四肢の位置又は位置の変化を表す信号を生成するセンサ装置及び方法
本発明は、センサ装置、及び該装置に対する四肢、特に使用者の手の空間的位置、及び/又は動きを表す電子信号を生成する装置と方法とに関する。かかる電子信号は、データ処理装置、通信装置、及び他の電気機器で入力処理を実行するのに使用できる。本発明によるセンサ装置は、送信電極部と、交流電圧を送信電極に印可する電圧発生器と、第1、第2、第3の受信電極部と、を備え、前記第1、第2、第3の受信電極部は、高抵抗の読み出しシステムに接続される。好ましくは、前記第1、第2、第3の受信電極部は、インピーダンス変換システムの高抵抗入力部に接続され、各インピーダンス変換部の出力部に生じる電気的事象間の違いに基づいて、場所又は動きを示す情報が取得される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサ装置、及びセンサ装置の位置に対する四肢、特に使用者の手の空間的位置、及び/又は動きを表す電子信号を生成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
かかる電子信号は、データ処理装置、通信装置、及びさらなる電気機器で入力処理を実行するために使用できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、四肢の位置、及び/又は動きを表す信号を、特に有利な手法で生成することができる解決手法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明によると、この目的は、参照領域に対する四肢の位置又は動きを表す電気信号を生成するセンサ装置であって、送信電極部と、交流電圧を送信電極部に印可するための電圧発生器と、第1の受信電極部と、第2の受信電極部と、第3の受信電極部と、を備え、前記第1の受信電極部、前記第2の受信電極部、前記第3の受信電極部が随時、高抵抗の読み出しシステムと接続されることを特徴とする、センサ装置によって解決される。
【0005】
好ましくは、前記第1の受信電極部、前記第2の受信電極部、前記第3の受信電極部が随時、インピーダンス変換システムの高抵抗の入力部と接続し、随時、前記インピーダンス変換器の出力部に生ずる電気的事象間の差分に基づいて、場所又は動きを示す情報を取得する。
【0006】
前記受信電極で読みだされたレベルから複合信号を生成することができる。この複合信号は前記受信電極に印可される電圧の和に相当する。この複合信号は、所定の増幅率によって正規化することができ、随時、インピーダンス変換システムのコンパレータ入力部に供給される。
【0007】
好ましくは、随時、前記インピーダンス変換システムの出力信号の同期特性、特に、励起電圧に対する出力信号の電圧レベル及び/又は位相、を表す信号を供給する同期検波システムを備える。随時、前記同期検波器のそれぞれの出力部の電気的事象間の違い{差分}に基づいて、場所又は動きを示す情報を取得することができる。
【0008】
本発明の特に好適な実施の形態によると、前記受信電極が前記送信電極部の周りに対称に配置される。前記送信電極は、好ましくは、電源(マイクロコントローラ)によって交流電圧を印可され、周囲に電界、好ましくは、準静的な電界を生成する。前記受信電極は、好ましくは、前記送信電極の周りに対称に配置される。
【0009】
前記受信電極に生ずる電圧が前記送信電極の電場の分布に関する情報を含む。
【0010】
前記受信電極は、前記送信電極の電界に干渉しないように、前記インピーダンス変換器の高抵抗入力部に接続される。随時、前記インピーダンス変換器の下流の各信号から平均値を生成する。該平均値を増幅することができる。同期検波器によって増幅された信号の振幅を取得し、さらに、該振幅をADCによってデジタル化して、評価を行うためにマイクロコントローラに伝送することができる。前記同期検波器の代わりにダイオード整流器又はピーク検波器を用いることもできる。
【0011】
本発明に係わるセンサ装置は、特に、身振り、動き又は手の位置の取得に用いることができる。好ましくは、少なくともセンサ電子装置の主要部は、測定用電極を含むように、コンパクトなチップ状の形体として構成される。これによって、特に有利なセンサ技術への適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係わるセンサ装置の基本構造を示すブロック図である。
【図2】入力回路の構造を示す配線図である。
【図3】送信電極部と受信電極部の構造の一例を示す概略図である。
【図4】本発明に係わる出力回路を示す回路図である。
【図5】本発明に係わる評価原理をXY平面で説明するための、座標系を示す図である。
【図6】本発明に係わる評価原理をさらに説明する、座標空間を表す図である。
【図7】本発明に従って算出した法線ベクトルを示す斜視図である。
【図8】本発明に係わる考え方に沿った、身振りに基づいて位置決めされるカーソル点を有する格子システム、を表す図である。
【図9】測定値の空間的割り当てを説明する第1の図である。
【図10】測定値の空間的割り当てを説明する第2の図である。
【図11】測定値の空間的割り当てを説明する第3の図である。
【図12】測定値の空間的割り当てを説明する第4の図である。
【図13】等ポテンシャル線の推移を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明のさらなる詳細と特徴について、図面を参照しながら説明する。
【0014】
図1は、本発明に係わる好適なセンサ装置の回路構成のブロック図である。
【0015】
本発明に係わるセンサ装置は、好ましくは、3つの測定用電極K1,K2,K3を有する。この装置は、2電極を有する装置に比較してより均一な電界を生成する。
【0016】
応答を距離の関数として線形化するために、好ましくは、応答を(例えば、ダイオードによって)対数変換することが好ましい。好ましくは、アナログ信号を、例えば、MSP430−マイクロコントローラ(F2012)の高速ADSを用いて同期して捕捉する。有利には、本発明に係わるモジュールをPC(コンピュータ)に接続するために、イデント(Ident)USBモジュールへの直接接続を組み込むことができる。
【0017】
図1に示す回路図において、送信電極Gには電圧発生器(マイクロコントローラ)から交流電圧が供給され、その周りに電界を生成している。受信電極K1,K2,K3は、送信電極Gの周りに対称に配置され、それぞれに印可される電圧は送信電極Gの電界の分布に関する情報を有している。受信電極K1,K2,K3の電圧(ac)は、インピーダンス変換器I1,I2,I3のチャネル1,2及び3上に現れる。電界に干渉しないように、受信電極K1,K2,K3はインピーダンス変換器I1,I2,I3の高抵抗入力部に接続される。
【0018】
インピーダンス変換器の下流の信号から平均値が生成される。さらに、チャネル毎に信号と平均値との差分、ΔK1,ΔK2及びΔK3が増幅される。平均値も増幅される。
【0019】
増幅された信号から、同期検波器により振幅を得て、さらに、ADCによってデジタル化して、マイクロコントローラに伝送して評価する。同期検波器の代わりに、例えば、ダイオード整流器、ピーク検波器などを用いたり、また、ADCによって交流電圧を直接デジタル化することもできる。
【0020】
マイクロコントローラは、評価された、あるいは部分的に評価された結果を、さらなる処理、特にX,Y、及び必要な場合はZ情報の抽出のために提供する。
【0021】
図2に、本発明に係わる好適な入力回路の構成を示す。図2に示す入力回路は、3チャネルを形成する。各チャネルは一つの受信電極(EL1〜EL3で記す)を有し、MOSFETで構成されている。この回路は、差動増幅器として設計されており、3つ以上(この場合は3つ)のチャネルを有する。3つのトランジスタQ1,Q及びQ3の全ては一つの電源(この場合はT1)に接続している。信号はトランジスタのドレインから取り出される。各チャネルは一つの専用出力部O_S1〜O_S3を有する。さらにもう一つの出力部(O_S0)がある。これはエミッタフォロワT2から取り出され、3つの入力信号の和を表す。
【0022】
MOSFETは、トランジスタの特性曲線の違いを補償するため、ソースに抵抗を有する。
【0023】
図3に、電極K1,K2,K3の幾何学的配置を示す。この図は、全ての部品を含む回路全体を外部の電界から遮蔽する広い領域(GND1)が中央に位置決めされていることを示す。これら電極は、120度の角度で相互に対称に配置され、結果として三角形を形成している。
【0024】
信号GND1は、アースに対して一定ではなく、例えば、100kHzの搬送周波数で振動する。GND1の振幅はピークツーピークで略5ボルトである。この振動は回路の第2部で生成される。
【0025】
信号GND1により生成される電界は、人間の干渉を受ける、具体的には、人間の手又は足が大地への短絡回路を形成する。電界は、手のある方向で、急速に減少する。これは、電極K1,K2,K3の電気信号に反映され、回路の出力に反映される。
【0026】
回路を差動増幅器として構成するという考えにより、信号GND1の電界が影響を受けていない非干渉状態では、各電極が、対称に配置されているため、同一の電位と同一の交流電界振幅を有することとなる。この交流電界振幅は略1〜2ボルトであり、手を回路に近づけると、このレベルに対して少し変化することになる。差動入力回路が同相入力信号を極めて大きく弱めるので、出力では電極信号間の差分のみが現れる。この差分は弱い信号であるが、さらに増幅することができる。
【0027】
図4に、対数圧縮を実現することができる本発明に係わる回路を示す。この回路では、電極の出力信号はさらに増幅され、コントローラのアナログデジタル変換部でデジタル化され、UARTインタフェースを介してコントローラからコンピュータに伝送される。コントローラは同時に、搬送周波数の生成と個々の信号の同期検波を実行する。
【0028】
入力回路の出力信号(O_S0〜O_S3)は入力部I_S0〜I_S3に送られる。続いてチャネルS0(複合信号)は略7の係数によって線形に増幅される(T7−2,T9−1,T9−2)。電極信号S1〜S3は、対数特性曲線を用いて増幅される。増幅器の回路に関連する構成上の違いはフィードバック、例えば、抵抗又はダイオード、においてのみ存在し、基本となる増幅器自体は同じものであることが好ましい。
【0029】
主増幅器は3つのトランジスタによって構成され、その増幅率は略40dBである。この比較的高い増幅率によって、トランジスタにばらつきがあっても、全てのチャネルと六角形型回路の特性をほぼ互いに等しく保つことができる。
【0030】
増幅器の動作原理をチャネルS3を例にとって説明する。トランジスタT1−1及びT2−2はエミッタフォロワとして接続されており、入力抵抗と出力抵抗の調整を行うようになっている。トランジスタT2−1は増幅器として機能し、この増幅率は実際には、エミッタ抵抗の電圧降下によって決定される。すなわち、増幅率は実際には供給電圧に依存する。印可する供給電圧が略9.5Vの場合、増幅率は略40dBとなる。
【0031】
チャネルS1〜S3に対数変換を用いることによって、距離に対して極めて非線形である信号を補償することが可能となる。すなわち、遠く離れた対象からの小さな信号は、回路の近くで発生した大きな信号よりもより大きく増幅される。これによって、回路全体でより平坦な伝播曲線を得ることができる。複合信号S0については線形増幅でよりよい結果が得られる。
【0032】
トランジスタQ1,T3及びT4の周りの回路はGND1信号を生成するのに用いられる。出力電圧V+(出力OUT_V+)は、GND1に対して一定であり、略9.5ボルトとなる。ここで、両方の電圧は、大地、ここではGND、に対してピークツーピークで略5ボルト、コントローラの出力の関数として上下に振動する。これらの振動は、略100kHzの搬送周波数で起こる。この周波数はチャネル毎にサンプリング周波数と同期している。これによってチャネル入力の同期と同期検波とを確実にすることができる。
【0033】
コンピュータとの接続は、例えば、出願人が開発したイデント(Ident)USBモジュールに接続することができるTX配線を用いる。コントローラもまた、GND1に対して作用するので、その出力信号は大地に対して相対化する必要がある。これはトランジスタT6の周囲に構成された電流ミラー回路によって行う。
【0034】
マイクロコントローラとしてMSP430F2012を用いる。これは16メガヘルツのクロック周波数を有し、毎秒200キロサンプルを超えるデジタル化ができ、私たちの同期変調には極めて適している。
【0035】
レイアウト
本発明に係わる入力回路と出力回路は、好ましくは独自の(六角形の)プリント基板として構成される。GND1,V+,S0〜S3の接続部は、好ましくは、LP(プリント基板)を上下に配置して、配線の直線部分で接続する。
【0036】
両方のプリント基板のレイアウトは重要であることが判明している。好ましくは、第一に、測定用電極は電界について同一の条件にあり、第二に、全てのチャネルの全増幅率が寄生容量により干渉されず、同じであるように調整を行う。
【0037】
上述の要件は、特に好ましい手法で以下のように実現することができる。
1.電極は120°の対称性をもって配置する。
2.電界に干渉しないように電極と同等の対称性を有するLP。すなわち、三角形型、六角形型から円形型まで。
3.GND0に対して一定の信号(GND0,+20V)はまさに使用者による信号であるため、これらの信号は測定用電極により可能な限り遮蔽する。
【0038】
データ評価/ソフトウェア
測定値を評価するために特に2つの機能的に優れた手法が試された。第1の手法は、傾斜平面を用いて電界を近似し、保存している参照表を用いて座標を算出する。傾斜平面を用いて電界を近似する手法について、以下、図5,6及び7を参照して説明する。
【0039】
傾斜平面を用いた電界近似
この評価の手法は、六角形の周囲の電界が人間によってどのように影響されるかという比較的大まかな考えに基づいている。この方法は、比較的少ない算出能力で実行可能で、より単純な用途に適している、すなわち、到来方向や大まかなキー機能の決定に適する。この方法では、六角形の直近で精度は最低となる。
【0040】
モデルに3軸を導入する:電極面の軸Xと軸Y、信号の軸S(図5及び図6参照)。
【0041】
電極は図5では、1,2,3で記されている。電極が配置される三角形の辺は2Lである。電極1〜3に関する六角形の出力信号をS1〜S3として信号軸に記す(図6)。
【0042】
上記(x,y,z)空間におけるこれらの3点は、最小の信号を有する電極の方に最も「傾く」、一つの平面を確定する。平面の傾きの方向は、電界の干渉因子(すなわち、人間の手など)の方向と一致し、平面の傾きは、干渉因子が電極に近づくほど大きくなる。
【0043】
干渉因子に対する方向と距離に関する定量的な情報は、解析幾何学によって驚くべき信頼性で得ることができる。このために、平面は以下の式で表される。
【0044】
【数1】
【0045】
ここで、法線ベクトルは
【0046】
【数2】
【0047】
である(図5)。方程式に電極の値を代入した後、線形システムを解くと、以下の法線ベクトルのパラメータが得られる。
【0048】
【数3】
【0049】
これらのパラメータから求める方向φと距離R(傾きβで表す)の値が得られる(図7)。
【0050】
【数4】
【0051】
こうして干渉因子の座標がRとφによって得られる。
【0052】
この座標は、六角形に対して接近しすぎていなければ手の位置に対して一義的である(異なる指を拳/手に握りしめた場合の曖昧さは除く)。算出した手の動きの方向は、実際の動きの方向と常に一致するとは限らない。
【0053】
保存した参照表による座標の算出(第2の手法)
この評価方法について図8を参照して説明する。ここでの考え方は、特に、測定に対するハードウェアとソフトウェアの可能性を広げるものである。本方法は、「テーブル面」上に、全てのチャネルの値の表の存在に基づく。これらの値は測定から得られる(学習される)。測定は、二次元に配置された複数の等距離点で行う。20cmx20cmで2cmの刻みの格子が適当であることが判明している(図8)。したがって、格子の交差点の全て、すなわち、iとjの指標で表される和で121の点で測定値を取得して表に記憶する(後に使用するためファイルとして保存する)。
【0054】
保存したデータは、この場合、例えば、2cmの空間解像度を有する。この比較的荒い解像度は補間によって精緻にすることができる。補間によって解像度を略8倍高めることができることが判明している。
【0055】
補間は、好ましくは、係数2で段階的に行う。滑らかな曲線を得るために、元の値と左右の側で推定した推定値に基づくデータで補間を行う。誘導値に対する元の値の相対的重みを1対8とするとよい結果が得られる。
【0056】
測定したデータは、チャネルごとに、(x,y,S)空間の面として表すことができる(図9〜12)。補間によって、この面は「滑らか」となり、測定したデータの間にも有意な値を有する。測定データは、25mmの厚さのテーブル上板の下側に配置した六角形を用いて記録した。人差し指を伸ばした状態での手の動きを検出して記録した。
【0057】
座標決定の原理は、六角形でとらえた手の位置ごとにチャネルの値の一意的な組を有することにある。この作業、測定した値と保存された値とが一致する、保存した表内の適当なセルを見つけること「のみ」にある。
【0058】
この問題の解決に近づくために、「等ポテンシャル」の観点を利用することができる。新たに測定した値それぞれについて、等ポテンシャルと呼ぶべき、該値が存在する対応(x,y,S)面が存在する完全な(x,y)線が存在する。かかる等ポテンシャルを図9〜12にも示す。4つの等ポテンシャルが全て交わるものが正しいセル(座標)である。
【0059】
実際の測定では、場合によっては以下の困難が発生する。
・ 手の位置が学習時に使用した位置と必ずしも対応しない。
・ 学習者とユーザが同一の手を有しているとは限らない。
・ 電子機器のノイズとドリフトのため、「学習時」と同様に正確に値が全体で得られるとは限らない。
【0060】
このため結局、等ポテンシャルが必ずしも同一の点で交わるとは限らないということとなる。さらに、六角形との距離が短い場合、例えば、六角形が薄いプラスチックプレート(d<10mm)の後部に貼り付けられている場合、(x,y,S)表面がはるかに複雑なるため、等ポテンシャルがより多くの閉曲線に分断され、交差する可能性が多数に上ることになる。
【0061】
等ポテンシャルに単一交差点を仮定できないので、ソフトウェアで等ポテンシャルの間の距離を算出する。それが4つの等ポテンシャルが全てについて特定の閾値より小さい場合、座標を算出する。
【0062】
チャネルの(x,y,S)面は以下の式で表す。
【0063】
【数5】
【0064】
チャネルnの等ポテンシャルが通過する一つのセル(ここでチャネルkは値f2を有する)までの、値f1を有するチャネルkの等ポテンシャルの距離を算出するため、以下の式を用いる。
【0065】
【数6】
【0066】
グラジエント
【0067】
【数7】
【0068】
の簡単な推定値は、該当するセルの端部の関数値で以下の通り。
【0069】
【数8】
【0070】
ここで、fmaxとfminは、それぞれセルのfの最大値と最小値で、aはセルの辺である。このため、距離は以下のようにして求めることができる。
【0071】
【数9】
【0072】
各セルにおいて4チャネルすべての
【0073】
【数10】
【0074】
が閾値(例えば、ここでは4a)より小さいと、重み付け係数が以下のように得られる、ここで総和は全チャネルについておこなわれる。
【0075】
【数11】
【0076】
指の座標は、選択したセル全ての重み付け和として定義される。
【0077】
【数12】
【0078】
ここで、
【0079】
【数13】
【0080】
は、計算の精度を表す数値と見なすことができる。
【0081】
理解を容易にするため上述のモデルの場合を図12に示す。4つの等ポテンシャルの曲線(S0:赤紫色,S1:赤色,S2:緑色,S3:青緑色)で表したスナップショットを図示している。他の3つのチャネルとの距離が4aより小さい、等ポテンシャルのセルを黄色で記している。他の3つのチャネルとの距離が2aより小さいセルを黒色で記している。青色の円は算出した座標(x,y)にある。
【0082】
本評価方法は、指のZ方向の位置の決定にも使用することができる。
【0083】
Z方向の位置を決定するためには、テーブル上で少なくとももう一つの面について学習する必要がある。これは、適当な厚さの下敷きによって行うことができる。実験では、テーブルの上に略2cmの厚さを設けた。学習後、2つの測定位置の間で値を線形補完する。こうして、いくつかのZ方向の層のデータを生成する。
【0084】
指の座標はソフトウェアで、常に全ての層について算出する。各層について計算される次式:
【0085】
【数14】
【0086】
が「活性」層を選択して、Zを決定する基準として用いられた。これは、各層の計算の精度を示す尺度でもある。数式の値が最大となった層(すなわち、等ポテンシャルが最も近接している)は「活性」(である)と仮定される。指のZ座標はこの層の高さとなる。
【0087】
六角形の近傍ではZ座標を実際に定義することができることをこの結果は示した。この方法の不利な点は、Zが常に正しいとは限らず、また、活性層が変わると、(x,y)座標に比較的大きな不連続があることである。要約すると、本方法は、手の通常の運動領域内において、使用者の手の空間的な動きを特に確実に検出可能であることが言える。特に、ある用途、表示される座標(例えば、画面に)に基づいて、使用者が自分の手の位置を再調整できる(例えば、マウス機能)場合に真である。
【0088】
上述の手法を組み合わせることも可能である。さらに、許容される値の範囲を超える伝送エラー及び測定エラーのデータについては、古い、有効なデータに代えることによって補償することもできる。
【0089】
【数15】
【0090】
さらに、(移動)メジアンフィルタを導入することもできる。任意の時間窓における一組の連続する測定値から中央にある値(Medianwert:中央値)を選択する。これによって平均値から大きく外れた値を除去できる。
【0091】
【数16】
【0092】
(移動)平均値を算出することもできる。任意に決定した時間窓における一組の連続する測定値から平均値(Mittelwert)(算術的平均)を生成する。
【0093】
【数17】
【0094】
さらに、好ましくは較正を行う。較正を行う場合、2つのろ波された測定値はさらに処理される。この較正の目的は、検出場における身体(手)の動きに起因する信号の変化を、環境条件の変化(スイッチを入れてからの時間、温度など)に起因する信号の変化から分離することにある。これら上述の事項は、別々に、あるいは組み合わせて適用することができる。
【0095】
上述の発明は特に、本出願人によるドイツ国特許出願第DE102007016408.6号に記載のような小型の移動体通信への入力装置として実施するのに適している。この先の出願の内容は、参照によって、本出願に完全に含まれる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサ装置、及びセンサ装置の位置に対する四肢、特に使用者の手の空間的位置、及び/又は動きを表す電子信号を生成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
かかる電子信号は、データ処理装置、通信装置、及びさらなる電気機器で入力処理を実行するために使用できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、四肢の位置、及び/又は動きを表す信号を、特に有利な手法で生成することができる解決手法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明によると、この目的は、参照領域に対する四肢の位置又は動きを表す電気信号を生成するセンサ装置であって、送信電極部と、交流電圧を送信電極部に印可するための電圧発生器と、第1の受信電極部と、第2の受信電極部と、第3の受信電極部と、を備え、前記第1の受信電極部、前記第2の受信電極部、前記第3の受信電極部が随時、高抵抗の読み出しシステムと接続されることを特徴とする、センサ装置によって解決される。
【0005】
好ましくは、前記第1の受信電極部、前記第2の受信電極部、前記第3の受信電極部が随時、インピーダンス変換システムの高抵抗の入力部と接続し、随時、前記インピーダンス変換器の出力部に生ずる電気的事象間の差分に基づいて、場所又は動きを示す情報を取得する。
【0006】
前記受信電極で読みだされたレベルから複合信号を生成することができる。この複合信号は前記受信電極に印可される電圧の和に相当する。この複合信号は、所定の増幅率によって正規化することができ、随時、インピーダンス変換システムのコンパレータ入力部に供給される。
【0007】
好ましくは、随時、前記インピーダンス変換システムの出力信号の同期特性、特に、励起電圧に対する出力信号の電圧レベル及び/又は位相、を表す信号を供給する同期検波システムを備える。随時、前記同期検波器のそれぞれの出力部の電気的事象間の違い{差分}に基づいて、場所又は動きを示す情報を取得することができる。
【0008】
本発明の特に好適な実施の形態によると、前記受信電極が前記送信電極部の周りに対称に配置される。前記送信電極は、好ましくは、電源(マイクロコントローラ)によって交流電圧を印可され、周囲に電界、好ましくは、準静的な電界を生成する。前記受信電極は、好ましくは、前記送信電極の周りに対称に配置される。
【0009】
前記受信電極に生ずる電圧が前記送信電極の電場の分布に関する情報を含む。
【0010】
前記受信電極は、前記送信電極の電界に干渉しないように、前記インピーダンス変換器の高抵抗入力部に接続される。随時、前記インピーダンス変換器の下流の各信号から平均値を生成する。該平均値を増幅することができる。同期検波器によって増幅された信号の振幅を取得し、さらに、該振幅をADCによってデジタル化して、評価を行うためにマイクロコントローラに伝送することができる。前記同期検波器の代わりにダイオード整流器又はピーク検波器を用いることもできる。
【0011】
本発明に係わるセンサ装置は、特に、身振り、動き又は手の位置の取得に用いることができる。好ましくは、少なくともセンサ電子装置の主要部は、測定用電極を含むように、コンパクトなチップ状の形体として構成される。これによって、特に有利なセンサ技術への適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係わるセンサ装置の基本構造を示すブロック図である。
【図2】入力回路の構造を示す配線図である。
【図3】送信電極部と受信電極部の構造の一例を示す概略図である。
【図4】本発明に係わる出力回路を示す回路図である。
【図5】本発明に係わる評価原理をXY平面で説明するための、座標系を示す図である。
【図6】本発明に係わる評価原理をさらに説明する、座標空間を表す図である。
【図7】本発明に従って算出した法線ベクトルを示す斜視図である。
【図8】本発明に係わる考え方に沿った、身振りに基づいて位置決めされるカーソル点を有する格子システム、を表す図である。
【図9】測定値の空間的割り当てを説明する第1の図である。
【図10】測定値の空間的割り当てを説明する第2の図である。
【図11】測定値の空間的割り当てを説明する第3の図である。
【図12】測定値の空間的割り当てを説明する第4の図である。
【図13】等ポテンシャル線の推移を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明のさらなる詳細と特徴について、図面を参照しながら説明する。
【0014】
図1は、本発明に係わる好適なセンサ装置の回路構成のブロック図である。
【0015】
本発明に係わるセンサ装置は、好ましくは、3つの測定用電極K1,K2,K3を有する。この装置は、2電極を有する装置に比較してより均一な電界を生成する。
【0016】
応答を距離の関数として線形化するために、好ましくは、応答を(例えば、ダイオードによって)対数変換することが好ましい。好ましくは、アナログ信号を、例えば、MSP430−マイクロコントローラ(F2012)の高速ADSを用いて同期して捕捉する。有利には、本発明に係わるモジュールをPC(コンピュータ)に接続するために、イデント(Ident)USBモジュールへの直接接続を組み込むことができる。
【0017】
図1に示す回路図において、送信電極Gには電圧発生器(マイクロコントローラ)から交流電圧が供給され、その周りに電界を生成している。受信電極K1,K2,K3は、送信電極Gの周りに対称に配置され、それぞれに印可される電圧は送信電極Gの電界の分布に関する情報を有している。受信電極K1,K2,K3の電圧(ac)は、インピーダンス変換器I1,I2,I3のチャネル1,2及び3上に現れる。電界に干渉しないように、受信電極K1,K2,K3はインピーダンス変換器I1,I2,I3の高抵抗入力部に接続される。
【0018】
インピーダンス変換器の下流の信号から平均値が生成される。さらに、チャネル毎に信号と平均値との差分、ΔK1,ΔK2及びΔK3が増幅される。平均値も増幅される。
【0019】
増幅された信号から、同期検波器により振幅を得て、さらに、ADCによってデジタル化して、マイクロコントローラに伝送して評価する。同期検波器の代わりに、例えば、ダイオード整流器、ピーク検波器などを用いたり、また、ADCによって交流電圧を直接デジタル化することもできる。
【0020】
マイクロコントローラは、評価された、あるいは部分的に評価された結果を、さらなる処理、特にX,Y、及び必要な場合はZ情報の抽出のために提供する。
【0021】
図2に、本発明に係わる好適な入力回路の構成を示す。図2に示す入力回路は、3チャネルを形成する。各チャネルは一つの受信電極(EL1〜EL3で記す)を有し、MOSFETで構成されている。この回路は、差動増幅器として設計されており、3つ以上(この場合は3つ)のチャネルを有する。3つのトランジスタQ1,Q及びQ3の全ては一つの電源(この場合はT1)に接続している。信号はトランジスタのドレインから取り出される。各チャネルは一つの専用出力部O_S1〜O_S3を有する。さらにもう一つの出力部(O_S0)がある。これはエミッタフォロワT2から取り出され、3つの入力信号の和を表す。
【0022】
MOSFETは、トランジスタの特性曲線の違いを補償するため、ソースに抵抗を有する。
【0023】
図3に、電極K1,K2,K3の幾何学的配置を示す。この図は、全ての部品を含む回路全体を外部の電界から遮蔽する広い領域(GND1)が中央に位置決めされていることを示す。これら電極は、120度の角度で相互に対称に配置され、結果として三角形を形成している。
【0024】
信号GND1は、アースに対して一定ではなく、例えば、100kHzの搬送周波数で振動する。GND1の振幅はピークツーピークで略5ボルトである。この振動は回路の第2部で生成される。
【0025】
信号GND1により生成される電界は、人間の干渉を受ける、具体的には、人間の手又は足が大地への短絡回路を形成する。電界は、手のある方向で、急速に減少する。これは、電極K1,K2,K3の電気信号に反映され、回路の出力に反映される。
【0026】
回路を差動増幅器として構成するという考えにより、信号GND1の電界が影響を受けていない非干渉状態では、各電極が、対称に配置されているため、同一の電位と同一の交流電界振幅を有することとなる。この交流電界振幅は略1〜2ボルトであり、手を回路に近づけると、このレベルに対して少し変化することになる。差動入力回路が同相入力信号を極めて大きく弱めるので、出力では電極信号間の差分のみが現れる。この差分は弱い信号であるが、さらに増幅することができる。
【0027】
図4に、対数圧縮を実現することができる本発明に係わる回路を示す。この回路では、電極の出力信号はさらに増幅され、コントローラのアナログデジタル変換部でデジタル化され、UARTインタフェースを介してコントローラからコンピュータに伝送される。コントローラは同時に、搬送周波数の生成と個々の信号の同期検波を実行する。
【0028】
入力回路の出力信号(O_S0〜O_S3)は入力部I_S0〜I_S3に送られる。続いてチャネルS0(複合信号)は略7の係数によって線形に増幅される(T7−2,T9−1,T9−2)。電極信号S1〜S3は、対数特性曲線を用いて増幅される。増幅器の回路に関連する構成上の違いはフィードバック、例えば、抵抗又はダイオード、においてのみ存在し、基本となる増幅器自体は同じものであることが好ましい。
【0029】
主増幅器は3つのトランジスタによって構成され、その増幅率は略40dBである。この比較的高い増幅率によって、トランジスタにばらつきがあっても、全てのチャネルと六角形型回路の特性をほぼ互いに等しく保つことができる。
【0030】
増幅器の動作原理をチャネルS3を例にとって説明する。トランジスタT1−1及びT2−2はエミッタフォロワとして接続されており、入力抵抗と出力抵抗の調整を行うようになっている。トランジスタT2−1は増幅器として機能し、この増幅率は実際には、エミッタ抵抗の電圧降下によって決定される。すなわち、増幅率は実際には供給電圧に依存する。印可する供給電圧が略9.5Vの場合、増幅率は略40dBとなる。
【0031】
チャネルS1〜S3に対数変換を用いることによって、距離に対して極めて非線形である信号を補償することが可能となる。すなわち、遠く離れた対象からの小さな信号は、回路の近くで発生した大きな信号よりもより大きく増幅される。これによって、回路全体でより平坦な伝播曲線を得ることができる。複合信号S0については線形増幅でよりよい結果が得られる。
【0032】
トランジスタQ1,T3及びT4の周りの回路はGND1信号を生成するのに用いられる。出力電圧V+(出力OUT_V+)は、GND1に対して一定であり、略9.5ボルトとなる。ここで、両方の電圧は、大地、ここではGND、に対してピークツーピークで略5ボルト、コントローラの出力の関数として上下に振動する。これらの振動は、略100kHzの搬送周波数で起こる。この周波数はチャネル毎にサンプリング周波数と同期している。これによってチャネル入力の同期と同期検波とを確実にすることができる。
【0033】
コンピュータとの接続は、例えば、出願人が開発したイデント(Ident)USBモジュールに接続することができるTX配線を用いる。コントローラもまた、GND1に対して作用するので、その出力信号は大地に対して相対化する必要がある。これはトランジスタT6の周囲に構成された電流ミラー回路によって行う。
【0034】
マイクロコントローラとしてMSP430F2012を用いる。これは16メガヘルツのクロック周波数を有し、毎秒200キロサンプルを超えるデジタル化ができ、私たちの同期変調には極めて適している。
【0035】
レイアウト
本発明に係わる入力回路と出力回路は、好ましくは独自の(六角形の)プリント基板として構成される。GND1,V+,S0〜S3の接続部は、好ましくは、LP(プリント基板)を上下に配置して、配線の直線部分で接続する。
【0036】
両方のプリント基板のレイアウトは重要であることが判明している。好ましくは、第一に、測定用電極は電界について同一の条件にあり、第二に、全てのチャネルの全増幅率が寄生容量により干渉されず、同じであるように調整を行う。
【0037】
上述の要件は、特に好ましい手法で以下のように実現することができる。
1.電極は120°の対称性をもって配置する。
2.電界に干渉しないように電極と同等の対称性を有するLP。すなわち、三角形型、六角形型から円形型まで。
3.GND0に対して一定の信号(GND0,+20V)はまさに使用者による信号であるため、これらの信号は測定用電極により可能な限り遮蔽する。
【0038】
データ評価/ソフトウェア
測定値を評価するために特に2つの機能的に優れた手法が試された。第1の手法は、傾斜平面を用いて電界を近似し、保存している参照表を用いて座標を算出する。傾斜平面を用いて電界を近似する手法について、以下、図5,6及び7を参照して説明する。
【0039】
傾斜平面を用いた電界近似
この評価の手法は、六角形の周囲の電界が人間によってどのように影響されるかという比較的大まかな考えに基づいている。この方法は、比較的少ない算出能力で実行可能で、より単純な用途に適している、すなわち、到来方向や大まかなキー機能の決定に適する。この方法では、六角形の直近で精度は最低となる。
【0040】
モデルに3軸を導入する:電極面の軸Xと軸Y、信号の軸S(図5及び図6参照)。
【0041】
電極は図5では、1,2,3で記されている。電極が配置される三角形の辺は2Lである。電極1〜3に関する六角形の出力信号をS1〜S3として信号軸に記す(図6)。
【0042】
上記(x,y,z)空間におけるこれらの3点は、最小の信号を有する電極の方に最も「傾く」、一つの平面を確定する。平面の傾きの方向は、電界の干渉因子(すなわち、人間の手など)の方向と一致し、平面の傾きは、干渉因子が電極に近づくほど大きくなる。
【0043】
干渉因子に対する方向と距離に関する定量的な情報は、解析幾何学によって驚くべき信頼性で得ることができる。このために、平面は以下の式で表される。
【0044】
【数1】
【0045】
ここで、法線ベクトルは
【0046】
【数2】
【0047】
である(図5)。方程式に電極の値を代入した後、線形システムを解くと、以下の法線ベクトルのパラメータが得られる。
【0048】
【数3】
【0049】
これらのパラメータから求める方向φと距離R(傾きβで表す)の値が得られる(図7)。
【0050】
【数4】
【0051】
こうして干渉因子の座標がRとφによって得られる。
【0052】
この座標は、六角形に対して接近しすぎていなければ手の位置に対して一義的である(異なる指を拳/手に握りしめた場合の曖昧さは除く)。算出した手の動きの方向は、実際の動きの方向と常に一致するとは限らない。
【0053】
保存した参照表による座標の算出(第2の手法)
この評価方法について図8を参照して説明する。ここでの考え方は、特に、測定に対するハードウェアとソフトウェアの可能性を広げるものである。本方法は、「テーブル面」上に、全てのチャネルの値の表の存在に基づく。これらの値は測定から得られる(学習される)。測定は、二次元に配置された複数の等距離点で行う。20cmx20cmで2cmの刻みの格子が適当であることが判明している(図8)。したがって、格子の交差点の全て、すなわち、iとjの指標で表される和で121の点で測定値を取得して表に記憶する(後に使用するためファイルとして保存する)。
【0054】
保存したデータは、この場合、例えば、2cmの空間解像度を有する。この比較的荒い解像度は補間によって精緻にすることができる。補間によって解像度を略8倍高めることができることが判明している。
【0055】
補間は、好ましくは、係数2で段階的に行う。滑らかな曲線を得るために、元の値と左右の側で推定した推定値に基づくデータで補間を行う。誘導値に対する元の値の相対的重みを1対8とするとよい結果が得られる。
【0056】
測定したデータは、チャネルごとに、(x,y,S)空間の面として表すことができる(図9〜12)。補間によって、この面は「滑らか」となり、測定したデータの間にも有意な値を有する。測定データは、25mmの厚さのテーブル上板の下側に配置した六角形を用いて記録した。人差し指を伸ばした状態での手の動きを検出して記録した。
【0057】
座標決定の原理は、六角形でとらえた手の位置ごとにチャネルの値の一意的な組を有することにある。この作業、測定した値と保存された値とが一致する、保存した表内の適当なセルを見つけること「のみ」にある。
【0058】
この問題の解決に近づくために、「等ポテンシャル」の観点を利用することができる。新たに測定した値それぞれについて、等ポテンシャルと呼ぶべき、該値が存在する対応(x,y,S)面が存在する完全な(x,y)線が存在する。かかる等ポテンシャルを図9〜12にも示す。4つの等ポテンシャルが全て交わるものが正しいセル(座標)である。
【0059】
実際の測定では、場合によっては以下の困難が発生する。
・ 手の位置が学習時に使用した位置と必ずしも対応しない。
・ 学習者とユーザが同一の手を有しているとは限らない。
・ 電子機器のノイズとドリフトのため、「学習時」と同様に正確に値が全体で得られるとは限らない。
【0060】
このため結局、等ポテンシャルが必ずしも同一の点で交わるとは限らないということとなる。さらに、六角形との距離が短い場合、例えば、六角形が薄いプラスチックプレート(d<10mm)の後部に貼り付けられている場合、(x,y,S)表面がはるかに複雑なるため、等ポテンシャルがより多くの閉曲線に分断され、交差する可能性が多数に上ることになる。
【0061】
等ポテンシャルに単一交差点を仮定できないので、ソフトウェアで等ポテンシャルの間の距離を算出する。それが4つの等ポテンシャルが全てについて特定の閾値より小さい場合、座標を算出する。
【0062】
チャネルの(x,y,S)面は以下の式で表す。
【0063】
【数5】
【0064】
チャネルnの等ポテンシャルが通過する一つのセル(ここでチャネルkは値f2を有する)までの、値f1を有するチャネルkの等ポテンシャルの距離を算出するため、以下の式を用いる。
【0065】
【数6】
【0066】
グラジエント
【0067】
【数7】
【0068】
の簡単な推定値は、該当するセルの端部の関数値で以下の通り。
【0069】
【数8】
【0070】
ここで、fmaxとfminは、それぞれセルのfの最大値と最小値で、aはセルの辺である。このため、距離は以下のようにして求めることができる。
【0071】
【数9】
【0072】
各セルにおいて4チャネルすべての
【0073】
【数10】
【0074】
が閾値(例えば、ここでは4a)より小さいと、重み付け係数が以下のように得られる、ここで総和は全チャネルについておこなわれる。
【0075】
【数11】
【0076】
指の座標は、選択したセル全ての重み付け和として定義される。
【0077】
【数12】
【0078】
ここで、
【0079】
【数13】
【0080】
は、計算の精度を表す数値と見なすことができる。
【0081】
理解を容易にするため上述のモデルの場合を図12に示す。4つの等ポテンシャルの曲線(S0:赤紫色,S1:赤色,S2:緑色,S3:青緑色)で表したスナップショットを図示している。他の3つのチャネルとの距離が4aより小さい、等ポテンシャルのセルを黄色で記している。他の3つのチャネルとの距離が2aより小さいセルを黒色で記している。青色の円は算出した座標(x,y)にある。
【0082】
本評価方法は、指のZ方向の位置の決定にも使用することができる。
【0083】
Z方向の位置を決定するためには、テーブル上で少なくとももう一つの面について学習する必要がある。これは、適当な厚さの下敷きによって行うことができる。実験では、テーブルの上に略2cmの厚さを設けた。学習後、2つの測定位置の間で値を線形補完する。こうして、いくつかのZ方向の層のデータを生成する。
【0084】
指の座標はソフトウェアで、常に全ての層について算出する。各層について計算される次式:
【0085】
【数14】
【0086】
が「活性」層を選択して、Zを決定する基準として用いられた。これは、各層の計算の精度を示す尺度でもある。数式の値が最大となった層(すなわち、等ポテンシャルが最も近接している)は「活性」(である)と仮定される。指のZ座標はこの層の高さとなる。
【0087】
六角形の近傍ではZ座標を実際に定義することができることをこの結果は示した。この方法の不利な点は、Zが常に正しいとは限らず、また、活性層が変わると、(x,y)座標に比較的大きな不連続があることである。要約すると、本方法は、手の通常の運動領域内において、使用者の手の空間的な動きを特に確実に検出可能であることが言える。特に、ある用途、表示される座標(例えば、画面に)に基づいて、使用者が自分の手の位置を再調整できる(例えば、マウス機能)場合に真である。
【0088】
上述の手法を組み合わせることも可能である。さらに、許容される値の範囲を超える伝送エラー及び測定エラーのデータについては、古い、有効なデータに代えることによって補償することもできる。
【0089】
【数15】
【0090】
さらに、(移動)メジアンフィルタを導入することもできる。任意の時間窓における一組の連続する測定値から中央にある値(Medianwert:中央値)を選択する。これによって平均値から大きく外れた値を除去できる。
【0091】
【数16】
【0092】
(移動)平均値を算出することもできる。任意に決定した時間窓における一組の連続する測定値から平均値(Mittelwert)(算術的平均)を生成する。
【0093】
【数17】
【0094】
さらに、好ましくは較正を行う。較正を行う場合、2つのろ波された測定値はさらに処理される。この較正の目的は、検出場における身体(手)の動きに起因する信号の変化を、環境条件の変化(スイッチを入れてからの時間、温度など)に起因する信号の変化から分離することにある。これら上述の事項は、別々に、あるいは組み合わせて適用することができる。
【0095】
上述の発明は特に、本出願人によるドイツ国特許出願第DE102007016408.6号に記載のような小型の移動体通信への入力装置として実施するのに適している。この先の出願の内容は、参照によって、本出願に完全に含まれる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
参照領域に対する四肢の位置又は動きを表す電気信号を生成するセンサ装置であって、
送信電極部と、
交流電圧を送信電極部(G)に印可するための電圧発生器と、
第1の受信電極部(K1)と、
第2の受信電極部(K2)と、
第3の受信電極部(K3)と、を備え、
前記第1の受信電極部、前記第2の受信電極部、前記第3の受信電極部が随時、高抵抗の読み出しシステムと接続されることを特徴とする、センサ装置。
【請求項2】
前記第1の受信電極部、前記第2の受信電極部、前記第3の受信電極部が随時、インピーダンス変換システムの高抵抗の入力部と接続し、
随時、インピーダンス変換システムの出力部と出力部の間の差分に起因する電気的事象間の差分に基づいて、場所又は動きを示す情報を取得することを特徴とする、請求項1記載のセンサ装置。
【請求項3】
前記受信電極に現れる電圧の和に相当する複合信号を生成することを特徴とする、請求項1又は2の何れか1項に記載のセンサ装置。
【請求項4】
前記複合信号は、インピーダンス変換システムに随時供給されることを特徴とする、請求項1から3迄の何れか1項に記載のセンサ装置。
【請求項5】
随時、インピーダンス変換システムの出力信号の同期特性、特に、励起電圧に対する電圧レベル及び/又は位相、を表す信号を供給する同期検波器を備えたことを特徴とする、請求項1から4迄の何れか1項に記載のセンサ装置。
【請求項6】
随時、前記同期検波器の出力部に生ずる電気的事象間の差分に基づいて、場所又は動きを示す情報を取得することを特徴とする、請求項1から5迄の何れか1項に記載のセンサ装置。
【請求項7】
前記受信電極が前記送信電極部の周りに対称に配置されていることを特徴とする、請求項1から6迄の何れか1項に記載のセンサ装置。
【請求項8】
送信電極が発生器(マイクロコントローラ)によって交流電圧を印可され、周囲に電界を生成することを特徴とする、請求項1から7迄の何れか1項に記載のセンサ装置。
【請求項9】
前記受信電極が前記送信電極の周りに対称に配置されていることを特徴とする、請求項1から8迄の何れか1項に記載のセンサ装置。
【請求項10】
前記受信電極に生ずる電圧が前記送信電極の電場の分布に関する情報を含むことを特徴とする、請求項1から9迄の何れか1項に記載のセンサ装置。
【請求項11】
前記受信電極(K1,K2及びK3)に生ずる電圧(ac)がチャネル1,2及び3の前記受信電極に生ずることを特徴とする、請求項1から10迄の何れか1項に記載のセンサ装置。
【請求項12】
前記受信電極が前記送信電極の電界と干渉しないように、前記インピーダンス変換器の高抵抗入力部に接続されることを特徴とする、請求項1から11迄の何れか1項に記載のセンサ装置。
【請求項13】
随時、前記インピーダンス変換器からの信号の平均値を生成することを特徴とする、請求項1から12迄の何れか1項に記載のセンサ装置。
【請求項14】
前記チャネルごとに、さらに、前記平均値と前記信号の差分を増幅してΔK1,ΔK2及びΔK3を生成することを特徴とする、請求項1から13迄の何れか1項に記載のセンサ装置。
【請求項15】
前記平均値を増幅することを特徴とする、請求項1から14迄の何れか1項に記載のセンサ装置。
【請求項16】
前記増幅された信号から同期検波器によって振幅を取得し、さらに、ADCによってデジタル化され、評価を行うためにマイクロコントローラに伝送されることを特徴とする、請求項1から15迄の何れか1項に記載のセンサ装置。
【請求項17】
前記同期検波器の代わりにダイオード整流器を用いることを特徴とする、請求項1から15迄の何れか1項に記載のセンサ装置。
【請求項18】
前記同期検波器の代わりにピーク検波器を用いることを特徴とする、請求項1から17迄の何れか1項に記載のセンサ装置。
【請求項19】
ADCによって直接交流電圧がデジタル化されることを特徴とする、請求項1から18迄の何れか1項に記載のセンサ装置。
【請求項20】
参照領域に対する四肢の位置又は動きを表す電気信号を生成する方法であって、
電気的交流電界を送信電極部に印可し、
該送信電極部の近傍に配置された少なくとも3つの受信電極により電圧事象が取り出され、
前記送信電極部が前記送信電極により確定される三角形の領域の内部に延在することを特徴とする、方法。
【請求項1】
参照領域に対する四肢の位置又は動きを表す電気信号を生成するセンサ装置であって、
送信電極部と、
交流電圧を送信電極部(G)に印可するための電圧発生器と、
第1の受信電極部(K1)と、
第2の受信電極部(K2)と、
第3の受信電極部(K3)と、を備え、
前記第1の受信電極部、前記第2の受信電極部、前記第3の受信電極部が随時、高抵抗の読み出しシステムと接続されることを特徴とする、センサ装置。
【請求項2】
前記第1の受信電極部、前記第2の受信電極部、前記第3の受信電極部が随時、インピーダンス変換システムの高抵抗の入力部と接続し、
随時、インピーダンス変換システムの出力部と出力部の間の差分に起因する電気的事象間の差分に基づいて、場所又は動きを示す情報を取得することを特徴とする、請求項1記載のセンサ装置。
【請求項3】
前記受信電極に現れる電圧の和に相当する複合信号を生成することを特徴とする、請求項1又は2の何れか1項に記載のセンサ装置。
【請求項4】
前記複合信号は、インピーダンス変換システムに随時供給されることを特徴とする、請求項1から3迄の何れか1項に記載のセンサ装置。
【請求項5】
随時、インピーダンス変換システムの出力信号の同期特性、特に、励起電圧に対する電圧レベル及び/又は位相、を表す信号を供給する同期検波器を備えたことを特徴とする、請求項1から4迄の何れか1項に記載のセンサ装置。
【請求項6】
随時、前記同期検波器の出力部に生ずる電気的事象間の差分に基づいて、場所又は動きを示す情報を取得することを特徴とする、請求項1から5迄の何れか1項に記載のセンサ装置。
【請求項7】
前記受信電極が前記送信電極部の周りに対称に配置されていることを特徴とする、請求項1から6迄の何れか1項に記載のセンサ装置。
【請求項8】
送信電極が発生器(マイクロコントローラ)によって交流電圧を印可され、周囲に電界を生成することを特徴とする、請求項1から7迄の何れか1項に記載のセンサ装置。
【請求項9】
前記受信電極が前記送信電極の周りに対称に配置されていることを特徴とする、請求項1から8迄の何れか1項に記載のセンサ装置。
【請求項10】
前記受信電極に生ずる電圧が前記送信電極の電場の分布に関する情報を含むことを特徴とする、請求項1から9迄の何れか1項に記載のセンサ装置。
【請求項11】
前記受信電極(K1,K2及びK3)に生ずる電圧(ac)がチャネル1,2及び3の前記受信電極に生ずることを特徴とする、請求項1から10迄の何れか1項に記載のセンサ装置。
【請求項12】
前記受信電極が前記送信電極の電界と干渉しないように、前記インピーダンス変換器の高抵抗入力部に接続されることを特徴とする、請求項1から11迄の何れか1項に記載のセンサ装置。
【請求項13】
随時、前記インピーダンス変換器からの信号の平均値を生成することを特徴とする、請求項1から12迄の何れか1項に記載のセンサ装置。
【請求項14】
前記チャネルごとに、さらに、前記平均値と前記信号の差分を増幅してΔK1,ΔK2及びΔK3を生成することを特徴とする、請求項1から13迄の何れか1項に記載のセンサ装置。
【請求項15】
前記平均値を増幅することを特徴とする、請求項1から14迄の何れか1項に記載のセンサ装置。
【請求項16】
前記増幅された信号から同期検波器によって振幅を取得し、さらに、ADCによってデジタル化され、評価を行うためにマイクロコントローラに伝送されることを特徴とする、請求項1から15迄の何れか1項に記載のセンサ装置。
【請求項17】
前記同期検波器の代わりにダイオード整流器を用いることを特徴とする、請求項1から15迄の何れか1項に記載のセンサ装置。
【請求項18】
前記同期検波器の代わりにピーク検波器を用いることを特徴とする、請求項1から17迄の何れか1項に記載のセンサ装置。
【請求項19】
ADCによって直接交流電圧がデジタル化されることを特徴とする、請求項1から18迄の何れか1項に記載のセンサ装置。
【請求項20】
参照領域に対する四肢の位置又は動きを表す電気信号を生成する方法であって、
電気的交流電界を送信電極部に印可し、
該送信電極部の近傍に配置された少なくとも3つの受信電極により電圧事象が取り出され、
前記送信電極部が前記送信電極により確定される三角形の領域の内部に延在することを特徴とする、方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2011−501106(P2011−501106A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−504571(P2010−504571)
【出願日】平成20年4月28日(2008.4.28)
【国際出願番号】PCT/EP2008/003433
【国際公開番号】WO2008/131954
【国際公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【出願人】(507113199)イデント テクノロジー アーゲー (19)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年4月28日(2008.4.28)
【国際出願番号】PCT/EP2008/003433
【国際公開番号】WO2008/131954
【国際公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【出願人】(507113199)イデント テクノロジー アーゲー (19)
【Fターム(参考)】
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