説明

器具取付部材、及び器具取付部材の固定方法

【課題】本体部を壁裏に配置した際の、本体部の壁裏側への移動を防止する作業を容易に行うこと。
【解決手段】右側枠部14及び左側枠部15において、その長辺方向における中央部の挿通孔11a側それぞれには取付片31が設けられるとともに、各取付片31には輪ゴムGが両取付片31の間に架け渡されるようにして取り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、器具取付部材、及び器具取付部材の固定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、建築物の壁に例えば配線器具を設置するために、壁裏には器具取付部材としての器具固定枠が配設される。この器具固定枠は、壁材に形成された壁孔を介して壁表側から壁裏に配置される。そして、配線器具が保持された器具枠と器具固定枠とで壁材を挟持した状態で、器具枠のビス挿通孔及び壁孔を介して器具固定枠のボス孔に固定ビスを螺合することで、器具固定枠を用いて配線器具が壁に設置される。このような器具固定枠としては、例えば特許文献1に開示されているものがある。
【0003】
特許文献1の配線器具取付け具は、壁板に形成された配線器具取付孔(壁孔)を介して壁表から壁裏へ挿入される挟み金具(器具固定枠)を備える。さらに、配線器具取付け具は、挟み金具のねじ孔にねじを螺合させて締め付けることにより、配線器具取付孔の上下部の壁板を挟み金具とで挟着固定する器具取付板(器具枠)を備えている。
【0004】
挟み金具は、配線器具を挿入可能とする長方形状の挿入孔を有する略ロ字型の枠状に形成された挟み金具本体(本体部)と、この挟み金具本体の上下部の中央部であって、配線器具取付孔内に位置する部位に形成されたねじ孔とを備えている。さらに、挟み金具は、挟み金具本体の上下両部に上下位置決め片を備えるとともに、挟み金具本体の左右両部に係止片を備える。上下位置決め片は挟み金具本体を爪状に切り起こして形成されるとともに、係止片は細長板状をなし、折り曲げ可能に形成されている。
【0005】
そして、特許文献1の配線器具取付け具において、挟み金具本体を壁裏に配置した状態で、上下位置決め片を配線器具取付孔の上下部の周縁部に係止させる。さらに、係止片を配線器具取付孔の周縁部の壁板に沿うように折り曲げ、係止片を壁板に係止させることで、挟み金具が壁板に仮固定される。この壁板に対する係止片の係止により、挟み金具本体が隙間(壁裏)内へ落下してしまうことが防止されている。その後、配線器具取付孔を覆うように器具取付板を壁表に配置するとともに、挟み金具本体のねじ孔に、器具取付板のねじ挿入孔に挿通されたねじを螺合して締め込む。ここで、係止片が壁板に対して係止しているため、挟み金具本体のねじ孔にねじが螺合されても、挟み金具本体が壁裏側へ移動することがなく、挟み金具が壁板に本固定されるとともに壁板に配線器具が設置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−328984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1では、挟み金具本体を壁板に配置した際に、係止片を配線器具取付孔の周縁部の壁板に係止させることで、挟み金具本体の壁裏側への移動を防止し、挟み金具本体が壁板から離れたり、壁裏へ落下してしまったりすることを防止している。しかし、係止片を壁板に係止させるためには、係止片の基端を壁表側へ折り曲げ、さらに、壁板の厚みに合わせて係止片を折り曲げなければならず、挟み金具本体の壁裏側への移動を防止するための作業が煩雑なものとなっていた。また、係止片を壁板に係止させる係止作業中に、挟み金具本体が壁裏側へ移動して、挟み金具本体が壁板から離れたり、壁裏へ落下してしまったりする虞があった。
【0008】
本発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものであり、その目的は、本体部を壁裏に配置した際の、本体部の壁裏側への移動を防止する作業を容易に行うことができる器具取付部材及び器具取付部材の固定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、対向配置された固定部を少なくとも一対備え、壁材に穿設された壁孔を介して壁裏に配置されるとともに、前記固定部を使用して器具又は前記器具の器具枠が壁表に設置されることで、前記壁材を前記器具又は前記器具枠とで挟持して壁裏に固定される器具取付部材であって、前記壁材の裏面における前記壁孔の周縁に当接する当接面を有するとともに内側に前記器具が挿通可能な開口部を有する本体部を備え、前記本体部は、前記壁裏に配置された前記本体部を壁表側に引き寄せるために伸縮可能な弾性体からなる引寄せ部を取り付け可能な取付部を有することを要旨とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記本体部が壁裏に固定された状態では、前記取付部は、前記壁孔を介して壁表に臨むように設けられていることを要旨とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記取付部は、前記本体部において、対向する固定部を結ぶ直線に直交し、且つ前記開口部を横断する直線上に設けられていることを要旨とする。
【0012】
請求項4に記載の発明は、対向配置された固定部を少なくとも一対備え、壁材に穿設された壁孔を介して壁裏に配置されるとともに、前記固定部を使用して器具又は前記器具の器具枠が壁表に設置されることで、前記壁材を前記器具又は前記器具枠とで挟持して壁裏に固定される器具取付部材であって、前記壁材の裏面における前記壁孔の周縁に当接する当接面を有するとともに内側に前記器具が挿通可能な開口部を有する本体部を備え、前記本体部が、前記壁裏に配置された前記本体部を壁表側に引き寄せるための引寄せ部を有するとともに、前記引寄せ部が伸縮可能な弾性体で形成されていることを要旨とする。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の発明において、前記引寄せ部は、前記開口部を横断するように前記本体部の対向する辺部に架け渡されていることを要旨とする。
【0014】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の発明において、前記引寄せ部は、前記壁表に配置された前記器具又は前記器具枠の前面に掛止可能であり、且つ収縮により前記器具又は前記器具枠を前記壁材の表面に引き寄せて、前記器具又は前記器具枠と前記本体部とで前記壁材を挟持可能に形成されていることを要旨とする。
【0015】
請求項7に記載の発明は、対向配置された固定部を少なくとも一対備え、壁材に穿設された壁孔を介して壁裏に配置されるとともに、前記固定部を使用して器具又は前記器具の器具枠が壁表に設置されることで、前記壁材を前記器具又は前記器具枠とで挟持して壁裏に固定される器具取付部材の固定方法であって、前記壁裏に配置された前記器具取付部材の本体部を、該本体部に設けられた伸縮可能な弾性体からなる引寄せ部により壁表側に引き寄せ、前記固定部を使用して前記本体部と前記器具又は前記器具枠とで前記壁材を挟持して壁裏に前記本体部を固定することを要旨とする。
【0016】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の発明において、前記引寄せ部を前記壁表に配置された前記器具又は前記器具枠の前面に掛止して、前記引寄せ部の収縮により前記器具又は前記器具枠を前記壁材の表面に引き寄せて、前記器具又は前記器具枠と前記本体部とで前記壁材を挟持することを要旨とする。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、本体部を壁裏に配置した際の、本体部の壁裏側への移動を防止する作業を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施形態における器具固定枠及び器具枠を示す斜視図。
【図2】係止突起が壁孔に挿入された状態を示す器具固定枠の正面図。
【図3】輪ゴムを壁表側へ引っ張った状態を示す斜視図。
【図4】スイッチの前面に輪ゴムを引っ掛けた状態を示す斜視図。
【図5】器具枠が壁に設置された状態を示す縦断面図。
【図6】別の実施形態における器具固定枠を示す斜視図。
【図7】別の実施形態における器具固定枠を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を器具固定枠に具体化した一実施形態を図1〜図5にしたがって説明する。また、本実施形態における器具固定枠10は、器具としてのスイッチSが保持された状態の器具枠Hを建築物の壁Wに一つ設置するために壁W裏に設置されるものである。
【0020】
まず、壁Wについて説明する。
図5に示すように、壁Wは、図示しない柱と、その柱の前後両面に立設される一対の壁材W1とによって構成されている。また、一対の壁材W1の間には中空部K(壁W裏)が形成されるとともに、中空部KにはケーブルCが配設されている。なお、本実施形態において、壁材W1の所望位置には縦長楕円形状の壁孔W2が穿設される。この壁孔W2は、開口形状が縦長楕円形状をなすカップ状のケーシングを備えた電動穿孔具(図示せず)を用いて壁材W1に穿設される。
【0021】
次に、器具固定枠10について説明する。
図1に示すように、器具固定枠10は、矩形枠状に形成される合成樹脂材料製の枠本体11を備えている。
【0022】
図2に示すように、枠本体11は、対向する短辺を構成するとともに互いに平行に延びる辺部としての上枠部12及び下枠部13を備えている。また、枠本体11は、対向する長辺を構成するとともに上枠部12の右端部と下枠部13の右端部とを繋ぐ辺部としての右側枠部14、及び上枠部12の左端部と下枠部13の左端部とを繋ぐ辺部としての左側枠部15を備えている。そして、枠本体11の中央部には、上枠部12、下枠部13、右側枠部14及び左側枠部15により開口部としての挿通孔11aが囲み形成されている。
【0023】
上枠部12及び下枠部13における長辺方向の長さは同じであるとともに、右側枠部14及び左側枠部15における長辺方向の長さは同じになっている。右側枠部14及び左側枠部15は、上枠部12及び下枠部13に対して直交する方向へ延びている。上枠部12及び下枠部13の表面12a,13a(一端面)と、右側枠部14及び左側枠部15の表面14a,15a(一端面)とは同一面上に位置しており、これら表面12a,13a,14a,15aは、壁材W1の裏面における壁孔W2の周縁全周に亘って当接する当接面として機能する。
【0024】
上枠部12及び下枠部13の中央部内側それぞれには、固定部としてのボス部16が互いに対向配置され、枠本体11は一対のボス部16を備えている。各ボス部16の表面は上枠部12及び下枠部13の表面12a,13aよりも突出しており、各ボス部16の厚みは上枠部12及び下枠部13の厚みよりも厚くなっている。各ボス部16には、上枠部12又は下枠部13の厚み方向へ貫通する円孔状のボス孔16aが形成されるとともに、各ボス部16内にはナットN1(図1参照)が埋設されている。そして、ナットN1には、器具枠Hを一対のボス部16に固定するための固定ビスB1が螺合可能になっている。
【0025】
上枠部12及び下枠部13の表面12a,13aにおいて、各ボス部16よりも外側には係止突起17がそれぞれ設けられている。各係止突起17は、上枠部12及び下枠部13の表面12a,13aに対して直交する方向へ延びるように突出するとともに、各ボス部16に対して外側へ膨らむように弧状に湾曲して形成されている。また、各係止突起17は、各係止突起17における各ボス部16側とは反対側の側面全体が、壁孔W2の内周面において、壁孔W2における長辺側の対向する円弧部分それぞれに沿うように円弧状に形成されている。
【0026】
枠本体11における一対のボス部16同士を結ぶ直線L1の両側に位置する右側枠部14及び左側枠部15の長辺方向中央部の挿通孔11a側それぞれには、取付部としての取付片31が設けられている。各取付片31は、直線L1に直交し、且つ挿通孔11aを横断する直線L2上に設けられ、互いに対向している。各取付片31は、右側枠部14又は左側枠部15の内面に対して直交する方向へ延びる第1延在部31aと、第1延在部31aの先端から右側枠部14及び左側枠部15の長辺方向に沿って延びる第2延在部31bと、第2延在部31bの両端から右側枠部14又は左側枠部15側に向かって延びる第3延在部31cとから構成されている。
【0027】
各第3延在部31cの先端と右側枠部14又は左側枠部15の内面との間には隙間32が形成されるとともに、各第2延在部31bと右側枠部14又は左側枠部15との間には取付用空間33が形成されている。そして、各取付用空間33は、隙間32を介して挿通孔11a側に開放されている。
【0028】
各取付片31には、引寄せ部としての輪ゴムG(伸縮可能な弾性体)が掛止されるとともに、輪ゴムGが両取付片31に架け渡されている。輪ゴムGは、その一部を、一方の両隙間32を介して一方の両取付用空間33内に位置させるとともに、他の一部を、他方の両隙間32を介して他方の両取付用空間33内に位置させて、両取付片31に掛止させている。また、輪ゴムGは、伸長した状態で挿通孔11aを横断するように両取付片31に架け渡されている。輪ゴムGは、各取付片31に掛止させた部位が各第3延在部31cに引っ掛かるようになっているため、輪ゴムGは隙間32を介して挿通孔11a側へ抜け難くなっている。
【0029】
次に、上記構成の器具固定枠10を壁W裏に固定する方法、及び器具固定枠10を用いてスイッチSを壁Wに設置する方法について説明する。
まず、一方の壁材W1の所望位置に壁孔W2を、電動穿孔具を用いて穿設するとともに、中空部Kに配設されたケーブルCを壁孔W2から壁材W1の表側に引き出す。次に、作業者は、器具固定枠10を把持するとともに、ケーブルCを挿通孔11aの内側を通過させ、器具枠Hに予め保持されたスイッチSにケーブルCを接続する。そして、枠本体11を、長辺方向に沿う方向を挿入方向として、短辺側から壁孔W2を介して中空部K内に挿入する。すると、枠本体11全体が壁孔W2を通過して、器具固定枠10が中空部K内に位置する。
【0030】
次に、図2に示すように、作業者は、各係止突起17における各ボス部16側とは反対側の側面全体が、壁孔W2の内周面において、壁孔W2における長辺側の対向する円弧部分それぞれに沿うように位置調整しながら、各係止突起17を壁孔W2内に挿入する。すると、各係止突起17の壁孔W2の内周面への係止により、枠本体11は、壁孔W2に対して回転が規制された状態で位置決めされる。このとき、取付片31及び輪ゴムGは、壁孔W2を介して壁W表に臨んだ状態になっている。
【0031】
次に、図3に示すように、輪ゴムGにおける挿通孔11aを横断している部位を壁孔W2を介して壁W表側へ引っ張り、枠本体11を壁W表側へ引き寄せるとともに、各表面12a,13a,14a,15aを壁材W1の裏面における壁孔W2周縁全周に亘って当接させる。この枠本体11の引き寄せにより、枠本体11が壁W裏側へ移動することが防止される。さらに、図4に示すように、輪ゴムGを引っ張った状態で、器具枠Hを輪ゴムGの内側に配置しながら壁材W1の表側に配置し、スイッチSの前面に輪ゴムGを掛止させる。すると、この輪ゴムGの収縮により、枠本体11が壁材W1の裏面に引き寄せられるとともに器具枠Hが壁材W1の表面に引き寄せられる。このため、枠本体11と器具枠Hとで壁材W1が挟持され、器具枠Hが壁材W1の表面に仮止めされる。
【0032】
そして、図5に示すように、固定ビスB1を、器具枠Hのビス挿通孔H1、壁孔W2及びボス孔16aを介してナットN1に締め込む。このとき、枠本体11は、輪ゴムGにより壁材W1に向けて引き寄せられている。このため、ナットN1に固定ビスB1が締め込まれる際、枠本体11は壁W裏側へ移動し難くなっている。そして、器具固定枠10は、壁材W1を器具枠Hと共に挟持した状態で、壁材W1裏面(壁W裏)に固定されるとともに、器具枠Hが壁材W1の表面に固定され、スイッチSが壁Wに設置される。その後、取付片31を、第1延在部31aの基端を基点にして枠本体11から折り曲げ除去し、輪ゴムGを回収する。
【0033】
上記実施形態では以下の効果を得ることができる。
(1)枠本体11の右側枠部14及び左側枠部15には取付片31が設けられるとともに、各取付片31には輪ゴムGが両取付片31の間に架け渡されるようにして取り付けられている。そして、枠本体11を壁W裏に配置した際に、輪ゴムGを壁孔W2を介して壁W表側へ引っ張るだけで、輪ゴムG及び取付片31を介して枠本体11を壁W表側へ引き寄せることができる。その結果、従来技術のような係止片を配線器具取付孔の周縁部の壁板に沿うように折り曲げるといった作業を必要とせずに、枠本体11の壁W裏側への移動を防止する作業を容易に行うことができる。
【0034】
(2)枠本体11が壁材W1の裏面に固定された状態では、取付片31は、壁孔W2を介して壁W表に臨んだ状態になっている。よって、取付片31を、壁W表側から折り曲げ除去することができ、輪ゴムGを切断することなくそのままの状態で回収することができる。
【0035】
(3)輪ゴムGは、挿通孔11aを横断するように両取付片31の間に架け渡されている。よって、輪ゴムGにおける挿通孔11aを横断している部位を掴んで引っ張るだけで、両取付片31を同時に壁W表側に引っ張ることができ、枠本体11を壁W表側へ引き寄せることができる。したがって、輪ゴムGが両取付片31の間に架け渡されておらず、両取付片31別々にゴムが取り付けられている場合のように、両ゴムを同時に引っ張らなければ枠本体11を壁W表側へ引き寄せられない場合に比べると、枠本体11を壁W表側へ引き寄せる作業を容易に行うことができる。
【0036】
(4)輪ゴムGは、輪ゴムGの内側に器具枠Hを配置し、その器具枠Hに保持されたスイッチSの前面に輪ゴムGを引っ掛けると、輪ゴムGの収縮により、器具枠Hと枠本体11とで壁材W1を挟持することが可能な長さに形成されている。よって、輪ゴムGにより、器具枠Hと枠本体11とを壁W側に引き寄せて、枠本体11と器具枠Hとで壁材W1を挟持した状態で、器具枠Hを壁材W1の表面に仮止めすることができる。したがって、作業者は、固定ビスB1をナットN1に締め込む作業をする際に、両手を使って作業することができ、輪ゴムGを引っ張りながら固定ビスB1をナットN1に締め込む作業をする場合に比べて作業性が向上する。
【0037】
(5)輪ゴムGが両取付片31の間に架け渡された状態では、輪ゴムGが各第3延在部31cに引っ掛かるため、輪ゴムGが隙間32を介して挿通孔11a側へ抜け落ちてしまうことを抑制することができる。
【0038】
(6)各取付片31は、右側枠部14及び左側枠部15の長辺方向中央部に設けられている。よって、輪ゴムGを壁W表側へ引っ張ると、取付片31を介して右側枠部14及び左側枠部15の長辺方向中央部が壁W表側へ引っ張られ、枠本体11を、壁材W1の裏面に対して平行な状態で壁W表側へ引き寄せることができる。したがって、例えば、各取付片31が右側枠部14及び左側枠部15における上枠部12寄りの部位に設けられている場合のように、輪ゴムGを引っ張ったときに、枠本体11が壁材W1の裏面に対して傾きながら壁W表側へ引き寄せられることを防止することができる。
【0039】
(7)輪ゴムGは伸縮性があるため、例えば、伸縮性のない紐により枠本体11を壁W表側へ引き寄せる場合に比べて、枠本体11が壁材W1の裏面に当接した状態であっても、輪ゴムGを伸長させて引っ張れる分、枠本体11を壁W表側へ引き寄せ易い。
【0040】
(8)輪ゴムGは伸縮性がある。よって、例えば、壁材W1の厚みが厚い場合であっても、輪ゴムGを大きく引っ張ることで、スイッチSを保持した器具枠Hを輪ゴムGの内側に配置することができ、その器具枠Hに保持されたスイッチSの前面に輪ゴムGを引っ掛けることができる。
【0041】
(9)輪ゴムGは環状であるため、両取付片31に掛止するだけで輪ゴムGを挿通孔11aを横断するように両取付片31の間に架け渡すことができ、枠本体11に輪ゴムGを取り付けることができる。
【0042】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
○ 実施形態において、輪ゴムGは、両取付片31の間に架け渡されるように取り付けられていたが、これに限らず、例えば、図6に示すように、輪ゴムGを、右側枠部14及び左側枠部15の中央部外側面を取り囲むように巻き付けて、右側枠部14及び左側枠部15の中央部の間に架け渡されるように取り付けてもよい。すなわち、取付片31を削除してもよい。
【0043】
○ 実施形態において、取付部として、図7に示すような取付片25を設けてもよい。 各取付片25は、右側枠部14及び左側枠部15の長辺方向に沿って細長に延びるように設けられている。各取付片25は、基端が右側枠部14又は左側枠部15と一体形成されるとともに、上枠部12側から下枠部13側に向かって延びるように形成されている。また、各取付片25における挿通孔11a側の側面と、右側枠部14又は左側枠部15における挿通孔11a側の側面とは同一平面上になっている。また、各取付片25の先端と右側枠部14又は左側枠部15との間には隙間25aが形成されている。さらに、各取付片25における挿通孔11a側とは反対側の側面と、右側枠部14又は左側枠部15との間には取付用空間25bが形成されるとともに、各取付用空間25bは、隙間25aを介して挿通孔11a側に開放されている。また、各取付片25の先端には、取付用空間25b側へ膨出する膨出部25cが形成されている。よって、輪ゴムGが両取付片25の間に架け渡された状態では、輪ゴムGが各膨出部25cに引っ掛かるため、輪ゴムGが隙間25aを介して挿通孔11a側へ抜け落ちてしまうことを抑制することができる。また、輪ゴムGを回収する際には、取付片25を、基端を基点にして枠本体11から折り曲げ除去するか、又は輪ゴムGを、各取付片25に掛止させた部位が各膨出部25cを乗り越えるように下枠部13側に向けて引っ張ることで、輪ゴムGを隙間25aを介して取付片25から取り外して、輪ゴムGを回収する。
【0044】
また、各取付片25は、その基端から先端に向かう方向が右側枠部14及び左側枠部15の長辺方向に沿って上枠部12側から下枠部13側に向かう方向となるように設けられていたが、これに限らない。例えば、一方の取付片25は、その基端から先端に向かう方向が右側枠部14及び左側枠部15の長辺方向に沿って上枠部12側から下枠部13側に向かう方向となるように設けられている。また、他方の取付片25は、その基端から先端に向かう方向が右側枠部14及び左側枠部15の長辺方向に沿って下枠部13側から上枠部12側に向かう方向となるように設けられている。このように、各取付片25の基端から先端に向かう方向がそれぞれ異なっていてもよい。
【0045】
○ 実施形態において、輪ゴムGは、両取付片31の間に架け渡されるように取り付けられていたが、これに限らず、輪ゴムGを、上枠部12及び下枠部13の中央部外側面を取り囲むように巻き付けて、上枠部12及び下枠部13の中央部の間に架け渡されるように取り付けてもよい。すなわち、取付片31を削除してもよい。
【0046】
○ 実施形態において、両取付片31の間には、輪ゴムGが架け渡されるように取り付けられていたが、これに限らず、不完全環状のゴムの両端部を各取付片31に取り付けて、ゴムが両取付片31の間に架け渡されていてもよい。
【0047】
○ 実施形態において、右側枠部14及び左側枠部15に取付片31を複数並設するとともに、各取付片31に輪ゴムGを架け渡して、輪ゴムGが枠本体11の長辺方向に沿って複数並設されるようにしてもよい。これによれば、輪ゴムGが一つの場合に比べて、スイッチSを保持した器具枠Hを各輪ゴムGの内側に配置して、その器具枠Hに保持されたスイッチSの前面に各輪ゴムGを引っ掛けることで、器具枠Hと枠本体11とを壁W側に引き寄せて、枠本体11と器具枠Hとによる壁材W1の挟持を強固なものとすることができる。
【0048】
○ 実施形態において、各取付片31は、右側枠部14及び左側枠部15の長辺方向中央部に設けられていたが、これに限らず、枠本体11における挿通孔11a側の内面であって、対向する部位であれば、各取付片31が設けられる位置は特に限定されない。例えば、挿通孔11aにおける対向する角部に取付片を設けて、輪ゴムGが挿通孔11aにおける対向する一方の角部から他方の角部の間に架け渡されていてもよい。
【0049】
○ 実施形態では、スイッチSの前面に輪ゴムGを引っ掛け、器具枠Hが壁材W1の表面に仮止めされた状態で、固定ビスB1をナットN1に締め込む作業を行ったが、これに限らない。例えば、輪ゴムGを引っ張りながら器具枠Hを輪ゴムGの内側に配置して、固定ビスB1をナットN1に締め込む作業を行ってもよい。この場合、引寄せ部として両取付片31別々にゴムを取り付け、両ゴムを引っ張って枠本体11を壁W表側へ引き寄せてもよいし、両ゴムの先端側を結んで環状にしてもよい。
【0050】
○ 実施形態では、スイッチSが壁Wに設置された後、取付片31を、基端を基点にして枠本体11から折り曲げ除去することで、輪ゴムGを回収していたが、これに限らず、取付片31を折り曲げ除去せずに、輪ゴムGを切断することで、輪ゴムGを回収してもよい。
【0051】
○ 実施形態では、器具固定枠10を把持して、枠本体11を、長辺方向に沿う方向を挿入方向として、短辺側から壁孔W2を介して中空部K内に挿入したが、これに限らず、取付片31に取り付けられた輪ゴムGを把持して、枠本体11を、長辺方向に沿う方向を挿入方向として、短辺側から壁孔W2を介して中空部K内に挿入してもよい。
【0052】
○ 実施形態において、壁材W1に穿設される壁孔W2の形状は縦長楕円形状であったが、これに限らず、例えば、縦長四角形状、小判形状、真円を一部分が重合するように二つ形成した略瓢箪状、又は複数の円形の穿孔を一部重合させて形成された壁孔であってもよい。
【0053】
○ 実施形態において、器具枠Hに取り付けられる器具はスイッチSであったが、これに限らず、器具枠Hに取り付けられる器具は、例えば、コンセントや報知器であってもよい。
【0054】
○ 器具として報知器を適用した場合は、報知器をボス部16に直接固定して、報知器と器具固定枠10とで壁材W1を挟持することで、壁Wに報知器を設置するようにしてもよい。
【0055】
○ 本発明を、スイッチSが保持された状態の器具枠Hを壁Wに一つ設置する場合に用いられる器具固定枠10に適用したが、これに限らず、器具枠Hを壁Wに二つ以上並設する場合に用いられる器具固定枠に適用してもよい。
【0056】
○ 本発明を、器具固定枠10に具体化したが、これに限らず、一面に開口部を有するとともに有底四角箱状の配線ボックスに具体化してもよい。
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について以下に追記する。
【0057】
(イ)前記器具取付部材は、前記本体部として、矩形枠状をなす枠本体を備えた器具固定枠であることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の器具取付部材。
【符号の説明】
【0058】
B1…固定ビス、G…引寄せ部としての輪ゴム、H…器具枠、W…壁、W1…壁材、W2…壁孔、S…器具としてのスイッチ、10…器具取付部材としての器具固定枠、11…本体部としての枠本体、11a…開口部としての挿通孔、12…辺部としての上枠部、12a,13a,14a,15a…当接面として機能する表面、13…辺部としての下枠部、14…辺部としての右側枠部、15…辺部としての左側枠部、16…固定部としてのボス部、25,31…取付部としての取付片。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向配置された固定部を少なくとも一対備え、壁材に穿設された壁孔を介して壁裏に配置されるとともに、前記固定部を使用して器具又は前記器具の器具枠が壁表に設置されることで、前記壁材を前記器具又は前記器具枠とで挟持して壁裏に固定される器具取付部材であって、
前記壁材の裏面における前記壁孔の周縁に当接する当接面を有するとともに内側に前記器具が挿通可能な開口部を有する本体部を備え、
前記本体部は、前記壁裏に配置された前記本体部を壁表側に引き寄せるために伸縮可能な弾性体からなる引寄せ部を取り付け可能な取付部を有することを特徴とする器具取付部材。
【請求項2】
前記本体部が壁裏に固定された状態では、前記取付部は、前記壁孔を介して壁表に臨むように設けられていることを特徴とする請求項1に記載の器具取付部材。
【請求項3】
前記取付部は、前記本体部において、対向する固定部を結ぶ直線に直交し、且つ前記開口部を横断する直線上に設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の器具取付部材。
【請求項4】
対向配置された固定部を少なくとも一対備え、壁材に穿設された壁孔を介して壁裏に配置されるとともに、前記固定部を使用して器具又は前記器具の器具枠が壁表に設置されることで、前記壁材を前記器具又は前記器具枠とで挟持して壁裏に固定される器具取付部材であって、
前記壁材の裏面における前記壁孔の周縁に当接する当接面を有するとともに内側に前記器具が挿通可能な開口部を有する本体部を備え、
前記本体部が、前記壁裏に配置された前記本体部を壁表側に引き寄せるための引寄せ部を有するとともに、前記引寄せ部が伸縮可能な弾性体で形成されていることを特徴とする器具取付部材。
【請求項5】
前記引寄せ部は、前記開口部を横断するように前記本体部の対向する辺部に架け渡されていることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の器具取付部材。
【請求項6】
前記引寄せ部は、前記壁表に配置された前記器具又は前記器具枠の前面に掛止可能であり、且つ収縮により前記器具又は前記器具枠を前記壁材の表面に引き寄せて、前記器具又は前記器具枠と前記本体部とで前記壁材を挟持可能に形成されていることを特徴とする請求項5に記載の器具取付部材。
【請求項7】
対向配置された固定部を少なくとも一対備え、壁材に穿設された壁孔を介して壁裏に配置されるとともに、前記固定部を使用して器具又は前記器具の器具枠が壁表に設置されることで、前記壁材を前記器具又は前記器具枠とで挟持して壁裏に固定される器具取付部材の固定方法であって、
前記壁裏に配置された前記器具取付部材の本体部を、該本体部に設けられた伸縮可能な弾性体からなる引寄せ部により壁表側に引き寄せ、前記固定部を使用して前記本体部と前記器具又は前記器具枠とで前記壁材を挟持して壁裏に前記本体部を固定することを特徴とする器具取付部材の固定方法。
【請求項8】
前記引寄せ部を前記壁表に配置された前記器具又は前記器具枠の前面に掛止して、前記引寄せ部の収縮により前記器具又は前記器具枠を前記壁材の表面に引き寄せて、前記器具又は前記器具枠と前記本体部とで前記壁材を挟持することを特徴とする請求項7に記載の器具取付部材の固定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−75221(P2012−75221A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−216611(P2010−216611)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(000243803)未来工業株式会社 (550)
【Fターム(参考)】