説明

四軸織機

【課題】本発明は、第1糸(経糸)と第2糸(緯糸)と第3及び第4糸(斜糸)を四軸方向に体裁よく織り込むことのできる四軸織機を提供する。
【解決手段】第1糸(経糸)aを先端部の穴に通した第1スライダーと第2スライダーとを水平方向に対向して設け、該第1スライダー及び第2スライダーをスライドさせて第1糸に開口部を作り、該開口部に第2糸bを挿入させるレピアを設け、該レピアによる第2糸の挿入毎に筬打ちする回動腕を設け、前記第1糸と第2糸との交部に斜めに供給する第3糸c及び第4糸dをガイドするガイド穴3を有する移動駒2を、前記第1糸aの開口部より上方位置に前後二列に配列してなり、前記移動駒2を前列から後列、後列から前列へターンさせるときに、該移動駒2を把持し、ターン方向に180°回動させつつ送ることのできる搬送手段6を設けたことを特徴とし、第1糸(経糸)及び第2糸(緯糸)との交部に供給される第3糸c及び第4糸d(斜糸)が撚られることがないように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1糸(経糸)と第2糸(緯糸)と第3及び第4糸(斜糸)を四軸方向に体裁よく織り込むことのできる四軸織機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、織物は経糸と横糸とからなる(二軸織物)もので、この織機は、送出ロールと巻取ロールとの間に張った経糸を開口させる綜絖と、該綜絖による経糸の開口部に緯糸を挿入するレピア(又はシャットル打出機)と、該レピアにより挿入させた緯糸を筬打ちする筬とにより構成されている。この織機により織られた織物は、経糸と緯糸が通っている方向には非変形力を示すが、斜め方向(バイヤス方向)には変形し易いという欠点があるため、産業用複合材料として使用するには、全方向の外力に対して非変形力が必要とされる。このことから最近、経緯糸に対して斜めに交差させる2本の斜糸を入れ、経緯斜めの全方向に非変形力を示す四軸織物が作成されるようになった。
【0003】
従来の四軸織機の概略を図12に、また、斜糸をガイドする移動駒の平面図を図13にそれぞれ示す。図12の如く、第1糸aを先端部の穴に通した第1スライダー101と第2スライダー102とを水平方向に対向して設け、該第1スライダー101及び第2スライダー102を交互に対向的にスライドさせて第1糸aの開口部103を作り、その開口部103に第2糸bを挿入させる、図示しないレピア(無杼織機の緯入れ手段)を設け、該レピアによる第2糸bの挿入毎に筬打ちする回動腕104を設け、前記第1糸aと第2糸bとの交部(交点又は交域)に斜めに供給される第3糸c及び第4糸dをガイドするガイド穴105を有する移動駒106を、前記第1糸aの開口部103より上方位置に、図13の如く、前後二列に配列し、この各移動駒106は前列(左側)から後列(右側)、また、後列(右側)から前列(左側)へそれぞれターンでき、前列及び後列内での移動はターンした移動駒による押圧によっていた。該移動駒106のターンは、図13の如く、前列及び後列の最外端部に移動した移動駒106′、106″をプッシャ107の矢印方向の押し操作によって行うようにしていた。(特許第3076975号参照)。
【特許文献1】特許第3076975号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許第3076975号の四軸織機では、斜糸c、dをガイドするガイド孔105を有する移動駒106は、前列から後列、後列から前列へのターンは、プッシャ107の押し操作のみで行われるため、移動駒106自身は直線的に移動し、移動駒106の中央にあるガイド孔105は回転しない。しかし、前記斜糸を移動駒106に供給している供給ドラム(図示せず)は、ターン(回転)しているから斜糸はターン毎に撚られることとなった。この撚られた糸は、断面が丸い糸(一般的な糸)であれば目立たないし、ある程度に撚りが進むと糸自身の自己復元力でガイド孔105内で回転して修復することがあるとしても、断面が方形ないし扁平糸の場合には撚られたままの状態で織り込まれることとなって目立つばかりでなく、強度的に弱くなるという不都合も生じるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑み、斜糸をガイドするガイド穴を有する移動駒を、前列から後列、又は後列から前列へのターン時に、該移動駒に斜糸を供給している供給ドラムのターン(回転)に合わせて回動させ、移動駒のガイド穴に通された糸が撚られることがないようにした四軸織機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明は、第1糸を先端部の穴に通した第1スライダーと第2スライダーとを水平方向に対向して設け、該第1スライダー及び第2スライダーをスライドさせて第1糸に開口部を作り、該開口部に第2糸を挿入させるレピアを設け、該レピアによる第2糸の挿入毎に筬打ちする回動腕を設け、前記第1糸と第2糸との交部に斜めに供給する第3糸及び第4糸をガイドするガイド穴を有する移動駒を、前記第1糸の開口部より上方位置に前後二列に配列してなり、前記移動駒を前列から後列、後列から前列へターンさせるときに、該移動駒を把持し、ターン方向に180°回動させつつ送ることのできる搬送手段を設けたことを特徴とし、第1糸(経糸)及び第2糸(緯糸)との交部に供給される第3糸及び第4糸(斜糸)が撚られることがないように構成した。
【0007】
また、請求項2に記載の発明は、前記搬送手段が、移動駒の背部を把持するスライド片と、ターン開始部にて把持方向に前進させ、ターン終了部にて解除方向に後進させる作動レバーと、該スライド片をターン路に沿って往復走行させるターンテーブル手段又はチェーン手段を備えたことを特徴とし、移動駒の背部を把持するスライド片の背部をターン開始部にて把持し、これを180°回動させつつスムーズにターン終了部まで搬送し解除できるように構成した。
【0008】
さらに、請求項3に記載の発明は、前記ターンテーブル手段が、中間ギアを介して同方向に回転する同径の2つのターンテーブルを、それぞれの中心と前記ターン路の中心とを直線で結ぶように基板上に、ターン路の中心方向に移動可能に設置し、両ターンテーブルの偏心位置にそれぞれ連繋され直線運動するリンクを設け、該リンクの先端部に前記移動駒の背部を把持するスライド片を設置した基台を、把持した移動駒がガイド穴を内側に向けて旋回できるように設けたことを特徴とし、斜糸の移動駒が半円弧を描いてターンできるように、又は、織幅内でスクエアにターンできるように構成した。
【0009】
さらにまた、請求項4に記載の発明は、前記チェーン手段が、主スプロケットと、前記ターン路を画定するガイド盤の左右両脇に設置した2つのスプロケットとの間にエンドレスに掛け渡され、該チェーンの連結節に前記移動駒の背部を把持するスライド片を設置した基台を結着させたことを特徴とし、斜糸の移動駒のターンをより単純化できるように構成した。
【0010】
さらにまた、請求項5に記載の発明は、前記スライド片が、バネ部材の中立点を越すと把持方向又は解除方向にスライドし、そのスライド位置を保持することを特徴とし、移動駒の背部の把持がターン開始部から終了部まで確実に行えるとともに、ターン終了部において解除が確実に行えるように構成した。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、第1糸(経糸)及び第2糸(緯糸)との交部(交点又は交域)に、第3糸及び第4糸(斜糸)が供給されて全方向に非変形力が示される四軸織物が得られる上に、特に、移動駒のガイド穴に第3糸及び第4糸(斜糸)を供給している供給ドラムの回動に合わせて移動駒自身もターン方向に180°回動するため、斜糸が断面方形ないし扁平糸であっても撚られて目立つことがないので、外観的に美麗に仕上がるし、強度的に弱くなるという不都合も生じないなど各種の優れた効果を奏するものである。
【0012】
また、請求項2に記載の発明によれば、前記搬送手段が、移動駒の背部を把持するスライド片の背部をターン開始部にて把持し、これを180°回動させつつスムーズにターン終了部まで搬送し解除できるように構成しているから、移動駒を把持した状態で180°回動させつつターン終了部までの搬送がスムーズにできるという優れた効果を奏するものである。
【0013】
さらに、請求項3に記載の発明によれば、斜糸の移動駒が半円弧を描いてターンできるように、又は、織幅内でスクエアにターンできるように構成しているから、斜糸の材質や性質により、また、2つのターンテーブルの回転角や、リンクの直線運動量の調整及びこれらターンテーブルを設置した基盤の移動のタイミングや移動量などを考慮することにより移動駒の半円弧ターンあるいはスクエアターンがそれぞれ選択できるという優れた効果を奏するものである。
【0014】
さらにまた、請求項4に記載の発明によれば、斜糸の移動駒のターンをチェーン手段を用いることにより主スプロケットに対してチェーンをエンドレスに掛け渡した2つのスプロケットを、ターン路を画定するガイド盤より内方に位置させ、直線移動域を作ることが可能であり、把持した移動駒を、前路から後路(あるいは後路から前路)へ搬送した後、該移動駒を押圧移動できるようにすることができ、ターンテーブル手段のように基盤の移動手段が不要となり、斜糸の移動駒の搬送をより単純化できるという優れた効果を奏するものである。
【0015】
さらにまた、請求項5に記載の発明によれば、前記バネ部材の作用により移動駒の背部の把持及び解除が確実に行え、ターン開始部から終了部までの搬送が確実かつスピーディになるという優れた効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の最良の形態を、図面に基づいて説明する。図1は四軸織物の部分平面図で、(a)は経緯の交点で斜糸を交差させた場合、(b)は経緯の交域で斜糸を交差させた場合、図2は斜糸の移動駒の配列状態を示す平面図、図3は斜糸の移動駒とそのターン路を示す部分斜視図、図4は移動駒を前列から後列へターンさせる搬送手段を示す略示的斜視図、図5はターンテーブル手段を用いた移動駒の搬送手段を示す平面図、図6は移動駒を把持(解除)時の作動図で、(a)は非把持点、(b)は中立点、(c)は把持点、図7は把持した移動駒を円弧状にターンさせる状態を示す平面図、図8は爪部材の作用を示す拡大平面図、図9は把持した移動駒をスクエアにターンさせる状態を示す平面図、図10はチェーン手段を用いた移動駒の搬送手段を示す平面図、図11はチェーンと把持手段との関係を示す部分拡大平面図である。
【0017】
四軸織物1は、図1(a)、(b)の如く、第1糸(経糸)aに、図12の如く、開口部を作り、該開口部に第2糸(緯糸)bをレピア(他の無杼織機の緯入れでもよい)により挿入して回動腕を作動して筬打ちするとともに、第1糸(経糸)aと第2糸(緯糸)bとの交部(交点又は交域)Sに、第3糸(左斜糸=縦縞模様)cと第4糸(右斜糸=点々模様)dを織り込んだものである。これらは経緯斜め方向に非変形力を示すものである。なお、図1(a)では経緯糸の交点で斜糸が重なる(四軸重)が、図1(b)では経緯糸の交域で斜糸が重なる(三軸重)ために嵩張らない。四軸織物は、図2の如く、前路(図において下側)4aの移動駒2のガイド穴3に通された第3糸cを左方向(実線矢印)に移動させ、後路(図において上側)4bの移動駒2のガイド穴3に通された第4糸dは右方向(破線矢印)に移動させて織り込んでいる。
【0018】
前記移動駒2は、前路4aと後路4bに移動方向に横並びに密接した状態で嵌合している。また、前路4aと後路4bは、図3の如く、凹溝になっており、前記移動駒2の上下面に設けた凸部2a、2bが係合している。この前路4aと後路4bとは、その両端において、ターン路4cを介してエンドレスに連続している。したがって、前路4aの移動駒2のガイド穴3に通された第3糸cは、前路4a内では左方向に移動し左斜糸であるが、ターン路4cを経て後路4bに移行すると、即、第4糸dに変わる。同様に、第4糸dの移動駒2が後路4bから前路4aに移行すると、即、第3糸cに変わる。つまり、斜糸c及びdは第1糸(経糸)aと同数でなり、その数だけの移動駒2が必要となる。
【0019】
前記前路4aと後路4bにおいて横並びになっている移動駒2の両端は、図4の如く、爪部材5により支持され、その並びの状態が確定されている。なお、図4では手前側(前路4aから後路4bへのターン部)の爪部材5のみが示されている。前記爪部材5は、前記移動駒2をターン路4cに沿ってターンさせるに際して、把持搬送する作動に先立って開放され、搬送終了後、直ちに支持に移行するようになっている。この爪部材5の開放及び支持の作動については後記する。
【0020】
前記移動駒2のターン路4cに沿って搬送する搬送手段6を、図5に示している。図5の搬送手段6はターンテーブル手段で、第1駆動ギア7の駆動により回動するターンテーブル(重なっているほぼ同径のギアは省略)9と、中間ギア10を介在させて連繋した同径のターンテーブル(重なっているほぼ同径のギアは省略)11とを備えている。該2つのターンテーブル9、11は介在した中間ギア10の作用にて同一方向に回動できる。これらターンテーブル9、11はその回転中心を結ぶ線Lが前記ターン路4cの中心Pを通るように設置されている。また、両ターンテーブル9、11の偏心位置には、それぞれピン12、12′を介して細長状の腕片(リンク)13が直線運動できるように枢着されている。該リンク13の先端部には、前記移動駒2の背面突子14を把持する把持手段15が備えられている(図6参照)。
【0021】
前記把持手段15は、図6(a)〜(c)の如く、平面ほぼ円形の基台16上に、先端に移動駒2の背面突子14に係合可能な挟み部17を有するスライド片18と、該スライド片18の両脇に設けたラック19、19′に対向噛合したピニオン20、20′と、該ピニオン20、20′の中心軸から背反方向に伸びたレバー21、21′の回動端間に張設したバネ部材22とからなる。
【0022】
前記基台16は、リンク13の上面に設けたタイミングプーリ16′と一体回転可能に結合している。該タイミングプーリ16′は前記ターンテーブル11とリンク13とを枢着したピン12′と同軸のタイミングプーリ23に連繋条24を介して連繋している。該タイミングプーリ23は前記ターンテーブル11の軸上にある太陽ギア11′に噛合した遊星ギア23′に固定されているため、前記ターンテーブル11が回転してピン12′の角度が変化するとタイミングプーリ23に連繋条24を介して連繋したタイミングプーリ16′が基台16とともに回動するようになっている。すなわち、第1駆動ギア7の駆動により前記ターンテーブル9、11が回転し、リンク13の先端部をターン開始部Aの位置(一点鎖線)からターン終了部Bの位置(二点鎖線)まで180°回動させると、前記基台16もこれと同期して180°回動するようになっている(図7参照)。
【0023】
前記中間ギア10を介して連繋した2つのターンテーブル9、11は基盤50上に設置され、該基盤50は押出及び引き駆動機51によりターン路4cに向けて押出及び引き付勢できるようになっている。また、前記太陽ギア11′は独立した駆動機(サーボモータ=図示せず)に連繋している。これら押出及び引き駆動機51及び太陽ギア11′の作用(駆動)については後記する。
【0024】
いま、図5の如く、前記第1駆動ギア7の駆動により2つのターンテーブル9、11が矢印D方向に回転し、リンク13の先端部をターン開始部Aに向けて前進させ、その前進点にて停止させる。該ターン開始部Aでは、基台16上のスライド片18がその先端に設けた挟み部17を、図6(a)の如く、前記移動駒2の背面突子14に対向させる一方、スライド片18の後端の凹溝25には、予め、対応させた位置に待機していた作動レバー26の先端の突起26aが嵌入するようになっている。この突起26aの嵌入と同時に、前記作動レバー26の基端に設けたラック27に噛合した第2駆動ギア28が駆動し、前記作動レバー26を支点29を中心に、矢印E方向に回動させる。これにより前記スライド片18の挟み部17は、対向している移動駒2の背面突子14に向けて押出が開始されることとなる。
【0025】
前記スライド片18が押出されると、その両脇のラック19、19′がこれに噛合しているピニオン20、20′を回動し、その中心から背反方向に伸びたレバー21、21′の回動端間に張設したバネ部材22をそのバネ力に抗して伸張させ、しかして、該バネ部材22が、図6(b)の如く、中立点(レバー21、21′が背反方向に一直線になる)に至り、この中立点を越すと、瞬間的に、前記ピニオン20、20′が前記バネ部材22の復帰力によりスライド片18を、図6(c)の如く、一気に前方に向けて押し出し、該スライド片18の挟み部17が、前記移動駒2の背面突子14に係合する。この係合状態はバネ部材22の作用で継続的に維持される。
【0026】
前記スライド片18の挟み部17が移動駒2の背面突子14に係合した時点において、前路4aの移動駒2の外端部を支持していた爪部材5が、第3駆動ギア30により、図8の一点鎖線の如く開放方向に移動を開始するようになっている。つまり、該爪部材5は、その主部5aが平面くの字に形成され、その屈曲部が基体にピン5bを介して軸支され、後縁のラック5cが第3駆動ギア30に噛合しているから、該第3駆動ギア30が矢印F方向に駆動することにより爪部材5の主部5aがピン5bを中心に回動し、移動駒2の外端部を開放する。
【0027】
しかる後、前記第1駆動ギア7が逆方向に駆動し、前記ターンテーブル9を、図5の矢印G方向に回動させて移動駒2の搬送作業に移り、同時に、第3駆動ギア30が前述と逆方向に駆動して前記爪部材5を元の位置に戻し、前路4aに残った移動駒2の外端部を再度支持するようになる。この場合、搬送された移動駒2の1個分の空間は、図示していないが、同時的に行われる後路4bから前路4aへ搬送された移動駒を、基盤50の押出及び引き駆動機51による押作動によって移動駒が押し進められることにより埋められるようになっている。
【0028】
前述の如く、前記第1駆動ギア7により前記ターンテーブル9が、矢印G方向に回動して前記リンク13を後方に、図5実線の位置まで引きつつ円弧の頂点を越えると、該リンク13はターン終了部Bに向けて前進し、二点鎖線の如く、停止する。このターン終了部Bに至るまでにターンテーブル11が180°回転するに伴い、前述の如く、リンク13の先端部に設けた基台16も、図7の矢印の如く、移動している間に、180°回動させられる。つまり、移動駒2のガイド穴3に通した第3糸及び第4糸(斜糸)は、その供給ドラム(図示せず)の回動と同期して回動することとなり、斜糸(扁平糸であっても)は撚られることがない。
【0029】
前記リンク13の先端部が、後路4bの前進点であるターン終了部Bに至ると、前記スライド片18の後端に設けた凹溝25には、予め、待機していた作動レバー26′の先端突起26a′が嵌入する。これと同時に、作動レバー26′がその基端縁に設けたラック27′に噛合した第4駆動ギア28′の駆動により支点29′を中心に回動し、前記スライド片18を、図6(c)の矢印E′方向(後方に向けて)に引くから、移動駒2の背面突子11からスライド片18の挟み部17を脱出(解除)させる。同時に、スライド片18の両脇のラック19、19′に噛合したピニオン20、20′が回され、バネ部材22をバネ力に抗して伸長し、バネ部材22が、図6(b)の中立点を越すと、ピニオン20、20′は前記スライド片18を一気に後方に向けて移動させ、図6(a)の如く、移動駒2から遠く離反させる。
【0030】
上述の如く、前路4aの最外端部にあった1つの移動駒2が、ターン路4cを経て後路4b側に移されるに先立って、後路4b側にある爪部材5′が、その後縁のラック5c′に噛合した第5駆動ギア30′の駆動により開放される。これにより移動駒2が後路4b側に1個追加される。追加後、前記基盤50を押出及び引き駆動機51によりターン路4cの中心P方向に移動付勢し、後路4b側に並んでいる移動駒2を1個分が押圧する。後路4bへの移動駒2の追加前には、同じ後路4bの反対側(図示せず)の端部にあった1個の移動駒が前路4aに搬送されている。
【0031】
しかして、1つの移動駒2を後路4b側に追加させ、移動駒2の1個分の押圧が完了した後、空になった把持手段15のスライド片18は元に戻る作業に移るが、直ちに、第5駆動ギア30′の逆駆動により前記爪部材5′が後路4b側へ追加された移動駒2の外端部を、図8の如く、支持(固定)することとなる。
【0032】
空になったスライド片18は、前記第1駆動ギア7によりターンテーブル9、中間ギア10、ターンテーブル11の矢印D方向の回転が開始され、リンク13がターン路4cに沿って円弧の頂点を越えて再び前進域に入り、図5の一点鎖線の如く、旧位置であるターン開始部Aまで戻されることとなる。このターン開始部Aまで戻る間、把持手段15の基台16も180°戻される。しかして、スライド片18の先端の挟み部17が次の移動駒2の背面突子14に対峙した時点で、後端の凹溝25に、待機していた作動レバー26の先端突起26aが嵌入し、ほぼ同時に第2駆動ギア28が回動、作動レバー26が回動してスライド片18の先端の挟み部17で移動駒2の背面突子14を把持させ、上述の作動が繰り返されることとなる。
【0033】
前記搬送手段6は、移動駒2を前路4aから円弧状のターン路4cを経て後路4bへ搬送する場合について説明したが、この場合には、移動駒2のガイド穴3は円弧を描く分だけ織幅よりはみ出すこととなる。前路4aから移動駒2の背面突子14をスライド片18の先端の挟み部17で把持した後、該移動駒2をそのガイド穴3を中心に図9のK符号で示す如く旋回させ、直線横送りして後路4bに至る。そして後路4bにおいて、同図K′符号で示す如くガイド穴3を中心に移動駒2を旋回させて後路4b上に追加させるようにすると、織幅内で移動駒2をスクエアに搬送させることが可能である。
【0034】
上記スクエア搬送は、中間ギア10を介して連繋した2つのターンテーブル9、11を設置した基盤50を押出及び引き駆動機51による制御と太陽ギア11′の制御とをコントロールすることにより行われる。すなわち、図5の如く、前記第1駆動ギア7の駆動により2つのターンテーブル9、11を矢印D方向に回転してリンク13の先端部をターン開始部Aまで前進させ、基台16上のスライド片18の先端に設けた挟み部17が移動駒2の背面突子14に対向させ、図6(c)の如く把持させた後、第1駆動ギア7の駆動によりリンク13を引くと同時に押出及び引き駆動機51の作動による基盤50の押し作動を行いつつ、太陽ギア11′の駆動制御を行うと、前路4aにおいて移動駒2をそのガイド穴3を中心に図9のKで示す如く旋回させることが可能となる。この作動は予めプログラムしてコンピューター制御することが可能である。
【0035】
上記旋回後、第1駆動ギア7の駆動によるリンク13の引き量の調整と、押出及び引き駆動機51による基盤50の押し量の調整により移動駒2を直線状に横送りさせることが可能となる。しかして、移動駒2を後路4bまで搬送したならば、該後路4bにおいて、第1駆動ギア7の駆動によるリンク13の押し量の調整、押出及び引き駆動機51による基盤50の引き量の調整及び太陽ギア11′の駆動制御により、同図K′で示す如く移動駒2をそのガイド穴3を中心に旋回させて後路4b上に追加させ得る。
【0036】
上記の説明ではターンテーブル手段を用いた搬送手段6を示したが、図10、図11ではチェーン手段を用いた搬送手段6を示す。すなわち、この搬送手段6は、チェーン31の主スプロケット32と、前路4aから後路4bへ至るターン路4cを円弧状又はスクエア状に画定するチェーン31のガイド盤33と、該ガイド盤33の左右(図面では上下)両脇に設置した2つのスプロケット34、35とを設け、これら主スプロケット32と、ガイド盤33の両脇スプロケット34、35との間にチェーン31を張設している。このチェーン31の連結節に前記移動駒2の背部を把持するスライド片18を設置した基台16を結着させる。また、主スプロケット32は、同軸のタイミングプーリ38を、連繋条39を介して駆動源40に連繋している。なお、36、37はチェーン31のゆるみを規制する補助スプロケットである。
【0037】
前記駆動源40により主スプロケット32を駆動させ、チェーン31がガイド盤33に沿ってターン路4cを矢印H方向に走行しつつ、前記スライド片18を設置した基台16が、図10、図11の如く、ターン開始部Aに至ると、駆動源40を停止させる。しかして、基台16上のスライド片18の挟み部17が、移動駒2の背面突子14に対面するようになり、スライド片18の凹溝25に、予め、待機していた作動レバー26の先端突起26aが嵌入し、同時に、前記作動レバー26の基端に設けたラック27に噛合した第2駆動ギア28が駆動し、前記作動レバー26を支点29を中心に矢印E方向に回動させるようになる。前記スライド片18の挟み部17が移動駒2の背面突子14を把持すると、前記駆動源40が再起動し、移動駒2をターン終了部B に向けて移動させる。この両脇スプロケット34、35は、ターン路4cを画定するガイド盤33より内方に位置させ、延長移動域Cが作られている(図11参照)。この延長移動域Cが存在させ得ることにより把持した移動駒を、前路から後路(あるいは後路から前路)へ搬送した後、該移動駒を押圧移動でき、ターンテーブル手段のように基盤50の押出及び引き駆動機51が不要となり、斜糸の移動駒の搬送をより単純化できる利点がある。
【0038】
前記スライド片18の挟み部17が移動駒2の背面突子14を把持した時点において、爪部材5が第3駆動ギア30の駆動により開放される。しかして、前記駆動源40の作動により主スプロケット32が回転開始すると、チェーン31がガイド盤33に沿ってターン終了部Bまで移動し、移動駒2を運ぶ。このターン終了部までの間、前記チェーン31に取付られた基台16は、該チェーン31と一体に走行するから、自然的に、180°回動させられる。つまり、移動駒2のガイド穴3に通した斜糸である第3糸(及び第4糸)はその供給ドラム(図示せず)の回動と同期して回動することとなり、斜糸(扁平糸であっても)は撚られることがない。
【0039】
しかして、ターン終了部での移動駒2の背面突子11からスライド片18の挟み部17を脱出(解除)させる作動が行われると、前記駆動源40が逆転して主スプロケット32を回し、チェーン31とともに空のスライド片18を設置した基台16をターン路に沿ってターン開始部Aまで戻し、上述の作動が繰り返される。また、チェーン31に空のスライド片18を設置した基台16を、一定間隔毎に複数個結着させておくことにより、前記駆動源40を逆転させてターン開始部Aまで戻す必要がなく上述の作動を繰り返させるので高速運転に適している。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明に係る四軸織機は、第1糸(経糸)と第2糸(緯糸)と第3及び第4糸(斜糸)を四軸方向に体裁よく織り込むことができるもので、特に、斜糸に扁平形状のカーボン糸を使用して四軸方向に強い織物、たとえば、産業用複合材料として使用できる織物を織成する場合において有効であり、その生産性の向上に大いに寄与できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】四軸織物の部分平面図で、(a)は経緯の交点で斜糸を交差させた場合、(b)は経緯の交域で斜糸を交差させた場合である。
【図2】斜糸の移動駒の配列状態を示す平面図である。
【図3】斜糸の移動駒とそのターン路を示す部分斜視図である。
【図4】移動駒を前列から後列へターンさせる搬送手段を示す略示的斜視図である。
【図5】ターンテーブル手段を用いた移動駒の搬送手段を示す平面図である。
【図6】移動駒を把持(解除)時の作動図で、(a)は非把持点、(b)は中立点、(c)は把持点である。
【図7】把持した移動駒を円弧状にターンさせる状態を示す平面図である。
【図8】爪部材の作用を示す拡大平面図である。
【図9】把持した移動駒をスクエアにターンさせる状態を示す平面図である。
【図10】チェーン手段を用いた移動駒の搬送手段を示す平面図である。
【図11】チェーンと把持手段との関係を示す部分拡大平面図である。
【図12】従来の四軸織機を概略的に示す正面図である。
【図13】従来の四軸織機の斜糸の移動駒の平面図である。
【符号の説明】
【0042】
1 四軸織物
2 移動駒
3 ガイド穴
4a 前路
4b 後路
4c ターン路
5 爪部材
6 搬送手段
7 第1駆動ギア
9 ターンテーブル
10 中間ギア
11 ターンテーブル
12、12′ ピン
13 腕片
14 移動駒の背面突子
15 把持手段
16 基台
16 タイミングプーリ
17 挟み部
18 スライド片
19、19′ ラック
20、20′ ピニオン
21、21′ レバー
22 バネ部材
23 タイミングプーリ
24 連繋条
25 凹溝
26、26′ 作動レバー
26a、26a′ 突起
27、27′ ラック
28 第3駆動ギア
29、29′ 支点
30 第4駆動ギア
30′ 第5駆動ギア
31 チェーン
32 ガイド盤
33、34 スプロケット
35 主スプロケット
36、37 補助スプロケット
38 タイミングプーリ
39 連繋条
40 駆動源
50 基盤
51 押出及び引き駆動機
a 第1糸(経糸)
b 第2糸(緯糸)
c 第3糸(左斜糸)
d 第4糸(右斜糸)
S 交部(交点又は交域)
A ターン開始部
B ターン終了部
C 延長移動域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1糸を先端部の穴に通した第1スライダーと第2スライダーとを水平方向に対向して設け、該第1スライダー及び第2スライダーをスライドさせて第1糸に開口部を作り、該開口部に第2糸を挿入させるレピアを設け、該レピアによる第2糸の挿入毎に筬打ちする回動腕を設け、前記第1糸と第2糸との交部に斜めに供給する第3糸及び第4糸をガイドするガイド穴を有する移動駒を、前記第1糸の開口部より上方位置に前後二列に配列してなり、前記移動駒を前列から後列、後列から前列へターンさせるときに、該移動駒を把持し、ターン方向に180°回動させつつ送ることのできる搬送手段を設けたことを特徴とする四軸織機。
【請求項2】
前記搬送手段が、移動駒の背部を把持するスライド片と、ターン開始部にて把持方向に前進させ、ターン終了部にて解除方向に後進させる作動レバーと、該スライド片をターン路に沿って往復走行させるターンテーブル手段又はチェーン手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の四軸織機。
【請求項3】
前記ターンテーブル手段が、中間ギアを介して同方向に回転する同径の2つのターンテーブルを、それぞれの中心と前記ターン路の中心とを直線で結ぶように基板上に、ターン路の中心方向に移動可能に設置し、両ターンテーブルの偏心位置にそれぞれ連繋され直線運動するリンクを設け、該リンクの先端部に前記移動駒の背部を把持するスライド片を設置した基台を、把持した移動駒がガイド穴を内側に向けて旋回できるように設けたことを特徴とする請求項2に記載の四軸織機。
【請求項4】
前記チェーン手段が、主スプロケットと、前記ターン路を画定するガイド盤の左右両脇に設置した2つのスプロケットとの間にエンドレスに掛け渡され、該チェーンの連結節に前記移動駒の背部を把持するスライド片を設置した基台を結着させたことを特徴とする請求項2に記載の四軸織機。
【請求項5】
前記スライド片が、バネ部材の中立点を越すと把持方向又は解除方向にスライドし、そのスライド位置を保持することを特徴とする請求項2に記載の四軸織機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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