説明

回転ツール

【課題】接合又は表面改質の処理が難しい金属材に対してもより長い寿命を有する回転ツールを提供する。
【解決手段】回転ツール100aの素材として、WC−Ni−Cr系の素材が用いられる。鉄の高温安定相はオーステナイトであり、結晶構造は体心立方晶であり、Niの結晶構造も同様であるため、金属相にNiを使用することで、高温強度に優れたものとできる。さらにCrを固溶させたNi−Cr相では、固溶強化による強度向上とともに熱応力・耐酸化性・耐食性に優れた特性を示す。この結果、WC−Ni−Cr系合金では、WC−Co系合金と比較して耐溶着性が大幅に改善される。このため、摩擦攪拌接合時に発生する摩擦抵抗が安定化されるため、接合時の不意の摩擦抵抗増大に伴う(摩擦抵抗+曲げ応力)による応力集中が回避され、回転ツール100aの折損を防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転ツールに関し、特に、当該回転ツールを回転させつつ、その先端部を金属材の攪拌部に接触させ、金属材の接合及び表面改質のいずれかの処理を行う金属材の処理方法に用いる回転ツール(回転工具)に関する。
【背景技術】
【0002】
摩擦撹拌接合は、回転ツールと呼ばれる棒状の工具を高速で回転させながら金属部材と接触させ、金属部材との摩擦熱を利用して接合する接合法である。回転ツールは径の大きいショルダーとその先端にあるプローブとから構成され、接合中はプローブのみが金属部材中に押し入れられ、接合すべき突合わせ面に沿って移動させられ、回転ツールによる塑性流動によって金属部材の接合を行う。ショルダーは、プローブが金属部材中に進入しつつ回転することによって金属部材が外部に排出されることを押さえる作用と、金属部材表面との摩擦による熱源としての作用との両方の役目を担う。また、この方法は材料の表面改質にも用いることが可能で、その場合には、プローブは必須ではない。また、薄板の接合の場合も、プローブは不要である。
【0003】
例えば、アルミニウム合金を接合する際は回転ツールにSKD61等のSKあるいはSKD工具鋼を用いるのが一般的である。しかしながら、アルミニウムより高融点材料である炭素鋼を接合する際は、炭素鋼の軟化温度が700℃〜1200℃と高いため、耐熱性、耐摩耗性に優れた高剛性の回転ツールを用いる必要がある。
【0004】
現在、摩擦撹拌接合用の回転ツールにおいて、炭素鋼に適用可能な回転ツールの材料に超硬合金が挙げられる。例えば、特許文献1に示す回転ツールは、WC−Co系の超硬合金からなり、アルミニウム合金や低炭素鋼の摩擦攪拌接合に用いられている。また、特許文献2では摩擦攪拌処理用の回転ツールとしてWC−Co系超硬合金が適用されている。特許文献2のものは鉄鋼材料の表面改質に用いられる工具である。特許文献2のものは表面層の改質が目的であるため、工具負荷は小さい方が良い。そのため、特許文献2のものは、接合用回転工具とは工具先端の形状が異なっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−199281号公報
【特許文献2】特開2008−132524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1の回転ツールでは、接合対象材が高炭素鋼やTi合金、高窒素鋼、あるいは耐熱鋼等の接合が難しい金属材に対しては、回転ツールの折損が生じ易く、良好なツール寿命が得られていないのが現状である。また、上記特許文献2の回転ツールは、接合用回転工具とは工具先端の形状が異なっているため、多少はツール寿命が改善されるものの、大幅な改善には繋がらないのが現状である。また、この超硬材料を用いて、接合用の回転ツール形状に仕上げ、摩擦攪拌接合に用いると、上記特許文献1の回転ツールと同様に、回転ツールの折損が避けられず、改善が強く望まれている。
【0007】
本発明は、このような実情に考慮してなされたものであり、その目的は、接合又は表面改質の処理が難しい金属材に対してもより長い寿命を有する回転ツールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、棒状の回転ツールを回転させつつ回転ツールの先端部を金属材の攪拌部に接触させ、金属材の接合及び表面改質のいずれかの処理を行う金属材の処理方法に用いる回転ツールであって、回転ツールの少なくとも先端部は、WC、Ni及びCrを含む組成からなり、ロックウェル硬さがHRA=85〜95の範囲にある回転ツールである。
【0009】
この構成によれば、棒状の回転ツールを回転させつつ回転ツールの先端部を金属材の攪拌部に接触させ、金属材の接合及び表面改質のいずれかの処理を行う金属材の処理方法に用いる回転ツールにおいて、回転ツールの少なくとも先端部は、WC、Ni及びCrを含む組成からなり、ロックウェル硬さがHRA=85〜95の範囲にある。本発明者らは、回転ツールの材料組成において、金属相にNiを使用することで上記課題を解決できることを見出した。鉄の高温安定相はオーステナイトであり、結晶構造は体心立方晶であり、Niの結晶構造も同様である。このため、Ni金属相は高温強度に優れる。さらにCrを固溶させたNi−Cr相では、固溶強化による強度向上とともに熱応力・耐酸化性・耐食性に優れた特性を示す。この結果、WC−Ni−Cr系合金では、WC−Co系合金と比較して耐溶着性が大幅に改善される。このため、摩擦攪拌接合時に発生する摩擦抵抗が安定化されるため、接合時の不意の摩擦抵抗増大に伴う(摩擦抵抗+曲げ応力)による応力集中が回避され、ツールの折損を防止することができる。加えて、上記の構成によれば、回転ツールの少なくとも先端部はロックウェル硬さがHRA=85〜95の範囲にあるため、接合や表面改質の処理が難しい金属材に対してもより長い寿命を有するものとできる。
【0010】
なお、本発明における金属材の処理方法には、(1)板状の金属材の端部同士を突き合わせて接合部とし、回転ツールをその接合部の長手方向に沿って回転させつつ移動させて金属材同士を接合する摩擦攪拌接合、(2)板状の金属材の端部同士を突き合わせて接合部とし、回転ツールをその接合部で移動させずに回転させて接合するスポット摩擦攪拌接合(スポットFSW)、(3)金属材同士を接合部において重ね合わせ、接合部に回転ツールを接触させ、回転ツールをその箇所で移動させずに回転させて金属材同士を接合するスポット摩擦攪拌接合、(4)金属材同士を接合部において重ね合わせ、接合部に回転ツールを接触させ、回転ツールをその接合部の長手方向に沿って回転させつつ移動させて金属材同士を接合する摩擦攪拌接合の(1)〜(4)の4つの態様およびこれらの組み合わせを含む。また、本発明における金属材の処理方法には、回転ツールを金属材の表面に回転させつつ当接させ、金属材の表面を改質する態様も含むものとする。さらに、処理される金属材は、同種材料あるいは異種材料であるか否かを問わないものとする。
【0011】
この場合、回転ツールの少なくとも先端部は、Niが2〜15重量%及びCrが0.3〜3重量%の範囲の組成からなることが好適である。
【0012】
この構成によれば、Niが2〜15重量%及びCrが0.3〜3重量%の範囲の組成からなり、Ni−Cr相は回転ツールの主成分であるWCと比較して組成比で18重量%以下となる。このように、Niを2重量%以上とすることにより回転ツールの素材を強固なものとでき、15重量%以下とすることにより、強度低下を防止することができる。又、Crを0.3重量%以上とすることにより耐酸化性を向上させ、3重量%以下とすることにより、強度低下を防止することができる。さらに、このようにNi−Cr相を組成比で18重量%以下とすることにより、WC粒子間距離を狭め、高温下での回転ツールの変形を抑制することができる。
【0013】
また、回転ツールの少なくとも先端部は、Coをさらに含む組成からなることが好適である。
【0014】
この構成によれば、回転ツールの少なくとも先端部は、Coをさらに含む組成からなる。Ni−CrにCoを加えたCo−Ni−Crでは、さらに強靭な金属相となり、摩擦攪拌接合時に発生する回転ツールと金属材との摩擦抵抗や曲げ応力に対して必要十分な耐力を有するものとできる。また、Co−Ni−Crでは、合わせて耐熱亀裂性を向上させることができる。
【0015】
この場合、回転ツールの少なくとも先端部は、Coが3〜12重量%、Niが1〜6重量%及びCrが0.2〜2重量%の範囲の組成からなることが好適である。
【0016】
この構成によれば、Coが3〜12重量%、Niが1〜6重量%及びCrが0.2〜2重量%の範囲の組成からなり、Co−Ni−Cr相は回転ツールの主成分であるWCと比較して組成比で18重量%以下となる。このように、上述したWC−Ni−Cr組成と同様に、Coを3重量%以上とすることにより耐酸化性を向上させ、12重量%以下とすることにより、強度低下を防止することができる。さらに、このようにCo−Ni−Cr相を組成比で18重量%以下とすることにより、WC粒子間距離を狭め、高温下での回転ツールの変形を抑制することができる。
【0017】
また、WCの平均粒度が0.2〜2.5μmの範囲にあることが好適である。
【0018】
この構成によれば、WCの平均粒度が0.2〜2.5μmの範囲にある。0.2μm以上とすることにより素材が極めて強固となり、2.5μm以下とすることにより、強度低下を防止できる。このように、WC粒子のサイズを可能な限り小さくしてWC粒子間距離を狭めることにより、高温下での回転ツールの変形を抑制することができる。
【0019】
一方、本発明は、棒状の回転ツールを回転させつつ回転ツールの先端部を金属材の攪拌部に接触させ、金属材の接合及び表面改質のいずれかの処理を行う金属材の処理方法に用いる回転ツールであって、回転ツールの少なくとも先端部は、TiC、Mo、Ni及びCrを含む組成からなり、ロックウェル硬さがHRA=85〜95の範囲にある回転ツールである。
【0020】
この構成によれば、棒状の回転ツールを回転させつつ回転ツールの先端部を金属材の攪拌部に接触させ、金属材の接合及び表面改質のいずれかの処理を行う金属材の処理方法に用いる回転ツールにおいて、回転ツールの少なくとも先端部は、TiC、Mo、Ni及びCrを含む組成からなり、ロックウェル硬さがHRA=85〜95の範囲にある。このように、WC相をTiC−Mo相に置換しても摩擦攪拌接合用の回転ツールとして上記のWC−Ni−Cr系合金あるいはWC−Co−Ni−Cr系合金の回転ツールと同様の効果が得られる。但し、この場合のMo添加はTiC相の濡れ性改善と粒子成長の抑制が目的であり、MoはTiCと硬質粒子を形成するためのものである。さらに、WCはレアメタルとして非常に高価であり、近年ではリサイクルの必要性が国策としても高まっている。それ故、WCをTiCに置換可能なことは資源的にも安定供給が保障されることになる。又、WCと比較してTiCは硬さに優れる。因みにWCはHV=1800であるのに対してTiCはHV=3200程度である。この特性差により、ツールの摩耗量が低減されるため、ツール寿命の延長が可能である。
【0021】
この場合、回転ツールの少なくとも先端部は、Moが15〜30重量%、Niが5〜15重量%及びCrが0.5〜3重量%の範囲の組成からなることが好適である。
【0022】
この構成によれば、Moが15〜30重量%、Niが5〜15重量%及びCrが0.5〜3重量%の範囲の組成からなり、Ni−Cr相は回転ツールの主成分であるTiC−Moと比較して組成比で18重量%以下となる。各々の成分をこのような下限値以上とすることにより回転ツールの素材を強固なものとでき、上限値以下とすることにより強度低下を防止することができる。さらに、このようにNi−Cr相を組成比で18重量%以下とすることにより、TiC−Mo粒子間距離を狭めることにより、高温下での回転ツールの変形を抑制することができる。
【0023】
この場合、TiCの平均粒度が0.5〜3μmの範囲にあることが好適である。
【0024】
この構成によれば、TiCの平均粒度が0.5〜3μmの範囲にある。0.5μm以上とすることにより、ツール素材を強固なものとし、3μm以下とすることにより、強度低下を防止することができる。このように、TiC粒子のサイズを可能な限り小さくしてTiC粒子間距離を狭めることにより、高温下での回転ツールの変形を抑制することができる。
【0025】
また、回転ツールの少なくとも先端部は、TiN、TaN、(W,Ti)C、(W,Ti、Ta)C、(Ta,Nb)Cから選択される少なくとも1種以上の化合物を含むことが好適である。
【0026】
この構成によれば、回転ツールの少なくとも先端部は、TiN、TaN、(W,Ti)C、(W,Ti、Ta)C、(Ta,Nb)Cから選択される少なくとも1種以上の化合物が添加されるため、耐熱性及び耐酸化性を向上させることができる。
【0027】
また、回転ツールの少なくとも先端部は、シリサイド及びボライドから選択される少なくとも1種以上の化合物を含むことが好適である。
【0028】
この構成によれば、回転ツールにシリサイド及びボライドを添加する。回転ツールの素材へのSi,Bの化合物の添加は回転ツール表面に固体潤滑効果を生むため、回転ツールと金属材との摩擦抵抗が低減する。それ故、回転ツールの回転数を高くすることが可能となる。この場合、回転ツールの回転数を高くすることで摩擦熱を発生させることになるが、同時にツールの移動速度が相対的に小さくなるため、曲げ応力が低減する。合わせて、回転ツール表面での接合部材との溶着も低減するため、ツールへの応力集中が回避され、回転ツールの折損を防止できる。
【0029】
この場合、回転ツールにおけるシリサイド及びボライドから選択される少なくとも1種以上の化合物の含有量は、回転ツールの表面部位から内部に至るにつれて少なくなることが好適である。
【0030】
シリサイド又はボライドの添加による固体潤滑効果は、回転ツールの表面部位において発生させれば良いため、シリサイド又はボライドの含有量が回転ツールの表面部位から内部に至るにつれて少ないことにより、最小限の添加量でシリサイド又はボライドの添加の効果を上げることが可能となる。
【発明の効果】
【0031】
本発明の回転ツールによれば、接合又は表面改質の処理が難しい金属材に対してもより長い寿命を有する回転ツールとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】実施形態に係る回転ツールの一例を示す斜視図である。
【図2】実施形態に係る回転ツールの別の一例を示す斜視図である。
【図3】実施形態に係る金属材の製造方法の摩擦攪拌処理を示す斜視図である。
【図4】実施形態に係る金属材の製造方法であってスポット型の摩擦攪拌処理を示す斜視図である。
【図5】実施形態に係る金属材の製造方法であって重ね合わせ型の摩擦攪拌処理を示す斜視図である。
【図6】実施形態に係る金属材の製造方法であって重ね合わせ型でスポット型の摩擦攪拌処理を示す斜視図である。
【図7】実験例で用いた回転ツールのロックウェル硬さ及び組成についてまとめた表である。
【図8】各々の実験例の結果をまとめた表である。
【図9】炭素鋼の状態図である。
【図10】Ti合金を接合した後の本実施形態の回転ツールを示す斜視図である。
【図11】Ti合金を接合した後の本実施形態の回転ツールを示す斜視図である。
【図12】Ti合金を接合した後の本実施形態の回転ツールを示す斜視図である。
【図13】Ti合金を接合した後の本実施形態の回転ツールを示す斜視図である。
【図14】Ti合金を接合した後の従来の回転ツールを示す斜視図である。
【図15】摩擦攪拌接合における純Tiの接合可能範囲を示す図である。
【図16】プローブ径6mmの回転ツールによる純Tiの接合可能範囲を示す図である。
【図17】プローブ径4mmの回転ツールによる純Tiの接合可能範囲を示す図である。
【図18】良好な接合状態の接合部を示す平面図である。
【図19】溝状欠陥が生じた接合部を示す平面図である。
【図20】不安定な接合状態の接合部を示す平面図である。
【図21】内部に欠陥が生じた接合部を示す断面図である。
【図22】プローブ径に応じた母材が破断する範囲と攪拌部が破断する範囲とを示す図である。
【図23】金属ガラスと各相の安定性の温度依存性を示す図である。
【図24】へこみ角がそれぞれ異なる回転ツールを示す側面図である。
【図25】へこみ角が10°の回転ツールによる接合部を示す平面図である。
【図26】へこみ角が0°の回転ツールによる接合部を示す平面図である。
【図27】へこみ角が3°の回転ツールによる接合部を示す平面図である。
【図28】へこみ角が3°の回転ツールによる接合部を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。本実施形態では、図1に示すような回転ツール100aを用意する。図1に示すように、ツールは径の大きいショルダー101と、その先端にあるプローブ102aから構成される。図3に示すように、摩擦攪拌接合の際は、金属材1a,1bの端部同士を付き合わせて接合部20とする。プローブ102aのみが接合部20に押し入れられ、回転させられつつ、接合すべき突合わせ面に沿って移動させられる。摩擦攪拌接合では、回転ツール100aの摩擦攪拌による塑性流動によって接合を行う。ショルダー101は、プローブ102aが金属材1a,1b中に進入しつつ回転し、金属材1a,1bが外部に排出されるのを押さえる作用と、金属材1a,1b表面との摩擦による熱源となる作用との両方の役目を果たす。
【0034】
金属材1a,1bとしては、一般的なAl材、普通鋼の他、後述するように接合又は表面改質の処理が難しいとされる高炭素鋼、Ti合金、純Ti、耐熱鋼及び金属ガラス等を適用することができ、普通鋼やAl合金の場合の限界板厚を増大させることが可能である。また、金属材1a,1bとしては、同種材料又は異種材料であるか否かを問わない。また、金属材1a,1bの数量も1個あるいは2個だけではなく、3個以上の金属材を同時に接合部20にて接触あるいは近接させ、同時に処理することが可能である。
【0035】
なお、図2に示すように、外周に螺子状溝103が設けられたプローブ102bを有する回転ツール100bを適用することも可能である。この態様では、プローブ102bの外周に設けられた螺子状溝103により、金属材1a,1bの塑性流動が促進され、良好な接合が得られるという利点がある。
【0036】
また、本実施形態における摩擦攪拌処理としては、図3に示す態様の他、図4に示すように、回転ツール100aを移動させずに金属材1aの同じ場所で回転させ続けるスポット型の摩擦攪拌処理の態様も含む。あるいは、図5に示すように、板状の金属材1a,1bを重ね合わせ、回転ツール100aを金属材1aに当接させつつ回転させ、金属母材1a上を移動させることにより、接合部20を攪拌する重ね合わせ接合を行っても良い。この場合も、図6に示すように、回転ツール100aの移動を伴わないスポット型の摩擦攪拌接合とすることができる。図3〜6に示す摩擦攪拌処理の態様においては、金属材1a等を接合する他、金属材1a等の表面を改質することが可能となる。なお、金属材1a等の表面を改質する場合には、プローブ102aは必須ではない。また、金属材1a等が薄板であり、これらの摩擦攪拌接合を行う場合もプローブaは不要である。この場合は、ショルダー101が回転ツール100aの先端として、金属材1a等に接触することになる。
【0037】
本実施形態の回転ツール100a,100bの素材としては、WC−Ni−Cr系、WC−Co−Ni−Cr系あるいはTiC−Mo−Ni−Cr系の素材が用いられる。本発明者らは、回転ツールの材料組成において、金属相にNiを使用することで上記課題を解決できることを見出した。鉄の高温安定相はオーステナイトであり、結晶構造は面心立方晶であり、Niの結晶構造も同様である。このため、Ni金属相は高温強度に優れる。さらにCrを固溶させたNi−Cr相では、固溶強化による強度向上とともに熱応力・耐酸化性・耐食性に優れた特性を示す。この結果、WC−Ni−Cr系合金では、WC−Co系合金と比較して耐溶着性が大幅に改善される。このため、摩擦攪拌接合時に発生する摩擦抵抗が安定化されるため、接合時の不意の摩擦抵抗増大に伴う(摩擦抵抗+曲げ応力)による応力集中が回避され、回転ツール100a,100bの折損を防止することができる。
【0038】
また、Coをさらに含む組成からなるWC−Ni−Cr系合金にCoを加えたWC−Co−Ni−Cr系合金では、さらに強靭な金属相となり、摩擦攪拌接合時に発生する回転ツール100a,100bと金属材1a,1bとの摩擦抵抗や曲げ応力に対して必要十分な耐力を有するものとできる。また、Co−Ni−Crでは、合わせて耐熱亀裂性を向上させることができる。
【0039】
さらに、WC相をTiC−Mo相に置換したTiC−Mo−Ni−Cr系の素材を用いても、上記のWC−Ni−Cr系合金あるいはWC−Co−Ni−Cr系合金の回転ツール100a,100bと同様の効果が得られる。この場合のMo添加はTiC相の濡れ性改善と粒子成長の抑制が目的であり、MoはTiCと硬質粒子を形成するためのものである。さらに、WCはレアメタルとして非常に高価であり、近年ではリサイクルの必要性が国策としても高まっている。それ故、WCをTiCに置換可能なことは資源的にも安定供給が保障されることになる。又、WCと比較してTiCは硬さに優れる。因みにWCはHV=1800であるのに対してTiCはHV=3200程度である。この特性差により、回転ツール100a,100bの摩耗量が低減されるため、ツール寿命の延長が可能である。
【0040】
回転ツール100a,100bの素材は、出発原料としてWC粉、Ni粉、Cr−C粉等を所定量計量し、これを混合した後、圧粉成型し、ツール素材形状に機械加工した後、1350℃以上の温度域で加熱焼結し、さらにHIP処理して緻密な合金素材を得る。得られた焼結素材をダイヤモンド工具で研削仕上げをすることにより、回転ツール100a,100bが完成する。尚、回転ツール100a,100bの素材の機械的特性としてロックウェル硬さは、HRA=85〜95が好ましく、より好ましくはHRA=90〜94、曲げ強度は2.5GPa以上、圧縮強度は5GPa以上が好ましい範囲である。
【0041】
回転ツール100a,100bの素材に用いられるWC粒度は0.2〜2.5μmの範囲が適用される。0.2μm以上とすることにより素材が極めて強固となり、2.5μm以下とすることにより、強度低下を防止できる。好ましくは、WC粒度は0.5〜1.5μmの範囲が適用される。このように、WC粒子のサイズを可能な限り小さくしてWC粒子間距離を狭めることにより、高温下での回転ツール100a,100bの変形を抑制することができる。
【0042】
WC−Ni−Cr組成において、Niが2〜15重量%、Crが0.3〜3重量%の範囲が適当であり、Niを2重量%以上とすることにより回転ツール100a,100bの素材を強固なものとでき、15重量%以下とすることにより、強度低下防止できる。又、Crを0.3重量%以上とすることにより耐酸化性を向上させ、3重量%以下とすることにより、強度低下を防止することができる。さらに、Ni−Cr相を組成比で18重量%以下とすることにより、WC粒子間距離を狭め、高温下での回転ツール100a,100bの変形を抑制することができる。より好ましくはNiが5〜12重量%、Crは0.3〜1.5重量%である。また、Ni−Crとしてのより好ましい範囲は6〜12重量%である。
【0043】
WC−Co−Ni−Cr組成において、Coが3〜12重量%、Niが1〜6重量%、Crが0.2〜2重量%の範囲が適当であり、上述したWC−Ni−Cr組成と同様に、Coを3重量%以上とすることにより耐酸化性を向上させ、12重量%以下とすることにより、強度低下を防止することができる。好ましい組成範囲としては、Coが5〜9重量%、Niが2〜5重量%、Crが0.3〜1.5重量%である。さらに、Co−Ni−Cr相を組成比で18重量%以下とすることにより、WC粒子間距離を狭め、高温下での回転ツールの変形を抑制することができる。また、Co−Ni−Crとしてのより好ましい範囲は7〜12重量%である。
【0044】
TiC−Mo−Ni−Cr組成において、TiC平均粒度は0.5〜3μmの範囲が適当であり、0.5μm以上とすることにより、ツール素材を強固なものとし、3μm以下とすることにより、強度低下を防止することができる。より好ましい粒度範囲は1〜2μmである。このように、TiC粒子のサイズを可能な限り小さくしてTiC粒子間距離を狭めることにより、高温下での回転ツール100a,100bの変形を抑制することができる。
【0045】
組成ではMoが15〜30重量%、Niが5〜15重量%、Crが0.5〜3重量%の範囲が適当であり、各々の成分を下限値以上とすることにより回転ツール100a,100bの素材を強固なものとでき、上限値以下とすることにより強度低下を防止することができる。より好ましい組成範囲としてはMoが18〜25重量%、Niが6〜12重量%、Crが0.5〜1.5重量%の範囲である。さらに、Ni−Cr相を組成比で18重量%以下とすることにより、TiC粒子間距離を狭め、高温下での回転ツールの変形を抑制することができる。また、Ni−Crとしてのより好ましい範囲は6〜12wt%である。
【0046】
また、回転ツール100a,100bの素材に、TiN、TaN、(W,Ti)C、(W,Ti、Ta)C、(Ta,Nb)Cから選択される少なくとも1種以上の化合物が添加されることにより、耐熱性及び耐酸化性を向上させることができる。
【0047】
また、本実施形態では、回転ツール100a,100bの素材に、シリサイド(SiC、Si等)、ボライド(BC、BN等)あるいはP(リン)を添加することができる。シリサイド又はボライドの添加量は極めて微量で固体潤滑効果を発現する。Siの含有量は0.02〜0.1重量%の範囲内で十分であり、Bの含有量に至っては20〜500ppmの範囲が適切である。これらの下限値以上とすることにより、確実に効果を発揮させ、これらの上限値以下とすることにより強度低下を防止することができる。シリサイド、ボライドあるいはPを含むこれらの添加元素は金属と非金属の中間に位置する特異元素である。これらの添加元素は、回転ツール100a,100bの素材の表面に対して、含浸させることにより、シリサイド等の含有量が回転ツール100a,100bの表面部位から内部に至るにつれて少なくでき、最小限の添加量でシリサイド等の添加の効果を上げることが可能となる。
【0048】
以下、異なる種類の金属材を異なる種類の組成からなる回転ツールにより摩擦攪拌接合を行った攪拌させた実験例について説明する。以下の実験例では、図7に示すロックウェル硬さと組成とを有する試作番号A〜Jの回転ツールを用いて実験を行なった。また、各回転ツールにより、図8に示す結果が得られた。以下に、金属材ごとの結果について説明する。
【0049】
(実験例1:高炭素鋼)
高炭素鋼としてSK5材を試料となる金属材1a,1bとして、図3に示すように摩擦攪拌接合を行った。SK5材は、C:0.85重量%、Mn:0.42重量%、Si:0.19重量%、Cr:0.147重量%、P:0.017重量%、Cu:0.01重量%、Ni:0.01重量%、S:0.003重量%、Al:0.001重量%及び残余のFeからなる組成の高炭素鋼である。
【0050】
本実験例で用いた回転ツール100aは、いずれの組成のものについても、ショルダー101の径が12mm、プローブ102aの径が4mm、プローブ102aの長さが1.5mmの物を使用した。また、接合条件は、いずれの組成のものについても、回転ツール100aの傾斜角が3°、回転ツールの回転速度が100〜400rpm、接合速度が100〜200mm/min、回転ピッチ(接合速度/回転速度)が0.5〜1mm/rとした。
【0051】
本実験例では、図9に示す炭素鋼の状態図において、A点(723℃)以上で回転速度400rpm、接合速度200mm/minにより接合を行い、A点以下で回転速度100rpm、接合速度100mm/minにより接合を行った。
【0052】
なお、以下に示す実験例1〜5では、金属材1a,1bの接合方向に沿った長さは300mmであるため、1組の金属材1a,1bの接合が完了すると次の1組の金属材1a,1bの接合を順次行い、1種類の回転ツールについて3個のツールによる延べの接合長さに対して平均接合長さを回転ツールの寿命として評価した。
【0053】
図8に示すように、本発明の組成を有する試作番号A,E,Hの回転ツール100aは、従来の組成を有する試作番号I,Jの回転ツールに比べて寿命が優れていることが判る。特に、A点以上で回転速度400rpm、接合速度200mm/minにより接合を行った場合、試作番号I(WC−Co)及び試作番号J(WC−Co−TaC)の回転ツールの平均接合長さは5mに留まったのに対し、試作番号A(WC−Ni−Cr)の平均接合長さは25mであり、試作番号E(WC−Co−Ni−Cr)の平均接合長さは25mであり、試作番号H(TiC−Mo−Ni−Cr)の平均接合長さは40mと5〜8倍に寿命が向上した。
【0054】
また、A点以下で回転速度100rpm、接合速度100mm/minにより接合を行った場合、試作番号I(WC−Co)及び試作番号J(WC−Co−TaC)の回転ツールの平均接合長さは3mに留まったのに対し、試作番号A(WC−Ni−Cr)の平均接合長さは24mであり、試作番号E(WC−Co−Ni−Cr)の平均接合長さは30mと8〜10倍に寿命が向上した。なお、いずれの接合条件及び回転ツールにおいても、接合面は良好であった。
【0055】
(実験例2:Ti合金)
Ti合金としてTi−6Al−4V材を試料となる金属材1a,1bとして、図3に示すように摩擦攪拌接合を行った。Ti−6Al−4V材の厚さは2mmであり、回転速度400rpm、接合速度200mm/minにより接合を行った。
【0056】
図8より、試作番号A(WC−Ni−Cr)、試作番号B(WC−Ni−Cr−TaN)、試作番号C(WC−Ni−Cr−(W,Ti,Ta)C)、試作番号D((WC−Ni−Cr)にBを表面部位に添加)、試作番号E(WC−Co−Ni−Cr)、試作番号F(WC−Co−Ni−Cr−TaC)及び試作番号G((WC−Co−Ni−Cr)にBを表面部位に添加)では、回転ツール100aの寿命が極めて稿寿命であることが判る。特に、図10に示す試作番号E(WC−Co−Ni−Cr)、図11に示す試作番号F(WC−Co−Ni−Cr−TaC)、図12に示す試作番号G((WC−Co−Ni−Cr)に粒径1.5μmのBを表面部位に添加)では、回転ツール100aに全く破損が見られないことが判る。また、図13に示す試作番号G((WC−Co−Ni−Cr)に粒径6μmのBを表面部位に添加)でも、若干の破損に留まっていることが判る。一方、図14に示すように、従来の試作番号I(WC−Co)及び試作番号J(WC−Co−TaC)の回転ツール10は先端が破断し、接合が不可能であった。
【0057】
(実験例3:純Ti)
工業用の純Ti(cp−Ti:99.9%)材を試料となる金属材1a,1bとして、図3に示すように摩擦攪拌接合を行った。純Ti材の厚さは2mmであり、回転速度300〜550rpm、接合速度50〜250mm/minにより接合を行った。また、シールドガスとしてArガスを用いた。本実験例で用いた回転ツール100a,10は、いずれの組成のものについても、ショルダー101の径が15mm、プローブ102aの径が4mm、5mm及び6mm、プローブ102aの長さが2.0mmの物を使用した。
【0058】
図15に示すように、純Tiは885℃以下では、hcp構造を有するため、塑性変形しにくく、他のAl6061材等に比べて、純Ti材の接合可能な接合条件は極めて狭い範囲であることが判る。図16及び図17に、回転速度と接合速度とを変化させて実験を行った結果を示す。図16がプローブ102aの径が6mmの結果を示し、図17がプローブ102aの径が4mmの結果を示す。図16及び図17における白丸プロットは図18に示すような良好な接合部20が得られたことを示し、黒丸プロットは図19に示すような溝状欠陥が接合部20に発生したことを示し、斜線丸プロットは図20に示すような不安定な結合状態の接合部20が得られたことを示し、三角プロットは図21に示すような欠陥が接合部20に発生したことを示す。
【0059】
図16に示すように、プローブ102aの径が6mmの場合は、接合速度が比較的遅い125mm/min以下の場合に接合可能であり、良好な接合は接合速度75mm/min以下で得られる事が判る。一方、図17に示すように、プローブ102aの径が6mmの場合は、接合可能な範囲が広がり、接合速度が比較的速い200mm/min以下の場合に接合可能であり、良好な接合は接合速度100mm/min以下で得られる事が判る。なお、プローブ102aの径が6mmの場合は、回転速度350〜450rpm、接合速度100mm/minで特に良好な接合が得られる。
【0060】
図22に示すように、プローブ102aの径が4mmの場合は、プローブ102aの径が5mm及び6mmの場合に比べて、接合部20に対する引張り試験を行なった場合に母材が破断する、すなわち、母材である金属材1a,1bよりも接合部20の強度が向上する範囲が広いことが判る。
【0061】
プローブ102aの径が4mmの場合において、試作番号I(WC−Co)及び試作番号J(WC−Co−TaC)の回転ツール10の平均接合長さは2.4mに留まったのに対し、試作番号A(WC−Ni−Cr)の平均接合長さは48mであり、試作番号B(WC−Ni−Cr−TaN)の平均接合長さは150mであり、試作番号E(WC−Co−Ni−Cr)の平均接合長さは150mと20〜60倍以上に寿命が向上した。
【0062】
(実験例4:耐熱鋼)
上記実験例1と同様に、耐熱鋼に対しても実験を行なった。試作番号I(WC−Co)及び試作番号J(WC−Co−TaC)の回転ツール10の平均接合長さは極めて短かったのに対し、試作番号D((WC−Ni−Cr)にBを表面部位に添加)、試作番号E(WC−Co−Ni−Cr)、試作番号G((WC−Co−Ni−Cr)にBを表面部位に添加)、試作番号H(TiC−Mo−Ni−Cr)の回転ツール100aの平均接合長さは、8〜10倍に寿命が向上した。
【0063】
(実験例5:金属ガラス)
金属ガラスとしてZr55Cu30Al10Ni材を試料となる金属材1a,1bとして、図3に示すように摩擦攪拌接合を行った。Zr55Cu30Al10Ni材の厚さは2mmである。金属ガラスは図23に示す金属ガラスと各相の温度依存性にあるように、ガラス転移温度Tと結晶化温度Tとの間に過冷却液体領域(SUPERCOOLED LIQUID)が存在する。この過冷却液体領域で成形が可能であり、結晶化温度Tであると結晶化の問題がある。そこで、本実験例では、ガラス転移温度T以上であり結晶化温度T以下となる回転速度80〜200rpm及び接合速度100mm/minの接合条件により接合を行った。
【0064】
本実験例では、いずれの組成のものについても、図2に示す回転ツール100bのように、左向きに螺子状溝103がプローブ102bの側面に設けられている回転ツールを用いた。ショルダー101の径は25mmと上記実験例1〜4のものよりも大きな径のものを用いた。これは、ショルダー101の径が12mm程度のものよりも、25mmとした方がバリの発生を防止できるからである。プローブ102bの径は5mmのものを用いた。
【0065】
図24の回転ツール100cのようにへこみ角(ショルダー101がなす角度)θが10°の場合はショルダー101に熱が集中し、図25に示すような周辺に偏った接合部20となる可能性がある。また、回転ツール100eのようにへこみ角θが0°の場合は、図26に示すようにバリが多い接合部20となる可能性がある。そこで、本実験例では、回転ツール100dのようにへこみ角θが3°のものを使用した。実際にはへこみ角θは2〜5°のものが好適である。
【0066】
図27は、上記へこみ角θが3°の回転ツールにより、回転速度150rpm、接合速度100mm/minで実験を行なった接合部20を示し、図28は、転速度100rpm、接合速度100mm/minで実験を行なった接合部20を示す。いずれも、ビード周辺のバリは比較的少なく、大きな欠陥は見られなかった。
【0067】
図8より、試作番号C(WC−Ni−Cr−(W,Ti,Ta)C)、試作番号D((WC−Ni−Cr)にBを表面部位に添加)、試作番号F(WC−Co−Ni−Cr−TaC)及び試作番号G((WC−Co−Ni−Cr)にBを表面部位に添加)では、回転ツール100dの寿命が極めて稿寿命であることが判る。特に、試作番号I(WC−Co)及び試作番号J(WC−Co−TaC)の回転ツールの平均接合長さは0.6mに留まったのに対し、試作番号C(WC−Ni−Cr−(W,Ti,Ta)C)の平均接合長さは4.2mであり、試作番号D((WC−Ni−Cr)にBを表面部位に添加)の平均接合長さは6mと7〜10倍に寿命が向上した。
【0068】
以上の実験例1〜5全般において、本質的には、回転ツール100a,100b,100dの金属相にNiを用いたことで、プローブ102a,102bと金属材1a,1bとの間の溶着を防止でき、且つショルダー101の耐熱亀裂性の改善により、欠損が大幅に抑制されたと言える。
【0069】
尚、本発明は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0070】
1a,1b…金属母材、10…回転ツール、20…接合部、100a〜100e…回転ツール、101…ショルダー、102a,102b…プローブ、103…螺子状溝。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状の回転ツールを回転させつつ前記回転ツールの先端部を金属材の攪拌部に接触させ、前記金属材の接合及び表面改質のいずれかの処理を行う金属材の処理方法に用いる回転ツールであって、
前記回転ツールの少なくとも前記先端部は、WC、Ni及びCrを含む組成からなり、ロックウェル硬さがHRA=85〜95の範囲にある、回転ツール。
【請求項2】
前記回転ツールの少なくとも前記先端部は、Niが2〜15重量%及びCrが0.3〜3重量%の範囲の組成からなる、請求項1に記載の回転ツール。
【請求項3】
前記回転ツールの少なくとも前記先端部は、Coをさらに含む組成からなる、請求項1に記載の回転ツール。
【請求項4】
前記回転ツールの少なくとも前記先端部は、Coが3〜12重量%、Niが1〜6重量%及びCrが0.2〜2重量%の範囲の組成からなる、請求項3に記載の回転ツール。
【請求項5】
WCの平均粒度が0.2〜2.5μmの範囲にある、請求項1〜4のいずれか1項に記載の回転ツール。
【請求項6】
棒状の回転ツールを回転させつつ前記回転ツールの先端部を金属材の攪拌部に接触させ、前記金属材の接合及び表面改質のいずれかの処理を行う金属材の処理方法に用いる回転ツールであって、
前記回転ツールの少なくとも前記先端部は、TiC、Mo、Ni及びCrを含む組成からなり、ロックウェル硬さがHRA=85〜95の範囲にある、回転ツール。
【請求項7】
前記回転ツールの少なくとも前記先端部は、Moが15〜30重量%、Niが5〜15重量%及びCrが0.5〜3重量%の範囲の組成からなる、請求項6に記載の回転ツール。
【請求項8】
TiCの平均粒度が0.5〜3μmの範囲にある、請求項6又は7に記載の回転ツール。
【請求項9】
前記回転ツールの少なくとも前記先端部は、TiN、TaN、(W,Ti)C、(W,Ti、Ta)C、(Ta,Nb)Cから選択される少なくとも1種以上の化合物を含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の回転ツール。
【請求項10】
前記回転ツールの少なくとも前記先端部は、シリサイド及びボライドから選択される少なくとも1種以上の化合物を含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載の回転ツール。
【請求項11】
前記回転ツールにおけるシリサイド及びボライドから選択される少なくとも1種以上の化合物の含有量は、前記回転ツールの表面部位から内部に至るにつれて少なくなる、請求項10に記載の回転ツール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公開番号】特開2010−260065(P2010−260065A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−111081(P2009−111081)
【出願日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【出願人】(390000022)サンアロイ工業株式会社 (8)
【Fターム(参考)】