説明

四脚ブロック用の吊り上げ装置および四脚ブロックの吊り上げ方法

【課題】四脚ブロックを吊り上げる際に四脚ブロックに一人の作業者で簡単に取り付けられる安価な四脚ブロック用の吊り上げ装置を提供する。
【解決手段】四脚ブロック用の吊り上げ装置6は、上側に突出しかつ先端に向かって漸次小径に形成された円柱状の起立脚部2と、起立脚部2を中心に斜め下側の三方向に突出しかつ先端に向かって漸次小径に形成された円柱状の傾斜脚部3とからなる四脚ブロック1を吊り上げる。傾斜脚部3のうちの一本の傾斜脚部における前方端面5に設置される支圧プレート9と、支圧プレート9の両端部に取り付けられて前方端面5の面取り部4に設置される側板10とからなる掛止具7と、掛止具7にUターン状に掛け止めされた吊り上げワイヤー8とから構成され、吊り上げワイヤーの左右のワイヤー間には起立脚部2に掛け渡される補助ワイヤー28が設置されてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は護岸や河川の消波などに使用されるコンクリート製の四脚ブロック(いわゆるテトラ形の消波ブロック)を脱型する際の吊り上げ装置および四脚ブロックの吊り上げ方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の四脚ブロックを脱型する際の吊り上げ用治具としては、特開2004−307077号の発明が知られている。これは図1に示すように、斜め下向きの3本の突出脚の外方を枠状本体で囲み、この枠状本体に引っ掛けたワイヤーなどの吊り手段で吊り上げるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−307077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記のような四脚ブロックの吊り上げ用治具は、斜め下向きの3本の突出脚の外方を囲む枠状本体が大がかりで高価になるばかりでなく、枠状本体の突出脚への取り付けも複数の作業者で行うために煩雑となって工程および工費が嵩むという問題があった。
【0005】
本願発明はこれらの問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、四脚ブロックを吊り上げる際に四脚ブロックに一人の作業者で簡単に取り付けられる安価な四脚ブロック用の吊り上げ装置および四脚ブロックの吊り上げ方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するための四脚ブロック用の吊り上げ装置は、上側に突出しかつ先端に向かって漸次小径に形成された円柱状の起立脚部と、該起立脚部を中心に斜め下側の三方向に突出しかつ先端に向かって漸次小径に形成された円柱状の傾斜脚部とからなる四脚ブロックを吊り上げるものであり、傾斜脚部のうちの一本の傾斜脚部における前方端面に設置される支圧プレートと、該支圧プレートの両端部に取り付けられて前方端面の面取り部に設置される側板とからなる掛止具と、該掛止具にUターン状に掛け止めされた吊り上げワイヤーとから構成され、該吊り上げワイヤーの左右のワイヤー間には起立脚部に掛け渡される補助ワイヤーが設置されたことを特徴とする。また支圧プレートは、傾斜脚部における前方端面の中心より下側に設置されたことを含む。また側板には傾斜脚部の外周面に設置される保護板が設置されたことを含む。また吊り上げワイヤーは掛止具における支圧プレートのワイヤー取付具に掛け止めされ、該ワイヤー取付具は適宜な間隙部をもって突設された上部プレートと下部プレートとからなり、前記間隙部に掛け止めされた吊り上げワイヤーの掛け外れを防ぐ止板が上下部プレート間にわたって設置されたことを含むものである。
【0007】
また四脚ブロックの吊り上げ方法は、傾斜脚部のうちの一本の傾斜脚部における前方端面に設置される支圧プレートと、該支圧プレートの両端部に取り付けられて前方端面の面取り部に設置される側板とからなる掛止具と、該掛止具にUターン状に掛け止めされた吊り上げワイヤーとから構成され、該吊り上げワイヤーの左右のワイヤー間には起立脚部に掛け渡される補助ワイヤーが設置された四脚ブロック用の吊り上げ装置を使用するものであり、四脚ブロックにおける起立脚部の外周に補助ワイヤーを引っ掛けるとともに、一本の傾斜脚部における前方端面と面取り部とに支圧プレートと側板とを設置した後、吊り上げワイヤーをクレーンで吊り上げて四脚ブロックを吊り上げることを特徴とする。また支圧プレートは、傾斜脚部における前方端面の中心より下側に設置されることを含む。また側板には傾斜脚部の外周面に設置される保護板が設置されたことを含むものである。
【発明の効果】
【0008】
一人の作業者で吊り上げ装置の持ち運びや取り扱いができるので、四脚ブロックの起立脚部の外周面に補助ワイヤーを掛けるとともに、一本の傾斜脚部における前方端面と面取り部とに支圧プレートと側板とを簡単に設置することができる。そして、四脚ブロックに取り付けた吊り上げ装置の吊り上げワイヤーをクレーンで吊り上げると、支圧プレートと側板とが前方端面と面取り部とに押圧されて四脚ブロックが型枠から持ち上げられる。上記の支圧プレートは上側に向かって外側(傾斜脚部から離れる方向)に傾斜した前方端面の中心より下側(円形の中心より偏心した位置)でかつ型枠より上側に、前方端面を横切って水平に設置されるとともに、側板の大部分(2/3以上)も前方端面の中心より下側に設置されるため、四脚ブロックが持ち上げられたときに、支圧プレートと側板とが前方端面と面取り部とに押圧されるため外れることがない。一方、起立脚部の外周面に補助ワイヤーが掛けられているため、一本の傾斜脚部に作用する力によって四脚ブロックが回転せずにバランス良く吊り上げられる。またこの四脚ブロックを所定の箇所に吊り降ろした後、吊り上げワイヤーを下げると、支圧プレートと側板との押圧力が解除されて前方端面と面取り部とから取り外される。そして、起立脚部から補助ワイヤーを取り外すと、吊り上げ装置が四脚ブロックから簡単に取り外せる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】四脚ブロックであり、(1)は平面図、(2)は正面図である。
【図2】第1の実施の形態の吊り上げ装置であり、(1)は正面図、(2)は側面図である。
【図3】(1)は傾斜脚部の前方端面に掛止具を設置した正面図、(2)は同断面図である。
【図4】傾斜脚部の前方端面に掛止具を設置した側面図である。
【図5】傾斜脚部の前方端面に掛止具を設置した斜視図である。
【図6】傾斜脚部の前方端面に掛止具を設置した斜視図である。
【図7】第2の実施の形態の吊り上げ装置であり、(1)は正面図、(2)は側面図である。
【図8】吊り上げ装置で四脚ブロックを吊り上げた斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本願発明の四脚ブロック用の吊り上げ装置(以下吊り上げ装置という)の実施の形態を図面に基づいて説明する。この四脚ブロック1は、図1に示すように、上側に突出しかつ先端に向かって漸次小径に形成された円柱状の起立脚部2と、該起立脚部2を中心に斜め下側の三方向に突出しかつ先端に向かって漸次小径に形成された円柱状の傾斜脚部3とから構成され、これら傾斜脚部3の前端部には面取り部4と、上側に向かって外側(傾斜脚部から離れる方向)に傾斜した円形の前方端面5とが形成された、いわゆるテトラ形の消波ブロックである。
【0011】
また図2は、三本の傾斜脚部3の下側における下部型枠(図示せず)から四脚ブロック1を吊り上げる第1の実施の形態の吊り上げ装置6であり、掛止具7と吊り上げワイヤー8とから構成されている。
【0012】
この掛止具7は支圧プレート9と、この支圧プレート9の両側に形成された側板10と、該側板10に形成された保護板12と、支圧プレート9の前面に突設されたワイヤー取付具13とから構成されている。
【0013】
この支圧プレート9は、図3に示すように、前方端面5に設置される適宜幅の平板であり、両側端部の側板10が内側に湾曲して形成されている。この側板10は面取り部4に設置されるため、面取り部の傾斜角αと同じ角度で設置されている。また側板10には、面取り部4と傾斜脚部の外周面11との角部14を吊り上げワイヤー8から保護する保護板12が、面取り部4と傾斜脚部の外周面11との傾斜角θと同じ角度をもって設置されている。
【0014】
したがって、支圧プレート9を前方端面の中心15より下側に、前方端面を横切って水平に設置すると、側板10が面取り部4に、保護板12が傾斜脚部の外周面11にそれぞれ設置されるが、前記側板10も前方端面の中心15より下側に設置される。これは支圧プレート9が側板10の上部に設置されて、側板の下側の大部分(約2/3以上の長さ)が支圧プレート9より下側に伸びているためである。
【0015】
またワイヤー用取付具13は、図4に示すように、支圧プレート前面から側板前面にかけて適宜な間隙部16をもって突設された上部プレート17と下部プレート18とから形成され、この上下部プレート17、18には、間隙部16に挿入された吊り上げワイヤー8が抜け出るのを防ぐ平板状の止板19がボルト20で固定されている。この上部プレート17は水平材21と垂直材22とからなる断面T形であり、両側に側板10と同じ傾斜角で傾斜された折曲部23が形成され、この折曲部23が端部に向かって上側に傾斜している。
【0016】
一方、下部プレート18も上記と同じように水平材21と垂直材22とからなる断面L形であるが、上記のような折曲部23がなく、この折曲部23に代わるガイド板24が側板10に突設されている。また止板の上側の支圧プレート9には、掛止具7を持ち運んだりする環状の取っ手25が設置されている。
【0017】
またワイヤー用取付具13の上部プレート17と下部プレート18との間隙部16には、Uターン状に折り曲げられた吊り上げワイヤーのUターン部26が挿入されて掛け止めされ、左右のワイヤー8a、8bの上端部にはクレーンのフックを引っ掛けるリング27が形成されている。また、これら左右のワイヤー8a、8b間には起立脚部2に掛け渡される補助ワイヤー28が設置されている。
【0018】
また図7は第2の実施の形態の吊り上げ装置29である。この吊り上げ装置29は掛止具7における側板10に保護板が設置されていないものであり、これ以外は上記の第1の実施の形態の吊り上げ装置6と同じ構成である。
【0019】
なおワイヤー用取付具13は、上記の第1および第2の実施の形態のものに限定されず、支圧プレート9に設置されたフック、または支圧プレート9に突設されたワイヤー用挿入孔を備えた平板などであってもよい。
【0020】
次に、第1の実施の形態の吊り上げ装置6を使用した四脚ブロックの吊り上げ方法について説明する。この吊り上げ装置6は一人の作業者で持ち運びができるため、四脚ブロック1における起立脚部2の外周に補助ワイヤー28を引っ掛けるとともに、一本の傾斜脚部3における前方端面5と面取り部4とに支圧プレート9と側板10と設置する。この支圧プレート9は上側に向かって外側(傾斜脚部から離れる方向)に傾斜した前方端面の中心15より下側(円形の中心より偏心した位置)でかつ型枠より上側に、前方端面5を横切って水平に設置するとともに、側板10も前方端面の中心15より下側に設置する。
【0021】
次に、吊り上げワイヤー8をクレーンで吊り上げると、図8に示すように、支圧プレート9と側板10とが前方端面5と面取り部4とに押圧され、支圧プレート9が前方端面の中心15より下側でかつ型枠より上側に設置され、側板10も前方端面の中心15より下側に設置されるため、前方端面5と面取り部4とから掛止具7が外れないようになっている。また起立脚部2の外周には補助ワイヤー28が掛けられるため、一本の傾斜脚部3に作用する力によって四脚ブロック1が回転するのを防いでバランス良く吊り上げられる。
【0022】
次に、この四脚ブロック1を所定の箇所に吊り降ろした後、吊り上げワイヤー8を下げると、支圧プレート9と側板10とに作用していた押圧力がなくなるため掛止具7が前方端面5と面取り部4とから外される。そして、起立脚部2から補助ワイヤー28を取り外すと、吊り上げ装置6が四脚ブロック1から簡単に取り外せる。
【0023】
なお、第2の実施の形態の吊り上げ装置29を使用した四脚ブロックの吊り上げ方法も上記と同じ方法である。
【符号の説明】
【0024】
1 四脚ブロック
2 起立脚部
3 傾斜脚部
4 面取り部
5 前方端面
6、29 吊り上げ装置
7 掛止具
8 吊り上げワイヤー
8a、8b 左右のヤイヤー
9 支圧プレート
10 側板
11 外周面
12 保護板
13 ワイヤー取付具
14 角部
15 前方端面の中心
16 間隙部
17 上部プレート
18 下部プレート
19 止板
20 ボルト
21 水平材
22 垂直材
23 折曲部
24 ガイド板
25 取っ手
26 Uターン部
27 リング
28 補助ワイヤー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上側に突出しかつ先端に向かって漸次小径に形成された円柱状の起立脚部と、該起立脚部を中心に斜め下側の三方向に突出しかつ先端に向かって漸次小径に形成された円柱状の傾斜脚部とからなる四脚ブロックを吊り上げるものであり、傾斜脚部のうちの一本の傾斜脚部における前方端面に設置される支圧プレートと、該支圧プレートの両端部に取り付けられて前方端面の面取り部に設置される側板とからなる掛止具と、該掛止具にUターン状に掛け止めされた吊り上げワイヤーとから構成され、該吊り上げワイヤーの左右のワイヤー間には起立脚部に掛け渡される補助ワイヤーが設置されたことを特徴とする四脚ブロック用の吊り上げ装置。
【請求項2】
支圧プレートは、傾斜脚部における前方端面の中心より下側に設置されたことを特徴とする請求項1に記載の四脚ブロック用の吊り上げ装置。
【請求項3】
側板には傾斜脚部の周面に設置される保護板が設置されたことを特徴とする請求項1または2に記載の四脚ブロック用の吊り上げ装置。
【請求項4】
吊り上げワイヤーは掛止具における支圧プレートのワイヤー取付具に掛け止めされ、該ワイヤー取付具は適宜な間隙部をもって突設された上部プレートと下部プレートとからなり、前記間隙部に掛け止めされた吊り上げワイヤーの掛け外れを防ぐ止板が上下部プレート間にわたって設置されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の四脚ブロック用の吊り上げ装置。
【請求項5】
請求項1に記載の四脚ブロック用の吊り上げ装置を使用するものであり、四脚ブロックにおける起立脚部の外周に補助ワイヤーを引っ掛けるとともに、一本の傾斜脚部における前方端面と面取り部とに支圧プレートと側板とを設置した後、吊り上げワイヤーをクレーンで吊り上げて四脚ブロックを吊り上げることを特徴とする四脚ブロックの吊り上げ方法。
【請求項6】
支圧プレートは、傾斜脚部における前方端面の中心より下側に設置されることを特徴とする請求項5に記載の四脚ブロック用の吊り上げ方法。
【請求項7】
側板には傾斜脚部の外周面に設置される保護板が設置されたことを特徴とする請求項5または6に記載の四脚ブロック用の吊り上げ方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−173786(P2010−173786A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−17967(P2009−17967)
【出願日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(000166627)五洋建設株式会社 (364)
【Fターム(参考)】