説明

噴出容器の残量確認機構

【課題】簡単な構成により、摺動底板の所定の残量低減位置への上昇を音により報知可能にする噴出容器の残量確認機構を提供する。
【解決手段】噴出ヘッド9の手動操作により内容液が、そのノズルから噴出されるのに連動して容器1内の負圧化でシリンダ12に向けて上昇する摺動底板20を備えたエアレスポンプ式の噴出容器において、その内容液の残量の低減を確認可能にするために、容器1内の周辺部に衝突して衝突音を発生させる衝突部材としてのボール36に、紐39の一方端を接続すると共に、摺動底板20に反対端を接続し、容器1の底蓋39に形成した係合部38にボール36を着脱自在に装着させる。紐39の長さが、摺動底板20の所定の残量低減位置への上昇に伴って緊張した紐39の引張り力により、ボール36を係合部38から離脱させるように設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内圧制御用ピストンが収納されたシリンダを有するポンプ及びピストンに連通するノズルを備えた噴出ヘッドが、容器上端部分に装着されると共に、容器内周面に、噴出ヘッドの手動操作により内容液がノズルから噴出されるのに連動してシリンダに向けて上方へ摺動する摺動底板が装着された噴出容器に対して、その内容液の残量の低減を確認可能にする噴出容器の残量確認機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の容器体内の負圧化で上昇する摺動底板を備えたエアレスポンプ式の噴出容器は、見栄えの確保、紫外線の内容液への影響の回避等を考慮して一般的に不透明であり、したがって残量を正確に確認できない問題がある。そこで、特許文献1により、容器底面を透明にすると共に、渦状に巻いた弾性帯の内端部を摺動底板に連結し、弾性帯の外周部を摺動底板の上昇量に応じた割合で上方へ変形可能に容器底部へ添設し、上方への変形で弾性帯を液体の残量として視認可能にした噴出容器が開示されている。
【特許文献1】特開2002−362650号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この残量確認機構は、周面を不透明にして底部の透明部より内部を覗き込むことを前提にしているために確認のし易さの点では改良の余地が残されている。
【0004】
本発明は、このような点に鑑みて、簡単な構成により、摺動底板の所定の残量低減位置への上昇を音により報知可能にする噴出容器の残量確認機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、この目的を達成するために、請求項1により、内圧制御用ピストンが収納されたシリンダを有するポンプ及びピストンに連通するノズルを備えた噴出ヘッドが、容器上端部分に装着されると共に、容器内周面に、噴出ヘッドの手動操作により内容液がノズルから噴出されるのに連動してシリンダに向けて上方へ摺動する摺動底板が装着された噴出容器に対して、その内容液の残量の低減を確認可能にする残量確認機構において、容器内の周辺部に衝突して衝突音を発生させる衝突部材に、紐の一方端を接続すると共に、容器底面部及び摺動底板のいずれか一方に紐の反対端を接続し、他方に衝突部材を着脱自在に装着し、紐の長さが、摺動底板の所定の残量低減位置への上昇に伴って緊張した紐の引張り力により、衝突部材を他方から離脱させるように設定されていることを特徴とする。
【0006】
これにより、摺動底板が、所定の残量低減位置に上昇すると、紐により、衝突部材が装着状態から離脱させられ、容器の動きに応動して衝突部材が衝突音を発生させる。衝突音発生の解消により残量低減を確認するには、請求項2により、紐の長さが、摺動底板の所定の残量低減位置への上昇に伴って、衝突部材の衝突を許容する紐の弛み量を衝突不能にする程度に減少させるように設定される。鳴動により確認するには、請求項3により、噴出容器に、電池と、電子ブザーと、この電子ブザーに電池から給電するスイッチを構成する固定接点及び可動接点とを収納し、摺動底板に、その所定の残量低減位置への上昇に連動して可動接点を固定接点へ接触させる接点駆動部材を付設する。
【発明の効果】
【0007】
請求項1の発明によれば、紐付き衝撃部材を追加した簡単な構成により、内容液の残量が所定の量に減少すると、容器の動きに伴う衝撃部材の周辺部への衝突により衝撃音が発生し始めて、残量低減が報知される。請求項2の発明によれば、紐付き衝撃部材を追加した簡単な構成により、逆に容器の動きに伴う衝撃部材の周辺部への衝突により発生していた衝撃音が発生しなくなり、残量低減が報知される。請求項3の発明によれば、電池駆動の電子ブザーを内蔵することにより、その鳴動により残量低減が報知される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1及び図2を基に本発明の実施の形態による噴出容器の残量確認機構を説明する。この噴出容器は、内容液として例えば化粧料が充填される容器1と、その上端部分に取付けられ、かつポンプ10付きでボタン15により押下げ操作される噴出ヘッド9と、容器内周面に沿って負圧により上方へ摺動する摺動底板20と、この摺動底板をセットさせるように容器1の下端部に装着されるキャップ状の底蓋30とで構成されている。ポンプ10は、容器1のネック部2にねじ込まれるキャップ11に保持されると共に、そのシリンダ12から上方へ突出するパイプ状のピストン13の上端部分に、このピストンに連通し、かつ先端を噴出口15aとするノズルを備えたボタン15が嵌合する。シリンダ12の下端の弁口12aには、入口弁としてボール弁14が設けられ、このボール弁及びピストン13間にばね16が装填されている。シリンダ12の上方部分には、ピストン13と連動してノズルを開閉する出口弁(図示せず)が設けられている。
【0009】
摺動底板20は、シリンダ12に対応したカップ状の底板本体23と、容器1の内周面に弾接する上下のシール用のフランジ部21a,21bが形成された外周部21と、これらの上端に位置する底板周辺部23aとを備えると共に、複数個の放射状のリブ24により互いに連結されている。底蓋30の通気孔35付きの底部31には、容器1の肉薄の下端部3に外係合する外周部32と、外周部21に隙間33aを置いて内係合して摺動底板20をセットさせる内周部33とが形成されている。これにより、ボタン15の押下げ手動操作ごとに、ばね付勢に抗してピストン13が下降して出口弁を開放させて、シリンダ12内の内容液を噴出口15aから噴出させる。また、押下げ操作の解除ごとに、ばね付勢によりピストン13が上昇位置に復帰し、出口弁の閉鎖状態での負圧によりボール弁14が開放して容器1内の内容液を吸上げると共に、連動して摺動底板20が最下位置から上方へ徐々に摺動する。
【0010】
この種のエアレスポンプ付の容器自体は周知であり、広く汎用されている。また、ピストン13は、ボタン操作に代えて、トリガレバー式に押下げ操作することもできる。さらに、本発明により残量確認機構を構成するために、底蓋30の底部31には、内周部33又は容器1の内周面の容器内の周辺部に衝突して衝突音を発生させる衝突部材としてのボール36を離脱可能に係合させるように、その外径に対応した円弧状の両側一対の係合片で形成される係合部38が突設されている。ボール36には紐39を接続すると共に、その上端は底板本体23の底面に接続されている。紐39の長さは、摺動底板20の所定の残量低減位置に上昇することに伴う引張り緊張により、ボール36を係合部38から上方へ離脱させるように設定されている。
【0011】
このように構成された噴出容器の残量確認機構の動作は次の通りである。未使用状態で、図1Aに示すように、摺動底板20は最下位置を占めると共に、ボール36は係合部38に係合し、紐39は弛んでいる。使用開始により、通気孔35で通気状態の下側の室に対してシールしている摺動底板20は、内容液を噴出させるごとに発生する負圧により逐次上昇する。その際、紐39の上端は連動して上昇するが、ボール36は容器1の傾倒もしくは反転操作により離脱しない程度に係合部38に保持されている。
【0012】
残量が少なくなるのに伴って、紐39は徐々に弛みが無くなり、残量を低減させる予め設定されている位置、例えば図1Bに示すようにシリンダ12の侵入開始位置に摺動底板20が上昇すると、その引張り緊張によりボール36が係合部38から離脱する。これにより、容器1を握って移動させる際の衝撃、横動、傾倒等の動きにより、ボール36が内周部33或は場合により容器1の内周面に衝突して衝突音を気中で発生し、残量の低減が報知される。また、念のために容器1を振動させると、連続的に衝突音を発生する。
【0013】
図3は別の実施の形態による残量確認機構を示すもので、前述のものと同一もしくは同等部分は同一符号で説明する。紐39の下端が底蓋30の底部31に接続され、その上端には衝突部材として底板本体23の外径に相当する内径のリング40が接続されている。即ち、カップ状の底板本体23は、リング40の係合部として機能する。紐39の長さは、摺動底板20が所定の残量低減位置に上昇すると、その引張り緊張によりリング40を底板本体23から離脱させるように設定されている。リング40は、使用前の状態で、底板本体23の外周面に離脱可能に軽い摩擦力で係合し、底蓋30の内周部33の内側の隙間33aに位置している。所定の残量低減位置に摺動底板20が上昇すると、リング40は、緊張した紐39により、同図Bに示すように、摺動底板20からら離脱し、容器1の移動或は振動により容器1の内周面、又は場合により内周部33に衝突して衝突音を発生する。
【0014】
尚、前述の双方の実施の形態に代えて、図1の紐39の下端を底部31に接続し、底板本体23の下端に下方へ離脱可能に係合部を形成するか、或は図3の紐39の上端を底板本体23の下端に接続し、リング40を係合部として内周部33に離脱可能に内係合させることもできる。
【0015】
図4は衝突音の消滅により残量低減を報知する残量確認機構の実施の形態を示すもので、容器1内の周辺部に衝突して衝突音を発生させるボール36を中間位置に支持する紐46の上下端が、摺動底板20の底板本体23及び底蓋30の底部31にそれぞれ接続されると共に、紐46の長さは、所定の残量低減位置へ上昇すると、容器1の内周面1aに衝突不能にする程度に紐46の弛み量を減少させるように設定されている。同図Aに示す使用前の状態或は同図Bに示す残量に余裕がある状態では、紐46の弛みによりボール36が底蓋30の内周部31或は容器1の内周面1aに衝突して衝突音を発生可能にしている。一方、残量が少なくなると、摺動底板20の上昇により、紐46の弛み量が、同図Bに示す状態からさらに減少してボール36が内周面1aに衝突し得なくなり、容器1の動きに対して音を発生し得なくする。
【0016】
図5は電子ブザーにより残量低減を報知する残量確認機構の実施の形態を示すもので、底蓋30の内周部33に、フランジ部51と、インテグラルヒンジ部53により開閉可能な蓋54とによりボタン電池58を収納する電池収納部50が形成されると共に、その上側に電子ブザー59が設けられている。蓋54にはボタン電池58の陰極に接触する接点K2が取付けられ、電子ブザー59の一方の端子接点K4の先端部K4aが弾接するようになっている。また、フランジ部51には電子ボタン58の陽極に接触する可動接点K1が設けられ、その先端部K1aに電子ブザー59の他方の端子に接続する固定接点K3に対面している。
【0017】
摺動底板20には接点駆動部材としての紐56が接続され、その下端は固定接点K3の挿通孔K3aを通して先端部K1aに接続されている。摺動底板20が所定の残量低減位置へ上昇すると、予め設定された長さの紐56の引張り緊張により、先端部K1aが上方へ引張られて固定接点K3に接触する。これにより、電子ブザー59が鳴動し、容器1の対面領域の周壁に形成された音響出力部分からブザー音が聴取される。その時点で、つまみ55に指を掛けて蓋54を開放し、電池58を取出して鳴動を中断させると共に、次の購入時に再収納するために保管しておく。
【0018】
尚、この実施の形態に代えて、電子ブザーを駆動する接点構造としては、容器周壁に可動接点及び固定接点とを設け、摺動底板に接点駆動部材を形成することにより、その所定の上昇位置で可動接点を駆動して電子ブザーに給電するように構成することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態による噴出容器の残量確認機構の断面図を示すもので、同図Aは使用開始時点、同図Bは残量が少なくなった状態を示す。
【図2】同残量確認機構を備えた容器の分解斜視図である。
【図3】別の実施の形態による残量確認機を示すもので、同図Aは使用開始時点、同図Bは残量が少なくなった状態を示す。
【図4】残量低減時点で衝突音の発生を解消させる実施の形態を示すもので、同図Aは使用開始時点、同図Bは残量が少なくなった状態を示す。
【図5】電子ブザーを用いた残量確認機構の実施の形態を示すもので、使用開始時の断面図である。
【符号の説明】
【0020】
1 容器
9 噴出ヘッド
10 ポンプ
12 シリンダ
20 摺動底板
23 底板本体
30 底蓋
36 ボール
38 係合部
39、46 紐
40 リング
50 電池収納部
58 ボタン電池
K1 可動接点
K3 固定接点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内圧制御用ピストンが収納されたシリンダを有するポンプ及びピストンに連通するノズルを備えた噴出ヘッドが、容器上端部分に装着されると共に、容器内周面に、噴出ヘッドの手動操作により内容液がノズルから噴出されるのに連動してシリンダに向けて上方へ摺動する摺動底板が装着された噴出容器に対して、その内容液の残量の低減を確認可能にする残量確認機構において、
容器内の周辺部に衝突して衝突音を発生させる衝突部材に、紐の一方端を接続すると共に、前記容器底面部及び摺動底板のいずれか一方に前記紐の反対端を接続し、他方に前記衝突部材を着脱自在に装着し、
前記紐の長さが、前記摺動底板の所定の残量低減位置への上昇に伴って緊張した前記紐の引張り力により、前記衝突部材を前記他方から離脱させるように設定されていることを特徴とする噴出容器の残量確認機構。
【請求項2】
内圧制御用ピストンが収納されたシリンダを有するポンプ及びピストンに連通するノズルを備えた噴出ヘッドが容器上端部分に装着されると共に、容器内周面に、噴出ヘッドの手動操作により内容液が、ノズルから噴出されるのに連動してシリンダに向けて上方へ摺動する摺動底板が装着された噴出容器に対して、その内容液の残量の低減を確認可能にする残量確認機構において、
容器内の周辺部に衝突して衝突音を発生させる衝突部材を中間位置に支持する紐の上下端が、前記容器底面部及び摺動底板にそれぞれ接続され、
前記紐の長さが、前記摺動底板の所定の残量低減位置への上昇に伴って、前記衝突部材の衝突を許容する前記紐の弛み量を衝突不能にする程度に減少させるように設定されていることを特徴とする噴出容器の残量確認機構。
【請求項3】
内圧制御用ピストンが収納されたシリンダを有するポンプ及びピストンに連通するノズルを備えた噴出ヘッドが、容器上端部分に装着されると共に、容器内周面に、噴出ヘッドの手動操作により内容液がノズルから噴出されるのに連動してシリンダに向けて上方へ摺動する摺動底板が装着された噴出容器に対して、その内容液の残量の低減を確認可能にする残量確認機構において、
噴出容器に、電池と、電子ブザーと、この電子ブザーに電池から給電するスイッチを構成する固定接点及び可動接点とを収納し、
摺動底板に、その所定の残量低減位置への上昇に連動して前記可動接点を前記固定接点へ接触させる接点駆動部材を付設したことを特徴とする噴出容器の残量確認機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−137475(P2007−137475A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−333869(P2005−333869)
【出願日】平成17年11月18日(2005.11.18)
【出願人】(000144463)株式会社三谷バルブ (142)
【Fターム(参考)】