説明

回転ノズル装置

【課題】 広い洗浄可能領域を有し、構造が簡単なノズル装置を提供することである。
【解決手段】 第1通水路(12a)が内部に設けられ、給水源に接続された固定部(12)と、第1通水路と流体連通する第2通水路(16)が内部に設けられ、固定部の軸(12b)を中心として回転するように配置された回転部(14)とを備え、回転部には、第2通水路から回転部の下面に位置するノズル先端まで延びた少なくとも1つのノズル孔(20,22)が設けられ、ノズル孔のうち少なくとも1つ(20)が、ノズル先端(20b)の箇所において、ノズル先端が円周上に位置する軸を中心とする所定半径の仮想円(C1 )に対する接線に沿って見たとき、軸に対して角度α傾斜していることを特徴とする回転ノズル装置(10)が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、ノズル装置に関する。より詳細には、本発明は、農作物等の効率的な洗浄を可能にした回転ノズル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ジャガイモやトマト等の農作物は、収穫された後、表面に付着した土等を取り除くため、洗浄してから出荷されるのが通常である。このような洗浄は一般的に、農作物に対してノズルから水を噴射することによって行われている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の洗浄手段では、洗浄可能領域を広くすることを目的として、ノズル先端が揺動するようにノズル装置にリンク機構が設けられているため、装置が複雑となり、故障の一因になるという課題がある。また、ノズルの数を増やして洗浄可能領域を広くしようとすると、洗浄設備自体が大型になるため、コスト高になるという課題もある。このように、従来は、広い洗浄可能領域を有する構造が簡単な洗浄手段が見受けられなかった。
【0004】
本発明は、このような状況に鑑みて案出されたものであって、広い洗浄可能領域を有し、構造が簡単な回転ノズル装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願請求項1に記載の回転ノズル装置は、第1通水路が内部に設けられ、給水源に接続された固定部と、前記第1通水路と流体連通する第2通水路が内部に設けられ、前記固定部の軸を中心として回転するように配置された回転部とを備え、前記回転部には、前記第2通水路から前記回転部の下面に位置するノズル先端まで延びた少なくとも1つのノズル孔が設けられ、前記ノズル孔のうち少なくとも1つが、前記ノズル先端の箇所において、前記ノズル先端が円周上に位置する前記軸を中心とする所定半径の仮想円に対する接線に沿って見たとき、前記軸に対して角度α傾斜していることを特徴とするものである。
【0006】
本願請求項2に記載の回転ノズル装置は、前記請求項1の装置において、前記角度αが、10°〜20°の範囲内にあることを特徴とするものである。
【0007】
本願請求項3に記載の回転ノズル装置は、前記請求項1又は2の装置において、前記ノズル孔が、前記軸及び各ノズル孔を通る断面で見たとき、前記第2通水路との接続箇所から前記ノズル先端に向かって互いに遠去かる方へ傾斜するように形成されていることを特徴とするものである。
【0008】
本願請求項4に記載の回転ノズル装置は、前記請求項1から3までのいずれか1項の装置において、前記回転部には、前記第2通水路から前記回転部の上面又は側面に位置するノズル先端まで延びた別のノブル孔が更に設けられていることを特徴とするものである。
【0009】
本願請求項5に記載の回転ノズル装置は、第3通水路が内部に設けられ、給水源に接続された固定部と、前記第3通水路と流体連通する第4通水路が内部に設けられ、前記固定部の軸を中心として回転するように配置された回転部とを備え、前記回転部には、前記第4通水路から前記回転部の下面に位置するノズル先端まで延びた多数のノズル孔が設けられ、前記ノズル孔が、前記軸を中心とする複数の同心円上に規則的に配列されており、前記ノズル孔のうち少なくとも最も外側に位置する同心円上に配列されているノズル孔の各々が、当該ノズル孔のノズル先端の箇所において、前記最も外側の同心円に対する接線に沿って見たとき、前記軸に対して、それぞれ角度β傾斜していることを特徴とするものである。
【0010】
本願請求項6に記載の回転ノズル装置は、前記請求項5の装置において、前記角度βが、10°〜20°の範囲内にあることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、複雑な設備を必要とせずに、広範囲の洗浄可能領域を有するノズル装置が提供される。本発明の装置では、駆動ノズル孔の傾斜角度を10°〜20°とすることにより、適当な回転速度を得ることができ、特別の回転抑制(ブレーキ)装置を必要としない。また、本発明の装置では、駆動ノズル孔に傾斜角度が設けられており、噴射水流が被洗浄物に傾斜して当たるため、効果的な洗浄が期待できる。さらに、本発明の装置では、駆動ノズル孔以外にノズル孔を設けることにより、死角の少ない広範囲の洗浄を実施することができる(例えば、回転部の上面にノズル孔を設けると、上方に位置する被洗浄物の洗浄が可能になり、回転部の側面にノズル孔を設けると、側方に位置する被洗浄物の洗浄が可能になる)。本発明の装置は、農作物の洗浄等の他、工業用の洗浄作業に使用することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に図面を参照して、本発明の好ましい実施の形態に係る回転ノズル装置について詳細に説明する。図1(a)は、本発明の第1の実施の形態に係る回転ノズル装置の底面図、図1(b)は、図1(a)の線1b−1bに沿って見た断面図である。図1(b)において全体として参照符号10で示される本発明の第1の実施の形態に係る回転ノズル装置は、固定部12を備えている。固定部12の内部には、第1通水路12aが設けられており、第1通水路12aは、水道管(図1(b)において二点鎖線で図示)等を介して給水源(図示せず)に接続されている。
【0013】
本発明の第1の実施の形態に係る回転ノズル装置10は又、固定部12の軸12bを中心として回転するように配置された回転部14を備えている。回転部14は、固定部12の軸12bに通すための開口が中央に設けられたほぼリング状の形状を有しており、中央の開口に固定部12の軸12bを通すことによって、固定部12に対して回転できるようになっている。回転部14の内部には、固定部12の第1通水路12aと流体連通する第2通水路16が設けられている。
【0014】
なお、図1(b)において、参照符号18aは、回転部14が円滑に回転するように固定部14の軸14bに配置された滑り軸受(例えば、ドライメタル)を示し、参照符号18bは、回転部14の脱落防止用のリングを示している。また、参照符号18cは、回転部14の回転時における摩擦を軽減するための摩擦低減材(例えば、テフロン(登録商標))を示している。
【0015】
回転部14には、第2通水路16から回転部14の下面14aまで延びた第1ノズル孔20(第2通水路16との接続箇所を20a、下面14aに位置するノズル先端を20bとする)と、第2通水路16から回転部14の下面14aまで延びた第2ノズル孔22(第2通水路16との接続箇所を22a、下面14aに位置するノズル先端を22bとする)とが設けられている。なお、回転部14の「下面14a」とは、固定部12から遠い側の回転部14の面を意味し、後述する回転部14の「上面14b」、「側面14c」とは、固定部12に近い側の回転部14の面、固定部14の外周面をそれぞれ意味する。
【0016】
第1ノズル孔20のノズル先端20bは、回転部14の下面14aにおいて軸12bを中心とする仮想円C1 (図1(a)参照)の円周上に位置する。いま、ノズル先端20bの箇所において仮想円C1 に対する接線(図1(a)において矢視2a−2a)に沿って見たとき、第1ノズル孔20は、回転部14の回転軸線(換言すると、固定部12の軸12b)に対して角度α傾斜している(図2(a)参照)。
【0017】
第1ノズル孔20が角度α傾斜していることにより、第1ノズル孔20から水が噴出したとき、回転部14がこの噴出力により、固定部12の軸12bを中心として回転することとなる。すなわち、第1ノズル孔20からの水の噴出力をFとすると、回転軸線に直交する面内においてFの水平分力である(F×sinα)が作用するが(図2(b)参照)、水平分力(F×sinα)が推進力となって、回転部14が固定部12の軸12bを中心として回転する。本発明者が種々の実験を行った結果、角度αは、10°〜20°とするのが好ましいことを見い出した。角度αがこの範囲よりも大きいと、回転部14の回転速度が速くなり、ノズル先端から噴出される水が霧状になって、洗浄力が弱められる。一方、角度αがこの範囲よりも小さいと、回転部14の回転速度が遅くなり、洗浄時間が長くなる。
【0018】
なお、第1ノズル孔20は、上述のように、回転部14の回転に寄与するため、本明細書においては、「駆動ノズル孔」と呼ぶこととする。
【0019】
好ましくは、第1ノズル孔20及び第2ノズル孔22は、回転軸線及び各ノズル孔を通る断面(図1(b)参照)で見たとき、第2通水路16との接続箇所20a、22aからノズル先端20b、22bに向かって互いに遠去かる方へ傾斜している。これにより、図3(a)に示されるように、ノズル孔20、22から水が広範囲に噴出され(図3参照)、効率的な洗浄を行うことができる。なお、図1(b)に示される例では、接続箇所20a、22aからノズル先端20b、22bに向けての傾斜角度が、2つのノズル孔20、22とも、実質的に同一であるものとして示されているが、これらの傾斜角度がそれぞれ異なるように構成してもよい(図4参照)。
【0020】
図1に示される回転ノズル装置10では、2つのノズル孔20、22とも、回転部14の下面14aにノズル先端20b、22bが設けられているが、一方のノズル孔のノズル先端22′bを回転部14の上面14bに設けてもよいし(図5参照)、また、一方のノズル孔22′のノズル先端22′′bを回転部14の側面14cに設けてもよい(図6参照)。
【0021】
また、図1に示される回転ノズル装置10では、回転部14に設置されるノズル孔は2基であるが、ノズル孔の設置基数を1基又は3基以上としてもよい。さらに、図1に示される回転ノズル装置10では、駆動ノズル孔は1基のみであるが、複数の駆動ノズル孔を設けてもよい。
【0022】
図7は、本発明の第2の実施の形態に係る回転ノズル装置30を示した図1と同様の図である。本発明の第2の実施の形態に係る回転ノズル装置30は、多数のノズル孔が設けられている点を除いて、回転ノズル装置10と実質的に同一の構成を有している。
【0023】
すなわち、回転ノズル装置30は、第3通水路32aが内部に設けられ、給水源に接続された固定部32と、第3通水路と流体連通する第4通水路36が内部に設けられ、固定部32の軸32bを中心として回転するように配置された回転部34とを備えている。回転部34には、第4通水路36との接続箇所40a、42aから回転部34の下面34aに位置するノズル先端40b、42bまで延びた多数のノズル孔40、42が設けられている。ノズル孔40、42は、図7(a)に示されるように、軸32bを中心とする複数(図7(a)の例では、5つ)の同心円上に規則的に配列されている。
【0024】
ノズル孔40、42のうち少なくとも最も外側に位置する同心円上に配列されているノズル孔40の各々は、当該ノズル孔40のノズル先端40bの箇所において、同心円C2に対する接線(図7(a)において矢視8−8)に沿って見たとき、回転部34の回転軸線(換言すると、固定部32の軸32b)に対して、それぞれ角度β傾斜している(図8参照)。このノズル孔40の傾斜により、第1の実施の形態に係る回転ノズル装置10と同様に、ノズル孔40から水が噴出したとき、回転部34がこの噴出力により、固定部32の軸32bを中心として回転することとなる。
【0025】
角度βは、本発明者が種々の実験を行った結果、角度αと同様に、10°〜20°とするのが好ましいことを見い出した。
【0026】
本発明は、以上の発明の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1(a)は、本発明の第1の実施の形態に係る回転ノズル装置の底面図、図1(b)は、図1(a)の線1b−1bに沿って見た断面図である。
【図2】図2(a)は、図1(a)の線2a−2aに沿って見た断面図、図2(b)は、本発明の回転ノズル装置の回転原理を説明するための図である。
【図3】図1の回転ノズル装置の水噴出範囲を示した図である。
【図4】図1の回転ノズル装置の変形形態を示した図である。
【図5】図1の回転ノズル装置の別の変形形態を示した図である。
【図6】図1の回転ノズル装置の更に別の変形形態を示した図である。
【図7】図7(a)は、本発明の第1の実施の形態に係る回転ノズル装置の底面図、図7(b)は、図7(a)の線7b−7bに沿って見た断面図である。
【図8】図7(a)の線8−8に沿って見た断面図である。
【符号の説明】
【0028】
10、30 回転ノズル装置
12、32 固定部
12a、32a 通水路
12b、32b 軸
14、34 回転部
16、36 通水路
18a、38a 滑り軸受
18b、38b 脱落防止リング
18c、38c 摩擦低減材
20 第1ノズル孔
22 第2ノズル孔
40、42 ノズル孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転ノズル装置であって、
第1通水路が内部に設けられ、給水源に接続された固定部と、
前記第1通水路と流体連通する第2通水路が内部に設けられ、前記固定部の軸を中心として回転するように配置された回転部とを備え、
前記回転部には、前記第2通水路から前記回転部の下面に位置するノズル先端まで延びた少なくとも1つのノズル孔が設けられ、前記ノズル孔のうち少なくとも1つが、前記ノズル先端の箇所において、前記ノズル先端が円周上に位置する前記軸を中心とする所定半径の仮想円に対する接線に沿って見たとき、前記軸に対して角度α傾斜していることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記角度αが、10°〜20°の範囲内にあることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記ノズル孔が、前記軸及び各ノズル孔を通る断面で見たとき、前記第2通水路との接続箇所から前記ノズル先端に向かって互いに遠去かる方へ傾斜するように形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記回転部には、前記第2通水路から前記回転部の上面又は側面に位置するノズル先端まで延びた別のノブル孔が更に設けられていることを特徴とする請求項1から3までのいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
回転ノズル装置であって、
第3通水路が内部に設けられ、給水源に接続された固定部と、
前記第3通水路と流体連通する第4通水路が内部に設けられ、前記固定部の軸を中心として回転するように配置された回転部とを備え、
前記回転部には、前記第4通水路から前記回転部の下面に位置するノズル先端まで延びた多数のノズル孔が設けられ、前記ノズル孔が、前記軸を中心とする複数の同心円上に規則的に配列されており、前記ノズル孔のうち少なくとも最も外側に位置する同心円上に配列されているノズル孔の各々が、当該ノズル孔のノズル先端の箇所において、前記最も外側の同心円に対する接線に沿って見たとき、前記軸に対して、それぞれ角度β傾斜していることを特徴とする装置。
【請求項6】
前記角度βが、10°〜20°の範囲内にあることを特徴とする請求項5に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−111669(P2007−111669A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−308188(P2005−308188)
【出願日】平成17年10月24日(2005.10.24)
【出願人】(390015303)和泉鉄工株式会社 (3)
【Fターム(参考)】