説明

噴霧装置及び除菌消臭装置

【課題】除菌消臭液を霧化して放出することで除菌及び消臭の少なくも一方を行いつつ、金属腐食等の除菌消臭液による影響を抑制できるようにした噴霧装置を提供する。
【解決手段】噴霧装置1は、除菌消臭液を霧化して放出することで対象空間内の設置物等の除菌及び/又は消臭を行うものであり、次亜鉛素酸ソーダ(NaClO)と、炭酸ソーダ(NaCO3)と、苛性ソーダ(NaOH)又は水酸化カルシウム(Ca(OH))と、を含む水溶液からなる除菌消臭液を蓄えた溶液タンク10と、溶液タンク10内の除菌消臭液を加圧して供給する溶液供給ユニット30と、溶液供給ユニット30によって供給された除菌消臭液を霧化して放出する噴霧ユニット50と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、次亜塩素酸ソーダ(次亜塩素酸ナトリウム:NaClO)と、炭酸ソーダ(炭酸ナトリウム:NaCO)と、苛性ソーダ(水酸化ナトリウム:NaOH)又は水酸化カルシウム(Ca(OH))と、を含む水溶液からなる除菌消臭液を霧化して放出することで対象空間等の除菌や消臭を行うことのできる噴霧装置及びこれを用いた除菌消臭装置に関する。
【背景技術】
【0002】
除菌液を霧化して放出する装置として、例えば特許文献1に記載のものがある。この装置は、次亜塩素酸水溶液を用いて室内を殺菌、脱臭する装置であり、タンク内の次亜塩素酸水溶液に超音波を作用させて霧化するとともに、送付手段からの気流及び気流噴射ノズルからの噴射気流を利用して、霧化された次亜塩素酸水溶液を噴霧口から放出して遠くまで搬送するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−197689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記次亜塩素酸水溶液のような従来の次亜塩素酸水は金属を腐食させるおそれがあるため、例えばエアコンやパソコンなどの電子機器等がある室内空間については、使用ができないか、あるいは、低濃度で使用せざるを得ず、十分な除菌(殺菌)を行えないという課題があった。
本発明は、このような課題に着目してなされたものであり、除菌機能及び消臭機能の少なくとも一方を有する除菌消臭液を霧化して放出することで対象空間等の除菌や消臭を効果的に行いつつ、金属腐食等の不具合の発生を抑制できる噴霧装置及びこれを用いた除菌消臭装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による噴霧装置は、次亜塩素酸ソーダ(NaClO)と、炭酸ソーダ(NaCO)と、苛性ソーダ(NaOH)又は水酸化カルシウム(Ca(OH))と、を含む水溶液からなる除菌消臭液を霧化して放出する。
本発明による除菌消臭装置は、除菌又は消臭を行う対象物を収容する除菌消臭室と、次亜塩素酸ソーダ(NaClO)と、炭酸ソーダ(NaCO)と、苛性ソーダ(NaOH)又は水酸化カルシウム(Ca(OH))と、を含む水溶液からなる除菌消臭液を霧化して前記除菌消臭室内に放出する噴霧装置と、を備える。
【発明の効果】
【0006】
次亜塩素酸ソーダ、苛性ソーダ及び炭酸ソーダを含む水溶液からなる除菌消臭液、及び、次亜塩素酸ソーダ、水酸化カルシウム及び炭酸ソーダを含む水溶液からなる除菌消臭液は、インフルエンザウイルス、ノロウイルス、コロナウイルス、パルボウイルスなどの各種ウイルス、及び、大腸菌、黄色ブドウ球菌、MRSAなどの各種細菌に対する除菌効果が確認されており、また、消臭効果を有することも確認されている。
【0007】
本発明による噴霧装置によれば、次亜塩素酸ソーダと、炭酸ソーダと、苛性ソーダ又は水酸化カルシウムと、を含む水溶液からなる除菌消臭液を霧化して放出するので、(霧化された)除菌消臭液が対象空間内を浮遊しつつ拡散することとなり、対象空間及び該対象空間内の設置物等の除菌や消臭を効果的に行うことができる。また、前記除菌消臭液は、臭気や金属腐食のおそれがほとんどないので、刺激臭によって人に不快感を与えたり、電子機器の故障を招いたりすることもない。
【0008】
本発明による除菌消臭装置によれば、除菌又は消臭を行う対象物を除菌消臭室に収容した上で、次亜塩素酸ソーダと、炭酸ソーダと、苛性ソーダ又は水酸化カルシウムと、を含む水溶液からなる除菌消臭液を霧化して前記除菌消臭室内に放出できるので、前記対象物の除菌及び/又は消臭を効果的に行うことができる。また、特に複数の対象物を前記除菌消臭室に収容することにより、該複数の対象物ついての除菌及び/又は消臭を同時かつ効果的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1実施形態による噴霧装置の概略構成を示す図である。
【図2】噴霧ユニットの構成を示す図である。
【図3】噴霧ノズルの構成の一例を示す図である。
【図4】本発明の第2実施形態による除菌消臭装置の概略構成を示す図である。
【図5】第2実施形態による除菌消臭装置の制御装置が実行する制御のフローチャートである。
【図6】本発明の第3実施形態による可搬式噴霧装置の概略構成を示す図である。
【図7】図6のA−A断面図に相当する図である。
【図8】第3実施形態による可搬式噴霧装置の第1収納部の内部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図に基づいて説明する。
図1は、本発明の第1実施形態による噴霧装置の概略構成を示す図である。本実施形態による噴霧装置1は、除菌機能及び消臭機能の少なくとも一方を有する除菌消臭液を霧化して放出することで対象空間並びに対象空間内の設置物等の除菌や消臭を行うものであり、除菌消臭液を蓄える溶液タンク(貯液部)10と、溶液タンク10内の除菌消臭液を加圧して供給する溶液供給ユニット30と、溶液供給ユニット30によって供給された除菌消臭液を霧化して放出する噴霧ユニット50と、を備える。
【0011】
本実施形態で用いる除菌消臭液は、次亜塩素酸ソーダ(NaClO)、苛性ソーダ(NaOH)及び炭酸ソーダ(NaCO)を含む。具体的には、前記除菌消臭液は、次亜塩素酸ソーダ、苛性ソーダ及び炭酸ソーダの濃度(含有量)がそれぞれ0.002(wt%)以下の水溶液であり、好ましくは、次亜塩素酸ソーダ、苛性ソーダ及び炭酸ソーダのそれぞれの濃度(含有量)が順に0.002(wt%)以下、0.001(wt%)以下、0.001(%)以下の水溶液である。かかる除菌消臭液は、弱アルカリ性であり、臭気及び金属腐食のおそれがほとんどない無臭性・防腐食性を有する。また、かかる除菌消臭液がインフルエンザウイルス、ノロウイルス、コロナウイルス、パルボウイルスなどの各種ウイルスや大腸菌、黄色ブドウ球菌、緑膿菌、MRSA、サルモネラ菌、腸炎ビブリオなどの各種細菌に対する除菌効果を有すること(特に接触すると速やかに除菌を行えること)及び安全性の面でも問題がないこと(人や環境を害することがないこと)は、複数の検査機関によって確認されている。さらに、前記除菌消臭液は、除菌機能に加えて消臭(脱臭)機能も有することも確認されている。なお、除菌消臭液は、高濃度の原液を水(不純物が除去された水、好ましくは、純水又はRO膜処理が施されたRO水)で希釈することによって生成できるものであり、使用場所や用途などに応じて除菌消臭液の濃度(原液の水による希釈割合)を適宜調整することも可能である。
【0012】
溶液供給ユニット30は、溶液タンク10内の除菌消臭液を加圧して噴霧ユニット50(具体的には後述する噴霧ノズル57)に供給するものであり、高圧ポンプ(例えば、プランジャポンプ)を含む。高圧ポンプの吸込み口は、第1接続管31を介して溶液タンク10に接続され、高圧ポンプの吐出口は、第2接続管33を介して噴霧ユニット50(噴霧ノズル57)に接続される。ここで、高圧ポンプは、特に制限されず、除菌消臭液を比較的高い圧力(例えば、6〜8MPa程度又はそれ以上の圧力)で吐出できるものであればよい。
【0013】
噴霧ユニット50は、図2に示すように、前記除菌消臭液を霧化された状態で放出する放出口(第2開口部)51及び外気を導入する外気導入口(第1開口部)53が形成されたハウジング55と、ハウジング55内に配置された噴霧ノズル57とを備えており、外気導入口53から導入された外気と噴霧ノズル57からの噴霧とをハウジング55内で混合させて、霧化された除菌消臭液として放出口51から放出する。ここでは、噴霧ノズル57の作動に伴う、いわゆるエジェクタ効果によって外気導入口53からハウジング55内へと外気が導入される。但し、これに限るものではなく、ハウジング55内にファン等を設け、このファンを駆動することで外気をハウジング55内に導入するようにしてもよい。
【0014】
ハウジング55は、例えば、除菌及び/又は消臭を行う対象空間を形成する側壁(例えば、除菌及び/又は消臭を行う部屋の壁)に取り付けられる。ハウジング55は、その内部がハウジング55内の上面側から下面側に向かって延びる仕切り壁59によって第1室61と第2室63とに仕切られている。但し、第1室61と第2室63とは、仕切り壁59によって完全に仕切られておらず、仕切り壁59の下方に設けられた連通部65を介して互いに連通している。そして、本実施形態においては、放出口51は、第1室61の上部に形成され、外気導入口53は、第2室63の上面に形成されている。
【0015】
また、ハウジング55の底部には、ハウジング55内に貯留した除菌消臭液を排出するための排出口67が形成されており、この排出口67は第3接続管35によって溶液タンク10に接続されている。したがって、ハウジング55内に貯留した除菌消臭液は排出口67から排出され、溶液タンク10へと戻されるようになっている。
【0016】
噴霧ノズル57は、供給される除菌消臭液の圧力によって該除菌消臭液を噴霧するいわゆる一流体ノズルである。噴霧ノズル57は、ハウジング55の第2室63内に配置されており、溶液供給ユニット30(高圧ポンプ)によって第2接続管33を介して供給された除菌消臭液を、ハウジング55(第2室63)内で水平方向よりも下向きに噴霧する。本実施形態において、噴霧ノズル57は、外気導入口73のほぼ真下の位置に下向きに配置されており、供給された除菌消臭液をハウジング55の底面に向かって噴霧する。
【0017】
図3は、噴霧ノズル57の構成の一例を示している。
図3に示すように、本実施形態における噴霧ノズル57は、ノズル本体91と、ノズル本体91に装着されるノズル先端部93と、を有する。
【0018】
ノズル本体91は、その一端側(噴霧ノズル57の先端側)にめねじ部91aが形成されるとともに、内部には該一端側において拡径する流路91bが形成されている。ノズル本体91の他端側は、第2接続管33に接続される。
【0019】
ノズル先端部93は、一端側(噴霧ノズル57の基端側)にノズル本体91のめねじ部91aに対応するおねじ部93aが形成されるとともに、他端側(噴霧ノズル57の先端側)に噴孔93bが形成されている。この噴孔93bは、ノズル先端部93がノズル本体91(の一端側)に装着されたときにノズル本体91の流路91bと連通する。
【0020】
そして、ノズル本体91とノズル先端部93との間に、ノズル先端部93側から順にシール部材(例えばOリング)95、加圧スプリング(弾性部材)97及びボール状の弁体99が配置され、ノズル本体91とノズル先端部93とがネジ締結されることによって噴霧ノズル57が構成される。
【0021】
ここで、弁体99の径は、ノズル本体91に形成された流路91bの拡径した部分よりも小さく、該流路91bの拡径しない部分よりも大きくなっている。このため、噴霧ノズル57において、弁体99はノズル本体91に形成された流路91bの拡径した部分に配置されることとなり、ノズル先端部93側から加圧スプリング95によって付勢されて流路91bを閉塞する。一方、高圧ポンプから流路91bに例えば6MPa以上の圧力で除菌消臭液が供給されると、弁体99が加圧スプリング95の付勢力に抗して移動して流路91bを開放する。これにより、噴霧ノズル57は、除菌消臭液の供給圧力が6MPa以上の場合にのみ除菌消臭液を噴霧し、除菌消臭液の供給圧力が6MPa未満となると噴霧を停止する。したがって、高圧ポンプをONすることによって霧化された除菌消臭液の放出が開始され、高圧ポンプをOFFすることによって霧化された除菌消臭液の放出が停止される。
【0022】
次に、以上のように構成された噴霧装置1の作用を説明する。
噴霧装置1がONされると高圧ポンプ(溶液供給ユニット30)が起動し(ONとなり)、この高圧ポンプによって溶液タンク10内の除菌消臭液が噴霧ノズル57へと供給される。そして、供給圧力が6MPa以上となると、除菌消臭液は、噴霧ノズル57によって第2室63内にて水平方向よりも下向きに噴霧される。このとき、噴霧ノズル57の作動(噴霧動作)に伴うエジェクタ効果によって、外気が外気導入口53からハウジング55(第2室63)内に導入されて、ハウジング55内を外気導入口53から放出口51へと向かう気流が生成される。これにより、ハウジング55内において、噴霧ノズル57からの噴霧は、導入された外気と混合されつつ放出口51へと導かれる。
【0023】
ここで、ハウジング55内において第1室61と第2室63とは、仕切り壁59の下方に設けられた連通部65によって連通しており、また、放出口51(及び外気導入口53)は、第1室61内の噴霧ノズル57の噴孔よりも上側の位置に形成されている。このため、噴霧ノズル57からの噴霧は、図2において破線矢印で示すように、ハウジング55内において、外気導入口53から導入された外気と混合されつつ連通部65を介して第2室63から第1室61へとほぼ水平方向に移動し、その後、第1室61内を上方へと移動して放出口51から放出される。
【0024】
このように、ハウジング55内に仕切り壁59を設け、下向きの噴霧を水平方向に移動させ、その後、上方に移動させてから放出することにより、噴霧ノズル57から放出口51までの噴霧の経路を迂回させることとなり、噴霧ノズル57からの噴霧のうち粒径の大きなもの(粒径の大きな除菌消臭液)が放出口51から放出されることが抑制される。この結果、放出口51から放出される噴霧(霧化された除菌消臭液)は、人や物をほとんど濡らすことのない微細な粒径のものとなる。一方、放出口51から放出されずにハウジング55内に貯留した除菌消臭液(液体)は、排出口67から排出されて溶液タンク10へと戻される。
【0025】
本実施形態による噴霧装置1によると、噴霧ノズル57からの除菌消臭液の噴霧は、ハウジング55内において導入された外気と混合されつつ放出口51まで移動して該放出口51から放出される。このため、人や物をほとんど濡らすことのない、いわゆるドライフォグ状の除菌消臭液を放出することができる。また、このように霧化された除菌消臭液は、その浮遊時間が長くなるとともに広い範囲に拡散される。これにより、対象空間及び該対象空間内の設置物等についての除菌効果及び/又は消臭効果を高めることができる。
【0026】
また、除菌消臭液として用いる次亜塩素酸ソーダ、苛性ソーダ及び炭酸ソーダを含む水溶液は、上述したように、各種ウイルスや各種細菌に対する除菌効果があることが確認されている。
【0027】
これにより、対象空間内に浮遊したり、対象空間内の設置物に付着等したり、対象空間を通過する人や物に付着等したりしているウイルスや細菌の除菌を効果的に行うことができ、ウイルス・細菌性疾患の流行を効果的に抑制できる。また、前記除菌消臭液は消臭機能も有しており、除菌と同時に消臭も行うことができる。
【0028】
なお、前記実施形態では、ハウジング55内に1つの噴霧ノズル57が配置されているが、例えば、第2接続管33をハウジング55内で分岐させて各分岐端に噴霧ノズル57を接続することにより、ハウジング55内に複数の噴霧ノズル57を配置してもよい。あるいは、噴霧ユニット50を複数備えるようにしてよい。このようにすると、霧化された除菌液を同時により多く放出できるので、除菌や消臭に要する時間を短縮できる。
【0029】
また、前記実施形態では、除菌消臭液として次亜塩素酸ソーダ、苛性ソーダ及び炭酸ソーダを含む水溶液を用いている。しかし、これに限るものではなく、苛性ソーダに代えて水酸化カルシウムを用いた水溶液、すなわち、次亜塩素酸ソーダ、水酸化カルシウム及び炭酸ソーダを含む水溶液を除菌消臭液(ここでは「第2除菌消臭液」という)として用いることもできる。かかる第2除菌消臭液は、具体的には、次亜塩素酸ソーダ、水酸化カルシウム及び炭酸ソーダのそれぞれの濃度(含有量)が順に0.004〜0.005(wt%)、0.001(wt%)以下、0.001(wt%)以下の水溶液であり、好ましくは、順に0.0043(wt%)程度、0.0002(wt%)以下、0.0002(wt%)以下の水溶液である。かかる第2除菌消臭液についても、次亜塩素酸ソーダ、苛性ソーダ及び炭酸ソーダを含む水溶液からなる上述の除菌消臭液と同様に、各種ウイルスや各種細菌に対する除菌効果を有すること、消臭機能を有すること、安全性の面でも問題がないこと、臭気及び金属腐食のおそれがほとんどないことが確認されている。また、高濃度の原液をRO水等で希釈することで生成でき、使用場所や用途などに応じて除菌消臭液の濃度(原液の水による希釈割合)を適宜調整できる点についても上述の除菌消臭液と同様である。
したがって、本明細書における「除菌消臭液」には、少なくとも、次亜塩素酸ソーダ、苛性ソーダ及び炭酸ソーダを含む水溶液からなる除菌消臭液と、次亜塩素酸ソーダ、水酸化カルシウム及び炭酸ソーダを含む水溶液からなる除菌消臭液(第2除菌消臭液)と、が含まれる。
【0030】
さらに、台車等を設けて噴霧装置1を移動(運搬)可能に構成してもよい。この場合には、例えば、台車等に搭載される筐体を設け、この筐体内に溶液タンク10、高圧ポンプ31を収容するとともに筐体上部に形成した設置台にハウジング55を設置するようにすればよい。このようにすると、様々な場所で除菌を行えるので便利である。
【0031】
図4は、本発明の第2実施形態による除菌消臭装置の概略構成を示す図である。
なお、前記第1実施形態と同じ構成要素については同一の符号を用い、その説明は省略する。本実施形態による除菌消臭装置100は、図4に示すように、除菌又は消臭の対象物を収容する除菌消臭室110と、霧化された除菌消臭液を除菌消臭室110内に放出する噴霧装置1と、除菌消臭室110内の温度を調整する温度調整装置130と、噴霧装置1及び温度調整装置130の作動を制御する制御装置150と、を備える。
【0032】
除菌消臭室110には、その側壁に形成された開閉可能な出入口(図示省略)を介して除菌又は消臭を行う(必要とする)対象物が搬入される。除菌消臭室110内の空間は前記出入口を閉じたときに閉空間となる。但し、完全な閉空間である必要はなく、霧化されて放出された除菌消臭液が適度に滞留する程度に周囲が囲まれていればよい。除菌又は消臭を行う対象物としては、その使用前に除菌や消臭を行う必要のある物又は除菌や消臭を行った方がよい物であり、例えば、病院用のマットレス、病院寝具、医師又は看護師のユニホームが該当する。ここで、除菌又は消臭を行う対象物が比較的多い病院などにおいては、その独立した1部屋を除菌消臭室として利用してもよい。
【0033】
噴霧装置1は、上述したように、除菌消臭液を蓄えた溶液タンク10と、溶液タンク10内の除菌消臭液を加圧して供給する溶液供給ユニット30と、溶液供給ユニット30によって供給された除菌消臭液を霧化して除菌消臭室110内に放出する噴霧ユニット50と、を備える。なお、本実施形態において、噴霧ユニット50は、除菌消臭室110の内壁に取り付けられる。
【0034】
温度調整装置130は、除菌消臭室110内の温度を上昇又は低下させて所定温度に調整するものであり、公知の温度調整装置を用いることができる。一例を挙げれば、温度調整装置130は、圧縮機・凝縮器・膨張弁・蒸発器を配管で接続して冷媒を循環させることにより冷却サイクルを実現する冷却機131と、ヒータ133と、除菌室110内の空気を循環させる空調機135と、を備える。冷却機131の圧縮機、凝縮器及び膨張弁は、室外ユニット131a内に配置されている。冷却機131の蒸発器131b及びヒータ133は、空調機135内に配置されている。そして、空調機135は、内蔵するファンFANの作動によって、除菌消臭室110内の空気を取り込み、蒸発器131b及びヒータ133を通過させて再び除菌消臭室110内へと戻す。冷却機131及びヒータ133の少なくとも一方を作動させつつ、空調機135を作動させることによって除菌消臭室110内の温度が調整される。なお、上述したように、病院等の1部屋を除菌室として利用する場合には、その部屋に設置された冷暖房装置を温度調整装置としてもよい。
【0035】
制御装置150は、噴霧装置1(特に、高圧ポンプ)及び温度調整装置130(冷却機131,ヒータ133,空調機135)の作動を制御する。また、制御装置150には、除菌消臭室110内に設けられた温度センサ160の検出信号が入力される。
【0036】
図5は、制御装置150が実行する制御のフローチャートである。このフローチャートは、例えば、除菌消臭室110内の所定位置に除菌対象物が配置され、図示省略したオペレーションパネル等を介して作動指令が入力されると開始される。
【0037】
ステップS1では、温度センサ160の検出信号に基づいて除菌消臭室110内の温度が第1温度以下であるか否かを判定する。そして、除菌消臭室110内の温度が第1温度よりも高い場合にはステップS2に進み、除菌消臭室110内の温度が第1温度以下であればステップS4に進む。なお、第1温度は、適宜設定することができるが、10℃以下の温度、好ましくは1〜5℃程度に設定する。本実施形態においては第1温度を5℃としている。
【0038】
ステップS2では、冷却機131及び空調機135動作させて除菌消臭室110内の温度を低下させる。そして、ステップS3において除菌消臭室110内の温度が第1温度まで低下したことが確認されたらステップS4に進む。なお、除菌消臭室110内の温度が第1温度になった後は、該第1温度を維持するように冷却機131をON/OFF駆動してもよいことはもちろんである。
【0039】
ステップS4では、噴霧装置1(高圧ポンプ)を起動して、霧化された除菌消臭液の除菌消臭室110内への放出を開始する。このとき、少なくとも冷却機131の作動を停止させる。
【0040】
ステップS5では、霧化された除菌消臭液の放出開始から第1所定時間が経過したか否かを判定する。この第1所定時間は、除菌又は消臭の対象物を十分に除菌又は消臭できる時間として設定されるものであり、除菌消臭室110の広さ(容積)や対象物に応じて適宜設定される。そして、第1所定時間が経過したらステップS6に進む。
【0041】
ステップS6では、噴霧装置1(高圧ポンプ)を停止させ、霧化された除菌消臭液の除菌消臭室110内への放出を停止(終了)する。このとき、冷却機131の作動も停止させるようにするのが好ましい。
【0042】
ステップS7では、ヒータ133を起動して除菌消臭室110内の温度を上昇させる。なお、ステップS4において空調機135の作動を停止させていた場合には、ヒータ133とともに空調機135を再起動する。
【0043】
ステップS8では、温度センサ160の検出信号に基づいて除菌消臭室110内の温度が第2温度以上であるか否かを判定する。そして、除菌消臭室110内の温度が第2温度以上となるとステップS9に進む。なお、第2温度は、第1温度よりも高い温度として適宜設定することができるが、20℃以上の温度に設定するのが好ましい。本実施形態においては第2温度を20℃としている。また、ヒータ133をON/OFF駆動して除菌消臭室110内の温度を第2温度に維持するようにしてもよいことはもちろんである。
【0044】
ステップS9では、除菌消臭室110内の温度が第2温度以上となってから第2所定時間が経過したか否かを判定する。第2所定時間は、霧化された除菌消臭液によって湿気を帯びた対象物から湿気を取り除くための時間として設定されるものであり、対象物に応じて適宜設定される。そして、第2所定時間が経過したらステップS10に進む。
【0045】
ステップS10では、ヒータ133及び空調機135の作動を停止させて除菌消臭処理を終了させる。
本実施形態による除菌消臭装置100は、噴霧装置1と、除菌又は消臭の対象物を収容する除菌消臭室110と、を備え、霧化された除菌消臭液を除菌消臭室110内に放出して前記対象物の除菌又は消臭を行う。本実施形態による除菌消臭装置100によれば、霧化された除菌消臭液が除菌消臭室110内に拡散されるので、複数の対象物を同時に除菌し、及び/又は、消臭することができるとともに、対象物間における汚染(二次汚染)等も防止される。
【0046】
また、除菌消臭室110内の温度を低温の第1温度(例えば5℃)まで低下させてから除菌消臭室110内に霧化された除菌消臭液を放出するので、霧化された除菌消臭液が除菌消臭室110内で蒸発することを抑制しつつ、除菌消臭室110内を速やかに飽和状態又はそれに近い状態とすることができる。これにより、除菌消臭液の使用量を抑制しながら、除菌消臭室110内に浮遊する粒子状の除菌消臭液を多く存在させることができ、効率的かつ効果的に対象物の除菌や消臭を行うことができる。
【0047】
さらに、霧化された除菌消臭液の放出開始から第1所定時間が経過した後、すなわち、除菌又は消臭に必要な時間を経過した後は、除菌消臭室110内の温度を第1温度よりも高い第2温度(例えば20℃)まで上昇させるので、除菌消臭室110内の湿度を低下させて、霧化された除菌消臭液によって湿気を帯びた除菌又は消臭の対象物から湿気を取り除くことができる。これにより、除菌又は消臭の対象物は、除菌又は消臭処理の終了後、速やかに使用することが可能となる。
【0048】
さらにまた、除菌消臭液として次亜塩素酸ソーダ、苛性ソーダ及び炭酸ソーダを含む水溶液を用いているので、特に、病院用のマットレス、病院寝具などを除菌又は消臭の対象物とすることにより、これらに付着等した細菌を除去して院内感染等を効果的に防止できるとともに、消臭も行えるので患者等が使用する際の不快感も大幅に軽減することができる。
【0049】
なお、上記した実施形態では、霧化された除菌消臭液の放出開始から第1所定時間が経過した後に除菌消臭室110内の温度を上昇させているが、除菌消臭室110内の湿度を検出する湿度センサを設け、所定湿度(例えば95%)以上の状態が第3所定時間以上継続した後に除菌消臭室110内の温度を上昇させるようにしてもよい。この場合における第3所定時間も除菌又は消臭の対象物に応じて適宜設定すればよい。
【0050】
また、除湿装置を設け、除菌消臭室110内の温度を上昇させるとともに除菌消臭室110の除湿を行うようにしてもよい。この場合、冷却機131を除湿装置として機能させてもよいし、冷却機131と同様の構成のいわゆるコンプレッサー方式の除湿装置やデシカント方式の除湿装置を別に設けてもよい。このようにすると、除菌又は消臭の対象物から湿気を取り除くために要する時間を短縮することができる。
【0051】
図6は、本発明の第3実施形態による可搬式噴霧装置の概略構成を示す図である。
図6(a)〜(c)に示すように、本実施形態による可搬式噴霧装置200は、二つの噴霧ノズル(第1噴霧ノズル210、第2噴霧ノズル211)と、除菌消臭液を蓄えた溶液タンク230と、溶液タンク230内の除菌消臭液を加圧して第1,第2噴霧ノズル210,215に供給する溶液供給ユニット250と、加圧空気を第1,第2噴霧ノズル210,215に供給する空気供給ユニット270と、これら噴霧ノズル210,215、溶液タンク230、溶液供給ユニット250及び空気供給ユニット270が搭載された台車290と、を備えている。
【0052】
第1,第2噴霧ノズル210,211は、いわゆる二流体ノズルであり、溶液供給ユニット250によって供給された除菌消臭液と、空気供給ユニット270によって供給された加圧空気とを混合して除菌消臭液の噴霧を形成する。
第1,第2噴霧ノズル210,211は、鉛直方向に伸縮可能な第1,第2伸縮管213,215の先端に設置された第1,第2ノズル収容部217、219内にそれぞれ収容されている。また、第1伸縮管213の内部には第1噴霧ノズル210へと除菌消臭液を供給するための第1溶液供給管の一部及び加圧空気を供給するための第1空気供給管の一部が配置され、第2伸縮管215の内部には第2噴霧ノズル211へと除菌消臭液を供給するための第2溶液供給管の一部及び加圧空気を供給するための第2空気供給管の一部が配置されている。そして、第1,第2伸縮管213,215をそれぞれ伸縮させることにより、第1、第2噴霧ノズル210,211の高さ位置、すなわち、除菌消臭液の噴霧高さを調整できるようになっている。なお、第1溶液供給管、第1空気供給管、第2溶液供給管及び第2空気供給管については後述する。
【0053】
溶液タンク230は、除菌消臭液を充填可能に構成されており、台車290の荷台部291上に設置されている。なお、溶液タンク230を台車290に対して着脱可能に構成し、除菌消臭液がなくなった(空になった)溶液タンクを新品の溶液タンクに交換できるようにしてもよい。
【0054】
溶液ユニット250は、溶液タンク230内の除菌消臭液を所定のフィード圧(低圧)に加圧して供給する低圧ポンプ(フィードポンプ)251と、この低圧ポンプ251によって供給された除菌消臭液をさらに加圧して第1,第2噴霧ノズル210,211にそれぞれ供給する第1,第2高圧ポンプ(プランジャポンプ)253,255と、を含む。
【0055】
低圧ポンプ251は溶液タンク230の上部に設置されている。低圧ポンプ251の吸込口には、溶液タンク230上面を貫通して溶液タンク230の内側底面の近傍まで延びる吸込管257が接続されている。一方、低圧ポンプ251の吐出口には、途中で二つに分岐する分岐管259が接続され、分岐された一方の管は第1高圧ポンプ253の吸込口に接続され、他方の管は第2高圧ポンプ255の吸込口に接続されている。そして、低圧ポンプ251が作動すると、溶液タンク230内の除菌消臭液が吸引管257を介して吸引され、さらに分岐管259を介して第1高圧ポンプ253及び第2高圧ポンプ255へと供給される。
【0056】
第1,第2高圧ポンプ253,255は、台車290の荷台部291よりも高い位置に設けられた支持台293上に設置されている。
第1高圧ポンプ253の吐出口には前記第1溶液供給管の一端が接続され、この第1溶液供給管の他端(先端)に第1噴霧ノズル210が接続される。同様に、第2高圧ポンプ255の吐出口には前記第2溶液供給管の一端が接続され、この第2溶液供給管の他端(先端)に第2噴霧ノズル211が接続される。なお、図には示していないが、例えば分岐管259の途中にフィルタを設け、このフィルタによって塵埃等が除去された後の除菌消臭液を第1,第2高圧ポンプ253,255、さらには第1,第2噴霧ノズル210,211に供給するようにしてもよい。
【0057】
空気供給ユニット270は、二つのコンプレッサー(第1コンプレッサー271、第2コンプレッサー273)を含む。そして、第1コンプレッサー271の吐出口には前記第1空気供給管の一端が接続され、この第1空気供給管の他端(先端)に第1噴霧ノズル210が接続される。同様に、第2コンプレッサー273の吐出口には前記第2空気供給管の一端が接続され、この第2空気供給管の他端(先端)に第2噴霧ノズル211が接続される。なお、図には示していないが、第1,第2空気供給管の途中にフィルタを設け、フィルタによって塵埃等が除去された後の加圧空気を第1、第2噴霧ノズル210,211に供給するようにしてもよい。
【0058】
台車290はハンドル部295及び複数の車輪297を有しており、作業者がハンドル部295を持って押し引きすることによって可搬式噴霧装置200を所望の位置へと運搬(移動)することができるようになっている。
また、台車290の荷台部291の下側には、第1噴霧ノズル210に除菌消臭液を供給するための前記第1溶液供給管の一部及び加圧空気を供給するための前記第1空気供給管の一部を内部に収納できる第1収納部300と、第2噴霧ノズル211に除菌消臭液を供給するための前記第2溶液供給管の一部及び加圧空気を供給する前記第2空気供給管の一部を内部に収納できる第2収納部301と、が設けられている。
【0059】
ここで、図7、図8を参照して本実施形態による可搬式噴霧装置200の除菌消臭液及び加圧空気の供給系の構成について詳しく説明する。なお、本実施形態による可搬式噴霧装置200において、第1噴霧ノズル210に除菌消臭液及び加圧空気を供給するための構成と、第2噴霧ノズル211に除菌消臭液及び加圧空気を供給するための構成とは基本的に同じであるので、ここでは第1噴霧ノズル210に除菌消臭液及び加圧空気を供給するための構成についてのみ説明する。
【0060】
図7は、第1収納部300の内部構造を説明するための図である。
図7(a),(b)に示すように、第1収納部300は矩形の箱状に形成されており、その上面には二つのコネクタ(第1コネクタ311,第2コネクタ313)が取り付けられている。二つのコネクタ311,313は共にその管軸中心線が90度に屈曲して形成されており、一方の接続端が台車290の荷台部291の上面に露出し、他方の接続端が第1収納部300内に配置されている。また、第1収納部300の上面には荷台部291の形成された貫通孔(図示省略)に対応して設けられた貫通孔303が形成されており、第1収納部300の内部には該第1収納部300の内部空間の一部を上下に分ける仕切り板305が取り付けられている。なお、図中の符号309は、第2収納部301の上面に形成された貫通孔に対応する貫通孔を示している。
【0061】
第1コネクタ311の前記一方の接続端(すなわち、荷台部291の上面に露出した接続端)には第1高圧ポンプ253の吐出口から延びる第1接続管315が接続され、第1コネクタ311の前記他方の接続端(すなわち、第1収納部300内に位置する接続端)には第2接続管317が接続される。この第2接続管317は、第1噴霧ノズル210が最も高い位置にあるときに該第1噴霧ノズル210と第1コネクタ311(の前記他方の接続端)とを接続するのに十分な長さを有している。そして、第2接続管317は、図7(a)において二点鎖線(外側)で示すように、第1収納部300内において内側底面に設けられた複数(ここでは6個)のガイドピン307の外側を通り、かつ、仕切り板305の上側を通過するように環状(例えば二重環状)に配置され、その後、第1収納部300の上面に形成された貫通孔303から出て第1噴霧ノズル210へと至る。このため、第1噴霧ノズル210が最も高い位置にあるとき第1収納部300内に収納される第2接続管317の部分が最も少なくなり、第1噴霧ノズル210の位置が低くなるほど第1収納部300内に収納される第2接続管317の部分が多くなる。なお、図7(a)中の二点鎖線(外側)は、第1噴霧ノズル210が最も低い位置にあるときの第2接続管317の状態を概念的に示したものである。
【0062】
一方、第2コネクタ313の前記一方の接続端には第1コンプレッサー271の吐出口から延びる第3接続管319が接続され、第2コネクタ313の前記他方の接続端には第4接続管321が接続される。この第4接続管321は、第1噴霧ノズル210が最も高い位置にあるときに該第1噴霧ノズル210と第2コネクタ313(の前記他方の接続端)とを接続するのに十分な長さを有している。そして、第4接続管321は、図7(a)において二点鎖線(内側)で示すように、第1収納部300内において最も外側に位置する二つのガイドピン307の内側でガイドピン同士の間を通り、かつ、仕切り板305の下側を通過するように環状(例えば二重環状)に配置され、その後、第1収納部300の上面に形成された貫通孔303から出て第1噴霧ノズル210へと至る。このため、第1噴霧ノズル210が最も高い位置にあるとき第1収納部300内に収納される第4接続管321の部分が最も少なくなり、第1噴霧ノズル210の位置が低くなるほど第1収納部300内に収納される第2接続管321の部分が多くなる。なお、図7(a)中の二点鎖線(内側)は、第1噴霧ノズル210が最も高い位置にあるときの第4接続管321の状態を概念的に示したものである。
【0063】
図8は、図6のA−A断面図に相当する図である。
図8に示すように、台車290の荷台部291上には、緩やかに湾曲した一対の案内管(第1案内管323,第2案内管325)が対向配置されている。第1案内管323は、その下部が第1収納部300の貫通孔303に対応する位置に配置されており、この第1案内管323の上部に第1伸縮管213が接続(連結)されている。そして、貫通孔303から出た第2接続管317及び第4接続管321は、図8中破線で示すように、第1案内管323の内部及び第1伸縮管323の内部を通って第1噴霧ノズル210に接続される。
【0064】
したがって、第1コネクタ311、第1接続管315及び第2接続管317によって前記第1溶液供給管が構成され、第2コネクタ313、第3接続管319及び第4接続管321によって前記第1空気供給管が構成される。
【0065】
ここで、本実施形態においては、第1接続管315、第2接続管317、第3接続管319及び第4接続管321として、柔軟性及び反発弾性を有する材質からなる管部材(例えばウレタンチューブ)を用いている。このため、第1収納部300内における第2接続管317(第1溶液供給管221の一部)及び第4接続管321(第1空気供給管223の一部)の状態は、第1噴霧ノズル210の高さ位置に応じて次のように変化する。
【0066】
上述したように、第1噴霧ノズル210が最も低い位置に設定されると、第2接続管317及び第4接続管321の第1収納部300内に収納される部分が多くなる。すると、第2接続管317及び第4接続管321は自身の反発弾性によって広がるため、第2接続管317は第1収納部300の内側面に接触した状態となり(図7(a)における外側の二点鎖線を参照)、第4接続管321は最も外側に位置する二つのガイドピン307の内側で当該二つのガイドピン307に接触しつつ、当該二つのガイドピン307を結ぶ線に直交する方向(図7(a)の左右方向)に広がった状態となる(図示省略)。
【0067】
この状態から第1噴霧ノズル210の位置を高くしていくと、第2接続管317及び第4接続管321の第1収納部300内に収納される部分が徐々に減少する。そして、第1噴霧ノズル210が最も高い位置に設定されると、第2接続管317は第1収納部300の内側面から離れて最も外側の二つのガイドピン307の外側で当該二つのガイドピン307に接触した状態となり、第4接続管321は、最も外側に位置する二つのガイドピン307の間で比較的小さな環状となる(図7(a)における内側の二点鎖線を参照)。
【0068】
このように、本実施形態では、台車290の荷台部291上方においては第2接続管317及び第4接続管321が緩やかに湾曲した第1案内管323内に配置されている。また、台車290の荷台部291下方の第1収納室300内においては、第2接続管317が複数のガイドピン307の外側及び仕切り板305の上側を通るように配置される一方、第4接続管321が最も外側に位置する二つのガイドピン307の内側及び仕切り板305の下側を通るように配置されている。これにより、第1噴霧ノズル210の高さ変更に伴って、第2接続管317及び第4接続管321が折れ曲がったり、第1収納部300内で第2接続管317と第4接続管321とが絡まったりすることがなく、第1噴霧ノズル210の高さ変更を滑らかに行うことができる。
【0069】
なお、第2噴霧ノズル211に除菌消臭液及び加圧空気を供給するための構成についての説明は省略するが、基本的には上記第1噴霧ノズル210に除菌消臭液及び加圧空気を供給するための構成と同じである。すなわち、上記説明における第1収納室300を第2収納室301とし、第1溶液供給管を第2溶液供給管とし、第1空気供給管を第2空気供給管とし、第1案内管321を第2案内管323とすればよい。
【0070】
次に、以上のような構成を有する可搬式噴霧装置200の一連の作用を説明する。
まず、作業者が可搬式噴霧装置200を所望の場所に移動させ、第1、第2噴霧ノズル210,211の高さを調整する。このとき、第1噴霧ノズル210の高さと第2噴霧ノズル211の高さとを異ならせてもよい。その後、図示省略したスイッチをONして低圧ポンプ251、第1高圧ポンプ253、第2高圧ポンプ255、第1コンプレッサー271及び第2コンプレッサー273を起動する。すると、溶液ポンプ230内の除菌消臭液が低圧ポンプ251によって吸引され、分岐管259を介して第1高圧ポンプ253及び第2高圧ポンプ255に供給される。供給された除菌消臭液は第1高圧ポンプ253及び第2高圧ポンプ255でさらに加圧され、第1、第2溶液供給管を介して第1、第2噴霧ノズル210に供給される。同時に、第1コンプレッサー271からの加圧空気は第1空気供給管を介して第1噴霧ノズル210に供給され、第2コンプレッサー273からの加圧空気は第2空気供給管を介して第2噴霧ノズル211に供給される。そして、第1、第2噴霧ノズル210,211は、供給された除菌消臭液と加圧空気とを混合して、すなわち、加圧空気で除菌消臭液を微細化して除菌消臭液の噴霧を形成する。
これにより、霧化された除菌消臭液が対象空間内に放出され、第1実施形態による噴霧装置1と同様、対象空間及び該対象空間内の設置物等についての除菌及び/又は消臭を効果的に行うことができる。なお、本実施形態による可搬式噴霧装置200においては、霧化された除菌消臭液の放出を移動しながら行えるので、特定の場所について集中的に除菌消臭を行うことができ、また、除菌消臭時間を短縮することもできる。
【0071】
なお、以上では、一流体ノズルを用いて除菌消臭液の噴霧を行う構成(第1、第2実施形態)及び二流体ノズルを用いて除菌消臭液の噴霧を行う構成(第3実施形態)について説明したが、これらに限定されるものではなく、除菌消臭液の噴霧を行える構成であればよい。例えば、貯液タンク又は貯液部に蓄えられた除菌消臭液に、超音波振動子によって所定の超音波振動を加えて除菌消臭液を霧化して放出するように構成してもよい。
また、第1,第2ノズル収容部217、219を上下方向及び左右方向の少なくとも一方に首振り可能に構成してもよい。このようにすると、例えば一台の可搬式噴霧装置200によって、隣接する二つの空間(部屋)に対する除菌及び/又は消臭を同時に、かつ、効果的に行うことができる。
【符号の説明】
【0072】
1…噴霧装置、10…溶液タンク(貯液部)、30…溶液供給ユニット、50…噴霧ユニット、51…放出口(第2開口部)、53…外気導入口(第1開口部)、55…ハウジング、57…噴霧ノズル、59…仕切り壁、61…第1室、63…第2室、65…連通部、67…排出口、31…第1接続管、33…第2接続管、35…第3接続管、100…除菌装置、110…除菌室、130…温度調整装置、131…冷却機、133…ヒータ、135…空調機、150…制御装置、160…温度センサ、200…可搬式噴霧装置、210,211…噴霧ノズル、230…溶液タンク(貯液部)、250…溶液供給ユニット、270…空気供給ユニット、290…台車、291…荷台部、297…車輪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次亜塩素酸ソーダ(NaClO)と、炭酸ソーダ(NaCO)と、苛性ソーダ(NaOH)又は水酸化カルシウム(Ca(OH))と、を含む水溶液からなる除菌消臭液を霧化して放出する噴霧装置。
【請求項2】
前記除菌消臭液は、前記次亜素酸ソーダの濃度が0.004〜0.005(wt%)、前記炭酸ソーダの濃度が0.001(wt%)以下、前記水酸化カルシウムの濃度が0.001(wt%)以下の水溶液である、請求項1に記載の噴霧装置。
【請求項3】
前記除菌消臭液は、前記次亜塩素酸ソーダ、苛性ソーダ及び前記炭酸ソーダの濃度がそれぞれ0.002(wt%)以下の水溶液である、請求項1に記載の噴霧装置。
【請求項4】
前記除菌消臭液を蓄える貯液部と、
前記貯液部内の除菌消臭液を加圧して供給する溶液供給ユニットと、
加圧空気を供給する空気供給ユニットと、
前記溶液供給ユニットによって供給された除菌消臭液と前記空気供給ユニットによって供給された加圧空気とを混合して除菌消臭液の噴霧を形成する噴霧ノズルと、
を備える、請求項1〜3のいずれか1つに記載の噴霧装置。
【請求項5】
前記貯液部、前記溶液供給ユニット、前記空気供給ユニット及び前記噴霧ノズルが搭載されると共に下部に複数の車輪を有する台車を更に備える、請求項4に記載の噴霧装置。
【請求項6】
前記噴霧ノズルは、その高さ位置が調整可能に設けられている、請求項4又は5に記載の噴霧装置。
【請求項7】
前記除菌消臭液を蓄える貯液部と、
前記貯液部内の除菌消臭液を加圧して供給する溶液供給ユニットと、
第1開口部及び第2開口部が形成されたハウジングと、該ハウジング内に設置されて前記溶液供給ユニットによって供給された除菌消臭液を該ハウジング内で噴霧する噴霧ノズルと、を有し、前記噴霧ノズルの作動によって前記第1開口部から外気を該ハウジング内に導入し、この導入した外気と前記噴霧ノズルからの噴霧とを該ハウジング内で混合させて前記第2開口部から放出する噴霧ユニットと、
を備える、請求項1〜3のいずれか1つに記載の噴霧装置。
【請求項8】
前記噴霧ノズルは、前記溶液供給ユニットによって供給された除菌消臭液を前記ハウジング内において水平方向よりも下向きに噴霧するものであり、
前記第1開口部及び前記第2開口部は、前記噴霧ノズルの噴孔の位置よりも上方に形成されている、請求項7に記載の噴霧装置。
【請求項9】
前記貯液部、前記溶液供給ユニット及び前記噴霧ユニットが搭載されると共に下部に複数の車輪を有する台車をさらに備える、請求項7又は8に記載の噴霧装置。
【請求項10】
除菌又は消臭を行う対象物を収容する除菌消臭室と、
次亜塩素酸ソーダ(NaClO)と、炭酸ソーダ(NaCO)と、苛性ソーダ(NaOH)又は水酸化カルシウム(Ca(OH))と、を含む水溶液からなる除菌消臭液を霧化して前記除菌消臭室内に放出する噴霧装置と、
を備える、除菌消臭装置。
【請求項11】
前記除菌消臭室内の温度を検出する温度センサと、
前記除菌消臭室内の温度を調整する温度調整装置と、
前記除菌消臭室内の温度を予め設定された第1温度まで低下させてから、霧化された除菌消臭液を前記除菌消臭室内に放出するように、前記温度調整装置及び前記噴霧装置の作動を制御する制御装置と、
をさらに備える、請求項10に記載の除菌消臭装置
【請求項12】
前記制御装置は、前記霧化された除菌消臭液の放出を停止させた後、前記除菌消臭室内の温度を前記第1温度よりも高い第2温度まで上昇させるように前記温度調整装置の作動を制御する、請求項11に記載の除菌消臭装置。
【請求項13】
前記除菌消臭室内の除湿を行う除湿装置をさらに備え、
前記制御装置は、前記霧化された除菌消臭液の放出を停止させた後、前記除菌消臭室内の温度を前記第1温度よりも高い第2温度まで上昇させるように前記温度調整装置の作動を制御すると共に前記除湿装置を作動させる、請求項12に記載の除菌消臭装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2011−67614(P2011−67614A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−187937(P2010−187937)
【出願日】平成22年8月25日(2010.8.25)
【出願人】(592183916)
【Fターム(参考)】