説明

回折光学素子及びそれを有する光学系

【課題】 回折光学素子自体の内部透過率の劣化を極力抑えることができるとともに、回折光学素子を光学系に用いたとき光学系全体での透過率の劣化も極力抑えることができる回折光学素子及びそれを有する光学系を得ること。
【解決手段】 光軸に対し、回転対称な回折格子がベース樹脂層部上に成形して成る樹脂層と、
該樹脂層を密着し、保持する透明基板とを有する素子部を複数積層した回折光学素子であって、
該複数の素子部のうち、少なくとも1つの素子部は、それを構成する樹脂層の材料に微粒子分散材料を用いており、該樹脂層を構成するベース樹脂層部の厚さは、光軸から光軸に対し、垂直方向に向かうにつれて薄くなるように構成されており、
該回折光学素子は光軸上に比べて周辺部での透過率が等しいか又は高くなるように構成されていること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回折光学素子に関し、特にその構成材料として微粒子分散材料等の可視波長領域内に大きな吸収及び散乱を有する材料を用いた回折光学素子及びそれを用いた光学系に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、異なった分散より成る硝材の組み合わせにより光学系の色収差を減じる方法が知られる。この方法に対して、レンズ面や光学系の一部に回折作用を有する回折光学素子(以下回折格子とも言う)を設けることで、色収差を減じる方法が知られている(非特許文献1、特許文献1〜3等)。
【0003】
これは、光学系中の屈折面と回折面とでは、ある基準波長の光線に対する色収差の出方が逆方向に発現するという物理現象を利用したものである。
【0004】
更に、このような回折光学素子は、その周期的構造の周期を変化させることで非球面レンズ的な効果をも持たせることができ、収差の低減に大きな効果があることが知られている。
【0005】
回折光学素子を有する光学系において、使用波長領域の光束が特定の1つの次数(以後『設計次数』とも言う)の回折光に集中している場合は、それ以外の回折次数の回折光強度は低いものとなる。このときの強度が0の場合はその回折光は存在しない。しかし、多くの場合、設計次数以外の回折光が存在し、それがある程度の強度を有する場合は、設計次数の光線とは別の所に結像するため、レンズ系でのフレア光となる。
【0006】
従って、回折光学素子を色収差の低減作用として利用するためには、使用波長領域全域において、設計次数の回折光の回折効率が十分高いことが必要である。この設計次数での回折効率の分光分布及び設計次数以外の回折光の振舞いについても十分考慮することが重要となる。ここで、ある次数の回折光の回折効率とは回折光学素子に対する全透過光束の光量に対する各次数での回折光の光量の割合である。
【0007】
図16は、基板109とこの基板109上に形成された回折格子108とから成る回折光学素子(以下『単層型DOE』と言う)110の概略図である。この単層型DOE110をある面に形成した場合の特定次数に対する回折効率の特性を図17に示す。
【0008】
図17において、横軸は入射光の波長を、縦軸は回折効率を示している。回折効率の値は、前述の通り全透過光束の光量に対する各次数での回折光の光量の割合を表しており、格子境界面での反射光などは説明が複雑になるので考慮していない値になっている。
【0009】
図17に示すように、図17に示した単層型DOEは、設計次数である1次の回折次数(図中に太い実線で示す)において使用波長領域で最も回折効率が高くなるように設計されている。この設計次数で回折効率はある波長で最も高くなり(以下この波長を『設計波長』と言う)、それ以外の波長では徐々に低くなる。この設計次数での回折効率の低下分は、他の次数の回折光となりフレア光をなる。図17には、この他の次数として、設計次数近傍の次数(設計次数1±1次の0次と2次)の回折効率も併せて併記されている。
【0010】
このように発生するフレア光の影響を低減し、設計次数である1次の回折効率を高くすることは、光学系に回折光学素子を用いる際重要になってくる。現に、その対策が種々となされている(特許文献4〜8)。
【0011】
又、それと同時に回折光学素子を含む光学系全体での透過率は、実際に回折光学素子を有する光学系を製品化する際重要なファクタとなってくる。特に、可視領域内に大きな吸収、散乱を有する微粒子分散材料を用いた回折光学素子を有する光学系では透過率が大きく低下する傾向がある。
【0012】
特許文献4では、図18に示すように、回折格子をそれぞれ含む素子部203、204を、空気層205を介して互いに近接させた積層構造を有する回折光学素子(以下このような構成の回折光学素子を『積層型DOE』という)201を開示している。図18に示す回折光学素子は、光軸方向に対し垂直方向に格子厚d1(j)、d2(j)を回折効率の斜入射劣化の緩和の観点から可変にしている。更に、光学系の収差上の観点から非球面効果を持たせる為に、図18中のベース樹脂層206の厚さも可変にしている。尚、202はレンズ(透明基板)である。
【0013】
特許文献5では特許文献4の図18で示す回折光学素子と同じ『積層型DOE』を開示している。又、回折光学素子に微粒子分散材料を用いている。特許文献5では積層型DOEにおける各層の格子厚を最適化することにより、図19(a)に示すように、高い回折効率を実現している。また、その際、図19(b)に示すように、0次光及び2次光の不要回折次数の回折効率も十分に抑制されている。
【0014】
特許文献6では、図20に示すように、互いに異なる2種類の材料(208、209)を同一の回折格子溝で密着させた構造を有する回折光学素子(以下このような構成の回折光学素子を『密着2層型DOE』という)207を開示している。特許文献6では、互いに異なる2種類の材料の内、一方がガラスモールド用のガラスで、もう一方が紫外線硬化樹脂である。特許文献6では、ガラスを格子先端部まで充填させることと、回折格子面とは逆側の面での樹脂のヒケによる回折効率の劣化防止のため、ベース樹脂層厚d1、d2を規定している。また、密着2層型DOEとして、所望の性能を満足するためのガラスと樹脂の存在範囲を規定している。
【0015】
特許文献7では、図21に示すように、互いに異なる2種類の紫外線硬化材料(211、212)を同一の回折格子溝で密着させた『密着2層型DOE』210を開示している。構成材料の違いはあるが、回折光学素子の構成は特許文献6と同じである。
【0016】
特許文献7では、密着2層型DOEとして、所望の性能を満足するべく、2種類の紫外線硬化樹脂の存在範囲を規定している。また、透過率を良好に維持するための観点から光軸中心上の樹脂層厚(=格子厚+ベース樹脂層厚)も規定している。
【0017】
特許文献8では、図22に示すように、前記特許文献7と同じく密着2層型DOE213を開示している。特許文献8では、回折効率の劣化防止のために、成形時に2種類の紫外線硬化樹脂に硬化収縮差が生じ、格子面以外の樹脂表面に微小な凹凸(浮き)が発生しないよう、2種類の樹脂の内部透過率を規定した回折光学素子を開示している。
【非特許文献1】SPIE Vol.1354 International Lens Design Conference(1990)
【特許文献1】特開平4−213421号公報
【特許文献2】特開平6−324262号公報
【特許文献3】米国特許5044706号明細書
【特許文献4】特開2002-082214号公報
【特許文献5】特開2004−78166号公報
【特許文献6】特開2004−126061号公報
【特許文献7】特開2005−107298号公報
【特許文献8】特開2005−316414号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
特許文献4では、回折効率の斜入射による劣化対策及び光学系の収差補正のための構成が開示されている。しかしながら回折光学素子を用いたときの透過率については何ら記載されていない。
【0019】
特許文献5では、積層型DOEの構成材料として微粒子分散材料を用いている。これにより、設計次数である1次光の回折効率を高め、設計次数以外の光の回折効率を弱めフレアを低減している。特許文献5では、回折光学素子の性能(高回折効率化)についての記述はあるが、回折光学素子を用いた光学系における透過率については、何ら記載されていない。
【0020】
特許文献6では、回折効率の劣化対策として、ベース樹脂層厚d1、d2を規定している。特許文献6には透過率の観点からのベース樹脂層厚を規定していない。また、そのベース樹脂層厚の規定範囲は、厚くする方向であるため、透過率が低下する傾向があった。
【0021】
特許文献7では、透過率の観点から光軸上の樹脂層厚(=格子厚+ベース樹脂層厚)を規定している。しかし、特許文献7には、光軸から光軸に対して垂直方向に離れた位置における樹脂層厚の規定は無いため、周辺部での透過率が低下する場合がある。
【0022】
特許文献8の回折光学素子は、前述及び図22に示すように、前記特許文献7と同じ密着2層型DOE213を開示している。特許文献8は、回折効率の劣化対策として、2種類の紫外線硬化樹脂の内部透過率を規定している。しかし、特許文献8には、回折光学素子及びそれを用いた光学系の透過率については何ら開示されていない。
【0023】
本発明は、可視波長域に大きな吸収、散乱を有する微粒子分散材料を回折光学素子に用いた際、回折光学素子自体の内部透過率の劣化を極力抑えることができる回折光学素子の提供を目的とする。
【0024】
更に、回折光学素子を光学系に用いたとき光学系全体での透過率の劣化も極力抑えることができる光学系の提供を目的とする。
【0025】
又、それと同時に、可視波長域で、特定次数(設計次数)の回折光に対して高い回折効率が得られ、且つ特定次数(設計次数)以外の不要回折次数の回折光を十分抑制できる回折光学素子の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明の回折光学素子は、光軸に対し、回転対称な回折格子がベース樹脂層部上に成形して成る樹脂層と、
該樹脂層を密着し、保持する透明基板とを有する素子部を複数積層した回折光学素子であって、
該複数の素子部のうち、少なくとも1つの素子部は、それを構成する樹脂層の材料に微粒子分散材料を用いており、該樹脂層を構成するベース樹脂層部の厚さは、光軸から光軸に対し、垂直方向に向かうにつれて薄くなるように構成されており、
該回折光学素子は光軸上に比べて周辺部での透過率が等しいか又は高くなるように構成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、回折光学素子自体の内部透過率の劣化を極力抑えることができるとともに、回折光学素子を光学系に用いたとき光学系全体での透過率の劣化も極力抑えることができる回折光学素子及びそれを有する光学系が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明の回折光学素子は、素子部を複数積層した構成より成っている。ここで素子部は、光軸に対し、回転対称な回折格子と、回折格子と同一材料で一体成形して成るベース樹脂層部とから成る樹脂層と、樹脂層を密着し、保持した透明基板とを有している。
【0029】
複数の素子部のうち、少なくとも1つの素子部は、それを構成する樹脂層の材料に微粒子分散材料を用いている。樹脂層を構成するベース樹脂層部の厚さは、光軸から光軸に対して垂直方向の周辺部に向かうにつれて薄くなるように構成されている。
【0030】
回折光学素子は光軸上に比べて周辺部での透過率が等しいか又は高くなるように構成されている。
【0031】
下記に本発明に係る回折光学素子の各実施例について説明する。
【0032】
図1(a)は本発明の実施例1の回折光学素子の正面図であり、図1(b)は図1(a)の回折光学素子の側面図である。図1(a)、(b)において、1は回折光学素子、Oは回折光学素子1の中心軸(光軸)である。図2は図1の回折光学素子1をA-A’線で切断したときの断面形状をデフォルメした説明図である。また、図2において格子部の深さ方向もかなりデフォルメして示している。
【0033】
図8、図11、図14は本発明の回折光学素子の実施例2、3、4の要部断面図である。
【0034】
各実施例の回折光学素子1は、第1の素子部2と第2の素子部3を有している。前記実施例1、3の回折光学素子1は各々の素子部2、3に形成された同一形状の回折格子(回折格子パターン)である第1の回折格子5と第2の回折格子6で接した密着2層型構造となっている。
【0035】
そして第1、第2の素子部2、3全体で1つの回折光学素子1として作用する。第1及び第2の回折格子5、6の各格子部5c、6cは同心円状の格子形状からなり、径方向における格子ピッチが変化することでレンズ作用を有する。
【0036】
また、第1の回折格子5と第2の回折格子6の格子部5c、6cは同一の格子厚h(r)及び格子ピッチp(r)(図中不掲載)の分布を有している。
【0037】
第1の素子部2は、第1の透明基板(ガラス基板)8とこの第1の透明基板8上に設けられたベース樹脂層部4及びこのベース樹脂層部4に一体形成された同一材料より成る第1の回折格子5からなる第1格子部を有している。
【0038】
ここで第1の回折格子5とベース樹脂層部上4は第1の樹脂層を形成している。
【0039】
一方第2の素子部3も第1の素子部2と同様に、第2の透明基板(ガラス基板)9とこの第2の透明基板9上に設けられたベース樹脂層部7及びこのベース樹脂層部7に一体形成された第2の回折格子6からなる第2格子部とを有している。
【0040】
ここで第2の回折格子6とベース樹脂層部7は第2の樹脂層を形成している。前記第1の素子部2と第2の素子部3が同一の回折格子5(=6)パターンで接している。
【0041】
本実施例において、回折光学素子1に入射させる光の波長領域、すなわち使用波長領域は可視波長域(波長400nm〜波長700nm)である。第1及び第2の回折格子5、6を構成する材料及び格子厚は、可視波長全域で設計次数である1次回折光の回折効率を高くするように選択されている。
【0042】
次に本実施例の回折光学素子1の特徴について説明する。
【0043】
回折光学素子1にて、微粒子分散材料から成る樹脂層部を実施例1及び2では6、7とし、実施例3及び4では4、5とする。回折格子の格子番号を光軸中心から順に第1輪帯、光軸中心から光軸中心に対して垂直方向に距離r(mm)離れた位置の格子番号を第M輪帯とする。前記光軸上の回折格子部に当たる面法線方向の厚さ(um)をh(0)、第M輪帯の回折格子の面法線方向の格子厚(um)をh(M)とする。光軸上の面法線方向のベース樹脂層厚(um)をd(0)、前記第M輪帯の回折格子内の中心位置における面法線方向のベース樹脂層厚(um)をd(M)とする。前記光軸への面法線基準での波長λの光線の重心入射角度(rad)をθg(0,λ)、第M輪帯の回折格子内の中心位置への面法線基準での波長λの光線の重心入射角度(rad)をθg(M,λ)とする。
【0044】
その際、前記第M輪帯におけるベース樹脂層厚d(M)が下記の条件を満足する。
【0045】
0 < d(M) ≦ (h(0)/2+d(0))*(cos(θg(M,λ))/cos(θg(0,λ)))-h(M)/2 ‥(1)
但し、0 ≦ |θg(0,λ)|、|θg(M,λ)| < π/2 の条件を満足している。
【0046】
上記条件式を満足しながら、ベース樹脂層厚d(M)が光軸から垂直方向に向かうに連れて薄くなるように変化することを特徴としている。
【0047】
ここで、前記第M輪帯の回折格子内の中心位置は、前記回折光学素子を用いる光学系の位相係数をC1、C2、C3とし、設計波長をλdo(nm)とし、M=-(C1*r^2+C2*r^4+C3*r^6)/(λdo/1000000)を満足する光軸と垂直方向での位置を考える。前記式を満足する値をr=R(M)(mm)とした時、(R(M)+R(M+1))/2で与えられる位置が前記第M輪帯の回折格子内の中心位置である。
【0048】
また前記重心入射角度θg (M、λ)は、格子番号Mに対して連続的に変化しており、
|θg (M、λ)| - |θg (0、λ)| > 0 ‥‥‥(2)
なる条件式を満足している。
【0049】
また前記光軸上のベース樹脂層厚d(0)は、下記の条件式を満足している。前記回折光学素子を有する光学系において、微粒子分散材料の波長λにおける吸収係数をKb(λ)とする。波長λにおける光軸上での微粒子分散材料から成る樹脂層部を除く残りの回折光学素子の透過率をTDO(0、λ)とする。波長λにおける光軸上での回折光学素子を除いた光学系のみの透過率をTk(0、λ)とする。光軸上での光学系全体の透過率の値が最大となる可視波長域内での波長(nm)をλmaxとしたとき、下記の条件式を満足する。
【0050】
-log(0.999/(TDO(0,λmax)*Tk(0,λmax)))*(1000/Kb(λmax))*cos(θg(0,λmax))-h(0)/2≦ d(0) ≦-log(0.5/(TDO(0,λmax)*Tk(0,λmax)))*(1000/Kb(λmax))*cos(θg(0,λmax))-h(0)/2‥‥‥(3)
なる条件式を満足している。
【0051】
また可視波長域内の3波長を順にλ1、λ2、λ3とし、400nm <λ1 < 500 nm、500nm < λ2 < 600 nm、600nm < λ3 < 700 nmとする。波長λにおける光軸上での回折光学素子を含む光学系全体の透過率をTTOT(0、λ)とする。前記TOT(0,λ)が、
TTOT(0、λ2) - ((TTOT(0、λ1) + TTOT(0、λ3))/2) > 0 ‥‥‥(4)
なる条件式を満足している。
【0052】
また前記微粒子分散材料のg線、F線、d線、C線に対する屈折率を順にngb、nFb、ndb、nCbとし、該微粒子分散材料に含まれる微粒子材料のF線、d線、C線に対する屈折率を順にnFbb、ndbb、nCbbとする。
【0053】
νdb = (ndb - 1) / (nFb - nCb) ≦ 30 ‥‥‥(5)
θg、Fb = (ngb - nFb) / (nFb -nCb) ≦(-1.665E-07*νdb3+5.213E-05*νdb2-5.656E-03*νdb+0.675)‥‥‥(6)
ndbb ≧ 1.70 ‥‥‥(7)
νdbb = (ndbb -1) / (nFbb - nCbb) ≦ 20 ‥‥‥(8)
の条件式を満足している。
【0054】
また前記微粒子分散材料はITO、Ti、Nr、Cr及びその酸化物、複合物、混合物のいずれかの無機微粒子を含んだ樹脂材料である。
【0055】
また前記無機微粒子の粒子径の平均値は、可視域での使用波長の1/4以下である。
【0056】
また前記格子厚h(M)(μm)は、格子番号Mに対して連続的に変化している、それとともに、前記重心入射角度θg (M、λ)に対して1次回折効率が最大になるように設定されている。素子部と素子部との間に空気層を有し、F線、d線、C線の各波長をλF、λd、λCとし、F線、d線、C線の各波長における光学光路長差を各波長で割った値をm(λF)、m(λd)、m(λC)とする。前記微粒子分散材料と異なる材料から成る回折格子の格子部の格子厚をh1(M)とし、該微粒子分散材料から成る回折格子の格子部の格子厚をh2(M)とする。前記微粒子分散材料と異なる材料のF線、d線、C線に対する屈折率をnFJ、ndJ、nCJとし、前記微粒子分散材料のF線、d線、C線に対する屈折率をnFb、ndb、nCbとする。前記微粒子分散材料と異なる材料から成る回折格子へのF線、d線、C線での入射角度をθ1(M、λF)、θ1(M、λd)、θ1(M、λC)としする。前記微粒子分散材料と異なる材料から成る回折格子からのF線、d線、C線での射出角度をθ1’(M、λF)、θ1’(M、λd)、θ1’(M、λC)とする。前記微粒子分散材料から成る回折格子へのF線、d線、C線での入射角度をθ2(M、λF)、θ2(M、λd)、θ2(M、λC)とする。前記微粒子分散材料から成る回折格子からのF線、d線、C線での射出角度をθ2’(M、λF)、θ2’(M、λd)、θ2’(M、λC)とする。
【0057】
m(λF) = (±((nFJ*cos(θ1(M、λF))- cos(θ1’(M、λF))) * h1(M)) + ((±(cos(θ2(M、λF)) - nFb*cos(θ2’(M、λF))) * h2(M))) /λF
m(λd) = (±((ndJ*cos(θ1(M、λd))- cos(θ1’(M、λd))) * h1(M)) + ((±(cos(θ2(M、λd)) - ndb*cos(θ2’(M、λd))) * h2(M))) /λd
m(λC) = (±((nCJ*cos(θ1(M、λC))- cos(θ1’(M、λC))) * h1(M)) + ((±(cos(θ2(M、λC)) - nCb*cos(θ2’(M、λC))) * h2(M))) /λC
θ1’(M、λF) = θ2(M、λF)= θg (M、λF)
θ1’(M、λd) = θ2(M、λd)= θg (M、λd)
θ1’(M、λC) = θ2(M、λC)= θg (M、λC)
h2(M) = h(M)
とおいたとき、
0.92 ≦ (m(λF) + m(λd) + m(λC))/3 ≦ 1.08 ‥‥‥(9)
h(M) ≦ 20 ‥‥‥(10)
なる条件式を満足している。
【0058】
また前記格子厚h(M)(μm)は、格子番号Mに対して連続的に変化している、それととともに、前記重心入射角度θg (M、λ)に対して1次回折効率が最大になるように設定されている。素子部と素子部との間に空気層を有しなく、F線、d線、C線の各波長をλF、λd、λCとする。F線、d線、C線の各波長における光学光路長差を各波長で割った値をm(λF)、m(λd)、m(λC)とする。前記微粒子分散材料と異なる材料のF線、d線、C線に対する屈折率をnFJ、ndJ、nCJとし、前記微粒子分散材料のF線、d線、C線に対する屈折率をnFb、ndb、nCbとする。前記回折光学素子へのF線、d線、C線での入射角度をθ3(M、λF)、θ3(M、λd)、θ3(M、λC)とし、前記回折光学素子からのF線、d線、C線での射出角度をθ3’(M、λF)、θ3’(M、λd)、θ3’(M、λC)とする。
【0059】
m(λF)=±((nFJ*cos(θ3(M、λF))-nFb*cos(θ3’(M、λF)))* h(M))/λF
m(λd)=±((ndJ*cos(θ3(M、λF))-ndb*cos(θ3’(M、λF)))* h(M))/λd
m(λC)=±((nCJ*cos(θ3(M、λF))-nCb*cos(θ3’(M、λF)))* h(M))/λC
θ3’(M、λF) = θg (M、λF)
θ3’(M、λd) = θg (M、λd)
θ3’(M、λC) = θg (M、λC)
とおいたとき、
0.92 ≦ (m(λF) + m(λd) + m(λC))/3 ≦ 1.08 ‥‥‥(11)
h(M) ≦ 20 ‥‥‥(12)
なる条件式を満足している。
【0060】
また前記重心入射角度θg (M、λ)は、前記回折光学素子を有する光学系において、前記回折光学素子を構成する微粒子分散材料から成る回折格子に入射する角度の平均値である。若しくは前記回折光学素子に入射する角度分布の内、光軸からの距離rの位置に属する第M輪帯での1次回折効率の落ちが最小となる角度である。
【0061】
また前記使用波長λは、可視波長域内の波長であり、特にd線の波長である。
【0062】
本発明の回折光学素子を有する光学系は、撮影光学系若しくは観察光学系若しくは読取り光学系である。
【0063】
又、本は発明の光学機器は前述した光学系を有している。
【0064】
下記に本発明に係る回折光学素子の実施例1〜4について説明する。
【実施例1】
【0065】
図2に示す実施例1では第2の素子部3、特にベース樹脂層部7の構成に特徴がある。
【0066】
本実施例において、回折光学素子1に入射させる光の波長領域、すなわち使用波長領域は可視波長域(波長400nm〜波長700nm)である。第1及び第2の回折格子5、6を構成する材料及び格子厚は、可視波長全域で設計次数である1次回折光の回折効率を高くするように選択されている。
【0067】
次に、本実施例の回折光学素子1の回折効率について説明する。図16は単層型の回折光学素子(DOE)110である。図16において、108は回折格子、108aは格子部、109は基板である。
【0068】
設計波長がλ0の場合に、ある次数の回折光の回折効率が最大となる条件は、以下の通りである。光束が回折格子108のベース面(図16中の点線で示す面)107に対して入射角度θ1で入射する際、格子部108aの山と谷の光学光路長差(つまり山と谷の各々を通過する光線間における光路長差)が波長の整数倍になることである。これを式で表すと、下記の通りになる。
【0069】
(n01*cosθ1 - 1*cosθ1’) * d = m * λ0 ‥‥‥(13)
ここで、n01は波長λ0の光に対する格子部108aを有する材料の屈折率であり、dは格子部108の格子厚、mは回折次数である。また、θ1は回折格子108に波長λ0での光が入射する角度を、θ1’は回折格子108に波長λ0での光が射出する角度である。
【0070】
上記(13)式は、波長の項を含むため、同一次数では設計波長でしか等号は成り立たず、設計波長以外の波長では回折効率は最大値から低下してしまう。
【0071】
また、任意の波長λでの回折効率η(λ)は下記の通りに表すことができる。
【0072】
η(λ) = sinc^2 ( π * ( m - ( n1(λ)*cosθ1(λ) -1*cosθ1’(λ) ) * d / λ ) ) ‥‥‥(14)
ここで、mは回折次数、n1(λ)は波長λの光に対する格子部を形成する材料の屈折率である。また、θ1(λ)は回折格子に、波長λでの光が入射する角度を、θ1’(λ)は回折格子から、波長λの光が射出する角度を各々表している。また、sinc^2(x) = ( sin (x)/ x ) ^2 で表される関数である。
【0073】
本実施例のように、2層以上の積層構造を持つ回折光学素子1でも基本構成は同様であり、全層を通して1つの回折光学素子として作用させるためには、次のようにする。
【0074】
各層を構成する材料の境界に形成された格子部の山と谷とでの光学光路長差を求め、この光学光路長差を全回折格子に渡って加算する。そして加算した光学光路長差が、波長の整数倍になるように格子部の格子形状等の寸法を決定する。
【0075】
従って、図2に示した回折光学素子1において、設計波長がλ0の場合に、m次回折光の回折効率が最大になる条件は下記のようになる。
【0076】
( n01*cosθ1 - n02*cosθ1’ ) * d = m * λ0 ………(15)
ここで、n01は第1の素子部2において第1の回折格子5を形成する格子部5cの材料の波長λ0の光に対する屈折率である。n02は第2の素子部3において第2の回折格子6を形成する格子部6cの材料の波長λ0の光に対する屈折率である。
【0077】
また、θ1は第1の回折格子5に波長λ0での光が入射する角度を、θ1’は第2の回折格子6に波長λ0の光が入射する角度(=前記第1の回折格子5から射出する角度)である。また、dは回折格子5(=6)の格子部5c、6cの格子厚である。
【0078】
図2に示す構成において、設計波長λ0以外の波長λでの回折効率η(λ)は下記の式で表すことができる。
【0079】
η(λ) = sinc^2 ( π * ( m - (( n1(λ)*cosθ1(λ) -n2(λ)*cosθ1’(λ) ) * d / λ )) ) = sinc^2 ( π * ( m - φ(λ) / λ ) ) ……… (16)
φ(λ) = ( n1(λ)*cosθ1(λ) - n2(λ) *cosθ1’(λ)) * d ……… (17)
ここで、mは回折次数、n1(λ)は第1の回折格子5の格子部5cを形成する材料の波長λでの屈折率、n2(λ)は第2の回折格子6を形成する格子部6cの材料の波長λでの屈折率である。dは第1及び第2の回折格子5、6の共通の格子部5c、6cの格子厚である。
【0080】
また、θ1(λ)は第1の回折格子5に、波長λの光が入射する角度を、θ1’(λ)は第2の回折格子6に、波長λの光が入射する角度(=第1の回折格子5から射出する角度)を各々表している。また、sinc^2(x) = ( sin (x) / x )^ 2 で表される関数である。
【0081】
次に、本実施例の回折光学素子1において、高い回折効率を得るための条件について説明する。
【0082】
使用波長全域に渡って高い回折効率を得るためには、上記(16)式で表される回折効率η(λ)が全ての使用波長に対して、1に近づけばよい。言い換えれば、設計次数mでの回折効率を高めるには、上記(16)式中のφ(λ) / λがmに近づけばよい。例えば、設計次数mを1次とした際、φ(λ) / λが1に近づけばよい。
【0083】
更に、格子部の格子形状から得られる光学光路長差φ(λ)は、上記関係から波長λに比例して線形に変化していく、すなわち上記(17)式の右辺の項が線形性を有することが必要となる。
【0084】
つまり、第1の回折格子5を形成する格子部5cの波長による屈折率の変化に対する第2の回折格子6を形成する格子部6cの材料の波長による屈折率の変化が、全使用波長域で一定の比率であることが必要となる。
【0085】
次に本実施例の回折光学素子の特徴について説明する。
【0086】
図2に示した回折光学素子1において、第1の回折格子5の格子部5cにはアクリル系樹脂材料(nd=1.522、νd=51.3)を、第2の回折格子6の格子部6cにはフッ素系樹脂にITO微粒子を混合した材料(nd=1.480、νd=21.3)を用いている。
【0087】
この時第1及び第2の回折格子5、6にて、光軸上の光線(重心入射角度θ(0、λd)=0deg、光軸と垂直方向の位置r=0mm)では、共通の格子部の格子厚h(0)は13.9μmである。
【0088】
図3(a)には、実施例1での回折光学素子1の設計次数である1次回折光の回折効率を、図3(b)には、設計次数±1次光(0次光と2次光)の回折効率特性を各々示している。
【0089】
図3(a)、(b)において、横軸が波長(nm)、縦軸が回折効率(%)を各々表している。これらの図3(a)、(b)から分かるように、本実施例の回折光学素子1は、設計次数である1次光の回折効率が改善しているとともに、不要回折次数である0次光及び2次光の回折効率も低減され、よりフレア光が発生しにくくなっている。
【0090】
しかも、1次光の回折効率は可視域全域で99.9%以上得られ、それに伴い不要回折次数(0次光及び2次光)の回折効率も0.02%以下と、十分に抑制されている。
【0091】
ここで、不要次数光の回折効率については、設計次数±1次である0次光と2次光についてのみ対象としているが、これは設計次数から離れた回折次数ほどフレアに寄与する割合が少ないためである。
【0092】
つまり、0次と2次の回折次数のフレア光が低減されれば、それ以外の回折次数によるフレア光も同様に影響を低減できるからである。
【0093】
このことは、特定の設計次数の光が主に回折するように設計された回折光学素子は、設計次数から離れた次数にいくに従って、回折効率は低下している傾向にあることに起因している。また設計次数から離れた回折次数ほど、それを光学系に用いたときの結像面でのボケが大きくフレアとして目立たなくなってくることにも起因している。
【0094】
以上説明した実施例1では、図1、図2にて、平板としての基板8、9上に回折格子5、6を設けた回折光学素子について説明したが、レンズの凸面や凹面等の曲面表面に回折格子5、6を設けても、前述したのと同様の効果を得ることが出来る。
【0095】
また実施例では、設計次数が1である所謂1次回折光を用いた回折光学素子について説明したが、設計次数は1に限定されるものではない。2次や3次等の1次とは異なる回折光であっても、各回折格子5、6における光学光路長差の合成値を、所望の設計次数で所望の設計波長となるように設定すれば、実施例1と同様な効果が得られる。
【0096】
以上が、回折効率についての説明である。
【0097】
実施例1及び後述する各実施例の回折光学素子1はどのような光学系にも適用できる。
【0098】
図4は、本発明の回折光学素子1を用いた望遠型の撮像光学系(光学系)のレンズ断面図である。図4の撮像光学系10において、11は本発明の回折光学素子1を有するレンズ群である。12は絞り、13は撮像素子面を各々表している。尚、図4中には、軸上光束14と軸外光束15の光路が併記されている。因みに、本光学系の位相係数は、C1=-6.280×10^-5、C2=-6.455×10^-9、C3=-8.869×10^-12である。
【0099】
次に、本発明の回折光学素子及びそれを用いた光学系の透過率について説明する。一般的な光学系において、光軸外での像の明るさは光軸上に比べて低下する(cosine4乗法則)ことが知られている(図4中の軸上光束14と軸外光束15の像面13での明るさが異なる。)
また、本発明の回折光学素子に使用している微粒子分散材料のように、可視波長域に大きな吸収と散乱を有している材料では、微粒子分散材料による内部透過率の低下が懸念されていた。
【0100】
そこで、本発明では、光軸上の透過率はできる限り確保しながら、光軸外の透過率もできる限り高くできるように、微粒子分散材料から成る樹脂層(図2中の回折格子6(格子部6c)+ベース樹脂層部7)の厚さを場所ごとに規定している。
【0101】
その際、重要となってくるのは、入射瞳面(図4中のレンズ群11における接合面(=回折面))における入射してくる光線の偏り具合、つまり入射角度分布を考慮することである。これを考慮することで、対象とする光学系に則してベース樹脂層の厚さを規定することができる。
【0102】
ここで、図4の撮像光学系10の回折面(レンズ群11における接合面)における入射角度分布を図5に示す。図5において、横軸は光軸と垂直方向の半径r(mm)で、縦軸は回折面への入射角度θ(deg)である。また、図5の各曲線は図4中の軸外光束の像面で最大到達位置を10割とした時の、像高±10割、±9割、±7割、±5割、軸上、重心の入射角度を各々表している。
【0103】
ここで、重心入射角度は他の像高での入射角度の平均値である。この重心入射角度は、位置r(mm)での1次回折効率の入射角度分布による落ち幅が最小になる角度であっても良い。図5より、例えばr=0、12.5、25(mm)位置(各々格子番号M=0、25、109)での重心入射角度は、各々0、約8、約18(deg)となる。この重心入射角度で光学光路長が最小になるように、ベース樹脂層7の厚さを規定していく。
【0104】
次に、図4の撮像光学系10の回折光学素子11を除いた光学系全体の透過率を図6に示す。
【0105】
図6において、横軸は波長(nm)を表し、縦軸は透過率(%)を表している。図6より、図4の撮像光学系の透過率は、使用波長域全域(可視波長域波長400nm〜700nm)で約65〜90%であることが分かる。図6は実施例1の一例であり、他の透過率のプロファイルをもったものでも良い。
【0106】
次に、本実施例で使用する微粒子分散材料(ここでは、ITO微粒子+樹脂)の厚さ10μm換算の内部透過率(面反射を無視した透過率)と散乱率を、図7(a)(b)に各々示す。この図7(a)、(b)において、横軸は波長(nm)、縦軸は透過率(%)及び散乱率(%)を各々表している。
【0107】
図7(a)より、透過率は使用波長域全域(可視波長域)で約80〜90%、図7(b)より散乱率は約0.3%以内であり、ともに短波長側で劣化している。この結果から、微粒子分散材料の吸収係数K(λ)を算出した。この透過率及び散乱率が悪化しないように、ベース樹脂層7の厚さを規定していく。但し、図7は実施例の一例であり、これに限るものではない。
【0108】
以上の内容を考慮して、実施例1にて算出した格子厚、ベース樹脂層部7の厚さ、を下記に示す。尚、計算条件は格子番号M=0(r=0)、25、109位置のd線における結果のみを記載する。
【0109】
●格子番号M=0(半径r = 0 (mm))の場合 → ・重心入射角度θg (0、λd) = 0.0deg ・格子厚h(0) = 13.9μm ・ベース樹脂層d(0) = 7.5μm
●格子番号M=25の場合 → ・重心入射角度θg (25、λd)= 8.0deg ・格子厚h(25) = 13.9μm ・ベース樹脂層d(25) = 7.4μm
●格子番号M=109の場合 → ・重心入射角度θg (109、λd)= 18.0deg ・格子厚h(109) = 13.8μm ・ベース樹脂層d(109) = 6.9μm
尚、実施例1では、微粒子分散材料を含む第2の素子部3の内部透過率を各輪帯位置で全て同じ値(90.0%)に設定したときの結果を示したが、これに限ることではない。
【実施例2】
【0110】
図8は本発明の回折光学素子の実施例2の要部断面図である。図中、図2で示す部材と同一部材には同符番を付している。
【0111】
実施例2の回折光学素子1は、第1の素子部2と第2の素子部3を有している。そして、各々の素子部2、3に形成された異なる2種類の回折格子パターンである第1の回折格子5と第2の回折格子6で、空気層を挟んで近接配置された2積層型構造となっている。
【0112】
そして第1、第2の素子部2、3全体で1つの回折光学素子1として作用する。第1及び第2の回折格子5、6の各格子部5c、6cは同心円状の格子形状からなり、径方向における格子ピッチが変化することでレンズ作用を有する。また、第1の回折格子5と第2の回折格子6の格子部5c、6cは同一の格子厚h(r)及び格子ピッチp(r)(図中不掲載)の分布を有している。
【0113】
また図8に示すように、第1の素子部2は、第1の透明基板8とこの第1の透明基板8上に設けられたベース樹脂層部4及びこのベース樹脂層部4に一体形成された第1の回折格子5からなる第1格子部を有している。
【0114】
一方、第2の素子部3も第1の素子部2と同様に、第2の透明基板9とこの第2の透明基板9上に設けられたベース樹脂層部7及びこのベース樹脂層部7に一体形成された第2の回折格子6からなる第2格子部とを有している。
【0115】
尚、本実施例も実施例1と同様に、後述するように、第2の素子部3、特にベース樹脂層部7の構成に特徴がある。
【0116】
次に、本実施例の回折光学素子1の回折効率について、実施例1で説明した箇所は省いて、本実施例に係る部分だけ簡単に説明する。
【0117】
図8に示す構成において、設計波長λ0以外の波長λでの回折効率η(λ)は下記の式(18)、(19)、(20)で表すことができる。前記(16)及び(17)式が(18)、(19)式に相当する。
【0118】
η(λ) = sinc^2 ( π * ( m - φ(λ) / λ ) ) ……… (18)
φ(λ) = (( n1(λ)*cosθ1(λ) - 1*cosθ1’(λ)) * d1) - ((1*cosθ2(λ) - n2(λ)*cosθ2’(λ)) * d2) ……… (19)
θ1’(λ) = θ2(λ) ……… (20)
ここで、mは回折次数、n1(λ)は第1の回折格子5の格子部5cを形成する材料の波長λでの屈折率、n2(λ)は第2の回折格子6の格子部6cを形成する材料の波長λでの屈折率である。
【0119】
d1、d2は第1及び第2の回折格子5、6の格子部5c、6cの格子厚である。また、θ1(λ)は第1の回折格子5に、波長λの光が入射する角度を、θ1’(λ)は第1の回折格子5から射出する光の角度を各々表している。
【0120】
また、θ2(λ)は第2の回折格子6に、波長λの光が入射する角度を、θ2’(λ)は第2の回折格子6から射出する光の角度を各々表している。また、sinc^2(x) = ( sin (x) / x )^ 2 で表される関数である。
【0121】
次に、本実施例の回折光学素子1において、高い回折効率を得るための条件について説明する。
【0122】
使用波長全域に渡って高い回折効率を得るためには、上記(18)式で表される回折効率η(λ)が全ての使用波長に対して、1に近づけばよい。言い換えれば、設計次数mでの回折効率を高めるには、上記(18)式中のφ(λ) / λがmに近づけばよい。例えば、設計次数mを1次とした際、φ(λ) / λが1に近づけばよい。
【0123】
上記で示した関係を満足する構成を説明する。
【0124】
図8に示した回折光学素子1において、第1の回折格子5の格子部5cにはアクリル系樹脂材料(nd=1.524、νd=51.6)を、第2の回折格子6の格子部6cにはアクリル系樹脂にITO微粒子を混合した材料(nd=1.570、νd=21.8)を用いている。
【0125】
この時第1及び第2の回折格子5、6にて、光軸上の光線(重心入射角度θ(0、λd)=0deg、光軸と垂直方向の位置r=0mm)では、格子部5cの格子厚d1は14.2μm、格子部6cの格子厚d2(=h(0))は12.0μmである。
【0126】
図9(a)には、実施例2での回折光学素子1の設計次数である1次回折光の回折効率を、図9(b)には、設計次数±1次光(0次光と2次光)の回折効率特性を各々示している。
【0127】
図9(a)(b)において、横軸が波長(nm)、縦軸が回折効率(%)を各々表している。
【0128】
これらの図9(a)(b)から分かるように、本実施例の回折光学素子1は、設計次数である1次光の回折効率が改善しているとともに、不要回折次数である0次光及び2次光の回折効率も低減され、よりフレア光が発生しにくくなっている。
【0129】
しかも、1次光の回折効率は可視域全域で99.9%以上得られ、それに伴い不要回折次数(0次光及び2次光)の回折効率も0.01%以下と、十分に抑制されている。
【0130】
以上説明した実施例2では、図8にて、平板としての基板8、9上に回折格子5、6を設けた回折光学素子について説明したが、レンズの凸面や凹面等の曲面表面に回折格子5、6を設けても、同様の効果を得ることが出来る。
【0131】
また実施例2では、設計次数が1である所謂1次回折光を用いた回折光学素子について説明したが、設計次数は1に限定されるものではない。2次や3次等の1次とは異なる回折光であっても、各回折格子5、6における光学光路長差の合成値を、所望の設計次数で所望の設計波長となるように設定すれば、実施例2と同様な効果が得られる。
【0132】
以上が、回折効率についての説明である。
【0133】
次に、実施例2の回折光学素子1を用いた光学系は実施例1(図4)と同じなので、説明を省略する。
【0134】
次に、本実施例で使用する微粒子分散材料(ここでは、ITO微粒子+樹脂)の厚さ10μm換算の内部透過率と散乱率を、図10(a)(b)に各々示す。
【0135】
この図10(a)、(b)において、横軸は波長(nm)、縦軸は透過率(%)及び散乱率(%)を各々表している。図10(a)より、透過率は使用波長域全域(可視波長域)で約80〜90%、図10(b)より散乱率は約0.3%以内であり、ともに短波長側で劣化している。
【0136】
本実施例で図10は、実施例1の図7よりも、透過率及び散乱率とも悪化していることがわかる。
【0137】
この結果から、微粒子分散材料の吸収係数K(λ)を算出した。この透過率及び散乱率が悪化しないように、前記ベース樹脂層7の厚さを規定していく。但し、図10は実施例の一例であり、これに限るものではない。
【0138】
以上の内容を考慮して、実施例2にて算出した格子厚、ベース樹脂層厚を下記に示す。尚、計算条件は半径r = 0、12.5、25(mm) (各々格子番号M=0、25、109)位置のd線における結果のみを記載する。
【0139】
●格子番号M=0(半径r = 0 (mm))の場合 ⇒ ・重心入射角度θg (0、λd) = 0.0deg ・格子厚h(0) = 11.6μm ・ベース樹脂層d(0) = 4.8μm
●格子番号M=25の場合 ⇒ ・重心入射角度θg (25、λd)= 8.0deg ・格子厚h(25) = 11.6μm ・ベース樹脂層d(25) = 4.7μm
●格子番号M=109)の場合 ⇒ ・重心入射角度θg (109、λd)= 18.0deg ・格子厚h(109) = 11.6μm ・ベース樹脂層d(25.0) = 4.2μm
尚、実施例2では、微粒子分散材料を含む第2の素子部3の内部透過率を各輪帯位置で全て同じ値(90.0%)に設定したときの結果を示したが、これに限ることではない。
【実施例3】
【0140】
図11は本発明の回折光学素子の実施例3の要部断面図である。図中図2で示す部材と同一部材には同符番を付している。
【0141】
実施例3の回折光学素子1は、図2で示す実施例1に比べて、格子部の向き(回折光学素子1の各パワー)の順序が逆になった構成になっている。
【0142】
ここで、格子部の向きの順序を逆にしたのは、後述図12の光学系に回折光学素子1を導入した際、その回折面に入射した光線の方向に格子垂直面を合わせると、成形時及び型加工時の格子垂直面における抜け具合の兼合いからである。
【0143】
その他の構成については、実施例1の図2と同じであるので、説明は省略する。尚、本実施例は後述するように、第1の素子部2、特にベース樹脂層部4の構成に特徴がある。
【0144】
図11に示した回折光学素子1において、第1の回折格子5の格子部5cにはフッ素系樹脂にITO微粒子を混合した材料(nd=1.480、νd=21.3)を、第2の回折格子6の格子部6cにはアクリル系樹脂材料(nd=1.522、νd=51.3)を用いている。
【0145】
この時第1及び第2の回折格子5、6にて、光軸上の光線(重心入射角度θ(0、λd)=0deg、光軸と垂直方向の位置r=0mm)では、共通の格子部5c、6cの格子厚h(0)は13.9μmである。
【0146】
本実施例の回折光学素子1の設計次数である1次回折光の回折効率及び設計次数±1次光(0次光と2次光)の回折効率特性は、実施例1の図3(a)、(b)とほぼ同じ性能であるので、ここでは省略する。
【0147】
次に、実施例3の回折光学素子1を用いた光学系について説明する。
【0148】
図12は、本発明の回折光学素子1を用いた撮像光学系のレンズ断面図である。図12の撮像光学系10において、11は本発明の回折光学素子1を有するレンズ群である。12は絞り、13は撮像素子面を各々表している。尚、図12中には、軸上光束14と軸外光束15の光路が併記されている。因みに、本光学系の位相係数は、C1=-4.227×10^-5、C2=4.712×10^-10である。
【0149】
ここで、図12の撮像光学系10の回折面(レンズ群11における接合面)における入射角度分布を図13に示す。図13において、横軸は光軸と垂直方向の半径r(mm)で、縦軸は回折面への入射角度θ(deg)である。
【0150】
また、図13の各曲線は、図5と同様に、図12中の軸外光束の像面で最大到達位置を10割とした時の、像高±10割、±9割、±7割、±5割、軸上、重心の入射角度を各々表している。
【0151】
ここで、重心入射角度は他の像高での入射角度の平均値である。この重心入射角度は、位置r(mm)での1次回折効率の入射角度分布による落ち幅が最小になる角度であっても良い。
【0152】
図13より、例えばr=0、23.5、47(mm)位置(各々格子番号M=0、40、155)での重心入射角度は、各々0、約-0.6、約-1.8(deg)となる。この重心入射角度で光学光路長が最小になるように、ベース樹脂層4の厚さを規定していく。
【0153】
次に、図12の撮像光学系10の回折光学素子部11を除いた光学系全体の透過率に関しても、図6とほぼ同等レベルなので、ここでは省略する。
【0154】
本実施例で使用する微粒子分散材料(ここでは、ITO微粒子+樹脂)の厚さ10μm換算の内部透過率と散乱率は、実施例1の同じ材料を用いており、前記図7(a)(b)に各々示した通りである。
【0155】
以上の内容を考慮して、実施例3にて算出した格子厚、ベース樹脂層4の厚さを下記に示す。尚、計算条件は半径r = 0、23.5、47(mm)位置(格子番号M=0、40、155)のd線における結果のみを記載する。
【0156】
●格子番号M=0(半径r = 0 (mm))の場合 ⇒ ・重心入射角度θg (0、λd) = 0.0deg ・格子厚h(0) = 13.9μm ・ベース樹脂層d(0) = 7.5μm
●格子番号M=40の場合 ⇒ ・重心入射角度θg (40、λd)= -0.6deg ・格子厚h(40) = 13.9μm ・ベース樹脂層d(40) = 7.5μm
●格子番号M=155の場合 ⇒ ・重心入射角度θg (155、λd)= -1.8deg ・格子厚h(155) = 13.8μm ・ベース樹脂層d(47.0) = 7.4μm
尚、実施例3では、微粒子分散材料を含む第1の素子部2の内部透過率を各輪帯位置で全て同じ値(90.0%)に設定したときの結果を示したが、これに限ることではない。
【実施例4】
【0157】
図14は本発明の回折光学素子の実施例4の要部断面図である。図中、図2で示す部材と同一部材には同符番を付している。
【0158】
実施例4の回折光学素子1は、図2で示す実施例1に比べて格子部の向き(回折光学素子1の各パワー)の順序が逆になった構成になっている。
【0159】
ここで、格子部の向きの順序を逆にしたのは、図12の光学系に回折光学素子1を導入した際、その回折面に入射した光線の方向に格子垂直面を合わせると、成形時及び型加工時の格子垂直面における抜け具合の兼合いからである。
【0160】
その他の構成については、実施例2の図4と同じであるので、説明は省略する。尚、本実施例は後述するように、第1の素子部2、特にベース樹脂層部4の構成に特徴がある。
【0161】
図14に示した回折光学素子1において、第1の回折格子5の格子部5cにはアクリル系樹脂にITO微粒子を混合した材料(nd=1.570、νd=21.8)を、第2の回折格子6の格子部6cにはアクリル系樹脂材料(nd=1.524、νd=51.6)を用いている。この時第1及び第2の回折格子5、6にて、光軸上の光線(重心入射角度θ(0、λd)=0deg、光軸と垂直方向の位置r=0mm)では、格子部5cの格子厚d1は12.0μm、格子部6cの格子厚d2(=h(0))は14.2μmである。
【0162】
本実施例の回折光学素子1の設計次数である1次回折光の回折効率及び設計次数±1次光(0次光と2次光)の回折効率特性は、実施例2の図9(a)、(b)とほぼ同じ性能であるので、ここでは省略する。
【0163】
次に、実施例4の回折光学素子1を光学系に用いた状態については、図12の実施例と同じであるので、ここでは説明を省略する。
【0164】
次に、実施例4の撮像光学系の回折光学素子部を除いた光学系全体の透過率に関しても、図6とほぼ同等レベルなので、ここでは省略する。
【0165】
本実施例で使用する微粒子分散材料(ここでは、ITO微粒子+樹脂)の厚さ10μm換算の内部透過率と散乱率は、実施例2の同じ材料を用いており、図10(a)(b)に各々示した通りである。
【0166】
以上の内容を考慮して、実施例4にて算出した格子厚、ベース樹脂層2の厚さを下記に示す。尚、計算条件は半径r = 0、23.5、47(mm)位置(各々格子番号M=0、40、155)のd線における結果のみを記載する。
【0167】
●格子番号M=0(半径r = 0 (mm))の場合 ⇒ ・重心入射角度θg (0、λd) = 0.0deg ・格子厚h(0) = 12.0μm ・ベース樹脂層d(0) = 4.6μm
●格子番号M=40の場合 ⇒ ・重心入射角度θg (40、λd)= -0.6deg ・格子厚h(40) = 12.0μm ・ベース樹脂層d(40) = 4.6μm
●格子番号M=155の場合 ⇒ ・重心入射角度θg (155、λd)= -1.7deg ・格子厚h(155) = 12.0μm ・ベース樹脂層d(155) = 4.5μm
尚、実施例4では、微粒子分散材料を含む第1の素子部2の内部透過率を各輪帯位置で全て同じ値(90.0%)に設定したときの結果を示したが、これに限ることではない。
【0168】

次に前述した各条件式の技術的意味について説明する。
【0169】
本発明の回折光学素子1は、光軸(中心軸)Oに対し回転対称な複数の回折格子5、6を有している。回折格子5、6を一体成形したベース樹脂層のうち、少なくとも一方の材料に微粒子分散材料(ITO)を用いている。
【0170】
ベース樹脂層と密着しているガラス基板部(透明基板)を有している。回折格子を形成する格子部とガラス基板部の間の樹脂層部をベース樹脂層部7とする。このとき回折光学素子1の光軸中心から光軸に垂直方向にr(mm)の距離にある第M輪帯のベース樹脂層部7の厚さd(M)(μm)が条件式(1)を満足している。また、その際ベース樹脂層厚d(M)は、光軸Oから周辺部に向かう(前記距離r(mm)が大きくなる)に連れ薄くなっている。
【0171】
具体的にはベース樹脂層部の厚さは光軸上(中心)に比べて周辺部にいくに従って薄くなり、かつ透過率が等しく又は増大している。
【0172】
上記条件式(1)は、入射瞳面(回折面)における光軸中心上と前記光軸に対し垂直方向の半径r(mm)の第M輪帯における、微粒子分散材料を含む素子部の、特にベース樹脂層厚d(M)を規定している。条件式(1)を満足していれば、一般的な光学系に本発明の回折光学素子を用いる場合、光軸外での像の明るさは光軸上に比べて低下する(cosine4乗法則)ことへの対策となる。つまり、微粒子分散材料を含む素子部の内部透過率を、半径r方向の周辺部が光軸中心部よりも同等以上にすることである。
【0173】
上記条件式(1)の下限値を超えると、回折格子の成形が困難になるので好ましくない。一方、上記条件式(1)の上限値を超えると、微粒子分散材料を含む素子部の内部透過率が、半径r方向の周辺部よりも光軸中心部で高くなってしまう。この結果光学系に用いたときcosine4乗法則より、光軸外での像の明るさが更に低下してしまうので、好ましくない。
【0174】
次に条件式(2)について説明する。条件式(2)は光軸中心Oから光軸に対し垂直方向に距離r(mm)離れた位置である第M輪帯での、微粒子分散材料から成る樹脂層(=前記格子部+ベース樹脂層部)への面法線方向に対する重心入射角度θg (M、λ)に関する。重心入射角度θg(M、λ)は格子番号Mに対して連続的に変化している。また格子番号Mと距離rの間には、M=-(C1*r^2+C2*r^4+C3*r^6)/(λdo/1000000)なる関係式が成り立っている。但しλdo(nm)は設計波長である。
【0175】
ここで、θg (M、λ)、θg (0、λ)は前記波長λにおける重心入射角度であり、各々光軸中心から距離r(mm)離れた位置の第M輪帯における光の入射角度(rad)、及び光軸中心O上の光の入射角度(rad)を表している。
【0176】
上記条件式(2)は、入射瞳面(回折面)における光軸中心上と光軸に対し垂直方向の半径r(mm)の第M輪帯における、微粒子分散材料から成る素子部に入射する光線の重心角度の関係を表している。
【0177】
上記条件式(2)の下限値を超えると、前記条件式(1)にて、微粒子分散材料から成る素子部の内部透過率が、常に半径r方向の周辺部よりも光軸中心部で高くなってしまい、光学系での前記cosine4乗法則より、光軸外での像の明るさが更に低下してしまうので、好ましくない。
【0178】
次に条件式(3)は、本発明の回折光学素子を光学系に用いたときの光軸中心O上でのベース樹脂層厚に関する。
【0179】
上記条件式(3)は、微粒子分散材料を含む回折光学素子を光学系に用いたときの光学系全体の光軸中心上での透過率の観点から、前記ベース樹脂層厚の範囲を規定したものである。
【0180】
上記条件式(3)の下限値を超えることは、理論上有り得ない。上記条件式(3)の上限値を超えると、光学系全体の透過率が低くなりすぎてしまい、光学性能を落とすことになるので、好ましくない。
【0181】
上記条件式(3)は、更に下記の範囲であることが、光学系の透過率の観点から好ましい。
【0182】
-log(0.9/(TDO(0,λmax)*Tk(0,λmax)))*(1000/Kb(λmax))*cos(θg(0,λmax))-h(0)/2≦ d(0) ≦ -log(0.6/(TDO(0,λmax)*Tk(0,λmax)))*(1000/Kb(λmax))*cos(θg(0,λmax))-h(0)/2‥‥‥ ((3)-1)
更に
-log(0.8/(TDO(0,λmax)*Tk(0,λmax)))*(1000/Kb(λmax))*cos(θg(0,λmax))-h(0)/2≦ d(0) ≦-log(0.7/(TDO(0,λmax)*Tk(0,λmax)))*(1000/Kb(λmax))*cos(θg(0,λmax))-h(0)/2 ‥‥‥((3)-2)
とするのが良い。
【0183】
次に条件式(4)は、本発明の回折光学素子を有する光学系において、可視波長域内の3波長λ1、λ2、λ3における光学系の光軸上での透過率TTOT(0、λ)に関する。
【0184】
上記条件式(4)は、微粒子分散材料を含む回折光学素子を光学系に用いたときの光学系全体の光軸中心上での透過率の範囲を規定したものである。
【0185】
また上記3波長λ1、λ2、λ3は、条件式(4)において可視波長領域の波長で各条件を満足する波長を規定している。
【0186】
上記条件式(4)の下限値を超えると、光学系全体の透過率の波長特性に対するプロファイルのバランスが悪くなり、光学系全体での色味のバランスが悪化してしまうので、好ましくない。
【0187】
上記3波長λ1、λ2、λ3は、更に下記の値であることが、光学系全体の色味のバランスを考える上で好ましい。
【0188】
λ1 = 486.1nm(F線) λ2 = 587.6nm(d線)
λ3 = 656.3nm(C線)
次に条件式(5)〜(8)は、発明の回折光学素子の素子部に用いる微粒子分散材料に関する。
【0189】
上記条件式(5)、(6)は、本発明の回折光学素子において、互いに異なる複数の材料の内、微粒子分散材料の材料特性の範囲を規定した条件式である。
【0190】
ここで、上記条件式(5)、(6)の関係をイメージし易くするため、図15を用いて説明することにする。図15は部分分散比θg、Fとアッベ数νdの関係を表しており、縦軸は部分分散比θg、Fであり、横軸はアッベ数νdである。
【0191】
次に図15の上記条件式(5)、(6)については、本発明の回折光学素子において、高回折効率の回折光学素子を達成するための微粒子分散材料の部分分散比θg、Fとアッベ数νdの範囲を規定している。条件式(5)、(6)の上限値を超えると、本発明の回折光学素子にて可視波長域内で高い回折効率を得られなくなるので、好ましくない。
【0192】
上記条件式(5)、(6)は、更に高い回折効率を得るために、下記の条件式を満足することが好ましい。
【0193】
νdb = (ndb - 1) / (nFb - nCb) ≦25 ……… ((5)-1)
θg、Fb = (ngb - nFb) / (nFb - nCb) ≦(‐1.665E-07*νd23+5.213E-05*νd22‐5.656E-03*νd2+0.600) ……… ((6)-1)
上記条件式(7)及び(8)は、本発明の回折光学素子において、微粒子分散材料に用いる微粒子材料の材料特性の範囲を規定した条件式である。
【0194】
上記条件式(7)及び(8)を満足する微粒子材料としては、ITOやTi、Nr、Cr及びその酸化物、複合物、混合物のいずれかの無機微粒子が挙げられる。
【0195】
本実施形態では、ITO(ndb2=1.77、νd=6.8)を例として使用した。条件式(7)の下限値及び(8)の上限値を超えると、条件式(5)、(6)を満足する微粒子分散材料を達成できなくなるので、好ましくない。
【0196】
ここで、微粒子材料として、上記の微粒子材料を例として挙げたが、上記条件式(7)、(8)の範囲を満足する材料であれば、これに限ることではない。
【0197】
条件式(7)、(8)の微粒子材料の材料特性について、更に下記の条件式を満足することが好ましい。
【0198】
ndbb ≧ 1.75 ……… ((7)-1)
νdbb = (ndbb -1) / (nFbb - nCbb) ≦ 18 ……… ((8)-1)
次に条件式(9)〜(12)は、本発明の回折光学素子を用いた光学系において、光軸から光軸に対し、垂直方向に距離r(mm)離れた位置に属する第M輪帯での面法線方向の格子厚h(M)(μm)が、格子番号Mに対して連続的に変化することを規定している。
【0199】
それとともに、前記格子厚h(M)は、前記重心入射角度θg(M、λ)に対して1次回折効率が最大になるように、条件式(9)〜(12)を満足している。
【0200】
上記条件式(9)、(10)は、本発明の2積層型の回折光学素子の回折効率を規定する条件式である。一方、条件式(11)、(12)は、本発明の密着2層型の回折光学素子の回折効率を規定する条件式である。
【0201】
上記条件式(9)及び(11)においては、条件の範囲内を外れると所望の回折効率が得られなく好ましくない。また上記条件式(10)及び(12)の上限値を超えると、斜入射時の回折効率の劣化が大きく好ましくない。
【0202】
また更に高回折効率を達成する為には、条件式(9)〜(12)が下記の条件式を満足するのが良い。
【0203】
0.93 ≦ (m(λF) + m(λd) + m(λC))/3 ≦ 1.07………((9)-1)及び((11)-1)
更に
0.94 ≦ (m(λF) + m(λd) + m(λC))/3 ≦ 1.06………((9)-2)及び((11)-2)
更に
0.96 ≦ (m(λF) + m(λd) + m(λC))/3 ≦ 1.04………((9)-3)及び((11)-3)
h(M) ≦ 15 ……… ((10)-1)及び((12)-1)
また、微粒子材料の平均粒子径としては、入射光の波長(可視波長域)の1/4以下であることが好ましい。これより粒子径が大きくなると、微粒子材料を樹脂材料に混合した際、散乱が大きくなってしまい好ましくない。
【0204】
ちなみに、上記微粒子材料を混合する樹脂材料は、紫外線硬化樹脂であり、アクリル系、フッ素系、ビニル系、エポキシ系のいずれかの有機樹脂が挙げられる。本実施形態としては、アクリル系樹脂及びフッ素系樹脂を例として使用した。
【0205】
次に前述した各条件式と各実施例との対応関係を(表1)に示す。
【0206】
【表1】

【0207】
尚、上記計算結果は、特定の格子番号M(半径r)及び波長λでの条件の値のみ示したが、別の格子番号(半径r)及び可視波長域の波長であっても、同様に条件式を満足する。
【0208】
以上のように、各実施例によれば、可視波長域に大きな吸収、散乱を有する微粒子分散材料を回折光学素子に用いた場合でも、樹脂層の厚さを適切に規定することで、回折光学素子自体の内部透過率の劣化を極力抑えることができる。更に、回折光学素子を有する光学系に応じて、回折光学素子の樹脂層の厚さを規定することで、光学系全体での透過率の劣化も極力抑えることができる。
【0209】
また、上記と同時に回折格子の厚さを適切に規定することで、
可視波長域で、特定次数(設計次数)の回折光に対して高い回折効率が得られ、且つ特定次数(設計次数)以外の不要回折次数の回折光を十分抑制できる回折光学素子が得られる。
【0210】
本発明においては、上記にて説明してきた回折光学素子を、下記のような用途にて用いることが好ましい。
【0211】
図23は、本発明の回折光学素子を有したカメラ(スチルカメラやビデオカメラ等の光学機器)の撮影(結像)光学系の概略図である。
【0212】
この図中、101は大部分が屈折光学素子(例えば通常のレンズ素子)で構成される撮影レンズであり、内部に開口絞り102と前記実施例1〜4にて説明した回折光学素子1を有している。また103は結像面に配置されたフィルム又はCCD等の撮影媒体である。
【0213】
前記回折光学素子1はレンズ機能を有する素子であり、撮影レンズ101中の屈折光学素子で発生する色収差を補正している。
【0214】
そして、前記回折光学素子1は、前記実施例1〜4にて説明してきたように、回折効率特性は従来のものに比べて大幅に改善されているので、フレア光が少なく低周波数での解像力も高い。この結果、本実施例では高い光学性能を有した撮影光学系を実現している。
【0215】
尚図23では、絞り102の近傍に配置された平板ガラス面に回折光学素子1を設けているが、本発明はこれに限定するものではなく、前述のように、回折光学素子1をレンズの凹面又は凸面上に設けてもよい。更に、撮影レンズ101内に回折光学素子1を複数個配置してもよい。
【0216】
また図23では、カメラの撮影レンズに本発明に係る回折光学素子を用いた場合について説明した。本発明はこれに限らず、事務機のイメージスキャナやデジタル複写機のリーダレンズ等、広い波長域で使用される結像光学系に本発明の回折光学素子を使用しても、先に説明したのと同様の効果が得られる。
【0217】
図24は、本発明の回折光学素子を有した双眼鏡や望遠鏡の観察光学系(光学機器)の概略図である。
【0218】
この図中、104は対物レンズ、105は倒立像を正立させるためのプリズム、106は接眼レンズ、107は評価面(瞳面)である。図中の1は本発明に係る回折光学素子であり、対物レンズ104の結像面103での色収差等を補正する目的で設けられている。
【0219】
前記回折光学素子1は、前記実施例1〜4にて説明してきたように、回折効率特性は従来のものに比べて大幅に改善されているので、フレア光が少なく低周波数での解像力も高い。
【0220】
この結果、高い光学性能を有した観察光学系を実現している。
【0221】
尚図24では、本発明の回折光学素子1を平板ガラス面に設けているが、本発明はこれに限定するものではなく、前述のように、回折光学素子1をレンズの凹面又は凸面上に設けてもよい。更に、観察光学系内に回折光学素子1を複数個配置してもよい。
【0222】
また図24では、対物レンズ部に回折光学素子1を設けた場合を示したが、これに限らず、プリズム105の表面や接眼レンズ106内の位置に設けることもでき、この場合も先に説明したのと同様の効果が得られる。
【0223】
但し、回折光学素子1を結像面103より物体側に設けることで、対物レンズ部のみでの色収差低減効果があるため、肉眼の観察系の場合、少なくとも対物レンズ部に設けることが望ましい。
【0224】
また図24では、双眼鏡の観察光学系に本発明に係る回折光学素子を用いた場合について説明したが、これに限らず、地上望遠鏡や天体観測用望遠鏡等の観察光学系にも適用できる。更には、レンズシャッターカメラやビデオカメラ等の光学式ファインダにも適用することができ、先に説明したのと同様の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0225】
【図1】本発明の実施例1〜4の回折光学素子の正面図及び側面図。
【図2】本発明の実施例1の回折光学素子の部分断面図。
【図3(a)】実施例1、3における回折光学素子の設計次数での回折効率特性を示すグラフ図。
【図3(b)】実施例1、3における回折光学素子の設計次数±1次での回折効率特性を示すグラフ図。
【図4】実施例1、2に係る回折光学素子を有する撮像光学系の説明図。
【図5】図4の撮像光学素子の回折面における入射角度分布を示すグラフ図。
【図6】本発明の回折光学素子部分を除いた撮像光学系の透過率を示すグラフ図。
【図7(a)】実施例1、3に用いる微粒子分散材料の10μm厚換算の内部透過率を示すグラフ図。
【図7(b)】実施例1、3に用いる微粒子分散材料の10μm厚換算の散乱率を示すグラフ図。
【図8】本発明の実施例2の回折光学素子の部分断面図。
【図9(a)】実施例2、4における回折光学素子の設計次数での回折効率特性を示すグラフ図。
【図9(b)】実施例2、4における回折光学素子の設計次数±1次での回折効率特性を示すグラフ図。
【図10(a)】実施例2、4に用いる微粒子分散材料の10μm厚換算の内部透過率を示すグラフ図。
【図10(b)】実施例2、4に用いる微粒子分散材料の10μm厚換算の散乱率を示すグラフ図。
【図11】本発明の実施例3の回折光学素子の部分断面図。
【図12】実施例3、4に係る回折光学素子を有する撮像光学系。
【図13】図12の撮像光学素子の回折面における入射角度分布を示すグラフ図。
【図14】本発明の実施例4の回折光学素子の部分断面図。
【図15】本発明の実施例1〜4に係る回折光学素子を構成する材料の屈折率特性(θg、F-νd 特性)を示すグラフ図。
【図16】従来の単層型回折光学素子の部分断面図。
【図17】従来の単層型回折光学素子の設計次数及び設計次数±1次の回折効率特性を示すグラフ図。
【図18】従来の積層型回折光学素子の部分断面図。
【図19(a)】従来の積層型回折光学素子の設計次数での回折効率特性を示すグラフ図。
【図19(b)】従来の積層型回折光学素子の設計次数±1次での回折効率特性を示すグラフ図
【図20】従来の密着2層型回折光学素子の部分断面図。
【図21】従来の密着2層型回折光学素子の部分断面図。
【図22】従来の密着2層型回折光学素子の部分断面図。
【図23】本発明の実施例1〜4に係る撮影光学系の構成図。
【図24】本発明の実施例1〜4に係る観察光学系の構成図。
【符号の説明】
【0226】
1 回折光学素子
2 第1の素子部
3 第2の素子部
4 第1のベース樹脂層部
5 第2のベース樹脂層部
6 第1の回折格子部
7 第2の回折格子部
8 第1の基板
9 第2の基板
10 撮像光学系
11 回折光学素子
12 絞り
13 結像面
101 撮影レンズ
102 絞り
103 結像面
104 対物レンズ
105 プリズム
106 接眼レンズ
107 評価面(瞳面)
201 回折光学素子
202 基板
203 第1の回折格子
204 第2の回折格子
205 空気層
206 ベース樹脂層
207 回折光学素子
208 第1の素子部
209 第2の素子部
210 回折光学素子
211 第1の素子部
212 第2の素子部
213 回折光学素子
214 第1の素子部
215 第2の素子部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回折格子がベース樹脂層部上に形成された樹脂層と、該樹脂層に密着された透明基板とを有する素子部を複数積層した回折光学素子であって、
該複数の素子部のうち、少なくとも1つの素子部は、それを構成する樹脂層に微粒子分散材料を用いており、該樹脂層を構成するベース樹脂層部の厚さは、光軸から周辺に向かうにつれて薄くなるように構成されており、
該回折光学素子は光軸上に比べて周辺部での透過率が等しいか又は高いことを特徴とする回折光学素子。
【請求項2】
前記回折光学素子の微粒子分散材料から成る樹脂層部において、回折格子の格子番号を光軸中心から順に第1輪帯、光軸中心から光軸中心に対して垂直方向に距離r(mm)離れた位置の格子番号を第M輪帯とし、前記光軸上の回折格子部に当たる面法線方向の厚さ(um)をh(0)、第M輪帯の回折格子の面法線方向の格子厚(um)をh(M)とし、光軸上の面法線方向のベース樹脂層厚(um)をd(0)、前記第M輪帯の回折格子内の中心位置における面法線方向のベース樹脂層厚(um)をd(M)とし、前記光軸への面法線基準での波長λの光線の重心入射角度(rad)をθg(0,λ)、第M輪帯の回折格子内の中心位置への面法線基準での波長λの光線の重心入射角度(rad)をθg(M,λ)とした際、前記第M輪帯におけるベース樹脂層厚d(M)が、
0 < d(M) ≦ (h(0)/2+d(0))*(cos(θg(M,λ))/cos(θg(0,λ)))-h(M)/2
但し、0 ≦ |θg(0,λ)|、|θg(M,λ)| < π/2
なる条件式を満足しながら、前記ベース樹脂層厚が光軸から垂直方向に向かうに連れて薄くなるように変化することを特徴とする請求項1の回折光学素子。
【請求項3】
前記第M輪帯の回折格子内の中心位置は、前記回折光学素子を用いる光学系の位相係数をC1、C2、C3とし、設計波長をλdo(nm)とし、M=-(C1*r^2+C2*r^4+C3*r^6)/(λdo/1000000)を満足する光軸と垂直方向での位置をr=R(M)(mm)とした時、(R(M)+R(M+1))/2で与えられることを特徴とする請求項2に記載の回折光学素子。
【請求項4】
前記重心入射角度θg (M、λ)は、格子番号Mに対して連続的に変化しており、
|θg (M、λ)| - |θg (0、λ)| > 0
なる条件式を満足していることを特徴とする請求項2に記載の回折光学素子。
【請求項5】
前記光軸上のベース樹脂層厚d(0)は、前記回折光学素子を有する光学系において、微粒子分散材料の波長λにおける吸収係数をKb(λ)、波長λにおける光軸上での微粒子分散材料から成る樹脂層部を除く残りの回折光学素子の透過率をTDO(0、λ)とし、波長λにおける光軸上での回折光学素子を除いた光学系のみの透過率をTk(0、λ)とし、光軸上での光学系全体の透過率の値が最大となる可視波長域内での波長(nm)をλmaxとしたとき、
-log(0.999/(TDO(0,λmax)*Tk(0,λmax)))*(1000/Kb(λmax))*cos(θg(0,λmax))-h(0)/2≦ d(0) ≦-log(0.5/(TDO(0,λmax)*Tk(0,λmax)))*(1000/Kb(λmax))*cos(θg(0,λmax))-h(0)/2
なる条件式を満足することを特徴とする請求項2乃至4に記載の回折光学素子。
【請求項6】
可視波長域内の3波長を順にλ1、λ2、λ3とし、
400nm < λ1 < 500 nm
500nm < λ2 < 600 nm
600nm < λ3 < 700 nm
としたとき、波長λにおける光軸上での回折光学素子を含む光学系全体の透過率をTTOT(0、λ)とした際、前記TOT(0,λ)が、
TTOT(0、λ2) - ((TTOT(0、λ1) + TTOT(0、λ3))/2) > 0
なる条件式を満足することを特徴とする請求項5に記載の回折光学素子。
【請求項7】
前記微粒子分散材料のg線、F線、d線、C線に対する屈折率を順にngb、nFb、ndb、nCbとし、該微粒子分散材料に含まれる微粒子材料のF線、d線、C線に対する屈折率を順にnFbb、ndbb、nCbbとするとき
νdb = (ndb - 1) / (nFb - nCb) ≦ 30
θg、Fb = (ngb - nFb) / (nFb -nCb) ≦(-1.665E-07*νdb3+5.213E-05*νdb2-5.656E-03*νdb+0.675)
ndbb ≧ 1.70
νdbb = (ndbb -1) / (nFbb - nCbb) ≦ 20
なる条件式を満足することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の回折光学素子。
【請求項8】
前記微粒子分散材料はITO、Ti、Nr、Cr及びその酸化物、複合物、混合物のいずれかの無機微粒子を含んだ樹脂材料であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の回折光学素子。
【請求項9】
前記無機微粒子の粒子径の平均値は、可視域での使用波長の1/4以下であることを特徴とする請求項8に記載の回折光学素子。
【請求項10】
前記格子厚h(M)(μm)は、格子番号Mに対して連続的に変化しているとともに、前記重心入射角度θg (M、λ)に対して1次回折効率が最大になるように、素子部と素子部との間に空気層を有し、
F線、d線、C線の各波長をλF、λd、λCとし、
F線、d線、C線の各波長における光学光路長差を各波長で割った値をm(λF)、m(λd)、m(λC)とし、
前記微粒子分散材料と異なる材料から成る回折格子の格子部の格子厚をh1(M)とし、
該微粒子分散材料から成る回折格子の格子部の格子厚をh2(M)とし、
前記微粒子分散材料と異なる材料のF線、d線、C線に対する屈折率をnFJ、ndJ、nCJとし、
前記微粒子分散材料のF線、d線、C線に対する屈折率をnFb、ndb、nCbとし、
前記微粒子分散材料と異なる材料から成る回折格子へのF線、d線、C線での入射角度をθ1(M、λF)、θ1(M、λd)、θ1(M、λC)とし、
前記微粒子分散材料と異なる材料から成る回折格子からのF線、d線、C線での射出角度をθ1’(M、λF)、θ1’(M、λd)、θ1’(M、λC)とし、
前記微粒子分散材料から成る回折格子へのF線、d線、C線での入射角度をθ2(M、λF)、θ2(M、λd)、θ2(M、λC)とし、
前記微粒子分散材料から成る回折格子からのF線、d線、C線での射出角度をθ2’(M、λF)、θ2’(M、λd)、θ2’(M、λC)とし、
m(λF) = (±((nFJ*cos(θ1(M、λF))- cos(θ1’(M、λF))) * h1(M)) + ((±(cos(θ2(M、λF)) - nFb*cos(θ2’(M、λF))) * h2(M))) /λF
m(λd) = (±((ndJ*cos(θ1(M、λd))- cos(θ1’(M、λd))) * h1(M)) + ((±(cos(θ2(M、λd)) - ndb*cos(θ2’(M、λd))) * h2(M))) /λd
m(λC) = (±((nCJ*cos(θ1(M、λC))- cos(θ1’(M、λC))) * h1(M)) + ((±(cos(θ2(M、λC)) - nCb*cos(θ2’(M、λC))) * h2(M))) /λC
θ1’(M、λF) = θ2(M、λF)= θg (M、λF)
θ1’(M、λd) = θ2(M、λd)= θg (M、λd)
θ1’(M、λC) = θ2(M、λC)= θg (M、λC)
h2(M) = h(M)
とおいたとき、
0.92 ≦ (m(λF) + m(λd) + m(λC))/3 ≦ 1.08
h(M) ≦ 20
なる条件式を満足することを特徴とする請求項2、4、7のいずれか1項に記載の回折光学素子。
【請求項11】
前記格子厚h(M)(μm)は、格子番号Mに対して連続的に変化しているとともに、前記重心入射角度θg (M、λ)に対して1次回折効率が最大になるように、素子部と素子部との間に空気層を有しなく、
F線、d線、C線の各波長をλF、λd、λCとし、
F線、d線、C線の各波長における光学光路長差を各波長で割った値をm(λF)、m(λd)、m(λC)とし、
前記微粒子分散材料と異なる材料のF線、d線、C線に対する屈折率をnFJ、ndJ、nCJとし、
前記微粒子分散材料のF線、d線、C線に対する屈折率をnFb、ndb、nCbとし、
前記回折光学素子へのF線、d線、C線での入射角度をθ3(M、λF)、θ3(M、λd)、θ3(M、λC)とし、
前記回折光学素子からのF線、d線、C線での射出角度をθ3’(M、λF)、θ3’(M、λd)、θ3’(M、λC)とし、
m(λF)=±((nFJ*cos(θ3(M、λF))-nFb*cos(θ3’(M、λF)))* h(M))/λF
m(λd)=±((ndJ*cos(θ3(M、λF))-ndb*cos(θ3’(M、λF)))* h(M))/λd
m(λC)=±((nCJ*cos(θ3(M、λF))-nCb*cos(θ3’(M、λF)))* h(M))/λC
θ3’(M、λF) = θg (M、λF)
θ3’(M、λd) = θg (M、λd)
θ3’(M、λC) = θg (M、λC)
とおいたとき、
0.92 ≦ (m(λF) + m(λd) + m(λC))/3 ≦ 1.08
h(M) ≦ 20
なる条件式を満足することを特徴とする請求項2、4、7のいずれか1項に記載の回折光学素子。
【請求項12】
前記重心入射角度θg (M、λ)は、前記回折光学素子を有する光学系において、前記回折光学素子を構成する微粒子分散材料から成る回折格子に入射する角度の平均値であるか、若しくは前記回折光学素子に入射する角度分布の内、光軸からの距離rの位置に属する第M輪帯での1次回折効率の落ちが最小となる角度であることを特徴とする請求項2、4、5,6のいずれか1項に記載の回折光学素子。
【請求項13】
前記使用波長λは、d線の波長であることを特徴とする請求項2、4、5のいずれか1項に記載の回折光学素子。
【請求項14】
前記光学系が、撮影光学系若しくは観察光学系若しくは読取り光学系であることを特徴とする請求項5、6、12のいずれか1項に記載の光学系。
【請求項15】
請求項14の光学系を有することを特徴とする光学機器。

【図1】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19(b)】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図2】
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【図3(a)】
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【図3(b)】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7(a)】
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【図7(b)】
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【図8】
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【図9(a)】
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【図9(b)】
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【図10(a)】
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【図10(b)】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図19(a)】
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【公開番号】特開2009−192597(P2009−192597A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−30297(P2008−30297)
【出願日】平成20年2月12日(2008.2.12)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】