回路遮断器
【課題】全ての過電流領域において、直流電源または交流電源の両極を確実に遮断すること。
【解決手段】本発明は、電源10から負荷20に給電する給電回路に配置される回路遮断器に適用される。本発明の回路遮断器は、電源10の一方の極と負荷20との間に介挿されるヒューズ30と、ヒューズ30の溶断に連動して、電源10の両極を遮断するサーキットブレーカ40と、トリップコイル50とスイッチ60と外部電源80とが直列に接続されて構成された閉ループと、ヒューズ30の溶断に連動して、スイッチ60を閉状態にするスイッチ駆動部70と、を備える。トリップコイル50は、スイッチ60が閉状態になると、外部電源80によって電圧が印加され、サーキットブレーカ40は、電圧印加されたトリップコイル50によって作動し、電源10の両極を遮断する。
【解決手段】本発明は、電源10から負荷20に給電する給電回路に配置される回路遮断器に適用される。本発明の回路遮断器は、電源10の一方の極と負荷20との間に介挿されるヒューズ30と、ヒューズ30の溶断に連動して、電源10の両極を遮断するサーキットブレーカ40と、トリップコイル50とスイッチ60と外部電源80とが直列に接続されて構成された閉ループと、ヒューズ30の溶断に連動して、スイッチ60を閉状態にするスイッチ駆動部70と、を備える。トリップコイル50は、スイッチ60が閉状態になると、外部電源80によって電圧が印加され、サーキットブレーカ40は、電圧印加されたトリップコイル50によって作動し、電源10の両極を遮断する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流電源または交流電源から負荷に給電する給電回路において、負荷に過電流事故や短絡事故が発生した場合に、電源の両極を遮断する回路遮断器に関する。
【背景技術】
【0002】
直流電源から負荷に給電する直流給電回路には、負荷に過電流事故や短絡事故が発生した場合に、直流電源の正負両極を遮断する回路遮断器が設けられている。
【0003】
回路遮断器の一例としては、図14に示すように、直流電源10の正負両極と負荷20との間にそれぞれヒューズ300A,300Bを介挿し、過電流によりヒューズ300A,300Bが溶断して、直流電源10の正負両極を遮断する回路遮断器がある。
【0004】
回路遮断器の他の例としては、図15に示すように、直流電源10の正負両極と負荷20との間にそれぞれサーキットブレーカ400の主接点400A,400Bを介挿し、過電流により主接点400A,400Bを連動して断路して、直流電源10の正負両極を遮断する回路遮断器がある。
【0005】
回路遮断器のさらに他の例としては、図16に示すように、上記の2つの例を組み合せた回路遮断器、即ち、直流電源10の正負両極と負荷20との間に、それぞれサーキットブレーカ400の主接点400A,400Bを介挿し、さらに、主接点400A,400Bと直列にそれぞれヒューズ300A,300Bを介挿した回路遮断器がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許3091712号公報
【特許文献2】特許2513850号公報
【特許文献3】特許2998934号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、図14〜図16に示した回路遮断器には、それぞれ次のような課題がある。
【0008】
図14に示したヒューズ300A,300Bを用いる回路遮断器では、2つのヒューズ300A,300Bが同一の閉回路内で直列に接続されている。このため、負荷20に過電流事故や短絡事故が発生した場合には、両ヒューズ300A,300Bには同じ電流が流れるので、理論上は両ヒューズ300A,300Bが同時に溶断することになる。
【0009】
しかし、実際は、ヒューズ300A,300Bの特性には個体差があるため、ヒューズ300A,300Bの片方のみが溶断する場合がある。この場合、直流電源10のヒューズが溶断した極は負荷20から切り離されるが、溶断しなかった極は負荷20と接続されたままとなる。このため、溶断しなかった極とアースとの間に電位差があると、人体が充電部に触れた際に感電する危険性があるという課題がある。
【0010】
図15に示したサーキットブレーカ400を用いる回路遮断器では、直流電源10の正負両極を連動して遮断するので、負荷20の過電流事故発生時に、直流電源10の正負両極を一括して遮断することが可能である。
【0011】
しかし、サーキットブレーカ400は、遮断容量範囲内であっても、定格電流を大きく超え、主接点400A,400Bがアークにより損傷するような大電流を遮断すると、次回以降の使用の保証が確保できないという課題がある。
【0012】
図16に示したヒューズ300A,300Bとサーキットブレーカ400とを用いる回路遮断器では、サーキットブレーカ400とヒューズ300A,300Bとの保護協調のとり方、即ち、サーキットブレーカ400の遮断特性とヒューズ300A,300Bの溶断特性との組み合わせ方にしたがい、サーキットブレーカ400およびヒューズ300A,300Bのうち遮断時間の短い方が遮断動作を行う。
【0013】
図17は、図16に示した回路遮断器における電流と遮断時間との関係を示す図である。
【0014】
図17に示すように、定格電流を超える過電流領域において、電流の小さい範囲では、サーキットブレーカ400の遮断時間がヒューズ300A,300Bよりも短く設定されているため、サーキットブレーカ400が遮断動作を行う。また、電流の大きい範囲では、ヒューズ300A,300Bの遮断時間がサーキットブレーカ400よりも短く設定されているため、ヒューズ300A,300Bが遮断動作を行う。
【0015】
このとき、サーキットブレーカ400の遮断特性とヒューズ300A,300Bの溶断特性との交点を、サーキットブレーカ400の繰り返し使用が保証される規定電流値以下とすれば、サーキットブレーカ400の繰り返し使用が保証されない電流範囲の遮断はヒューズ300A,300Bが担うこととなる。
【0016】
即ち、サーキットブレーカ400の繰り返し使用が保証される規定電流値を超える電流はヒューズ300A,300Bが遮断するので、サーキットブレーカ400が損傷することはない。
【0017】
また、サーキットブレーカ400が遮断動作を行う電流領域では、サーキットブレーカ400が直流電源10の正負両極を連動して遮断するため、直流電源10の正負両極を確実に遮断することができる。
【0018】
一方、ヒューズ300A,300Bが遮断する電流範囲を広く取ることでサーキットブレーカ400の繰り返し使用が保証される規定電流値を小さくできるため、回路遮断器のサイズを小さくすることもできる。
【0019】
しかし、ヒューズ300A,300Bが遮断動作を行う電流領域では、過電流が発生してもサーキットブレーカ400が遮断動作を行わず閉状態のままとなるため、上述したヒューズ300A,300Bの溶断特性の個体差の問題から、直流電源10の正負両極の確実な遮断は保証されないという課題が依然として残る。
【0020】
そこで、本発明は、上記課題を解決し、全ての過電流領域において、直流電源の正負両極を確実に遮断することができる回路遮断器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の回路遮断器は、
直流または交流の電源から負荷に給電する給電回路に配置される回路遮断器であって、
前記電源の一方の極と前記負荷との間に介挿されるヒューズと、
前記ヒューズの溶断に連動して、前記電源の両極を遮断するサーキットブレーカと、
トリップコイルとスイッチと外部電源とが直列に接続されて構成された閉ループと、
前記ヒューズの溶断に連動して、前記スイッチを閉状態にするスイッチ駆動手段と、を備え、
前記トリップコイルは、前記スイッチが閉状態になると、前記外部電源によって電圧が印加され、
前記サーキットブレーカは、電圧印加された前記トリップコイルによって作動し、前記電源の両極を遮断することを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明では、負荷に過電流事故や短絡事故が発生すると、電源の一方の極と負荷との間に介挿されたヒューズが溶断し、このヒューズの溶断に連動して、サーキットブレーカが、電源の少なくともヒューズが介挿されていない他方の極を遮断する。
【0023】
そのため、本発明では、負荷に過電流事故や短絡事故が発生した場合、ヒューズの遮断容量の範囲内であれば、全ての過電流領域で電源の正負両極を一括して遮断することができるという効果が得られる。
【0024】
また、本発明では、直流電源の正負両極に、サーキットブレーカの主接点を介挿し、さらにヒューズも介挿する従来構成(図16)よりも、ヒューズやサーキットブレーカの主接点の設置数を減らすことができるため、設置スペースや製造コストの低減を図ることができるという効果が得られる。
【0025】
また、本発明では、全ての過電流領域でヒューズの溶断時間よりも遮断時間が長いサーキットブレーカを使用した場合や、過電流によっては遮断動作を行わないサーキットブレーカを使用した場合であっても、過電流によりヒューズが溶断し、サーキットブレーカがトリップするため、電源の両極を遮断することができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1の実施形態の回路遮断器の構成を示す図である。
【図2】本発明の第2の実施形態の回路遮断器における電流と遮断時間との関係を示す図である。
【図3】本発明の実施例1の回路遮断器の構成を示す図である。
【図4】本発明の実施例2の回路遮断器の構成を示す図である。
【図5】本発明の実施例3の回路遮断器の構成を示す図である。
【図6】本発明の実施例2の回路遮断器における不完全短絡事故発生時の状態を示す図である。
【図7】本発明の実施例3の回路遮断器における不完全短絡事故発生時の状態を示す図である。
【図8】本発明の実施例4の回路遮断器の構成を示す図である。
【図9】本発明の第2の実施形態の回路遮断器の構成を示す図である。
【図10】本発明の実施例5の回路遮断器の構成を示す図である。
【図11】本発明の実施例6の回路遮断器の構成を示す図である。
【図12】本発明の実施例7の回路遮断器の構成を示す図である。
【図13】本発明の実施例8の回路遮断器の構成を示す図である。
【図14】従来の回路遮断器の一構成例を示す図である。
【図15】従来の回路遮断器の他の構成例を示す図である。
【図16】従来の回路遮断器のさらに他の構成例を示す図である。
【図17】図16に示した回路遮断器における電流と遮断時間との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態の回路遮断器の構成を示す図である。
【0028】
図1を参照すると、本実施形態の回路遮断器は、直流電源10から負荷20に給電する直流給電回路に配置されるものであり、直流電源10の正負両極と負荷20との間にそれぞれ主接点40A,40Bが介挿されたサーキットブレーカ40と、直流電源10の正極と負荷20との間に、主接点40Bと直列に介挿されたヒューズ30と、ヒューズ30の溶断に連動して電圧が印加され、サーキットブレーカ40を作動させる電圧トリップコイル50と、を有する。
【0029】
なお、図1において、サーキットブレーカ40および電圧トリップコイル50は、MCCB(Molded Case Circuit Breaker:配線用遮断器)として一体化されている。
【0030】
また、図1において、ヒューズ30の接続位置を、直流電源10の正極側で、サーキットブレーカ40の負荷側としたが、本発明はこれに限らず、ヒューズ30の接続位置は、直流電源10の正極側でも負極側でもどちらでもよく、また、サーキットブレーカ40の電源側でも負荷側でもどちらでもよい。
【0031】
本実施形態の回路遮断器では、負荷20に過電流事故または短絡事故が発生し、ヒューズ30が溶断すると、以下に挙げる3つの方法のいずれかにより電圧トリップコイル50に電圧が印加され、それにより、サーキットブレーカ40が主接点40A,40Bを連動して断路して、直流電源10の正負両極を遮断(トリップ)する。
(1)第1の給電系統連携方法
(2)第2の給電系統連携方法
(3)制御系統連携方法
これにより、図17に示したヒューズが溶断する電流領域においても、サーキットブレーカ40のトリップにより直流電源10の正負両極の遮断動作が行われるため、全ての過電流領域において、直流電源10の正負両極を確実に遮断することが可能となる。
【0032】
なお、本実施形態においては、サーキットブレーカ40として、図2に示すような、全ての過電流領域でヒューズ30の溶断時間よりも遮断時間が長いサーキットブレーカを使用した場合や、過電流により自動的にトリップしないサーキットブレーカを使用した場合であっても、過電流によりヒューズ30が溶断し、サーキットブレーカ40がトリップするため、直流電源10の正負両極を遮断することができる。
【0033】
以下、本実施形態の回路遮断器の具体的な実施例について説明する。
【実施例1】
【0034】
図3は、本発明の実施例1の回路遮断器の構成を示す図である。
【0035】
本実施例は、電圧トリップコイル50への電圧印加方法として、上述の(1)第1の給電系統連携方法を適用した場合の第1の実施形態の回路遮断器の例である。
【0036】
図3を参照すると、本実施例の回路遮断器では、電圧トリップコイル50は、ヒューズ30の両端に並列に接続されている。
【0037】
ヒューズ30の抵抗は、ミリオーム程度であり正常状態では電圧トリップコイル50に電圧はほとんど印加されないため、サーキットブレーカ40はトリップしない。
【0038】
しかし、負荷20に過電流事故または短絡事故が発生し、ヒューズ30が溶断すると、ヒューズ30の両端の電位差によって電圧が発生し、その電圧が電圧トリップコイル50に印加されるので、サーキットブレーカ40がトリップし、直流電源10の正負両極が遮断される。
【実施例2】
【0039】
図4は、本発明の実施例2の回路遮断器の構成を示す図である。
【0040】
本実施例は、電圧トリップコイル50への電圧印加方法として、上述の(2)第2の給電系統連携方法を適用した場合の第1の実施形態の回路遮断器の例である。
【0041】
図4を参照すると、本実施例の回路遮断器は、図3の実施例1の回路遮断器と比較して、ヒューズ30と電圧トリップコイル50との間に介挿されたA接点スイッチ60と、ヒューズ30の溶断を検知して、A接点スイッチ60を閉状態にするスイッチ駆動部70と、を追加している。
【0042】
ここで、スイッチ駆動部70を実現する方法としては、ヒューズ30の溶断を電気的に検出するセンサと電磁リレーとを組み合わせる方法や、ヒューズ30に併設される警報ヒューズと警報ヒューズの溶断により移動するバネとを組み合わせる方法などがあるが、本発明はこれに限らず、A接点を駆動(閉状態)できればどのような方法でもかまわない。
【0043】
本実施例では、実施例1と同様に、電圧トリップコイル50が電源系統に挿入されるが、ヒューズ30の溶断前は、A接点スイッチ60が開状態であるため、電圧トリップコイル50に電圧が印加されない。
【0044】
しかし、負荷20に過電流事故または短絡事故が発生し、ヒューズ30が溶断すると、ヒューズ30の溶断後にスイッチ駆動部70を介してA接点スイッチ60が閉状態となり、電圧トリップコイル50に電圧が印加され、サーキットブレーカ40がトリップし、直流電源10の正負両極が遮断される。
【0045】
実施例1では、本実施例よりも回路構成が簡易である反面、電圧トリップコイル50の両端にはヒューズ30を介した閉ループが形成されているため、電源系統からのノイズなどの電磁誘導作用により、電圧トリップコイル50に電圧が発生し、サーキットブレーカ40が誤作動する危険性がある。しかし、本実施例によれば、この問題を防ぐことが可能となる。
【実施例3】
【0046】
図5は、本発明の実施例3の回路遮断器の構成を示す図である。
【0047】
本実施例は、電圧トリップコイル50への電圧印加方法として、上述の(2)第2の給電系統連携方法を適用した場合の第1の実施形態の回路遮断器の例である。
【0048】
図5を参照すると、本実施例の回路遮断器は、図4の実施例2の回路遮断器と比較して、電圧トリップコイル50の片端の接続先のみが異なり、その他の構成は同様である。
【0049】
すなわち、直列接続された電圧トリップコイル50とA接点スイッチ60とをサブ回路と定義すると、実施例2では、サブ回路は、ヒューズ30の両端に接続されているのに対し、本実施例では、サブ回路は、一端がヒューズ30の直流電源10側の電路に接続され、他端が直流電源10のヒューズ30が介挿されていない極側の電路に接続されている。
【0050】
ここで、負荷20に不完全短絡事故が発生し、ヒューズ30が溶断した場合を考える。不完全短絡事故とは、事故後も負荷20に一定の抵抗値が残る事故のことである。
【0051】
実施例2では、図6に示すように、負荷20に不完全短絡事故が発生し(状態1)、ヒューズ30の溶断によりA接点スイッチ60が閉状態になった場合(状態2)、直流電源10の電圧は、電圧トリップコイル50と不完全に短絡した負荷20と、に分圧される。そうすると、MCCBの仕様などにもよるが、電圧トリップコイル50に十分な電圧が印加されず、サーキットブレーカ40がトリップしない可能性がある。
【0052】
これに対して、本実施例では、図7に示すように、負荷20に不完全短絡事故が発生し(状態1)、ヒューズ30の溶断によりA接点スイッチ60が閉状態になった場合でも(状態2)、実施例2のような分圧は起こらず、直流電源10の電圧は、負荷20の状態とは関係なく、電圧トリップコイル50に印加される。よって、MCCBでの遮断エラーを防ぐことが可能となる。
【実施例4】
【0053】
図8は、本発明の実施例4の回路遮断器の構成を示す図である。
【0054】
本実施例は、電圧トリップコイル50への電圧印加方法として、上述の(3)制御系統連携方法を適用した場合の第1の実施形態の回路遮断器の例である。
【0055】
図8を参照すると、本実施例の回路遮断器は、図4の実施例2の回路遮断器と比較して、電圧トリップコイル50に電圧を印加するための外部電源80を追加し、電圧トリップコイル50とA接点スイッチ60と外部電源80とを直列に接続して閉ループを形成している。
【0056】
本実施例では、スイッチ駆動部70を介してA接点スイッチ60が閉状態となると、電圧トリップコイル50へ外部電源80から電圧が印加され、サーキットブレーカ40がトリップし、直流電源10の正負両極が遮断される。
【0057】
実施例1,2では、本実施例よりも回路構成が簡易である反面、ヒューズ30の溶断後に電圧トリップコイル50に印加される電圧は、負荷20やサーキットブレーカ40自体のインピーダンスの影響を受けるため、これらのインピーダンスを考慮して回路遮断器の設計を実施しないと電圧トリップコイル50を動作させるための電圧を得られない場合や、電圧トリップコイル50に規格電圧値以上の電圧が印加される場合があり得る。しかし、本実施例によれば、この問題を解消することが可能となる。
[第2の実施形態]
図9は、本発明の第2の実施形態の回路遮断器の構成を示す図である。
【0058】
図9を参照すると、本実施形態の回路遮断器は、図1の第1の実施形態の回路遮断器と比較して、サーキットブレーカ40が、電圧印加された電圧トリップコイル50によって、直流電源10のヒューズ30が介挿されていない極と負荷20との間に介挿された主接点40Aのみを断路する点が異なる。
【0059】
ただし、サーキットブレーカ40としては、図2に示すように、全ての過電流領域でヒューズ30の溶断時間よりも遮断時間が長いサーキットブレーカを使用するか、もしくは、過電流により自動的にトリップしないサーキットブレーカを使用することが要件となる。なぜならば、サーキットブレーカ40がヒューズ30よりも先に遮断動作を行うと、ヒューズ30を介挿した極が遮断されないためである。
【0060】
この要件を満たせば、サーキットブレーカ40の主接点を片極に介挿するだけで直流電源10の正負両極を遮断できるため、サーキットブレーカ40の主接点を直流電源10の正負両極に介挿する第1の実施形態の構成と比較して、設置スペースや製造コストの低減を行うことができる。
【0061】
以下、本実施形態の回路遮断器の具体的な実施例について説明する。
【実施例5】
【0062】
図10は、本発明の実施例5の回路遮断器の構成を示す図である。
【0063】
本実施例は、電圧トリップコイル50への電圧印加方法として、上述の(1)第1の給電系統連携方法を適用した場合の第2の実施形態の回路遮断器の例である。
【0064】
本実施例の回路遮断器は、図3の実施例1の回路遮断器と比較して、直流電源10の片極にのみサーキットブレーカ40の主接点40Aを介挿し、この主接点40Aのみを断路する点が異なり、その他の構成および動作は同様であるため、説明を省略する。
【実施例6】
【0065】
図11は、本発明の実施例6の回路遮断器の構成を示す図である。
【0066】
本実施例は、電圧トリップコイル50への電圧印加方法として、上述の(2)第2の給電系統連携方法を適用した場合の第2の実施形態の回路遮断器の例である。
【0067】
本実施例の回路遮断器は、図4の実施例2の回路遮断器と比較して、直流電源10の片極にのみサーキットブレーカ40の主接点40Aを介挿し、この主接点40Aのみを断路する点が異なり、その他の構成および動作は同様であるため、説明を省略する。
【実施例7】
【0068】
図12は、本発明の実施例7の回路遮断器の構成を示す図である。
【0069】
本実施例は、電圧トリップコイル50への電圧印加方法として、上述の(2)第2の給電系統連携方法を適用した場合の第2の実施形態の回路遮断器の例である。
【0070】
本実施例の回路遮断器は、図5の実施例3の回路遮断器と比較して、直流電源10の片極にのみサーキットブレーカ40の主接点40Aを介挿し、この主接点40Aのみを断路する点が異なり、その他の構成および動作は同様であるため、説明を省略する。
【実施例8】
【0071】
図14は、本発明の実施例8の回路遮断器の構成を示す図である。
【0072】
本実施例は、電圧トリップコイル50への電圧印加方法として、上述の(3)制御系統連携方法を適用した場合の第2の実施形態の回路遮断器の例である。
【0073】
本実施例の回路遮断器は、図8の実施例4の回路遮断器と比較して、直流電源10の片極にのみサーキットブレーカ40の主接点40Aを介挿し、この主接点40Aのみを断路する点が異なり、その他の構成および動作は同様であるため、説明を省略する。
【0074】
なお、本実施形態においては、本発明の回路遮断器を、直流電源から負荷に給電する直流給電回路に適用した例を説明したが、本発明はこれに限定されず、交流電源から負荷に給電する交流給電回路にも同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0075】
10 直流電源
20 負荷
30 ヒューズ
40 サーキットブレーカ
40A,40B 主接点
50 電圧トリップコイル
60 A接点スイッチ
70 スイッチ駆動部
80 外部電源
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流電源または交流電源から負荷に給電する給電回路において、負荷に過電流事故や短絡事故が発生した場合に、電源の両極を遮断する回路遮断器に関する。
【背景技術】
【0002】
直流電源から負荷に給電する直流給電回路には、負荷に過電流事故や短絡事故が発生した場合に、直流電源の正負両極を遮断する回路遮断器が設けられている。
【0003】
回路遮断器の一例としては、図14に示すように、直流電源10の正負両極と負荷20との間にそれぞれヒューズ300A,300Bを介挿し、過電流によりヒューズ300A,300Bが溶断して、直流電源10の正負両極を遮断する回路遮断器がある。
【0004】
回路遮断器の他の例としては、図15に示すように、直流電源10の正負両極と負荷20との間にそれぞれサーキットブレーカ400の主接点400A,400Bを介挿し、過電流により主接点400A,400Bを連動して断路して、直流電源10の正負両極を遮断する回路遮断器がある。
【0005】
回路遮断器のさらに他の例としては、図16に示すように、上記の2つの例を組み合せた回路遮断器、即ち、直流電源10の正負両極と負荷20との間に、それぞれサーキットブレーカ400の主接点400A,400Bを介挿し、さらに、主接点400A,400Bと直列にそれぞれヒューズ300A,300Bを介挿した回路遮断器がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許3091712号公報
【特許文献2】特許2513850号公報
【特許文献3】特許2998934号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、図14〜図16に示した回路遮断器には、それぞれ次のような課題がある。
【0008】
図14に示したヒューズ300A,300Bを用いる回路遮断器では、2つのヒューズ300A,300Bが同一の閉回路内で直列に接続されている。このため、負荷20に過電流事故や短絡事故が発生した場合には、両ヒューズ300A,300Bには同じ電流が流れるので、理論上は両ヒューズ300A,300Bが同時に溶断することになる。
【0009】
しかし、実際は、ヒューズ300A,300Bの特性には個体差があるため、ヒューズ300A,300Bの片方のみが溶断する場合がある。この場合、直流電源10のヒューズが溶断した極は負荷20から切り離されるが、溶断しなかった極は負荷20と接続されたままとなる。このため、溶断しなかった極とアースとの間に電位差があると、人体が充電部に触れた際に感電する危険性があるという課題がある。
【0010】
図15に示したサーキットブレーカ400を用いる回路遮断器では、直流電源10の正負両極を連動して遮断するので、負荷20の過電流事故発生時に、直流電源10の正負両極を一括して遮断することが可能である。
【0011】
しかし、サーキットブレーカ400は、遮断容量範囲内であっても、定格電流を大きく超え、主接点400A,400Bがアークにより損傷するような大電流を遮断すると、次回以降の使用の保証が確保できないという課題がある。
【0012】
図16に示したヒューズ300A,300Bとサーキットブレーカ400とを用いる回路遮断器では、サーキットブレーカ400とヒューズ300A,300Bとの保護協調のとり方、即ち、サーキットブレーカ400の遮断特性とヒューズ300A,300Bの溶断特性との組み合わせ方にしたがい、サーキットブレーカ400およびヒューズ300A,300Bのうち遮断時間の短い方が遮断動作を行う。
【0013】
図17は、図16に示した回路遮断器における電流と遮断時間との関係を示す図である。
【0014】
図17に示すように、定格電流を超える過電流領域において、電流の小さい範囲では、サーキットブレーカ400の遮断時間がヒューズ300A,300Bよりも短く設定されているため、サーキットブレーカ400が遮断動作を行う。また、電流の大きい範囲では、ヒューズ300A,300Bの遮断時間がサーキットブレーカ400よりも短く設定されているため、ヒューズ300A,300Bが遮断動作を行う。
【0015】
このとき、サーキットブレーカ400の遮断特性とヒューズ300A,300Bの溶断特性との交点を、サーキットブレーカ400の繰り返し使用が保証される規定電流値以下とすれば、サーキットブレーカ400の繰り返し使用が保証されない電流範囲の遮断はヒューズ300A,300Bが担うこととなる。
【0016】
即ち、サーキットブレーカ400の繰り返し使用が保証される規定電流値を超える電流はヒューズ300A,300Bが遮断するので、サーキットブレーカ400が損傷することはない。
【0017】
また、サーキットブレーカ400が遮断動作を行う電流領域では、サーキットブレーカ400が直流電源10の正負両極を連動して遮断するため、直流電源10の正負両極を確実に遮断することができる。
【0018】
一方、ヒューズ300A,300Bが遮断する電流範囲を広く取ることでサーキットブレーカ400の繰り返し使用が保証される規定電流値を小さくできるため、回路遮断器のサイズを小さくすることもできる。
【0019】
しかし、ヒューズ300A,300Bが遮断動作を行う電流領域では、過電流が発生してもサーキットブレーカ400が遮断動作を行わず閉状態のままとなるため、上述したヒューズ300A,300Bの溶断特性の個体差の問題から、直流電源10の正負両極の確実な遮断は保証されないという課題が依然として残る。
【0020】
そこで、本発明は、上記課題を解決し、全ての過電流領域において、直流電源の正負両極を確実に遮断することができる回路遮断器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の回路遮断器は、
直流または交流の電源から負荷に給電する給電回路に配置される回路遮断器であって、
前記電源の一方の極と前記負荷との間に介挿されるヒューズと、
前記ヒューズの溶断に連動して、前記電源の両極を遮断するサーキットブレーカと、
トリップコイルとスイッチと外部電源とが直列に接続されて構成された閉ループと、
前記ヒューズの溶断に連動して、前記スイッチを閉状態にするスイッチ駆動手段と、を備え、
前記トリップコイルは、前記スイッチが閉状態になると、前記外部電源によって電圧が印加され、
前記サーキットブレーカは、電圧印加された前記トリップコイルによって作動し、前記電源の両極を遮断することを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明では、負荷に過電流事故や短絡事故が発生すると、電源の一方の極と負荷との間に介挿されたヒューズが溶断し、このヒューズの溶断に連動して、サーキットブレーカが、電源の少なくともヒューズが介挿されていない他方の極を遮断する。
【0023】
そのため、本発明では、負荷に過電流事故や短絡事故が発生した場合、ヒューズの遮断容量の範囲内であれば、全ての過電流領域で電源の正負両極を一括して遮断することができるという効果が得られる。
【0024】
また、本発明では、直流電源の正負両極に、サーキットブレーカの主接点を介挿し、さらにヒューズも介挿する従来構成(図16)よりも、ヒューズやサーキットブレーカの主接点の設置数を減らすことができるため、設置スペースや製造コストの低減を図ることができるという効果が得られる。
【0025】
また、本発明では、全ての過電流領域でヒューズの溶断時間よりも遮断時間が長いサーキットブレーカを使用した場合や、過電流によっては遮断動作を行わないサーキットブレーカを使用した場合であっても、過電流によりヒューズが溶断し、サーキットブレーカがトリップするため、電源の両極を遮断することができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1の実施形態の回路遮断器の構成を示す図である。
【図2】本発明の第2の実施形態の回路遮断器における電流と遮断時間との関係を示す図である。
【図3】本発明の実施例1の回路遮断器の構成を示す図である。
【図4】本発明の実施例2の回路遮断器の構成を示す図である。
【図5】本発明の実施例3の回路遮断器の構成を示す図である。
【図6】本発明の実施例2の回路遮断器における不完全短絡事故発生時の状態を示す図である。
【図7】本発明の実施例3の回路遮断器における不完全短絡事故発生時の状態を示す図である。
【図8】本発明の実施例4の回路遮断器の構成を示す図である。
【図9】本発明の第2の実施形態の回路遮断器の構成を示す図である。
【図10】本発明の実施例5の回路遮断器の構成を示す図である。
【図11】本発明の実施例6の回路遮断器の構成を示す図である。
【図12】本発明の実施例7の回路遮断器の構成を示す図である。
【図13】本発明の実施例8の回路遮断器の構成を示す図である。
【図14】従来の回路遮断器の一構成例を示す図である。
【図15】従来の回路遮断器の他の構成例を示す図である。
【図16】従来の回路遮断器のさらに他の構成例を示す図である。
【図17】図16に示した回路遮断器における電流と遮断時間との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態の回路遮断器の構成を示す図である。
【0028】
図1を参照すると、本実施形態の回路遮断器は、直流電源10から負荷20に給電する直流給電回路に配置されるものであり、直流電源10の正負両極と負荷20との間にそれぞれ主接点40A,40Bが介挿されたサーキットブレーカ40と、直流電源10の正極と負荷20との間に、主接点40Bと直列に介挿されたヒューズ30と、ヒューズ30の溶断に連動して電圧が印加され、サーキットブレーカ40を作動させる電圧トリップコイル50と、を有する。
【0029】
なお、図1において、サーキットブレーカ40および電圧トリップコイル50は、MCCB(Molded Case Circuit Breaker:配線用遮断器)として一体化されている。
【0030】
また、図1において、ヒューズ30の接続位置を、直流電源10の正極側で、サーキットブレーカ40の負荷側としたが、本発明はこれに限らず、ヒューズ30の接続位置は、直流電源10の正極側でも負極側でもどちらでもよく、また、サーキットブレーカ40の電源側でも負荷側でもどちらでもよい。
【0031】
本実施形態の回路遮断器では、負荷20に過電流事故または短絡事故が発生し、ヒューズ30が溶断すると、以下に挙げる3つの方法のいずれかにより電圧トリップコイル50に電圧が印加され、それにより、サーキットブレーカ40が主接点40A,40Bを連動して断路して、直流電源10の正負両極を遮断(トリップ)する。
(1)第1の給電系統連携方法
(2)第2の給電系統連携方法
(3)制御系統連携方法
これにより、図17に示したヒューズが溶断する電流領域においても、サーキットブレーカ40のトリップにより直流電源10の正負両極の遮断動作が行われるため、全ての過電流領域において、直流電源10の正負両極を確実に遮断することが可能となる。
【0032】
なお、本実施形態においては、サーキットブレーカ40として、図2に示すような、全ての過電流領域でヒューズ30の溶断時間よりも遮断時間が長いサーキットブレーカを使用した場合や、過電流により自動的にトリップしないサーキットブレーカを使用した場合であっても、過電流によりヒューズ30が溶断し、サーキットブレーカ40がトリップするため、直流電源10の正負両極を遮断することができる。
【0033】
以下、本実施形態の回路遮断器の具体的な実施例について説明する。
【実施例1】
【0034】
図3は、本発明の実施例1の回路遮断器の構成を示す図である。
【0035】
本実施例は、電圧トリップコイル50への電圧印加方法として、上述の(1)第1の給電系統連携方法を適用した場合の第1の実施形態の回路遮断器の例である。
【0036】
図3を参照すると、本実施例の回路遮断器では、電圧トリップコイル50は、ヒューズ30の両端に並列に接続されている。
【0037】
ヒューズ30の抵抗は、ミリオーム程度であり正常状態では電圧トリップコイル50に電圧はほとんど印加されないため、サーキットブレーカ40はトリップしない。
【0038】
しかし、負荷20に過電流事故または短絡事故が発生し、ヒューズ30が溶断すると、ヒューズ30の両端の電位差によって電圧が発生し、その電圧が電圧トリップコイル50に印加されるので、サーキットブレーカ40がトリップし、直流電源10の正負両極が遮断される。
【実施例2】
【0039】
図4は、本発明の実施例2の回路遮断器の構成を示す図である。
【0040】
本実施例は、電圧トリップコイル50への電圧印加方法として、上述の(2)第2の給電系統連携方法を適用した場合の第1の実施形態の回路遮断器の例である。
【0041】
図4を参照すると、本実施例の回路遮断器は、図3の実施例1の回路遮断器と比較して、ヒューズ30と電圧トリップコイル50との間に介挿されたA接点スイッチ60と、ヒューズ30の溶断を検知して、A接点スイッチ60を閉状態にするスイッチ駆動部70と、を追加している。
【0042】
ここで、スイッチ駆動部70を実現する方法としては、ヒューズ30の溶断を電気的に検出するセンサと電磁リレーとを組み合わせる方法や、ヒューズ30に併設される警報ヒューズと警報ヒューズの溶断により移動するバネとを組み合わせる方法などがあるが、本発明はこれに限らず、A接点を駆動(閉状態)できればどのような方法でもかまわない。
【0043】
本実施例では、実施例1と同様に、電圧トリップコイル50が電源系統に挿入されるが、ヒューズ30の溶断前は、A接点スイッチ60が開状態であるため、電圧トリップコイル50に電圧が印加されない。
【0044】
しかし、負荷20に過電流事故または短絡事故が発生し、ヒューズ30が溶断すると、ヒューズ30の溶断後にスイッチ駆動部70を介してA接点スイッチ60が閉状態となり、電圧トリップコイル50に電圧が印加され、サーキットブレーカ40がトリップし、直流電源10の正負両極が遮断される。
【0045】
実施例1では、本実施例よりも回路構成が簡易である反面、電圧トリップコイル50の両端にはヒューズ30を介した閉ループが形成されているため、電源系統からのノイズなどの電磁誘導作用により、電圧トリップコイル50に電圧が発生し、サーキットブレーカ40が誤作動する危険性がある。しかし、本実施例によれば、この問題を防ぐことが可能となる。
【実施例3】
【0046】
図5は、本発明の実施例3の回路遮断器の構成を示す図である。
【0047】
本実施例は、電圧トリップコイル50への電圧印加方法として、上述の(2)第2の給電系統連携方法を適用した場合の第1の実施形態の回路遮断器の例である。
【0048】
図5を参照すると、本実施例の回路遮断器は、図4の実施例2の回路遮断器と比較して、電圧トリップコイル50の片端の接続先のみが異なり、その他の構成は同様である。
【0049】
すなわち、直列接続された電圧トリップコイル50とA接点スイッチ60とをサブ回路と定義すると、実施例2では、サブ回路は、ヒューズ30の両端に接続されているのに対し、本実施例では、サブ回路は、一端がヒューズ30の直流電源10側の電路に接続され、他端が直流電源10のヒューズ30が介挿されていない極側の電路に接続されている。
【0050】
ここで、負荷20に不完全短絡事故が発生し、ヒューズ30が溶断した場合を考える。不完全短絡事故とは、事故後も負荷20に一定の抵抗値が残る事故のことである。
【0051】
実施例2では、図6に示すように、負荷20に不完全短絡事故が発生し(状態1)、ヒューズ30の溶断によりA接点スイッチ60が閉状態になった場合(状態2)、直流電源10の電圧は、電圧トリップコイル50と不完全に短絡した負荷20と、に分圧される。そうすると、MCCBの仕様などにもよるが、電圧トリップコイル50に十分な電圧が印加されず、サーキットブレーカ40がトリップしない可能性がある。
【0052】
これに対して、本実施例では、図7に示すように、負荷20に不完全短絡事故が発生し(状態1)、ヒューズ30の溶断によりA接点スイッチ60が閉状態になった場合でも(状態2)、実施例2のような分圧は起こらず、直流電源10の電圧は、負荷20の状態とは関係なく、電圧トリップコイル50に印加される。よって、MCCBでの遮断エラーを防ぐことが可能となる。
【実施例4】
【0053】
図8は、本発明の実施例4の回路遮断器の構成を示す図である。
【0054】
本実施例は、電圧トリップコイル50への電圧印加方法として、上述の(3)制御系統連携方法を適用した場合の第1の実施形態の回路遮断器の例である。
【0055】
図8を参照すると、本実施例の回路遮断器は、図4の実施例2の回路遮断器と比較して、電圧トリップコイル50に電圧を印加するための外部電源80を追加し、電圧トリップコイル50とA接点スイッチ60と外部電源80とを直列に接続して閉ループを形成している。
【0056】
本実施例では、スイッチ駆動部70を介してA接点スイッチ60が閉状態となると、電圧トリップコイル50へ外部電源80から電圧が印加され、サーキットブレーカ40がトリップし、直流電源10の正負両極が遮断される。
【0057】
実施例1,2では、本実施例よりも回路構成が簡易である反面、ヒューズ30の溶断後に電圧トリップコイル50に印加される電圧は、負荷20やサーキットブレーカ40自体のインピーダンスの影響を受けるため、これらのインピーダンスを考慮して回路遮断器の設計を実施しないと電圧トリップコイル50を動作させるための電圧を得られない場合や、電圧トリップコイル50に規格電圧値以上の電圧が印加される場合があり得る。しかし、本実施例によれば、この問題を解消することが可能となる。
[第2の実施形態]
図9は、本発明の第2の実施形態の回路遮断器の構成を示す図である。
【0058】
図9を参照すると、本実施形態の回路遮断器は、図1の第1の実施形態の回路遮断器と比較して、サーキットブレーカ40が、電圧印加された電圧トリップコイル50によって、直流電源10のヒューズ30が介挿されていない極と負荷20との間に介挿された主接点40Aのみを断路する点が異なる。
【0059】
ただし、サーキットブレーカ40としては、図2に示すように、全ての過電流領域でヒューズ30の溶断時間よりも遮断時間が長いサーキットブレーカを使用するか、もしくは、過電流により自動的にトリップしないサーキットブレーカを使用することが要件となる。なぜならば、サーキットブレーカ40がヒューズ30よりも先に遮断動作を行うと、ヒューズ30を介挿した極が遮断されないためである。
【0060】
この要件を満たせば、サーキットブレーカ40の主接点を片極に介挿するだけで直流電源10の正負両極を遮断できるため、サーキットブレーカ40の主接点を直流電源10の正負両極に介挿する第1の実施形態の構成と比較して、設置スペースや製造コストの低減を行うことができる。
【0061】
以下、本実施形態の回路遮断器の具体的な実施例について説明する。
【実施例5】
【0062】
図10は、本発明の実施例5の回路遮断器の構成を示す図である。
【0063】
本実施例は、電圧トリップコイル50への電圧印加方法として、上述の(1)第1の給電系統連携方法を適用した場合の第2の実施形態の回路遮断器の例である。
【0064】
本実施例の回路遮断器は、図3の実施例1の回路遮断器と比較して、直流電源10の片極にのみサーキットブレーカ40の主接点40Aを介挿し、この主接点40Aのみを断路する点が異なり、その他の構成および動作は同様であるため、説明を省略する。
【実施例6】
【0065】
図11は、本発明の実施例6の回路遮断器の構成を示す図である。
【0066】
本実施例は、電圧トリップコイル50への電圧印加方法として、上述の(2)第2の給電系統連携方法を適用した場合の第2の実施形態の回路遮断器の例である。
【0067】
本実施例の回路遮断器は、図4の実施例2の回路遮断器と比較して、直流電源10の片極にのみサーキットブレーカ40の主接点40Aを介挿し、この主接点40Aのみを断路する点が異なり、その他の構成および動作は同様であるため、説明を省略する。
【実施例7】
【0068】
図12は、本発明の実施例7の回路遮断器の構成を示す図である。
【0069】
本実施例は、電圧トリップコイル50への電圧印加方法として、上述の(2)第2の給電系統連携方法を適用した場合の第2の実施形態の回路遮断器の例である。
【0070】
本実施例の回路遮断器は、図5の実施例3の回路遮断器と比較して、直流電源10の片極にのみサーキットブレーカ40の主接点40Aを介挿し、この主接点40Aのみを断路する点が異なり、その他の構成および動作は同様であるため、説明を省略する。
【実施例8】
【0071】
図14は、本発明の実施例8の回路遮断器の構成を示す図である。
【0072】
本実施例は、電圧トリップコイル50への電圧印加方法として、上述の(3)制御系統連携方法を適用した場合の第2の実施形態の回路遮断器の例である。
【0073】
本実施例の回路遮断器は、図8の実施例4の回路遮断器と比較して、直流電源10の片極にのみサーキットブレーカ40の主接点40Aを介挿し、この主接点40Aのみを断路する点が異なり、その他の構成および動作は同様であるため、説明を省略する。
【0074】
なお、本実施形態においては、本発明の回路遮断器を、直流電源から負荷に給電する直流給電回路に適用した例を説明したが、本発明はこれに限定されず、交流電源から負荷に給電する交流給電回路にも同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0075】
10 直流電源
20 負荷
30 ヒューズ
40 サーキットブレーカ
40A,40B 主接点
50 電圧トリップコイル
60 A接点スイッチ
70 スイッチ駆動部
80 外部電源
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流または交流の電源から負荷に給電する給電回路に配置される回路遮断器であって、
前記電源の一方の極と前記負荷との間に介挿されるヒューズと、
前記ヒューズの溶断に連動して、前記電源の両極を遮断するサーキットブレーカと、
トリップコイルとスイッチと外部電源とが直列に接続されて構成された閉ループと、
前記ヒューズの溶断に連動して、前記スイッチを閉状態にするスイッチ駆動手段と、を備え、
前記トリップコイルは、前記スイッチが閉状態になると、前記外部電源によって電圧が印加され、
前記サーキットブレーカは、電圧印加された前記トリップコイルによって作動し、前記電源の両極を遮断することを特徴とする回路遮断器。
【請求項1】
直流または交流の電源から負荷に給電する給電回路に配置される回路遮断器であって、
前記電源の一方の極と前記負荷との間に介挿されるヒューズと、
前記ヒューズの溶断に連動して、前記電源の両極を遮断するサーキットブレーカと、
トリップコイルとスイッチと外部電源とが直列に接続されて構成された閉ループと、
前記ヒューズの溶断に連動して、前記スイッチを閉状態にするスイッチ駆動手段と、を備え、
前記トリップコイルは、前記スイッチが閉状態になると、前記外部電源によって電圧が印加され、
前記サーキットブレーカは、電圧印加された前記トリップコイルによって作動し、前記電源の両極を遮断することを特徴とする回路遮断器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2013−8698(P2013−8698A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−209515(P2012−209515)
【出願日】平成24年9月24日(2012.9.24)
【分割の表示】特願2010−68342(P2010−68342)の分割
【原出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年9月24日(2012.9.24)
【分割の表示】特願2010−68342(P2010−68342)の分割
【原出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
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