説明

唄口における蛇腹管の伸び疲労防止装置

【課題】 唄口における蛇腹管の伸び疲労を防止し、蛇腹管を常に一定の形態に保ちいつでも同じ条件で演奏可能とし、かつ使用後、楽器ケースに唄口を収納する際に問題を生じないようにする。
【解決手段】 蛇腹構造を有し、楽器本体への接続部と、口にくわえる唄口部を両端に取り付けて成る蛇腹管を有する唄口において、蛇腹管14を引き伸ばす外力が働き、蛇腹管14が所定の長さを越えて引き伸ばされ、或いは引き伸ばされようとするときに、抵抗を与え、それによって蛇腹管14の伸び疲労を防止するために、伸縮性の小さい糸状の定寸部材20を用いて接続部12と唄口部13とを結んだ構成を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛇腹構造を有し、楽器本体への接続部と、口にくわえる唄口部を両端に取り付けて成る蛇腹管を有する唄口における蛇腹管の伸び疲労防止装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鍵盤ハーモニカとも通称される鍵盤吹奏楽器は、通常、立奏用の唄口か或いは卓奏用の唄口を用いて吹奏し、卓奏用の唄口の場合、400〜500mm程度の長さの蛇腹管を使用し、卓上の楽器と口にくわえた唄口部を連絡している。蛇腹管はプラスチック成形品であり、成形時の寸法よりも引き伸ばしたり圧縮したりして長さを変更することが可能である。そのため蛇腹部を伸長気味にして演奏したり、強く引っ張ったりすると疲労により伸びてしまい、元の長さに戻らなくなることがある。蛇腹管の長さが変化しても演奏上の障害となるほどの問題は起こりにくい。しかし、使用後、楽器ケースに唄口を収納するときにうまく収まらなくなるとか引っ張りすぎると断面形がつぶれて気流がスムーズに流れなくなるという問題を生ずる。鍵盤吹奏楽器は小学校の音楽教育に広く用いられており、消耗する率も小さくないと考えられるのでこの問題を解決する必要性がある。しかしこの問題を論じた発明、考案は見当たらない。
【0003】
【特許文献1】実開平6−21094号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は前記の点に着目してなされたもので、その課題は、唄口における蛇腹管の伸び疲労を防止することである。また本発明の他の課題は、蛇腹管を常に一定の形態に保ち、いつも同じ条件で演奏できるとともに、使用後楽器ケースに唄口を収納する際に問題を生じないようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記の課題を解決するため、本発明は、蛇腹構造を有し、楽器本体への接続部と、口にくわえる唄口部を両端に取り付けて成る蛇腹管を有する唄口において、蛇腹管を引き伸ばす外力が働き、蛇腹管が所定の長さを越えて引き伸ばされ、或いは引き伸ばされようとするときに、抵抗を与え、それによって蛇腹管の伸び疲労を防止するために、伸縮性の小さい糸状の定寸部材を用いて接続部と唄口部とを結ぶという手段を講じたものである。
【0006】
蛇腹管構造を有し、楽器本体への接続部と、口に加える唄口部を両端に取り付けて成る蛇腹管は公知であり、例えば実開平6−21094号などにも記載されているのと同様の構成を有するもので良い。蛇腹管はプラスチック製であり、接続部と唄口部は蛇腹管の両端の端部開口に弾性変形によって嵌め込み、取り付けられる。この蛇腹管はプラスチック成形品であり、ほぼ成形時の寸法に等しい所定の長さのまま使用されることを前提にしており、蛇腹という構造上幾分の伸縮性を有するものである。
【0007】
しかしながら、所定の長さを越えて蛇腹管が引き伸ばされると、伸び疲労を生じるの
で、定寸部材を接続部と唄口部との間に取り付けて、蛇腹管が引き伸ばされるのを防止する。定寸部材は、伸縮性の小さい糸状の部材が適当であり、糸状の部材の中には、糸、細目の紐、ワイヤーなどが含まれる。しかしながら、蛇腹管の伸び疲労を起さない程度であれば、糸状の部材が伸縮性を有していても良い。
【0008】
接続部と唄口は、蛇腹管端部への取り付け時に、端部開口内に嵌め込む嵌合端部を有
し、その嵌合端部に糸状の定寸部材を取り付ける孔又は突起などの取り付け部を設け、定寸部材が蛇腹管内に配置されるようにした構成は望ましいものである。取り付け部は、接続部と唄口部の各嵌合端部に、内方へも外方へも出っ張らないように設けることが望ましく、このことによって、蛇腹管内部の邪魔物をなくし、気流の妨げによる悪影響をほぼなくすことができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明は以上の如く構成されかつ作用するものであるから、唄口における蛇腹管の伸び疲労が防止され、蛇腹管は常時、最良の状態に保たれるものとなり、また、いつでも同じ条件で演奏することができ、さらに使用後楽器ケースに唄口を収納する際にも、所定の箇所に必ず収まる、という効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図示の実施形態を参照して本発明をより詳細に説明する。図は本発明に係る唄口11における蛇腹管の伸び疲労防止装置を示している。唄口11は、蛇腹構造を有しており、かつ、楽器本体10への接続部12と、口にくわえる唄口部13を蛇腹管14の両端に取り付けて成る構成を有している。
【0011】
蛇腹管14は、比較的軟質の合成樹脂を用いて、蛇腹状に型成形することによって形成されているもので、凹凸の連続から成る蛇腹構造をほぼ全周かつ全長にわたって有している。蛇腹構造は、蛇腹管のほぼ全長に及んでいるが、両方の端部15、16は夫々円筒状に形成されており、接続部12及び唄口部13との接続のために、弾性変形可能である。なお蛇腹管14の両端部15、16は同径でも異径でも良い。
【0012】
接続部12と唄口部13は、蛇腹管端部15、16への取り付け時に、端部開口内に嵌め込む嵌合端部17、18を有している。嵌合端部17、18と蛇腹管端部15、16との嵌合部には気密性を保持して接続し得るシール手段19、19が備わっているが、この点については従来のものと同様の構造で良い。そして、この嵌合端部17、18に、糸状の定寸部材20を取り付ける孔又は突起などの取り付け部21、22が設けられている。
【0013】
例示した取り付け部21、22は、嵌合端部17、18の端面から、接続蛇腹管端部15、16との接続方向へ伸び出すように形成された、伸出部23に透孔24を開け、糸状の定寸部材20を透孔24に通して、縛り付けることにより取り付けを行う構成となっている。図4A、B参照。伸出部23の外周面25は内方へ傾斜し(図4B)、蛇腹管端部15、16への嵌合を容易化するとともに、縛り付けた糸状の定寸部材20によって、蛇腹管端部15、16が膨らむのを防止するか最小限度に止めるように構成されている。
【0014】
上記糸状の定寸部材20は、蛇腹管14を引き伸ばす外力が働き、蛇腹管14の長さが所定の長さを越えて引き伸ばされるときに、引き伸ばし力に対抗する抵抗を支え、それによって蛇腹管14の伸びを防止するものである。例示したものはナイロンテグスより成り、殆ど伸びを示さないので、蛇腹管14も伸びることはなく、従って伸び疲労の問題も殆ど生じない。糸状の定寸部材20としては、疲労を生じない範囲であれば僅かな伸縮性を示しても良い。その場合の伸縮の限度は樹脂材料にもよるが、成形時の蛇腹管14の長さの20パーセント増までが適当である。
【0015】
このような構成を有する本発明の蛇腹管14を有する唄口11においても、接続部12を楽器本体10の接続口26に接続し、唄口部13を口にくわえて卓奏を行うことは従来のものと全く同様である。一方、本発明における唄口11は、定寸部材20によって所定の長さにほぼ保たれているので、引っ張っても、万一児童が唄口部13を持って楽器本体10を接続したままぶら下げたとしても、唄口全長が伸びることはなく、蛇腹管14の伸び疲労は全くといって良いほど生じない。また、糸状の定寸部材20は、如何なる邪魔物にもならず、音響学的にも何も影響を生じない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る蛇腹管の伸び疲労防止装置の実施例を示す全体斜視図。
【図2】同上装置の分解斜視図。
【図3】同じく縦断面図。
【図4】蛇腹管接続部の部分拡大図で、Aは平面図、BはAに対する側面図である。
【符号の説明】
【0017】
10 楽器本体
11 唄口
12 接続部
13 唄口部
14 蛇腹部
15、16 蛇腹管端部
20 定寸部材
21、22 取り付け部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛇腹構造を有し、楽器本体への接続部と、口にくわえる唄口部を両端に取り付けて成る蛇腹管を有する唄口において、
蛇腹管を引き伸ばす外力が働き、蛇腹管が所定の長さを越えて引き伸ばされ、或いは引き伸ばされようとするときに、抵抗を与え、それによって蛇腹管の伸び疲労を防止するために、伸縮性の小さい糸状の定寸部材を用いて接続部と唄口部とを結んだ構成を有する唄口における蛇腹管の伸び疲労防止装置。
【請求項2】
接続部と唄口は、蛇腹管端部への取り付け時に、端部開口内に嵌め込む嵌合端部を有し、その嵌合端部に糸状の定寸部材を取り付ける孔又は突起などの取り付け部を設け、定寸部材が蛇腹管内に配置されるようにした請求項1記載の唄口における蛇腹管の伸び疲労防止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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