説明

嚥下経口品及びパッケージ入り嚥下経口品

【課題】例えば嚥下障害者であっても容易に嚥下できる嚥下経口品及びパッケージ入り嚥下経口品を提供する。
【解決手段】食用ゼリーAで形成した嚥下ゼリー10に、嚥下に必要な感覚刺激を増大させる感覚刺激増大手段として、味覚による刺激を増大する酸味料B及び辛味料C、嗅覚による刺激を増大するハーブエキスD、視覚による刺激して注意を喚起する赤色着色料E、温冷覚による刺激を増大するキシリトールパウダFやメントール、痛覚による刺激を増大する辛味料C、触覚・圧覚による刺激を増大する押圧凸部11を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、嚥下障害者であっても容易に嚥下することのできる嚥下経口品、及びその嚥下経口品が収容されたパッケージ入り嚥下経口品に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、老化やその他の疾病によって嚥下機能が衰えたり、嚥下機能に障害が生じた嚥下障害者に薬剤等を服用させる手段として、錠剤、丸剤、カプセル剤などの固形薬剤、あるいは粉末、顆粒状等の薬剤を服用し易いように、薬剤を食物摂取抵抗の少ないゲル状経口物に入れて、該薬剤をゲル状経口物ごと服用させる方法が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
この場合、ゲル状経口物は薬剤を内部に収容し得る大きさと、飲込み易い楕円形や球形のように角のない粒状を有し、さらに外面の一部に切込んだ薬剤押込み用の切込み部とを有している。そして、この切込み部より薬剤をゲル状経口物の内部に押し込んで一体化させた状態で服用する。
【0004】
しかし、食物を飲込むのが困難な嚥下障害者の多くは視覚、嗅覚並びに口腔内の感覚閾値が何十倍にも上昇する、すなわち感覚が鈍くなるとともに、認知機能も低下している。そのため、角のない粒状のゲル状経口物であっても、口腔や咽頭での残留や誤嚥を起こす可能性が高かった。
【0005】
【特許文献1】特開2004−89160号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明は、例えば嚥下障害者であっても容易に嚥下できる嚥下経口品及びパッケージ入り嚥下経口品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、ゲル状経口物で形成し、嚥下に必要な感覚刺激を増大させる感覚刺激増大手段を備えた嚥下経口品であることを特徴とする。
上記ゲル状経口物は、ゼラチンや寒天をゲル化、すなわち凝固したゼリー状の食品であることを含む。
【0008】
上記嚥下は、食物等の経口物を認識して口に取込み、該経口物が胃に至るまでの一連の動作であることを示し、詳しくは、認知期、食塊形成期、口腔期、咽頭期並びに食道期からなる一連の過程における各動作及びその動作全体であることを指す。
上記嚥下に必要な感覚刺激は、視覚、嗅覚及び味覚で構成される特殊感覚、並びに温冷覚、痛覚、触覚、及び圧覚による体性感覚への刺激であることを含む。
【0009】
ゲル状経口物の嚥下に必要な感覚刺激を増大する上記構成により、脳での知覚、認知の賦括を亢進することとなり、各嚥下動作を実施する各器官を直接的、或いは間接的に活性化することができる。したがって、例えば、嚥下障害者であっても、嚥下機能が向上し、容易に嚥下することができる。
【0010】
この発明の態様として、前記感覚刺激増大手段を、味覚による刺激を増大する味覚刺激増大手段、嗅覚による刺激を増大する嗅覚刺激増大手段、視覚による刺激を増大する視覚刺激増大手段、温冷覚による刺激を増大する温冷覚刺激増大手段、痛覚による刺激を増大する痛覚刺激増大手段、並びに、触覚及び圧覚のうち少なくとも一方による刺激を増大する触覚・圧覚刺激増大手段のうち少なくともひとつで構成することができる。
【0011】
上記味覚による刺激を増大する味覚刺激増大手段は、強酸味となる酸味料、強甘味となる甘味料、強辛味となる辛味料、強塩味となる塩味料及び強うま味となるうま味料等の食品添加物や調味料等で構成することを含む。
【0012】
上記嗅覚による刺激を増大する嗅覚刺激増大手段は、アロマ効果のあるハーブエキスや香料等で構成することを含む。
上記視覚による刺激を増大する視覚刺激増大手段は、視認者の注意を強く喚起し、認知度が高い、例えば危険色等の色彩や輝度で構成することを含む。
【0013】
上記温冷覚による刺激を増大する温冷覚刺激増大手段は、吸熱、発熱、蓄熱効果による温度変化を付与すること、活性化温度閾値を上昇させること、或いは直接刺激により刺激を付与することで温冷覚による刺激を増大させる手段であることを含む。
【0014】
上記痛覚による刺激を増大する痛覚刺激増大手段は、痛みとして知覚される辛味や、粘膜刺激を引起こす吸熱、発熱及び蓄熱効果による温度変化を付与する物質や、物理的に痛みを付与する円錐や角錐型等の凸部等の形状で構成することを含む。
【0015】
上記触覚及び圧覚のうち少なくとも一方による刺激を増大する触覚・圧覚刺激増大手段は、接触した部分の触覚・圧覚による刺激を増大させる凹凸形状や表面加工や、粘膜刺激作用のある強辛味、強酸味、強塩味、吸熱、発熱及び蓄熱効果による温度変化を付与する物質等で構成することを含む。
【0016】
これにより、各感覚のそれぞれ、或いは組み合わせて感覚刺激を増大することができる。したがって、例えば、嚥下障害者であっても、正常に機能している器官を積極的に活性化させて嚥下を容易にすることができる。
また、例えば、機能低下している器官を活性化させることによって、嚥下動作を担う器官全体の動作バランスを整えて、正常な嚥下を促すこともできる。
【0017】
また、この発明の態様として、前記味覚刺激増大手段を、味覚細胞への刺激を増大させる酸味を有する酸味材で構成し、前記嗅覚刺激増大手段を、嗅細胞に刺激を付与し、嗅神経及び脳を介して副交感神経を活性化する副交感神経活性臭気で構成し、前記視覚刺激増大手段を、視認者の注意を喚起する注意喚起色で構成し、前記温冷覚刺激増大手段を、嚥下動作における各器官において吸熱反応し、活性化温度閾値を上昇させ、或いは直接刺激により刺激を付与する糖アルコール、又は薄荷成分で構成し、前記痛覚刺激増大手段を、痛覚受容器へ痛みとしての刺激を付与する辛味を有する辛味材で構成し、前記触覚・圧覚刺激増大手段を、嚥下動作における各器官との接触面における接触感覚による刺激を増大させる凹凸で構成することができる。
【0018】
前記味覚刺激増大手段として、味覚細胞への刺激を増大させる酸味を有する酸味材を嚥下経口品に備えることによって、唾液の分泌を増大させるとともに、嚥下反射を促すことができ、嚥下経口品の嚥下を容易にすることができる。また、酸味材自体が食用品であるため、副作用なく唾液の分泌を増大させるとともに、嚥下反射を促すことができ、利用者の満足度を向上することができる。
【0019】
また、前記嗅覚刺激増大手段として、嗅細胞に刺激を付与し、嗅神経及び脳を介して副交感神経を活性化する副交感神経活性臭気を嚥下経口品に備えることによって、副交感神経が活性化し、唾液の分泌を増大させ、嚥下経口品の嚥下を容易にすることができる。なお、副交感神経活性臭気は天然物であるラベンダー等のハーブの臭気であることを含む。
【0020】
視認者の注意を喚起する注意喚起色は、視認者に対し、リッカード尺度等を用いて各色の潜在危険度を評定したときに危険度の高い色彩による着色であることを含む。
【0021】
前記視覚刺激増大手段として、視認者の注意を喚起する注意喚起色を嚥下経口品に備えることによって、当該嚥下経口物を視認した利用者の注意が喚起され、嚥下経口物に対する認知力が賦括される。なお、日本工業規格(JIS)や国際標準化機構(ISO)は、「赤」を高度の危険、「黄」を注意として安全色に採用している。したがって、例えば、嚥下に適した量の唾液を分泌する等の嚥下動作を担う各器官の機能を向上させ、嚥下経口品の嚥下を容易にすることができる。
【0022】
前記温冷覚刺激増大手段として、糖アルコールを備えたことにより、嚥下経口品を口に入れた際に、口腔内の水分と糖アルコールとが反応して、口腔内で吸熱反応が生じる。
【0023】
また、薄荷成分を備えたことにより、涼冷刺激受容体(TRPM8等)に刺激を付与したり、活性化温度を上昇させること、すなわちより高い温度で冷たく感じることになる。
したがって、唾液腺や、嚥下動作を担う口腔内の器官を活性化し、嚥下経口品の嚥下を容易にすることができる。
【0024】
なお、上記薄荷成分としては、1−menthol(1−メントール)、1−mentho(1−メント)、又は1−carvone(1−カルボン)、或いは3−octanol(オクタノール)、isomenthone(イソメントン)又はmenthylacetate(メンチルアセテート)等の合成薄荷であることを含む。
【0025】
前記痛覚刺激増大手段として、痛覚刺激を付与する粘膜刺激作用のある強辛味、強酸味、強塩味、吸熱、発熱及び蓄熱効果による温度変化を付与する物質や辛味を有する辛味材等を嚥下経口品に備えることによって、痛みを緩和するために唾液の分泌を増大させるとともに、嚥下反射を促すことができ、嚥下経口品の嚥下を容易にすることができる。また、辛味材自体が食用品であるため、副作用なく唾液の分泌を増大させるとともに、嚥下反射を促すことができ、利用者の満足度を向上することができる。
【0026】
前記触覚・圧覚刺激増大手段として、嚥下動作における各器官との接触面における接触感覚による刺激を増大させる凹凸や粘膜刺激作用のある強辛味、強酸味、強塩味、吸熱、発熱及び蓄熱効果による温度変化を付与する物質を嚥下経口品に備えることによって、唾液の分泌を増大させるとともに、嚥下反射を促すことができ、嚥下経口品の嚥下を容易にすることができる。
【0027】
また、これら各感覚刺激増大手段を単独で、或いは組み合わせて嚥下経口品に備えたことにより、例えば、嚥下に必要な感覚機能、認知機能、或いは運動機能が低下している場合、適した感覚刺激増大手段を用いることができ、したがって、感覚受容器→認知→運動、あるいは感覚受容器→運動という一連の嚥下機能を賦括することができる。
【0028】
また、この発明の態様として、前記ゲル状経口物が、融点が体温より低く、凝固点が常温以上であることを特徴とすることができる。
前記ゲル状経口物は、該ゲル状経口物がゲル化した場合はゼリー状、換言するとゲル状を有し、体温近くなると溶けてゾル状になるように温度によって状態が変化する特有の条件を有し、例えば凝固点が25度、融点が30度の性質を有するゼラチンで製作できる経口物であることを含む。
【0029】
これにより、ゲル状経口物は嚥下者の体温で表面が溶けてゾル状となり、口腔や咽頭を変形しながら滑らかに通過するため、誤嚥の可能性を低減できる。
また、わずかな可能性により誤嚥が生じた場合であっても、ゲル状経口物が体温で溶けるため誤嚥による窒息を回避することができる。なお、変形しながら滑らかに通過するゲル状経口物の変形とは、ゼリー状である食品の素材の変形性に由来する変形、及び体温で表面が溶けたことによる変形であることを含む。
【0030】
また、この発明の態様として、長尺形状で形成することができる。
前記略薄板状の長尺体は、矩形断面や楕円断面の薄板状の直尺体であることを含み、また、嚥下を構成する各運動タイミングのずれや嚥下反射の遅延による嚥下経口品の残留や誤嚥の防止のため、1個当り2〜3g程度の大きさの薄板形状に形成したものであることを含む。
【0031】
この薄板状の長尺体の形状は、口腔や咽頭の狭いスペースを通過しやすく、梨状窩の形状にフィットしてとどまり易い。つまり、嚥下経口品は咽喉の通りがスムーズになり、例えば嚥下障害者であっても、口腔、咽頭の狭いスペースを通過し易い。したがって、経口物を口腔から咽頭と食道を経て、胃へ送り込む嚥下運動における嚥下経口品の残留や誤嚥の可能性は低く、容易に嚥下経口品を飲込むことができる。
【0032】
また、嚥下経口品を略薄板状の長尺体に形成したため、咀嚼せずにそのままの形状で嚥下できるため、咀嚼機能が低下した食塊形成困難者であっても嚥下でき、利用者の満足度を向上することができる。
【0033】
また、この発明の態様として、薬剤及び栄養剤のうち少なくとも一方を、
前記長尺体内部に内包或いは含有することを特徴とすることができる。
上記長尺体の内部に内包は、顆粒又は錠剤状の薬剤又は栄養剤の少なくとも一方の周囲をゲル状経口物で囲繞するような態様であることを含み、前記長尺体内部に内包或いは含有するは、粉末状又は液状の薬剤又は栄養剤の少なくとも一方をゲル状経口物に添加するような態様であることを含む。
【0034】
これによると、嚥下経口品自体が薬剤や栄養食品となり、嚥下経口品を飲込むことによって薬剤及び栄養剤のうち少なくとも一方を服用することができる。したがって、嚥下障害者であっても薬剤や栄養食品を嚥下経口品として容易に飲込むことができる。
【0035】
また、この発明は、上記嚥下経口品と、該嚥下経口品を収容するパッケージとからなるパッケージ入り嚥下経口品であることを特徴とする。
この発明によると、嚥下経口品はパッケージに包まれているので外界と遮断された密封状態を保ち衛生的である。したがって、例えば、嚥下経口品を携帯し、必要に応じて嚥下経口品を飲込むことができ、利用者の利便性を向上することができる。
【0036】
また、融点が体温より低く、凝固点が常温以上であるゲル状経口物を用いた場合であっても、前記パッケージ入り嚥下経口品の保管場所によっては、ゲル状経口物が使用前に温度変化の影響を受けて溶けることが考えられるが、冷やせば再びパッケージ内で元通りゲル化するので問題はない。
【発明の効果】
【0037】
この発明によれば、例えば嚥下障害者であっても容易に嚥下できる嚥下経口品及びパッケージ入り嚥下経口品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
この発明の一実施形態を以下図面と共に説明する。
嚥下ゼリー10の底面側からの斜視図を示す図1、パッケージ20の斜視図を示す図2、パッケージ入り嚥下ゼリー1の製造について説明する説明図を示す図3、嚥下動作のフローを説明する説明図を示す図4、嚥下ゼリー10による感覚刺激増大作用について説明する説明図を示す図5、6とともに、パッケージ入り嚥下ゼリー1及び嚥下ゼリー10について説明する。
【0039】
パッケージ入り嚥下ゼリー1は、食用ゼリーAで構成された嚥下ゼリー10と、該嚥下ゼリー10をパッケージするパッケージ20とで構成している。
嚥下ゼリー10は、食用ゼリーAを薄板状の略長方体形状に形成し、該長方体形状の底面10aに押圧凸部11を備えるとともに、長手側面10bから内部に錠剤30を内包するためのスリット12を備えている。
【0040】
詳述すると、上記嚥下ゼリー10の略長方体形状は普通人が嚥下し易い1個当り2〜3g程度の大きさに形成されている。そして、その略直方体の底面に備えられた各押圧凸部11は下向きの略四角錐体で構成され、長手方向に5列、短手方向に3又は2行の千鳥配置で配列されている。
【0041】
また、スリット12は長手側面10bに備えられ、嚥下ゼリー10内部まで伸びる切込みで構成されており、平面視円形のタブレット状に形成された総合感冒薬である上記錠剤30を、嚥下ゼリー10内部のスリット12内包している。
【0042】
なお、嚥下ゼリー10は食用ゼリーAに混入された赤色着色料Eによって、半透明の赤色で構成されている。また、底面10a、長手側面10b、押圧凸部11にはキシリトールパウダFがまぶされている。また、嚥下ゼリー10には酸味料B、辛味料C及びハーブエキスDが混入されているため、ハーブの臭気を放つとともに、強酸味及び強辛味である。
【0043】
酸味料Bはクエン酸を主原料とした食品添加物であり、辛味料Cはカプサイシンを主原料とした食品添加物であり、ハーブエキスDはレモングラスから抽出したエキスを主原料とした食品添加物であり、赤色着色料Eは食用着色材であり、キシリトールパウダFは水分と反応して吸熱反応する糖アルコールである。
【0044】
なお、キシリトールパウダFの代用として糖アルコールであるエリスリトールパウダを用いることもできる。また、カプサイシンを主原料とした辛味料Cの代用としてペピリン,硫化アリル,シンゲロール,ショウガロール,あるいはサンショオールを主原料とした辛味料を用いることもできる。
【0045】
パッケージ20は、図2に示すように、上面開放の中空の直方体形状であり、側面20b上端には外側に広がる周方向に連続する鍔部23を備え、底部20aに各押圧凸部11に対応する四角錐凹部21を備えている。鍔部23に被覆フィルム24(図3参照)を取付けることによって押圧凸部11内部に嚥下ゼリー10を封入してパッケージ入り嚥下ゼリー1を構成することができる。
【0046】
このような構成のパッケージ入り嚥下ゼリー1は、以下に示す製造方法で製造される。
まず加熱攪拌釜50で2%程度のゼラチンを添加した食用ゼリーAを加熱してゾル状にし、図3に示すように、そのゾル状の食用ゼリーAに、酸味料B、辛味料C、ハーブエキスD及び赤色着色料Eを添加し、攪拌する。なお、上記配合で構成した食用ゼリーAは融点が体温より低い30度程度であり、凝固点が常温に近い25度程度という性質を有するゲル状のゼリーである。
【0047】
十分な攪拌が完了すると、粉末状のキシリトールパウダFが内部に散布されたパッケージ20の内部に注入し、上面を被覆フィルム24で被覆してその状態で冷やすことで、上記構成で構成された嚥下ゼリー10をパッケージ20内部に封入したパッケージ入り嚥下ゼリー1が完成する。
【0048】
そして、利用者である嚥下者は、図3に示すように、被覆フィルム24をパッケージ20から取り外し、内部に封入されていた嚥下ゼリー10を取出し、スリット12に錠剤30を内包させる。これにより、例えば嚥下者が嚥下障害者であっても、嚥下ゼリー10を容易に嚥下することによって、錠剤30を容易に飲み込むことができる。
【0049】
ここで、嚥下ゼリー10の嚥下について説明する。
通常、口に物を入れてから、そのものを飲み込んで胃に達するまでの嚥下動作は、図4に示すように、認知期、食塊形成期、口腔期、咽頭期並びに食道期の5段階の過程で構成されている。
【0050】
各過程について詳しく説明すると、嚥下対象物を嚥下者の口腔に取り込むまでの過程である認知期において嚥下者はこれから摂取する嚥下対象物の性状を認知することによって、食べ方、唾液分泌等の嚥下に必要な準備を整える。このとき、嚥下者は自己の視覚と嗅覚という特殊感覚を駆使して、嚥下対象物を認知している。
続く食塊形成期では、嚥下者は、認知期で認知した嚥下対象物を口腔に取り込み、咀嚼して嚥下対象物を嚥下容易な塊に形成する。
【0051】
そして、嚥下第1期と呼ばれる口腔期で、上記食塊形成期で嚥下容易な塊となった嚥下対象物を舌によって咽頭へ送り込む。
なお、ここまでの過程は嚥下者の意識によって止めることのできる随意運動であるが、これ以降の過程である咽頭期及び食道期における動作は意識によって止めることのできない不随意運動となる。
【0052】
嚥下第2期と呼ばれる咽頭期では、舌の先端である舌尖が持ち上がり、食塊が咽頭に達すると嚥下反射が生じ、次に示す一連の動作をおよそ1秒間に行う。
嚥下反射によって、軟口蓋が挙上して鼻腔と咽頭の間を塞ぐ鼻咽腔閉鎖が生じ、舌骨・喉頭が挙上して、食塊が咽頭を通過すると、喉頭蓋が反転して気管の入口を塞ぐ。その状態において、一時的に呼吸が停止する喉頭前庭・声門閉鎖状態となり、咽頭が収縮し、食道入口部が開大する輪状咽頭筋の弛緩が生じる。
【0053】
前記上記一連の動作が行われた後に、嚥下第3期と呼ばれる食道期となる。この食道期では、食道壁の蠕動運動が誘発され、食塊が食道入口部から胃へ送り込まれる。輪状咽頭筋は収縮し、食塊が逆流しないように食道入口部が閉鎖される。舌骨、喉頭、喉頭蓋は安静時状態に戻って嚥下動作は終了する。
【0054】
なお、上記嚥下動作における食塊形成期、口腔期及び咽頭期においては、嚥下者の嗅覚及び味覚の特殊感覚、並びに温冷覚、痛覚及び触覚・圧覚の体性感覚により上記動作が誘発され、食道期においては温冷覚、痛覚及び触覚・圧覚により上記動作が誘発されている。
【0055】
嚥下正常者は、上述したような感覚に基づく各器官の働きによって上述の嚥下動作を行って嚥下対象物を飲み込んでいるが、嚥下障害者は上記各器官の感覚機能、認知機能、或いは運動機能等の機能低下により、上述するような正常な嚥下動作が行われず、嚥下対象物を容易に飲み込むことができないことが多い。
【0056】
以下に示すような感覚刺激増大機能を嚥下ゼリー10に備えることによって、感覚受容器に対する刺激を増大し、感覚受容器→脳による認知→嚥下運動、或いは感覚受容器→嚥下運動という経路を賦活し、嚥下障害者であっても正常な嚥下動作を促すことができる。
【0057】
嚥下ゼリー10に備えた上記感覚刺激増大機能は、嚥下ゼリー10に混入された酸味料B、辛味料C、ハーブエキスD及び赤色着色料E、並びに嚥下ゼリー10の底面10aに備えたキシリトールパウダF及び押圧凸部11で構成している。
【0058】
嚥下ゼリー10を口腔に取込むまでの認知期において、嚥下者100はパッケージ入り嚥下ゼリー1から取出した嚥下ゼリー10を目視することによって、図5(A)に示すように、嚥下者100の視神経を介して脳102における視覚領域に伝達される(図5矢印a参照)。その後、脳内(102)で記憶等と照合されて嚥下ゼリー10を認知することができる。
【0059】
なお、嚥下ゼリー10は赤色着色料Eによって注意喚起色である半透明赤色で形成されているため、脳内(102)で注意が喚起され、嚥下ゼリー10に対する認知が賦活される。その他の色で構成された嚥下ゼリーを目視した場合と比較して、口腔、咽頭及び食道における運動機能を活性化し、唾液の分泌量を増大させることができる。
【0060】
また、注意喚起色である赤色で形成した嚥下ゼリー10を複数回経口摂取することで、注意喚起色である嚥下ゼリー10を認知することにより条件反射が生じ、より嚥下がスムーズに起こるようになる。
【0061】
また、レモングラスから抽出したエキスであるハーブエキスDを嚥下ゼリー10に混入しているため、封入状態であった嚥下ゼリー10を取出すと、嚥下ゼリー10はレモングラスの臭気を放つこととなる。したがって、嚥下者100は嚥下ゼリー10から放たれたレモングラスの臭気を嗅ぎ(図5(B)参照)、嚥下者100の嗅覚は刺激され(図5矢印c参照)、嚥下ゼリー10の認知が賦活される。
【0062】
なお、嚥下ゼリー10から放たれるレモングラスの臭気は、条件反射によりその臭気を嗅いだ人の副交感神経を刺激するため、脳102からの指令により(図5矢印d参照)、分泌される唾液の分泌量をさらに増大することができる。また、認知の賦活も起こっているため、口腔、咽頭及び食道における運動機能を活性化することができる。
【0063】
このようにして、嚥下ゼリー10の赤色着色料Eによる色および嚥下ゼリー10のハーブエキスDによる臭気によって、認知期における嚥下者100の視覚及び嗅覚による感覚刺激が増大し、通常の嚥下対象物を認知する場合と比較して、認知を賦活することができる。
【0064】
例えば、視覚、嗅覚の少なくとも一方の機能低下により、嚥下ゼリー10に対する認知能力が低下することで唾液の分泌量が少なく嚥下が困難である嚥下障害者や、唾液を分泌する唾液腺の機能が低下し、唾液の分泌量が少ないため嚥下が困難である嚥下障害者であっても、上記ハーブエキスD及び赤色着色料Eを食用ゼリーAに混入して嚥下ゼリー10を構成したことによって、嚥下障害者の認知期における嚥下ゼリー10に対する認知を賦活させるので、口腔、咽頭及び食道における運動機能の活性化するとともに、唾液分泌が増大し、嚥下障害者の嚥下を改善することができる。
【0065】
続く、嚥下ゼリー10を口腔に取込んだ食塊形成期においては、まず嚥下ゼリー10は、図6に示すように、嚥下者100の舌101上に配置される。
この状態において、嚥下ゼリー10の底面10aに備えた押圧凸部11が舌101の上面101a側となるため、押圧凸部11は上面101aを押圧して、舌101を介して嚥下者100の触覚・圧覚を刺激する。
【0066】
また、嚥下ゼリー10の表面にまぶされたキシリトールパウダFが口腔内の水分と反応して吸熱反応が生じるため、舌101を介した温冷覚の刺激を増大することができる。
【0067】
さらに、酸味料B及び辛味料Cを嚥下ゼリー10に混入しているため、酸味料Bの酸味が舌101を介して味覚刺激を増大することとなる。また、辛味料Cの辛味は、酸味料Bと同様に舌101を介して味覚刺激を増大するとともに、舌101を刺激する痛みとして痛覚刺激を増大することとなる。
また、食塊形成期においても、上述したように、嚥下ゼリー10に混入されたハーブエキスDによる臭気によって嗅覚刺激を増大することができる。
【0068】
このように、嚥下者100の口腔に嚥下ゼリー10を取り込むことにより、上述の嗅覚刺激に加えて、触覚・圧覚、温冷覚、味覚及び痛覚の刺激を増大することができる。したがって、食塊形成期における唾液を分泌する唾液腺や咀嚼する咀嚼器等の、食塊形成期における嚥下動作を担う各器官を活性化することができ、例えば食塊形成困難者であっても嚥下ゼリー10の嚥下を確実及び容易に行うことができる。
【0069】
なお、食塊形成期における触覚・圧覚、温冷覚、味覚、嗅覚及び痛覚の刺激の増大により、食塊形成期における嚥下動作を担う各器官を活性化するだけでなく、食塊形成期以降の口腔期、咽頭期、及び食道期における各器官を活性化し、嚥下ゼリー10の嚥下を促すことができる。
【0070】
また、食塊形成期における刺激の増大と同様に、口腔期から咽頭期における触覚・圧覚、温冷覚、味覚、嗅覚及び痛覚の刺激の増大により、それぞれの嚥下動作を担う各器官を活性化するだけでなく、それ以降の各期における嚥下動作を担う各器官を活性化し、嚥下ゼリー10の嚥下を促すことができる。
【0071】
また、続く食道期においては味覚及び嗅覚を知覚する器官がないため、食道壁を介して触覚・圧覚、温冷覚、及び痛覚の刺激増大により、食道期における食道壁の蠕動運動がさらに活性化され、食塊の食道入口部から胃への移動がスムーズに行われる。したがって不随意運動である食道期における嚥下動作を確実に促すことができる。
【0072】
このように上記構成で構成した嚥下ゼリー10は、視覚の刺激を増大する、すなわち注意を喚起する視覚刺激増大手段として嚥下ゼリー10に赤色着色料Eを混入して半透明赤色に着色したことにより、視覚神経を介して注意を喚起することができる。
【0073】
これにより、嚥下ゼリー10に対する認知が賦活され、嚥下に必要な口腔、咽頭及び食道の運動機能を活性化し、唾液の分泌量の増大が起こり、嚥下者100の嚥下ゼリー10の嚥下を確実及び容易に促すことができる。
【0074】
また、嗅覚による刺激を増大する嗅覚刺激増大手段として嚥下ゼリー10にハーブエキスDを混入したため、嚥下ゼリー10から放たれるレモングラスの臭気によって嗅覚の刺激を増大するとともに、レモングラスの臭気を嗅いだことによる嗅神経及び脳を介して副交感神経を活性化することができる。
【0075】
これにより、嚥下ゼリー10に対する認知が賦活され、認知期、食塊形成期、口腔期及び咽頭期における嚥下に必要な口腔、咽頭及び食道の運動機能を活性化し、唾液の分泌量の増大が起こり、嚥下者100の嚥下ゼリー10の嚥下を確実及び容易に促すことができる。
【0076】
また、味覚による刺激を増大する味覚刺激増大手段として嚥下ゼリー10に酸味料B及び辛味料Cを混入したため、舌101を介した味覚刺激を増大することができる。
これにより、食塊形成期、口腔期、咽頭期及び食道期における嚥下動作を担う各器官を活性化して、嚥下者100の嚥下ゼリー10の嚥下を確実及び容易に促すことができる。
【0077】
なお、辛味料Cは味覚刺激増大手段として機能するだけでなく、辛味が舌101の上面101aに痛みとして刺激する痛覚による刺激を増大する痛覚刺激増大手段としても機能し、痛覚刺激増大手段としては、食塊形成期、口腔期、咽頭期及び食道期における嚥下動作を担う各器官を活性化して、嚥下者100の嚥下ゼリー10の嚥下を確実及び容易に促すことができる。
また、強い辛味による粘膜刺激作用は、痛覚刺激増大手段以外にも、触覚・圧覚刺激増大手段としても機能する。
【0078】
また、温冷覚による刺激を増大する温冷覚刺激増大手段として嚥下ゼリー10の表面にキシリトールパウダFをまぶしたため、口腔内に嚥下ゼリー10を取り込むことでキシリトールパウダFが口腔内の水分と反応して吸熱反応が生じ、該吸熱反応によって口腔内の温冷覚の刺激を増大することができる。
【0079】
これにより、食塊形成期、口腔期、咽頭期及び食道期における嚥下動作を担う各器官を活性化して、嚥下者100の嚥下ゼリー10の嚥下を確実及び容易に促すことができる。
なお、キシリトールパウダFによる吸熱反応は、粘膜刺激作用を伴い、痛覚刺激増大手段や、触覚・圧覚刺激増大手段としても機能する。
【0080】
また、触覚・圧覚による刺激を増大する触覚・圧覚刺激増大手段として嚥下ゼリー10の底面10aに押圧凸部11を備えたため、押圧凸部11が周囲の器官に接触して刺激するため、触覚・圧覚の刺激を増大することができる。
これにより、食塊形成期、口腔期、咽頭期及び食道期における嚥下動作を担う各器官を活性化して、嚥下者100の嚥下ゼリー10の嚥下を確実及び容易に促すことができる。
【0081】
なお、本実施例において、上記触覚・圧覚刺激増大手段として嚥下ゼリー10の底面10aに備え、物理的に作用する上記押圧凸部11で構成したが、炭酸やマスタードのように、触覚・圧覚を刺激する物質で構成してもよい。
【0082】
また、上記実施例においては、温冷覚による刺激を増大する温冷覚刺激増大手段として嚥下ゼリー10の表面にキシリトールパウダFをまぶしたが、嚥下ゼリー10の形成時に、酸味料B及び辛味料Cをとともに、1−menthol(1−メントール)、1−mentho(1−メント)、又は1−carvone(1−カルボン)、或いは3−octanol(オクタノール)、isomenthone(イソメントン)又はmenthylacetate(メンチルアセテート)等の合成薄荷の上記薄荷成分を1種類又はこれらを組み合わせて混入してもよい。
【0083】
これにより、涼冷刺激受容体(TRPM8等)に刺激を付与したり、活性化温度が上昇し、すなわちより高い温度で冷たく感じるため、唾液腺や、嚥下動作を担う口腔内の器官を活性化し、嚥下経口品の嚥下を容易にすることができる。
【0084】
このように、嚥下ゼリー10が有する酸味料B、辛味料C、ハーブエキスD、赤色着色料E、キシリトールパウダF及び押圧凸部11によって、嚥下の各過程における嚥下動作を担う認知の賦活や各器官を活性化することができ、認知の賦活や各器官の活性化により、嚥下者100は嚥下ゼリー10を容易、且つ確実に嚥下することができる。
【0085】
さらにまた、嚥下ゼリー10を嚥下に適したゲル状で構成するとともに、口腔や咽頭の狭いスペースを通過しやすく、梨状窩の形状にフィットしてとどまり易い、最も嚥下し易い薄板状の略長方体形状に嚥下ゼリー10を形成しているため、嚥下ゼリー10を口腔から咽頭及び食道を経て、胃へ送り込む嚥下運動における嚥下ゼリー10の残留や誤嚥の可能性は低く、容易に嚥下ゼリー10を飲込むことができる。
【0086】
また、融点が体温より低く、凝固点が常温に近いという性質を有する食用ゼリーAで嚥下ゼリー10を形成したため、嚥下ゼリー10は利用者の体温で表面が溶け、口腔や咽頭を変形しながら滑らかに通過するため、誤嚥の可能性を低減できる。
また、わずかな可能性により誤嚥が生じた場合であっても、嚥下ゼリー10が体温で溶けるため誤嚥による窒息を回避することができる。
【0087】
また、図6に示すように、嚥下ゼリー10を口腔に取込んだ際、嚥下ゼリー10の底面10aの押圧凸部11は舌101の上面101aと接触する。そして、押圧凸部11は舌101の体温によって表面から融解されていくこととなる。
【0088】
このように、底面10aに押圧凸部11を備えたことにより、底面10aと舌表面や咽頭面との摩擦を低減することができ、スムーズに嚥下ゼリー10を飲込むことができる。また、押圧凸部11と舌101の上面101aとの間には唾液が溜まり、嚥下ゼリー10の摩擦をさらに低減することができる。
【0089】
また、内部に錠剤30を内包するためのスリット12を長手側面10bに備えているため、嚥下障害者にとって誤嚥しやすい錠剤30であっても、内部に錠剤30を内包した嚥下容易な嚥下ゼリー10を飲み込むことで、嚥下者100は錠剤30を容易に服用することができる。また、錠剤30を服用する際の誤嚥の可能性を低減できるため、嚥下者100の満足度を向上することができる。
【0090】
なお、本実施例において、錠剤30を服用することを目的とした嚥下ゼリー10の嚥下について説明したが、嚥下ゼリー10内部に錠剤30を内包せずとも、嚥下障害を有する嚥下者100の嚥下のリハビリテーションに嚥下ゼリー10を用いることができる。
【0091】
また、本実施例に嚥下ゼリー10には、酸味料B、辛味料C、ハーブエキスD、赤色着色料E,キシリトールパウダF及び押圧凸部11を全て備えているが、酸味料B、辛味料C、ハーブエキスD、赤色着色料E,キシリトールパウダF及び押圧凸部11のうちいくつかを組み合わせてもよいし、単独で構成してもよい。
【0092】
また、本実施例においては、錠剤30を総合感冒薬で構成したが、ビタミン等の栄養補助剤で構成してもよく、さらには、粉末状或いは液状の薬剤や栄養補助剤をゾル状の食用ゼリーAに添加し、薬剤や栄養補助剤が含有された嚥下ゼリー10を形成してもよい。
【0093】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明のゲル状経口物は、食用ゼリーAに対応し、
以下同様に、
嚥下経口品は、嚥下ゼリー10に対応し、
味覚刺激増大手段は、酸味料B及び辛味料Cに対応し、
嗅覚刺激増大手段及び副交感神経活性臭気は、ハーブエキスDに対応し、
視覚刺激増大手段及び着色は、赤色着色料Eに対応し、
温冷覚刺激増大手段及び糖アルコールは、キシリトールパウダFに対応し、
痛覚刺激増大手段及び辛味材は、辛味料Cに対応し、
触覚・圧覚刺激増大手段は、押圧凸部11に対応し、
薬剤及び栄養剤は、錠剤30に対応し、
内包手段は、スリット12に対応し、
パッケージ入り嚥下経口品は、パッケージ入り嚥下ゼリー1に対応するも、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】嚥下ゼリーの底面側からの斜視図。
【図2】パッケージの斜視図。
【図3】パッケージ入り嚥下ゼリーの製造について説明する説明図。
【図4】嚥下動作のフローを説明する説明図。
【図5】嚥下ゼリーによる感覚刺激増大手段について説明する説明図。
【図6】嚥下ゼリーによる感覚刺激増大手段について説明する説明図。
【符号の説明】
【0095】
1…パッケージ入り嚥下ゼリー
10…嚥下ゼリー
11…押圧凸部
12…スリット
20…パッケージ
30…錠剤
A…食用ゼリー
B…酸味料
C…辛味料
D…ハーブエキス
E…赤色着色料
F…キシリトールパウダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲル状経口物で形成し、
嚥下に必要な感覚刺激を増大させる感覚刺激増大手段を備えた
嚥下経口品。
【請求項2】
前記感覚刺激増大手段を、
味覚による刺激を増大する味覚刺激増大手段、嗅覚による刺激を増大する嗅覚刺激増大手段、視覚による刺激を増大する視覚刺激増大手段、温冷覚による刺激を増大する温冷覚刺激増大手段、痛覚による刺激を増大する痛覚刺激増大手段、並びに、触覚及び圧覚のうち少なくとも一方による刺激を増大する触覚・圧覚刺激増大手段のうち少なくともひとつで構成した
請求項1に記載の嚥下経口品。
【請求項3】
前記味覚刺激増大手段を、味覚細胞への刺激を増大させる酸味を有する酸味材で構成し、
前記嗅覚刺激増大手段を、嗅細胞に刺激を付与し、嗅神経及び脳を介して副交感神経を活性化する副交感神経活性臭気で構成し、
前記視覚刺激増大手段を、視認者の注意を喚起する注意喚起色で構成し、
前記温冷覚刺激増大手段を、嚥下動作における各器官において吸熱反応し、活性化温度閾値を上昇させ、或いは直接刺激により刺激を付与する糖アルコール、又は薄荷成分で構成し、
前記痛覚刺激増大手段を、感覚受容器へ痛みとしての刺激を付与する辛味を有する辛味材で構成し、
前記触覚・圧覚刺激増大手段を、嚥下動作における各器官との接触面における接触感覚による刺激を増大させる凹凸で構成した
請求項2に記載の嚥下経口品。
【請求項4】
前記ゲル状経口物が、融点が体温より低く、凝固点が常温以上であることを特徴とする
請求項1から3のうちいずれかに記載の嚥下経口品。
【請求項5】
長尺形状で形成した
請求項1から4のうちいずれかに記載の嚥下経口品。
【請求項6】
薬剤及び栄養剤のうち少なくとも一方を、
前記長尺体内部に内包或いは含有することを特徴とした
請求項5に記載の嚥下経口品。
【請求項7】
請求項1から6のうちいずれかに記載の嚥下経口品と、
該嚥下経口品を収容するパッケージとからなる
パッケージ入り嚥下経口品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−72094(P2009−72094A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−243201(P2007−243201)
【出願日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【出願人】(507096917)株式会社Dr.三ツ星 (3)
【Fターム(参考)】