説明

嚢胞性線維症、粘液線毛機能不全、及び肺疾患の治療薬としてのポリエーテルブレベトキシン誘導体

ブレベトキシン又はPbTxの誘導体である化合物、化合物を含む製剤、並びに細胞における粘液輸送の調節方法、粘液線毛機能不全及び粘液輸送低下に関連した疾患の治療方法が開示されており、ここで化合物は式(I)及び式(III)を有し、式中、R、R、R、R、A、n、及びYは、各化合物について本明細書で定義する通りである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2003年9月19日出願の米国特許仮出願第60/504,665号の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、ブレベトキシン誘導体化合物、ブレベトキシン誘導体を含む製剤、及びこの化合物及び製剤を使用した、粘液輸送低下に関連した疾患の治療方法に関する。
【背景技術】
【0003】
粘液輸送低下は、気道閉塞、喘息などの病態及び疾患、肺疾患及び/又は感染の発症率の増加、並びに嚢胞性線維症の特徴を示している。特に、嚢胞性線維症は、気道上皮細胞の機能異常を特徴とする。嚢胞性線維症(又は「CF」)は、気管、肺、並びに腸、膵臓、生殖器官及び腎臓を含めて他の器官を裏打ちする上皮細胞の表面に存在するNa/Clトランスポーターをコードする欠陥遺伝子によって引き起こされる。この遺伝子において、何百もの変異が特定され、そのすべてが上皮細胞によるナトリウム及び塩化物の欠陥輸送を招く。疾患の症状の重症度は、遺伝された遺伝子の1つ又は複数の変異と関連している。これらの観察によって、ナトリウムチャネルの活性化が、気管支収縮、及び場合によっては粘液輸送の欠陥を招く恐れがあり、両者ともCFを含めて気道疾患を伴なうものであることが示唆されている。
【0004】
ブレベトキシンとして知られている化合物のクラスは、ギムノディニウムブレベ(Gymnodinium breve)及びプチコディスクスブレビス(Ptychodiscus brevis)とも呼ばれる、米国フロリダ州の赤潮有機体であるカレニアブレビス(Karenia brevis)の培養物の毒素として精製されたときに初めて発見された(Baden,D.G.ら、Toxicon、1982年、20巻、5号、929〜932頁)。Kブレビス(K.Brevis)は、赤潮発生中に増殖する。「PbTx」毒素(プチコディスクスブレビス(Ptychodiscus brevis)毒素)とも呼ばれるブレベトキシンは、その後特徴評価され、多環系ポリエーテルであることが判明し、ラット脳シナプトソームに関連した特異な部位への結合活性を有することが当初認められた(Poli,M.A.ら、Molec.Pharm.、1986年、30巻、129〜135頁)。ブレベトキシンは、電位開口型ナトリウムチャネルに結合することが知られている神経毒として分類される。特に、ブレベトキシンの効果は、ナトリウムチャネル上の受容体部位5との相互作用によって媒介される。一般的なブレベトキシンA及びブレベトキシンB骨格構造は下記の通りであり、PbTx分子(1〜10)とともに示す。
【0005】
ブレベトキシンB骨格
【化1】


PbTx−2:Rは、CHC(=CH)CHOであり、
PbTx−3:Rは、CHC(=CH)CHOHであり、
PbTx−5:Rは、CHC(=CH)CHOであり、C37は(OHの代わりに)OAcであり、
PbTx−6 Rは、CHC(=CH)CHOであり、C27、C28は(二重結合の代わりに)エポキシドであり、
PbTx−8 Rは、CHCOCHClであり、
PbTx−9 Rは、CHCH(CH)CHOHである。
【0006】
ブレベトキシンA骨格
【化2】


PbTx−1:Rは、CHC(=CH)CHOであり、
PbTx−7:Rは、CHC(=CH)CHOHであり、
PbTx−10 Rは、CHCH(CH)CHOHである。
【0007】
一般に、ブレベトキシンの活性は、一般的な骨格構造に由来するものと思われる。A環及び完全な環H、I、J、及びK環は、これらの化合物の毒性に必須であることが報告されている。ブレベトキシンの毒性を、骨格構造に付加している様々な側鎖に結び付けている報告はなかった。
【0008】
β−ナフトイル−PbTx−3は、ナトリウムチャネル開口を低減し、チャネル活性化における天然毒素の作用に効果的に拮抗するブレベトキシン誘導体である(Purkerson−Parker、Chemistry and Biology、2000年、7巻、6号、385〜393頁)。β−ナフトイル−PbTx−3は、その結合部位の天然毒素に置換すると考えられ、ナトリウムチャネルの開口を定常状態で誘発せず、様々な知見によると、ブレベトキシンによって誘導されるナトリウムチャネルの開口を遮断することが示唆されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
電位開口型ナトリウムチャネルの活性化が、気道関連疾患又は病態を引き起こす場合、電位開口型ナトリウムチャネルの効果的な変調又は遮断は、喘息、慢性閉塞性肺疾患、肺感染(例えば、肺炎、シュードモナス)、嚢胞性線維症など粘液線毛機能不全を伴なう気道疾患を緩和するのに有用となり得る。したがって、CFTRであるP2Y受容体、AB受容体、プリン受容体、及び塩素イオンチャネルとして働き、電位開口型ナトリウムチャネルに結合することができ、粘液輸送の調節、及び粘液輸送を伴なう病態又は疾患の治療又は予防に有用な活性剤が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、式(I)の化合物
【化3】


[式中、
Aは、
【化4】


であり、
Rは、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cシクロアルキルカルボニル、C〜Cアルキルエステル、C〜Cアルケニルエステル、アミノ、アミド、アリールエステル、シクロアルキルエステル、シクロアルケニルエステル、プリニル、ピリミジニル、ヘテロシクリル、アリール、又はヘテロアリールであり、それぞれ、利用できる任意の炭素原子上において、C〜C10アルキル、C〜Cシクロアルキル、C〜Cシクロアルキル(C〜C)アルキル、C〜Cシクロアルキル(C〜C)アルコキシ、C〜C10アルコキシ、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、アミノ、モノ(C〜C)アルキルアミノ、ジ(C〜C)アルキルアミノ、C〜C10アルケニル、C〜C10アルキニル、C〜Cハロアルキル、C〜Cハロアルコキシ、アミノ(C〜C)アルキル、モノ(C〜C)アルキルアミノ(C〜C)アルキル、又はジ(C〜C)アルキルアミノ(C〜C)アルキルで場合によっては置換されており、
は、H、又は−(CO)CHであり、
及びRはそれぞれ出現するたびに独立に、
【化5】


であり、
或いはORとORが一緒になって式(Ia)の6員環
【化6】


[式中、Xは、C=O、CH、又はCH(CH)であり、
括弧付きの破線の結合は、骨格への結合を示す]を形成することができ、
Yは、CH=CH、C(O)、CH(CH)、又はCHであり、
nは、1又は0であり、
但し、ORとORが一緒になって式(Ia)の環を形成する場合、Xは、C=Oであり、二重結合が存在し;Aが
【化7】


である場合、且つnが1である場合、Rが
【化8】


ではないことを条件とする]、或いは薬剤として許容できるその塩、溶媒和物、水和物、複合体、又はそれらの組合せを提供する。
【0011】
本発明は、式(II)の化合物
【化9】


[式中、
Aは、
【化10】


であり、
Rは、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキルエステル、C〜Cアルケニルエステル、アミノ、アミド、アリールエステル、シクロアルキルエステル、シクロアルケニルエステル、プリニル、ピリミジニル、ヘテロシクリル、アリール、又はヘテロアリールであり、
は、H、又は−COCHであり、
及びRはそれぞれ出現するたびに独立に、
【化11】


であり、
或いはORとORは一緒になって式(Ia)の6員環
【化12】


[式中、Xは、C=O、又はCH(CH)であり、
括弧付きの破線の結合は、骨格への結合を示す]を形成することができ、
Yは、CH=CH、C=O、又はCHであり、
nは、1又は0であり、
但し、ORとORが一緒になって式(Ia)の環を形成する場合、Xは、C=Oであり、二重結合が存在し、Aが
【化13】


である場合、及びnが1である場合、Rは、
【化14】


ではないことを条件とする]、或いは薬剤として許容できるその塩、溶媒和物、水和物、複合体、又はそれらの組合せも提供する。
【0012】
さらに、本発明は、式(III)の化合物
【化15】


[式中、
Rは、H、OH、ハロゲン、C〜C低級アルキル、C〜Cアルキルエステル、C〜Cアルケニルエステル、アミノ、アミド;ホルミルなどのアルデヒド、アリールエステル、シクロアルキルエステル、シクロアルケニルエステル、プリニル、ピリミジニル、ヘテロシクリル、アリール、又はヘテロアリールであり、
nは、1又は0であり、
Yは、C=O、CH=CH、CHCH、又はCHである]、或いは薬剤として許容できるその塩、溶媒和物、水和物、複合体、又はそれらの組合せを提供する。
【0013】
さらに、本発明は、式(IV)の化合物
【化16】


[式中、
Rは、H、OH、ハロゲン、C〜C低級アルキル、C〜Cアルキルエステル、C〜Cアルケニルエステル、アミノ、アミド、アルデヒド、アリールエステル、シクロアルキルエステル、シクロアルケニルエステル、プリニル、ピリミジニル、ヘテロシクリル、アリール、又はヘテロアリールであり、
nは、1又は0であり、
Yは、CH=CH、C=O、CH(CH)、又はCHである]、或いは薬剤として許容できるその塩、溶媒和物、水和物、複合体、又はそれらの組合せを提供する。
【0014】
本発明は、式(I)、(II)、(III)、及び(IV)の化合物、或いは薬剤として許容できるその塩、溶媒和物、水和物、複合体、又はそれらの組合せを、薬剤として許容できる担体、賦形剤、溶媒、アジュバント、又は希釈剤と組み合わせて含む製剤も提供する。
【0015】
本発明は、さらに、式(I)、(II)、(III)、又は(IV)の対象化合物、或いは薬剤として許容できるその塩、溶媒和物、水和物、複合体、又はそれらの組合せを投与することを含む、粘液輸送速度の調節方法、及び対象における粘液輸送低下又は粘液線毛機能不全を伴なう病態又は疾患の治療方法に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
定義
本明細書で使用する科学及び技術用語はすべて、別段の定義のない限り、本発明が属する当技術分野における技術者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。
【0017】
本明細書では、本明細書で参照される特許及び刊行物はすべて、参照により実質的に本明細書に組み込まれる。
【0018】
「治療上有効」量は、治療対象の疾患の少なくとも一症状を低減又は軽減する、或いは疾患の1つ又は複数の臨床マーカー又は症状の発症を低減又は遅延させるのに効果的な量として定義される。
【0019】
この明細書及び添付の特許請求の範囲で使用するように、単数形の「a」、「an」、及び「the」には、文脈上からそうではないことがはっきりしていない限り、複数が含まれる。したがって、例えば「ある化合物(a compound)」を含む組成物という言葉には、2つ以上の化合物の混合物が含まれる。「又は(or)」という用語は、文脈上からそうではないことがはっきりしていない限り、一般に「及び/又は」を含めた意味で使用されることにも留意されたい。
【0020】
「アルキル」及び「C〜Cアルキル」は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、2−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、2−ヘキシル、3−ヘキシル、3−メチルペンチルなど1〜6個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖のアルキル基を意味する。置換基(例えば、アルキル、アルコキシ、又はアルケニル基)のアルキル鎖が6個の炭素より短い又は長い場合には、これは、例えばC〜C10が最大10個の炭素を示すように2番目の「C」で示される。本明細書では、アルキル基は、1つ又は複数の置換可能な位置において、様々な基で場合によっては置換されている。
【0021】
「ハロゲン」という用語は、フッ素、臭素、塩素、及びヨウ素を意味する。
【0022】
「アルケニル」及び「C〜Cアルケニル」は、2〜6個の炭素原子と1〜3個の二重結合を有する直鎖及び分枝状の炭化水素基を意味し、例えばエテニル、プロペニル、l−ブタ−3−エニル、1−ペンタ−3−エニル、1−ヘキサ−5−エニルなどが含まれる。本明細書では、アルケニル基は、1つ又は複数の置換可能な位置において、様々な基で場合によっては置換されている。
【0023】
本明細書では、「シクロアルキル」という用語は、3〜12個の炭素原子を有する飽和炭素環基を指す。シクロアルキルは、単環、又は多環縮合系とすることができる。このような基の例には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、及びシクロヘキシルが含まれる。本明細書では、シクロアルキル基は、非置換であり、或いは指定するように、1つ又は複数の置換可能な位置において、様々な基で置換されている。例えば、このようなシクロアルキル基は、例えばC〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、アミノ、モノ(C〜C)アルキルアミノ、ジ(C〜C)アルキルアミノ、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、C〜Cハロアルキル、C〜Cハロアルコキシ、アミノ(C〜C)アルキル、モノ(C〜C)アルキルアミノ(C〜C)アルキル、又はジ(C〜C)アルキルアミノ(C〜C)アルキルで場合によっては置換されていてもよい。
【0024】
「アリール」は、場合によっては一、二、又は三置換された単環(例えば、フェニル)、複数の環(例えば、ビフェニル)、又は少なくとも1つが芳香族である複数の縮合環(例えば、1,2,3,4−テトラヒドロナフチル、ナフチル)を有する芳香族炭素環基を意味する。本発明の好ましいアリール基は、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、インダニル、インデニル、ジヒドロナフチル、テトラリニル、又は6,7,8,9−テトラヒドロ−5H−ベンゾ[α]シクロヘプテニルである。本明細書では、アリール基は、非置換であり、或いは指定するように、1つ又は複数の置換可能な位置において、様々な基で置換されている。好ましいアリール基は、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、アミノ、モノ(C〜C)アルキルアミノ、ジ(C〜C)アルキルアミノ、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、C〜Cハロアルキル、C〜Cハロアルコキシ、アミノ(C〜C)アルキル、モノ(C〜C)アルキルアミノ(C〜C)アルキル、又はジ(C〜C)アルキルアミノ(C〜C)アルキルで場合によっては置換されている。
【0025】
本明細書では、「アリールエステル」という用語は、アリールオキシカルボニル、及びアリールカルボニルオキシ基を含む。
【0026】
本明細書では、「アルキルエステル」という用語は、アルキルオキシカルボニル、及びアルキルカルボニルオキシ基を含む。本明細書では、アルキルカルボニルは、アルカノイルと同じ意味を有する。
【0027】
本明細書では、「アルキルアミド」という用語は、アルキルアミノカルボニル基、ジアルキルカルボニル基、及びアルカノイルアミノ基を含む。
【0028】
本明細書では、「アルケニルアミド」という用語は、アルケニルアミノカルボニル基、ジアルケニルカルボニル基、及びアルケニルカルボニルアミノ基を含む。
【0029】
本明細書では、「アルケニルエステル」という用語は、アルケニルオキシカルボニル及びアルケニルカルボニルオキシ基を含む。
【0030】
本明細書では、アルキルアリールエステルという用語は、アルキル部分がアリール又はヘテロアリール基を有するアルキルオキシカルボニル及びアルカノイルオキシ基を指す。
【0031】
本明細書では、アルケニルアリールエステルという用語は、アルケニル部分がアリール又はヘテロアリール基を有するアルケニルオキシカルボニル及びアルケニルカルボニルオキシ基を指す。
【0032】
「ヘテロアリール」は、1つ又は複数の5−、6−、又は7−員環の芳香族環系を意味し、窒素、酸素、又は硫黄から選択される少なくとも1個で最高4個のヘテロ原子を含む9〜11個の原子の縮合環系が含まれる。本発明の好ましいヘテロアリール基には、ピリジニル、ピリミジニル、キノリニル、ベンゾチエニル、インドリル、インドリニル、ピリダジニル、ピラジニル、イソインドリル、イソキノリル、キナゾリニル、キノキサリニル、フタラジニル、イミダゾリル、イソオキサゾリル、ピラゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、インドリジニル、インダゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾフラニル、フラニル、チエニル、ピロリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、オキサゾロピリジニル、イミダゾピリジニル、イソチアゾリル、ナフチリジニル、シンノリニル、カルバゾリル、β−カルボリニル、イソクロマニル、クロマニル、テトラヒドロイソキノリニル、イソインドリニル、イソベンゾテトラヒドロフラニル、イソベンゾテトラヒドロチエニル、イソベンゾチエニル、ベンゾオキサゾリル、ピリドピリジニル、ベンゾテトラヒドロフラニル、ベンゾテトラヒドロチエニル、プリニル、ベンゾジオキソリル、トリアジニル、フェノキサジニル、フェノチアジニル、プテリジニル、ベンゾチアゾリル、イミダゾピリジニル、イミダゾチアゾリル、ジヒドロベンズイソオキサジニル、ベンズイソオキサジニル、ベンズオキサジニル、ジヒドロベンズイソチアジニル、ベンゾピラニル、ベンゾチオピラニル、クマリニル、イソクマリニル、クロモニル、クロマノニル、ピリジニル−N−オキシド、テトラヒドロキノリニル、ジヒドロキノリニル、ジヒドロキノリノニル、ジヒドロイソキノリノニル、ジヒドロクマリニル、ジヒドロイソクマリニル、イソインドリノニル、ベンゾジオキサニル、ベンズオキサゾリノニル、ピロリルN−オキシド、ピリミジニルN−オキシド、ピリダジニルN−オキシド、ピラジニルN−オキシド、キノリニルN−オキシド、インドリルN−オキシド、インドリニルN−オキシド、イソキノリルN−オキシド、キナゾリニルN−オキシド、キノキサリニルN−オキシド、フタラジニルN−オキシド、イミダゾリルN−オキシド、イソオキサゾリルN−オキシド、オキサゾリルN−オキシド、チアゾリルN−オキシド、インドリジニルN−オキシド、インダゾリルN−オキシド、ベンゾチアゾリルN−オキシド、ベンズイミダゾリルN−オキシド、ピロリルN−オキシド、オキサジアゾリルN−オキシド、チアジアゾリルN−オキシド、トリアゾリルN−オキシド、テトラゾリルN−オキシド、ベンゾチオピラニルS−オキシド、ベンゾチオピラニルS,S−ジオキシドが含まれる。本明細書では、ヘテロアリール基は、非置換であり、或いは指定するように、1つ又は複数の置換可能な位置において、様々な基で置換されている。好ましいヘテロアリール基は、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、アミノ、モノ(C〜C)アルキルアミノ、ジ(C〜C)アルキルアミノ、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、C〜Cハロアルキル、C〜Cハロアルコキシ、アミノ(C〜C)アルキル、モノ(C〜C)アルキルアミノ(C〜C)アルキル、又はジ(C〜C)アルキルアミノ(C〜C)アルキルで場合によっては置換されている。
【0033】
「ヘテロ環」、「ヘテロシクロアルキル」、又は「ヘテロシクリル」は、1つ又は複数の4−、5−、6−、又は7−員環の炭素環系を意味し、窒素、酸素、又は硫黄から選択される少なくとも1個で最高4個のヘテロ原子を含む9〜11個の原子の縮合環系が含まれる。本発明の好ましいヘテロ環には、モルホリニル、チオモルホリニル、チオモルホリニルS−オキシド、チオモルホリニルS,S−ジオキシド、ピペラジニル、ホモピペラジニル、ピロリジニル、ピロリニル、テトラヒドロピラニル、ピペリジニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチエニル、ホモピペリジニル、ホモモルホリニル、ホモチオモルホリニル、ホモチオモルホリニルS,S−ジオキシド、オキサゾリジノニル、ジヒドロピラゾリル、ジヒドロピロリル、ジヒドロピラジニル、ジヒドロピリジニル、ジヒドロピリミジニル、ジヒドロフリル、ジヒドロピラニル、テトラヒドロチエニルS−オキシド、テトラヒドロチエニルS,S−ジオキシド、及びホモチオモルホリニルS−オキシドが含まれる。本明細書では、ヘテロ環基は非置換であり、或いは指定するように、1つ又は複数の置換可能な位置において、様々な基で置換されている。好ましいヘテロ環基は、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、アミノ、モノ(C〜C)アルキルアミノ、ジ(C〜C)アルキルアミノ、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、C〜Cハロアルキル、C〜Cハロアルコキシ、アミノ(C〜C)アルキル、モノ(C〜C)アルキルアミノ(C〜C)アルキル、ジ(C〜C)アルキルアミノ(C〜C)アルキル、又は=Oで場合によっては置換されている。
【0034】
「粘液クリアランスを調節している」という語句は、粘液クリアランスを制御、促進、且つ/又はそれに影響を及ぼしていることを含む。
【0035】
本明細書では、「治療」及び「治療している」という用語は、化合物、又は化合物を含む薬剤組成物の予防投与(「予防」)、及び本明細書に記載された疾患又は障害を低減又はなくすための治療的療法を含む。予防投与は、障害を予防する又は障害の再発を予防するためのものであり、1つ若しくは複数の本明細書に記載された障害を有する又は被る危険性がある対象を治療するために使用することができる。したがって、本明細書では、「治療」という用語、又はその派生語は、本発明の活性成分を、予防的に、又は本発明のこのような活性成分の投与対象である病状の発症に続いて、投与したとき、述べられた病状の部分又は完全抑制を意図する。「予防」は、本明細書に記載された障害などのいずれかから哺乳類を保護するための、哺乳類への活性成分の投与を指す。
【0036】
本明細書では、「対象」という用語は、哺乳類及び魚類を含めて動物を含む。好ましくは、この用語は、ヒト、ウシ、ウマなどの哺乳類、より好ましくは、ヒト、及びネコ、イヌ、ウマなどの家畜、最も好ましくはヒトを指す。
【0037】
本発明の好ましい化合物には、Rが水素であり、Aが
【化17】


であり、OR及びORが式(Ia)の環
【化18】


[式中、XはC=Oであり、
YはCH=CHであり、Rは置換ベンゾイル、又は置換ナフトイルである]を表すものが含まれる。これら化合物は、以降、式A−1の化合物と呼ばれる。
【0038】
式A−1の化合物では、ベンゾイル及びナフトイルはそれぞれ、1〜5個の独立に選択されたR基で置換されている。ベンゾイル及びナフトイル上の好ましいR基には、C〜C10アルキル、C〜Cシクロアルキル、C〜Cシクロアルキル(C〜C)アルキル、C〜Cシクロアルキル(C〜C)アルコキシ、C〜C10アルコキシ、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、アミノ、モノ(C〜C)アルキルアミノ、ジ(C〜C)アルキルアミノ、C〜C10アルケニル、C〜C10アルキニル、C〜Cハロアルキル、C〜Cハロアルコキシ、アミノ(C〜C)アルキル、モノ(C〜C)アルキルアミノ(C〜C)アルキル、又はジ(C〜C)アルキルアミノ(C〜C)アルキルが含まれる。
【0039】
或いは、任意の隣接する2個のR基は、それらが結合している原子と一緒になって、1〜3個のRで場合によっては置換された部分飽和5〜8員環を形成する。Rはそれぞれ、C〜C10アルキル、C〜Cシクロアルキル、C〜Cシクロアルキル(C〜C)アルキル、C〜Cシクロアルキル(C〜C)アルコキシ、C〜C10アルコキシ、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、アミノ、モノ(C〜C)アルキルアミノ、ジ(C〜C)アルキルアミノ、C〜C10アルケニル、C〜C10アルキニル、C〜Cハロアルキル、C〜Cハロアルコキシ、アミノ(C〜C)アルキル、モノ(C〜C)アルキルアミノ(C〜C)アルキル、又はジ(C〜C)アルキルアミノ(C〜C)アルキルである。
【0040】
Rは、ベンゾイル又はナフトイルであり、それぞれ、1〜3個のRで置換されており、各Rは独立に、C〜C10アルキル、C〜Cシクロアルキル、C〜Cシクロアルキル(C〜C)アルキル、C〜Cシクロアルキル(C〜C)アルコキシ、C〜C10アルコキシ、ハロゲン、モノ(C〜C)アルキルアミノ、ジ(C〜C)アルキルアミノ、C〜C10アルケニル、C〜C10アルキニル、C〜Cハロアルキル、C〜Cハロアルコキシ、モノ(C〜C)アルキルアミノ(C〜C)アルキル、又はジ(C〜C)アルキルアミノ(C〜C)アルキルであることが好ましい。
【0041】
Rは、ベンゾイル又はナフトイルであり、それぞれ、1〜2個のRで置換されており、各Rbは独立に、C〜C10アルキル、C〜Cシクロアルキル、C〜Cシクロアルキル(C〜C)アルキル、C〜Cシクロアルキル(C〜C)アルコキシ、C〜C10アルケニル、又はC〜C10アルキニルであることがより好ましい。
【0042】
一態様では、本発明は、式(I)の化合物
【化19】


[式中、Aは、
【化20】


であり、
Rは、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキルエステル、C〜Cアルケニルエステル、アミン、アミド、アリールエステル、シクロアルキルエステル、シクロアルケニルエステル、プリン、ピリミジン、ヘテロ環、又はヘテロアリールであり、
は、H、又は(CO)CHであり、
及びRはそれぞれ出現するたびに独立に、
【化21】


であり、
或いは、ORとORは一緒になって式(Ia)の6員環
【化22】


[式中、Xは、C=O、又はCH(CH)であり、
括弧付きの破線の結合は、骨格への結合を示す]を形成することができ、
Yは、CH=CH、C=O、CHCH、又はCHであり、
nは、1又は0であり、
但し、ORとORが一緒になって式(Ia)の環を形成する場合、Xは、C=Oであり、二重結合が存在し、Aが
【化23】


である場合、及びnが1である場合、Rは
【化24】


ではないことを条件とする]、
或いは薬剤として許容できるその塩、溶媒和物、水和物、複合体、又はそれらの組合せに関する。
【0043】
広範な態様では、Rは、アルキル、アルキルエステル、ハロゲン、アルケニル、アルケニルエステル、シクロアルキル、シクロアルキルエステル、アリール、アリールエステル、ヘテロアリール、ヘテロ環、ヘテロシクロアルキル、又はヘテロシクリルである。
【0044】
この態様の別の実施形態では、化合物は、式(I)(式中、Rは、
【化25】


である)のものである。
【0045】
この態様の別の実施形態では、化合物は、式(I)(式中、Rは、ベンゾイル、α−ナフトイル、β−ナフトイル、α−アントラコイル(anthracoyl)、β−アントラコイル、又はγ−アントラコイルである)のものである。
【0046】
この態様の別の実施形態では、ORとORは一緒になって式(Ia)の環(式中、環は、
【化26】


であり、
括弧付きの破線の結合は、骨格への結合点を示す)を形成する。
【0047】
この態様のさらに別の実施形態では、R及びRはそれぞれ独立に、
【化27】


である。
【0048】
好ましい一実施形態では、本発明は、式(II)の化合物
【化28】


[式中、
Aは、
【化29】


であり、
Rは、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキルエステル、C〜Cアルケニルエステル、アミン、アミド、アリールエステル、シクロアルキルエステル、シクロアルケニルエステル、プリン、ピリミジン、ヘテロ環、又はヘテロアリールであり、
は、H、又は−COCHであり、
及びRはそれぞれ出現するたびに独立に、
【化30】


或いは、ORとORは一緒になって式(Ia)の6員環
【化31】


[式中、Xは、C=O、又はCH(CH)であり、
括弧付きの破線の結合は、骨格への結合を示す]を形成することができ、
Yは、CH=CH、C=O、又はCHであり、
nは、1又は0であり、
但し、ORとORが一緒になって式(Ia)の環を形成する場合、Xは、C=Oであり、二重結合が存在し、Aが
【化32】


である場合、及びnが1である場合、Rは
【化33】


ではないことを条件とする]、
或いは薬剤として許容できるその塩、溶媒和物、水和物、複合体、又はそれらの組合せを提供する。
【0049】
別の好ましい一実施形態では、式(I)の化合物は、
【化34】


である。
【0050】
この好ましい実施形態の一態様では、式(I)の化合物は、
【化35】


である。
【0051】
別の好ましい一実施形態では、式(I)の化合物は、
【化36】


である。
【0052】
この好ましい実施形態の一態様では、式(I)の化合物は、
【化37】


である。
【0053】
別の好ましい一実施形態では、式(I)の化合物は、
【化38】


である。
【0054】
この好ましい実施形態の一態様では、式(I)の化合物は、
【化39】


である。
【0055】
本発明は、また式(III)の化合物
【化40】


[式中、
Rは、H、OH、ハロゲン、C〜C低級アルキル、C〜Cアルキルエステル、C〜Cアルケニルエステル、アミノ、アミド、アルデヒド、アリールエステル、シクロアルキルエステル、シクロアルケニルエステル、プリニル、ピリミジニル、ヘテロシクリル、アリール、又はヘテロアリールであり、
Yは、C=O、CH=CH、CHCH、又はCHであり、
nは、1又は0である]、或いは薬剤として許容できるその塩、溶媒和物、水和物、複合体、又はそれらの組合せにも関する。
【0056】
この態様の一実施形態では、式(III)の化合物は、式(IV)
【化41】


[式中、
Rは、H、OH、ハロゲン、C〜C低級アルキル、C〜Cアルキルエステル、C〜Cアルケニルエステル、アミノ、アミド、アルデヒド、アリールエステル、シクロアルキルエステル、シクロアルケニルエステル、プリニル、ピリミジニル、ヘテロシクリル、アリール、又はヘテロアリールであり、
Yは、C=O、CH=CH、CHCH、又はCHであり、
nは、1又は0である]を有する。
【0057】
好ましい一実施形態では、式(III)の化合物は、
【化42】


である。
【0058】
この好ましい実施形態の一態様では、化合物は、
【化43】


である。
【0059】
別の好ましい実施形態では、式(III)の化合物は、
【化44】


である。
【0060】
この好ましい実施形態の一態様では、化合物は、
【化45】


である。
【0061】
別の好ましい実施形態では、式(III)の化合物は、
【化46】


である。
【0062】
この好ましい実施形態の一態様では、化合物は、
【化47】


である。
【0063】
別の好ましい実施形態では、式(III)の化合物は、
【化48】


である。
【0064】
この好ましい実施形態の一態様では、化合物は、
【化49】


である。
【0065】
別の好ましい実施形態では、式(III)の化合物は、
【化50】


である。
【0066】
この好ましい実施形態の一態様では、化合物は、
【化51】


である。
【0067】
別の好ましい実施形態では、式(III)の化合物は、
【化52】


である。
【0068】
この好ましい実施形態の一態様では、化合物は、
【化53】


である。
【0069】
式(I)〜(IV)の化合物は、不斉中心を有し、ラセミ化合物、ラセミ混合物、及び個々のジアステレオマー又はエナンチオマーとして存在することができる。異性体のすべての形は、本発明の範囲内に包含される。本発明は、また放射標識された形、並びに化合物が存在することができるすべての物理的状態、即ち液体(オイル)及び(非晶質の形及び結晶質の形を含めた)固体の化合物も含む。
【0070】
別の態様では、本発明は、式(I)、(II)、(III)、又は(IV)のいずれの化合物、或いは薬剤として許容できるその塩、溶媒和物、水和物、複合体、又はそれらの組合せ、及び少なくとも1つの薬剤として許容できる担体、賦形剤、溶媒、アジュバント、又は希釈剤を含む製剤に関する。
【0071】
好ましいこの態様の一実施形態では、製剤は、式(II)又は(IV)の化合物を含む。
【0072】
別の態様では、本発明は、対象又は細胞中の粘液輸送を調節するのに有効な量の、本発明の化合物、又は薬剤として許容できるその塩、溶媒和物、水和物、複合体、若しくはそれらの組合せを、対象に投与する或いは細胞と接触させることを含む、粘液輸送の調節方法を提供する。
【0073】
別の態様では、本発明は、粘液輸送低下に関連した或いはそれを伴なう病態又は疾患の治療方法であって、対象に、病態又は疾患の治療に有効量の本発明の化合物、或いは薬剤として許容できるその塩、溶媒和物、水和物、複合体、又はそれらの組合せを投与することを含む方法を提供する。この粘液輸送低下を伴なう病態又は疾患の治療方法は、粘液輸送低下を伴なう症状及び疾患状態の重症度を予防し、治療し、低減し、或いは症状及び疾患の発症又は進行を遅延させる助けとなり得る。このような病態又は疾患には、非限定的例として慢性気道閉塞、喘息、肺疾患、肺感染、及び嚢胞性線維症が含まれる。
【0074】
一実施形態では、この治療方法を使用して、慢性気道閉塞を治療することができる。
【0075】
一実施形態では、この治療方法を使用して、喘息を治療することができる。
【0076】
一実施形態では、この治療方法を使用して、肺気腫、肺線維症、及び/又は喫煙者咳などの肺疾患を治療することができる。
【0077】
一実施形態では、この治療方法を使用して、肺炎、又はシュードモナス(Pseudomonas)に限定されないがこれらを含めて、肺感染を治療することができる。
【0078】
好ましい一実施形態では、疾患が嚢胞性線維症である場合に、この治療方法を使用することができる。
【0079】
別の態様では、本発明は、粘液輸送低下を伴なう病態又は疾患に関連した症状の治療方法であって、このような治療を必要としている対象に、治療有効量の本発明の化合物、或いは薬剤として許容できるその塩、溶媒和物、水和物、複合体、又はそれらの組合せを投与することを含む方法を提供する。
【0080】
別の態様では、本発明は、粘液線毛機能不全を伴なう病態又は疾患の治療方法であって、このような治療を必要としている対象に、治療有効量の本発明の化合物、或いは薬剤として許容できるその塩、溶媒和物、水和物、複合体、又はそれらの組合せを投与することを含む方法を提供する。
【0081】
別の態様では、本発明は、粘液線毛機能不全を伴なう病態又は疾患に関連した症状の治療方法であって、このような治療を必要としている対象に、治療有効量の本発明の化合物、或いは薬剤として許容できるその塩、溶媒和物、水和物、複合体、又はそれらの組合せを投与することを含む方法を提供する。
【0082】
この態様の別の実施形態では、方法は、式(I)〜(IV)の化合物、或いは薬剤として許容できるその塩、溶媒和物、水和物、複合体、又はそれらの組合せと組み合わせて、有効量の、粘液輸送低下を伴なう病態又は疾患の治療に有用であることが知られている化合物を場合によっては含むことができる。本発明の方法は、場合によっては対症療法や合併療法など追加の治療レジメンを含むことができる。
【0083】
本発明の方法の一実施形態では、対象は、哺乳類である。より好ましい一実施形態では、哺乳類はヒトである。
【0084】
本発明の方法は、吸入、経口、非経口、舌下、鼻腔内、包膜内、デポ、移植、局所、及び直腸投与の場合、約0.1pg/日〜約100mg/日の治療有効量を使用する。治療上の有効量は、例えば投与経路、化合物の分布、化合物の代謝、化合物の排泄、具体的な治療的使用、及び対象/患者の身体的特徴を含めて、様々なパラメータに従って変わり、十分に当業者の知識の範囲内である。
【0085】
好ましい一態様では、経口非吸入投与の場合の治療有効量は、約1mg/日〜約100mg/日である。
【0086】
好ましい一態様では、非経口及びデポ投与の場合の治療有効量は、約1pg/日〜約100mg/日である。
【0087】
好ましい一態様では、吸入投与の場合の治療有効量は、約0.1pg/日〜約1μg/日である。
【0088】
本発明は、粘液輸送低下又は粘液線毛機能不全を伴なう障害又は疾患、及びこれらの障害又は疾患を伴なう症状を有する対象を治療し、或いは対象がそれらを発症するのを予防し、並びにこのような治療を必要としている対象を治療するのに使用するための医薬品の製造用に、式(I)〜(IV)の化合物、或いは薬剤として許容できるその塩、溶媒和物、水和物、複合体、又はそれらの組合せの使用も含む。
【0089】
一態様では、式(I)〜(IV)の化合物のこうした使用は、疾患又は病態が慢性気道閉塞である場合に行うことができる。
【0090】
別の態様では、式(I)〜(IV)の化合物のこうした使用は、疾患又は病態が喘息の場合に行うことができる。
【0091】
別の態様では、式(I)〜(IV)の化合物のこうした使用は、疾患又は病態が肺疾患である場合に行うことができる。
【0092】
別の態様では、式(I)〜(IV)の化合物のこうした使用は、疾患又は病態が肺感染である場合に行うことができる。
【0093】
別の態様では、式(I)〜(IV)の化合物のこうした使用は、疾患又は病態が嚢胞性線維症である場合に行うことができる。
【0094】
別の態様では、ガス、織物の粒子、粗粒子、又は他の産業用粒子若しくはフュームを吸入することによって引き起こされ或いは悪化させた、従事産業関連疾患又は病態を治療するために本発明の化合物を使用することができる。粒子及び粗粒子の具体的な例には、例えば酸化鉄、シリカ、タルク、炭素、黒鉛、繊維、木粉、穀類粉、有機溶媒、及び汚染ガスが含まれる。
【0095】
さらに別の態様では、本発明の化合物は、細菌、又は他の病原性粒子、例えば真菌粒子の吸入から生じた疾患又は病態を治療するために使用することができる。したがって、本発明は、細菌、例えば炭疽菌を含む粒子や、真菌粒子などの病原性粒子を清浄する方法も含む。
【0096】
本発明は、複数の容器を含んだ容器キットも含み、各容器は1つ又は複数の単位用量の式(I)〜(IV)の化合物、或いは薬剤として許容できるその塩、溶媒和物、水和物、複合体、又はそれらの組合せを含む。
【0097】
一実施形態では、この容器キットは、それぞれ経口送達向けに適合させた容器を含み、それには吸入器、錠剤、ゲル、又はカプセルが含まれる。
【0098】
一実施形態では、この容器キットは、それぞれ非経口送達向けに適合させた容器を含み、それにはデポー製品、注射器、アンプル、又はバイアルが含まれる。
【0099】
一実施形態では、この容器キットは、局所送達向けに適合させた容器をそれぞれ含み、それにはパッチ、メディパッド、軟膏、又はクリームが含まれる。
【0100】
式(I)の化合物は、適切な酸又は塩基と反応させると塩を形成することができる。薬剤として許容できる塩は、一般により水溶性で安定な、しかも/又はより結晶質である化合物をしばしば生成するので、通常は対応する式(I)の化合物より好ましい。薬剤として許容できる塩は、親化合物の活性を保持し、投与した場合に投与対象に対して有害な又は望ましくない影響を与えない任意の塩である。薬剤として許容できる塩には、無機酸及び有機酸ともに酸付加塩が含まれる。好ましい薬剤として許容できる塩には、Berge、Bighley、及びMonkhouse、J.Pharm.Sci.、1977年、66巻、1〜19頁に記載されているものなどの塩が含まれる。このような塩は、無機及び有機酸から形成することができる。その代表例には、マレイン酸、フマル酸、安息香酸、アスコルビン酸、パモ酸、コハク酸、ビスメチレンサリチル酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、酢酸、プロピオン酸、酒石酸、サリチル酸、クエン酸、グルコン酸、アスパラギン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、イタコン酸、グリコール酸、p−アミノ安息香酸、グルタミン酸、ベンゼンスルホン酸、塩酸、臭化水素酸、硫酸、シクロヘキシルスルファミン酸、リン酸、及び硝酸が含まれる。他の許容できる塩については、Int.J.Pharm.、33巻、201〜217頁(1986)を参照のこと。式(I)の化合物は、その溶媒和物、水和物、複合体、又はそれらの組合せを形成することもできる。
【0101】
本発明の方法
本発明の化合物、前記化合物を含む製剤、及び薬剤として許容できるその塩は、対象、好ましくは哺乳類、より好ましくは粘液輸送低下を伴なう疾患又は病態のヒトを治療するのに有用であり、このような疾患又は病態の発症を予防又は遅延させる助けとなるのに有用である。本発明の化合物及び製剤は、特に慢性気道閉塞、喘息、肺疾患、肺感染、及び嚢胞性線維症の進行を治療し、予防し、又は減速させるのに有用である。粘液輸送低下を伴なう疾患及び病態、並びに関連した症状を治療又は予防する場合、本発明の化合物は、対象に最善であるように、個別に、又は組合せで使用することができる。
【0102】
これらの疾患及び病態に関連して、「治療する」という用語は、本発明の化合物を、既存の病態又は疾患の対象、好ましくはヒト対象/患者で使用することができるという意味である。本発明の化合物は、疾患を有する対象を必ずしも治癒するわけではなく、疾患の進行を遅延若しくは減速させ、又はさらなる進行を予防し、それによってその個体により有効な寿命を与える。
【0103】
「予防する」という用語は、現在は疾患若しくは病態の症状を有していないものの、通常は疾患を発症するはずであり、又は疾患のリスクが高まっているはずである人に本発明の化合物を投与した場合、疾患を発症しなくなるという意味である。さらに、「予防する」は、年齢、家族歴、遺伝子若しくは染色体異常のため、及び/又は疾患の1つ若しくは複数の生物学的マーカーが存在するため、最終的に疾患を発症し、或いは疾患のリスクがあるはずである個体における疾患発症の遅延も含む。疾患の発症を遅延させることによって、本発明の化合物は、個体が通常なら疾患になるはずの期間に個体が疾患になるのを防ぎ、或いは本発明の化合物の投与がなかったら個体が最終的に疾患になるときまで、疾患の発症速度、又はその影響のうちのいくつかを低減することができる。予防することは、疾患の素因を有していると思われる個体への本発明の化合物の投与も含む。
【0104】
好ましい一態様では、本発明の化合物は、疾患の症状の進行を減速するのに有用である。
【0105】
別の好ましい態様では、本発明の化合物は、疾患の症状のさらなる進行を予防するのに有用である。
【0106】
上記の疾患を治療又は予防する際に、治療有効量の本発明の化合物を投与する。治療有効量は、当業者に知られているように、特定の使用化合物、治療すべき対象の身体的特徴、及び投与経路に応じて異なる。
【0107】
上記と診断された病態のいずれかを示す対象を治療する際に、医師は、本発明の化合物を直ちに投与し、必要に応じて、投与を無期限に継続することができる。
【0108】
剤形及び用量
本発明の化合物を、経口、非経口(IV、IM、デポ−IM、SQ、及びデポSQ)、舌下、鼻腔内、吸入、くも膜下腔内、局所、膣内、又は直腸投与することができる。当業者に知られている剤形は、本発明の化合物の送達に適している。
【0109】
組成物は、治療有効量の本発明の化合物を含むことを条件とする。化合物を、経口投与の場合、エアゾール、吸入剤、錠剤、カプセル剤、エリキシル剤など、或いは非経口投与の場合、滅菌液剤又は懸濁剤などの適切な医薬品に調製することが好ましい。通常は、当技術分野でよく知られている技法及び手順を使用して、上記に記述する化合物を、医薬組成物に調製する。
【0110】
約0.1pg〜約100mgの本発明の化合物又は化合物の混合物、或いは生理的に許容できるその塩、溶媒和物、水和物、複合体、エステル、又はそれらの組合せを生理的に許容できるビヒクル、担体、賦形剤、結合剤、防腐剤、安定剤、矯味剤などと、認められた製剤実施に要求される単位剤形で混和する。これらの組成物又は製剤における活性物質量は、指示された範囲の適当な用量が得られるようにするものである。組成物を単位剤形で調製することが好ましく、各用量は、吸入投与の場合約0.1pg〜約100mg、好ましくは約1pg〜約1μg、好ましくは注射/静脈内投与の場合約100ng〜約1mg、又は経口投与(例えば、錠剤、エリキシル剤、カプセル剤など)の場合約1mg〜約100mgの活性成分を含有する。「単位剤形」という用語は、ヒト対象及び他の哺乳類のための単位用量として適切な個別の単位を指し、各単位は、適切な医薬用賦形剤と共同して、所望の治療効果を生じるように算出された所定量の活性材料を含む。
【0111】
薬剤組成物を調製するために、1つ又は複数の本発明の化合物を適切な薬剤として許容できる担体と混合する。化合物を混合又は添加すると、得られる混合物を溶液、懸濁剤、乳剤などとすることができる。リポソーム懸濁剤が、薬剤として許容できる担体として適している場合もある。これらは、当業者に知られている方法に従って調製することができる。得られる混合物の形は、意図された投与モード、及び選択された担体又はビヒクルでの化合物の溶解性を含めていくつかの要因に依存する。有効濃度は、治療対象の疾患、障害、又は病態の少なくとも一症状を軽減し又は改善するのに十分であり、経験的に決定することができる。
【0112】
本明細書で提供された化合物の投与に適した医薬用担体又はビヒクルには、特定の投与モードに適した、当業者に知られている任意の担体が含まれる。さらに、活性材料を、所望の作用を損なわない他の活性材料、或いは所望の作用を補足し若しくは別の作用を有する材料と混合又はブレンドすることもできる。化合物を組成物中、単独の薬剤活性成分として調製することができ、或いは他の活性成分と組み合わせることもできる。
【0113】
化合物が不十分な溶解性を示す場合、可溶化方法を使用することができる。このような方法が知られており、ジメチルスルホキシド(DMSO)などの共溶媒の使用、ツィーン(Tween)(登録商標)などの界面活性剤の使用、及び重炭酸ナトリウム水溶液での溶解が含まれるが、これらに限定されない。有効薬剤組成物を調製する際に、塩、溶媒和物、水和物、複合体、又はプロドラッグなどの化合物の誘導体を使用することもできる。
【0114】
化合物の濃度は、投与すると、化合物を投与する目的の中毒又は障害の少なくとも一症状を軽減又は改善する量が送達されるのに効果的である。通常は、組成物を単回投与用に調製する。
【0115】
本発明の化合物は、それを持効性製剤やコーティングなど身体からの急速な放出から保護する担体を用いて調製することができる。このような担体には、マイクロカプセル化送達システムなどの放出制御製剤が含まれるが、これだけに限定されない。治療される対象に望ましくない副作用を及ぼすことなく、治療上有用な効果を及ぼすのに十分な量の活性化合物を、薬剤として許容できる担体中に含む。治療上有用な濃度は、化合物を、治療対象の障害のための知られているin vitro及びin vivoモデル系中で試験することによって経験的に決定することができる。
【0116】
本発明の化合物及び組成物を、反復又は単回投与容器中に封入することができる。封入化合物及び組成物を、例えば用時組立て可能な構成要素を含めてキットで提供することができる。例えば、凍結乾燥した形の化合物阻害剤、及び適切な希釈液を、使用前に組み合わせるための個別の構成要素として提供することができる。キットは、化合物阻害剤、及び共投与用の第2の治療薬を含むことができる。阻害剤及び第2の治療薬を、個別の構成要素として提供することができる。キットは、複数の容器を含むことができ、各容器は1つ又は複数の単位用量の本発明の化合物を保持する。容器は、経口投与の場合、錠剤、ゲルカプセル剤、徐放性カプセル剤など;非経口投与の場合、デポー製品、プレフィルドシリンジ、アンプル、バイアルなど;及び局所投与の場合、パッチ、メディパッド、クリームなどに限定されないが、これらを含めて、所望の投与モードに適合させることが好ましい。
【0117】
薬物組成物中の活性化合物の濃度は、活性化合物の吸収、投与経路、代謝、不活化、排泄速度、投与計画、及び投与量、並びに当業者に知られている他の要因に依存する。
【0118】
活性成分は、一度に投与することができ、或いは時間の間隔を空けて投与するようにいくつかのより少ない用量に分割することができる。精確な用量及び治療期間は、治療対象の疾患に応じ、知られている試験プロトコルを使用して、又はin vivo又はin vitro試験データからの外挿により経験的に決定できることが理解される。濃度及び用量の値は、改善対象の病態の重症度に応じて変わり得ることに留意されたい。さらに、任意の特定の対象に対する特定の用法を、個体別の要求量、及び組成物を投与し又はその投与を管理する担当者の専門的判断に従って経時的に調整すべきであること、本明細書に記載する濃度範囲は、例示のものにすぎず、特許請求された組成物の範囲又は実施を限定するためのものではないことを理解されたい。
【0119】
非吸入の経口投与が所望の場合、化合物は、それを胃の酸性環境から保護する組成物として提供すべきである。例えば、組成物は、それを胃において完全に維持し、活性化合物を腸で放出する腸溶コーティングとして調製することができる。組成物は、制酸薬又は他のこのような材料と組み合わせて調製することもできる。
【0120】
経口組成物は、一般に不活性希釈液又は食用担体を含み、錠剤に圧縮され、又はゼラチンカプセル剤に封入することができる。経口治療投与する目的で、活性化合物又は化合物を賦形剤と組み込み、錠剤、カプセル剤、又はトローチ剤の形で使用することができる。薬剤適合性の結合剤及びアジュバント材料を組成物の一部分として含むことができる。
【0121】
錠剤、丸剤、カプセル剤、トローチ剤などは、下記の材料、又は同様の性質の化合物のいずれかを含有することができる。これらに限定されないが、トラガカントゴム、アカシア、コーンスターチ、ゼラチンなどの結合剤;微結晶セルロース、デンプン、又はラクトースなどの賦形剤;これらに限定されないが、アルギン酸やコーンスターチなどの崩壊剤;これに限定されないが、ステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤;これに限定されないが、コロイド状二酸化ケイ素などの流動促進剤;ショ糖やサッカリンなどの甘味剤;及びペパーミント、サリチル酸メチル、又は果物矯味剤などの矯味剤。
【0122】
用量単位形態がカプセル剤である場合、上記のタイプの材料に加えて、脂肪油などの液体担体を含有することができる。さらに、用量単位形態は、用量単位の物理的形態を改変する様々な他の材料、例えば砂糖及び他の腸溶剤のコーティングを含むことができる。化合物は、エリキシル剤、懸濁剤、シロップ剤、オブラート、チューインガムなどの成分として投与することもできる。シロップ剤は、活性化合物に加えて、甘味剤としてショ糖、並びにある種の防腐剤、染料、及び着色剤、及び矯味剤を含むことができる。
【0123】
活性材料を、所望の作用を損なわない他の活性材料、又は所望の作用を補足する材料と混合或いはブレンドすることもできる。
【0124】
非経口、皮内、皮下、又は局所適用に使用する液剤又は懸濁剤は、下記の成分のいずれかを含むことができる。:注射用水などの滅菌希釈液、生理食塩水溶液、不揮発性油、ゴマ油、ヤシ油、落花生油、綿実油などの天然植物油、又はオレイン酸エチルなどの合成脂肪ビヒクル、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、或いは他の合成溶媒;ベンジルアルコールやメチルパラベンなどの抗菌剤;アスコルビン酸や亜硫酸ナトリウムなどの酸化防止剤;エチレンジアミン四酢酸(EDTA)などのキレート化剤;酢酸塩、クエン酸塩、リン酸塩などの緩衝剤;及び塩化ナトリウムやデキストロースなどの等張化剤。非経口製剤を、ガラス、プラスチック、若しくは他の適切な材料で作製されたアンプル、使い捨て注射器、又はマルチドーズバイアル封入することができる。緩衝剤、防腐剤、酸化防止剤などを必要に応じて組み込むことができる。
【0125】
静脈内投与の場合、適切な担体には、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水(PBS);並びにグルコース、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、及びその混合物などの粘稠化剤及び可溶化剤を含有する溶液が含まれる。組織をターゲットにするリポソームを含むリポソーム懸濁剤も、薬剤として許容できる担体として適していることがある。これらは、例えば米国特許第4,522,811号に記載されている周知の方法に従って調製することができる。
【0126】
活性化合物は、化合物を持効性製剤やコーティングなど身体からの急速な放出から保護する担体を用いて調製することができる。このような担体には、移植、及びマイクロカプセル化送達システム、並びにコラーゲン、エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、ポリオルトエステル、ポリ乳酸など生分解性で生体適合性のポリマーなどの放出制御製剤が含まれるが、これらに限定されない。このような製剤の調製方法は当業者に知られている。
【0127】
本発明の化合物を、吸入、経口、又は鼻腔内、非経口(IV、IM、デポ−IM、SQ、及びデポ−SQ)、舌下、くも膜下腔内、局所、又は直腸投与することができる。当業者に知られている剤形は、本発明の化合物の送達に適している。
【0128】
本発明の化合物を経腸又は非経口投与することができる。経口投与の場合、本発明の化合物は、当業者によく知られているように経口投与用の通常の剤形で投与することができる。これらの剤形には、通常の固体単位剤形の錠剤及びカプセル剤、並びに液剤、懸濁剤、エリキシル剤などの液体剤形が含まれる。固体剤形を使用する場合、徐放性タイプであり、したがって本発明の化合物を1日1回又は2回しか投与する必要がないことが好ましい。
【0129】
経口剤形を、1日1、2、3、又は4回、又は必要に応じて対象に投与する。本発明の化合物を、1日3回以下、より好ましくは1回又は2回投与することが好ましい。したがって、本発明の化合物を経口剤形で投与することが好ましい。どんな経口剤形を使用しても、本発明の化合物を胃の酸性環境から保護するように設計されていることが好ましい。腸溶コーティングした錠剤は、当業者によく知られている。さらに、酸性の胃から保護するためにそれぞれコーティングした小球を充填したカプセル剤も、当業者によく知られている。
【0130】
好ましい一実施形態では、本発明の化合物を吸入剤の形で投与する。
【0131】
上記で指摘したように、不斉炭素原子が存在するか否かに応じて、本発明の化合物は、異性体の混合物として、ラセミ化合物として、又は純異性体の形で存在することができる。
【0132】
化合物の塩は、式Iの化合物の薬剤として許容でき、又は非毒性である塩であることが好ましい。単離及び精製の目的で、薬剤として許容できない塩を使用することも可能である。
【0133】
化合物の合成
様々な合成方法を使用して、本発明の化合物を作製することができる。いくつかのブレベトキシンが適切な出発材料である。適切な 方法は当技術分野で知られている。本発明の化合物をこのような出発材料から調製するための代表的な合成手順は、例えば、Mende,T.J.ら、Tetr.Lett.、1990年、31巻、37号、5307〜5310頁;Trainer,V.L.ら、Molec.Pharm.、1991年、40巻、6号、988〜994頁;Keck,G.E.ら、Tetrahedron Lett.、1987年、28巻、139〜142頁; Alvarez,E.ら、Chem.Rev.、1995年、95巻、1953〜1980頁;Reinら、1994年:(a)J.Org Chem.、59巻、2107〜2113頁;(b)J.Org.Chem.、59巻、2101〜2106頁に開示されている。これらの参考文献はそれぞれ、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。特定の手順に対して小さな修正を行って、本発明の化合物に到達できることを当業者は理解されよう。
【0134】
下記の実施例は、単に本発明を例示するためのものであり、本発明を範囲又は精神において限定するものと見なすべきではない。
【実施例】
【0135】
全般。使用する溶媒はすべて、HPLCグレードであった。ブレベトキシンは、藻類カレニアブレビス(Karenia brevis)(プチコディスクスブレビス(Ptychodiscus brevis)、及びギムノディニウムブレベ(Gymnodinium breve)とも呼ばれる)の実験室培養物からクロロホルム/メタノール抽出とTLCの組合せによって、精製した。ブレベトキシンを、このようなKブレビス(K.brevis)や他の赤潮有機体など自然の供給源から単離し精製することができる。適切な精製方法は、当技術分野でよく知られている。好ましくは、ブレベトキシンをKブレビス(K.brevis)培養物から抽出する。この藻類は、米国メイン州ウェストブースベイハーバー(West Boothbay Harbor、ME)のProvasoli Guillard National Center for Culture of Marine Phytoplanktonから、株整理番号CCMP718として入手できる。さらに、ブレベトキシンBの合成は、J.Am.Chem.Soc.、117巻、1171頁(K.C.Nicolaouら、1995年)に報告されている。
【0136】
出発材料(PbTx−2、−3、及び−9)、及び生成物を、逆相HPLC(85%定組成メタノール)で、Microsorb−MV、C−18カラム(5um、25−cm床)を使用して、通常通りに精製し、215又は195nMにおけるUV、及び/又は屈折率によって監視した。プロトンNMRスペクトルを、CDC13(CHC13内部標準)中、400MHzで記録した。質量スペクトルをDCI又はFABモードで実施した。カリフォルニア大学リヴァーサイド校(University of California、Riverside)の質量分析設備によって、高分解能質量スペクトルを得た。
【0137】
ブレベトキシン誘導体の合成
(PbTx−3に対して)10倍過剰のカルボニルジイミダゾール、及び対応する酸(安息香酸、α−ナフトエ酸、又はβ−ナフトエ酸)を乾燥ベンゼン中で、窒素下、室温で組み合わせた。溶液を30分間攪拌し、次いで5mLの反応バイアル中のPbTx−3に添加した。反応バイアルをシールし、混合物を80℃で終夜攪拌した。反応混合物を等体積(3×)の飽和重炭酸ナトリウム、等体積(3×)の10%HCIで洗浄し、真空下に蒸発させた。残渣をHPLCを使用して精製した。
【0138】
ベンゾイル−PbTx−3(1)。1H NMRでの診断用ピークは、87.44(2H,t,J=7.2Hz)、7.56(1H,t,J=7.2Hz)、8.061(2H,d,J=8.4Hz)、4.81(2H,dd,J=5.2Hz)(C42)を含む。C42メチレンは、通常はPbTx−3におけるその位置から低磁場へシフトし、これらのジアステレオトピックプロトンは、エステルではダブレットのダブレットに分かれるが、PbTx−3では、シングレットとして出現している。DCI MS(NH3):1002(M+1)。HRMS(FAB):CS7H、O、S(MH+)としての計算値、計算値1001.5262、実測値1001.5287。
【0139】
α−ナフトイル−PbTx−3(2)。H NMRでの診断用ピークは、88.93(1H,d,J=8.8Hz)、8.23(1H,d,J=8.8Hz)、8.03(1H,d,J=8.8Hz)、7.83(1H,d,J=8.8Hz)、7.64(1H,t,J=8.8Hz)、7.44(2H,m)、4.92(2H,dd,J=5.2Hz)を含む。DCI MS(NH3):1052(M+1)。HRMS(FAB):C6iH、90、5(MH+)としての計算値、計算値1051.5419、実測値1051.5367。
【0140】
β−ナフトイル−Pb7x−3(3)。1H NMRでの診断用ピークは、88.64(1H,s)、7.95(3H,m)、7.58(3H,m)4.89(1H,s)を含む。
【0141】
(実施例1)
PbTx−2のC−42のエステルへの酸化(1)。Coreyによって記述された手順に従って、活性化MnOを用いて、PbTx−2(4.8mg、5.37uM)を、シアノヒドリンを経由して対応するメチルエステル1に酸化した。反応混合物をセライトでろ過し、真空中で濃縮した。残渣を水(15mL)に取り込み、エーテル(3×15mL)で抽出した。エーテル相を真空中で蒸発させ、残渣をHPLCで精製すると、所望の生成物が3.624mg(73%)得られた。DCI MS(NH):925(M+1)、942(M+NH4)、906(MH20)。
【0142】
(実施例2)
カルボン酸(2)を生成するためのメチルエステル1の加水分解。メチルエステル1(3.759mg、4.068uM)を2mLのTHF/H0(50:50)に溶解した。KOH水溶液(0.4mL、10mg/mL)を添加し、反応混合物を周囲温度で2日間攪拌した。水(1mL)を添加し、混合物をエーテル(3×2mL)で抽出した。水相を10%HC1で酸性にし、酢酸エチル(3×2mL)で抽出し、有機相を真空中で蒸発させた。この残渣は、2つの生成物の混合物からなっていた。NMRデータを基準として、これらの2つの生成物は、無変化(intact)のラクトン環Aを有するC−42カルボン酸、及び加水分解されたラクトン環Aを有するC−42カルボン酸と思われる。残渣をTHF(1mL)に取り込み、触媒量のp−トルエンスルホン酸を添加した。混合物を1時間攪拌し、次いで真空中で蒸発させた。残渣を水(1mL)に取り込み、酢酸エチル(3×2mL)で抽出した。溶媒を真空中で蒸発させると、粗生成物3.469mg(93%)が得られた。残渣をHPLCで精製すると、2が1.019mg(28%)得られた。HNMR。DCI MS(NH3):911(M+1)、929(M+NH4)、892(M−H20)。
【0143】
【化54】

【0144】
(実施例3)
(3)を生成するためのPbTx−3のC−2、C−3二重結合の還元。Hudlickyの手順に従って、PbTx−3(4.00mg、4.46uM)、及びMg(約200mg、99.98%、カナダオンタリオ州ヘイリーのTimminco metals(Haley、Ontario、Canada)から)を真空中、Pで18時間乾燥した。メタノール(CaHを用いて新たに蒸留された3mL)を添加し、混合物を窒素下、室温(氷浴での冷却が必要であった)で2時間攪拌した。HC1(10%、10mL)を添加して、マグネシウムメトキシド及び残部のマグネシウムを溶解した。反応混合物を約5mLにまで濃縮し、エーテル(3×15mL)で抽出した。エーテル相を真空中で蒸発させ、残渣をHPLCで精製した。この単離した材料は、質量スペクトル及びNMRデータによって立証して、C−2、C−3二重結合が還元された所望の生成物、並びに二重結合が還元され、且つラクトンが開環してメチルエステルになった第2の生成物からなるものであった。この混合物をTHFに取り込み、少量のp−TsOH酸を添加した。混合物を1時間攪拌し、次いで真空中で蒸発させた。残渣を水(1mL)に取り込み、酢酸エチル(3×2mL)で抽出した。真空中で蒸発させると、3が3.256mg(81%)得られた。DCI MS(NH3):899(M+1)、916(M+NH,,)、880(M−H20)。HRMS(DCI):Cr、oH74014(MH+)としての計算値899.5156、実測値899.5128。
【0145】
(実施例4)
(4)を生成するためのPbTx−9のC−2、C−3二重結合の還元。PbTx−9(7.49mg、8.34AM)を3の調製について記述した手順に従って還元して、4を1.645mg(22%)得た。1H NMRスペクトルを補助資料に示す。DCI MS(NH3):901(M+1)、918(M+NH4)、882(M−H,O.HRMS(DCI):C6pHqgO14(MH+)としての計算値901.5313、実測値901.5323。
【0146】
【化55】

【0147】
(実施例5)
(5)及び(6)を形成するためのPbTx−3の水素化ホウ素ナトリウム還元。PbTx−3(3.451mg、3.85uM)を2.5mLのEtOHに溶解した。大過剰のNaBH(5mg)を1回で添加した。反応混合物を周囲温度で18時間攪拌した。過剰のNaBHは、10%HCIを慎重に添加することによって、分解した。反応混合物を真空中で、1mLまで濃縮し、CHC1(3×2mL)で抽出した。次いで、有機相を合わせ、蒸発乾固し、残渣/残基をHPLCで精製した。2本のピークをHPLCから収集した。第1のピークは、副生成物5,0.755mg(22%)であり、第2のピークは、主生成物6,1.042mg(30%)であった。化合物5。DCI MS(NH3):880,729。FAB MS(m−ニトロベンジルアルコールマトリックス):901(M+1)。
【化56】

【0148】
(実施例6)
(7)を生成するためのPbTx−3の接触還元。PbTx−3(1.8mg、2.00wM)をi−PrOH(1mL)に溶解した。酢酸(50AL)、及び触媒量の10% Pd担持活性炭を添加した。反応混合物を、Hの雰囲気中、周囲温度で24時間攪拌した。懸濁剤をセライトでろ過し、真空中で濃縮して、7を0.986mg(54%)得、さらに精製しなかった。DCI MS(NH3):903(M+1)、920(M+NH4)、894(M−H20)。HRMS(DCI):CrOH。8014(MH+)としての計算値903.5470、実測値903.5444。
【0149】
(実施例7)
PbTx−6を生成するためのPbTx−2のC−27、C−28二重結合のエポキシ化。小規模調製向けにAdaml7によって記述された手順に従って、ドライアイス冷却器に接続させた蒸留装置で、ジメチルジオキシランを発生させた。受器フラスコに、5.0mLのアセトン中PbTx−2(2.33mg)を加え、氷/塩浴で冷却した。反応をHPLCで監視した。PbTx−2のすべてが消費されると、アセトンを真空中で蒸発させ、残渣を1.0mLのメタノールに取り込み、HPLCで精製して、PbTx−6を2.25mg(95%)を得た。DCI MS(NH):911(M+1)、928(M+NH)、893(M−HO)。1H及び13C NMRは、Shimizuによって報告されたものと同一であった。
【0150】
(実施例8)
気道力学実験プロトコル
気道力学の測定−鎮静剤を投与していないヒツジを、カート中に腹臥位で、その頭部を固定して拘束した。鼻道を2%リドカイン溶液で局所麻酔した後、バルーンカテーテルを、一方の鼻孔に通して下部食道へ進める。フレキシブル気管支光ファイバースコープを使用して、動物に、カフ付き気管内チューブを他方の鼻孔に通して挿管する。胸腔内圧を、胃食道接合部から5〜10cmに配置された食道用バルーンカテーテル(1mLの空気を充填)を用いて推定する。この位置では、呼気終末時の胸腔内圧は、−2〜−5cmHOである。バルーンを配置すると、それは実験の期間、所定の位置にとどまるように確保される。気管側圧は、気管内チューブの先端を通り抜けて進め、それより遠位に配置させたサイドホール付きカテーテル(内側寸法、2.5m)を用いて測定する。気管内圧と胸腔内圧との圧差である肺内外圧差は、周波数9Hzまで電圧と電流の位相のずれを示さない差圧変換器付きカテーテルシステムを用いて測定する。肺抵抗(R)の測定では、気管内チューブの近位端を呼吸気流計(Fleisch、Dyna Sciences、米国ペンシルベニア州ブルーベル(Blue Bell、PA))に接続する。電流及び肺内外圧差の信号を、等容の技法によって、肺内外圧差、呼吸量(デジタル積分で得られた)、及び電流から、Rをオンラインで計算するためのコンピュータに連結させたオシロスコープレコーダで記録する。Rを決定する(Abrahamら、1994年)ため、5〜10回の呼吸の分析を用いる。
【0151】
エアゾール送達システム−エアゾールはすべて、使い捨て医用噴霧器(Raindrop(登録商標)、Puritan Bennett、米国カンサス州レネクサ(Lenexa、KS))を使用して発生させ、Andersenカスケードインパクターで決定して3.2μmの空気動力学的粒径(幾何標準偏差1.9)を有するエアゾールを提供する。噴霧器を、電磁弁、及び圧縮空気(20psi)の供給源からなる線量計システムに接続する。噴霧器のアウトプットは、一端をHarvard人工呼吸器(respirator)の吸気口に接続させたプラスチック製T字断片に向けた。電磁弁を、人工呼吸器の吸気サイクルの初めに1秒間作動させる。エアゾールは、1回呼吸量500mL、速度20回呼吸/分(Abrahamら、1994年)で送達した。
【0152】
気道応答性−気道応答性を評価するために、緩衝剤を吸入した直後、並びに増大する濃度のカルバコール(0.25、0.5、1.0、2.0、及び4.0w/v%の緩衝生理食塩水)を10回呼吸する各連続投与の直後にRを測定することによって、カルバコールに対する蓄積量応答曲線(cumulative dose response curve)を実施する。この誘発試験を、Rが生理食塩水後の値から400%を超えて上昇したとき、又は最高濃度のカルバコールが投与された後に中止する。蓄積量応答曲線から内挿して、Rを400%(PC400)上昇させる呼吸単位(BU)での蓄積カルバコール量を決定することによって、気道応答性を推定する。一呼吸単位(BU)は、1wt/vol%のカルバコールを含有するエアゾール溶液の一呼吸と定義する(Abrahamら、1994年)。
【0153】
鼻気道抵抗性−鼻気道抵抗性(NAR)は、改変されたマスク鼻気圧測定技法で測定する。ヒツジの頭部を、電流を測定するための呼吸気流計、及び鼻圧と口腔内圧の圧差を測定するための2つのカテーテルポートを含む、フェースプレート用のアッタチメントを有するプレキシガラスフードに入れる(Abrahamら、1998年)。
【0154】
気管粘液速度−ヒツジは、鼻道を2%リドカイン溶液で局所麻酔した後、6cm短縮した直径7.5cmの気管内チューブを経鼻挿管する。気管表面積の最大曝露を可能にするために、カフ付きチューブを、声帯のすぐ下(蛍光透視法で検証する)に配置する。TMVを、レントゲン写真技法によってin vivoで測定する。直径1mm、厚さ0.8mm、重量1.8mgの、10〜20枚の放射線不透過性テフロン(登録商標)/三酸化ビスマスディスクを、気管に気管内チューブを経由して吸入する。個々のディスクの頭側方向軸速度を、携帯型イメージ増倍管装置からビデオテープに記録する。個々のディスク速度は、1分間の観察期間中、各ディスクが移動した距離を測定することによって算出する。各実施について、個々のディスク速度の平均値を算出する。既知の長さの放射線不透過性の参照マーカーを含む襟は、ヒツジに着せ、蛍光透視装置に固有の拡大効果について補正するための標準物質として使用する(O’Riordanら、1997年)。
【0155】
統計分析−データが正規分布の場合、パラメトリック統計を用いる。データが正規分布に準拠していない場合、非パラメトリック統計を用いる。基本的な統計検定には、多点解析の場合は反復測定、適切な単点解析の場合は対応のない又は対応のあるt検定を伴なう分散分析(ANOVA)、即ち一元配置分散分析又は二元配置分散分析が含まれる。これらの検定について非パラメトリックの対応物は、a)対応のないt検定に対応するマンホイットニーの検定、b)対応のあるt検定に対応するウィルコクソンの符号付順位検定、c)関連のある標本のためのフリードマンの分散分析、即ち乱塊法、d)小ブロック(n<4)での使用を除く、クエイド検定、又は乱塊法検定、e)関連のない標本のためのANOVAであるクラスカルウォリスの検定、及びf)Newman−Kuelsパラメトリック対検定に類似している非パラメトリック対比較である。適用できる場合、最小二乗法で線形回帰分析を行い、スペアマンのρ検定で相関を検定する。すべての研究について、両側検定でp<0.05として有意性が認められる(Conover、1980年)。
【0156】
具体的で且つ好ましい様々な実施形態及び技法を参照して、本発明を記述した。しかし、本発明の精神及び範囲内にとどまりながら多くの変形及び修正を行うことができると理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0157】
【図1】意識のあるアレルギーヒツジにおいて、PbTx−2及びPbTx−3が気管粘液速度(TMV)に及ぼす効果を対照(ビヒクル)と比べて示す。PbTx−2は、比較的不活性であったが、PbTx−3は、TMVについて急速で顕著な低下をもたらし、最高2時間維持された。値は、平均値±標準誤差である。
【図2】意識のあるヒツジにおいて、用量10pg及び100pgのβ−ナフトイル−PbTx−3誘導体が気管粘液速度(TMV)に及ぼす効果を示す。10pg(n=2)のβ−ナフトイル誘導体の効果は、対照(ビヒクル)とほぼ同じであった。100pg(n=4)では、β−ナフトイル誘導体は、急速にTMVを上昇させることができ、約1時間持続させることができる。値は、平均値±標準誤差である。
【図3】意識のあるヒツジにおいて、PbTx−3(呼吸数20回、10pg/mL、n=4)、並びに用量10pg(n=2)及び100pg(n=4)のβ−ナフトイル−PbTx−3アンタゴニストが気管粘液速度に及ぼす効果の差を示す。値は、平均値±標準誤差である。各用量のβ−ナフトイル−PbTx−3アンタゴニストを投与することによって、PbTx−3に比べて、TMVが上昇した。値は、平均値±標準誤差である。
【図4】意識のあるヒツジにおいて、β−ナフトイル−PbTx−3誘導体が、PbTx−2によって誘導された気管支収縮に及ぼす効果を示す。呼吸数20回のPbTx−2の投与が増えると、肺気道抵抗(RL)の増大が生じた。PbTx−2を投与する前に、動物を、呼吸数20回、10pg/mLのβ−ナフトイル−PbTx−3で15分間前処置すると、PbTx−2によって誘導される気管支収縮が阻止された。4〜6匹のヒツジについて、値は、平均値±標準誤差である。
【図5】意識のあるヒツジにおいて、β−ナフトイル−PbTx−3誘導体が、PbTx−3によって誘導される気管支収縮に及ぼす効果を示す。呼吸数20回のPbTx−3の投与が増えると、肺気道抵抗(RL)の増大が生じた。PbTx−3を投与する前に、動物を、呼吸数20回、10pg/mLのβ−ナフトイル−PbTx−3で15分間前処置すると、PbTx−3によって誘導される収縮筋応答が阻止された。PbTx−3を投与する前に、動物を、呼吸数20回、100pg/mLのβ−ナフトイル−PbTx−3で15分間前処置すると、PbTx−3によって誘導される気管支収縮の抑制が増大される。4〜6匹のヒツジについて、値は、平均値±標準誤差である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物
【化1】


[式中、
Aは、
【化2】


であり、
Rは、C〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキルカルボニル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキルエステル、C〜Cアルケニルエステル、アミノ、アミド、アリールエステル、シクロアルキルエステル、シクロアルケニルエステル、プリニル、ピリミジニル、ヘテロシクリル、アリール、又はヘテロアリールであり、
は、H、又は−(CO)CHであり、
及びRはそれぞれ出現するたびに独立に、
【化3】


であり、
或いはORとORは一緒になって式(Ia)の6員環
【化4】


[式中、Xは、CH、C(O)、又はCH(CH)であり、
括弧付きの破線の結合は、骨格への結合を示す]を形成することができ、
Yは、CH=CH、C(O)、CH(CH)、又はCHであり、
nは、1又は0であり、
但し、ORとORは一緒になって式(Ia)の環を形成する場合、Xは、C=Oであり、二重結合が存在し;Aは
【化5】


であり、YはCH=CHであり、且つRはHであり、且つnは1である場合、Rは
【化6】


ではないことを条件とする]、
或いは薬剤として許容できるその塩、溶媒和物、エステル、アミド、水和物、複合体、又はそれらの組合せ。
【請求項2】
Rが、
【化7】


である請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
及びRはそれぞれ独立に、
【化8】


である請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
とRが一緒になって式(Ia)の環を形成する請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
とRが一緒になって
【化9】


[式中、括弧付きの破線の結合は、骨格への結合点を示す]
を形成する請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
化合物が式(II)
【化10】


を有する請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
化合物が
【化11−1】


【化11−2】


[式中、Rは、C〜Cアルカノイル、C〜Cアルケノイル、アロイル、シクロアルカノイル、シクロアルケノイル、プリノイル、又はピリミジノイルであり、

【化12】


である]
である請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
次式の請求項1に記載の化合物。
【化13】

【請求項9】
次式の請求項1に記載の化合物。
【化14】

【請求項10】
次式の請求項1に記載の化合物。
【化15】

【請求項11】
式(III)の化合物
【化16】


[式中、
Rは、H、OH、ハロゲン、C〜C低級アルキル、C〜Cアルキルエステル、C〜Cアルケニルエステル、アミノ、アミド、アルデヒド、アリールエステル、シクロアルキルエステル、シクロアルケニルエステル、プリニル、ピリミジニル、ヘテロシクリル、アリール、又はヘテロアリールであり、
Yは、C=O、CH=CH、CHCH、又はCHであり、
nは、1又は0である]、
或いは薬剤として許容できるその塩、溶媒和物、水和物、アミド、エステル、複合体、又はそれらの組合せ。
【請求項12】
式(IV)の請求項11に記載の化合物。
【化17】

【請求項13】
次式を有する請求項12に記載の化合物。
【化18】

【請求項14】
次式を有する請求項12に記載の化合物。
【化19】

【請求項15】
次式を有する請求項12に記載の化合物。
【化20】

【請求項16】
次式を有する請求項12に記載の化合物。
【化21】

【請求項17】
次式を有する請求項12に記載の化合物。
【化22】

【請求項18】
次式を有する請求項12に記載の化合物。
【化23】

【請求項19】
請求項1に記載の化合物、或いは薬剤として許容できるその塩、エステル、アミド、溶媒和物、水和物、複合体、又は組合せ;及び少なくとも1つの薬剤として許容できる担体、賦形剤、溶媒、アジュバント、又は希釈剤を含む医薬製剤。
【請求項20】
単位剤形である請求項19に記載の医薬製剤。
【請求項21】
請求項11に記載の化合物、或いは薬剤として許容できるその塩、エステル、アミド、溶媒和物、水和物、複合体、又は組合せ、及び少なくとも1つの薬剤として許容できる担体、賦形剤、溶媒、アジュバント、又は希釈剤を含む医薬製剤。
【請求項22】
単位剤形である請求項21に記載の医薬製剤。
【請求項23】
対象における粘液輸送低下を伴なう疾患の治療方法であって、このような治療を必要としている対象に、治療有効量の式Xの化合物、或いは薬剤として許容できるその塩、溶媒和物、水和物、エステル、アミド、複合体、又はそれらの組合せを投与することを含み、式Xが
【化24】


[式中、
Aは、
【化25】


であり、
Rは、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキルエステル、C〜Cアルケニルエステル、アミノ、アミド、アリールエステル、シクロアルキルエステル、シクロアルケニルエステル、プリニル、ピリミジニル、ヘテロシクリル、アリール、又はヘテロアリールであり、
は、H、又は−(CO)CHであり、
及びRはそれぞれ出現するたびに独立に、
【化26】


であり、
或いはORとORは一緒になって式(Ia)の6員環
【化27】


[式中、Xは、CH、C=O、又はCH(CH)であり、
括弧付きの破線の結合は、骨格への結合を示す]
を形成することができ、
Yは、CH=CH、C=O、CHCH、又はCHであり、
nは、1又は0である]
である方法。
【請求項24】
対象における粘液輸送低下を伴なう疾患の治療方法であって、このような治療を必要としている対象に、治療有効量の請求項11に記載の化合物、或いは薬剤として許容できるその塩、溶媒和物、水和物、エステル、アミド、複合体、又はそれらの組合せを投与することを含む方法。
【請求項25】
治療有効量が、1日当たり約0.1pg〜約100mgの用量で投与される請求項23に記載の方法。
【請求項26】
治療有効量が、1日当たり約0.1pg〜約10μgの用量を含む請求項25に記載の方法。
【請求項27】
治療有効量が、1日当たり約0.1pg〜約100mgの用量を含む請求項24に記載の方法。
【請求項28】
慢性気道閉塞、喘息、肺疾患、肺感染、又は嚢胞性線維症を有する、或いは発症するリスクが高まっている対象の治療方法であって、このような治療を必要としている対象に、治療有効量の式Xの化合物、或いは薬剤として許容できるその塩、溶媒和物、水和物、エステル、アミド、複合体、又はそれらの組合せを投与することを含み、式Xが
【化28】


[式中、
Aは、
【化29】


であり、
Rは、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキルエステル、C〜Cアルケニルエステル、アミノ、アミド、アリールエステル、シクロアルキルエステル、シクロアルケニルエステル、プリニル、ピリミジニル、ヘテロシクリル、アリール、又はヘテロアリールであり、
は、H、又は−(CO)CHであり、
及びRはそれぞれ出現するたびに独立に、
【化30】


であり、
或いはORとORは一緒になって式(Ia)の6員環
【化31】


[式中、Xは、CH、C=O、又はCH(CH)であり、
括弧付きの破線の結合は、骨格への結合を示す]
を形成することができ、
Yは、CH=CH、C=O、CHCH、又はCHであり、
nは、1又は0である]
である方法。
【請求項29】
慢性気道閉塞、喘息、肺疾患、肺感染、又は嚢胞性線維症を有する、或いは発症するリスクが高まっている対象の治療方法であって、このような治療を必要としている対象に、治療有効量の請求項11に記載の化合物、或いは薬剤として許容できるその塩、溶媒和物、エステル、アミド、水和物、複合体、又はそれらの組合せを投与することを含む方法。
【請求項30】
治療有効量が、1日当たり約0.1pg〜約100mgの用量で投与される請求項28に記載の方法。
【請求項31】
治療有効量が、1日当たり約0.1pg〜約100mgの用量を含む請求項29に記載の方法。
【請求項32】
細胞における粘液輸送の調節方法であって、細胞を、有効量の式Xの化合物、或いは薬剤として許容できるその塩、溶媒和物、水和物、エステル、アミド、複合体、又はそれらの組合せと接触させることを含み、式Xが
【化32】


[式中、
Aは、
【化33】


であり、
Rは、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキルエステル、C〜Cアルケニルエステル、アミノ、アミド、アリールエステル、シクロアルキルエステル、シクロアルケニルエステル、プリニル、ピリミジニル、ヘテロシクリル、アリール、又はヘテロアリールであり、
は、H、又は−(CO)CHであり、
及びRはそれぞれ出現するたびに独立に、
【化34】


であり、
或いはORとORは一緒になって式(Ia)の6員環
【化35】


[式中、Xは、CH、C=O、又はCH(CH)であり、
括弧付きの破線の結合は、骨格への結合を示す]
を形成することができ、
Yは、CH=CH、C=O、CHCH、又はCHであり、
nは、1又は0である]
である方法。
【請求項33】
細胞における粘液輸送の調節方法であって、細胞を、有効量の請求項11に記載の化合物、或いは薬剤として許容できるその塩、溶媒和物、エステル、アミド、水和物、複合体、又はそれらの組合せと接触させることを含む方法。
【請求項34】
対象における粘液線毛機能不全を伴なう疾患の治療方法であって、このような治療を必要としている対象に、治療有効量の式Xの化合物、或いは薬剤として許容できるその塩、溶媒和物、水和物、エステル、アミド、複合体、又はそれらの組合せを投与することを含み、式Xが、
【化36】


[式中、
Aは、
【化37】


であり、
Rは、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキルエステル、C〜Cアルケニルエステル、アミノ、アミド、アリールエステル、シクロアルキルエステル、シクロアルケニルエステル、プリニル、ピリミジニル、ヘテロシクリル、アリール、又はヘテロアリールであり、
は、H、又は−(CO)CHであり、
及びRはそれぞれ出現するたびに独立に、
【化38】


であり、
或いはORとORは一緒になって式(Ia)の6員環
【化39】


[式中、Xは、CH、C=O、又はCH(CH)であり、
括弧付きの破線の結合は、骨格への結合を示す]
を形成することができ、
Yは、CH=CH、C(O)、CHCH、又はCHであり、
nは、1又は0である]
である方法。
【請求項35】
対象における粘液線毛機能不全を伴なう疾患の治療方法であって、このような治療を必要としている対象に、治療有効量の請求項11に記載の化合物、或いは薬剤として許容できるその塩、溶媒和物、エステル、アミド、水和物、複合体、又はそれらの組合せを投与することを含む方法。
【請求項36】
次式の化合物
【化40】


[式中、
Aは、
【化41】


であり、
Rは、アリール、又はヘテロアリールであり、それぞれは、独立にC〜C10アルキル、C〜Cシクロアルキル、C〜Cシクロアルキル(C〜C)アルキル、C〜Cシクロアルキル(C〜C)アルコキシ、C〜C10アルコキシ、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、アミノ、モノ(C〜C)アルキルアミノ、ジ(C〜C)アルキルアミノ、C〜C10アルケニル、C〜C10アルキニル、C〜Cハロアルキル、C〜Cハロアルコキシ、アミノ(C〜C)アルキル、モノ(C〜C)アルキルアミノ(C〜C)アルキル、又はジ(C〜C)アルキルアミノ(C〜C)アルキルである最高5個の基で置換されており、
Yは、CH=CH、C(O)、CH(CH)、又はCHであり、
nは、1又は0である]、
或いは、薬剤として許容できるその塩、溶媒和物、アミド、エステル、水和物、複合体、又はそれらの組合せ。
【請求項37】
Aが、
【化42】


であり、Yが、CH=CHである請求項36に記載の化合物、エステル、又は塩。
【請求項38】
nが0であり、且つRがベンゾイル、又はナフトイルであり、それぞれが、1〜4個のRで置換されており、
がそれぞれ独立に、C〜C10アルキル、C〜Cシクロアルキル、C〜Cシクロアルキル(C〜C)アルキル、C〜Cシクロアルキル(C〜C)アルコキシ、C〜C10アルコキシ、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、アミノ、モノ(C〜C)アルキルアミノ、ジ(C〜C)アルキルアミノ、C〜C10アルケニル、C〜C10アルキニル、C〜Cハロアルキル、C〜Cハロアルコキシ、アミノ(C〜C)アルキル、モノ(C〜C)アルキルアミノ(C〜C)アルキル、又はジ(C〜C)アルキルアミノ(C〜C)アルキルであり、
或いは任意の隣接する2つのR基は、これらが結合している原子と一緒になって部分飽和した5〜8員環を形成し、5〜8員環は1〜3個のRで場合によっては置換されており、
はそれぞれ、C〜C10アルキル、C〜Cシクロアルキル、C〜Cシクロアルキル(C〜C)アルキル、C〜Cシクロアルキル(C〜C)アルコキシ、C〜C10アルコキシ、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、アミノ、モノ(C〜C)アルキルアミノ、ジ(C〜C)アルキルアミノ、C〜C10アルケニル、C〜C10アルキニル、C〜Cハロアルキル、C〜Cハロアルコキシ、アミノ(C〜C)アルキル、モノ(C〜C)アルキルアミノ(C〜C)アルキル、又はジ(C〜C)アルキルアミノ(C〜C)アルキルである
請求項37に記載の化合物、エステル、又は塩。
【請求項39】
Rが、1〜3個のRで置換されたベンゾイルであり、Rがそれぞれ独立に、C〜C10アルキル、C〜Cシクロアルキル、C〜Cシクロアルキル(C〜C)アルキル、C〜Cシクロアルキル(C〜C)アルコキシ、C〜C10アルコキシ、ハロゲン、モノ(C〜C)アルキルアミノ、ジ(C〜C)アルキルアミノ、C〜C10アルケニル、C〜C10アルキニル、C〜Cハロアルキル、C〜Cハロアルコキシ、モノ(C〜C)アルキルアミノ(C〜C)アルキル、又はジ(C〜C)アルキルアミノ(C〜C)アルキルである請求項38に記載の化合物、エステル、又は塩。
【請求項40】
Rが、1〜2個のRで置換されているベンゾイルであり、Rがそれぞれ独立に、C〜C10アルキル、C〜Cシクロアルキル、C〜Cシクロアルキル(C〜C)アルキル、C〜Cシクロアルキル(C〜C)アルコキシ、C〜C10アルケニル、又はC〜C10アルキニルである請求項38に記載の化合物、エステル、又は塩。
【請求項41】
Rが、1〜3個のRで置換されているナフトイルであり、Rがそれぞれ独立に、C〜C10アルキル、C〜Cシクロアルキル、C〜Cシクロアルキル(C〜C)アルキル、C〜Cシクロアルキル(C〜C)アルコキシ、C〜C10アルコキシ、ハロゲン、モノ(C〜C)アルキルアミノ、ジ(C〜C)アルキルアミノ、C〜C10アルケニル、C〜C10アルキニル、C〜Cハロアルキル、C〜Cハロアルコキシ、モノ(C〜C)アルキルアミノ(C〜C)アルキル、又はジ(C〜C)アルキルアミノ(C〜C)アルキルである請求項38に記載の化合物、エステル、又は塩。
【請求項42】
Rが、1〜2個のRで置換されているナフトイルであり、Rがそれぞれ独立に、C〜C10アルキル、C〜Cシクロアルキル、C〜Cシクロアルキル(C〜C)アルキル、C〜Cシクロアルキル(C〜C)アルコキシ、C〜C10アルケニル、又はC〜C10アルキニルである請求項38に記載の化合物、エステル、又は塩。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2007−505926(P2007−505926A)
【公表日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−527089(P2006−527089)
【出願日】平成16年9月20日(2004.9.20)
【国際出願番号】PCT/US2004/030637
【国際公開番号】WO2005/028482
【国際公開日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(506092651)ユニバーシティー オブ ノース カロライナ アット ウィルミントン (2)
【Fターム(参考)】