説明

回路異常検出装置および方法

【課題】負荷回路の絶縁不良を正確に検出する。
【解決手段】検出部11により、電源供給線L1,L2と電気ヒータ(負荷回路)20との間に接続されて、電源供給線L1,L2と電気ヒータ20との間で接地GNDを介して流れる漏洩電流Idの大きさに応じた検出電圧Vd(検出値)を検出し、判定部12により、リレー接点21,22の開放時に得られた検出値に基づいて、接地GNDに対する電気ヒータ20の絶縁劣化の有無を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路異常検出技術に関し、特にリレーを介して負荷回路へ電源を供給する回路における異常を検出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電気ヒータなどの負荷回路に対して、リレー接点を介して電源を供給する装置では、主な回路異常の1つとしてリレー接点の溶着がある。例えば、電気ヒータを内蔵した床暖房パネルへの電源供給を制御する床暖房システムでは、床暖房パネルの表面温度に基づきリレー接点を制御して、床暖房パネルで目標温度が得られるよう、電気ヒータへの電源供給を制御している。したがって、接点劣化などの要因でリレー接点の溶着が発生した場合には、電気ヒータへの電源供給を停止する必要があり、このような回路異常を正確に検出する必要がある。
【0003】
従来、このような回路異常を検出する技術として、リレー接点の両端にフォトカプラを接続し、リレー接点が開放されている状態で、リレー接点に流れる漏洩電流の有無をフォトカプラで検出することにより、リレー接点の溶着を検出する技術が提案されている(例えば、特許文献1など参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−168404号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような従来技術では、回路異常の1つとしてリレーの不良を検出するものであり、負荷回路の絶縁不良について正確に検出できないという問題点があった。
例えば、床暖房システムでは、床暖房パネルを設置する場合、設置工事で生じた電気ヒータの傷などが原因で、電気ヒータと接地電位(アース)との間の絶縁抵抗が不十分となる場合があり、電気的安全性が得られなくなる。このため、負荷回路の絶縁不良を正確に検出する必要がある。
【0006】
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、負荷回路の絶縁不良を正確に検出できる回路異常検出技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的を達成するために、本発明にかかる回路異常検出装置は、1対の電源供給線のそれぞれに設けられた2つのリレー接点を介して当該電源供給線の電源が供給される負荷回路の異常を検出する回路異常検出装置であって、電源供給線と負荷回路との間に接続されて、電源供給線と負荷回路との間で接地を介して流れる漏洩電流の大きさに応じた検出値を検出する検出部と、リレー接点の開放時に得られた検出値に基づいて、接地に対する負荷回路の絶縁劣化の有無を判定する判定部とを備えている。
【0008】
この際、判定部で、リレー接点の開放時に得られた検出値を、接地に対する負荷回路の絶縁抵抗が正常範囲の下限値まで低下した際に得られる検出値を示すしきい値と比較し、この比較結果に応じて負荷回路の絶縁劣化の有無を判定するようにしてもよい。
【0009】
また、判定部で、リレー接点の開放時に得られた検出値とリレー接点の接続時に得られた検出値との差分値を算出して、接地に対する負荷回路の絶縁抵抗が正常範囲の下限値まで低下した際に得られるリレー接点の開放時の検出値とリレー接点の接続時に得られる検出値との差分値を示す差分しきい値と比較し、この比較結果に応じて負荷回路の絶縁劣化の有無を判定するようにしてもよい。
【0010】
また、本発明にかかる回路異常検出方法は、1対の電源供給線のそれぞれに設けられた2つのリレー接点を介して当該電源供給線の電源が供給される負荷回路の異常を検出する回路異常検出方法であって、電源供給線と負荷回路との間に接続されて、電源供給線と負荷回路との間で接地を介して流れる漏洩電流の大きさに応じた検出値を検出する検出ステップと、リレー接点の開放時に得られた検出値に基づいて、接地に対する負荷回路の絶縁劣化の有無を判定する判定ステップとを備えている。
【0011】
この際、判定ステップで、リレー接点の開放時に得られた検出値を、接地に対する負荷回路の絶縁抵抗が正常範囲の下限値まで低下した際に得られる検出値を示すしきい値と比較し、この比較結果に応じて負荷回路の絶縁劣化の有無を判定するようにしてもよい。
【0012】
また、判定ステップで、リレー接点の開放時に得られた検出値とリレー接点の接続時に得られた検出値との差分値を算出して、接地に対する負荷回路の絶縁抵抗が正常範囲の下限値まで低下した際に得られるリレー接点の開放時の検出値とリレー接点の接続時に得られる検出値との差分値を示す差分しきい値と比較し、この比較結果に応じて負荷回路の絶縁劣化の有無を判定するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、1対の電源供給線のそれぞれに設けられた2つのリレー接点を介して当該電源供給線の電源が供給される負荷回路について、負荷回路と接地との間の絶縁不良を正確に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1の実施の形態にかかる回路異常検出装置の構成を示すブロック図である。
【図2】AC100Vでの漏洩電流を示す信号波形図である。
【図3】AC200V単相での漏洩電流を示す信号波形図である。
【図4】絶縁抵抗と漏洩電流との関係を示すグラフである。
【図5】絶縁抵抗と検出電圧との関係を示すグラフである。
【図6】第1の実施の形態にかかる回路異常検出装置の異常判定動作を示すフローチャートである。
【図7】絶縁抵抗と検出電圧差分値との関係を示すグラフである。
【図8】第2の実施の形態にかかる回路異常検出装置の異常判定動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
[第1の実施の形態]
まず、図1を参照して、本発明の第1の実施の形態にかかる回路異常検出装置について説明する。図1は、第1の実施の形態にかかる回路異常検出装置の構成を示すブロック図である。
【0016】
この回路異常検出装置10は、1対の電源供給線のそれぞれに設けられた2つのリレー接点を介して当該電源供給線の電源が供給される負荷回路の異常を検出する装置である。
この回路異常検出装置10が適用される一例として、床暖房システム1がある。床暖房システム1には、主な機能部として、回路異常検出装置10、電気ヒータ20、リレー接点21,22、温度センサ30、制御部40、および表示部50が設けられている。
【0017】
電気ヒータ20は、回路異常検出装置10の負荷回路に相当し、床暖房パネルに内蔵されて部屋の床に設置される。リレー接点21,22は、交流電源2からAC電源が供給されている一対の電源供給線L1,L2のそれぞれに設けられており、制御部40からの制御信号CSに基づき接続/開放動作を行う。
制御部40は、温度センサ30で計測した床暖房パネルの表面温度に基づいて、制御信号CSでリレー接点21,22を制御して、電気ヒータ20へのAC電源の供給を制御することにより、床暖房パネルを目標温度に維持する。表示部50は、制御部40での制御内容をLEDやLCDなどの表示装置で表示する。
【0018】
本実施の形態は、回路異常検出装置10において、電源供給線L1,L2と電気ヒータ20との間に設けられて、電源供給線L1,L2と電気ヒータ20との間で接地GNDを介して流れる漏洩電流Idの大きさに応じた検出値として検出電圧Vdを検出し、リレー接点21,22の開放時に得られた検出電圧Vdに基づいて、接地GNDに対する電気ヒータ20の絶縁劣化の有無を判定するようにしたものである。
【0019】
[発明の原理]
次に、図2および図3を参照して、本発明の原理について説明する。図2は、AC100Vでの漏洩電流を示す信号波形図である。図3は、AC200V単相での漏洩電流を示す信号波形図である。
図1の床暖房システム1において、接地GNDと電気ヒータ20との間の絶縁抵抗RIは、通常、数MΩあり、これらが低下した場合、電源供給線L1,L2と電気ヒータ20との間で接地GNDを介して流れる漏洩電流Idが発生する。
【0020】
図2に示すように、電源供給線L1,L2にAC100Vが供給されている場合、電源供給線L1,L2のうちのいずれか一方、例えば電源供給線L2が接地GNDとほぼ同じ電位となり、この電位に対して電源供給線L1の電位が正負に変化するものとなる。
したがって、電源供給線L2と絶縁抵抗RIの一端P1とが、ともに接地GNDと同じ電位となるため、リレー接点21,22が開放されている期間において、電源供給線L1と絶縁抵抗RIの他端P2との間にAC100Vの交流振幅に応じた電位差が生じる。
【0021】
このため、リレー接点21から電気ヒータ20側の線路L11を例とした場合、図1に示すように、交流電源2→接地GND→絶縁抵抗RI→電気ヒータ20→線路L11→回路異常検出装置10→電源供給線L1→交流電源2という、接地GNDを介した経路で、漏洩電流Idが流れる。これはリレー接点22から電気ヒータ20側の線路L12の場合も同様である。
【0022】
ここで、電源供給線L1と絶縁抵抗RIの他端P2との間に流れる漏洩電流Idは、絶縁抵抗RIに応じた値となる。具体的には、図1の検出部11によれば、電源電圧をVpとした場合、漏洩電流Idと絶縁抵抗RIは、Id=Vp/(R1+R2+RI)という関係を持つ。この際、フォトカプラPCのダイオードや、ダイオードD1,D2での電圧降下分は、電源電圧Vpに対して小さいため無視してもよい。本発明は、この点に着目し、この漏洩電流Idの大きさを検出することにより、絶縁抵抗RIの低下、すなわち接地GNDに対する電気ヒータ20の絶縁劣化の有無を判定している。
【0023】
この際、電気ヒータ20の抵抗値は、漏洩電流Idに比較して極めて小さいため、漏洩電流Idは、絶縁抵抗RIの他端P2ではなく、リレー接点21,22から電気ヒータ20側の線路L11または線路L12と電源供給線L1との間で検出すればよい。また、漏洩電流Idは交流電流となることから、ダイオードD1,D2で整流したいずれか一方向の漏洩電流Idを検出して積分すれば、漏洩電流Idの大きさに応じた電圧を示す検出電圧Vdを安定して検出できる。
【0024】
また、図3に示すように、電源供給線L1,L2にAC200V単相が供給されている場合、電源供給線L1,L2の中間電位が接地GNDであることから、電源供給線L1,L2の電位は、接地GNDに対して逆位相で正負に変化するものとなる。
したがって、電源供給線L2と絶縁抵抗RIの一端P1とが、ともに接地GNDと同じ電位となるため、リレー接点21,22が開放されている期間において、電源供給線L1と絶縁抵抗RIの他端P2との間、および電源供給線L2と絶縁抵抗RIの他端P2との間にAC200V単相の交流振幅に応じた電位差が生じる。
【0025】
このため、AC100Vと同様に、漏洩電流Idの大きさを検出することにより、絶縁抵抗RIの低下、すなわち接地GNDに対する電気ヒータ20の絶縁劣化の有無を判定できる。
この際、漏洩電流Idは電源供給線L1,L2に対して逆位相で発生する交流電流であることから、電源供給線L1,L2についてそれぞれダイオードで整流すれば、全波の漏洩電流Idが得られる。
【0026】
[回路異常検出装置]
次に、図1を参照して、本実施の形態にかかる回路異常検出装置10の構成について詳細に説明する。
この回路異常検出装置10には、主な機能部として、検出部11と判定部12が設けられている。
【0027】
検出部11は、電源供給線L1,L2と電気ヒータ20との間に接続されて、電源供給線L1,L2と電気ヒータ20との間で接地GNDを介して流れる漏洩電流Idの大きさに応じた検出値として検出電圧Vdを検出する機能を有している。
判定部12は、リレー接点21,22の開放時に検出部11で得られた検出電圧Vdに基づいて、接地GNDに対する電気ヒータ20の絶縁劣化の有無を判定する機能を有している。
【0028】
検出部11には、線路L11に一端が接続されて、フォトカプラPCのダイオードのアノード端子に他端が接続された抵抗素子R1と、フォトカプラPCのダイオードのカソード端子に一端が接続された抵抗素子R2と、線路L11にカソードが接続されアノードが抵抗素子R2の他端に接続されたダイオードD1と、線路L12にカソードが接続されアノードが抵抗素子R2の他端に接続されたダイオードD2とが設けられている。
【0029】
また、検出部11には、抵抗素子R1の他端にダイオードのアノード端子が接続され、抵抗素子R2の一端にダイオードのカソード端子が接続され、基準電位Vssにフォトトランジスタのエミッタ端子が接続されたフォトカプラPCと、電源電位Vddに一端が接続され、フォトカプラPCのフォトトランジスタのコレクタ端子に他端が接続された抵抗素子R3と、フォトカプラPCのフォトトランジスタのコレクタ端子に一端が接続され、基準電位Vssに他端が接続された容量素子Cとが設けられている。
【0030】
したがって、電源供給線L2が接地GNDと等しい電位であり、この電位より電源供給線L1の電位が低い場合、漏洩電流Idは、接地GND→絶縁抵抗RI→電気ヒータ20→線路L11→抵抗素子R1→フォトカプラPCのダイオード→ダイオードD1を介して電源供給線L1へ流れる。
このため、フォトカプラPCのフォトトランジスタは、漏洩電流Idに応じてオンし、容量素子Cの両端に発生する検出電圧Vdは、漏洩電流Idの大きさが大きいほど電源電圧Vddから基準電位Vssに向かって低下する。
【0031】
判定部12には、主な機能部として、A/D変換部12Aと比較部12Bが設けられている。
A/D変換部12Aは、検出部11で検出された漏洩電流Idの大きさに応じた検出電圧VdをA/D変換する機能を有している。
【0032】
比較部12Bは、リレー接点21,22の開放時に得られた検出電圧Vdを、接地GNDに対する電気ヒータ20の絶縁抵抗RIが下限値RIthまで低下した際に得られる検出電圧を示すしきい値Vthと比較し、この比較結果に応じて電気ヒータの絶縁劣化の有無を判定する機能と、判定結果を制御部40へ通知する機能とを有している。リレー接点21,22の開放期間については、制御部40からの通知により得られる。
【0033】
図4は、絶縁抵抗と漏洩電流との関係を示すグラフである。図5は、絶縁抵抗と検出電圧との関係を示すグラフである。
図4に示すように、絶縁抵抗RIの抵抗値が低くなるに連れて、漏洩電流Idは単調増加する。図4において、特性71は交流電源2がAC100Vの場合を示し、特性72は交流電源2がAC200V単相の場合を示している。また、図5に示すように、絶縁抵抗RIの抵抗値が低くなるに連れて、検出部11で得られる検出電圧Vdは単調減少する。図5において、特性73は交流電源2がAC100Vの場合を示し、特性74は交流電源2がAC200V単相の場合を示している。
【0034】
下限値RIthは、絶縁抵抗RIが取りうる値のうち良好な絶縁状態が得られる正常範囲70の下限値、すなわち絶縁不良と判定する境界の値を示しており、絶縁抵抗RIが下限値RIthを下回った場合、電気ヒータ20での絶縁不良が発生していると判定される。
しきい値Vthは、このような下限値RIthに基づき絶縁抵抗RIの良・不良を判定するためのしきい値であり、絶縁抵抗RIが下限値RIthとなった際に検出部11で得られる検出値、すなわち検出電圧Vdの値を示している。
【0035】
この際、図5に示すように、交流電源2がAC100Vの場合とAC200V単相の場合とで特性73,74が異なるため、しきい値Vthもそれぞれ異なる。したがって、交流電源2として、AC100VとAC200V単相のいずれか一方が利用される可能性がある場合、比較部12Bに対して交流電源2としていずれを用いているか入力し、この入力に応じてしきい値Vthを切り替えて用いればよい。
図1の床暖房システム1の場合、電源供給線L1,L2から各回路の動作電源を生成する電源回路(図示せず)として、このような電源判定機能を持つものを利用して、制御部40へ電源判定結果が入力されており、この電源判定結果を比較部12Bに対して入力すればよい。
【0036】
これらA/D変換部12Aや比較部12Bについては、専用の電子回路を用いて構成してもよいが、A/D変換機能を有するCPUで構成してもよい。また、このCPUは、制御部40で用いるCPUで構成してもよい。
【0037】
[第1の実施の形態の動作]
次に、図6を参照して、本実施の形態にかかる回路異常検出装置10の動作について説明する。図6は、第1の実施の形態にかかる回路異常検出装置の異常判定動作を示すフローチャートである。
ここでは、交流電源2から電源供給線L1,L2に対してAC100Vが供給されており、このうち電源供給線L2に対して接地GNDと等しい電位が供給されているものとする。
【0038】
検出部11では、常時、線路L11から抵抗素子R1を介して流れ込む漏洩電流Idに応じてフォトカプラPCが動作し、漏洩電流Idの大きさに応じた検出値を示す検出電圧Vdが容量素子Cに蓄積される。
判定部12のA/D変換部12Aは、検出部11で得られた検出電圧Vdを取り込んでA/D変換し、得られた検出電圧データを比較部12Bへ出力する。
【0039】
比較部12Bは、制御部40からの通知に応じてリレー接点21,22の開放期間を判断し(ステップ100)、リレー接点21,22の開放期間中である場合には(ステップ100:YES)、A/D変換部12Aから検出電圧データを定期的に取得して(ステップ101)、予め設定されているしきい値Vthと比較する(ステップ102)。
【0040】
ここで、検出電圧データがしきい値Vthを下回る場合(ステップ102:YES)、比較部12Bは、絶縁不良発生を制御部40へ通知する(ステップ103)。これにより、制御部40は、電気ヒータ20で接地GNDとの絶縁不良が発生したことを表示部50で警報表示する。ステップ103の後、ステップ100へ戻って新たな検出電圧に対する判定を実行する。
また、検出電圧データがしきい値Vth以上の場合(ステップ102:NO)、ステップ100へ戻って新たな検出電圧に対する判定を実行する。
【0041】
[第1の実施の形態の効果]
このように、本実施の形態は、検出部11により、電源供給線L1,L2と電気ヒータ(負荷回路)20との間に接続されて、電源供給線L1,L2と電気ヒータ20との間で接地GNDを介して流れる漏洩電流Idの大きさに応じた検出電圧Vd(検出値)を検出し、判定部12により、リレー接点21,22の開放時に得られた検出値に基づいて、接地GNDに対する電気ヒータ20の絶縁劣化の有無を判定するようにしたので、電気ヒータ20の絶縁不良を正確に検出できる。
【0042】
また、本実施の形態では、判定部12により、リレー接点21,22の開放時に得られた検出値(検出電圧Vd)を、接地GNDに対する電気ヒータ20の絶縁抵抗RIが正常範囲の下限値となった際に得られる検出値を示すしきい値Vthと比較し、この比較結果に応じて電気ヒータ20の絶縁劣化の有無を判定するようにしたので、簡素な回路構成で電気ヒータ20の絶縁不良を精度よく検出することが可能となる。
【0043】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態にかかる回路異常検出装置について説明する。
第1の実施の形態では、判定部12において、リレー接点21,22の開放時に検出部11で検出した検出電圧Vdに基づいて絶縁不良の有無を判定する場合を例として説明した。本実施の形態では、リレー接点21,22の開放時と接続時に得られた2つの検出電圧Vdの差分値に基づいて絶縁不良の有無を判定する場合について説明する。
【0044】
前述の図5に示したように、絶縁抵抗RIに対する正常範囲の下限値RIthが小さい場合、絶縁抵抗RIが下限値RIth付近まで低下した際に得られる検出電圧Vdも小さくなる。このため、例えば交流電源2の変動やフォトカプラPCの温度特性など、絶縁抵抗RI以外の要因による検出電圧Vdの変動成分が大きくなる。したがって、大きな変動成分を含む検出電圧Vdを、固定的に設定されているしきい値Vthと比較することにより、絶縁不良の有無を正確に判定するのは難しくなる。
【0045】
このような検出電圧Vdの変動は、リレー接点21,22の開放時だけでなく、リレー接点21,22の接続時の検出電圧Vdにも同様に発生する。本実施の形態は、リレー接点21,22の開放時と接続時における2つの検出電圧Vdoff,Vdonの差分値ΔVdを求めることにより、これら検出電圧Vdoff,Vdonに含まれる変動成分をキャンセルして抑制できることに着目し、この差分値ΔVdと対応する差分しきい値ΔVdthとを比較することにより、絶縁劣化の有無を判定している。
【0046】
本実施の形態にかかる比較部12Bは、リレー接点21,22の開放時に得られた検出電圧Vdoffとリレー接点21,22の接続時に得られた検出電圧Vdonとの差分値ΔVd=Vdoff−Vdonを算出する機能と、この差分値ΔVdを、接地GNDに対する電気ヒータ20の絶縁抵抗RIが正常範囲の下限値RIthまで低下した際に得られる差分値ΔVdを示す差分しきい値ΔVthと比較し、この比較結果に応じて電気ヒータの絶縁劣化の有無を判定する機能とを有している。リレー接点21,22の開放・接続期間については、制御部40からの通知により得られる。
【0047】
図7は、絶縁抵抗と検出電圧差分値との関係を示すグラフである。図7に示すように、絶縁抵抗RIの抵抗値が低くなるに連れて、検出部11で得られる検出電圧Vdの差分値ΔVdは単調減少する。図6において、特性75は交流電源2がAC100Vの場合を示し、特性76は交流電源2がAC200V単相の場合を示している。
【0048】
下限値RIthは、絶縁抵抗RIが取りうる値のうち良好な絶縁状態が得られる正常範囲70の下限値、すなわち絶縁不良と判定する境界の値を示しており、絶縁抵抗RIが下限値RIthを下回った場合、電気ヒータ20での絶縁不良が発生していると判定される。
差分しきい値ΔVthは、このような下限値RIthに基づき絶縁抵抗RIの良・不良を判定するためのしきい値であり、絶縁抵抗RIが下限値RIthとなった際に検出部11で得られる検出電圧Vdから求まる差分値ΔVdを示している。
【0049】
この際、図7に示すように、交流電源2がAC100Vの場合とAC200V単相の場合とで特性75,76が異なるため、差分しきい値ΔVthもそれぞれ異なる。したがって、交流電源2として、AC100VとAC200V単相のいずれか一方が利用される可能性がある場合、比較部12Bに対して交流電源2としていずれを用いているか入力し、この入力に応じて差分しきい値ΔVthを切り替えて用いればよい。
【0050】
[第2の実施の形態の動作]
次に、図8を参照して、本実施の形態にかかる回路異常検出装置10の動作について説明する。図8は、第2の実施の形態にかかる回路異常検出装置の異常判定動作を示すフローチャートである。
ここでは、交流電源2から電源供給線L1,L2に対してAC100Vが供給されており、このうち電源供給線L2に対して接地GNDと等しい電位が供給されているものとする。
【0051】
検出部11では、常時、線路L11から抵抗素子R1を介して流れ込む漏洩電流Idに応じてフォトカプラPCが動作し、漏洩電流Idの大きさに応じた検出値を示す検出電圧Vdが容量素子Cに蓄積される。
判定部12のA/D変換部12Aは、検出部11で得られた検出電圧Vdを取り込んでA/D変換し、得られた検出電圧データを比較部12Bへ出力する。
【0052】
比較部12Bは、定期的にA/D変換部12Aから検出電圧データを取得し(ステップ200)、制御部40からの通知に応じてリレー接点21,22の開放期間を判断する(ステップ201)。ここで、リレー接点21,22の開放期間中である場合には(ステップ201:YES)、取得した検出電圧データを開放時検出電圧データVdoffとして記憶部(図示せず)へ保存する(ステップ202)。
一方、リレー接点21,22の接続期間である場合には(ステップ201:NO)、取得した検出電圧データを接続時検出電圧データVdonとして記憶部へ保存する(ステップ203)。
【0053】
この後、比較部12Bは、記憶部から開放時検出電圧データVdoffと接続時検出電圧データVdonを読み出して、これら検出電圧データの差分値ΔVdを算出し(ステップ204)、予め設定されている差分しきい値ΔVthと比較する(ステップ205)。
【0054】
ここで、差分値ΔVdが差分しきい値ΔVthを下回る場合(ステップ205:YES)、比較部12Bは、絶縁不良発生を制御部40へ通知する(ステップ206)。これにより、制御部40は、電気ヒータ20で接地GNDとの絶縁不良が発生したことを表示部50で警報表示する。ステップ206の後、ステップ200へ戻って新たな検出電圧に対する判定を実行する。
また、差分値ΔVdが差分しきい値ΔVth以上の場合(ステップ205:NO)、ステップ200へ戻って新たな検出電圧に対する判定を実行する。
【0055】
[第2の実施の形態の効果]
このように、本実施の形態は、判定部12Bにより、リレー接点21,22の接続時に得られた検出電圧(検出値)Vdonとリレー接点21,22の開放時に得られた検出電圧(検出値)Vdoffとの差分値ΔVdを算出して、リレー接点21,22の接続時に得られる検出電圧Vdonと接地GNDに対する電気ヒータ20の絶縁抵抗RIが正常範囲の下限値RIthまで低下した際に得られるリレー接点21,22の開放時の検出電圧Vdoffとの差分値を示す差分しきい値ΔVthと比較し、この比較結果に応じて電気ヒータ20の絶縁劣化の有無を判定している。
【0056】
したがって、リレー接点21,22の開放時の検出電圧Vdoffとリレー接点21,22の接続時の検出電圧Vdonの両方に含まれている、交流電源2の変動やフォトカプラPCの温度特性など、絶縁抵抗RI以外の要因による変動成分が、両者の差分値ΔVdを算出することにより低減させることができる。このため、絶縁抵抗RIに対する正常範囲の下限値RIthが小さい場合でも、絶縁不良の有無を正確に判定できる。
【0057】
[実施の形態の拡張]
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。
【0058】
以上の各実施の形態では、回路異常検出装置10の判定部12において、電気ヒータ(負荷回路)20での絶縁不良の有無を判定する場合について説明したが、リレー接点21,22の溶着有無についても判定するようにしてもよい。
図1において、リレー接点21,22のいずれか一方が接点劣化などの要因で溶着した場合、リレー接点21,22の開放時に、回路異常検出装置10の検出部11に対して漏洩電流Idが流れる。
【0059】
例えば、リレー接点21が溶着した際、電源供給線L2が接地GNDと等しい電位であり、この電位より電源供給線L1の電位が高い場合、漏洩電流Idは、電源供給線L1→リレー接点21→線路L11→抵抗素子R1→フォトカプラPCのダイオード→ダイオードD2を介して電源供給線L2へ流れる。
また、例えば、リレー接点22が溶着した際、電源供給線L2が接地GNDと等しい電位であり、この電位より電源供給線L1の電位が低い場合、漏洩電流Idは、電源供給線L2→リレー接点22→線路L12→電気ヒータ20→線路L11→抵抗素子R1→フォトカプラPCのダイオード→ダイオードD1を介して電源供給線L1へ流れる。
【0060】
ここで、このようなリレー接点21,22の溶着による漏洩電流Idは、前述した電気ヒータ20の絶縁不良による漏洩電流Idに比較して、極めて大きく、リレー接点21,22の接続時における漏洩電流Idとほぼ同じ大きさである。
このため、検出部11では、前述した図5のうち、絶縁抵抗RIの値がほぼゼロとなった状態と同じ程度の、絶縁不良判定用のしきい値Vthより低い検出電圧Vdが得られる。
【0061】
したがって、第1の実施の形態の場合には、絶縁不良判定用のしきい値Vthより低い電圧値からなる溶着判定用のしきい値Vrthを別個に設定しておき、例えば図6のステップ102:NOの後、判定部12により、リレー接点21,22の開放時に検出部11で得られた検出電圧(検出値)Vdと比較し、この検出電圧Vdが溶着判定用しきい値Vrthを下回った場合、リレー接点21,22で溶着が発生していると判定することができる。これにより、電気ヒータ20の絶縁不良だけでなくリレー接点21,22の溶着についても、検出することができる。
【0062】
また、第2の実施の形態の場合、前述した図7のうち、絶縁抵抗RIの値がほぼゼロとなった状態と同じ程度の、絶縁不良判定用の差分しきい値ΔVthより低い差分値ΔVdが得られる。
したがって、絶縁不良判定用の差分しきい値ΔVthより低い差分電圧値からなる溶着判定用の差分しきい値ΔVrthを別個に設定しておき、例えば図8のステップ205:NOの後、判定部12により、リレー接点21,22の開放時に検出部11で得られた差分値ΔVdと比較し、この差分値ΔVdが溶着判定用差分しきい値ΔVrthを下回った場合、リレー接点21,22で溶着が発生していると判定することができる。これにより、電気ヒータ20の絶縁不良だけでなくリレー接点21,22の溶着についても、検出することができる。
【符号の説明】
【0063】
1…床暖房システム、2…交流電源、10…回路異常検出装置、11…検出部、12…判定部、12A…A/D変換部、12B…比較部、20…電気ヒータ(負荷回路)、21,22…リレー接点、30…温度センサ、40…制御部、50…表示部、L1,L2…電源供給線、L11,L12…線路、CS…制御信号、RI…絶縁抵抗、R1,R2,R3…抵抗素子、D1,D2…ダイオード、PC…フォトカプラ、C…容量素子、Id…漏洩電流、Vd…検出電圧(検出値)、Vth…しきい値、Vdoff…検出電圧(リレー接点開放時)、Vdon…検出電圧(リレー接点接続時)、ΔVd…差分値、ΔVth…差分しきい値、GND…接地。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1対の電源供給線のそれぞれに設けられた2つのリレー接点を介して当該電源供給線の電源が供給される負荷回路の異常を検出する回路異常検出装置であって、
前記電源供給線と前記負荷回路との間に接続されて、前記電源供給線と前記負荷回路との間で接地を介して流れる漏洩電流の大きさに応じた検出値を検出する検出部と、
前記リレー接点の開放時に得られた前記検出値に基づいて、前記接地に対する前記負荷回路の絶縁劣化の有無を判定する判定部と
を備えることを特徴とする回路異常検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の回路異常検出装置において、
前記判定部は、前記リレー接点の開放時に得られた前記検出値を、前記接地に対する前記負荷回路の絶縁抵抗が正常範囲の下限値まで低下した際に得られる前記検出値を示すしきい値と比較し、この比較結果に応じて前記負荷回路の絶縁劣化の有無を判定することを特徴とする回路異常検出装置。
【請求項3】
請求項1に記載の回路異常検出装置において、
前記判定部は、前記リレー接点の開放時に得られた前記検出値と前記リレー接点の接続時に得られた前記検出値との差分値を算出して、前記接地に対する前記負荷回路の絶縁抵抗が正常範囲の下限値まで低下した際に得られる前記リレー接点の開放時の前記検出値と前記リレー接点の接続時に得られる前記検出値との差分値を示す差分しきい値と比較し、この比較結果に応じて前記負荷回路の絶縁劣化の有無を判定することを特徴とする回路異常検出装置。
【請求項4】
1対の電源供給線のそれぞれに設けられた2つのリレー接点を介して当該電源供給線の電源が供給される負荷回路の異常を検出する回路異常検出方法であって、
前記電源供給線と前記負荷回路との間に接続されて、前記電源供給線と前記負荷回路との間で接地を介して流れる漏洩電流の大きさに応じた検出値を検出する検出ステップと、
前記リレー接点の開放時に得られた前記検出値に基づいて、前記接地に対する前記負荷回路の絶縁劣化の有無を判定する判定ステップと
を備えることを特徴とする回路異常検出方法。
【請求項5】
請求項4に記載の回路異常検出方法において、
前記判定ステップは、前記リレー接点の開放時に得られた前記検出値を、前記接地に対する前記負荷回路の絶縁抵抗が正常範囲の下限値まで低下した際に得られる前記検出値を示すしきい値と比較し、この比較結果に応じて前記負荷回路の絶縁劣化の有無を判定することを特徴とする回路異常検出方法。
【請求項6】
請求項4に記載の回路異常検出方法において、
前記判定ステップは、前記リレー接点の開放時に得られた前記検出値と前記リレー接点の接続時に得られた前記検出値との差分値を算出して、前記接地に対する前記負荷回路の絶縁抵抗が正常範囲の下限値まで低下した際に得られる前記リレー接点の開放時の前記検出値と前記リレー接点の接続時に得られる前記検出値との差分値を示す差分しきい値と比較し、この比較結果に応じて前記負荷回路の絶縁劣化の有無を判定することを特徴とする回路異常検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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