説明

回路シミュレーション装置、及び回路シミュレーション装置の回路シミュレーション方法

【課題】コンパクトな構造で用紙の向きを揃えてスタンプを押印する紙折り装置を提供する。
【解決手段】回路シミュレーションモデル記述のためのSPICEパラメータを格納する初期パラメータ記憶手段と、シミュレーション対象回路を構成する素子の接続情報を有するシミュレーション対象回路ネットリストを格納するネットリスト記憶手段と、SPICEパラメータを新規デバイスに対応するパラメータに最適化するための知識情報をデータベース化した最適化知識情報を格納する知識情報記憶手段と、ユーザの所望するデバイスの条件を受け付ける条件入力手段と、最適化知識情報を参照して、SPICEパラメータを調整してユーザの所望する新規パラメータを作成するパラメータ作成手段と、パラメータ作成手段にて作成した新規パラメータを基に、回路シミュレーションを行うシミュレーション実行手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、最適化されたSPICEパラメータを用いてシミュレーションを実行する半導体集積回路の回路シミュレーション装置、及び、その回路シミュレーション方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路に対するシミュレーションは、専用の回路シミュレーション装置などを用いて行われる。専用の回路シミュレーション装置としては、例えば、「SPICE」などの装置が広く知られている。
【0003】
回路シミュレータにおいては、トランジスタなどのデバイスは数学モデルで表現されており、複数個のSPICEパラメータを最適に調整することにより精度の高いモデルが構築され、精度の高いシミュレーションが出来るようになっている。
【0004】
ところで、シミュレーションに用いられるSPICEパラメータは、インラインにおいて実測が可能な各種インラインデータに基づいて決定されるものである。
【0005】
トランジスタなどの回路素子の製造工程において、ミクロレベルでの状態は常に変化しており、半導体集積回路の電気的特性は、いつ製造されたかによって微妙に異なる。しかしながら、SPICEパラメータは、一度決定されると次のパラメータの改定までは固定されていた。
【0006】
また、どの電気特性の精度が重要かは回路の種類によって異なる。しかし、従来は、対象となるデバイスなどのあらゆるサイズ、あらゆる使用条件、あらゆる電圧領域/電流領域などに対して、最大公約数的に合わせ込まれた、汎用的なSPICEパラメータが1セットだけ用意されているか、又は、限られた個数のライブラリの中からSPICEパラメータを選択して用いていた。そのため、必ずしも最適ではないSPICEパラメータを用いて、シミュレーションが実行されていた。
【0007】
そこで、特許文献1には、LSI製造中のインラインデータと回路ブロック毎の最適化ノウハウを用いて、精度の高い回路シミュレーションを実施する発明について記載されている。
【特許文献1】特開2006−113712号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1における発明は、現在製造されているデバイスについては、精度の高いシミュレーションを実施できるが、製造していないデバイスでの回路シミュレーションを行うことが出来ない。
【0009】
製造がされていないデバイスについての回路シミュレーションとしては、TCADを用いる方法が知られている。
【0010】
すなわち、TCADに製造条件を入力し、トランジスタ特性をシミュレーションする。そこで得られたシミュレーション結果を、スパイスパラメータ抽出ツールでパラメータ抽出を行って、回路シミュレーションを実施することが可能となる。
【0011】
このようにTCADを用いることにより、製造していないデバイスにおいても回路シミュレーションを行うことができるようになるが、TCADへ入力すべき製造条件がわからない、又は、決まっていない場合には、回路シミュレーションを行うことができない。
【0012】
そこで本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、製造条件が明確でない新規デバイスにおいても回路シミュレーションを行うことができる回路シミュレーション装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、本発明における回路シミュレーション装置は、半導体集積回路の回路シミュレーションモデル記述のためのSPICEパラメータを格納する初期パラメータ記憶手段と、シミュレーション対象回路を構成する素子の接続情報を有するシミュレーション対象回路ネットリストを格納するネットリスト記憶手段と、SPICEパラメータを新規デバイスに対応するパラメータに最適化するための知識情報をデータベース化した最適化知識情報を格納する知識情報記憶手段と、ユーザの所望するデバイスの条件を受け付ける条件入力手段と、最適化知識情報を参照して、SPICEパラメータを調整して条件入力手段に入力された条件に適合する新規パラメータを作成するパラメータ作成手段と、パラメータ作成手段にて作成した新規パラメータを基に、回路シミュレーションを行うシミュレーション実行手段と、を備えることを特徴とする。
【0014】
デバイスの評価データをデータベース化したデバイス評価データベースを格納する評価データ記憶手段を有し、パラメータ作成手段は、最適化知識情報、及びデバイス評価データベースを参照して、SPICEパラメータを調整して条件入力手段に入力された条件に適合する新規パラメータを作成することを特徴とする。
【0015】
最適化知識情報は、過去の経験に基いたノウハウをデータベース化して格納していることを特徴とする。
【0016】
デバイス評価データベースは、デバイス開発時のデバイス評価データをデータベース化して格納していることを特徴とする。
【0017】
また、本発明における回路シミュレーション方法は、ユーザの所望するデバイスの条件を受け付ける条件入力ステップと、半導体集積回路の回路シミュレーションモデル記述のためのSPICEパラメータである初期パラメータを、新規デバイスに対応するパラメータに最適化するための知識情報をデータベース化した最適化知識情報を参照して、初期パラメータを調整して条件入力ステップにて入力された条件に適合する新規パラメータを作成するパラメータ作成ステップと、パラメータ作成ステップにて作成した新規パラメータを基に、回路シミュレーションを行うシミュレーション実行ステップと、を備えることを特徴とする。
【0018】
パラメータ作成ステップは、最適化知識情報、及びデバイスの評価データをデータベース化したデバイス評価データベースを参照して、初期パラメータを調整して条件入力手段に入力された条件に適合する新規パラメータを作成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明により、製造条件が明確でない新規デバイスにおいても、所望の新規デバイスに近い特性を示す情報を用いて、より現実に近い特性で回路シミュレーションを行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1は、本発明の実施形態における半導体集積回路の回路シミュレーション装置の構成図である。
【0021】
本回路シミュレーション装置は、データ入力手段6と、新規デバイスSPICEパラメータ作成手段7と、回路シミュレーションエンジン9とを備える。
【0022】
データ入力手段6は、SPICEパラメータ1と、シミュレーション対象回路ネットリスト2と、新規デバイス最適化知識情報3と、新規デバイスユーザー入力条件4から送られるデータを受け付ける。
【0023】
ところで、SPICEパラメータ1は、回路シミュレーションモデル記述のためのパラメータであり、シミュレーション対象回路ネットリスト2は、シミュレーション対象回路を構成する素子の接続情報を有している。また、新規デバイス最適化知識情報3は、所望の新規デバイスを最適化するための知識情報をデータベース化して保持しており、過去の経験に基いたノウハウから所望のデバイスを得るために変化させるべきパラメータの情報などが格納されている。また、新規デバイスユーザー入力条件4は、ユーザが入力した所望する新規デバイスの条件である。
【0024】
新規デバイスSPICEパラメータ作成手段7は、データ入力手段6に入力された条件を基に、回路シミュレーションが実行される直前に、ユーザが指示したデバイスに対応するSPICEパラメータに対して所定の補正、あるいは調整を加える。
【0025】
回路シミュレーションエンジン9は、新規デバイスSPICEパラメータ作成手段7でユーザの入力した条件を基に作成された新規デバイスSPICEパラメータ8を用いて回路シミュレーションを実行する。
【0026】
仮に、ユーザが高耐圧の存在しないデバイスを利用して回路シミュレーションを実行する場合について、本発明の実施形態を用いて詳細に説明する。このような例として、10V用デバイスは存在するが、20V用デバイスは存在しない場合などが考えられる。
【0027】
このようなシミュレーションを行いたい場合、ユーザは、新規デバイスユーザー入力条件4に「10V用デバイスを基にして、20V用デバイスのSPICEパラメータを作成」と条件を入力する。
【0028】
新規デバイスユーザー入力条件4に新規デバイスに対する条件が入力されると、新規デバイス最適化知識情報3から該新規デバイスに対応する知識情報と、SPICEパラメータ1から既存デバイスに対応するSPICEパラメータが、データ入力手段6へと渡される。新規デバイスSPICEパラメータ作成手段7は、渡された知識情報を基に、既存のSPICEパラメータの調整を行い、新規デバイスSPICEパラメータ8が作成される。
【0029】
新規デバイスSPICEパラメータ作成手段7で作成された新規デバイスSPICEパラメータ8は、既存のSPICEパラメータを対応する知識情報を用いて新規デバイスへ対応するよう最適化を行っているため、新規デバイスSPICEパラメータ8を用いて、回路シミュレーションエンジン9で回路シミュレーションを実行することにより、存在していないデバイスについても高精度なシミュレーションを行うことが可能となる。
【0030】
次に、新規デバイス最適化知識情報3について詳細に説明する。上述のとおり、新規デバイス最適化知識情報3には、新規デバイスを作成するための知識情報をデータベース化して格納している。
【0031】
図2は、Ids−Vds電圧特性のシミュレーション結果の一例を示す図である。すなわち、縦軸は、ドレイン、ソース間電流Ids、横軸は、ドレイン、ソース間電圧Vdsを示す。
【0032】
実線の波形は、10V用デバイスにおけるパラメータを用いてシミュレーションした結果を示している。該パラメータによる結果を参照すると、基板電流効果によりVdsが高いと、Idsが上昇していくのがわかる。このように、10V用デバイスのSPICEパラメータでVdsをあげると一点鎖線のように上昇していき、所望の耐圧を得ることができない。
【0033】
そこで、新規デバイス最適化知識情報3には、図3の点線で示すように高VdsにおいてもIdsが上昇しないように既存のSPICEパラメータに加えるべき補正に関する情報が格納されている。
【0034】
例えば使用電源電圧を変更する場合、新規デバイス最適化知識情報3には、図2点線に従うようにパラメータPSCBE1、PSCBE2、ALPHA0、ALPHA1、BETA0の補正情報が格納されている。これにより新規デバイスでの回路シミュレーションを行うことができる。
【0035】
また、図3は、本発明の他の実施形態における半導体集積回路の回路シミュレーション装置の構成図である。本実施形態による回路シミュレーション装置は、上記構成にさらにデバイス評価データ5を有する。以下、本実施形態について詳細に説明する。
【0036】
例えば、ユーザがスレッショルド電圧Vthを下げた新規デバイスで回路シミュレーションを行いたい場合には、ユーザは新規デバイスユーザー入力条件4に「10V用デバイスを基にして、Vthを0.1V下げたSPICEパラメータを作成」と条件を入力する。
【0037】
新規デバイスユーザー入力条件4に新規デバイスに対する条件が入力されると、新規デバイス最適化知識情報3から該新規デバイスに対応する知識情報と、デバイス評価データ5から該新規デバイスに対応する評価データと、SPICEパラメータ1から既存デバイスに対応するSPICEパラメータが、データ入力手段6へと渡される。新規デバイスSPICEパラメータ作成手段7は、渡された知識情報、及び評価データを基に、既存のSPICEパラメータの調整を行い、新規デバイスSPICEパラメータ8が作成される。
【0038】
新規デバイスSPICEパラメータ作成手段7で作成された新規デバイスSPICEパラメータ8は、既存のSPICEパラメータを対応する知識情報、及び評価データを用いて新規デバイスへ対応するよう最適化を行っているため、新規デバイスSPICEパラメータ8を用いて、回路シミュレーションエンジン9で回路シミュレーションを実行することにより、存在していないデバイスについても高精度なシミュレーションを行うことが可能となる。
【0039】
本実施形態におけるパラメータ補正について詳細に説明する。本実施形態において補正が加えられるパラメータは、VTH0である。しかしながら、製造上、Vthを変更する場合には、チャネル領域の濃度も変更される。チャンネル領域の濃度を変更すると、基板バイアス効果によってGammaもかわることになる。
【0040】
ところで、Gamma vs Vthのようなデバイス評価データは、デバイス開発時において測定されており、デバイス評価データ5には、開発時に測定された実測値などがデータベース化されて格納されている。
【0041】
このように、新規デバイス最適化知識情報3からパラメータ変更情報、及びデバイス評価データ5から実測値などのデバイス評価データを用いて、パラメータに所定の補正、又は調整を加えることで、ユーザが所望する新規デバイスに2次的な効果を加味し、より高精度な回路シミュレーションを行うことが可能となる。
【0042】
図4は、Vthを低下させたときの回路シミュレーション結果を示すIds−Vgs特性である。縦軸は、ドレイン、ソース間電流Ids、横軸は、ゲート、ソース間電圧Vdsを示している。
【0043】
右の実線は、補正前のシミュレーション結果を示し、矢印で示す左の実線は、補正後のシミュレーション結果を示す。このように、新規デバイス最適化知識情報3、及びデバイス評価データ5を参照して、パラメータに補正を加えることで、製造がされていないデバイスにおいても高精度なシミュレーション結果を得ることができる。
【0044】
表1に新規デバイスシミュレーション時において、新規デバイス最適化知識情報3に格納される調整を行うべきパラメータ、及び参照すべきデバイス評価データの一例を示す。
【0045】
【表1】

【0046】
以上、本発明の好適な実施の形態により本発明を説明した。ここでは特定の具体例を示して本発明を説明したが、特許請求の範囲に定義された本発明の広範囲な趣旨および範囲から逸脱することなく、これら具体例に様々な修正および変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の実施形態に係る回路シミュレーション装置の構成図である。
【図2】本発明の他の実施形態に係る回路シミュレーション装置の構成図である。
【図3】パラメータの補正前後におけるシミュレーション結果を示す図である。
【図4】パラメータの補正前後におけるシミュレーション結果を示す図である。
【符号の説明】
【0048】
1 SPICEパラメータ
2 シミュレーション対象回路ネットリスト
3 新規デバイス最適化知識情報
4 新規デバイスユーザー入力条件
5 デバイス評価データ
6 データ入力手段
7 新規デバイスSPICEパラメータ作成手段
8 新規デバイスSPICEパラメータ
9 回路シミュレーションエンジン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体集積回路の回路シミュレーションモデル記述のためのSPICEパラメータを格納する初期パラメータ記憶手段と、
シミュレーション対象回路を構成する素子の接続情報を有するシミュレーション対象回路ネットリストを格納するネットリスト記憶手段と、
前記SPICEパラメータを新規デバイスに対応するパラメータに最適化するための知識情報をデータベース化した最適化知識情報を格納する知識情報記憶手段と、
ユーザの所望するデバイスの条件を受け付ける条件入力手段と、
前記最適化知識情報を参照して、前記SPICEパラメータを調整して前記条件入力手段に入力された条件に適合する新規パラメータを作成するパラメータ作成手段と、
前記パラメータ作成手段にて作成した新規パラメータを基に、回路シミュレーションを行うシミュレーション実行手段と、を備えることを特徴とする回路シミュレーション装置。
【請求項2】
デバイスの評価データをデータベース化したデバイス評価データベースを格納する評価データ記憶手段を有し、
前記パラメータ作成手段は、前記最適化知識情報、及び前記デバイス評価データベースを参照して、前記SPICEパラメータを調整して前記条件入力手段に入力された条件に適合する新規パラメータを作成することを特徴とする請求項1記載の回路シミュレーション装置。
【請求項3】
前記最適化知識情報は、過去の経験に基いたノウハウをデータベース化して格納していることを特徴とする請求項1又は2記載の回路シミュレーション装置。
【請求項4】
前記デバイス評価データベースは、デバイス開発時のデバイス評価データをデータベース化して格納していることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の回路シミュレーション装置。
【請求項5】
ユーザの所望するデバイスの条件を受け付ける条件入力ステップと、
半導体集積回路の回路シミュレーションモデル記述のためのSPICEパラメータである初期パラメータを、新規デバイスに対応するパラメータに最適化するための知識情報をデータベース化した最適化知識情報を参照して、前記初期パラメータを調整して前記条件入力ステップにて入力された条件に適合する新規パラメータを作成するパラメータ作成ステップと、
前記パラメータ作成ステップにて作成した新規パラメータを基に、回路シミュレーションを行うシミュレーション実行ステップと、を備えることを特徴とする回路シミュレーション装置の回路シミュレーション方法。
【請求項6】
前記パラメータ作成ステップは、前記最適化知識情報、及びデバイスの評価データをデータベース化したデバイス評価データベースを参照して、前記初期パラメータを調整して前記条件入力手段に入力された条件に適合する新規パラメータを作成することを特徴とする請求項5記載の回路シミュレーション装置の回路シミュレーション方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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