説明

唾液の分析

本発明は、個人又は一群の個人の口腔健康を見積るための、唾液のスペクトルの多変量分析に関するものである。この手法は、迅速なサンプル収集及び評価を可能とし、臨床試験に参加する人のスクリーニング及びモニタリングを便利にするため、並びに開発中の治療用製品を評価するため、更に直接的で非侵襲的な診断方法を提供するために特に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、唾液の分光分析、具体的には唾液スペクトルの多変量分析に関する。このような分析は、口腔の環境で、個人若しくは一群の個人の口腔健康を見積る、又は練り歯磨き若しくは口内洗浄剤などのような治療用製品の効果を特徴付けるために有用である。
【背景技術】
【0002】
人間及びその他の動物は、虫歯、歯肉炎及び臭い息などのような、様々な望ましくない口腔状態の影響を受けやすい。こうした条件の多くは、口腔内の細菌又はその他の微生物によって引き起こされるか、又は介在する。口腔内には、通常幅広い範囲の細菌が存在し、典型的には口腔の表面、特に歯群、歯肉及び舌の上にバイオフィルムとして存在している。一部の細菌又は微生物は、その他のものより有害である。
【0003】
典型的には、望ましくない口腔状態は、程度の低い、ほとんど感知できない疾患から始まり、治療せずに放置すると、より深刻な状態に進展する。このような疾患を早い段階で検出することは困難な場合がある。医師及び歯科の専門家はこのような検出について熟達しているが、正しい検査には時間を要する。更に、熟達した専門家であっても、疾患の程度の定量化は難しく、評価の主観性の要素は再現性の乏しいものとなる可能性がある。個人の疾患の経時的な進行又は回復を評価するためには、これは特に問題である。結果として、こうした疾患を治療する製品を評価する場合、信頼できる臨床試験は典型的に大きな基本のサイズを要し、このような差異が臨床的に重要であり得る場合であっても、製品間の差異を検出するために、数箇月かけて行なう必要があり得る。このような評価に影響を与えるその他の要素には、被験者の間の高度な変動性、比較的希少な個人の試験の参加に対する適切性、及び試験が行なわれているにも関わらず、使用の中止、又は治療用製品の正しくない使用などのような、個々の参加者による望ましい手順からの逸脱などが含まれる。これら全ては、臨床試験の実行を大変高価なものとし、結果としてこ改善された治療用製品の開発に対してブレーキとして働くものとなる。
【0004】
口腔健康を評価するための改善された方法に多大な努力が払われてきた。単純で良く知られている口腔状態を評価する実例は、染料による歯垢検出表の使用であり、これによって歯群上の細菌性の歯垢を露呈させる。この試験は実施が簡単であるが、有害な細菌とその他の細菌を十分区別することができず、疾患の状態の信頼できる指標ではない。
【0005】
細菌の代謝産物が口腔疾患に関わる可能性があることが長期にわたり認識されてきた。例えば、シンガー(Singer)及びブルックナー(Bruckner)は、感染と免疫(Infection and Immunity)1981年5月、458〜463頁で、両者とも歯垢細菌により排出されるブチレート及びプロピオネートの細胞毒性作用について報告している。シンガー(Singer)は更に、米国特許第5,376,532号にもまた、歯肉溝滲出液(GCF)中のβグルクロニダーゼ濃度の分光光度分析について、歯周病の疑いがある患者を検出する手段として、記述している。
【0006】
2004年5月20日発行のロシア特許第2 229 130号では、唾液中の短鎖脂肪酸(特に酢酸、プロピオン酸及びブチレート)を定量することにより口腔の微小植物による障害を測定する基礎として同様の発明を使用している。開示された方法は、各種の細菌種の個体数のより詳細な分析を約束するものである。
【0007】
唾液を使用した分析もまた、長い歴史を有する。欧州特許第158 796号(シャー(Shah)ら)は、歯周病による炎症の存在を検出するための手段として、唾液サンプル中のペルオキシダーゼを検出するための比色試験の使用について記述している。より最近では、日本国特許公開第2002/181815号は、歯周病のスクリーニング試験として、ヒトの唾液中の潜血を検出するための、抗ヒトヘモグロビン単クローン抗体をコーティングしたストリップの使用を記述している。記述された方法では、個人はマウスウォッシュで濯いで吐き出すことによって唾液サンプルを提供する。国際特許第WO 03/083472号の発明もまた、この場合は、特定のたんぱく質の存在/不在をゲル電気泳動により調べることによって、歯周病の危険性を評価するために、被験者の唾液を使用し、国際特許第WO 2005/050204号は、唾液を検体として、ラクトフェリンポリペプチドを検出することによって、歯周病の危険性を診断する。更に、デニー(Denny)らは、米国特許出願第2003/0040009号で、唾液中のムチンを定量することにより、病気の危険性、特に虫歯の危険性、を予測するための、唾液分析の使用を報告している。
【0008】
ヒトの唾液のH及び13CNMR分光法は、シルウッド(Silwood)らにより、J.Dent.Res.81(6):422〜427、2002年に報告されている。著者らはいくつかの生体分子の識別及び生体分子のパターンでの被験者間の高度な変動及び内部変動の両方について報告している。「NMR分光法は、強力な手法としてヒトの唾液の多成分分析に役立つ」と結論付け、著者は、この手法は、歯周病を伴う患者に対する口腔健康製品の効果を追跡するために使用することができることを示唆している。
【0009】
前述の開示は、主として唾液中の特定の化学物質の分析に関するものである。スペクトル分析及びクロマトグラフ分析を含む、種々の分析を通して得られる、小さい分子特性を使用した手法は、「代謝学」として、国際特許第WO 01/78652号の著者らによって記述されている。ここでは、疾患の状態を診断し、予測するために、個々の化学信号よりも、全体の特性に重点を置き、臨床試験における治療薬の有効性を監視するために、治療薬に対する個人の反応を予測する。
【0010】
過去数年間にわたり、「代謝学」、即ちスペクトルデータの多変量分析を伴う手法の使用は、病気の状態を評価するために、特にニコルソン(Nicholson)とその同僚たちによって、注目されてきた。例えば、国際特許第WO 02/086478号はスペクトル分析、特にH NMRスペクトルの主要素解析、及びその診断手法としての使用について、詳細な開示を提供している。この公開特許は、虫歯、歯肉疾患、及び歯肉炎などの歯科疾患を含む、この手法が適用されても良い、たくさんの疾患を開示している。この公開特許は更に、唾液を含む、この手法に適用可能な多くの液体サンプルのタイプを開示している。
【0011】
国際特許第WO 03/107270号は、被験者の代謝表現型解析のための、代謝学的な取り組みの上に成り立っている。この特許出願は、代謝学の適用、とりわけ、投薬に対する反応を予測すること、表現型が同じ一連の被験者を選択すること、及び生物指標の認識を容易にすること、について記述している。国際特許第WO 2004/038602号は更に、代謝学データセットに関するデータマイニングについて、一般化された手法について記述している。米国特許出願第2007/0043518号(ニコルソン(Nicholson)ら)は、代謝学データセットの上で行なうことができる統計分析、及び生物学的な液体中の生物指標の識別のような、複雑なシステムの成分を識別するための、その使用へと拡張している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第5,376,532号
【特許文献2】ロシア特許第2 229 130号
【特許文献3】欧州特許第158 796号
【特許文献4】日本国特許公開第2002/181815号
【特許文献5】国際特許第WO 03/083472号
【特許文献6】国際特許第WO 2005/050204号
【特許文献7】米国特許出願第2003/0040009号
【特許文献8】国際特許第WO 01/78652号
【特許文献9】国際特許第WO 02/086478号
【特許文献10】国際特許第WO 03/107270号
【特許文献11】国際特許第WO 2004/038602号
【特許文献12】米国特許出願第2007/0043518号
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】シンガー(Singer)及びブルックナー(Bruckner)は、感染と免疫(Infection and Immunity)1981年5月、458〜463頁
【非特許文献2】シルウッド(Silwood)らにより、J.Dent.Res.81(6):422〜427、2002年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
前述に反して、改善された治療用製品、特に口腔ケアの開発のために臨床検査の管理上の更なる改善、及び口腔環境における治療用製品の効果を特徴付けるための構造的な取り組みが引き続き必要である。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、特に、個人の口腔生化学の全体像を得るための唾液の分光的、代謝学的な分析の使用により、唾液サンプルを分析する方法に関するものである。便宜上、本願においては方法論もまた「唾液代謝学」とする。唾液サンプルの採取は、非侵襲性であり、個人により自宅で都合の良い時間に行うことができる。このサンプルは、容易に安定化及び搬送され、分光的な手法は、大量のデータを、更なる解析を行いやすい形態で行うことができる。特定の化合物を同定する必要無しに、この手法は、例えば、個人を区別すること及びその治療に対する反応を追跡することができる。更に、このような解析を医師の同じ個人に対する口腔健康の評価と対応させることにより、更なる個人の口腔健康度合を得るために使用することができるモデルを構築することができる。この解析は、高い処理量及び低いコストで実行できる。例えば、この解析は、可能性のある参加者をスクリーニングすること、及び一日単位で実際の患者を追跡することによって、臨床検査の管理を可能にする。可能性のある参加者を識別するスクリーニング段階として使用すると、この方法は関連した参加者のより均一なグループを選択すること、又は最も安定した日ごとの唾液組成を持つ個人を選択することを可能とし、これによって、治療用製品間の違いを検出する試験の能力を改善する。別の方法として、又は追加の方法として、試験の間にモニタリング段階として使用されると、この方法は、より便利で、またより感度良く、且つ製品の客観的な効果の評価を可能とし、加えて試験参加者が所定の試験手順に従うことに失敗したかどうかを感知する。特定の個人に口腔健康度合を提供する能力は、診断の補助として使用される手法もまた可能にする。更に、豊富なデータを提供することは、主成分分析などのような多変量分析を通して、治療用製品の作用機序について洞察を与え得る製品度合を提供するために、個人において集約することができる。
【0016】
ここでいう方法は例えば、
(i)製品の作用の動力学、例えば、被験者の唾液組成に所定の変化をもたらすためには何回製品を適用する必要があるか、又は何日間の治療が必要かを決める方法、
(ii)製品使用後の主要な代謝物の濃度の平均の変化を測定することによって製品の有効性を測定する方法、
(iii)例えば、製品の使用によってどの特定な化学種が変化したかを比較することによって、異なる治療用製品間の作用モードの違いを比較する方法、が使用できる。
【0017】
唾液代謝産物の特定の変化に関して詳しくは、製品の有効性を比較するために使用できる主要な代謝産物である、例えばプロピオン酸、酪酸、又はトリメチルアミンが提供される可能性がある。
【0018】
本願で使用される「唾液代謝学」と称される唾液分析は消費者知覚を理解するためにもまた使用できる。例えば、一部の消費者は「モーニングマウス」即ち起きたときに不快な程度の味と感触を経験する。こうした被験者の代謝学的な評価は、彼らの知覚が真に生化学によるのか、又は単に彼らの心の中に存在するのかを判断する。結果として、この学習はより良い製品を開発するために使用することができる(例えば、見られる場合には、消費者知覚の生化学的な基盤を標的とした活性物質を利用する)。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】異常に高い濃度のエタノールを含有するサンプルの検出を示す。
【図2】主成分分析の結果の、介入フェーズサンプルの最初の2つの成分上のプロット。
【図3】参照フェーズを標準化後の、図2と同じサンプルを示す。
【図4】得られたフェーズ識別子対本発明によるモデルから予想されたフェーズ識別子のプロット。
【図5】実施例2の対照製品の「作用の速度」のプロット。
【図6】試験製品の「作用の速度」のプロット。
【図7】得られた全体の健康スコア対本発明によるモデルから予想された全体の健康スコアのプロット。
【図8】モデルからの固有ベクトルの程度において、成分の適合に引き続く効果が、口腔ケア治療用製品の範囲に対して、本発明よる方法により構築されたことを示す。
【図9】図8に示した製品の本発明によるモデルからの健康ベクトルに沿った改善の平均を示す。
【図10】いくつかの治療用製品の1つの使用による、2つの主成分により画定された空間に示された個人の正味の変化のプロットであり、健康ベクトルに関連する。
【発明を実施するための形態】
【0020】
特に指示がない限り、本明細書のすべての百分率及び比率は、合計組成物の重量により、及びすべての度合は25℃で行われる。
【0021】
本願においては、「医師」とは、医者、歯科医又は歯科技師を含む口腔健康を評価する資格を持ったあらゆる訓練を受けた専門家を指す。
【0022】
本願においては、口腔健康度合は、歯垢、歯石、歯肉炎、歯周炎、若しくは舌苔若しくは息の悪臭などのような、口腔に直接影響する病気若しくは状態を見積るために使用され、又は口腔健康度合は、主として体の他の部分に影響を与えるにもかかわらず口腔の化学に何らかの変化を与える、胃の病気若しくは糖尿病などのような病気若しくは状態を間接的に測定できる。間接測定の場合、唾液サンプルが評価される対象となる参照モデルは、参照集団の要素の化学分析又は生化学分析を、参照集団要素の唾液サンプルから得られた参照スペクトルと相互比較することにより構築される。
【0023】
本願の好ましい実施形態では、本発明は、個体の代用の口腔健康度合の算定に関するものであって、
a)唾液サンプルを個人から採取する工程と、
b)個人の唾液サンプルから個人スペクトルを取得する工程と、
c)デジタル化された個人スペクトルをコンピュータメモリに格納された参照モデルと比較して前記代用の口腔健康度合を算定する工程であって、前記参照モデルが、特に多変量分析を通じて、参照集団の複数構成員の各々の前記口腔健康の1つ以上の直接度合を、前記参照集団構成員の唾液サンプルから得られた参照スペクトルと関連付けることから得られ、参照スペクトルが個人スペクトルのタイプに対応する工程と、を含む。
【0024】
「直接」口腔健康度合によるというのは、口腔健康状態(歯肉炎又は虫歯などのような)の基本的な診断を裏付けることができるものとして一般的に認識されている観察を意味する。「代用」の口腔健康度合によるというのは、状態の診断を必要としないが、これと関連付けられ、直接測定の代わりに使用されることが可能で、結果的な診断に大きな誤差を許容する観察を意味する。唾液サンプルは、個人自身により、快適に、自宅で個人的に容易に得られるので、医療機関を訪れる必要が無い。唾液サンプルは保存のために冷凍することが可能で、適切な安定化が施されれば、郵便又は宅配便で中央施設へ解析のために送付することができる。結果として、代用の度合は直接度合よりもより簡単又はより安価に実施及び/又は度合の信頼性を改善するために、より手軽に数日にわたって繰り返すことが可能である。本願の方法は、個人用の健康評価の基盤を提供することができる。本願では、直接口腔健康度合は、好ましくは、参照集団の各構成員に対して、医師の口腔健康の定量的な評価、歯肉の画像、歯の画像、及び息の悪臭の機械測定値又は専門家の評価から選択される。歯肉縁の解析に基づく、歯肉の画像データの収集の好ましい方法は、米国特許出願第11/880908号(ゲーラッチ(Gerlach)ら)及び同等のPCT出願第(IB2007/052965)号に開示されている。同様の画像化方法が歯群にも使用される。米国特許第2007/0092061号は、デジタルの歯の画像を取込むために使用する画像取込装置、システム及び方法を開示しており、国際特許第WO 97/06505号は、デジタルX線画像に基づく虫歯検出システムを開示している。これらの測定値は全て、更にコンピューターで、特に多変量分析で分析するために、デジタル形態に縮小することができる。
【0025】
他の好ましい実施形態では、本発明は、
a)一連の個人の各々から少なくとも1つの開始唾液サンプルを収集する工程と、
b)個人を治療用製品で治療する工程と、
c)個人の各々から少なくとも1つの最終唾液サンプルを収集する工程と、
d)全ての唾液サンプルからスペクトルを得、デジタル化してデジタル化されたスペクトルをデータベースに収納し、各スペクトルが個人識別子及びサンプルタイプ識別子と関連付けられる工程と、
e)スペクトルのデータベース上で、一連の個人に対する治療用製品の効果と関連して1つ以上の治療ベクトルを生じさせるために、多変量分析を行う工程と、を含む治療用製品を特徴付ける方法に関する。
【0026】
本願で使用されている場合、用語「スペクトル」は、1つのサンプルに対して機械測定により得られ、データの配列としてデジタルの形態で捉えられることのできる一連の結び付けられたデータを示す。複数形の「スペクトル」は、2つ以上のこのような一連のデータを示す。この用語は、核磁気共鳴、赤外線、紫外線及び質量(NMR、IR、UV及びMS)スペクトルに加えて、例えば、液体若しくはガスクロマトグラフィー又はキャピラリゾーン電気泳動などによって得られるクロマトグラムを含む。好ましくはNMRスペクトルであり、特にH NMRスペクトルである。本願の方法は、一連の個人により臨床研究を行なうこと、及び唾液サンプルから得られたスペクトルを経由して、個人の唾液のサンプルから、唾液代謝産物濃度を決定することを更に含む。本願における「代謝学」方法の利点は、特定の代謝産物を同定し且つ測定することも可能であるが、特定の代謝産物を同定せずにスペクトルからデータを分析することにより、サンプルの全体像を得ることができる。本当に良い測定は、スペクトルからの情報の実質的に全体、又は大部分を使用することによって得られる。個人の唾液のスペクトルデータを、医師が定量化した口腔健康の評価、その選択された態様、又はその同一の個人の他の直接口腔健康度合と関連付けることによって、更に唾液スペクトルが比較される参照モデルを構築できる。個人の医師による定量的評価は、歯垢指数、歯石指数、歯肉指数、歯周疾患指数及び舌苔指数から選択された1つ以上の指数を含むことができる。医師の口腔健康評価又はその他の直接口腔健康度合と関連付けが無くても、スペクトルの解析は、例えば、典型的に複雑な各種の細菌及び微生物並びにこれらに関連のある代謝産物で満たされた口腔環境における治療製品の効果に関する重要な情報を明らかにする。
【0027】
唾液サンプルを採取し解析する工程、及び典型的には下記のものを含むが、多くの種類の可能性が考えられる、被験者の口腔の病気に対する感受性又はその程度を見積るために使用することができる代用の口腔健康度合を得る工程。
【0028】
口腔履歴の決定
・代謝学研究に参加する前に、各可能性のある被験者は、資格を持った歯科医により、口腔軟組織試験を課される。患者の病歴が記録され、被験者はインフォームドコンセント用紙を読み、署名するように求められる。
【0029】
・被験者の既往歴及び病歴が研究に適していると考えられ、且つ適切な研究対象基準及び除外基準に適合した場合、被験者は研究に登録される。
【0030】
・唾液は、健康な個人、又は口腔の病気(例えば、虫歯、歯肉炎、口腔乾燥症)を持つ個人から収集されても良い。
【0031】
・典型的な研究では、被験者は先ず「洗い流し」を3週間行なう。即ち、彼らは、清浄化を行なう能力を持つが抗菌活性物質を含まない、良質の基本的な練り歯磨き(例えば、クレスト(Crest)(登録商標)キャビティプロテクション(Cavity Protection))、及び特定の歯ブラシ(例えば、オーラルビー(Oral B)(登録商標)インディケータ(Indicator)35)を供給される。被験者は1日に2回、普通に歯を磨き、その他全ての口腔ケア製品の使用を控えるように求められる。この工程の目的は、口腔から、被験者の通常の口腔ケア製品からもたらされる可能性がある、いかなる残留している抗菌剤又はその他の活性物質をも除去することである。
【0032】
・次に、「基準」又は「参照フェーズ」データが得られる。被験者は、例えば2週間の期間にわたって数セットの唾液サンプルを提供する。これらのサンプルは、製品介入前の参照フェーズの唾液代謝産物濃度の測定値を提供する。
【0033】
・最後に、被験者は、追加又は異なる口腔ケア製品を「介入」され、これらを現在の口腔ケアレジメンに追加又は交換される。唾液サンプルは、介入の当初から、典型的には3〜6週間の期間(毎週に5つの唾液サンプル)収集される。これらのサンプルは、時間を通した唾液代謝産物濃度の変化をモニターすることによって、製品介入の影響を追跡することを可能とする。
【0034】
唾液収集及び保管
・研究被験者は、一連のラベル付き、スクリューキャップバイアル瓶(15mL、目盛り付き)を支給される。バイアル瓶に、0.9重量%のフッ化ナトリウムを含有した1.0mLの脱イオン水が含まれる。NaFは、サンプル収集後の、更なる細菌活動を防ぐように作用する。その他の唾液安定剤も使うことができる。
【0035】
・被験者は典型的には、各研究週の月曜日から金曜日までの間、1日に1サンプルを提供するように求められる。
【0036】
・起床したときに、被験者は口腔衛生処置、食べること又は飲むことを控えるように要求される。
【0037】
・被験者は、2.0mLの清浄な水道水を使い捨てのパスツールピペット又はバイアル瓶の中で測定し、30秒の時間の間、口腔内を良く濯ぐためにこれを使用する。その後、口の中の内容物全てを、適切な、供給されたバイアル瓶の中に吐き出し、バイアル瓶を密封する。代案として、刺激されていない又は刺激された唾液の直接収集を使用することができる。「起床時」の唾液の収集は、制限された睡眠中の唾液の流れによって、細菌性の代謝産物が押し流されないために、最も代謝産物が豊富であることが発見されたため、大変重要である。
【0038】
・この方法の感受性を増幅するために、所望により、砂糖濯ぎ、又はその他の適した細菌の餌を被験者によって、就寝時に使用することができる。口腔細菌は、この砂糖を夜間に利用し、高い濃度の細菌代謝産物を生成する。これは、ハリメトリ(halimetry)研究で口臭を増幅するためにしばしば使用されるシステイン濯ぎと類似している。
【0039】
・各研究日、被験者は新たに収集した唾液バイアル瓶を中央収集場へ配送するか、又は後で、例えば週に1回、配送するためにバイアル瓶を冷凍庫に入れる。
【0040】
・バイアル瓶は、典型的には−18℃で、直ちに冷凍される。バイアル瓶は、分析の調製時まで、冷凍されたままにされる。この唾液のサンプル採取と保存の手順が有効とされ、サンプル中の代謝産物濃度を一定にできることが確認されている。この方法の利点は、被験者が、歯科医による口腔健康の評価のために歯科を訪れたり、又はマイクロ口腔綿棒若しくは近位間サンプルを提供する必要が無いことである。これは、安価なサンプル収集を提供し、被験者にとって簡単である起床したときに被験者の口を濯ぐことのみが必要で、被験者は募集されて研究に参加し続けることができる可能性が高く、更に、被験者が研究手順に従う可能性が高い。
【0041】
解析のための唾液準備
・唾液解析の日、サンプルは冷凍庫から取り出され、1時間解凍される。
【0042】
・被験者識別、サンプル日付及びサンプル量は、ログシートに記録される。
【0043】
・密封されたバイアル瓶は、30分間、8000rpm(=6654G)で、遠心分離機内の温度を20℃に調整して、遠心分離される。
【0044】
・遠心分離の直後、上澄み液は、沈降した固形物から適切にラベルされたスクリュートップバイアル瓶にデカントされる。個体は、処分される。
【0045】
・80μLのNMR参照標準は、エッペンドルフチューブへピペットで注入される。参照標準は以下のようにし調製される。17.24gのリン酸ナトリウム(二塩基性)及び10.84gのリン酸ナトリウム(一塩基性)が、1Lの脱イオン水に溶解される。NaOH又はオルトリン酸のいずれかにより、pHが7.0に調整される。50mLのこのpH7のリン酸緩衝液は、回転蒸発によって乾燥される。塩は、50mlのDOに再溶解され、溶液は再度、回転蒸発によって乾燥される。塩は最後に50mLのDOに再溶解され、40μLのピリダジンが加えられる。
【0046】
・800μLの遠心分離された唾液がエッペンドルフチューブに加えられる。
【0047】
・エッペンドルフチューブの全ての内容物は、長いガラスのパスツールピペットにより直径5mmのNMRチューブに移される。NMRチューブは、その後密封される。
【0048】
・唾液サンプルのNMR、又はその他のスペクトル解析が、調製から48時間以内に実行される。
【0049】
・サンプルのデータベースは、以下のものを含んで調製される。独自のサンプル識別コード、被験者コード、サンプル日付、サンプルの容量、治療段階、被験者の性別及び年齢。
【0050】
NMRスペクトルの獲得
・水信号の事前飽和を伴う標準(H)NMRスペクトルが必要とされる。典型的に、NOESYプレセットシーケンスが使用され、10秒の緩和遅延及び獲得時間〜2秒を伴う128スキャンである。スペクトルは試験からの独自のサンプル番号をラベルされる。
【0051】
・獲得に引き続き、NMRスペクトルは処理され(典型的に0.5Hz指数線広がり)、フェーズ化され、ベースライン補正され、参照される(通常、アセテートピークを1.95ppmに設定)。別に、フェーズ化及びベースライン補正よりも、スペクトルデータの導関数及び絶対値が採用され、上記のように参照される。
【0052】
NMRスペクトルの解析
・典型的に、32K複合点のNMRスペクトルは、更に「ビン化」され、スペクトル点の合計の総数は、スペクトルを与えられた数のビンに分離され、ビン内の点数を合計することにより、減らされる。解析者はビンの幅を選択することが可能で、その選択の幅は典型的に2〜10Hzの間である。ビン化プロセスの間、全てのスペクトルは、内部標準から信号のサイズに標準化され、各々のビン化されたスペクトル内部標準からの信号全体の合計は同じになる。H NMRスペクトルについては、この部分のスペクトルを0.5〜3.5ppmの範囲に収まる化学シフトとともに用いるのに十分であることができる。好ましくは、少なくともこのスペクトルの一部は、0.5〜4.5ppmの化学シフトを含み、より好ましくは0.5〜8.6ppmが使用される。更に、プロピオン酸、ブチレート及びトリメチルアミンのピークを含む少なくとも各スペクトルの部分を使用することが有用であることが見出されている。好ましくは、この使用される部分には、更にギ酸塩、N−アセチル糖類、乳酸、メチルアミン、及びジメチルアミンのピークを含み、より好ましくは更にメタノール、トリメチルアミンオキシド、フェニルアラニン、コリン、ヒスチジン、チロシン、メチルグアニジン、サルコシン、β−ヒドロキシブチレート、コハク酸塩、ピルビン酸、イソブチレート、n−ブチレート、ロイシン、アラニン、n−バレレート及びエタノールから選択される1つ以上のピークを含む。
【0053】
・ビン化されたスペクトルは、その後マイクロソフト(Microsoft)(登録商標)エクセル(Excel)にインポートされ、ここで追加の情報、例えば、被験者コード、サンプル日、試験の段階(例えば治療前、治療後)、被験者の性別、年齢など、が加えられる。この段階で採用できる1つの選択肢は、このデータは、各スペクトルから水及びピリダジン内部標準NMR信号を取り除くことによって更に操作され得ることである。水及びピリダジン信号を取り除いた後、各スペクトルの全体は、同じ公称値に標準化できる。両方のデータはその後、しばしば引き続き多変量解析に使用される。
【0054】
・上記のスプレッドシートはその後、例えば、ユーメトリックス・インク(Umetrics Inc.)のシムカ・ピー・プラス(SIMCA-P+)(商標)のような適した多変量パッケージに読み込ませることができる。
【0055】
・これに続く解析は、いくつもの別個の工程に分けることができる。
【0056】
・主成分分析(PCA)は、「外れ値」、即ち、特異で、データセット全体から大きく異なるそれらのデータ(スペクトル)を同定するために、ビン化されたNMRスペクトル(Xデータ)上で実行される。PCAは本質的には、数多くの潜在的な変数(主成分−PC)が元の変数(NMRスペクトルの点)から形成される、投影法である。最初のPCは、データ内で最大の変化を計上しようとし、2番目のPCは2番目に大きな変化を計上しようとする。このようにして、ビン化されたNMRスペクトル(〜1000点)の複雑性は、よりずっと少ないPC(典型的には2〜10)で示され、数百もの個人サンプルの視覚的な比較を可能にする。サンプル外れ値の認識は、統計ツール(「モデルへの距離」、「ホテリングT2(Hoteling's T2)」)の使用と、特異な挙動に対して、どの信号が、そしてどのような理由が存在するためであるかを合理的に考えることに関する使用者の判断との組合せである。データセットから正当化して取り除くことができる任意の外れ値は取り除かれ、分析は繰り返される。ここには、より良いデータセットを達成するために、いくつかの繰り返しループがあっても良い。
【0057】
・「ローディング」即ち、各種PCを作りあげる元の変数の組合せ(元のNMRスペクトルの点)は、そのように作られたモデルは、NMR分光光度計による人為的誤差ではなく実際のデータに基づいていることを確認するために、PCAモデルから解析される。これには使用者の判断を含む。人為的誤差により構築されたモデルは修正されなければならず、例えば、人為的誤差の増加を与えるNMRスペクトルの信号は、データによって除くことができ、例えば信号中の若干の化学シフトの差異(特に一般的に最大の代謝産物信号に明確な〜1.95ppmのアセテート信号)が結果的にモデルに有意な影響を与え得る。しばしば、アセテート信号を解析から削除することによってより良いモデルが達成される。別の方法としては、信号の化学シフトの違いは、問題の信号のために、化学シフトの分散をカバーする新しいデータビンを形成することにより修正できる。
【0058】
・PCAモデルは、例えば、朝の唾液サンプルを採取する前のマウスウォッシュ/歯磨き剤の使用又は食品/飲料の摂取の同定のように、試験手順から逸脱した口腔ケア試験の被験者を同定するのに使用しても良い。これらのデータ及び/又は被験者は、削除され、より質の高い試験の試験結果が得られる。PCAモデルは、可能性のあるパネリストを予備スクリーニングするため、及び試験をより良く行うことが期待される可能性のあるパネリストの選択を助けるためにもまた、使用される。例えば、(i)より安定した日々の唾液組成を有するこれらの被験者(例えば、恐らくライフスタイルを反映している)−即ち、唾液組成が元来より安定している場合、その人の唾液組成に製品が誘発した変化を測定できる可能性が高いこと、又は(ii)主要なヒトの唾液中の代謝産物の濃度を基準とした試験の管理された治療区間の選択及びバランスをとることである。
【0059】
・PCAモデルが一旦構築され、外れ値及び人為的誤差が取り除かれると、その他の多変量解析的な方法が必要に応じて適用される。
【0060】
・PLS判別分析(PLS−DA)。ここでは、例えば、製品による治療の「前」と「後」に採取された唾液、又は製品による治療の使用、例えば0〜7日目、7〜14日目などの特定の期間に関してなどのように、唾液サンプルの起源のいくらかの予備知識がサンプルを分類するために使用される。全てのNMRスペクトルに、唾液(Xデータ)から、「ラベル」のところに一連の「ダミーY」変数が作成される。例えば、製品による治療の前/後は、Y変数により0又は1の値を採用することによって指定される。これに続くPLS−DA分析は、潜在的な変数が、主成分が等級分けに焦点を置いたPCを構築することを確実にする(例えば、製品による治療の前/後)。このようにして、PLS−DAはサンプルの等級を、それらのX変数(NMRスペクトルの点)に基づいて分離する。このようにして、PLS−DAモデルは、製品が唾液組成に効果を有するかどうか、そして有する場合には製品が唾液組成を変化させるためにどれくらい速く作用するかを決定するために使用されて良い。従って、異なる製品間の作用の動的特性を比較するために使用できる。このモデルは、製品の使用の際にどの化学種(微生物からの代謝産物)が変化したかを同定するためにもまた使用できる。これらの種はNMRスペクトル(ピリダジン内部標準を使用して)から、及び特定の化学物質の量の変化の程度から定量され、異なる製品の有効性を比較するために使用される。PLS−DAモデルが、特定の診断された病気の状態に基づく場合、例えば、モデルを形成するために健康な集団と病気の集団が選択された場合、病気を診断するためにもまた使用される。
【0061】
・PLS又はO−PLS。ここでは、モデルが構築され、一連の唾液サンプルからのNMRデータが第2のデータベース、例えば、医師が被験者の各々に評価した一連の健康スコアなどと関連付けられる。このようにして、唾液からのH NMRスペクトルは、更なる個人の医師が評価した口腔健康を予測するため、及び目標とする個人の代用の口腔健康度合として提供するために使用できる。これらの生じた口腔健康度合は容易に得られ、同じ個人の複数の日数の各々の口腔健康度合を提供することによって、個人の口腔履歴を作り上げるために使用される。口腔健康度合及び履歴が、試験物質又は組成物による被験者の治療と関連付けられて作成された場合、これらは健康上の利益、有効性又は試験物質若しくは組成物の作用機序を評価するために使用できる。
【0062】
・SIMCA:ここでは、Xデータは特定の等級(例えば、製品の使用前/使用後、健康状態の程度)へ構成員として割り当てられ、未知のサンプルが画定された等級の構成員であることを予想するために、これに続いて使用されるモデルが構築される。
【0063】
・上述の各々の多変量に対して、変数(NMRスペクトルからのビン)のXデータの異なるスケール(中央(Ctr)、一変量(UV)、パレート(Par))が試みられる。Xデータを変化させる、例えば、ビン化されたスペクトルの対数又は負の対数(データの正規性を確認するため)などもまた、評価される。Yマトリックスに関連しないXデータが、モデルを構築する前に最初に取り除かれる、「直行信号修正」変形も実行されても良い。上記の最適な組合せは、モデルの予測力を最大化する観点から、評価される。
【0064】
・このように形成されたモデルは、妥当性/予測力について、例えば、データの一部を解析から削除し、モデルを残りのデータで構築し、それから削除したデータがどこであるかを予測することによって計算される「Q2値」を最適化することによって、試験される。予測値と既知の実際の数値を比較することによって、予測力(Q2)の測定値が作られる。別の方法としては、データの無作為部分もまた、作業者によって同様に削除され、予測値と実際の値の比較が行われる。PLS/PLS−DSモデルはまた、X及びYマトリックスデータを無作為に混ぜ、無作為混合の数に伴い関連が減少することをチェックすることにより、偶発的な関連をチェックすることができる。
【0065】
・このようにして、モデルの予測能力の度合が作成されても良く、数回の繰り返しによって最良のモデルが得られる。
【0066】
臨床試験の管理
上述のように、口腔健康度合及び履歴は、唾液サンプルのスペクトルの測定から得られ、臨床試験の実施及び管理の改善のために使用できる。例えば、臨床試験の被験者は、その唾液組成の日々の安定性に基づき選択することができる。唾液組成の日々の変化が少ない被験者を選択すること、即ち、一連の全体としての被験者における唾液組成の日々の変化の平均よりも、唾液組成の日々の変化が少ない被験者の部分集合を特定することにより、異なる製品による治療の違いを識別する臨床試験の力を増すことができる。
【0067】
一連の候補被験者から、被験者を選択する別の基準として、
a)候補者の口腔健康度合、例えば、口腔健康が良くない一連の被験者を選択すること、
b)各被験者のスペクトルから求められた選択された代謝産物の濃度、例えば、特定の目標代謝産物の濃度が高い被験者を選択すること、又は
c)個人スペクトルの複数のピークからデータを統合することによって得られる複合的な度合、が挙げられる。これは、医師の評価と関連付けるという意味では、口腔健康度合ではないかもしれないが、しかしながら、単一の代謝産物濃度から得られるものよりも特定の口腔化学のより広い指標であろう。このような度合は、例えば、特定の微生物相の代用の口腔度合であって良い。
【0068】
加えて、上述の、臨床試験、口腔健康度合又はその他の唾液スペクトルから得られる測定値のために被験者を選択することは、各区分における被験者が選択され得るその被験者において2つ以上の区分を含む試験において、各区分にわたって被験者の口腔健康度合又は代謝産物濃度のバランスをとるために有用である。
【0069】
本願の方法の際立った利点は、試験の際に被験者の日単位で行なわれることができる口腔健康履歴を調べることによって、処方されていない治療用製品又は治療の欠如などのような、臨床試験の手順に従っていないことを示していることを検知できることである。ひいては、手順に従っていない被験者を試験から除外するかどうかについて客観的な決定を下すことができ、こうしてより有効なまたより強力な試験を提供することを補助する。
【0070】
本願の方法の際立った利点は、唾液サンプルが被験者自身により自宅で採取することができ、中央収集地点へ比較的早く容易に送付できることである。これに続く唾液サンプルの解析は、高い処理量で、比較的安価に行うことができる。本願の発明の1つの態様は、
a)複数の日にわたる試験又はプラシーボ口腔治療を含む、予め定められた手順に従う一連の個人を採用する工程と、
b)個人に自身の唾液サンプルを1日以上採取すること、及び前記唾液サンプルを中央収集点に戻すことを要求する工程と、
c)前記サンプルから、これを中央収集点に戻した後、NMRスペクトルを取得する工程と、
d)
(i)複数の日にわたり前記個人に適用された、治療の効果度のデータ、及び
(ii)前記一連内の個人の日々の反応のデータ、から選択されたスペクトルから1つ以上の度合を得る工程と、を含む臨床試験を管理する方法である。
【0071】
その他の使用及び方法
臨床試験の管理を改善するための使用を超えて、個人の健康の管理を改善するために本願に記載された方法を使用することができる。例えば、個人は、本願に記載されているように唾液のサンプルを採取することができ、本願に記載されているように口腔健康度合又は口腔健康履歴を作成するために、これを特別な解析のために研究施設へ送付することができる。その後、口腔健康度合又は口腔健康履歴は、例えば、個人の医師に口腔健康又は口腔化学の変化に影響されるその他の病気の状態の診断の補助として提供することができる。情報は、例えば、本願に提供されたように、個人の口腔健康度合又は口腔健康履歴を検査して、個人への治療用製品の処方を補助するために使用される。この方法は、経過観察的な方法、例えば、個人を治療用製品で治療し、治療用製品による治療前後の個人の口腔健康履歴を評価することにもまた使用することができる。
【0072】
本願の方法は、有効性又は治療用製品の作用機序を測定するために間違いなく有用であり、これにより、製品開発において価値がある。このような測定は、臨床試験に参加している被験者の口腔健康履歴から製品の製品有効性度合を算定する、又は試験に参加している一連の被験者の唾液スペクトルから求められる唾液の組成の変化を誘発した製品の製品有効性度合を算定することを含むことができる。測定は、試験製品を参照製品と比較することを含んでも良い。従って、得られた製品有効性度合は、当然ながら、製品の有効性度合をその製品と関連付けることによって、製品の広告の表示を作成するために有用である。このような表示は、試験製品と参照製品の間で、異なる製品が誘発した唾液組成の変化を示し、製品の作用のモードと参照製品のモードとを区別することを含んでも良い。
【実施例】
【0073】
(実施例1)−作用モード検査
2つの試験練り歯磨きA及びBの作用モード(MoA)を標準市販製品Cと比較して、検査するために、1H NMRを採用した唾液代謝学(SM)が使用された。製品Aは抗菌剤としてトリクロサンを含んでおり、製品Bは亜鉛とスズ塩の両方を含む抗菌システムを含んでいた。製品Cは、抗菌剤を含んでいなかった。30人のパネリストのグループが選択され、「洗い流し」期間のため、4週間にわたり、製品Cを1日に2回使用するように指示された。洗い流し期間(参照フェーズ)の最後の2週間にわたり、パネリストは各々、全て異なる日の起床時に採取した、最高10個の洗浄唾液サンプルを提出した。各サンプル採取日に、パネリストはピペットを使用して2mLの水道水を各自の口中に注ぎ、30秒間濯ぎ、新しい遠心チューブの中に吐き出した。このチューブは保存剤として1mLの0.9w/v%NaFを含んでおり、一旦満たされると、解析に供されるまで0℃未満で保存された。
【0074】
参照フェーズの後、このグループは3つの区分に分けられ、個人は、参照フェーズの唾液内に見られたプロピオン酸の平均%(参照フェーズNMRスペクトルから求められる)に従って各区分にわたってバランスがとられた。1つの区分は新しいチューブに入った製品Cをプラシーボとして支給され、2番目の区分は製品Aを支給され、更に3番目の区分は製品Bを受け取った。パネリストは、各自の新しい製品を3週間(介入フェーズ)使用し、その後更に2週間(回復フェーズ)使用し、洗い流し(基準)期間に使用した製品Cの状態に戻った。この5週間の間、パネリストは1週間に最高5サンプルを提供し続けた。各区分は8〜9人のパネリストを含み、パネリストと区分の結び付きは全体を通して知られていたが、データ取得及びデータ処理フェーズの間は、製品区分と製品の結び付きは知られていなかった。
【0075】
提供された唾液サンプルは、記録され、独自の識別子を伴うラベルを付けられ、冷凍庫に保管された。サンプルが解析のために調製されるときに、サンプルはほぼ提供された順序で(区分とは関係なく)冷凍庫から取り出され、約2時間で解凍された。完全に溶解したとき、サンプルの体積が記録され、サンプルは、20℃で8000rpmで10分間遠心分離された。その後、上澄み液はデカントされ、同じ識別子がついたラベルを付けた新しいバイアル瓶の中に保管された。
【0076】
NMRサンプルは、800μLのサンプル、及び80μLの参照としてピリダジンを含む緩衝溶液を、新しい長さ18cm、直径5mmのNMRチューブに加えて調整した。サンプルチューブは同じ識別子がついたラベルを付けられ、400MHzブルカー(Bruker)分光光度計によるH NMR解析に供された。サンプルは、120サンプルのオートサンプラーに提供された順番に設置され、一晩中又は週末にかけて解析された。典型的に、1晩に30サンプルが解析され、毎回のローディング、ロッキング、シム調整及び収集サイクルに約40分間を要した。最初のサンプルを解析する前に、機械は較正され標準シム設定が選択された。収集の質を評価するために、9.2ピリダジン・トリプレットが使用され、必要な場合は、サンプル収集は解析の最後に繰り返され、古いスペクトル・ファイルは上書きされた。得られたスペクトルは、水サプレッションを使用して収集された。
【0077】
NMR前プロセスは、ブルカー(Bruker)のXWIN−NMR(商標)ソフトウエアを使用して実行され、バッチ内の全てのサンプルは、おおまかに1.95ppmのアセテートピークに参照された。その後、各々のスペクトルは、同じスペクトル処理マクロを適用された(スキーム1.1)。
【数1】

【0078】
マクロ(ソフトウエアの使用者によって理解されるコマンド)は、線幅の拡大及びスペクトル上のフーリエ変換を実行し、スペクトルの第1の導関数の振幅を取り、それからスペクトルベースラインの補正を行なう。スペクトルの導関数を取ることによって、全体の処理速度は有意に改善され、多数のサンプルを取り扱う助けとなることが見出されている。この手法は、幅広い信号に基づく統計上のブレイクを発見する頻度を減少させるが、小さい鋭いピークにより良い解像度を与える。結果として、これは1つのピークを他のピークと比較する有効性を減らすと理解されるが、いくつかのスペクトルにわたって同じピークを比較することが可能である。
【0079】
処理されたスペクトルは、ブルカー(Bruker)のAMIXプログラムにエクスポートされ、ここでこれらは、1.95ppmのアセテートピークに対して、より正確に参照され、その後スキーム1.2に列記したパレメータを使用してビン化された。
【数2】

【0080】
更に、ビンファイルは、エクスポートされ、ビンリストは、特定のサンプル及び提供した人に関して記録されたデータと結び付けられた。試験全体からの全てのサンプルは、同じ操作によりビン化された。
【0081】
曲線の下で3.1と0.7ppmから100までとの間で、1.995から1.905(アセテート中のCHプロトンの影響による)までのビンで面積を正規化することから開始されたデータ解析は、モデルを支配するアセテート濃度の何らかの変化を防ぐために除去された。一部の範囲内のビンは、形成されたモデルの力を減少させるピークシフトを防ぐために組み合わされた。特定の領域はスキーム1.3に列挙されている。同じ製品区分からの全てのサンプルは、サンプル情報に整数の識別子を与えられた。全てのサンプルは、第2の識別子(フェーズ識別子)を与えられた。参照フェーズサンプルは、最初の整数より0.1少ない数と等しく、介入サンプルは、最初の整数と等しく、回復サンプルは、元の整数プラス0.1であった。
【数3】

【0082】
1人の個人被験者により提供された全てのスペクトルは、その集団についてサンプルの各々から差し引くための、参照フェーズスペクトルの平均を有し、即ち、スペクトルは、一人ごとに参照フェーズで標準化され、従って各人に対して、介入が開始してから発生した変化のみが示された。これはデータのノイズを減少し、形成されたモデルを改善することが見出されてきた。
【0083】
その後、外れ値を発見するために、主成分分析(PCA)が、全てのNMRデータ上で実行された(中央値スケーリングが全てのビンに適用された)。DModXで3標準偏差を有意に超えるサンプル、又はホテリング(Hotelling)のTで異常に高いサンプルは、参照フェーズレベルを有意に超えるエタノールの濃度(1.2ppmのメチル基により示される)を持つものとして、除外された(図1を参照)。外れ値は、パネリストが実際の起床時の唾液を採取しなかったことを示している、食品又は練り歯磨き成分の存在により発生した可能性がある。サンプルが収集と提供との間に劣化することがあった可能性もまたある。食品、飲料、練り歯磨き又はアルコールの存在は識別が容易で、劣化したサンプルは、典型的に異常に高い乳酸濃度を示す。エタノールの濃度は、人毎に、日毎に変化する。エタノールは口の中に見られる一部の細菌により生成され、更に前日/前夜に摂取した飲料からの持ち越しの可能性もある。最高濃度は、サンプルを採取する前にマウスウォッシュを使用した人と思われ、これは、直ちにそれらを除外することを正当化する、手順の違反の可能性がある。廃棄されたサンプルは、正当化する理由とともに、記録される。
【0084】
PCA解析の結果は、最初の2つの主成分(第1に水平軸に示され、第2に垂直軸に示される)とともに分布として、図2又は図3のように示され、同じ一連のデータであるが、参照フェーズ標準化の適用がない場合とある場合がある。データ点の各々は、製品区分を示す大文字(A、B、又はC)、及び区分の中の個人を示す小文字を含む識別子のついたラベルを付けられている。全てのデータは3.1と0.7ppmから100面積単位との間で正規化されている。この領域内のスペクトルを支配し、有用で特徴的な情報を提供しないため、アセテートは取り除かれている。図3は、参照フェーズ標準化の効果を示す。乳酸は、差異スペクトルのこの領域で大きい方から2番目のピークであり、これの変形はサンプルの、図2の第1の主成分軸に沿った右への分散に強く影響する。図3で、この非対称は参照フェーズの値が差し引かれるとき、ほとんど失われ、参照フェーズと介入フェーズとの差が解析される。最初の2つの組成物は、典型的にこのデータの全ての相違の約60%を占める。
【0085】
データから一旦外れ値が取り除かれると、参照フェーズスペクトルを介入フェーズスペクトルと区別する「作用モード」ベクトルを識別するために、各々の製品区分(A、B、及びC)は別々に分析された。これは、全ての回復フェーズデータを除き各々の製品区分を異なるクラスとして行なわれた。その後、直交部分最小2乗法(O−PLS)解析が、Y変数としてフェーズ識別子の0.1の差を使用して、すべてのクラスに対して行なわれた。図4は、実際の拡散と予想された拡散をプロットしたものである。このプロットで、アルゴリズムは参照フェーズからであると認識されたサンプルから、介入フェーズからであると認識されたサンプルのサンプル間で最大分離を獲得することを要求している。参照フェーズサンプルは、6.95のまま残されるべきである一方、介入フェーズのサンプルは右に現れるべきである。1つだけの値(強調されている)がこれに反している。モデルから被験者の1/3を取り除いて、モデルを構築し、その後、取り除かれた1/3を、残りの2/3から作り出されたモデルに基づき予測することによって、モデルは、予測性について試験された。これは、3つの無作為に選ばれた1/3各々に対して実行され、予測の統計がそれら全部について求められた。この試験で、構築されたモデルは76%正しい分類を与えた。
【0086】
各製品の作用ベクトルのモードが、O−PLS第1成分の読み込みとして使用された。これは、各製品の介入によってどの代謝産物が増加するか、又は減少するかを求めるために、定性的に使用された。製品Cの場合、プロピオネート及びブチレート濃度は減少する傾向にあったにもかかわらず、乳酸濃度は上昇する傾向にあることが見出された。製品Bは、乳酸及びコハク酸塩は増加するが、プロピオン酸又は酪酸の還元は有意でないことが見出された。製品Aは、有意なものをほとんど示さなかったが、乳酸が増加を示し、誤差が大きく、且つ変化は統計的に有意でなかった。
【0087】
(実施例2)−作用速度検査
実施例1からの検査結果に基づいて、製品の作用の速度(VoA)を求めるために、O−PLSからのスコアのプロットが使用された。データは、各フェーズ(参照、介入及び回復)について週毎にバッチ化され、各バッチについて同じ軸の順番でボックスプロットが描かれた。回復フェーズデータは、回復サンプルを、介入の最後から参照フェーズレベルへ戻ることを見るために構築されたモデルに投影することによって得られた。製品Cのプロット及び更なる試験製品のプロットを図5及び6に示す。これらのプロットでは、3つの製品の使用フェーズの週がx軸に沿って示される。ラベルB1及びB2は、2つの参照フェーズ週、W1〜W3は、介入週、並びにR1及びR2は「回復」週を示す。各製品のプロットは、全て異なるモデル上で構築されているので、即ち、それらのy軸は異なるので、単独でしか見ることができない。しかし、これらは、効果の保持、プラトーに達する速度及びエラーバーの大きさの特性により、定性的に比較される。製品が同様の作用モードを有する場合、これは通常のPLS成分軸を理論どおりに使用し、これらを互いに直接比較する。図6にプロットされた製品は、第2週に効果のピークに達する製品C(図5)よりも良い保持を示すが、図6の製品は最大の効果に達するのに3週間かかる。
【0088】
このようなプロットは、例えば、比較広告のような裏付けに使用することができるが、パネリストを再利用し(例えば、交差試験)、治療と治療との間に十分長い洗い流し期間が取れる場合は、より良い試験の設計を行なうためにもまた使用することができる。
【0089】
(実施例3)−健康との関連付け
唾液代謝学を臨床効果と結び付けるために、歯肉炎、歯周炎及びその他の症状について、試験に参加した多数のパネリストは等級が付けられる。結果は、スキーム3.1に従って算定された、一連の表示及び1つの全体的な健康スコアである。
GI=歯肉炎指数(0〜4)
PI=歯垢指数(0〜4)
BPE=基本歯周検査(0〜6)
Calc=歯石指数(0〜3)
Tong=舌苔(0〜3)
健康=GI+PI+(2×BPE)+Calc+Tong
スキーム3.1健康スケール
【0090】
全体的な健康スコアは、細菌代謝産物と以下のように関連付けられた。外れ値の前処理及び除去は、実施例1のように行なわれたが、この場合、等級付けが実施された週と同じ週に得られたものだけが採用された。等級付けの週の各患者のサンプルは、添付のものと同じ臨床情報を有し、これは一連のy変数として使用された。モデルは、特定の表示又は全体の健康に対する代謝産物濃度と結び付けるために構築された。これは、総合的な健康と関連付けられることが見出された。
【0091】
この種のモデルを正しく正当化するためには、実施例1に示されているものと同様の予測ルーチンを行う必要がある。個人は、無差別に3つの分類の1つに割り当てられる。順番に、各分類の中の1つのデータは、予測セットとして除外し、モデルは残りの2つの分類から構築される。予測セットは、モデルの中に定置され、これらのデータ点について、図7に示すように、全体の健康スコアの実測値対予測値がプロットされる。その結果全てを組合せ、同じ軸上に示すことができる3つのプロット、及び予測値の2乗平均平方根誤差とも呼ばれるR値(RMSEP)が、y=xの線で示される(図7に示す)。
【0092】
(実施例4)−作用範囲の比較
作用モード(MoA)を、実施例1で述べたように、作用範囲(EoA)に変換するためには、発生した変化の程度を表すようにMoAベクトルを測る必要があった。O−PLSモデルからのローディングチャートは、固有ベクトルとも呼ばれる特別なタイプの単位ベクトルとして、作成される。固有ベクトルに対応する固有値は、ベクトル又は変形の程度を示す。各固有ベクトルに、モデルからの対応する固有値をかけることによって、これらを比較的に測ることができる。
【0093】
O−PLSモデルからの固有値は、例えば、データによって表示された分離、分離された各グループにおける点の分散及び各グループの点の数に依存する。これは、データに適合する成分の数にもまた依存し、これは大幅に変化することができる。O−PLSモデルが形成されると、連続的な追加の成分が、説明的と見なされないデータを除去し、モデルを構築する情報の量を減少させる。しかし典型的には、追加成分毎に、除去されるデータの割合は減少する。固有値は追加成分により減少するが、連続的な固有値間の差異は次第に小さくなる。基礎をなす複雑な挙動から得られ、しかしノイズが少ないデータセットは、多くの成分を含み、各々包含のために正当化され、しかし追加の説明的な値を減少させる強力なモデルを生み出す可能性がある。逆に、数多くの不規則ノイズを反映するデータセットは、最初のいくつかの成分が数多くのデータを除去し、連続する成分がモデルをあまり改善を示さないため、有する成分が少ない弱いモデルを生み出す可能性がある。これは、一部の最も弱いモデルが最も強いように見えるような、即ち、成分が少ないものが、ソフトウエアでチェックされずに実行される場合のような、効果を持つ。図8は、成分の適合に引き続く効果が、モデルからの固有ベクトルの程度に、口腔ケア治療用製品の範囲、A−Iのために、構築されたことを示す。このプロットでは、製品E及びIは、同じ市販の練り歯磨きの使用に基づき実行を繰り返し、これは実施例1の製品Cに対応し、抗菌剤を含有しない。同様に、製品F及びGは、同じトリクロサン含有の市販の練り歯磨きの使用に基づき実行を繰り返し、これは実施例1の製品Aに対応する。製品Aは、クロルヘキシジンを含有する市販の口内洗浄剤であり、この評価では、最強のモデルを構築することが見出された。低い値における異なる線をより良く分離するために、このy軸が対数であることに留意すること。
【0094】
本願の方法では、O−PLSモデルは、安定した固有値を確実にするために、一般的に、固有値と固有値n+1との差異が0.1未満になるまで実行される(典型的なスケールは100から2まで実行される)。この要求による結果は、多くの成分が適合するが、後の成分が次第にモデルに適合しなくなることである。重要な態様は、何が除去されているかではなく、何が保持されているかである。保持される情報は、参照フェーズと介入フェーズとの差異に関連付けられたもののみである。3つの異なる分析方法が試された。
【0095】
1.同じ製品区分の全ての個人は、参照フェーズの標準化を行い、一緒に集められた。モデルは、その製品の使用を含む全てのサンプルに対して、参照フェーズと介入ベースとの差異に基づいて構築された。
【0096】
2.同じ製品区分の全ての個人は、参照フェーズ標準化を行い、一緒に集められるが、介入フェーズサンプルは、介入が行なわれた3つの週各々により、グループ化される。これらの週及び参照フェーズのそれぞれの差異に基づいて、3つのモデルが構築された。
【0097】
3.各個人に対して、全ての介入フェーズサンプル及び参照フェーズサンプル間の差異に基づく試験についてモデルが構築された。
【0098】
上記のモデルが構築され、スケール化されると、5つの次元でPCAプロットへの入力として使用された。健康への関連付けは、他の固有値の平均サイズに従いスケール化され、正(健康不良)又は負(健康良)の形状で挿入されたスコアプロットの座標が採用され、健康ラインに投影され、各人又は各製品は、参照フェーズから介入フェーズへ移行したときの全体の口腔健康における、改善又は悪化の量を示すスコアを有した。製品毎のこれらの値の平均は、上述の方法3に対して95%の信頼区間で、図9に示されている。
【0099】
全ての人々が同様に行動すると仮定したため、人々を全て一緒に(方法1及び2で)グループ化することが望ましくないこともまた見出された。参照フェーズの標準化が適用された場合でも、介入が実行されている間に効果に大きな違いがあり、これは恐らく、介入期間中にパネリストが歯ブラシで磨くこと又は彼ら自身のふるまいの異なる度合によるものであろう。最良の結果は、個々のモデルが各々の個人に対して形成され、比較されたときに得られ、これが、最良の統計解析に適用され、差異が統計的に有意であると同定するためにグループのt−テストが行われた。この実施例では、全ての参照フェーズサンプル及び全ての介入フェーズサンプルは、介入フェーズサンプルが採用されたときに区別せずに、等しい重さでモデル内に包含された。従って、正味の変化は、3週間にわたる介入期間全体を通した変化の合計である。約3週間の製品使用後に起きた、より目標を定めた変化の見積は、解析に第3週のサンプルを含めることのみによって得ることができた。当然ながら、介入期間は、4週間から12週間のように、介入期間の最後にサンプルを採取することを含め、より長くすることも可能である。
【0100】
図9は、製品EとIとの間、又は製品FとGとの間には有意差がないことを示しており、これは上述のように、各々の場合の製品が同じであるため予想されていた。更に、製品E/Iは、参照(洗い流しフェーズ)にも使用されてきた製品であったので、正味の改善がゼロ、又はゼロから有意差がないことも、また予想されていた。
【0101】
図10のプロットの各点は、最初の2つの主成分(PC1及びPC2)によって画定される2成分空間上の、1人の個人に対する参照フェーズと介入フェーズとの間の正味の変化を示している。モデル全体から求められる全体的な口腔健康改善のベクトルが、この空間に投影され、且つ図示のように点線で示されている。図10には正確に示されていないが、健康ベクトルは原点を通る。3人の個人について示されているように、健康ベクトル上への投影により、個人の参照フェーズと介入フェーズとの間の変化は、基本的な健康手段に関わらず、健康ベクトルに沿った移動及び垂直方向の移動により特徴付けることができる。
【0102】
上述の実施例の製品の使用が1つの製品の系統的な使用に1回のみ関与していたとしても、方法は、デンタルフロス、歯ブラシ、マウスウォッシュ及び練り歯磨きを含む製品の系統を許容し、この方法を使用して同じ製品の異なる系統を比較することもまた許容する。
【0103】
本明細書に開示される寸法及び値は、列挙された正確な数値に厳しく対応して設けられるものとして理解されるべきでない。それよりむしろ、特に指定されない限り、各こうした寸法は、列挙された値とその値周辺の機能的に同等の範囲の両方を意味することを意図する。例えば、「40mm」として開示された寸法は、「約40mm」を意味することを意図する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
個人のための代用の口腔健康度合を算定する方法であって、
a)唾液サンプルを個人から採取する工程と、
b)個人の唾液サンプルから個人スペクトルを取得し、デジタル化する工程と、
c)前記デジタル化された個人スペクトルをコンピュータメモリに保存された参照モデルと比較して前記代用の口腔健康度合を算定する工程であって、前記参照モデルが、多変量分析を通じて、参照集団の複数構成員の各々の前記口腔健康の1つ以上の直接度合を、前記参照集団構成員の唾液サンプルから得られた参照スペクトルと関連付けることから得られ、前記参照スペクトルが前記個人スペクトルのタイプに対応する、工程と、
を含む方法。
【請求項2】
前記個人スペクトルがNMRスペクトル、好ましくはH NMRスペクトルである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記個人スペクトルが、H NMRスペクトルであり、且つ前記参照モデルに対する前記個人スペクトルの比較は、0.5〜3.5ppm、好ましくは0.5〜4.5ppm、より好ましくは0.5〜8.6ppmの範囲に収まる前記スペクトルの一部の使用を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
各スペクトルの使用された前記部分が、プロピオン酸、ブチレート、及びトリメチルアミンのピークを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
各スペクトルの使用された前記部分が、ギ酸塩、N−アセチル糖類、乳酸、メチルアミン、及びジメチルアミンのピークを更に含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
各スペクトルの使用された前記部分が、メタノール、トリメチルアミンオキシド、フェニルアラニン、コリン、ヒスチジン、チロシン、メチルグアニジン、サルコシン、β−ヒドロキシブチレート、コハク酸塩、ピルベート、イソブチレート、n−ブチレート、ロイシン、アラニン、n−バレレート及びエタノールから選択される1つ以上のピークを更に含む、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
アセテートのピークが、前記分析から取り除かれている、請求項2〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記唾液サンプルが、各個人に標準化された手順に従って口腔を濯がせ、容器に吐き出させることにより得られ、各唾液サンプルを吐き出した後、前記サンプルが、前記サンプルの更なる細菌の代謝を防ぐために安定剤で処理される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
各唾液サンプルが、採取の後、冷凍される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
参照集団の各構成員の口腔健康の1つ以上の直接度合が、
a)医師の口腔健康の定量的評価、
b)歯肉の画像、
c)歯の画像、及び
d)息の悪臭の機械測定値又は専門家の評価
から選択されるものを含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記集団構成員の医師による定量的評価が、歯垢指数、歯石指数、歯肉炎指数、歯周疾患指数及び舌苔指数から選択された1つ以上の指数を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記参照モデルが、前記唾液スペクトルのデジタル表示及び前記集団構成員の前記医師による定量的評価を含む、データセットのPLS又はO−PLS分析により組み立てられた、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記個人の口腔疾患に対する感受性又は口腔疾患の程度を見積るための、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法の使用。
【請求項14】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法により、個人から複数日の各々に収集された唾液サンプルから得られた、代用の口腔健康度合の提供を含む、個人の口腔健康履歴を生成する方法。
【請求項15】
前記履歴が、試験物質により被験者を処理することと関連して作成される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法により測定される被験者の唾液成分の日々の一貫性に基づいて、臨床試験のために被験者を選択する方法。
【請求項17】
a)請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法により得られた、候補者の代用の口腔健康度合と、
b)前記各候補の唾液サンプルから得られたスペクトルと、
に基づき、臨床試験のために前記候補者から被験者を選択する工程を含む、前記臨床試験のために前記被験者を選択する方法。
【請求項18】
前記臨床試験が2つ以上の行程を含み、各行程につき被験者が、前記各行程にわたって前記代用の口腔健康度合又は被験者の代謝産物濃度のバランスをとるように選択され、前記代謝産物濃度が前記個人スペクトルから決定される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
a)予め定められた方法に従い一連の個人に対して臨床試験を実行する工程と、
b)請求項14に記載の方法により、前記個人の少なくとも1つのサンプルの各々についての前記口腔健康履歴を生成する工程と、
c)こうして得られた前記口腔健康履歴について、前記臨床試験手順に従っていない兆候がないかどうかを調べる工程と、
を含む臨床試験を管理する方法。
【請求項20】
a)複数の日にわたる試験又はプラシーボ口腔治療を含む、予め定められた手順に従う一連の個人を採用する工程と、
b)前記個人に自身の唾液のサンプルを1日以上採取すること、及び前記唾液サンプルを中央収集点に戻すことを要求する工程と、
c)前記サンプルから、これを中央収集点に戻した後、スペクトルを取得する工程と、
d)(i)複数の日にわたり前記個人に適用された、治療の効果度のデータ、及び
(ii)前記一連内の個人の日々の反応のデータ、
から選択されたスペクトルから1つ以上の度合を得る工程と、
を含む、臨床検査を管理する方法。
【請求項21】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法により提供される、個人の代用の口腔健康度合を調べる工程を含む、個人に治療用製品を処方する方法。
【請求項22】
治療用製品で個人を治療して、前記個人の請求項14に記載の方法によって作成された、前記製品による治療前及び治療後の、前記個人の口腔健康履歴を評価することを含む、前記個人に対する前記治療用製品の有効性を決定する方法。
【請求項23】
a)一連の被験者の各々が治療用製品で治療され、各々の被験者に対して請求項14に記載の方法により口腔健康履歴が作成される、臨床試験を行う工程と、
b)前記口腔健康履歴から、又は前記スペクトルによって決定される前記一連の被験者に対して製品がもたらした唾液の組成変化から、前記製品の製品有効性度合を算定する工程と、を含む前記治療用製品の有効性の測定方法。
【請求項24】
前記製品の有効性度合が、参照製品の有効性度合と比較される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記製品による治療が、標準化治療期間後に効果がもたらされる、請求項23又は24に記載の方法。
【請求項26】
各被験者の唾液サンプルが、標準化治療期間中に収集される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
a)請求項23に記載の方法による、前記治療用製品の有効性を測定する工程と、
b)前記測定された製品有効性の度合を前記製品と関連付ける工程と、
を含む、治療用製品の広告用表示を作成する方法。
【請求項28】
異なる製品がもたらす前記試験被験者唾液の組成変化を示すことによって、前記製品の作用機序を参照製品の作用機序と区別することを含む、治療用製品の広告用の表示を作成する方法。
【請求項29】
a)一連の個人の各々から少なくとも1つの最初の唾液サンプルを収集する工程と、
b)前記個人を前記治療用製品で治療する工程と、
c)前記各個人から少なくとも1つの最終唾液サンプルを収集する工程と、
d)前記唾液サンプルの全てからスペクトルを取得して前記スペクトルをデータベースに保管し、各スペクトルが個人識別子及びサンプルタイプ識別子と関連付けられる、工程と、
e)スペクトルのデータベース上で多変量分析を行って、前記一連の個人に対する治療用製品の効果と関連付けられて1つ以上の治療ベクトルを得る工程と、を含む治療用製品を特徴付ける方法。
【請求項30】
前記ベクトルの少なくとも1つが、前記商品の使用の結果として一連の個人内の変化を示す、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記ベクトルの少なくとも1つが、前記製品に対する反応に関して、個人の第1の部分集合を、全体集合又は第2の部分集合と区別する、請求項29又は30に記載の方法。
【請求項32】
最初の唾液サンプルが、治療用製品による個人の治療の前に得られたものである、請求項29〜31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
最終唾液サンプルが、治療用製品による個人の治療の後に得られたものである、請求項29〜32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
1つ以上の中間唾液サンプルが、前記個人から得られ、更に前記中間サンプルから得られたスペクトルが前記データベースに保存されて個人識別子及びサンプルタイプ識別子と関連付けられ、多変量解析に取り込まれる、請求項29〜33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記中間唾液サンプルが、治療用製品による個人の治療の間に得られたものである、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
多変量分析を行なう前に、複数の個人の最初の唾液サンプルからのスペクトルのデータが、各個人に標準化度合を提供するために平均化され、標準化度合が各個人のスペクトルの対応するデータから差し引かれる、請求項29〜35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
請求項29〜36のいずれか一項に記載の方法により得られた各製品に関連付けられた治療ベクトルを比較することによって、2つ以上の治療用製品を比較する方法。
【請求項38】
前記多変量分析が、主成分分析であり、前記比較は前記ベクトルの各々を1つ以上の主成分によって画定される空間にプロットすることを含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
第1の部分集合の個人が、第1の治療用製品で治療され、第2の部分集合の個人は、第1の治療用製品及び第2の治療用製品で治療され、少なくとも1つの前記ベクトルが該第1の部分集合を該第2の部分集合から区別することが、第2の治療用製品の補足効果を第1の治療用製品に対して特徴付ける、請求項31に記載の方法。
【請求項40】
前記治療用製品が、練り歯磨き、マウスウォッシュ、義歯粘着剤、又は機械的な口腔治療装置の形態をとる口腔治療用製品である、請求項22、23又は29〜39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記口腔治療用製品が、抗菌剤を含む、請求項40に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2009−545740(P2009−545740A)
【公表日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−522413(P2009−522413)
【出願日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際出願番号】PCT/IB2007/053275
【国際公開番号】WO2008/020416
【国際公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願人】(590005058)ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー (2,280)
【Fターム(参考)】