説明

器具取付具

【課題】器具とケーブルとの接続部を少なくとも裏側から保護可能としながらも、壁孔を通過させて壁裏に配置する作業を容易に行うこと。
【解決手段】器具取付具1は器具固定枠10と収容体20とを備え、収容体20には係合部28が設けられるとともに、器具固定枠10の枠本体11には係合部28と係合可能な被係合部18が設けられている。そして、器具固定枠10を、壁孔W2を通過させて中空部K内に配置するとともに、収容体20を壁W表側から挿通孔11a内に挿入することで、係合部28と被係合部18とを係合させて、収容体20を器具固定枠10に組み付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、器具取付具に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の壁においては、柱と、その柱の前後両面に立設される一対の壁材とによって構成されるものがあり、壁裏には断熱部材が設けられる。そして、壁に設置される器具とケーブルとの接続部が、断熱部材と接触するのを防止するために、例えばボックス状の器具取付具が使用される(例えば特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1の配線器具取付部材としての配線ボックスは合成樹脂製であるとともに、一面に開口を有する上下方向に長い有底四角な箱を、底壁の上側と下側とでそれぞれ幅方向に亘って切り欠き除去した形状になっている。切り欠き除去した部分に相当する孔は、配線ケーブルを配線ボックス内に引き込むための引込孔になっている。そして、配線ボックスは、底壁と、底壁に連続する左側壁及び右側壁と、左側壁及び右側壁に連続する上壁及び下壁とを備える。上壁及び下壁の中央部内側には膨出部がそれぞれ形成されるとともに、膨出部には取付孔が形成されている。また、上壁の開口側縁部には当接部(当接面)が上方に突出形成されるとともに、下壁の開口側縁部には当接部(当接面)が下方に突出形成されている。
【0004】
そして、配線ボックスを壁に固定する際には、まず、壁裏に配線された配線ケーブルを、壁材に穿設された貫通孔(壁孔)から壁表側に引き出し、引込孔から配線ボックス内に引き込む。次に、配線ボックスを貫通孔に挿入する。貫通孔の幅は配線ボックスの幅よりも僅かに大きく形成されているため、配線ボックスは、幅方向に延びる軸回りに傾けるだけで、配線ボックスの当接部側から容易に貫通孔に挿入される。
【0005】
次に、配線ボックスを取り付け位置に位置合わせしながら、両当接部を、壁の裏面の貫通孔周縁部の上部と下部とにそれぞれ当接させる。さらに、配線器具取付枠に取着された配線器具に配線ケーブルを接続するとともに、配線器具取付枠を壁表に配置する。すると、配線ボックス内に配線器具が収容されるとともに、配線器具と配線ケーブルとの接続部は、箱状の配線ボックスによって周囲に取り囲まれる。そして、配線ボックスの取付孔に装着されたナットに、配線器具取付枠のビス挿通孔に挿通された取付ビスを螺合して締め込む。すると、壁表に配線器具取付枠が取り付けられるとともに、配線ボックスと配線器具取付枠とが相互に連結され、配線ボックスと配線器具取付枠とで壁を挟持することにより、配線器具及び配線ボックスが壁に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−18724号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1の配線ボックスは、上下両当接部を貫通孔の上下両側に当接させる必要があることから、配線ボックスの上下方向への長さは、貫通孔の上下方向への長さよりも長くなっている。また、配線器具と配線ケーブルとの接続部を取り囲むため、配線ボックスは奥行きを有している。このように、長さと奥行きとを有する配線ボックスにおいては、一対の壁材間の間隔が狭かったり、一枚の壁材の厚みが厚かったりする場合、配線ボックスを貫通孔に対して斜めに傾けながら挿入する際に、配線ボックスが壁裏側の壁材に干渉してしまい、配線ボックスを、貫通孔を通過させて壁裏に配置する作業を行い難いという問題がある。
【0008】
本発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものであり、その目的は、器具とケーブルとの接続部を少なくとも裏側から保護可能としながらも、壁孔を通過させて壁裏に配置する作業を容易に行うことができる器具取付具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、対向配置された固定部を少なくとも一対備え、壁材に穿設された壁孔を通過させて壁裏に配置されるとともに、壁裏のケーブルが接続される器具又は前記器具の器具枠が前記固定部を使用して壁表に設置されることで、前記壁材を前記器具又は前記器具枠とで挟持して壁裏に固定される器具取付具であって、前記壁材の裏面における前記壁孔の周縁に当接する当接面を有するとともに内側に挿通孔を有する器具固定枠と、一面に開口を有するとともに前記器具を前記開口を介して収容可能とし、前記器具と前記ケーブルとの接続部を少なくとも裏側から覆うための底壁を有するとともに、前記挿通孔に挿通される収容体と、を備え、前記収容体には取付部が設けられるとともに、前記器具固定枠には前記挿通孔に前記収容体が挿通された状態で前記取付部が取り付けられる被取付部が設けられ、前記取付部が前記被取付部に取り付けられて前記収容体が前記器具固定枠に組み付けられて構成されることを要旨とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記被取付部は、前記固定部が設けられる前記器具固定枠の辺部に設けられていることを要旨とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記取付部は、前記収容体の開口縁部に設けられていることを要旨とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の発明において、前記取付部と前記被取付部とは互いに係合可能であることを要旨とする。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、器具とケーブルとの接続部を少なくとも裏側から保護可能としながらも、壁孔を通過させて壁裏に配置する作業を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施形態における器具固定枠、収容体及び器具枠を示す斜視図。
【図2】(a)は器具固定枠の正面図、(b)は図2(a)におけるA−A線断面図。
【図3】(a)は収容体の正面図、(b)は図3(a)におけるB−B線断面図。
【図4】器具固定枠が壁裏に配置された状態を示す斜視図。
【図5】器具固定枠と収容体とが壁裏において組み付けられた状態を示す斜視図。
【図6】器具枠が壁に設置された状態を示す縦断面図。
【図7】別の実施形態における器具固定枠を示す正面図。
【図8】別の実施形態における収容体と壁裏に配置された状態の器具固定枠とを示す斜視図。
【図9】器具固定枠と収容体とが壁裏において組み付けられた状態を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1〜図6にしたがって説明する。
図1に示すように、器具取付具1は、器具固定枠10と収容体20とから構成される。また、本実施形態における器具固定枠10は、器具としてのスイッチSが保持された状態の器具枠Hを建築物の壁Wに一つ設置するために壁W裏に設置されるものである。
【0015】
まず、壁Wについて説明する。
図6に示すように、壁Wは、図示しない柱と、その柱の前後両面に立設される一対の壁材W1とによって構成されている。また、一対の壁材W1の間には中空部K(壁W裏)が形成されるとともに、中空部KにはケーブルCが配設されている。また、中空部K内には発泡ポリスチレン板やグラスウール、硬質発泡ウレタン板等の図示しない断熱部材が設けられる。なお、本実施形態において、壁材W1の所望位置には縦長楕円形状の壁孔W2が穿設される。この壁孔W2は、開口形状が縦長楕円形状をなすカップ状のケーシングを備えた電動穿孔具(図示せず)を用いて壁材W1に穿設される。
【0016】
次に、器具固定枠10について説明する。
図1に示すように、器具固定枠10は、矩形枠状に形成される合成樹脂材料製の枠本体11を備えている。
【0017】
図2(a)に示すように、枠本体11は、対向する短辺を構成するとともに互いに平行に延びる辺部としての上枠部12及び下枠部13を備えている。また、枠本体11は、対向する長辺を構成するとともに上枠部12の右端部と下枠部13の右端部とを繋ぐ辺部としての右側枠部14、及び上枠部12の左端部と下枠部13の左端部とを繋ぐ辺部としての左側枠部15を備えている。そして、枠本体11の中央部には、上枠部12、下枠部13、右側枠部14及び左側枠部15により挿通孔11aが囲み形成されている。
【0018】
上枠部12及び下枠部13における長辺方向の長さは同じであるとともに、右側枠部14及び左側枠部15における長辺方向の長さは同じになっている。右側枠部14及び左側枠部15は、上枠部12及び下枠部13に対して直交する方向へ延びている。上枠部12及び下枠部13の表面12a,13a(一端面)と、右側枠部14及び左側枠部15の表面14a,15a(一端面)とは同一面上に位置しており、これら表面12a,13a,14a,15aは、壁材W1の裏面における壁孔W2の周縁全周に亘って当接する当接面として機能する。
【0019】
上枠部12及び下枠部13の中央部内側それぞれには、固定部としてのボス部16が互いに対向配置され、枠本体11は一対のボス部16を備えている。各ボス部16の表面は上枠部12及び下枠部13の表面12a,13aよりも突出しており、各ボス部16の厚みは上枠部12及び下枠部13の厚みよりも厚くなっている。各ボス部16には、上枠部12又は下枠部13の厚み方向へ貫通する円孔状のボス孔16aが形成されるとともに、各ボス部16内にはナットN1(図1参照)が埋設されている。そして、ナットN1には、器具枠Hを一対のボス部16に固定するための固定ビスB1が螺合可能になっている。
【0020】
上枠部12及び下枠部13の表面12a,13aにおいて、各ボス部16よりも外側には係止突起17がそれぞれ設けられている。各係止突起17は、上枠部12及び下枠部13の表面12a,13aに対して直交する方向へ延びるように突出するとともに、各ボス部16に対して外側へ膨らむように弧状に湾曲して形成されている。また、各係止突起17は、各係止突起17における各ボス部16側とは反対側の側面全体が、壁孔W2の内周面において、壁孔W2における長辺側の対向する円弧部分それぞれに沿うように円弧状に形成されている。
【0021】
上枠部12及び下枠部13において、ボス部16を挟む位置それぞれには被取付部としての被係合部18が設けられている。各被係合部18は、上枠部12及び下枠部13において、一対のボス孔16a同士を結ぶ直線L1から上枠部12及び下枠部13の長辺方向に沿って同じ距離だけ離間した位置に設けられている。被係合部18は、上枠部12及び下枠部13において、挿通孔11aの内側面から上枠部12又は下枠部13の外側面側に向かって凹む凹部18aを備えている。
【0022】
凹部18aは、挿通孔11aの内側面から右側枠部14及び左側枠部15の長辺方向に沿って互いに対向して延びる第1内側面181a及び第2内側面182aと、第1内側面181a及び第2内側面182aにおける上枠部12又は下枠部13側の端部同士を繋ぐとともに上枠部12及び下枠部13の長辺方向に沿って延びる第3内側面183aとから形成されている。さらに、被係合部18は、第1内側面181a及び第2内側面182aにおける挿通孔11a寄りの部位を繋ぐ連結部18bを備えている。
【0023】
図2(b)に示すように、各連結部18bの表面はボス部16の表面よりも凹んだ位置にあるとともに、各連結部18bの裏面は上枠部12及び下枠部13の裏面よりも凹んだ位置にある。また、各連結部18bの表面及び裏面は平坦面状に形成されている。また、図2(a)に示すように、各連結部18bにおける上枠部12側の面又は下枠部13側の面は平坦面状に形成されるとともに、各連結部18bにおける挿通孔11a側の面は平坦面状に形成されている。そして、第1内側面181a、第2内側面182a、第3内側面183a及び連結部18bにおける上枠部12側の面又は下枠部13側の面により挿入空間18cが形成されている。
【0024】
次に、収容体20について説明する。
図3(a)に示すように、収容体20は、合成樹脂材料により一面に開口を有する有底四角箱状の本体部21を備えている。本体部21は、長方形状をなす底壁22と、底壁22の長側両縁部と連続する一対の側壁である左側壁23及び右側壁24と、底壁22の短側両縁部から離れた位置で左側壁23及び右側壁24に連続する一対の側壁である上壁25及び下壁26とから形成されている。図3(b)に示すように、底壁22の短側両縁部は本体部21の短手方向に亘って切り欠き除去され、本体部21には、この切り欠き除去された部分によりケーブルCが挿通可能なケーブル挿通孔27が形成されている。
【0025】
図3(a)に示すように、上壁25及び下壁26の外側面において、上壁25及び下壁26の長辺方向における中央部の開口縁部には突起部29が形成されている。図3(b)に示すように、各突起部29は、上壁25又は下壁26の外側面から上方又は下方に向かって突出しながら開口縁部側に向かうにつれて傾斜する傾斜面29aと、傾斜面29aにおける開口縁部側の端部と開口縁部とを繋ぐ開口側端面29bとから形成されている。開口側端面29bは開口縁部と同一平面上に位置している。
【0026】
図3(a)に示すように、上壁25及び下壁26の開口側縁部において、突起部29を挟む位置には取付部としての係合部28がそれぞれ設けられている。各係合部28は、上下突起部29を結ぶ直線L2から上壁25及び下壁26の長辺方向に沿って同じ距離だけ離間した位置に設けられている。直線L2から各係合部28までの距離は、直線L1から各被係合部18までの距離と同じ距離になっている。
【0027】
図3(b)に示すように、係合部28は、上壁25又は下壁26の開口側縁部から底壁22とは反対側に向かって突出するように延びる延在部28aを備えている。また、係合部28は、延在部28aに対して直交するとともに延在部28aの先端から連続して開口側とは反対側に向かって延びる当接部28bと、当接部28bに対して直交するとともに当接部28bの先端から連続して底壁22側に向かって延びる掛止部28cとを備えている。
【0028】
延在部28aと掛止部28cとの間の間隔は、連結部18bにおける右側枠部14及び左側枠部15の長辺方向に沿った長さよりも僅かに大きくなっている。また、当接部28bにおける底壁22側の面は平坦面状に形成されている。延在部28a、当接部28b及び掛止部28cにおける上壁25及び下壁26の長辺方向に沿った長さはそれぞれ同じであるとともに、延在部28a、当接部28b及び掛止部28cにおける上壁25及び下壁26の長辺方向に沿った長さは、凹部18aの第1内側面181aと第2内側面182aとの間の距離よりも僅かに短くなっている。また、掛止部28cの厚みは、挿入空間18cに挿入可能な厚みになっている。開口側端面29bと当接部28bにおける底壁22側の面との間の距離は、枠本体11の裏面と連結部18bの表面との間の距離と同じになっている。
【0029】
次に、上記構成の器具取付具1を用いてスイッチSを壁Wに設置する方法について説明する。
まず、壁材W1の所望位置に壁孔W2を、電動穿孔具を用いて穿設するとともに、中空部Kに配設されたケーブルCを壁孔W2から壁材W1の表側に引き出す。次に、作業者は、器具固定枠10を把持するとともに、ケーブルCを挿通孔11aの内側を通過させた状態で、枠本体11を、長辺方向に沿う方向を挿入方向として、短辺側から壁孔W2を介して中空部K内に挿入する。すると、枠本体11全体が壁孔W2を通過して、器具固定枠10が中空部K内に位置する。
【0030】
次に、図4に示すように、作業者は、各係止突起17における各ボス部16側とは反対側の側面全体が、壁孔W2の内周面において、壁孔W2における長辺側の対向する円弧部分それぞれに沿うように位置調整しながら、各係止突起17を壁孔W2内に挿入する。すると、各表面12a,13a,14a,15a全体が壁材W1の裏面における壁孔W2周縁全周に亘って当接する。
【0031】
次に、ケーブルCをケーブル挿通孔27を介して本体部21内に引き込んだ状態で、壁W表側から壁孔W2を介して挿通孔11a内に本体部21を挿入する。このとき、各係合部28と各被係合部18とが互いに係合するように本体部21を挿通孔11a内に挿入する。すると、各突起部29の傾斜面29aがボス部16の縁部に当接するとともに、傾斜面29aとボス部16の縁部とが摺接することで、上壁25及び下壁26が内側へ弾性変形する。
【0032】
この上壁25及び下壁26の弾性変形により、本体部21が挿通孔11a内に挿入されて、掛止部28cが挿入空間18cに挿入されるとともに、当接部28bにおける底壁22側の面が連結部18bの表面に当接する。すると、図6に示すように、各突起部29が挿通孔11aを通過して枠本体11の裏面側に配置されるとともに、上壁25及び下壁26が原形状に復帰して、各突起部29の開口側端面29bがボス部16の裏面に当接する。よって、当接部28bにおける底壁22側の面と連結部18bの表面との当接、及び各突起部29の開口側端面29bとボス部16の裏面との当接により、各当接部28bと各突起部29とで枠本体11を挟持した状態となり、図5に示すように、中空部K内において収容体20が器具固定枠10に対して組み付けられる。
【0033】
そして、図6に示すように、器具枠Hに予め保持されたスイッチSにケーブルCを接続するとともに、器具枠Hを壁材W1の表面に配置する。すると、スイッチSが開口を介して本体部21内に収容され、スイッチSとケーブルCとの接続部C1が本体部21によって取り囲まれるとともに、底壁22によって接続部C1が裏側から覆われる。さらに、固定ビスB1を、器具枠Hのビス挿通孔H1、壁孔W2及びボス孔16aを介してナットN1に締め込むと、器具固定枠10は、壁材W1を器具枠Hと共に挟持した状態で、壁材W1裏面に固定されるとともに、器具枠Hが壁材W1の表面に固定され、スイッチSが壁Wに設置される。
【0034】
上記実施形態では以下の効果を得ることができる。
(1)器具取付具1は、当接面を有する器具固定枠10と、底壁22を有する箱状の収容体20とをそれぞれ別の部品として備え、収容体20の係合部28と器具固定枠10の被係合部18とを係合することで、器具取付具1を組み立てることができる。そして、器具固定枠10は底壁22を有していないため、背景技術の配線ボックスに比べて奥行きが短く、器具固定枠10を壁孔W2に対して容易に通過させることができる。さらに、収容体20は当接面を有していないため、その外形が壁孔W2の開口面積よりも小さく、収容体20を壁孔W2に対して容易に通過させることができる。よって、器具固定枠10と収容体20とを別々に壁孔W2に通過させ、係合部28と被係合部18とを係合させることで、壁W裏に器具取付具1を配置する作業を容易に行うことができる。したがって、スイッチSとケーブルCとの接続部C1を収容体20により取り囲んで保護可能としながらも、壁W裏に器具取付具1を配置する作業を容易に行うことができる。
【0035】
(2)例えば、器具固定枠10の配置位置によっては、右側枠部14又は左側枠部15が柱に干渉してしまう場合がある。この場合、器具固定枠10は、柱と干渉してしまう右側枠部14又は左側枠部15を枠本体11から切断除去して使用される。このとき、被係合部18が右側枠部14及び左側枠部15に設けられていると、被係合部18が右側枠部14又は左側枠部15と共に枠本体11から除去されてしまう。しかし、本実施形態では、被係合部18が上枠部12及び下枠部13に設けられているため、右側枠部14又は左側枠部15が柱に干渉する位置に器具固定枠10が配置される場合であっても、被係合部18が除去されることがなく、収容体20を器具固定枠10に組み付けることができる。
【0036】
(3)各係合部28は、収容体20の開口縁部に設けられている。収容体20は、壁W裏に設置された器具固定枠10の挿通孔11aに挿通された状態で各係合部28が被係合部18に係合することで器具固定枠10に組み付けられる。つまり、収容体20が器具固定枠10に組み付けられた状態では、本体部21全体が壁W裏に位置するため、ケーブル挿通孔27は壁W裏に位置することになる。よって、例えば、壁材W1の厚みが厚い場合であっても、ケーブル挿通孔27は壁材W1の厚みに関係無く壁W裏に位置するため、壁材W1とケーブル挿通孔27とが干渉してしまい、ケーブル挿通孔27を介して本体部21内にケーブルCを挿通させることができなくなってしまうことを防止することができる。
【0037】
(4)器具固定枠10と収容体20とは、係合部28と被係合部18との係合により組み付けることができる。よって、例えば、器具固定枠10と収容体20とをビス締めで一体に組み付ける場合に比べて、器具固定枠10と収容体20とを容易に一体化させることができる。
【0038】
(5)係合部28は、収容体20が挿通孔11aに挿通された状態で被係合部18に係合可能になっている。よって、収容体20を挿通孔11aに対して挿通するだけで、器具固定枠10と収容体20とを係合部28と被係合部18との係合により組み付けることができ、器具固定枠10と収容体20とを容易に一体化させることができる。
【0039】
(6)上枠部12及び下枠部13において、ボス部16を挟む位置それぞれには被係合部18が設けられている。上枠部12及び下枠部13は、右側枠部14及び左側枠部15に比べて、ボス部16を備えている分だけ強度が高い。よって、被係合部18が右側枠部14及び左側枠部15に設けられている場合に比べて、被係合部18に対する係合部28の係合により生じる枠本体11の撓みを抑制することができる。
【0040】
(7)器具取付具1は、それぞれ別部品である器具固定枠10と収容体20とが組み付けられて構成される。例えば、一対の壁材W1間の間隔が狭かったり、一枚の壁材W1の厚みが厚かったりする場合は、器具固定枠10と収容体20とをそれぞれ別々に壁孔W2に挿入する。一方、一対の壁材W1間の間隔が広かったり、一枚の壁材W1の厚みが薄かったりする場合は、器具固定枠10と収容体20とを予め組み付けた状態で壁孔W2に挿入する。すなわち、本実施形態の器具取付具1によれば、器具固定枠10と収容体20とをそれぞれ分割して使用することができる一方で、器具固定枠10と収容体20とを予め一体化して使用することもでき、器具取付具1を使用するときの状況に応じて使い分けができる。
【0041】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
○ 実施形態において、器具固定枠10は、スイッチSが保持された状態の器具枠Hを壁Wに一つ設置するためのものであったが、これに限らず、器具枠Hを壁Wに二つ以上並設するためのものであってもよい。たとえば、図7に示すように、器具固定枠10の枠本体11を構成する上枠部12及び下枠部13の内側には、ボス部16が互いに対向するように二対設けられている。隣り合うボス部16同士の間の間隔は、同じ幅のスイッチSが保持された器具枠Hが各一対のボス部16に対して固定されて、器具枠Hを壁Wに二つ並設可能な間隔になっている。また、図7に示す枠本体11において、隣り合うボス部16同士の間の被係合部18を利用してセパレータ75を配設してもよい。
【0042】
○ 実施形態において、収容体20は、合成樹脂材料から形成されていたが、これに限らず、例えば金属材料から形成されていてもよい。
図8に示すように、収容体80は、金属材料により一面に開口を有する有底四角箱状の本体部81を備えている。本体部81は、長方形状をなす底壁82と、底壁82の長側両縁部と連続する一対の側壁である左側壁83及び右側壁84と、底壁82の短側両縁部から離れた位置で左側壁83及び右側壁84に連続する一対の側壁である上壁85及び下壁86とから形成されている。上壁85及び下壁86には、ケーブル挿通孔87が二つずつ形成されている。このケーブル挿通孔87は、ケーブルCが挿通される前の状態では、金属性の蓋部89により閉塞されるとともに、ケーブルCをケーブル挿通孔87に挿通する際に、蓋部89を打抜くことにより、蓋部89が除去されてケーブル挿通孔87が開放されるようになっている。
【0043】
本体部81の開口縁全周にはフランジ部88が一体形成されている。フランジ部88は、本体部81の開口縁全周から本体部81の外方に向けて延びるように形成されている。フランジ部88における上壁85及び下壁86側の第1外縁部88aは、外方に向けて膨らむように弧状に湾曲するとともに、器具固定枠10の係止突起17における各ボス部16側の側面全体に沿うように形成されている。また、フランジ部88における左側壁83及び右側壁84側の第2外縁部88bは、壁孔W2の内周面における短辺側の対向する直線部分に沿うように形成されている。
【0044】
そして、図9に示すように、蓋部89が打ち抜かれて除去されたことで開放された状態のケーブル挿通孔87に対してケーブルCを挿通するとともに、ケーブルCを本体部81内に引き込んだ状態で、壁W表側から壁孔W2を介して挿通孔11a内に本体部81を挿入する。すると、第1外縁部88aが係止突起17における各ボス部16側の側面全体に沿うように嵌合されるとともに、第2外縁部88bが壁孔W2の内周面における短辺側の対向する直線部分に沿うように嵌合される。これらの嵌合により、収容体80は、中空部K内において上下左右に移動することなく器具固定枠10に対して組み付けられる。この場合、フランジ部88の第1外縁部88aが取付部として機能するとともに、器具固定枠10の係止突起17における各ボス部16側の側面が被取付部として機能する。
【0045】
収容体80が器具取付枠10に組み付けられた状態では、フランジ部88における上壁85及び下壁86側の裏面がボス部16の表面に当接するとともに、フランジ部88における左側壁83及び右側壁84側の裏面が右側枠部14及び左側枠部15の表面における壁孔W2から臨んでいる部位に当接する。これらの当接により、フランジ部88の裏面と枠本体11の表面との間が全体に亘って密接するため、例えば、壁W表側で火災等が発生したとき、フランジ部88の裏面と枠本体11の表面との間を介して中空部K内に火炎、煙、有毒ガスが流入するのを阻止することができる。また、収容体80が金属材料で形成されているため、収容体が合成樹脂材料で形成されている場合に比べて収容体80自体が燃え難い。
【0046】
○ 実施形態において、取付部及び被取付部は、収容体20が挿通孔11aに挿通された状態で互いに係合可能な係合部28及び被係合部18であったが、これに限らない。例えば、収容体20は取付部としてのビスを一体的に備えるとともに、器具固定枠10にビスが螺合可能な被取付部としてのビス孔を形成し、収容体20が挿通孔11aに挿通された状態で、ビスをビス孔に螺合することで、収容体20が器具固定枠10に取り付けられるようにしてもよい。
【0047】
○ 実施形態において、係合部28は収容体20の開口縁部に設けられていたが、これに限らず、例えば、上壁25又は下壁26の外側面において、収容体20の開口縁部よりも底壁22寄りに設けられていてもよい。
【0048】
○ 実施形態において、被係合部18は、上枠部12及び下枠部13に設けられていたが、これに限らず、右側枠部14及び左側枠部15に設けられていてもよい。
○ 実施形態において、収容体20は、底壁22、左側壁23、右側壁24、上壁25及び下壁26とから形成されていたが、これに限らず、スイッチSとケーブルCとの接続部C1を裏側から覆うことが可能な底壁22を少なくとも有してさえいれば、収容体20を形成する左側壁23、右側壁24、上壁25及び下壁26を削除してもよい。
【0049】
○ 実施形態において、壁材W1に穿設される壁孔W2の形状は縦長楕円形状であったが、これに限らず、例えば、縦長四角形状、小判形状、真円を一部分が重合するように二つ形成した略瓢箪状、又は複数の円形の穿孔を一部重合させて形成された壁孔であってもよい。
【0050】
○ 実施形態において、器具枠Hに取り付けられる器具はスイッチSであったが、これに限らず、器具枠Hに取り付けられる器具は、例えば、コンセントや報知器であってもよい。
【0051】
○ 器具として報知器を適用した場合は、報知器をボス部16に直接固定して、報知器と器具固定枠10とで壁材W1を挟持することで、壁Wに報知器を設置するようにしてもよい。
【0052】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について以下に追記する。
(イ)前記収容体は、前記底壁と、前記底壁の側縁から立設された側壁とからなる本体部を備え、前記側壁には前記ケーブルが挿通可能なケーブル挿通孔が形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の器具取付具。
【符号の説明】
【0053】
B1…固定ビス、C…ケーブル、C1…接続部、H…器具枠、W…壁、W1…壁材、W2…壁孔、S…器具としてのスイッチ、1…器具取付具、10…器具固定枠、11a…挿通孔、12…辺部としての上枠部、12a,13a,14a,15a…当接面として機能する表面、13…辺部としての下枠部、14…辺部としての右側枠部、15…辺部としての左側枠部、16…固定部としてのボス部、18…被取付部としての被係合部、20,80…収容体、21,81…本体部、22,82…底壁、23,83…側壁としての左側壁、24,84…側壁としての右側壁、25,85…側壁としての上壁、26,86…側壁としての下壁、27,87…ケーブル挿通孔、28…取付部としての係合部、88a…取付部としての第1外縁部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向配置された固定部を少なくとも一対備え、壁材に穿設された壁孔を通過させて壁裏に配置されるとともに、壁裏のケーブルが接続される器具又は前記器具の器具枠が前記固定部を使用して壁表に設置されることで、前記壁材を前記器具又は前記器具枠とで挟持して壁裏に固定される器具取付具であって、
前記壁材の裏面における前記壁孔の周縁に当接する当接面を有するとともに内側に挿通孔を有する器具固定枠と、
一面に開口を有するとともに前記器具を前記開口を介して収容可能とし、前記器具と前記ケーブルとの接続部を少なくとも裏側から覆うための底壁を有するとともに、前記挿通孔に挿通される収容体と、を備え、
前記収容体には取付部が設けられるとともに、前記器具固定枠には前記挿通孔に前記収容体が挿通された状態で前記取付部が取り付けられる被取付部が設けられ、
前記取付部が前記被取付部に取り付けられて前記収容体が前記器具固定枠に組み付けられて構成されることを特徴とする器具取付具。
【請求項2】
前記被取付部は、前記固定部が設けられる前記器具固定枠の辺部に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の器具取付具。
【請求項3】
前記取付部は、前記収容体の開口縁部に設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の器具取付具。
【請求項4】
前記取付部と前記被取付部とは互いに係合可能であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の器具取付具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−75222(P2012−75222A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−216612(P2010−216612)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(000243803)未来工業株式会社 (550)
【Fターム(参考)】