説明

噛合チェーン式垂直搬送機

【課題】昇降テーブルの横揺れと縦揺れを防止して確実かつ安定したワークの垂直搬送と省スペース化を実現し、昇降領域の清掃作業や昇降部品の交換作業などの簡便な保守メンテナンス作業を実現する噛合チェーン式垂直搬送機を提供すること。
【解決手段】昇降テーブル110を昇降自在に駆動する一対の噛合チェーン120と、昇降テーブル110の両側面を誘導案内する一対のガイドポール130と、一対の噛合チェーン120を駆動する駆動スプロケット140に駆動力を供給する駆動モータ150とを備え、一対の噛合チェーン120が相互に噛み合って対向配置した状態で一体に剛直化するとともに相互に噛み外れて分岐自在となるように構成され、ガイドポール130を挟持した状態でガイドポール130に沿って転動する一対のガイドローラ111が昇降テーブル110の両側面に配置されている噛合チェーン式垂直搬送機100。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種製造分野の製造設備、運輸分野の移送設備などに用いてワークを昇降させる垂直搬送機であって、特に、噛合チェーンを昇降動作の駆動媒体として採用した噛合チェーン式垂直搬送機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、垂直搬送機として、下階から上階まで貫通して設けたフレームの内部に箱型のキャリッジが条体により保持され、モータにより駆動してキャリッジを昇降させるものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−290804号公報(特許請求の範囲、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、このような垂直搬送機は、キャリッジをワイヤーチェーンなどの条体で吊り下げてモータにより昇降駆動させているため、ワイヤーチェーンなどの条体が過度に伸びる可能性があり、モータの回転数を制御してもキャリッジの停止位置がずれて搬送作業に支障を来すという問題があった。
【0005】
そして、キャリッジをワイヤーチェーンなどの条体で吊り下げて昇降駆動させるため、条体が装置フレーム内で複雑に取り回されており、日常時における昇降領域の清掃作業や長期使用した条体の交換作業が煩雑になるという問題があるとともに、搬送スペースの他にワイヤーチェーンなどの条体を取り回すスペースなどが必要となり、装置全体の大型化を回避できないという問題があった。
【0006】
また、キャリッジをワイヤーチェーンなどの条体で吊り下げて昇降駆動させるため、チェーン潤滑油が搬送時の振動により飛散し、ワークを汚染することがあり、このようなワークの汚染を防止するために汚染防止用カバーなどを付設すると、設置スペースが拡大するばかりでなく、汚染防止用カバーの重量分だけ搬送負荷が増大するという問題があった。
【0007】
さらに、キャリッジをワイヤーチェーンなどの条体で吊り下げて昇降駆動させるため、チェーンの噛み外れがワイヤーチェーンなどの条体に対して横揺れと縦揺れを惹起させて、昇降搬送時に搭載したワークが不安定になるという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、従来の問題を解決するものであって、すなわち、本発明の目的は、昇降テーブルの横揺れと縦揺れを防止して確実かつ安定したワークの垂直搬送と省スペース化を実現するとともに、昇降領域の清掃作業や昇降部品の交換作業などの簡便な保守メンテナンス作業を実現する噛合チェーン式垂直搬送機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る本発明は、ワークを搭載する昇降テーブルと該昇降テーブルの底面中央部を支持して昇降テーブルを昇降自在に駆動する一対の噛合チェーンと前記昇降テーブルの両側面を誘導案内する一対のガイドポールと前記一対の噛合チェーンを昇降自在に駆動する駆動スプロケットと該駆動スプロケットに駆動力を供給する駆動モータとを備えた噛合チェーン式垂直搬送機であって、前記一対の噛合チェーンが相互に噛み合って対向配置した状態で一体に剛直化するとともに相互に噛み外れて分岐自在となるように構成され、前記ガイドポールを挟持した状態でガイドポールに沿って転動するガイドローラが前記昇降テーブルの両側面に配置されていることにより、前述した課題を解決したものである。
【0010】
請求項2に係る本発明は、請求項1に記載の構成に加えて、前記ガイドポールに対向する一対のガイドローラの挟持方向が、前記一対の噛合チェーンを相互に噛み合わせた噛合方向に対して直交または傾交していることにより、前述した課題を解決したものである。
【0011】
請求項3に係る本発明は、請求項1または請求項2に記載の構成に加えて、前記ガイドポールが円柱体から構成されているとともに、前記ガイドローラが鼓型ローラから構成されていることにより、前述した課題を解決したものである。
【0012】
請求項4に係る本発明は、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の構成に加えて、前記駆動スプロケットが、前記一対の噛合チェーンを一体に噛み合せた剛直位置に設けられていることにより、前述した課題を解決したものである。
【0013】
請求項5に係る本発明は、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の構成に加えて、前記駆動スプロケットが、前記一対の噛合チェーンの一方に設けられていることにより、前述した課題を解決したものである。
【0014】
請求項6に係る本発明は、請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の構成に加えて、前記駆動モータが、サーボモータであることにより、前述した課題を解決したものである。
【0015】
請求項7に係る本発明は、請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の構成に加えて、前記一対の噛合チェーンと駆動スプロケットと駆動モータが、前記昇降テーブルの垂直投影面内に配置されていることにより、前述した課題を解決したものである。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に係る本発明の噛合チェーン式垂直搬送機によれば、ワークを搭載する昇降テーブルとこの昇降テーブルの底面中央部を支持して昇降テーブルを昇降自在に駆動する一対の噛合チェーンと前記昇降テーブルの両側面を誘導案内する一対のガイドポールと前記一対の噛合チェーンを昇降自在に駆動する駆動スプロケットとこの駆動スプロケットに駆動力を供給する駆動モータとを備えていることによって、一対の噛合チェーンで昇降する昇降テーブルの両側面が一対のガイドポールでそれぞれ誘導案内されるため、昇降テーブルに生じがちな横揺れと縦揺れを防止して確実かつ安定したワークの垂直搬送を実現し、また、昇降テーブルの底面下部領域内に一対の噛合チェーンや駆動スプロケットや駆動モータを設置することが可能になるため、昇降テーブルの上面領域内における清掃作業や昇降テーブルの底面下部領域内における昇降部品の交換作業などの簡便な保守メンテナンス作業を実現することができる。
【0017】
そして、一対の噛合チェーンが相互に噛み合って対向配置した状態で一体に剛直化するとともに相互に噛み外れて分岐自在となるように構成されていることにより、一対の噛合チェーンが相互に噛み合って対向配置した状態で一体に剛直化する上昇位置まで昇降テーブルの最上昇位置を設定するとともに一対の噛合チェーンが相互に噛み外れて分岐する直前位置まで昇降テーブルの最下降位置を設定することが可能になるため、昇降テーブルの
昇降ストロークを最大限に発揮することができる。
【0018】
また、ガイドポールを挟持した状態でガイドポールに沿って転動するガイドローラが昇降テーブルの両側面に配置されていることにより、ガイドローラがガイドポールに挟持状態でガイドポールに沿って転動走行するため、昇降テーブルの横揺れを抑制して昇降テーブルを円滑に昇降させることができる。
【0019】
そして、請求項2に係る噛合チェーン式垂直搬送機によれば、請求項1に記載の噛合チェーン式垂直搬送機が奏する効果に加えて、ガイドポールに対向する一対のガイドローラの挟持方向が一対の噛合チェーンを相互に噛み合わせた噛合方向に対して直交または傾交していることにより、ガイドポールとガイドローラとの挟持状態で昇降テーブルに生じがちな左右前後のいずれか一方の横揺れを防止し、一対の噛合チェーンの噛み合わせで昇降テーブルに生じがちな左右前後の他方の横揺れを防止するため、昇降テーブルに生じがちな左右前後の横揺れを完全かつ確実に防止することができる。
【0020】
また、請求項3に係る噛合チェーン式垂直搬送機によれば、請求項1または請求項2に記載の噛合チェーン式垂直搬送機が奏する効果に加えて、ガイドポールが円柱体から構成されているとともに、ガイドローラが鼓型ローラから構成されていることにより、ガイドローラの円弧状湾曲ローラ面がガイドポールの円周面に凹凸係合して挟持状態でガイドポールに沿って円滑に転動走行するため、昇降テーブルの横揺れを確実に防止することができる。
【0021】
また、請求項4に係る噛合チェーン式垂直搬送機によれば、請求項1乃至請求項3の何れか1つに記載の噛合チェーン式垂直搬送機が奏する効果に加えて、駆動スプロケットが一対の噛合チェーンを一体に噛み合せた剛直位置に設けられていることにより、剛直化した一対の噛合チェーンに対して駆動スプロケットが噛み合って、所謂、ピニオンラック機構を呈するため、チェーン分岐方向からチェーン噛合方向へ偏向駆動される偏向位置で噛合チェーンを駆動スプロケットに巻き掛けた場合に駆動スプロケットと噛合チェーンとの間で生じる周知のコーダルアクション(多角形運動)の発生が回避され、このコーダルアクションに起因した上下動(脈動)、振動、騒音、速度変動の発生を防止でき、ワークの安定した昇降駆動を実現することができる。
【0022】
請求項5に係る噛合チェーン式垂直搬送機によれば、請求項1乃至請求項4のいずれか1つに記載の噛合チェーン式垂直搬送機が奏する効果に加えて、駆動スプロケットが一対の噛合チェーンの一方に設けられていることにより、一対の噛合チェーンの両方に昇降用スプロケットをそれぞれ設置する噛合チェーン式垂直搬送機と比較して装置全体の部品点数が低減するため、装置構成を簡素化して他構成部材の設計や装置全体の設置場所等に関する高い自由度を確保できるとともに、装置組立および保守メンテナンスに係る作業負担をより低減することができる。
【0023】
また、一対の噛合チェーンの両方に駆動スプロケットをそれぞれ設置した噛合チェーン式垂直搬送機において生じがちな一対の駆動スプロケット間の回転位相ズレに起因した一対の噛合チェーン間の噛合振動の発生を回避するため、ワークの安定した昇降動作を実現することができる。
【0024】
そして、請求項6に係る噛合チェーン式垂直搬送機によれば、請求項1乃至請求項5のいずれか1つに記載の噛合チェーン式垂直搬送機が奏する効果に加えて、駆動モータがサーボモータであることにより、サーボモータの回転数が簡便に制御可能となるため、昇降テーブルの昇降範囲や停止位置を自由かつ正確に制御することができる。
【0025】
さらに、請求項7に係る噛合チェーン式垂直搬送機によれば、請求項1乃至請求項6のいずれか1つに記載の噛合チェーン式垂直搬送機が奏する効果に加えて、一対の噛合チェーンと駆動スプロケットと駆動モータが昇降テーブルの垂直投影面内に配置されていることにより、昇降テーブルの底面下部領域内に一対の噛合チェーンや駆動スプロケットや駆動モータを設置することが可能になるため、省スペース化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施例である噛合チェーン式垂直搬送機の正面図。
【図2】図1に示す噛合チェーン式垂直搬送機の側面図。
【図3】図1に示す噛合チェーン式垂直搬送機の平面図。
【図4】噛合チェーンの分解組み立て状態と噛み外れ状態を示す斜視図。
【図5】駆動スプロケット近傍の斜視図。
【図6】噛合チェーンの噛み外れ状態の概略図。
【図7】ガイドポールに対するガイドローラの挟持状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の噛合チェーン式垂直搬送機は、ワークを搭載する昇降テーブルとこの昇降テーブルの底面中央部を支持して昇降テーブルを昇降自在に駆動する一対の噛合チェーンと前記昇降テーブルの両側面を誘導案内する一対のガイドポールと前記一対の噛合チェーンを昇降自在に駆動する駆動スプロケットとこの駆動スプロケットに駆動力を供給する駆動モータとを備え、一対の噛合チェーンが相互に噛み合って対向配置した状態で一体に剛直化するとともに相互に噛み外れて分岐自在となるように構成され、ガイドポールを挟持した状態でガイドポールに沿って転動するガイドローラが昇降テーブルの両側面に配置され、昇降テーブルの横揺れと縦揺れを防止して確実かつ安定したワークの垂直搬送と省スペース化を実現し、昇降領域の清掃作業や昇降部品の交換作業などの簡便な保守メンテナンス作業を実現するものであれば、その具体的な実施の態様は、如何なるものであっても何ら構わない。
【0028】
たとえば、本発明の噛合チェーン式垂直搬送機は、ワークを搭載する昇降テーブルを下部位置と上部位置との間で垂直搬送することが可能であれば、如何なる装置レイアウトであっても良く、例えば、下部位置に連接した搬入側コンベヤなどのワーク搬入側から搬入したワークを上昇させて垂直搬送した後に、下部位置側の上部位置あるいは下部位置と反対側の上部位置に連接した搬出側コンベヤなどのワーク搬出側へ搬出するもの、もしくは、その逆にワークを下降させて垂直搬送するものなどのいずれであっても適用することができる。
【0029】
そして、本発明の噛合チェーン式垂直搬送機で用いられる一対の噛合チェーンは、一対の駆動スプロケットにより相互に噛み合わせて一体化するとともに一対の駆動スプロケットにより相互に噛み外れて分岐するものであれば、その具体的なチェーン形態は如何なるものであっても良く、例えば、チェーン幅方向に1列の単列であるもの、チェーン幅方向に2列以上の複列であるものなど何れであっても構わないが、チェーン幅方向に2列以上の複列であるものを採用する場合には、一対の噛合チェーンの一方を構成するフック状外歯プレートとフック状内歯プレートが、これに対向する他方の噛合チェーンを構成するフック状外歯プレートとフック状内歯プレートに対してチェーン幅方向の複列に亙ってそれぞれフック状に多重かつ強固に噛み合うため、噛合チェーンのチェーン幅方向に生じがちな座屈を確実に抑制して優れたチェーン耐久性を実現できるので、より好ましい。
【0030】
また、本発明の噛合チェーン式垂直搬送機で用いられる一対の噛合チェーンは、ローラを有していないもの、すなわち、ブシュのみを有するもの、ローラを有するものなど何れであっても構わないが、ブシュのみを有するものを採用する場合には、チェーン部品点数が低減して、チェーン重量の軽量化を図ることができる。
【0031】
そして、本発明の噛合チェーン式垂直搬送機で用いられるガイドポールは、ガイドローラがガイドポールに沿って転動するものであれば、円周面を有する円柱体、若しくは、三角形や矩形の周面を有する角柱体のいずれであっても良い。
他方、本発明の噛合チェーン式垂直搬送機で用いられるガイドローラは、通常のローラ軸方向に平坦なローラ面を有する円柱型ローラ、若しくは、円弧状湾曲ローラ面を有する鼓型ローラのいずれであっても良い。
そして、このようなガイドローラに配置形態については、ガイドポールを挟持した状態でガイドポールに沿って転動して昇降テーブルの横揺れを防止する配置形態であれば良く、例えば、ガイドポールに対して2個または4個で挟持した配置形態でも良いが、4個で挟持した配置形態の場合にはガイドポールに沿って安定して転動することができる。
また、ガイドポールを挟持した状態でガイドポールに沿って転動して昇降テーブルの横揺れを防止する配置形態であれば、3個からなる奇数配置であっても何ら構わない。
【0032】
さらに、本発明の噛合チェーン式垂直搬送機で用いられる昇降テーブルの具体的な形態については、搬入側コンベヤや搬出側コンベヤとの乗り継ぎ時に支障が少ない矩形の搭載面を備えたものが好ましく、また、そのワークを搭載する搭載面にロールコンベヤが付設されている場合は、昇降テーブルに対するワークの搬入搬出作業を簡便に達成することができる。
【実施例】
【0033】
以下、本発明の一実施例である噛合チェーン式垂直搬送機100を図面に基づいて説明する。
ここで、図1は、本発明の一実施例である噛合チェーン式垂直搬送機の正面図であり、図2は、図1に示す噛合チェーン式垂直搬送機の側面図であり、図3は、図1に示す噛合チェーン式垂直搬送機の平面図であり、図4は、噛合チェーンの分解組み立て状態と噛み外れ状態を示す斜視図であり、図5は、駆動スプロケット近傍の斜視図であり、図6は、噛合チェーンの噛み外れ状態の概略図であり、図7は、ガイドポールに対するガイドローラの挟持状態を示す図である。
【0034】
本発明の一実施例である噛合チェーン式垂直搬送機100は、各種製造分野の製造設備、運輸分野の移送設備などに用いるものであって、図1乃至図3に示すように、下部位置の搬入側ロールコンベヤIRから搬入された重量物などのワークWを昇降テーブル110に搭載し、この昇降テーブル110を作業エリアの設置面に対して昇降させて垂直搬送し、昇降テーブル110に搭載したワークWを上部位置の搬出側ロールコンベヤORへ搬出させるものである。
なお、図1乃至図3には、下降時の昇降テーブル110を実線で示し、上昇時の昇降テーブル110を仮想線で示す。また、図1乃至図3の太い矢印は、本実施例におけるワークWの搬送方向を示す。
【0035】
そして、本実施例の噛合チェーン式垂直搬送機100は、図1乃至図3に示すように、前述したワークWを搭載する矩形の搭載面を有する昇降テーブル110と、この昇降テーブル110の底面中央部を支持して昇降テーブル110を昇降自在に駆動する前後一対の噛合チェーン120と、昇降テーブル110の両側面を誘導案内する前後一対の円柱体からなるガイドポール130と、一対の噛合チェーン120を昇降自在に駆動する駆動スプロケット140と、この駆動スプロケット140に駆動力を供給する駆動モータ150とを備えている。
これにより、一対の噛合チェーン120で昇降する昇降テーブル110の両側面が一対のガイドポール130でそれぞれ誘導案内されるとともに、昇降テーブル110の底面下部領域内に一対の噛合チェーン120や駆動スプロケット140や駆動モータ150を設置することが可能になっている。
【0036】
そして、前述した一対の噛合チェーン120は、図4に示すように、左右一対で離間配置されるフック状内歯プレート121に前後一対のブシュ122を圧入嵌合してなる内リンクユニット123がチェーン幅方向の最も外側に配置されたフック状外歯プレート124の前後一対のピン孔に圧入嵌合する前後一対の連結ピン125によりチェーン長手方向に多数連結されている。
このようにして、一対の噛合チェーン120は、水平方向から垂直方向へ偏向しながら相互に対向するフック状内歯プレート121同士およびフック状外歯プレート124同士をそれぞれ噛み合せて一体に自立状態で上昇するようになっており、また、垂直方向から水平方向へ偏向しながらフック状内歯プレート121同士およびフック状外歯プレート124同士をそれぞれ噛み外して分岐するようになっている。
【0037】
したがって、前述した一対の噛合チェーン120は、図6に示すように、相互に噛み合って対向配置した状態で一体に剛直化するとともに相互に噛み外れて分岐自在となるように構成されているため、一対の噛合チェーン120が相互に噛み合って対向配置した状態で一体に剛直化する上昇位置まで昇降テーブル110の最上昇位置を設定するとともに一対の噛合チェーン120が相互に噛み外れて分岐する直前位置まで昇降テーブル110の最下降位置を設定することが可能になっている。
【0038】
なお、図5に示す符号160は、一対の噛合チェーン120の偏向位置の股間領域に設けて一対の噛合チェーン120を誘導移動するチェーン誘導プレートであり、このチェーン誘導プレート160が、上昇駆動時に一対の噛合チェーン120を相互に噛み合わせて一体に自立状態で上昇させるとともに、一対の噛合チェーン120を相互に噛み外して分岐させるようになっている。
【0039】
また、図5乃至図6に示す符号170は、一対の噛合チェーン120が相互に噛み外れて分岐した噛合チェーンをそれぞれ収納する巻き取り型のチェーン収納ボックスからなるチェーン収納手段であり、このチェーン収納手段170は、駆動モータ160と同様に、昇降テーブル110の最下降位置の周辺域、すなわち、昇降テーブル110の投影傘下に離間配置されている。
さらに、図1乃至図2に示す符号180は、前述した駆動モータ150、チェーン誘導プレート160、チェーン収納手段170などを集合配置した、いわゆる、機器室と前述した昇降テーブル110を昇降させる、いわゆる、搬送室とを仕切るセパレート板であり、このセパレート板180により、メンテナンス性をさらに向上させている。
【0040】
そして、前述した駆動スプロケット140は、図5乃至図6に示すように、一対の噛合チェーン120を一体に噛み合せた剛直位置に設けられている。
これにより、剛直化した一対の噛合チェーン120に対して駆動スプロケット140が噛み合って、所謂、ピニオンラック機構を呈するため、チェーン分岐方向からチェーン噛合方向へ偏向駆動される偏向位置で噛合チェーン120を駆動スプロケット140に巻き掛けた場合に駆動スプロケット140と噛合チェーン120との間で生じる周知のコーダルアクション(多角形運動)の発生が回避され、このコーダルアクションに起因した上下動(脈動)、振動、騒音、速度変動の発生を防止し、ワークの安定した昇降駆動を実現している。
【0041】
さらに、前述した駆動スプロケット140は、図5乃至図6に示すように、一対の噛合チェーン120の一方に設けられている。
これにより、一対の噛合チェーン120の両方に駆動スプロケットをそれぞれ設置する噛合チェーン式垂直搬送機と比較して、装置全体の部品点数を低減し、装置構成を簡素化して他構成部材の設計や装置全体の設置場所等に関する高い自由度を確保するとともに、装置組立および保守メンテナンスに係る作業負担をより低減している。
【0042】
また、前述した駆動モータ150には、サーボモータを採用している。
これにより、サーボモータの回転数が簡便に制御可能となるため、昇降テーブル110の昇降範囲や停止位置が自由かつ正確に制御されるようになっている。
【0043】
そして、上述したように、一対の噛合チェーン120と駆動スプロケット140と駆動モータ150とは、昇降テーブル110の垂直投影面内に配置されるため、昇降テーブル110の底面下部領域内に一対の噛合チェーン120や駆動スプロケット140や駆動モータ150を設置することになり、設置面の省スペース化を実現している。
【0044】
つぎに、本実施例の噛合チェーン式垂直搬送機100が最も特徴とする昇降テーブル110と噛合チェーン120とガイドポール130との相互の配置形態について、以下に説明する。
まず、図1および図7に示すように、円柱体からなるガイドポール130を挟持した状態でガイドポール130に沿って転動する左右一対の計4個の鼓型ローラからなるガイドローラ111が、昇降テーブル110の両側面にそれぞれ配置されている。
これにより、ガイドローラ111の円弧状湾曲ローラ面111aが、ガイドポール130の円周面130aに凹凸係合して挟持した状態でガイドポール130に沿って円滑に転動走行するようになっている。
なお、前述したガイドローラ111は、図7に示すように、ガイドローラ111同士を一体に組みつけるためのブラケットに設けたL字状穴111bに装着されており、ガイドポール130に対するズレなどを抑制してガイドポール130を確実に挟持するようになっている。
【0045】
そして、本実施例の噛合チェーン式垂直搬送機100では、前述したガイドポール130に対向する一対のガイドローラ111の挟持方向Xが、一対の噛合チェーン120を相互に噛み合わせた噛合方向Yに対して直交している。
これにより、ガイドポール130の円周面130aとガイドローラ111の円弧状湾曲ローラ面111aとの挟持状態で昇降テーブル110に生じがちな左右前後のいずれか一方の横揺れを防止し、一対の噛合チェーン120の噛み合わせで昇降テーブル110に生じがちな左右前後の他方の横揺れを防止している。
なお、本実施例の噛合チェーン式垂直搬送機100では、前述したように、一対のガイドローラ111の挟持方向Xが、一対の噛合チェーン120の噛合方向Yに対して直交しているが、一対の噛合チェーン120の噛合方向Yに対して傾交していても、同様に左右前後の他方の横揺れを防止することが可能である。
【0046】
そこで、本実施例の噛合チェーン式垂直搬送機100の搬送動作について、図1乃至図3に基づいて、以下に説明する。
まず、作業エリアの下部位置の搬入側ロールコンベヤIRから搬入されたワークWを昇降テーブル110に搭載し、この昇降テーブル110をガイドポール130で上方へ誘導案内しながら一対の噛合チェーン120により上昇させて垂直搬送した後、昇降テーブル110に搭載したワークWを上部位置の搬出側ロールコンベヤORへ搬出させる。
【0047】
次いで、ワークWを上部位置の搬出側ロールコンベヤORへ搬出させた後の昇降テーブル110は、ガイドポール130で下方へ誘導案内しながら一対の噛合チェーン120により作業エリアの下部位置まで下降させ、搬入側ロールコンベヤIRから搬入されるワークWを待ち受ける。
【0048】
したがって、本実施例の噛合チェーン式垂直搬送機100は、上述したような動作を繰り返して昇降テーブル110を昇降させることにより、ワークWを順次垂直搬送するようになっている。
【0049】
このようにして得られた本実施例の噛合チェーン式垂直搬送機100は、ワークWを搭載する昇降テーブル110の底面中央部を支持して昇降自在に駆動する一対の噛合チェーン120と、昇降テーブル110の両側面を誘導案内する一対のガイドポール130と、一対の噛合チェーン110を昇降自在に駆動する駆動スプロケット140に駆動力を供給する駆動モータ150などを備えていることにより、昇降テーブル110に生じがちな横揺れと縦揺れを防止して確実かつ安定したワークWの垂直搬送を実現し、昇降テーブル110の上面領域内における清掃作業や昇降テーブル110の底面下部領域内における昇降部品の交換作業などの簡便な保守メンテナンス作業を実現することができるとともに、昇降テーブル110の昇降ストロークを最大限に発揮することができる。
【0050】
また、ガイドポール130を挟持した状態でガイドポール130に沿って転動する一対のガイドローラ111が昇降テーブル110の両側面に配置されているとともにガイドポール130に対向する一対のガイドローラ111の挟持方向Xが一対の噛合チェーン120を相互に噛み合わせた噛合方向Yに対して直交していることにより、昇降テーブル110に生じがちな左右前後の横揺れを完全かつ確実に防止することができるなど、その効果は甚大である。
【符号の説明】
【0051】
100 ・・・ 噛合チェーン式垂直搬送機
110 ・・・ 昇降テーブル
111 ・・・ ガイドローラ
111a ・・・ 円弧状湾曲ローラ面
111b ・・・ L字状穴
120 ・・・ 一対の噛合チェーン
121 ・・・ フック状内歯プレート
122 ・・・ ブシュ
123 ・・・ 内リンクユニット
124 ・・・ フック状外歯プレート
125 ・・・ 連結ピン
130 ・・・ ガイドポール
130a ・・・ 円周面
140 ・・・ 駆動スプロケット
150 ・・・ 駆動モータ
160 ・・・ チェーン誘導プレート
170 ・・・ チェーン収納手段
180 ・・・ セパレート板
IR ・・・ 搬入側ロールコンベヤ
OR ・・・ 搬出側ロールコンベヤ
W ・・・ ワーク
X ・・・ 一対のガイドローラの挟持方向
Y ・・・ 一対の噛合チェーンの噛合方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを搭載する昇降テーブルと該昇降テーブルの底面中央部を支持して昇降テーブルを昇降自在に駆動する一対の噛合チェーンと前記昇降テーブルの両側面を誘導案内する一対のガイドポールと前記一対の噛合チェーンを昇降自在に駆動する駆動スプロケットと該駆動スプロケットに駆動力を供給する駆動モータとを備えた噛合チェーン式垂直搬送機であって、
前記一対の噛合チェーンが相互に噛み合って対向配置した状態で一体に剛直化するとともに相互に噛み外れて分岐自在となるように構成され、
前記ガイドポールを挟持した状態でガイドポールに沿って転動するガイドローラが前記昇降テーブルの両側面に配置されていることを特徴とする噛合チェーン式垂直搬送機。
【請求項2】
前記ガイドポールに対向する一対のガイドローラの挟持方向が、前記一対の噛合チェーンを相互に噛み合わせた噛合方向に対して直交または傾交していることを特徴とする請求項1記載の噛合チェーン式垂直搬送機。
【請求項3】
前記ガイドポールが円柱体から構成されているとともに、前記ガイドローラが鼓型ローラから構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の噛合チェーン式垂直搬送機。
【請求項4】
前記駆動スプロケットが、前記一対の噛合チェーンを一体に噛み合せた剛直位置に設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載の噛合チェーン式垂直搬送機。
【請求項5】
前記駆動スプロケットが、前記一対の噛合チェーンの一方に設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1つに記載の噛合チェーン式垂直搬送機。
【請求項6】
前記駆動モータが、サーボモータであることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1つに記載の噛合チェーン式垂直搬送機。
【請求項7】
前記一対の噛合チェーンと駆動スプロケットと駆動モータが、前記昇降テーブルの垂直投影面内に配置されていることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1つに記載の噛合チェーン式垂直搬送機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−111314(P2011−111314A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−271606(P2009−271606)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成21年10月14日 インターネットアドレス「http://www.tsubakimoto.jp/press/press091014.html」に発表
【出願人】(000003355)株式会社椿本チエイン (861)
【出願人】(000180298)四国化工機株式会社 (44)
【出願人】(393028612)協栄システム株式会社 (3)
【Fターム(参考)】