説明

回路付ラベル

【課題】共振回路やIC回路を持つラベルにおいて、被着体から同ラベルを剥がした際に回路を容易に破壊することができることから、開封を容易に検知したり、不正な貼り替えによる改ざんや悪用を防止したり、商品購入後に精算済みを表すペイドシール(電磁波シールドラベル)を上貼りする必要がない回路付ラベルを提供する。
【解決手段】基材層A、脆性な易破壊層B、電気回路C、および感圧接着剤層Dを含み、この順に積層してなる回路付ラベルであって、基材層Aと易破壊層Bと感圧接着剤層Dのそれぞれの層において易破壊層Bの凝集力が最も小さく、且つ回路付ラベルを被着体から剥がした際に易破壊層Bが部分的に被着体側に残ることで電気回路Cが部分的に破壊されて機能しなくなり、不正な開封や貼り替えを検知することや、会計時の手間を削減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線でデータの送受信を行う回路を内部に有する回路付ラベルに関し、特に同ラベルを被着体から剥がした際に回路を容易に破壊できる回路付ラベルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、無線信号を用いて直接接触せずに識別データ等の情報の送受信が可能なRFID技術を用いたラベルが多数提案されている。例えば、特許文献1には熱可塑性樹脂フィルムを基材としてこれに回路層を設け、これに粘着剤層を積層したICラベルが提案されている。
こうしたICラベルは、セキュリティーの保持を念頭に置き、それぞれの材料が強度を有した壊れ難いものから構成されており、貼付後にラベルを剥がすことは想定していない。反面、例えば、引用文献2〜4のように、破壊しやすい基材上に電子回路(特にアンテナ部)を形成することで、これを用いたラベルを使用した後に剥がそうとするとアンテナ部が切断、破断することから、不正な開封や剥離を検地できるとするラベルも提案されている。
【0003】
しかしながら、引用文献2の封印シールは、用いるフィルム基材や接着剤の選定によっては所望通りに電気回路の切断を行えない場合があり、確実に電気回路の切断を行うためにはフィルム基材および電気回路に切り込みを設けなければならない。
同様に引用文献3のデータキャリア、および引用文献4の脆弱ラベルもまた、回路の破断を実施するためにそれぞれラベルの基材の面方向、または厚み方向にミシン目、切り込み、隙間等を設けることを要件としている。
しかしこうした追加の加工は、用いる刃の切れ味の低下等の問題に伴って確実に回路の破断を実施することが困難になる傾向があり、またその際に電気回路まで変形を受けて元より使用不能となることから、歩留まりが低下しやすいといった問題点があった。また精密なミシン目や切り込みの形成のために、回路付きラベルの製造において工程数は確実に多くなることから、総じてその単価が高くなるといった問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−269526号公報
【特許文献2】特開平11−007245号公報
【特許文献3】特開2006−039643号公報
【特許文献4】特開2009−217175号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、成形が容易な簡素な構成からなり、ラベルにミシン目や切り込み等の追加の加工を必要とせず、且つ被着体から同ラベルを剥がした際に回路を確実に破壊することができる回路付ラベルを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の手段により課題を解決するものである。
即ち本発明は、基材層(A)、脆性な易破壊層(B)、電気回路(C)、および感圧接着剤層(D)を含み、この順に積層してなる回路付ラベルであって、基材層(A)と易破壊層(B)と感圧接着剤層(D)のそれぞれの層において易破壊層(B)の凝集力が最も
小さく、且つ感圧接着剤層(D)を、電気回路(C)上に部分的に設けることを特徴とする回路付ラベルに関するものである。
また本発明の別様態では、基材層(A)、脆性な易破壊層(B)、電気回路(C)、
感圧接着剤層(D)、および糊殺し(E)を含み、この順に積層してなる回路付ラベルであって、基材層(A)と易破壊層(B)と感圧接着剤層(D)のそれぞれの層の凝集力が、(A)>(D)>(B)の関係にあり、且つ糊殺し(E)を、感圧接着剤層(D)上に部分的に設けること特徴とする回路付ラベルに関するものである。
【0007】
より詳細には、本発明は、脆性な易破壊層(B)が、熱可塑性樹脂、ならびに無機微細粉末および有機フィラーの少なくとも一方を20〜75重量%含み、少なくとも一軸方向に延伸された多孔質の樹脂フィルム層であり、その凝集力が5〜150g/cm幅であることが好ましく、
基材層(A)が、熱可塑性樹脂、ならびに無機微細粉末および有機フィラーの少なくとも一方を3〜50重量%含み、易破壊層(B)の無機微細粉末および有機フィラーの少なくとも一方の含有量よりも8重量%以上少ない樹脂フィルム層であり、その凝集力が50〜15000g/cm幅であることが好ましく、
感圧接着剤層(D)が、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤よりなる群より選ばれた少なくとも一つの粘着剤を含み、その凝集力が20〜1000g/cm幅であることが好ましい。
【0008】
電気回路(C)は、易破壊層(B)表面に、導電インキ、導電塗料、または導電ペーストを印刷、或いは金属箔を転写、或いは金属をエッチングまたはメッキすることにより形成されることが好ましい。
脆性な易破壊層(B)に用いる熱可塑性樹脂は、ポリオレフィン系樹脂を含むことが好ましい。
回路付ラベルの基材層(A)側表面には、印刷(F)を設けても良く、
易破壊層(B)上に電気回路(C)を形成する前に易破壊層(B)上に裏印刷(G)を設けて、基材層(A)、脆性な易破壊層(B)、裏印刷(G)、電気回路(C)、および感圧接着剤層(D)を含み、この順に積層してなる回路付ラベルであって、同裏印刷(G)は回路付ラベルを剥離した後に視認可能としても良く、
回路付ラベルの感圧接着剤層(D)側表面に、剥離紙(H)を設けても良い。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、回路付ラベルを被着体から剥がした際に、ラベルの被着体に接着している部分は易破壊層(B)の層内破壊により剥離が進行するが、ラベルの被着体に接着していない部分は易破壊層(B)が層内破壊することなく剥離が進行することから、ラベルの被着体に接着している部分は易破壊層(B)が被着体側に残り、その他の部分は剥離した基材層(A)側に残ることで、両者間に位置する電気回路(C)が部分的に破壊されて機能しなくなり、不正な開封や貼り替えを検知することや、会計時の手間を削減することができる。これに裏印刷(G)を設けた場合は、不正な開封や貼り替えを更に視認により確認することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の回路付ラベルの一様態の断面図である
【図2】本発明の回路付ラベルの別の様態の断面図である。
【図3】印刷(F)および剥離紙(H)を有する本発明の回路付ラベルの一様態の断面図である
【図4】印刷(F)、裏印刷(G)および剥離紙(H)を有する本発明の回路付ラベルの別の様態の断面図である。
【図5】本発明の回路付ラベルを被着体より剥離した際に、電気回路(C)が破断することを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[回路付ラベル]
本発明の回路付ラベルは、基材層(A)、脆性な易破壊層(B)、電気回路(C)、および感圧接着剤層(D)を含み、この順に積層してなるものである。
【0012】
[基材層(A)]
基材層(A)は回路付ラベルにおいてそれ自体の強度が高く、(A)層を持って引き剥がしたときに、それ自体は破壊しないものである。
また基材層(A)は、回路付ラベルを被着体に貼付している際に最外層となるものであり、その表面に更に印刷等を施し、目視で情報を提供するラベルとしての機能を有するものである。またその強度の高さから、回路付ラベルを成形する際に強度を担保する支持体としての機能をも有するものである。
基材層(A)は、強度、耐水性、耐久性を有する紙材、樹脂フィルム等を採用しうるが、電気回路(C)の保護等の観点から熱可塑性樹脂からなる層であることが好ましい。
【0013】
熱可塑性樹脂としては、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン等のエチレン系樹脂、あるいはプロピレン系樹脂、ポリメチル−1−ペンテン、エチレン−環状オレフィン共重合体等のポリオレフィン系樹脂、ナイロン−6、ナイロン−6,6、ナイロン−6,10、ナイロン−6,12等のポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンサクシネート、ポリ乳酸、およびこれらのモノマーに共重合可能な他のモノマーと共重合した脂肪族ポリエステル等の熱可塑性ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート、アタクティックポリスチレン、シンジオタクティックポリスチレン、ポリフェニレンスルフィド等の熱可塑性樹脂が挙げられる。これらは2種以上混合して用いることもできる。これらの中でも、ポリオレフィン系樹脂を用いることが好ましい。更にポリオレフィン系樹脂の中でも、コスト面、耐水性、耐薬品性の面からプロピレン系樹脂、高密度ポリエチレンがより好ましい。
【0014】
かかるプロピレン系樹脂としては、プロピレン単独重合体でありアイソタクティックないしはシンジオタクティックおよび種々の程度の立体規則性を示すポリプロピレン、プロピレンを主成分とし、これと、エチレン、ブテン−1、ヘキセン−1、ヘプテン−1,4−メチルペンテン−1等のα−オレフィンとの共重合体が使用される。この共重合体は、2元系でも3元系でも4元系でもよく、またランダム共重合体でもブロック共重合体であってもよい。
【0015】
この熱可塑性樹脂から得られる基材層(A)は、一軸延伸あるいは二軸延伸されていても良い。基材層(A)の肉厚は通常10〜500μm、好ましくは20〜300μmの範囲である。10μm未満では基材層(A)の破断強度が低く、基材層(A)を持って易破壊層(B)から引き剥がした時に、途中で破断してしまい本発明の所期の性能を発揮しづらい。又、500μmを越えてしまうと該層の腰が高くなり、剥がし易さや印刷適性が低下する。
【0016】
基材層(A)は無機微細粉末または有機フィラーの少なくとも一方を含有していても、含有していなくても良い。含有させる場合には回路付ラベルの隠蔽性を向上させることができ、内部の電気回路(C)を目視で確認しづらくでき、また回路付ラベル表面に印刷等を施した場合にその視認性が向上して例えばバーコードの読取率が向上する。
無機微細粉末としては、粒径が通常0.01〜15μm、好ましくは0.01〜8μm
、更に好ましくは0.03〜4μmのものを使用する。具体的には、炭酸カルシウム、焼成クレイ、シリカ、けいそう土、タルク、酸化チタン、硫酸バリウム、アルミナなどの微細粉末を使用することができる。
【0017】
有機フィラーとしては、主成分である熱可塑性樹脂とは異なる種類の樹脂を選択することが好ましい。例えば、熱可塑性樹脂がポリオレフィン系樹脂である場合には、有機フィラーとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ナイロン−6,ナイロン−6,6、環状オレフィンの単独重合体や環状オレフィンとエチレンとの共重合体等で融点が120℃〜300℃、ないしはガラス転移温度が120℃〜280℃を有するものを挙げることができる。
【0018】
基材層(A)が無機微細粉末および有機フィラーの少なくとも一方を含有する場合、基材層(A)は無機微細粉末および有機フィラーの少なくとも一方3〜50重量%を含むことが好ましく、5〜40重量%を含むことがより好ましい。
また基材層(A)における無機微細粉末および有機フィラーの含有量は、後述する易破壊層(B)の無機微細粉末および有機フィラーの含有量よりも8重量%以上少ないことが好ましく、10重量%以上少ないことがより好ましい。
上記範囲内であれば基材層(A)に隠蔽性を付与しつつ、基材層(A)の強度を後述する易破壊層(B)や感圧接着剤層(D)と比べて高く保持し得る。
その結果、基材層(A)はその凝集力は50〜15000g/cm幅であることが好ましく、100〜12000g/cm幅であることがより好ましい。
【0019】
基材層(A)は、2層構造、3層以上の多層構造のものであってもよく、この多層構造の延伸軸数が1軸/1軸、1軸/2軸、2軸/1軸、1軸/1軸/2軸、1軸/2軸/1軸、2軸/1軸/1軸、1軸/2軸/2軸、2軸/2軸/1軸、2軸/2軸/2軸であっても良い。基材層(A)の多層化により筆記性、印刷性、熱転写適性、耐擦過性、2次加工適性等の様々な機能の付加が可能となる。
ただし易破壊層(B)と接する側の層を層(A1)としたとき、少なくとも同層(A1)の無機微細粉末および有機フィラーの含有量は、上記同様に易破壊層(B)よりも8重量%以上少ないことが好ましく、10重量%以上少ないことがより好ましい。
【0020】
[脆性な易破壊層(B)]
易破壊層(B)は本発明の回路付ラベルを構成する層の中でそれ自体の凝集力が最も弱く、(A)層を持って引き剥がしたときに、容易にそれ自体が凝集破壊する層である。従ってラベルを剥離する際に、(B)層の凝集破壊が同層内部で起こり、引き剥がした(A)層側と感圧接着剤層(D)側にそれぞれ(B)層の分離したものが追随する。
易破壊層(B)の形成手法には様々な手法があるが、易破壊層(B)に熱可塑性樹脂ならびに無機微細粉末および有機フィラーの少なくとも一方を含有させることにより、同層(B)の凝集力を低下させてより安定した剥離性を得ることが可能であり、本発明ではこの手法に従う。
【0021】
易破壊層(B)に含有可能な熱可塑性樹脂としては、前記基材層(A)の項で挙げた熱可塑性樹脂が挙げられ、延伸成形が容易であるポリオレフィン系樹脂であることが好ましい。また易破壊層(B)における無機微細粉末および有機フィラーには、基材層(A)で挙げた無機微細粉末および有機フィラーを使用することができる。基材層(A)と易破壊層(B)の無機微細粉末および有機フィラーは同種のものであっても、異種のものであってもよい。
【0022】
易破壊層(B)における無機微細粉末および有機フィラーの少なくとも一方の含有量は、20〜75重量%であることが好ましく、25〜70重量%であることがより好ましい
。易破壊層(B)の無機微細粉末および有機フィラーの少なくとも一方の含有量が20重量%未満では十分な剥離性が得られず、75重量%を越えては同層の成形安定性が損なわれる。
【0023】
また易破壊層(B)は、一軸延伸あるいは二軸延伸されていることが好ましい。無機微細粉末または有機フィラーの少なくとも一方を含有して延伸成形された易破壊層(B)の内部には、無機微細粉末または有機フィラーを核とした多数の空孔が形成され、脆性な易破壊層(B)を得ることができる。また延伸成形により均一な厚みを有する易破壊層(B)を得る事が可能となる。
その結果、易破壊層(B)は、その凝集力が5〜150g/cm幅であることが好ましく、10〜140g/cm幅であることがより好ましい。
【0024】
易破壊層(B)の肉厚は、通常0.1〜10μm、好ましくは0.2〜5μmの範囲である。0.1μm未満では均一な膜圧の易破壊層(B)を形成することが困難となり、その弱い凝集力を発揮できずに安定な剥離性が得にくい傾向となる。逆に10μmを越えては剥離性に問題はないが、同層厚み方向の略同位置に剥離応力を集中させづらくなり、剥離力に振れが生じやすくなる。
【0025】
[電気回路(C)]
電気回路(C)は、本発明の回路付ラベルにおいて、無線でデータの送受信を行うアンテナを含むものである。電気回路(C)は易破壊層(B)表面に直接設けられるものであり、易破壊層(B)の凝集破壊に従ってともに破壊(断線)することから、回路付ラベルを構成するものの中で最も強度の弱いものである。
【0026】
電気回路(C)は、基材層(A)および脆性な易破壊層(B)よりなる積層フィルムの易破壊層(B)側表面に、カーボンや、銀等の金属を含む導電インキ、導電塗料、または導電ペーストをシルクスクリーン印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、インクジェット印刷等で印刷し、乾燥して設けても良く、或いは銀、銅やアルミ等の導電性の金属で形成された金属箔を転写して設けても良く、或いは銅やアルミ等の金属をエッチングまたはメッキすることにより設けても良い。
【0027】
[感圧接着剤層(D)]
感圧接着剤層(D)は回路付ラベルにおいて、易破壊層(B)よりもその凝集力が強いことを特徴とする。従って回路付ラベルを被着体に貼付した後に、被着体より(A)層を引き剥がそうとしたとき、感圧接着剤層(D)内で凝集破壊することなく(B)層を効果的に破壊することができる。
特に本発明における感圧接着剤層(D)は、電気回路(C)を介して易破壊層(B)上に設けられるものであるが、易破壊層(B)の全面には設けずに電気回路(C)上に部分的に掛かるように設けるか、あるいは易破壊層(B)全面に設けた後に更に糊殺し(E)を感圧接着剤層(D)上に部分的に(電気回路(C)上に部分的に掛かるように)設けることを特徴とする。
【0028】
本発明の回路付ラベルは、感圧接着剤層(D)の塗工パターンあるいは糊殺し(E)の塗工パターンに従って被着体に接着している部分と接着していない部分を有していることから、回路付ラベルを被着体に貼着し、しかる後に回路付ラベルを被着体から剥がした際に、ラベルの被着体に接着している部分は易破壊層(B)の層内破壊により剥離が進行するが、ラベルの被着体に接着していない部分は易破壊層(B)が層内破壊することなく剥離が進行することから、被着体に接着した部分は易破壊層(B)および感圧接着剤層(D)が部分的に被着体側に残り、その他の部分は剥離した基材層(A)側に残ることで、両者間に位置する電気回路(C)が部分的に破壊されて機能しなくなる。
【0029】
かかる感圧接着剤としては、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤が挙げられる。ゴム系粘着剤の具体例には、天然ゴム、ポリイソブチレンゴム、ブチルゴム、スチレンブタジエンゴム、スチレンイソプレンブロック共重合体、スチレンブタジエンブロック共重合体とこれらの混合物、或いは、これらゴム系粘着剤にアビエチン酸ロジンエステル、テルペン・フェノール共重合体、テルペン・インデン共重合体などの粘着付与剤を配合したものが挙げられる。アクリル系粘着剤の具体例としては、2−エチルヘキシルアクリレート・アクリル酸n−ブチル共重合体、2−エチルヘキシルアクリレート・アクリル酸エチル・メタクリル酸メチル共重合体などのガラス転移点が−20℃以下のものが挙げられる。シリコーン系粘着剤の具体例としては、シリコーンゴムとシリコーンレジンとの混合物が挙げられる。
【0030】
これら感圧接着剤の形態としては、溶剤型、エマルジョン型、ホットメルト型等が使用され、一般的には溶剤型、エマルジョン型のものを塗工することにより積層する。かかる塗工は、キスコート塗工、スクリーン塗工、バーコート塗工、コンマコート塗工、ナイフコート塗工、ロールコート塗工、カーテンコート塗工、グラビアコート塗工、リバースコート塗工、リバースグラビアコート塗工等により行われ、必要によりスムージングを行い、乾燥工程を経て、感圧接着剤層(D)が形成される。
感圧接着剤に凹凸を有するパターンを形成して感圧接着剤層(D)を形成する場合には、グラビアコート塗工やスクリーン塗工等の手法を用いても良く、予めエンボスを付与した剥離紙に塗工または積層して、エンボスパターンを感圧接着剤層(D)に転写する手法を用いても良い。後者はその後剥離紙を剥がして感圧接着剤層(D)の凹凸面を積層フィルムの易破壊層(B)面に接するように積層すれば感圧接着剤層(D)が電気回路(C)上に部分的に設けた回路付ラベルを得ることができる。
【0031】
感圧接着剤の凝集力が層(B)のそれよりも小さい場合は、剥離(凝集破壊)は感圧接着剤層(D)内で進行し、所期の目的は達成できない。さらに糊殺し(E)を用いる様態では、剥離は感圧接着剤層(D)の破壊も伴うことから、感圧接着剤の凝集力が層(A)よりも大きいと回路付ラベルの剥離が困難となる傾向がある。
感圧接着剤は、所期の目的を達成するためにその凝集力が20〜1000g/cm幅であることが好ましく、25〜500g/cm幅であることがより好ましい。感圧接着剤の凝集力が20g/cm幅未満では、強度が不十分で易破壊層(B)を充分に破壊できずに所期の目的を達成しづらい傾向がある。逆に感圧接着剤の凝集力が1000g/cm幅を超えては、特に糊殺し(E)を設ける様態において感圧接着剤層(D)をパターン状に剥離することが困難となり、所期の目的を達成しづらい傾向がある。
【0032】
感圧接着剤層(D)は、基材層(A)および脆性な易破壊層(B)よりなる積層フィルムの易破壊層(B)側表面上に電気回路(C)を設けた後に、電気回路(C)を覆うように、易破壊層(B)側表面上に直接に上記感圧接着剤を塗工して形成してもよく、後述する離型紙(H)へ上記感圧接着剤を塗工し、必要により乾燥を行い、感圧接着剤層(D)を形成してこれを易破壊層(B)側表面上に積層して形成してもよい。回路付ラベルの熱履歴を小さくする目的からは、後者の方法のほうが好ましい。
感圧接着剤の塗工量は特に限定されないが、通常は固形分量で3〜60g/m2、好ましくは10〜40g/m2 の範囲である。
【0033】
感圧接着剤層(D)と易破壊層(B)との接着力が小さい場合は、上記感圧接着剤を設ける前に易破壊層(B)側裏面にアンカーコート剤を塗布しておくことが好ましい。該アンカーコート剤としては、ポリウレタン、ポリイソシアネート・ポリエーテルポリオール、ポリイソシアネート・ポリエステルポリオール・ポリエチレンイミン、アルキルチタネートなどが使用でき、これらは一般に、メタノール、酢酸エチル、トルエン、ヘキサンな
どの有機溶剤、または水に溶解して使用される。アンカーコート剤の塗布量は、塗布・乾燥後の固形分量で0.01〜5g/m2 、好ましくは0.02〜2g/m2 の範囲である。こうしたアンカーコート処理を施すことは、電気回路(C)と易破壊層(B)との接着力を高めるうえでも有用である。
【0034】
[糊殺し(E)]
糊殺し(E)は回路付ラベルの一様態において、感圧接着剤層(D)上に部分的に設けて、感圧接着剤が該部分において被着体に接着しないようにするものである。
被着体に回路付ラベルを貼着し、しかる後にラベルを剥がす際に、糊殺し(E)の無い部分は被着体に接着しているので易破壊層(B)の破壊が生じ、被着体上に感圧接着剤層(D)ごと残留するが、感圧接着剤層(D)上に糊殺し(E)を設けた部分は被着体に接着していないため、(A)〜(D)層全て併せて剥離する。そのため、糊殺し(E)有無の境界においてこれに掛かる電気回路(C)を破断することが可能となる。
かかる糊殺しとしては、非粘着性の印刷インキやニス、シリコーン剤等が挙げられ、印刷等の手法を用いてこれらを感圧接着剤層(D)上に部分的に、例えば電気回路(C)の一部に掛かるように、好適にはパターンで、設けることにより、糊殺し(E)を形成することができる。
【0035】
[回路付ラベルの形成]
本発明の回路付ラベルは、基材層(A)、脆性な易破壊層(B)を積層した積層フィルムを形成し、次いでこれに印刷等の手法により電気回路(C)を形成し、更にこれに感圧接着剤層(D)を積層することで、形成することができる。印刷等の手法により電気回路(C)を形成する際に、同時に印刷(F)及び裏印刷(G)を形成することが好ましい。
【0036】
[積層フィルムの成形]
基材層(A)および易破壊層(B)をシート状に形成する成形方法は特に限定されず、公知の種々の方法が使用できるが、具体例としては、スクリュー型押出機に接続された単層または多層のTダイやIダイを使用して溶融樹脂をシート状に押し出すキャスト成形、円形ダイを使用し溶融樹脂をチューブ状に押し出し内部の空気圧力で膨張させるインフレ−ション成形、混練された材料を複数の熱ロールで圧延しシート状に加工するカレンダー成形、圧延成形などが挙げられる。
基材層(A)および易破壊層(B)を積層する方法についても公知の種々の方法が使用できるが、具体例としては、フィードブロック、マルチマニホールドを使用した多層ダイス内で積層して共押出する方式と、複数のダイスを使用する押出しラミネーション方式等がある。又、基材層(A)が多層構造である場合などは多層ダイスと押出しラミネーションを組み合わせて使用することも可能である。
【0037】
[延伸]
基材層(A)および易破壊層(B)は積層して積層フィルムとした後に、これを少なくとも1軸方向に延伸して各層を延伸することが好ましい。本発明の脆性な易破壊層(B)は脆弱で強度が低く、通常肉厚も薄い為、易破壊層(B)単層での延伸成形は極めて困難である。基材層(A)は支持体として易破壊層(B)を積層した後にこれを延伸することにより、易破壊層(B)の延伸が可能となる。
【0038】
本発明の易破壊層(B)は、延伸を行うことにより内部への空孔形成や薄厚化が容易となる。延伸方法としては、キャスト成形フィルムを延伸する場合は、ロール群の周速差を利用した縦延伸、テンターオーブンを使用した横延伸、圧延、テンターオーブンとリニアモーターの組み合わせによる同時二軸延伸などを挙げることができる。又、インフレーションフィルムの延伸方法としては、チューブラー法による同時二軸延伸を挙げることができる。延伸倍率は特に限定されず、用いる熱可塑性樹脂の特性等を考慮して適宜決定する
。例えば、熱可塑性樹脂としてプロピレン単独重合体ないしはその共重合体を使用する時には一方向に延伸する場合は約1.2〜12倍、好ましくは2〜10倍であり、二軸延伸の場合には面積倍率で1.5〜60倍、好ましくは4〜50倍である。その他の熱可塑性樹脂を使用する時には一方向に延伸する場合は1.2〜10倍、好ましくは2〜5倍であり、二軸延伸の場合には面積倍率で1.5〜20倍、好ましくは4〜12倍である。
【0039】
延伸の温度は、用いる熱可塑性樹脂のガラス転移点温度以上から結晶部の融点以下の熱可塑性樹脂に好適な公知の温度範囲内で行うことができる。具体的には、熱可塑性樹脂がプロピレン単独重合体(融点155〜167℃)の場合は100〜164℃、高密度ポリエチレン(融点121〜134℃)の場合は70〜133℃であり融点より1〜70℃低い温度である。また、ポリエチレンテレフタレート(融点246〜252℃)は結晶化が急激に進まない温度を選択する。また、延伸速度は20〜350m/分にするのが好ましい。
【0040】
[印刷(F)、裏印刷(G)]
本発明の回路付ラベルの基材層(A)側の表面には、目視で情報を提供する目的から、必要によりロゴマーク、商品名、会社名、使用期限、注意書き、キャラクター等の意匠、バーコード、パターン等を印刷して印刷(F)を設けることも可能である。
こうした印刷は、易剥離性積層フィルム単体の状態で行ってもよいし、離型紙を貼着した感圧粘着ラベル構造とした後、印刷を施してもよい。
印刷としては、オフセット印刷、凸版印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、レタープレス印刷、インクジェット記録方式、感熱記録方式、熱転写記録方式、電子写真記録方式などの公知の手法を用いることが可能である。
【0041】
本発明の回路付ラベルは、積層フィルムの易破壊層(B)側の表面に、電気回路(C)を形成する前に、予め裏印刷(G)を設けて、基材層(A)、脆性な易破壊層(B)、裏印刷(G)、電気回路(C)、および感圧接着剤層(D)をこの順に積層してなる回路付ラベルとしても良い。該様態において裏印刷(G)は、回路付ラベルを剥離した後に視認可能であることが好ましく、これにより不正な開封や貼り替えを更に視認により確認することもできる。また「支払い済」や「paid」の逆文字を裏印刷しておけば、回路付ラベルを剥がした後に被着体側に同文字が粘着剤のパターン等に従って残ることから、精算済みを表すシールを上貼りすることと同様の識別効果が得られる。
裏印刷(G)は印刷(F)と同様の手法を用いることが可能であり、印刷(F)と同じ印刷プロセス中に行っても良い。更にはこれらの印刷と、上記電気回路(C)の形成とを同じ印刷プロセス中で行っても良い。
【0042】
[離型紙(H)]
回路付ラベルの取り扱いを容易とするため、回路付ラベルを被着体に貼着する以前に、必要に応じて、回路付ラベルの感圧接着剤層(D)の外側に離型紙(H)を設けることも可能である。回路付ラベルに感圧接着剤層(D)を介し設けられる離型紙(H)は、感圧接着剤層(D)との剥離性を良好にするため、感圧接着剤層(D)に接触する面にシリコーン処理が施されるのが一般的である。離型紙は、通常一般的なものが使用でき、上質紙やクラフト紙をそのまま、あるいはカレンダー処理したり樹脂を塗工したりフィルムラミネートしたもの、グラシン紙、コート紙、プラスチックフィルムなどにシリコーン処理を施したものが使用できる。
【0043】
[凝集力]
回路付ラベルを構成する基材層(A)、易破壊層(B)、感圧接着剤層(D)それぞれの層の剥離に対する強度を本発明では凝集力で整理する。凝集力は何れも剥離強度試験から求めた剥離強度とした。具体的には、基材層(A)および易破壊層(B)の剥離強度は
下記の手法により求めて、感圧接着剤層(D)の剥離強度はJIS−K−6854−2:1999の180度剥離による剥離接着強さ試験方法に従って剥離強度を求めた。
【0044】
[基材層(A)の剥離強度]
厚み1mmのアルミ板に接着剤(東洋モートン社製、商品名「TM595」および「CAT56」標準混合物)を25g/m2となるように、且つ端部の約30mm幅は未塗工とし把持部(つかみしろ)を形成するように塗工し、これに基材層(A)および脆性な易破壊層(B)の積層フィルムの基材層(A)面に貼り付け、圧着し、これを恒温室(温度20℃、相対湿度65%)に1週間保管した後、これを幅10mm、長さ300mmに切り取り、引張試験機((株)島津製作所製、商品名:AUTOGRAPH)を使用し、引張速度300mm/分にて、アルミ板側と積層フィルム側それぞれの把持部を180゜の角度で剥離させ、基材層(A)の剥離が安定している時の応力を、または基材層(A)の凝集力が非常に強く安定して剥離せずに破断してしまう場合には破断直前の最大応力を、ロードセルにより測定する。
【0045】
基材層(A)の剥離強度(凝集力)は50〜15000g/cm幅であり、好ましくは100〜12000g/cm幅である。剥離強度が50g/cm幅未満では、易破壊層(B)や感圧接着剤層(D)の凝集力に負けてラベルの剥離がスムーズに進行しづらい。15000g/cm幅を超えては回路付ラベルとして機能上問題はないが、本発明の材料選定上、同様の基材層(A)は得にくい。
基材層(A)が多層構造である場合は、易破壊層(B)と接する層を層(A1)とし、これの剥離強度を測定した。具体的には同様の樹脂組成物や延伸条件から、層(A1)と易破壊層(B)の2層構造からなる積層フィルムを別途成形して、上記手法により測定をした。
【0046】
[易破壊層(B)の剥離強度]
基材層(A)および脆性な易破壊層(B)の積層フィルムを、恒温室(温度20℃、相対湿度65%)に12時間保管した後、易破壊層(B)面に粘着テープ(ニチバン(株)製、商品名:セロテープ CT−18)を貼着し、これを幅10mm、長さ300mmに切り取り、その一端の粘着テープを手で約30mm剥がして粘着テープ側と積層フィルム側の把持部を形成する。引張試験機((株)島津製作所製、商品名:AUTOGRAPH)を使用し、引張速度300mm/分にて、それぞれの把持部を180゜の角度で剥離させ、易破壊層(B)の剥離が安定している時の応力をロードセルにより測定する。
易破壊層(B)の剥離強度(凝集力)は5〜150g/cm幅であり、好ましくは10〜140g/cm幅である。剥離強度が5g/cm幅未満では、印刷、印字、断才等の二次加工時において簡単に剥離が生じる可能性があり、二次加工性に問題が生じる。150g/cm幅を超えては、易破壊層(B)が剥離しないか、剥離に要する応力を高くする必要があり実用的でない。
【実施例】
【0047】
以下に実施例、比較例および試験例を用いて、本発明を更に具体的に説明する。以下に示す材料、使用量、割合、操作等は、本発明の精神から逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例に制限されるものではない。なお、以下に記載される%は、特記しない限り重量%である。
また各実施例で使用する基材層(A)および脆性な易破壊層(B)の原料を表1にまとめて示す。
【0048】
【表1】

【0049】
[樹脂組成物の調製]
表1に記載の原料を表2に記載の配合比率で混合したものを、210℃に設定した2軸混練機にて溶融混練し、次いで230℃に設定した押出機にてストランド状に押し出し、冷却後にストランドカッターにて切断して表2に記載の樹脂組成物(a〜f)のペレットを作成して、以降の製造例で使用した。
【0050】
【表2】

【0051】
[積層フィルムの製造例]
(製造例1〜6)
表2に記載の樹脂組成物(a〜f)を、基材層(A)、易破壊層(B)を構成するものとして表3に記載の組合せで採用し、これを230℃に設定した2台の押出機にてそれぞれ溶融混練した後、250℃に設定した押出ダイに供給し、ダイ内で積層してシート状に押し出し、これを冷却装置により60℃まで冷却して無延伸シートを得た。
この無延伸シートを140℃まで加熱し、ロール群の周速差を利用して縦方向(MD)に5倍延伸した。次いで、この5倍延伸シートを、テンターオーブンを用いて再び約145℃まで加熱して横方向(TD)に8倍延伸した後、更に160℃まで加熱して熱処理を行い、2軸延伸フィルムを得た。
【0052】
次いで60℃まで冷却し、耳部をスリットした後、この2軸延伸フィルムの両面にコロナ放電による表面処理を施し、表3の製造例1〜6に記載の層厚みと凝集力を有する2層構造(基材層(A)/易破壊層(B)、延伸軸数:2軸/2軸)の積層フィルムを得た。
製造例5として易破壊層(B)に樹脂組成物fを用いたものは、延伸成形時に易破壊層(B)側に粗大な破れが多発し、安定して製膜をすることができなかった。そのため後の評価を行わなかった。
【0053】
(製造例7、8)
表2に記載の樹脂組成物を、基材層(A)、易破壊層(B)を構成するものとして表3
に記載の組合せで採用し、これを230℃に設定した2台の押出機にてそれぞれ溶融混練した後、250℃に設定した押出ダイに供給し、ダイ内で積層してシート状に押し出し、これを冷却装置により60℃まで冷却して無延伸シートを得た。
この無延伸シートを130℃まで加熱し、ロール群の周速差を利用して縦方向(MD)に5倍延伸した後、更に160℃まで加熱して熱処理を行い、1軸延伸フィルムを得た。
次いで60℃まで冷却し、耳部をスリットした後、この1軸延伸フィルムの両面にコロナ放電による表面処理を施し、表3の製造例7、8に記載の層厚みと凝集力を有する2層構造(基材層(A)/易破壊層(B)、延伸軸数:1軸/1軸)の積層フィルムを得た。
【0054】
(製造例9)
表2に記載の樹脂組成物bを、250℃に設定した押出機で溶融混練して、Tダイよりシート状に押し出し、これを冷却装置にて60℃まで冷却して無延伸シートを得た。
この無延伸シートを140℃まで加熱した後、ロール群の周速差を利用して縦方向(MD)に5倍延伸して1軸延伸フィルムを得た。次いで、表2に記載の樹脂組成物cと樹脂組成物eをそれぞれ個別の250℃に設定した2台の押出機で溶融混練して、Tダイよりシート状に押し出し、1軸延伸フィルムの表面および裏面にそれぞれ溶融ラミネートし、基材層(A2)/基材層(A1)/易破壊層(B)の積層構造を有する樹脂シートを得た。
【0055】
次いで、この積層構造を有する樹脂シートを、テンターオーブンを用いて再び約120℃まで加熱して横方向(TD)に8倍延伸した後、更に160℃まで加熱して熱処理を行い、2軸延伸フィルムを得た。
次いで60℃まで冷却し、耳部をスリットした後、この2軸延伸フィルムの両面にコロナ放電による表面処理を施し、表3の製造例9に記載の層厚みと凝集力を有する3層構造(基材層(A2)/基材層(A1)/易破壊層(B)、延伸軸数:1軸/2軸/1軸)の積層フィルムを得た。
【0056】
【表3】

【0057】
(実施例1〜5、比較例1、4)
上記製造例で得た表4に記載の積層フィルムの基材層(A)もしくは層(A2)側の表面に、輪転シール印刷機を用いて商品名や希望小売価格を含む印刷(F)を施した。次いでこれを共振ラベルとするべく易破壊層(B)側表面に、銀含有インク(DOWAエレクトロニクス(株)製、商品名:PChem/DOWA 銀ナノインク)を用い、フレキソ印刷にてアンテナパターンを形成し、100℃で50秒間焼結乾燥させて電気回路(C)を設けた。
次いで、表4に記載の感圧接着剤(東洋インキ製造(株)製、商品名:オリバイン BPS8170、商品名:オリバイン BPS1109、商品名:オリバイン BPS5448)を表4に記載の組合せで採用し、これを剥離紙(H)(王子タック(株)製、上質紙系ポリラミシート、商品名:L7C)のシリコーン塗工面側にシルクスクリーンを用いて25g/m2となるように筋状に塗工し、乾燥させて感圧接着剤層(D)を形成した後、積層フィルムの易破壊層(B)側表面の電気回路(C)にかかるようにこれを積層して、印刷(F)/基材層(A)(もしくは基材層(A2/A1))/易破壊層(B)/電気回路(C)/感圧接着剤層(D)/剥離紙(H)の順に積層した回路付ラベルを得た。
比較例1、4は、感圧接着剤層(D)の凝集力が最も小さいものである。
【0058】
(比較例2)
上記製造例5で得た易破壊層(B)に樹脂組成物fを用いた積層フィルムは、2軸延伸成形時に易破壊層(B)側に粗大な破れが多発し、安定して製膜をすることができなかったため、後の評価および回路付ラベルの成形を行わなかった。
(比較例3)
上記製造例8で得た易破壊層(B)に樹脂組成物fを用いた積層フィルムは、1軸延伸成形による製膜は可能であったものの、易破壊層(B)側表面に、銀含有インク(DOWAエレクトロニクス(株)製、商品名:PChem/DOWA 銀ナノインク)を用い、フレキソ印刷にてアンテナパターンを形成しようとした際に、フレキソ版側に易破壊層(B)の一部がとられてしまい、電気回路(C)を形成することができなかった。そのため、後の回路付ラベルの成形を行わなかった。
【0059】
(比較例5)
上記製造例2で得た積層フィルムの基材層(A)側表面に、輪転シール印刷機を用いて商品名や希望小売価格を含む印刷(F)を施した。次いでこれを共振ラベルとするべく易破壊層(B)側表面に、銀含有インク(DOWAエレクトロニクス(株)製、商品名:PChem/DOWA 銀ナノインク)を用い、フレキソ印刷にてアンテナパターンを形成し、100℃で50秒間焼結乾燥させて電気回路(C)を設けた。
次いで、感圧接着剤(東洋インキ製造(株)製、商品名:オリバイン BPS1109)を剥離紙(H)(王子タック(株)製、上質紙系ポリラミシート、商品名:L7C)のシリコーン塗工面側にロールコータを用いて25g/m2となるように全面に塗工し、乾燥させて感圧接着剤層(D)を形成した後、積層フィルムの易破壊層(B)側表面にこれを積層して、印刷(F)/基材層(A)/易破壊層(B)/電気回路(C)/感圧接着剤層(D)/剥離紙(H)の順に積層した回路付ラベルを得た。
【0060】
(実施例6、比較例6)
上記製造例で得た表4に記載の積層フィルムの基材層(A)側表面に、輪転シール印刷機を用いて商品名や希望小売価格を含む印刷(F)を施した。次いでこれを共振ラベルとするべく易破壊層(B)側表面に、導電性銀ペースト(東洋インキ製造(株)製、商品名:REXALPHA、RA−FL FDタイプ)を用い、スクリーン印刷にてアンテナパターンを形成し、紫外線硬化させて電気回路(C)を設けた。
次いで、表4に記載の感圧接着剤(東洋インキ製造(株)製、商品名:オリバイン BPS8170、商品名:オリバイン BPS1109)を表4に記載の組合せで採用し、これを積層フィルムの易破壊層(B)側表面にロールコータを用いて25g/m2となるように全面に塗工し、乾燥させて感圧接着剤層(D)を形成した後、感圧接着剤層(D)上にUVニス((株)ティーアンドケイ東華製、商品名:UV ハクリOPニス UP−2)をUVシール印刷により筋状に設けて、紫外線硬化させて糊殺し(E)を形成した。
次いで剥離紙(H)(王子タック(株)製、上質紙系ポリラミシート、商品名:L7C)のシリコーン塗工面側に感圧接着剤層(D)を接するように積層して、印刷(F)/基材層(A)/易破壊層(B)/電気回路(C)/感圧接着剤層(D)/糊殺し(E)/剥
離紙(H)の順に積層した回路付ラベルを得た。
【0061】
(実施例7)
上記製造例2で得た積層フィルムに、輪転シール印刷機を用いてその基材層(A)側表面に商品名や希望小売価格を含む印刷(F)を施し、更に易破壊層(B)側表面に「支払済」の逆文字を含む裏印刷(G)を施した。次いでこれを共振ラベルとするべく易破壊層(B)側表面に、導電性銀ペースト(東洋インキ製造(株)製、商品名:REXALPHA、RA−FL FDタイプ)を用い、スクリーン印刷にてアンテナパターンを形成し、紫外線硬化させて電気回路(C)を設けた。
【0062】
次いで、感圧接着剤(東洋インキ製造(株)製、商品名:オリバイン BPS1109)を剥離紙(H)(王子タック(株)製、上質紙系ポリラミシート、商品名:L7C)のシリコーン塗工面側にシルクスクリーンを用いて25g/m2となるように筋状に塗工し、乾燥させて感圧接着剤層(D)を形成した後、積層フィルムの易破壊層(B)側表面の電気回路(C)にかかるようにこれを積層して、印刷(F)/基材層(A)/易破壊層(B)/裏印刷(G)/電気回路(C)/感圧接着剤層(D)/剥離紙(H)の順に積層した回路付ラベルを得た。
【0063】
(回路付ラベル剥離時の電気回路(C)の破壊可否評価)
上記の実施例1〜7および比較例1、4〜6で得た回路付ラベルより剥離紙(H)を除去し、これの感圧接着剤層(D)を平滑なSUS板上に接するように重ね、手で圧着した後に、手で積層フィルム部分を引き剥がし、電気回路(C)の破壊の可否を目視にて確認した。
実施例1〜7より得た回路付ラベルは、何れもSUS板上に筋状の感圧接着剤層(D)、破断した電気回路(C)、および凝集破壊した易破壊層(B)の一部が残留し、電気回路(C)の破壊が確認できた。
【0064】
比較例1、4より得た回路付ラベルは、引き剥がした際に感圧接着剤層(D)中で凝集破壊が進行し、電気回路(C)の破壊は確認できなかった。
比較例5より得た回路付ラベルは、何れもSUS板上に感圧接着剤層(D)、電気回路(C)、および凝集破壊した易破壊層(B)が全面的に残留し、電気回路(C)の破壊は確認できなかった。
比較例6より得た回路付ラベルは、手による積層フィルム部分の引き剥がしの際に、糊殺し(E)の印刷パターンに従った感圧接着剤層(D)の破断が起こり難く、途中で積層フィルム自体が破断してしまい、結果として電気回路(C)の破壊は確認できたものの、ラベル全体をきれいに引き剥がすことができなかった。
【0065】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層(A)、脆性な易破壊層(B)、電気回路(C)、および感圧接着剤層(D)を含み、この順に積層してなる回路付ラベルであって、
基材層(A)と易破壊層(B)と感圧接着剤層(D)のそれぞれの層において易破壊層(B)の凝集力が最も小さく、
且つ感圧接着剤層(D)を、電気回路(C)上に部分的に設けることを特徴とする回路付ラベル。
【請求項2】
基材層(A)、脆性な易破壊層(B)、電気回路(C)、感圧接着剤層(D)、および糊殺し(E)を含み、この順に積層してなる回路付ラベルであって、
基材層(A)と易破壊層(B)と感圧接着剤層(D)のそれぞれの層の凝集力が、(A)>(D)>(B)の関係にあり、
且つ糊殺し(E)を、感圧接着剤層(D)上に部分的に設けること特徴とする回路付ラベル。
【請求項3】
脆性な易破壊層(B)が、熱可塑性樹脂、ならびに無機微細粉末および有機フィラーの少なくとも一方を20〜75重量%含み、少なくとも一軸方向に延伸された多孔質の樹脂フィルム層であり、その凝集力が5〜150g/cm幅であることを特徴とする請求項1または2に記載の回路付ラベル。
【請求項4】
基材層(A)が、熱可塑性樹脂、ならびに無機微細粉末および有機フィラーの少なくとも一方を3〜50重量%含み、易破壊層(B)の無機微細粉末および有機フィラーの少なくとも一方の含有量よりも8重量%以上少ない樹脂フィルム層であり、その凝集力が50〜15000g/cm幅であることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の回路付ラベル。
【請求項5】
感圧接着剤層(D)が、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤よりなる群より選ばれた少なくとも一つの粘着剤を含み、その凝集力が20〜1000g/cm幅であることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の回路付ラベル。
【請求項6】
電気回路(C)が、易破壊層(B)表面に、導電インキ、導電塗料、または導電ペーストを印刷、或いは金属箔を転写、或いは金属をエッチングまたはメッキすることにより形成されることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の回路付ラベル。
【請求項7】
脆性な易破壊層(B)に用いる熱可塑性樹脂が、ポリオレフィン系樹脂を含むことを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載の回路付ラベル。
【請求項8】
回路付ラベルの基材層(A)側表面に、印刷(F)を設けることを特徴とする請求項1〜7の何れか一項に記載の回路付ラベル。
【請求項9】
易破壊層(B)上に電気回路(C)を形成する前に易破壊層(B)上に裏印刷(G)を施し、該裏印刷(G)は回路付ラベルを剥離した後に視認可能となることを特徴とする請求項1〜8の何れか一項に記載の回路付ラベル。
【請求項10】
回路付ラベルの感圧接着剤層(D)側表面に、剥離紙(H)を設けることを特徴とする請求項1〜9の何れか一項に記載の回路付ラベル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−118109(P2012−118109A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−265129(P2010−265129)
【出願日】平成22年11月29日(2010.11.29)
【出願人】(000122313)株式会社ユポ・コーポレーション (73)
【Fターム(参考)】