説明

回路チップ転写シートおよび回路基板の製造方法

【課題】ディスプレイ用の各画素を制御するための回路チップが埋め込まれたディスプレイ用回路基板を簡易かつ高収率に製造するために、回路チップを回路基板シートに簡便かつ安価に配置することができる技術を提供する。
【解決手段】回路チップを保持している回路チップ保持部材から、所要数の回路チップを転着により取得し、該所要数の回路チップを、回路基板上の回路チップ取り付け位置に転写する回路チップ転写シートであって、前記所要数の回路チップを転写するために、その露出面を選択的に粘着部と非粘着部とに設定可能な材料から構成されているシートを、回路チップ転写シートとして用いる。また、この転写シートを用いて所要数の回路チップを回路基板シートに配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイ用回路基板に回路チップを配置する回路チップ転写シートおよび回路基板の製造方法に関する。さらに詳しくは、ディスプレイにおける各画素を制御するための回路チップをディスプレイ用の回路基板シートに簡便かつ安価に配置するために用いて好適な回路チップ転写シートと、該転写シートを用いて行う回路基板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等のディスプレイを構成する回路基板には、ディスプレイの各画素を制御するための微小電子デバイスが配置されるとともに、各微小電子デバイスの入出力信号を伝達する回路が形成されている。従来、この回路基板においては、微小電子デバイスは、ガラス製の回路基板上に直接その場で作製することにより、配置されている。すなわち、ガラス基板上に、CVD(化学気相堆積)法などの真空技術を用いて、絶縁膜、半導体膜などを順次に積層し、これらの堆積膜に、半導体集積回路の製造工程と同様の工程を適用して、薄膜トランジスタ(TFT)などの微小電子デバイスを形成している。これらの微小電子デバイスは、各画素の近傍に形成され、各画素のオン、オフ、濃淡などの制御を行って、ディスプレイ上の画像形成を実現している。
【0003】
近年、ディスプレイに対して40インチ〜100インチという大画面化が望まれ、市販されるに至っているが、前述のガラス基板と真空技術を用いた多段階工程を要する回路基板製造方法がネックとなり、コストの削減が困難となっている。大画面ディスプレイが広く用いられるためには、コスト削減が必須であり、大画面ディスプレイの製造コストを低減可能な回路基板の製造方法が模索されている。
【0004】
大画面ディスプレイに対する前述のコスト削減の要望に対して、最近、新たな技術が提案されている(特許文献1)。この特許文献1に開示の技術は、微小電子デバイスとして別途作製した回路チップを用い、回路基板として安価で軽量なプラスチック基板を用い、印刷技術を適用して前記回路チップを前記プラスチック基板上に配置するとともに回路を作製することにより、大画面ディスプレイを安価に提供可能とする技術である。
【0005】
【特許文献1】特開2003−248436号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記特許文献1に開示の技術においては、プラスチック基板上の所要位置に回路チップを配置するための穴を予め空けておく。一方では、回路チップの表面に磁気に感応するニッケル膜を積層しておく。これらニッケル膜を有する所要数の回路チップを所定のパターンに従って磁気的に吸着し、これら回路チップを一度に前記プラスチック基板上の穴に嵌め込み、配線パターンを形成する。
【0007】
前記従来の技術では、回路チップを別途作製することで、回路基板として安価なプラスチック回路基板シートの使用を可能にしているが、別途作製した回路チップを回路基板シートに配置するために、磁気吸着を利用しており、そのために回路チップ表面に予めニッケル膜を形成しておく必要がある。また、回路チップを回路基板シートに配置した後に、回路チップの表面からニッケル膜を除去する必要がある。配置後の回路チップからニッケル膜を除去するには、塩酸溶液を用いたウェットエッチングを実施しなければならない。そのウェットエッチング処理により、回路チップ自体の回路や、回路チップ周辺の配線回路が劣化されるおそれがある。かかる回路チップへのニッケル膜の形成及び削除のために要するプロセスが不要となれば、さらにディスプレイ用の回路基板の製造工程、コストを削減することができる。したがって、従来の技術において、好ましくは、エッチング処理を不要とするプロセス、換言すれば、磁気手段に依存しない新たな回路チップ転写技術が望まれる。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その課題は、ディスプレイ用の各画素を制御するための回路チップが埋め込まれたディスプレイ用回路基板を簡易かつ高収率に製造するために、回路チップを回路基板シートに簡便かつ安価に配置することができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明にかかる回路チップ転写シートは、回路チップを保持している回路チップ保持部材から、所要数の回路チップを転着により取得し、該所要数の回路チップを、回路基板上の回路チップ取り付け位置に転写させる回路チップ転写シートであって、その表面を選択的に粘着部と非粘着部とに設定可能な材料から構成されていることを特徴とする。
【0010】
前記材料としては、活性エネルギー線硬化性樹脂が好適であり、活性エネルギー線を選択的に照射することにより前記粘着部が選択的に設定することができる。
【0011】
また、前記材料として、粘着剤も好適であり、その表面を選択的に露出もしくは突出させることにより、その表面に前記粘着部を設定することができる。
【0012】
また、前記材料として、熱活性化樹脂も好適であり、局部を選択的に加熱することにより前記粘着部を設定することができる。
【0013】
前記回路チップ保持部材としては、回路チップを保持しているものであれば、いかなるものでも良いが、通常は、粘着テープが好適に用いられる。
【0014】
本発明にかかる回路基板の製造方法は、回路チップを保持している回路チップ保持部材から、所要数の回路チップを、前記いずれかの回路チップ転写シートに転着し、前記所要数の回路チップを前記回路チップ転写シートから、回路基板上の回路チップ取り付け位置に転写させることを特徴とする。
【0015】
前記回路基板の製造方法において、粘着部が矩形であり、前記矩形が縦横方向それぞれ(回路チップ幅の1/2)超で、(回路チップ幅+前記回路チップ保持部材における隣接回路チップ間隔×2+回路チップ幅の1/2)以下のサイズに作成することが、望ましい。
【0016】
前記回路基板の製造方法において、前記回路チップ保持部材としては、回路チップを保持しているものであれば、いかなるものを使用しても良いが、通常は、回路チップを保持した粘着テープを好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ディスプレイ用の各画素を制御するための回路チップが埋め込まれたディスプレイ用回路基板を製造するために、回路チップを回路基板シートに配置する際に、簡便かつ効率的に配置することができる回路チップ転写シート(以下、転写シートともいう)と、この転写シートを用いた回路基板の製造方法を提供することができる。本発明の回路チップ転写シートでは、回路基板とは別途に形成する回路チップにニッケル被膜形成などの特別な処理を施さず、使用材料の粘着力を利用して転写する技術を用いている。従って、本発明の転写シートを用いることにより、ニッケル被膜除去に必要となるエッチング液などの処理薬剤が不要となり、安全、かつ高収率に大型ディスプレイ用回路基板を作製することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の転写シートの材料は、回路チップを転写可能な粘着力があり、かつ粘着部を選択的に形成できれば、特に制限ないが、活性エネルギー線硬化性樹脂(以下、光硬化性樹脂ともいう)、粘着剤、熱活性化樹脂が好適に用いられる。
以下、これらの材料を用いた転写シートを各々、光硬化性転写シート、粘着剤型転写シート、熱活性型転写シートという。
【0019】
(光硬化型転写シート)
光硬化型転写シートを構成する活性エネルギー線硬化性樹脂は、紫外線、電子線等の活性エネルギー線を照射することにより、重合、硬化する樹脂である。
【0020】
本発明で用いる前記活性エネルギー線硬化性樹脂としては、例えば、(1)アクリル系重合体と活性エネルギー線重合性オリゴマーおよび/または重合性モノマーと所望により光重合開始剤を含む樹脂、(2)側鎖に重合性不飽和基を有する活性エネルギー線硬化性官能基が導入されてなるアクリル系重合体と所望により光重合開始剤を含む樹脂などを挙げることができる。
【0021】
前記(1)の樹脂において、アクリル系重合体としては、エステル部分のアルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸エステルと、所望により用いられる活性水素を持つ官能基を有する単量体および他の単量体との共重合体、すなわち(メタ)アクリル酸エステル共重合体を好ましくは挙げることができる。
【0022】
ここで、エステル部分のアルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸エステルの例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ステアリルなどが挙げられる。これらは1種を単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0023】
一方、所望により用いられる活性水素を持つ官能基を有する単量体の例としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル;(メタ)アクリル酸モノメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノプロピルなどの(メタ)アクリル酸モノアルキルアミノアルキル;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸などのエチレン性不飽和カルボン酸などが挙げられる。これらの単量体は1種を単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0024】
(メタ)アクリル酸エステル共重合体中、(メタ)アクリル酸エステルは5〜100重量%、好ましくは50〜95重量%含有され、活性水素を持つ官能基を有する単量体は0〜95重量%、好ましくは5〜50重量%含有される。
【0025】
また、所望により用いられる他の単量体の例としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類;エチレン、プロピレン、イソブチレンなどのオレフィン類;塩化ビニル、ビニリデンクロリドなどのハロゲン化オレフィン類;スチレン、α−メチルスチレンなどのスチレン系単量体;ブタジェン、イソプレン、クロロプレンなどのジエン系単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのニトリル系単量体;アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミドなどのアクリルアミド類などが挙げられる。これらは1種を単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。(メタ)アクリル酸エステル共重合体中、これらの単量体は、0〜30重量%含有することができる。
【0026】
アクリル系重合体として用いられる(メタ)アクリル酸エステル系共重合体は、その共重合形態については特に制限はなく、ランダム、ブロック、グラフト共重合体のいずれであっても良い。また、分子量は、重量平均分子量で30万以上が好ましい。
【0027】
なお、上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定したポリスチレン換算の値である。
【0028】
本発明においては、この(メタ)アクリル酸エステル系共重合体は1種を単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0029】
また、活性エネルギー線重合性オリゴマーとしては、例えば、ポリエステルアクリレート系、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリエーテルアクリレート系、ポリブタジェンアクリレート系、シリコーンアクリレート系などが挙げられる。
【0030】
上記重合性オリゴマーの重量平均分子量は、GPC法で測定した標準ポリスチレン換算の値で、好ましくは500〜100,000、より好ましくは1,000〜70,000、さらに好ましくは3,000〜40,000の範囲で選定される。
【0031】
この重合性オリゴマーは、1種を単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0032】
一方、活性エネルギー線重合性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸モルホリン、(メタ)アクリル酸イソボニルなどの単官能性アクリル酸エステル類、ジ(メタ)アクリル酸1,4−ブタンジオールエステル、ジ(メタ)アクリル酸1,6−ヘキサンジオールエステル、ジ(メタ)アクリル酸ネオペンチルグリコールエステル、ジ(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールエステル、ジ(メタ)アクリル酸ネオペンチルグリコールアジペートエステル、ジ(メタ)アクリル酸ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステル、ジ(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、ジ(メタ)アクリル酸カプロラクトン変性ジジクロペンテニル、ジ(メタ)アクリル酸エチレンオキシド変性リン酸エステル、ジ(メタ)アクリル酸アリル化シクロヘキシル、ジ(メタ)アクリル酸イソシアヌレート、トリ(メタ)アクリル酸トリメチロールプロパンエステル、トリ(メタ)アクリル酸ジペンタエリスリトールエステル、トリ(メタ)アクリル酸ペンタエリスリトールエステル、トリ(メタ)アクリル酸プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパンエステル、イソシアヌル酸トリス(アクリロキシエチル)、ペンタ(メタ)アクリル酸プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールエステル、ヘキサ(メタ)アクリル酸ジペンタエリスリトールエステル、ヘキサ(メタ)アクリル酸カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールエステルなどが挙げられる。これらの重合性モノマーは1種を単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0033】
これらの重合性オリゴマーや重合性モノマーの使用量は、通常、(メタ)アクリル酸エステル共重合体の固形分100重量部に対し、3〜500重量部配合することができる。
【0034】
また、活性エネルギー線として、通常、紫外線または電子線が照射されるが、紫外線を照射する際には、光重合開始剤を用いる。この光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−2(ヒドロキシ−2−プロプル)ケトン、ベンゾフェノン、p−フェニルベンゾフェノン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−ターシャリ−ブチルアントラキノン、2−アミノアントラキノン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール、p−ジメチルアミン安息香酸エステル、オリゴ(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−プロペニル)フェニル]プロパノン)などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0035】
かかる光重合開始剤の配合量は、上述の活性エネルギー線硬化性樹脂の固形分100重量部に対し、通常0.1〜10重量部である。
【0036】
次に、前記(2)の樹脂において、側鎖に重合性不飽和基を有する活性エネルギー線硬化性官能基が導入されてなるアクリル系重合体としては、例えば、前述した(メタ)アクリル酸エステル系重合体の側鎖に、−COOH、−NCO、エポキシ基、−OH、−NH2などの活性点を導入し、この活性点と重合性不飽和基を有する化合物を反応させて、該アクリル系重合体の側鎖に重合性不飽和基を有する活性エネルギー線硬化性官能基を導入してなるものを挙げることができる。
【0037】
アクリル系重合体に前記活性点を導入するには、該アクリル系重合体を製造する際に、−COOH、−NCO、エポキシ基、−OH、−NH2などの官能基と、重合性不飽和基とを有する単量体またはオリゴマーを反応系に共存させればよい。具体的には、前述の(1)の樹脂において説明したアクリル系重合体を製造する際に、−COOH基を導入する場合には、(メタ)アクリル酸などを、−NCO基を導入する場合には、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアナートなどを、エポキシ基を導入する場合には、(メタ)アクリル酸グリシジルなどを、−OH基を導入する場合には、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、モノ(メタ)アクリル酸1,6−ヘキサンジオールエステルなどを、−NH2基を導入する場合には、N−メチル(メタ)アクリルアミドなどを用いればよい。
【0038】
これらの活性点と反応させる重合性不飽和基を有する化合物としては、例えば、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアナート、(メタ)アクリル酸グリシジル、モノ(メタ)アクリル酸ペンタエリスリトールエステル、モノ(メタ)アクリル酸ジペンタエリスリトールエステル、モノ(メタ)アクリル酸ジペンタエリスリトールエステル、モノ(メタ)アクリル酸トリメチロールプロパンエステルなどの中から、活性点の種類に応じて、適宜選択して用いることができる。
【0039】
このようにして、アクリル系重合体の側鎖に、前記活性点を介して重合性不飽和基を有する活性エネルギー線硬化性官能基が導入されてなるアクリル系重合体、すなわち、(メタ)アクリル酸エステル共重合体が得られる。
【0040】
この活性エネルギー線硬化性官能基が導入された(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、重量平均分子量が100,000以上のものが好ましく、特に300,000以上のものが好ましい。なお、上記重量平均分子量は、GPC法により測定したポリスチレン換算の値である。
【0041】
また、所望により用いられる光重合開始剤としては、前述の(1)の樹脂の説明において例示した光重合開始剤を用いることができる。
【0042】
前記の(1)および(2)の活性エネルギー線硬化性樹脂においては、本発明の効果が損なわれない範囲で、所望により、架橋剤、粘着付与剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、軟化剤、充填剤などを添加することができる。
【0043】
前記架橋剤としては、例えば、ポリイソシアナート化合物、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ジアルデヒド類、メチロールポリマー、アジリジン系化合物、金属キレート化合物、金属アルコキシド、金属塩などが挙げられるが、ポリイソシアナート化合物が好ましく用いられる。この架橋剤は、上述の(メタ)アクリル酸エステル共重合体の固形分100重量部に対して、0〜30重量部配合することができる。
【0044】
ここで、ポリイソシアナート化合物の例としては、トリレンジイソシアナート、ジフェニルメタンジイソシアナート、キシリレンジイソシアナートなどの芳香族ポリイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナートなどの脂肪族ポリイソシアナート、イソホロンジイソシアナート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアナートなどの脂環式ポリイソシアナートなど、およびそれらのビウレット体、イソシアヌレート体、さらにはエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ヒマシ油などの低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト体などを挙げることができる。これらの架橋剤は、1種を単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0045】
なお、前記(1)および(2)の活性エネルギー線硬化性樹脂は、(1)活性エネルギー線硬化性樹脂に対し、(2)の側鎖に重合性不飽和基の活性エネルギー線硬化性基を有する(メタ)アクリル酸エステル共重合体を加えることができる。同様に(2)の活性エネルギー線硬化性樹脂に対し、(1)のアクリル系重合体、または活性エネルギー線重合性オリゴマーや活性エネルギー線重合性モノマーを加えることができる。また、所望により溶剤も添加させることができる。用いられる溶剤としては、前記の(1)および(2)の活性エネルギー線硬化性樹脂の溶解性が良好であり、前記(1)、(2)の樹脂に対して不活性な公知の溶剤の中から適宜選択して用いることができる。このような溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、メタノール、エタノール、イソブタノール、n−ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、酢酸エチルなどが挙げられる。これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を組み合わせても良い。
【0046】
なお、活性エネルギー線のうち、汎用性、経済性から紫外線が好ましく使用できる。紫外線を発生するランプとしては、高圧水銀ランプ、メタルハイドライトランプ、キセノンランプ、無電極紫外線ランプなどがある。紫外線の照射量としては、適宜選択されるが、例えば、光量は1〜1500mJ/cm2、照度は10〜500mW/cm2程度である。
【0047】
光硬化型転写シートの製造方法は、特に制限はなく、例えば、支持フィルム上に前記活性エネルギー線硬化性樹脂を含む適当な濃度の塗工液を塗布し、溶剤を含む場合は乾燥して、光硬化性樹脂層を形成する。前記塗布方法はナイフコーター、ロールコーター、バーコーター、ブレードコーター、グラビアコーターなどの方法で塗布し、室温〜150℃、好ましくは60〜130℃、1〜10分の条件で乾燥させる。光硬化性樹脂層の厚さは、5〜1000μm、好ましくは、10〜500μmである。
【0048】
前記支持フィルムとしては、特に限定はなく、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、等が例示される。前記支持フィルムの厚みは、通常、20〜1000μmのものが使用される。前記光硬化性樹脂は、後に硬化層を形成するために活性エネルギー線が照射されるまで、未硬化状態にあり、表面には粘着性がある。従って、この光硬化性樹脂層の光硬化性を利用して選択的に未硬化層と硬化層を形成して粘着部を設定することができる。未硬化層は表面が粘着性を有して粘着部を形成し、硬化層は粘着性を有せず、非粘着部を形成する。未硬化層を選択的に所要のパターンに従って形成し、得られた未硬化層の表面に回路チップを接触させて回路チップを転写させる。硬化層を形成する際の活性エネルギー線の照射量は、紫外線の場合、前記した照射量で行う。
【0049】
前記未硬化層を選択的に形成する時期は、転写シートを回路チップ保持部材上の回路チップ配列面に当接させる前でもよいし、回路チップ配列面に当接させた後でもよい。回路チップ保持部材としては、粘着テープ、より具体的には、ダイシングテープ等が挙げられる。また、この光硬化性樹脂層からなる転写シートの全面を未硬化状態のままにしておき、回路チップ保持部材の回路チップ配列面に当接させ、転写シートの回路チップを転着させない部分を光硬化させ、その後、転写シートを回路チップ保持部材から剥離することにより所要数の回路チップを転写シートに転着させても良い。あるいは、転写シートの全面に回路チップ保持部材から回路チップを転着させ、その後、回路基板に転写させる回路チップが位置する部分のみを選択的に光硬化させて、その部分の粘着力を消失させ、必要とする回路チップを回路基板へ容易に転写させ得るようにしても良い。
【0050】
前記未硬化層を選択的に形成するには、主に二通りの方法がある。一つは、活性エネルギー線を選択的に遮蔽するマスクを光硬化性樹脂層の上に置き、活性エネルギー線を照射し、照射した部分を硬化させ、マスクにより活性エネルギー線が遮蔽された未照射部分を未硬化層として残す方法である。前記活性エネルギー線を選択的に遮蔽するマスクとしては、例えば、石英ガラスなどの基板の上に活性エネルギー線を遮蔽するためのクロムなどの金属の薄膜を必要な箇所に形成したものが挙げられる。
【0051】
もう一つの方法は、ラジカル重合によって硬化が進行する光硬化性樹脂が酸素と接触すると、その硬化が阻害される現象を利用した方法である。すなわち、活性エネルギー線透過性を有し選択的に孔が開けられてなるマスクを光硬化性樹脂層の上に置き、酸素を含む雰囲気(空気)下において、活性エネルギー線を照射すると、活性エネルギー線は光硬化性樹脂層の全面に照射すると、孔開きマスクに覆われて酸素と接触しない部分は光硬化し、孔により酸素と接触した部分は酸素により硬化が阻害されて未硬化なままになるので、この現象を利用して、未硬化層を選択的に形成する方法である。前記孔開きマスクとしては、例えば、ソーダライムガラス、石英ガラス等のガラスや、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム等のプラスチックフィルムに孔を開けたものを用いることができる。この孔開きマスクの厚さは、通常、20〜150μm程度である。また、必要に応じて、上記孔開きマスクの表面に剥離処理がしてあっても良い。剥離剤としては、シリコーン樹脂、アルキッド樹脂、フッ素樹脂、長鎖アルキル樹脂等が例示され、孔を開ける前に剥離剤を塗布して、剥離剤層を形成しておく。孔開けは、熱針やレーザなどを用いておこなうことができる。
【0052】
(粘着剤型転写シート)
粘着剤としては、特に制限されず、従来公知の粘着剤、例えば、ゴム系、アクリル系、シリコン系、ポリウレタン系、ポリエステル系粘着剤などの中から、適宜選択することができるが、耐候性などの性能の点から、アクリル系粘着剤が好適である。
【0053】
アクリル系粘着剤としては、樹脂成分として重量平均分子量20万以上の(メタ)アクリル酸エステル系共重合体とともに、架橋剤を含むものが好ましい。
【0054】
上記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体としては、エステル部分のアルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸エステルと、活性水素を持つ官能基を有する単量体と、所望により用いられる他の単量体との共重合体を好ましくは挙げることができる。
【0055】
ここで、エステル部分のアルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸エステルの例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ステアリルなどが挙げられる。これらは1種を単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0056】
一方、活性水素を持つ官能基を有する単量体の例としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリ酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミドなどのアクリルアミド類;(メタ)アクリル酸モノメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノプロピルなどの(メタ)アクリ酸モノアルキルアミノアルキル;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸などのエチレン性不飽和カルボン酸などが挙げられる。これらの単量体は1種を単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0057】
また、所望により用いられる他の単量体の例としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類;エチレン、プロピレン、イソブチレンなどのオレフィン類;塩化ビニル、ビニリデンクロリドなどのハロゲン化オレフィン類;スチレン、α−メチルスチレンなどのスチレン系単量体;ブタジェン、イソプレン、クロロプレンなどのジエン系単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのニトリル系単量体;N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミドなどのN,N−ジアルキル置換アクリルアミド類などが挙げられる。これらは1種を単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。前記(メタ)アクリル酸エステルと共重合体中、(メタ)アクリル酸エステルは5〜100重量%、好ましくは50〜95重量%含有され、活性水素を持つ官能基を有する単量体は0〜95重量%、好ましくは5〜50重量%であり、他の単量体は(メタ)アクリル酸エステル共重合体中、0〜30重量%含有することができる。
【0058】
該アクリル系粘着剤において、樹脂成分として用いられる(メタ)アクリル酸エステル系共重合体は、その共重合形態については特に制限はなく、ランダム、ブロック、グラフト共重合体のいずれであっても良い。また、分子量は、重量平均分子量で20万以上が好ましく、より好ましくは60万〜250万の範囲で選定される。この重量平均分子量が20万未満では所望の性能が得られにくい。
【0059】
なお、上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定した標準ポリスチレン換算の値である。
【0060】
本発明において、この(メタ)アクリル酸エステル系共重合体は1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0061】
このアクリル系粘着剤における架橋剤としては、特に制限はなく、従来アクリル系粘着剤において架橋剤として慣用されているものの中から、任意のものを適宜選択して用いることができる。このような架橋剤としては、例えば、ポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物、メラミン樹脂、尿素樹脂、ジアルデヒド類、メチロールポリマー、金属キレート化合物、金属アルコキシド、金属塩などが挙げられるが、ポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物、金属キレート化合物が好ましくは用いられる。
【0062】
ここで、金属キレート化合物の例としては、アルミキレート化合物、チタンキレート化合物などが挙げられる。ポリイソシアネート化合物の例としては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネートなどの脂環式ポリイソシアネートなど、およびそれらのビウレット体、イソシアヌレート体、さらにはエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ヒマシ油などの低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト体などを挙げることができる。
【0063】
本発明において、この架橋剤は1種を単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。また、使用量は、架橋剤の種類にもよるが、前記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体100質量部に対し、通常、0.01〜20質量部、好ましくは、0.1〜10質量部の範囲で選定される。
【0064】
また、このアクリル系粘着剤には、所望により粘着付与剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、軟化剤、シランカップリング剤、充填剤などを添加することができる。
【0065】
また、所望により溶剤も添加させることができる。用いられる溶剤としては、前記に例示のものが挙げられる。また、前述の活性エネルギー線硬化性樹脂(1)、(2)も粘着剤として使用することができる。
【0066】
前記粘着剤の溶液(塗工液)を支持フィルム上に塗布し、溶剤を含む場合は、乾燥して粘着剤層を形成する。塗布方法は前記に例示した方法を使用できる。支持フィルムとしては前記に例示のものが使用できる。粘着剤層の厚さは、その使用の条件にもよるが、通常、1〜1000μm程度、好ましくは5〜500μmである。この粘着剤層は、全面粘着性を有するので、回路チップを転写させたい位置に対応する箇所に孔を開けた孔開きマスクを、粘着剤層の表面に貼合することにより、粘着部を選択的に形成して設定することができる。孔開きマスクとしては、前記したものが使用できる。この孔開きマスクをつけたまま転写シートを回路チップ保持部材上の回路チップ配列面に当接させ、前記孔によって粘着面が露出した箇所を回路チップ保持部材の背後からピンなどを用いて選択的に転写シートの粘着部側に押し出す。その結果、前記粘着露出面が回路チップに当接し、選択的に形成された粘着部に回路チップを転着させることができる。
【0067】
あるいは、粘着層の表面を選択的に突出させて粘着部を設定しても良い。粘着剤の表面を選択的に突出させるためには、例えば、エンボス型剥離シートを使用する方法が挙げられる。すなわち、表面に所要の間隔で凹部を形成した剥離シート(エンボス型剥離シート)の剥離剤層表面に前記粘着剤の溶液を前記した塗布方法で塗布、乾燥して粘着剤層を形成する。エンボス型剥離シートの基材としては、特に制限されず、上質紙、グラシン紙、コート紙、ポリエチレンラミネート紙などの紙類、ポリエチレンフィルムやポリエチレンテレフタレートフィルムなどのプラスチックフィルム類が挙げられる。前記基材がプラスチックフィルム類の場合、単層、もしくは積層して使用しても良い。これら基材上にシリコーン樹脂、アルキッド樹脂、長鎖アルキル樹脂等の剥離剤を塗布して使用する。これを凸部が形成されてなるエンボスロールと、対応するぺーパーロールとの間を通過させ、凹部を形成すると、凹部を形成したエンボス型剥離シートを得る。エンボス型剥離シートの厚さは20〜150μm程度である。次に、この粘着剤層の露出面に支持フィルムを貼合する。貼合後、前記エンボス型剥離シートを剥離すると、表面に凸部(突出部)を有する粘着剤層が露出する。この粘着剤層表面の凸部が選択的に形成された粘着部に相当する。この凸部の先端面を粘着テープ(回路チップ保持部材)上の回路チップに当接させることにより粘着性のある凸部の先端面に回路チップを転着することができる。凸部の高さは、5〜500μmである。
【0068】
(熱活性型転写シート)
熱活性型転写シートの材料としては、熱活性化樹脂、すなわち加熱により粘着性を発現する樹脂であれば、特に制限はなく、ポリエチレン、ポリプロピレン、アイオノマー、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン−酢酸ビニル共重合体などの熱可塑性樹脂が挙げられる。中でも、アイオノマー、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)はより低温の加熱により粘着性が発現するので、好ましい。
【0069】
前記熱活性型転写シートの形成方法は、(1)前記熱可塑性樹脂をダイを用いて溶融押出により押出することにより単層で形成する方法、(2)前記熱可塑性樹脂をダイを用いて溶融押出により支持フィルム上に積層し形成する方法、(3)前記熱可塑性樹脂を溶剤により溶解させた塗工液を、支持フィルム上に前記した方法により塗布し形成する方法などが挙げられる。前記溶融押出における樹脂の溶融温度は、樹脂の融点にもよるが、通常、融点より10℃以上高い温度である。支持フィルムは、前記した例が挙げられる。前記熱可塑性樹脂層(以下、熱活性化層ともいう)の厚さは、その使用条件にもよるが、通常、1〜1000μm程度、好ましくは、5〜500μm程度である。
【0070】
この熱活性化層は、常温では表面に粘着性を持たないが、加熱することにより表面に粘着性を有することになる。したがって、熱活性化層を回路チップ保持部材上の回路チップ配列面に当接後、回路チップを転写したい箇所を転写シートの背後から加熱したピンなどを用いて選択的に加熱すると、局部に選択的に粘着部が形成される。この粘着部への加熱を停止し、降温すると、この粘着部に当接している回路チップは粘着部にしっかりと転着されるので、転写シートを回路チップ保持部材から剥離すると、転写シートに目的の回路チップが転着される。
【0071】
回路チップ保持部材としては粘着テープが好ましい。粘着テープとしては半導体ウエハ切断時に使われるダイシングテープが挙げられる。
【0072】
前記各転写シートに選択的に形成する粘着部の表面のサイズは、粘着部の粘着力と、回路チップ保持部材(粘着テープ)の粘着力と、そして、転着しようとしている回路チップのサイズと、転着元の回路チップ保持部材上の回路チップの配列間隔とによって選定される。各部材の粘着力は、概ね、回路チップ保持部材の粘着力<転写シートの粘着部の粘着力<回路基板の回路チップ配置位置の粘着力に設定されていれば、良い。このような前提で、各転写シートの粘着部の矩形のサイズは、概略的に、回路チップ保持部材上の配列間隔を基準とすると、縦横方向それぞれ(回路チップ幅の1/2)超で、(回路チップ幅+前記回路チップ保持部材における隣接回路チップ間隔×2+回路チップ幅の1/2)以下とすることが、好ましい。前記下限値を下回ると、回路チップを転写シート側に転着することが困難になり、前記上限値を超えると、隣接した回路チップまで余分に取得してしまう場合が生じる。
【0073】
なお、回路チップ製造工程によっては、回路チップ保持部材が粘着テープのような場合、保持された回路チップの回路面が粘着テープの粘着面と接していない場合もあれば、粘着テープの粘着面と接している場合もある。回路チップの回路面が粘着テープの粘着剤層と接していない場合は、本転写シートを用いて粘着テープより回路チップを転着し、そのまま回路基板シートへ転写すれば良い。また、回路チップの回路面が粘着テープの粘着剤層に接している場合は、回路チップを一度転写シートにより転着して、回路面を露出させ、ここで別に用意した転写シートに回路チップの回路面が粘着面に接するように転着させ、その後、回路基板シートに転写すれば良い。
【0074】
図1に、その表面に多数の回路チップ2が一定の間隔で配列されてなる回路チップ保持部材(ダイシングテープ)1の概略平面図を示した。図中、符号3は、前記回路チップ保持部材1を支えるリングフレームである。また、図2に、この回路チップ保持部材1上の回路チップ2の配列面の一部を拡大して示した。各回路チップ2は、平面正方形である場合も有れば、長方形である場合もあるが、図では、平面正方形である場合を示した。
【0075】
図2において、aは回路チップ2の縦寸法、bは横寸法、xは回路チップ2と隣接の回路チップ2との間隔を示している。これらの符号a,b,xにて、前述の各転写シートにおける粘着部の矩形の表面サイズの好適な概略的範囲は、縦方向では、下限値が[a×(1/2)]で、上限値が[a+2x+a×(1/2)]である。また、横方向では、下限値が[b×(1/2)]で、上限値が[b+2x+b×(1/2)]である。
【0076】
(回路基板シート)
本発明の回路チップ転写シートによって回路チップを配置する先である回路基板シートとしては、本発明においては、特に限定されるものではないが、回路チップを配置する箇所に回路チップを固定する何らかの手段を有している必要がある。本発明の転写シートと組み合わせて好適な回路基板シートとしては、下記に示す活性エネルギー線硬化性樹脂からなるシート状の基板を挙げることができる。
【0077】
活性エネルギー線硬化性樹脂としては、前記光硬化型転写シートの構成材料と同様のものを使用できる。前記活性エネルギー線硬化性樹脂の塗工液を調製し、この塗工液を、剥離基材の片面に剥離剤層が設けられた剥離シート(重剥離型剥離シート)の剥離処理面に、塗布し、必要により加熱乾燥して、活性エネルギー線硬化性樹脂からなる未硬化層を形成する。前記塗布方法は、ナイフコーター、ロールコーター、バーコーター、ブレードコーター、グラビアコーターなどの方法で塗布し、室温〜150℃、好ましくは60〜130℃、1〜10分の条件で乾燥させる。また、剥離シートは公知のものが使用でき、ポリエチレンフィルムや、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルムなどのフィルムにシリコーン樹脂などの剥離剤を塗布して剥離剤層を設けたものなどが挙げられる。この剥離シートの厚さは、通常、20〜150μm程度である。
【0078】
別に同様にして、剥離基材の片面に剥離剤層が設けられてなる剥離シート(軽剥離型剥離シート)の剥離表面に、前記塗工液を塗布し、溶剤を含む場合は、加熱乾燥させ、活性エネルギー線硬化性樹脂からなる未硬化層を有するシートを作製する。なお、ここに使用する剥離シートの剥離力は、前記重剥離型剥離シートの剥離力より小さく設定されたものが使用される。
【0079】
前記重剥離型剥離シート上の未硬化層に、上記軽剥離型剥離シート上の未硬化層を積層し、軽剥離型剥離シートを剥離する。この積層工程を繰り返して、最終的に重剥離型剥離シートと軽剥離型剥離シートとにより挟まれた活性エネルギー線硬化性樹脂からなる所定厚さの未硬化層を有してなる回路基板シートを得る。前記未硬化層の厚さは、30〜1000μm、好ましくは50〜500μmである。
【0080】
以下に、上記活性エネルギー線硬化性樹脂を用いた回路基板シートに、前記各転写シートを用いて、粘着テープ(回路チップ保持部材)から回路チップを転写する方法を、図を参照して説明する。
【0081】
(光硬化型転写シートを用いた回路基板の製造方法(1))
活性エネルギー線硬化性樹脂を塗工液に調製し、この塗工液を前記した途工方法によって、支持フィルムに塗布し、必要に応じて乾燥し、図3に示すように、活性エネルギー線硬化性樹脂からなる未硬化層10を支持フィルム11上に形成する。支持フィルムは前記したものが使用できる。つづいて、前記未硬化層10に、剥離シート12を貼合し、活性エネルギー線硬化性樹脂からなる未硬化層10を有する転写シート13を得る。
【0082】
図4に示すように、前記転写シート13の剥離シート12を剥がし、回路チップ保持部材1に支持された回路チップ2の配列面に重ねる。この状態で、図5に示すように、マスク14を介して転写シート13に活性エネルギー線を照射すると、マスクの非遮蔽部分の未硬化層は硬化して粘着力を消失し、遮蔽部分の未硬化層10(図では1箇所)は未硬化状態で粘着部10aとなる。その後、図6に示すように、マスク14を取り外し、回路チップ保持部材1から転写シート13を剥離すると、所要数(図では1個)の回路チップ2が転写シート13に転着される。
【0083】
図7に示すように、別途製造した回路基板シート20の軽剥離型剥離シート(不図示)を剥がして露出した未硬化層を、石英ガラス、ソーダライムガラス等のガラス基板21に貼合し、重剥離型剥離シート(不図示)を剥がして未硬化層を露出させる。次に、所要数(図では1個)の回路チップ2が配置された前記転写シート13を、回路チップ2を回路基板シート20の未硬化層へ当接して重ねる。その後、図8に示すように、転写シート13を回路基板シート20から剥離すると、回路基板シート20に回路チップ2のみが配置される。
【0084】
前記所要数(図では1個)の回路チップ2を所要箇所に配置された回路基板シート20をガラス基板とともに、図9に示すように、平面プレス機22の上に載置する。続いて、回路基板シート20の上に剥離シート23(前記した重剥離型剥離シート、軽剥離型剥離シートのいずれも使用可)とガラス基板24を順次載せて、徐々にプレスする。すると、回路基板シート20は未硬化であるため、表面に配置されていた回路チップ2が回路基板シート20内に埋め込まれ、その表面が回路基板シート20の表面と一続きの平面を構成する。この時、回路基板シート20は、下方のガラス基板21と、上方のガラス基板24および剥離シート23により均一に加圧されるため、回路チップ2が埋め込まれても表面の平坦性が損なわれることがない。
【0085】
回路チップ2が埋め込まれた後、上方のガラス基板24および剥離シート23と、下方のガラス基板21を付けたまま、平面プレス機22から取り出す。その後、図10に示すように、下方のガラス基板21側から活性エネルギー線を回路基板シート20に照射して回路基板シート20を硬化させる。硬化後、上方のガラス基板24と剥離シート23を取り除くと、図11に示すように、所望の回路チップ2が埋め込まれた回路基板25が得られる。
【0086】
最後に、所要数(図では1個)の回路チップ2が埋め込まれた回路基板25には、真空蒸着やスパッタリング、フォトリソグラフィー技術などの周知の電極および配線形成方法により画素を制御するための配線が形成されて、回路基板が完成する。
【0087】
(光硬化型転写シートを用いた回路基板の製造方法(2))
図3〜8に示した方法では、転写シート13の未硬化層10の回路チップ2を転写したい箇所には活性エネルギー線をマスクにより遮断して未硬化のままに残したが、硬化部、未硬化部を逆転させることによっても、目的とする回路基板シートへの回路チップの転写は可能である。以下にその方法を、図12〜17を参照して説明する。
【0088】
図12に示すように、先に述べたように製造された未硬化層10を有する転写シート13を用意する。この転写シート13の剥離シート12を剥がし、図13に示すように、回路チップ保持部材1上の回路チップ2の配列面に貼合する。その後、図14に示すように、転写シート13を回路チップ保持部材1から剥離することにより、回路チップ2を転写シート13に全面転着する。
【0089】
次に、図15に示すように、転写シート13から目的の回路基板シートへ転写させる回路チップ2が転着している箇所(図では1箇所)のみに活性エネルギー線を透過させるマスク30を用いて活性エネルギー線をマスク30側から照射して硬化させ、その箇所10bの粘着力を低下させ非粘着部とする。
【0090】
一方、図16に示すように、別途作製した回路基板シート20の軽剥離型シート(不図示)を剥がして露出した未硬化層を、ガラス基板21に貼合し、重剥離型剥離シート(不図示)を剥がして未硬化層を露出させる。続いて、マスクを取り除いた前記転写シート13を露出させた回路基板シート20の未硬化層の表面に近接させる。回路基板シート20に近接させた転写シート13の前記硬化箇所を裏(支持フィルム側)からピンなどで突き出し、その箇所の回路チップ2を回路基板シート20に当接させる。このピンなどで突き出した箇所10bは硬化されて粘着力が低下しているので、図17に示すように、回路チップ2は回路基板シート20に転写する。
【0091】
前記回路チップ2が所望の位置に配置された回路基板シート20は、前記図9,10,11に示した工程に従って、回路チップ2の埋め込みと、回路基板シート20の硬化を行う。
【0092】
(光硬化型転写シートを用いた回路基板の製造方法(3))
上記では、光硬化型転写シートにマスクを用いて、未硬化部、硬化部を選択的に形成させる方法を説明したが、他の方法として、ラジカル重合によって硬化が進行する光硬化性樹脂の場合、酸素による硬化阻害現象を利用して、未硬化部、硬化部を選択して構成することもできる。この方法では、前述の図3〜11の工程において、図3〜5までの工程が異なるだけで、図6以降の工程は同様である。従って、図6に示す工程に至るまでの工程について、以下、図18および19を参照して説明する。
【0093】
図18に示すように、転写シート13の剥離シートを剥離し、その露出表面に活性エネルギー線を透過させる孔開きマスク40を貼合させる。この孔開きマスク40には孔40aが開けられており、そのため、その孔40aがある部分の未硬化層10は外気に露出することになる。この状態で、空気などの酸素を含有する雰囲気下で、未硬化層10に活性エネルギー線を照射する。その結果、活性エネルギー線は未硬化層10の全面に隈無く照射されるので、通常で有れば、未硬化層10の全領域が光硬化するが、孔40aにより酸素と接触した部分は酸素により硬化が阻害されて未硬化なままになり、未硬化部(粘着部)10aが選択的に形成される。
【0094】
前述のようにして未硬化部10aが選択的に形成された転写シート13から孔開きマスク40を剥離し、図19に示すように、転写シート13を回路チップ保持部材1の回路チップ2の配列面に当接させる。すると、前記未硬化部10aが粘着性を有するので、この部分に回路チップ2が転着する。次に、回路チップ保持部材1から転写シート13を剥離すると、前述の図6に示すように、所要数(図では1個)の回路チップ2が転写シート13に転着される。この後は、前述の図7〜11に示した工程を経て回路基板を形成する。
【0095】
(粘着剤型転写シートを用いた回路基板の製造方法(1))
粘着剤の塗工液を調製し、得られた塗工液を支持フィルムに塗布し、乾燥させ、図20に示すように、粘着剤からなる粘着剤層50を支持フィルム11上に形成する。つづいて、粘着剤層50上に孔51aを開けた孔開きマスク51を貼合し、粘着剤型転写シート52を得る。
【0096】
図21に示すように、回路チップ保持部材1に支持された回路チップ2の配列面に、前記転写シート52の孔開きマスク51を当接させる。その後、図22に示すように、前記孔51aに対向する回路チップ保持部材1の裏面の前記孔51aに対向する箇所をピン(不図示)などにより転写シート52に向けて押し出す。すると、回路チップ保持部材1上の所望数(図では1個)の回路チップ2が対応する孔51aを通過して粘着剤層50に接着する。その後、図23に示すように、回路チップ保持部材1から転写シート52を剥離すると、所要数(図では1個)の回路チップ2が転写シート52に転着する。
【0097】
次に、図24に示すように、別途作製した回路基板シート20の軽剥離型剥離シート(不図示)を剥がして露出した未硬化層をガラス基板21に貼合し、重剥離型剥離シート(不図示)を剥がして回路基板シート20の未硬化層を露出させる。次に、所要数(図では1個)の回路チップ2が配置された前記転写シート52を、孔開きマスク51を付けたままで、回路チップ2が回路基板シート20の露出した未硬化層へ当接するように重ねる。その後、図25に示すように、転写シート52を回路基板シート20から剥離すると、回路基板シート20に回路チップ2が転写される。
【0098】
前記回路チップ2が所望の位置に配置された回路基板シート20は、前記図9,10,11に示した工程に従って、回路チップ2の埋め込みと、回路基板シート20の硬化を行って回路基板を得る。
【0099】
(粘着剤型転写シートを用いた回路基板の製造方法(2))
図26に示すように、表面の所要箇所(図では1箇所)に凹部60aが形成した剥離シート(エンボス型剥離シート)60を製造する。
【0100】
次に、粘着剤の塗工液を調製し、この塗工液を凹部60aを有するエンボス型剥離シート60上の剥離剤層に塗布し、乾燥させて、粘着剤層61を形成する。続いて、この粘着剤層61に、支持フィルム11を貼合し、粘着剤型転写シート62を得る。
【0101】
前記粘着剤型転写シート62のエンボス型剥離シート60を剥がすと、図27に示すように、粘着剤層61の表面に所要数(図では1個)の凸部61aが現れる。この転写シート62を、回路チップ保持部材1に支持された回路チップ2の配列面に、前記凸部61aが回路チップ2に当接するように、貼合する。その後、図28に示すように、回路チップ保持部材1から転写シート62を剥離すると、所要数(図では1個)の回路チップ2が転写シート62に転着する。
【0102】
図29に示すように、別途製造した回路基板シート20の軽剥離型剥離シート(不図示)を剥がし、露出した未硬化層をガラス基板21に貼合する。続いて、重剥離型剥離シート(不図示)を剥がして未硬化層を露出させる。次に、前記転写シート62を、回路チップ2のみが回路基板シート20の未硬化層へ当接するように貼合する。その後、図30に示すように、転写シート62を回路基板シート20から剥離し、回路基板シート20に回路チップ2を転写する。
【0103】
前記回路チップ2が所望の位置に配置された回路基板シート20は、前記図9,10,11に示した工程に従って、回路チップ2の埋め込みと、回路基板シート20の硬化を行って回路基板を得る。
【0104】
(熱活性型転写シートを用いた回路基板の製造方法)
図31に示すように、支持フィルム70上に熱活性化樹脂を溶融押出もしくは溶液を塗工し、乾燥させ、熱活性化層71を形成することにより、熱活性型転写シート72を得る。
【0105】
次に、図32に示すように、支持フィルム70と熱活性化層71からなる前記転写シート72を、回路チップ保持部材1に支持された回路チップ2の配列面に、熱活性化層71と回路チップ2とが当接するように、貼合する。続いて、図33に示すように、回路チップ2を転写したい箇所(図では1箇所)に、転写シート72の支持フィルム70側から加熱したピン(不図示)などを押し付けて、その局部71aを回路チップが接着可能状態にする。その後、ピンを退却させて加熱した局部71aを常温まで冷却すると、回路チップ2は熱活性化層71に接着する。この冷却後、図34に示すように、回路チップ保持部材1から転写シート72を剥離すると、転写シート72の熱活性化層71に所望数(図では1個)の回路チップ2が転着する。
【0106】
図35に示すように、別途製造した回路基板シート20の軽剥離型剥離シート(不図示)を剥がして露出させた未硬化層を、ガラス基板21に貼合する。続いて、重剥離型剥離シート(不図示)を剥がして未硬化層を露出させる。次に、前記転写シート72を、回路チップ2のみが回路基板シート20の未硬化層へ当接するように、回路基板シート20に重ねた後、転写シート72を回路基板シート20から剥離すると、回路基板シート20に回路チップ2が転写される。
【0107】
前記回路チップ2が所望の位置に配置された回路基板シート20は、前記図9,10,11に示した工程に従って、回路チップ2の埋め込みと、回路基板シート20の硬化を行って回路基板を得る。
【実施例】
【0108】
以下、本発明の転写シートおよび該転写シートを用いた回路基板の製造方法の実施例を示す。なお、以下に示す実施例は、本発明を好適に説明するための例示に過ぎず、なんら本発明を限定するものではない。
【0109】
以下に示す実施例1〜3は、先に図3〜11を参照して説明した光硬化型転写シートを用いた製造方法に準じて行った実施例である。同じく、実施例4は、図12〜17を参照して説明した光硬化型転写シートを用いた製造方法に準じて行った実施例であり、実施例5は、図18および図19を参照して説明した光硬化型転写シートを用いた製造方法に準じて行った実施例である。さらに、実施例6は、図20〜25を参照して説明した粘着剤型転写シートを用いた製造方法に準じて行った実施例であり、実施例7は、図26〜30を参照して説明した粘着剤型転写シートを用いた製造方法に準じて行った実施例である。最後の実施例8および9は、図31〜36を参照して説明した熱活性型転写シートを用いた製造方法に準じて行った実施例である。
【0110】
(実施例1)
(光硬化型転写シートの製造)
アクリル酸ブチル(関東化学社製)70重量部とアクリル酸(関東化学社製)30重量部とを酢酸エチル/メチルエチルケトン混合溶媒(重量比50:50)中で反応させて得たアクリル酸エステル共重合体(固形分濃度35重量%)に、共重合体中のアクリル酸100当量に対し30当量となるように、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアナート(国産化学社製)を添加し、窒素雰囲気下、40℃で48時間反応させて、側鎖に活性エネルギー線硬化性基を有する重量平均分子量が85万の活性エネルギー線硬化性官能基が導入されてなるアクリル系共重合体を得た。
【0111】
得られた活性エネルギー線硬化性官能基が導入されてなるアクリル系共重合体の溶液の固形分100重量部に対して、光重合開始剤である2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、商品名「イルガキュア651」)3.0重量部と、活性エネルギー線重合性の多官能モノマーおよびオリゴマーからなる組成物(大日精化工業社製、商品名「14−29B(NPI)」)100重量部(固形分80重量部)と、ポリイソシアナート化合物からなる架橋剤(東洋インキ製造社製、商品名「オリバインBHS−8515」)1.2重量部(固形分0.45部)とを溶解させ、最後にメチルエチルケトンを加えて、固形分濃度を40重量%に調整し、均一な溶液となるまで撹拌して、塗工液とした。
【0112】
調製した前記塗工液をナイフコーターによって、支持フィルムとして厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱化学ポリエステルフィルム社製、「T−100」)に塗布し、90℃で90秒間加熱乾燥させ、厚さ50μmの活性エネルギー線硬化性樹脂からなる未硬化層を形成した。続いて、この未硬化層に、厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの片面にシリコーン系剥離剤層が設けられた剥離シート(リンテック社製、商品名「SP−PET3801」)を貼合し、活性エネルギー線硬化性樹脂からなる未硬化層を有する転写シートを得た。
【0113】
(回路基板シートの形成)
アクリル酸ブチル(関東化学社製)80重量部とアクリル酸(関東化学社製)20重量部とを酢酸エチル/メチルエチルケトン混合溶媒(重量比50:50)中で反応させて得たアクリル酸エステル共重合体(固形分濃度35重量%)に、共重合体中のアクリル酸100当量に対し30当量となるように、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアナート(国産化学社製)を添加し、窒素雰囲気下、40℃で48時間反応させて、側鎖に活性エネルギー線硬化性基を有する重量平均分子量が85万の活性エネルギー線硬化性共重合体を得た。
【0114】
得られた活性エネルギー線硬化性共重合体溶液の固形分100重量部に対して、光重合開始剤である2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、商品名「イルガキュア651」)3.0重量部と、活性エネルギー線硬化型の多官能モノマーおよびオリゴマーからなる組成物(大日精化工業社製、商品名「14−29B(NPI)」)100重量部(固形分80重量部)と、ポリイソシアナート化合物からなる架橋剤(東洋インキ製造社製、商品名「オリバインBHS−8515」)1.2重量部(固形分0.45部)とを溶解させ、最後にメチルエチルケトンを加えて、固形分濃度を40重量%に調整し、均一な溶液となるまで撹拌して、塗工液とした。
【0115】
調製した前記塗工液を、ナイフコーターによって、厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの片面にシリコーン系剥離剤層が設けられた重剥離型剥離シート(リンテック社製、商品名「SP−PET3811」)の剥離処理面に、塗布し、90℃で90秒間加熱乾燥させ、厚さ50μmの活性エネルギー線硬化性樹脂からなる未硬化層を形成した。
【0116】
同様にして、厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの片面にシリコーン系剥離剤層が設けられてなる軽剥離型剥離シート(リンテック社製、商品名「SP−PET3801」)の剥離処理面に、前記塗工液を塗布し、90℃で90秒間加熱乾燥させ、厚さ50μmの活性エネルギー線硬化性樹脂からなる未硬化層を有するシートを形成した。
【0117】
前記重剥離型剥離シート上の未硬化層に、上記軽剥離型剥離シート上の未硬化層を積層し、軽剥離型剥離シートを剥離した。この積層工程を繰り返して、最終的に重剥離型剥離シートと軽剥離型剥離シートとにより挟まれた活性エネルギー線硬化性樹脂からなる厚さ400μmの未硬化層を有してなる回路基板シートを得た。
【0118】
(回路チップ転写シートへの回路チップの転着)
回路チップ保持部材であるダイシングテープ(リンテック社製、商品名「Adwill D−650」)に多数の回路チップを保持した後、無電極ランプ(フュージョン社製、Hバルブ)を光源とし、照度400mW/cm2、光量200mJ/cm2の条件で、ダイシングテープの基材側から紫外線を照射した。次に、未硬化層を有する前記転写シートの剥離シートを剥がし、前記ダイシングテープ上に保持された多数の回路チップ(回路チップ縦500μm×横500μm×厚さ200μm、回路チップ間隔80μm)からなる回路チップ配列面に貼合した。この状態で、石英ガラス上に紫外線を遮断するためにクロムの薄膜が4箇所(サイズ縦550μm×横550μm、間隔1740μm、遮蔽部分)形成されたマスクを転写シートの支持フィルム側に配置し、前記マスクを介して転写シートに照度400mW/cm2、光量315mJ/cm2の条件で無電極ランプ(フュージョン社製、Hバルブ)を光源とする紫外線を照射すると、非遮蔽部分の転写シートの光硬化層は硬化(非粘着部)し、遮蔽部分は未硬化のままで4箇所の粘着部(サイズ縦550μm×横550μm)が、間隔1740μmで形成された。その後、転写シート上のマスクを取り除き、前記ダイシングテープから転写シートを剥離すると、4箇所の回路チップが転写シートに転着した。
【0119】
(回路基板シートへの回路チップの転写)
前記回路基板シートの軽剥離型剥離シートを剥がして未硬化層の露出面を、5cm×5cmのソーダライムガラス基板に貼合した。続いて、重剥離型剥離シートを剥がして未硬化層を露出させた。次に、回路チップが4箇所に配置された前記転写シートを、回路チップのみが回路基板シートの前記露出した未硬化層へ当接するように貼合し、その後、転写シートを剥離し、回路基板シートに回路チップを配置した。
【0120】
(回路チップの埋め込み、および回路基板シートの硬化)
ソーダライムガラス基板上の回路チップが配置された回路基板シートの上方に、剥離シート(リンテック社製、商品名「SP−PET3801」)を介して、別に用意した5cm×5cmのガラス基板としてのソーダライムガラス板を押し当て、平面プレス機を用いて0.3MPaの圧力で5分間プレスした。常圧に戻して上方の剥離シート、ソーダライムガラス板、下方のソーダライムガラス基板を付けたまま平面プレス機から回路基板シートを取り出した後、照度400mW/cm2、光量315mJ/cm2の条件で無電極ランプ(フュージョン社製、Hバルブ)を光源とする紫外線を下方の回路チップが配置されていない面のガラス基板側から照射して未硬化部を硬化させた。その後、上方の剥離シート、ソーダライムガラス板を取り除くと、下方のソーダライムガラス板上に、所望の配置で回路チップが埋め込まれた回路基板を得た。
【0121】
(実施例2)
実施例1において、回路チップ転写シートへの回路チップの転着の際に、未硬化粘着部を形成するため、サイズが縦860μm×横860μm、間隔1740μmの遮蔽部分を有するマスクを配置した(粘着部のサイズ:縦860μm×横860μm)。その後、実施例1と同様な方法で、回路チップの転写、回路チップの回路基板シートへの埋め込み、および回路基板シートの硬化を行って回路基板を得た。
【0122】
(実施例3)
実施例1において、回路チップ転写シートへの回路チップの転着の際に、未硬化粘着部を形成するため、サイズが縦300μm×横300μm、間隔1740μmの遮蔽部分を有するマスクを配置した(粘着部のサイズ:縦300μm×横300μm)。その後、実施例1と同様な方法で、回路チップの転写、回路チップの回路基板シートへの埋め込み、および回路基板シートの硬化を行って回路基板を得た。
【0123】
(実施例4)
実施例1において、回路チップ転写シートへの回路チップの転着、回路基板シートへの回路チップの転写の各方法を、以下の通りに変更した以外は、実施例1と同様にして、回路チップの転写、回路チップの回路基板シートへの埋め込み、および回路基板シートの硬化を行って回路基板を得た。
【0124】
(転写シートへの回路チップの転着)
実施例1と同様にして製造された未硬化層を有する転写シートの剥離シートを剥がし、ダイシングテープ(前掲)に支持された回路チップ配列面(回路チップ縦500μm×横500μm×厚さ200μm、回路チップ間隔80μm)に貼合した。その後、転写シートを剥離し、回路チップを転写シートに全面転着した。
【0125】
(回路基板シートへの回路チップの転写)
その後、前記転写シートの支持フィルム側に石英ガラス上に4箇所紫外線が透過する部分(サイズ縦520μm×横520μm、間隔1740μm)以外にクロムの薄膜が形成されたマスクを配置し、前記マスクを介して転写シートに、照度400mW/cm2、光量315mJ/cm2の条件で、無電極ランプ(フュージョン社製、Hバルブ)を光源とする紫外線を照射すると、4箇所の透過する部分の転写シートの光硬化層のみ硬化し、非透過部分は未硬化の状態であった。
【0126】
次に、実施例1に用いた回路基板シートと同様の回路基板シートを用意し、この回路基板シートの軽剥離型シートを剥がして露出させた未硬化層を、5cm×5cmのソーダライムガラス基板に貼合した。次に、重剥離型剥離シートを剥離して未硬化層を露出させた。続いて、マスクを取り除いた転写シートを回路基板シートの露出した未硬化層に近接し、転写シートから回路基板シートへ回路チップを転写したい4箇所を、転写シートの裏(支持フィルム側)からピンで突き出し、転写シートの回路チップを回路基板シートへ転写させ、回路基板シートに4個の回路チップを所要位置に配置させた。
【0127】
その後、実施例1と同様にして、回路チップの回路基板シートへの埋め込み、そして回路基板シートの硬化を行って、回路基板を得た。
【0128】
(実施例5)
(活性エネルギー線硬化性樹脂の酸素硬化阻害による粘着部の形成)
実施例1において、以下の通り、光硬化型転写シートに選択的に粘着部を形成するのに、活性エネルギー線硬化性樹脂の酸素硬化阻害現象を利用した以外は、実施例1と同様に実施した。
【0129】
実施例1と同様にして製造された未硬化層を有する転写シートの剥離シートを剥がし、別に厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートの片面にシリコーン系剥離剤層を設けた剥離シート(リンテック社製、商品名「SP−PET3801」)に予め炭酸ガスレーザを照射し、4箇所に粘着部を形成するために、520μm×520μm、間隔1740μmで孔を開けたマスク(孔開きマスク)を転写シートの未硬化層に貼合した。次に、照度400mW/cm2、光量315mJ/cm2の条件で無電極ランプ(フュージョン社製、Hバルブ)を光源とする紫外線を孔開きマスク側から照射すると、孔開き剥離マスクの孔の開いた4箇所は未硬化の状態で粘着部が形成され、それ以外の部分は硬化して非粘着部が形成された。
【0130】
次に、孔開きマスクを剥がし、ダイシングテープ(前掲)上に密に保持された多数の回路チップ(回路チップ:縦500μm×横500μm×厚さ200μm、回路チップ間隔:80μm)からなる回路チップ配列面に貼合した。その後、転写シートをダイシングテープから剥離し、4箇所の回路チップを転写シートに転着した。
【0131】
その後、実施例1と同様にして、回路基板シートへ回路チップを転写し、回路基板シートへ回路チップを埋め込み、そして回路基板シートの硬化を行い、回路基板を得た。
【0132】
(実施例6)
本実施例は、粘着剤型転写シートに粘着剤を用いた場合の例である。
【0133】
(粘着剤型転写シートの製造)
アクリル酸ブチル(関東化学社製)70重量部とアクリル酸(関東化学社製)30重量部とを、酢酸エチル/メチルエチルケトン混合溶媒(重量比50:50)中で反応させて得た、重量平均分子量が85万のアクリル酸エステル共重合体溶液(固形分濃度35重量%)を得た。得られたアクリル酸エステル共重合体溶液の固形分100重量部に対して、ポリイソシアナート化合物からなる架橋剤(東洋インキ製造株式会社製、商品名「オリバインBHS−8515」)1.2重量部とを溶解させ、最後にメチルエチルケトンを加えて固形分濃度を40重量%に調整し、均一な溶液となるまで撹拌して粘着剤塗工液とした。
【0134】
前記粘着剤塗工液をナイフコーターによって、支持フィルムである厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱化学ポリエステルフィルム社製、商品名「T−100」)に塗布し、90℃90秒間加熱乾燥させ、厚さ50μmの粘着剤層を形成した。その後、厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの片面にシリコーン系剥離剤層が設けられた剥離シート(リンテック社製、商品名「SP−PET3801」)を貼合し、転写シートを得た。
【0135】
(転写シートへの回路チップの転着)
転写シートの剥離シートを剥がし、別に用意した実施例5と同様の孔開きマスクを転写シートの粘着剤層に貼合した。続いて、ダイシングテープ(前掲)の回路チップ配列面(回路チップ縦500μm×横500μm×厚さ200μm、回路チップ間隔80μm)に、転写シートの孔開きマスク面を重ね、回路チップを転着したい4箇所の孔に向かってダイシングテープの裏面(回路チップを有する面の反対側)からピンを用いて押し出した。その後、ダイシングテープから転写シートを剥離して、4箇所の回路チップを転写シートに転着した(粘着部のサイズ:縦520μm×横520μm)。
【0136】
(回路基板シートへの回路チップの転写)
前記実施例1で用いた回路基板シートと同様の回路基板シートを用意し、この回路基板シートの軽剥離型剥離シートを剥がして露出させた未硬化層を、5cm×5cmのソーダライムガラス基板に貼合した。続いて、重剥離型剥離シートを剥がして未硬化層を露出させた。次に、回路チップが4箇所に配置された前記転写シートを、回路チップのみが回路基板シートの前記露出した未硬化層へ当接するように貼合した。続いて、回路基板シートから転写シートを剥離し、回路基板シートの所要箇所に回路チップを4個転写(配置)した。
【0137】
その後、実施例1と同様にして、回路チップの回路基板シートへの埋め込み、そして回路基板シートの硬化を行って回路基板を得た。
【0138】
(実施例7)
本実施例は、前記実施例6と同様に、転写シートに粘着剤を用いた場合の製造例である。
【0139】
(エンボス型剥離シートの製造)
米秤量116.3g/m2の上質紙の両面に、溶融押出機を用いて、低密度ポリエチレン(住友化学社製、商品名「スミカセンL705」、LDPE)を30μmの厚みで130℃で押し出して貼合した。次いで、LDPEの表面に白金触媒(信越化学工業社製、商品名「PL−50T」)を含む付加型シリコーン樹脂(信越化学工業社製、商品名「KS−847H」)からなる剥離剤をバーコーターにて塗工し、100℃で120秒間乾燥し、厚さ1μmの剥離剤層を形成して剥離シートを製造した。次に、この剥離シートを4つの微小凸部を所定のパターンで配置したエンボスロールと、対応するペーパーロールとの間を通過させて、4つの凹部を形成し、表面に連続した4つの凹部を有する剥離シート(エンボス型剥離シート)を作製した。
【0140】
(粘着剤型回路チップ転写シートの製造)
実施例6と同一の粘着剤塗工液をナイフコーターによって、前記エンボス型剥離シートの剥離剤層上に塗布し、90℃で90秒間加熱乾燥させ、厚さ50μmの粘着剤からなる粘着剤層を形成した。続いて、この粘着剤層の露出面に、支持フィルムとして厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱化学ポリエステルフィルム社製、商品名「T−100」)を貼合し、表面に4つの凸部を有する粘着剤層を有する転写シートを得た(粘着部サイズ:縦450μm×横450μm、凸部の高さ20μm)。
【0141】
(転写シートへの回路チップの転着)
前記凸部が形成された粘着剤層を有する転写シートのエンボス型剥離シートを剥がして粘着剤層を露出させ、ダイシングテープ(前掲)の回路チップ配列面(回路チップ縦500μm×横500μm×厚さ200μm、回路チップ間隔80μm)に前記転写シートの粘着剤層の凸部(粘着部)の先端が接触するように貼合した。その後、ダイシングテープから転写シートを剥離し、4箇所の回路チップを転写シートに転着した。
【0142】
(回路基板シートへの回路チップの転写)
前記実施例1で用いた回路基板シートと同様の回路基板シートを用意し、この回路基板シートの軽剥離型剥離シートを剥がして未硬化層を露出させ、5cm×5cmのソーダライムガラス基板に貼合した。続いて、重剥離型剥離シートを剥がして、未硬化層を露出させた。次に、回路チップが4箇所に配置された前記転写シートを、回路チップのみが回路基板シートの未硬化層へ当接するように重ねた。続いて、転写シートを剥離し、回路基板シートに4個の回路チップを転写(配置)した。
【0143】
その後、実施例1と同様にして、回路チップの回路基板シートへの埋め込み、そして回路基板シートの硬化を行い、回路基板を得た。
【0144】
(実施例8)
(熱活性型転写シートの製造)
支持フィルムとして厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱化学ポリエステルフィルム社製、商品名「T−100」)を使用した。熱可塑性樹脂としてエチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA;タマポリ社製、商品名「NC−5」)を使用し、ダイを用いて、前記支持フィルム上に120℃で溶融押出し、これによって熱活性化層の厚みが50μmである熱活性型転写シートを得た。
【0145】
(転写シートへの回路チップの転着)
支持フィルムと熱活性化層(EMAA)とからなる前記転写シートを、ダイシングテープ(前掲)の回路チップ配列面(回路チップ縦500μm×横500μm×厚さ200μm、回路チップ間隔80μm)に、熱活性化層と回路チップとが当接するように、重ね合わせた。続いて、転写しようとする4箇所の回路チップが位置する箇所に、支持フィルム側から95℃に加熱したピン(先端面のサイズは縦300μm×横300μm)を用いて、1分間押し当て、前記所要箇所に粘着部(サイズ:縦300μm×横300μm)を形成した。その後、常温まで冷却し、ダイシングテープから転写シートを剥離した。剥離した転写シートには、4箇所の回路チップが転着されていた。
【0146】
(回路基板シートへの回路チップの転写)
実施例1において用いた回路基板シートと同様の回路基板シートを用意し、この回路基板シートの軽剥離型剥離シートを剥がして未硬化層を露出させ、5cm×5cmのソーダライムガラス基板に貼合した。続いて、重剥離型剥離シートを剥がして未硬化層を露出させた。次に、回路チップを4箇所に転着により取得した転写シートを、回路チップのみが前記回路基板シートへ当接するように貼合した。続いて転写シートを剥離し、回路基板シートに回路チップを転写、配置した。その後、実施例1と同様にして回路チップの回路基板への埋め込み、回路基板シートの硬化を行い、回路基板を得た。
【0147】
(実施例9)
実施例8において、加熱ピンとして、先端面のサイズ縦400μm×横400μmの針状ピンを用いた以外は、実施例8と同様な方法で、回路チップの転写、回路チップの回路基板シートへの埋め込み、および回路基板シートの硬化を行って回路基板を得た。なお、粘着部のサイズは、縦400μm×横400μmであった。
【0148】
(参考例1)
実施例1において、転写シートへ回路チップを転着する際に、粘着部を形成するため、サイズ縦1000μm×横1000μm、間隔1740μmの遮蔽部分を有するマスクを配置したこと以外は、実施例1と同様な方法で回路チップの転写、回路チップの回路基板シートへの埋め込み、回路基板シートの硬化を行って回路基板を得た。なお、粘着部のサイズは、縦1000μm×横1000μmであった。
【0149】
(参考例2)
実施例1において、転写シートへ回路チップを転着する際に、粘着部を形成するため、サイズ縦220μm×横220μm、間隔1740μmの遮蔽部分を有するマスクを配置したこと以外は、実施例1と同様な方法で回路チップの転写、回路チップの回路基板シートへの埋め込み、回路基板シートの硬化を行って回路基板を得た。なお、粘着部のサイズは、縦220μm×横220μmであった。
【0150】
(参考例3)
実施例8において、先端面のサイズ縦100μm×横100μmの加熱ピンを用いた以外は、実施例8と同様な方法で、回路チップの転写、回路チップの回路基板シートへの埋め込み、および回路基板シートの硬化を行って回路基板を得た。なお、粘着部のサイズは、縦100μm×横100μmであった。
【0151】
(評価:転写性試験)
前記各実施例および参考例における回路チップの転写の信頼性評価は、最終的に回路チップが回路基板シートに配置されている否かを目視で確認することにより行った。転写試験は10回実施し(n=10)、1回の試験につき4つの回路チップ全てを配置できた場合のみ選択的に配置できた(可)とした。そして、所要数の4箇所以外に回路チップが余分に転写された(5箇所以上の回路チップが配置された)場合は、又は、所要数の4箇所の回路チップが転写されず(配置された回路チップが3つ以下)の場合は、選択的な配置ができなかったもの(否)とした。その結果を、表1および表2に示した。
【0152】
【表1】

【0153】
【表2】

【0154】
表1、表2から明らかなように、本発明の転写シートを用いて、粘着部を選択的に形成し、形成する粘着部の表面サイズを適切な範囲に設定するとともに、粘着部の粘着力により、回路チップ保持部材から所望の個数およびパターン通りに回路チップを回路基板シートに転写することができ、目的の回路基板を効率的に得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0155】
以上説明したように、本発明にかかる回路チップ転写シートによれば、ディスプレイ用の各画素を制御するための回路チップが埋め込まれたディスプレイ用回路基板を製造するために、回路チップを回路基板シートに配置する際に、簡便かつ効率的に配置することができる。また、本発明の回路チップ転写シートは、別途に形成する回路チップにニッケル被膜形成などの特別な処理を施さず、使用材料の粘着力を利用して転写する技術を用いている。従って、本発明の転写シートを用いることにより、ニッケル被膜除去に必要となるエッチング液などの処理薬剤が不要となり、安全、かつ高収率に大型ディスプレイ用回路基板を作製することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0156】
【図1】回路チップが配列された回路チップ保持部材(ダイシングテープ)の平面図である。
【図2】図1の要部拡大図である。
【図3】光硬化型転写シートの側面断面図である。
【図4】転写シートと回路チップ保持部材(ダイシングテープ)を貼り合わせた状態の側面断面図である。
【図5】転写シートにマスクを介して活性エネルギー線を照射して粘着部を選択的に形成している状態を示す側面断面図である。
【図6】回路チップ保持部材(ダイシングテープ)から転写シートを剥離した状態を示す側面断面図である。
【図7】回路チップを転写した転写シートを回路基板シートに貼り付けた状態を示す側面断面図である。
【図8】回路基板シートから転写シートを剥離して回路チップを回路基板シートに転写した状態を示す側面断面図である。
【図9】回路基板シート表面に転写された回路チップを平面プレス機により回路基板シート内に埋め込んだ状態を示す側面断面図である。
【図10】回路チップを埋め込んだ回路基板シートに活性エネルギー線を照射して硬化させている状態を示す側面断面図である。
【図11】回路チップの埋め込みと回路基板シートの硬化とが完了した状態の回路基板シート(回路基板)の側面断面図である。
【図12】光硬化型転写シートの側面断面図である。
【図13】転写シートと回路チップ保持部材(ダイシングテープ)を貼り合わせた状態の側面断面図である。
【図14】回路チップ保持部材(ダイシングテープ)から転写シートを剥離して回路チップを転写シートに全面転着した状態を示す側面断面図である。
【図15】回路チップを全面転着した転写シートにマスクを介して活性エネルギー線(紫外線)を照射して非粘着部(硬化部)を選択的に形成している状態を示す側面断面図である。
【図16】回路チップを転着した転写シートの非粘着部(硬化部)を背面から押し出して回路チップを回路基板シートに当接した状態を示す側面断面図である。
【図17】回路基板シートから転写シートを剥離して回路チップを回路基板シートに転写した状態を示す側面断面図である。
【図18】光硬化型転写シートに開口部を有する孔開きマスクを貼合させて酸素含有雰囲気中で活性エネルギー線を照射して粘着部、非粘着部を形成した状態を示す側断面図である。
【図19】転写シートと回路チップ保持部材(ダイシングテープ)を貼り合わせた状態を示す側断面図である。
【図20】粘着剤型転写シートの粘着剤層に開口部を有する孔開きマスクを貼り付けた状態を示す側断面図である。
【図21】転写シートと回路チップ保持部材(ダイシングテープ)を貼り合わせた状態の側面断面図である。
【図22】回路チップ保持部材(ダイシングテープ)の背面から回路チップを押し出して転写シート上の孔開きマスクの開口を介して回路チップを転写シートに当接させた状態を示す側面断面図である。
【図23】回路チップ保持部材(ダイシングテープ)を転写シートから剥離して回路チップを転写シートに転着した状態を示す側面断面図である。
【図24】回路チップを転着した転写シートを回路基板シートに貼り合わせた状態を示す側面断面図である。
【図25】回路基板シートから転写シートを剥離して回路チップを回路基板シートに転写した状態を示す側面断面図である。
【図26】凸部を有する粘着剤型転写シートの側面断面図である。
【図27】凸部を有する転写シートと回路チップ保持部材(ダイシングテープ)を貼り合わせた状態の側面断面図である。
【図28】回路チップ保持部材(ダイシングテープ)を転写シートから剥離して回路チップを転写シートに転着した状態を示す側面断面図である。
【図29】回路チップを転着した転写シートを回路基板シートに貼り合わせた状態を示す側面断面図である。
【図30】回路基板シートから転写シートを剥離して回路チップを回路基板シートに転写した状態を示す側面断面図である。
【図31】熱活性型転写シートの側面断面図である。
【図32】熱活性型転写シートと回路チップ保持部材(ダイシングテープ)を貼り合わせた状態の側面断面図である。
【図33】熱活性型転写シートの背面から局部を加熱した状態を示す側面断面図である。
【図34】回路チップ保持部材(ダイシングテープ)を熱活性型転写シートから剥離して回路チップを転写シートに転着した状態を示す側断面図である。
【図35】回路基板シートから熱活性型転写シートを剥離して回路チップを回路基板シートに転写した状態を示す側面断面図である。
【符号の説明】
【0157】
1 回路チップ保持部材(ダイシングテープ)
2 回路チップ
3 リングフレーム
10 未硬化層
10a 未硬化部(粘着部)
10b 硬化部(非粘着部)
11 支持フィルム
12 剥離シート
13 回路チップ転写シート(転写シート)
14 マスク
20 回路基板シート
21 ガラス基板
22 平面プレス機
23 剥離シート
24 ガラス基板
25 硬化後の回路基板シート(回路基板)
30 マスク
40 孔開きマスク
40a 孔
50 粘着剤層
51 孔開きマスク
51a 孔
52 回路チップ転写シート(転写シート)
60 剥離シート(エンボス型剥離シート)
60a 凹部
61 粘着剤層
61a 凸部
62 回路チップ転写シート(転写シート)
70 支持フィルム
71 熱活性化層
71a 局部(加熱溶融部、粘着部)
72 回路チップ転写シート(転写シート)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路チップを保持している回路チップ保持部材から、所要数の回路チップを転着により取得し、該所要数の回路チップを、回路基板上の回路チップ取り付け位置に転写させる回路チップ転写シートであって、
その表面を選択的に粘着部と非粘着部とに設定可能な材料から構成されていることを特徴とする回路チップ転写シート。
【請求項2】
前記材料が活性エネルギー線硬化性樹脂であり、活性エネルギー線を選択的に照射することにより前記粘着部が選択的に設定されることを特徴とする請求項1に記載の回路チップ転写シート。
【請求項3】
前記材料が粘着剤であり、その表面を選択的に露出もしくは突出させることによりその表面に前記粘着部が設定されることを特徴とする請求項1に記載の回路チップ転写シート。
【請求項4】
前記材料が熱活性化樹脂であり、選択的に局部を加熱することにより前記粘着部が設定されることを特徴とする請求項1に記載の回路チップ転写シート。
【請求項5】
前記回路チップ保持部材が粘着テープであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の回路チップ転写シート。
【請求項6】
回路チップを保持している回路チップ保持部材から、所要数の回路チップを、前記請求項1〜4のいずれか1項に記載の回路チップ転写シートに転着し、
前記回路チップを前記回路チップ転写シートから、回路基板シート上の回路チップ取り付け位置に転写させることを特徴とする回路基板の製造方法。
【請求項7】
前記粘着部が矩形であり、縦横方向それぞれ(回路チップ幅の1/2)超で、(回路チップ幅+前記回路チップ保持部材における隣接回路チップ間隔×2+回路チップ幅の1/2)以下のサイズに設定することを特徴とする請求項6に記載の回路基板の製造方法。
【請求項8】
前記回路チップ保持部材が粘着テープであることを特徴とする請求項6または7に記載の回路基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【公開番号】特開2008−176072(P2008−176072A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−9595(P2007−9595)
【出願日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【出願人】(304024430)国立大学法人北陸先端科学技術大学院大学 (169)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】