択される核酸と少なくとも90%のヌクレオチド同一性を有する第1核酸と、(2)配列番号3の核酸と少なくとも90%のヌクレオチド同一性を有する第2核酸とを含み、第1核酸と第2核酸とは直接結合しているか、第1核酸と第2核酸がスペーサ核酸(長さが1〜3000ヌクレオチドである)を介して間接的に結合しているものを包含する。
【0050】
第1核酸および第2核酸が直接結合している調節ポリヌクレオチドの例は配列番号9の調節ポリヌクレオチドである。この調節ポリヌクレオチドは5’−端から3’−端に向かって、配列番号3の核酸に直接結合した配列番号2の核酸を含む。
【0051】
第1核酸と第2核酸とがスペーサ核酸を介して間接的に結合している調節ポリヌクレオチド配列の別の例は配列番号10の調節ポリヌクレオチドである。この配列番号10の調節ポリヌクレオチドは5’−端から3’−端に向かって配列番号1の核酸を含む配列番号10の調節ポリヌクレオチドで、第1核酸は長さが2835ヌクレオチドであるスペーサ核酸にその3’−端を介して結合し、スペーサヌクレオチドはその3’−端を介して配列番号3の第2核酸に結合している。
【0052】
スペーサ核酸が調節配列中に存在する場合、そのヌクレオチド長さは一般に1〜3000ヌクレオチドで、各ヌクレオチドはアデノシン(“A”とも記載される),チミジン(“T” とも記載される),グアノシン(“G” とも記載される),シトシン(“C” とも記載される)、必要に応じてさらにウリジン(“U” とも記載される)から成る群の中から選択するのが好ましい。
一つの実施例でのスペーサ核酸の長さは2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 10, 20, 30, 40, 50, 60, 70, 80, 90, 100, 150, 200, 250, 300 , 350, 400, 1450, 500, 1550, 600, 650, 700, 750, 800, 850, 900, 950, 1000, 1100, 1200, 1300 , 1400, 1500, 1550, 1600, 1650, 1700, 1750, 1800, 1850, 1900, 1950, 2000, 2050, 2100, 2150, 2200, 2250, 2300 , 2350, 2400, 2450, 2500, 2550, 2600, 2650, 2700, 2750, 2800, 2850, 2900, 2950ヌクレオチド以下である。
【0053】
一つの実施例ではスペーサ核酸はヒトAFPプロモータから得られる連続ヌクレオチドで、配列番号10の調節配列中のように、例えばヒトAFPプロモータから得られる少なくとも2から少なくとも2500の連続ヌクレオチドから成る。
【0054】
従って、本発明には(1)配列番号1および配列番号2から成る群の中から選択される核酸と少なくとも90%のヌクレオチド同一性を有する第1核酸と、(2)ヌクレオチド長さが1〜3000ヌクレオチドであるスペーサ核酸と、(3)配列番号3の核酸と少なくとも90%のヌクレオチド同一性を有する第2核酸とから成る調節ポリヌクレオチドが含まれる。
【0055】
ヒトAFPプロモータに由来の本発明調節配列は上記第1核酸の5’−端に結合した5’−付加核酸(additional nucleic acid)(5’−フランキング配列ともよばれる)、および/または、上記第2核酸の3’−端に結合した3’−付加核酸(3’−フランキング核酸ともよばれる)をさらに含むことができる。
【0056】
上記5’−付加核酸および/または3’−付加核酸のヌクレオチド長さは1〜1500ヌクレオチド、好ましくは1〜1500ヌクレオチドである。特に、上記5’−付加核酸および3’−付加核酸はクローニングベクターまたは発現ベクターのような適当な核酸構築物でクローニングするためのエンドヌクレアーゼ等を含むヌクレアーゼで認識される制限酵素認識部位で構成することができる。
【0057】
一つの実施例では、5’−付加核酸および3’−付加核酸の長さは、少なくとも2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 10, 20, 30, 40, 50, 60, 70, 80, 90, 100, 150, 200, 250, 300 , 350, 400, 1450, 500, 1550, 600, 650, 700, 750, 800, 850, 900, 950, 1000, 1100, 1200, 1300 または1400である。配列番号10の調節ポリヌクレオチドは長さが604ヌクレオチドの5’−付加ポリヌクレオチドを含む。
【0058】
本発明は配列番号9の核酸と少なくとも90%のヌクレオチド同一性を有する調節ポリヌクレオチドを包含し、従って、配列番号9の核酸自体を包含する。
本発明は配列番号10の核酸と少なくとも90%のヌクレオチド同一性を有する調節ポリヌクレオチドを包含し、従って、配列番号10の核酸自体を包含する。
【0059】
ヒトHIP/PAPIプロモータ由来の調節ポリヌクレオチドの好ましい実施例
本発明は、哺乳類の癌性細胞中で目的ポリヌクレオチドを特異的に発現するためのヒトHIP/PAPI蛋白をコードする遺伝子のプロモータ領域に由来するより短いの機能的調節ポリヌクレオチドは、配列番号4の核酸の2200位置にあるヌクレオチドから始まり2432位置にあるヌクレオチドで終わる調節ポリヌクレオチド(これは調節ポリヌクレオチド配列番号11でもある)で構成されるということを明らかにした。
HIP/PAPI蛋白質は肝細胞癌腫(HCC)中に過剰に発現したC型レクチンである。多機能生物活性がこの蛋白質の特徴であるが、肝臓中のHIP/PAPの機能についてはほとんど知られていない。国際出願公開第 WO 2004/112824号公報に記載のように、HIP/PAPIは初代細胞培養中の肝細胞でインビトロで細胞分裂および抗アポトーシス効果を有する。さらに、HIP/PAPは肝不全および肝再生中のインビボで肝細胞の細胞分裂および抗アポトーシス分子である。この国際出願公開第WO 2004/11824号公報には(i)ウサギWAP遺伝子プロモータまたは(ii)マウスアルブミン遺伝子18プロモータに操作可能に結合したHIP/PAPIコード配列を含むDNA構築物も開示されている。ヒトHIP/PAPI蛋白をコードする遺伝子のプロモータ領域の機能は従来研究されていない。
【0060】
本発明は、ヒトゲノム中でHIP/PAPI蛋白をコードする配列の上流にある配列番号4は操作可能に結合した目的ポリヌクレオチドの転写を哺乳類の癌性細胞で特異的に進める能力を有する調節ポリヌクレオチドから成ることを明らかにした。
さらに、配列番号4の核酸を切断して得られる種々の核酸断片も、操作可能に結合した目的ポリヌクレオチドの転写を哺乳類の癌性細胞中で特異的に進める能力を有することがわかった。この核酸断片は全て配列番号11の核酸を含む。
【0061】
さらに、本発明は、配列番号11の核酸自体が、操作可能に結合した目的ポリヌクレオチドの転写を哺乳類の癌性細胞中で特異的に進める能力を有することを明らかにした。
従って、本発明の機能的な目的調節ポリヌクレオチドは配列番号11の核酸を含む。
これらの目的調節ポリヌクレオチドは核酸配列番号12、配列番号13、配列番号14を含む本発明の実施例で開示のHIP/PAPIプロモータの各種機能断片を含む。
【0062】
従って、目的ポリヌクレオチドを哺乳類の癌性細胞中で特異的に発現する核酸の調節ポリヌクレオチドは下記から成る群の中から選択することができる:
(1)配列番号11の核酸と少なくとも90%のヌクレオチド同一性を有する調節ポリヌクレオチド、
(2)配列番号12の核酸と少なくとも90%のヌクレオチド同一性を有する調節ポリヌクレオチド、
(3)配列番号13の核酸と少なくとも90%のヌクレオチド同一性を有する調節ポリヌクレオチド、
(4)配列番号14の核酸と少なくとも90%のヌクレオチド同一性を有する調節ポリヌクレオチド、
(5)配列番号4の核酸と少なくとも90%のヌクレオチド同一性を有する調節ポリヌクレオチド。
【0063】
さらに、目的ポリヌクレオチドを哺乳類の癌性細胞中で特異的に発現する核酸の調節ポリヌクレオチドは下記から成る群の中から選択することができる:
(1)配列番号11の核酸と少なくとも90%のヌクレオチド同一性を有する調節ポリヌクレオチド、
(2)配列番号12の核酸と少なくとも90%のヌクレオチド同一性を有する調節ポリヌクレオチド、
(3)配列番号13の核酸と少なくとも90%のヌクレオチド同一性を有する調節ポリヌクレオチド、
(4)配列番号14の核酸と少なくとも90%のヌクレオチド同一性を有する調節ポリヌクレオチド、
(5)配列番号4の核酸と少なくとも90%のヌクレオチド同一性を有する調節ポリヌクレオチド。
【0064】
一般に、目的ポリヌクレオチドを哺乳類の癌性細胞で特異的に発現する核酸の調節ポリヌクレオチドは配列番号4の核酸の連続した少なくとも233のヌクレオチドを含み且つ配列番号11の核酸を含む。さらに、配列番号12の調節ポリヌクレオチドは配列番号4の連続した573のヌクレオチドを含み且つ配列番号11を含む。さらに、配列番号13の調節ポリヌクレオチドは配列番号4の連続した1332のヌクレオチドを含み且つ配列番号11を含む。また、配列番号14の調節ポリヌクレオチドは配列番号4の連続した2056のヌクレオチドを含み且つ配列番号11を含む。
【0065】
上記調節ポリヌクレオチドは配列番号4の長さが2426以下の連続したヌクレオチドにすることができる。従って、この調節ポリヌクレオチドは配列番号4の少なくとも下記:233, 234, 235, 236, 237, 238, 239, 240, 241, 242, 243, 244, 245, 246, 247, 248, 249, 250, 251, 252, 253, 254, 255, 256, 257, 258, 259, 260, 261, 262, 263, 264, 265, 266, 267, 268, 269, 270, 271, 272, 273, 274, 275, 276, 277, 278, 279, 280, 281, 282, 283, 284, 285, 286, 287, 288, 289, 290, 291, 292, 293, 294, 295, 296, 297, 298, 299, 300, 301, 302, 303, 304, 305, 306, 307, 308, 309, 310, 311, 312, 313, 314, 315, 316, 317, 318, 319, 320, 321, 322, 323, 324, 325, 326, 327, 328, 329, 330, 331, 332, 333, 334, 335, 336, 337, 338, 339, 340, 341, 342, 343, 344, 345, 346, 347, 348, 349, 350, 351, 352, 353, 354, 355, 356, 357, 358, 359, 360, 361, 362, 363, 364, 365, 366, 367, 368, 369, 370, 371, 372, 373, 374, 375, 376, 377, 378, 379, 380, 381, 382, 383, 384, 385, 386, 387, 388, 389, 390, 391, 392, 393, 394, 395, 396, 397, 398, 399, 400, 410, 410, 420, 430, 440, 450, 460, 470, 480, 490, 500, 510, 520, 530, 540, 550, 560, 570, 580, 590, 600, 610, 620, 630, 640, 650, 660, 670, 680, 690, 700, 710, 720, 730, 740, 750, 760, 770, 780, 790, 800, 810, 820, 830, 840, 850, 860, 870, 880, 890, 900, 910, 920, 930, 940, 950, 960, 970, 980, 990, 1000, 1010, 1020, 1030, 1040, 1050, 1060, 1070, 1080, 1090, 1100, 1110, 1120, 1130, 1140, 1150, 1160, 1170, 1180, 1190, 1200, 1210, 1220, 1230, 1240, 1250, 1260, 1270, 1280, 1290, 1300, 1310, 1320, 1330, 1340, 1350, 1360, 1370, 1380, 1390, 1400, 1410, 1420, 1430, 1440, 1450, 1460, 1470, 1480, 1490, 1500, 1510, 1520, 1530, 1540, 1550, 1560, 1570, 1580, 1590, 1600, 1610, 1620, 1630, 1640, 1650, 1660, 1670, 1680, 1690, 1700, 1710, 1720, 1730, 1740, 1750, 1760, 1770, 1780, 1790, 1800, 1810, 1820, 1830, 1840, 1850, 1860, 1870, 1880, 1890, 1900, 1910, 1920, 1930, 1940, 1950, 1960, 1970, 1980, 1990, 2000, 2010, 2020, 2030, 2040, 2050, 2060, 2070, 2080, 2090, 2100, 2110, 2120, 2130, 2140, 2150, 2160, 2170, 2180, 2190, 2200, 2210, 2220, 2230, 2240, 2250, 2260, 2270, 2280, 2290, 2300, 2310, 2320, 2330, 2340, 2350, 2360, 2370, 2380, 2390, 2400, 2410 または2420の長さの連続したヌクレオチドを含み且つ配列番号11を含むことができる。
【0066】
上記調節ポリヌクレオチドと少なくとも90%のヌクレオチド同一性を有する調節ポリヌクレオチドも含まれる。
本発明のヒトHIP/PAPIプロモータ由来の調節配列は(1)第1核酸の5’−端に結合した5’−付加核酸(5’−フランキング配列ともよばれる)および/または(2)第2核酸の3’−端に結合した3’−付加核酸(3’−フランキング核酸ともよばれる)をさらに含むことができる。
この5’−付加核酸および3’−付加核酸のヌクレオチド長さは1〜2500ヌクレオチド、好ましくは1〜1500ヌクレオチドである。特に、5’−付加核酸および3’−付加核酸は例えばクローニングベクターまたは発現ベクターのような適当な核酸構築物中でクローニングするためのエンドヌクレアーゼを含むヌクレアーゼで認識される制限酵素認識部位で構成することができる。
【0067】
一つの実施例では、5’−付加核酸および/または3’−付加核酸の長さは少なくとも 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 10, 20, 30, 40, 50, 60, 70, 80, 90, 100, 150, 200, 250, 300 , 350, 400, 1450, 500, 1550, 600, 650, 700, 750, 800, 850, 900, 950, 1000, 1100, 1200, 1300または1400である。既に述べたように、配列番号4の調節ポリヌクレオチドは配列番号11の調節ポリヌクレオチドの上流に長さが2200ヌクレオチド以上の5’−付加ポリヌクレオチドを含む。
【0068】
ラットHIP/PAPIプロモータ由来の調節ポリヌクレオチドの好ましい実施例
本発明は、ラットHIP/PAPIプロモータ由来の調節ポリヌクレオチドは哺乳類の癌性細胞中で特異的に目的ポリヌクレオチドの発現を進めることができるということを明らかにした。
特に、配列番号5の核酸は癌性細胞中で特異的に目的ポリヌクレオチドの発現を進めることがわかった。
ラットHIP/PAPI遺伝子は膵炎の急性期で発現が200倍以上に増加することは知られている(1991, Iovanna et al., J Biol Chem, Vol. 266 : 24664-24669)。
【0069】
ラットHIP/PAPI遺伝子プロモータ領域自体は公知である。CAT遺伝子に融合したラットHIP/PAPIプロモータの種々の欠失断片を有するDNA構築物で形質移入した膵臓細胞を用いた場合、形質移入された細胞をIL−6とデキサメタゾンの混合物で培養したときに試験した複数のプロモータ断片がCATレポータ遺伝子の発現を誘発するということは知られている (1995, Dusetti et al., J Biol Chem, Vol. 270(38) : 22417-22421)。Dusetti et al. (1995)は、IL−6とデキサメタゾンの混合物により誘発されるラットHIP/PAPIプロモータの感受性によってラットHIP/PAPI遺伝子をクラス2の急性期蛋白に分類すべきであると述べている。この発現はグルココルチコイドと組み合わせたIL−6作用によって増大する。
【0070】
従って、本発明は、ラットゲノム中でHIP/PAPI蛋白をコードする配列の上流にある配列配列番号5は操作可能に結合した目的ポリヌクレオチドの転写を哺乳類の癌性細胞で特異的に進める能力を有する調節ポリヌクレオチドから成ることを明らかにした。
理論に縛られるものではないが、特異的誘発条件下で膵臓細胞中で機能的であることが既にわかっているラットHIP/PAPIプロモータの核酸断片のいずれか一つが目的ポリヌクレオチドを哺乳類の癌性細胞中で特異的に発現するのに機能すると考えられる。
【0071】
従って、目的ポリヌクレオチドを哺乳類の癌性細胞中で特異的に発現するための本発明核酸では、調節ポリヌクレオチドをラットHIP/PAPIプロモータ由来の最短の機能的核酸またはヌクレオチド同一性が強い核酸断片を含む調節ポリヌクレオチドから成る群の中から選択できる。
【0072】
本発明の別の対象は、上記で一般的に定義された目的ポリヌクレオチドを哺乳類の癌性細胞中で特異的に発現するための核酸にある。この核酸中の調節ポリヌクレオチドは配列番号5の核酸の980位置にあるヌクレオチドから始まり1253位置にあるヌクレオチドで終わる核酸と少なくとも90%のヌクレオチド同一性を有する核酸から成り、この核酸は特異的誘発条件下で膵臓細胞中で機能することが既に分かっているラットHIP/PAPIプロモータ由来の最短の核酸断片である。
【0073】
この調節ポリヌクレオチドは配列番号5の核酸の連続した少なくとも274のヌクレオチドを含み且つ配列番号5の核酸の980位置にあるヌクレオチドから始まり1253位置にあるヌクレオチドで終わる核酸を含む。この調節ポリヌクレオチドは配列番号5の核酸の連続した317のヌクレオチドを含み且つ配列番号5の核酸の980位置にあるヌクレオチドから始まり1253位置にあるヌクレオチドで終わる核酸を含む。さらに、この調節ポリヌクレオチドは配列番号5の核酸の連続した379のヌクレオチドを含み且つ配列番号5の核酸の980位置にあるヌクレオチドから始まり1253位置にあるヌクレオチドで終わる核酸を含む。さらに、この調節ポリヌクレオチドは配列番号5の核酸の連続した444のヌクレオチドを含み且つ配列番号5の核酸の980位置にあるヌクレオチドから始まり1253位置にあるヌクレオチドで終わる核酸を含む。目的ポリヌクレオチドを哺乳類の癌性細胞中で特異的に発現するための核酸は配列番号5の連続した少なくとも274, 275, 276, 277, 278, 279, 280, 290, 291, 292, 293, 294, 295, 296, 297, 298, 299, 300, 301, 302, 303, 304, 305, 306, 307, 308, 309, 310, 311, 312, 313, 314, 315, 316, 317, 318, 319, 320, 321, 322, 323, 324, 325, 326, 327, 328, 329, 330, 331, 332, 333, 334, 335, 336, 337, 338, 339, 340, 341, 342, 343, 344, 345, 346, 347, 348, 349, 350, 351, 352, 353, 354, 355, 356, 357, 358, 359, 360, 361, 362, 363, 364, 365, 366, 367, 368, 369, 370, 371, 372, 373, 374, 375, 376, 377, 378, 379, 380, 381, 382, 383, 384, 385, 386, 387, 388, 389, 390, 391, 392, 393, 394, 395, 396, 397, 398, 399, 400, 410, 410, 420, 430, 440, 450, 460, 470, 480, 490, 500, 510, 520, 530, 540, 550, 560, 570, 580, 590, 600, 610, 620, 630, 640, 650, 660, 670, 680, 690, 700, 710, 720, 730, 740, 750, 760, 770, 780, 790, 800, 810, 820, 830, 840, 850, 860, 870, 880, 890, 900, 910, 920, 930, 940, 950, 960, 970, 980, 990, 1000, 1010, 1020, 1030, 1040, 1050, 1060, 1070, 1080, 1090, 1100, 1110, 1120, 1130, 1140, 1150, 1160, 1170, 1180, 1190, 1200, 1210, 1220, 1230, 1240 または1250の核酸と少なくとも90%のヌクレオチド同一性を有し且つ配列番号5の核酸の980位置にあるヌクレオチドから始まり1253位置にあるヌクレオチドで終わる調節ポリヌクレオチドを含む。
【0074】
本発明のヒトHIP/PAPIプロモータ由来の調節配列は(1)第1核酸の5’−端に結合した5’−付加核酸(5’−フランキング配列ともよばれる)、および/または、(2)第2核酸の3’−端に結合した3’−付加核酸(3’−フランキング核酸ともよばれる)をさらに含むことができる。この5’−付加核酸および3’−付加核酸のヌクレオチド長さは1〜2500ヌクレオチド、好ましくは1〜1500ヌクレオチドである。特に、5’−付加核酸および3’−付加核酸は例えばクローニングベクターまたは発現ベクターのような適当な核酸構築物中でクローニングするためのエンドヌクレアーゼを含むヌクレアーゼで認識される制限酵素認識部位で構成することができる。
【0075】
一つの実施例では、5’−付加核酸および/または3’−付加核酸の長さは少なくとも 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 10, 20, 30, 40, 50, 60, 70, 80, 90, 100, 150, 200, 250, 300 , 350, 400, 1450, 500, 1550, 600, 650, 700, 750, 800, 850, 900または 950である。配列番号5の調節ポリヌクレオチドは配列番号5の980位置にあるヌクレオチドから始まり1253位置にあるヌクレオチドで終わる調節ポリヌクレオチドの上流に長さが950ヌクレオチド以上の5’−付加ポリヌクレオチドを含む。
【0076】
ラットAFPプロモータ由来の調節ポリヌクレオチドの好ましい実施例
本発明は、哺乳類の癌性細胞中で特異的に目的ポリヌクレオチドを発現するためのラットAFP蛋白質をコードする遺伝子のプロモータ領域由来の最短の機能的調節ポリヌクレオチドは、5’−端から3’−端に向かって(1)配列番号6および配列番号7から成る群の中から選択される核酸と少なくとも90%のヌクレオチド同一性を有する第1核酸と、(2)配列番号8の核酸と少なくとも90%のヌクレオチド同一性を有する第2核酸とを含み、第1核酸の3’−端にあるヌクレオチドが第2核酸の5’−端にあるヌクレオチドと共有結合している調節ポリヌクレオチドであることを明らかにした。
【0077】
非常に驚くべきことに、長さが1100ヌクレオチド以下の上記ラットAFPプロモータ断片が目的ポリヌクレオチドを癌性細胞で特異的に転写させるということを本発明者は見出した。
さらに、5’−端から3’−端に向かって配列番号6(または配列番号7)の核酸と少なくとも90%のヌクレオチド同一性を有する第1核酸と、配列番号8の核酸と少なくとも90%のヌクレオチド同一性を有する第2核酸とを含み、第1核酸と第2核酸がスペーサ核酸を介して分離されている調節ポリヌクレオチドが目的ポリヌクレオチドの転写を癌性細胞で特異的に進める能力を有することも分かった。
配列番号6および配列番号7の核酸はそれぞれインセンス配向およびアンチセンス配向であり、本明細書では哺乳類の癌細胞での発現の特異性を与えるものと考えられ、配列番号8はプロモータ機能が与えられた最小配列から成ると考えられる。
【0078】
従って、本発明の機能的目的調節ポリヌクレオチドは5’−端から3’−端に向かって配列番号6および配列番号7から成る群の中から選択される核酸と少なくとも90%のヌクレオチド同一性を有する第1核酸と、配列番号8の核酸と少なくとも90%のヌクレオチド同一性を有する第2核酸とを含み、第1核酸と第2核酸は直接結合しているか、第1核酸と第2核酸がスペーサ核酸(長さが1〜2000ヌクレオチド)を介して間接的に結合しているものを包含する。
【0079】
第1核酸と第2核酸が小さなスペーサ核酸を介して間接的に結合した調節配列の例は、5’−端から3’−端に向かって配列番号7の核酸を含む配列番号15の調節ポリヌクレオチドである。この第1核酸は長さが106ヌクレオチドのスペーサ核酸にその3’−端で結合し、このスペーサヌクレオチドはその3’−端で配列番号8の第2核酸に結合している。
第1核酸と第2核酸とが長いスペーサ核酸を介して間接的に結合している調節配列の例は、5’−端から3’−端に向かって配列番号6の核酸を含む配列番号16の調節ポリヌクレオチドである。この第1核酸は長さが1857ヌクレオチドのスペーサ核酸にその3’−端で結合し、このスペーサヌクレオチドはその3’−端で配列番号8の第2核酸に結合している。
【0080】
一般に、スペーサ核酸は(調節配列中に存在する場合)、そのヌクレオチド長さは1〜2000ヌクレオチドであり、各ヌクレオチドはアデノシン (“A”とよぶ),チミジン(“T”とよぶ),グアノシン(“G”とよぶ),シトシン(“C”とよぶ)必要に応じてさらにウリジン(“U”とよぶ)から成る群の中から選択するのが好ましい。
従って、本発明は5’−端から3’−端に向かって配列番号6および配列番号7から成る群の中から選択される核酸と少なくとも90%のヌクレオチド同一性を有する第1核酸と、ヌクレオチド長さが1〜2000ヌクレオチドであるスペーサ核酸と、配列番号8の核酸と少なくとも90%のヌクレオチド同一性を有する第2核酸とを含む調節ポリヌクレオチドを包含する。
【0081】
一つの実施例では、スペーサ核酸の長さは2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 10, 20, 30, 40, 50, 60, 70, 80, 90, 100, 150, 200, 250, 300 , 350, 400, 1450, 500, 1550, 600, 650, 700, 750, 800, 850, 900, 950, 1000, 1100, 1200, 1300 , 1400, 1500, 1550, 1600, 1650, 1700, 1750, 1800, 1850, 1900, 1950または2000ヌクレオチド以下である。
【0082】
一つの実施例では、スペーサ核酸はラットAFPプロモータから得られる連続ヌクレオチドから成り、例えば配列番号16の調節配列中のような例えばラットAFPプロモータから得られる少なくとも2から少なくとも1800の連続ヌクレオチドから成る。
【0083】
本発明のラットAFPプロモータ由来の調節配列は下記をさらに含むことができる:
(1)第1核酸の5’−端に結合した5’−付加核酸(5’−フランキング配列ともよばれる)、および/または、
(2)第2核酸の3’−端に結合した3’−付加核酸(3’−フランキング核酸ともよばれる)
これら5’−付加核酸および3’−付加核酸のヌクレオチド長さは1〜1500ヌクレオチド、好ましくは1〜1500ヌクレオチドである。特に、5’−付加核酸および3’−付加核酸は、例えばクローニングベクターまたは発現ベクターのような適当な核酸構築物中でクローニングするためにエンドヌクレアーゼを含むヌクレアーゼで認識される制限酵素認識部位で構成することができる。
【0084】
一つの実施例では、5’−付加核酸および/または3’−付加核酸の長さは少なくとも 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 10, 20, 30, 40, 50, 60, 70, 80, 90, 100, 150, 200, 250, 300 , 350, 400, 1450, 500, 1550, 600, 650, 700, 750, 800, 850, 900, 950, 1000, 1100, 1200, 1300 または1400である。例えば、配列番号16の調節ポリヌクレオチドは長さが346ヌクレオチドの5’−付加ポリヌクレオチドを含む。さらに、配列番号16の調節ポリヌクレオチドはその中に含まれる配列番号8の下流に長さが76ヌクレオチドの3’−付加ポリヌクレオチドを含む。
【0085】
本発明は、配列番号15の核酸と少なくとも90%のヌクレオチド同一性を有する調節ポリヌクレオチドを包含し、従って、配列番号15の核酸自体を包含する。
本発明は、配列番号16の核酸と少なくとも90%のヌクレオチド同一性を有する調節ポリヌクレオチドを包含し、従って、配列番号16の核酸自体を包含する。
【0086】
哺乳類癌性細胞中で目的ポリヌクレオチドを特異的に発現するための核酸に含まれる好ましい目的ポリヌクレオチド。
哺乳類細胞中で特異的に目的のポリヌクレオチドを強く発現する核酸、例えば本明細書で定義の目的ポリヌクレオチドは、抗癌予防および治療目的に有用な任意の種類のものにすることができる。
換言すれば、この目的ポリヌクレオチドは、調節ポリヌクレオチドの制御下で癌細胞中で特異的に発現した時に、細胞レベルおよび/または組織レベルおよび/または臓器レベルおよび/またはより全身的な哺乳類生物有機体レベルで、常に抗癌活性を誘発しなければならない。当業者に公知の抗癌活性を有する種々のポリヌクレオチドを本発明の核酸中の目的ポリヌクレオチドとして用いることができる。
【0087】
抗癌活性は癌細胞の増殖の破壊および/または抑制および/または分化促進と定義することができる。癌細胞は成長調節遺伝子および経路で既知または未知の異常を有する悪性形質転換細胞であるということは当業者に周知である。そうした細胞は無制限に成長する能力があり、腫瘍を形成し、必然的に病的状態または実験条件下に置かれる。腫瘍は癌細胞の同種または異種の塊と定義される。抗癌活性にはインビトロで成長する癌細胞または被験者(ヒトまたは非ヒト動物)の癌細胞の増殖の破壊および/または抑制および/または分化促進が含まれる。癌細胞の増殖の破壊および/または抑制および/または分化促進は当業者に公知の機構、例えば分化、アポトーシス(プログラム細胞死)または壊死等の種々の経路(これらに限定されるものではない)を経る。抗癌活性には播種性癌細胞、さらには、初期腫瘍部位から離れる能力を有し、発生腫瘍から離れた一つまたは複数の部位で見つかることがある転移性癌細胞の増殖の破壊および/または抑制および/または分化促進がさらに含まれる。抗癌活性には癌細胞の同種または異種の集団を含む局所または播種性腫瘍の減少、完全溶解または成長の抑制がさらに含まれる。
【0088】
抗癌活性を有するこれらのポリヌクレオチドとしては、細胞中で発現した時に細胞死を直接または間接的に誘発するポリヌクレオチドが挙げられる。これらの目的ポリヌクレオチドを本明細書では「自殺ポリヌクレオチド」とよぶ。
「自殺ポリヌクレオチド」には下記(i)〜(vi)がある:
(i)細胞毒性蛋白をコードするポリヌクレオチド、
(ii)別の物質が存在した時に細胞毒を誘発する蛋白をコードするポリヌクレオチド、
(iii)蛋白質の発現を変化させるか、ブロックするRNAiをコードするポリヌクレオチド、
(iv)細胞毒性リボヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチド、
(v)抗癌活性に必要な蛋白の発現を標的にするリボザイムをコードするポリヌクレオチド、
(vi)抗癌活性に必要な蛋白の発現を変化させるか、ブロックするセンスまたはアンチセンス核酸をコードするポリヌクレオチド。
【0089】
抗癌遺伝子をコードする目的ポリヌクレオチド
抗癌作用を有する目的ポリヌクレオチドの例としては下記のような抗増殖活性、抗転移活性、抗血管形成活性またはプロアポトーシス活性を有する遺伝子が挙げられる:mda-7/IL-24 (Sarkar et al. (2002) Biotechniques Suppl: 30-39; Fisher et al. (2003) Cancer Biol Ther 2:S23-37), TNF-α. (Anderson et al. Curr Opin Pharmacol (2004) 4 (4):314-320), IFN-β. (Yoshida et al, (2004) Cancer Sci 95 (11):858-865), p53 (Haupt et al. Cell Cycle (2004) 3 (7):912-916), BAX (Chan et al. Clin Exp Pharmacol Physiol (2004) 31 (3):119-128), PTEN (Sansal et al. J Clin Oncol (2004) 22 (14):2954-63), 可溶性線維芽細胞成長因子受容体 (sFGFR) (Gowardhan et al. (2004) Prostate 61 (1):50-59), RNAi またはアンチセンス-ras (Liu et al. Cancer Gene Ther (2004) 11 (11):748-756.), RNAiまたはアンチセンスVEGF (Qui et al. Hepatobiliary Pancreat Dis Int (2004) 3 (4):552-557), アンチセンスまたはRNAi mda-9/syntenin (Sarkar et al. Pharmacol Ther (2004) 104 (2):101-115).
【0090】
抗癌作用を有する目的ポリヌクレオチドの例としては下記のような放射線治療の効果を高めるものが挙げられるが、これらに限定されるものではない:p53 (Haupt et al. Cell Cycle (2004) 3 (7):912-916), GADD34 (Leibermann et al. Leukemia (2002) 16 (4):527-41), ヨウ化ナトリウム共輸送体 (甲状腺癌) (Mitrofanova et al. Clin Cancer Res (2004) 10 (20):6969-6976) またはthe Na+/K+ ATPase (PCT application n° WO 98/45443)
【0091】
抗癌作用を有する目的ポリヌクレオチドの例としては薬剤ガンシクロビルと組み合わせて単純ヘルペスウイルス1型チミジンキナーゼ遺伝子(HTK)をコードするものが挙げられる。HTKは実験モデルおよび臨床試験で今まで最もよく使われている癌遺伝子治療体系である。"Gene therapy for cancer," European Journal of Cancer, vol. 35, pp. 867-885 (1999)参照。基質特異性が細胞チミジンキナーゼの基質特異性と異なるHTKはGCVを、HTKを発現する細胞を特異的に死滅させる毒性リン酸化体に変換することができる。HTK/GCV系の概念が最初に説明されて以来、HTK/GCV系は種々の実験モデルにおいて腫瘍除去対策としての成功を示してきた。さらに、このモデルに基づいた24を超える臨床遺伝子治療試験が過去7年間で開始されている。「癌の遺伝子治療: 我々が何をしてきたか、これから何をするか?」 Journal of the National Cancer Institute, vol. 89(1), pp. 21-39 (1997); D. Klatzmann et al., 「再発転移性黒色腫のための、単純ヘルペスウイルス1型チミジンキナーゼ「自殺」遺伝子治療のIII 相用量漸増試験」 Human Gene Therapy, vol. 9, pp. 2585-2894 (1998); および J. R. Herman et al.,「前立腺腺癌のためのインシチュ遺伝子治療:I相臨床試験」 Human Gene Therapy, vol. 10, pp. 1239-1249 (1999)。
【0092】
RNAiまたはsiRNAをコードする目的ポリヌクレオチド
抗癌作用を有する目的のポリヌクレオチドの例としては抗癌活性を生じさせるために所定のサイレンシング遺伝子に用いることができるsiRNAをコードするものが挙げられる。例えば、細胞の生存に必要な遺伝子および癌遺伝子(参照(i) Borkhardt, A., 悪性細胞中の癌遺伝子のRNA干渉による阻止 :硬度に特異的な癌治療に新たな希望?Cancer Cell, 2002. 2(3): p. 167-8 ; (ii) Wilda, M., et al., BCR/ABL 融合遺伝子を用いたRNA干渉(RNAi)による白血病細胞の死滅. Oncogene, 2002. 21(37): p. 5716-24 ; (iii) Brummelkamp, T. R., R. Bernards, and R. Agami, ウイルス介在RNA干渉による腫瘍形成の安定した抑制. Cancer Cell, 2002. 2(3): p. 243-7)
【0093】
本発明的で「RNA干渉」または「RNAi」は広く定義され、遺伝子発現のRNA介在抑制の全ての転写後および転写の機構、例えば、 P. D. Zamore Science 296, 1265 (2002)に記載のものが含まれる。RNA干渉は二本鎖RNA(dsRNA)によって介在される。この二本鎖RNAは真核生物中で多種のエピジェネティックな遺伝子サイレンシングプロセス(同種mRNAsの分解を含む、動物のRNA干渉(RNAi)とよばれるプロセス)および植物の転写後遺伝子サイレンシング(PTGS)を誘発することができる。RNA干渉(RNAi)はAndrew Fire and Craig Mello in C. elegansによって1998年に初めて発見された。二本鎖RNAはRNA干渉とよばれるプロセスによって、相補配列を有する遺伝子の発現を抑制することがわかっている(Hammond et al. Nat. Rev. Genet. 2:110-119 (2001)参照)。本発明では、下方制御すべき遺伝子の領域に対応するdsRNAをrAAV−介在RNAi発現カセット転移を介して細胞中に発現する。
【0094】
本発明で「小さい干渉RNA(または「siRNA」)」という用語は長さが30塩基対(すなわち60ヌクレオチドまたは塩基)以下、好ましくは21〜25塩基対(すなわち42〜50塩基またはヌクレオチド)である二本鎖RNA錯体である短い干渉RNAを意味する。より一般的には、RNAiの誘発の原因である二本鎖RNAは「干渉RNA」とよばれる。従って、「小さい干渉RNA」または「siRNA」は相同を共有する遺伝子の発現を減らすことができる二本鎖RNA錯体である。相同が存在する遺伝子またはその他のヌクレオチド配列の領域は「RNAi標的領域」「標的領域」「RNAi標的配列」または「標的配列」として知られる。一実施例では、siRNAは「ヘアピン」またはステムループRNA分子にすることができ、センス領域、ループ領域およびセンス領域を補完するアンチセンス領域を含み、従って、dsRNA錯体を誘発するRNAiを形成することができる。別の実施例では、siRNAはdsRNA錯体を形成するのに非共有結合である二つの異なるRNA分子を含む。
【0095】
目的ポリヌクレオチドから発現されるRNAiを用いてターゲット化する時にサイレンシング可能な癌遺伝子はABLI, BCL1, BCL2, BCL6, CBFA2, CBL, CSFIR, ERBA, ERBB, EBRB2, ETS1, ETS1, ETV6, FGR, FOS, FYN, HCR, HRAS, JUN, KRAS, LCK, LYN, MDM2, MLL, MYB, MYC, MYCL1, MYCN, NRAS, PIM1, PML, RET, SRC, TAL1, TCL3およびYESから成る群の中から選択される癌遺伝子である。
本発明で「RNAi発現カセット」という用語は一種以上のRNA分子をコードする核酸組成を意味し、このRNA分子は二本鎖RNA錯体を形成することができ、従って、RNA干渉を誘発することができる。本発明では、RNAi発現カセットはrAAVベクターまたはrAAVゲノムの一部である。
【0096】
従って、本発明は哺乳類被験者の癌細胞中でインビボでmRNAレベルでの遺伝子発現を減少させるまたはダウン調整(down regulartion)する方法を提供する。この方法は、RNA干渉(「RNAi」)発現カセットを含む上記ベクターを用いて組換えアデノ随伴ウイルスベクターを哺乳類被験者(の細胞)にインビボで投与することを含む。このRNA干渉(「RNAi」)発現カセットのRNA発現産物は、「RNA介在干渉」または「RNA干渉」(「RNAi」)、転写後遺伝子サイレンシング機構を誘発する二本鎖RNA錯体を形成することによって、対応するRNAi標的遺伝子の発現を直接または間接的に減少させる。dsRNA錯体は下方制御すべき遺伝子(すなわちRNAi標的遺伝子)のmRNA転写物の少なくとも一部のヌクレオチド配列に、細胞の生理学的条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列を含む。特に、RNAi発現カセットのRNAi発現産物はRNAi標的遺伝子のmRNA転写物の細胞内濃度を減少させ、従って、哺乳類被験者のRNAi標的遺伝子によってコードされた蛋白質の濃度を減少させる。遺伝子発現のダウン調整はrAAV介在遺伝子転移を介してインビボで哺乳類被験者の細胞に転移すべきRNAi発現カセットのRNAコード領域の配列特性を設計する上でRNAi標的遺伝子の一部からのヌクレオチド配列が選択されるので、特異的である。換言すれば、二本鎖RNA錯体の二重鎖領域に対応するヌクレオチド配列がRNA干渉の標的になるので、抑制は配列特異的である。
【0097】
本発明はさらに、上記のヒトまたはラットAFP、ヒトおよびラットHIP/PAPI由来の調節ポリヌクレオチドに操作可能に結合された時に二本鎖RNA錯体を形成することができ、従って癌細胞中でRNA干渉を誘発することができるRNA分子をコードするRNAi発現カセットを提供する。このRNAi発現カセットは、細胞内に導入されたときに、dsRNA錯体を分子内に形成することができる一本鎖RNA分子を発生させるrAAVゲノムの一部として一本鎖DNA分子で構成することができる。しかし、dsRNA錯体を分子内に形成することができる2つ以上のRNA分子を発生させるために、二つ以上のrAAVゲノムまたはRNAi発現カセットまたはRNAコード領域を、同時にまたは連続して細胞内に導入することができる。一般に、dsRNA錯体を形成することができる2つのRNA部分は(分子内または分子間で)、発現が下方制御または減少される遺伝子または核酸配列の少なくとも一部がセンス配列で、少なくとも一部がアンチセンス配列である。
【0098】
RNAi発現カセットの設計は本発明の範囲を限定するものではない。RNAi発現カセットは種々の方法を用いて設計できる。種々のデザインに基づいたRNAi発現カセットはRNA干渉をインビボで誘発できる(RNAi発現カセットのデザインは本発明の範囲を限定するものではないが、あるRNAi発現カセットデザインは本発明の詳細な説明および下記に含まれる)。全てのRNAi発現カセットに共通する特徴は、分子内または分子間で二本鎖RNA錯体を形成することによって、単独でまたは別のRNA分子と組み合わせてRNA干渉を誘発するRNA分子をコードするRNAコード領域を有することである。
上記と同じ目標を達成するために当業者に周知な種々のデザイン原理を用いることができる。例えば、RNAi発現カセットは一種以上のRNA分子をコードすることができる。RNAi発現カセットからのRNA発現後または発現中に、二本鎖RNA錯体は一本鎖自己相補的RNA分子または2つの相補的RNA分子によって形成することができる。dsRNA錯体の形成は核の内側または外側で開始することができる。
【0099】
本発明の一つの観点から、生理学的条件下でmRNA分子の少なくとも一部にハイブリダイズすることができる第1RNA部分と、第2RNA部分の少なくも一部を生理学的条件下で第1部分にハイブリダイズすることができる第2RNA部分とを含む二本鎖RNA錯体が提供される。第1部分および第2部分は同じRNA分子の一部であり、細胞内で存在するような生理学的条件下でハイブリダイズが可能であり且つハイブリダイズ時に第1部分と第2部分が二本鎖RNA錯体を形成するのが好ましい。
【0100】
本発明の別の観点から、mRNA分子の少なくとも一部に好ましくは細胞内でハイブリダイズすることができる第1部分と、第1部分の少なくとも一部を第1部分にハイブリダイズしてヘアピンdsRNA錯体を形成することができる第2部分とを含む二本鎖RNA錯体を形成する直鎖RNA分子が提供される。
さらに別の観点では、この方法はインビボで全てまたは一部が二本鎖であるという特徴を有するRNAのAAV介在発現を含む。
RNAi標的遺伝子の一部と同一のヌクレオチド配列を含むdsRNA錯体は抑制に好ましい。RNAi標的遺伝子に対して挿入、欠失および一点変異を有するRNA配列も抑制に効果的であることが分かっている。従って、配列同一性は当業者に公知の整列アルゴリズムを用い、ヌクレオチド配列間のパーセントの差の計算によって最適化できる。または、dsRNA錯体の二重鎖領域を標的遺伝子転写物の一部とハイブリダイズすることができるヌクレオチド配列として機能的に定義することができる。
【0101】
好ましい実施例では、RNAi発現カセットは少なくとも一つのRNAコード領域を有する。RNAコード領域は宿主細胞中に所望のRNA分子を発現するためのテンプレートの役目をすることができるDNA配列であるのが好ましい。本発明の一つの実施例では、RNAi発現カセットは2つ以上のRNAコード領域を有する。RNAi発現カセットは、本明細書に記載のヒトまたはラットAFPまたはヒトまたはラットHIP/PAPIに由来の調節ポリヌクレオチドをさらに有するので、RNAi産物は哺乳類癌性細胞中で特異的に発現する。
本発明のいくつかの実施例では、リボザイム含有RNA分子を用いてdsRNA錯体を生産し、それによってdsRNAの産生に関連する公知の問題点を克服する。例えば、リボザイム機能を用いてポリアデニル化信号を除去し、細胞の核からのRNA分子の遊離を防止または最小化することができる。別の実施例では、RNA分子の一部がdsRNAの比活性を高めるRNAまたは蛋白質をコードする能力に基づいて本発明を実施する。
【0102】
本発明の別の観点から、RNAコード領域の発現によって標的遺伝子のダウン調整をする。標的遺伝子はRNAコード領域と少なくとも約90%、好ましくは少なくとも約95%、さらに好ましくは少なくとも約99%同一である配列を有するのが好ましい。
RNAi標的遺伝子は本発明の範囲を限定するものではなく、細胞生存度に必要な任意の遺伝子にすることができる。従って、RNAi標的遺伝子の選択は本発明を限定するものではない。所定の任意のRNAi標的遺伝子の遺伝子発現を下方制御するためのRNAi発現カセットのデザイン方法は当業者には周知である。特定のRNAi標的遺伝子およびrAAVビリオンの送達用量によって、手順をRNAi標的遺伝子の機能の損失を全てまたは一部にすることができる。
【0103】
細胞障害性リボヌクレアーゼをコードする目的ポリヌクレオチド
本発明ではヒトまたはラットAFPまたはヒトまたはラットHIP/PAPIプロモータ由来の調節性領域に操作可能に結合される目的ポリヌクレオチドは細胞障害性リボヌクレアーゼをコードする目的ポリヌクレオチドで構成できる。
種々の細胞障害性リボヌクレアーゼが当業者に公知である。例えばヒトRNase1の変異体から成るもの、例えば天然ヒトRNase1のアミノ酸配列に関して、下記から成る群の中から選択される一種以上のアミノ酸置換を含むもの:N88C L86E, N88R, G89D, R91D R4C, L86E, N88R, G89D, R91D, V118C L86E, N88C, R91D R4C, L86E, N88C, R91D, V118C R4C, N88C, V118C K7A, L86E, N88C, R91D K7A, L86E, N88R, G89D, R91D R4C, K7A, L86E, N88C, R91D, V118C R4C, K7A, L86E, N88R, G89D, R91D, V118C。
【0104】
本発明の目的ポリヌクレオチドでコードされる細胞障害性リボヌクレアーゼにはさらに、天然ヒトRNase1のアミノ酸配列に関して、下記から成る群の中から選択される一種以上のアミノ酸置換を含むものがある:
- 7 リジン(K), グリシン (G), アラニン (A), アスパラギン酸 (D), グルタミン酸 (E),フェニルアラニン (F), トリプトファン(W)
- 85 アルギニン (R), アスパラギン酸(D), グルタミン酸(E), フェニルアラニン(F), トリプトファン (W), グリシン (G), アラニン (A)
- 86 ロイシン (L), アスパラギン酸 (D), グルタミン酸 (E), フェニルアラニン (F), リジン (K), アルギニン (R),トリプトファン (W)
- 87スレオニン (T), ロイシン (L), フェニルアラニン(F), チロシン(Y), トリプトファン (W)
- 88 アスパラギン (N), リジン(K), アルギニン (R), ロイシン (L), アスパラギン酸(D), グルタミン酸(E), フェニルアラニン(F), チロシン (Y), トリプトファン (W)
- 89 グリシン (G), リジン (K), アルギニン (R),ロイシン(L), アスパラギン酸(D), グルタミン酸(E),フェニルアラニン (F), チロシン (Y), トリプトファン (W)
- 90セリン (S),フェニルアラニン (F), トリプトファン (W), アスパラギン酸 (D),グルタミン酸 (E), リジン (K),アルギニン (R)
- 91 アルギニン (R), アスパラギン酸 (D), グルタミン酸(E), フェニルアラニン(F), トリプトファン (W)
- 92 チロシン (Y), グリシン (G), アラニン (A), リジン (K), アルギニン(R), アスパラギン酸 (D),グルタミン酸(E)
- 93 プロリン (P),ロイシン (L), フェニルアラニン (F), チロシン (Y), トリプトファン (W), リジン (K), アルギニン(R), アスパラギン酸 (D), グルタミン酸 (E)
- 94 アスパラギン (N), リジン (K), アルギニン(R), ロイシン(L), アスパラギン酸(D), グルタミン酸(E),フェニルアラニン (F), チロシン (Y), トリプトファン (W)
【0105】
本発明の目的ポリヌクレオチドでコードされる細胞障害性リボヌクレアーゼにはさらに、天然ヒトRNase1のアミノ酸配列に関して、下記から成る群の中から選択される一種以上のアミノ酸置換を含むものがある:
- 1 リジン (K), システイン (C)
- 2 グルタミン酸 (E), システイン (C)
- 3 セリン (S), システイン (C)
- 4 アルギニン (R),システイン (C)
- 5アラニン (A), システイン (C)
- 6 リジン (K), システイン (C)
- 116 バリン (V), システイン (C)
- 117 プロリン (P), システイン (C)
- 118 バリン (V), システイン (C)
- 119ヒスチジン (H), システイン (C)
- 120 フェニルアラニン (F), システイン (C), および
- 121 アスパラギン酸 (D), システイン (C)
上記リストを含む種々の細胞障害性リボヌクレアーゼは米国特許出願第 US 2005 261 232号に記載されている。この特許は参考として本明細書の一部を成す。
【0106】
リボザイムをコードする目的ポリヌクレオチド
リボザイムとその作成法および使用は当業者には公知である。例えば下記文献参照:Norris et al., 2000, "癌遺伝子治療のためのリボザイムのデザインおよび試験" Adv. Exp Med. Biol. 465:293-301。さらに下記文献参照:Cech, 米国特許第 5,093,246号; Cech, 米国特許第5,116,742号; Haselhoff et al., 1988, Nature 334:585-591。メタロチオネインmRNA分子の公知のヌクレオチド配列を本発明で有用なリボザイム、一般に多種のリボザイムまたはリボザイム含有ベクターの公知特性と一緒に用いてデザインおよび使用できる。
【0107】
本発明の目的ポリヌクレオチドによってコードできるリボザイムにはメタロチオネイン遺伝子発現を干渉するもの、例えば米国特許第2003 105 043号に記載のものがある。この特許は参考として明細書の一部を成す。このリボザイムは標的となる癌細胞中でアポトーシスを誘発する。さらに、リボザイムは標的癌細胞の放射線、活性酸素種および化学療法剤に対する感受性をより高くする。従って、このリボザイムの哺乳類の癌性細胞での特異的発現を単独でまたは通常の放射線治療または化学療法と組み合わせて用いることができる。一種以上の17のヒトメタロチオネイン遺伝子を表すmRNAを標的にしたリボザイムを用いて、種々のヒト癌、例えば前立腺癌、乳癌および卵巣癌を治療することができる。
【0108】
このリボザイムはメタロチオネイン発現mRNAを、単にハイブリダイズするのではなく、破壊する。リボザイムは酵素のように作用し、各分子は複数のmRNA分子を分解するために「再利用」することができる。さらなる利点は、リボザイムはRNAを破壊するために標的mRNAとの完全相補性を有する必要がない点である。ハイブリダイゼーションはリボザイムの触媒部位が標的mRNAを切断できるだけで十分である。従って、通常のアンチセンス分子を種々のmRNAに対して効果があるようにデザインするよりもより容易に、単一のリボザイムを種々のメタロチオネインをコードする複数の関連mRNAを破壊するようにデザインすることができる。
マトリクスメタロチオネイン13(MMP−13)mRNAを特異的に切断するリボザイムをコードする目的ポリヌクレオチド、例えば米国特許第2003 195 164号明細書に記載のもの(この特許は参考としてそっくりそのまま本明細書の一部を成す)は本発明に包含される。
【0109】
センスまたはアンチセンス核酸をコードする目的ポリヌクレオチド
本発明の目的ポリヌクレオチドは抗癌活性を誘発するために特異的標的遺伝子の発現を干渉するセンスまたはアンチセンスポリヌクレオチドをコードすることもできる。この目的ポリヌクレオチドは米国特許第2005 261 249号明細書または米国特許第2005 113 328号明細書に記載のアンチセンスポリヌクレオチドをコードするもの(この特許は参考として本明細書の一部を成す)である。
この目的ポリヌクレオチドにはさらに、ヌクレオリンmRNAと相補的な米国特許第2005 26 860号明細書に記載のアンチセンスポリヌクレオチドをコードするもの(この特許は参考として本明細書の一部を成す)がある。
この目的ポリヌクレオチドにはさらに、BRCA−1 mRNAと相補的な米国特許第2005 26 857号明細書に記載のアンチセンスポリヌクレオチドをコードするもの(この特許は参考として本明細書の一部を成す)がある。
この目的ポリヌクレオチドにはさらに、WT−1 mRNAと相補的な米国特許第2004 43 950号明細書に記載のアンチセンスポリヌクレオチドをコードするもの(この特許は参考として本明細書の一部を成す)がある。
この目的ポリヌクレオチドにはさらに、キネシンmRNAと相補的な米国特許第2004 9 156号明細書に記載のアンチセンスポリヌクレオチドをコードするもの(この特許は参考として本明細書の一部を成す)がある。
【0110】
この目的ポリヌクレオチドにはさらに、テストステロンで抑制されたメッセージ2(TRPM−2)mRNAと相補的な米国特許第2003 158 130号明細書に記載のアンチセンスポリヌクレオチドをコードするもの(この特許は参考として本明細書の一部を成す)がある。
この目的ポリヌクレオチドにはさらに、ADNF−IIIオリゴヌクレオチドから成る米国特許第2003 36 521号明細書に記載のアンチセンスポリヌクレオチドをコードするもの(この特許は参考として本明細書の一部を成す)がある。
【0111】
本発明の目的ポリヌクレオチドの最も好ましい実施例
最も好ましい実施例では、ヒトAFPプロモータ、ラットAFPプロモータ、ヒトHIP/PAPIプロモータまたはラットHIP/PAPIプロモータに由来の調節配列に操作可能に結合される目的ポリヌクレオチドが、ヨウ素セル取込みを触媒するラットヨウ化ナトリウム共輸送体(NIS)蛋白質をコードするポリヌクレオチドから成る。
NIS遺伝子を過剰に発現するラット細胞では、高レベルの放射性ヨウ素セル取込みが達成されることが従来技術で既にわかっている。NISを発現する組換えベクターを肝臓癌を患ったラットの癌小結節に直接注入して腫瘍成長の抑制が測定されている (2004, Faivre et al., Cancer Research, Vol. 64 : 8045-8051)。しかし、このFaivre et al. (2004)達がデザインした組換えベクターはNIS蛋白質の癌性細胞中での特異的発現を可能にしなかったので、治療には使用できなかった。
これに対して、NISをコードするポリヌクレオチドを目的ポリヌクレオチドとして含む本発明の核酸を用いると標的癌性細胞中でNIS蛋白質が特異的に発現する。
【0112】
さらに、本明細書で定義の調節ポリヌクレオチドに操作可能に結合される目的NISコードポリヌクレオチドを用いると、高レベルの放射性ヨウ素セル取込みで腫瘍細胞を特異的に死滅させ、腫瘍成長を抑制するのにそれ自体で十分であり、細胞レベルで細胞障害性の放射性核種を維持する蛋白質をコードする一種以上の遺伝子、例えば甲状腺ペルオキシダーゼ(TPO)をコードする遺伝子またはサイログロブリン(TG)をコードする遺伝子を同時に発現する必要がない。
目的ポリヌクレオチドの他の実施例では、 目的ポリヌクレオチドはFaivre et al. (2004, Faivre et al., Cancer Research, Vol. 64 : 8045-8051)によって開示されたNIS蛋白質をコードする。
目的ポリヌクレオチドの他の実施例では、目的ポリヌクレオチドは国際出願公開第WO 97/28175号公報に開示されたNIS蛋白質をコードする。
【0113】
発現カセット
「発現カセット」は(i)ヒトまたはラットAFPプロモータ、またはヒトまたはラットHIP/PAPIプロモータに由来の調節ポリヌクレオチドから成る本明細書で定義の第1ポリヌクレオチドと、(ii)抗癌活性を直接または間接的に誘発する本明細書で定義の目的ポリヌクレオチドから成る第2ポリヌクレオチドの少なくとも2つのポリヌクレオチドを含む核酸から成る。
従って、上記の発現カセットを一般的に定義する観点からは、本発明の「核酸」も発現カセットの一つの特殊実施例から成る。
本発明の発現カセットは、目的ポリヌクレオチドに操作可能に結合されるポリアデニル化信号をさらに含むことができる。転写すべきポリヌクレオチドにはポリアデニル化配列を操作可能に結合し、それによって転写を終結できる。この配列は目的ポリヌクレオチドの(下流)3’位置にあるのが好ましい。それに適したポリアデニル化信号にはβ成長ホルモン(bGHpA)、SV40およびβグロビンポリアデニル化信号がある。
【0114】
本発明の一つの好ましい発現カセットは、5’−端から3’−端に向かって(i)上記定義の一つの調節ポリヌクレオチドと、(ii)NIS蛋白質をコードする一つの目的ポリヌクレオチドとを含む。
本発明の最も好ましい発現カセットは、5’−端から3’−端に向かって(i)上記定義のヒトHIP/PAPIプロモータ由来の一つの調節ポリヌクレオチドと、(ii)NIS蛋白質をコードする一つの目的ポリヌクレオチドとを含む。
発現カセットは標識遺伝子をさらに含むことができる。発現カセットはベクター中に含むことができる。
【0115】
組換えベクター
本発明は癌治療に有効なベクターと、ベクターを介した送達および抗癌因子の発現方法を提供する。本発明は特に、目的ポリヌクレオチドを癌細胞中で特異的に発現させるための核酸の送達での、組換えウイルスおよび非ウイルスベクターの使用に関する。
従って、本発明の別の対象は、目的ポリヌクレオチドを哺乳類癌細胞中で特異的に発現するための核酸を挿入した組換えベクターから成る。
本発明で「ベクター」「転移ベクター」「遺伝子転移ベクター」または「核酸組成物転移ベクター」とはプラスミド、ファージ、トランスポゾン、コスミド、染色体、ウイルス、ビリオン等の任意の要素を意味する。この任意の要素は核酸組成物を宿主細胞、宿主細胞中および/または宿主細胞中の特定の場所および/または区画に転移および/または輸送することができる。従って、この用語にはクローニングおよび発現媒体およびウイルスおよび非ウイルスベクターおよび潜在的に裸のまたは複合型のDNAが含まれる。しかし、レトロウイルスパッケージング細胞株のような遺伝子転移ベクターを産生する細胞はこの用語には含まれない。
【0116】
哺乳類の宿主細胞用のウイルスベースおよび非ウイルス発現系が提供されている。非ウイルスベクターおよび系には一般に本発明の核酸を含む発現カセットを有するプラスミドおよびエピソームのベクターおよびヒト人工染色体(例えばHarrington et al., 1997, Nat Genet 15:345参照)がある。例えば、哺乳類(例えばヒト)細胞中で本発明の核酸を発現するのに有用な非ウイルスベクターとしては、pcDNA3.1/His, pEBVHis A, B & C, (Invitrogen, San Diego Calif.)、MPSV ベクター、 Invitrogen 1997 Catalog (Invitrogen Inc, San Diego Calif.)(この文献は参考として本明細書の一部を成す)に記載のその他のベクターおよびその他の蛋白質に関して当業者に公知の多数のベクターが挙げられる。
【0117】
ウイルスベクター
有用なウイルスベクターとしてはレトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルスをベースにしたベクター、SV40をベースにしたベクター、パピロマウイルス、HBPエプスタイン・バーウイルス、ワクシニアウイルスベクターおよびセムリキ森林熱ウイルス(SFV)が挙げられる。SFVおよびワクシニアベクターは Ausubel et al., supra, Ch 16で概説されている。ウイルスベクターは裸の形でまたはウイルス蛋白質以外の蛋白質で被覆されて導入されることもあるが、これらのベクターは2つの成分、すなわち修飾ウイルスゲノムおよびこれを取り囲む被膜構造から成ることが多い(一般に、 Smith, 1995, Annu. Rev. Microbiol. 49: 807参照)。しかし、ベクター中のウイルス核酸は、例えば遺伝子治療のためにデザインされるときに変更することができる。この変更の目標は、利用可能なパッケージングまたはヘルパー細胞中でベクターの形で成長する能力は維持しながら、標的細胞中のウイルスの成長を無能にして、外来性DNA配列を挿入するためのスペースをウイルスゲノム中に提供し、所定の遺伝子をコードして適した発現を可能にする新しい配列を組み入れることである。
【0118】
従って、ベクター核酸は一般に2つの成分、すなわちヘルパー株中の複製およびパッケージングのための必須なシス作動性のウイルス配列および外来性遺伝子のための転写単位を含む。アデノウイルスベクター(例えば、ヒト遺伝子治療での使用)は例えばRosenfeld et al., 1992, Cell 68: 143; PCT publications WO 94/12650; 94/12649; and 94/12629に記載されている。アデノウイルスを発現ベクターとして用いる場合には、本発明核酸は後期プロモータと三部分リーダー配列とから成るアデノウイルス転移/翻訳錯体にクローニングすることができる。ウイルスゲノムの非必須なE1またはE3領域への挿入によって、感染した宿主細胞中で治療的ポリヌクレオチドを発現できる生存可能なウイルスが生じる(Logan and Shenk, 1984, Proc. Natl. Acad. Sci., 81:3655)。レトロウイルスゲノムの一部として治療的ポリヌクレオチド配列を含む複製−欠陥レトロウイルスベクターは例えば下記に記載されているMiller et al., 1990, Mol. Cell. Biol. 10: 4239; Kolberg, 1992, J. NIH Res. 4: 43; and Cornetta et al., 1991, Hum. Gene Ther. 2: 215。
【0119】
アデノウイルスベクター
本発明では遺伝子キャリアとしてアデノウイルスベクターを用いるのが好ましい。アデノウイルスはゲノムDNAのサイズが約36kbpであるDNAウイルスである。アデノウイルスはヒトに害はないが、アデノウイルスゲノムのE1遺伝子は齧歯類中で形質転換する可能性がある。従って、この領域は治療の安全性を高めるために除去しなければならない。
遺伝子送達ベクターとして組換えアデノウイルスを作成するには、E1AおよびE1B領域を第一世代アデノウイルスベクターとよばれる複製−欠陥アデノウイルスを作る所定の遺伝子で置換する。挿入遺伝子が3.5kbpより長いときは、さらにE3領域を除去することができる。E1領域を持たない組換えアデノウイルスはE1AおよびE1B蛋白質を恒常的に発現する293の細胞中に伝播させることができる。
目的ポリヌクレオチドを癌細胞中で特異的に発現できる組換えアデノウイルスを作成するためには、アデノウイルスゲノムDNAからE1領域を除去し、代わりに、本発明の核酸を有する発現カセットを挿入することができる。
【0120】
アデノ随伴ウイルスベクター
本発明の一つの実施例では、組換えベクターは本明細書で定義の目的ポリヌクレオチドを癌細胞中で特異的に発現するための核酸を含むAAVベクターから成る。
本発明で「AAVベクター」「AAV-ベースのベクター」「アデノ随伴ウイルスベースのベクター」「アデノ随伴ウイルスベクター」「rAAVベクター」または「組換えアデノ随伴ウイルスベクター」はアデノ随伴ウイルス血清型、例えばAAV-1, AAV-2, AAV-3, AAV-4, AAV-5, AAV-6, AAV-7, AAV-8 等(これらに限定されるものではない)に由来のベクター、または、カプシド蛋白の配列中でAAV2またはAAV5カプシド蛋白質配列とほぼ相同的な任意のその他のウイルスまたは血清型を意味する。この用語にはさらに、2つ以上のAAV血清型の特徴を組み合わせるハイブリッドベクターが含まれる。AAVベクターは全てまたは一部が欠失した一種以上のAAV野生型遺伝子、好ましくは反復遺伝子および/またはカプシド遺伝子を有することができるが、機能的フランキングITR配列を保持する。機能的ITR配列はAAVビリオンの救出、複製およびパッケージングに必要である。従って、AAVベクターは本明細書ではウイルスの複製およびパッケージング(例えば機能的ITR)にシス中で必要な少なくともこれらの配列を有すると定義される。ITRは野生型ヌクレオチド配列にする必要はなく、この配列が機能的救出、複製およびパッケージングを提供する限り、例えばヌクレオチドの挿入、欠失または置換によって変化させることができる。
【0121】
本発明で「AAVベクター構築物」または「rAAVベクター構築物」とはrAAVビリオン(rAAVベクター)の製造で用いる核酸組成物を意味する。より具体的には、rAAVベクター構築物はrAAVカプシドにパッケージングされるrAAVゲノムを生じる。AAVベクター構築物は公知技術を用いて作成され、転写の方向へ操作可能に結合される成分として、(a)ヒトまたはラットAFPプロモータ、またはヒトまたはラットHIP/PAPIプロモータに由来の調節ポリヌクレオチド、(b)目的のポリヌクレオチド(例えば、細胞毒性蛋白質をコードする配列、例えばNIS蛋白質または毒性リボヌクレアーゼ、リボザイム、アンチセンスポリヌクレオチドをコードする配列等)、(c)転写終結領域を提供する。得られる構築物は操作可能に結合される成分を含み、機能的AAV ITR配列と結合(5’および3’)と結合される。一例として、AAVベクター構築物は二本鎖DNAプラスミドにすることができる。
【0122】
本発明で「組換えウイルス」「組換えビリオン」「組換えベクター」または「組換えウイルスベクター」とは、例えば異種の核酸組成物を粒子に付加または挿入することによって遺伝子的に変化させたウイルスを意味する。
本発明で「AAVビリオン」とは完全なウイルス粒子、例えば野生型(wt)AAVウイルス粒子(AAVカプシド蛋白質コートと関連する直鎖、一本鎖AAV核酸ゲノムを含む)を意味する。これに関しては相補センスのいずれか、例えば「センス」または「アンチセンス」鎖の一本鎖AAV核酸分子を任意の一つのAAVビリオンにパッケージングすることができる。
【0123】
本発明で「組換えAAVビリオン」または「rAAVビリオン」はここではAAV蛋白質、シェル、所定の異種のDNA分子のカプシド形成から成る感染性、複製−欠陥ウイルスであって、片側または両側にAAV ITRが隣接するものと定義される。rAAVビリオンはAAVベクター構築物、AAVヘルパー機能および中に導入される補助機能を有している適切な宿主細胞中で産生される。このようにして、宿主細胞は後の遺伝子送達のためにAAVベクター(所定の組換えヌクレオチド配列を含む)を組換えビリオン粒子にパッケージングするのに必要なAAVポリペプチドをコードすることができるようになる。「rAAVビリオン」という用語およびその同義語および「rAAVベクター」およびその同義語は特に明確な説明の無い限り同じ意味で使うことができる。
【0124】
本発明で「偽型(r)AAV」とはカプシド蛋白質がミニ遺伝子のITRの血清型とは異種の血清型である組換えAAVを意味する。例えば、偽型rAAVはAAV5 ITRを保有するミニ遺伝子および AAV2, AAV1, AAV3, AAV4, AAV6, AAV7, AAV8のカプシドまたはその他の適したAAV血清型で構成することができ、ここで、ミニ遺伝子は異種カプシド中にパッケージングされる。変形例では、偽型rAAVはAAV5カプシドで構成することができ、このAAV5カプシド中には少なくとも一種のその他の血清型からのITRを含むミニ遺伝子がパッケージングされている。特にAAV5から成るrAAVが挙げられ、これは米国特許出願第60/200,409号明細書, filed Apr. 28, 2000 およびPCT国際特許出願PCT/USO1/13000号公報, filed Apr. 23, 2001 に記載され、両文献は参考として本明細書の一部を成す。
【0125】
最も好ましい組換えベクター
本発明の最も好ましいベクターは、目的ポリヌクレオチドを癌細胞中で特異的に発現するための少なくとも一つの核酸または少なくとも一つの上記定義の発現カセットを、DNA物質に挿入した状態で含むアデノウイルスベクターから成る。
本発明の一つの実施例では、アデノウイルスベクターを1998, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, Vol. 95 : 2590-2514に開示された技術に従って調製することができる。これと同じ技術が米国特許第5,922,576号明細書にも開示されている。この特許は参考として本明細書の一部を成す。
本発明の一つの実施例では、アデノウイルスベクターを Faivre et al. (2004, Cancer Research, Vol. 64 : 8045-8051)に開示された一般的な技術に従って核酸またはDNA挿入断片として上記定義の発現カセットを用いて調製することができる。
【0126】
組換え宿主細胞
目的ポリヌクレオチドを癌細胞中で特異的に発現するための本発明核酸を含む上記組換えベクターは治療を必要とする哺乳類、特にヒトへのインビボ投与で有用である。場合によっては上記ベクターを例えば臨床で用いる前にインビトロアッセイによって目的ポリヌクレオチドの癌細胞効果を保証するためにインビトロで用いて癌細胞を形質移入することもできる。
本発明の別の対象は、上記定義の組換えベクターとの細胞トランスフェクションを含む、本発明核酸によって形質移入された組換え宿主細胞にある。
本発明で「トランスフェクション」とは細胞による核酸組成物の取込みを意味する。外来性核酸組成物が細胞膜を通った時に細胞は「形質移入」される。複数のトランスフェクション技術が一般に知られている。例えば下記参照:Sambrook et al. (1989) 分子クローニング, 実験マニュアル, Cold Spring Harbor Laboratories, New York, Davis et al. (1986) 分子生物学の基本的方法, Elsevier。このような技術を用いて一種以上の核酸組成物、例えばプラスミドベクターおよびその他の核酸分子を適した宿主細胞中に導入することができる。この用語は遺伝物質の安定且つ一過性の取込みの両方を意味する。本発明で「形質導入」はウイルスベクターを介した「トランスフェクション」の特殊な形である。
【0127】
本発明で「形質導入」とはインビボ、インビトロまたはエキソビボのいずれかのレシピエント細胞中または内へのウイルスまたはウイルスベクター、例えば組換えAAVビリオンを介した核酸組成物の送達を意味する。形質導入はトランスフェクションの特殊な形である。すなわち、トランスフェクションという用語には形質導入が含まれる。
従って、一般に、本発明の組換え宿主細胞は上記定義の組換えベクターを細胞内に有し、目的ポリヌクレオチドを発現する癌性細胞から成る。この発現はヒトまたはラットAFPプロモータ、またはヒトまたはラットHIP/PAPIプロモータに由来の調節ポリヌクレオチドの制御下にある。
【0128】
医薬組成物および治療方法
本発明の別の対象は、(i)目的のポリヌクレオチドを上記定義の癌細胞中で特異的に発現するための核酸と、(ii)本発明の上記核酸を含む発現カセットと、(iii)上記核酸または上記発現カセットが挿入される組換えベクターとから成る群の中から選択される少なくとも一つの有効成分を含む医薬組成物にある。
本発明はさらに、治療を必要とする哺乳類、特にヒトに上記定義の医薬組成物を投与する段階を含む抗癌治療方法に関する。
本発明の別の対象は(i)上記定義の核酸および上記定義の組換えベクターから成る群の中から選択される有効成分と、(ii)任意成分としての、一種以上の薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物にある。
本発明はさらに、上記定義の核酸または発現カセットの医薬組成物の製造での使用に関する。
本発明はさらに、上記定義の組換えベクターの医薬組成物の製造での使用に関する。
【0129】
核酸分子の送達方法はAkhtar et al., 1992, Trends Cell Bio., 2, 139; およびアンチセンスオリゴヌクレオチド治療のための送達戦略, ed. Akhtar, 1995 に記載されている。両文献は参考として本明細書の一部を成す。Sullivan et al.,の国際出願公開第 94/02595号公報には酵素RNA分子の送達の一般的方法も記載されている。これらの手順はほぼ全ての核酸分子の送達に用いることができる。核酸分子は当業者に公知の様々な方法で細胞に投与できる。例えば、イオン泳動によるリポソーム中の封入、または、その他の媒体、例えばヒドロゲル、シクロデキストリン、生分解性ナノカプセルおよび生体接着微粒子への組み入れが挙げられるが、これらに限定されるものではない。変形例では、直接注入または輸液ポンプの使用によって核酸/媒体の組合せが局所的に送達される。その他の送達経路には経口(錠剤または丸薬の形態)および/またはくも膜下腔内送達(Gold, 1997, Neuroscience, 76, 1153-1158)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。その他のアプローチとしては、種々の輸送およびキャリア系の使用、例えば抱合体および生分解性ポリマーの使用が挙げられる。CNS送達を含む薬物送達戦略に関する包括的な概説については下記文献を参照されたい: Ho et al., 1999, Curr. Opin. Mol. Ther., 1, 336-343および Jain, 薬物送達システム: 技術および商機 Decision Resources, 1998 およびGroothuis et al., 1997, J NeuroVirol., 3, 387-400。核酸送達および投与に関してこれ以上の説明が必要な場合には下記文献を参照されたい:Sullivan et al., supra, Draper et al., 国際出願公開第93/23569号公報、 Beigelman et al., 国際出願公開第99/05094号公報 およびKlimuk et al., 国際出願公開第99/04819号公報。これらの特許は全て本明細書の一部を成す。
【0130】
本発明の核酸、発現カセットおよび組換えベクターは医薬品として用いることができる。
本発明の核酸、発現カセットおよび組換えベクターは医薬組成物を形成するための安定剤、バッファー等の有り無しで、任意の標準的な手段によって患者に投与および導入することができる。リポソーム送達機構を用いたい場合は、リポソームを形成する標準的な手順に従うことができる。本発明組成物は滅菌溶液、すなわち注射剤投与用の懸濁液および当業者に周知のその他の組成物として配合および使用することもできる。
本発明はさらに、上記の活性物質を含む医薬上許容可能な製剤を包含する。
生理学的組成物または製剤は細胞または患者、特にヒトへの投与、例えば全身投与に適した形の組成物または製剤を意味する。
【0131】
適した形は用途または流入経路に部分的に依存する。例えば、血流に注入される生理学的組成物は可溶性であるべきである。その他の因子には組成物または製剤がその効果を発揮するのを妨げる毒性および形態のような考慮があり、当業者には周知である。
「全身投与」とは血流中の薬剤のインビボ全身吸収または蓄積、その後の全身分布を意味する。全身吸収に至る投与経路としては下記が挙げられるが、これらに限定されるものではない:静脈内、皮下、腹腔内、吸入、経口、肺内および筋肉内経路。各投与経路は所望の負の電荷を帯びたポリマー、例えば核酸を、到達できる患部組織に暴露する。循環中に薬剤が流入する速度は分子量または分子サイズの関数であることがわかっている。リポソームまたは本発明の化合物を含むその他の薬剤キャリアの使用は、例えば細網内皮系(RES)の組織のような特定の組織タイプで、潜在的に局在化させることができる。リポソーム製剤は薬剤と、癌細胞を含む細胞の表面との結合を容易にすることができ、有用である。
【0132】
医薬上許容可能の製剤とは、本発明の核酸分子または組換えベクターを所望のその活性に最も適した物理的部位に効果的に分布させることができる組成物または製剤を意味する。本発明の核酸分子を有する製剤に適した薬剤の例としては下記が挙げられるが、これらに限定されるものではない:PEG共役核酸, リン脂質共役核酸, 親油性部分を含む核酸, ホスホロチオネート, P糖タンパク質抑制剤 (例えば Pluronic P85),これらは種々の組織への薬剤の流入を促進することができる。例えば、CNS (Jolliet-Riant and Tillement, 1999, Fundam. Clin. Pharmacol., 13, 16-26);注入後の徐放性送達のための生分解性ポリマー,例えばポリ(DL-ラクチド-コグリコリド)微粒子 (Emerich, DF et al, 1999, Cell Transplant, 8, 47-58) Alkermes, Inc. Cambridge, Mass; および荷電ナノ粒子, 例えばポリブチルシアノアクリレートから成るもの, これは薬剤を血液脳関門の全域に送達することができ、神経細胞取込み機構を変化させることができる (Prog Neuropsychopharmacol Biol Psychiatry, 23, 941-949, 1999). 本発明の核酸のCNS送達を含む送達戦略のその他の例としては下記が挙げられるが、これらに限定されるものではない:下記文献に記載の物質Boado et al., 1998, J. Pharm. Sci., 87, 1308-1315; Tyler et al., 1999, FEBS Lett., 421, 280-284; Pardridge et al., 1995, PNAS USA., 92, 5592-5596; Boado, 1995, Adv. Drug Delivery Rev., 15, 73-107; Aldrian-Herrada et al., 1998, Nucleic Acids Res., 26, 4910-4916; and Tyler et al., 1999, PNAS USA., 96, 7053-7058。これらの文献は全て参考として本明細書の一部を成す。
【0133】
本発明はさらに、ポリ(エチレングリコール)脂質(PEG修飾、または長時間循環リポソームまたはステルスリポソーム)を含む表面修飾リポソームを含む組成物の使用にも関するものである。本発明の核酸分子は共有結合した様々な分子量のPEG分子をさらに含むことができる。これらの製剤は標的組織中の薬剤の蓄積を増やす方法を提供する。このクラスの薬剤キャリアは単核食細胞系(MPSまたはRES)によるオプソニン化および排出に抵抗する。それによって封入薬剤のより長い血液循環時間および組織暴露の促進を可能にする(Lasic et al. Chem. Rev. 1995, 95, 2601-2627; Ishiwata et al., Chem. Pharm. Bull. 1995, 43, 1005-1011)。このようなリポソームはおそらく新血管新生標的組織中の血管外遊走および捕獲によって、腫瘍中に選択的に蓄積することがわかっている(Lasic et al., Science 1995, 267, 1275-1276; Oku et al., 1995, Biochim. Biophys. Acta, 1238, 86-90)。特に、MPSの組織中に蓄積されることが知られている通常のカチオン性リポソームと比較して、長時間循環リポソームはDNAおよびRNAの薬物動態学および薬動力学を高める(Liu et al., J. Biol. Chem. 1995, 42, 24864-24870; Choi et al., PCT第WO 96/10391号公報; Ansell et al., PCT 第WO 96/10390号公報; Holland et al., PCT第 WO 96/10392号公報; これらの文献は全て参考として本明細書の一部を成す)。長時間循環リポソームはまた、肝臓および脾臓のような代謝的に攻撃的なMPS組織中で蓄積するのを避ける能力を利用して、カチオン性リポソームよりも分解の程度が大きくならないように薬剤を保護しようとする。これらの文献は全て参考として本明細書の一部を成す。
【0134】
本発明にはさらに、医薬上許容可能なキャリアまたは希釈剤中に医薬上有効量の所望の化合物を有する貯蔵または投与のために調製される組成物が含まれる。治療用の許容可能なキャリアまたは希釈剤は医薬業界で周知であり、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co. (A. R. Gennaro edit. 1985)に記載されている(この文献は参考として本明細書の一部を成す)。例えば、防腐剤、安定剤、染料および香料添加剤を挙げることができる。これらは安息香酸ナトリウム、ソルビン酸およびp−ヒドロキシ安息香酸を有する。さらに、酸化防止剤および懸濁剤を用いることができる。
【0135】
医薬上有効量とは発生を防止、抑制するか、患者の癌状態を治療するのに必要な量である。医薬上有効量は癌の型、癌の発達状態、用いる組成物、投与経路、治療する哺乳類の型、考慮中の特定の哺乳類の物理的特徴、併用する投薬およびその他の因子に依存し、医術に精通したものには理解できよう。一般に、投与される核酸、発現カセットまたは組換えベクターの量は、負の電荷を帯びたポリマーの力価に依存して、0.1μg/kg〜10mg/体重kg/有効成分の日間である。
本発明の核酸分子および組換えベクターおよびその製剤は、通常の非毒性医薬上許容可能なキャリア、アジュバントおよび媒体を含む用量単位製剤で、非経口的に投与することができる。本明細書で用いる非経口的という用語には、経皮的、皮下、血管内(例えば静脈内)、筋肉内、または、くも膜下腔内注射または注入技術等が含まれる。
【0136】
本発明の医薬組成物では、本発明の複数の核酸分子および組換えベクターを一種以上の非毒性医薬上許容可能なキャリアおよび/または希釈剤および/またはアジュバント、必要に応じてその他の有効成分と組み合わせて存在させることができる。
水性懸濁液は水性懸濁液の製造に適した賦形剤と混合した活性物質を含む。このような賦形剤は懸濁剤、例えばカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロピロピル−メチルセルロースナトリウム、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカント・ゴム、および、アカシアゴムである。分散剤および湿潤剤は天然リン脂質、例えばレシチンまたは酸化アルキレンと脂肪酸とのの縮合物、例えばステアリン酸ポリオキシエチレンまたは酸化エチレンと長鎖脂肪族アルコールとの縮合物、例えばヘプタデカエチレンオキシセタノールまたは酸化エチレンと脂肪酸に由来の部分エステルとモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビトールのようなヘキシトールとの縮合物、または、酸化エチレンと脂肪酸に由来の部分エステルとモノオレイン酸ポリエチレンソルビタンのようなヘキシトール無水物との縮合物にすることができる。水性懸濁液はさらに、一種以上の防腐剤、例えばエチル、またはn−プロピル p−ヒドロキシ安息香酸塩、一種以上の着色剤、一種以上の香料添加剤および一種以上の甘味添加剤、例えばショ糖またはサッカリンを含むこともできる。
【0137】
本発明の核酸分子および組換えベクターは無菌培地で非経口的に投与することができる。用いる媒体および濃度によって、薬剤は媒体中で懸濁または溶解させることができる。局所麻酔薬、防腐剤および緩衝剤のようなアジュバントは媒体中に溶解できるのが有利である。
特定の患者に対する特定の投与量は種々の因子、例えば用いる特定の化合物の活性、年齢、体重、全身状態、性別、食餌、投与時間、投与経路および排出速度、混合薬および治療する特定の癌の重症度に依存することは理解できよう。
本発明の核酸分子および組換えベクターは抗癌治療効果を増強するためにその他の治療化合物と組み合わせて患者に投与することができる。
【0138】
本発明の医薬組成物は固形腫瘍および白血病を含む全ての型の癌の治療法に用いることができる。固形腫瘍および白血病の例としては下記が挙げられる:アプドーマ、choristoma、鰓腫、悪性カルチノイド症候群、カルチノイド心臓病、癌腫(例えば、ウォーカー、基底細胞、基底有棘細胞、Brown-Pearce、エールリッヒ腫瘍、in situ、クレブス2、Merkel細胞、粘液性の、非小細胞肺、コート細胞、乳頭の、スキルス、細気管支、気管支原性、扁平細胞,および 移行細胞),組織球性疾患,白血病(例えば、B細胞、混合細胞、ヌル細胞、T細胞、T−細胞慢性、HTLV−II−随伴、リンパ性急性、リンパ性慢性、肥満細胞、および骨髄)、組織球増殖症悪性,ホジキン病,免疫増生性の小、ホジキンリンパ腫、プラズマ細胞腫,細網内皮症、黒色腫、軟骨芽細胞腫、軟骨腫、軟骨肉腫、線維腫、線維肉腫、巨細腫瘍、組織球腫、脂肪腫、脂肪肉腫、中皮腫、粘液腫、粘液肉腫、骨腫、骨肉腫、ユーイング肉腫、滑液腫瘍、腺線維腫、腺リンパ腫、癌肉腫、軟骨腫、頭蓋咽頭腫、未分化胚細胞腫、過誤腫、間葉細胞腫、中腎腫、筋肉腫、エナメル上皮腫、セメント腫、歯牙腫、奇形腫、胸腺腫、絨毛性腫瘍、腺癌、癌腫、腺腫、胆管腫、コレステリン腫、円柱腫、嚢胞腺癌、嚢胞腺腫、顆粒膜細胞腫、卵巣男性胚細胞腫、肝腫、乳頭状汁腺腫、島細胞腫、ライディッヒ細胞腫、乳頭腫、セルトリ細胞腫、卵胞膜細胞腫、平滑筋腫、平滑筋肉腫、筋芽細胞腫、筋腫、筋肉腫、横紋筋腫、横紋筋肉腫、脳室上皮腫、神経細胞腫、神経膠腫、髄芽細胞腫、髄膜腫、神経鞘腫、神経芽細胞腫、神経上皮腫、神経線維腫、神経腫、傍神経節腫、非クロム親和性傍神経節腫、角化血管腫、好酸球増加症を有する血管リンパ球増殖、硬化性血管腫、血管腫症、グロムス血管腫、血管内皮腫、血管腫、血管外被細胞腫、血管内皮腫、リンパ管腫、リンパ管筋腫、リンパ管肉腫、松果体腫、癌肉腫、軟骨肉腫、葉状嚢肉腫、線維肉腫、血管内皮腫、平滑筋肉腫、白血肉腫、脂肪肉腫、リンパ管肉腫、筋肉腫、粘液肉腫、卵巣癌、横紋筋肉腫、肉腫 (例えばユーイング、実験的、カポジ、および肥満細胞)、腫瘍(例えば骨、乳房、消化器系、結腸直腸、肝臓、膵臓、下垂体、睾丸、眼窩、頭頸部、中枢神経系、聴覚、骨盤、気道および尿生殖器)、神経繊維腫症、および子宮頚部異形成、および細胞が不死化または形質転換したその他の状態の治療。本発明はその他の治療様式、例えば化学療法、寒冷療法、高熱、放射線療法等と組み合わせて用いることができる。
以下、本発明の実施例を説明する。
【実施例】
【0139】
実施例1
ヒトHIP/PAPIおよびラットPAPIプロモータ由来の調節ポリヌクレオチドを含む核酸の調製
ヒトおよびラットHIP/PAPI(肝臓癌−腸−膵臓/膵炎関連蛋白質I)プロモータ変異体を以下のように生産した。
エキソン1を含むヒトHIP/PAPI遺伝子の完全長調節配列を包囲する2.44kbの断片をEcoRI-BamHI消化によってpCL6ベクターから放出した。
種々の欠失変異体をクレノーポリメラーゼとブラントエンドし、キナーゼ処理し、pルシフェラーゼ292 ベクター(pL292, Promega)のSalI 部位にリゲートし、プラスミドpL292-EcoRI-HIP/PAPI, pL292-XmnI-HIP/PAPI, pL292-PstI-HIP/PAPI, pL292-StuI-HIP/PAPIおよびpL292-Bsu36I-HIP/PAPIを産生した。これらのルシフェラーゼレポーター遺伝子構築物はそれぞれヒトHIP/PAPIプロモータ領域の2092位置から+348まで,1714から+348まで、987から+348まで,238から+348までおよび+106から+348までのヌクレオチドを含む(転写開始部位は1を足した数)。ルシフェラーゼアッセイを実施して最高の転写活性を有する欠失変異体を決定する。
1.253KbのヒトHIP/PAPIプロモータの断片と、選択されたヒトHIP/PAPIプロモータの2Kbの断片とを、それぞれプラスミドp-1253/+10PAPI-CAT (p-1253/+10PAPI-CATベクターは上記のDusetti et al., 1995, J Biol Chem, Vol. 270(38) : 22417-22421に記載されている)およびpL292-XmnI-HIP/PAPIをテンプレートとして用いて、ポリメラーゼ連鎖反応法によって増幅させた。
増幅は0.2mM dNTPと、0.2μmolの各プライマーと、2.5単位のExpand高忠実度Taq ポリメラーゼ (Roche) を含む1Xポリメラーゼ連鎖反応法緩衝液(最終用量は50μL)で行った。PCR反応法は94度で60秒、55℃で30秒、72℃で120秒の35サイクルで行った。
下記オリゴヌクレオチドを用いた:
【0140】
ヒトHIP/PAPI:
- KpnI制限部位を有するセンスプライマー
5'-CGGGGTACCACTGCAGCCTTGAACTCCTGG-3’ [配列番号 17]',
- SalI制限部位を有するアンチセンスプライマー
5'-ACGGTCGACTGTCTGCGACTTGAGGAGGCA-3' [配列番号 18];
ラットHIP/PAP :
- SalI制限部位を有するセンスプライマー
5'-CCGCGTCGAGCTGCAGATTTTCCAGTTAGTC-3' [配列番号 19],
- MluI制限部位を有するアンチセンスプライマー
5’-TCGACGCGTGTGAGGACAGAGATGGCTGTG-3’ [配列番号 20].
【0141】
pSVSport-rNISおよびpShuttleは それぞれN. Carrasco教授 (Albert Einstein College of Medicine, Bronx, New York) およびナント大学病院のベクターコアから提供されたもの。
ラットNIS cDNAはSalI-EcoRV (New England Biolabs)ブラントエンド消化でpSVSport-rNISから切除され、アガロースゲルで精製され、SalI-BglIIブラントエンドpShuttleにリゲート (T4 DNA ligase, Roche)し、pShuttle-rNISを得た。 ヒトおよびラットHIP/PAPIPCR産物をpShuttle-rNISに挿入した。
pShuttle-rNISおよびhHIP PCR 産物をKpnI (10μgのDNA当たり10単位の酵素 ) によって37°Cで2 時間消化し、無水エタノールおよび酢酸ナトリウム3M中で-20°Cで一晩沈殿させ、SalIで37°Cで2時間消化した。アガロースゲルで遊走および精製(QiaExII, Qiagen)し, T4 DNAリガーゼを用いてDNAを16°Cで一晩リゲートし、pShuttle hHIP-rNISを産生した。
同じ実験手順を用いて、pShuttle-rNISおよびrHIP PCR産物をSalI-MluIによって消化した後に、精製およびリゲートしてpShuttle rHIP-rNISを産生した。
【0142】
実施例2
ヒトAFPプロモータ由来の調節ポリヌクレオチドを含む核酸の調製
pShuttle rAFPwt-およびhAFPt-rNISを好都合な制限酵素を用いて作成した。
pShuttle rAFPwt-rNIS ([図1])を産生するために、ラットα-胎児蛋白(rAFP) 転写調節配列を有するEcoRI-SalI 3.2 Kb 断片をpBluescript-rAFPwtから放出し、EcoRI-SalI消化pSVSport-rNISに挿入し、次いで、in KpnI-NotI消化pShuttleに挿入した。
pShuttle hAFPt-rNIS ([図2])を産生するために、ヒトα-胎児蛋白(hAFP) エンハンサー要素を有するKpnI-XhoI 0.8 Kb断片をpGL3-hAFPtから放出し、KpNISalI消化 pShuttle-rNISに挿入した。
【0143】
実施例3
組換えウイルスベクターの作成
pShuttle hHIP-([図3]), rHIP- rAFPwt- ([図1])およびhAFPt-rNIS ([図2])を完全に配列決定した。
pAdEasy システムを用いた、E. Coli中での同種の組換えによる組換えアデノウイルスプラスミドの産生およびアデノウイルスの産生は、 He et al. (P.N.A.S, 1998; 95. 2509-14) に説明された方法に従ってナントのベクター開発研究室によって行われた。
全ての組換えアデノウイルスは単一のプラークから単離され、293の細胞中で増量され、二重塩化セシウム遠心法によって精製された。精製されたウイルスは 分割量で-80℃で貯蔵された。ウイルス価はプラークアッセイで求めた。
【0144】
実施例4
本発明核酸のインビトロおよびインビボでの抗癌活性
A.材料と方法
A.1.ルシフェラーゼアッセイ
HepG2を10 cmのペトリ皿中で5x106 細胞に播種した。翌日、これらの細胞を燐酸カルシウムDNA共沈法を用いて、10μgの各レポータープラスミドおよびβガラクトシダーゼ遺伝子を発現する1μgのpCH110ベクターと共形質移入した。
βガラクトシダーゼ共トランスフェクションはトランスフェクション効率を参照化するための内部標準として用いた。制御プラスミドが含まれる。すなわち、トランスフェクションの12時間後のpCMV-ルシフェラーゼおよびpGL3-GFP, IL-6 (100 単位/mL)およびデキサメタゾン (100 nM)を単独でまたは組み合わせて培地に添加した。トランスフェクションの48時間後に、細胞を燐酸緩衝食塩水 (PBS)で2回洗浄し、氷上でスクラップした。
ルシフェラーゼ活性アッセイのために、プロテアーゼ抑制剤を含む等張性緩衝液 (20 mM Tris-HCl, pH 7.5, 137 mM NaCl, 1% Nonidet P-40) 中で細胞抽出物を調製した。50 μLの上澄みをルシフェリンと一緒に培養し、ルシフェラーゼ活性を照度計を用いて測定した。 プロモータ活性はβガラクトシダーゼ活性によって規準化したルシフェラーゼ活性で表記した。
【0145】
A.2.細胞株
ヒト肝癌HepG2, ヒト大腸腺癌 HT29および乳癌T47D細胞を、10%のウシ胎児血清 (FCS)を添加したDulbeccoの修飾Eagle Medium glutamax (DMEM)/F12K Ham’s (Invitrogen Corporation, Carlsbad, CA)の50/50 混合物中で培養した。
ヒト乳腺癌細胞MCF7およびラット肝癌BCXL3を10% FCSを添加したDMEM 中に維持した。AML12 (αマウス肝臓12) 細胞株を 5μg/mLのインシュリン、5μg/mLのトランスフェリン, 40 ng/mLのデキサメタゾンおよび10% FCS を添加したF12K Ham's 培地中に維持した。
ヒト成人原発性肝細胞を、肝臓転移から部分肝切除後に得られた肝臓断片から引き出し、コラゲナーゼH(Roche Molecular Biochemicals) 灌流 (500 g/mL, HEPES緩衝液中に2.4 mg/mL CaCl2 , pH 7.4) を用いて単離した。これに先行して、肝臓組織を、切除断片の切断表面上の血管にカテーテルを挿入して、 HEPES/ エチレンジアミンテトラ酢酸 (EDTA) 緩衝液 pH 7.4 で広範に洗浄した。灌流の流量は15 〜18 mL/分にした。細胞を弱い遠心法 (2 分で100g)によって2回洗浄し、パーコール分画 (30%等張性パーコール溶液)を用いて非柔細胞から肝細胞を分離した。トリパンブルー排除によって生細胞を求め、10% FCSを添加したウイリアム培地で成長させた (1 mg/mLのウシ血清アルブミン、25 nmol/L デキサメタゾンおよび5 μg/mLのウシインシュリン) 。
【0146】
A.3.インビトロでのヨウ素取込みと、流出(efflux)実験
感染の前日に、3×105細胞を24穴の皿に播種した。細胞を肝臓腫瘍に特異的なNIS組換えウイルスベクターまたは対照ベクター(すなわち、空ベクター Ad-DL324およびAdCMV-NIS) と一緒に種々の感染効率(細胞一つ当たり10, 50, 100 および200の 感染粒子) で24時間培養した。HIP-NISアデノウイルス感染細胞では、感染の48時間後に、IL-6 (100 単位/mL)およびデキサメタゾン (100 nM)を単独でまたは組み合わせて、培地に添加した。次いで、ヨウ素取込みおよび流出試験を上記のように行った (Faivre et al., 2004)。
簡単にいうと、B-Hankの平衡塩類溶液(B-HBSS, Life Technologies, Inc)中で細胞を2回洗浄し、次いで、1穴当たり1μCi (37 kBq) の 123I and 0.5 μM of NaI (Fluka, Sigma-Aldrich) を含む放射性B-HBSS中で37°Cで60分間培養した。決められた時間に、細胞を冷たいB-HBSSで1回洗浄し、次いで、1mLの冷たい無水エタノール中で20分間培養した。
ヨウ素流出試験では、取込み実験と同じ放射性培地で細胞を60分間培養した。次いで、放射性培地を除去した。細胞を B-HBSSで1回洗浄し、0.5mlのヨウ素を含まないB-HBSSを添加した。 指示された時間に、B-HBSSを除去し、細胞を冷たい無水エタノール中で培養した。 穴γ線計数器を用いて細胞内放射性を定量化した。細胞数は3穴の平均細胞含有量として決定された。NIS抑制試験では、 30 μMの濃度でNaCl04 を添加した。
【0147】
A.4.動物
オスのウィスターラット (Charles River, France) を動物の世話のEU規制に従って治療した。体重が150-180 gの6週齢のオスウィスターラットに、ジエチルニトロソアミン (Sigma-Aldrich, St-Louis, MO)を飲水 (100 mg/L) 投与で8週間毎日摂取させることによって、肝臓癌を誘発した。これらのラットにチロキシン (T4) 添加 (50 μg/L)を飲水投与し、望ましくない甲状腺ヨウ素取込みを減らした。
A.5.インビボ遺伝子導入
ラットを1 mL/kg の70:30 混合ケタミン/キシラジン (Imalgene 1000, Merial, Rompun, Bayer AG)で麻酔し、次いで、腹壁切開手術を行った。遺伝子導入の効果を3つの投与経路、すなわち門脈内、肝動脈を介した選択的注入および腫瘍への直接注入で評価した。NISを発現する門脈内または肝動脈アデノウイルスベクターを様々なラット群(健康なラット群、および、直径が10mm以下の腫瘍小結節を有するDEN投与ラット群)に投与した。DEN投与ラットの5〜10 mmの直径腫瘍小結節にrNIS ベクターを30ゲージ針を用いて直接注入した。ラット一匹当たり5×109〜1011の注入感染粒子の範囲でウイルスの量を変えて評価した。
【0148】
A.6.インビボヨウ素取込み実験
Na123I(Schering AG, Berlin, Germany) を腹腔内に注入した (ラット一匹当たり6〜2 MBq)。123Iまたは131I画像処理に対してそれぞれ低エネルギーまたは高エネルギーの高解像度の平行コリメータを用いて2〜4匹のラットを同時に画像処理した。DSX γカメラ(GE)を用いてシンチグラフィーの256×256画像を得た。投与した一定分量のトレーサーも内部標準として画像処理した。動態試験のために同じ手順を連続的に適用した。4 mm孔のピンホールコリメータを用いて、取得時間および数値化を増大させることによってより高解像度の画像が得られた。この画像取得後、各ラットに活性ヨウ化輸送の強力阻害剤である50 mgの過塩素酸ナトリウムを腹腔内注射し、1分間隔で画像を60分間取得した。
【0149】
A.6.2.単一光子放出計算断層撮影およびCT(SPECT/CT)画像処理
99mTc]過テクネチウム酸塩を静脈内注射した(ラット一匹当たり37 MBq)。 注射の15分後に、ラットを取得窓の前に肝臓が位置決めされるように垂直に配置する。 4 mm厚さ×120 mm直径 CsI(Na)連続結晶および位置敏感型光電子増倍管を用いてSPECT取得を行い、固有空間分解能が2mmで、視野が10 cmにした。CT システムは冷却CCDにレンズで接続されたシンチレーションシートを含み、250 μm の空間分解能にした。SPECT/CT (Biospace Mesures, Paris)はリアルタイム画像処理を行う。 すなわち、SPECT およびCTデータの同時取得によって、SPECT画像の断層撮影の再構築、CT画像および取得中の両画像の登録が可能になる。SPECT およびCT画像は40分間取得した。再構築された画像をAmira 3.1.1解析ツール (Mercury Computer Systems, Inc)を用いて分析した。
【0150】
A.6.3.画像定量化
比活性を計算するために、適切なバックグラウンド補正を用いて関心領域(ROI)法を使用した。所定の器官における絶対的に有効な120分の取込みを、この器官内のバックグラウンド補正数値をコリメートシステムの計数効率および0時間での投与活性で割ったものとして計算した。物理学的減衰は123Iではそれぞれ13.2時間、131Iでは8.05dである。生物学的取込みは、有効取込み量を、腹腔内注射と画像処理との時間間隔に対応する同位体物理学的減衰で割ったものとして計算した。規準化補正係数率および特異的ROIの活性を120分からの画像で測定し、単一指数フィットを用いて器官半減期を計算した。
【0151】
A.6.4.ウエスタンブロット分析
ウイルス感染の翌日に細胞蛋白質抽出物を調製した。細胞をスクラップし、50 mmol/LのトリスpH 8.0, 150 mmol/LのNaCl, 1%のNonidet P-40, 100 μg/mL のフェニルメチルスルホニルフッ化物、1 μg/mL のアプロチニンおよび1 μg/mLの ロイペプチンを含む溶解緩衝液中でホモジナイズした。次いで可溶化液を12,000gで10分間、4℃で遠心分離し、2X Laemmli 緩衝液中で可溶化し、96°Cで10分加熱した。蛋白質濃度はブラッドフォード法で測定した。SDS-9%ポリアクリルアミドゲル電気泳動を用いて蛋白質を分離し、ニトロセルロースに転移させた。ウェスタンブロット分析は抗rNISペプチドポリクローナル抗体pAb-10 (1:2000)を用いて、5% 脱脂粉乳を含む0.1%のトゥイーン20に希釈したトリス緩衝食塩水中で室温で1時間フィルターを培養し、その後、西洋わさびペルオキシダーゼ共役ヤギ抗ウサギ IgG (1:1000)で室温で1時間培養することによって行った。
改良された化学発光ウェスタンブロット分析システム (Super Signal, Pierce)を用いて検出を行った。脱グリコシルアッセイでは、蛋白質を変性緩衝液(0.5% SDSおよび 1% s-メルカプトエタノール) 中で37℃で30分間変性させた。変性蛋白質をペプチジル:N-グリコシダーゼF (PNGase F; New England Biolabs, Inc., Beverly, MA) を蛋白質1μg当たり500Uの濃度で用いて37℃一晩培養した。
【0152】
A.6.4.組織学、免疫蛍光、マイクロオートラジオグラフィ.
ホルマリン固定組織切片をH&Eで染色したパラフィンに包埋し、光学顕微鏡で検査した。免疫蛍光では、凍結切片 (4-μm)を4%のパラホルムアルデヒド中に15分間固定し、1:200に希釈したNIS に対する原発性ポリクローナル抗体と一緒に1時間培養した。蛍光を紫外線蛍光顕微鏡によって検査した。131I標識肝臓切片をMicro-Imager (視野24x32 mm2 および解像度 25μM、Biospace Mesures)で分析した。
A.6.5.インビトロ取込み
器官サンプルを秤量し、放射能を穴γ線計数器で測定し、結果は組織1グラム当たりの注入量のパーセンテージ(%ID/g)で表記した。自動吸収では使用する容積およびγ放射体を考慮しておくことができる。
A.7.統計処理
分散解析および5%リスクでのPLSDフィッシャー試験を用いて統計学的比較を行った(StatView 5.0 ソフトウェアSASシステム)。
【0153】
B.結果
この実施例で行った実験手順の目的は、骨髄除去のような副作用を避けるために比較的低い照射量で可能な内部放射線治療によって肝腫瘍を破壊することであった。従って、目的は転移後に、腫瘍細胞中でヨウ化ナトリウム共輸送体(NIS)を発現することによって肝臓腫瘍細胞中で特異的に放射性同位体の蓄積を誘発できるウイルスまたは非ウイルスの組換えベクターを限定することにあった。
【0154】
[図5]に示すように、ラットHIP/PAP調節配列はヒト腫瘍肝細胞中でのNISの発現の誘発に成功した。
さらに、アデノウイルスベクターAdrHIPrNISで形質移入されたHepG2細胞を用いた抗NIS免疫蛍光アッセイでは、NISは形質移入された細胞のプラズマ膜レベルで発現することがわかった。
[図6]に示すように、ヒトHIP/PAP調節配列も、ヒト腫瘍肝細胞中でのNISの発現の誘発に成功した。
さらに、[図7]に示すように、ラットHIP/PAP調節配列は肝臓腫瘍小結節中で特異的にNISの強いインビボ発現を誘発する。
さらに、[図8]に示すように、ヒトおよびラットAFP由来調節配列はいずれもヒト腫瘍肝細胞中でのNISの発現を誘発する。
【0155】
さらに、ヒト細胞を、ヒトAFP由来調節配列に操作可能に結合されるGFP DNAを含むウイルスベクターと形質移入したときに、GFPはヒト肝癌細胞中で排他的且つ強く発現することがわかった。
さらに、アデノウイルスベクターAdAFPrNISで形質移入されたHepG2細胞を用いる抗NIS免疫蛍光アッセイでは、NISは形質移入された細胞のプラズマ膜レベルで発現することがわかった。
NIS発現の標的化が成功することによって、全身照射量を最小にしながら、腫瘍のみを強く照射することができる。
【0156】
克服しなければならない重大な障害は、潜在的な治療遺伝子の発現を調節する利用可能な腫瘍に特異的なプロモータが少数で、且つ、転写活性が弱いことであった。従って、これらの以前のプロモータによって調節されたNIS蛋白質発現は細胞溶解濃度の放射性同位体を取り込むには十分ではなかった。
本発明では、この問題をNIS組換えベクターの作成のために、肝臓腫瘍に特異的な遺伝子AFPおよびHIP/PAPIの切断調節配列を選択することによって解決した。
【0157】
この実施例の実験結果では、131I治療後の腫瘍成長の明らかな抑制によって証明されるように、このベクターはHCCを有する動物モデルの肝臓腫瘍中でNISにとって十分に高い転写活性を有することがインビボでわかった。
従って、本明細書では下記(1)〜(6)を実験的に行った:
(1)α胎児蛋白質(AFP)の切断調節配列、レポーター遺伝子に融合した肝臓癌−腸−膵臓/膵炎関連蛋白質I(HIP/PAP I)遺伝子、および、これらの構築物の中で選ばれた最高の転写活性を有するものを作成、
(2)選択された調節配列AFPおよびHIP/PAPIを有するラットNIS組換えアデノ−およびレンチウイルスの配列決定による作成および試験、
(3)AFP−NISおよびHIP/PAPI−NISによる感染後、NIS蛋白質発現が強く、且つ、正確に形質転換肝細胞のプラズマ膜を標的にし、一方、原発性正常肝細胞中で発現しないことをインビボで証明、
(4)AFP−NISおよびHIP/PAPI−NISによって感染した細胞中のヨウ素の取込みレベルが強い(CMV−NISによって誘発されるものと比較して)ことをインビトロで証明、
(5)放射性同位体が肝腫瘍小結節によって強く取り込まれるが、それを取り囲む非腫瘍組織によって取り込まれないので、調節配列AFPおよびHIP/PAPIによって腫瘍肝細胞の中のみで強い機能的NIS発現を示すことを、HCCを有する動物の連続放射性同位体画像処理によってインビボで証明、
(6)AFP−NISまたはHIP/PAPI−NIS形質導入後の131I放射線治療に反応したHCCを有する動物中での有意な腫瘍退行ことをインビボで証明。
【0158】
得られた実験結果では、器官での局所的条件は、特に肝臓癌に存在する高密度な血管新生、線維性炎症腫瘍周囲反応および原因疾患(肝硬変および慢性肝炎)のために、移植された腫瘍の局所的条件とは極めて異なることがわかった。従って、移植した腫瘍中で見られたヨウ化物の劇的な流出を患者に予想することは見当違いであろう。本発明では放射線治療の効果に必要な条件である肝臓腫瘍中での放射性ヨウ化物の長期保持は、取込み、流出および再取込みの動的プロセスの結果であることが分かる。この動的プロセスはAFP−NISまたはHIP/PAPI−NISベクターによって誘発される腫瘍肝細胞の血漿膜でのNIS蛋白を高濃度にし、および、血漿放射性ヨウ素を肝臓に迅速に再循環することができる肝血流量を高くすることによってより有利になる。
【0159】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)と(b)とを含む哺乳類の癌細胞に特異的な目的のポリヌクレオチドを発現するための核酸:
(a)下記(i)〜(iv)から成る調節ポリヌクレオチドの群の中から選択される哺乳類の癌細胞中の目的のポリヌクレオチドの発現で得られる調節ポリヌクレオチド:
(i)5’−端から3’−端ヘ向かって、配列番号1および配列番号4から成る群の中から選択される核酸と少なくとも90%のヌクレオチド同一性を有する第1核酸と、配列番号3の核酸と少なくとも90%のヌクレオチド同一性を有する第2核酸下記を含み、第1核酸と第2核酸とは互いに直接結合しているか、または、第1核酸と第2核酸はスペーサ核酸(長さが1〜3000ヌクレオチドである)を介して間接的に結合している調節ポリヌクレオチド:
(ii)配列番号4の2200位置にあるヌクレオチドから始まり、2432位置にあるヌクレオチドで終わる核酸と少なくとも90%のヌクレオチド同一性を有する調節ポリヌクレオチド、
(iii)配列番号5の979位置にあるヌクレオチドから始まり、1253位置にあるヌクレオチドで終わる核酸と少なくとも90%のヌクレオチド同一性を有する調節ポリヌクレオチド、
(iv)5’−端から3’−端に向かって、配列番号6および配列番号7から成る群の中から選択される核酸と少なくとも90%のヌクレオチド同一性を有する第1核酸と、配列番号8の核酸と少なくとも90%のヌクレオチド同一性を有する第2核酸とを含み、第1核酸と第2核酸とは互いに直接結合しているか、第1核酸と第2核酸とがスペーサ核酸(長さが1〜2000ヌクレオチドである)を介して間接的に結合している調節ポリヌクレオチド、
(b)上記の目的のポリヌクレオチド。
【請求項2】
調節ポリヌクレオチドが、5’−端から3’−端へ向かって、配列番号1および配列番号2から成る群の中から選択される核酸と少なくとも90%のヌクレオチド同一性を有する第1核酸と、ヌクレオチド長さが1〜3000ヌクレオチドであるスペーサ核酸と、配列番号3の核酸と少なくとも90%のヌクレオチド同一性を有する第2核酸とを含む請求項1に記載の核酸。
【請求項3】
調節ポリヌクレオチドが配列番号9および配列番号10から成る群の中から選択される核酸と少なくとも90%のヌクレオチド同一性を有する請求項1に記載の核酸。
【請求項4】
調節ポリヌクレオチドが配列番号4の核酸の連続した少なくとも233のヌクレオチドと、配列番号11の核酸とを含む請求項1に記載の核酸。
【請求項5】
調節ポリヌクレオチドが、配列番号11の核酸と少なくとも90%のヌクレオチド同一性を有する調節ポリヌクレオチド、配列番号12の核酸と少なくとも90%のヌクレオチド同一性を有する調節ポリヌクレオチド、配列番号13の核酸と少なくとも90%のヌクレオチド同一性を有する調節ポリヌクレオチド、配列番号14の核酸と少なくとも90%のヌクレオチド同一性を有する調節ポリヌクレオチドおよび配列番号4の核酸と少なくとも90%のヌクレオチド同一性を有する調節ポリヌクレオチドから成る群の中から選択される請求項1に記載の核酸。
【請求項6】
調節ポリヌクレオチドが配列番号5の核酸の連続した少なくとも274のヌクレオチドを含み、配列番号5の核酸の980位置にあるヌクレオチドから始まり、1253位置にあるヌクレオチドで終わる核酸を含む請求項1に記載の核酸。
【請求項7】
配列番号5の連続した275から1250までのヌクレオチドを含む請求項6に記載の核酸。
【請求項8】
調節ポリヌクレオチドが5’−端から3’−端に向かって、配列番号6および配列番号7から成る群の中から選択される核酸と少なくとも90%のヌクレオチド同一性を有する第1核酸と、ヌクレオチド長さが1〜2000ヌクレオチドであるスペーサ核酸と、配列番号8の核酸と少なくとも90%のヌクレオチド同一性を有する第2核酸とを含む請求項1に記載の核酸。
【請求項9】
調節ポリヌクレオチドが配列番号15および配列番号16から成る群の中から選択される核酸と少なくとも90%のヌクレオチド同一性を有する請求項1に記載の核酸。
【請求項10】
目的のポリヌクレオチドが蛋白をコードする請求項1〜9のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項11】
目的のポリヌクレオチドが抗癌治療に有用な蛋白をコードする請求項10に記載の核酸。
【請求項12】
目的のポリヌクレオチドがヨウ化ナトリウム共輸送体(NIS)蛋白をコードする請求項1〜9のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項13】
目的のポリヌクレオチドが目的のRNAをコードする請求項1〜9のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項14】
目的のポリヌクレオチドが目のリボザイムをコードする請求項13に記載の核酸。
【請求項15】
目的のポリヌクレオチドが特異的mRNA分子とハイブリッド形成するアンチセンスRNAをコードする請求項13に記載の核酸。
【請求項16】
目的のポリヌクレオチドが特異的DNA分子とハイブリッド形成するセンスRNAをコードする請求項13に記載の核酸。
【請求項17】
発現ベクターに挿入された請求項1〜16のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項18】
請求項1〜16のいずれか一項に記載の核酸が挿入された組換えベクター。
【請求項19】
細菌性細胞中で複製可能である請求項18に記載の組換えベクター。
【請求項20】
哺乳類の細胞中で複製可能である請求項18に記載の組換えベクター。
【請求項21】
組換えウイルスベクターから成る請求項18に記載の組換えベクター。
【請求項22】
組換えウイルスアデノウイルスから成る請求項21に記載の組換えベクター。
【請求項23】
組換えレンチウイルス(lentivirus)から成る請求項21に記載の組換えベクター。
【請求項24】
請求項18〜23のいずれか一項に記載の組換えベクターが形質移入された組換え宿主細胞。
【請求項25】
細菌細胞から成る請求項24に記載の組換え宿主細胞。
【請求項26】
哺乳類の細胞から成る請求項24に記載の組換え宿主細胞。
【請求項27】
下記(i)と(ii)を含む医薬組成物:
(i)請求項1〜16のいずれか一項に記載の核酸および請求項18〜23のいずれか一項に記載の組換えベクターから成る群の中から選択される有効成分、
(ii)一種以上の薬学的に許容される賦形剤。
【請求項28】
請求項1〜16のいずれか一項に記載の核酸の、医薬組成物の製造での使用。
【請求項29】
請求項18〜23のいずれか一項に記載の組換えベクターの、医薬組成物の製造での使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2010−502233(P2010−502233A)
【公表日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−527822(P2009−527822)
【出願日】平成19年9月12日(2007.9.12)
【国際出願番号】PCT/EP2007/059599
【国際公開番号】WO2008/031854
【国際公開日】平成20年3月20日(2008.3.20)
【出願人】(599176506)アンセルム(アンスチチュ ナショナル ドゥ ラ サンテ エ ドゥ ラ ルシェルシュ メディカル) (23)
【Fターム(参考)】