説明

噴霧乾燥造粒装置、それを用いたセラミック顆粒の製造方法

【課題】造粒体を乾燥造粒室から排出する工程で、造粒体が押しつぶされて微粉化したりすることがなく、粒径のばらつきの少ない造粒体を効率よく製造することが可能な噴霧乾燥造粒装置、それを用いたセラミック顆粒の製造方法を提供する。
【解決手段】大気圧よりも低い圧力でスラリーの乾燥造粒を行う乾燥造粒室31と、乾燥造粒室で造粒された造粒体(セラミック顆粒)50を乾燥造粒室よりも圧力の高い外部に排出するための造粒体排出口34とを備えた噴霧乾燥造粒装置において、造粒体排出口に、可撓性を有し、乾燥造粒室と外部との圧力差により扁平形状に変形して、対向する内周面の主要部51aが互いに密着するとともに、軸方向に平行な両端部51bに、造粒体が通過する流路52が形成されるように構成された筒状部材51を配設し、造粒体を、上記流路を経て外部に排出する。
筒状部材を構成する材料としてゴム系材料を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スラリーを乾燥して造粒体を製造するのに用いられる噴霧乾燥造粒装置、およびそれを用いたセラミック顆粒の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミック材料は、電子部品の構成材料として広く用いられている。例えば、フェライトコアなどのセラミック素体は、セラミック顆粒(造粒物)を金型に充填して、加圧成型する方法により作製されている。
【0003】
また、このような用途に用いられるセラミック顆粒を製造する方法として、セラミック材料を含むスラリーを、噴霧乾燥することにより乾燥粉(造粒体)としてセラミック顆粒を得る方法が知られている。
【0004】
そして、噴霧乾燥により乾燥粉を製造するための装置として、例えば、特許文献1のような噴霧乾燥装置が提案されている。
【0005】
この特許文献1の噴霧乾燥装置は、(a)スラリー状の原料粉を噴霧するスラリー噴霧器と、熱風を導入する熱風導入口と、熱風による乾燥によって得られる乾燥粉を下端から排出する第1乾燥粉排出口と、乾燥に使用した熱風を排出するための空気排出口とを備えた本体部(乾燥造粒室)と、(b)本体部から排出される排出空気に含まれる未回収乾燥粉を捕集して排出する第2乾燥粉排出口を備えたサイクロンとを備え、(c)サイクロンにおいて捕集した乾燥粉を本体部に戻す戻し配管を、第2乾燥粉排出口から延設するとともに、その戻し口を、本体部における上端から空気排出口までの距離のうち、上端から1/3以内の位置に設けるようにした噴霧乾燥装置である。
そして、この噴霧乾燥装置によれば、得られる乾燥粉の組成や粒径のバラツキを抑制することができるとされている(特許文献1の段落0006、図1など参照)。
【0006】
ところで、上述の特許文献1の噴霧乾燥装置をはじめ、従来の噴霧乾燥造粒装置においては、乾燥粉(乾燥造粒体)の回収は、通常、乾燥造粒室の直下に配設された排出口から、あるいは、サイクロンにより乾燥造粒体と乾燥用空気の分離を行った後にサイクロンの乾燥造粒体の排出口から乾燥粉(乾燥造粒体)を排出することにより行われるが、乾燥造粒室内部の気密を保つために、乾燥造粒体の取出部には、ロータリーバルブやダブルダンパーなどが用いられており、上記特許文献1の噴霧乾燥装置においても、ロータリーバルブが用いられている。
【0007】
しかしながら、乾燥造粒体を取り出すための取出部にロータリーバルブを用いた場合、ロータリーバルブは、その構造上、回転ローターと本体ケース内壁との間に、回転ローターの回転を可能にするためのクリアランスが存在し、乾燥造粒体を取り出す際に、乾燥造粒体がこのクリアランスに入り込んですり潰され、微粉を生じる。その結果、回収される乾燥造粒体に微粉が混入して、粒径のばらつきを招くという問題点がある。
【0008】
また、ダブルダンパーを用いた場合も、開閉するダンパーと、ダンパーが当接する部材との間に乾燥造粒体が挟まれて押しつぶされ、微粉を生じることになるため、ロータリーバルブを用いた場合と同様に、回収される乾燥造粒体に微粉が混入して、粒径のばらつきを招くという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−285619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記課題を解決するものであり、乾燥造粒後の造粒体を乾燥造粒室から排出する(回収する)工程で、造粒体が押しつぶされて微粉を生じることがなく、粒径のばらつきの少ない造粒体を効率よく製造することが可能な噴霧乾燥造粒装置、それを用いたセラミック顆粒の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の噴霧乾燥造粒装置は、
固形分を含むスラリーの供給機構と、乾燥用加熱気体が供給される気体供給口と、乾燥に使用された気体が排出される気体排出口とを備え、大気圧よりも低い圧力下で、固形分を含む前記スラリーの乾燥造粒を行う乾燥造粒室と、
前記乾燥造粒室で造粒された造粒体を、前記乾燥造粒室よりも圧力の高い外部に排出するための造粒体排出口と
を備えた噴霧乾燥造粒装置であって、
前記造粒体排出口には、可撓性を有し、前記乾燥造粒室と前記外部との圧力差により扁平形状に変形して、対向する内周面の主要部が互いに密着するとともに、軸方向に平行な両端部に、対向する内周面が密着していない空隙部が形成されて、該空隙部が前記造粒体が通過する流路となるように構成された筒状部材が配設されており、
前記造粒体が、前記流路を経て外部に排出されるように構成されていること
を特徴としている。
【0012】
本発明の噴霧乾燥造粒装置においては、前記筒状部材を構成する材料がゴム系材料であることが好ましい。
【0013】
また、本発明は、前記固形分を含む前記スラリーが、セラミック粉末を含むセラミックスラリーである場合に適用することが可能である。
【0014】
また、本発明のセラミック顆粒の製造方法は、請求項1〜3のいずれかに記載の噴霧乾燥造粒装置を用いてセラミックスラリーの乾燥造粒を行い、セラミック顆粒とすることを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明の噴霧乾燥造粒装置は、大気圧よりも低い圧力でスラリーの乾燥造粒を行う乾燥造粒室と、乾燥造粒室で造粒された造粒体を乾燥造粒室よりも圧力の高い外部に排出するための造粒体排出口とを備えた噴霧乾燥造粒装置において、造粒体排出口に、可撓性を有し、乾燥造粒室と外部との圧力差により扁平形状に変形して、対向する内周面の主要部が互いに密着するとともに、軸方向に平行な両端部に、対向する内周面が密着していない空隙部が形成されて、該空隙部が造粒体が通過する流路となるように構成された筒状部材を配設し、造粒体を、上記流路を経て外部に排出するようにしているので、ロータリーバルブやダブルダンパーなどを用いる場合のように、造粒体の取出部において、造粒外が押しつぶされることを防止して、粒径のばらつき(微粉の混入)の少ない造粒体を効率よく製造することが可能になる。
【0016】
また、可撓性を有する筒状部材は、例えばゴム系材料や樹脂系材料などからなるチューブなどの簡単な構成の材料を、複雑な加工を要することなく用いて構成することが可能であり、ロータリーバルブやダブルダンパーなどを用いる場合に比べて、設備コストの低減を図ることができる。
【0017】
背景技術の欄で述べたように、噴霧乾燥造粒装置の運転は、従来より、装置周囲への粉塵の噴出などを避けるために、乾燥造粒室内を負圧にして行われ、また、造粒体の回収は、乾燥造粒室の直下、あるいは、サイクロンなどの固気分離装置の直下などにおいて、ロータリーバルブやダブルダンパーなどを用いて、乾燥造粒室の気密が損なわれないように行われるのが一般的である。ここで、ロータリーバルブのローターを回転させたり、ダブルダンパーの開閉機構(可動部)を動作させたりして造粒体の取り出しを行うと、造粒体が押しつぶされて微粉を生じ、結果的に、粒径のばらつき(微粉の混入)を招くという問題点があるが、本発明によれば、乾燥造粒室の造粒体排出口に配設された可撓性のある材料からなる筒状部材の、軸方向に平行な両端部に形成される流路から造粒体が外部に排出されるため、造粒体の取出部において、造粒体が押しつぶされることがなく、粒径のばらつき(微粉の混入)の少ない造粒体を効率よく製造することができる。
【0018】
また、筒状部材は、乾燥造粒室と外部との圧力差により扁平形状に変形して、内周面の主要部どうしは密着するものの、軸方向に平行な両端部は、内周面どうしが密着せず、外部と連通して造粒体の通路となるが、気体供給口から乾燥造粒室への乾燥用気体の供給量と、気体排出口から排出される使用後の乾燥用気体の排出量の関係から、乾燥造粒室内は所定の負圧に保たれるため、該通路から乾燥造粒室の密閉性を損なう(所定の負圧に保つことができなくなる)ような大量の外気の流入はない。
【0019】
なお、筒状部材の内周面どうしが完全に密着してしまうと、造粒体を回収することができなくなるため、筒状部材としては、乾燥造粒室と外部との圧力差による変形が、内周面の主要部どうしは密着するものの、軸方向に平行な両端部は、内周面どうしが密着せず、外部と連通して造粒体の通路となるような特性(物性)を備えた筒状部材を用いる。
【0020】
そのために、筒状部材を選定するにあたっては、筒状部材を構成する材料の物性(柔軟性や可撓性、乾燥造粒の工程で熱せられた造粒体の熱に耐えるための耐熱性など)、厚み、長さなどの寸法や形状などを考慮することが重要になる。
【0021】
また、筒状部材としては、通常は、変形前における形状が、軸方向に沿う方向から見た場合に円形のもの、すなわち、円筒状のものが用いられるが、本発明においては、その他にも、楕円筒状や長円筒状のもの、異形筒状のものなど種々の形状のものを用いることが可能である。
【0022】
また、本発明の噴霧乾燥造粒装置においては、筒状部材を構成する材料としてゴム系材料を用いるようにした場合、市場に流通する、種々の筒状を有する材料の中から、所望の特性を備えた筒状部材を容易かつ、経済的に調達することが可能になり、本発明をより実効あらしめることができる。
【0023】
また、本発明の噴霧乾燥造粒装置は、セラミック粉末を含むセラミックスラリーを噴霧乾燥造粒する場合に好適に適用することができる。
【0024】
また、本発明のセラミック顆粒の製造方法は、上述の本願請求項1〜3のいずれかに記載の噴霧乾燥造粒装置を用いてセラミックスラリーを乾燥造粒し、セラミック顆粒とするようにしているので、粒径のばらつき(微粉の混入)の少ないセラミック顆粒を効率よく製造することができる。
【0025】
なお、本発明のセラミック顆粒の製造方法により得られたセラミック顆粒は、例えば、乾式で金型に充填して、加圧成型することにより、フェライトコアなどのセラミック成形体を製造する用途などに好適に用いることができる。
【0026】
また、造粒体において微粉の割合が増加すると、流動性が低下し、金型への充填にばらつきが生じるなど、金型への充填性が低下してしまうという問題を生じるが、本発明の方法により製造されるセラミック顆粒は、微粉の割合が少なくて、流動性が高く、金型への充填性が良好であるため、小型で、かつ複雑な形状の成型体を乾式成型の方法で製造する場合に特に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施例(実施例1)にかかる噴霧乾燥造粒装置の全体構成を示す図である。
【図2】(a)は本発明の実施例1にかかる噴霧乾燥造粒装置の要部(造粒体排出口および造粒体排出口に取り付けられた筒状部材など)を示す図、(b)は筒状部材のb−b線断面図である。
【図3】(a)は本発明の実施例1にかかる噴霧乾燥造粒装置の要部(造粒体排出口および造粒体排出口に取り付けられた筒状部材など)を示す図であって、筒状部材が変形した状態を示す図、(b)は変形した筒状部材のb−b線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に本発明の実施例を示して、本発明の特徴とするところをさらに詳しく説明する。
【実施例1】
【0029】
図1は、セラミックスラリーを乾燥造粒して造粒体(セラミック顆粒)を製造するために用いられる、本発明の一実施例(実施例1)にかかる噴霧乾燥造粒装置の概略構成を示す図である。
【0030】
図1に示すように、この実施例1の噴霧乾燥造粒装置は、スラリー供給機構1、熱風供給機構2、噴霧乾燥機本体3、排気機構4を備えている。
【0031】
スラリー供給機構1は、原料タンク11、原料供給ポンプ12などから構成されている。
また、熱風供給機構2は、送風機21、熱風発生装置22などから構成されている。
【0032】
そして、噴霧乾燥機本体3は、セラミックスラリーの乾燥造粒を行う乾燥造粒室(チャンバー)31、上記の熱風供給機構2からの熱風を供給するための気体供給口32、乾燥造粒に使用された気体を排出する気体排出口33、造粒体(セラミック顆粒)50(図3(a),(b))を排出する造粒体排出口34、ディスクDを備えるアトマイザ35などから構成されている。
【0033】
また、排気機構4は、サイクロン41、バグフィルタ42などの集塵手段、排風機43などから構成されている。
【0034】
この噴霧乾燥造粒装置を用いてスラリー(セラミックスラリー)の乾燥造粒を行うにあたっては、熱風供給機構2から所定温度(例えば、270〜290℃)に加熱された空気が噴霧乾燥機本体3の気体供給口32に送られる一方、スラリー供給機構1からセラミックスラリーが、乾燥造粒室31に供給され、ディスクDを備えるアトマイザ35により所定の粒径を有する微細な液滴として水平円周方向に噴霧される。
【0035】
このとき、セラミックスラリーの液滴は、図1に点線Lで示すように、ディスクDから重力により下方向に落下する。
【0036】
そして、乾燥造粒室31内は、供給された所定温度(例えば、270〜290℃)の空気により加温されているので、噴霧されたスラリーは乾燥して顆粒として乾燥造粒室31の最下方の造粒体排出口34へと蓄積される。
一方、微粉末を含む熱風は気体排出口33を介して排気機構4へと放出される。
【0037】
そして、この実施例1の噴霧乾燥造粒装置においては、造粒体排出口34には、図2(a),(b)に示すように、可撓性を有する材料からなる筒状部材51が、バンド状の締結部材(固定治具)53により接続、固定されている。
この実施例では、筒状部材51として、硬さ40(JIS K 6253)のシリコーンゴム製で、直径150mm、厚み2mm、長さ700mmの円筒状の筒状体が用いられている。
【0038】
この筒状部材51は、乾燥造粒室31と外部との圧力差により、図3(a),(b)に示すように、扁平形状に変形して、対向する内周面の主要部51aが互いに密着するとともに、軸方向に平行な両端部51bに、対向する内周面が密着していない空隙部52が形成され、該空隙部52が造粒体(セラミック顆粒)50の通過する流路となるように構成されている。
【0039】
この筒状部材51が変形して、軸方向に平行な両端部51bに、造粒体(セラミック顆粒)50の通路となる空隙部52が形成されても、乾燥造粒室31への乾燥用気体の供給量と、使用後の乾燥用気体の排出量の関係から、乾燥造粒室31内は所定の負圧に保たれ、該通路52から乾燥造粒室31の密閉性が損なわれる(所定の負圧に保つことができなくなる)ことはない。
【0040】
<噴霧乾燥造粒によるセラミック顆粒の製造試験>
次に、上記噴霧乾燥造粒装置を用いて、以下に説明する方法により、セラミック顆粒を製造した。
【0041】
まず、Fe23、NiO、CuO、ZnOからなるフェライト組成物の仮焼粉末を用意した。それから、この仮焼粉末に、所定量の水、分散剤、消泡剤、および可塑剤を添加し、粉砕、撹拌分散処理を行ってスラリーを作製した。
【0042】
次に、このスラリーを、上記噴霧乾燥造粒装置を用いて噴霧乾燥造粒した。この噴霧乾燥造粒を行うにあたっては、気体供給口32から供給される熱風の温度を200℃とし、気体排出口33から排出される、乾燥造粒に使用された気体の温度(排気温度)が120℃となるようにした。
【0043】
また、乾燥造粒室31内の圧力が、外気よりも0.05kPa〜0.10kPa低くなるように気体供給量および気体排出量を調整した。
そして、得られた造粒体(セラミック顆粒)について、島津製作所製レーザ回折式粒度分布測定装置SALD−2200を用いて粒度分布を測定し、平均粒径(D50)、および、粒径44μm以下の微粉の割合(微粉率)を求めた。
【0044】
また、直径が2.5mmの通過孔を有するロートに200ccの造粒体(セラミック顆粒)を入れ、全量が流下するまでの時間(流下時間)を調べた。
【0045】
また、比較のため、上述の筒状部材51を用いる代わりに、造粒体排出口34にロータリーバルブを配設した、比較例としての噴霧乾燥造粒装置を用いて、上記実施例の場合と同じ条件で、セラミック顆粒を製造した。そして、得られたセラミック顆粒について、同じ条件で、平均粒径(D50)、粒径44μm以下の微粉の割合(微粉率)、および流下時間を求めた。
【0046】
【表1】

【0047】
表1に示すように、造粒体排出口34に、可撓性を有する筒状部材51を配設し、筒状部材51に形成される空隙部52を流路として、造粒体(セラミック顆粒)50を排出するようにした実施例の場合、造粒体排出口34にロータリーバルブを配設し、このロータリーバルブを経て造粒体(セラミック顆粒)を排出するようにした比較例の場合に比べて、粒径が44μm以下の微粉の割合(微粉率)が減少し、それに伴って流下時間も短くなることが確認された。
この結果から、本発明の噴霧乾燥造粒装置を用いることにより、微粉率の低い、粒径のばらつきの少ない造粒体を効率よく製造できることが分かる。
【0048】
なお、この実施例では、筒状部材51として、シリコーンゴム製のものを用いたが、他のブタジエン系ゴムなどの合成ゴム系や、天然ゴム系の材料からなるものを用いることも可能である。
その場合、通常は、JIS K 6253に基づき、デュロメータで測定した硬さが10〜70の材料からなり、厚みが約0.5mm〜5mmの範囲のものを用いることが望ましい。
【0049】
さらに、筒状部材51を構成する材料は上述の材料に限られるものではなく、乾燥造粒室31と外部との圧力差により、筒状の形状から変形して、対向する内周面の主要部51aが互いに密着するとともに、一部においては対向する内周面が密着せずに、造粒体を外部に排出することが可能な流路となる空隙部が形成されるような種々の材料を用いることが可能である。
【0050】
なお、その場合、筒状部材を構成する材料の物性(柔軟性や可撓性、乾燥造粒の工程で熱せられた造粒体の熱に耐えるための耐熱性など)、厚み、長さなどの寸法や形状などを考慮することが必要となる。
【0051】
本発明は、さらにその他の点においても、上記の実施例に限定されるものではなく、筒状部材の具体的な寸法、造粒体排出口への筒状部材の固定方法、乾燥造粒室の具体的な構造、造粒対象となるセラミックスラリーの条件、セラミックスラリーを構成するセラミックの種類などに関し、発明の範囲内において、種々の応用、変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0052】
1 スラリー供給機構
2 熱風供給機構
3 噴霧乾燥機本体
4 排気機構
11 原料タンク
12 原料供給ポンプ
21 送風機
22 熱風発生装置
31 乾燥造粒室(チャンバー)
32 気体供給口
33 気体排出口
34 造粒体排出口
35 ディスクを備えるアトマイザ
41 サイクロン
42 バグフィルタ
43 排風機
50 造粒体(セラミック顆粒)
51 筒状部材
51a 筒状部材の内周面の主要部
51b 筒状部材の軸方向に平行な両端部
52 造粒体が通過する流路となる空隙部
53 固定治具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形分を含むスラリーの供給機構と、乾燥用加熱気体が供給される気体供給口と、乾燥に使用された気体が排出される気体排出口とを備え、大気圧よりも低い圧力下で、固形分を含む前記スラリーの乾燥造粒を行う乾燥造粒室と、
前記乾燥造粒室で造粒された造粒体を、前記乾燥造粒室よりも圧力の高い外部に排出するための造粒体排出口と
を備えた噴霧乾燥造粒装置であって、
前記造粒体排出口には、可撓性を有し、前記乾燥造粒室と前記外部との圧力差により扁平形状に変形して、対向する内周面の主要部が互いに密着するとともに、軸方向に平行な両端部に、対向する内周面が密着していない空隙部が形成されて、該空隙部が前記造粒体が通過する流路となるように構成された筒状部材が配設されており、
前記造粒体が、前記流路を経て外部に排出されるように構成されていること
を特徴とする噴霧乾燥造粒装置。
【請求項2】
前記筒状部材を構成する材料がゴム系材料であることを特徴とする請求項1記載の噴霧乾燥造粒装置。
【請求項3】
前記固形分を含む前記スラリーが、セラミック粉末を含むセラミックスラリーであることを特徴とする請求項1または2記載の噴霧乾燥造粒装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の噴霧乾燥造粒装置を用いて、セラミックスラリーの乾燥造粒を行い、セラミック顆粒とすることを特徴とするセラミック顆粒の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−220175(P2012−220175A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−90291(P2011−90291)
【出願日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】