説明

四塩化チタンの蒸留精製装置、同装置の整備方法および同装置による四塩化チタンの精製方法

【課題】四塩化チタン中の不純物を固形物として分離して高純度の四塩化チタンが得られると共に、精留塔に使用される充填層を効率よく整備することのできる方法を提供する。
【解決手段】四塩化チタンを気化させるリボイラ、不規則充填物層、規則充填物層、および精留塔を備えた蒸留精製装置。また、この装置を用いた四塩化チタンの精製方法であって、リボイラで四塩化チタンガスを生成させ、四塩化チタンガスを不規則充填物層に導き、次いで四塩化チタンガスを規則充填物層に導き、精留塔から精製塩化チタンを得る四塩化チタンの精製方法。さらに、上記装置の使用済み不規則充填物の整備方法であって、蒸留精製装置内に配設した不規則充填物を脱着し整備する四塩化チタン蒸留精製装置の整備方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チタン鉱石の塩素化反応で生成した四塩化チタンの蒸留精製装置、同装置の整備方法および同装置による四塩化チタンの精製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
四塩化チタンは、金属チタンの原料、酸化チタンあるいは電子材料の原料として幅広く使用されている。四塩化チタンは、通常、酸化チタンを主成分とするチタン鉱石の塩素化反応によって製造されるが、この粗四塩化チタンには、チタン鉱石や塩素化反応に供されたコークスの微粉のみならず、チタン鉱石中に含まれている不純物金属成分も溶存している。
【0003】
そこで、このような粗四塩化チタンは、製品として出荷されるに先立って、蒸留精製設備に供されて四塩化チタン中に溶解している不純物成分が分離除去されている。
【0004】
前記蒸留精製設備は、底部にリボイラと呼ばれる四塩化チタンの蒸発器を備えており、その上方には、四塩化チタンを均一に分散させる充填物が充填された充填層と、内部に複数の棚段が配設された精留塔とを備えている。リボイラより気化した四塩化チタンガスは、前記蒸留精製設備を構成する精留塔を上昇する一方、精留塔頂部に到達した後、冷却して液化されて流下する液状四塩化チタンと向流接触させることで、四塩化チタン中の低沸点不純物と高沸点不純物が効率よく分離精製されている。四塩化チタンよりも沸点の高い不純物成分は蒸留精製設備の底部に蓄積され、沸点の低い成分は頂部に濃縮分離される。
【0005】
しかしながら、長期に亘って前記のような蒸留精製設備を稼働させていくと蒸留精製設備内の圧損が次第に上昇する傾向を示す場合があり、その原因は、四塩化チタン中に含まれている不純物が流路上に析出することによる場合が多い。
【0006】
このため、前記のような蒸留精製設備の圧損の上昇傾向が著しい場合には、前記蒸留精製設備を解体して、精留塔およびその内部の棚段を整備する必要がある。整備作業を行う場合には、蒸留精製設備の稼働を停止させる必要があり、その結果、生産性が低下して好ましくないとされている。
【0007】
また、蒸留精製設備底部のリボイラにて生成した四塩化チタンガスが精留塔を上昇する間に四塩化チタンガス中に含まれている不純物塩化物が冷却されて精留塔の途中で固形の析出物が形成される場合があり、これは精留塔の閉塞を招き改善が求められている。
【0008】
精留塔の閉塞は、リボイラから精留塔の頂部に至る途中に設けた充填層内で形成される場合が多い。前記した充填層は、リボイラで生成した四塩化チタン蒸気を均一に分散させると共に、前記四塩化チタンガスと液状四塩化チタンとの円滑な接触を可能ならしめるという効果を奏するものである。
【0009】
よって、前記充填層を撤去すれば精留塔内の閉塞は回避できるが、充填層を用いないと四塩化チタンの純度が低下するという新たな課題が生じる。このように、前記精留塔内の閉塞をできるだけ回避しつつ、効率の良い四塩化チタンの精製方法が求められている。
【0010】
更に、前記精留塔内に配置した充填層を塔外に持ち出した後、前記充填層内に析出した不純物を酸洗あるいは水洗した後、次いで乾燥させないと、元の精留塔に戻すことができないという別の課題がある。
【0011】
更には、前記付着物は柔らかい固形物や粘着性の高い物質で構成されているため、前記物質を水洗除去するには長時間を要する場合があり、改善が求められている。
【0012】
この点については、使用済みの精留塔の構成部品を粗四塩化チタンで洗浄する方法が開示されているが(例えば、特許文献1参照)、洗浄液である粗四塩化チタン中には不純物が多く含まれているために、前記精留塔の構成部品を却って汚染する場合があり改善が求められている。
【0013】
【特許文献1】特開2006−055740号
【0014】
以上述べたように、四塩化チタンの蒸留精製設備である精留塔内に配設された充填層における閉塞をできるだけ回避すると共に、一旦閉塞した充填層を効率よく整備して元の状態に復帰させる技術が望まれている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑みて成されたものであって、四塩化チタン中の不純物を固形物として分離して高純度の四塩化チタンが得られると共に、前記精留塔に使用される充填層を効率よく整備することのできる方法の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
かかる実情に基づいて鋭意検討を重ねてきたところ、四塩化チタンの蒸留精製設備を構成する精留塔内に、不規則充填物層と規則充填物層からなる不純物分離装置を配設し、原料四塩化チタン中に含まれる不純物ガスを分解して、固形物として分離回収できることを見出し、本願発明を完成するに至った。
【0017】
即ち、本願発明は、四塩化チタンを気化させるリボイラ、不規則充填物層、規則充填物層および精留塔を備えた蒸留精製装置を用いた四塩化チタンの精製方法であって、リボイラで四塩化チタンガスを生成させ、四塩化チタンガスを上記不規則充填物層に導き、次いで四塩化チタンガスを規則充填物層に導き、精留塔から精製塩化チタンを得ることを特徴とするものである。
【0018】
上記四塩化チタンの精製方法においては、不規則充填物層あるいは前記規則充填物層において、四塩化チタンガス中に含まれる不純物ガスを分解して不純物の固形物として前記充填物上に析出分離させることを好ましい態様としている。
【0019】
また、上記四塩化チタンの精製方法においては、規則充填物層の充填物が、鉛直方向に対して相互に離間して配設された板状部材で構成されていること、および板状部材が金属板であること好ましい態様としている。
【0020】
さらに、上記四塩化チタンの精製方法においては、不規則充填物層の充填物が中空状リング体で構成されていること、中空状リング体が顆粒状の多孔体であること、および、顆粒状の多孔体が金属またはセラミクスで構成されていることを好ましい態様としている。
【0021】
本願発明の蒸留精製装置は、四塩化チタンを気化させるリボイラ、不規則充填物層、規則充填物層、および精留塔とを備えたことを特徴とするものである。
【0022】
また、上記四塩化チタンの蒸留精製装置においては、規則充填物層の充填物が、鉛直方向に対して相互に離間して配設された板状部材で構成されていること、および板状部材が金属板であることを好ましい態様とするものである。
【0023】
さらに、上記四塩化チタンの蒸留精製装置においては、不規則充填物層の充填物が中空状リング体で構成されていること、中空状リング体が顆粒状の多孔体であること、および顆粒状の多孔体が金属またはセラミクスで構成されていることを好ましい態様とするものである。
【0024】
本願発明の四塩化チタン蒸留精製装置の整備方法は、具体的には蒸留精製装置で使用した不規則充填物の整備方法であって、蒸留精製装置内に配設した上記不規則充填物を脱着し整備することを特徴とするものである。
【0025】
上記四塩化チタン蒸留精製装置の整備方法においては、蒸留精製装置から脱着した不規則充填物層内の充填物を四塩化チタンで洗浄することを好ましい態様としている。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、四塩化チタン中の不純物を効率よく分離除去できるという効果に加えて、前記不純物分離装置の解体整備を効率よく進めることができるという効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明の最良の実施形態について、図面を用いて以下に説明する。
図1は、本願発明に係る四塩化チタンの蒸留精製装置Rを模式的に表したものである。
蒸留精製装置Rは、精留塔1、リボイラ2、コンデンサ3、規則充填物層4、不規則充填物層5から構成されており、リボイラ2には原料四塩化チタン6が保持されており、図示しない加熱炉にて、四塩化チタンの沸点あるいはそれ以上の温度に保持されている。
【0028】
本願発明においては、前記精製すべき原料四塩化チタン6を精留塔1に供給するに先立って、不純物分離装置に導くことが好ましい。本願発明における不純物分離装置とは、規則充填物層4と不規則充填物5を直列に接続して精留塔1の底部に配設することが好ましい。
【0029】
本願発明においては、前記のような設備を用いることで原料四塩化チタン中に含まれる不純物を固形物として析出させて分離することができるという効果を奏するものであり、さらに、四塩化チタン中に含まれる硫化水素ガスをも効果的に分離することができる。
【0030】
前記硫化水素ガスは、蒸留精製に先立って原料四塩化チタン中に含まれるバナジウムを除去するために使用され、反応に与らなかったガスが原料四塩化チタン中に残留したものである。
【0031】
前記四塩化チタンガス中に含まれる硫化水素ガスは、不規則充填物層5あるいは規則充填物層4に接触させることにより硫黄の単体と水素ガスに分解することができる。不規則充填物層5あるいは規則充填物層4にて析出した固形物の硫黄は、水洗により効率的に分離することができる。
【0032】
また、前記固形物は、硫黄以外にも四塩化チタン中のアルミ、ケイ素、またはニオブの塩化物が補足されている場合もある。その場合には、水洗後、更に塩酸で酸洗した方が好ましい。前記した洗浄操作行うことで、アルミやケイ素あるいはニオブの塩化物を効率よく分離除去することができるという効果を奏するものである。
【0033】
本願発明においては、原料四塩化チタン6、あるいはリボイラ2に保持された四塩化チタンガスを、まずは不規則充填物層5を通過させた後、次いで、規則充填物層4を通過させることが好ましい。
【0034】
前記のような順番で操作を行うことで、精留塔1の本体に原料四塩化チタンを供給するに先立って、原料四塩化チタン中に含まれる不純物ガスを分解して固形不純物として分離回収することができるという効果を奏するものである。その結果、精留塔1本体における不純物の析出物を抑制することができるという効果を奏するものである。
【0035】
本願発明においては、前記不規則充填物層5には中空状リング体を充填するように構成することが好ましい。前記中空状リング体とは、具体的には、例えばドーナツ状のリング体を意味しておりラシッヒリング等の名称で呼ばれているような一般的な精留塔用の充填物を好適に用いることができる。
【0036】
本願発明においては、前記不規則充填物層5を、四塩化チタンの蒸留精製装置Rの底部に配設したリボイラ2の直上に配設することが好ましい。前記不規則充填物層5をリボイラ2の直上に配設することで、リボイラ2から蒸発してくる四塩化チタン蒸気に混じって飛散する液状四塩化チタンを効率よく捕捉することができるという効果を奏するものである。
【0037】
また、原料四塩化チタン6も、前記のように、不規則充填物層5を通過させた後、規則充填物層4を通過させることが好ましい。
【0038】
不規則充填物層5は、前記のように高温の四塩化チタンガスに曝されるため、耐食性のある物質で構成することが好ましくい。前記物質としては、耐食性のある金属やセラミクスで構成することが好ましい。前記耐食性のある金属としては、ステンレス鋼で構成することが好ましく、SUS304やSUS316等で構成することが好ましい。一方、耐食性のあるセラミクスとしては、窒化ケイ素や窒化アルミで構成することが好ましい。
【0039】
本願発明に係る中空状リング体の大きさは外径25mm〜100mmの範囲に構成しておくことが好ましい。前記のような顆粒状の大きさの顆粒状多孔体により不規則充填物層5を構成することで、リボイラ2から飛散してくる液状四塩化チタンを効率よく捕捉することができるという効果を奏するものである。
【0040】
前記不規則充填物層5の空隙率は30%〜60%の範囲となるように顆粒状多孔体の気孔率を充填しておくことが好ましい。前記のような空隙率および気孔率で構成することにより、リボイラ2から飛散してくる液状四塩化チタンを効率よく補足できるのみならず、リボイラ2から蒸発してくる四塩化チタンガスの通過も効率よく進めることができるという効果を奏するものである。
【0041】
本願発明においては、不規則充填物層5を配設した精留塔1の側壁には、図示しない開口部を設けておくことが好ましい。前記した開口部を精留塔1の側壁に設けておくことで、不規則充填物層5に充填した顆粒状の多孔体を外部に効率よく掻き出すことができるという効果を奏するものである。外部に掻き出された中空状リング体は、水洗あるいは酸洗することで、多孔体内部に析出した固形不純物を効率よく洗浄することができる。
【0042】
本願発明においては、不規則充填物層5の直上には、規則充填物層4を配設しておくことが好ましい。前記したような規則充填物層4を配設することで、不規則充填物層5を通過してきた液状の四塩化チタンを確実に捕捉し、気体の四塩化チタンガスのみを精留塔1の上方へ通過させることができるという効果を奏するものである。その結果、液状の四塩化チタンの混入による精製四塩化チタンの品質汚染を効果的に抑制することができるという効果を奏するものである。
【0043】
前記規則充填物層4は、波型の折り曲げた板を積層した板状部材(スルザーパッキングとも呼ばれる場合がある)から構成し、図1に示すように流通口が互い違いになるように配置することができるが、これ以外の部材を用いて構成しても前記の効果を奏するものである。
【0044】
前記した構成とすることで、リボイラ2から発生した四塩化チタンガスと精留塔1の頂部から流下してきた液状四塩化チタンとの向流接触を効率的に進めることができる。その結果、四塩化チタンガス中の不純物を前記液状四塩化チタンに対して効率的に移動させることができるという効果を奏するものである。
【0045】
本願発明においては、蒸留精製装置Rに配設した規則充填物層4の直上に対応して精留塔1の側壁には、液状四塩化チタン供給ノズル8を配設しておくことが好ましい。前記のようなノズルを配設しておくことで、液状の四塩化チタンを規則充填物層5に流下させることができる。その結果、規則充填物層5内に析出した不純物を効果的に洗浄することができる。
【0046】
前記した操作で、精留塔1の頂部には、四塩化チタンよりも沸点の低い物質が濃縮され、精留塔1の底部には、四塩化チタンよりも沸点の高い物質が濃縮される。よって、精留塔内の温度分布が丁度四塩化チタンの沸点に対応した精留塔1の側壁から、精留塔1の内部に生成してくる四塩化チタンガスを外部に抜き出すことにより、純度の高い四塩化チタンを回収することができるという効果を奏するものである。
【0047】
前記不純物の溶解した洗浄後の液状四塩化チタンは、リボイラ2の内部に戻り、再度蒸発されて、精留塔1の内部を上昇し精製される。一方、洗浄後の液状四塩化チタンに含まれる不純物のうち固形物は、リボイラ2の底部に沈積して四塩化チタンと分離される。よって、前記リボイラ2の底部に蓄積した残渣は、定期的に外部に抜き出すことが好ましい。
【0048】
本願発明に係る四塩化チタン蒸留精製装置の整備方法は、不規則充填物層5の内部に充填した中空状リング体を外部に抜き出してから整備することを特徴とするものである。その結果、精留塔1の本体に損傷を与えることなく効率よく中空状リング体を効率よく整備することができるという効果を奏するものである。
【0049】
また、本願発明に係る規則充填物層4に対しては、前記したように上方から多量の液状四塩化チタンを供給することにより、精留塔1の外部に取り出さなくとも、前記規則充填物層4の内部に析出した不純物を効率よく洗浄することができるという効果を奏するものである。
【0050】
本願発明においては、前記の方法で外部に抜き出された顆粒状多孔体は、精製四塩化チタンで洗浄することが好ましい。前記洗浄された四塩化チタンは、不純物が多量に含まれているが、前記洗浄後の四塩化チタンは、塩化炉で生成した四塩化ガスの冷却系に噴霧乾燥することより、前記四塩化チタン中に含まれる不純物を分離除去することができ、不純物の分離された四塩化チタンは、再度精留塔1に戻して精製することにより精製四塩化チタンとして回収することができるという効果を奏するものである。
【0051】
以上述べた四塩化チタンの蒸留精製装置を用いることで精製四塩化チタンを効率よく製造することができるという効果を奏するものである。更には、前記整備方法により、効率よく不規則充填物層4と規則充填物層5を効率よく整備し、蒸留生成設備を再利用することができるという効果を奏するものである。
【実施例】
【0052】
[実施例1]
本願発明に実施例に示した装置構成の仕様を以下に示す。
1.精留塔
材質:SUS304L
2.規則充填物層
材質:SUS304
構造:水平積層板
3.不規則充填物層
材質:SUS304
構造:中空状リング体
大きさ:外径25mm
4.リボイラ温度
136℃ (四塩化チタンの沸点温度)
5.コンデンサ温度
105℃
【0053】
前記した装置構成により、塩化炉で製造された四塩化チタンを原料として図1に示した蒸留精製装置にて精製し、製品四塩化チタンを連続的に精製した。前記四塩化チタンの精製過程において、規則充填物層および不規則充填物層の圧損が上昇したので、規則充填物層4の上から外部より液状四塩化チタンを供給して前記充填物層を洗浄した。その結果、圧損は元の状態に回復した。
【0054】
前記不規則充填物層あるいは規則充填物層に析出していた固形物を分析したところ、硫黄が検出された。また、前記硫黄以外には、鉄、アルミおよびニオブが検出された。本実施態様において蒸留精製された四塩化チタン中の硫黄、鉄、アルミおよびニオブは、蒸留精製前に比べて効果的に低減されていることが確認された。なお、表1は、精製前の四塩化チタン中の不純物濃度を100とした場合の、精製後の四塩化チタン中の不純物濃度を表す。
【0055】
[実施例2]
実施例1の条件にて更に操業を継続したところ、不規則充填物層5の圧損が再度上昇したので、前記不規則充填物層5から中空状リング体を外部に抜き出した後、前記顆粒状多孔体を精製四塩化チタンで洗浄した。次いで、希塩酸で洗浄した後、水洗乾燥して元の不規則充填物層に戻した。その結果、圧損は元の状態に回復した。
【0056】
[比較例1]
実施例1において、不規則充填物層5を装着しないで規則充填物層4のみを配設して四塩化チタンの蒸留精製を行った。しかしながら、蒸留精製された四塩化チタンの不純物濃度は、満足の行くものではなかった。また、その後の運転を継続したところ、規則充填層4の圧損が上昇する傾向を示した。そこで、前記規則充填物層4の上から精留塔1の側壁に設けたノズル8から液状四塩化チタンを供給したところ、前記規則充填層4の圧損は低下した。しかしながら、元の状態まで回復することはなかった。そこで止むを得ず、蒸留精製装置Rの運転を停止して、規則充填物層4を整備したところ、圧損は、元の状態まで回復した。しかしながら、蒸留精製装置Rを90日間停止せざるを得なかった。
【0057】
【表1】

【0058】
以上の試験結果により、本願発明に係る四塩化チタンの精製方法においては、前記四塩化チタンの蒸留精製装置に配設した不規則充填層が精製四塩化チタン中の不純物の低減に効果的であるのみならず、蒸留精製装置の整備も省力化できるという効果も確認された。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、純度の高い四塩化チタンを長期に亘り製造できる蒸留精製装置の構造と運転方法および整備方法を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本願発明の四塩化チタンの蒸留精製装置を示す模式断面図である。
【符号の説明】
【0061】
R…蒸留精製装置、1…精留塔、2…リボイラ、3…コンデンサ、4…規則充填物層、5…不規則充填物層、6…原料四塩化チタン、7…棚段、8…液状四塩化チタン供給ノズル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
四塩化チタンを気化させるリボイラ、不規則充填物層、規則充填物層、および精留塔を備えた蒸留精製装置を用いた四塩化チタンの精製方法であって、
上記リボイラで四塩化チタンガスを生成させ、
上記四塩化チタンガスを上記不規則充填物層に導き、
次いで上記四塩化チタンガスを上記規則充填物層に導き、
上記精留塔から精製塩化チタンを得ることを特徴とする四塩化チタンの精製方法。
【請求項2】
前記不規則充填物層あるいは前記規則充填物層において、四塩化チタンガス中に含まれる不純物ガスを分解して不純物の固形物として前記充填物上に析出分離させることを特徴とする請求項1に記載の四塩化チタンの精製方法。
【請求項3】
前記不純物ガスが、硫化水素、塩化アルミ、塩化ケイ素、または塩化ニオブであることを特徴とする請求項2に記載の四塩化チタンの精製方法。
【請求項4】
前記規則充填物層の充填物が、鉛直方向に対して相互に離間して配設された板状部材で構成されていることを特徴とする請求項2に記載の四塩化チタンの精製方法。
【請求項5】
前記板状部材が、金属板であることを特徴とする請求項4に記載の四塩化チタンの精製方法。
【請求項6】
前記不規則充填物層の充填物が、中空状リング体で構成されていることを特徴とする請求項2に記載の四塩化チタンの精製方法。
【請求項7】
前記中空状リング体が、顆粒状の多孔体であることを特徴とする請求項6に記載の四塩化チタンの精製方法。
【請求項8】
前記顆粒状の多孔体が金属またはセラミクスで構成されていることを特徴とする請求項7に記載の四塩化チタンの精製方法。
【請求項9】
前記金属がステンレス鋼であることを特徴とする請求項8に記載の四塩化チタンの精製方法。
【請求項10】
前記セラミクスが窒化ケイ素あるいは窒化アルミであることを特徴とする請求項8に記載の四塩化チタンの精製方法。
【請求項11】
四塩化チタンを気化させるリボイラ、不規則充填物層、規則充填物層、および精留塔を備えたことを特徴とする四塩化チタンの蒸留精製装置。
【請求項12】
前記規則充填物層の充填物が、鉛直方向に対して相互に離間して配設された板状部材で構成されていることを特徴とする請求項11に記載の四塩化チタンの蒸留精製装置。
【請求項13】
前記板状部材が、金属板であることを特徴とする請求項12に記載の四塩化チタンの蒸留精製装置。
【請求項14】
前記不規則充填物層の充填物が、中空状リング体で構成されていることを特徴とする請求項11に記載の四塩化チタンの蒸留精製装置。
【請求項15】
前記中空状リング体が、顆粒状の多孔体であることを特徴とする請求項14に記載の四塩化チタンの蒸留精製装置。
【請求項16】
前記顆粒状の多孔体が金属またはセラミクスで構成されていることを特徴とする請求項15に記載の四塩化チタンの蒸留精製装置。
【請求項17】
前記金属がステンレス鋼であることを特徴とする請求項16に記載の四塩化チタンの蒸留精製装置。
【請求項18】
前記セラミクスが窒化ケイ素あるいは窒化アルミであることを特徴とする請求項16に記載の四塩化チタンの蒸留精製装置。
【請求項19】
請求項11〜18のいずれかに記載の四塩化チタンの蒸留精製装置を構成する使用済みの不規則充填物の整備方法であって、上記蒸留精製装置内に配設した上記不規則充填物を脱着し整備することを特徴とする四塩化チタン蒸留精製装置の整備方法。
【請求項20】
前記蒸留精製装置から脱着した前記不規則充填物を四塩化チタンで洗浄することを特徴とする請求項19に記載の四塩化チタン蒸留精製装置の整備方法。
【請求項21】
前記不規則充填物を洗浄した後の四塩化チタンを、四塩化チタンの製造装置を構成する四塩化チタンガスの冷却設備内で噴霧乾燥することを特徴とする請求項19に記載の四塩化チタン蒸留精製装置の整備方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−30857(P2010−30857A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−196420(P2008−196420)
【出願日】平成20年7月30日(2008.7.30)
【出願人】(390007227)東邦チタニウム株式会社 (191)
【Fターム(参考)】