説明

回折格子パターンおよび回折格子記録媒体

【課題】本発明は、解像度や輝度を損なうことなく、基板もしくは照明方向の回転に伴って表示色が変化する視覚的なイメージが斬新で、偽造防止を一層高めることができる回折格子パターンおよび回折格子記録媒体を提供することを課題とする。
【解決手段】基板表面に、回折格子からなる微小なセルまたはドットを配置することにより表現される画像の画素に対応して配置される画素パターン構造が、回折格子の格子角度および格子間隔が単一の構造ではなく少なくとも2種以上の構造からなり、かつ、前記格子角度に連動して格子間隔を変化させ、前記基板もしくは照明方向を回転させることにより画像の表示色の色相や彩度が変化することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板表面に、回折格子からなる微小なセルまたはドットを配置することにより表現される画像の画素に対応して配置される画素パターン構造が、画素パターンの内部構造が2種以上からなり、表示色の色相や彩度が変化し視覚的なイメージが斬新な、偽造防止を一層高めることができる色調反転を有する回折格子パターンおよび回折格子記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
回折格子によって構成される表示体は、通常の印刷技術では表現することのできない指向性のある光沢を有することから、ディスプレイの用途やクレジットカード、有価証券、金券等の偽造防止を目的としたセキュリティ商品に広く用いられており、より多彩でオリジナリティの高いパターンを作製することが求められている。
【0003】
このような要求に応じて、セル(ドット)状の回折格子の集まりによって構成される回折格子パターンを有する表示体が公知である。
【0004】
回折格子を画素として表示体を作製する方法としては、例えば、特許文献1で提案されている方法が公知である。この方法は、レーザー光の2光束干渉による微小な干渉縞(回折格子)を、そのピッチ、方向、および光強度を変化させて、感光性フィルムに次々と露光するものである。
【0005】
一方、例えば、特許文献2および特許文献3で、レーザー光ではなく電子ビーム露光装置を用いて、かつコンピュータ制御により、平面状の基板が載置されたX−Yステージを移動させて、基板の表面に回折格子からなる複数の微小なドットを配置することにより、回折格子パターンを作製する方法も提案されている。
【0006】
上記のこれらの技術では、格子角度、格子間隔、セルサイズ(または格子深さ)を個々の画素毎に定義付けし、複数個のグループや連続的な変位から画像を形成するものであり、画素パターンの内部構造は単一成分からなる回折格子パターンであった。
【0007】
画素パターンの内部構造が単一成分だけであると、ある動作に対する作用の変化を得るためには、変化の段階数分だけ画素を割り当てることになり、画像全体を観察した場合、解像度や輝度の低下が問題となる。
【0008】
従来、回折格子パターンとしては、例えば、特許文献4で、回折格子からなる微小なセル(または、ドット)が同一基板の表面に複数配置され、全面に反射層が形成されたレリーフ型回折格子からなる回折格子パターンにおいて、近接するセル間では回折格子の方向が近似し、パターンからの反射回折光の方向が連続的に変化する構成とする回折格子パターンが提案されている。
【0009】
また、例えば、特許文献5で、回折格子からなる微小なセルが基板表面に複数配置されて構成され、回折格子の空間周波数,回折格子の方向,回折格子の形成領域の少なくとも何れかが変化してなるパターンにおいて、パターン内に、それぞれの方向が等しい4種類以上の異なる空間周波数を持つ回折格子からなる微小なセルが集まって構成される微小領域を有することを特徴とする回折格子パターンが提案されている。
【0010】
しかしながら、引用文献4および引用文献5で提案されている回折格子パターンは、画
素パターンの内部構造は単一の成分の回折格子パターンからなり、個々の画素または複画素に割り当てられた成分の組み合わせによって作用を生じるものであって、解像度や輝度が低下するという問題がある。また、1画素1成分の構成では解析が比較的容易になり、高価な設備を用いることなしにレーザー光による干渉縞記録法などにより容易に類似品が作成できることから偽造防止レベルの点で低レベルである。
【0011】
さらに、回折格子により所定のモチーフを表現した回折格子記録媒体において、第1の方向を向いた第1の格子線と第2の方向を向いた第2の格子線との双方を同一の閉領域内に記録した回折格子記録媒体が特許文献6で提案されている。
【0012】
引用文献6で提案されている回折格子記録媒体における回折格子パターンは、その内部構造が複数の成分からなるものであるが、成分の構成が2種類で混成方式が多重方式であって、また混成成分は格子角度のみで割り付けられており、格子間隔の変化による表示色の変化等は観察できるものではない。
【0013】
上述したように、従来の回折格子パターンおよび回折格子記録媒体ではコピー等に対して一定の防止効果はあるものの、画像全体を観察した場合、解像度や輝度が低下する問題や視覚的なイメージが極めて限られ、意匠(デザイン)面での制約を受け易く、より多彩でオリジナリティの高いパターンを作製することが困難であるといった問題があった。
【0014】
以下に公知文献を記す。
【特許文献1】特開昭60−156004号公報
【特許文献2】特開平2−72320号公報
【特許文献3】米国特許第5,058,992号明細書
【特許文献4】特開平10−153702号公報
【特許文献5】特開2000−352609号公報
【特許文献6】特開平8−161449号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、上記の技術的背景を考慮してなされたもので、回折格子からなる微小なセルまたはドットを配置することにより表現される画像の解像度や輝度を損なうことなく、基板もしくは照明方向の回転に伴って画像の表示色が変化する視覚的なイメージが斬新で、偽造防止を一層高めることができる回折格子パターンおよび回折格子記録媒体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の課題を達成する解決手段として、すなわち、
請求項1に係る発明は、基板表面に、回折格子からなる微小なセルまたはドットを配置することにより表現される画像の画素に対応して配置される画素パターン構造が、回折格子の格子角度および格子間隔が単一の構造ではなく少なくとも2種以上の構造からなり、かつ、前記格子角度に連動して格子間隔を変化させ、前記基板もしくは照明方向を回転させることにより画像の表示色の色相や彩度が変化することを特徴とする回折格子パターンである。
【0017】
また、請求項2に係る発明は、前記画像の表示色の色相または彩度が、前記基板もしくは照明方向の回転に伴って反転することを特徴とする請求項1記載の回折格子パターンである。
【0018】
また、請求項3に係る発明は、前記画像の表示色の色相または彩度が、前記基板もしく
は照明方向の回転に伴って連続的に変化することを特徴とする請求項1記載の回折格子パターンである。
【0019】
また、請求項4に係る発明は、前記画素パターン構造が、回転基点と終点の回折格子を入れ替えた2種の画素パターンからなり、両画素に共通の回折格子を所定の角度の回転領域に配置して、前記画像の表示色の色相が反転すると共に前記回転領域の所定の角度で前記画像が潜像を形成することを特徴とする請求項1記載の回折格子パターンである。
【0020】
また、請求項5に係る発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の回折格子パターンを配置してなることを特徴とする回折格子記録媒体である。
【発明の効果】
【0021】
本発明により、基板の表面に、回折格子からなる微小なセル(ドット)を配置することによって表現される、画素パターンの内部構造が2種以上からなことから、回折格子パターンが形成された基板もしくは照明方向を回転することにより、解像度や輝度の低下を伴うことなく表示色の色相や彩度が変化し、より多彩でオリジナリティの高いパターンが作製できることで視覚的なイメージが斬新で、偽造防止を一層高めることができる回折格子パターンおよび回折格子記録媒体を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明を実施例に基づいて図面を参照して説明する。
【0023】
従来の回折格子パターンおよび回折格子記録媒体
【0024】
はじめに、まず、図5(a)に示すようなモチーフ(英文字の「A」を示す)を回折格子記録媒体上に表現する従来の方法について説明する。図5(a)に示すモチーフに対応する画像データとして、図5(b)に示すようなモチーフ画素情報を用意する。ここに示す例では、7行7列に画素が配列されており、各画素は「0」または「1」のいずれかの画素値をもっており、いわゆる二値画像を示す情報となる。このような情報は、いわゆる「ラスター画像データ」と呼ばれている一般的な画像データであり、通常の作画装置によって作成することができる。あるいは、紙面上に描かれたデザイン画をスキャナ装置によって取り込むことにより、このようなモチーフ画素情報が得られる。
【0025】
図6は、従来の画素パターン(回折格子パターン)および回折格子記録媒体の一例を例示して、各照明方向のときの回折格子記録媒体の見え方を説明する説明図である。
【0026】
図6(a)は、画素パターンを拡大して示す説明図である。同図では、画素パターンとして、回折格子はDの空間周波数(ピッチ)持ち、白と黒で表現される格子のライン幅(L)とスペース幅(S)の比は、ほぼ1:1である画素パターンを例示したが、それに限定されるものではない。
【0027】
次に、図5(b)に示すモチーフ画素情報において、画素値が「1」である画素のそれぞれに図6(a)の画素パターンを対応づける。画素値が「0」である画素には、画素パターンは対応づけられない。こうして対応づけられた画素位置に、それぞれ画素パターンを割り付けてゆく。いわば、図5(b)に示す配列を壁にたとえれば、この壁の中の「1」と描かれた各領域に、図6(a)に示すようなタイルを1枚ずつ貼る作業を行うことになる。この結果、この画素パターンが最終的に、図6(b)で示すように、回折格子記録媒体に記録される。図5(a)に示すモチーフがそのまま表現されているが、1つ1つの画素は回折格子で構成されており、回折格子としての視覚的な効果が得られることになる。
【0028】
そして、回折格子から得られる回折光は方向性を有するため、観察方向によっては観察できたりできなかったりする。すなわち、図6(c)で示すように、各照明方向のときの回折格子記録媒体の見え方が、(c1)ではモチーフが光って観察されるが、(c2)および(c3)ではモチーフ、背景共に光らない。
【0029】
また、図7は、従来の画素パターン(回折格子パターン)および回折格子記録媒体の他の例を例示して、各照明方向のときの回折格子記録媒体の見え方を説明する説明図である。
【0030】
図7(a)は、いずれの回折格子も、回折格子はDの空間周波数(ピッチ)持ち、白と黒で表現される格子のライン幅(L)とスペース幅(S)の比は、ほぼ1:1である格子線配置角度が0°(水平)の回折格子と、格子線配置角度が90°(垂直)の回折格子とを多重記録した画素パターンである。
【0031】
この画素パターンが最終的に、図7(b)で示すように、回折格子記録媒体に記録される。
【0032】
そして、図7(c)で示すように、画素が3方向の角度に対応して回折し、各照明方向のときの回折格子記録媒体の見え方が、(c1)ではモチーフが光って観察される、(c2)では2種の格子の交点を周期とする角度にてモチーフが光って観察され、(c3)では(c1)同様モチーフが光って観察される。
【0033】
図8は、従来の画素パターン(回折格子パターン)および回折格子記録媒体の他の例を例示して、各照明方向のときの回折格子記録媒体の見え方を説明する説明図である。
【0034】
図8(a)は、いずれの回折格子も、回折格子はDの空間周波数(ピッチ)持ち、白と黒で表現される格子のライン幅(L)とスペース幅(S)の比は、ほぼ1:1である同心円状の回折格子からなる画素パターンである。
【0035】
この画素パターンが最終的に、図8(b)で示すように、回折格子記録媒体に記録される。
【0036】
そして、図8(c)で示すように、画素が全方向の角度に対応して回折し、各照明方向のときの回折格子記録媒体の見え方が、(c1)、(c2)、(c3)のいずれにおいてもモチーフが光って観察される。
【0037】
図9は、従来の画素パターン(回折格子パターン)および回折格子記録媒体の別の例を例示して、各照明方向のときの回折格子記録媒体の見え方を説明する説明図である。
【0038】
図9(a)は、いずれの回折格子も、回折格子はDの空間周波数(ピッチ)持ち、白と黒で表現される格子のライン幅(L)とスペース幅(S)の比は、ほぼ1:1である格子線配置角度が0°(水平)の回折格子(P1)と、格子線配置角度が90°(垂直)の回折格子(P2)との画素パターンを同一媒体上に割り付けられる。
【0039】
この画素パターンP1とP2とが同一媒体上に割り付けら、最終的に、図9(b)で示すように、回折格子記録媒体に記録される。
【0040】
そして、図9(c)で示すように、角度の違う回折格子の組み合わせによる、各照明方向のときの回折格子記録媒体の見え方が、(c1)ではモチーフが光って観察され、(c
2)ではモチーフ、背景と共に光らない。(c3)では背景が光って観察される。
【0041】
ここで、回折条件として、通常の照明条件下、すなわち、白色光による回折格子セルの照明を考える。図10は、回折格子セルに特定角度で白色光が入射した場合の、回折条件を示す説明図である。
【0042】
ホログラムや回折格子では、回折光が必然的に波長分散を伴うため、観察者は、特定の1方向からのみ所定波長での1次回折光を視覚することができる。そのため、図10のように、波長ごとに分散した1次回折光が出射し、観察者の上下(回折格子の格子ベクトルの方向)の視点移動などにより、観察される色が虹色に変化する。同図の上側では1次回折光は赤に近い600nmであるのに対し、下側では青に近い400nmである。言い換えれば、上式における回折角βは、空間周波数の関数であると同時に、波長の関数でもある。
【0043】
さらに、図11に、従来の画素パターン(回折格子パターン)および回折格子記録媒体のさらに別の例を例示して、各照明方向のときの回折格子記録媒体の見え方を説明する。
【0044】
図11(a)は、回折格子の空間周波数(ピッチ)の異なり、白と黒で表現される格子のライン幅とスペース幅の比は、ほぼ1:1である、ピッチP1(回折波長λ1に対応する)の回折格子とピッチP2(回折波長λ2に対応する)の回折格子との画素パターンを同一媒体上に割り付けられる。
【0045】
この画素パターンP1とP2とが同一媒体上に割り付けら、最終的に、図11(b)で示すように、回折格子記録媒体に記録される。
【0046】
そして、図11(c)で示すように、格子ピッチの異なる回折格子の組み合わせによる、各照明方向のときの回折格子記録媒体の見え方が、(c1)ではモチーフと背景が色違いで観察され、(c2)および(c3)ではモチーフ、背景共に光らない。
【0047】
上記で得られる従来の回折格子パターンおよび回折格子記録媒体は、画素パターンの内部構造が単一成分だけであるため、ある動作に対する作用の変化を得るためには、変化の段階数分だけ画素を割り当てることになり、画像全体を観察した場合、解像度や輝度の低下が問題となる。また、視覚的なイメージが極めて限られ、意匠(デザイン)面での制約を受け易く、より多彩でオリジナリティの高いパターンを作製することが困難であり、コピー等に対して一定の防止効果はあるもののその防止レベルは低レベルである。
【0048】
本発明の回折格子パターンおよび回折格子記録媒体
【0049】
次に、本発明の回折格子パターンおよび回折格子記録媒体について説明する。本発明の回折格子パターンおよび回折格子記録媒体は、基板表面に、回折格子からなる微小なセルまたはドットを配置することにより表現される画像の画素に対応して配置される画素パターン構造が、回折格子の格子角度および格子間隔が単一の構造ではなく少なくとも2種以上の構造からなり、かつ、前記格子角度に連動して格子間隔を変化させ、前記基板もしくは照明方向を回転させることにより画像の表示色の色相や彩度が変化することを特徴とする。
【0050】
回折格子パターンと回折光の関係は、下記の式(1)が成り立つことが一般に知られている。
【0051】
sinθout−sinθin=λ/d・・・・・・式(1)
但し、θout 1次回折光角度
θin 入射角度
λ 波長
d 格子ピッチ
したがって、再生光源の角度を固定すると、表示色(回折波長)の変化は格子ピッチを変動させればよいことがわかる。そこで、任意の角度に任意のピッチの格子をあてがえば本発明における前記格子角度に連動して格子間隔を変化させ、前記基板もしくは照明方向を回転させることにより、解像度や輝度を損なうことなく表示色の色相や彩度が変化する回折格子パターンおよび回折格子記録媒体が得られる。
【0052】
すなわち、例えば、下記の(1)〜(4)に示すタイプの回折格子パターンおよび回折格子記録媒体を提供することができる。
(1)切り替わりタイプ:2の回折格子の格子ピッチを非同一にすることで、基板もしくは照明方向の回転に伴って、回折光の波長が切り替わる回折格子パターンおよび回折格子記録媒体。
(2)連続変化タイプ:基点角度の回折格子ピッチから終点角度の回折格子ピッチまで連続的に回折格子を変化させることで、基板もしくは照明方向の回転に伴って、回折光の波長が連続的に変化する回折格子パターンおよび回折格子記録媒体。
(3)色相変化と彩度変化タイプ:回折格子ピッチが単一周期構造であると回折光の波長が単一なため彩度の高い原色となり、回折格子ピッチが複数の周期構造を有する場合、回折光の波長も複数発生しそれらが交じり合うため彩度の低い無彩色へ近づく回折格子パターンおよび回折格子記録媒体。
(4)色調の反転と同調タイプ:回転基点と終点の回折格子構造を入れ替えた画素を1対に準備し、画像のキャラクタと背景にそれぞれ適用すると回転動作に伴い、キャラクタと背景の色調が反転する。また、2対構成の応用として、両画素共通の回折格子構造を回転領域の一部に適用すればその角度での観察により、キャラクタと背景が同調するためキャラクタの輪郭が無くなり潜像状態が成立させられる回折格子パターンおよび回折格子記録媒体。
【0053】
以下、具体例を例示して本発明の回折格子パターンおよび回折格子記録媒体を説明する。図1は、本発明の色調変化、切り替わりタイプの画素パターン(回折格子パターン)および回折格子記録媒体を例示して、各照明方向のときの回折格子記録媒体の見え方を説明する説明図である。
【0054】
図1(a)は、画素パターンを拡大して示す説明図である。同図で示すような、回折格子ピッチの異なる格子ピッチd1(回折光の波長λ1に対応する)とd2(回折光の波長λ2に対応する)とを有する回折格子(P1)と回折格子(P2)からなる画素パターンを例示してあるが、本発明においては、回折格子角度は、水平・垂直ならびに直交パターンに限定されるものではない。
【0055】
この画素パターンP1とP2が同一媒体上に割り付けられ、最終的に、図1(b)で示すように、回折格子記録媒体に記録されるである。
【0056】
そして、図1(c)で示すように、回折光の波長(色調)が回転に伴って切り替わる、各照明方向のときの回折格子記録媒体の見え方が、(c1)ではモチーフがλ1、背景λ2で観察され、(c2)および(c3)ではモチーフ、背景それぞれの2種の格子の交点を周期とする角度にて光って観察され、(c4)ではモチーフがλ2、背景λ1で観察される。
【0057】
また、図2は、本発明の色調変化、連続変化タイプの画素パターン(回折格子パターン
)および回折格子記録媒体を例示して、各照明方向のときの回折格子記録媒体の見え方を説明する説明図である。
【0058】
図2(a)は、画素パターンを拡大して示す説明図である。同図で示すような、略同心円状の異なる格子ピッチd1、d2、d3、d4を有するの回折格子(P1)と回折格子(P2)からなる画素パターンを例示してある。
【0059】
この画素パターンP1とP2が同一媒体に割り付けられて、最終的に、図2(b)で示すように、回折格子記録媒体に記録される。
【0060】
そして、図2(c)で示すように、角度変化に対応して連続的に色調変化する、各照明方向のときの回折格子記録媒体の見え方が、(c1)ではモチーフがλ1、背景λ2で観察され、(c2)ではd2=d4の場合、モチーフと背景が同一の波長(λ2=λ4)となり、前面均一に光って観察され、(c3)ではモチーフがλ2、背景λ1で観察される。
【0061】
また、図3は、本発明の彩度変化、切り替わりタイプの画素パターン(回折格子パターン)および回折格子記録媒体を例示して、各照明方向のときの回折格子記録媒体の見え方を説明する説明図である。
【0062】
図3(a)は、画素パターンを拡大して示す説明図である。同図で示すような、格子角度は水平・垂直ならびに直交パターンからなる異なる格子ピッチd1〜d7(回折光の波長λ1〜λ7に対応する)を有する回折格子(P1)と回折格子(P2)からなる画素パターンを例示してあるが、本発明においては、格子角度は水平・垂直ならびに直交パターンに限定されるものではない。また、混色を目的とする格子ピッチdの種類は最低2種でよく、図3(a)で示す7種に限定するものではなく、また、格子ピッチdの変位は連続性や規則性を特に必要としない。
【0063】
この画素パターンP1とP2が同一媒体に割り付けられて、最終的に、図3(b)で示すように、回折格子記録媒体に記録される。
【0064】
そして、図3(c)で示すように、角度変化に対応して彩度変化が切り替わる、各照明方向のときの回折格子記録媒体の見え方が、(c1)ではモチーフが原色、背景が混色(白色)で観察され、(c2)および(c3)ではモチーフ、背景それぞれの格子点を周期とする角度にて断続的に光って観察され、(c4)ではモチーフが混色(白色)、背景が原色で観察される。
【0065】
また、図4は、本発明の彩度変化、連続的変化タイプの画素パターン(回折格子パターン)および回折格子記録媒体を例示して、各照明方向のときの回折格子記録媒体の見え方を説明する説明図である。
【0066】
図4(a)は、画素パターンを拡大して示す説明図である。同図で示すような、略同心円状の異なる格子ピッチd1〜d4(回折光の波長λ1〜λ4に対応する)の回折格子(P1)と回折格子(P2)からなる画素パターンを例示してあるが、本発明においては混色を目的とする格子ピッチdの種類は最低2種でよく、図4(a)で示す4種に限定するものではなく、また、格子ピッチdの変位は連続性や規則性を特に必要としない。
【0067】
この画素パターンP1とP2が同一媒体に割り付けられて、最終的に、図4(b)で示すように、回折格子記録媒体に記録される。
【0068】
そして、図4(c)で示すように、角度変化に対応して彩度変化が連続的に変化する、各照明方向のときの回折格子記録媒体の見え方が、(c1)ではモチーフが原色、背景が混色(白色)で観察され、(c2)ではモチーフ、背景の格子周期構造が同一となり全面均一に光って観察され、(c3)ではモチーフが原色、背景が混色(白色)で観察される。
【0069】
上記で得られる本発明の回折格子パターンおよび回折格子記録媒体は、基板表面に、回折格子からなる微小なセルまたはドットを配置することにより表現される画像の画素に対応して配置される画素パターン構造が、回折格子の格子角度および格子間隔が単一の構造ではなく少なくとも2種以上の構造からなり、かつ、前記格子角度に連動して格子間隔を変化させ、前記基板もしくは照明方向を回転させることにより画像の表示色の色相や彩度が変化し、より多彩でオリジナリティの高いパターンが作製できることで視覚的なイメージが斬新で、偽造防止を一層高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の回折格子パターンおよび回折格子記録媒体についてその実施形態の一例を説明する説明図である。
【図2】本発明の回折格子パターンおよび回折格子記録媒体についてその実施形態の一例を説明する説明図である。
【図3】本発明の回折格子パターンおよび回折格子記録媒体についてその実施形態の一例を説明する説明図である。
【図4】本発明の回折格子パターンおよび回折格子記録媒体についてその実施形態の一例を説明する説明図である。
【図5】一般画像における回折格子記録媒体のモチーフとして用いられるパターンおよび画像情報の一例を説明する説明図である。
【図6】従来の回折格子パターンおよび回折格子記録媒体についてその実施形態の一例を説明する説明図である。
【図7】従来の回折格子パターンおよび回折格子記録媒体についてその実施形態の一例を説明する説明図である。
【図8】従来の回折格子パターンおよび回折格子記録媒体についてその実施形態の一例を説明する説明図である。
【図9】従来の回折格子パターンおよび回折格子記録媒体についてその実施形態の一例を説明する説明図である。
【図10】回折格子記録媒体に特定角度で白色光が入射した場合の回折光を観察する状態を説明する説明図である。
【図11】従来の回折格子パターンおよび回折格子記録媒体についてその実施形態の一例を説明する説明図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板表面に、回折格子からなる微小なセルまたはドットを配置することにより表現される画像の画素に対応して配置される画素パターン構造が、回折格子の格子角度および格子間隔が単一の構造ではなく少なくとも2種以上の構造からなり、かつ、前記格子角度に連動して格子間隔を変化させ、前記基板もしくは照明方向を回転させることにより画像の表示色の色相や彩度が変化することを特徴とする回折格子パターン。
【請求項2】
前記画像の表示色の色相または彩度が、前記基板もしくは照明方向の回転に伴って反転することを特徴とする請求項1記載の回折格子パターン。
【請求項3】
前記画像の表示色の色相または彩度が、前記基板もしくは照明方向の回転に伴って連続的に変化することを特徴とする請求項1記載の回折格子パターン。
【請求項4】
前記画素パターン構造が、回転基点と終点の回折格子を入れ替えた2種の画素パターンからなり、両画素に共通の回折格子を所定の角度の回転領域に配置して、前記画像の表示色の色相が反転すると共に前記回転領域の所定の角度で前記画像が潜像を形成することを特徴とする請求項1記載の回折格子パターン。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の回折格子パターンを配置してなることを特徴とする回折格子記録媒体。

【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−139798(P2009−139798A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−318082(P2007−318082)
【出願日】平成19年12月10日(2007.12.10)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】