説明

四フッ化ケイ素の製造方法、及びそれに用いる製造装置

【課題】 四フッ化ケイ素を製造する際の製造コストの低減、及び廃棄物量の低減が可能な四フッ化ケイ素の製造方法、及びそれに用いる製造装置を提供する。
【解決手段】 二酸化ケイ素を含む原料1と、フッ化水素酸及びケイフッ化水素酸を含む混合液とを反応させることにより、高シリカフルオロケイ酸水溶液を生成する高シリカフルオロケイ酸生成工程(a)と、前記高シリカフルオロケイ酸水溶液と硫酸とを反応させることにより、四フッ化ケイ素を生成する四フッ化ケイ素生成工程(c)と、前記四フッ化ケイ素生成工程(c)で副生するフッ化水素含有の硫酸を水蒸気蒸留することにより、硫酸を生成する硫酸生成工程(d)とを有し、前記四フッ化ケイ素生成工程(c)では、前記硫酸生成工程(d)で生成する前記硫酸を再利用することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば光ファイバー用原料、半導体用原料、又は太陽電池用原料等に用いる四フッ化ケイ素(SiF)の製造方法、及びそれに用いる製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の四フッ化ケイ素の製造方法としては、以下の各種の方法が知られている。(i)下記反応式(1)に示す様に、ケイ素とフッ素との反応により製造する方法、下記反応式(2)に示す様に、二酸化ケイ素とフッ化水素との反応により製造する方法。
【0003】
【化1】

【0004】
(ii)下記反応式(3)に示す様に、金属ケイフッ化物の熱分解により製造する方法。
【0005】
【化2】

但し、前記Mはバリウム(Ba)等の金属元素を表す。
【0006】
(iii)下記反応式(4)に示すように、蛍石等のフッ化物、二酸化ケイ素及び硫酸の反応により製造する方法。
【0007】
【化3】

【0008】
(iv)燐酸製造時の副産物としても四フッ化ケイ素を得る方法。
【0009】
反応式(1)による製造方法では、大量のフッ素を安価に得ることが困難である。この為、四フッ化ケイ素の大量生産の要には供しない。反応式(2)による製造方法では、下記反応式(5)に示すように、副生する水が四フッ化ケイ素を加水分解し、ケイフッ化水素と二酸化ケイ素を生成することが知られている。
【0010】
【化4】

【0011】
従って、反応式(2)に示す反応により四フッ化ケイ素を製造する場合、副生する水を除去するために硫酸等の脱水剤が使用される。具体的には、二酸化ケイ素を懸濁させた硫酸中にフッ化水素を導入して四フッ化ケイ素を発生させる方法や、下記反応式(6)及び反応式(7)のように二酸化ケイ素とフッ化水素酸を反応させケイフッ化水素酸を合成した後、濃硫酸を添加して四フッ化ケイ素を発生させる方法(下記特許文献1)がある。
【0012】
【化5】

【0013】
これらの方法の場合、四フッ化ケイ素の不純物であるヘキサフルオロジシロキサンの発生と、四フッ化ケイ素の硫酸への溶解とを抑制するために、硫酸を高濃度に保持する必要がある。また、四フッ化ケイ素を大量に製造する場合には、フッ化水素を含む高濃度硫酸水溶液(以下、廃硫酸)が廃液として大量に発生する為、その排水処理方法やコストが問題となる。
【0014】
更に、前記反応式(4)による方法では、原料として使用する硫酸で発生させた四フッ化ケイ素を洗浄することにより随伴する水分の除去が可能である。しかし、副生する水に起因した装置の腐食が激しくなり、安全な連続運転が困難である。
【0015】
【特許文献1】特開2005−119956号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は前記問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、四フッ化ケイ素を製造する際の製造コストの低減、及び廃棄物量の低減が可能な四フッ化ケイ素の製造方法、及びそれに用いる製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本願発明者等は、前記従来の問題点を解決すべく、四フッ化ケイ素の製造方法、及びそれに用いる製造装置について鋭意検討した。その結果、下記構成を採用することにより、前記目的を達成できることを見出して、本発明を完成させるに至った。
【0018】
即ち、本発明に係る四フッ化ケイ素の製造方法は、前記の課題を解決する為に、二酸化ケイ素を含む原料と、フッ化水素酸及びケイフッ化水素酸を含む混合液とを反応させることにより、高シリカフルオロケイ酸水溶液を生成する高シリカフルオロケイ酸生成工程と、前記高シリカフルオロケイ酸水溶液と硫酸とを反応させることにより、四フッ化ケイ素を生成する四フッ化ケイ素生成工程と、前記四フッ化ケイ素生成工程で副生するフッ化水素含有の硫酸を水蒸気蒸留することにより、硫酸を生成する硫酸生成工程とを有し、前記四フッ化ケイ素生成工程では、前記硫酸生成工程で生成する前記硫酸を再利用することを特徴とする。
【0019】
前記の製造方法は、高シリカフルオロケイ酸水溶液に対し硫酸を脱水剤として用い、四フッ化ケイ素を製造するプロセスである。前記方法に於ける四フッ化ケイ素生成工程では、高シリカフルオロケイ酸生成工程で得られた高シリカフルオロケイ酸水溶液(HSi10)と硫酸とを反応させて四フッ化ケイ素を生成する際に、フッ化水素を含む硫酸(廃硫酸)も副生する。この廃硫酸を前記硫酸生成工程に於いて水蒸気蒸留することにより、廃硫酸からフッ化水素を分離除去して、硫酸を生成する。更に、この硫酸を前記四フッ化ケイ素生成工程に於いて再利用する。即ち、前記方法によれば、硫酸に要するコスト及び廃棄物量の低減を図りつつ、四フッ化ケイ素を大量に生産することができる。
【0020】
前記硫酸生成工程は、生成する前記硫酸を前記四フッ化ケイ素生成工程で使用可能な所定濃度になるまで脱水濃縮する工程を含むことが好ましい。
【0021】
前記原料として二酸化ケイ素の含有量が80重量%以上の珪砂を使用することが好ましい。
【0022】
前記高シリカフルオロケイ酸生成工程で生成する前記高シリカフルオロケイ酸水溶液は、生成物に占める含有量が42重量%以上であることが好ましい。
【0023】
前記四フッ化ケイ素生成工程で使用する前記硫酸の濃度が85重量%以上であることが好ましい。四フッ化ケイ素を生成させた後の硫酸濃度には下限値が存在するが、前記の様に、硫酸濃度を85重量%以上にすることにより、四フッ化ケイ素の生成に使用する硫酸の使用量が増大するのを抑制することができる。その結果、装置サイズの増大や硫酸再生に要するエネルギーを抑制し、生産コストの低減が図れる。
【0024】
前記四フッ化ケイ素生成工程で使用する前記硫酸の使用温度が60℃以下であることが好ましい。当該工程に於ける高シリカフルオロケイ酸水溶液の分解反応によって四フッ化ケイ素が発生するが、硫酸の使用温度を60℃以下にすることにより、該四フッ化ケイ素に随伴するフッ化水素及び水を低減することができる。
【0025】
前記四フッ化ケイ素生成工程で生成するフッ化水素含有の硫酸に於ける硫酸濃度は、フッ化水素を除き硫酸及び水のみに基づいて算出した場合に、80重量%以上に保持されていることが好ましい。これにより、不純物であるヘキサフルオロジシロキサンの発生を抑えると共に、発生した四フッ化ケイ素の廃硫酸中への再溶解を防ぐことができ、十分かつ良好な四フッ化ケイ素の生成が可能になる。
【0026】
前記硫酸生成工程で生成する硫酸中に含まれるフッ化水素の含有量が1ppmw以下であることが好ましい。
【0027】
また、本発明に係る四フッ化ケイ素の製造装置は、前記の課題を解決する為に、二酸化ケイ素を含む原料と、フッ化水素酸及びケイフッ化水素酸を含む混合液とを反応させて、高シリカフルオロケイ酸水溶液を生成させる反応槽と、前記高シリカフルオロケイ酸水溶液と硫酸とを反応させて、四フッ化ケイ素を生成させる充填塔と、前記充填塔で副生するフッ化水素含有の硫酸を水蒸気蒸留してフッ化水素を除去し、硫酸を生成させる水蒸気蒸留塔と、前記水蒸気蒸留塔で生成した前記硫酸を濃縮する濃縮缶とを有し、前記濃縮缶に於いて濃縮した前記硫酸を前記充填塔に供給することを特徴とする。
【0028】
前記構成に於ける充填塔では、反応槽で生成された高シリカフルオロケイ酸水溶液(HSi10)と硫酸とを反応させて四フッ化ケイ素を生成させる。この四フッ化ケイ素と共に生成する廃硫酸は、水蒸気蒸留塔でフッ化水素を分離除去され、硫酸が生成される。更に硫酸は、濃縮缶に於いて濃縮され、充填塔に供給される。即ち、前記構成であると、硫酸に要するコスト及び廃棄物量の低減を図りつつ、四フッ化ケイ素を大量に生産することができる。
【0029】
前記濃縮缶は、前記水蒸気蒸留塔で生成した前記硫酸を、前記充填塔で使用可能な所定濃度になるまで脱水濃縮させるものであることが好ましい。
【0030】
前記濃縮缶は、金属又はガラスライニングからなることが好ましい。前記濃縮缶にはフッ素樹脂や耐食合金等の高級材料ももちろん使用できるが、金属又はガラスライニングからなることがコスト的に好ましい。水蒸気蒸留塔に於いてフッ化水素が分離除去されているので、硫酸を濃縮する濃縮缶としては、高級材料を使わなくても金属又はガラスライニング等の安価な一般工業材料を使用することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明は、前記に説明した手段により、以下に述べるような効果を奏する。
即ち、本発明によれば、高シリカフルオロケイ酸水溶液に対し硫酸を脱水剤として用い、四フッ化ケイ素を製造する際に、従来は廃棄していた廃硫酸からフッ化水素を除去し、得られた硫酸を循環使用する。その結果、硫酸に要するコスト及び廃棄物量の低減を図りつつ、四フッ化ケイ素を大量に生産することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
本発明の実施の形態について、図1を参照しながら以下に説明する。図1は、本実施の形態に係る四フッ化ケイ素の製造方法及び製造装置を説明する為のフロー図である。但し、説明に不要な部分は省略し、また説明を容易にする為に拡大又は縮小等して図示した部分がある。
【0033】
本実施の形態に係る四フッ化ケイ素の製造方法は、主として、高シリカフルオロケイ酸水溶液を生成する高シリカフルオロケイ酸生成工程(a)と、該高シリカフルオロケイ酸水溶液を精製する工程(b)と、四フッ化ケイ素を生成する四フッ化ケイ素生成工程(c)と、硫酸を生成する硫酸生成工程(d)と、フッ化水素及び四フッ化ケイ素を回収する工程(e)と、前記工程(a)で高シリカフルオロケイ酸水溶液の生成に使用する酸を調整する工程(f)と、四フッ化ケイ素から空気成分を除去する工程(g)とを有している。以下、処理工程順に詳細に説明する。
【0034】
前記高シリカフルオロケイ酸生成工程(a)は、二酸化ケイ素を含む原料1と、フッ化水素酸及びケイフッ化水素酸を含む混合液(以下、原料酸水溶液)とを反応槽3で反応させることにより、高シリカフルオロケイ酸水溶液を生成する工程である(下記化学反応式(8)参照)。反応槽3には、原料酸水溶液を供給する為の第1原料路2が接続されている。原料酸水溶液は、後述する第2吸収塔45から、一度第1吸収塔5に供給された後、第1吸収塔5より反応槽3に供給される。
【0035】
【化6】

【0036】
前記化学反応式(8)で表される二酸化ケイ素とフッ化水素との反応、及び原料1に含まれる二酸化ケイ素以外の不純物とフッ化水素との反応は発熱反応である。反応熱は反応液を沸点まで加熱し、さらに余剰の熱は反応液から四フッ化ケイ素、フッ化水素、及び水を蒸発させる。この結果として、反応液中の高シリカフルオロケイ酸濃度の低下が生じる。この濃度低下を回避する為に、該混合ガスを、ガス路4を介して第1吸収塔5に供給し、第1吸収塔内を循環する原料酸水溶液に吸収させることにより回収する。該混合ガスを吸収した原料酸水溶液を反応槽3に供給することにより、反応液中の高シリカフルオロケイ酸を高濃度に維持することができる。該混合ガスを原料酸水溶液に吸収させる際にも発熱を生じるが、この熱は冷却器6にて除去する。従って、冷却器6の伝熱面積や使用する冷媒の温度及び量等は、反応熱から反応液の沸点までの加熱に要する熱量を差し引いた熱量を除去するに足りるものであることが好ましい。原料1と原料酸水溶液との反応に際し、反応槽3を外部から、或いは内部から冷却しながら行う方法も考えられるが、反応液温度が低い場合には反応が十分に進行しない場合がある。また、反応槽3の接液部にはフッ素樹脂などの耐食性樹脂材料を用いる必要があるが、概して樹脂材料の熱伝導度は低く、更に、後述するように該反応槽3には撹拌装置を設置しないことから反応液の間接冷却は有効ではない。
【0037】
また、反応槽3には、該反応槽3から得られる反応液中に含まれる不純物としてのフッ化物及びケイフッ化物を除去する為の固液分離器7が設けられている。固液分離器7には、高シリカフルオロケイ酸水溶液を排出する粗高シリカフルオロケイ酸水溶液路8と、フッ化物及びケイフッ化物を排出する固形不純物路9とが接続されている。
【0038】
原料1としては、例えば二酸化ケイ素を含む珪砂が挙げられ、より詳細には、サンドブラスト用研削材、鋳型砂、セメントモルタル用骨材等に用いられる安価な珪砂を使用することができる。原料1に含まれる二酸化ケイ素の含有量としては、80重量%以上であることが好ましく、95重量%以上であることがより好ましい。二酸化ケイ素の含有量が80重量%未満であると、工程(e)で消費される硫酸及び発煙硫酸量が多くなると共に、排出される廃棄物の量が多くなり、コストが増加する場合がある。例えば、火力発電所より排出される石炭灰には二酸化ケイ素が約50重量%〜70重量%程度含まれている。石炭灰の一部は、コンクリート混和材、プラスチック・ゴムの等のフィラー材、人工ゼオライト、植栽土壌改良材等として有効利用されているが、大半は埋め立て処分されている。石炭灰の有効利用の一環として、本系のSi源に使用することも考えられるが、大量のフッ化物およびケイフッ化物汚泥が発生する。この汚泥を後述する工程(e)に於いて濃硫酸と反応させ、四フッ化ケイ素およびフッ化水素の有価成分を回収した際に発生する硫酸塩は原料となる石炭灰量を超える場合があり、結果として埋め立て処分する廃棄物量が増加することから有効利用とは言い難い。尚、二酸化ケイ素の含有量が100重量%であれば、廃棄物が全く出ず、かつ、工程(b)及び工程(e)は不要となり、最も理想的である。しかし、含有量が約100重量%のものは人工的に精製されたものでしか存在しない為、大量かつ安価に入手することは困難である。従って、四フッ化ケイ素を大量かつ安価に製造するという本発明の目的からは、安価に入手可能な天然珪砂であって、二酸化ケイ素の含有量ができるだけ多いものが好ましい。また、使用する珪砂の粒径には特に限定はないが、0.01mmから10mmであればよい。
【0039】
原料1と原料酸水溶液との反応は複数台の反応槽3の切り替え運転によるバッチ運転とするのが好ましい。原料1を反応槽3に連続供給する連続供給装置が不要となり、四フッ化ケイ素及びフッ化水素ガスが外部に漏洩するのを回避できるからである。また、バッチ運転の場合、反応槽3に原料1を仕込んだ後、反応槽3の底部から原料酸水溶液を供給することにより反応槽3に撹拌装置を設置することなく固−液反応を十分に進行させることができる。更に、フッ化水素に対し二酸化ケイ素が過多になる条件は高シリカフルオロケイ酸水溶液の合成に都合が良い。また、撹拌装置を用いないため、反応槽や撹拌翼の耐食樹脂ライニングの磨耗を回避することができる。その結果、装置の長寿命化やメンテナンス回数の削減が可能になる。
【0040】
本工程で生成する高シリカフルオロケイ酸水溶液は、生成物に占める含有量が42重量%以上であることが好ましく、48重量%以上54重量%以下であることがより好ましい。42重量%未満であると、高シリカフルオロケイ酸をHSiF・nSiF(n:0〜1)で表した場合に、nの値が1から0に近づく。従って、工程(b)で発生する四フッ化ケイ素量が減少する。また、工程(c)に於いて所定量の四フッ化ケイ素を発生させる為に必要な精製高シリカフルオロケイ酸を得る為に工程(b)の第1蒸留塔10(後述する)での留出液量を増加させなければならず、第1蒸留塔10に投入するエネルギーが増加する。また、工程(c)で所定量の四フッ化ケイ素を得る為に用いる硫酸の使用量が増加する。これにより、工程(d)での硫酸濃縮に必要なエネルギーが増加し、生産コストが増大する場合がある。
【0041】
前記原料酸水溶液は、フッ化水素酸、ケイフッ化水素酸及び水を含む組成を有する。フッ化水素酸は、珪砂に含まれる二酸化ケイ素及びケイ素以外の元素の酸化物と反応することにより、それぞれ四フッ化ケイ素とフッ化物又はケイフッ化物とを生成させる。ケイフッ化水素酸は、生成した四フッ化ケイ素を吸収し、或いは反応することにより、高シリカフルオロケイ酸水溶液を生成させる。水は、生成した高シリカフルオロケイ酸水溶液を安定的に存在させる。
【0042】
前記工程(b)は、図1に示すように、前記工程(a)で得られた不純物(フッ化物及びケイフッ化物)を含む高シリカフルオロケイ酸水溶液から該不純物を除去し精製すると共に、四フッ化ケイ素の発生及び高シリカフルオロケイ酸水溶液の濃縮を行う工程である。高シリカフルオロケイ酸水溶液の精製は第1蒸留塔10で行われ、不純物が濃縮されたケイフッ化水素酸が分離される。第1蒸留塔10には、第1再熱器13が設けられている。不純物が濃縮されたケイフッ化水素酸は、固液分離器14によりケイフッ化水素酸とフッ化物及びケイフッ化物とに分離される。このケイフッ化水素酸は、ケイフッ化水素酸路15を介して後述の吸収塔45に供給される。不純物としてのフッ化物及びケイフッ化物は、固形不純物路16を介して、後述の乾燥器38に供給される。また、第1蒸留塔10の塔頂から抜き出される四フッ化ケイ素、フッ化水素及び水は、凝縮器11で凝縮・冷却された後、気液分離槽12に供給される。該気液分離槽12では高シリカフルオロケイ酸水溶液は第1蒸留塔10に供給される濃度以上に濃縮され、吸収しきれなかった四フッ化ケイ素は分離される(以下、不純物が分離された高シリカフルオロケイ酸水溶液を精製高シリカフルオロケイ酸水溶液と言う)。四フッ化ケイ素は四フッ化ケイ素路17を介して、精製高シリカフルオロケイ酸水溶液は精製高シリカフルオロケイ酸水溶液路18を介して、それぞれ後述のガス発生塔19に供給される。尚、四フッ化ケイ素は、下記化学反応式(9)で示す反応により生成する。
【0043】
【化7】

【0044】
本工程で生成する精製高シリカフルオロケイ酸水溶液の生成量は、該精製高シリカフルオロケイ酸水溶液に含まれる水の含有量が、珪砂とフッ化水素との反応により発生する水と、後述の工程(d)で硫酸中に含まれるフッ化水素を除去する為に供給する水蒸気のうちフッ化水素と共に回収される水との合計量に等しくなる様に、設定されるのが好ましい。これにより、系内の水バランスを保つことができる。
【0045】
前記四フッ化ケイ素生成工程(c)は、下記化学反応式(10)に示すように、精製高シリカフルオロケイ酸水溶液と硫酸とをガス発生塔19で反応させることにより、四フッ化ケイ素を生成する工程である。
【0046】
【化8】

【0047】
ガス発生塔19には、第1濃硫酸路20を介して濃硫酸が供給されている。当該ガス発生塔19としては、例えば放散塔が例示できる。生成した四フッ化ケイ素は、四フッ化ケイ素路21を介してガス洗浄塔23に供給される。その一方、反応に使用した濃硫酸はフッ化水素を吸収し、廃硫酸として副生する。廃硫酸中では一部のフッ化水素と硫酸は、下記化学反応式(11)に示すように、弗硫酸(HSOF)を生成する。廃硫酸は、廃硫酸路22から排出される。
【0048】
【化9】

【0049】
ガス洗浄塔23に供給された四フッ化ケイ素は、該ガス洗浄塔23内を循環する濃硫酸により脱水洗浄される。該濃硫酸は、主として第2濃硫酸路24を介して供給されるが、工程(e)で消費される量を補う為、新たに濃硫酸25も供給される。脱水洗浄後の空気成分を含む四フッ化ケイ素(以下、粗四フッ化ケイ素と言う)は、粗四フッ化ケイ素路26を介して、後述の第2蒸留塔51に供給される。その一方、脱水洗浄に使用した濃硫酸は、第1濃硫酸路20を介してガス発生塔19に供給される。
【0050】
本工程のガス発生塔19及びガス洗浄塔23で使用する硫酸の濃度は、共に85重量%以上であることが好ましく、90重量%以上であることがより好ましく、95重量%以上98重量%以下であることが特に好ましい。硫酸濃度が85重量%未満であると、硫酸の脱水能力が低下するため、ガス発生塔19に供給する硫酸量を増加させなければならない。それに伴い、装置サイズの増大や硫酸再生に要するエネルギーが増加し、コストアップの要因になる場合がある。また、ガス発生塔19及びガス洗浄塔23で使用する硫酸の使用温度は10℃以上60℃以下であることが好ましい。これにより、四フッ化ケイ素に水及びフッ化水素が随伴するのを抑制することができる。更に、前記廃硫酸に於ける硫酸濃度は、フッ化水素を除き硫酸及び水のみに基づいて算出した場合に、80重量%以上に保持されていることが好ましい。これにより、四フッ化ケイ素中に含まれる、不純物としてのヘキサフルオロジシロキサンの発生を抑制できると共に、生成した四フッ化ケイ素の硫酸に対する溶解を抑制することができる。
【0051】
廃硫酸、即ち、フッ化水素を含む硫酸が使用可能な設備、例えばフッ化水素製造装置やリン酸製造装置等が隣接している場合には、該設備で廃硫酸の消費が可能であるが、このような消費設備がない場合や、本四フッ化ケイ素製造設備より排出される廃硫酸量が該消費設備での消費量をはるかに上回る場合には、コスト面および環境面から廃硫酸は廃棄処分せずに四フッ化ケイ素製造設備内において再利用されるべきである。廃硫酸を水蒸気蒸留してフッ化水素を除去した後の硫酸水溶液中に含まれるフッ化水素の含有量が1ppmw以下であることが好ましい。これにより、硫酸の濃縮を行う濃縮缶32等に金属又はガラスライニング等の安価な一般工業材料を使用することができる。また、水蒸気蒸留塔又は水蒸気蒸留塔の上流に設けた槽等に高純度の二酸化ケイ素を添加し廃硫酸中に含まれるフッ化水素と反応させ四フッ化ケイ素とし、水蒸気蒸留に於ける負荷を低減することも可能である。
【0052】
前記硫酸生成工程(d)は、四フッ化ケイ素生成工程で再利用する為の硫酸を生成する工程である。本工程は、水蒸気蒸留塔28内で、廃硫酸路22から供給される廃硫酸に水蒸気27を吹き込み、これにより、廃硫酸中に一部含まれる弗硫酸をフッ化水素と硫酸に加水分解すると共に、水蒸気蒸留塔内のフッ化水素の分圧を下げて該フッ化水素の除去を効率的に行う。更に、水蒸気蒸留塔の塔頂から出る蒸気を凝縮すればフッ化水素酸となるため、フッ化水素の回収が容易である。水蒸気27を使用するのは、廃硫酸のみでの加熱、水蒸気の代わりに窒素や酸素等のガスを吹き込みながらの加熱、又は廃硫酸に水を加えた後の加熱では廃硫酸からの十分なフッ化水素の除去が困難だからである。
【0053】
水蒸気27の供給量は、廃硫酸を水蒸気蒸留塔の運転温度で沸点となる硫酸濃度になるまで希釈するのに要する量と、工程(a)で使用する原料酸水溶液の組成の調製に必要な水分量との合計として設定されるのが好ましい。これにより、系内の水バランスを保つことができる。
【0054】
分離されたフッ化水素はフッ化水素酸としてフッ化水素酸路30を介して後述の吸収塔45に供給される。その一方、生成した硫酸は、硫酸路29を介して濃縮缶32に供給され、該濃縮缶32で濃縮される。濃縮により生成した除去水34は濃縮缶32から排出され、その後廃棄される。濃縮缶32には、過熱器33が設けられている。生成された濃硫酸は、第2濃硫酸路24を介して、工程(c)に於けるガス洗浄塔23に供給され、四フッ化ケイ素の洗浄に使用された後、第1濃硫酸路20を介してガス発生塔19に供給され、四フッ化ケイ素発生の為に再利用される。また、第4濃硫酸路35を介して、次工程(e)の洗浄塔36に供給される。
【0055】
本発明の濃縮缶32には、金属又はガラスライニング等の安価な一般工業材料を使用することができる。これは、硫酸路29から供給される硫酸にフッ化水素が含まれていないので、濃縮缶32の腐食を抑制できることによる。
【0056】
尚、本発明は、工程(c)で使用する高シリカフルオロケイ酸水溶液中に不純物が含まれないように、工程(b)に於いて不純物としてのフッ化物及びケイフッ化物の除去を行っている。この為、不純物が工程(c)で生成する廃硫酸中に混入されるのを防止することができる。その結果、本工程(d)で廃硫酸からフッ化水素及び水分を除去する際に、該フッ化水素の除去を容易にする。更に、硫酸の濃縮中に不純物が固形分として析出するのを抑制し、安定した連続運転を可能にしている。
【0057】
前記工程(e)は、フッ化水素及び四フッ化ケイ素を回収する工程である。工程(a)で排出されるケイ素以外の元素からなるフッ化物及びケイフッ化物、並びに工程(b)で排出されるフッ化物及びケイフッ化物は、乾燥器38で乾燥される。この乾燥により生成するフッ化水素、四フッ化ケイ素及び水は、第1蒸気路39を介して次工程(f)の吸収塔45に供給される。乾燥後、反応器40に供給され、硫酸37と反応させる。当該反応器40としては、ロータリーキルンが例示できる。硫酸37は、工程(d)で生成された濃硫酸と発煙硫酸からなる。これにより、フッ化水素及び四フッ化ケイ素と、硫酸塩42とが生成する(下記化学反応式(12)及び(13)参照)。フッ化水素及び四フッ化ケイ素はガス路41を介して洗浄塔36に供給される。前記硫酸37は、洗浄塔36から供給される。洗浄塔36では、フッ化水素及び四フッ化ケイ素が濃硫酸により脱水洗浄される。脱水洗浄後のフッ化水素及び四フッ化ケイ素は、第2蒸気路43を介して、次工程(f)の吸収塔45に供給される。
【0058】
【化10】

但し、前記Mはカルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)等の金属元素を表す。
【0059】
前記工程(f)は、前記工程(a)で使用する高シリカフルオロケイ酸水溶液の生成に使用する酸を調整する工程である。即ち、工程(b)で排出されるケイフッ化水素酸に、工程(d)で排出されるフッ化水素酸、工程(e)で排出されるフッ化水素、四フッ化ケイ素及び水、工程(g)で排出される四フッ化ケイ素、並びに無水フッ酸44を吸収させることにより、フッ化水素酸及びケイフッ化水素酸の混合液(原料酸水溶液)を生成する。上記各工程より回収された液、蒸気及びガスに随伴する空気成分等のガス48は、廃棄される。工程(b)で排出されるケイフッ化水素酸は、ケイフッ化水素酸路15より供給される。工程(d)で排出されるフッ化水素酸は、フッ化水素酸路30より供給される。工程(e)で排出されるフッ化水素、四フッ化ケイ素及び水は、第1蒸気路39より供給される。工程(g)で排出される四フッ化ケイ素は、ガス路46より供給される。本工程で生成した原料酸水溶液は、第2原料路47を介して工程(a)に供給される。
【0060】
前記工程(g)は粗四フッ化ケイ素から空気成分を除去する工程である。工程(c)で生成した粗四フッ化ケイ素を、粗四フッ化ケイ素路26を介して吸着塔49に供給する。吸着塔49はモレキュラシーブ、ゼオライト、活性炭、活性アルミナ等を充填したもので、四フッ化ケイ素中の二酸化炭素などの高沸点成分の除去を行う。高沸点成分が除去された四フッ化ケイ素は熱交換器50に供給される。該熱交換器50により冷却・液化された粗四フッ化ケイ素は、蒸留により空気成分が除去される。除去された空気成分はガス路46を介して吸着塔49に供給される。空気成分は吸着塔49内の充填物から二酸化炭素などの高沸点成分を脱着し、脱着された高沸点成分と共に工程(f)の吸収塔45に供給される。空気成分を除去した四フッ化ケイ素は第2蒸留塔51の底部より排出され、熱交換器50を介して加熱・蒸発され、精製四フッ化ケイ素54として排出される。
【0061】
以上の方法で得られる四フッ化ケイ素は、例えばシリコン型太陽電池の製造用、半導体デバイスに於ける低誘電率材料としてのSiOF(フッ素ドープ酸化膜)の製造用、光ファイバー用ガスとして使用することができる。
【実施例】
【0062】
以下に、この発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但し、この実施例に記載されている材料や配合量等は、特に限定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではなく、単なる説明例に過ぎない。
【0063】
(実施例1)
本実施例に於いては、図1に示す四フッ化ケイ素の製造装置を用いて行った。先ず、二酸化ケイ素95.3重量%を含む珪砂454.5gと、フッ化水素35.1重量%及びケイフッ化水素22.5重量%を含む原料酸水溶液2334.1gとを、図1に示す工程(a)の反応槽3にて反応させた。得られた反応液は固液分離器7に供給し、固形物(フッ化物及びケイフッ化物)を除去した。本操作を4バッチ行い、全てのバッチの反応液を混合して、組成が高シリカフルオロケイ酸48.6重量%及び遊離フッ化水素5.7重量%を含む高シリカフルオロケイ酸水溶液10684.4gを得た。
【0064】
次に、図1に示す工程(b)及び工程(c)の装置を用いて、前記粗高シリカフルオロケイ酸水溶液の蒸留精製及び硫酸脱水によるガス発生を行った。ガス洗浄塔23に95重量%の硫酸を仕込み、ポンプにて循環運転を行った。前記粗高シリカフルオロケイ酸水溶液を、図1に示す工程(b)の第1蒸留塔10にポンプにて供給し、蒸留を開始した。第1蒸留塔10の塔底液レベルが一定になる様に、缶出液、即ちケイフッ化水素酸を別途用意した貯槽(図示しない)へ抜き出した。気液分離槽12上部より排出される四フッ化ケイ素はガス発生塔19を経由して、ガス洗浄塔23に送られる。留出液、即ち精製高シリカフルオロケイ酸水溶液が気液分離槽12の所定液レベルまで達した後、該精製高シリカフルオロケイ酸水溶液をポンプにてガス発生塔19へ供給した。精製高シリカフルオロケイ酸水溶液のガス発生塔19への供給と同時に、95重量%の硫酸を外部供給源からガス洗浄塔23に供給した。更に、同時にガス洗浄塔23からガス発生塔19への95重量%硫酸の供給も開始し、ガス発生塔19に於いて四フッ化ケイ素の発生を開始した。ガス発生塔19にて発生させた四フッ化ケイ素はガス洗浄塔23を経由した後、希フッ化水素酸を冷却循環させたスクラバーにて吸収・回収した。尚、ガス洗浄塔23を出た四フッ化ケイ素の一部を間欠的にサンプリングし、その中に含まれる空気成分濃度をガスクロマトグラフィーにより分析した。また、ガス発生塔19で副生する廃硫酸はガス発生塔19の塔底より別途用意した受槽(図示しない)へ抜き出した。尚、本実施例で使用した95重量%硫酸は予め脱気処理を行ったものである。また、硫酸の使用温度は45℃とした。
【0065】
前記粗高シリカフルオロケイ酸水溶液の蒸留及び四フッ化ケイ素発生操作を4.5時間行った。その結果、第1蒸留塔10に供給した粗高シリカフルオロケイ酸水溶液の総量は4273.8gであり、第1蒸留塔10の底部より回収したケイフッ化水素酸量は2236.7gであった。また、該ケイフッ化水素酸の組成はケイフッ化水素33.6重量%、遊離フッ化水素9.4重量%であった。気液分離槽12には精製高シリカフルオロケイ酸水溶液344.3gが残存しており、その組成は高シリカフルオロケイ酸水溶液52.4重量%、遊離フッ化水素2.2重量%であった。精製高シリカフルオロケイ酸水溶液の送液に用いたポンプの流量・運転時間及び該精製高シリカフルオロケイ酸水溶液の比重に基づき算出した結果、運転中に気液分離槽12からガス発生塔19に送られた高シリカフルオロケイ酸水溶液の液量は、1149.2gであった。また、運転開始前にスクラバーには、20.0重量%のフッ化水素酸を3004.1g仕込んでおいた。ガス発生終了後、スクラバー内の液は4024.9gとなっており、その組成がケイフッ化水素36.1重量%、フッ化水素濃度5.0重量%であることから、スクラバーで吸収された四フッ化ケイ素の総量は1020.8gであった。ガス洗浄塔23を経由してガス発生塔19に供給した95重量%硫酸の総量は3665.9gであり、ガス発生塔19の塔底から排出された廃硫酸は4502.9gであり、その組成は硫酸77.3重量%、フッ化水素3.5重量%であった。
【0066】
粗高シリカフルオロケイ酸水溶液、精製高シリカフルオロケイ酸水溶液、及びスクラバーにて回収したケイフッ化水素酸中の金属不純物分析により精製高シリカフルオロケイ酸水溶液が精製されていること、及び発生した四フッ化ケイ素には不純物が含まれていないことを確認した。当該金属不純物分析は、ICP−AES(誘導結合プラズマ発光分光分析)装置を用いて行った。その結果を表1に示す。
【0067】
【表1】

【0068】
発生した四フッ化ケイ素中の空気成分の分析をガスクロマトグラフィーにて行った。四フッ化ケイ素中に含まれる空気成分濃度はガス発生開始後から時間と共に減少し、運転開始から120分後以降ほぼ一定となり、酸素濃度が平均値で382ppmv、窒素濃度が平均値で710ppmvであった。また、その他の成分は検出されなかった。
【0069】
次に、図1に示す工程(d)の水蒸気蒸留塔28に廃硫酸と水蒸気を供給した。尚、小規模実験で高圧蒸気を少量で定量的に供給することができなかった為、ポンプにて定量供給した純水を熱媒にて間接加熱し、蒸気として供給した。蒸気の温度が低く、飽和状態での供給である為、水蒸気蒸留塔28の塔底には熱量を補うために熱媒による外部からの加熱を行った。該水蒸気蒸留塔28内には、外径6mmのテフロンラシヒリングを充填高2000mmになる様に設けた。また、水蒸気蒸留塔28の塔底運転温度は155℃とした。その結果、水蒸気蒸留塔28の塔底から回収された硫酸濃度は65.6重量%であり、含有するフッ化水素濃度は0.9ppmであった。また、水蒸気蒸留塔28の塔頂より38.3重量%のフッ化水素酸を回収した。
【0070】
次に、図1に示す工程(d)の濃縮缶32に水蒸気蒸留塔28で得られた65.6重量%硫酸を供給し、32Torr、189℃で脱水濃縮を行ったところ、硫酸濃度が95.3重量%まで濃縮できていることを確認した。
【0071】
次に、図1に示す工程(e)の反応器40にて、フッ化物及びケイフッ化物を含む乾燥固体58.8gと、98重量%の硫酸74.5gとを反応させた。これにより、14.5gのフッ化水素と、8.2gの四フッ化ケイ素とを回収した。
【0072】
前記と同じ操作で四フッ化ケイ素を発生させ、発生させたガスはスクラバーで吸収せずに、ボンベに回収した。ボンベに回収した四フッ化ケイ素をコンプレッサーにて昇圧し、冷却・液化し、図1の工程(g)に示す第2蒸留塔51に供給して蒸留を行った。蒸留前後の四フッ化ケイ素中の空気成分の濃度分析は、ガスクロマトグラフィーにより行った。蒸留前の四フッ化ケイ素中の酸素濃度は405ppmv、窒素濃度は752ppmvであった。蒸留後の四フッ化ケイ素中の酸素濃度は0.5ppmv以下、窒素濃度は1ppmv以下であった。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の実施の一形態に係る四フッ化ケイ素の製造方法及び製造装置を説明する為のフロー図である。
【符号の説明】
【0074】
1 原料
2 第1原料路
3 反応槽
4 ガス路
5 第1吸収塔
6 冷却器
7 固液分離器
8 粗高シリカフルオロケイ酸水溶液路
9 固形不純物路
10 第1蒸留塔
11 凝縮器
12 気液分離槽
13 第1再熱器
14 固液分離器
15 ケイフッ化水素酸路
16 固形不純物路
17 四フッ化ケイ素路
18 精製高シリカフルオロケイ酸水溶液路
19 ガス発生塔(充填塔)
20 第1濃硫酸路
21 四フッ化ケイ素路
22 廃硫酸路
23 ガス洗浄塔
24 第2濃硫酸路
25 硫酸
26 粗四フッ化ケイ素路
27 水蒸気
28 水蒸気蒸留塔
29 硫酸路
30 フッ化水素酸路
32 濃縮缶
33 過熱器
34 除去水
35 第4濃硫酸路
36 洗浄塔
37 硫酸
38 乾燥器
39 第1蒸気路
40 反応器
41 ガス路
42 硫酸塩
43 第2蒸気路
44 無水フッ酸
45 第2吸収塔
46 ガス路
47 第2原料路
48 ガス
49 吸着塔
50 熱交換器
51 第2蒸留塔
52 第2再熱器
53 凝縮器
54 精製四フッ化ケイ素



【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化ケイ素を含む原料と、フッ化水素酸及びケイフッ化水素酸を含む混合液とを反応させることにより、高シリカフルオロケイ酸水溶液を生成する高シリカフルオロケイ酸生成工程と、
前記高シリカフルオロケイ酸水溶液と硫酸とを反応させることにより、四フッ化ケイ素を生成する四フッ化ケイ素生成工程と、
前記四フッ化ケイ素生成工程で副生するフッ化水素含有の硫酸を水蒸気蒸留することにより、硫酸を生成する硫酸生成工程とを有し、
前記四フッ化ケイ素生成工程では、前記硫酸生成工程で生成する前記硫酸を再利用することを特徴とする四フッ化ケイ素の製造方法。
【請求項2】
前記硫酸生成工程は、生成する前記硫酸を前記四フッ化ケイ素生成工程で使用可能な所定濃度になるまで脱水濃縮する工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の四フッ化ケイ素の製造方法。
【請求項3】
前記原料として二酸化ケイ素の含有量が80重量%以上の珪砂を使用することを特徴とする請求項1又は2に記載の四フッ化ケイ素の製造方法。
【請求項4】
前記高シリカフルオロケイ酸生成工程で生成する前記高シリカフルオロケイ酸水溶液は、生成物に占める含有量が42重量%以上であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の四フッ化ケイ素の製造方法。
【請求項5】
前記四フッ化ケイ素生成工程で使用する前記硫酸の濃度が85重量%以上であることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の四フッ化ケイ素の製造方法。
【請求項6】
前記四フッ化ケイ素生成工程で使用する前記硫酸の使用温度が60℃以下であることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の四フッ化ケイ素の製造方法。
【請求項7】
前記四フッ化ケイ素生成工程で生成するフッ化水素含有の硫酸に於ける硫酸濃度は、フッ化水素を除き硫酸及び水のみに基づいて算出した場合に、80重量%以上に保持されていることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の四フッ化ケイ素の製造方法。
【請求項8】
前記硫酸生成工程で生成する硫酸中に含まれるフッ化水素の含有量が1ppmw以下であることを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の四フッ化ケイ素の製造方法。
【請求項9】
二酸化ケイ素を含む原料と、フッ化水素酸及びケイフッ化水素酸を含む混合液とを反応させて、高シリカフルオロケイ酸水溶液を生成させる反応槽と、
前記高シリカフルオロケイ酸水溶液と硫酸とを反応させて、四フッ化ケイ素を生成させる充填塔と、
前記充填塔で副生するフッ化水素含有の硫酸を水蒸気蒸留してフッ化水素を除去し、硫酸を生成させる水蒸気蒸留塔と、
前記水蒸気蒸留塔で生成した前記硫酸を濃縮する濃縮缶とを有し、
前記濃縮缶に於いて濃縮した前記硫酸を前記充填塔に供給することを特徴とする四フッ化ケイ素の製造装置。
【請求項10】
前記濃縮缶は、前記水蒸気蒸留塔で生成した前記硫酸を、前記充填塔で使用可能な所定濃度になるまで脱水濃縮させることを特徴とする請求項9に記載の四フッ化ケイ素の製造装置。
【請求項11】
前記濃縮缶は、金属又はガラスライニングからなることを特徴とする請求項9又は10に記載の四フッ化ケイ素の製造装置。


【図1】
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【公開番号】特開2007−99550(P2007−99550A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−289836(P2005−289836)
【出願日】平成17年10月3日(2005.10.3)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000222037)東北電力株式会社 (228)
【出願人】(000162847)ステラケミファ株式会社 (81)
【Fターム(参考)】