喘息および関連疾患を含むアトピー性アレルギーを治療するための標的としての喘息関連因子
【課題】アトピー性アレルギー、喘息、気管支過反応および関連疾患を治療するために、IL-9とそのレセプターとの相互作用を調節することができる因子を同定すること。
【解決手段】ヒト喘息関連因子1(AAF1)のエキソン5における3365位でのDNAのCからTへの変異により、AAF1のコドン117位でのトレオニンからメチオニンへの予想されたアミノ酸置換が生じる。この置換が1個体の両対立遺伝子に生じると、喘息を含むアトピー性アレルギーがより起こりにくく、皮膚試験反応の異常がより少なく、かつ血清中の総IgEがより低くなる。このように本発明者らは、ある1個体の両AAF1遺伝子産物にそれが生じる場合の、コドン117位におけるメチオニンを特徴とする非喘息性、非アトピー性表現型の存在を確認した。
【解決手段】ヒト喘息関連因子1(AAF1)のエキソン5における3365位でのDNAのCからTへの変異により、AAF1のコドン117位でのトレオニンからメチオニンへの予想されたアミノ酸置換が生じる。この置換が1個体の両対立遺伝子に生じると、喘息を含むアトピー性アレルギーがより起こりにくく、皮膚試験反応の異常がより少なく、かつ血清中の総IgEがより低くなる。このように本発明者らは、ある1個体の両AAF1遺伝子産物にそれが生じる場合の、コドン117位におけるメチオニンを特徴とする非喘息性、非アトピー性表現型の存在を確認した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、1995年8月24日に提出された米国仮出願(U.S.Provisional Application)第60/002,765号に関連している。
【0002】
発明の分野
本発明は、IL-9とそのレセプターとの関係に基づいて、IL-9の活性を調節し、アトピー性アレルギーおよび喘息などの関連疾患を治療することに関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
炎症は、身体の防御システムが異物を攻撃する複雑なプロセスである。身体が生き残るためには、異物に対する闘いが必要であるが、防御システムには、異物が無害な物であっても危険なものであるとして不適当に反応するものがあるため、引き続いて行われる闘いにおいて、周囲の組織を損傷することになる。
【0004】
アトピー性アレルギーは、遺伝的な背景によって環境刺激に対する反応が左右されるという、環境−遺伝的な疾患である。この疾患は、一般的に、遍在する抗原に反応してIgE抗体を産生するリンパ球の能力を高めるという特徴を有する。
【0005】
これらの抗原による免疫システムの活性化により、アレルギー性炎症が引き起こされ、またこの活性化は、摂食後、皮膚からの浸透、または吸入の後に起こることがある。この免疫活性化が起こった後、引き続いて肺に炎症が起こると、この疾患は、広く喘息と特徴づけられる。この炎症反応には一定の細胞が重要であり、T細胞および抗原提示細胞、IgEを産生するB細胞、ならびに、IgEに結合する肥満細胞/好塩基球および好酸球が含まれる。これらの炎症細胞は、アレルギー性炎症を起こした部位に蓄積し、これらが放出する有毒な産物が、この疾患に関連する組織破壊の一因となる。
【0006】
喘息は、気道の炎症性疾患であると一般的には定義されるが、臨床上の症状は、間欠的に空気の流れが閉ざされることに起因する。有病率および重篤度が上昇して行くと考えられている慢性の障害性疾患である1。人口の30〜40%がアトピー性アレルギーを患っており、人口うち小児の15%および成人の5%が喘息を患っているといると推定される1。このため、我々の保健財源にとって非常な重荷となっている。
【0007】
アトピーおよび喘息に対する感受性のメカニズムは未解明のままである。興味深いことに、ほとんどの人が、同じような環境に曝されているのに、一部の人のみがアトピー性アレルギーや喘息を発症する。「アトピー」として知られている、環境アレルゲンに対するこの過敏性はしばしば、アトピー患者において、アトピーでない人よりも、血清のIgEレベルが上昇するかまたはアレルゲンに対する皮膚検査反応が異常に大きくなることによって示される10。アトピー性アレルギーと喘息との密接な関係に関する強力な証拠は、ほとんどの喘息患者には、臨床学上および血清学上のアトピーの証拠があるという事実に由来している4〜9。特に、若い喘息患者ほど、アトピーの発症率が高い10。さらに、血清の総IgEレベルの上昇に関連した免疫学的因子は、肺機能障害に非常に密接に関係している3。
【0008】
これらの疾患の診断および治療の両方に問題がある1。炎症を起こした肺組織を評価することがしばしば困難であるため、炎症のもととなった部位を決定できないことがよくある。気道炎症の発症部位と、誘因となる外部環境因子からの防御に関する知識がないと、炎症プロセスを阻止することはできない。肺の炎症を制御することができないと、肺機能の重大な喪失がもたらされることが、今では一般に認められている。
【0009】
現行の治療法には、本質的に一連の欠点がある。主要な治療薬であるβアゴニストは症状を抑える、すなわち、一時的に肺機能を改善させるが、そのもととなる炎症には影響しないため、肺組織は危険にさらされたままである。さらに、βアゴニストの定常的な使用は、その効能と安全性を低下させる脱感作をもたらす2。もととなる炎症を抑制できる薬剤である抗炎症性ステロイドには、免疫抑制から骨の損傷まで、一連の既知の短所がある2。
【0010】
従来の治療法には付随する問題があるため、それに代わる治療方法が評価されてきた65〜66。グリコホリンA64、サイクロスポリン65、およびIL-2の9ペプチド断片63はすべて、インターロイキン-2依存型Tリンパ球の増殖と、それによるIL-9の産生51を阻害するが、その他にも多くの効果2を有することが知られている。例えば、サイクロスポリンは、器官移植後の免疫抑制剤として用いられる。これらの薬剤は、喘息患者の治療において、ステロイドに代わるものの代表であろう63〜66が、これらは、インターロイキン-2依存型Tリンパ球の増殖と、ホメオスタシスに関連する可能性がある重要な免疫機能を阻害する。当技術分野において必要なことは、喘息の一時的な性質と、これらの重要な免疫機能の下流にあるアレルギーとの密接な関連とを説明する、喘息発症に決定的な経路を同定することである。この経路には通常、生物学的な多様性が存在し、それがないと、このような人は一般的に、アトピー症状を除いては、免疫無防備状態でも病気でもないことから、自然によって、この経路が治療にとって適切な標的であることが示された。
【0011】
喘息の診断および治療に関して問題があるために、この疾患の複雑な病態生理学が徹底的に調べられているところである。この疾患は均質なものではなく、多様な形態をとりうるため、定義するのは困難であるが、喘息患者に共通する一定の特徴が見られる。このような特徴の例には、血清IgEレベルの上昇、アレルゲン投与に対する異常な皮膚検査反応、気管支過反応[BHR]、気管支拡張可逆性、および気道閉塞が含まれる3〜10。これらの喘息に関連した表現型の発現を、定量的または定性的な規準として調べることができよう。
【0012】
IgEレベルの上昇はまた、様々な刺激に対する強化された気管支収縮反応であるBHRと密接に相関している4、6、8、9。BHRは、気道に炎症が起きていることを反映していると考えられており6、8、喘息にとっての危険因子と見なされている11〜12。BHRは、喘息患者における気管支の炎症とアレルギー体質とを伴う13〜21。アトピーおよび喘息の症状がない子供においても、BHRは、IgEレベルの上昇と強く関連している19。
【0013】
多くの研究が、アトピーおよび喘息に対する遺伝的な要素を論証している4、10、21。しかし、これらの疾患は、年齢および性別、ならびにアレルゲン、ウイルス感染、および公害物質などのさまざまな環境要因によって有意に影響を受けるため、家族研究は、解釈が難しかった22〜24。その上、これらの疾患に対する感受性に付随する生化学的な欠損が知られていないため、突然変異遺伝子、およびそれの異常な遺伝子産物は、それらが生み出す異常な表現型によってのみ認識されうる。したがって、遺伝的要素を単離し特徴を調べる上で重要な第一歩は、それらの遺伝子の染色体上の位置を同定することである。
【0014】
クックソン(Cookson)らは、遺伝性アトピーに関する遺伝子の位置を初めて説明した25。この研究者たちは、アトピーと、11q13.1と名付けられた特定の染色体領域上の単一マーカーとの間にある遺伝的な連鎖の証拠について述べた。後になって、彼らは、この遺伝子座におけるアトピーに関する母性遺伝の証拠を示唆した26。アトピーについては、母性遺伝[遺伝的刷り込み]が観察されていたが、それ以前に説明されたことはなかった。しかし、この連鎖を確認するための努力は、一般的にうまくいかなかった27〜31。
【0015】
最近になって、高親和性IgEレセプターのβサブユニットが、染色体の11qにマッピングされ、アトピーに関連した突然変異と推定されるものが、この遺伝子で説明されている32、33。しかし、この連鎖は、他人で反復することが難しいため、この遺伝子の重要性と多型性は不明なままである。この推定突然変異が一般的な人々にアトピーを引き起こす原因であるか否かを確認する必要があるが、これまでに集められたデータからは、この多型性がアトピーを頻繁に起こす原因の代表とは考えられない。
【0016】
血清IgEレベルが、臨床疾患としてのアレルギーおよび喘息の開始と重篤度に非常に密接に関連していることから、血清の総IgEレベルの遺伝的な調節の研究に注意が集中した。過去の研究によって、単一の調節遺伝子の存在が示されて、血清総IgEレベルがメンデル型遺伝するという証拠が示された34〜39一方で、別の研究者が、IgEのポリジーンによる遺伝、すなわち、いくつかの関係遺伝子が存在する証拠を発見した39。
【0017】
当業者は、IgEの調節と、喘息に付随する気管支炎の発症または進行にとって重要だと思われる遺伝子をいくつか、染色体5q上に発見している。これらの遺伝子には、IL-3、IL-4、IL-5、IL-9、IL-13、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子[GM CSF]、マクロファージコロニー刺激因子レセプター[CSF-1R]、線維芽細胞酸性増殖因子[FGFA]など、いくつかのインターロイキンをコードする遺伝子が含まれる40。家族研究から得られた最近の証拠により、血清IgEレベルと、染色体5q上のこれらの候補遺伝子が乗っている領域中のDNAマーカーとの間に遺伝的連鎖があることが示唆される41、42。まとめると、これらの研究から、染色体5q上のインターロイキン複合領域の近傍にある1個以上の主要遺伝子が、アトピーと喘息の発症に重要だと考えられる血清IgEで見られる生物学的多様性の相当量を調節していることが示唆される。
【0018】
また、連鎖[兄弟姉妹対解析(sib-pair analyses)]を用いて、以前にBHRに関する遺伝子の位置が同定された79。BHRは、アトピーの主要遺伝子と関連していることがわかっているため、血清IgEレベルを調節する上で重要だと報告されている染色体領域を調べた42。連鎖解析によって、アトピーに関する候補領域が同定されている。これらの研究から、ヒトの染色体5q31〜q33に、アトピーの主要遺伝子が存在することが確認された42。
【0019】
従って、アトピーの主要遺伝子と共遺伝すると思われるBHRに対する感受性をもたらす遺伝子の染色体上の位置を決定するために、BHRと染色体5q上の遺伝子マーカーとの間の連鎖解析を用いて実験を行った42、79、82。ヒスタミンに対する反応性によって、BHRを有する人を同定した。喘息関連遺伝子をマッピングするのに有用なマーカーを図1に示す。
【0020】
特に、喘息、気管支過反応、およびアトピーに関する遺伝子候補が、示されたマーカーに対するおおよその位置の[右]に示されている。マップには、インターロイキン遺伝子IL-4、IL-13、IL-5、およびIL-3;細胞分裂周期-25のCDC25;顆粒球マクロファージコロニー刺激因子[GM CSF]のCSF2;初期成長反応遺伝子-1のEGR1;細胞抗原14のCD14;β2アドレナリン作用性レセプターのADRB2;リンパ球特異的グルココルチコイドレセプターであるGRL1;血小板由来増殖因子レセプターであるPDGFRが含まれている。5q31〜q33のバンドは、ほぼIL-4からD5S410まで広がっている。報告されている距離は、性平均した組換え分数である。
【0021】
用いられた兄弟姉妹対解析により、BHRと、D5S436、D5S658、および染色体5q31〜q33の近傍に位置するその他のいくつかのマーカーとの間に連鎖があることの、統計的に有意な証拠が明らかにされた79。これらのデータから、染色体5q31〜q33上に近接した間隔にある1個以上の遺伝子が、BHR、アトピーおよび喘息への罹病性を決定するという仮説が強く支持された79、80、81、82。
【0022】
最近、喘息の表現型と染色体5q31〜q33上の遺伝子マーカーとの間の連鎖も示されている83。アトピーとBHRに対する遺伝的な罹病性をもたらす、合理的な位置にある候補遺伝子となるような遺伝子が数多くあるため、ヒトゲノムのこの領域を、喘息との連鎖について評価した。
【0023】
上記の方法を用いて、連鎖が明らかになった42、83。特に、以前、BHRとアトピーに連鎖していることが分かっている染色体5qの、この同じ領域からとったマーカーに関して、兄弟姉妹対とLODとを用いて、オランダの84家族を解析した42、83。喘息の発端者と、その家族における閉塞性の気道病を分類するためのアルゴリズムを用いた。この分類スキームは、前述したように、ヒスタミンに対するBHRの有無、呼吸症状、有意な喫煙経歴[5箱より多く喫煙した年数]、皮膚検査反応によって定義されたアトピー、気道閉鎖[FEV1の予想%<95%CI]、および気管支拡張への可逆性[予想値で>9%]に基づいていた。
【0024】
兄弟姉妹対解析(N=10、p<0.05)と、喘息の表現型について優性モデルを用いた最尤法解析とによって、喘息と染色体5q上のマーカーとの間の連鎖に関する証拠が発見された83。
【0025】
遺伝子頻度0.015[有病率3%]で優性モデル[クラス1は影響あり、クラス2〜4は不明確、クラス5は影響なし]を用いると、喘息は、θ=0.03のとき最大LOD値3.64で、D5S658と連鎖していた。D5S436と較べて5 cMテロメア側にあるかまたはIL-9から離れているD5S470については、θ=0.0のとき最大LOD値2.71が観察された83。
【0026】
本出願の最初の提出に続いて、IL-9またはその近傍の遺伝子が、アトピーと喘息で用いる上で重要である可能性が高いことが示された43。IL-9の示唆は、無作為に確かめられた集団において、血清総IgEレベルのlog値とIL-9遺伝子の遺伝子マーカーの対立配列との間に強い相関があることに基づいていた43。マーカーの1個以上の特異的な対立配列とのこのタイプの関連は、「連鎖不均衡」と名付けられており、近傍の遺伝子が、研究中の生物学的多様性を決定するということを一般的に示唆している44。
【0027】
IL-9遺伝子は、染色体5のq31〜q33領域にマップされている40。ヒトのゲノムには、この遺伝子の唯一のコピーが存在する45、46。ヒトとマウスのIL-9遺伝子については、構造的な類似性が見られる45、46。それぞれの遺伝子は、5個のエキソンと4個のイントロンを有し、およそ4 kbのDNAにわたって広がっている。この遺伝子の発現は、活性化されたT細胞に限定されていると考えられる45、46。
【0028】
IL-9の機能は、今では、当初分かっていたよりも大きく広がっている。IL-9は、T細胞増殖因子として働くが、またこのサイトカインは、赤血球の前駆細胞、B細胞、肥満細胞、および胎児胸腺細胞の増殖を媒介することも知られている45、46。IL-9は、IL-3と協働的に作用して、肥満細胞の活性化と増殖を引き起こす47。このサイトカインはまた、IL-4によって誘導される、正常なヒトB型リンパ球によるIgE、IgG、およびIgMの産生を増加させる48。IL-9は、また、マウスB型リンパ球によるIgEおよびIgG1の放出を誘導するIL-4を増加させる49。寄生生物による感染に対する粘膜性炎症反応におけるIL-9の重要な役割も明らかになっている50、51。
【0029】
IL-9に加えて、染色体5qには、IL-3、IRF1、EGR1、ITK、GRL1、ADRB2、CSF1R、FGFA、ITGA2、CD14、PDGFR、CDC25、CSF2、IL-4、IL-5、IL-12B、およびIL-13を含む、その他多数の遺伝子候補が乗っている。これらはすべて、アトピー性アレルギーにおいて重要で、治療薬開発の標的となる可能性があると考えられる。さらに、当技術分野では、IL-9の配列またはIL-9の機能がどのようにしてアトピー性アレルギー、喘息、または気管支過反応と特異的に相関しているのかに関する知識がない。このような知識がないと、当業者は、IL-9をこれらの疾患の診断に用いればよいのか、治療に用いればよいのか、また、どうやって用いるのかが分からないであろう。
【0030】
当技術分野では、IL-9は、還元条件下のドデシル硫酸ナトリウム・ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって決定されたところによると、約20〜30 kDの見かけの分子量を有する新規のサイトカインであると規定されている。これは、144アミノ酸蛋白質として産生されるが、プロセシングされて126アミノ酸の糖蛋白質になる。ヤン(Yang)らは、IL-9をコードしているDNA配列が、この蛋白質に対する約450ヌクレオチドの適正な読み枠を有する約630ヌクレオチドからなっていることを開示している85。
【0031】
また、当技術分野においては、選択的スプライシングによって、多数の蛋白質アイソフォームが、単一の遺伝子座から生成されることも知られている。選択的スプライシングは、単一の遺伝子座から多数の蛋白質アイソフォームを生成させるための効果的なメカニズムである。選択的スプライシングは、細胞の遺伝的構成を変更することなしに、蛋白質発現を可逆的に修飾するために、末端の分化細胞で用いられている。これらの蛋白質アイソフォームは、異なる組織、または異なる細胞分化もしくは活性化状態において選択的に発現される。蛋白質アイソフォームは、異なる機能を有することがあるので、アルムスとホワイト(Alms and White)は、IL-4のエキソン2を除いて形成されるためにIL-4δ2と呼ばれる、IL-4の天然のスプライシング変異体をクローン化して発現させた86。IL-4δ2は、IL-4によって誘導されるT細胞の増殖を阻害することが観察された。
【0032】
ところで、当技術分野では、エキソン2および3を欠失させて生成させた、IL-9の蛋白質アイソフォーム、またはこれらの欠失蛋白質によって示される調節機能に関する知識がない。特に、生物学的活性の調節、すなわち、IL-9の発現または活性の抑制調節におけるそれらの役割ははっきりしていない。その上、選択的スプライシングによるこのような蛋白質アイソフォームの形成は、これまでに観察されておらず、また、もとのサイトカインのアゴニストまたはアンタゴニストとして機能するIL-9の変異体を提供するためにも用いられていなかった。
【0033】
また、当技術分野には、喘息関連疾患に関するIL-9レセプターの役割についての知識もない。IL-9は、標的細胞の表面で発現される特異的なレセプターに結合することが知られている52、53(非特許文献1)。このレセプターは、実際には、2本の蛋白質鎖でできている。IL-9レセプターとして知られている1本目の蛋白質鎖は、IL-9に特異的に結合し、もう1本の蛋白質鎖は、IL-2レセプターと共通した鎖である(非特許文献1)。さらに、ヒトのIL-9レセプターのcDNAがクローニングされている52、53(非特許文献1)。このcDNAは、マウスのIL-9レセプターに有意な相同性を示す522アミノ酸の蛋白質をコードしている。このレセプターの細胞外領域は、高度に保存されており、マウス蛋白質とヒト蛋白質とで67%の相同性が存在する。このレセプターの細胞質領域に、高い保存性はない。ヒトの細胞質ドメインは、マウスのレセプターの相当する領域よりもはるかに大きい(非特許文献1)。
【0034】
IL-9レセプター遺伝子も、その特徴が分かっている53。これは、単一コピー遺伝子として、マウスのゲノムの中に存在し、9個のエキソンと8個のイントロンからなると考えられている53。ヒトのゲノムには、少なくとも4個のIL-9レセプターの偽遺伝子が含まれている。ヒトIL-9レセプター遺伝子は、性染色体XおよびYの320kbの亜末端領域にマッピングされている(非特許文献1)。このような研究があるにもかかわらず、当技術分野には、IL-9レセプターとアトピー性アレルギー、喘息、または気管支過反応との関係についての知識が全くない。
【非特許文献1】Renauld,J-C,Kermouni,A,Vink,A,Louahed,J,Van Snick,J.「Interleukin-9 and its receptor: involvement in mast cell differentiation and T cell oncogenesis.」J Leukoc Biol 1995年;57:p.353-360
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0035】
このように、当技術分野には、IL-9遺伝子、そのレセプター、およびそれらの機能が、どのように、アトピー性アレルギー、喘息、気管支過反応および関連疾患と関係しているのかに関する知識が欠けている。したがって、当技術分野においては、アトピー性アレルギー、喘息、または気管支過反応についての遺伝学的情報と、これらの疾患の病因におけるIL-9の役割を明らかにすることが特に必要である。また、これらの疾患における、IL-9レセプターとIL-9レセプター遺伝子の役割を明らかにする必要もある。さらに、最も重要なのは、それらの知識に基づいて、これらの疾患を治療するために、IL-9とそのレセプターとの相互作用を調節することができる因子を同定する必要があることである。
【課題を解決するための手段】
【0036】
発明の概要
上記目的を達成するために、本発明は、例えば、以下を提供する。
1.117番目の位置にメチオニンを有するヒトインターロイキン-9をコードする塩基配列を有する単離精製されたDNA分子、またはその断片。
2.項目1記載の単離精製DNA分子およびその縮退配列。
3.DNA分子がゲノム由来である、項目1記載の単離精製DNA分子。
4.IL-9 RNAの発現のために用いられる、項目1記載の単離精製DNA分子。
5.IL-9蛋白質の発現のために用いられる、項目1記載の単離精製DNA分子。
6.117番目の位置にメチオニンを有するヒトインターロイキン-9のアミノ酸配列、その断片、および117番目の位置にメチオニンを有するヒトインターロイキン-9のアミノ酸配列に実質的に相同な配列からなる群より選択される単離精製された蛋白質分子。
7.117番目の位置にメチオニンを有するヒトインターロイキン-9のアミノ酸配列、その断片、および117番目の位置にメチオニンを有するヒトインターロイキン-9のアミノ酸配列に実質的に相同な配列からなる群より選択される化学的に合成された分子。
8.117番目の位置にメチオニンを有するヒトインターロイキン-9をコードする塩基配列を有する組換えDNA分子、またはその断片。
9.117番目の位置にメチオニンを有するヒトインターロイキン-9をコードする塩基配列を有する単離精製されたRNA分子、またはその断片。
10.治療が必要な患者に項目1記載の単離精製DNA分子を有効量投与してインターロイキン-9の活性を抑制制御することによって、喘息関連疾患を軽減させる方法。
11.治療が必要な患者に項目9記載の単離精製RNA分子を有効量投与してインターロイキン-9の活性を抑制制御することによって、喘息関連疾患を軽減させる方法。
12.治療が必要な患者に項目4記載の単離精製DNA分子を有効量投与してインターロイキン-9の活性を抑制制御することによって、喘息関連疾患を軽減させる方法。
13.治療が必要な患者に項目6記載の単離精製蛋白質分子を有効量投与してインターロイキン-9の活性を抑制制御することによって、喘息関連疾患を軽減させる方法。
14.治療が必要な患者に項目7記載の化学的に合成したDNA分子を有効量投与してインターロイキン-9の活性を抑制制御することによって、喘息関連疾患を軽減させる方法。
15.治療が必要な患者に項目8記載の組換えDNA分子を有効量投与してインターロイキン-9の活性を抑制制御することによって、喘息関連疾患を軽減させる方法。
16.117番目の位置にメチオニンを有するヒトインターロイキン-9の断片が、約3個から約25個のアミノ酸を有する、項目6記載の単離精製蛋白質分子。
17.117番目の位置にメチオニンを有するヒトインターロイキン-9の断片が、約3個から約25個のアミノ酸を有する、項目7記載の化学的に合成された蛋白質分子。
18.治療が必要な患者に、可溶性インターロイキン-9レセプターまたはその活性断片を有効量投与して、インターロイキン-9の活性を抑制制御することによって、喘息関連疾患を軽減させる方法。
19.治療が必要な患者に、ヒトインターロイキン-9に特異的な抗体、またはインターロイキン-9の活性を抑制制御するのに充分な量投与することができるインターロイキン-9レセプターに特異的な杭体を有効量投与して、インターロイキン-9の活性を抑制制御することによって、喘息関連疾患を軽減させる方法。
20.インターロイキン-9の活性を抑制制御するのに充分な量投与することができる、ヒトインターロイキン-9に特異的な抗体。
21.インターロイキン-9の活性を抑制制御するのに充分な量投与することができる、インターロイキン-9レセプターに特異的な抗体。
22.ヒトインターロイキン-9のアンチセンス配列またはその活性断片を含むアンチセンスDNA。
23.本来の配列のIL-9の117番目の位置のトレオニン残基が別のアミノ酸で置換されている、ヒトインターロイキン-9の変異体。
24.トレオニン残基が、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、メチオニン、フェニルアラニン、およびトリプトファンからなる群より選択される疎水性アミノ酸で置換されている、項目23記載のヒトインターロイキン-9の変異体。
25.トレオニン残基がメチオニンで置換されている、項目23記載のヒトインターロイキン-9の変異体。
26.少なくとも1つのエキソンを有する、ヒトインターロイキン-9をコードしている塩基配列を有するDNAおよびRNAからなる群より選択される単離精製分子。
27.約1個から5個のエキソンを有する、項目26記載の単離精製分子。
28.約1個から約4個のエキソンを有する、項目26記載の単離精製分子。
29.約1個から約3個のエキソンを有する、項目26記載の単離精製分子。
30.約1個から約2個のエキソンを有する、項目26記載の単離精製分子。
31.エキソン2が欠失している、項目26記載の単離精製分子。
32.エキソン3が欠失している、項目26記載の単離精製分子。
33.エキソン2およびエキソン3が欠失している、項目26記載の単離精製分子。
34.治療が必要な患者に項目26記載の単離精製分子を有効量投与してインターロイキン-9の活性を抑制制御することによって、喘息関連疾患を軽減させる方法。
35.少なくとも1つのエキソンを含む、ヒトインターロイキン-9をコードしているアミノ酸配列を有する単離精製された蛋白質分子。
36.約1個から5個のエキソンを有する、項目35記載の単離精製蛋白質分子。
37.約1個から約4個のエキソンを有する、項目35記載の単離精製蛋白質分子。
38.約1個から約3個のエキソンを有する、項目35記載の単離精製蛋白質分子。
39.約1個から約2個のエキソンを有する、項目35記載の単離精製蛋白質分子。
40.エキソン2を欠失している、項目35記載の単離精製蛋白質分子。
41.エキソン3を欠失している、項目35記載の単離精製蛋白質分子。
42.エキソン2およびエキソン3を欠失している、項目35記載の単離精製蛋白質分子。
43.治療が必要な患者に項目35記載の単離精製蛋白質分子を有効量投与して、インターロイキン-9の活性を抑制制御することによって、喘息関連疾患を軽減させる方法。
44.接着した1個以上の化学的な成分をさらに含む、項目7記載の化学合成分子。
45.項目1記載のDNA分子にハイブリダイズできる、検出可能な標識をした核酸分子。
46.インターロイキン-9分子をコードしているヒトDNAを増幅するためのオリゴヌクレオチドプライマー。
47.コードされているヒトDNAがゲノム由来である、項目46記載のオリゴヌクレオチドプライマー。
48.IL-9の117番目の位置でメチオニンをコードしている項目46記載のオリゴヌクレオチドプライマーまたはその断片。
49.IL-9の117番目の位置でメチオニンを含むIL-9分子を増幅するのに適した配列を有するオリゴヌクレオチドプライマーまたはその断片。
50.細胞において配列を発現させる調節要素の制御下に、項目1記載のDNA分子の配列を有する発現ベクター。
51.項目1記載のDNA分子で形質転換またはトランスフェクションされた単細胞宿主。
52.バクテリア、酵母、哺乳動物細胞、植物細胞、昆虫細胞、および組織培養中のヒト細胞からなる群より選択される、項目51記載の単細胞宿主。
53.大腸菌(E.coli)、シュードモナス菌、バチルス菌、放線菌、酵母、CHO、R1.1、B-W、LM、COS 1、COS 7、BSC1、BSC40、BMT10、およびSf9細胞からなる群より選択される、項目51記載の単細胞宿主。
54.単細胞宿主が、サッカロマイセス属、ピヒア(Pichia)属、カンジダ(Candida)属、ハンセヌラ(Hansenula)属、およびトルロピス(Torulopis)属からなる群より選択される酵母である、項目51記載の単細胞宿主。
55.インターロイキン-9ポリペプチドの発現が促進されるよう、インターロイキン-9ポリペプチドをコードしている配列の機能的な近傍に発現調節配列を挿入する段階を含む相同的組換え作用によってインビトロで改変された、インターロイキン-9ポリペプチドをコードするDNA配列を含む哺乳動物細胞。
56.インターロイキン-9ポリペプチドをコードしている配列の機能的な近傍に存在する発現調節配列が、インターロイキン-9の発現調節配列であり、かつ相同的組換え作用によって、インターロイキン-9ポリペプチドの変異発現調節配列が置換される、項目55記載の哺乳動物細胞。
57.インターロイキン-9ポリペプチドをコードしている配列の機能的な近傍に存在する発現調節配列が、インターロイキン-9の発現調節配列ではない、項目55記載の哺乳動物細胞。
58.(a)インターロイキン-9ポリペプチドが発現される条件下で、項目1記載のDNA分子を培養する段階、および(b)発現されたインターロイキン-9ポリペプチドを回収する段階を含む、インターロイキン-9ポリペプチドを調製するための方法。
59.モノクローナル抗体である、項目20または21記載の抗体。
60.検出可能な標識で標識されている、項目20または21記載の抗体。
61.項目59記載のモノクローナル抗体を産生する細胞系。
62.以下の段階を含む、項目1記載のDNA分子を含むインターロイキン-9ポリペプチドに特異的な抗体を調製する方法:(a)項目1記載のDNA分子に相当するインターロイキン-9ポリペプチドを、担体蛋白質に結合させる段階、(b)アジュバントと混合した、段階(a)のインターロイキン-9ポリペプチド断片-担体蛋白質結合体で、宿主動物を免疫する段階、および(c)免疫した宿主動物から抗体を採取する段階。
63.以下の段階を含む、項目1記載のDNA分子を含むインターロイキン-9ポリペプチドを定量する方法:(a)インターロイキン-9ポリペプチドを含むと思われる試料を、抗体およびこれらのインターロイキン-9ポリペプチドを含む反応複合体が形成されるような条件下で、インターロイキン-9ポリペプチドに特異的に結合する抗体と接触させる段階、および(b)試料の中にインターロイキン-9ポリペプチドが存在することを示す、抗体およびインターロイキン-9ポリペプチドを含む反応複合体の形成を、試料中から検出する段階。
64.抗体が固相支持体に結合している、項目63記載の方法。
65.(a)項目63記載の方法に従い、生物学的試料中の反応複合体の形成を検出する段階、および(b)その量が、生物学的試料中のインターロイキン-9ポリペプチドのレベルに対応する、形成された反応複合体の量を評価する段階を含む、117番目の位置にメチオニンを有するインターロイキン-9ポリペプチドまたはその断片の生物学的試料中のレベルを評価するための、インビトロの方法。
66.(a)生物学的試料におけるインターロイキン-9ポリペプチドのレベルを上昇させる段階、および(b)正常なレベルと比較したインターロイキン-9ポリペプチドのレベルの上昇によって、アトピー、喘息、および関連疾患の素因を有することが示されるように、正常な被験者または初期の患者の体内に存在するインターロイキン-9ポリペプチドのレベルを比較する段階を含む、ヒト患者において、インターロイキン-9ポリペプチドのレベルの上昇に関連するアトピー、喘息、または関連疾患に対する罹病性を検出または診断するためのインビトロの方法。
67.評価されるインターロイキン-9ポリペプチドがトレオニン117である、項目66記載のインビトロの方法。
68.(a)生物学的試料中の特異的なインターロイキン-9ポリペプチドの量を評価する段階、および(b)非アトピーレベルと比較した、特異的なインターロイキン-9ポリペプチドのレベルの上昇によって、アトピー、喘息、および関連疾患の素因を有することが示されるように、非アトピー患者または初期の患者の体内に存在するインターロイキン-9ポリペプチドのレベルを比較する段階を含む、ヒト患者において、インターロイキン-9ポリペプチドの117番目の位置にメチオニンがないことと関連するアトピー、喘息、または関連疾患の有無を検出または診断するためのインビトロの方法。
69.評価される特異的なインターロイキン-9ポリペプチドがトレオニン117である、項目68記載のインビトロの方法。
70.117番目の位置にメチオニンを有するヒトインターロイキン-9の配列またはその断片を含むポリペプチドによる治療を受けているヒト患者から、異なる時点で採取した一連の生物学的試料の中の特異的なインターロイキン-9ポリペプチドのレベルを評価することを含む、哺乳動物の被験者におけるアトピー、喘息、および関連疾患の治療を監視するためのインビトロの方法。
71.薬学的に許容される担体中に項目1記載のDNA分子を含む薬学的組成物。
72.薬学的に許容される担体中に項目6記載の蛋白質分子を含む薬学的組成物。
73.薬学的に許容される担体中に項目7記載の化学合成された分子を含む薬学的組成物。
74.薬学的に許容される担体中に項目59記載の抗体を含む薬学的組成物。
75.薬学的に許容される担体中に項目7記載の化学合成分子を含むインターロイキン-9ポリペプチドのアンタゴニストを含む、インターロイキン-9ポリペプチドの機能を低下させるための薬学的組成物。
76.薬学的に許容される担体中に項目6記載の蛋白質分子を含む、インターロイキン-9ポリペプチドのアンタゴニストを含む、インターロイキン-9ポリペプチドの機能を低下させるための薬学的組成物。
77.薬学的に許容される担体中に項目1記載のDNA分子を含むインターロイキン-9ポリペプチドのアンタゴニストを含む、インターロイキン-9ポリペプチドの機能を低下させるための薬学的組成物。
78.アンタゴニストが、インターロイキン-9ポリペプチドに結合する抗体およびインターロイキン-9レセプターに結合する抗体からなる群より選択される、項目75記載の薬学的組成物。
79.アンタゴニストが、インターロイキン-9ポリペプチドに結合する抗体およびインターロイキン-9レセプターに結合する抗体からなる群より選択される、項目76記載の薬学的組成物。
80.アンタゴニストが、インターロイキン-9ポリペプチドに結合する抗体およびインターロイキン-9レセプターに結合する抗体からなる群より選択される、項目77記載の薬学的組成物。
81.治療を必要としている患者に、IL-9またはIL-9レセプターのいずれかの機能を抑制制御する化合物を投与することにより、喘息関連疾患を軽減させる方法。
82.化合物が、チロシンキナーゼ蛋白質のシグナルトランスダクションの阻害因子である、項目81記載の方法。
83.阻害因子が、チロフォスチン(Tyrphostins)を含むキナーゼ阻害因子から選択される、項目82記載の方法。
84.化合物が、図28で説明されているアミノステロールの群より選択される、項目81記載の方法。
85.化合物が、IL-9のIL-9レセプターとの相互作用を阻害する、項目81記載の方法。
86.化合物が、ヒトIL-9の置換もしくは欠失類似体、またはその断片である、項目81記載の方法。
87.化合物が、配列番号:15(KP-23)である、項目86記載の方法。
88.化合物が、配列番号:16(KP-24)である、項目86記載の方法。
89.化合物が、117番目の位置にメチオニン残基を含むヒトIL-9またはその断片である、項目85記載の方法。
90.化合物が、配列番号:13(KP-16)である、項目89記載の方法。
91.化合物が、配列番号:14(KP-20)である、項目89記載の方法。
92.項目27記載の単離精製分子を有する細胞。
93.項目28記載の単離精製分子を有する細胞。
94.項目29記載の単離精製分子を有する細胞。
95.項目30記載の単離精製分子を有する細胞。
96.項目31記載の単離精製分子を有する細胞。
97.項目32記載の単離精製分子を有する細胞。
98.項目33記載の単離精製分子を有する細胞。
99.不死である、項目61記載の細胞系。
100.Ser-Asp-Asn-Ala-Thr-Arg-Pro-Ala-Phe-Ser-Glu-Arg-Leu-Ser-Gln-Met-Thr-Asn(配列番号:13)、Phe-Ser-Arg-Val-Lys-Lys-Ser-Val-Glu-Val-Leu-Lys-Asn-Asn-Lys-Ala-Pro-Tyr(配列番号:14)、およびGlu-Gln-Pro-Ala-Asn-Gln-Thr-Thr-Ala-Gly-Asn-Ala-Leu-Thr-Phe-Leu-Lys-Ser(配列番号:15)という配列を有するペプチドからなる群より選択されるIL-9アンタゴニストを含む組成物。
101.化合物が、ヒトIL-9の44〜89番目のアミノ酸またはその断片に対応する3-D構造と実質的に同様の配置を有する、項目81記載の方法。
102.ヒトIL-9がそのレセプターに結合するのを遮断する抗体を誘導するヒトIL-9のセグメント。
103.Cys-Phe-Ser-Glu-Arg-Leu-Ser-Gln-Met-Thr-Asn-Thr-Thr-Met-Gln-Thr-Arg-Tyr(配列番号:23)、およびThr-Ala-Gly-Asn-Ala-Leu-Thr-Phe-Leu-Lys-Ser-Leu-Leu-Glu-Ile-Phe-Gln-Lys(配列番号:16)からなる群より選択される配列を有する、項目102記載のIL-9セグメント。
104.ヒトIL-9がそのレセプターに結合するのを遮断する抗体を誘導するヒトIL-9レセプターのセグメント。
105.配列Thr-Cys-Leu-Thr-Asn-Asn-Ile(配列番号:22)を有する、項目104記載のヒトIL-9レセプターセグメント。
106.IL-9がそのレセプターに結合するのを遮断する化合物に結合する、ヒトIL-9からのエピトープ。
107.化合物が抗体である、項目106記載のエピトープ。
108.以下の段階を含む、IL-9またはIL-9レセプターのアンタゴニストを同定するための方法:a)気道過反応に罹病性の動物を得る段階、b)気道過反応を誘導する抗原を投与する段階、c)その結果生じた気道過反応の特徴を、IL-9またはIL-9レセプターのアンタゴニストの可能性があるもので前処理して得られた気道過反応の特徴と比較する段階、およびd)これらの薬剤から、前処理によって特徴が消失するものを選択する段階。
109.動物が、ヒトIL-9レセプターを発現する、項目9記載の方法。
【0037】
本出願者らは、喘息およびそれに関連した疾患を含むアトピー性アレルギーの病因におけるIL-9(喘息関連因子1、すなわちAAF1としても知られている)の役割を明らかにする情報で、IL-9の活性を調節できる化合物をもたらした情報を提供することによって、これらの疾患の治療に対する長い間感じられていた必要性を充たしている。本出願者らはまた、気道過反応性における生物学的な多様性を決定する遺伝子に関して、ヒトとマウスとの間で保存されている連関とシンテニー相同性を明らかにした。これらの関係は、遺伝子候補としてのIL-9を特異的に同定する。さらに、本出願者らは、マウスにおける気管支過反応、好酸球増加症と気管支洗浄液中の細胞数の増加、および血清総IgEの増加を含む、多数の抗原誘導応答にとってIL-9が重要であると判定した。これらの発見により、喘息に関連するアレルギー性炎症が類型化される。
【0038】
さらに、本出願者らは、ヒトのIL-9遺伝子のエキソン5の3365番目の位置で、核酸をCからTに変化させると、IL-9の117番目のコドンでトレオニンがメチオニンになると椎定されるアミノ酸置換が生じると判定した。この置換が一人の人の両方の対立遺伝子に起きると、これに付随して、喘息、異常な皮膚検査反応、および血清総IgEの低下を含む、アトピー性アレルギーの証拠が減少する。このように、本出願者らは、一人の人の中で両IL-9遺伝子産物の117番目のコドンがメチオニンになるという特徴を持つ非喘息性で非アトピー性の表現型が存在することを同定した。さらに有意義な推論となるよう、117番目のコドンのトレオニンによって特徴づけられる喘息性のアトピー表現型に対する罹病性の有無について同定した。このように、本発明には、このような配列を有する精製単離したDNA分子と、このDNAによってコードされるペプチドが含まれる。
【0039】
IL-9の生物学的活性は、IL-9レセプターへの結合と、特異的な細胞の中の調節シグナルの伝達によって起こる。このため、IL-9のアゴニストまたはアンタゴニストと、IL-9またはそのレセプターとの相互作用によって、IL-9の機能を阻害または調節することができる。抑制制御、すなわち、IL-9によって制御されている機能の抑制は、さまざまな方法で行われる。IL-9のレセプターへの結合を妨害することができるアゴニストまたはアンタゴニストの投与は、重要なメカニズムの一つであり、そのようなアゴニストおよびアンタゴニストも、本発明の請求の範囲に含まれる。実施例には、さまざまな突然変異を含む、IL-9またはIL-9レセプターのDNA配列にコードされているポリペプチド産物を投与することが含まれる。これらの突然変異は、IL-9またはIL-9レセプターの点突然変異、挿入、欠失、またはスプライシング変異体でよい。
【0040】
本発明のさらなる態様には、「アゴニストおよびアンタゴニスト」の投与によるIL-9の活性を調節することが含まれる。熟練した当業者には、必要な3次元構造的コンホメーションを有する分子と、レセプター結合に必須または重要な残基を含む分子のすべてが、本発明の範囲内にあることが容易に理解されると思われる。特に、成熟蛋白質の43〜60残基目および71〜90残基目は、レセプター結合に重要であると考えられる。本出願者らは、KP-16ペプチド(43〜60残基目)とKP-20ペプチド(71〜90残基目)が、レセプターのアンタゴニストとして作用することを明らかにした。さらに、本来のIL-9分子の中のこれらの残基は、逆平行ヘリックス構造を形成すると椎定されている。この蛋白質の3次元構造は、52番目のセリンおよび/または53番目のグルタミン酸が、85番目のリジンと相互作用し、56番目のセリンが82番目のリジンと相互作用し、また、59番目のトレオニンが78番目のバリンと相互作用することを示している。これらの逆平行ヘリックスおよび関連する機能的な原子団の3次元的な配置が、レセプター結合にとって重要な必須の3次元的な立体的コンホメーションを表すため、これらの関係を刺激する化合物は、本発明の範囲内に含まれる。
【0041】
IL-9レセプター(また、喘息関連因子2、AAF2とも呼ばれる)の生物学的活性は、可溶性IL-9レセプター分子を用いて調節することもできる。このような分子は、IL-9が細胞結合レセプターに結合するのを妨げ、IL-9に対するアンタゴニストとして作用するが、これも本発明の範囲内である。
【0042】
IL-9がそのレセプターに結合するのを遮断するポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体も、本発明の範囲内であり、また喘息および関連疾患を含むアトピー性アレルギーを治療するのに有用な治療薬である。
【0043】
本発明の別の態様は、遺伝子治療において、IL-9またはIL-9レセプターの点突然変異、挿入、欠失、またはスプライシング変異など、さまざまな突然変異を含む単離DNA配列を使用することに関する。
【0044】
また、IL-9およびIL-9レセプターの発現は、合成アンチセンス・オリゴヌクレオチド配列を有効量投与することによって抑制制御される。本発明のオリゴヌクレオチド化合物は、ヒトIL-9およびIL-9レセプターをコードするmRNAに結合し、それによってこれらの分子の発現を阻害する。
【0045】
IL-9とIL-9レセプター両者の構造が、非常に詳細に調査解析され、レセプター結合には、IL-9のアミノ酸残基が重要であることが確認されている。 構造研究と、この特異的な結合対の結合特性に基づき、本発明はさらに、IL-9がIL-9レセプターと相互作用するのを阻害するのに必要な残基が構造的なコンホメーションにより提供されるように作成された小分子を含む。このような阻害は、レセプター活性の調節をもたらすため、これらの分子は、アトピー性アレルギーを治療するのに有用である。
【0046】
本発明の別の態様は、IL-9機能に必要なシグナル経路の下流を制御することを目的とする。IL-9は、IL-9シグナル経路に独特だと考えられる、Stat3のチロシンのリン酸化を誘導し58、阻害因子の標的として有用である。このため、チロフォスチン(tyrophostin)のようなチロシンキナーゼの特異的または非特異的阻害因子は、IL-9の生理学的活性の下流制御において有用であり、これらは本発明の一部をなす。さらなる態様において、アミノステロール化合物も、IL-9シグナル伝達経路のシグナル伝達の阻害に関与するため、アトピー性アレルギーおよび関連疾患を治療する上で有用である。
【0047】
上で検討された産物は、アトピー性アレルギー、喘息、および他の関連疾患を治療するのに効果的なさまざまな治療薬を示したものである。
【0048】
本発明はまた、上述のDNA分子にコードされる短縮したポリペプチドも含む。これらのポリペプチドは、IL-9のIL-9レセプターとの相互作用を調節することができる。
【0049】
したがって、本出願者らは、気管支過反応、喘息、および関連疾患を含むアトピー性アレルギーの発病における、IL-9経路の重要な役割を同定した。より具体的には、本出願者らは、アンタゴニスト、およびIL-9とそのレセプターとの相互作用を制御することができるアンタゴニストを同定する方法を提供した。本出願者らはまた、1)117番目のコドンにメチオニンを有するIL-9に匹敵する活性を有し、IL-9に対するレセプターへIL-9の活性を抑制制御するのに十分なほど結合することができる化合物を投与することによって、また、2)エキソン1、2、3、4または5のいずれか一つ以上に欠失を含む、単離された塩基配列によってコードされている欠失蛋白質産物を投与することによって、IL-9の活性を制御するための方法を提供する。
【0050】
アトピー性アレルギー、気管支過反応、および喘息におけるIL-9経路の重要な役割を同定し、本出願者らは、アトピー性アレルギー、喘息、および関連疾患への罹病性を診断するための方法も提供する。最後に、本出願者らは、IL-9およびそのレセプターの発現または機能のいずれかを抑制制御するのに十分な量投与することができる化合物または因子を同定するために、IL-9とそのレセプターの機能を測定するための方法を提供する。
添付した図面は、本明細書に組み入れられその一部を構成し、本発明のいくつかの態様を例示して、説明とともに、本発明の原理を説明するのに役立つ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0051】
発明の詳細な説明
本出願者らは、喘息および関連疾患を含むアトピー性アレルギーの診断、予防または治療において用いることができるIL-9経路およびこの経路に作用する組成物を明らかにすることによって、当技術分野における必要性を解決した。喘息には、可逆的な気道閉塞を伴う気道の炎症性疾患が含まれる。アトピー性アレルギーは、アトピー、ならびに喘息、気管支過反応(BHR)、鼻炎、蕁麻疹、腸のアレルギー性炎症疾患、およびさまざまな形の湿疹を含む関連疾患を意味する。アトピーは、対照と比較して、血清総IgEが上昇するかまたはアレルゲンに対する異常な皮膚検査反応となって発現する、環境アレルゲンに対する過敏感反応である。BHRは、さまざまな刺激に対する気管支収縮反応が増強した気管支過反応を意味する。
【0052】
喘息関連疾患を示す家族のDNAを解析することによって、本出願者らは、アトピーの発現を測定できるものの一つとして、血清総IgEの生物学的な多様性と相関関係にある、IL-9遺伝子における多型性を確認した。IL-9遺伝子(喘息関連因子1、すなわちAAF1としても知られている)とは、ヒト骨髄系およびリンパ系の制御に関するさまざまな機能を示すサイトカイン、インターロイキン-9の遺伝子座を指す。本発明のIL-9遺伝子は、ヒトの第5染色体のq31〜q33領域中およびマウスでは第13染色体中に認められる。
【0053】
本出願者らは、多型性という語で、「遺伝子座」と名付けられた特異的なDNA配列における、普通の配列からの変化を意味させている。一般的に、当業者がある遺伝子座を含む2個以上の対立遺伝子を同定し、最も少ない共通遺伝子座が1%以上の頻度で存在する場合、その遺伝子座は多型であると定義される。
【0054】
本発明の多型性は、IL-9の117残基目のアミノ酸置換をもたらす。特に、親水性アミノ酸のトレオニンの代わりに、本発明のIL-9は、疎水性アミノ酸メチオニン(Met IL-9)を提示する。遺伝子レベルでは、本発明の多型性は、レナウルドら(Renauldand colleagues)(1990)[GenBank寄託番号M30135、およびM30136]54によって説明されているように、ヒトIL-9遺伝子の3365番目のヌクレオチド、またはケラーら(Kelleher)(1991)によって報告されている[GenBank寄託番号 M86593]、ヒトIL-9遺伝子の配列の4244塩基目に相当するヌクレオチドでの、チミン残基によるシトシン残基の置換である55。
【0055】
IL-9の対立遺伝子の片方または両方のいずれかにおいて、117番目のアミノ酸にトレオニン(Thr)を有する個体(Thr/ThrまたはThr/Met)は一般的に、喘息に対する罹病性またはアトピー性アレルギーの表現型を示すので、これらの遺伝子型は、調査した集団における血清総IgEレベルの平均を高くするという特徴を有する。これに対し、IL-9の対立遺伝子の両方で、117番目のコドンにメチオニン(Met)を有する個体(Met/Met)は、喘息を起こさず、皮膚検査反応における異常が少なく、血清総IgEが低い。したがって、IL-9のMet/Met遺伝子型により、喘息またはアトピー性アレルギーに対する防御が行われていると考えられる。
【0056】
したがって、本発明は、117番目にメチオニンを有するヒト・インターロイキン9(Met IL-9)をコードする塩基配列を含む単離精製されたDNAまたはその断片を提供する。本発明はまた、実質的に相同な配列だけでなく、このDNAの縮退配列も含んでいる。本発明のIL-9の起源はヒトである。またはDNAもしくはその断片は、当技術分野において既知の方法を用いて合成してもよい。また、認められた技術によってDNAを構築し、そのDNAを発現ベクターにクローニングし、化合物を発現するはずの細胞を、このベクターでトランスフェクションするという、遺伝子工学的技術によって、この化合物を産生することもできる。例えば、サムブルックら(Sambrook)「分子クローニング:実験マニュアル」第2版(コールドスプリングハーバー研究所出版[1985])に記載の方法を参照のこと。
【0057】
気道過反応が、事実上すべての喘息患者と、近交マウスのいくつかの系統(DBA/2)において見られる84。気道過反応は、ヒトにおいて、喘息の発症に関する危険因子であり、喘息の動物モデルにおいては、喘息に対する治療の効能を評価するための生理学的な尺度として用いられる。ヒト79およびマウスの遺伝子マッピングの結果(実施例1および2を参照)とともに、これらのデータは、マウスの気道反応において、マウスIL-9遺伝子産物についての重要な役割を示唆している。特に、過反応DBA/2(D2)マウスは、定常レベルのIL-9発現において、C57BL/6(B6)過反応マウス84とは異なっている(実施例14、図26を参照)。さらに、IL-9/IL-9レセプターに対する遮断抗体による前処理は、マウスにおいて、抗原に誘導される気道過反応および炎症を、場合によっては完全に防止することができるが、これは、これらの免疫応答におけるIL-9に関する重要な制御的な役割を示している。このように、分子の異なる変化により、ヒトおよびマウスでは気道過反応における生物学的な多様性が作出されるが、これらの変化は、この経路を制御する同一の遺伝子(IL-9/IL-9R)の中で起きていることをこれらのデータは示している。これらをまとめると、これらの観察から、気道過反応、喘息、およびアトピー性アレルギーにおける、IL-9およびIL-9レセプターの重要な役割が確認されている。さらに、これらのデータから、IL-9が、そのレセプターと相互作用することを遮断する従来からの薬剤が、上で詳述したような、抗原に誘導される反応から保護することが示される。
【0058】
アトピー性アレルギー、気管支過反応、喘息、および関連疾患の発病におけるIL-9の決定的な役割を明らかにするさらなる証拠は、マウスにおいては、数多くの抗原誘導応答に対してIL-9が決定的であるという本出願者らの観察から直接に得られる。抗原によるエアロゾル投与の前に抗体で前処理して、IL-9の機能を抑制制御すると、抗原に誘導される応答から動物を完全に防御することができる。これらの応答には、気管支過反応、好酸球増加症および気管支洗浄液中の細胞数の増加、炎症に関連した肺の組織学的変化、および血清総IgEの増加が含まれる。したがって、アトピー性アレルギーの発病に重要な、喘息に関連したアレルギー性炎症を特徴づけるこのような反応を、IL-9の機能を抑制制御することによって治療することは、本発明の範囲内に含まれる。
【0059】
本出願者らはまた、IL-9レセプターに対する「アゴニストおよびアンタゴニスト」を投与することによるIL-9の活性の制御について開示する。熟練した当業者には、必要な3次元構造的コンホメーションを有する分子と、レセプター結合に必須または重要な残基を含む分子のすべてが、本発明の範囲内にあることが容易に理解できると思われる。本出願者らは、KP-16ペプチド(IL-9の43〜60残基目)およびKP-20ペプチド(IL-9の71〜90残基目)(例えば、アプライドバイオシステムズ社モデル431Aペプチド合成機(Applied Biosystems Model 431A Peptid Synthesier)など、標準的なペプチド自動合成技術を用いて産生される)が、IL-9のアンタゴニストとして作用することを明らかにした。特に、本出願者らは、成熟蛋白質の43〜60残基目と71〜90残基目が、レセプター結合に重要らしいことを明らかにした。さらに、これらの残基には、エキソン4のほとんど(アミノ酸44〜88)が含まれ、逆平行ヘリックス構造を形成すると推定される。この蛋白質の3次元構造から、52番目のセリンおよび/または53番目のグルタミン酸が、85番目のリジンと相互作用し、56番目のセリンが82番目のリジンと相互作用し、また、59番目のトレオニンが78番目のバリンと相互作用することが示唆される。これらの逆平行ヘリックスおよび関連する機能的な原子団の3次元的な配置が、レセプター結合にとって重要な必須の3次元的な立体的コンホメーションを表すため、これらの関係を刺激する化合物は、本発明の範囲内である。
【0060】
喘息様表現型に関連するIL-9配列および喘息様表現型の欠如に関連するIL-9配列を明らかにしたことから、抗原に対する肺の炎症反応がIL-9とは無関係であり、したがってIL-9の機能の抑制制御は抗原誘導反応に対する防御であることが示された。さらに、本出願者らは、アトピー性アレルギーおよび関連疾患に対する罹病性を診断する方法、ならびにIL-9とそのレセプターとの関係に基づいてこれらの疾患を治療するための方法も提供する。
【0061】
レセプターは、分子を認識して結合する、可溶性または膜結合型の成分であり、本発明のIL-9レセプター(喘息関連因子2、すなわちAAF2としても知られている)は、IL-9を認識して結合する成分である。IL-9レセプターの機能には、IL-9様分子に結合することと、特異的な細胞の中でその制御シグナルを増幅させることが含まれる57〜60。この機能を阻害すると、IL-9の発現またはIL-9によって調節される機能の抑制制御、すなわち低下がもたらされる。したがって、IL-9とIL-9レセプターとのこの相互作用のおかげで、生物の一定の機能が、調節または制御されている。レセプターの一般的な議論については、グッドマンとギルマンの(Goodman and Gilman's)「治療学の薬学的基礎(The Pharmacologic Basis of Therapeutics)」(第7版、マクミラン出版社、米国ニューヨーク、1985)を参照。
【0062】
一つの診断的な態様には、IL-9のDNA配列における変異を認識することが含まれる。一つの方法は、当業者によって理解されているように、充分なハイブリッド形成を行う条件下で、本発明のIL-9に相補的な配列を有する核酸分子(プローブとしても知られている)を導入することを含む。一つの態様においては、この配列は、Met117 IL-9またはThr117 IL-9に特異的に結合し、別の態様において、Met117 IL-9とThr117 IL-9の両方に結合する。これらの疾患に関連したDNA配列の変異を識別する別の方法は、当技術分野において周知の複数の方法によって、直接DNA配列を解析することである77。別の態様には、これらの疾患に関連する、IL-9遺伝子におけるDNA配列の変異を検出することが含まれる73〜77。これらには、ポリメラーゼ連鎖反応、制限酵素断片長の多型性(RFLP)解析、および一本鎖のコンホメーション解析が含まれる。好ましい態様において、本出願者らは、本明細書において説明されているStyI RFLPを用いて、ThrおよびMet対立遺伝子に関係したIL-9の多型性を、遺伝子レベルで識別するための方法を具体的に提供する。別の態様においては、Nla、Pfim1、PflM1およびNco1 RFLPを用いて、IL-9遺伝子のこれら2つの対立遺伝子を区別する。
【0063】
別の態様は、アトピー性アレルギーおよび関連疾患を治療することを含む。好ましい態様において、本出願者らは、Met IL-9に匹敵する活性と、IL-9の活性を抑制制御するのに充分な程度にIL-9レセプターに結合する能力を有する化合物を投与する方法を提供している。Met IL-9に匹敵する活性を有する化合物は、類似の機能を有するが、必ずしも同一でない化合物である。このように、これは、IL-9レセプターには結合するが、同一の生理学的効果をもたない。実施例には、さまざまな点突然変異および/または欠失を有するIL-9のアミノ酸配列、ならびに、実質的にそれと相同な配列が含まれる。例えば、このような化合物は、当技術分野において既知の技術によって測定したところに従うと、Thr IL-9がIL-9レセプターに結合するのを阻害するかもしれない。本発明はまた、上述のアミノ酸配列の機能的に有効な断片を含む。このような技術の一つにおいて、Thr IL-9は、IL-9レセプターの「リガンド」と考えてもよく、この2つの間の結合は、グッドマンとギルマンの(Goodman and Gilman's)「治療学の薬学的基礎(The Pharmacologic Basis of Therapeutics)」(第7版、マクミラン出版社、米国ニューヨーク、1985)において示されているように、当技術分野において周知のリガンド 結合測定法によって評価することもできる。
【0064】
別の態様において、この化合物は、構造的にIL-9のMet対立遺伝子に似ているかもしれない。とすると、そのような化合物は、IL-9の117番目のコドンでメチオニンを取り込むか、または別の親水的なアミノ酸を取り込むかもしれない。したがって、本発明の範囲に含まれるのは、117番目の位置で、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、およびメチオニンからなる群より選択されたアミノ酸による、Thrの置換を含むIL-9変異体である。または本発明の化合物は、Met IL-9に類似する構造的な組成物を有するIL-9の断片として存在しているかもしれない。本発明の別の態様において、この化合物はMet IL-9に匹敵する機能を保持しているかもしれないが、構造的には、Met IL-9に似ていないかもしれない。例えば、この化合物の組成には、アミノ酸以外の分子が含まれるかもしれない。この例は、単なる例示にすぎず、通常の技術を有する当業者は、効果的なアンタゴニストをもたらす、別の置換および/または欠失によるIL-9の類似体も、本発明の範囲に含まれることを容易に理解できよう。既に検討したように、必要な3次元構造的コンホメーションを有する分子と、レセプター結合に必須または重要な残基を含む分子のすべてが、本発明の範囲内に含まれる。
【0065】
特異的な測定法は、IL-9の既知の制御、部分的には、Tリンパ球、IgE合成、および肥満細胞からの放出に基づくことができる54〜60。別の測定法には、ヒトIL-9が、MO7e細胞において、複数の蛋白質の迅速で一過性的なチロシンリン酸化を特異的に誘導できることが含まれる57。この反応は、IL-9レセプターの発現および活性化に依存しているため、利用する価値があるかもしれない化合物の特徴を調べるための簡単な方法または測定法になる。転写因子Stat3のチロシンリン酸化は、IL-9の作用に特異的に関連していると考えられ58、この反応は、本発明の範囲内の化合物の特徴を調べるための簡単な方法または測定法になる。さらに、IL-9およびIL-9様分子の機能の特徴を調べるための別の方法には、細胞増殖測定法を用いてヒトIL-9の機能を測定するために用いられる、ATCCから入手可能な周知のマウスのTS1クローンおよびD10クローンが含まれる59。本発明の一部を構成するMet IL-9は、IL-9レセプターの「弱いアゴニスト」と見なすことができる。このような弱いアゴニストは、本発明のもう一つの好ましい態様である。本発明によれば、アゴニストという語は、レセプターと相互作用するかまたは結合して、内生する化合物の効果の少なくともいくつかを模倣する化合物を含む。ある細胞の表面上でIL-9レセプターと相互作用または結合するアゴニストは、このサイトカインの作用の特徴である、一連の生化学的および生理学的な変化を開始させる45〜51、54〜61。本発明に係る別の弱いアゴニストを同定するために、本明細書および引用された文献2、45〜51、54〜60で説明されているところにしたがって、IL-9レセプターへの結合またはIL-9様機能について調べることができる。
【0066】
本発明は、また、IL-9とそのレセプターのアンタゴニストを含む。アンタゴニストは、それ自体は薬学的活性をもたないが、アゴニストの作用を阻害することによって効果をもたらす化合物である。本発明のアンタゴニストを同定するために、本明細書および引用された文献2、45〜51、54〜60で説明されているところにしたがって、既知のアゴニストとの競合的結合、またはIL-9様機能の抑制制御を調べることができる。
【0067】
アゴニストまたはアンタゴニストのいずれかの結合には、イオン力、水素結合、疎水性相互作用、ファンデルワールス力、および共有結合を含む、既知のあらゆる相互作用のタイプが含まれる。多くの場合、アゴニストまたはアンタゴニストとレセプターとの相互作用において複数のタイプの結合が重要である。
【0068】
さらなる態様において、これらの化合物は、IL-9の類似体であってもよい。当技術分野においてすべて十分に説明されている方法62によって作出することができる、この遺伝子の単離DNA配列における点突然変異、塩基置換、および/または欠失によって、IL-9の類似体を作出してもよい。本発明はまた、IL-9のスプライシング変異体を含み、その5個のエキソンに1個以上の欠失を有するインターロイキン-9の単離核酸配列を開示している。「スプライシング変異体」という語は、本明細書においては、少なくとも1個のエキソンを含むヒトIL-9をコードしている単離精製されたDNA分子を意味している。当技術分野においては、スプライシング変異体が、自然に発現しているという証拠はない。したがって、本発明は、ヒトIL-9のエキソン1、4および5を有する、単離核酸を提供する。本発明の範囲内にある別の変異体には、エキソン1、2、3、4および5;エキソン1、2、3および4;エキソン1、2、4および5;ならびに、エキソン1、3、4および5を含む配列が含まれる。これらのエキソンは、さまざまな点突然変異を含むものと理解されるべきである。
【0069】
IL-9に由来する拮抗ペプチドの具体的な例としては、エキソン4に由来するKP-16(配列番号:13)およびKP-20(配列番号:14)が含まれる。エキソン4は、44個のアミノ酸をコードしているが、上記のペプチドは、それぞれ16個と20個のアミノ酸を含み、互いに重複していない。これらのペプチドは、個別に測定しても組み合わせて測定しても、かなりの阻害活性を示す。さらに、エキソン5に由来するKP-23(配列番号:15)およびKP-24(配列番号:16)も、同様の活性を示す。IL-9のエキソン1から5のいずれかを1個以上欠失させても、IL-9のスプライシング変異体を形成させることができる。上で示したように、これらのエキソンに由来するペプチドは制御能力を示し、このため、喘息を含むアトピー性アレルギーを治療するのに有用である。
【0070】
多酵素システムにおいては、第一の酵素または制御的な酵素を、多酵素システムの最終産物によって活性化または阻害できることが、当技術分野において知られている。最終産物の濃度を定常状態の濃度よりも上昇させると、最終産物は、一連の流れの中の制御的な酵素の特異的な活性化因子または阻害因子として作用する。また、このようなフィードバック機構が、IL-9のシステムにも関連するため、本発明のさまざまなポリペプチドは、IL-9レセプターの活性に対し、またおそらく、喘息の発病に関与するその他のサイトカインおよびそれらのレセプターの発現または機能に対して、このような活性化または阻害調節を行うことができることが観察されている。
【0071】
本発明にはまた、当業者には慣例的な知識を用いて行うことができるアゴニストまたはアンタゴニストの改変が含まれる。例えば、レセプターに対する化合物の親和性は、一般的に、この化合物の化学構造に密接に関連している。したがって、構造-活性関係を用いて、本発明のアゴニストとアンタゴニストの改変を行うことができる。例えば、結晶学/X線回折とNMRの技術を用いて、本発明の改変を行うことができる。
【0072】
例えば、分子画像を用いて、欠失突然変異体の構造モデルを構築するための鋳型として用いることができるヒトIL-9の3次元構造を作出することができる。そして、これらのモデルを用いて、IL-9に匹敵するが生物学的活性はそれよりも低いIL-9レセプターに対する親和性を有する、IL-9分子の突然変異体を同定し構築することができる。より低い生物学的活性とは、IL-9よりも2倍から100,000倍低いことを意味し、好ましくは、IL-9よりも100倍から1,000倍低い。
【0073】
さらに別の態様において、これらの化合物は、レセプターの構造に対する動態学的プローブとして用いることも、IL-9依存的な細胞系によりレセプターアンタゴニストを開発するために用いることもできる。
【0074】
さらに、本発明は、IL-9またはIL-9レセプターの合成を阻害するか、またはそれらの生物学的安定性を低下させる化合物も提供する。生物学的安定性とは、分子の合成とその分解との間の時間の測定値のことである。例えば、蛋白質、ペプチド、またはペプチド模倣薬89の安定性は、D型アミノ酸を用いて引き延ばすことができ、または酵素による分解に対してより感受性になるように配列を変更することによって短縮することができる。
【0075】
別の態様において、本発明のアゴニストとアンタゴニストは、IL-9とIL-9レセプターに対する抗体である。IL-9およびそのレセプターに対する抗体は、当技術分野において周知の標準的な技術を用いて作製されるモノクローナル抗体でも、ポリクローナル抗体でもよい(ハーローとレーンの(Harlow & Lane's)「抗体−実験マニュアル(Antibodies-A Laboratory Manual)」(コールドスプリングハーバー研究所、1988)を参照)。これらを用いて、IL-9がレセプターに結合するのを阻害することができる。一つの態様において、この抗体は、IL-9と相互作用する。別の態様においては、この抗体は、IL-9レセプターと相互作用する。これらの抗体を誘導するために用いられるIL-9は、上で検討したIL-9の変異体のいずれでもよい。
【0076】
抗体は、当技術分野において標準的な技術を用いて、IL-9またはIL-9レセプターのペプチド配列からも作製される(免疫学のプロトコール、第9章、ワイリー社(Wiley)を参照のこと)。遮断抗血清を作製するために用いることができる、マウスIL-9レセプターからのペプチド配列は、以下のものが同定されている:GGQKAGAFTC(1〜10残基目)(配列番号:19)、LSNSIYRIDCHWSAPELGQESR(11〜32残基目)(配列番号:20)、およびCESYEDKTEGEYYKSHWSEWS(ペプチドを担体蛋白質に結合させるため、N末端にCys残基を付加した184〜203残基目)(配列番号:21)。さらに、ヒトIL-9レセプターに対する遮断抗体に結合するエピトープは、成熟ヒトIL-9レセプターの8〜14残基と同定されている。(TCLTNNI)(配列番号:22)およびヒトIL-9に対する遮断抗体に結合する2つのエピトープも、50〜67残基(CFSERLSQMTNTTMQTRY)(配列番号:23)および99〜116残基(TAGNALTFLKSLLEIFQK)(配列番号:16)であると同定されている。マウスの配列において遮断抗体を産生するペプチドに相当する、ヒトのペプチドおよびヒトのエピトープが、治療用抗体を作製するのに有用である可能性が最も高い。
【0077】
さらに別の態様において、本発明の化合物は、アトピー性アレルギーおよび喘息の治療に有効となるよう、IL-9経路の機能または制御を変化させる蛋白質を含む、化学的な成分と結合させてもよい61。これらの蛋白質には、アトピー性アレルギーおよび喘息の治療にさらに有益となりうるIL-4、IL-5、IL-3、IL-2、IL-13、およびIL-10を含む別のサイトカインおよび増殖因子の組合せ62が含まれる。さらに、本発明のIL-9は、リン酸化によって共役させてもよく、ビオチニル酸、チオ酸、アセチル酸、ヨウ素酸、および図27に示したクロスリンキング試薬(ピアス社(Pierce))のいずれと共役してもよい。
【0078】
さらなる態様において、本発明には、IL-9に結合する可溶性IL-9レセプター分子を投与することによって、IL-9の発現または機能を抑制制御することが含まれる。レナウルドら(Renauld)59は、IL-9レセプターに可溶性形態が存在することを明らかにした。この分子は、細胞に結合したレセプターへのIL-9の結合を阻害し、IL-9のアンタゴニストとして作用させるために用いることができる。可溶性レセプターは、サイトカインまたは別のリガンドに結合して、それらの機能を調節するために用いられてきた87。可溶性レセプターは、溶液中または膜の外側に生じる、膜結合レセプターの形態である。可溶性レセプターは、一般的には膜と結合しているこの分子のセグメントが存在しないために、生じるのかもしれない。このセグメントは、当技術分野においては、一般的に、この遺伝子の膜通過ドメインまたはこの蛋白質の膜結合セグメントと呼ばれている。したがって、本発明の一つの態様において、可溶性レセプターは、膜結合レセプターの断片または類似体を意味する。本発明の別の態様において、レセプターが膜の中に入り込めなくなるか、またはレセプターは膜に入り込めるがその中に留まることができなくなるよう、膜と結合するセグメントの構造を改変する(例えば、DNA配列の多型性または遺伝子の突然変異)。このように、可溶性レセプターは、対応する膜結合型とは対照的に、膜との結合に重要な、この遺伝子またはレセプター蛋白質の1個以上のセグメントに違いがある52、53。
【0079】
これらの化合物は、IL-9に結合するよう作用する可溶性IL-9レセプターの既知の形態であってもよい。またはこれらの化合物は、IL-9レセプターの既知の形態に似ているが、断片として存在するものでもよい。本発明の別の態様において、この化合物は、可溶性IL-9レセプターに匹敵する機能を保持しているが、組成においては、可溶性IL-9レセプターに似ていなくてもよい。例えば、この化合物の組成には、アミノ酸以外の分子が含まれていてもよい。このように、これらの化合物は、IL-9に結合して、IL-9がその細胞表面レセプターに作用するのを阻害する。
【0080】
本発明のさらなる態様は、アンチセンスまたは遺伝子治療に関する。アンチセンス、または遺伝子治療として提供される場合、特定の選択された効果をもたらすよう、改変したDNA分子を作製することができることが、当技術分野において、今では分かっている。IL-9レセプターをコードする本来のDNAセグメントは、他の哺乳動物すべてのDNA鎖と同じように、センス鎖とアンチセンス鎖が水素結合によって一緒になった2本鎖を有する。レセプターをコードするmRNAは、チミジンがウリジンに置き換わっていると予想されるが、センス鎖と同じ塩基配列を持っている。したがって、レセプターの配列に関する知識に基づいて、合成オリゴヌクレオチドを合成することができる。これらのオリゴヌクレオチドは、このレセプターをコードするDNAおよびRNAに結合することができる。本発明の活性断片は、mRNAおよびDNAのコード鎖に相補的であり、通常、少なくとも15ヌクレオチド、より一般的には20ヌクレオチド、好ましくは30ヌクレオチド、より好ましくは50ヌクレオチド以上である。センス鎖とアンチセンス鎖との間の結合強度は、総水素結合に依存する。したがって、熟練した当業者は、mRNAの総塩基数に基づいて、オリゴヌクレオチド配列の最適な長さを容易に計算することができると思われる。
【0081】
この配列は、mRNAの配列いずれかの部分に対して相補的である。すなわち、5’末端もしくはキャッピング部位の近傍、またはキャッピング部位の下流、キャッピング部位と開始コドンとの間であるかもしれないし、非コード領域またはコード領域の全部または一部だけをカバーしているかもしれない。アンチセンス配列が結合する特定の部位は、所望の阻害の程度、配列の独自性、アンチセンス配列の安定性などによってさまざまである。
【0082】
本発明の実施において、IL-9レセプターの発現は、上記の合成アンチセンスオリゴヌクレオチド配列を有効量投与することによって抑制制御される。本発明のオリゴヌクレオチド化合物は、ヒトIL-9またはIL-9レセプターをコードするmRNAに結合して、これらの蛋白質の発現(翻訳)を阻害する。グラスら(Gruss et al.)の「インターロイキン9は、初期および培養ホジキン細胞およびリード-スタンバーグ細胞によって発現されている(Interleukin 9 is expressed by primary and cultural Hodgkin and Reed-Sternberg cells.)」、Cancer Res.52:1026-31(1992年2月15日)を参照のこと。
【0083】
IL-9の点突然変異、挿入、欠失、またはスプライシング突然変異など、さまざまな突然変異を有する単離DNA配列も同様に、遺伝子治療において有用である。
【0084】
IL-9レセプターの直接的な制御に加えて、本発明は、シグナル伝達の阻害を含む下流制御の方法も含む。特に、本発明のさらなる態様は、チロシンのリン酸化阻害に向けられている。当技術分野において、高度な発エルゴンリン酸基転移反応は、キナーゼとして知られる多様な酵素によって触媒されることが分かっている。言い換えると、キナーゼは、ATPと代謝物との間でリン酸基を転移させる。IL-9は、多種の蛋白質のチロシンのリン酸化を誘導する。すなわち、JAK1チロシンキナーゼおよびJAK3チロシンキナーゼの活性化に加えて、IL-9は、Stat3のチロシンのリン酸化も誘導する58ことが、当技術分野において知られている。Stat3のリン酸化は、IL-9シグナル伝達経路に独特なものであるため、阻害因子にとって完全な標的となる58。本発明は、チロシンキナーゼ蛋白質の特異的な阻害因子であるチロフォスチンを、その範囲内に含む。このように、チロフォスチン(例えば、カルバイオケム社(Calbiochem)から入手可能)およびこれらのキナーゼのその他の同様の阻害因子は、シグナル伝達を調節する上で有用であり、アトピー性アレルギーおよび喘息を治療する上でも有用である。
【0085】
本発明のさらに別の局面において、驚くべきことに、アミノステロール化合物も、IL-9の刺激によるシグナル伝達の阻害において有用であることが分かった。本発明において有用なアミノステロール化合物が、米国特許出願第08/290,826号と、その関連出願第08/416,883号および第08/478,763号で説明されており、また、第08/483,059号と、その関連出願第08/483,057号、第08/479,455号、第08/479,457号、第08/475,572号、第08/476,855号、第08/474,799号、および第08/487,443号でも説明されており、これらは、参照として本明細書に組み入れられる。
【0086】
さらに、本発明には、薬学的に許容される担体と共に、本発明の化合物を含む薬学的組成物が含まれる。薬学的に許容される担体は、水および油などの滅菌した液体で、ピーナッツ油、大豆油、ミネラル油、ゴマ油などの、石油性、動物性、植物性、または合成した油が含まれる。薬学的組成物が静脈に投与される場合には、水が、好ましい担体である。食塩水および含水デキストロースとグリセロールの水溶液も、特に、注射可能な水溶液の液状担体として用いることができる。適当な薬学的担体は、マーチン、E.W.(Martin,E.w.)の「レミントンの製薬科学(Remington's Pharmaceuticals Sciences)」で説明されており、これは特に、参照として本明細書に組み入れられる。
【0087】
本発明に係る治療方法に用いられる化合物は、治療されるべき条件、部位特異的治療の必要性、投与すべき薬物の量などに応じて、全身的または局所的に投与することができる。
【0088】
局所的な投与法を用いることができる。溶液、懸濁液、ゲル、軟膏、または塗剤などのあらゆる一般的な局所用の組成物を用いることができる。例えば、「レミントンの製薬科学」第17版、ペンシルバニア州イーストン、マック出版社(Mack Publishing Company)で例示されているように、局所的処方剤の調製が、薬学的処方剤の技術分野において充分に説明されている。局所的な施用のためには、粉末またはスプレー、特にエアロゾルの形状で投与することもできる。全身投与に合わせた薬学的組成物として、活性成分を投与してもよい。知られているように、薬物を全身的に投与すべき場合には、粉末、丸薬、錠剤などにして調製したり、経口投与用にシロップまたはエリキシルとして調製してもよい。静脈内、腹腔内、または病変部内に投与するためには、注射によって投与可能な溶液または懸濁液として化合物を調製する。ある場合には、これらの化合物を座薬の形状に処方するのが有用であろうし、皮下に蓄積させたり筋肉内注射をするためには、長時間かけて放出されるような処方剤とするのが有用なこともあろう。好ましい態様において、本発明の組成物は、吸入によって投与してもよい。吸入療法のためには、化合物を、用量計付きの吸入器によって投与するのに有用な溶液にするか、または乾燥粉末吸入器に適当な形状にすることができよう。
【0089】
有効用量とは、IL-9の発現、またはIL-9によって調節される機能のいずれかを抑制制御する用量のことである。所定の有効用量は、条件によってさまざまであり、また一定の場合でも、治療すべき症状の重篤さおよび治療に対する患者の感受性によってさまざまである。したがって、絶えず実験によって、その時間と場所における所定の有効用量を決定するのが一番よい。しかし、本発明による喘息関連疾患の治療において、重量で0.001%〜5%の間、好ましくは、約0.01%〜1%を含む処方薬が、通常は、治療学的に有効な用量を構成すると予想される。全身的に投与する場合には、1日につき、体重1kg当たり0.01mg〜100mgの間の用量、しかし好ましくは、約0.1〜10mg/kgの用量が、ほとんどの場合、治療結果に効果をもたらすと考えられる。
【0090】
本出願者らはまた、IL-9の発現、またはIL-9によって調節される機能を抑制制御する化合物をスクリーニングする方法を提供する。当技術分野において標準的な技術を用いて、IL-9によって発現される機能が抑制制御されるか否かを判定することができる57〜60。特定の態様において、本出願者らは、Met IL-9と同等の機能を有する化合物を同定する方法を提供する。したがって、一つの態様において、インビボでのIL-9機能の抑制制御における、化合物の効能を評価するための、当技術分野において周知の技術42を用いて、血清総IgEを測定することができる。別の態様においては、インビボでのIL-9機能の抑制制御における化合物の効能を評価するための、当技術分野において周知の技術42を用いて、気管支過反応、気管支肺胞洗浄液、および好酸球増加症を測定することができる。さらに別の態様において、IL-9の機能は、インビトロで評価することができる。当業者に知られているように、ヒトIL-9は、MO7e細胞において、複数の蛋白質の迅速で一過性的なチロシンのリン酸化を特異的に誘導する。転写因子Stat3のチロシンのリン酸化は、IL-9の作用に特異的に関連していると考えられる。IL-9レセプターの「安定的な発現」に依存する、IL-9およびIL-9様分子の機能の特徴を調べるための別の方法では、周知のマウスのTS1クローンを用いて、細胞増殖測定法によってヒトIL-9の機能を評価する59。
【0091】
また本発明には、IL-9レセプターを発現する細胞系に基づいて、飽和可能で特異的なリガンド結合を見つけるための簡単なスクリーニング法が含まれる46、59。IL-9レセプターは、K562、C8166-45、B細胞、T細胞、肥満細胞、好中球、巨核球(UT-7細胞)53、ヒト巨核芽性白血病細胞系MO7e57、TF159、マクロファージ、胎児胸腺細胞、ヒト腎細胞系29353、およびマウス胚海馬前駆細胞系46、52、53を含む、広く多様な細胞型において発現している。別の態様において、可溶性IL-9レセプターを用いて、リガンド結合およびレセプターのアンタゴニストの可能性があるものを評価することができる。
【0092】
本発明の実施には、従来の用語および当業者の通常の技術の範囲内にある、分子生物学、薬学、免疫学、および生化学の技術が用いられる。例えば、サムブルックら(Sambrook)「分子クローニング:実験マニュアル(Molecular Cloning:A Laboratory Manual)」第2版(コールドスプリングハーバー研究所出版[1985])、またはアウスウーベルら(Ausubel)「分子生物学の最新プロトコール(Current Protocols in Molecular Biology)」ジョン・ワイリー・アンド・サンズ社(John Wiley & Sons,Inc.)[1994]を参照のこと。
【0093】
ところで、本発明者らは、次の基本的な背景情報を提供する。身体の遺伝的物質であるDNAは、46本の染色体の上に配置されているが、染色体の各々は、セントロメアによって結合された2本の腕を有する。各染色体は、pまたはqと名付けられたセグメントに分けられる。pという記号は、セントロメアから最も近いテロメアまでを測定した染色体の短腕を同定するときに用いられる。染色体の長腕は、qという記号で表される。染色体上の位置は、染色体番号(すなわち、5番染色体)、ならびにpまたはq領域の位置(すなわち、q31-q33)によって示される。さらに、身体は、性染色体、XおよびYを持っている。減数分裂の過程で、XおよびY染色体は、偽常染色体領域として知られている領域でDNA配列情報を交換する。
【0094】
DNA、すなわちデオキシリボ核酸は、4つの異なる塩基性化合物、アデニン[A]、チミン[T]、シトシン[C]、およびグアニン[G]を含む、2本の相補的なヌクレオチド鎖から成る。一方の鎖のAは、もう一方の鎖のTと結合し、一方の鎖のCは、もう一方の鎖のGと結合して、相補的な「塩基対」を形成し、各対は、それぞれの鎖に一つずつ塩基を有する。
【0095】
3個のヌクレオチド(「コドン」)が連続したものをグループにすると、1個のアミノ酸をコードしている。したがって、例えば、3個のヌクレオチドCAGは、アミノ酸のグルタミンをコードしている。天然に存在する20個のアミノ酸と、それらの一文字コードは、以下の通りである。
【0096】
アラニン Ala A
アルギニン Arg R
アスパラギン Asn N
アスパラギン酸 Asp D
アスパラギン、
またはアスパラギン酸 Asx B
システイン Cys C
グルタミン Gln Q
グルタミン酸 Glu E
グルタミン、
またはグルタミン酸 Glx Z
グリシン Gly G
ヒスチジン His H
イソロイシン Ile I
ロイシン Leu L
リジン Lys K
メチオニン Met M
フェニルアラニン Phe F
プロリン Pro P
セリン Ser S
トレオニン Thr T
トリプトファン Trp W
チロシン Tyr Y
バリン Val V
アミノ酸は、蛋白質を構成する。アミノ酸は、親水性、すなわち水に対して親和性を示すものもあり、または疎水性、すなわち水を忌避するものもある。例えば、G、A、V、L、I、P、F、Y、W、C、およびMと名付けられたアミノ酸は疎水性で、また、S、Q、K、R、H、D、E、NおよびTと名付けられたアミノ酸は親水性である。一般的に、アミノ酸の疎水的または親水的な性質は、ペプチド鎖の折りたたみに影響を与え、結果的に、蛋白質の3次元構造に影響を与える。
DNAは、以下のように蛋白質と関係している。
【0097】
【化1】
ゲノムDNAは、生物の細胞の中に見られるDNA配列のすべてを含む。これは、メッセンジャーRNA[「mRNA」]に「転写」される。相補的DNA[「cDNA」]は、mRNAの逆転写によって作出される、mRNAの相補的なコピーである。ゲノムDNAとは異なり、mRNAもcDNAも、いわゆる「エキソン」という、蛋白質をコードするDNA領域またはポリペプチドをコードするDNA領域のみを有する。ゲノムDNAはまた、蛋白質をコードしていない「イントロン」も含みうる。
【0098】
実際、真核生物の遺伝子は、イントロンによって中断されたエキソンからなるため、それらによってコードされる蛋白質について不連続である。RNAに転写された後、イントロンはスプライシングによって切り出され、成熟メッセンジャーRNA(mRNA)を生成させる。エキソンの間のスプライシング部位は、典型的には、スプライシング作用に対するシグナルとして作用するコンセンサス配列によって決められる。スプライシングは、一次RNA転写産物からのイントロンを除去することと、切り出されたイントロンの両側に残ったRNAの末端を結合または融合することから成り立つ。イントロンの有無、イントロンの組成物、および遺伝子当たりのイントロンの数は、同じ生物種の系統間および同一の基本的な機能遺伝子を有する生物種の間で異なる。ほとんどの場合、イントロンは本質的ではなく融通がきくと想定されるが、それらの分類も絶対的ではない。例えば、一つの遺伝子のあるイントロンは、別の遺伝子のエキソンであったりする。場合によっては、代わりのまたは別のスプライシングパターンによって、同じ一本のDNA鎖から別の蛋白質が生成される。実のところ、イントロンの構造的な特徴と、そのもとにあるスプライシング機構とが、異なる種類のイントロンの分類の基礎を作っている。
【0099】
エキソンに関しては、これらは、例えば、機能的ドメイン、折りたたみ領域、または蛋白質の構造的要素など、不連続なドメインまたはモチーフに相当することがあり、または逆ターン、ループ、グリコシル化シグナル、およびその他のシグナル配列、または構造化されていないポリペプチドリンカー領域などの、短いポリペプチド配列に相当することがある。本組合わせ法のエキソンの基本単位は、天然に存在するエキソン配列に相当する核酸配列、または突然変異(例えば、点突然変異、欠失、融合)を起こした天然のエキソン配列を含むことができる。
【0100】
ここでDNAの操作に戻ると、DNAは、一定の分かっている部位でDNAを切断する「制限酵素」と、DNAを連結させるDNAリガーゼとを用いて、切断し、スプライスし、またそれ以外の操作を行なうことができる。このような技術は、サムブルックら(Sambrook)「分子クローニング:実験マニュアル(Molecular Cloning: A Laboratory Manual)」第2版(コールドスプリングハーバー研究所出版[1985])、またはアウスウーベルら(Ausubel)「分子生物学の最新プロトコール(Current Protocols in Molecular Bioklogy)」ジョン・ワイリー・アンド・サンズ社(John Wiley & Sons,Inc.)[1994]などの教科書に開示されているため、当技術分野において通常の技術を有する者によく知られている。
【0101】
そして、特異的な長さと配列を有するDNAを、プラスミド、コスミド、またはウイルスなどの遺伝的因子で、自らの調節に基づいて複製することのできる「レプリコン」の中に挿入することができる。「組換えベクター」または「発現ベクター」とは、DNAの発現、すなわち、DNAによってコードされている蛋白質の産生が可能なように、DNAセグメントが挿入されているレプリコンのことである。発現ベクターは、実験室で構築してもよいし、別の実験室から入手してもよいし、または商業的な供給業者から購入してもよい。
【0102】
組換えベクター[当技術分野において、さまざまな名前で知られている]は、包括的には、「形質転換」として知られている処理によって、宿主の中に組み込まれうる。形質転換とは、感染、直接的な取り込み、形質導入、F-接合、マイクロインジェクション、またはエレクトロポレーションなど、多数の方法のいずれかによって、外来のDNAセグメントを宿主細胞へ転移させることである。組換え宿主細胞、細胞、および細胞培養物としてさまざまに知られている単細胞の宿主細胞には、バクテリア、酵母、昆虫細胞、植物細胞、哺乳動物細胞、およびヒト細胞が含まれる。特に好ましい態様において、宿主細胞には、大腸菌、シュードモナス菌、バチルス菌、放線菌、酵母、CHO、R1-1、B-W、LH、COS-J、COS-7、BSC1、BSC40、BMT10、およびS69細胞が含まれる。酵母細胞には、特に、サッカロマイセス属、ピヒア属、カンジダ属、ハンセヌラ(Hansenula)属、およびトルロピス(Torulopis)属が含まれる。
【0103】
当業者は、宿主細胞によるDNAセグメントの発現には、適切な調節配列または因子が必要であることを認識している。調節配列は、用いる宿主細胞によって異なるが、例えば、原核生物においては、プロモーター、リボソーム結合部位、および/または転写終結部位が含まれる。真核生物においては、このような調節配列には、プロモーターおよび/または転写終結部位が含まれる。当業者にはよく理解されているように、注意深い選抜とこれらの調節配列の置き方によっては、ポリペプチドの発現が促進される、すなわち、標準的なレベルを超えて増加することがある。
【0104】
別の態様において、用いられうるプロモーターには、ヒトのサイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、テトラサイクリンで誘導できるプロモーター、シミアンウイルス(SV40)プロモーター、モロニーマウス白血病の長い末端反復配列(LTR)プロモーター、グルココルチコイドで誘導できるマウス乳腺癌ウイルス(MMTV)プロモーター、ヘルペスチミジンキナーゼ・プロモーター、マウスおよびヒトのβ-アクチン・プロモーター、HTLV1およびHIV IL-9の5'側隣接領域、ヒトおよびマウスのIL-9レセプターの5'側隣接領域、バクテリアのtacプロモーター、ならびにショウジョウバエのヒートショック骨格接着領域(SAR)エンハンサー因子が含まれる。
【0105】
DNAは、ペプチド、オリゴペプチド、および蛋白質など、どのような長さのポリペプチドとしても発現させられる。ポリペプチドには、グリコシル化、アセチル化、リン酸化などの、翻訳後修飾も含まれる。
【0106】
本発明にとって有益なもう一つの分子生物学的技術は、「連鎖解析」である。連鎖解析は、特性または疾患と相関関係にある染色体または染色体領域を同定するために用いられる解析的な方法である44。染色体は、その上に遺伝子が組織化されている、遺伝の基本的な単位である。遺伝子の他に、当業者は、染色体上に「DNAマーカー」を同定している。DNAマーカーとは、その同一性および配列を容易に決定できる、既知のDNA配列である。連鎖解析の方法論は、病気遺伝子、例えば、喘息に対する罹病性に関連した遺伝子を特定の染色体にマッピングするのに応用されてきた42、44。
【0107】
本発明の別の態様は、開示された本発明の明細および実施を考慮することにより、当業者には明らかになると思われる。本発明の真の範囲は、請求の範囲によって示されており、本明細書および実施例は、例示にすぎないと考えられるよう意図されている。
【0108】
方法
以下の実施例に記述した実験の実施に当たって、本出願者らは以下の方法を用いた:
患者集団
喘息の家族を2つの源から募集した27、42、79〜83、99。それぞれの場合において、ヒトIL-9遺伝子の3365位での多型性に関して患者の遺伝子型を分類した[GenBank寄託番号 M30136]。
【0109】
米国東海岸の74人から成る第3の集団を、喘息およびアトピーに関して無作為に確認した。コドン117におけるメチオニン置換の発生率を、一般集団におけるこの変種の発生率の不偏推計値として用いた。
【0110】
ペンシルバニア州フィラデルフィアの49人から成る第4の集団を、喘息およびアトピーに関して無作為に確認した。血清中総IgEを、酵素結合イムノソルベント試験[ELISA、ゲンザイム、ケンブリッジ、マサチューセッツ州]によって解析した。各個人の末梢血の白血球からDNAを抽出した。抽出したゲノムDNAについて、遺伝子マーカー(遺伝子タイピング)および候補遺伝子の分析を実施した。再度、コドン117におけるメチオニン置換の発生率を、一般集団におけるこの変種の発生率の不偏推計値として用いた。
【0111】
オリゴヌクレオチドプライマー。
【0112】
プライマーは全て、OLIGO 4.0を用いて設計した。IL-9遺伝子の特徴付けは、報告された配列の5個の各エキソン周囲のプライマーを用いて実施した。各エキソン周囲のプライマー 配列は:エキソン1[上流][5' GCT CCA GTC CGC TGT CAA 3']および[下流][5' CTC CCC CTG CAG CCT ACC 3'][産物のサイズ150 bp];エキソン2[上流][5' CGG GGC TGA CTA AAG GTT CT 3']および[下流][5' GTT CTT AAA GAG CAT TCA CT 3'][産物のサイズ99 bp];エキソン3[上流][5' ATT TTC ACA TCT GGA ATC TTC ACT 3']および[下流][5' AAT CCA AGG TCA ACA TTA TG 3'][産物のサイズ113 bp];エキソン4[上流][5' TTT CTT TGA ATA AAT CCT TAC 3']および[下流][5' GAA ATC ACC AAC AGG AAC ATA 3'][産物のサイズ206 bp];ならびにエキソン5[上流][5' ATC AAC TTT CAT CCC CAC AGT 3']および[下流][5' GGA TAA ATA ATA TTT CAT CTT CAT 3']であった。各エキソンはまず、一本鎖構造多型性解析[SSCP]を用いて調べた72、73。エキソン5のプライマーは、ポリメラーゼ連鎖反応[PCR]増幅後に160 bpの産物を産生し、これはまた、直接固相配列分析によっても調べた72、73。上流のプライマーは5'ビオチン標識と共に合成し、増幅した後、ストレプトアビジン結合常磁性ビーズ[ダイナル]によってPCR産物を捕獲し、他所で記述されている77サンガーシークエンシングによって特徴付けを行った。配列の多型性は、繰り返し分析によって人為的誤差と識別した。
【0113】
SSCP分析。
【0114】
電気野に暴露された一本鎖DNAの移動の変化に基づく多型性の検出法であるSSCP72は、シュウェンゲルら(Schwengel、1994)が記述したように、室温で10%グリセロールの存在下および非存在下で、クロスリンクモノマー濃度2.67%で6%ポリアクリルアミドゲル電気泳動を用いて実施した77。PCR 産物4μlを2倍濃度の停止緩衝液[95%ホルムアミド、20 mM EDTA、0.05% BPB、0.05%キシレンシアノール]5μl、および0.5% SDS1μlならびに50μM EDTAと混合し、85〜90℃で8分間変性させ、その後直ちに氷上に置いた。電気泳動は、ゲルを含むグリセロールで約24時間、および非グリセロールゲルでは12時間、12ワットで実施した。次にゲルを乾燥させ、コダックのXAR(登録商標)フィルムに露出した。
【0115】
DNAシークエンシング。
【0116】
PCR産物の直接DNAシークエンシングは、シュウェンゲルら(Schwengel、1994)77が記述したように、エチジウムブロマイドで染色した1%アガロースゲル上に正しいサイズのPCR産物の存在を確認した後、固相法を用いて行った。PCR産物20μlをダイナビーズ(Dynabeads)(登録商標)m-280[ダイナル]40μlと共に15分インキュベートした。ビーズは、製造元の示唆通りに洗浄して希釈した。各試料をその後、10 mMトリス塩酸pH 7.5、1 mM EDTA、2 M NaClを含むB&W緩衝液で洗浄し、0.1 N NaOHで変性させ、次に0.1 N NaOH、B&W緩衝液、および10 mMトリス塩酸pH 8ならびに1 mM EDTA[TE]で洗浄した。ビーズ沈殿物をH2O 10μlに再懸濁した。
【0117】
サンガーシークエンシング反応は、シーケナーゼ[アメリカバイオケミカルカンパニー]を用いて行った。35S-dATPまたは33P-dATPはシークエンシング溶液に取り込まれ、その産物を、7M尿素を含む5%または6%のいずれかのポリアクリルアミドゲルで電気泳動した。ケルは固定せずに乾燥させ、X線フィルムに露出した。両親および子供の遺伝子型の比較により、対立遺伝子を決定した。頻度の少ない人為的誤差は、繰り返すことで真の配列多型性と容易に識別された。
【0118】
DNAを末梢白血球から得て抽出した。ゲノムDNAを、増幅のために200 μg/mlの濃度に希釈した27、42。DXYS154を含む単純配列リピート[SSR]は、ゲノムデータベース[GDB;ウェルチ図書館、ジョン・ホプキンス大学、バルチモア、MD]から選択した。sKK-1マーカーの遺伝子タイピングは、90 bpの産物を生じる以下のプライマーsKK-1U[5' CAA ATC TGA AGA GCA AAC TAT 3']およびsKK-1L[5' TTA AAA AAT TCA TTT CAG TAT TCT 3']を用いて実施した。各SSR産物は、PCR72によって増幅し、先に記述した方法に従ってサイズを測定した27、42。試料の取り扱いはウェーバーら(Weber)が記述した方法を少し改変して実施した71、27、42、。各オートグラフの2回の独立した計測から遺伝子型を決定した。家族を遺伝子タイピングした個々の人には臨床データを知らせなかった。
【0119】
RFLP分析。
【0120】
3365位でのCからTへの多型性の結果として、IL-9エキソン5のPCR産物の52位でStyI制限酵素断片長多形[RFLP]を産生した。このDNA配列変種の存在に関して試験するために、PCR増幅の前にエキソン5の下流のプライマーを末端標識した。PCR産物を次にStyIで消化し、長さが108bp[標識]および52bp[非標識]の2つの断片を得た。このRFLPをSSCPと共に用いて、家族および個人におけるこの多型性の存在を確認した。
【0121】
連鎖分析およびデータ処理。
【0122】
連鎖分析は、BHR、アトピーおよび喘息のような複雑な形質の遺伝的基礎の調査のための確立されたアプローチである罹患兄弟ペア法(affected sib-pair methods)[SIBPAL,S.A.G.E.]78を用いて実施した。非罹患兄弟ペアの比率はなおも遺伝子担体である可能性があるが、形質を発現していないため、罹患兄弟ペアを通常、最初に試験する。遺伝[優勢、劣性等]のモデルが正確に特定されなければならないLODスコア法とは対照的に、兄弟ペア法による分析はこの点において明確な仮定をしない。このように、兄弟ペア分析では、両親の臨床情報は連鎖の試験に用いない。これらの方法では、罹患した2人の子供が、同じ両親のマーカー対立遺伝子のコピーをどれほどの頻度で共有するかという点を適切に観察する44。両親のマーカー対立遺伝子の同じコピーが異なる子孫に認められれば、それらは「遺伝により同じもの」を受け継いでいると言われる。偶然による予測値[50%]より起こる頻度が有意に高いマーカー対立形質に関して、罹患兄弟ペアが遺伝により同一である場合、連鎖が示唆される。同じマーカー対立遺伝子が疾患遺伝子と共に異なる子孫に伝搬されれば、このことは、マーカー座が連鎖している、または減数分裂の際に共分離されるほど、同じ染色体上で疾患遺伝子に極めて近い位置に存在するに違いないことを意味する。次に、マーカーの染色体での位置を知ることによって、形質をマッピングする。
【0123】
ヒトにおける連鎖はまた、確率比の方法によって確立してもよい。この方法は、例えば1つの仮説の下で、観察された家族のデータが2つのDNAマーカー間に連鎖を生じる確率と、別の仮説の下で、典型的には非連鎖を生じる確率との比較を含む。これらの確率の比を、他の仮説に対する一つの仮説のオッズ比と呼ぶ。
慣例により、哺乳類の遺伝学者はオッズ比の対数またはLODスコアを好む。一般に連鎖は、連鎖対非連鎖のオッズが圧倒的に大きい場合、または1,000対1[LOD=3]に達した場合に、証明されたと見なされる。オッズ比がこの仮説に対して100:1[LOD=-2]に低下すると連鎖は拒絶される。最大確率推計値は、確率比が最大の場合の再結合分画である。このように、多系統のLODsは、スコアが3[1,000対1のオッズを表す]になるまで、または-2[100:1のオッズを示す]に低下するまで加算される。
【0124】
臨床および遺伝子型データは全て、マッキントッシュ(MacIntosh)(登録商標)またはサンマイクロシステムズ(Sun Microsystems)(登録商標)コンピューターでをエクセル(EXCELL)(登録商標)用いて処理した。統計分析はJMP[SASインスチチュート、インク、カリー、NC]を用いて行った。ウィルコキソン/クラスカル-ワリス(Wilcoxon/Kruskal-Wallis)検定[階数和]を用いて、コドン117でのホモ接合体[Met/Met]、ヘテロ接合体[Met/Thr]、またはホモ接合体[Thr/Thr]がその血清中総IgEが異なるか否かを検定した。P値は全て、対立遺伝子の増加的共有のみが予測されるため片側検定を用いた罹患兄弟ペア分析を除き、両側で行った。
【0125】
この背景的情報を提供し、本出願者らは本発明の好ましい面について記述する。
【実施例】
【0126】
実施例1
BHRとマウス第13染色体との連鎖分析
BHRの複雑な遺伝的決定因子を詳細に分析する一助として、本出願者らは、様々な気管支収縮刺激に対するその遺伝的感受性が異なるマウスモデルを開発した。組換え近親交配株[BXD]を用いた近交系動物モデルにより、BHRに対する感受性を制御する遺伝子の数、その影響の程度、およびその正確な染色体上の位置を明らかにするためのヒトで進行中の試験を促進することが可能である。特に、動物モデルにおいて、喘息に関して重要な危険因子に対する感受性を決定する遺伝子の位置を特定することは、ヒトにおけるこの遺伝子の位置クローニングの役に立つ可能性がある。
【0127】
BHRおよびアトピーの素因を有する遺伝子は、本発明の前には確認されていないが、染色体5q31〜q33は、マウス第11、13、および18染色体の一部とシンテニーであることがわかっている。図2は、BHR、アトピー、および喘息に関連する気道炎症において、何らかの役割を果たしている可能性がある多数の位置候補領域を含むシンテニー領域を図示する。特に、BHRとの連鎖に関して有意な証拠を示しているヒト染色体5q31〜q33の領域は、多数の候補遺伝子を含むマウス第11、13、および18染色体の一部と相同である84。
【0128】
特に、IL-9または近傍遺伝子は最近、無作為確認集団を用いた血清中総IgE濃度の対数値とこの遺伝子マーカーとの間の連鎖的不均衡に基づくと、可能性のある候補遺伝子として示唆されている43。
【0129】
4つの候補区間の比較にもかかわらず、連鎖の証拠は唯一の領域で認められ、これをAib1[アトラキュリウム誘発気管支収縮1]と呼んだ。図3にその結果を示す。特に、図3は、低反応性C57BL/6Jおよび高反応性DBA/2J原種系に由来する24 BXD RI系のアトラキュリウム誘発気道反応性に関するLODスコア曲線を示している[直線]。20 BXD系の選択的遺伝子タイピングから得られたLODスコア曲線も同様に示す[点線]。BXD系-2、-6、-18、および-32は、DBA/2の下1標準偏差以上でC57BL/6の平均反応以上の平均反応を示す表現型の中間であるため、2回目の分析では用いなかった。アトラキュリウム20mg/kgの静脈内注射に対する気管支収縮反応は、気道圧時間指数[APTI]と呼ばれる、時間[4分]に対して積分した最大吸気圧の変化によって評価した。アトラキュリウム誘発APTIはRT系当たり2〜8匹の動物において測定した。マーカーデータはマップマネージャーデータ分析プログラムのRWEデータベースから得た。マーカー間の遺伝子距離[cM]を横座標に示す。LODスコアはマップマーカー/QTL連鎖プログラムによって計算した。QTLはこの領域で検出され、アトラキュリウム誘発気道収縮-1[Aib1]と呼ばれた。
【0130】
図3は、この定量的形質座[QTL]がマウス第13染色体の中央部に位置し、この区間でオッズ[LOD]2.42の最大見込み対数値が得られたことを示している。BXDマップの全てのマーカーを分析すると、アトラキュリウム誘発気管支収縮の総変動の44%はAib1で説明された。アトラキュリウムに対する反応が中間であった4つの系統[BXD-2、-6、-18、および-32]を除外した後にQTL分析を行うと、第13染色体のLODは2.85に増加した。第13染色体の連鎖領域における既知の位置候補には:D1ドーパミン受容体[Drd1]、繊維芽細胞増殖因子受容体4[Fgfr4]、リンパ球抗原-28[Ly28]、チオプリンメチルトランスフェラーゼ[Tpmt]およびIL-9が含まれる。
【0131】
本出願者らは、ヒトにおけるこれまでのマッピングデータに基づき、マウスの4つの候補領域との連鎖に関して特に試験しているため、本明細書に示すデータは非常に重要である。ランダー&ボットスタイン(Lander and Botstein)が古い論文で述べているように67、連鎖に関する偽陽性率は、LOD閾値(T)をT=1/2(log10 e)(Z α/n)2(ここで、nは調べた区間の数に等しい)となるように選択すれば得られる。典型的には、連鎖の証拠として3.3という最大LODを必要とする67。しかし、この閾値は、ゲノム全体をを調査しているという仮説に基づいている。これらの同じ著者が、0.83というLODは、唯一の領域を調べる場合には十分であると指摘している。この場合、4つの候補領域では、多数の独立した比較について訂正すると、真のP≦0.05を得るためには、各領域について0.0125というP値(α)が必要である。ソラー&ブロディ(Soller and Brody)68が示唆しているように、ただ一つの偽陽性所見でも起こるような5%誤差率を採用し、等式1/2(log10 e)(Z α/n)2を解釈すると、LOD閾値は少なくとも1.36となる。1.48という最大LODは、IL-9遺伝子候補について得られた。許容可能な偽陽性誤差率を≦0.1%に制限すると、LOD閾値は2.36に増加する。このように、第13染色体(Aib1)上の候補区間について得られた2.42という最大LODは、非常に有意である。
【0132】
これらのLOD閾値データは、ヒトおよびマウスにおけるBHRの連鎖の保存に関する証拠を提供する。ヒトにおけるBHRは、多くの増殖因子およびサイトカインが含まれ、IL-9遺伝子およびマウス第13染色体のIL-9領域に対するAib1座マップを含む染色体5q上の領域と連鎖する。
【0133】
実施例2
IL-9遺伝子多型性の同定
本出願者らは、BHRに関してマウスとヒトの間に連鎖の保存があることを証明した。これらのデータは、この遺伝子またはDNA配列の機能の変化がマウスの気管支反応性の制御に重要である可能性があることを示唆している。上記の方法を用いて、PCR後のヒトIL-9の各エキソンに関して、正しいサイズの独自の産物をゲル電気泳動によって同定した。SSCPにより、一つの多型性をヒトIL-9遺伝子のエキソン5に同定した。直接DNA配列分析により、新規SSCPコンフォーマーの原因として、ヒトIL-9遺伝子の3365位[GenBank寄託番号M30136]でのCからTへのヌクレオチド置換が証明された。このDNA配列変化は、IL-9蛋白質のアミノ酸117でのトレオニン(親水性)からメチオニン(疎水性)への非保存的置換を予測する。
【0134】
エキソン5は、マウスIL-9配列と比較してヒトIL-9の最高保存区間内にある蛋白質のこの部分をコードする(図4参照)。
【0135】
様々な集団からの個々の人を遺伝子型分類を行い、ヒトIL-9のコード配列におけるヌクレオチド置換の直接分析によって、これらの対立遺伝子の発生率を調べた。喘息家系グループの394人中2人が、コドン117においてホモ接合[Met/Met]であった[0.5%]。ヘテロ接合は91人[23.1%]、そして[Thr/Thr]ホモ接合体は301人[76.4%]であった。イタリアの家系集団では喘息の症状患者により確認したため、このIL-9変種の真の発生率は有意により高い可能性がある。アトピーおよび喘息に関して無作為に確認した別の民族的に多様な集団では、コドン117において[Met/Met]ホモ接合体は49人中1人[2.0%]であった。ヘテロ接合は11人[22.4%]、そして[Thr/Thr]ホモ接合体は37人[75.5%]であった。Met/Thrヘテロ接合体の発生率は、アトピーおよび喘息に関して無作為に確認した第4の集団では18.9%であった。このように、報告された配列[GenBank寄託番号M30136]と比較すると、集団の約20%が3,365位でのT対立遺伝子の担体を表す可能性がある。
集団におけるいかなる対立遺伝子の発生率もp2+2pq+q2であることは当技術分野で周知であるため、集団の約4%がIL-9のコドン117においてMet/Metホモ接合であると予想される。
【0136】
全体的に、血清中総IgEは、[Met/Met]ホモ接合体では平均で44.5 I.U.で、これは野生型の[Thr/Thr]ホモ接合体の値[351.7 I.U.]または[Met/Thr]ヘテロ接合体の値[320.9 I.U.]とは有意に異なっていた。図5参照。ホモ接合の保護された人[Met/Met]は、1人の人で皮膚試験陽性が1回あったことを例外として、アトピー性アレルギーの証拠を証明できなかった。これらのデータは、この新規DNA多型性がホモ接合状態で遺伝されれば、血清中総IgEがより低くなることを含め、アトピー性アレルギーからの保護に関連することを示している。
【0137】
図6は、IL-9単純配列リピート多型性のPCR増幅を図示している。報告された配列[GenBank寄託番号M30136]と比較した3,365位でのヌクレオチド多型性によって生じた制限断片長に関して、このマーカーをこれらの個人の遺伝子型と比較する。2つの家族を示す。レーン1および2の人は、レーン3(Met/Thr)およびレーン4(Met/Met)の人の両親(Thr/Met)である;レーン5(Thr/Thr)および6(Met/Met)は、レーン7(Met/Thr)および8(Met/Thr)の子供の両親である。IL-9単純配列リピート多型性(各図における最低のバンドは、長さが248ヌクレオチドである)に関する最少の対立遺伝子は、これらの人および世界中で試験した集団からの全員において、Met117対立遺伝子による完全な連鎖不均衡の中にある。これは、イタリア人および調べた全ての無作為に確認した多様な民族的個人においても当てはまり、したがって、このマーカーはMet117対立遺伝子の存在の検出に診断的に用いてもよい。これらのデータは、この変種が世界中の集団に広く分布しており、これらの集団の多くが分離される前にこの変種が生じている、という仮説と最もよく一致する。
【0138】
実施例3
IL-9受容体発現およびリガンド結合アッセイ
精製組換えThrIL-9、MetIL-9、および構造または機能がMetIL-9に類似している可能性がある化合物を、ボルトンAE&ハンターWM(Bolton AE,and Hunter WM,Biochem J.133:529〜539(1973))が記述したように、ボルトン・ハンター試薬を用いて放射標識する。この材料を2,300 cpm/fmol以上の高比活性に標識する。ヒトK562およびMO7e細胞は、10%(v/v)ウシ胎児血清、50 mM 2-メルカプトエタノール、0.55 mM L-アルギニン、0.24 mM L-アスパラギン、および1.25 mM L-グルタミンを加えたダルベッコ改変イーグル培地0.8ml中で、30℃で増殖および再懸濁する。K562またはMO7e細胞はそのまま、または下記のようにIL-9受容体遺伝子にトランスフェクトさせた後に使用する。完全な長さのIL-9受容体を含むプラスミドDNAを、pRC/RSVプラスミド(InVitrogen、サンジエゴ)にクローニングし、塩化セシウムを用いた遠心によって精製した。電気穿孔の直前に、プラスミドDNA(50μg)を0.4cmのキュベット中の細胞に加える。2重電気パルス(750V/74Ω/40マイクロファラデーおよび100V/74Ω/2100マイクロファラデー)の後、細胞をIL-9を加えた新鮮な培地で直ちに希釈する。24時間後、細胞を洗浄し、リガンドなし、または様々な濃度の125I-標識リガンドと共に20℃で3時間、G418(2.5mg/ml、GIBCO)中でインキュベートする。平行実験において大量の非標識リガンドを用いて、非特異的結合を推定する。次に、細胞を洗浄して濾過し、回収して計数した。特異的取り込みはスキャッチャード解析によって計算する。特異的結合を評価するために、125I-標識Thr117 IL-9および様々な量の推定のコールドリガンドを用いて同様の競合的アッセイを行う。
【0139】
アミノ酸44〜270(R&D Systems)を含む可溶性のIL-9受容体を、異なる型のヒト組換えIL-9と共にインキュベートした。量を変化させたFlag Met117およびFlag Thr117(実施例7に記述)を、PBS中で可溶性受容体0.5μgと共に室温で30分インキュベートした。EBC緩衝液(50mMトリスpH7.5;0.1M NaCl;0.5% NP40)(300μl)を、抗FLAGモノクローナル抗体(IBI)1μgと共に加え、氷浴で1時間インキュベートした。プロテインAセファロース溶液40 μlを各試料に加えて4℃で1時間混合した。試料を11,000×gで1分間遠心し、沈殿物をEBC 500 μlで4回洗浄した。沈殿物を2倍濃度のSDS緩衝液26 μlに溶解し、4分間沸騰させ、18%ポリアクリルアミドゲルで電気泳動した。ウェスタンブロットは、ブロットを抗IL-9受容体抗体でプローブしたことを除き、実施例15に記述のように実施した(R&D Systems)。
【0140】
図25は、IL-9組換え蛋白質の可溶性IL-9受容体への結合を示す。レーン1は分子量マーカー、レーン2は受容体とインキュベートしたIL-9 Flag Met117、レーン3は受容体とインキュベートしたIL-9 Flag Thr117である。これらのデータは、いずれの型のIL-9組換え蛋白質も可溶性受容体に結合することを示している。
のみならず、これらのデータは実施例2(ここでは、ヘテロ接合体の血清中IgEがThr117ホモ接合体と差がない)のデータと共に、IL-9 Met117型が弱いアゴニストを表すことと一致する。
【0141】
実施例4
K562、C8166-45、およびMO7e細胞におけるIL-9受容体発現およびリガンド機能解析
組換えThr117 IL-9、Met117 IL-9、および構造または機能がMetIL-9に類似している可能性がある化合物を、ダルベッコの改変イーグル培地中で用いるために精製して調製した。K562、C8166-45、またはMO7e細胞はそのまま、または実施例3に記述のように、IL-9受容体遺伝子をトランスフェクトさせた後に用いた。増殖因子を除去して24時間後、細胞を精製Thr117 IL-9、Met117 IL-9、および構造または機能がMetIL-9に類似している可能性がある化合物の可変量の非存在下(対照)、または存在下でインキュベートした。細胞増殖は酸フォスファターゼの測定によって評価した。簡潔に述べると、MO7e細胞の各4本ずつの試料を平底マイクロタイタープレート(150または200μlのウェル)で、リガンドの存在下または非存在下で37℃で72〜96時間培養した。酸フォスファターゼは製造元(Clontech、パロアルト、CA)の示唆通りに測定する。実験は全て少なくとも2回繰り返す。
【0142】
実施例5
細胞の単離と培養
ヒト末梢血単核細胞(PBMC)は、製造元(Pharmacia Biotech、AB Uppsala、スウェーデン)に従って、エンドトキシン試験済フィコールパックPLUSを用いた密度勾配遠心によって健常ドナーから単離した。PBMC(5×106)、マウス脾細胞(5×106)、またはMO7e細胞5×106個を、同系のヒト血清または熱不活化FBSのいずれかを終濃度10%となるように加えたRPMI-1640(Bethesda Research Labs(BRL)、ベセスダ、MD)7mlで培養した。細胞を非刺激、またはPMA 5μg/ml/PHA5μg/ml、またはPHA5μg/ml/rhIL-2 50 U(R&D Systems、ミネアポリス、MN)のいずれかで刺激して37℃で24時間培養した。
【0143】
実施例6
RNA単離、RT-PCR、RT-PCR産物のクローニングおよびシークエンシング
RNA PCRコアキット(Perkin-Elmer Corp、フォスターシティ、CA)を用いて、発売元に従って、培養PBMC、マウス脾細胞、およびMO7e細胞から総細胞RNAを24時間後に抽出した。各細胞源からのRNA1μgを65℃で5分間変性させ、次にMuMLV逆転写酵素50 U、1U/μl RNアーゼ阻害剤、2.5 mMオリゴd(T)16プライマー、各1mMのdATP、dCTP、dGTP、dTTP、50 mM KCl、10 mMトリス塩酸、pH 7.0、25 mM MgCl2を含む反応混合液(RNA PCRコアキット、Perkin-Elmer Corp、フォスターシティ、CA)20μlを用いてcDNAに逆転写した。反応混合液をサーモサイクラーチューブにピペッティングし、PCRサーマルサイクラーに置き、1サイクル(42℃で15分、99℃で5分、および4℃で5分)を行った。偽逆転写反応を陰性対照として用いた。
【0144】
次に、2mM MgCl2、50mM KCl、10mMトリス塩酸、pH7.0、DI水65.5μl、2.5 U AmplitaqDNAポリメラーゼ、およびヒトcDNA IL-9エキソン1(フォワード)およびエキソン5(リバース)を表すオリゴヌクレオチド各1μl(20μM)を含む第二のチューブに、この混合液を加えて全量を100μlとした。反応混合液を以下のPCRの状態にした:98℃で120秒、次に以下を30サイクル:94℃で30秒;55℃で40秒;72℃で40秒。最後に72℃で15分間1サイクル行って反応混合液を伸長させた。
【0145】
hIL-9 cDNAを表すPCR産物を1.5%アガロースゲルでのゲル電気泳動に供し、エチジウムブロマイド染色を用いて可視化した。全ての実験において陰性対照増幅物として、RNAをH2Oに置換した偽逆転写酵素反応の産物を用いた。
cDNAを増幅するためにこれらの実験で用いたPCRオリゴヌクレオチドプライマー対は以下を含む:ヒトインターロイキン9(hIL-9)エキソン1フォワード5'-TCT CGA GCA GGG GTG TCC AAC CTT GGC G-3'(配列番号:1)およびエキソン5リバース5'-GCA GCT GGG ATA AAT AAT ATT TCA TCT TCA T-3'(配列番号:2);マウスインターロイキン9(mIL-9)エキソン1フォワード5'-TCT CGA GCA GAG ATG CAG CAC CAC ATG GGG C-3'(配列番号:3)およびマウスエキソン5リバース5'-GCA GCT GGT AAC AGT TAT GGA GGG GAG GTTT-3'(配列番号:4);XhoIおよびPvuII制限酵素認識配列は、ヒトおよびマウスIL-9プライマーの下線部である。PCR産物をTAクローニングベクター(InVitrogen、サンジエゴ、CA)にサブクローニングした。マウスcDNAの増幅は438 bp産物を生じ、ヒトcDNAの増幅は410 bp産物を生じた。
【0146】
ヒトIL-9およびマウスmIL-9の相補的DNAを生成し、XhoIおよびPvuII制限エンドヌクレアーゼの消化部位を含むIL-9エキソン1および5特異的プライマーを用いたRT-PCRによって増幅した。hIL-9およびmIL-9の増幅産物は、シリカを用いて2.5%アガロースゲルから単離した(サムブルックJら(Sambrook,J.)(1989)
分子クローニング:実験室マニュアル(Molecular Cloning:A Laboratory Manual)Cold Spring Harbor Laboratory Press,New York)(参照として全文が本明細書に組み入れられる)。回収後、cDNA産物をTAクローニングベクターにライゲーションし(InVitrogen Corp.、サンジエゴ、CA)、次にこれを用いて、製造元の指示に従って、INVαF'コンピテント細胞を形質転換させた。hIL-9およびmIL-9cDNAインサートを含むプラスミドを、従来の方法によって単離した(サムブルックJら(Sambrook,J.)(1989)分子クローニング:実験室マニュアル(Molecular Cloning:A Laboratory Manual)Cold Spring Harbor Laboratory Press,New York)。増幅後、各インサートを含む、およびこの周囲のDNA配列のPCRによる、またはクローニングによる誤差を分析した。
【0147】
hIL-9およびmIL-9 cDNAインサートは、M13(-20)フォワードプライマー(5'-GTA AAA CGA CGG CCA GT-3')(配列番号:17)およびシーケナーゼ(Sequenase)(登録商標)(USB)を用いて、ジデオキシチェーンターミネーション法(サンガーら(Sanger,1977)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 74:5463)によってシークエンシングを行い、ゲル電気泳動によって分析した(サムブルックJら(Sambrook,J.)(1989)分子クローニング:実験マニュアル(Molecular Cloning:A Laboratory Manual)Cold Spring Harbor Laboratory Press,New York)。クローニングおよび/またはTaqポリメラーゼによる配列誤差のないhIL-9およびmIL-9 cDNAインサート(図7および8の翻訳cDNA配列参照)を発現ベクターにサブクローニングした(図9〜12参照)、またはこれを用いてミスセンス変異および欠失変異を作製した。
【0148】
実施例7
インビトロでのIL-9構築物のクローニングおよび発現
構築物に関する一般クローニング法
hIL-9を原核生物発現ベクターにサブクローニングした。TA2AAF1 MetおよびトレオニンベクターをEcoRIによって消化し、0.420 kB断片(hIL-9 cDNAの5'末端でXhoI部位を含む)をpBluescript(PBS)(Stratagene)のポリリンカーを含むEcoRI部位にクローニングした。次に、T3プロモーターに対するセンス方向でのクローンをXhoI(TAベクターのIL-9 cDNAインサートからの5'XhoI部位およびPBSポリリンカーからの3’XhoI部位を含む断片)で消化し、インサートを原核細胞発現ベクターpGEXおよびpFLAGのXhoI部位にサブクローニングした。
【0149】
pGEX-4T-1グルタチオンs-トランスフェラーゼ遺伝子融合ベクターにおけるIL-9構築物のクローニングおよび発現
IL-9蛋白質の発現、精製、および検出のために、定法によって4.9KbのpGEX-4T-1グルタチオンs-トランスフェラーゼ遺伝子融合ベクターの多クローニングカセット内のXhoI部位に、IL-9 cDNAインサートをサブクローニングした。簡潔に述べると、無傷のIL-9 cDNA配列を含むTAクローン、およびpGEX-4T-1ベクターを、1倍濃度のリアクト2緩衝液(New England Biolabs、ビバリー、MA)の存在下で、XhoIおよびPvuII制限エンドヌクレアーゼを用いて37℃で1時間消化した(総量50 μl)。エチジウムブロマイド10μg/mlを含む1.5%調製アガロースゲルで産物を電気泳動した。適当なサイズのDNAバンドを切除し、アガロースをNaIストック溶液3容量の中で45℃で10分間融解させた。シリカマトリクスのDI H2O(Geneclean II、ラホヤ、CA)溶液を、DNA5μg当たり5μlの割合で溶液に加えた。スラリーを4℃で30分間時折攪拌しながらインキュベートした。次にスラリーを微量遠心によって沈殿させ、低塩緩衝液で3回洗浄し、DI H2O 10μlに再懸濁してシリカからDNAを溶出した。最後に微量遠心を行って、精製DNAを含む溶液10μl溶液を得た。
【0150】
産物をDI H2O 50 μlに再懸濁し、エタノール2容量および3M酢酸ナトリウム1/10容量を加えて沈殿させた。試料をRTで14,000 rpmで10分遠心し、陰圧下で風乾し、適当量のDI H2Oに再懸濁した。mIL-9およびhIL-9 cDNAインサートによるpGEX-4T-1ベクターへのDH5aバクテリア(GIBCO/BRL、ガイサーズバーグ、MD)のライゲーションおよび形質転換は、定法を用いて実施した。
【0151】
pGEX-4T-1ベクターに含まれるhIL-9 cDNAインサートが正しいヌクレオチド配列であることを確認するために、前述のmIL-9およびhIL-9 cDNA特異的オリゴヌクレオチド(エキソン1フォワード、エキソン5リバースプライマー)を用いて、ジデオキシチェーンターミネーション法によって候補IL-9 cDNAを含むプラスミドをシークエンシングした。
【0152】
組換え融合蛋白質を大規模培養から得た。形質転換した大腸菌(50 ml)を一晩培養して、新鮮なLB/ampブロスに接種した。培養液を激しく振って37℃で4時間インキュベートし、次にイソプロピルβ-D-チオガラクトピラノシドを加えて最終濃度を1mMとし、培養液をさらに1.5時間インキュベートした。細胞を4℃、500×gで遠心して回収し、グルタチオン-セファロース4Bカラム(Pharmacia)でのアフィニティークロマトグラフィーを利用して組換え変異体を精製し、GST-融合蛋白質を得た。変種のいくつかは封入体として発現され、マーストン(1987、クローバー(Clover)D.M.編、DNAクローニング:実践的アプローチ(DNA cloning:A practical approach)、 IRL Press Pxfprd,59〜88、大腸菌に発現させた真核細胞ポリペプチドの精製)が記述した方法によって、不溶性封入体から精製した。簡潔に述べると、細胞をライソザイムで溶解し、その後デオキシコール酸で処置した。混入した核酸をDNアーゼI処置によって除去した。不溶性材料を2M尿素で1回洗浄し、8M尿素を含む溶解緩衝液(50 mMトリス塩素、pH 8.0、1 mM EDTA、100 mM NaCl)中で最終的に可溶化した。溶解緩衝液中の尿素の濃度を減少させて(8M尿素から開始して、6、4および2M尿素)封入体の可溶化成分を段階的に透析し、変性蛋白質を再度折り畳ませた。最後に、試料を2M尿素で透析し、2.5%β-メルカプトエタノール(β-ME)に対して透析し、10,000gで15分遠心した。融合蛋白質を最後に0.01 Mトリス塩素、pH 8.0に対して透析した。pGEX-4Tベクターに発現した融合蛋白質をトロンビン100 Uで37℃で6時間開裂させ、グルタチオン-セファロース4Bカラム上のクロマトグラフィー後のフロースルー分画から回収した。最終精製は、充填して0.05 M重炭酸アンモニウム緩衝液で平衡にしたセファデックスG-100カラム(100×1.5cm)でのクロマトグラフィーによって行った。
【0153】
pFLAG-1(登録商標)発現ベクターにおけるIL-9構築物のクローニングおよび発現
ヒトIL-9蛋白質の発現、精製および検出のために、IL-9 cDNAインサートを5.37 Kb Flagベクターの多クローニング部位(XhoI)のXho2部位にサブクローニングした。低分子量(1kD)、疎水性、FLAGマーカーペプチドと、pFLAG-1(登録商標)発現ベクター(1)(IBIコダックから得た)によって発現された組換え蛋白質のN-末端との融合にFLAG技術を集中させた。各バクテリアコロニーは、50μg/mlアンピシリンを含むLBブロス中で、590 nmでの光学密度が0.6に達するまで増殖させた。次に、IPTGを終濃度1 mMとなるように加え、培養液をさらに1時間インキュベートして蛋白質合成を誘導した。遠心によって細胞を回収して、細胞沈殿物をラムリ緩衝液(ラムリ(Laemmli)、1970)50μl中で10分沸騰させ、10%ポリアクリルアミドゲルで電気泳動した。抗-FLAG(登録商標)M1モノクローナル抗体を用いて、その発現、アフィニティー精製、およびFLAGマーカー除去を通じて、ウェスタン(図13参照)スロットまたはドットブロット上でのFLAG融合蛋白質の特異的および有効な検出を行った。FLAG融合蛋白質は、アガロースに共有結合させたマウス抗-FLAG(登録商標)IgG M1モノクローナル抗体によるアフィニティークロマトグラフィーによってマイルドな非変性状態で1段階で速やかに精製した。アフィニティー精製の後、アフィニティーカラムからの除去後に融合蛋白質を用いてもよく、またはエンテロキナーゼによるFLAGペプチドの特異的および有効な蛋白質溶解除去によって、標準蛋白質を生物学的に活性な型で回収してもよい。最終精製は、充填し、0.05 M重炭酸アンモニウム緩衝液で平衡にしたセファデックスG-100カラム(100×1.5 cm)でのクロマトグラフィーによって得た。この実施例で先に述べたプロモーターはまた、FLAG技術で用いてもよい。
【0154】
SDS-PAGEおよびイムノブロット分析
ミニゲルシステム(SE 280垂直ゲルユニット、ホーファー)において、ラムリ(Laemmli U.K.(1970)Nature 227,680〜685)(参照として本明細書に全文が組み入れられる)の方法によって、12.5%ポリアクリルアミドゲルを用いてSDS-PAGEを実施した。イムノブロット分析では、SDS-PAGEによって分離した蛋白質は、15%メタノールを含む25 mMトリスグリシン緩衝液、pH 8.3中で、TE 22Mマイティスモールトランスファーユニット(ホーファー)を用いてニトロセルロース膜にトランスファーした(トウビンら(Towbin H.)(1979)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.76,4350〜4354)。膜上の未結合の結合部位は、2%ウシ血清アルブミンを含む20 mMトリス塩酸緩衝液、pH 8.0で1時間インキュベートすることによってブロックした。次に膜を1:200希釈の抗体で4℃で一晩インキュベートした。膜を洗浄して、ペルオキシダーゼまたはアルカリフォスファターゼのいずれかを結合させた1:2000希釈のヤギ抗ウサギIgGで1時間処置した。洗浄後、超基質化学ルミネッセント試薬(Pierce)または4-クロロ-1-ナフトール色展開試薬を加えることによって、結合抗体を可視化した。膜を蒸留水に浸して反応を停止させた。図13は、精製ヒトFLAG IL-9融合組換え蛋白質(Met117およびThr117)
が、抗-FLAG(登録商標)M1モノクローナル抗体によって認識されることから、それらが正しい大きさで、正しいリーディングフレームにあることを証明している。
【0155】
分析法
精製蛋白質の分子量は、パーセプティブ・バイオシステムズ・ボイジャー・バイオスペクトロメトリー・ワークステーション(Perceptive Biosystems Voyager Biospectrometry workstation)を用いたマトリクス補助レーザー脱着マススペクトロメトリーによって確認した。アミノ酸分析は、真空密封ガラス球内で6N HCl中で110℃で24時間の試料の加水分解後に実施した。
【0156】
自動エドマン分解
精製蛋白質の部分的アミノ酸配列は、オンラインモデル20A PTHアナライザーを備えたアプライド・バイオシステムズ(Applied Biosystems)・モデル455A気相シークエンサー上で、自動段階シークエンシングによって決定した。
【0157】
実施例8
エキソン2および/またはエキソン3の欠失:
構築物の変異発生およびシークエンシング
ヒトエキソン2およびエキソン3欠失は、製造元(Stratagene、ラホヤ、CA)の示唆通りに、エクスサイト(ExSite)PCR-に基づく部位特異的変異誘発キットを用いて作製した。PCRプライマーは以下の通りである: h9CD1U フォワード5'-GTG ACC AGT TGT CTC TGT TTG-3'(配列番号:5);h9CD1Lリバース5'-CTG CAT CTT GTT GAT GAG GAA-3'(配列番号:6);h9CD2Uフォワード5'-GAC AAC TGC ACC AGA CCA TGC-3'(配列番号:7);h9CD2Lリバース5'-ATT AGC ACT GCA GTG GCA CTT-3'(配列番号:8)。エキソン2欠失は、h9CD1Lフォワードおよびh9CD2Uリバースのプライマー対を用いて作製する。エキソン3欠失は、h9CD2Uフォワードおよびh9CD2Lリバースのプライマー対を用いて作製する。エキソン2およびエキソン3に含まれる欠失は、h9CD1Lフォワードおよびh9CD2Uリバースのプライマー対を用いて作製する。
【0158】
マウスエキソン2およびエキソン3欠失は、製造元(Stratagene、ラホヤ、CA)の示唆通りに、エクスサイトPCR-に基づく部位特異的変異誘発キットを用いて作製した。PCRプライマーは以下の通りであった:m9CD1Uフォワード5'-GTG ACC AGC TGC TTG TGT CTC-3'(配列番号:9);m9CD1Lリバース5'-CTT CAG ATT TTC AAT AAG GTA-3'(配列番号:10);m9CD2Uフォワード5'-GAT GAT TGT ACC ACA CCG TGC-3'(配列番号:11);m9CD2Lリバース5'-GTT GCC GCT GCA GCT ACA TTT-3'(配列番号:12)。エキソン2欠失は、m9CD1Uフォワードおよびm9CD1Lリバースのプライマー対を用いて作製した。エキソン3欠失は、m9CD2Uフォワードおよびm9CD2Lリバースのプライマー対を用いて作製した。エキソン2およびエキソン3に含まれる欠失は、m9CD2Uフォワードおよびm9CD1Lリバースのプライマー対を用いる。
【0159】
hIL-9およびmIL-9 cDNAインサートの変異誘発構築物は、ジデオキシチェーンターミネーション法(サンガーら(Sanger,1977) Proc.Natl.Acad.Sci.USA 74:5463)(本明細書に全文が参照として組み入れられる)によって、M13(-20)フォワードプライマー(5'- GTAAAACGACGGCCAGT-3')(配列番号:18)およびシーケナーゼ(登録商標)(USB)を用いてシークエンシングを行い、ゲル電気泳動 によって分析した(サムブルックJら(Sambrook,J.)(1989)分子クローニング:実験マニュアル(Molecular Cloning:A Laboratory Manual)Cold Spring Harbor Laboratory Press,New York)。エキソン2、エキソン3、またはエキソン2およびエキソン3の双方を欠損し、Taqポリメラーゼによる配列誤差のない変異株を用いて、発現ベクターを作成することが可能である。
【0160】
実施例9
細胞株、細胞増殖解析およびIL-9活性の阻害
細胞株を用いて、IL-9機能を遮断するその他の全ての化合物と共に、ペプチド、アミノステロール、チロフォスチン、rhIL-9、rmIL-9、およびこれらの蛋白質の組換え変異体の機能を評価した。増殖反応を測定し、これを、その他のサイトカイン、IL-9の変種または変異体、もしくはIL-9拮抗剤のそれぞれと比較した。さらに、ベースラインの増殖反応に化合物が拮抗する能力を調べた。一つのサイトカインについてベースライン増殖反応が確立すれば、3箇所づつ3回行ったアッセイにおいて統計学的に有意な反応の喪失があれば、それが拮抗の証拠と見なされた。真の拮抗反応は、直接観察、トリパンブルー染色(当技術分野の一般技術の一つで周知の技法)、および酸フォスファターゼ活性の喪失により、細胞毒性とは識別された。拮抗剤の特異性は、スチール因子、インターロイキン3、またはインターロイキン4のようなその他の増殖因子に対する活性が実質的に発現されているか否かを評価することによって評価した。
【0161】
MO7e株はヒト巨核球細胞株であり、RPMI-1640(GIBCO/BRL、ガイザースバーグ、MD)、20%ウシ胎児血清(Hyclone)および10ng/ml IL-3(R&D Systems、ミネアポリス、MN)で培養する。MJ株は、RPMI 1640(GIBCO/BRL)中で増殖するサイトカイン非依存的ヒトリンパ芽球細胞株であるK562は、ヒト赤血球白血病細胞株で、RPMI 1640(GIBCO/BRL)および10%ウシ胎児血清(Hyclone)で培養する。C8166-45はIL-9受容体保有細胞株で、RPMI 1640 GIBCO/BRL)および10%ウシ胎児血清(Hyclone)で培養する。細胞株は全て、IL-9を含むサイトカインに反応する。細胞株は72時間毎に2×105細胞/mlになるよう再播種する。
【0162】
細胞を2000 rpmで10分遠心し、0.5%ウシ血清アルブミン(GIBCO/BRL、ガイザースバーグ、MD)およびインスリン-トランスフェリン-セレニウム(ITS)共因子(GIBCO/BRL、ガイサースバーグ、MD)を含むRPMI 1640に再懸濁した。血球計算盤を用いて細胞を計数し、1×105細胞/mlの濃度に希釈して96ウェルマイクロタイタープレートに播種した。各ウェルは0.15または0.2 mlを含み、細胞の最終濃度は2×104細胞/mlであった。
【0163】
MO7e細胞は、50 ng/ml幹細胞因子(SCF)(R&D Systems、ミネアポリス、MN)単独、50 ng/ml SCF+50 ng/ml IL-3(R&D Systems、ミネアポリス、MN)、または50 ng/ml SCF+50 ng/ml IL-9によって刺激した。細胞と基本培地のみが含まれる対照を含めた。試験化合物(すなわち、IL-9組換え蛋白質、ペプチド、小分子)を連続希釈して、各試験条件に3箇所づつ加えた。MJ細胞株を非特異的細胞障害性の独立対照として用いた。37℃、5%CO2で培養細胞を72〜96時間インキュベートした。
【0164】
細胞増殖は、細胞数の指標として細胞内に存在する酸フォスファターゼを定量するアバカス細胞増殖キット(Clontech、パロアルト、CA)を用いて解析した。
【0165】
基質のリン酸p-ニトロフェニル(pNPP)は、酸フォスファターゼによってp-ニトロフェノールに変換され、これを酵素濃度の指標として測定した。次に、 pNPPを各ウェルに加え、37℃で1時間インキュベートした。次に、1N 水酸化ナトリウムを加えて酵素反応を停止させ、p-ニトロフェノールの量を、ダイナテック2000プレートリーダー(Dynatech Laboratories、シャンティリー、VA)を用いて波長410 nmで定量した。細胞数を吸光度と比較する標準曲線を用いて、アッセイの直線範囲を決定した。吸光度測定値がアッセイの直線範囲内にある場合に限り、アッセイ結果を使用した。
【0166】
図14は、IL-9機能の3つのペプチド拮抗剤のアミノ酸配列を図示する。各ペプチドをMO7e細胞と共にインキュベートし、IL-9による細胞増殖の阻害を、対照条件(ペプチドなし)との比較によって決定した(図15〜17参照)。いずれのペプチドにも細胞障害性の証拠を認めなかった。ペプチドKP-16およびKP-20は、2つの抗平行αヘリックスの中に存在すると予測され、IL-9リガンドの極めて重要なIL-9受容対結合ドメインとなる。コドン117での蛋白質多型性は、これも拮抗剤的特性を示すKP-23およびKP-24に存在し、遺伝子変化部位周辺のこの領域の重要性をさらに示している。
【0167】
図18は、インビトロでMO7e細胞のIL-9依存的増殖に及ぼすチロフォスチン(カルビオケムから入手)の効果を図示する。各チロフォスチンをMO7e細胞と共にインキュベートし、IL-9による細胞増殖の阻害は、対照条件(処置なし)との比較によって決定した。チロフォスチンB46およびB56は最大の阻害を示し、このことは共通の構造活性相関を示唆している。
【0168】
図19は、本明細書に参照として組み入れられるU.S.S.N.08/290,826、08/416,883、08/478,763、および/または08/483,059に述べるように、サメ肝臓から単離したアミノステロールのインビトロでのMO7e細胞のIL-9依存型増殖に及ぼす効果を図示する。各アミノステロールを培地20 μg/mlでMO7e細胞と共にインキュベートし、IL-9による細胞増殖の阻害は、対照条件(処置なし)との比較によって決定した。いずれの処置でも細胞障害性の証拠を認めなかった。アミノステロール3および6は、一貫して最大の増殖阻害を示した。
【0169】
実施例10
IgE分泌細胞の増殖アッセイ
B細胞株を用いて、その他のIL-9拮抗剤と共に、rIL-9およびこれらの蛋白質の組換え変異型の機能を評価することが可能である。IgE分泌細胞のrIL-9に対する増殖を測定し、これを他のサイトカインまたはrIL-9の組換え型と比較する。さらに、rIL-9に対するIgE分泌細胞のベースライン増殖反応に化合物が拮抗する能力を調べる。あるサイトカインについてベースラインIgE反応を確立した後、3箇所づつで3回繰り返したアッセイにおいて、反応が統計学的有意に(P<0.05)喪失すれば、拮抗の証拠と見なされる。真の拮抗剤反応は、トリパンブルー染色(当技術分野で一般技術の一つとして周知の技法)により細胞毒性とは識別される。
【0170】
細胞増殖および培養
末梢血リンパ球(PBL)をは、健常ドナーのヘパリン加血から、またはマウス脾臓を細かくつぶして単離する。単核細胞は、フィコール/ハイパック(Pharmacia、アップラサ、スウェーデン)を用いて遠心分離する。半精製ヒトBリンパ球は、ノイラミニダーゼ(Behring、マルスブルグ、FRG)処置ヒツジ赤血球によるロゼット形成および37℃で1時間のプラスチック接着性により得る。B細胞はまた、製造元の推奨に従って磁性ビーズ(DYNAL)をコーティングした抗CD20による常磁性分離を用いて精製する。
【0171】
B細胞、T細胞および単球の相対比はそれぞれ、CD23、CD3およびCD14特異的モノクローナル抗体(Becton Dickinson、マウンテン・ビュー、CA)を用いたフローサイトメトリーによって決定する。簡潔に述べると、106細胞/mlの細胞を、フィコエリスリン結合抗CD23およびフルオレジン結合抗CD3および抗CD14抗体の1:1000倍希釈と共に、4℃で30分インキュベートする。滅菌PBSおよび1%ウシ血清アルブミン(Sigma)による3回のスピン洗浄後、サイトフルオログラフ(FACSTAR Plus、Becton Dickinson、グルノーブル、フランス)を用いて蛍光を測定する。典型的には、1試料当たり細胞5000個を計数して、CD20+細胞は45%、CD3+細胞35%およびCD14+細胞は10%である。
【0172】
細胞は、10%熱不活化仔ウシ胎児血清(FCS)、2mMグルタミン、100 U/mlペニシリン、100 μg/mlストレプトマイシンおよび20 mM HEPESを含むRPMI 1640(RPMI-FCS)で、2×106細胞/mlの密度で37℃、5%CO2/95%空気含有湿潤環境で培養する。IL-4、rhIL-9、rmIL-9、またはこれらの蛋白質の組換え変異体を濃度を増加させて単独、または併用して、培養細胞と共にインキュベートする。これらの組換え分子またはその他のIL-9拮抗剤を1つ以上混合して、競合実験を行う。培養細胞は9〜13日毎に維持する。
【0173】
IgE分泌B細胞の発生率
ヒトまたはマウスIL-9に反応したIgE分泌ヒトB細胞の発生率は、ELISA-スポットアッセイ(ダガスら(Dugas、1993)、Eur J Immunol 23:1687〜1692;レンツ(Renz,H、1990)、J Immunology.145:3461)を用いて決定する。ニトロセルロース平底96ウェルプレートを、0.1 M NaHCO3緩 衝液で希釈した(2.5μg/ml)精製ヤギ抗ヒトIgE mAbで4℃で一晩コーティングする。PBS-ツィーン20で1回洗浄後、プレートをRPMI-FCSで1時間インキュベートして非特異的結合部位を飽和させる。培養9〜13日後に得たB細胞を回収して、3回洗浄し、105細胞/ml RPMI-FCSに再懸濁し、次に抗IgEコーティングプレート上にトランスファーしてその後37℃で18時間インキュベートする。洗浄後、様々な濃度のペルオキシダーゼ結合マウス抗ヒトIgE mabを37℃で2時間加える。0.03% H2O2を含む0.1 Mトリス塩酸で希釈したジアミノベンゼンを加えてスポットを可視化する。24時間後、スポットを倒立顕微鏡の25倍率で計数する。データは106個当たりのIgE分泌細胞数として表す。
【0174】
実施例11
IL-9と共に刺激した細胞によって分泌されるIgEのELISA
実施例10で記述のように、細胞を単離、調製および刺激する。平底マイクロタイタープレート(Nunc)を、ウサギ抗ヒトIgE(終濃度、1:2000倍希釈;セロテック、オックスフォード、GB)の10 mM重炭酸緩衝溶液(pH 9.6)200μlでコーティングする。4℃で一晩インキュベートした後、プレートを0.05%ツィーンを含むリン酸緩衝生理食塩水(PBS)(PBS-ツィーン;Merck、ホーエンブルン、FRG)で4回洗浄し、RPMI-FCSで室温で1時間インキュベートして、非特異的蛋白質結合部位を飽和させる。洗浄後、ヒトIgE(Eurobio、レ・ユリス、フランス)の連続希釈、標準物質のPBS-ツィーン溶液をそれぞれのプレートに加えて較正曲線を作製する。次に、試験すべき培養上清の希釈液を加え、室温で2時間後、プレートを洗浄して、希釈した特異的アルカリフォスファターゼ結合抗IgE(1:250;Serotec)、抗IgGまたは抗IgM(Behring)を適当なプレートに加える。
室温で2時間後、プレートを洗浄してリン酸p-ニトロフェニル(Sigma)のクエン酸溶液200 μl(0.5 mg/ml)を加える。プレートを37℃でインキュベートして、オートリーダー(Dynatech Laboratories Inc、シャンティリー、VA)を用いて405 nmでの吸光度(A)を測定する。アッセイの閾値感度は、IgEについて100 pg/ml、IgGについて1 ng/ml、およびIgMについて2 ng/mlで、試料2本間の変動は、普通10%を超えない。
【0175】
実施例12
マウス喘息モデルにおけるIL-9の役割:非感作動物の気道反応
動物
5〜6週令の認定非ウイルス感染雄性マウスを、ジャクソン・ラボラトリー(Jackson Laboratory)(バーハーバー、ME)から得た。実験手技の3〜7日前に、ウイルスおよび抗原不含施設の高性能微粒子濾過空気(HEPA)ラミナーフローフードに動物を収容し、固形齧歯類飼料および水を自由に摂取させた。動物施設は22℃に維持し、照明サイクルは自動的に調節した(照明:消灯、10:14時間)。5〜6週令の雄性および雌性DBA/2(D2)、C57BL/6(B6)および(B6D2)F1(F1)マウスをジャクソン・ラボラトリー(バーハーバー、ME)、または国立癌研究所、フレデリック博士から購入した。BXDマウスはジャクソン・ラボラトリー(バーハーバー、ME)から購入した。飼料および水は自由に摂取させた。
【0176】
表現型タイピングおよび全処置の効率
気管支収縮反応を測定するために、気管での呼吸気圧を測定し、薬物投与前および投与中に記録した。マウスは、先に記述したように麻酔して、機器を備えた。(レビット&ミッツナー(Levitt RC and Mitzner W.)FASEB J 2:2605〜2608(1988);レビット&ミッツナー(Levitt RC and Mitzner W.)J Appl Physiol 67(3):1125〜1132;クリーバーガー、バセット、ヤカブ、およびレビット(Kleeberger S,Basett D,Jakab GJ,and Levitt RC)258(2)L313〜320(1990);レビットRC;Pharmacogenetics 1:94〜97(1991);レビット&エワート(Revitt RC and Ewart SL);Am J Repir Crit Care Med 151:1537〜1542(1995);エワート、レビット、およびミッツナー(Ewart S,Levitt RC,and Mitzner W)印刷中、J Appl Phys(1995))。以下の一つ以上に対する気道反応性を測定した:5-ヒドロキシトリプタミン(5HT)(Sigma)。他に用いることが可能なブ ランチコンストラクションは、アセチルコリン(Sigma)、アトラキュリウム(Glaxo welcome)である。気管支収縮剤チャレンジ後のPpi変 化の単純な繰り返し測定を用いたが、これは気道圧時間指数(APTI)と呼ばれている(レビット&ミッツナー(Levitt RC and Mitzner W.)FASEB J 2:2605〜2608(1988);レビット&ミッツナー(Levitt RC and Mitzner W.)J Appl Physiol 67(3):1125〜1132(1989))。APTIは、注射時から最大圧がベースラインまたは平衡に達するまでの時間で積分した最大吸気圧(Ppi)の変化によって評価した。APTIは気道抵抗(Rrs)と同等であるが、APTIには気管支収縮からの回復に関連する別の成分が含まれている。
【0177】
気管支反応性の系統分布は、これまでの研究において多数の近交系マウス系統で確認された(レビット&ミッツナー(Levitt RC and Mitzner W.)FASEB J 2:2605〜2608(1988);レビット&ミッツナー(Levitt RC and Mitzner W.)J Appl Physiol 67(3):1125〜1132(1989))。Rrsおよび/またはAPTIは、A/J、C3H/HeJ、DBA/2J、C57BL/6Jマウスにおいて決定した。
【0178】
屠殺前に、血清中IgE測定のために、完全に麻酔した動物の下大静脈の針穿刺により全血を採取した。試料を遠心して細胞を分離して血清を採取し、これを用いて総IgE濃度を測定した。直ちに測定しない試料は-20℃で凍結した。
【0179】
気管支肺胞洗浄および細胞分析は、他所に記載のように実施した(クリーバーガーら(Kleeberger、1990))。
【0180】
IgE血清試料は全てELISA抗体サンドイッチアッセイを用いて測定した。マイクロタイタープレート(Corning #2585096、コーニング、NY)を、ラット抗マウスIgE抗体(Southern Biotechnology #1130-01、バーミンガム、AL)を、アジ化ナトリウム(Sigma #S-7795、#S-6014、#S-8032、セントルイス、MO)を含む炭酸ナトリウム-重炭酸ナトリウムコーティング溶液に2.5μg/mlの濃度で、50μl/ウェルづつコーティングした。プレートをプラスチックラップで覆い、4℃で16時間インキュベートした。プレートを、0.05%ツィーン20のリン酸緩衝生理食塩溶液(BioFluids、#313、ロックビル、MD)の洗浄緩衝液で3回洗浄し、各洗浄について5分インキュベートした。非特異的結合部位のブロッキングは、5%ウシ血清アルブミン(Sigma #A-7888)のPBS溶液を200μl/ウェル加えることによって行い、プラスチックラップで覆って37℃で2時間インキュベートした。洗浄緩衝液で3回洗浄後、試験試料50μlを2箇所づつウェルに加えた。試験試料を5%BSAの洗浄緩衝溶液で1:10、1:50、および1:100倍希釈後、解析した。試験試料の他に、0.8 ng/ml〜200 ng/mlの一連のIgE標準物質(PharMingen #03121D、サンジエゴ、CA)の5%BSA洗浄緩衝溶液を解析して標準曲線を得た。試料なしのブランク、または標準物質を用いてプレートリーダーをゼロにした(バックグラウンド)。試料および標準物質を加えた後、プレートをプラスチックラップで覆って室温で2時間インキュベートした。洗浄緩衝液で3回洗浄した後、第二抗体である250n g/mlのラット抗マウスIgEホースラディッシュペルオキシダーゼ結合物(Pharmingen #02137E)の5%BSA洗浄緩衝溶液を50μl加えた。プレートをプラスチックラップで覆い、室温で2時間インキュベートした。洗浄緩衝液で3回洗浄後、基質である0.5 mg/mlの0-フェニルアミンジアミン(Sigma #P-1526)の0.1 Mクエン酸緩衝溶液(Sigma #C-8532)100μlを各ウェルに加えた。5〜10分後、12.5%H2SO4(VWR #3370-4、ブリッジポート、NJ)50μlで反応を停止させ、ダイナテックMR-5000プレートリーダー(シャンティリー、VA)で490 nmでの吸光度を測定した。標準曲線は、X軸(対数スケール)に抗原濃度およびy軸(一次スケール)に吸光度をとって、標準物質IgE濃度から作製した。試料中のIgE濃度は標準曲線から内挿した。
【0181】
実施例13
マウス喘息モデルにおけるIL-9の役割:感作動物の気道反応
動物、表現型タイピングおよび抗原感作の最適化
動物および手技は、基本的に実施例12に記述したとおりであった。七面鳥卵アルブミン(OVA)による感作およびエアロゾルチャレンジを行って、BHR、BAL、および血清中IgEに及ぼす効果を評価した。OVAまたは生理食塩水エアロゾル吸入前の0日目に、OVA(25μg)を腹腔内注射した。マウスにOVAまたは生理食塩水エアロゾルをチャレンジし、これは13または14日のいずれかに始めて、5〜7日間1日1回投与した。血清中IgE、BAL、およびBHRの表現型測定は21日目に実施した。7日のOVAエアロゾル暴露が5-HTまたはアセチルコリンによる気管支収縮剤チャレンジに及ぼす効果は、血清中総IgE、BAL総細胞数および白血球分別細胞数、および気管支反応性と共に評価した。抗体(Ab)または生理食塩水前処置が生理食塩水エアロゾルまたはOVAエアロゾル誘発肺炎症に及ぼす効果は、BHR、BAL、および血清中IgEの測定によって調べた。Abは、生理食塩水またはOVAのエアロゾル暴露の2〜3日前に腹腔内投与した。
【0182】
深い麻酔の間に肺を除去した後、肺組織学検査を実施した。先の機器の備え付けは人為的誤差を生じる可能性があるため、これらの試験には別の動物を用いた。このように、小グループの動物を、これらの動物は気管支反応性試験を除くその他の試験に用いなかったことを除き、様々な前処置を行うコホートと正確に同じように平行して処置した。気管支反応性試験の後、肺を除去して液体窒素中に沈めた。凍結切片作製と組織学的検査は、一般的方法で実施した。
【0183】
マウスIL-9に対するポリクローナル中和抗体は、R&Dシステムズ、ミネアポリス、MNから購入し、マウスIL-9受容体に対するブロッキング抗体は、マガイニンで産生されたペプチド結合体を用いて、ランピン・バイオロジカル・ラボラトリーズ(オッツビル、PA)がマガイニン・ファーマシューティカルズ・インクのために産生した。ウサギにおいて、マウスIL-9受容体からのペプチド配列に対するポリクローナル抗血清を調製した。抗血清を産生するために用いたペプチドは:GGQKAGAFTC(残基1〜10)(配列番号:19);LSNSIYRIDCHWSAPELGQESR(残基11〜32)(配列番号:20);およびCESYEDKTEGEYYKSHWSEWS(担体蛋白質にペプチドを結合させるため、N-末端にCys残基を加えた残基184〜203)(配列番号:21)
。抗血清は、免疫学のプロトコール(Protocols in Immunology)、第9章、ウィリーが記述した方法を用いて産生した。簡潔に述べると、ペプチドは、双機能的クロスリンク剤MBS(ピアス)を用いて、システイン残基の側鎖を通じて、担体蛋白質、ケイホール・リンペット、ヘモシアニン(Sigma)に結合させた。ペプチド結合体を用いて適当なアジュバントと共にウサギを免役し、ペプチド結合体の数回ブースター注射後に有用な抗血清を得た。抗体を治療的に用いて、IL-9機能をダウンレギュレートし、非感作マウスにおけるベースライン肺反応性、血清中IgE、およびBALに対するこの経路の重要性を評価した。Ab前処置後、対照と比較したベースラインBHR、BAL、および血清中IgE濃度を決定した。別の実験において、組換え型ヒトおよびマウスのIL-9を抗原感作の1日前および感作の間中毎日腹腔内注射した(13〜18日目)。次に、動物を記述のように表現型タイピングした。
【0184】
0日目に生理食塩水の腹腔内注射で処置し、14〜20日目に生理食塩水でチャレンジした(実施例12に記述のように)代表的な動物の表現型反応を、図20のパネル1(上段)に示す。ベースライン(対照)血清中総IgEは9.2 ng/mlであった。気管支肺胞洗浄(BAL)総細胞数は、BAL1 ml当たり182,500個であった。これらの動物は、歴史的対照(レビット&ミッツナー(Levitt RC and Mitzner W.)
J Appl Physiol 67(3):1125〜1132;1989)と比較して、気管支反応過敏性を示さなかった。
【0185】
図20パネル2(上段中央)は、0日目にOVAを腹腔内注射して前感作し、14〜20日目に生理食塩水をチャレンジした群の代表的な動物を示す。これらの動物の気管支収縮剤、血清中IgE、またはBAL細胞数に対する反応は、非感作マウスと差がなかった(図7上段パネル)。
【0186】
図20パネル3(下段中央)は、0日目にOVAを腹腔内注射して前感作し、14〜20日目に抗原(OVA)をチャレンジした群の代表的な動物を示す。これらの動物は、気管支反応過敏性(対照の約2〜3倍)、血清中IgEの上昇(対照のほぼ1000倍)、およびBAL細胞数の上昇によって示されるように気道中の炎症細胞数の増加(約30倍)を示した。この抗原チャレンジの結果気道に集められた細胞のほとんどが好酸球であった。
【0187】
図20パネル4(下段)は、0日目にOVAを腹腔内注射して前感作し、マウスIL-9に対するポリクローナル中和抗体(約200μg/0.5 ml PBS/マウスを腹腔内注射)で前処置し、14〜20日目に抗原(OVA)をチャレンジした群の代表的な動物を示す。これらの動物は抗原に対する反応を示さなかった。彼らの気管支反応性、血清中IgE、BAL細胞数は、対照と有意差がなかった(図20上段の2パネル)。
【0188】
図21は、代表的な動物における、マウスIL-9に対するポリクローナル中和抗体を3日前に腹腔内注射して前処置した場合、およびしなかった場合のOVAに対する抗原チャレンジ(上記の通り)の効果を図示する。左の図(A1-2-1B)は、対照動物(OVAで感作したが、生理食塩水エアロゾルチャレンジにのみ暴露)の肺の組織学切片である。右の図(A1-4-5)は、マウスIL-9に対するポリクローナル中和抗体で3日前に前処置し、OVAで感作し、OVAエアロゾルチャレンジに暴露した動物の肺からの組織学切片である。中和抗体による前処置により、抗原チャレンジから完全に保護された、という組織学的確認が得られた。
【0189】
図22パネル1(上段)は、0日目にOVA腹腔内注射によって前感作し、13〜18日目に抗原(OVA)をチャレンジした代表的な動物を示す。これらの動物は、気管支反応過敏性(対照の約2〜3倍)を示し、対照と比較してBAL細胞数の上昇によって示されるように、気道での好酸球を含む炎症細胞数の増加を示した(図20上段の2パネル)。この抗原チャレンジの結果気道に集まった細胞の多くは好酸球であった。
【0190】
図22パネル2(下段)は、0日目にOVAの腹腔内注射によって前感作し、マウスIL-9受容体に対するポリクローナル中和抗体(約1 mg/0.5 ml PBS/マウスを腹腔内注射)で前処置し、13〜18日目に抗原(OVA)をチャレンジした群の代表的な動物を示す。この代表的な動物は抗原に対する反応を示さなかった。この反応は、対照群の気管支反応性、BAL細胞数と有意差がなかった(図20上段の2パネル)。これらのデータは、アトピー性アレルギーをIL-9受容体に対する抗体で治療する潜在的有効性を示している。
【0191】
実施例14
マウス脾臓の単離および培養
マウスを麻酔して脾臓を無菌的に除去した。はさみで脾臓を細かく刻み、ワイヤーメッシュ(滅菌済み)[#60ふるい]にゆっくりと通した。細胞をRPMI -1640[ジブコ、BRL、ロックビル、MD]40 mlに再懸濁し、250×gで5分間2回遠心した。沈殿物を溶解バター10 mlに再懸濁して、RBCsを除去した[4.15 gm NH4Cl、0.5 gKHCO3;0.19 g EDTAをddH2Oで500 mlにする]。細胞を、RPMI-FCS[RPMI-1640、10%AFBS、50μM BME 2 mMグルタミン、ペニシリンおよびストレプトマイシンを含む]40 mlで37℃で約5分インキュベートした。これらの細胞を再度250×gで5分間遠心し、コンカナバリンA[シグマ #C5275]5μg/mlの存在下、または非存在下でRPMI-FCS 20 mlに再懸濁した。IL-9は、無処置脾細胞では48時間目、およびDBA/2(D2)およびC57BL/6J(B6)マウスのコンカナバリンAで刺激後に評価した。IL-9はRT-PCR(実施例6で述べたように)で増幅し、サザントランスファー後IL-9特異的マウスプローブで調べた。サザンブロットは「標準的な」方法によって実施した。簡潔に述べると、RT-PCR産物を2%アガロースゲルで電気泳動した。ゲルをエチジウムブロマイドで染色し、定規を置いて写真を撮影し、サザンブロットでDNAの分子量を決定した。次に、ゲルを0.5 N NaOHに30分浸し、0.5 Mトリス、pH 7.0で30分中和した。DNAをキャピラリートランスファーによってゼタプローブ(Borad)ナイロン膜にトランスファーして、20倍濃度のSSC中で一晩放置した。翌日、膜を空気乾燥させ、80℃で15分焼いて6倍濃度のSSCおよび0.1%SDS中で42℃で1時間プレハイブリダイズした。キナーゼ末端標識p32オリゴヌクレオチドプローブ(5'-AATTACCTTATTGAAAATCTGAAG-3')を、ハイブリダイゼーション溶液+0.1 mg/mlの剪断サケ精子DNAに加え、42℃で一晩インキュベートした。翌日、フィルターを3倍濃度のSSCおよび0.1%SDSで37℃で30分洗浄し、フィルターを1時間フィルムに暴露した。図26は、マウスの各系統の48時間後のIL-9の定常状態濃度を図示する。IL-9は非刺激D2(D2-)脾細胞に認められたが、B6(B6-)マウスにはIL-9は検出されなかった。D2(D2+)脾細胞ではコンカナバリンA刺激後にIL-9のわずかな増加を認めたが、B6(B6+)マウスでは、コンカナバリンA処置にもかかわらず検出可能なIt-9を認めなかった。
【0192】
実施例15
PBMCにおけるヒトMet117 IL-9およびThr117 IL-9の発現
SDS-PAGEおよびイムノブロット分析
実施例13に述べたように、野生型(Thr117)またはMet117 IL-9遺伝子型のいずれかを阻害する蛋白質を健常ドナーのヒトPBMCから単離した後、ラムリ(Laemmli U.K.(1970)Nature 227,680〜685)の方法によって、ミニゲルシステム(エクセルII垂直ゲルユニット、ノベックス)で18%ポリアクリルアミドゲルを用いてSDS-PAGEを実施した。イムノブロット分析では、SDS-PAGEによって分離した蛋白質をSDトランスブロットトランスファーユニット(Biorad)を用いて、15%メタノールを含む25 mMトリスグリシン緩衝液、pH 8.3中のニトロセルロース膜に移した(トウビンら(Towbin H.)(1979)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.76,4350〜4354)。膜上の未結合結合部位は、20 mMトリス塩酸緩衝液、pH 8.0+5%ドライミルクを含む0.05%ツィーン20(TBST)で1時間から一晩インキュベートすることによってブロックした。次に膜をヤギ抗ヒトIL-9ポリクローナル抗体(R&Dシステムズ)の1:1000倍希釈と共に室温で1時間インキュベートした。膜をTBSTで洗浄し、ホースラディッシュペルオキシダーゼを結合させたマウス抗ヤギTgGの1:10,000倍希釈で1時間処置した。TBSTで洗浄後、スーパーシグナル基質ケモルミネッセンスシステム(Pierce)を加えて、結合抗体を視覚化した。
【0193】
図24は、IL-9遺伝子のゲノム分析によって遺伝子型が決定されているヒトにおけるマイトゲン刺激48時間後の培養PBMCからのヒトIL-9蛋白質の発現を示す。レーン1は分子量マーカー、レーン2はMet117ホモ接合体、レーン3はMet117/Thr117ヘテロ接合体、レーン4はThr117ホモ接合体である。ほぼ予測されたサイズの単一の産物(14 kD)が、マイトゲン刺激後に各個人のPBMCに認められた。これらのデータは、いずれの型のIL-9蛋白質も発現され、定常状態で安定であることを証明する。
【0194】
本発明は、様々な特殊材料、技法および実施例を参照として本明細書に記述および図解してきたが、本発明は材料の特別な材料の組み合わせ、その目的に選択された技法に制限されるものではないと理解される。そのような詳細に関する多数の変化は、当業者によって認識されるように含むことが可能である。
【0195】
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本発明の上記のその他の態様は、明細書の検討および本明細書に開示の方法の実践から当業者には明らかとなるであろう。明細書および実施例は例示目的のみと見なされ、本発明の真の範囲は以下の請求の範囲に示されると意図している:
【0196】
【数1】
【0197】
【数2】
【0198】
【数3】
【0199】
【数4】
【0200】
【数5】
【0201】
【数6】
【0202】
【数7】
【0203】
【数8】
【0204】
【数9】
【0205】
【数10】
【0206】
【数11】
【0207】
【数12】
【0208】
【数13】
【0209】
【数14】
【0210】
【数15】
【0211】
【数16】
【0212】
【数17】
【図面の簡単な説明】
【0213】
【図1】喘息関連遺伝子のマッピングに有用な多形遺伝子マーカーの相対順序およびセンチモルガン[cM]での距離を示すマップ。
【図2】ヒト染色体5q31-q33およびマウスのシンテニー領域の遺伝子マップの図解。
【図3】気管支収縮刺激に対する感受性が増加したマウスにおけるアトラキュリウム誘発気道反応性に関するマウス第13染色体のLODスコア曲線。
【図4】ヒトおよびマウスIL-9遺伝子のエキソン5に対応するアミノ酸配列の配置。最初の配列はヒト遺伝子のトレオニン対立遺伝子から翻訳される。中央の配列はヒト遺伝子のメチオニン対立遺伝子から翻訳される。最後の配列はマウス遺伝子から翻訳される。
【図5】ヒトIL-9遺伝子対立遺伝子と国際単位で測定した血清中総IgE価の相関を示すヒストグラム。S/Sはトレオニン/トレオニンの人、S/Rはトレオニン/メチオニンの人、およびR/Rはメチオニン/メチオニンの人を指す。
【図6】IL-9座での単純配列リピート多型性の図解。
【図7】トレオニン117 IL-9のcDNA配列の翻訳。
【図8】メチオニン117 IL-9のcDNA配列の翻訳。
【図9】トレオニン117によるpFlag発現構築物のマップ。
【図10】ライゲーション部位周辺領域からのトレオニン117 cDNAのpFlag発現構築物の配列。
【図11】メチオニン117によるpFlag発現構築物のマップ。
【図12】ライゲーション部位周辺領域からのメチオニン117 cDNAのpFlag発現構築物の配列。
【図13】IL-9組換え蛋白のウェスタンブロット。
【図14】阻害ペプチドのアミノ酸配列。
【図15】IL-9媒介MO7e増殖のKP-16による阻害。
【図16】IL-9媒介MO7e増殖のKP-20による阻害。
【図17】IL-9媒介MO7e増殖のKP-23による阻害。
【図18】IL-9媒介MO7e増殖の様々なチロフォスチンによる阻害。
【図19】IL-9媒介MO7e増殖の様々なアミノステロールによる阻害。
【図20−1】インビボでの抗原反応におけるIL-9の役割の特徴づけ。
【図20−2】インビボでの抗原反応におけるIL-9の役割の特徴づけ。
【図21】対照、卵白アルブミンチャレンジ、および抗IL-9前処置動物からの肺の組織学検査。
【図22】マウスIL-9受容体に対する遮断抗体によるインビボでの抗原反応の阻害。
【図24】ヒトメチオニン117 IL-9およびトレオニン117 IL-9の発現。
【図25】ヒト組換え型メチオニン117およびトレオニン117型IL-9の可溶性抗体に対する結合。
【図26】非刺激および刺激マウス脾細胞におけるIL-9の定常状態濃度。
【図27−1】化学部分の付録。
【図27−2】化学部分の付録。
【図28】イヌ、魚、サメから単離したアミノステロール。
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、1995年8月24日に提出された米国仮出願(U.S.Provisional Application)第60/002,765号に関連している。
【0002】
発明の分野
本発明は、IL-9とそのレセプターとの関係に基づいて、IL-9の活性を調節し、アトピー性アレルギーおよび喘息などの関連疾患を治療することに関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
炎症は、身体の防御システムが異物を攻撃する複雑なプロセスである。身体が生き残るためには、異物に対する闘いが必要であるが、防御システムには、異物が無害な物であっても危険なものであるとして不適当に反応するものがあるため、引き続いて行われる闘いにおいて、周囲の組織を損傷することになる。
【0004】
アトピー性アレルギーは、遺伝的な背景によって環境刺激に対する反応が左右されるという、環境−遺伝的な疾患である。この疾患は、一般的に、遍在する抗原に反応してIgE抗体を産生するリンパ球の能力を高めるという特徴を有する。
【0005】
これらの抗原による免疫システムの活性化により、アレルギー性炎症が引き起こされ、またこの活性化は、摂食後、皮膚からの浸透、または吸入の後に起こることがある。この免疫活性化が起こった後、引き続いて肺に炎症が起こると、この疾患は、広く喘息と特徴づけられる。この炎症反応には一定の細胞が重要であり、T細胞および抗原提示細胞、IgEを産生するB細胞、ならびに、IgEに結合する肥満細胞/好塩基球および好酸球が含まれる。これらの炎症細胞は、アレルギー性炎症を起こした部位に蓄積し、これらが放出する有毒な産物が、この疾患に関連する組織破壊の一因となる。
【0006】
喘息は、気道の炎症性疾患であると一般的には定義されるが、臨床上の症状は、間欠的に空気の流れが閉ざされることに起因する。有病率および重篤度が上昇して行くと考えられている慢性の障害性疾患である1。人口の30〜40%がアトピー性アレルギーを患っており、人口うち小児の15%および成人の5%が喘息を患っているといると推定される1。このため、我々の保健財源にとって非常な重荷となっている。
【0007】
アトピーおよび喘息に対する感受性のメカニズムは未解明のままである。興味深いことに、ほとんどの人が、同じような環境に曝されているのに、一部の人のみがアトピー性アレルギーや喘息を発症する。「アトピー」として知られている、環境アレルゲンに対するこの過敏性はしばしば、アトピー患者において、アトピーでない人よりも、血清のIgEレベルが上昇するかまたはアレルゲンに対する皮膚検査反応が異常に大きくなることによって示される10。アトピー性アレルギーと喘息との密接な関係に関する強力な証拠は、ほとんどの喘息患者には、臨床学上および血清学上のアトピーの証拠があるという事実に由来している4〜9。特に、若い喘息患者ほど、アトピーの発症率が高い10。さらに、血清の総IgEレベルの上昇に関連した免疫学的因子は、肺機能障害に非常に密接に関係している3。
【0008】
これらの疾患の診断および治療の両方に問題がある1。炎症を起こした肺組織を評価することがしばしば困難であるため、炎症のもととなった部位を決定できないことがよくある。気道炎症の発症部位と、誘因となる外部環境因子からの防御に関する知識がないと、炎症プロセスを阻止することはできない。肺の炎症を制御することができないと、肺機能の重大な喪失がもたらされることが、今では一般に認められている。
【0009】
現行の治療法には、本質的に一連の欠点がある。主要な治療薬であるβアゴニストは症状を抑える、すなわち、一時的に肺機能を改善させるが、そのもととなる炎症には影響しないため、肺組織は危険にさらされたままである。さらに、βアゴニストの定常的な使用は、その効能と安全性を低下させる脱感作をもたらす2。もととなる炎症を抑制できる薬剤である抗炎症性ステロイドには、免疫抑制から骨の損傷まで、一連の既知の短所がある2。
【0010】
従来の治療法には付随する問題があるため、それに代わる治療方法が評価されてきた65〜66。グリコホリンA64、サイクロスポリン65、およびIL-2の9ペプチド断片63はすべて、インターロイキン-2依存型Tリンパ球の増殖と、それによるIL-9の産生51を阻害するが、その他にも多くの効果2を有することが知られている。例えば、サイクロスポリンは、器官移植後の免疫抑制剤として用いられる。これらの薬剤は、喘息患者の治療において、ステロイドに代わるものの代表であろう63〜66が、これらは、インターロイキン-2依存型Tリンパ球の増殖と、ホメオスタシスに関連する可能性がある重要な免疫機能を阻害する。当技術分野において必要なことは、喘息の一時的な性質と、これらの重要な免疫機能の下流にあるアレルギーとの密接な関連とを説明する、喘息発症に決定的な経路を同定することである。この経路には通常、生物学的な多様性が存在し、それがないと、このような人は一般的に、アトピー症状を除いては、免疫無防備状態でも病気でもないことから、自然によって、この経路が治療にとって適切な標的であることが示された。
【0011】
喘息の診断および治療に関して問題があるために、この疾患の複雑な病態生理学が徹底的に調べられているところである。この疾患は均質なものではなく、多様な形態をとりうるため、定義するのは困難であるが、喘息患者に共通する一定の特徴が見られる。このような特徴の例には、血清IgEレベルの上昇、アレルゲン投与に対する異常な皮膚検査反応、気管支過反応[BHR]、気管支拡張可逆性、および気道閉塞が含まれる3〜10。これらの喘息に関連した表現型の発現を、定量的または定性的な規準として調べることができよう。
【0012】
IgEレベルの上昇はまた、様々な刺激に対する強化された気管支収縮反応であるBHRと密接に相関している4、6、8、9。BHRは、気道に炎症が起きていることを反映していると考えられており6、8、喘息にとっての危険因子と見なされている11〜12。BHRは、喘息患者における気管支の炎症とアレルギー体質とを伴う13〜21。アトピーおよび喘息の症状がない子供においても、BHRは、IgEレベルの上昇と強く関連している19。
【0013】
多くの研究が、アトピーおよび喘息に対する遺伝的な要素を論証している4、10、21。しかし、これらの疾患は、年齢および性別、ならびにアレルゲン、ウイルス感染、および公害物質などのさまざまな環境要因によって有意に影響を受けるため、家族研究は、解釈が難しかった22〜24。その上、これらの疾患に対する感受性に付随する生化学的な欠損が知られていないため、突然変異遺伝子、およびそれの異常な遺伝子産物は、それらが生み出す異常な表現型によってのみ認識されうる。したがって、遺伝的要素を単離し特徴を調べる上で重要な第一歩は、それらの遺伝子の染色体上の位置を同定することである。
【0014】
クックソン(Cookson)らは、遺伝性アトピーに関する遺伝子の位置を初めて説明した25。この研究者たちは、アトピーと、11q13.1と名付けられた特定の染色体領域上の単一マーカーとの間にある遺伝的な連鎖の証拠について述べた。後になって、彼らは、この遺伝子座におけるアトピーに関する母性遺伝の証拠を示唆した26。アトピーについては、母性遺伝[遺伝的刷り込み]が観察されていたが、それ以前に説明されたことはなかった。しかし、この連鎖を確認するための努力は、一般的にうまくいかなかった27〜31。
【0015】
最近になって、高親和性IgEレセプターのβサブユニットが、染色体の11qにマッピングされ、アトピーに関連した突然変異と推定されるものが、この遺伝子で説明されている32、33。しかし、この連鎖は、他人で反復することが難しいため、この遺伝子の重要性と多型性は不明なままである。この推定突然変異が一般的な人々にアトピーを引き起こす原因であるか否かを確認する必要があるが、これまでに集められたデータからは、この多型性がアトピーを頻繁に起こす原因の代表とは考えられない。
【0016】
血清IgEレベルが、臨床疾患としてのアレルギーおよび喘息の開始と重篤度に非常に密接に関連していることから、血清の総IgEレベルの遺伝的な調節の研究に注意が集中した。過去の研究によって、単一の調節遺伝子の存在が示されて、血清総IgEレベルがメンデル型遺伝するという証拠が示された34〜39一方で、別の研究者が、IgEのポリジーンによる遺伝、すなわち、いくつかの関係遺伝子が存在する証拠を発見した39。
【0017】
当業者は、IgEの調節と、喘息に付随する気管支炎の発症または進行にとって重要だと思われる遺伝子をいくつか、染色体5q上に発見している。これらの遺伝子には、IL-3、IL-4、IL-5、IL-9、IL-13、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子[GM CSF]、マクロファージコロニー刺激因子レセプター[CSF-1R]、線維芽細胞酸性増殖因子[FGFA]など、いくつかのインターロイキンをコードする遺伝子が含まれる40。家族研究から得られた最近の証拠により、血清IgEレベルと、染色体5q上のこれらの候補遺伝子が乗っている領域中のDNAマーカーとの間に遺伝的連鎖があることが示唆される41、42。まとめると、これらの研究から、染色体5q上のインターロイキン複合領域の近傍にある1個以上の主要遺伝子が、アトピーと喘息の発症に重要だと考えられる血清IgEで見られる生物学的多様性の相当量を調節していることが示唆される。
【0018】
また、連鎖[兄弟姉妹対解析(sib-pair analyses)]を用いて、以前にBHRに関する遺伝子の位置が同定された79。BHRは、アトピーの主要遺伝子と関連していることがわかっているため、血清IgEレベルを調節する上で重要だと報告されている染色体領域を調べた42。連鎖解析によって、アトピーに関する候補領域が同定されている。これらの研究から、ヒトの染色体5q31〜q33に、アトピーの主要遺伝子が存在することが確認された42。
【0019】
従って、アトピーの主要遺伝子と共遺伝すると思われるBHRに対する感受性をもたらす遺伝子の染色体上の位置を決定するために、BHRと染色体5q上の遺伝子マーカーとの間の連鎖解析を用いて実験を行った42、79、82。ヒスタミンに対する反応性によって、BHRを有する人を同定した。喘息関連遺伝子をマッピングするのに有用なマーカーを図1に示す。
【0020】
特に、喘息、気管支過反応、およびアトピーに関する遺伝子候補が、示されたマーカーに対するおおよその位置の[右]に示されている。マップには、インターロイキン遺伝子IL-4、IL-13、IL-5、およびIL-3;細胞分裂周期-25のCDC25;顆粒球マクロファージコロニー刺激因子[GM CSF]のCSF2;初期成長反応遺伝子-1のEGR1;細胞抗原14のCD14;β2アドレナリン作用性レセプターのADRB2;リンパ球特異的グルココルチコイドレセプターであるGRL1;血小板由来増殖因子レセプターであるPDGFRが含まれている。5q31〜q33のバンドは、ほぼIL-4からD5S410まで広がっている。報告されている距離は、性平均した組換え分数である。
【0021】
用いられた兄弟姉妹対解析により、BHRと、D5S436、D5S658、および染色体5q31〜q33の近傍に位置するその他のいくつかのマーカーとの間に連鎖があることの、統計的に有意な証拠が明らかにされた79。これらのデータから、染色体5q31〜q33上に近接した間隔にある1個以上の遺伝子が、BHR、アトピーおよび喘息への罹病性を決定するという仮説が強く支持された79、80、81、82。
【0022】
最近、喘息の表現型と染色体5q31〜q33上の遺伝子マーカーとの間の連鎖も示されている83。アトピーとBHRに対する遺伝的な罹病性をもたらす、合理的な位置にある候補遺伝子となるような遺伝子が数多くあるため、ヒトゲノムのこの領域を、喘息との連鎖について評価した。
【0023】
上記の方法を用いて、連鎖が明らかになった42、83。特に、以前、BHRとアトピーに連鎖していることが分かっている染色体5qの、この同じ領域からとったマーカーに関して、兄弟姉妹対とLODとを用いて、オランダの84家族を解析した42、83。喘息の発端者と、その家族における閉塞性の気道病を分類するためのアルゴリズムを用いた。この分類スキームは、前述したように、ヒスタミンに対するBHRの有無、呼吸症状、有意な喫煙経歴[5箱より多く喫煙した年数]、皮膚検査反応によって定義されたアトピー、気道閉鎖[FEV1の予想%<95%CI]、および気管支拡張への可逆性[予想値で>9%]に基づいていた。
【0024】
兄弟姉妹対解析(N=10、p<0.05)と、喘息の表現型について優性モデルを用いた最尤法解析とによって、喘息と染色体5q上のマーカーとの間の連鎖に関する証拠が発見された83。
【0025】
遺伝子頻度0.015[有病率3%]で優性モデル[クラス1は影響あり、クラス2〜4は不明確、クラス5は影響なし]を用いると、喘息は、θ=0.03のとき最大LOD値3.64で、D5S658と連鎖していた。D5S436と較べて5 cMテロメア側にあるかまたはIL-9から離れているD5S470については、θ=0.0のとき最大LOD値2.71が観察された83。
【0026】
本出願の最初の提出に続いて、IL-9またはその近傍の遺伝子が、アトピーと喘息で用いる上で重要である可能性が高いことが示された43。IL-9の示唆は、無作為に確かめられた集団において、血清総IgEレベルのlog値とIL-9遺伝子の遺伝子マーカーの対立配列との間に強い相関があることに基づいていた43。マーカーの1個以上の特異的な対立配列とのこのタイプの関連は、「連鎖不均衡」と名付けられており、近傍の遺伝子が、研究中の生物学的多様性を決定するということを一般的に示唆している44。
【0027】
IL-9遺伝子は、染色体5のq31〜q33領域にマップされている40。ヒトのゲノムには、この遺伝子の唯一のコピーが存在する45、46。ヒトとマウスのIL-9遺伝子については、構造的な類似性が見られる45、46。それぞれの遺伝子は、5個のエキソンと4個のイントロンを有し、およそ4 kbのDNAにわたって広がっている。この遺伝子の発現は、活性化されたT細胞に限定されていると考えられる45、46。
【0028】
IL-9の機能は、今では、当初分かっていたよりも大きく広がっている。IL-9は、T細胞増殖因子として働くが、またこのサイトカインは、赤血球の前駆細胞、B細胞、肥満細胞、および胎児胸腺細胞の増殖を媒介することも知られている45、46。IL-9は、IL-3と協働的に作用して、肥満細胞の活性化と増殖を引き起こす47。このサイトカインはまた、IL-4によって誘導される、正常なヒトB型リンパ球によるIgE、IgG、およびIgMの産生を増加させる48。IL-9は、また、マウスB型リンパ球によるIgEおよびIgG1の放出を誘導するIL-4を増加させる49。寄生生物による感染に対する粘膜性炎症反応におけるIL-9の重要な役割も明らかになっている50、51。
【0029】
IL-9に加えて、染色体5qには、IL-3、IRF1、EGR1、ITK、GRL1、ADRB2、CSF1R、FGFA、ITGA2、CD14、PDGFR、CDC25、CSF2、IL-4、IL-5、IL-12B、およびIL-13を含む、その他多数の遺伝子候補が乗っている。これらはすべて、アトピー性アレルギーにおいて重要で、治療薬開発の標的となる可能性があると考えられる。さらに、当技術分野では、IL-9の配列またはIL-9の機能がどのようにしてアトピー性アレルギー、喘息、または気管支過反応と特異的に相関しているのかに関する知識がない。このような知識がないと、当業者は、IL-9をこれらの疾患の診断に用いればよいのか、治療に用いればよいのか、また、どうやって用いるのかが分からないであろう。
【0030】
当技術分野では、IL-9は、還元条件下のドデシル硫酸ナトリウム・ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって決定されたところによると、約20〜30 kDの見かけの分子量を有する新規のサイトカインであると規定されている。これは、144アミノ酸蛋白質として産生されるが、プロセシングされて126アミノ酸の糖蛋白質になる。ヤン(Yang)らは、IL-9をコードしているDNA配列が、この蛋白質に対する約450ヌクレオチドの適正な読み枠を有する約630ヌクレオチドからなっていることを開示している85。
【0031】
また、当技術分野においては、選択的スプライシングによって、多数の蛋白質アイソフォームが、単一の遺伝子座から生成されることも知られている。選択的スプライシングは、単一の遺伝子座から多数の蛋白質アイソフォームを生成させるための効果的なメカニズムである。選択的スプライシングは、細胞の遺伝的構成を変更することなしに、蛋白質発現を可逆的に修飾するために、末端の分化細胞で用いられている。これらの蛋白質アイソフォームは、異なる組織、または異なる細胞分化もしくは活性化状態において選択的に発現される。蛋白質アイソフォームは、異なる機能を有することがあるので、アルムスとホワイト(Alms and White)は、IL-4のエキソン2を除いて形成されるためにIL-4δ2と呼ばれる、IL-4の天然のスプライシング変異体をクローン化して発現させた86。IL-4δ2は、IL-4によって誘導されるT細胞の増殖を阻害することが観察された。
【0032】
ところで、当技術分野では、エキソン2および3を欠失させて生成させた、IL-9の蛋白質アイソフォーム、またはこれらの欠失蛋白質によって示される調節機能に関する知識がない。特に、生物学的活性の調節、すなわち、IL-9の発現または活性の抑制調節におけるそれらの役割ははっきりしていない。その上、選択的スプライシングによるこのような蛋白質アイソフォームの形成は、これまでに観察されておらず、また、もとのサイトカインのアゴニストまたはアンタゴニストとして機能するIL-9の変異体を提供するためにも用いられていなかった。
【0033】
また、当技術分野には、喘息関連疾患に関するIL-9レセプターの役割についての知識もない。IL-9は、標的細胞の表面で発現される特異的なレセプターに結合することが知られている52、53(非特許文献1)。このレセプターは、実際には、2本の蛋白質鎖でできている。IL-9レセプターとして知られている1本目の蛋白質鎖は、IL-9に特異的に結合し、もう1本の蛋白質鎖は、IL-2レセプターと共通した鎖である(非特許文献1)。さらに、ヒトのIL-9レセプターのcDNAがクローニングされている52、53(非特許文献1)。このcDNAは、マウスのIL-9レセプターに有意な相同性を示す522アミノ酸の蛋白質をコードしている。このレセプターの細胞外領域は、高度に保存されており、マウス蛋白質とヒト蛋白質とで67%の相同性が存在する。このレセプターの細胞質領域に、高い保存性はない。ヒトの細胞質ドメインは、マウスのレセプターの相当する領域よりもはるかに大きい(非特許文献1)。
【0034】
IL-9レセプター遺伝子も、その特徴が分かっている53。これは、単一コピー遺伝子として、マウスのゲノムの中に存在し、9個のエキソンと8個のイントロンからなると考えられている53。ヒトのゲノムには、少なくとも4個のIL-9レセプターの偽遺伝子が含まれている。ヒトIL-9レセプター遺伝子は、性染色体XおよびYの320kbの亜末端領域にマッピングされている(非特許文献1)。このような研究があるにもかかわらず、当技術分野には、IL-9レセプターとアトピー性アレルギー、喘息、または気管支過反応との関係についての知識が全くない。
【非特許文献1】Renauld,J-C,Kermouni,A,Vink,A,Louahed,J,Van Snick,J.「Interleukin-9 and its receptor: involvement in mast cell differentiation and T cell oncogenesis.」J Leukoc Biol 1995年;57:p.353-360
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0035】
このように、当技術分野には、IL-9遺伝子、そのレセプター、およびそれらの機能が、どのように、アトピー性アレルギー、喘息、気管支過反応および関連疾患と関係しているのかに関する知識が欠けている。したがって、当技術分野においては、アトピー性アレルギー、喘息、または気管支過反応についての遺伝学的情報と、これらの疾患の病因におけるIL-9の役割を明らかにすることが特に必要である。また、これらの疾患における、IL-9レセプターとIL-9レセプター遺伝子の役割を明らかにする必要もある。さらに、最も重要なのは、それらの知識に基づいて、これらの疾患を治療するために、IL-9とそのレセプターとの相互作用を調節することができる因子を同定する必要があることである。
【課題を解決するための手段】
【0036】
発明の概要
上記目的を達成するために、本発明は、例えば、以下を提供する。
1.117番目の位置にメチオニンを有するヒトインターロイキン-9をコードする塩基配列を有する単離精製されたDNA分子、またはその断片。
2.項目1記載の単離精製DNA分子およびその縮退配列。
3.DNA分子がゲノム由来である、項目1記載の単離精製DNA分子。
4.IL-9 RNAの発現のために用いられる、項目1記載の単離精製DNA分子。
5.IL-9蛋白質の発現のために用いられる、項目1記載の単離精製DNA分子。
6.117番目の位置にメチオニンを有するヒトインターロイキン-9のアミノ酸配列、その断片、および117番目の位置にメチオニンを有するヒトインターロイキン-9のアミノ酸配列に実質的に相同な配列からなる群より選択される単離精製された蛋白質分子。
7.117番目の位置にメチオニンを有するヒトインターロイキン-9のアミノ酸配列、その断片、および117番目の位置にメチオニンを有するヒトインターロイキン-9のアミノ酸配列に実質的に相同な配列からなる群より選択される化学的に合成された分子。
8.117番目の位置にメチオニンを有するヒトインターロイキン-9をコードする塩基配列を有する組換えDNA分子、またはその断片。
9.117番目の位置にメチオニンを有するヒトインターロイキン-9をコードする塩基配列を有する単離精製されたRNA分子、またはその断片。
10.治療が必要な患者に項目1記載の単離精製DNA分子を有効量投与してインターロイキン-9の活性を抑制制御することによって、喘息関連疾患を軽減させる方法。
11.治療が必要な患者に項目9記載の単離精製RNA分子を有効量投与してインターロイキン-9の活性を抑制制御することによって、喘息関連疾患を軽減させる方法。
12.治療が必要な患者に項目4記載の単離精製DNA分子を有効量投与してインターロイキン-9の活性を抑制制御することによって、喘息関連疾患を軽減させる方法。
13.治療が必要な患者に項目6記載の単離精製蛋白質分子を有効量投与してインターロイキン-9の活性を抑制制御することによって、喘息関連疾患を軽減させる方法。
14.治療が必要な患者に項目7記載の化学的に合成したDNA分子を有効量投与してインターロイキン-9の活性を抑制制御することによって、喘息関連疾患を軽減させる方法。
15.治療が必要な患者に項目8記載の組換えDNA分子を有効量投与してインターロイキン-9の活性を抑制制御することによって、喘息関連疾患を軽減させる方法。
16.117番目の位置にメチオニンを有するヒトインターロイキン-9の断片が、約3個から約25個のアミノ酸を有する、項目6記載の単離精製蛋白質分子。
17.117番目の位置にメチオニンを有するヒトインターロイキン-9の断片が、約3個から約25個のアミノ酸を有する、項目7記載の化学的に合成された蛋白質分子。
18.治療が必要な患者に、可溶性インターロイキン-9レセプターまたはその活性断片を有効量投与して、インターロイキン-9の活性を抑制制御することによって、喘息関連疾患を軽減させる方法。
19.治療が必要な患者に、ヒトインターロイキン-9に特異的な抗体、またはインターロイキン-9の活性を抑制制御するのに充分な量投与することができるインターロイキン-9レセプターに特異的な杭体を有効量投与して、インターロイキン-9の活性を抑制制御することによって、喘息関連疾患を軽減させる方法。
20.インターロイキン-9の活性を抑制制御するのに充分な量投与することができる、ヒトインターロイキン-9に特異的な抗体。
21.インターロイキン-9の活性を抑制制御するのに充分な量投与することができる、インターロイキン-9レセプターに特異的な抗体。
22.ヒトインターロイキン-9のアンチセンス配列またはその活性断片を含むアンチセンスDNA。
23.本来の配列のIL-9の117番目の位置のトレオニン残基が別のアミノ酸で置換されている、ヒトインターロイキン-9の変異体。
24.トレオニン残基が、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、メチオニン、フェニルアラニン、およびトリプトファンからなる群より選択される疎水性アミノ酸で置換されている、項目23記載のヒトインターロイキン-9の変異体。
25.トレオニン残基がメチオニンで置換されている、項目23記載のヒトインターロイキン-9の変異体。
26.少なくとも1つのエキソンを有する、ヒトインターロイキン-9をコードしている塩基配列を有するDNAおよびRNAからなる群より選択される単離精製分子。
27.約1個から5個のエキソンを有する、項目26記載の単離精製分子。
28.約1個から約4個のエキソンを有する、項目26記載の単離精製分子。
29.約1個から約3個のエキソンを有する、項目26記載の単離精製分子。
30.約1個から約2個のエキソンを有する、項目26記載の単離精製分子。
31.エキソン2が欠失している、項目26記載の単離精製分子。
32.エキソン3が欠失している、項目26記載の単離精製分子。
33.エキソン2およびエキソン3が欠失している、項目26記載の単離精製分子。
34.治療が必要な患者に項目26記載の単離精製分子を有効量投与してインターロイキン-9の活性を抑制制御することによって、喘息関連疾患を軽減させる方法。
35.少なくとも1つのエキソンを含む、ヒトインターロイキン-9をコードしているアミノ酸配列を有する単離精製された蛋白質分子。
36.約1個から5個のエキソンを有する、項目35記載の単離精製蛋白質分子。
37.約1個から約4個のエキソンを有する、項目35記載の単離精製蛋白質分子。
38.約1個から約3個のエキソンを有する、項目35記載の単離精製蛋白質分子。
39.約1個から約2個のエキソンを有する、項目35記載の単離精製蛋白質分子。
40.エキソン2を欠失している、項目35記載の単離精製蛋白質分子。
41.エキソン3を欠失している、項目35記載の単離精製蛋白質分子。
42.エキソン2およびエキソン3を欠失している、項目35記載の単離精製蛋白質分子。
43.治療が必要な患者に項目35記載の単離精製蛋白質分子を有効量投与して、インターロイキン-9の活性を抑制制御することによって、喘息関連疾患を軽減させる方法。
44.接着した1個以上の化学的な成分をさらに含む、項目7記載の化学合成分子。
45.項目1記載のDNA分子にハイブリダイズできる、検出可能な標識をした核酸分子。
46.インターロイキン-9分子をコードしているヒトDNAを増幅するためのオリゴヌクレオチドプライマー。
47.コードされているヒトDNAがゲノム由来である、項目46記載のオリゴヌクレオチドプライマー。
48.IL-9の117番目の位置でメチオニンをコードしている項目46記載のオリゴヌクレオチドプライマーまたはその断片。
49.IL-9の117番目の位置でメチオニンを含むIL-9分子を増幅するのに適した配列を有するオリゴヌクレオチドプライマーまたはその断片。
50.細胞において配列を発現させる調節要素の制御下に、項目1記載のDNA分子の配列を有する発現ベクター。
51.項目1記載のDNA分子で形質転換またはトランスフェクションされた単細胞宿主。
52.バクテリア、酵母、哺乳動物細胞、植物細胞、昆虫細胞、および組織培養中のヒト細胞からなる群より選択される、項目51記載の単細胞宿主。
53.大腸菌(E.coli)、シュードモナス菌、バチルス菌、放線菌、酵母、CHO、R1.1、B-W、LM、COS 1、COS 7、BSC1、BSC40、BMT10、およびSf9細胞からなる群より選択される、項目51記載の単細胞宿主。
54.単細胞宿主が、サッカロマイセス属、ピヒア(Pichia)属、カンジダ(Candida)属、ハンセヌラ(Hansenula)属、およびトルロピス(Torulopis)属からなる群より選択される酵母である、項目51記載の単細胞宿主。
55.インターロイキン-9ポリペプチドの発現が促進されるよう、インターロイキン-9ポリペプチドをコードしている配列の機能的な近傍に発現調節配列を挿入する段階を含む相同的組換え作用によってインビトロで改変された、インターロイキン-9ポリペプチドをコードするDNA配列を含む哺乳動物細胞。
56.インターロイキン-9ポリペプチドをコードしている配列の機能的な近傍に存在する発現調節配列が、インターロイキン-9の発現調節配列であり、かつ相同的組換え作用によって、インターロイキン-9ポリペプチドの変異発現調節配列が置換される、項目55記載の哺乳動物細胞。
57.インターロイキン-9ポリペプチドをコードしている配列の機能的な近傍に存在する発現調節配列が、インターロイキン-9の発現調節配列ではない、項目55記載の哺乳動物細胞。
58.(a)インターロイキン-9ポリペプチドが発現される条件下で、項目1記載のDNA分子を培養する段階、および(b)発現されたインターロイキン-9ポリペプチドを回収する段階を含む、インターロイキン-9ポリペプチドを調製するための方法。
59.モノクローナル抗体である、項目20または21記載の抗体。
60.検出可能な標識で標識されている、項目20または21記載の抗体。
61.項目59記載のモノクローナル抗体を産生する細胞系。
62.以下の段階を含む、項目1記載のDNA分子を含むインターロイキン-9ポリペプチドに特異的な抗体を調製する方法:(a)項目1記載のDNA分子に相当するインターロイキン-9ポリペプチドを、担体蛋白質に結合させる段階、(b)アジュバントと混合した、段階(a)のインターロイキン-9ポリペプチド断片-担体蛋白質結合体で、宿主動物を免疫する段階、および(c)免疫した宿主動物から抗体を採取する段階。
63.以下の段階を含む、項目1記載のDNA分子を含むインターロイキン-9ポリペプチドを定量する方法:(a)インターロイキン-9ポリペプチドを含むと思われる試料を、抗体およびこれらのインターロイキン-9ポリペプチドを含む反応複合体が形成されるような条件下で、インターロイキン-9ポリペプチドに特異的に結合する抗体と接触させる段階、および(b)試料の中にインターロイキン-9ポリペプチドが存在することを示す、抗体およびインターロイキン-9ポリペプチドを含む反応複合体の形成を、試料中から検出する段階。
64.抗体が固相支持体に結合している、項目63記載の方法。
65.(a)項目63記載の方法に従い、生物学的試料中の反応複合体の形成を検出する段階、および(b)その量が、生物学的試料中のインターロイキン-9ポリペプチドのレベルに対応する、形成された反応複合体の量を評価する段階を含む、117番目の位置にメチオニンを有するインターロイキン-9ポリペプチドまたはその断片の生物学的試料中のレベルを評価するための、インビトロの方法。
66.(a)生物学的試料におけるインターロイキン-9ポリペプチドのレベルを上昇させる段階、および(b)正常なレベルと比較したインターロイキン-9ポリペプチドのレベルの上昇によって、アトピー、喘息、および関連疾患の素因を有することが示されるように、正常な被験者または初期の患者の体内に存在するインターロイキン-9ポリペプチドのレベルを比較する段階を含む、ヒト患者において、インターロイキン-9ポリペプチドのレベルの上昇に関連するアトピー、喘息、または関連疾患に対する罹病性を検出または診断するためのインビトロの方法。
67.評価されるインターロイキン-9ポリペプチドがトレオニン117である、項目66記載のインビトロの方法。
68.(a)生物学的試料中の特異的なインターロイキン-9ポリペプチドの量を評価する段階、および(b)非アトピーレベルと比較した、特異的なインターロイキン-9ポリペプチドのレベルの上昇によって、アトピー、喘息、および関連疾患の素因を有することが示されるように、非アトピー患者または初期の患者の体内に存在するインターロイキン-9ポリペプチドのレベルを比較する段階を含む、ヒト患者において、インターロイキン-9ポリペプチドの117番目の位置にメチオニンがないことと関連するアトピー、喘息、または関連疾患の有無を検出または診断するためのインビトロの方法。
69.評価される特異的なインターロイキン-9ポリペプチドがトレオニン117である、項目68記載のインビトロの方法。
70.117番目の位置にメチオニンを有するヒトインターロイキン-9の配列またはその断片を含むポリペプチドによる治療を受けているヒト患者から、異なる時点で採取した一連の生物学的試料の中の特異的なインターロイキン-9ポリペプチドのレベルを評価することを含む、哺乳動物の被験者におけるアトピー、喘息、および関連疾患の治療を監視するためのインビトロの方法。
71.薬学的に許容される担体中に項目1記載のDNA分子を含む薬学的組成物。
72.薬学的に許容される担体中に項目6記載の蛋白質分子を含む薬学的組成物。
73.薬学的に許容される担体中に項目7記載の化学合成された分子を含む薬学的組成物。
74.薬学的に許容される担体中に項目59記載の抗体を含む薬学的組成物。
75.薬学的に許容される担体中に項目7記載の化学合成分子を含むインターロイキン-9ポリペプチドのアンタゴニストを含む、インターロイキン-9ポリペプチドの機能を低下させるための薬学的組成物。
76.薬学的に許容される担体中に項目6記載の蛋白質分子を含む、インターロイキン-9ポリペプチドのアンタゴニストを含む、インターロイキン-9ポリペプチドの機能を低下させるための薬学的組成物。
77.薬学的に許容される担体中に項目1記載のDNA分子を含むインターロイキン-9ポリペプチドのアンタゴニストを含む、インターロイキン-9ポリペプチドの機能を低下させるための薬学的組成物。
78.アンタゴニストが、インターロイキン-9ポリペプチドに結合する抗体およびインターロイキン-9レセプターに結合する抗体からなる群より選択される、項目75記載の薬学的組成物。
79.アンタゴニストが、インターロイキン-9ポリペプチドに結合する抗体およびインターロイキン-9レセプターに結合する抗体からなる群より選択される、項目76記載の薬学的組成物。
80.アンタゴニストが、インターロイキン-9ポリペプチドに結合する抗体およびインターロイキン-9レセプターに結合する抗体からなる群より選択される、項目77記載の薬学的組成物。
81.治療を必要としている患者に、IL-9またはIL-9レセプターのいずれかの機能を抑制制御する化合物を投与することにより、喘息関連疾患を軽減させる方法。
82.化合物が、チロシンキナーゼ蛋白質のシグナルトランスダクションの阻害因子である、項目81記載の方法。
83.阻害因子が、チロフォスチン(Tyrphostins)を含むキナーゼ阻害因子から選択される、項目82記載の方法。
84.化合物が、図28で説明されているアミノステロールの群より選択される、項目81記載の方法。
85.化合物が、IL-9のIL-9レセプターとの相互作用を阻害する、項目81記載の方法。
86.化合物が、ヒトIL-9の置換もしくは欠失類似体、またはその断片である、項目81記載の方法。
87.化合物が、配列番号:15(KP-23)である、項目86記載の方法。
88.化合物が、配列番号:16(KP-24)である、項目86記載の方法。
89.化合物が、117番目の位置にメチオニン残基を含むヒトIL-9またはその断片である、項目85記載の方法。
90.化合物が、配列番号:13(KP-16)である、項目89記載の方法。
91.化合物が、配列番号:14(KP-20)である、項目89記載の方法。
92.項目27記載の単離精製分子を有する細胞。
93.項目28記載の単離精製分子を有する細胞。
94.項目29記載の単離精製分子を有する細胞。
95.項目30記載の単離精製分子を有する細胞。
96.項目31記載の単離精製分子を有する細胞。
97.項目32記載の単離精製分子を有する細胞。
98.項目33記載の単離精製分子を有する細胞。
99.不死である、項目61記載の細胞系。
100.Ser-Asp-Asn-Ala-Thr-Arg-Pro-Ala-Phe-Ser-Glu-Arg-Leu-Ser-Gln-Met-Thr-Asn(配列番号:13)、Phe-Ser-Arg-Val-Lys-Lys-Ser-Val-Glu-Val-Leu-Lys-Asn-Asn-Lys-Ala-Pro-Tyr(配列番号:14)、およびGlu-Gln-Pro-Ala-Asn-Gln-Thr-Thr-Ala-Gly-Asn-Ala-Leu-Thr-Phe-Leu-Lys-Ser(配列番号:15)という配列を有するペプチドからなる群より選択されるIL-9アンタゴニストを含む組成物。
101.化合物が、ヒトIL-9の44〜89番目のアミノ酸またはその断片に対応する3-D構造と実質的に同様の配置を有する、項目81記載の方法。
102.ヒトIL-9がそのレセプターに結合するのを遮断する抗体を誘導するヒトIL-9のセグメント。
103.Cys-Phe-Ser-Glu-Arg-Leu-Ser-Gln-Met-Thr-Asn-Thr-Thr-Met-Gln-Thr-Arg-Tyr(配列番号:23)、およびThr-Ala-Gly-Asn-Ala-Leu-Thr-Phe-Leu-Lys-Ser-Leu-Leu-Glu-Ile-Phe-Gln-Lys(配列番号:16)からなる群より選択される配列を有する、項目102記載のIL-9セグメント。
104.ヒトIL-9がそのレセプターに結合するのを遮断する抗体を誘導するヒトIL-9レセプターのセグメント。
105.配列Thr-Cys-Leu-Thr-Asn-Asn-Ile(配列番号:22)を有する、項目104記載のヒトIL-9レセプターセグメント。
106.IL-9がそのレセプターに結合するのを遮断する化合物に結合する、ヒトIL-9からのエピトープ。
107.化合物が抗体である、項目106記載のエピトープ。
108.以下の段階を含む、IL-9またはIL-9レセプターのアンタゴニストを同定するための方法:a)気道過反応に罹病性の動物を得る段階、b)気道過反応を誘導する抗原を投与する段階、c)その結果生じた気道過反応の特徴を、IL-9またはIL-9レセプターのアンタゴニストの可能性があるもので前処理して得られた気道過反応の特徴と比較する段階、およびd)これらの薬剤から、前処理によって特徴が消失するものを選択する段階。
109.動物が、ヒトIL-9レセプターを発現する、項目9記載の方法。
【0037】
本出願者らは、喘息およびそれに関連した疾患を含むアトピー性アレルギーの病因におけるIL-9(喘息関連因子1、すなわちAAF1としても知られている)の役割を明らかにする情報で、IL-9の活性を調節できる化合物をもたらした情報を提供することによって、これらの疾患の治療に対する長い間感じられていた必要性を充たしている。本出願者らはまた、気道過反応性における生物学的な多様性を決定する遺伝子に関して、ヒトとマウスとの間で保存されている連関とシンテニー相同性を明らかにした。これらの関係は、遺伝子候補としてのIL-9を特異的に同定する。さらに、本出願者らは、マウスにおける気管支過反応、好酸球増加症と気管支洗浄液中の細胞数の増加、および血清総IgEの増加を含む、多数の抗原誘導応答にとってIL-9が重要であると判定した。これらの発見により、喘息に関連するアレルギー性炎症が類型化される。
【0038】
さらに、本出願者らは、ヒトのIL-9遺伝子のエキソン5の3365番目の位置で、核酸をCからTに変化させると、IL-9の117番目のコドンでトレオニンがメチオニンになると椎定されるアミノ酸置換が生じると判定した。この置換が一人の人の両方の対立遺伝子に起きると、これに付随して、喘息、異常な皮膚検査反応、および血清総IgEの低下を含む、アトピー性アレルギーの証拠が減少する。このように、本出願者らは、一人の人の中で両IL-9遺伝子産物の117番目のコドンがメチオニンになるという特徴を持つ非喘息性で非アトピー性の表現型が存在することを同定した。さらに有意義な推論となるよう、117番目のコドンのトレオニンによって特徴づけられる喘息性のアトピー表現型に対する罹病性の有無について同定した。このように、本発明には、このような配列を有する精製単離したDNA分子と、このDNAによってコードされるペプチドが含まれる。
【0039】
IL-9の生物学的活性は、IL-9レセプターへの結合と、特異的な細胞の中の調節シグナルの伝達によって起こる。このため、IL-9のアゴニストまたはアンタゴニストと、IL-9またはそのレセプターとの相互作用によって、IL-9の機能を阻害または調節することができる。抑制制御、すなわち、IL-9によって制御されている機能の抑制は、さまざまな方法で行われる。IL-9のレセプターへの結合を妨害することができるアゴニストまたはアンタゴニストの投与は、重要なメカニズムの一つであり、そのようなアゴニストおよびアンタゴニストも、本発明の請求の範囲に含まれる。実施例には、さまざまな突然変異を含む、IL-9またはIL-9レセプターのDNA配列にコードされているポリペプチド産物を投与することが含まれる。これらの突然変異は、IL-9またはIL-9レセプターの点突然変異、挿入、欠失、またはスプライシング変異体でよい。
【0040】
本発明のさらなる態様には、「アゴニストおよびアンタゴニスト」の投与によるIL-9の活性を調節することが含まれる。熟練した当業者には、必要な3次元構造的コンホメーションを有する分子と、レセプター結合に必須または重要な残基を含む分子のすべてが、本発明の範囲内にあることが容易に理解されると思われる。特に、成熟蛋白質の43〜60残基目および71〜90残基目は、レセプター結合に重要であると考えられる。本出願者らは、KP-16ペプチド(43〜60残基目)とKP-20ペプチド(71〜90残基目)が、レセプターのアンタゴニストとして作用することを明らかにした。さらに、本来のIL-9分子の中のこれらの残基は、逆平行ヘリックス構造を形成すると椎定されている。この蛋白質の3次元構造は、52番目のセリンおよび/または53番目のグルタミン酸が、85番目のリジンと相互作用し、56番目のセリンが82番目のリジンと相互作用し、また、59番目のトレオニンが78番目のバリンと相互作用することを示している。これらの逆平行ヘリックスおよび関連する機能的な原子団の3次元的な配置が、レセプター結合にとって重要な必須の3次元的な立体的コンホメーションを表すため、これらの関係を刺激する化合物は、本発明の範囲内に含まれる。
【0041】
IL-9レセプター(また、喘息関連因子2、AAF2とも呼ばれる)の生物学的活性は、可溶性IL-9レセプター分子を用いて調節することもできる。このような分子は、IL-9が細胞結合レセプターに結合するのを妨げ、IL-9に対するアンタゴニストとして作用するが、これも本発明の範囲内である。
【0042】
IL-9がそのレセプターに結合するのを遮断するポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体も、本発明の範囲内であり、また喘息および関連疾患を含むアトピー性アレルギーを治療するのに有用な治療薬である。
【0043】
本発明の別の態様は、遺伝子治療において、IL-9またはIL-9レセプターの点突然変異、挿入、欠失、またはスプライシング変異など、さまざまな突然変異を含む単離DNA配列を使用することに関する。
【0044】
また、IL-9およびIL-9レセプターの発現は、合成アンチセンス・オリゴヌクレオチド配列を有効量投与することによって抑制制御される。本発明のオリゴヌクレオチド化合物は、ヒトIL-9およびIL-9レセプターをコードするmRNAに結合し、それによってこれらの分子の発現を阻害する。
【0045】
IL-9とIL-9レセプター両者の構造が、非常に詳細に調査解析され、レセプター結合には、IL-9のアミノ酸残基が重要であることが確認されている。 構造研究と、この特異的な結合対の結合特性に基づき、本発明はさらに、IL-9がIL-9レセプターと相互作用するのを阻害するのに必要な残基が構造的なコンホメーションにより提供されるように作成された小分子を含む。このような阻害は、レセプター活性の調節をもたらすため、これらの分子は、アトピー性アレルギーを治療するのに有用である。
【0046】
本発明の別の態様は、IL-9機能に必要なシグナル経路の下流を制御することを目的とする。IL-9は、IL-9シグナル経路に独特だと考えられる、Stat3のチロシンのリン酸化を誘導し58、阻害因子の標的として有用である。このため、チロフォスチン(tyrophostin)のようなチロシンキナーゼの特異的または非特異的阻害因子は、IL-9の生理学的活性の下流制御において有用であり、これらは本発明の一部をなす。さらなる態様において、アミノステロール化合物も、IL-9シグナル伝達経路のシグナル伝達の阻害に関与するため、アトピー性アレルギーおよび関連疾患を治療する上で有用である。
【0047】
上で検討された産物は、アトピー性アレルギー、喘息、および他の関連疾患を治療するのに効果的なさまざまな治療薬を示したものである。
【0048】
本発明はまた、上述のDNA分子にコードされる短縮したポリペプチドも含む。これらのポリペプチドは、IL-9のIL-9レセプターとの相互作用を調節することができる。
【0049】
したがって、本出願者らは、気管支過反応、喘息、および関連疾患を含むアトピー性アレルギーの発病における、IL-9経路の重要な役割を同定した。より具体的には、本出願者らは、アンタゴニスト、およびIL-9とそのレセプターとの相互作用を制御することができるアンタゴニストを同定する方法を提供した。本出願者らはまた、1)117番目のコドンにメチオニンを有するIL-9に匹敵する活性を有し、IL-9に対するレセプターへIL-9の活性を抑制制御するのに十分なほど結合することができる化合物を投与することによって、また、2)エキソン1、2、3、4または5のいずれか一つ以上に欠失を含む、単離された塩基配列によってコードされている欠失蛋白質産物を投与することによって、IL-9の活性を制御するための方法を提供する。
【0050】
アトピー性アレルギー、気管支過反応、および喘息におけるIL-9経路の重要な役割を同定し、本出願者らは、アトピー性アレルギー、喘息、および関連疾患への罹病性を診断するための方法も提供する。最後に、本出願者らは、IL-9およびそのレセプターの発現または機能のいずれかを抑制制御するのに十分な量投与することができる化合物または因子を同定するために、IL-9とそのレセプターの機能を測定するための方法を提供する。
添付した図面は、本明細書に組み入れられその一部を構成し、本発明のいくつかの態様を例示して、説明とともに、本発明の原理を説明するのに役立つ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0051】
発明の詳細な説明
本出願者らは、喘息および関連疾患を含むアトピー性アレルギーの診断、予防または治療において用いることができるIL-9経路およびこの経路に作用する組成物を明らかにすることによって、当技術分野における必要性を解決した。喘息には、可逆的な気道閉塞を伴う気道の炎症性疾患が含まれる。アトピー性アレルギーは、アトピー、ならびに喘息、気管支過反応(BHR)、鼻炎、蕁麻疹、腸のアレルギー性炎症疾患、およびさまざまな形の湿疹を含む関連疾患を意味する。アトピーは、対照と比較して、血清総IgEが上昇するかまたはアレルゲンに対する異常な皮膚検査反応となって発現する、環境アレルゲンに対する過敏感反応である。BHRは、さまざまな刺激に対する気管支収縮反応が増強した気管支過反応を意味する。
【0052】
喘息関連疾患を示す家族のDNAを解析することによって、本出願者らは、アトピーの発現を測定できるものの一つとして、血清総IgEの生物学的な多様性と相関関係にある、IL-9遺伝子における多型性を確認した。IL-9遺伝子(喘息関連因子1、すなわちAAF1としても知られている)とは、ヒト骨髄系およびリンパ系の制御に関するさまざまな機能を示すサイトカイン、インターロイキン-9の遺伝子座を指す。本発明のIL-9遺伝子は、ヒトの第5染色体のq31〜q33領域中およびマウスでは第13染色体中に認められる。
【0053】
本出願者らは、多型性という語で、「遺伝子座」と名付けられた特異的なDNA配列における、普通の配列からの変化を意味させている。一般的に、当業者がある遺伝子座を含む2個以上の対立遺伝子を同定し、最も少ない共通遺伝子座が1%以上の頻度で存在する場合、その遺伝子座は多型であると定義される。
【0054】
本発明の多型性は、IL-9の117残基目のアミノ酸置換をもたらす。特に、親水性アミノ酸のトレオニンの代わりに、本発明のIL-9は、疎水性アミノ酸メチオニン(Met IL-9)を提示する。遺伝子レベルでは、本発明の多型性は、レナウルドら(Renauldand colleagues)(1990)[GenBank寄託番号M30135、およびM30136]54によって説明されているように、ヒトIL-9遺伝子の3365番目のヌクレオチド、またはケラーら(Kelleher)(1991)によって報告されている[GenBank寄託番号 M86593]、ヒトIL-9遺伝子の配列の4244塩基目に相当するヌクレオチドでの、チミン残基によるシトシン残基の置換である55。
【0055】
IL-9の対立遺伝子の片方または両方のいずれかにおいて、117番目のアミノ酸にトレオニン(Thr)を有する個体(Thr/ThrまたはThr/Met)は一般的に、喘息に対する罹病性またはアトピー性アレルギーの表現型を示すので、これらの遺伝子型は、調査した集団における血清総IgEレベルの平均を高くするという特徴を有する。これに対し、IL-9の対立遺伝子の両方で、117番目のコドンにメチオニン(Met)を有する個体(Met/Met)は、喘息を起こさず、皮膚検査反応における異常が少なく、血清総IgEが低い。したがって、IL-9のMet/Met遺伝子型により、喘息またはアトピー性アレルギーに対する防御が行われていると考えられる。
【0056】
したがって、本発明は、117番目にメチオニンを有するヒト・インターロイキン9(Met IL-9)をコードする塩基配列を含む単離精製されたDNAまたはその断片を提供する。本発明はまた、実質的に相同な配列だけでなく、このDNAの縮退配列も含んでいる。本発明のIL-9の起源はヒトである。またはDNAもしくはその断片は、当技術分野において既知の方法を用いて合成してもよい。また、認められた技術によってDNAを構築し、そのDNAを発現ベクターにクローニングし、化合物を発現するはずの細胞を、このベクターでトランスフェクションするという、遺伝子工学的技術によって、この化合物を産生することもできる。例えば、サムブルックら(Sambrook)「分子クローニング:実験マニュアル」第2版(コールドスプリングハーバー研究所出版[1985])に記載の方法を参照のこと。
【0057】
気道過反応が、事実上すべての喘息患者と、近交マウスのいくつかの系統(DBA/2)において見られる84。気道過反応は、ヒトにおいて、喘息の発症に関する危険因子であり、喘息の動物モデルにおいては、喘息に対する治療の効能を評価するための生理学的な尺度として用いられる。ヒト79およびマウスの遺伝子マッピングの結果(実施例1および2を参照)とともに、これらのデータは、マウスの気道反応において、マウスIL-9遺伝子産物についての重要な役割を示唆している。特に、過反応DBA/2(D2)マウスは、定常レベルのIL-9発現において、C57BL/6(B6)過反応マウス84とは異なっている(実施例14、図26を参照)。さらに、IL-9/IL-9レセプターに対する遮断抗体による前処理は、マウスにおいて、抗原に誘導される気道過反応および炎症を、場合によっては完全に防止することができるが、これは、これらの免疫応答におけるIL-9に関する重要な制御的な役割を示している。このように、分子の異なる変化により、ヒトおよびマウスでは気道過反応における生物学的な多様性が作出されるが、これらの変化は、この経路を制御する同一の遺伝子(IL-9/IL-9R)の中で起きていることをこれらのデータは示している。これらをまとめると、これらの観察から、気道過反応、喘息、およびアトピー性アレルギーにおける、IL-9およびIL-9レセプターの重要な役割が確認されている。さらに、これらのデータから、IL-9が、そのレセプターと相互作用することを遮断する従来からの薬剤が、上で詳述したような、抗原に誘導される反応から保護することが示される。
【0058】
アトピー性アレルギー、気管支過反応、喘息、および関連疾患の発病におけるIL-9の決定的な役割を明らかにするさらなる証拠は、マウスにおいては、数多くの抗原誘導応答に対してIL-9が決定的であるという本出願者らの観察から直接に得られる。抗原によるエアロゾル投与の前に抗体で前処理して、IL-9の機能を抑制制御すると、抗原に誘導される応答から動物を完全に防御することができる。これらの応答には、気管支過反応、好酸球増加症および気管支洗浄液中の細胞数の増加、炎症に関連した肺の組織学的変化、および血清総IgEの増加が含まれる。したがって、アトピー性アレルギーの発病に重要な、喘息に関連したアレルギー性炎症を特徴づけるこのような反応を、IL-9の機能を抑制制御することによって治療することは、本発明の範囲内に含まれる。
【0059】
本出願者らはまた、IL-9レセプターに対する「アゴニストおよびアンタゴニスト」を投与することによるIL-9の活性の制御について開示する。熟練した当業者には、必要な3次元構造的コンホメーションを有する分子と、レセプター結合に必須または重要な残基を含む分子のすべてが、本発明の範囲内にあることが容易に理解できると思われる。本出願者らは、KP-16ペプチド(IL-9の43〜60残基目)およびKP-20ペプチド(IL-9の71〜90残基目)(例えば、アプライドバイオシステムズ社モデル431Aペプチド合成機(Applied Biosystems Model 431A Peptid Synthesier)など、標準的なペプチド自動合成技術を用いて産生される)が、IL-9のアンタゴニストとして作用することを明らかにした。特に、本出願者らは、成熟蛋白質の43〜60残基目と71〜90残基目が、レセプター結合に重要らしいことを明らかにした。さらに、これらの残基には、エキソン4のほとんど(アミノ酸44〜88)が含まれ、逆平行ヘリックス構造を形成すると推定される。この蛋白質の3次元構造から、52番目のセリンおよび/または53番目のグルタミン酸が、85番目のリジンと相互作用し、56番目のセリンが82番目のリジンと相互作用し、また、59番目のトレオニンが78番目のバリンと相互作用することが示唆される。これらの逆平行ヘリックスおよび関連する機能的な原子団の3次元的な配置が、レセプター結合にとって重要な必須の3次元的な立体的コンホメーションを表すため、これらの関係を刺激する化合物は、本発明の範囲内である。
【0060】
喘息様表現型に関連するIL-9配列および喘息様表現型の欠如に関連するIL-9配列を明らかにしたことから、抗原に対する肺の炎症反応がIL-9とは無関係であり、したがってIL-9の機能の抑制制御は抗原誘導反応に対する防御であることが示された。さらに、本出願者らは、アトピー性アレルギーおよび関連疾患に対する罹病性を診断する方法、ならびにIL-9とそのレセプターとの関係に基づいてこれらの疾患を治療するための方法も提供する。
【0061】
レセプターは、分子を認識して結合する、可溶性または膜結合型の成分であり、本発明のIL-9レセプター(喘息関連因子2、すなわちAAF2としても知られている)は、IL-9を認識して結合する成分である。IL-9レセプターの機能には、IL-9様分子に結合することと、特異的な細胞の中でその制御シグナルを増幅させることが含まれる57〜60。この機能を阻害すると、IL-9の発現またはIL-9によって調節される機能の抑制制御、すなわち低下がもたらされる。したがって、IL-9とIL-9レセプターとのこの相互作用のおかげで、生物の一定の機能が、調節または制御されている。レセプターの一般的な議論については、グッドマンとギルマンの(Goodman and Gilman's)「治療学の薬学的基礎(The Pharmacologic Basis of Therapeutics)」(第7版、マクミラン出版社、米国ニューヨーク、1985)を参照。
【0062】
一つの診断的な態様には、IL-9のDNA配列における変異を認識することが含まれる。一つの方法は、当業者によって理解されているように、充分なハイブリッド形成を行う条件下で、本発明のIL-9に相補的な配列を有する核酸分子(プローブとしても知られている)を導入することを含む。一つの態様においては、この配列は、Met117 IL-9またはThr117 IL-9に特異的に結合し、別の態様において、Met117 IL-9とThr117 IL-9の両方に結合する。これらの疾患に関連したDNA配列の変異を識別する別の方法は、当技術分野において周知の複数の方法によって、直接DNA配列を解析することである77。別の態様には、これらの疾患に関連する、IL-9遺伝子におけるDNA配列の変異を検出することが含まれる73〜77。これらには、ポリメラーゼ連鎖反応、制限酵素断片長の多型性(RFLP)解析、および一本鎖のコンホメーション解析が含まれる。好ましい態様において、本出願者らは、本明細書において説明されているStyI RFLPを用いて、ThrおよびMet対立遺伝子に関係したIL-9の多型性を、遺伝子レベルで識別するための方法を具体的に提供する。別の態様においては、Nla、Pfim1、PflM1およびNco1 RFLPを用いて、IL-9遺伝子のこれら2つの対立遺伝子を区別する。
【0063】
別の態様は、アトピー性アレルギーおよび関連疾患を治療することを含む。好ましい態様において、本出願者らは、Met IL-9に匹敵する活性と、IL-9の活性を抑制制御するのに充分な程度にIL-9レセプターに結合する能力を有する化合物を投与する方法を提供している。Met IL-9に匹敵する活性を有する化合物は、類似の機能を有するが、必ずしも同一でない化合物である。このように、これは、IL-9レセプターには結合するが、同一の生理学的効果をもたない。実施例には、さまざまな点突然変異および/または欠失を有するIL-9のアミノ酸配列、ならびに、実質的にそれと相同な配列が含まれる。例えば、このような化合物は、当技術分野において既知の技術によって測定したところに従うと、Thr IL-9がIL-9レセプターに結合するのを阻害するかもしれない。本発明はまた、上述のアミノ酸配列の機能的に有効な断片を含む。このような技術の一つにおいて、Thr IL-9は、IL-9レセプターの「リガンド」と考えてもよく、この2つの間の結合は、グッドマンとギルマンの(Goodman and Gilman's)「治療学の薬学的基礎(The Pharmacologic Basis of Therapeutics)」(第7版、マクミラン出版社、米国ニューヨーク、1985)において示されているように、当技術分野において周知のリガンド 結合測定法によって評価することもできる。
【0064】
別の態様において、この化合物は、構造的にIL-9のMet対立遺伝子に似ているかもしれない。とすると、そのような化合物は、IL-9の117番目のコドンでメチオニンを取り込むか、または別の親水的なアミノ酸を取り込むかもしれない。したがって、本発明の範囲に含まれるのは、117番目の位置で、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、およびメチオニンからなる群より選択されたアミノ酸による、Thrの置換を含むIL-9変異体である。または本発明の化合物は、Met IL-9に類似する構造的な組成物を有するIL-9の断片として存在しているかもしれない。本発明の別の態様において、この化合物はMet IL-9に匹敵する機能を保持しているかもしれないが、構造的には、Met IL-9に似ていないかもしれない。例えば、この化合物の組成には、アミノ酸以外の分子が含まれるかもしれない。この例は、単なる例示にすぎず、通常の技術を有する当業者は、効果的なアンタゴニストをもたらす、別の置換および/または欠失によるIL-9の類似体も、本発明の範囲に含まれることを容易に理解できよう。既に検討したように、必要な3次元構造的コンホメーションを有する分子と、レセプター結合に必須または重要な残基を含む分子のすべてが、本発明の範囲内に含まれる。
【0065】
特異的な測定法は、IL-9の既知の制御、部分的には、Tリンパ球、IgE合成、および肥満細胞からの放出に基づくことができる54〜60。別の測定法には、ヒトIL-9が、MO7e細胞において、複数の蛋白質の迅速で一過性的なチロシンリン酸化を特異的に誘導できることが含まれる57。この反応は、IL-9レセプターの発現および活性化に依存しているため、利用する価値があるかもしれない化合物の特徴を調べるための簡単な方法または測定法になる。転写因子Stat3のチロシンリン酸化は、IL-9の作用に特異的に関連していると考えられ58、この反応は、本発明の範囲内の化合物の特徴を調べるための簡単な方法または測定法になる。さらに、IL-9およびIL-9様分子の機能の特徴を調べるための別の方法には、細胞増殖測定法を用いてヒトIL-9の機能を測定するために用いられる、ATCCから入手可能な周知のマウスのTS1クローンおよびD10クローンが含まれる59。本発明の一部を構成するMet IL-9は、IL-9レセプターの「弱いアゴニスト」と見なすことができる。このような弱いアゴニストは、本発明のもう一つの好ましい態様である。本発明によれば、アゴニストという語は、レセプターと相互作用するかまたは結合して、内生する化合物の効果の少なくともいくつかを模倣する化合物を含む。ある細胞の表面上でIL-9レセプターと相互作用または結合するアゴニストは、このサイトカインの作用の特徴である、一連の生化学的および生理学的な変化を開始させる45〜51、54〜61。本発明に係る別の弱いアゴニストを同定するために、本明細書および引用された文献2、45〜51、54〜60で説明されているところにしたがって、IL-9レセプターへの結合またはIL-9様機能について調べることができる。
【0066】
本発明は、また、IL-9とそのレセプターのアンタゴニストを含む。アンタゴニストは、それ自体は薬学的活性をもたないが、アゴニストの作用を阻害することによって効果をもたらす化合物である。本発明のアンタゴニストを同定するために、本明細書および引用された文献2、45〜51、54〜60で説明されているところにしたがって、既知のアゴニストとの競合的結合、またはIL-9様機能の抑制制御を調べることができる。
【0067】
アゴニストまたはアンタゴニストのいずれかの結合には、イオン力、水素結合、疎水性相互作用、ファンデルワールス力、および共有結合を含む、既知のあらゆる相互作用のタイプが含まれる。多くの場合、アゴニストまたはアンタゴニストとレセプターとの相互作用において複数のタイプの結合が重要である。
【0068】
さらなる態様において、これらの化合物は、IL-9の類似体であってもよい。当技術分野においてすべて十分に説明されている方法62によって作出することができる、この遺伝子の単離DNA配列における点突然変異、塩基置換、および/または欠失によって、IL-9の類似体を作出してもよい。本発明はまた、IL-9のスプライシング変異体を含み、その5個のエキソンに1個以上の欠失を有するインターロイキン-9の単離核酸配列を開示している。「スプライシング変異体」という語は、本明細書においては、少なくとも1個のエキソンを含むヒトIL-9をコードしている単離精製されたDNA分子を意味している。当技術分野においては、スプライシング変異体が、自然に発現しているという証拠はない。したがって、本発明は、ヒトIL-9のエキソン1、4および5を有する、単離核酸を提供する。本発明の範囲内にある別の変異体には、エキソン1、2、3、4および5;エキソン1、2、3および4;エキソン1、2、4および5;ならびに、エキソン1、3、4および5を含む配列が含まれる。これらのエキソンは、さまざまな点突然変異を含むものと理解されるべきである。
【0069】
IL-9に由来する拮抗ペプチドの具体的な例としては、エキソン4に由来するKP-16(配列番号:13)およびKP-20(配列番号:14)が含まれる。エキソン4は、44個のアミノ酸をコードしているが、上記のペプチドは、それぞれ16個と20個のアミノ酸を含み、互いに重複していない。これらのペプチドは、個別に測定しても組み合わせて測定しても、かなりの阻害活性を示す。さらに、エキソン5に由来するKP-23(配列番号:15)およびKP-24(配列番号:16)も、同様の活性を示す。IL-9のエキソン1から5のいずれかを1個以上欠失させても、IL-9のスプライシング変異体を形成させることができる。上で示したように、これらのエキソンに由来するペプチドは制御能力を示し、このため、喘息を含むアトピー性アレルギーを治療するのに有用である。
【0070】
多酵素システムにおいては、第一の酵素または制御的な酵素を、多酵素システムの最終産物によって活性化または阻害できることが、当技術分野において知られている。最終産物の濃度を定常状態の濃度よりも上昇させると、最終産物は、一連の流れの中の制御的な酵素の特異的な活性化因子または阻害因子として作用する。また、このようなフィードバック機構が、IL-9のシステムにも関連するため、本発明のさまざまなポリペプチドは、IL-9レセプターの活性に対し、またおそらく、喘息の発病に関与するその他のサイトカインおよびそれらのレセプターの発現または機能に対して、このような活性化または阻害調節を行うことができることが観察されている。
【0071】
本発明にはまた、当業者には慣例的な知識を用いて行うことができるアゴニストまたはアンタゴニストの改変が含まれる。例えば、レセプターに対する化合物の親和性は、一般的に、この化合物の化学構造に密接に関連している。したがって、構造-活性関係を用いて、本発明のアゴニストとアンタゴニストの改変を行うことができる。例えば、結晶学/X線回折とNMRの技術を用いて、本発明の改変を行うことができる。
【0072】
例えば、分子画像を用いて、欠失突然変異体の構造モデルを構築するための鋳型として用いることができるヒトIL-9の3次元構造を作出することができる。そして、これらのモデルを用いて、IL-9に匹敵するが生物学的活性はそれよりも低いIL-9レセプターに対する親和性を有する、IL-9分子の突然変異体を同定し構築することができる。より低い生物学的活性とは、IL-9よりも2倍から100,000倍低いことを意味し、好ましくは、IL-9よりも100倍から1,000倍低い。
【0073】
さらに別の態様において、これらの化合物は、レセプターの構造に対する動態学的プローブとして用いることも、IL-9依存的な細胞系によりレセプターアンタゴニストを開発するために用いることもできる。
【0074】
さらに、本発明は、IL-9またはIL-9レセプターの合成を阻害するか、またはそれらの生物学的安定性を低下させる化合物も提供する。生物学的安定性とは、分子の合成とその分解との間の時間の測定値のことである。例えば、蛋白質、ペプチド、またはペプチド模倣薬89の安定性は、D型アミノ酸を用いて引き延ばすことができ、または酵素による分解に対してより感受性になるように配列を変更することによって短縮することができる。
【0075】
別の態様において、本発明のアゴニストとアンタゴニストは、IL-9とIL-9レセプターに対する抗体である。IL-9およびそのレセプターに対する抗体は、当技術分野において周知の標準的な技術を用いて作製されるモノクローナル抗体でも、ポリクローナル抗体でもよい(ハーローとレーンの(Harlow & Lane's)「抗体−実験マニュアル(Antibodies-A Laboratory Manual)」(コールドスプリングハーバー研究所、1988)を参照)。これらを用いて、IL-9がレセプターに結合するのを阻害することができる。一つの態様において、この抗体は、IL-9と相互作用する。別の態様においては、この抗体は、IL-9レセプターと相互作用する。これらの抗体を誘導するために用いられるIL-9は、上で検討したIL-9の変異体のいずれでもよい。
【0076】
抗体は、当技術分野において標準的な技術を用いて、IL-9またはIL-9レセプターのペプチド配列からも作製される(免疫学のプロトコール、第9章、ワイリー社(Wiley)を参照のこと)。遮断抗血清を作製するために用いることができる、マウスIL-9レセプターからのペプチド配列は、以下のものが同定されている:GGQKAGAFTC(1〜10残基目)(配列番号:19)、LSNSIYRIDCHWSAPELGQESR(11〜32残基目)(配列番号:20)、およびCESYEDKTEGEYYKSHWSEWS(ペプチドを担体蛋白質に結合させるため、N末端にCys残基を付加した184〜203残基目)(配列番号:21)。さらに、ヒトIL-9レセプターに対する遮断抗体に結合するエピトープは、成熟ヒトIL-9レセプターの8〜14残基と同定されている。(TCLTNNI)(配列番号:22)およびヒトIL-9に対する遮断抗体に結合する2つのエピトープも、50〜67残基(CFSERLSQMTNTTMQTRY)(配列番号:23)および99〜116残基(TAGNALTFLKSLLEIFQK)(配列番号:16)であると同定されている。マウスの配列において遮断抗体を産生するペプチドに相当する、ヒトのペプチドおよびヒトのエピトープが、治療用抗体を作製するのに有用である可能性が最も高い。
【0077】
さらに別の態様において、本発明の化合物は、アトピー性アレルギーおよび喘息の治療に有効となるよう、IL-9経路の機能または制御を変化させる蛋白質を含む、化学的な成分と結合させてもよい61。これらの蛋白質には、アトピー性アレルギーおよび喘息の治療にさらに有益となりうるIL-4、IL-5、IL-3、IL-2、IL-13、およびIL-10を含む別のサイトカインおよび増殖因子の組合せ62が含まれる。さらに、本発明のIL-9は、リン酸化によって共役させてもよく、ビオチニル酸、チオ酸、アセチル酸、ヨウ素酸、および図27に示したクロスリンキング試薬(ピアス社(Pierce))のいずれと共役してもよい。
【0078】
さらなる態様において、本発明には、IL-9に結合する可溶性IL-9レセプター分子を投与することによって、IL-9の発現または機能を抑制制御することが含まれる。レナウルドら(Renauld)59は、IL-9レセプターに可溶性形態が存在することを明らかにした。この分子は、細胞に結合したレセプターへのIL-9の結合を阻害し、IL-9のアンタゴニストとして作用させるために用いることができる。可溶性レセプターは、サイトカインまたは別のリガンドに結合して、それらの機能を調節するために用いられてきた87。可溶性レセプターは、溶液中または膜の外側に生じる、膜結合レセプターの形態である。可溶性レセプターは、一般的には膜と結合しているこの分子のセグメントが存在しないために、生じるのかもしれない。このセグメントは、当技術分野においては、一般的に、この遺伝子の膜通過ドメインまたはこの蛋白質の膜結合セグメントと呼ばれている。したがって、本発明の一つの態様において、可溶性レセプターは、膜結合レセプターの断片または類似体を意味する。本発明の別の態様において、レセプターが膜の中に入り込めなくなるか、またはレセプターは膜に入り込めるがその中に留まることができなくなるよう、膜と結合するセグメントの構造を改変する(例えば、DNA配列の多型性または遺伝子の突然変異)。このように、可溶性レセプターは、対応する膜結合型とは対照的に、膜との結合に重要な、この遺伝子またはレセプター蛋白質の1個以上のセグメントに違いがある52、53。
【0079】
これらの化合物は、IL-9に結合するよう作用する可溶性IL-9レセプターの既知の形態であってもよい。またはこれらの化合物は、IL-9レセプターの既知の形態に似ているが、断片として存在するものでもよい。本発明の別の態様において、この化合物は、可溶性IL-9レセプターに匹敵する機能を保持しているが、組成においては、可溶性IL-9レセプターに似ていなくてもよい。例えば、この化合物の組成には、アミノ酸以外の分子が含まれていてもよい。このように、これらの化合物は、IL-9に結合して、IL-9がその細胞表面レセプターに作用するのを阻害する。
【0080】
本発明のさらなる態様は、アンチセンスまたは遺伝子治療に関する。アンチセンス、または遺伝子治療として提供される場合、特定の選択された効果をもたらすよう、改変したDNA分子を作製することができることが、当技術分野において、今では分かっている。IL-9レセプターをコードする本来のDNAセグメントは、他の哺乳動物すべてのDNA鎖と同じように、センス鎖とアンチセンス鎖が水素結合によって一緒になった2本鎖を有する。レセプターをコードするmRNAは、チミジンがウリジンに置き換わっていると予想されるが、センス鎖と同じ塩基配列を持っている。したがって、レセプターの配列に関する知識に基づいて、合成オリゴヌクレオチドを合成することができる。これらのオリゴヌクレオチドは、このレセプターをコードするDNAおよびRNAに結合することができる。本発明の活性断片は、mRNAおよびDNAのコード鎖に相補的であり、通常、少なくとも15ヌクレオチド、より一般的には20ヌクレオチド、好ましくは30ヌクレオチド、より好ましくは50ヌクレオチド以上である。センス鎖とアンチセンス鎖との間の結合強度は、総水素結合に依存する。したがって、熟練した当業者は、mRNAの総塩基数に基づいて、オリゴヌクレオチド配列の最適な長さを容易に計算することができると思われる。
【0081】
この配列は、mRNAの配列いずれかの部分に対して相補的である。すなわち、5’末端もしくはキャッピング部位の近傍、またはキャッピング部位の下流、キャッピング部位と開始コドンとの間であるかもしれないし、非コード領域またはコード領域の全部または一部だけをカバーしているかもしれない。アンチセンス配列が結合する特定の部位は、所望の阻害の程度、配列の独自性、アンチセンス配列の安定性などによってさまざまである。
【0082】
本発明の実施において、IL-9レセプターの発現は、上記の合成アンチセンスオリゴヌクレオチド配列を有効量投与することによって抑制制御される。本発明のオリゴヌクレオチド化合物は、ヒトIL-9またはIL-9レセプターをコードするmRNAに結合して、これらの蛋白質の発現(翻訳)を阻害する。グラスら(Gruss et al.)の「インターロイキン9は、初期および培養ホジキン細胞およびリード-スタンバーグ細胞によって発現されている(Interleukin 9 is expressed by primary and cultural Hodgkin and Reed-Sternberg cells.)」、Cancer Res.52:1026-31(1992年2月15日)を参照のこと。
【0083】
IL-9の点突然変異、挿入、欠失、またはスプライシング突然変異など、さまざまな突然変異を有する単離DNA配列も同様に、遺伝子治療において有用である。
【0084】
IL-9レセプターの直接的な制御に加えて、本発明は、シグナル伝達の阻害を含む下流制御の方法も含む。特に、本発明のさらなる態様は、チロシンのリン酸化阻害に向けられている。当技術分野において、高度な発エルゴンリン酸基転移反応は、キナーゼとして知られる多様な酵素によって触媒されることが分かっている。言い換えると、キナーゼは、ATPと代謝物との間でリン酸基を転移させる。IL-9は、多種の蛋白質のチロシンのリン酸化を誘導する。すなわち、JAK1チロシンキナーゼおよびJAK3チロシンキナーゼの活性化に加えて、IL-9は、Stat3のチロシンのリン酸化も誘導する58ことが、当技術分野において知られている。Stat3のリン酸化は、IL-9シグナル伝達経路に独特なものであるため、阻害因子にとって完全な標的となる58。本発明は、チロシンキナーゼ蛋白質の特異的な阻害因子であるチロフォスチンを、その範囲内に含む。このように、チロフォスチン(例えば、カルバイオケム社(Calbiochem)から入手可能)およびこれらのキナーゼのその他の同様の阻害因子は、シグナル伝達を調節する上で有用であり、アトピー性アレルギーおよび喘息を治療する上でも有用である。
【0085】
本発明のさらに別の局面において、驚くべきことに、アミノステロール化合物も、IL-9の刺激によるシグナル伝達の阻害において有用であることが分かった。本発明において有用なアミノステロール化合物が、米国特許出願第08/290,826号と、その関連出願第08/416,883号および第08/478,763号で説明されており、また、第08/483,059号と、その関連出願第08/483,057号、第08/479,455号、第08/479,457号、第08/475,572号、第08/476,855号、第08/474,799号、および第08/487,443号でも説明されており、これらは、参照として本明細書に組み入れられる。
【0086】
さらに、本発明には、薬学的に許容される担体と共に、本発明の化合物を含む薬学的組成物が含まれる。薬学的に許容される担体は、水および油などの滅菌した液体で、ピーナッツ油、大豆油、ミネラル油、ゴマ油などの、石油性、動物性、植物性、または合成した油が含まれる。薬学的組成物が静脈に投与される場合には、水が、好ましい担体である。食塩水および含水デキストロースとグリセロールの水溶液も、特に、注射可能な水溶液の液状担体として用いることができる。適当な薬学的担体は、マーチン、E.W.(Martin,E.w.)の「レミントンの製薬科学(Remington's Pharmaceuticals Sciences)」で説明されており、これは特に、参照として本明細書に組み入れられる。
【0087】
本発明に係る治療方法に用いられる化合物は、治療されるべき条件、部位特異的治療の必要性、投与すべき薬物の量などに応じて、全身的または局所的に投与することができる。
【0088】
局所的な投与法を用いることができる。溶液、懸濁液、ゲル、軟膏、または塗剤などのあらゆる一般的な局所用の組成物を用いることができる。例えば、「レミントンの製薬科学」第17版、ペンシルバニア州イーストン、マック出版社(Mack Publishing Company)で例示されているように、局所的処方剤の調製が、薬学的処方剤の技術分野において充分に説明されている。局所的な施用のためには、粉末またはスプレー、特にエアロゾルの形状で投与することもできる。全身投与に合わせた薬学的組成物として、活性成分を投与してもよい。知られているように、薬物を全身的に投与すべき場合には、粉末、丸薬、錠剤などにして調製したり、経口投与用にシロップまたはエリキシルとして調製してもよい。静脈内、腹腔内、または病変部内に投与するためには、注射によって投与可能な溶液または懸濁液として化合物を調製する。ある場合には、これらの化合物を座薬の形状に処方するのが有用であろうし、皮下に蓄積させたり筋肉内注射をするためには、長時間かけて放出されるような処方剤とするのが有用なこともあろう。好ましい態様において、本発明の組成物は、吸入によって投与してもよい。吸入療法のためには、化合物を、用量計付きの吸入器によって投与するのに有用な溶液にするか、または乾燥粉末吸入器に適当な形状にすることができよう。
【0089】
有効用量とは、IL-9の発現、またはIL-9によって調節される機能のいずれかを抑制制御する用量のことである。所定の有効用量は、条件によってさまざまであり、また一定の場合でも、治療すべき症状の重篤さおよび治療に対する患者の感受性によってさまざまである。したがって、絶えず実験によって、その時間と場所における所定の有効用量を決定するのが一番よい。しかし、本発明による喘息関連疾患の治療において、重量で0.001%〜5%の間、好ましくは、約0.01%〜1%を含む処方薬が、通常は、治療学的に有効な用量を構成すると予想される。全身的に投与する場合には、1日につき、体重1kg当たり0.01mg〜100mgの間の用量、しかし好ましくは、約0.1〜10mg/kgの用量が、ほとんどの場合、治療結果に効果をもたらすと考えられる。
【0090】
本出願者らはまた、IL-9の発現、またはIL-9によって調節される機能を抑制制御する化合物をスクリーニングする方法を提供する。当技術分野において標準的な技術を用いて、IL-9によって発現される機能が抑制制御されるか否かを判定することができる57〜60。特定の態様において、本出願者らは、Met IL-9と同等の機能を有する化合物を同定する方法を提供する。したがって、一つの態様において、インビボでのIL-9機能の抑制制御における、化合物の効能を評価するための、当技術分野において周知の技術42を用いて、血清総IgEを測定することができる。別の態様においては、インビボでのIL-9機能の抑制制御における化合物の効能を評価するための、当技術分野において周知の技術42を用いて、気管支過反応、気管支肺胞洗浄液、および好酸球増加症を測定することができる。さらに別の態様において、IL-9の機能は、インビトロで評価することができる。当業者に知られているように、ヒトIL-9は、MO7e細胞において、複数の蛋白質の迅速で一過性的なチロシンのリン酸化を特異的に誘導する。転写因子Stat3のチロシンのリン酸化は、IL-9の作用に特異的に関連していると考えられる。IL-9レセプターの「安定的な発現」に依存する、IL-9およびIL-9様分子の機能の特徴を調べるための別の方法では、周知のマウスのTS1クローンを用いて、細胞増殖測定法によってヒトIL-9の機能を評価する59。
【0091】
また本発明には、IL-9レセプターを発現する細胞系に基づいて、飽和可能で特異的なリガンド結合を見つけるための簡単なスクリーニング法が含まれる46、59。IL-9レセプターは、K562、C8166-45、B細胞、T細胞、肥満細胞、好中球、巨核球(UT-7細胞)53、ヒト巨核芽性白血病細胞系MO7e57、TF159、マクロファージ、胎児胸腺細胞、ヒト腎細胞系29353、およびマウス胚海馬前駆細胞系46、52、53を含む、広く多様な細胞型において発現している。別の態様において、可溶性IL-9レセプターを用いて、リガンド結合およびレセプターのアンタゴニストの可能性があるものを評価することができる。
【0092】
本発明の実施には、従来の用語および当業者の通常の技術の範囲内にある、分子生物学、薬学、免疫学、および生化学の技術が用いられる。例えば、サムブルックら(Sambrook)「分子クローニング:実験マニュアル(Molecular Cloning:A Laboratory Manual)」第2版(コールドスプリングハーバー研究所出版[1985])、またはアウスウーベルら(Ausubel)「分子生物学の最新プロトコール(Current Protocols in Molecular Biology)」ジョン・ワイリー・アンド・サンズ社(John Wiley & Sons,Inc.)[1994]を参照のこと。
【0093】
ところで、本発明者らは、次の基本的な背景情報を提供する。身体の遺伝的物質であるDNAは、46本の染色体の上に配置されているが、染色体の各々は、セントロメアによって結合された2本の腕を有する。各染色体は、pまたはqと名付けられたセグメントに分けられる。pという記号は、セントロメアから最も近いテロメアまでを測定した染色体の短腕を同定するときに用いられる。染色体の長腕は、qという記号で表される。染色体上の位置は、染色体番号(すなわち、5番染色体)、ならびにpまたはq領域の位置(すなわち、q31-q33)によって示される。さらに、身体は、性染色体、XおよびYを持っている。減数分裂の過程で、XおよびY染色体は、偽常染色体領域として知られている領域でDNA配列情報を交換する。
【0094】
DNA、すなわちデオキシリボ核酸は、4つの異なる塩基性化合物、アデニン[A]、チミン[T]、シトシン[C]、およびグアニン[G]を含む、2本の相補的なヌクレオチド鎖から成る。一方の鎖のAは、もう一方の鎖のTと結合し、一方の鎖のCは、もう一方の鎖のGと結合して、相補的な「塩基対」を形成し、各対は、それぞれの鎖に一つずつ塩基を有する。
【0095】
3個のヌクレオチド(「コドン」)が連続したものをグループにすると、1個のアミノ酸をコードしている。したがって、例えば、3個のヌクレオチドCAGは、アミノ酸のグルタミンをコードしている。天然に存在する20個のアミノ酸と、それらの一文字コードは、以下の通りである。
【0096】
アラニン Ala A
アルギニン Arg R
アスパラギン Asn N
アスパラギン酸 Asp D
アスパラギン、
またはアスパラギン酸 Asx B
システイン Cys C
グルタミン Gln Q
グルタミン酸 Glu E
グルタミン、
またはグルタミン酸 Glx Z
グリシン Gly G
ヒスチジン His H
イソロイシン Ile I
ロイシン Leu L
リジン Lys K
メチオニン Met M
フェニルアラニン Phe F
プロリン Pro P
セリン Ser S
トレオニン Thr T
トリプトファン Trp W
チロシン Tyr Y
バリン Val V
アミノ酸は、蛋白質を構成する。アミノ酸は、親水性、すなわち水に対して親和性を示すものもあり、または疎水性、すなわち水を忌避するものもある。例えば、G、A、V、L、I、P、F、Y、W、C、およびMと名付けられたアミノ酸は疎水性で、また、S、Q、K、R、H、D、E、NおよびTと名付けられたアミノ酸は親水性である。一般的に、アミノ酸の疎水的または親水的な性質は、ペプチド鎖の折りたたみに影響を与え、結果的に、蛋白質の3次元構造に影響を与える。
DNAは、以下のように蛋白質と関係している。
【0097】
【化1】
ゲノムDNAは、生物の細胞の中に見られるDNA配列のすべてを含む。これは、メッセンジャーRNA[「mRNA」]に「転写」される。相補的DNA[「cDNA」]は、mRNAの逆転写によって作出される、mRNAの相補的なコピーである。ゲノムDNAとは異なり、mRNAもcDNAも、いわゆる「エキソン」という、蛋白質をコードするDNA領域またはポリペプチドをコードするDNA領域のみを有する。ゲノムDNAはまた、蛋白質をコードしていない「イントロン」も含みうる。
【0098】
実際、真核生物の遺伝子は、イントロンによって中断されたエキソンからなるため、それらによってコードされる蛋白質について不連続である。RNAに転写された後、イントロンはスプライシングによって切り出され、成熟メッセンジャーRNA(mRNA)を生成させる。エキソンの間のスプライシング部位は、典型的には、スプライシング作用に対するシグナルとして作用するコンセンサス配列によって決められる。スプライシングは、一次RNA転写産物からのイントロンを除去することと、切り出されたイントロンの両側に残ったRNAの末端を結合または融合することから成り立つ。イントロンの有無、イントロンの組成物、および遺伝子当たりのイントロンの数は、同じ生物種の系統間および同一の基本的な機能遺伝子を有する生物種の間で異なる。ほとんどの場合、イントロンは本質的ではなく融通がきくと想定されるが、それらの分類も絶対的ではない。例えば、一つの遺伝子のあるイントロンは、別の遺伝子のエキソンであったりする。場合によっては、代わりのまたは別のスプライシングパターンによって、同じ一本のDNA鎖から別の蛋白質が生成される。実のところ、イントロンの構造的な特徴と、そのもとにあるスプライシング機構とが、異なる種類のイントロンの分類の基礎を作っている。
【0099】
エキソンに関しては、これらは、例えば、機能的ドメイン、折りたたみ領域、または蛋白質の構造的要素など、不連続なドメインまたはモチーフに相当することがあり、または逆ターン、ループ、グリコシル化シグナル、およびその他のシグナル配列、または構造化されていないポリペプチドリンカー領域などの、短いポリペプチド配列に相当することがある。本組合わせ法のエキソンの基本単位は、天然に存在するエキソン配列に相当する核酸配列、または突然変異(例えば、点突然変異、欠失、融合)を起こした天然のエキソン配列を含むことができる。
【0100】
ここでDNAの操作に戻ると、DNAは、一定の分かっている部位でDNAを切断する「制限酵素」と、DNAを連結させるDNAリガーゼとを用いて、切断し、スプライスし、またそれ以外の操作を行なうことができる。このような技術は、サムブルックら(Sambrook)「分子クローニング:実験マニュアル(Molecular Cloning: A Laboratory Manual)」第2版(コールドスプリングハーバー研究所出版[1985])、またはアウスウーベルら(Ausubel)「分子生物学の最新プロトコール(Current Protocols in Molecular Bioklogy)」ジョン・ワイリー・アンド・サンズ社(John Wiley & Sons,Inc.)[1994]などの教科書に開示されているため、当技術分野において通常の技術を有する者によく知られている。
【0101】
そして、特異的な長さと配列を有するDNAを、プラスミド、コスミド、またはウイルスなどの遺伝的因子で、自らの調節に基づいて複製することのできる「レプリコン」の中に挿入することができる。「組換えベクター」または「発現ベクター」とは、DNAの発現、すなわち、DNAによってコードされている蛋白質の産生が可能なように、DNAセグメントが挿入されているレプリコンのことである。発現ベクターは、実験室で構築してもよいし、別の実験室から入手してもよいし、または商業的な供給業者から購入してもよい。
【0102】
組換えベクター[当技術分野において、さまざまな名前で知られている]は、包括的には、「形質転換」として知られている処理によって、宿主の中に組み込まれうる。形質転換とは、感染、直接的な取り込み、形質導入、F-接合、マイクロインジェクション、またはエレクトロポレーションなど、多数の方法のいずれかによって、外来のDNAセグメントを宿主細胞へ転移させることである。組換え宿主細胞、細胞、および細胞培養物としてさまざまに知られている単細胞の宿主細胞には、バクテリア、酵母、昆虫細胞、植物細胞、哺乳動物細胞、およびヒト細胞が含まれる。特に好ましい態様において、宿主細胞には、大腸菌、シュードモナス菌、バチルス菌、放線菌、酵母、CHO、R1-1、B-W、LH、COS-J、COS-7、BSC1、BSC40、BMT10、およびS69細胞が含まれる。酵母細胞には、特に、サッカロマイセス属、ピヒア属、カンジダ属、ハンセヌラ(Hansenula)属、およびトルロピス(Torulopis)属が含まれる。
【0103】
当業者は、宿主細胞によるDNAセグメントの発現には、適切な調節配列または因子が必要であることを認識している。調節配列は、用いる宿主細胞によって異なるが、例えば、原核生物においては、プロモーター、リボソーム結合部位、および/または転写終結部位が含まれる。真核生物においては、このような調節配列には、プロモーターおよび/または転写終結部位が含まれる。当業者にはよく理解されているように、注意深い選抜とこれらの調節配列の置き方によっては、ポリペプチドの発現が促進される、すなわち、標準的なレベルを超えて増加することがある。
【0104】
別の態様において、用いられうるプロモーターには、ヒトのサイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、テトラサイクリンで誘導できるプロモーター、シミアンウイルス(SV40)プロモーター、モロニーマウス白血病の長い末端反復配列(LTR)プロモーター、グルココルチコイドで誘導できるマウス乳腺癌ウイルス(MMTV)プロモーター、ヘルペスチミジンキナーゼ・プロモーター、マウスおよびヒトのβ-アクチン・プロモーター、HTLV1およびHIV IL-9の5'側隣接領域、ヒトおよびマウスのIL-9レセプターの5'側隣接領域、バクテリアのtacプロモーター、ならびにショウジョウバエのヒートショック骨格接着領域(SAR)エンハンサー因子が含まれる。
【0105】
DNAは、ペプチド、オリゴペプチド、および蛋白質など、どのような長さのポリペプチドとしても発現させられる。ポリペプチドには、グリコシル化、アセチル化、リン酸化などの、翻訳後修飾も含まれる。
【0106】
本発明にとって有益なもう一つの分子生物学的技術は、「連鎖解析」である。連鎖解析は、特性または疾患と相関関係にある染色体または染色体領域を同定するために用いられる解析的な方法である44。染色体は、その上に遺伝子が組織化されている、遺伝の基本的な単位である。遺伝子の他に、当業者は、染色体上に「DNAマーカー」を同定している。DNAマーカーとは、その同一性および配列を容易に決定できる、既知のDNA配列である。連鎖解析の方法論は、病気遺伝子、例えば、喘息に対する罹病性に関連した遺伝子を特定の染色体にマッピングするのに応用されてきた42、44。
【0107】
本発明の別の態様は、開示された本発明の明細および実施を考慮することにより、当業者には明らかになると思われる。本発明の真の範囲は、請求の範囲によって示されており、本明細書および実施例は、例示にすぎないと考えられるよう意図されている。
【0108】
方法
以下の実施例に記述した実験の実施に当たって、本出願者らは以下の方法を用いた:
患者集団
喘息の家族を2つの源から募集した27、42、79〜83、99。それぞれの場合において、ヒトIL-9遺伝子の3365位での多型性に関して患者の遺伝子型を分類した[GenBank寄託番号 M30136]。
【0109】
米国東海岸の74人から成る第3の集団を、喘息およびアトピーに関して無作為に確認した。コドン117におけるメチオニン置換の発生率を、一般集団におけるこの変種の発生率の不偏推計値として用いた。
【0110】
ペンシルバニア州フィラデルフィアの49人から成る第4の集団を、喘息およびアトピーに関して無作為に確認した。血清中総IgEを、酵素結合イムノソルベント試験[ELISA、ゲンザイム、ケンブリッジ、マサチューセッツ州]によって解析した。各個人の末梢血の白血球からDNAを抽出した。抽出したゲノムDNAについて、遺伝子マーカー(遺伝子タイピング)および候補遺伝子の分析を実施した。再度、コドン117におけるメチオニン置換の発生率を、一般集団におけるこの変種の発生率の不偏推計値として用いた。
【0111】
オリゴヌクレオチドプライマー。
【0112】
プライマーは全て、OLIGO 4.0を用いて設計した。IL-9遺伝子の特徴付けは、報告された配列の5個の各エキソン周囲のプライマーを用いて実施した。各エキソン周囲のプライマー 配列は:エキソン1[上流][5' GCT CCA GTC CGC TGT CAA 3']および[下流][5' CTC CCC CTG CAG CCT ACC 3'][産物のサイズ150 bp];エキソン2[上流][5' CGG GGC TGA CTA AAG GTT CT 3']および[下流][5' GTT CTT AAA GAG CAT TCA CT 3'][産物のサイズ99 bp];エキソン3[上流][5' ATT TTC ACA TCT GGA ATC TTC ACT 3']および[下流][5' AAT CCA AGG TCA ACA TTA TG 3'][産物のサイズ113 bp];エキソン4[上流][5' TTT CTT TGA ATA AAT CCT TAC 3']および[下流][5' GAA ATC ACC AAC AGG AAC ATA 3'][産物のサイズ206 bp];ならびにエキソン5[上流][5' ATC AAC TTT CAT CCC CAC AGT 3']および[下流][5' GGA TAA ATA ATA TTT CAT CTT CAT 3']であった。各エキソンはまず、一本鎖構造多型性解析[SSCP]を用いて調べた72、73。エキソン5のプライマーは、ポリメラーゼ連鎖反応[PCR]増幅後に160 bpの産物を産生し、これはまた、直接固相配列分析によっても調べた72、73。上流のプライマーは5'ビオチン標識と共に合成し、増幅した後、ストレプトアビジン結合常磁性ビーズ[ダイナル]によってPCR産物を捕獲し、他所で記述されている77サンガーシークエンシングによって特徴付けを行った。配列の多型性は、繰り返し分析によって人為的誤差と識別した。
【0113】
SSCP分析。
【0114】
電気野に暴露された一本鎖DNAの移動の変化に基づく多型性の検出法であるSSCP72は、シュウェンゲルら(Schwengel、1994)が記述したように、室温で10%グリセロールの存在下および非存在下で、クロスリンクモノマー濃度2.67%で6%ポリアクリルアミドゲル電気泳動を用いて実施した77。PCR 産物4μlを2倍濃度の停止緩衝液[95%ホルムアミド、20 mM EDTA、0.05% BPB、0.05%キシレンシアノール]5μl、および0.5% SDS1μlならびに50μM EDTAと混合し、85〜90℃で8分間変性させ、その後直ちに氷上に置いた。電気泳動は、ゲルを含むグリセロールで約24時間、および非グリセロールゲルでは12時間、12ワットで実施した。次にゲルを乾燥させ、コダックのXAR(登録商標)フィルムに露出した。
【0115】
DNAシークエンシング。
【0116】
PCR産物の直接DNAシークエンシングは、シュウェンゲルら(Schwengel、1994)77が記述したように、エチジウムブロマイドで染色した1%アガロースゲル上に正しいサイズのPCR産物の存在を確認した後、固相法を用いて行った。PCR産物20μlをダイナビーズ(Dynabeads)(登録商標)m-280[ダイナル]40μlと共に15分インキュベートした。ビーズは、製造元の示唆通りに洗浄して希釈した。各試料をその後、10 mMトリス塩酸pH 7.5、1 mM EDTA、2 M NaClを含むB&W緩衝液で洗浄し、0.1 N NaOHで変性させ、次に0.1 N NaOH、B&W緩衝液、および10 mMトリス塩酸pH 8ならびに1 mM EDTA[TE]で洗浄した。ビーズ沈殿物をH2O 10μlに再懸濁した。
【0117】
サンガーシークエンシング反応は、シーケナーゼ[アメリカバイオケミカルカンパニー]を用いて行った。35S-dATPまたは33P-dATPはシークエンシング溶液に取り込まれ、その産物を、7M尿素を含む5%または6%のいずれかのポリアクリルアミドゲルで電気泳動した。ケルは固定せずに乾燥させ、X線フィルムに露出した。両親および子供の遺伝子型の比較により、対立遺伝子を決定した。頻度の少ない人為的誤差は、繰り返すことで真の配列多型性と容易に識別された。
【0118】
DNAを末梢白血球から得て抽出した。ゲノムDNAを、増幅のために200 μg/mlの濃度に希釈した27、42。DXYS154を含む単純配列リピート[SSR]は、ゲノムデータベース[GDB;ウェルチ図書館、ジョン・ホプキンス大学、バルチモア、MD]から選択した。sKK-1マーカーの遺伝子タイピングは、90 bpの産物を生じる以下のプライマーsKK-1U[5' CAA ATC TGA AGA GCA AAC TAT 3']およびsKK-1L[5' TTA AAA AAT TCA TTT CAG TAT TCT 3']を用いて実施した。各SSR産物は、PCR72によって増幅し、先に記述した方法に従ってサイズを測定した27、42。試料の取り扱いはウェーバーら(Weber)が記述した方法を少し改変して実施した71、27、42、。各オートグラフの2回の独立した計測から遺伝子型を決定した。家族を遺伝子タイピングした個々の人には臨床データを知らせなかった。
【0119】
RFLP分析。
【0120】
3365位でのCからTへの多型性の結果として、IL-9エキソン5のPCR産物の52位でStyI制限酵素断片長多形[RFLP]を産生した。このDNA配列変種の存在に関して試験するために、PCR増幅の前にエキソン5の下流のプライマーを末端標識した。PCR産物を次にStyIで消化し、長さが108bp[標識]および52bp[非標識]の2つの断片を得た。このRFLPをSSCPと共に用いて、家族および個人におけるこの多型性の存在を確認した。
【0121】
連鎖分析およびデータ処理。
【0122】
連鎖分析は、BHR、アトピーおよび喘息のような複雑な形質の遺伝的基礎の調査のための確立されたアプローチである罹患兄弟ペア法(affected sib-pair methods)[SIBPAL,S.A.G.E.]78を用いて実施した。非罹患兄弟ペアの比率はなおも遺伝子担体である可能性があるが、形質を発現していないため、罹患兄弟ペアを通常、最初に試験する。遺伝[優勢、劣性等]のモデルが正確に特定されなければならないLODスコア法とは対照的に、兄弟ペア法による分析はこの点において明確な仮定をしない。このように、兄弟ペア分析では、両親の臨床情報は連鎖の試験に用いない。これらの方法では、罹患した2人の子供が、同じ両親のマーカー対立遺伝子のコピーをどれほどの頻度で共有するかという点を適切に観察する44。両親のマーカー対立遺伝子の同じコピーが異なる子孫に認められれば、それらは「遺伝により同じもの」を受け継いでいると言われる。偶然による予測値[50%]より起こる頻度が有意に高いマーカー対立形質に関して、罹患兄弟ペアが遺伝により同一である場合、連鎖が示唆される。同じマーカー対立遺伝子が疾患遺伝子と共に異なる子孫に伝搬されれば、このことは、マーカー座が連鎖している、または減数分裂の際に共分離されるほど、同じ染色体上で疾患遺伝子に極めて近い位置に存在するに違いないことを意味する。次に、マーカーの染色体での位置を知ることによって、形質をマッピングする。
【0123】
ヒトにおける連鎖はまた、確率比の方法によって確立してもよい。この方法は、例えば1つの仮説の下で、観察された家族のデータが2つのDNAマーカー間に連鎖を生じる確率と、別の仮説の下で、典型的には非連鎖を生じる確率との比較を含む。これらの確率の比を、他の仮説に対する一つの仮説のオッズ比と呼ぶ。
慣例により、哺乳類の遺伝学者はオッズ比の対数またはLODスコアを好む。一般に連鎖は、連鎖対非連鎖のオッズが圧倒的に大きい場合、または1,000対1[LOD=3]に達した場合に、証明されたと見なされる。オッズ比がこの仮説に対して100:1[LOD=-2]に低下すると連鎖は拒絶される。最大確率推計値は、確率比が最大の場合の再結合分画である。このように、多系統のLODsは、スコアが3[1,000対1のオッズを表す]になるまで、または-2[100:1のオッズを示す]に低下するまで加算される。
【0124】
臨床および遺伝子型データは全て、マッキントッシュ(MacIntosh)(登録商標)またはサンマイクロシステムズ(Sun Microsystems)(登録商標)コンピューターでをエクセル(EXCELL)(登録商標)用いて処理した。統計分析はJMP[SASインスチチュート、インク、カリー、NC]を用いて行った。ウィルコキソン/クラスカル-ワリス(Wilcoxon/Kruskal-Wallis)検定[階数和]を用いて、コドン117でのホモ接合体[Met/Met]、ヘテロ接合体[Met/Thr]、またはホモ接合体[Thr/Thr]がその血清中総IgEが異なるか否かを検定した。P値は全て、対立遺伝子の増加的共有のみが予測されるため片側検定を用いた罹患兄弟ペア分析を除き、両側で行った。
【0125】
この背景的情報を提供し、本出願者らは本発明の好ましい面について記述する。
【実施例】
【0126】
実施例1
BHRとマウス第13染色体との連鎖分析
BHRの複雑な遺伝的決定因子を詳細に分析する一助として、本出願者らは、様々な気管支収縮刺激に対するその遺伝的感受性が異なるマウスモデルを開発した。組換え近親交配株[BXD]を用いた近交系動物モデルにより、BHRに対する感受性を制御する遺伝子の数、その影響の程度、およびその正確な染色体上の位置を明らかにするためのヒトで進行中の試験を促進することが可能である。特に、動物モデルにおいて、喘息に関して重要な危険因子に対する感受性を決定する遺伝子の位置を特定することは、ヒトにおけるこの遺伝子の位置クローニングの役に立つ可能性がある。
【0127】
BHRおよびアトピーの素因を有する遺伝子は、本発明の前には確認されていないが、染色体5q31〜q33は、マウス第11、13、および18染色体の一部とシンテニーであることがわかっている。図2は、BHR、アトピー、および喘息に関連する気道炎症において、何らかの役割を果たしている可能性がある多数の位置候補領域を含むシンテニー領域を図示する。特に、BHRとの連鎖に関して有意な証拠を示しているヒト染色体5q31〜q33の領域は、多数の候補遺伝子を含むマウス第11、13、および18染色体の一部と相同である84。
【0128】
特に、IL-9または近傍遺伝子は最近、無作為確認集団を用いた血清中総IgE濃度の対数値とこの遺伝子マーカーとの間の連鎖的不均衡に基づくと、可能性のある候補遺伝子として示唆されている43。
【0129】
4つの候補区間の比較にもかかわらず、連鎖の証拠は唯一の領域で認められ、これをAib1[アトラキュリウム誘発気管支収縮1]と呼んだ。図3にその結果を示す。特に、図3は、低反応性C57BL/6Jおよび高反応性DBA/2J原種系に由来する24 BXD RI系のアトラキュリウム誘発気道反応性に関するLODスコア曲線を示している[直線]。20 BXD系の選択的遺伝子タイピングから得られたLODスコア曲線も同様に示す[点線]。BXD系-2、-6、-18、および-32は、DBA/2の下1標準偏差以上でC57BL/6の平均反応以上の平均反応を示す表現型の中間であるため、2回目の分析では用いなかった。アトラキュリウム20mg/kgの静脈内注射に対する気管支収縮反応は、気道圧時間指数[APTI]と呼ばれる、時間[4分]に対して積分した最大吸気圧の変化によって評価した。アトラキュリウム誘発APTIはRT系当たり2〜8匹の動物において測定した。マーカーデータはマップマネージャーデータ分析プログラムのRWEデータベースから得た。マーカー間の遺伝子距離[cM]を横座標に示す。LODスコアはマップマーカー/QTL連鎖プログラムによって計算した。QTLはこの領域で検出され、アトラキュリウム誘発気道収縮-1[Aib1]と呼ばれた。
【0130】
図3は、この定量的形質座[QTL]がマウス第13染色体の中央部に位置し、この区間でオッズ[LOD]2.42の最大見込み対数値が得られたことを示している。BXDマップの全てのマーカーを分析すると、アトラキュリウム誘発気管支収縮の総変動の44%はAib1で説明された。アトラキュリウムに対する反応が中間であった4つの系統[BXD-2、-6、-18、および-32]を除外した後にQTL分析を行うと、第13染色体のLODは2.85に増加した。第13染色体の連鎖領域における既知の位置候補には:D1ドーパミン受容体[Drd1]、繊維芽細胞増殖因子受容体4[Fgfr4]、リンパ球抗原-28[Ly28]、チオプリンメチルトランスフェラーゼ[Tpmt]およびIL-9が含まれる。
【0131】
本出願者らは、ヒトにおけるこれまでのマッピングデータに基づき、マウスの4つの候補領域との連鎖に関して特に試験しているため、本明細書に示すデータは非常に重要である。ランダー&ボットスタイン(Lander and Botstein)が古い論文で述べているように67、連鎖に関する偽陽性率は、LOD閾値(T)をT=1/2(log10 e)(Z α/n)2(ここで、nは調べた区間の数に等しい)となるように選択すれば得られる。典型的には、連鎖の証拠として3.3という最大LODを必要とする67。しかし、この閾値は、ゲノム全体をを調査しているという仮説に基づいている。これらの同じ著者が、0.83というLODは、唯一の領域を調べる場合には十分であると指摘している。この場合、4つの候補領域では、多数の独立した比較について訂正すると、真のP≦0.05を得るためには、各領域について0.0125というP値(α)が必要である。ソラー&ブロディ(Soller and Brody)68が示唆しているように、ただ一つの偽陽性所見でも起こるような5%誤差率を採用し、等式1/2(log10 e)(Z α/n)2を解釈すると、LOD閾値は少なくとも1.36となる。1.48という最大LODは、IL-9遺伝子候補について得られた。許容可能な偽陽性誤差率を≦0.1%に制限すると、LOD閾値は2.36に増加する。このように、第13染色体(Aib1)上の候補区間について得られた2.42という最大LODは、非常に有意である。
【0132】
これらのLOD閾値データは、ヒトおよびマウスにおけるBHRの連鎖の保存に関する証拠を提供する。ヒトにおけるBHRは、多くの増殖因子およびサイトカインが含まれ、IL-9遺伝子およびマウス第13染色体のIL-9領域に対するAib1座マップを含む染色体5q上の領域と連鎖する。
【0133】
実施例2
IL-9遺伝子多型性の同定
本出願者らは、BHRに関してマウスとヒトの間に連鎖の保存があることを証明した。これらのデータは、この遺伝子またはDNA配列の機能の変化がマウスの気管支反応性の制御に重要である可能性があることを示唆している。上記の方法を用いて、PCR後のヒトIL-9の各エキソンに関して、正しいサイズの独自の産物をゲル電気泳動によって同定した。SSCPにより、一つの多型性をヒトIL-9遺伝子のエキソン5に同定した。直接DNA配列分析により、新規SSCPコンフォーマーの原因として、ヒトIL-9遺伝子の3365位[GenBank寄託番号M30136]でのCからTへのヌクレオチド置換が証明された。このDNA配列変化は、IL-9蛋白質のアミノ酸117でのトレオニン(親水性)からメチオニン(疎水性)への非保存的置換を予測する。
【0134】
エキソン5は、マウスIL-9配列と比較してヒトIL-9の最高保存区間内にある蛋白質のこの部分をコードする(図4参照)。
【0135】
様々な集団からの個々の人を遺伝子型分類を行い、ヒトIL-9のコード配列におけるヌクレオチド置換の直接分析によって、これらの対立遺伝子の発生率を調べた。喘息家系グループの394人中2人が、コドン117においてホモ接合[Met/Met]であった[0.5%]。ヘテロ接合は91人[23.1%]、そして[Thr/Thr]ホモ接合体は301人[76.4%]であった。イタリアの家系集団では喘息の症状患者により確認したため、このIL-9変種の真の発生率は有意により高い可能性がある。アトピーおよび喘息に関して無作為に確認した別の民族的に多様な集団では、コドン117において[Met/Met]ホモ接合体は49人中1人[2.0%]であった。ヘテロ接合は11人[22.4%]、そして[Thr/Thr]ホモ接合体は37人[75.5%]であった。Met/Thrヘテロ接合体の発生率は、アトピーおよび喘息に関して無作為に確認した第4の集団では18.9%であった。このように、報告された配列[GenBank寄託番号M30136]と比較すると、集団の約20%が3,365位でのT対立遺伝子の担体を表す可能性がある。
集団におけるいかなる対立遺伝子の発生率もp2+2pq+q2であることは当技術分野で周知であるため、集団の約4%がIL-9のコドン117においてMet/Metホモ接合であると予想される。
【0136】
全体的に、血清中総IgEは、[Met/Met]ホモ接合体では平均で44.5 I.U.で、これは野生型の[Thr/Thr]ホモ接合体の値[351.7 I.U.]または[Met/Thr]ヘテロ接合体の値[320.9 I.U.]とは有意に異なっていた。図5参照。ホモ接合の保護された人[Met/Met]は、1人の人で皮膚試験陽性が1回あったことを例外として、アトピー性アレルギーの証拠を証明できなかった。これらのデータは、この新規DNA多型性がホモ接合状態で遺伝されれば、血清中総IgEがより低くなることを含め、アトピー性アレルギーからの保護に関連することを示している。
【0137】
図6は、IL-9単純配列リピート多型性のPCR増幅を図示している。報告された配列[GenBank寄託番号M30136]と比較した3,365位でのヌクレオチド多型性によって生じた制限断片長に関して、このマーカーをこれらの個人の遺伝子型と比較する。2つの家族を示す。レーン1および2の人は、レーン3(Met/Thr)およびレーン4(Met/Met)の人の両親(Thr/Met)である;レーン5(Thr/Thr)および6(Met/Met)は、レーン7(Met/Thr)および8(Met/Thr)の子供の両親である。IL-9単純配列リピート多型性(各図における最低のバンドは、長さが248ヌクレオチドである)に関する最少の対立遺伝子は、これらの人および世界中で試験した集団からの全員において、Met117対立遺伝子による完全な連鎖不均衡の中にある。これは、イタリア人および調べた全ての無作為に確認した多様な民族的個人においても当てはまり、したがって、このマーカーはMet117対立遺伝子の存在の検出に診断的に用いてもよい。これらのデータは、この変種が世界中の集団に広く分布しており、これらの集団の多くが分離される前にこの変種が生じている、という仮説と最もよく一致する。
【0138】
実施例3
IL-9受容体発現およびリガンド結合アッセイ
精製組換えThrIL-9、MetIL-9、および構造または機能がMetIL-9に類似している可能性がある化合物を、ボルトンAE&ハンターWM(Bolton AE,and Hunter WM,Biochem J.133:529〜539(1973))が記述したように、ボルトン・ハンター試薬を用いて放射標識する。この材料を2,300 cpm/fmol以上の高比活性に標識する。ヒトK562およびMO7e細胞は、10%(v/v)ウシ胎児血清、50 mM 2-メルカプトエタノール、0.55 mM L-アルギニン、0.24 mM L-アスパラギン、および1.25 mM L-グルタミンを加えたダルベッコ改変イーグル培地0.8ml中で、30℃で増殖および再懸濁する。K562またはMO7e細胞はそのまま、または下記のようにIL-9受容体遺伝子にトランスフェクトさせた後に使用する。完全な長さのIL-9受容体を含むプラスミドDNAを、pRC/RSVプラスミド(InVitrogen、サンジエゴ)にクローニングし、塩化セシウムを用いた遠心によって精製した。電気穿孔の直前に、プラスミドDNA(50μg)を0.4cmのキュベット中の細胞に加える。2重電気パルス(750V/74Ω/40マイクロファラデーおよび100V/74Ω/2100マイクロファラデー)の後、細胞をIL-9を加えた新鮮な培地で直ちに希釈する。24時間後、細胞を洗浄し、リガンドなし、または様々な濃度の125I-標識リガンドと共に20℃で3時間、G418(2.5mg/ml、GIBCO)中でインキュベートする。平行実験において大量の非標識リガンドを用いて、非特異的結合を推定する。次に、細胞を洗浄して濾過し、回収して計数した。特異的取り込みはスキャッチャード解析によって計算する。特異的結合を評価するために、125I-標識Thr117 IL-9および様々な量の推定のコールドリガンドを用いて同様の競合的アッセイを行う。
【0139】
アミノ酸44〜270(R&D Systems)を含む可溶性のIL-9受容体を、異なる型のヒト組換えIL-9と共にインキュベートした。量を変化させたFlag Met117およびFlag Thr117(実施例7に記述)を、PBS中で可溶性受容体0.5μgと共に室温で30分インキュベートした。EBC緩衝液(50mMトリスpH7.5;0.1M NaCl;0.5% NP40)(300μl)を、抗FLAGモノクローナル抗体(IBI)1μgと共に加え、氷浴で1時間インキュベートした。プロテインAセファロース溶液40 μlを各試料に加えて4℃で1時間混合した。試料を11,000×gで1分間遠心し、沈殿物をEBC 500 μlで4回洗浄した。沈殿物を2倍濃度のSDS緩衝液26 μlに溶解し、4分間沸騰させ、18%ポリアクリルアミドゲルで電気泳動した。ウェスタンブロットは、ブロットを抗IL-9受容体抗体でプローブしたことを除き、実施例15に記述のように実施した(R&D Systems)。
【0140】
図25は、IL-9組換え蛋白質の可溶性IL-9受容体への結合を示す。レーン1は分子量マーカー、レーン2は受容体とインキュベートしたIL-9 Flag Met117、レーン3は受容体とインキュベートしたIL-9 Flag Thr117である。これらのデータは、いずれの型のIL-9組換え蛋白質も可溶性受容体に結合することを示している。
のみならず、これらのデータは実施例2(ここでは、ヘテロ接合体の血清中IgEがThr117ホモ接合体と差がない)のデータと共に、IL-9 Met117型が弱いアゴニストを表すことと一致する。
【0141】
実施例4
K562、C8166-45、およびMO7e細胞におけるIL-9受容体発現およびリガンド機能解析
組換えThr117 IL-9、Met117 IL-9、および構造または機能がMetIL-9に類似している可能性がある化合物を、ダルベッコの改変イーグル培地中で用いるために精製して調製した。K562、C8166-45、またはMO7e細胞はそのまま、または実施例3に記述のように、IL-9受容体遺伝子をトランスフェクトさせた後に用いた。増殖因子を除去して24時間後、細胞を精製Thr117 IL-9、Met117 IL-9、および構造または機能がMetIL-9に類似している可能性がある化合物の可変量の非存在下(対照)、または存在下でインキュベートした。細胞増殖は酸フォスファターゼの測定によって評価した。簡潔に述べると、MO7e細胞の各4本ずつの試料を平底マイクロタイタープレート(150または200μlのウェル)で、リガンドの存在下または非存在下で37℃で72〜96時間培養した。酸フォスファターゼは製造元(Clontech、パロアルト、CA)の示唆通りに測定する。実験は全て少なくとも2回繰り返す。
【0142】
実施例5
細胞の単離と培養
ヒト末梢血単核細胞(PBMC)は、製造元(Pharmacia Biotech、AB Uppsala、スウェーデン)に従って、エンドトキシン試験済フィコールパックPLUSを用いた密度勾配遠心によって健常ドナーから単離した。PBMC(5×106)、マウス脾細胞(5×106)、またはMO7e細胞5×106個を、同系のヒト血清または熱不活化FBSのいずれかを終濃度10%となるように加えたRPMI-1640(Bethesda Research Labs(BRL)、ベセスダ、MD)7mlで培養した。細胞を非刺激、またはPMA 5μg/ml/PHA5μg/ml、またはPHA5μg/ml/rhIL-2 50 U(R&D Systems、ミネアポリス、MN)のいずれかで刺激して37℃で24時間培養した。
【0143】
実施例6
RNA単離、RT-PCR、RT-PCR産物のクローニングおよびシークエンシング
RNA PCRコアキット(Perkin-Elmer Corp、フォスターシティ、CA)を用いて、発売元に従って、培養PBMC、マウス脾細胞、およびMO7e細胞から総細胞RNAを24時間後に抽出した。各細胞源からのRNA1μgを65℃で5分間変性させ、次にMuMLV逆転写酵素50 U、1U/μl RNアーゼ阻害剤、2.5 mMオリゴd(T)16プライマー、各1mMのdATP、dCTP、dGTP、dTTP、50 mM KCl、10 mMトリス塩酸、pH 7.0、25 mM MgCl2を含む反応混合液(RNA PCRコアキット、Perkin-Elmer Corp、フォスターシティ、CA)20μlを用いてcDNAに逆転写した。反応混合液をサーモサイクラーチューブにピペッティングし、PCRサーマルサイクラーに置き、1サイクル(42℃で15分、99℃で5分、および4℃で5分)を行った。偽逆転写反応を陰性対照として用いた。
【0144】
次に、2mM MgCl2、50mM KCl、10mMトリス塩酸、pH7.0、DI水65.5μl、2.5 U AmplitaqDNAポリメラーゼ、およびヒトcDNA IL-9エキソン1(フォワード)およびエキソン5(リバース)を表すオリゴヌクレオチド各1μl(20μM)を含む第二のチューブに、この混合液を加えて全量を100μlとした。反応混合液を以下のPCRの状態にした:98℃で120秒、次に以下を30サイクル:94℃で30秒;55℃で40秒;72℃で40秒。最後に72℃で15分間1サイクル行って反応混合液を伸長させた。
【0145】
hIL-9 cDNAを表すPCR産物を1.5%アガロースゲルでのゲル電気泳動に供し、エチジウムブロマイド染色を用いて可視化した。全ての実験において陰性対照増幅物として、RNAをH2Oに置換した偽逆転写酵素反応の産物を用いた。
cDNAを増幅するためにこれらの実験で用いたPCRオリゴヌクレオチドプライマー対は以下を含む:ヒトインターロイキン9(hIL-9)エキソン1フォワード5'-TCT CGA GCA GGG GTG TCC AAC CTT GGC G-3'(配列番号:1)およびエキソン5リバース5'-GCA GCT GGG ATA AAT AAT ATT TCA TCT TCA T-3'(配列番号:2);マウスインターロイキン9(mIL-9)エキソン1フォワード5'-TCT CGA GCA GAG ATG CAG CAC CAC ATG GGG C-3'(配列番号:3)およびマウスエキソン5リバース5'-GCA GCT GGT AAC AGT TAT GGA GGG GAG GTTT-3'(配列番号:4);XhoIおよびPvuII制限酵素認識配列は、ヒトおよびマウスIL-9プライマーの下線部である。PCR産物をTAクローニングベクター(InVitrogen、サンジエゴ、CA)にサブクローニングした。マウスcDNAの増幅は438 bp産物を生じ、ヒトcDNAの増幅は410 bp産物を生じた。
【0146】
ヒトIL-9およびマウスmIL-9の相補的DNAを生成し、XhoIおよびPvuII制限エンドヌクレアーゼの消化部位を含むIL-9エキソン1および5特異的プライマーを用いたRT-PCRによって増幅した。hIL-9およびmIL-9の増幅産物は、シリカを用いて2.5%アガロースゲルから単離した(サムブルックJら(Sambrook,J.)(1989)
分子クローニング:実験室マニュアル(Molecular Cloning:A Laboratory Manual)Cold Spring Harbor Laboratory Press,New York)(参照として全文が本明細書に組み入れられる)。回収後、cDNA産物をTAクローニングベクターにライゲーションし(InVitrogen Corp.、サンジエゴ、CA)、次にこれを用いて、製造元の指示に従って、INVαF'コンピテント細胞を形質転換させた。hIL-9およびmIL-9cDNAインサートを含むプラスミドを、従来の方法によって単離した(サムブルックJら(Sambrook,J.)(1989)分子クローニング:実験室マニュアル(Molecular Cloning:A Laboratory Manual)Cold Spring Harbor Laboratory Press,New York)。増幅後、各インサートを含む、およびこの周囲のDNA配列のPCRによる、またはクローニングによる誤差を分析した。
【0147】
hIL-9およびmIL-9 cDNAインサートは、M13(-20)フォワードプライマー(5'-GTA AAA CGA CGG CCA GT-3')(配列番号:17)およびシーケナーゼ(Sequenase)(登録商標)(USB)を用いて、ジデオキシチェーンターミネーション法(サンガーら(Sanger,1977)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 74:5463)によってシークエンシングを行い、ゲル電気泳動によって分析した(サムブルックJら(Sambrook,J.)(1989)分子クローニング:実験マニュアル(Molecular Cloning:A Laboratory Manual)Cold Spring Harbor Laboratory Press,New York)。クローニングおよび/またはTaqポリメラーゼによる配列誤差のないhIL-9およびmIL-9 cDNAインサート(図7および8の翻訳cDNA配列参照)を発現ベクターにサブクローニングした(図9〜12参照)、またはこれを用いてミスセンス変異および欠失変異を作製した。
【0148】
実施例7
インビトロでのIL-9構築物のクローニングおよび発現
構築物に関する一般クローニング法
hIL-9を原核生物発現ベクターにサブクローニングした。TA2AAF1 MetおよびトレオニンベクターをEcoRIによって消化し、0.420 kB断片(hIL-9 cDNAの5'末端でXhoI部位を含む)をpBluescript(PBS)(Stratagene)のポリリンカーを含むEcoRI部位にクローニングした。次に、T3プロモーターに対するセンス方向でのクローンをXhoI(TAベクターのIL-9 cDNAインサートからの5'XhoI部位およびPBSポリリンカーからの3’XhoI部位を含む断片)で消化し、インサートを原核細胞発現ベクターpGEXおよびpFLAGのXhoI部位にサブクローニングした。
【0149】
pGEX-4T-1グルタチオンs-トランスフェラーゼ遺伝子融合ベクターにおけるIL-9構築物のクローニングおよび発現
IL-9蛋白質の発現、精製、および検出のために、定法によって4.9KbのpGEX-4T-1グルタチオンs-トランスフェラーゼ遺伝子融合ベクターの多クローニングカセット内のXhoI部位に、IL-9 cDNAインサートをサブクローニングした。簡潔に述べると、無傷のIL-9 cDNA配列を含むTAクローン、およびpGEX-4T-1ベクターを、1倍濃度のリアクト2緩衝液(New England Biolabs、ビバリー、MA)の存在下で、XhoIおよびPvuII制限エンドヌクレアーゼを用いて37℃で1時間消化した(総量50 μl)。エチジウムブロマイド10μg/mlを含む1.5%調製アガロースゲルで産物を電気泳動した。適当なサイズのDNAバンドを切除し、アガロースをNaIストック溶液3容量の中で45℃で10分間融解させた。シリカマトリクスのDI H2O(Geneclean II、ラホヤ、CA)溶液を、DNA5μg当たり5μlの割合で溶液に加えた。スラリーを4℃で30分間時折攪拌しながらインキュベートした。次にスラリーを微量遠心によって沈殿させ、低塩緩衝液で3回洗浄し、DI H2O 10μlに再懸濁してシリカからDNAを溶出した。最後に微量遠心を行って、精製DNAを含む溶液10μl溶液を得た。
【0150】
産物をDI H2O 50 μlに再懸濁し、エタノール2容量および3M酢酸ナトリウム1/10容量を加えて沈殿させた。試料をRTで14,000 rpmで10分遠心し、陰圧下で風乾し、適当量のDI H2Oに再懸濁した。mIL-9およびhIL-9 cDNAインサートによるpGEX-4T-1ベクターへのDH5aバクテリア(GIBCO/BRL、ガイサーズバーグ、MD)のライゲーションおよび形質転換は、定法を用いて実施した。
【0151】
pGEX-4T-1ベクターに含まれるhIL-9 cDNAインサートが正しいヌクレオチド配列であることを確認するために、前述のmIL-9およびhIL-9 cDNA特異的オリゴヌクレオチド(エキソン1フォワード、エキソン5リバースプライマー)を用いて、ジデオキシチェーンターミネーション法によって候補IL-9 cDNAを含むプラスミドをシークエンシングした。
【0152】
組換え融合蛋白質を大規模培養から得た。形質転換した大腸菌(50 ml)を一晩培養して、新鮮なLB/ampブロスに接種した。培養液を激しく振って37℃で4時間インキュベートし、次にイソプロピルβ-D-チオガラクトピラノシドを加えて最終濃度を1mMとし、培養液をさらに1.5時間インキュベートした。細胞を4℃、500×gで遠心して回収し、グルタチオン-セファロース4Bカラム(Pharmacia)でのアフィニティークロマトグラフィーを利用して組換え変異体を精製し、GST-融合蛋白質を得た。変種のいくつかは封入体として発現され、マーストン(1987、クローバー(Clover)D.M.編、DNAクローニング:実践的アプローチ(DNA cloning:A practical approach)、 IRL Press Pxfprd,59〜88、大腸菌に発現させた真核細胞ポリペプチドの精製)が記述した方法によって、不溶性封入体から精製した。簡潔に述べると、細胞をライソザイムで溶解し、その後デオキシコール酸で処置した。混入した核酸をDNアーゼI処置によって除去した。不溶性材料を2M尿素で1回洗浄し、8M尿素を含む溶解緩衝液(50 mMトリス塩素、pH 8.0、1 mM EDTA、100 mM NaCl)中で最終的に可溶化した。溶解緩衝液中の尿素の濃度を減少させて(8M尿素から開始して、6、4および2M尿素)封入体の可溶化成分を段階的に透析し、変性蛋白質を再度折り畳ませた。最後に、試料を2M尿素で透析し、2.5%β-メルカプトエタノール(β-ME)に対して透析し、10,000gで15分遠心した。融合蛋白質を最後に0.01 Mトリス塩素、pH 8.0に対して透析した。pGEX-4Tベクターに発現した融合蛋白質をトロンビン100 Uで37℃で6時間開裂させ、グルタチオン-セファロース4Bカラム上のクロマトグラフィー後のフロースルー分画から回収した。最終精製は、充填して0.05 M重炭酸アンモニウム緩衝液で平衡にしたセファデックスG-100カラム(100×1.5cm)でのクロマトグラフィーによって行った。
【0153】
pFLAG-1(登録商標)発現ベクターにおけるIL-9構築物のクローニングおよび発現
ヒトIL-9蛋白質の発現、精製および検出のために、IL-9 cDNAインサートを5.37 Kb Flagベクターの多クローニング部位(XhoI)のXho2部位にサブクローニングした。低分子量(1kD)、疎水性、FLAGマーカーペプチドと、pFLAG-1(登録商標)発現ベクター(1)(IBIコダックから得た)によって発現された組換え蛋白質のN-末端との融合にFLAG技術を集中させた。各バクテリアコロニーは、50μg/mlアンピシリンを含むLBブロス中で、590 nmでの光学密度が0.6に達するまで増殖させた。次に、IPTGを終濃度1 mMとなるように加え、培養液をさらに1時間インキュベートして蛋白質合成を誘導した。遠心によって細胞を回収して、細胞沈殿物をラムリ緩衝液(ラムリ(Laemmli)、1970)50μl中で10分沸騰させ、10%ポリアクリルアミドゲルで電気泳動した。抗-FLAG(登録商標)M1モノクローナル抗体を用いて、その発現、アフィニティー精製、およびFLAGマーカー除去を通じて、ウェスタン(図13参照)スロットまたはドットブロット上でのFLAG融合蛋白質の特異的および有効な検出を行った。FLAG融合蛋白質は、アガロースに共有結合させたマウス抗-FLAG(登録商標)IgG M1モノクローナル抗体によるアフィニティークロマトグラフィーによってマイルドな非変性状態で1段階で速やかに精製した。アフィニティー精製の後、アフィニティーカラムからの除去後に融合蛋白質を用いてもよく、またはエンテロキナーゼによるFLAGペプチドの特異的および有効な蛋白質溶解除去によって、標準蛋白質を生物学的に活性な型で回収してもよい。最終精製は、充填し、0.05 M重炭酸アンモニウム緩衝液で平衡にしたセファデックスG-100カラム(100×1.5 cm)でのクロマトグラフィーによって得た。この実施例で先に述べたプロモーターはまた、FLAG技術で用いてもよい。
【0154】
SDS-PAGEおよびイムノブロット分析
ミニゲルシステム(SE 280垂直ゲルユニット、ホーファー)において、ラムリ(Laemmli U.K.(1970)Nature 227,680〜685)(参照として本明細書に全文が組み入れられる)の方法によって、12.5%ポリアクリルアミドゲルを用いてSDS-PAGEを実施した。イムノブロット分析では、SDS-PAGEによって分離した蛋白質は、15%メタノールを含む25 mMトリスグリシン緩衝液、pH 8.3中で、TE 22Mマイティスモールトランスファーユニット(ホーファー)を用いてニトロセルロース膜にトランスファーした(トウビンら(Towbin H.)(1979)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.76,4350〜4354)。膜上の未結合の結合部位は、2%ウシ血清アルブミンを含む20 mMトリス塩酸緩衝液、pH 8.0で1時間インキュベートすることによってブロックした。次に膜を1:200希釈の抗体で4℃で一晩インキュベートした。膜を洗浄して、ペルオキシダーゼまたはアルカリフォスファターゼのいずれかを結合させた1:2000希釈のヤギ抗ウサギIgGで1時間処置した。洗浄後、超基質化学ルミネッセント試薬(Pierce)または4-クロロ-1-ナフトール色展開試薬を加えることによって、結合抗体を可視化した。膜を蒸留水に浸して反応を停止させた。図13は、精製ヒトFLAG IL-9融合組換え蛋白質(Met117およびThr117)
が、抗-FLAG(登録商標)M1モノクローナル抗体によって認識されることから、それらが正しい大きさで、正しいリーディングフレームにあることを証明している。
【0155】
分析法
精製蛋白質の分子量は、パーセプティブ・バイオシステムズ・ボイジャー・バイオスペクトロメトリー・ワークステーション(Perceptive Biosystems Voyager Biospectrometry workstation)を用いたマトリクス補助レーザー脱着マススペクトロメトリーによって確認した。アミノ酸分析は、真空密封ガラス球内で6N HCl中で110℃で24時間の試料の加水分解後に実施した。
【0156】
自動エドマン分解
精製蛋白質の部分的アミノ酸配列は、オンラインモデル20A PTHアナライザーを備えたアプライド・バイオシステムズ(Applied Biosystems)・モデル455A気相シークエンサー上で、自動段階シークエンシングによって決定した。
【0157】
実施例8
エキソン2および/またはエキソン3の欠失:
構築物の変異発生およびシークエンシング
ヒトエキソン2およびエキソン3欠失は、製造元(Stratagene、ラホヤ、CA)の示唆通りに、エクスサイト(ExSite)PCR-に基づく部位特異的変異誘発キットを用いて作製した。PCRプライマーは以下の通りである: h9CD1U フォワード5'-GTG ACC AGT TGT CTC TGT TTG-3'(配列番号:5);h9CD1Lリバース5'-CTG CAT CTT GTT GAT GAG GAA-3'(配列番号:6);h9CD2Uフォワード5'-GAC AAC TGC ACC AGA CCA TGC-3'(配列番号:7);h9CD2Lリバース5'-ATT AGC ACT GCA GTG GCA CTT-3'(配列番号:8)。エキソン2欠失は、h9CD1Lフォワードおよびh9CD2Uリバースのプライマー対を用いて作製する。エキソン3欠失は、h9CD2Uフォワードおよびh9CD2Lリバースのプライマー対を用いて作製する。エキソン2およびエキソン3に含まれる欠失は、h9CD1Lフォワードおよびh9CD2Uリバースのプライマー対を用いて作製する。
【0158】
マウスエキソン2およびエキソン3欠失は、製造元(Stratagene、ラホヤ、CA)の示唆通りに、エクスサイトPCR-に基づく部位特異的変異誘発キットを用いて作製した。PCRプライマーは以下の通りであった:m9CD1Uフォワード5'-GTG ACC AGC TGC TTG TGT CTC-3'(配列番号:9);m9CD1Lリバース5'-CTT CAG ATT TTC AAT AAG GTA-3'(配列番号:10);m9CD2Uフォワード5'-GAT GAT TGT ACC ACA CCG TGC-3'(配列番号:11);m9CD2Lリバース5'-GTT GCC GCT GCA GCT ACA TTT-3'(配列番号:12)。エキソン2欠失は、m9CD1Uフォワードおよびm9CD1Lリバースのプライマー対を用いて作製した。エキソン3欠失は、m9CD2Uフォワードおよびm9CD2Lリバースのプライマー対を用いて作製した。エキソン2およびエキソン3に含まれる欠失は、m9CD2Uフォワードおよびm9CD1Lリバースのプライマー対を用いる。
【0159】
hIL-9およびmIL-9 cDNAインサートの変異誘発構築物は、ジデオキシチェーンターミネーション法(サンガーら(Sanger,1977) Proc.Natl.Acad.Sci.USA 74:5463)(本明細書に全文が参照として組み入れられる)によって、M13(-20)フォワードプライマー(5'- GTAAAACGACGGCCAGT-3')(配列番号:18)およびシーケナーゼ(登録商標)(USB)を用いてシークエンシングを行い、ゲル電気泳動 によって分析した(サムブルックJら(Sambrook,J.)(1989)分子クローニング:実験マニュアル(Molecular Cloning:A Laboratory Manual)Cold Spring Harbor Laboratory Press,New York)。エキソン2、エキソン3、またはエキソン2およびエキソン3の双方を欠損し、Taqポリメラーゼによる配列誤差のない変異株を用いて、発現ベクターを作成することが可能である。
【0160】
実施例9
細胞株、細胞増殖解析およびIL-9活性の阻害
細胞株を用いて、IL-9機能を遮断するその他の全ての化合物と共に、ペプチド、アミノステロール、チロフォスチン、rhIL-9、rmIL-9、およびこれらの蛋白質の組換え変異体の機能を評価した。増殖反応を測定し、これを、その他のサイトカイン、IL-9の変種または変異体、もしくはIL-9拮抗剤のそれぞれと比較した。さらに、ベースラインの増殖反応に化合物が拮抗する能力を調べた。一つのサイトカインについてベースライン増殖反応が確立すれば、3箇所づつ3回行ったアッセイにおいて統計学的に有意な反応の喪失があれば、それが拮抗の証拠と見なされた。真の拮抗反応は、直接観察、トリパンブルー染色(当技術分野の一般技術の一つで周知の技法)、および酸フォスファターゼ活性の喪失により、細胞毒性とは識別された。拮抗剤の特異性は、スチール因子、インターロイキン3、またはインターロイキン4のようなその他の増殖因子に対する活性が実質的に発現されているか否かを評価することによって評価した。
【0161】
MO7e株はヒト巨核球細胞株であり、RPMI-1640(GIBCO/BRL、ガイザースバーグ、MD)、20%ウシ胎児血清(Hyclone)および10ng/ml IL-3(R&D Systems、ミネアポリス、MN)で培養する。MJ株は、RPMI 1640(GIBCO/BRL)中で増殖するサイトカイン非依存的ヒトリンパ芽球細胞株であるK562は、ヒト赤血球白血病細胞株で、RPMI 1640(GIBCO/BRL)および10%ウシ胎児血清(Hyclone)で培養する。C8166-45はIL-9受容体保有細胞株で、RPMI 1640 GIBCO/BRL)および10%ウシ胎児血清(Hyclone)で培養する。細胞株は全て、IL-9を含むサイトカインに反応する。細胞株は72時間毎に2×105細胞/mlになるよう再播種する。
【0162】
細胞を2000 rpmで10分遠心し、0.5%ウシ血清アルブミン(GIBCO/BRL、ガイザースバーグ、MD)およびインスリン-トランスフェリン-セレニウム(ITS)共因子(GIBCO/BRL、ガイサースバーグ、MD)を含むRPMI 1640に再懸濁した。血球計算盤を用いて細胞を計数し、1×105細胞/mlの濃度に希釈して96ウェルマイクロタイタープレートに播種した。各ウェルは0.15または0.2 mlを含み、細胞の最終濃度は2×104細胞/mlであった。
【0163】
MO7e細胞は、50 ng/ml幹細胞因子(SCF)(R&D Systems、ミネアポリス、MN)単独、50 ng/ml SCF+50 ng/ml IL-3(R&D Systems、ミネアポリス、MN)、または50 ng/ml SCF+50 ng/ml IL-9によって刺激した。細胞と基本培地のみが含まれる対照を含めた。試験化合物(すなわち、IL-9組換え蛋白質、ペプチド、小分子)を連続希釈して、各試験条件に3箇所づつ加えた。MJ細胞株を非特異的細胞障害性の独立対照として用いた。37℃、5%CO2で培養細胞を72〜96時間インキュベートした。
【0164】
細胞増殖は、細胞数の指標として細胞内に存在する酸フォスファターゼを定量するアバカス細胞増殖キット(Clontech、パロアルト、CA)を用いて解析した。
【0165】
基質のリン酸p-ニトロフェニル(pNPP)は、酸フォスファターゼによってp-ニトロフェノールに変換され、これを酵素濃度の指標として測定した。次に、 pNPPを各ウェルに加え、37℃で1時間インキュベートした。次に、1N 水酸化ナトリウムを加えて酵素反応を停止させ、p-ニトロフェノールの量を、ダイナテック2000プレートリーダー(Dynatech Laboratories、シャンティリー、VA)を用いて波長410 nmで定量した。細胞数を吸光度と比較する標準曲線を用いて、アッセイの直線範囲を決定した。吸光度測定値がアッセイの直線範囲内にある場合に限り、アッセイ結果を使用した。
【0166】
図14は、IL-9機能の3つのペプチド拮抗剤のアミノ酸配列を図示する。各ペプチドをMO7e細胞と共にインキュベートし、IL-9による細胞増殖の阻害を、対照条件(ペプチドなし)との比較によって決定した(図15〜17参照)。いずれのペプチドにも細胞障害性の証拠を認めなかった。ペプチドKP-16およびKP-20は、2つの抗平行αヘリックスの中に存在すると予測され、IL-9リガンドの極めて重要なIL-9受容対結合ドメインとなる。コドン117での蛋白質多型性は、これも拮抗剤的特性を示すKP-23およびKP-24に存在し、遺伝子変化部位周辺のこの領域の重要性をさらに示している。
【0167】
図18は、インビトロでMO7e細胞のIL-9依存的増殖に及ぼすチロフォスチン(カルビオケムから入手)の効果を図示する。各チロフォスチンをMO7e細胞と共にインキュベートし、IL-9による細胞増殖の阻害は、対照条件(処置なし)との比較によって決定した。チロフォスチンB46およびB56は最大の阻害を示し、このことは共通の構造活性相関を示唆している。
【0168】
図19は、本明細書に参照として組み入れられるU.S.S.N.08/290,826、08/416,883、08/478,763、および/または08/483,059に述べるように、サメ肝臓から単離したアミノステロールのインビトロでのMO7e細胞のIL-9依存型増殖に及ぼす効果を図示する。各アミノステロールを培地20 μg/mlでMO7e細胞と共にインキュベートし、IL-9による細胞増殖の阻害は、対照条件(処置なし)との比較によって決定した。いずれの処置でも細胞障害性の証拠を認めなかった。アミノステロール3および6は、一貫して最大の増殖阻害を示した。
【0169】
実施例10
IgE分泌細胞の増殖アッセイ
B細胞株を用いて、その他のIL-9拮抗剤と共に、rIL-9およびこれらの蛋白質の組換え変異型の機能を評価することが可能である。IgE分泌細胞のrIL-9に対する増殖を測定し、これを他のサイトカインまたはrIL-9の組換え型と比較する。さらに、rIL-9に対するIgE分泌細胞のベースライン増殖反応に化合物が拮抗する能力を調べる。あるサイトカインについてベースラインIgE反応を確立した後、3箇所づつで3回繰り返したアッセイにおいて、反応が統計学的有意に(P<0.05)喪失すれば、拮抗の証拠と見なされる。真の拮抗剤反応は、トリパンブルー染色(当技術分野で一般技術の一つとして周知の技法)により細胞毒性とは識別される。
【0170】
細胞増殖および培養
末梢血リンパ球(PBL)をは、健常ドナーのヘパリン加血から、またはマウス脾臓を細かくつぶして単離する。単核細胞は、フィコール/ハイパック(Pharmacia、アップラサ、スウェーデン)を用いて遠心分離する。半精製ヒトBリンパ球は、ノイラミニダーゼ(Behring、マルスブルグ、FRG)処置ヒツジ赤血球によるロゼット形成および37℃で1時間のプラスチック接着性により得る。B細胞はまた、製造元の推奨に従って磁性ビーズ(DYNAL)をコーティングした抗CD20による常磁性分離を用いて精製する。
【0171】
B細胞、T細胞および単球の相対比はそれぞれ、CD23、CD3およびCD14特異的モノクローナル抗体(Becton Dickinson、マウンテン・ビュー、CA)を用いたフローサイトメトリーによって決定する。簡潔に述べると、106細胞/mlの細胞を、フィコエリスリン結合抗CD23およびフルオレジン結合抗CD3および抗CD14抗体の1:1000倍希釈と共に、4℃で30分インキュベートする。滅菌PBSおよび1%ウシ血清アルブミン(Sigma)による3回のスピン洗浄後、サイトフルオログラフ(FACSTAR Plus、Becton Dickinson、グルノーブル、フランス)を用いて蛍光を測定する。典型的には、1試料当たり細胞5000個を計数して、CD20+細胞は45%、CD3+細胞35%およびCD14+細胞は10%である。
【0172】
細胞は、10%熱不活化仔ウシ胎児血清(FCS)、2mMグルタミン、100 U/mlペニシリン、100 μg/mlストレプトマイシンおよび20 mM HEPESを含むRPMI 1640(RPMI-FCS)で、2×106細胞/mlの密度で37℃、5%CO2/95%空気含有湿潤環境で培養する。IL-4、rhIL-9、rmIL-9、またはこれらの蛋白質の組換え変異体を濃度を増加させて単独、または併用して、培養細胞と共にインキュベートする。これらの組換え分子またはその他のIL-9拮抗剤を1つ以上混合して、競合実験を行う。培養細胞は9〜13日毎に維持する。
【0173】
IgE分泌B細胞の発生率
ヒトまたはマウスIL-9に反応したIgE分泌ヒトB細胞の発生率は、ELISA-スポットアッセイ(ダガスら(Dugas、1993)、Eur J Immunol 23:1687〜1692;レンツ(Renz,H、1990)、J Immunology.145:3461)を用いて決定する。ニトロセルロース平底96ウェルプレートを、0.1 M NaHCO3緩 衝液で希釈した(2.5μg/ml)精製ヤギ抗ヒトIgE mAbで4℃で一晩コーティングする。PBS-ツィーン20で1回洗浄後、プレートをRPMI-FCSで1時間インキュベートして非特異的結合部位を飽和させる。培養9〜13日後に得たB細胞を回収して、3回洗浄し、105細胞/ml RPMI-FCSに再懸濁し、次に抗IgEコーティングプレート上にトランスファーしてその後37℃で18時間インキュベートする。洗浄後、様々な濃度のペルオキシダーゼ結合マウス抗ヒトIgE mabを37℃で2時間加える。0.03% H2O2を含む0.1 Mトリス塩酸で希釈したジアミノベンゼンを加えてスポットを可視化する。24時間後、スポットを倒立顕微鏡の25倍率で計数する。データは106個当たりのIgE分泌細胞数として表す。
【0174】
実施例11
IL-9と共に刺激した細胞によって分泌されるIgEのELISA
実施例10で記述のように、細胞を単離、調製および刺激する。平底マイクロタイタープレート(Nunc)を、ウサギ抗ヒトIgE(終濃度、1:2000倍希釈;セロテック、オックスフォード、GB)の10 mM重炭酸緩衝溶液(pH 9.6)200μlでコーティングする。4℃で一晩インキュベートした後、プレートを0.05%ツィーンを含むリン酸緩衝生理食塩水(PBS)(PBS-ツィーン;Merck、ホーエンブルン、FRG)で4回洗浄し、RPMI-FCSで室温で1時間インキュベートして、非特異的蛋白質結合部位を飽和させる。洗浄後、ヒトIgE(Eurobio、レ・ユリス、フランス)の連続希釈、標準物質のPBS-ツィーン溶液をそれぞれのプレートに加えて較正曲線を作製する。次に、試験すべき培養上清の希釈液を加え、室温で2時間後、プレートを洗浄して、希釈した特異的アルカリフォスファターゼ結合抗IgE(1:250;Serotec)、抗IgGまたは抗IgM(Behring)を適当なプレートに加える。
室温で2時間後、プレートを洗浄してリン酸p-ニトロフェニル(Sigma)のクエン酸溶液200 μl(0.5 mg/ml)を加える。プレートを37℃でインキュベートして、オートリーダー(Dynatech Laboratories Inc、シャンティリー、VA)を用いて405 nmでの吸光度(A)を測定する。アッセイの閾値感度は、IgEについて100 pg/ml、IgGについて1 ng/ml、およびIgMについて2 ng/mlで、試料2本間の変動は、普通10%を超えない。
【0175】
実施例12
マウス喘息モデルにおけるIL-9の役割:非感作動物の気道反応
動物
5〜6週令の認定非ウイルス感染雄性マウスを、ジャクソン・ラボラトリー(Jackson Laboratory)(バーハーバー、ME)から得た。実験手技の3〜7日前に、ウイルスおよび抗原不含施設の高性能微粒子濾過空気(HEPA)ラミナーフローフードに動物を収容し、固形齧歯類飼料および水を自由に摂取させた。動物施設は22℃に維持し、照明サイクルは自動的に調節した(照明:消灯、10:14時間)。5〜6週令の雄性および雌性DBA/2(D2)、C57BL/6(B6)および(B6D2)F1(F1)マウスをジャクソン・ラボラトリー(バーハーバー、ME)、または国立癌研究所、フレデリック博士から購入した。BXDマウスはジャクソン・ラボラトリー(バーハーバー、ME)から購入した。飼料および水は自由に摂取させた。
【0176】
表現型タイピングおよび全処置の効率
気管支収縮反応を測定するために、気管での呼吸気圧を測定し、薬物投与前および投与中に記録した。マウスは、先に記述したように麻酔して、機器を備えた。(レビット&ミッツナー(Levitt RC and Mitzner W.)FASEB J 2:2605〜2608(1988);レビット&ミッツナー(Levitt RC and Mitzner W.)J Appl Physiol 67(3):1125〜1132;クリーバーガー、バセット、ヤカブ、およびレビット(Kleeberger S,Basett D,Jakab GJ,and Levitt RC)258(2)L313〜320(1990);レビットRC;Pharmacogenetics 1:94〜97(1991);レビット&エワート(Revitt RC and Ewart SL);Am J Repir Crit Care Med 151:1537〜1542(1995);エワート、レビット、およびミッツナー(Ewart S,Levitt RC,and Mitzner W)印刷中、J Appl Phys(1995))。以下の一つ以上に対する気道反応性を測定した:5-ヒドロキシトリプタミン(5HT)(Sigma)。他に用いることが可能なブ ランチコンストラクションは、アセチルコリン(Sigma)、アトラキュリウム(Glaxo welcome)である。気管支収縮剤チャレンジ後のPpi変 化の単純な繰り返し測定を用いたが、これは気道圧時間指数(APTI)と呼ばれている(レビット&ミッツナー(Levitt RC and Mitzner W.)FASEB J 2:2605〜2608(1988);レビット&ミッツナー(Levitt RC and Mitzner W.)J Appl Physiol 67(3):1125〜1132(1989))。APTIは、注射時から最大圧がベースラインまたは平衡に達するまでの時間で積分した最大吸気圧(Ppi)の変化によって評価した。APTIは気道抵抗(Rrs)と同等であるが、APTIには気管支収縮からの回復に関連する別の成分が含まれている。
【0177】
気管支反応性の系統分布は、これまでの研究において多数の近交系マウス系統で確認された(レビット&ミッツナー(Levitt RC and Mitzner W.)FASEB J 2:2605〜2608(1988);レビット&ミッツナー(Levitt RC and Mitzner W.)J Appl Physiol 67(3):1125〜1132(1989))。Rrsおよび/またはAPTIは、A/J、C3H/HeJ、DBA/2J、C57BL/6Jマウスにおいて決定した。
【0178】
屠殺前に、血清中IgE測定のために、完全に麻酔した動物の下大静脈の針穿刺により全血を採取した。試料を遠心して細胞を分離して血清を採取し、これを用いて総IgE濃度を測定した。直ちに測定しない試料は-20℃で凍結した。
【0179】
気管支肺胞洗浄および細胞分析は、他所に記載のように実施した(クリーバーガーら(Kleeberger、1990))。
【0180】
IgE血清試料は全てELISA抗体サンドイッチアッセイを用いて測定した。マイクロタイタープレート(Corning #2585096、コーニング、NY)を、ラット抗マウスIgE抗体(Southern Biotechnology #1130-01、バーミンガム、AL)を、アジ化ナトリウム(Sigma #S-7795、#S-6014、#S-8032、セントルイス、MO)を含む炭酸ナトリウム-重炭酸ナトリウムコーティング溶液に2.5μg/mlの濃度で、50μl/ウェルづつコーティングした。プレートをプラスチックラップで覆い、4℃で16時間インキュベートした。プレートを、0.05%ツィーン20のリン酸緩衝生理食塩溶液(BioFluids、#313、ロックビル、MD)の洗浄緩衝液で3回洗浄し、各洗浄について5分インキュベートした。非特異的結合部位のブロッキングは、5%ウシ血清アルブミン(Sigma #A-7888)のPBS溶液を200μl/ウェル加えることによって行い、プラスチックラップで覆って37℃で2時間インキュベートした。洗浄緩衝液で3回洗浄後、試験試料50μlを2箇所づつウェルに加えた。試験試料を5%BSAの洗浄緩衝溶液で1:10、1:50、および1:100倍希釈後、解析した。試験試料の他に、0.8 ng/ml〜200 ng/mlの一連のIgE標準物質(PharMingen #03121D、サンジエゴ、CA)の5%BSA洗浄緩衝溶液を解析して標準曲線を得た。試料なしのブランク、または標準物質を用いてプレートリーダーをゼロにした(バックグラウンド)。試料および標準物質を加えた後、プレートをプラスチックラップで覆って室温で2時間インキュベートした。洗浄緩衝液で3回洗浄した後、第二抗体である250n g/mlのラット抗マウスIgEホースラディッシュペルオキシダーゼ結合物(Pharmingen #02137E)の5%BSA洗浄緩衝溶液を50μl加えた。プレートをプラスチックラップで覆い、室温で2時間インキュベートした。洗浄緩衝液で3回洗浄後、基質である0.5 mg/mlの0-フェニルアミンジアミン(Sigma #P-1526)の0.1 Mクエン酸緩衝溶液(Sigma #C-8532)100μlを各ウェルに加えた。5〜10分後、12.5%H2SO4(VWR #3370-4、ブリッジポート、NJ)50μlで反応を停止させ、ダイナテックMR-5000プレートリーダー(シャンティリー、VA)で490 nmでの吸光度を測定した。標準曲線は、X軸(対数スケール)に抗原濃度およびy軸(一次スケール)に吸光度をとって、標準物質IgE濃度から作製した。試料中のIgE濃度は標準曲線から内挿した。
【0181】
実施例13
マウス喘息モデルにおけるIL-9の役割:感作動物の気道反応
動物、表現型タイピングおよび抗原感作の最適化
動物および手技は、基本的に実施例12に記述したとおりであった。七面鳥卵アルブミン(OVA)による感作およびエアロゾルチャレンジを行って、BHR、BAL、および血清中IgEに及ぼす効果を評価した。OVAまたは生理食塩水エアロゾル吸入前の0日目に、OVA(25μg)を腹腔内注射した。マウスにOVAまたは生理食塩水エアロゾルをチャレンジし、これは13または14日のいずれかに始めて、5〜7日間1日1回投与した。血清中IgE、BAL、およびBHRの表現型測定は21日目に実施した。7日のOVAエアロゾル暴露が5-HTまたはアセチルコリンによる気管支収縮剤チャレンジに及ぼす効果は、血清中総IgE、BAL総細胞数および白血球分別細胞数、および気管支反応性と共に評価した。抗体(Ab)または生理食塩水前処置が生理食塩水エアロゾルまたはOVAエアロゾル誘発肺炎症に及ぼす効果は、BHR、BAL、および血清中IgEの測定によって調べた。Abは、生理食塩水またはOVAのエアロゾル暴露の2〜3日前に腹腔内投与した。
【0182】
深い麻酔の間に肺を除去した後、肺組織学検査を実施した。先の機器の備え付けは人為的誤差を生じる可能性があるため、これらの試験には別の動物を用いた。このように、小グループの動物を、これらの動物は気管支反応性試験を除くその他の試験に用いなかったことを除き、様々な前処置を行うコホートと正確に同じように平行して処置した。気管支反応性試験の後、肺を除去して液体窒素中に沈めた。凍結切片作製と組織学的検査は、一般的方法で実施した。
【0183】
マウスIL-9に対するポリクローナル中和抗体は、R&Dシステムズ、ミネアポリス、MNから購入し、マウスIL-9受容体に対するブロッキング抗体は、マガイニンで産生されたペプチド結合体を用いて、ランピン・バイオロジカル・ラボラトリーズ(オッツビル、PA)がマガイニン・ファーマシューティカルズ・インクのために産生した。ウサギにおいて、マウスIL-9受容体からのペプチド配列に対するポリクローナル抗血清を調製した。抗血清を産生するために用いたペプチドは:GGQKAGAFTC(残基1〜10)(配列番号:19);LSNSIYRIDCHWSAPELGQESR(残基11〜32)(配列番号:20);およびCESYEDKTEGEYYKSHWSEWS(担体蛋白質にペプチドを結合させるため、N-末端にCys残基を加えた残基184〜203)(配列番号:21)
。抗血清は、免疫学のプロトコール(Protocols in Immunology)、第9章、ウィリーが記述した方法を用いて産生した。簡潔に述べると、ペプチドは、双機能的クロスリンク剤MBS(ピアス)を用いて、システイン残基の側鎖を通じて、担体蛋白質、ケイホール・リンペット、ヘモシアニン(Sigma)に結合させた。ペプチド結合体を用いて適当なアジュバントと共にウサギを免役し、ペプチド結合体の数回ブースター注射後に有用な抗血清を得た。抗体を治療的に用いて、IL-9機能をダウンレギュレートし、非感作マウスにおけるベースライン肺反応性、血清中IgE、およびBALに対するこの経路の重要性を評価した。Ab前処置後、対照と比較したベースラインBHR、BAL、および血清中IgE濃度を決定した。別の実験において、組換え型ヒトおよびマウスのIL-9を抗原感作の1日前および感作の間中毎日腹腔内注射した(13〜18日目)。次に、動物を記述のように表現型タイピングした。
【0184】
0日目に生理食塩水の腹腔内注射で処置し、14〜20日目に生理食塩水でチャレンジした(実施例12に記述のように)代表的な動物の表現型反応を、図20のパネル1(上段)に示す。ベースライン(対照)血清中総IgEは9.2 ng/mlであった。気管支肺胞洗浄(BAL)総細胞数は、BAL1 ml当たり182,500個であった。これらの動物は、歴史的対照(レビット&ミッツナー(Levitt RC and Mitzner W.)
J Appl Physiol 67(3):1125〜1132;1989)と比較して、気管支反応過敏性を示さなかった。
【0185】
図20パネル2(上段中央)は、0日目にOVAを腹腔内注射して前感作し、14〜20日目に生理食塩水をチャレンジした群の代表的な動物を示す。これらの動物の気管支収縮剤、血清中IgE、またはBAL細胞数に対する反応は、非感作マウスと差がなかった(図7上段パネル)。
【0186】
図20パネル3(下段中央)は、0日目にOVAを腹腔内注射して前感作し、14〜20日目に抗原(OVA)をチャレンジした群の代表的な動物を示す。これらの動物は、気管支反応過敏性(対照の約2〜3倍)、血清中IgEの上昇(対照のほぼ1000倍)、およびBAL細胞数の上昇によって示されるように気道中の炎症細胞数の増加(約30倍)を示した。この抗原チャレンジの結果気道に集められた細胞のほとんどが好酸球であった。
【0187】
図20パネル4(下段)は、0日目にOVAを腹腔内注射して前感作し、マウスIL-9に対するポリクローナル中和抗体(約200μg/0.5 ml PBS/マウスを腹腔内注射)で前処置し、14〜20日目に抗原(OVA)をチャレンジした群の代表的な動物を示す。これらの動物は抗原に対する反応を示さなかった。彼らの気管支反応性、血清中IgE、BAL細胞数は、対照と有意差がなかった(図20上段の2パネル)。
【0188】
図21は、代表的な動物における、マウスIL-9に対するポリクローナル中和抗体を3日前に腹腔内注射して前処置した場合、およびしなかった場合のOVAに対する抗原チャレンジ(上記の通り)の効果を図示する。左の図(A1-2-1B)は、対照動物(OVAで感作したが、生理食塩水エアロゾルチャレンジにのみ暴露)の肺の組織学切片である。右の図(A1-4-5)は、マウスIL-9に対するポリクローナル中和抗体で3日前に前処置し、OVAで感作し、OVAエアロゾルチャレンジに暴露した動物の肺からの組織学切片である。中和抗体による前処置により、抗原チャレンジから完全に保護された、という組織学的確認が得られた。
【0189】
図22パネル1(上段)は、0日目にOVA腹腔内注射によって前感作し、13〜18日目に抗原(OVA)をチャレンジした代表的な動物を示す。これらの動物は、気管支反応過敏性(対照の約2〜3倍)を示し、対照と比較してBAL細胞数の上昇によって示されるように、気道での好酸球を含む炎症細胞数の増加を示した(図20上段の2パネル)。この抗原チャレンジの結果気道に集まった細胞の多くは好酸球であった。
【0190】
図22パネル2(下段)は、0日目にOVAの腹腔内注射によって前感作し、マウスIL-9受容体に対するポリクローナル中和抗体(約1 mg/0.5 ml PBS/マウスを腹腔内注射)で前処置し、13〜18日目に抗原(OVA)をチャレンジした群の代表的な動物を示す。この代表的な動物は抗原に対する反応を示さなかった。この反応は、対照群の気管支反応性、BAL細胞数と有意差がなかった(図20上段の2パネル)。これらのデータは、アトピー性アレルギーをIL-9受容体に対する抗体で治療する潜在的有効性を示している。
【0191】
実施例14
マウス脾臓の単離および培養
マウスを麻酔して脾臓を無菌的に除去した。はさみで脾臓を細かく刻み、ワイヤーメッシュ(滅菌済み)[#60ふるい]にゆっくりと通した。細胞をRPMI -1640[ジブコ、BRL、ロックビル、MD]40 mlに再懸濁し、250×gで5分間2回遠心した。沈殿物を溶解バター10 mlに再懸濁して、RBCsを除去した[4.15 gm NH4Cl、0.5 gKHCO3;0.19 g EDTAをddH2Oで500 mlにする]。細胞を、RPMI-FCS[RPMI-1640、10%AFBS、50μM BME 2 mMグルタミン、ペニシリンおよびストレプトマイシンを含む]40 mlで37℃で約5分インキュベートした。これらの細胞を再度250×gで5分間遠心し、コンカナバリンA[シグマ #C5275]5μg/mlの存在下、または非存在下でRPMI-FCS 20 mlに再懸濁した。IL-9は、無処置脾細胞では48時間目、およびDBA/2(D2)およびC57BL/6J(B6)マウスのコンカナバリンAで刺激後に評価した。IL-9はRT-PCR(実施例6で述べたように)で増幅し、サザントランスファー後IL-9特異的マウスプローブで調べた。サザンブロットは「標準的な」方法によって実施した。簡潔に述べると、RT-PCR産物を2%アガロースゲルで電気泳動した。ゲルをエチジウムブロマイドで染色し、定規を置いて写真を撮影し、サザンブロットでDNAの分子量を決定した。次に、ゲルを0.5 N NaOHに30分浸し、0.5 Mトリス、pH 7.0で30分中和した。DNAをキャピラリートランスファーによってゼタプローブ(Borad)ナイロン膜にトランスファーして、20倍濃度のSSC中で一晩放置した。翌日、膜を空気乾燥させ、80℃で15分焼いて6倍濃度のSSCおよび0.1%SDS中で42℃で1時間プレハイブリダイズした。キナーゼ末端標識p32オリゴヌクレオチドプローブ(5'-AATTACCTTATTGAAAATCTGAAG-3')を、ハイブリダイゼーション溶液+0.1 mg/mlの剪断サケ精子DNAに加え、42℃で一晩インキュベートした。翌日、フィルターを3倍濃度のSSCおよび0.1%SDSで37℃で30分洗浄し、フィルターを1時間フィルムに暴露した。図26は、マウスの各系統の48時間後のIL-9の定常状態濃度を図示する。IL-9は非刺激D2(D2-)脾細胞に認められたが、B6(B6-)マウスにはIL-9は検出されなかった。D2(D2+)脾細胞ではコンカナバリンA刺激後にIL-9のわずかな増加を認めたが、B6(B6+)マウスでは、コンカナバリンA処置にもかかわらず検出可能なIt-9を認めなかった。
【0192】
実施例15
PBMCにおけるヒトMet117 IL-9およびThr117 IL-9の発現
SDS-PAGEおよびイムノブロット分析
実施例13に述べたように、野生型(Thr117)またはMet117 IL-9遺伝子型のいずれかを阻害する蛋白質を健常ドナーのヒトPBMCから単離した後、ラムリ(Laemmli U.K.(1970)Nature 227,680〜685)の方法によって、ミニゲルシステム(エクセルII垂直ゲルユニット、ノベックス)で18%ポリアクリルアミドゲルを用いてSDS-PAGEを実施した。イムノブロット分析では、SDS-PAGEによって分離した蛋白質をSDトランスブロットトランスファーユニット(Biorad)を用いて、15%メタノールを含む25 mMトリスグリシン緩衝液、pH 8.3中のニトロセルロース膜に移した(トウビンら(Towbin H.)(1979)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.76,4350〜4354)。膜上の未結合結合部位は、20 mMトリス塩酸緩衝液、pH 8.0+5%ドライミルクを含む0.05%ツィーン20(TBST)で1時間から一晩インキュベートすることによってブロックした。次に膜をヤギ抗ヒトIL-9ポリクローナル抗体(R&Dシステムズ)の1:1000倍希釈と共に室温で1時間インキュベートした。膜をTBSTで洗浄し、ホースラディッシュペルオキシダーゼを結合させたマウス抗ヤギTgGの1:10,000倍希釈で1時間処置した。TBSTで洗浄後、スーパーシグナル基質ケモルミネッセンスシステム(Pierce)を加えて、結合抗体を視覚化した。
【0193】
図24は、IL-9遺伝子のゲノム分析によって遺伝子型が決定されているヒトにおけるマイトゲン刺激48時間後の培養PBMCからのヒトIL-9蛋白質の発現を示す。レーン1は分子量マーカー、レーン2はMet117ホモ接合体、レーン3はMet117/Thr117ヘテロ接合体、レーン4はThr117ホモ接合体である。ほぼ予測されたサイズの単一の産物(14 kD)が、マイトゲン刺激後に各個人のPBMCに認められた。これらのデータは、いずれの型のIL-9蛋白質も発現され、定常状態で安定であることを証明する。
【0194】
本発明は、様々な特殊材料、技法および実施例を参照として本明細書に記述および図解してきたが、本発明は材料の特別な材料の組み合わせ、その目的に選択された技法に制限されるものではないと理解される。そのような詳細に関する多数の変化は、当業者によって認識されるように含むことが可能である。
【0195】
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本発明の上記のその他の態様は、明細書の検討および本明細書に開示の方法の実践から当業者には明らかとなるであろう。明細書および実施例は例示目的のみと見なされ、本発明の真の範囲は以下の請求の範囲に示されると意図している:
【0196】
【数1】
【0197】
【数2】
【0198】
【数3】
【0199】
【数4】
【0200】
【数5】
【0201】
【数6】
【0202】
【数7】
【0203】
【数8】
【0204】
【数9】
【0205】
【数10】
【0206】
【数11】
【0207】
【数12】
【0208】
【数13】
【0209】
【数14】
【0210】
【数15】
【0211】
【数16】
【0212】
【数17】
【図面の簡単な説明】
【0213】
【図1】喘息関連遺伝子のマッピングに有用な多形遺伝子マーカーの相対順序およびセンチモルガン[cM]での距離を示すマップ。
【図2】ヒト染色体5q31-q33およびマウスのシンテニー領域の遺伝子マップの図解。
【図3】気管支収縮刺激に対する感受性が増加したマウスにおけるアトラキュリウム誘発気道反応性に関するマウス第13染色体のLODスコア曲線。
【図4】ヒトおよびマウスIL-9遺伝子のエキソン5に対応するアミノ酸配列の配置。最初の配列はヒト遺伝子のトレオニン対立遺伝子から翻訳される。中央の配列はヒト遺伝子のメチオニン対立遺伝子から翻訳される。最後の配列はマウス遺伝子から翻訳される。
【図5】ヒトIL-9遺伝子対立遺伝子と国際単位で測定した血清中総IgE価の相関を示すヒストグラム。S/Sはトレオニン/トレオニンの人、S/Rはトレオニン/メチオニンの人、およびR/Rはメチオニン/メチオニンの人を指す。
【図6】IL-9座での単純配列リピート多型性の図解。
【図7】トレオニン117 IL-9のcDNA配列の翻訳。
【図8】メチオニン117 IL-9のcDNA配列の翻訳。
【図9】トレオニン117によるpFlag発現構築物のマップ。
【図10】ライゲーション部位周辺領域からのトレオニン117 cDNAのpFlag発現構築物の配列。
【図11】メチオニン117によるpFlag発現構築物のマップ。
【図12】ライゲーション部位周辺領域からのメチオニン117 cDNAのpFlag発現構築物の配列。
【図13】IL-9組換え蛋白のウェスタンブロット。
【図14】阻害ペプチドのアミノ酸配列。
【図15】IL-9媒介MO7e増殖のKP-16による阻害。
【図16】IL-9媒介MO7e増殖のKP-20による阻害。
【図17】IL-9媒介MO7e増殖のKP-23による阻害。
【図18】IL-9媒介MO7e増殖の様々なチロフォスチンによる阻害。
【図19】IL-9媒介MO7e増殖の様々なアミノステロールによる阻害。
【図20−1】インビボでの抗原反応におけるIL-9の役割の特徴づけ。
【図20−2】インビボでの抗原反応におけるIL-9の役割の特徴づけ。
【図21】対照、卵白アルブミンチャレンジ、および抗IL-9前処置動物からの肺の組織学検査。
【図22】マウスIL-9受容体に対する遮断抗体によるインビボでの抗原反応の阻害。
【図24】ヒトメチオニン117 IL-9およびトレオニン117 IL-9の発現。
【図25】ヒト組換え型メチオニン117およびトレオニン117型IL-9の可溶性抗体に対する結合。
【図26】非刺激および刺激マウス脾細胞におけるIL-9の定常状態濃度。
【図27−1】化学部分の付録。
【図27−2】化学部分の付録。
【図28】イヌ、魚、サメから単離したアミノステロール。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
喘息関連疾患を軽減するための組成物であって、該組成物は、117位に、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファンおよびメチオニンからなる群より選択されるアミノ酸を有する、ヒトインターロイキン−9のアミノ酸配列を含むポリペプチドまたはそのフラグメントを含む、組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の組成物であって、前記ポリペプチドは、117位に、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファンおよびメチオニンからなる群より選択されるアミノ酸を有する、ヒトインターロイキン−9のアミノ酸配列からなる、組成物。
【請求項3】
前記ヒトインターロイキンのアミノ酸配列が、117位にメチオニンを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記ポリペプチドは、配列番号26のヌクレオチド配列またはそのフラグメントを含むDNA分子によってコードされている、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記ポリペプチドは、配列番号27のアミノ酸配列またはそのフラグメントを含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項6】
前記ポリペプチドは、117位にメチオニンを有するヒトインターロイキン−9のアミノ酸配列またはそのフラグメントからなる、請求項3に記載の組成物。
【請求項7】
喘息関連疾患を軽減するための組成物であって、該組成物は、117位に、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファンおよびメチオニンからなる群より選択されるアミノ酸を有するヒトインターロイキン−9のアミノ酸配列に実質的に相同なアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む、組成物。
【請求項8】
前記ヒトインターロイキン−9のアミノ酸配列は、117位にメチオニンを有する、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記ポリペプチドが、インターロイキン−9の活性をダウンレギュレートする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
前記ポリペプチドが、患者における気管支過反応を軽減させる、請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
前記ポリペプチドが、患者における気管支洗浄液中の好酸球増加を軽減させる、請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
喘息の処置のための医薬の調製のための、請求項1〜7に記載の組成物の使用。
【請求項13】
さらに薬学的に受容可能なキャリアを含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
前記組成物が、吸入によって投与される、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
請求項14に記載の組成物を投与する、吸入装置。
【請求項16】
請求項14に記載の組成物を投与する、用量計付き吸入器。
【請求項17】
請求項14に記載の組成物を投与する、乾燥粉末吸入器。
【請求項18】
可溶性インターロイキン−9レセプターまたはそのフラグメントを含む、喘息関連疾患を軽減させるための組成物。
【請求項19】
前記可溶性インターロイキン−9レセプターが、インターロイキン−9の活性をダウンレギュレートする、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
前記可溶性インターロイキン−9レセプターが、患者における気管支過反応を軽減させる、請求項18に記載の組成物。
【請求項21】
前記可溶性インターロイキン−9レセプターが、患者における気管支洗浄液中の好酸球増加を軽減させる、請求項18に記載の組成物。
【請求項22】
喘息の処置のための医薬の調製のための、請求項18に記載の組成物の使用。
【請求項23】
さらに薬学的に受容可能なキャリアを含む、請求項18〜21のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項24】
前記組成物が、吸入によって投与される、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
請求項24に記載の組成物を投与する、吸入装置。
【請求項26】
請求項24に記載の組成物を投与する、用量計付き吸入器。
【請求項27】
請求項24に記載の組成物を投与する、乾燥粉末吸入器。
【請求項1】
喘息関連疾患を軽減するための組成物であって、該組成物は、117位に、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファンおよびメチオニンからなる群より選択されるアミノ酸を有する、ヒトインターロイキン−9のアミノ酸配列を含むポリペプチドまたはそのフラグメントを含む、組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の組成物であって、前記ポリペプチドは、117位に、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファンおよびメチオニンからなる群より選択されるアミノ酸を有する、ヒトインターロイキン−9のアミノ酸配列からなる、組成物。
【請求項3】
前記ヒトインターロイキンのアミノ酸配列が、117位にメチオニンを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記ポリペプチドは、配列番号26のヌクレオチド配列またはそのフラグメントを含むDNA分子によってコードされている、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記ポリペプチドは、配列番号27のアミノ酸配列またはそのフラグメントを含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項6】
前記ポリペプチドは、117位にメチオニンを有するヒトインターロイキン−9のアミノ酸配列またはそのフラグメントからなる、請求項3に記載の組成物。
【請求項7】
喘息関連疾患を軽減するための組成物であって、該組成物は、117位に、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファンおよびメチオニンからなる群より選択されるアミノ酸を有するヒトインターロイキン−9のアミノ酸配列に実質的に相同なアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む、組成物。
【請求項8】
前記ヒトインターロイキン−9のアミノ酸配列は、117位にメチオニンを有する、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記ポリペプチドが、インターロイキン−9の活性をダウンレギュレートする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
前記ポリペプチドが、患者における気管支過反応を軽減させる、請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
前記ポリペプチドが、患者における気管支洗浄液中の好酸球増加を軽減させる、請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
喘息の処置のための医薬の調製のための、請求項1〜7に記載の組成物の使用。
【請求項13】
さらに薬学的に受容可能なキャリアを含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
前記組成物が、吸入によって投与される、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
請求項14に記載の組成物を投与する、吸入装置。
【請求項16】
請求項14に記載の組成物を投与する、用量計付き吸入器。
【請求項17】
請求項14に記載の組成物を投与する、乾燥粉末吸入器。
【請求項18】
可溶性インターロイキン−9レセプターまたはそのフラグメントを含む、喘息関連疾患を軽減させるための組成物。
【請求項19】
前記可溶性インターロイキン−9レセプターが、インターロイキン−9の活性をダウンレギュレートする、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
前記可溶性インターロイキン−9レセプターが、患者における気管支過反応を軽減させる、請求項18に記載の組成物。
【請求項21】
前記可溶性インターロイキン−9レセプターが、患者における気管支洗浄液中の好酸球増加を軽減させる、請求項18に記載の組成物。
【請求項22】
喘息の処置のための医薬の調製のための、請求項18に記載の組成物の使用。
【請求項23】
さらに薬学的に受容可能なキャリアを含む、請求項18〜21のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項24】
前記組成物が、吸入によって投与される、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
請求項24に記載の組成物を投与する、吸入装置。
【請求項26】
請求項24に記載の組成物を投与する、用量計付き吸入器。
【請求項27】
請求項24に記載の組成物を投与する、乾燥粉末吸入器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20−1】
【図20−2】
【図21】
【図22】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27−1】
【図27−2】
【図28】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20−1】
【図20−2】
【図21】
【図22】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27−1】
【図27−2】
【図28】
【公開番号】特開2007−169287(P2007−169287A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−1870(P2007−1870)
【出願日】平成19年1月9日(2007.1.9)
【分割の表示】特願平9−510283の分割
【原出願日】平成8年8月23日(1996.8.23)
【出願人】(501097189)ジェネーラ・コーポレーション (9)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年1月9日(2007.1.9)
【分割の表示】特願平9−510283の分割
【原出願日】平成8年8月23日(1996.8.23)
【出願人】(501097189)ジェネーラ・コーポレーション (9)
【Fターム(参考)】
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